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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】接続構造および建築物の屋根
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20240806BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
E04B7/02 501J
E04B7/02 521A
E04B7/02 521E
E04B1/58 504L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022137272
(22)【出願日】2022-08-30
(65)【公開番号】P2024033605
(43)【公開日】2024-03-13
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】土方 和己
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖曜
(72)【発明者】
【氏名】福元 大輝
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】江南 桃
(72)【発明者】
【氏名】大石 朋子
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-046733(JP,A)
【文献】特開平06-129022(JP,A)
【文献】特開2000-154599(JP,A)
【文献】実開平06-032518(JP,U)
【文献】特開2006-316460(JP,A)
【文献】特開平04-312637(JP,A)
【文献】特開平08-291579(JP,A)
【文献】特開2006-241753(JP,A)
【文献】特開2000-073444(JP,A)
【文献】特開2020-197069(JP,A)
【文献】特開2023-161817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/02
E04B 7/04
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配梁と柱とを接続する構造において、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続される、接続構造であって、
前記金具は、
前記勾配梁および前記柱に接触する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記勾配梁に形成される第1挿通孔に挿入される第1軸部と、
前記本体部に設けられ、前記柱に形成される第2挿通孔に挿入される第2軸部と、を含み、
前記本体部は、
前記第1軸部が設けられ、前記勾配梁の下面に接触する傾斜部と、
前記第2軸部が設けられ、前記柱の上面に接触する底部と、
前記底部から前記勾配梁に向けて延びる側部と、を含み、
前記側部は、梁または桁を支持可能に構成される支持金具の軸部材が、挿入可能に構成される第1支持孔を有し、
前記第2軸部は、前記支持金具の前記軸部材が挿入可能に構成される第2支持孔を有し、
前記第1支持孔と前記第2支持孔とによって構成される孔の配列の第1ピッチは、前記支持金具の複数の支持金具孔の第2ピッチと等しい、
接続構造。
【請求項2】
建築物の屋根であって、
請求項1に記載の接続構造を備える
屋根。
【請求項3】
建築物の屋根であって、
前記屋根を支持する柱に接続構造によって接続される勾配梁と、
下面が前記勾配梁の下面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に接続される繋ぎ梁と、
前記勾配梁および前記繋ぎ梁の下面を覆う天井部と、を備え、
前記接続構造は、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続され、
前記天井部は、前記勾配梁に沿って前記柱よりも上側から前記柱よりも下側に連続して延びる
屋根。
【請求項4】
前記勾配梁と垂直に配置される連結部材をさらに備え、
前記連結部材は、前記勾配梁の上面が前記連結部材の上面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に取り付けられる
請求項3に記載の屋根。
【請求項5】
前記勾配梁と垂直に配置される追加梁をさらに備え、
前記追加梁は、前記追加梁の下面が前記勾配梁の下面よりも下に位置するように前記柱に接続される
請求項3に記載の屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接続構造および建築物の屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根の一例として次の屋根が知られている。屋根は、柱と、柱に接続される勾配梁と、勾配梁と平行に配置される垂木とを備える。一例では、勾配梁は、金具によって柱に接続される(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の勾配梁の接続構造(以下、従来の接続構造)では、勾配梁の端面が柱の側面に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-52464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋根において繋ぎ梁は勾配梁に接続される。垂木は繋ぎ梁の上に掛けられる。このため、特許文献1に記載の接続構造によって勾配梁が柱に接続される場合、勾配梁は、垂木よりも下に位置する。したがって、このような屋根では、垂木と勾配梁とによって上下方向に厚みのある構成となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する接続構造は、勾配梁と柱とを接続する接続構造であって、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続される。この構成によれば、平面視において勾配梁が柱に交差するように勾配梁と柱とが接続されるため、勾配梁の下面が柱の上面よりも高い位置に配置される。勾配梁の下面が柱の上面よりも高い位置に配置されるため、柱の側面に接続される従来の接続構造の勾配梁よりも勾配梁を高い位置に配置できる。勾配梁の位置が高くなることによって屋根の厚みを薄くできる。このように、屋根をスリム化できる。
【0006】
(2)上記(1)に記載の接続構造において、前記金具は、前記勾配梁および前記柱に接触する本体部と、前記本体部に設けられ、前記勾配梁に形成される第1挿通孔に挿入される第1軸部と、前記本体部に設けられ、前記柱に形成される第2挿通孔に挿入される第2軸部と、を含む。
【0007】
この構成によれば、本体部によって金具が勾配梁および柱に接触でき、かつ、第1軸部と第2軸部とによって柱に対する勾配梁の移動が規制されるため、柱に対する勾配梁の位置ずれが生じ難くなる。
【0008】
(3)上記(2)に記載の接続構造において、前記本体部は、前記第1軸部が設けられ、前記勾配梁の下面に接触する傾斜部と、前記第2軸部が設けられ、前記柱の上面に接触する底部と、を含む。この構成によれば、本体部の傾斜部に勾配梁の下面が接触するように、勾配梁が金具に配置される。このため、勾配梁の取付状態が安定する。
【0009】
(4)上記(3)に記載の接続構造において、前記本体部は、前記底部から前記勾配梁に向けて延びる側部を含み、前記側部は、支持金具の軸部材が挿入可能に構成される第1支持孔を有し、前記支持金具は、梁または桁を支持可能に構成される。
【0010】
この構成によれば、梁または桁を支持可能に構成される支持金具を金具に取り付けることができるため、支持金具を柱に取り付けやすい。柱に取り付けられた支持金具によって梁または桁を支持できる。
【0011】
(5)上記(4)に記載の接続構造において、前記第2軸部は、前記支持金具の前記軸部材が挿入可能に構成される第2支持孔を有し、前記第1支持孔と前記第2支持孔とによって構成される孔の配列の第1ピッチは、前記支持金具の複数の支持金具孔の第2ピッチと等しい。
【0012】
この構成によれば、第1支持孔と第2支持孔とによって構成される孔の配列の第1ピッチが、支持金具の支持金具孔の第2ピッチと等しいため、柱に取り付けられる金具と当該柱とに亘るように支持金具を配置して、支持金具を柱および金具に固定できる。このように、柱に金具が設けられている状態において、支持金具を柱に取り付けることができる。
【0013】
(6)建築物の屋根であって、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の接続構造を備える。この構成によれば、勾配梁を従来の接続構造の勾配梁よりも高い位置に配置できるため、屋根をスリム化できる。
【0014】
(7)上記課題を解決する建築物の屋根は、建築物の屋根であって、前記屋根を支持する柱に接続構造によって接続される勾配梁と、下面が前記勾配梁の下面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に接続される繋ぎ梁と、を備え、前記接続構造は、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続される。
【0015】
この構成によれば、勾配梁の下面と繋ぎ梁の下面とが柱の上面よりも高い位置に配置されることによって、勾配梁および繋ぎ梁が、従来の接続構造の勾配梁および繋ぎ梁よりも高い位置に配置される。これによって、屋根の厚みを薄くできる。このように、屋根をスリム化できる。
【0016】
(8)上記(6)または(7)に記載の屋根において、前記勾配梁および前記繋ぎ梁の下面を覆う天井部を備え、前記天井部は、前記勾配梁に沿って前記柱よりも上側から前記柱よりも下側に連続して延びる。
【0017】
この構成によれば、勾配梁において柱よりも上側から柱よりも下側まで、天井部が連続して延びる。これによって、天井の意匠性を向上する。また、天井部が勾配梁における柱の内側から柱の外側にかけて連続するため、屋根の下の空間は、広々とした印象を与える空間になる。
【0018】
(9)上記(7)または(8)に記載の屋根において、前記勾配梁と垂直に配置される連結部材をさらに備え、前記連結部材は、前記勾配梁の上面が前記連結部材の上面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に取り付けられる。この構成によれば、勾配梁および連結部材の上面に野地板を取り付けることができる。また、このように野地板を勾配梁および連結部材に取り付けることによって、屋根の剛性を向上できる。
【0019】
(10)上記(7)から(9)のいずれか1つに記載の建築物の屋根において、前記勾配梁と垂直に配置される追加梁をさらに備え、前記追加梁は、前記追加梁の下面が前記勾配梁の下面よりも下に位置するように前記柱に接続される。この構成によれば、屋根が、繋ぎ梁とは異なるように配置される追加梁を含むことによって、屋根にスリム化できる部分とスリム化しない部分とを設けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の接続構造および建築物の屋根は、屋根をスリム化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の建築物の斜視図である。
図2図1の建築物の屋根骨格の斜視図である。
図3図2の屋根骨格の平面図である。
図4図2の4-4線に沿う、屋根の断面図である。
図5】実施形態の接続構造の平面図である。
図6】実施形態の接続構造の正面図である。
図7】金具の斜視図である。
図8】建築物の変形例の斜視図である。
図9】従来の建築物の屋根骨格の斜視図である。
図10図9の10-10線に沿う、屋根の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
図1から図7図9、および図10を参照して、実施形態に係る接続構造20および建築物2の屋根1を説明する。
【0023】
<建築物>
図1を参照して、建築物2を説明する。図1に示されるように、建築物2は、屋根1を含む。建築物2は、ピロティ空間PSを有するピロティ3を備える。ピロティ空間PSは、屋根1の下に設けられる。ピロティ空間PSは、建築物2の室外に設けられる。ピロティ3は、ベランダ、テラス、バルコニー、または、玄関ポーチとして構成されてもよい。ピロティ3の用途は、これらの例に限定されない。
【0024】
一例では、ピロティ空間PSは、第1ピロティ空間PS1と第2ピロティ空間PS2とを含む。第1ピロティ空間PS1は、平面視において、第1柱4A、第2柱4B、第3柱4Cおよび第4柱4Dによって囲まれる空間である。平面視において、第3柱4Cと第4柱4Dとは、第3柱4Cと第4柱4Dとを結ぶ線が第1柱4Aと第2柱4Bとを結ぶ線に平行となるように配置される。第2ピロティ空間PS2は、平面視において、第1柱4Aおよび第2柱4Bに対する第1ピロティ空間PS1の位置よりも第1柱4Aおよび第2柱4Bから遠い位置にある。第3柱4Cと第4柱4Dとを結ぶ線によって、ピロティ空間PSが、第1ピロティ空間PS1と第2ピロティ空間PS2とに区分けされる。
【0025】
<屋根>
図2図3、および図4を参照して、建築物2の屋根1の構成を説明する。図4は、図2の4-4線に沿う屋根1の断面図であり、屋根材の記載は省略されている。屋根1は、傾斜するように建築物2に配置される。屋根1は、第1柱4A、第2柱4B、第3柱4C、および第4柱4Dによって支持される。第1柱4A、第2柱4B、第3柱4C、および第4柱4Dは、例えば、木材によって構成される。第1柱4Aおよび第2柱4Bは、屋根1の傾斜に関して上側に配置される。第3柱4Cおよび第4柱4Dは、屋根1の傾斜に関して第1柱4Aおよび第2柱4Bよりも下側に配置される。
【0026】
屋根1は、勾配梁6と、繋ぎ梁7と、を備える。勾配梁6および繋ぎ梁7は、例えば、木材によって構成される。勾配梁6の下側部分は、第3柱4Cまたは第4柱4Dによって支持される。勾配梁6の上側部分は、水平梁8または柱によって支持される。本実施形態では、勾配梁6は、柱5に接続構造20によって接続される。勾配梁6は、平面視におい
て柱5の上面5A付近を通って柱5に交差するように配置される。勾配梁6は、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置するように柱5に接続される。柱5は、第3柱4Cまたは第4柱4Dを含む。具体的には、勾配梁6の下側部分は、第3柱4Cまたは第4柱4Dに接続構造20によって接続される。勾配梁6の下側部分が第3柱4Cまたは第4柱4Dの上に配置されるように、勾配梁6は、第3柱4Cまたは第4柱4Dに交差する。
【0027】
繋ぎ梁7は、平行に配置される2個の勾配梁6の間に配置されて、2個の勾配梁6を繋ぐ。2個の勾配梁6は、1または複数の繋ぎ梁7によって連結される。繋ぎ梁7の端面は、勾配梁6の側面に接触する。一例では、繋ぎ梁7の端部は、L型アングルによって勾配梁6に固定される。平面視において、繋ぎ梁7は、勾配梁6と垂直に配置される。繋ぎ梁7は、繋ぎ梁7の下面7Bが勾配梁6の下面6Bと同じ高さに位置するように勾配梁6に接続される。繋ぎ梁7の上面7Aから下面7Bまでの寸法は、勾配梁6の上面6Aから下面6Bまでの寸法と等しくてもよい。この場合、繋ぎ梁7は、繋ぎ梁7の上面7Aが勾配梁6の上面6Aと面一となるように、勾配梁6に接続される。少なくとも1つの繋ぎ梁7は、平面視において、第3柱4Cと第4柱4Dとの間に配置される。
【0028】
屋根1は、水平梁8を備える。水平梁8は、例えば、木材によって構成される。平面視において、水平梁8は、勾配梁6と垂直に配置される。水平梁8は、上述のように勾配梁6の上側部分を支持する。勾配梁6は、水平梁8に接続される。勾配梁6は、第1方向D1から見て、水平梁8から柱5に向けて斜め下に延びるように配置される。第1方向D1は、水平梁8に沿う方向である。水平梁8は、第1柱4Aと第2柱4Bとを接続するように配置される。屋根1が切妻屋根構造を有する場合の一例では、水平梁8は、図1の建築物2の棟木2Aに対応する。屋根1が下屋として構成される場合の一例では、水平梁8は、屋根1と建築物2の外壁との接続箇所に配置される梁または桁に対応する。
【0029】
屋根1は、連結部材9をさらに備える。連結部材9は、平行に配置される2個の勾配梁6の間に配置されて、2個の勾配梁6を繋ぐ。2個の勾配梁6は、1または複数の連結部材9によって連結される。水平方向における連結部材9の幅寸法は、水平方向における繋ぎ梁7の幅寸法よりも小さい。連結部材9は、例えば、木材によって構成される。平面視において、連結部材9は、勾配梁6と垂直に配置される。連結部材9は、勾配梁6の上面6Aが連結部材9の上面9Aと同じ高さに位置するように勾配梁6に取り付けられる。図4に示されるように、勾配梁6の上面6Aと連結部材9の上面9Aとは、仮想線Rに一致する。仮想線Rは、野地板10が配置される線である。連結部材9は、連結部材9の下面9Bが勾配梁6の下面6Bよりも上に位置するように勾配梁6に取り付けられる。または、連結部材9は、連結部材9の下面9Bが勾配梁6の下面6Bと同じ高さになるように勾配梁6に取り付けられてもよい。この場合、連結部材9の下面9Bは、勾配梁6の下面6Bと面一になる。
【0030】
連結部材9は、第1連結部材9Xと第2連結部材9Yとを含む。第1連結部材9Xは、第1ピロティ空間PS1の上に配置される。第2連結部材9Yは、第2ピロティ空間PS2の上に配置される。第2連結部材9Yによって、屋根1の軒先部分の強度が向上する。連結部材9は、屋根下地の一部を構成する。
【0031】
屋根1は、野地板10を備えてもよい。野地板10は、勾配梁6の上面6Aおよび連結部材9の上面9Aに取り付けられる。野地板10の上面には、屋根材が取り付けられる。野地板10は、勾配梁6の上面6Aおよび連結部材9の上面9Aに加えて、繋ぎ梁7の上面7Aにも取り付けられてもよい。
【0032】
屋根1は、天井部11を備える。天井部11は、勾配梁6および繋ぎ梁7の下面7Bを
覆う。天井部11は天井部材によって構成される。天井部材は、例えば、化粧板を含む。天井部材が第1基準線R1に沿うように勾配梁6の下面6Bに取り付けられることによって、屋根1の下面にピロティ空間PSの天井が構成される。第1基準線R1は、勾配梁6の下面6Bに応じて設定される。天井部11は、勾配梁6に沿って柱5より上側から柱5よりも下側に連続して延びる。天井部11において柱5よりも上側の第1部分11Aは、第1ピロティ空間PS1の天井を構成する。天井部11において柱5よりも下側の第2部分11Bは、第2ピロティ空間PS2の天井を構成する。天井部11は、第1ピロティ空間PS1の天井と第2ピロティ空間PS2の天井とが面一で繋がるように構成される。
【0033】
一例では、天井部11は、第1部分11Aと第2部分11Bとを含む。第1部分11Aは、天井部11のうち、勾配梁6に沿う方向において柱5よりも上側に位置する部分である。第1部分11Aは、第1ピロティ空間PS1に配置される。第2部分11Bは、天井部11のうち、勾配梁6に沿う方向において柱5よりも下側に位置する部分である。第2部分11Bは、第2ピロティ空間PS2に配置される。第1部分11Aおよび第2部分11Bは、第1方向D1から見て段差が発生しないように、連続して配置される。
【0034】
屋根1は、ピロティ空間PSの上に配置される第1屋根部分1Aに加えて、さらに、室内空間の上に配置される第2屋根部分1Bを含んでもよい。第1屋根部分1Aと第2屋根部分1Bとの境界は、勾配梁6によって支持される。
【0035】
このような屋根1の場合、屋根1は、追加梁12をさらに備える。追加梁12は、第2屋根部分1Bの軒先付近を支持する。追加梁12は、第2屋根部分1Bを支持する複数の柱に接続される。追加梁12は、第3柱4Cと第4柱4Dとの間に配置される繋ぎ梁7の延長線上に配置される。具体的には、追加梁12は、繋ぎ梁7の長手方向において繋ぎ梁7に連続するように配置される。追加梁12の長手方向は、繋ぎ梁7の長手方向に一致する。繋ぎ梁7と追加梁12との間には勾配梁6が配置される。平面視において、追加梁12は、勾配梁6と垂直に配置される。追加梁12は、追加梁12の下面12Bが勾配梁6の下面6Bよりも下に位置するように柱5に接続される。追加梁12の上面12Aは、勾配梁6の上面6Aよりも下に位置する。追加梁12の下面12Bは、柱5の上面5Aよりも下に位置する。追加梁12は、支持金具13によって柱5に接続される。
【0036】
図5および図6のように、支持金具13は、柱5に接触するように配置される梁または桁を支持可能に構成される。本実施形態では、追加梁12が支持金具13によって支持される。支持金具13は、支持金具本体部13Aと、追加梁12のスリット12Xに挿入される挿入部13Bとを有する。挿入部13Bは、支持金具本体部13Aに直交するように延びる。支持金具本体部13Aは、柱5の側面に接触する。支持金具本体部13Aには、軸部材14が挿通する複数の支持金具孔13Cが設けられる。複数の支持金具孔13Cは、第2ピッチP2の間隔で支持金具本体部13Aに設けられる。
【0037】
支持金具13は、軸部材14を含む。軸部材14は、ボルトおよびナットを含む。支持金具13は、軸部材14によって柱5に固定される。軸部材14は、それぞれ平行に配置される第1軸部材15と、第2軸部材16と、第3軸部材17とを含む。第1軸部材15、第2軸部材16および第3軸部材17は、柱5に沿うように並ぶ。
【0038】
本実施形態の建築物2の屋根1の作用を説明する。
図9および図10は、従来の屋根50の屋根骨格を示す。図10に示されるように、従来の屋根50では、柱53の上端部の側面に勾配梁52が接続される。また、柱53の上端部の側面に梁55が接続される。垂木54は、このように柱53に接続された梁55の上に載せられる。このため、垂木54は、勾配梁52よりも上に位置する。このように、従来の屋根50では、上下方向において勾配梁52の位置と垂木54の位置とが大きくず
れている。このため、従来の屋根50は、第4方向D4から見て、上下方向に厚みのある構成となる。第4方向D4は、図2の第1方向D1に対応する方向である。これに対して、本実施形態の屋根1では、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される。このため、第1方向D1から見て、勾配梁6が、従来の接続構造の勾配梁52よりも高い位置に配置される。勾配梁6が高い位置に配置されるため、屋根1の厚みを小さくできる。具体的には、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置するように、勾配梁6は、平面視において柱5に交差する。このため、繋ぎ梁7は、2個の勾配梁6の間に配置できる。また、垂木54に替わって野地板10を支持する連結部材9は、2個の勾配梁6の間に配置できる。このように、平面視において勾配梁6が柱5に交差する構造によって、屋根1の屋根骨格を構成する部材を、第1方向D1から見て、同じ高さに配置できるようになる。これによって、屋根1をスリム化できる。
【0039】
本実施形態の他の作用を説明する。
従来の建築物51において屋根50付近の梁55は、梁55の下面が勾配梁52の下面よりも下に位置するように柱53に接続される。このため、従来の屋根50において天井部56を勾配梁52の下面に合わせて設定する場合、図10のように梁55の位置で、天井部56が連続しない構成となる。これに対して、本実施形態の屋根1は、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される。このため、勾配梁6は、第1ピロティ空間PS1から第2ピロティ空間PS2まで連続するように配置される。繋ぎ梁7が勾配梁6に接続され、かつ、繋ぎ梁7の下面7Bが勾配梁6の下面6Bと面一となるように、繋ぎ梁7が配置されてもよい。このような構成によれば、屋根1の天井部11は、従来の屋根50の天井部56よりも高い位置に配される。また、天井部11を、第1ピロティ空間PS1から第2ピロティ空間PS2まで連続するように配置できるため、天井の意匠性が向上する。
【0040】
<接続構造>
図2から図5を参照して、屋根1が備える接続構造20を説明する。接続構造20は、勾配梁6と柱5とを接続する構造を含む。
【0041】
図4および図5に示されるように、接続構造20は、金具21によって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される第1構造を含む。第1構造は、勾配梁6の下側部分と柱5とを接続する。接続構造20によって、勾配梁6は、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置するように柱5に交差する。勾配梁6は、金具21によって、勾配梁6の下面6Bが所定間隔を空けて柱5の上面5Aから離隔するように、柱5に接続される。
【0042】
接続構造20は、垂直材に対して勾配梁6が勝つように構成される構造である。接続構造20は、垂直材の一例である柱5に対して勾配梁6が勝つように構成される構造である。具体的には、接続構造20は、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置するように勾配梁6が柱5に交差する状態で、勾配梁6を柱5に接続する。接続構造20は、平面視において横架材に勾配梁6が交差するように構成される構造であってもよい。この場合、勾配梁6は、勾配梁6の下面6Bが横架材の上面よりも上に位置するように横架材に交差する。
【0043】
勾配梁6は、接続構造20によって、勾配梁6に沿って柱5よりも上側から柱5よりも下側に連続して延びるように配置される。勾配梁6は、接続構造20によって、第1ピロティ空間PS1の上に位置する空間から、第2ピロティ空間PS2の上に位置する空間まで連続して延びるように配置される。
【0044】
図4に示されるように、接続構造20によって、勾配梁6は、柱5に対して上にオフセ
ットされる。勾配梁6が上にオフセットされることによって、第1方向D1から見て、勾配梁6は、第2基準線R2が勾配梁6の上面6Aと下面6Bとの間を通過するように配置される。第2基準線R2は連結部材9の下面9Bに沿う線である。
【0045】
接続構造20は、追加金具22によって勾配梁6と水平梁8とが接続される第2構造を含んでもよい。第2構造は、勾配梁6の上側部分と水平梁8とを接続する。追加金具22は、勾配梁6の上端部の端面6Cに接触する。追加金具22によって、第1方向D1から見て、勾配梁6の端面6Cの下側が水平梁8の上面よりも下に位置するように、勾配梁6と水平梁8とが接続される。追加金具22によって、第1方向D1から見て、勾配梁6の端面6Cの下側が、水平梁8の側面に対向する。追加金具22は、勾配梁6の端面6Cと、第1柱4Aの上面または第2柱4Bの上面とを、接続するように構成されてもよい。
【0046】
本実施形態の接続構造20の作用を説明する。
本実施形態の屋根1は、接続構造20によって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続されるため、勾配梁6が、従来の接続構造の勾配梁52よりも高い位置に配置される。これによって、天井部11を、より高い位置に配置できるため、従来の屋根50よりも屋根1の意匠性を向上できる。
【0047】
<金具>
図4から図7を参照して、接続構造20を実現するための金具21を説明する。金具21は、勾配梁6の下面6Bと柱5の上面5Aとの間に配置されることによって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とを接続する。
【0048】
図7に示されるように、金具21は、本体部23と、第1軸部24と、第2軸部25と、を含む。本体部23、第1軸部24および第2軸部25は、鉄、ステンレス鋼等によって構成される。本体部23は、勾配梁6および柱5に接触する。第1軸部24は、本体部23に設けられる。第2軸部25は、本体部23に設けられる。
【0049】
第1軸部24は、勾配梁6に形成される第1挿通孔6Dに挿入される。第1軸部24が勾配梁6の第1挿通孔6Dに挿入されることによって、金具21に対する第1軸部24に垂直な方向への勾配梁6の移動が規制される。第2軸部25は、柱5に形成される第2挿通孔5Bに挿入される。第2軸部25が柱5の第2挿通孔5Bに挿入されることによって、柱5に対する第2軸部25に垂直な方向への金具21の移動が規制される。第1軸部24および第2軸部25は、本体部23から取り外し可能に構成されてもよい。第1軸部24および第2軸部25は、本体部23と一体に形成されてもよい。
【0050】
第1軸部24は、第1貫通孔26を含む。第1貫通孔26は、第2方向D2に延びるように、第1軸部24に形成される。第2方向D2は、第1軸部24および第2軸部25に垂直な方向である。勾配梁6と柱5とが接続された状態において、第2方向D2は、第1方向D1に一致する。第1軸部24の第1貫通孔26は、第1軸部24が勾配梁6の第1挿通孔6Dに挿入された状態において、第1支持ピン26Aが挿通可能に構成される。第1支持ピン26Aは、例えばドリフトピンである。第1軸部24が勾配梁6の第1挿通孔6Dに挿入された状態において、第1支持ピン26Aが勾配梁6の貫通孔および第1貫通孔26に挿通することによって、金具21が勾配梁6に強固に取り付けられる。第1支持ピン26Aが、勾配梁6の貫通孔および第1軸部24の第1貫通孔26に挿通することによって、金具21に対する第1軸部24に平行な方向への勾配梁6の移動が規制される。
【0051】
第2軸部25は、第2貫通孔27を含む。第2貫通孔27は、第3方向D3に延びるように、第2軸部25に形成される。第3方向D3は、勾配梁6と柱5とが接続された状態における平面視において、勾配梁6に平行な方向である。第3方向D3は、第2方向D2
に直交する方向である。第2貫通孔27は、第2軸部25の軸方向に直交するように延びる。第2貫通孔27は、第2軸部25が柱5の第2挿通孔5Bに挿入された状態において、第2支持ピン27Aが挿通可能に構成される。第2支持ピン27Aは、例えばドリフトピンである。第2軸部25が柱5の第2挿通孔5Bに挿入された状態において、第2支持ピン27Aが柱5の貫通孔および第2軸部25の第2貫通孔27を挿通することによって、第2軸部25が柱5に強固に取り付けられる。第2支持ピン27Aが、柱5の貫通孔および第2軸部25の第2貫通孔27に挿通することによって、柱5に対する第2軸部25に平行な方向への金具21の移動が規制される。
【0052】
本体部23は、傾斜部28と、底部29と、を含む。傾斜部28および底部29は、例えば、それぞれ板状部材によって形成される。傾斜部28および底部29が溶接等によって互いに接合されることによって、本体部23が形成される。傾斜部28および底部29は、1枚の板状部材が折り曲げられることによって形成されてもよい。
【0053】
傾斜部28は、勾配梁6の下面6Bに接触する。傾斜部28は、第1接続面30を含む。第1接続面30は、勾配梁6と柱5とが接続された状態において、勾配梁6の下面6Bに沿うように形成される。第1接続面30は、勾配梁6と柱5とが接続された状態において勾配梁6の下面6Bに接触する。傾斜部28には、第1軸部24が設けられる。第1軸部24は、第1接続面30に対して垂直に交わるように傾斜部28に設けられる。
【0054】
底部29は、柱5の上面5Aに接触する。底部29は、第2接続面31を含む。第2接続面31は、勾配梁6と柱5とが接続された状態において、柱5の上面5Aに沿うように形成される。第2接続面31は、勾配梁6と柱5とが接続された状態において柱5の上面5Aに接触する。底部29には、第2軸部25が設けられる。第2軸部25は、第2接続面31に対して垂直に交わるように底部29に設けられる。
【0055】
本体部23は、接続部32を含む。接続部32は、傾斜部28から底部29に向けて延びるように、傾斜部28の端部が曲げ加工されることによって形成される。接続部32の端部は、底部29に接続する。
【0056】
本体部23は、側部33を含む。側部33は、底部29から勾配梁6に向けて延びる。側部33は、勾配梁6と柱5とが接続された状態において柱5の上面5Aから勾配梁6に向けて延びるように形成される。側部33は、底部29から傾斜部28に向けて延びるように、底部29の端部が曲げ加工されることによって形成される。側部33の上端部は、傾斜部28に接続する。
【0057】
側部33は、第1支持孔34を有する。側部33は、第2方向D2に垂直に延びる第1側面33Aおよび第2側面33Bを含む。第1支持孔34は、第1側面33Aおよび第2側面33Bの両方に形成される。第1側面33Aに設けられる第1支持孔34と第2側面33Bに設けられる第1支持孔34とは共通の中心線C1を有する。2個の第1支持孔34は、中心線C1が第2方向D2に沿うように構成される。また、2個の第1支持孔34は、第2軸部25の軸方向から見て、中心線C1が後述の中心線C2,C3に重なるように配置される。第1支持孔34は、支持金具13の軸部材14が挿入可能に構成される。本実施形態では、第1支持孔34には、第1軸部材15が挿入される。
【0058】
第2軸部25は、第2貫通孔27に加えて、さらに、第2支持孔35を有してもよい。第2支持孔35は、第2方向D2に延びるように、第2軸部25に形成される。第2支持孔35は、第3支持孔35Aと第4支持孔35Bとを含む。第3支持孔35Aおよび第4支持孔35Bは、第2軸部25の軸方向に離れて第2軸部25に形成される。第2支持孔35は、軸部材14が挿入可能に構成される。本実施形態では、第2支持孔35のうち第
3支持孔35Aに、軸部材14の第2軸部材16が挿入され、第2支持孔35のうち第4支持孔35Bに、軸部材14の第3軸部材17が挿入される。
【0059】
第1支持孔34と第2支持孔35とによって構成される孔の配列の第1ピッチP1は、支持金具13の複数の支持金具孔13Cの第2ピッチP2と等しい。第1ピッチP1は第1支持孔34の中心線C1から、第2支持孔35のうち第3支持孔35Aの中心線C2までの距離である。また、第1ピッチP1は、第3支持孔35Aの中心線C2から第4支持孔35Bの中心線C3までの距離でもある。第2ピッチP2は、支持金具13における2個の支持金具孔13Cの中心線間の距離である。
【0060】
第2支持孔35は、第2軸部25の軸方向において第2貫通孔27に重ならないように、第2軸部25に形成される。勾配梁6と柱5とが接続された状態において、第2軸部25の軸方向において軸部材14と第2支持ピン27Aとは、軸方向に離隔してそれぞれ配置される。第2貫通孔27は、第2軸部25の軸方向において第3支持孔35Aおよび第4支持孔35Bの間に形成される。
【0061】
本実施形態の金具21の作用を説明する。
金具21が勾配梁6の下面6Bと柱5の上面5Aとの間に配置されるため、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように、勾配梁6を柱5に接続できる。勾配梁6は、平面視において柱5に交差するように、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置する。金具21によって勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも上に位置するため、勾配梁6の下面6Bは、従来の接続構造の勾配梁52よりも高い位置に配置できる。
【0062】
金具21によって勾配梁6の下面6Bと柱5の上面5Aとが接続されるため、接続構造20では、屋根1の傾斜に沿って柱5よりも上側から柱5よりも下側に連続して延びるように、勾配梁6が配置される。金具21によって勾配梁6の下面6Bと柱5の上面5Aとが接続されるため、勾配梁6の下面6Bには、柱5の上面5Aに対応する段差が形成されない。このため、第1ピロティ空間PS1の上に位置する勾配梁6の下面6Bと、第2ピロティ空間PS2の上に位置する勾配梁6の下面6Bとが連続するように、勾配梁6を配置できる。
【0063】
傾斜部28を有する金具21によって勾配梁6の下面6Bと柱5の上面5Aとが接続される。勾配梁6の下面6Bには、勾配梁6を柱5と係合するための切欠段差が設けられていない。すなわち、勾配梁6の下面6Bは、連続した傾斜面に構成される。このような接続構造20によれば、勾配梁6の下面6Bに、他の部材と係合する切欠段差等の加工を行う必要がないため、勾配梁6の製造効率の向上を図ることができる。
【0064】
また、勾配梁6の下面6Bが連続した傾斜面であるという構成によって、次の効果がある。勾配梁6の下面6Bに切欠段差がある場合では、切欠段差と他の部材とを係合する位置に勾配梁6の位置が定められるため、長手方向における勾配梁6の位置調整が行い難い。このため切欠段差と係合する他の部材(例えば、柱5)の係合部位の配置によっては、複数の勾配梁6について、勾配梁6の下端の位置がばらつき易くなる。この点、接続構造20では勾配梁6の下面6Bが切欠段差を有しないため、切欠段差と係合する他の部材の係合部位の配置によらずに長手方向における勾配梁6の位置調整が行い易い。このため、複数の勾配梁6について、勾配梁6の下端の位置を揃え易くなる。複数の勾配梁6の下端の位置を揃えやすいため、屋根1の軒先において、複数の勾配梁6の下端にわたるように配置される部材を配置し易くできる。
【0065】
第2軸部25において、第2支持孔35が第2方向D2に延びるように形成され、かつ、第2貫通孔27が第2方向D2に直交する第3方向D3に延びるように形成される。そ
して、第2貫通孔27は、第2軸部25の軸方向において、第2支持孔35と異なる位置に設けられる。このため、勾配梁6と柱5とが接続された状態において軸部材14と第2支持ピン27Aとが干渉しにくい。また、支持金具13と金具21とは、柱5において異なる側面に配置される。そして、勾配梁6と柱5とが接続された状態において軸部材14と第2支持ピン27Aとは柱5の異なる側面から挿入される。このため、追加梁12を支持金具13によって柱5に接続できる。追加梁12は、繋ぎ梁であってもよい。
【0066】
本実施形態の効果を説明する。
(1)勾配梁6と柱5とを接続する接続構造20において、金具21によって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される。
【0067】
この構成によれば、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続されるため、勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも高い位置に配置される。勾配梁6の下面6Bが柱5の上面5Aよりも高い位置に配置されるため、柱53の側面に接続される従来の接続構造の勾配梁52よりも勾配梁6を高い位置に配置できる。したがって、屋根1の厚みが薄くできる。このように、屋根1をスリム化できる。
【0068】
(2)金具21は、勾配梁6および柱5に接触する本体部23と、本体部23に設けられ、勾配梁6に形成される第1挿通孔6Dに挿入される第1軸部24と、本体部23に設けられ、柱5に形成される第2挿通孔5Bに挿入される第2軸部25と、を含む。
【0069】
この構成によれば、本体部23によって金具21が勾配梁6および柱5に接触でき、かつ、第1軸部24と第2軸部25とによって柱5に対する勾配梁6の移動が規制されるため、柱5に対する勾配梁6の位置ずれが生じ難くなる。
【0070】
(3)本体部23は、第1軸部24が設けられ、勾配梁6の下面6Bに接触する傾斜部28と、第2軸部25が設けられ、柱5の上面5Aに接触する底部29と、を含む。この構成によれば、本体部23の傾斜部28に勾配梁6の下面6Bが接触するように、勾配梁6が金具21に配置される。このため、勾配梁6の取付状態が安定する。
【0071】
(4)本体部23は、底部29から勾配梁6に向けて延びる側部33を含む。側部33は、支持金具13の軸部材14が挿入可能に構成される第1支持孔34を有する。支持金具13は、柱5に接触するように配置される梁または桁を支持可能に構成される。
【0072】
この構成によれば、梁または桁を支持可能に構成される支持金具13を金具21に取り付けることができるため、支持金具13を柱5に取り付けやすい。柱5に取り付けられた支持金具13によって梁または桁を支持できる。
【0073】
(5)第2軸部25は、支持金具13の軸部材14が挿入可能に構成される第2支持孔35を有する。第1支持孔34と第2支持孔35とによって構成される孔の第1ピッチP1は、支持金具13の複数の支持金具孔13Cの第2ピッチP2と等しい。この構成によれば、第1支持孔34と第2支持孔35とによって構成される孔の配列の第1ピッチP1が、支持金具13の支持金具孔13Cの第2ピッチP2と等しい。このため、柱5に取り付けられる金具21と当該柱5とに亘るように支持金具13を配置して、支持金具13を柱5および金具21に固定できる。このように、柱5に金具21が設けられている状態において、支持金具13を柱5に取り付けることができる。
【0074】
(6)建築物2の屋根1であって、接続構造20を備える。この構成によれば、勾配梁6が従来の屋根50よりも高い位置に配置されるため、従来の屋根1よりも、屋根1の厚みを薄くできる。このように、屋根1をスリム化できる。
【0075】
(7)建築物2の屋根1であって、屋根1を支持する柱5に接続構造20によって接続される勾配梁6と、繋ぎ梁7の下面7Bが勾配梁6の下面6Bと同じ高さに位置するように勾配梁6に接続される繋ぎ梁7と、を備える。接続構造20は、金具21によって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される。
【0076】
この構成によれば、勾配梁6の下面6Bと繋ぎ梁7の下面7Bとが柱5の上面5Aよりも高い位置に配置されることによって、勾配梁6および繋ぎ梁7が、従来の接続構造の勾配梁52および繋ぎ梁57よりも高い位置に配置される。これによって、屋根1の厚みを薄くできる。このように、屋根1をスリム化できる。
【0077】
(8)勾配梁6および繋ぎ梁7の下面7Bを覆う天井部11を備える。天井部11は、勾配梁6に沿って柱5よりも上側から、前記勾配梁に沿って柱5よりも下側に連続して延びる。この構成によれば、繋ぎ梁7の下面7Bが勾配梁6の下面6Bと同じ高さに位置するため、勾配梁6において柱5よりも上側から柱5よりも下側まで、天井が連続して延びる。これによって、天井の意匠性を向上する。また、天井部11が、勾配梁6における柱5の内側から柱5の外側にかけて連続するため、屋根1の下の空間は、広々とした印象を与える空間になる。
【0078】
(9)勾配梁6と垂直に配置される連結部材9をさらに備え、連結部材9は、勾配梁6の上面6Aが連結部材9の上面9Aと同じ高さに位置するように勾配梁6に取り付けられる。この構成によれば、勾配梁6および連結部材9の上面9Aに野地板10を取り付けることができる。また、このように野地板10を勾配梁6および連結部材9に取り付けることによって、屋根1の剛性を向上できる。
【0079】
(10)勾配梁6と垂直に配置される追加梁12をさらに備え、追加梁12は、追加梁12の下面12Bが勾配梁6の下面6Bよりも下に位置するように柱5に接続される。この構成によれば、屋根1が、繋ぎ梁7とは異なるように配置される追加梁を含むことによって、スリム化できる部分とスリム化しない部分とを設けることができる。
【0080】
<変形例>
上記実施形態は、接続構造20および建築物2の屋根1が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。接続構造20および建築物2の屋根1は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例を示す。
【0081】
(1)図8を参照して建築物2の屋根1の変形例を説明する。屋根1の下に、図1のピロティ空間PSが設けられなくてもよい。屋根1は、例えば、建築物2の室内から室外に掛けて配置される。この例では、第3柱4Cから第4柱4Dにかけて、繋ぎ梁7の下に外壁40が設けられる。外壁40には、窓41が配置される。窓41は、引違い窓、外開き窓等、任意に選択できる。
【0082】
従来の接続構造を有する建築物2では、外壁40の上部に梁55が架けられているため、窓41の上辺の高さは、梁55の下面の高さよりも低くなる。本変形例では、実施形態と同様に繋ぎ梁7の下面7Bが勾配梁6の下面6Bと同じ高さに位置するように繋ぎ梁7が配置される。このため、繋ぎ梁7の下面7Bが従来の接続構造の屋根50よりも高い位置に配置される。したがって、窓41の上辺を高い位置に配置できる。これによって、窓41が大きくなるため、建築物2の意匠性が向上する。
【0083】
(2)金具21の本体部23は、第1軸部24と第2軸部25とを保持する構造を有していれば、本体部23の形状は限定されない。本体部23は、例えば側部33を含まなくてもよい。
【0084】
(3)接続構造20は、金具21によって、平面視において勾配梁6が柱5に交差するように勾配梁6と柱5とが接続される構造を有していれば、その構造は限定されない。例えば、接続構造20は、追加金具22によらず勾配梁6と水平梁8とが直接に接続される構造を有してもよい。
【0085】
本明細書には以下の技術が開示される。
[付記1]
勾配梁と柱とを接続する接続構造であって、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続される接続構造。
【0086】
[付記2]
前記金具は、前記勾配梁および前記柱に接触する本体部と、前記本体部に設けられ、前記勾配梁に形成される第1挿通孔に挿入される第1軸部と、前記本体部に設けられ、前記柱に形成される第2挿通孔に挿入される第2軸部と、を含む付記1に記載の接続構造。
【0087】
[付記3]
前記本体部は、
前記第1軸部が設けられ、前記勾配梁の下面に接触する傾斜部と、前記第2軸部が設けられ、前記柱の上面に接触する底部と、を含む付記2に記載の接続構造。
【0088】
[付記4]
前記本体部は、
前記底部から前記勾配梁に向けて延びる側部を含み、前記側部は、支持金具の軸部材が挿入可能に構成される第1支持孔を有し、前記支持金具は、梁または桁を支持可能に構成される付記3に記載の接続構造。
【0089】
[付記5]
前記第2軸部は、前記支持金具の前記軸部材が挿入可能に構成される第2支持孔を有し、前記第1支持孔と前記第2支持孔とによって構成される孔の配列の第1ピッチは、前記支持金具の複数の支持金具孔の第2ピッチと等しい付記4に記載の接続構造。
【0090】
[付記6]
建築物の屋根であって、付記1から5のいずれか一項に記載の接続構造を備える屋根。
【0091】
[付記7]
建築物の屋根であって、前記屋根を支持する柱に接続構造によって接続される勾配梁と、下面が前記勾配梁の下面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に接続される繋ぎ梁と、を備え、前記接続構造は、前記勾配梁の下面と前記柱の上面との間に配置される金具によって、平面視において前記勾配梁が前記柱に交差するように前記勾配梁と前記柱とが接続される屋根。
【0092】
[付記8]
前記勾配梁および前記繋ぎ梁の下面を覆う天井部を備え、前記天井部は、前記勾配梁に沿って前記柱よりも上側から前記柱よりも下側に連続して延びる付記6または7に記載の屋根。
【0093】
[付記9]
前記勾配梁と垂直に配置される連結部材をさらに備え、前記連結部材は、前記勾配梁の上面が前記連結部材の上面と同じ高さに位置するように前記勾配梁に取り付けられる付記7または8に記載の屋根。
【0094】
[付記10]
前記勾配梁と垂直に配置される追加梁をさらに備え、前記追加梁は、前記追加梁の下面が前記勾配梁の下面よりも下に位置するように前記柱に接続される付記7から9のいずれか一項に記載の屋根。
【符号の説明】
【0095】
1…屋根、2…建築物、5…柱、6…勾配梁、7…繋ぎ梁、9…連結部材、11…天井部、12…追加梁、13…支持金具、14…軸部材、20…接続構造、21…金具、23…本体部、24…第1軸部、25…第2軸部、28…傾斜部、29…底部、33…側部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10