(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車載配線システム、光カプラおよび車載配線システムの構築方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B60R16/02 620P
(21)【出願番号】P 2022517546
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021010966
(87)【国際公開番号】W WO2021220654
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020078326
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139387
【氏名又は名称】森田 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100157794
【氏名又は名称】荻野 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155527
【氏名又は名称】奥谷 優
(74)【代理人】
【識別番号】100157761
【氏名又は名称】緒方 大介
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄鋭
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 進
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-052340(JP,A)
【文献】特開2011-233953(JP,A)
【文献】特開平06-137875(JP,A)
【文献】実開平05-064005(JP,U)
【文献】実開平03-098168(JP,U)
【文献】特開平11-227546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0065683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G02B 6/00 - 6/54
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数の機能部間に配線され、前記機能部の光信号を伝送する光伝送路と、
前記光伝送路の一部の区間において、前記光伝送路と一体となった状態で前記光伝送路と併設される電気用ワイヤハーネスと、
前記区間以外の前記光伝送路に配置され、前記光伝送路の一部を構成する光カプラとを備える、車載配線システム。
【請求項2】
前記光カプラは、前記
車両に搭載される窓ガラスに配置される、請求項1に記載の車載配線システム。
【請求項3】
前記窓ガラスは、複数の層を有する複層ガラスで構成され、
前記光カプラは、前記層間に配置される、請求項2に記載の車載配線システム。
【請求項4】
前記光カプラは、前記窓ガラスの外周に沿って配置される、請求項2に記載の車載配線システム。
【請求項5】
前記光カプラは、前記
車両に搭載されるミラーに配置される、請求項1に記載の車載配線システム。
【請求項6】
前記光カプラは、前記
車両に搭載される車内用の照明器具に配置される、請求項1に記載の車載配線システム。
【請求項7】
前記照明器具は、前記車両の操縦室内に配置可能に構成され、
前記光カプラは、前記照明器具のカバーに配置される、請求項6に記載の車載配線システム。
【請求項8】
前記光カプラは、前記
車両に搭載されるルーフパネルと前記
車両の天井内張りとの間に配置される、請求項1に記載の車載配線システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車載配線システムに用いられ、
前記車載配線システムに含まれる前記光伝送路の一部を構成し、
前記電気用ワイヤハーネスよりも厚みが小さい、光カプラ。
【請求項10】
光伝送路と、電気用ワイヤハーネスと、光カプラとを準備するステップと、
車両に搭載される機能部の光信号を伝送するように
、前記車両に搭載される複数の機能部間に前記光伝送路を配線するステップと、
前記光伝送路の一部の区間において、前記光伝送路と一体となった状態で前記光伝送路と併設されるように前記電気用ワイヤハーネスを配線するステップと、
前記区間以外の前記光伝送路に前記光カプラを配置し、前記光カプラを前記光伝送路の一部とするステップとを含む、車載配線システムの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載配線システム、光カプラおよび車載配線システムの構築方法に関する。
この出願は、2020年4月27日に出願された日本出願特願2020-78326号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、以下のような車載配線システムが開示されている。すなわち、車載配線システムは、車両に搭載される車載配線システムであって、マスタ機能部と、複数のスレーブ機能部とを備え、前記複数のスレーブ機能部は、少なくとも共通の光ファイバを介して、上り通信信号を前記マスタ機能部へ送信可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の車載配線システムは、車両に搭載される複数の機能部と、前記機能部間に配線され、前記機能部の光信号を伝送する光伝送路と、前記光伝送路の一部の区間において、前記光伝送路と一体となった状態で前記光伝送路と併設される電気用ワイヤハーネスと、前記区間以外の前記光伝送路に配置され、前記光伝送路を構成する光カプラとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載配線システムにおける光ファイバケーブルの構成の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る光コネクタおよび光カプラの一例を示す正面図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る光カプラおよび車両の窓の断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第2の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の第2の実施の形態の変形例に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第3の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従来、車両におけるデータ通信量の増加に対応するために、車載配線システムに光ファイバを用いる技術が提案されている。
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
光カプラを車載配線システムに用いる場合において、光カプラの破断を抑制することを可能とする技術が望まれる。
【0008】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、光カプラを用いる車載ネットワークにおいて、光カプラの破断を抑制することが可能な車載配線システム、光カプラおよび車載配線システムの構築方法を提供することである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、光カプラを用いる車載ネットワークにおいて、光カプラの破断を抑制することができる。
【0010】
本開示は、車載配線システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現したりすることができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の実施の形態に係る車載配線システムは、車両に搭載される複数の機能部と、前記機能部間に配線され、前記機能部の光信号を伝送する光伝送路と、前記光伝送路の一部の区間において、前記光伝送路と一体となった状態で前記光伝送路と併設される電気用ワイヤハーネスと、前記区間以外の前記光伝送路に配置され、前記光伝送路の一部を構成する光カプラとを備える。
【0013】
一般に、車両における配線処理では、電気用ワイヤハーネスおよび光伝送路等を併設し、これらを束ねる。しかしながら、光伝送路に用いられる光カプラの材料は柔らかいため、光カプラを電気用ワイヤハーネスに組み付けると、光カプラに曲げ、捻じれ等の外力が負荷され、光カプラが破断しやすい。これに対し光カプラが、電気用ワイヤハーネスと光伝送路とが併設された区間以外の光伝送路に配置される構成により、光カプラを電気用ワイヤハーネスに組み付ける必要がなくなる。したがって、光カプラを用いる車載ネットワークにおいて、光カプラの破断を抑制することができる。
【0014】
(2)前記車載配線システムは、前記車両に搭載される窓ガラスを含み、前記光カプラは、前記窓ガラスに配置される。
【0015】
光カプラを車両の窓ガラスに配置すれば、光カプラは電気用ワイヤハーネスに組み付ける必要がない。さらに、光カプラを車両の窓ガラスに配置することで、別途光カプラの配置スペースを設ける必要がなくなるため、車載配線システムを省スペース化することができる。
【0016】
(3)前記窓は、複数の層を有する複層ガラスで構成され、前記光カプラは、前記層間に配置される。
【0017】
このような構成により、乗員または物が光カプラに触れることがなくなるため、接触による光カプラの破損が抑制される。
【0018】
(4)前記光カプラは、前記窓ガラスの外周に沿って配置される。
【0019】
このような構成により、光カプラが車両の窓の枠に沿って配置される分、光カプラの両端に接続される光ファイバケーブルの配線区間を短くすることができる。
【0020】
(5)前記車載配線システムは、前記車両に搭載されるミラーを含み、前記光カプラは、前記ミラーに配置される。
【0021】
光カプラを車両のミラーに配置すれば、別途光カプラの配置スペースを設ける必要がなく、車載配線システムを省スペース化することができる。
【0022】
(6)前記車載配線システムは、前記車両に搭載される車内用の照明器具を含み、前記光カプラは、前記照明器具に配置される。
【0023】
光カプラを車両内の照明器具に配置すれば、別途光カプラの配置スペースを設ける必要がない。そこで、光カプラを車両内の照明器具に配置することで、車載配線システムを省スペース化することができる。
【0024】
(7)前記照明器具は、前記車両の操縦室内に配置可能に構成され、前記光カプラは、前記照明器具のカバーに配置される。
【0025】
車両の操縦室内に有する照明器具に配置すれば、より効率的に車載配線システムを省スペース化することができる。
【0026】
(8)前記車載配線システムは、前記車両に搭載されるルーフパネルと天井内張りを含み、前記光カプラは、前記ルーフパネルと前記天井内張りとの間に配置される。
【0027】
車両のルーフパネルと天井内張りとの間に、たとえば電気用ワイヤハーネス等の厚みのある物を配置すると、車両のルーフ設計の自由度が低下する。これに対し、光カプラは薄いため、ルーフパネルと天井内張りとの間に配置しても、ルーフ設計の自由度を維持しながら電気用ワイヤハーネスの配置されないスペースを有効活用することができる。
【0028】
(9)本開示の実施の形態に係る光カプラは、車両に搭載される機能部間の光信号を中継する光カプラであって、透明な本体部と、前記本体部に形成され、前記本体部において分岐する光導波路とを備える。
【0029】
このような構成によれば、光カプラを、たとえば車両の窓またはミラーに配置しても、本体部が透明であるため、良好な視界を確保できる。また、光カプラを、たとえば車両内の照明器具に配置しても、光量等が低下しにくい。
【0030】
(10)本開示の実施の形態に係る車載配線システムの構築方法は、車両に搭載される複数の機能部と、光伝送路と、電気用ワイヤハーネスと、光カプラとを準備するステップと、前記機能部の光信号を伝送するように前記機能部間に前記光伝送路を配線するステップと、前記光伝送路の一部の区間において、前記光伝送路と一体となった状態で前記光伝送路と併設されるように前記電気用ワイヤハーネスを配線するステップと、前記区間以外の前記光伝送路に前記光カプラを配置し、前記光カプラを前記光伝送路の一部とするステップとを含む。
【0031】
光カプラを電気用ワイヤハーネスと併設された区間以外の光伝送路に配置する構成により、光カプラを電気用ワイヤハーネスに組み付ける必要がなくなる。したがって、光カプラを用いる車載ネットワークにおいて、光カプラの破断を抑制することができる。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【0034】
図1を参照して、車載配線システム1は、車両2に搭載される。車両2は、たとえば4輪自動車であり、1列目シート用の窓20Aと、2列目シート用の窓20Bと、3列目シート用または荷室用の窓20Cとを車両2自身の構造部材として側面に備える。窓20Aおよび窓20Bは開閉可能であり、窓20Cは開閉不可能な固定窓である。窓20Cは、車両2のCピラー24とDピラー25との間に配置される。なお、窓20A~20Cに用いられるガラス(窓ガラス)は透明である。ここで言う「透明」とは、JIS K 7361-1(1997)に規定される全光線透過率が、90%以上を意味する。構造部材とは、車両を支える構造体となる部材であり、車両2の一部を構成する少なくとも一部が透明な部材である。以下、「窓ガラス」を単に「窓」とも称する。
【0035】
車載配線システム1は、光伝送路10と、電気用ワイヤハーネス11とを備える。
【0036】
[光伝送路]
図1に示す例では、車両2は、機能部21としてマスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213を備える。マスタ機能部211は、車両2のエンジンルームに搭載されている。スレーブ機能部212,213は、車両2のトランクに搭載されている。なお、マスタ機能部は「リーダ機能部」とも換言することができ、スレーブ機能部は「フォロワ機能部」とも換言することができる。光伝送路10は、マスタ機能部211とスレーブ機能部212,213との間に配線され、マスタ機能部211とスレーブ機能部212,213との間に光信号を伝送する。
【0037】
マスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213は、ECU、カメラ、センサ、またはアンテナモジュールである。ECUは、自動運転ECU(Electronic Control Unit)、ナビゲーション装置、TCU(Telematics Control Unit)およびゲートウェイ装置等を含む。センサは、ミリ波センサおよびLiDAR(Light Detection and Ranging)等を含む。
【0038】
光伝送路10は、マスタ機能部211と、スレーブ機能部212,213とを光通信可能に接続する。
図1に示す例では、光伝送路10において光通信システムが構築されている。光通信システムは、たとえばPON(Passive Optical Network)システムである。なお、光通信システムは、PONシステム以外であってもよい。
【0039】
光伝送路10は、光ファイバケーブル101,102,103と、光コネクタ104,105と、光カプラ106とを含む。
【0040】
光ファイバケーブル101は、マスタ機能部211から車両2のAピラー22およびルーフサイドレール23に沿って後方に延びる。光ファイバケーブル101は、Cピラー24の車内側に固定された光コネクタ104に接続される。光ファイバケーブル102は、スレーブ機能部212から車両2のDピラー25に沿って前方に延びる。光ファイバケーブル102は、Dピラー25の車内側に固定された光コネクタ105に接続される。同様に、光ファイバケーブル103は、スレーブ機能部213から車両2のDピラー25に沿って前方に延びる。光ファイバケーブル103は、光コネクタ105に接続される。
【0041】
光コネクタ104,105は、たとえばねじ止め、接着剤または粘着剤によって各ピラー24,25に固定される。光コネクタ104,105は、マスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213間の光信号を中継する。
【0042】
光カプラ106は、光コネクタ104,105の間に配置され、両者に接続される。すなわち、光カプラ106は、光伝送路10の一部の区間に配置される。光カプラ106は、車両2の窓20Cの車内側に配置される。光カプラ106は、たとえば接着剤または粘着剤等によって窓20Cに固定される。光カプラ106は、Cピラー24とDピラー25とを繋ぐように車両2の前後方向に沿って配置される。
【0043】
[光ファイバケーブル、光コネクタおよび光カプラの詳細]
以下、光ファイバケーブル101,102,103、光コネクタ104,105および光カプラ106についてより詳細に説明する。
【0044】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載配線システムにおける光ファイバケーブルの構成の一例を示す断面図である。
図2では、光ファイバケーブル101の断面を示す。光ファイバケーブル102,103も光ファイバケーブル101と同様の構成である。
【0045】
図2を参照して、光ファイバケーブル101は、テンションメンバ101Aと、複数の光ファイバ101Bと、保護層101Cと、押さえ巻101Dと、シース101Eとを含む。
【0046】
複数の光ファイバ101Bは、テンションメンバ101Aの周囲に配置される。光ファイバ101Bは、たとえば光ファイバ心線である。光ファイバケーブル101は、1または複数の光ファイバ101Bを含む。光ファイバケーブル101における光ファイバ101Bの数は限定されない。光ファイバケーブル101は、光ファイバ心線である光ファイバ101Bを収容する構成に限定されず、たとえば0.25mm素線、0.9mm心線、またはテープ心線などであってもよい。
【0047】
保護層101Cは、複数の光ファイバ101Bを覆う。押さえ巻101Dは、保護層101Cを覆う。シース101Eは、押さえ巻101Dを覆う。
【0048】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る光コネクタおよび光カプラの一例を示す正面図である。
【0049】
図3を参照して、光コネクタ104は、光ファイバケーブル101における光ファイバを接続可能である。光コネクタ105は、光ファイバケーブル102,103における光ファイバを接続可能である。
【0050】
【0051】
図4を参照して、光カプラ106は、本体部106Aと、本体部106Aにおいて分岐する光導波路106Bとを含む。光カプラ106の両端にはそれぞれ光コネクタ104と光コネクタ105が接続されている。
【0052】
本体部106Aは、たとえば平面視で長方形のフィルム状である。本体部106Aは、樹脂により形成される。樹脂により形成される光カプラ106は、コンパクトかつフレキシブル性を有する。本体部106Aの厚さは、たとえば1mm以下である。
【0053】
本体部106Aは、透明である。ここで言う「透明」とは、JIS K 7361-1(1997)に規定される全光線透過率が、90%以上を意味する。
【0054】
光導波路106Bは、光コネクタ104と光コネクタ105との間において延びるように本体部106Aに形成される。光導波路106Bは、分岐部を有する。光導波路106Bは、たとえば光コネクタ104に接続される第1端106Cと、光コネクタ105に接続される第2端106Dと、光コネクタ105に接続される第3端106Eとを含む。光導波路106Bは、フォトリソグラフィ技術等によって本体部106Aに形成される。
【0055】
光コネクタ104は、光ファイバケーブル101から光信号を受ける。光コネクタ104が光ファイバケーブル101から受けた光信号は、光カプラ106における光導波路106Bおよび光コネクタ105経由で光ファイバケーブル102,103へ出力される。すなわち、光コネクタ104が光ファイバケーブル101から受けた光信号は、光カプラ106により分岐されて光ファイバケーブル102,103へ出力される。
【0056】
光コネクタ105は、光ファイバケーブル102,103から光信号を受ける。光コネクタ105が光ファイバケーブル102から受けた光信号は、光カプラ106における光導波路106Bおよび光コネクタ104経由で光ファイバケーブル101へ出力される。また、光コネクタ105が光ファイバケーブル103から受けた光信号は、光カプラ106における光導波路106Bおよび光コネクタ104経由で光ファイバケーブル101へ出力される。すなわち、光コネクタ105が光ファイバケーブル102,103から受けた光信号は、光カプラ106により合流されて光ファイバケーブル101へ出力される。
【0057】
[電気用ワイヤハーネス]
図1を参照して、電気用ワイヤハーネス11は、ケーブル、端子およびコネクタ等で構成される。電気用ワイヤハーネス11は、車両2のバッテリ26からAピラー22、ルーフサイドレール23およびDピラー25に沿って後方に延びる。電気用ワイヤハーネス11は、マスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213を、バッテリ26と接続する。バッテリ26から供給された電力は、電気用ワイヤハーネス11を介してマスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213に供給される。
【0058】
電気用ワイヤハーネス11は、束ねられた複数のケーブルを含むため、光伝送路10よりも厚く、厚さはたとえば20mm~100mmである。なお、電気用ワイヤハーネス11は、電力の供給以外に、電気信号の送受信に用いられてもよい。電気用ワイヤハーネス11は、電力の供給および電気信号の送受信の少なくともいずれか一方に用いられる。
【0059】
電気用ワイヤハーネス11は、マスタ機能部211から光コネクタ104までの区間の一部において、光ファイバケーブル101と併設される。電気用ワイヤハーネス11は、スレーブ機能部212,213から光コネクタ105までの区間において、光ファイバケーブル102,103と併設される。これらの区間において、電気用ワイヤハーネス11は、たとえば光ファイバケーブル101,102,103と結束バンド40によって束ねられる。すなわち、これらの区間において、電気用ワイヤハーネス11は、光ファイバケーブル101,102,103と結束バンド40によって一体となった状態で併設される。
【0060】
一方、電気用ワイヤハーネス11は、光カプラ106とは一体となった状態で併設されない。すなわち、電気用ワイヤハーネス11は、光カプラ106が配置された区間以外において光伝送路10と一体となった状態で併設される区間を含む。ここにおいて、「一体となった状態で併設される」とは、電気用ワイヤハーネス11と光伝送路10とが1つの結束部材40で一体となっている状態や1つの固定部材40で固定されている状態を含む。
【0061】
より詳細には、電気用ワイヤハーネス11は、光ファイバケーブル101と束ねられた状態でマスタ機能部211から車両2の後方に向かって延び、光コネクタ104の手前で光ファイバケーブル101と分離する。
【0062】
光ファイバケーブル101と分離した後、電気用ワイヤハーネス11はルーフサイドレール23の後端まで延び、Dピラー25に沿ってスレーブ機能部212,213に向かう。電気用ワイヤハーネス11は、Dピラー25において光ファイバケーブル102,103と合流し、束ねられる。
【0063】
[車載配線システムを用いた通信動作]
続いて、車載配線システム1を用いた通信方法について説明する。以下では、光伝送路10を用いた光通信について説明し、電気用ワイヤハーネス11を用いた電気通信については周知の事項であるため詳細な説明は行わない。
【0064】
以下、スレーブ機能部212,213からマスタ機能部211への方向を上り方向と称し、マスタ機能部211からスレーブ機能部212,213への方向を下り方向と称する。光伝送路10を用いた光通信は、たとえばTDM-PONシステムである。具体的には、上り方向が時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)であり、下り方向が時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)である。
【0065】
各スレーブ機能部212,213は、フレーム等の上り通信信号を含む上り光信号を対応の光ファイバケーブル102,103、光カプラ106、光コネクタ105,104および光ファイバケーブル101経由でマスタ機能部211へ送信可能である。また、マスタ機能部211は、フレーム等の下り通信信号を含む下り光信号を光ファイバケーブル101、光カプラ106、光コネクタ104,105および各光ファイバケーブル102,103経由で対応のスレーブ機能部212,213へ送信可能である。
【0066】
マスタ機能部211およびスレーブ機能部212,213は、図示しない光トランシーバを含む。マスタ機能部211における光トランシーバは、光ファイバケーブル101と接続される。光トランシーバは、たとえば1280nm帯の上り光信号を光ファイバケーブル101から受信し、受信した上り光信号を電気信号に変換して図示しない処理部へ出力する。また、マスタ機能部211における光トランシーバは、図示しない処理部から電気信号を受けて、受けた電気信号を別波長たとえば1570nm帯の下り光信号に変換して光ファイバケーブル101へ出力する。
【0067】
スレーブ機能部212における光トランシーバは、光ファイバケーブル102と接続され、スレーブ機能部213における光トランシーバは、光ファイバケーブル103と接続される。各光トランシーバは、1570nm帯の下り光信号を光ファイバケーブル102,103から受信し、受信した下り光信号を電気信号に変換して図示しない処理部へ出力する。また、スレーブ機能部212,213における光トランシーバは、当該処理部から電気信号を受けて、受けた電気信号をたとえば1280nm帯の上り光信号に変換して光ファイバケーブル102,103へ出力する。
【0068】
なお、車載配線システム1を用いた光通信では、上り方向において、TDMAに限らず、よりデータ量の大きい通信に適した波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いてもよい。この場合、複数のスレーブ機能部212,213は、互いに異なる波長の上り光信号を送信する。
【0069】
また、車載配線システム1を用いた光通信では、下り方向において、TDMに限らず、よりデータ量の大きい通信に適したWDMを用いてもよい。この場合、マスタ機能部211は、各スレーブ機能部212,213へ異なる波長の下り光信号を送信する。
【0070】
また、車載配線システム1を用いた光通信では、上り方向において、TDMAに限らず、よりデータ量の大きい通信に適した符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)を用いてもよい。この場合、複数のスレーブ機能部212,213は、互いに異なる拡散符号により拡散された通信信号を含む上り光信号を送信する。
【0071】
また、車載配線システム1を用いた光通信では、下り方向において、TDMに限らず、よりデータ量の大きい通信に適したCDMを用いてもよい。この場合、マスタ機能部211は、各スレーブ機能部212,213へ異なる拡散符号により拡散された通信信号を含む下り光信号を送信する。
【0072】
その他、車載配線システム1を用いた光通信では、よりデータ量の大きい通信に適した周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)、空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)または時分割波長多重(TWDM:Time and Wavelength Division Multiplexing)等を用いてもよい。
【0073】
ところで、光カプラを車載配線システムに用いる場合には、光カプラの破断を抑制することが望まれている。
【0074】
電気用ワイヤハーネス11は、機能部21に電気を送電するため車両内部に配置されている。光伝送路10を車両のマスタ機能部211からスレーブ機能部212,213まで配線しようとする場合、通常、光伝送路10を電気用ワイヤハーネス11に組み付ける必要がある。しかしながら、光伝送路10中の光カプラ106は軟質な材料で形成されるため、組み付けの際に破断しやすい。
【0075】
これに対し、第1の実施の形態に係る車載配線システム1によれば、光カプラ106は電気用ワイヤハーネス11に組み付けられず、車両2の窓20Cに配置される。したがって、光カプラ106を車載配線システム1に用いる場合であっても、光カプラ106の破断を抑制できる。なお、電気用ワイヤハーネスはある程度の厚さがあるため、車両の窓に配線することは難しい。
【0076】
第1の実施の形態に係る車載配線システム1のように、電気用ワイヤハーネス11が車両2のAピラー22、ルーフサイドレール23およびDピラー25に沿って配線される場合、配線を容易にするために、光カプラ106は窓20Cの高さの1/2よりも上部に配置されてもよい。さらに、光カプラ106は、窓20Cの高さの1/4よりも上部に配置されてもよい。
【0077】
(変形例1)
図5は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る光カプラおよび車両の窓の断面図である。
図5は、車両2の前後方向に垂直な断面を示す。
【0078】
図5を参照して、窓20C1は、複数の層を有する複層ガラスで構成される。具体的には、窓20C1は、2枚の板ガラス20C2と、中間層20C3とを含む。2枚の板ガラス20C2は、間隔をあけて配置される。中間層20C3は、2枚の板ガラス20C2の間に形成される。中間層20C3は、空気またはアルゴンガス等で充たされていてもよいし、真空であってもよく、特に限定されない。
【0079】
光カプラ106は、複層ガラスの層間に配置される。具体的には、光カプラ106は、中間層20C3に配置され、2枚の板ガラス20C2のいずれかに接着剤または粘着剤等で固定される。
【0080】
このような構成によれば、光カプラ106が窓20C1の内部に配置されるため、乗員または物が窓20C1に触れても、光カプラ106に触れることはない。したがって、光カプラ106に接触することによる光カプラ106の破損が抑制される。
【0081】
(変形例2)
図6は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【0082】
図6を参照して、光カプラ106は、車両2の窓20Cの枠(外周)の少なくとも一部に沿って配置される。より具体的には、光カプラ106は、光コネクタ104から車両2の前後方向に沿って後方に延び、Dピラー25の手前で、Dピラー25に沿うように折れ曲がる。Dピラー25に沿って延びた光カプラ106は、車両2のベルトライン27の手前で、車両2の前後方向に沿うように折れ曲がり、光コネクタ105に接続される。すなわち、光カプラ106は、窓20Cの枠のうち、ルーフサイドレール23およびDピラー25に沿った部分を通るように配置される。
【0083】
この場合、光コネクタ104は、比較的高い位置、すなわちCピラー24のうちルーフサイドレール23近傍に配置される。これに対し、光コネクタ105は、比較的低い位置、すなわちDピラー25のうちベルトライン27近傍に配置される。このように、光コネクタ105は、車両2の側面視で、光コネクタ104よりも下方に配置され、スレーブ機能部212,213により近い位置に配置される。
【0084】
このような構成によれば、光コネクタ105とスレーブ機能部212,213との距離が近くなるため、光コネクタ105とスレーブ機能部212,213とを接続する光ファイバケーブル102,103の配線区間を短くすることができ、省線化することができる。
【0085】
また、Dピラー25の全域または大部分の領域に光ファイバケーブル102,103を通す必要がなくなるため、Dピラー25を細くし、車両2の軽量化を図ることができる。
【0086】
さらには、光カプラ106を窓20Cの枠に沿って配置することで、窓20Cの中央部分の視界を確保することができ、光カプラ106による窓20Cの視界の低下を最小限に留めることができる。ただし、光カプラ106は、窓20Cの中央部分を通るように配置されてもよい。
【0087】
<第2の実施の形態>
図7は、本開示の第2の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。第2の実施の形態に係る車載配線システムでは、光カプラ106が車両2のミラーに配置される点で第1の実施の形態と異なる。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る車載配線システム1と同様である。
【0088】
図7に示す例では、光カプラ106がルームミラー281に配置される場合を示す。光カプラ106は、ルームミラー281の左右方向の中央よりも左方に配置される。さらに、光カプラ106は、ルームミラー281の左端近傍に配置されてもよい。ただし、光カプラ106は、ルームミラー281の左右方向の中央よりも右方に配置されてもよい。光カプラ106は、ルームミラー281のフレーム282の上部と下部とを繋ぐように配置される。なお、電気用ワイヤハーネスはある程度の厚さがあるため、車両のミラーに配線することは難しい。
【0089】
光コネクタ104は、フレーム282の上部に配置される。光コネクタ105は、フレーム282の下部に配置される。光コネクタ104,105は、たとえば接着剤または粘着剤等によってフレーム282の各位置に固定される。
【0090】
図7では、マスタ機能部およびスレーブ機能部は図示していない。マスタ機能部は、たとえば車両におけるフロアに配置され、2つのスレーブ機能部は、車両におけるボンネットおよびルーフ29にそれぞれ配置される。
【0091】
マスタ機能部は、たとえば先進運転支援(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)ECUであり、2つのスレーブ機能部は、センサおよびルーフアンテナモジュールである。
【0092】
光ファイバケーブル101は、マスタ機能部から図示しないAピラー、ルーフ29、ルームミラーステイ283およびフレーム282の上部を通り、光コネクタ104に接続される。光ファイバケーブル102は、ボンネットに配置されたスレーブ機能部からAピラー、ルーフ29、ルームミラーステイ283ならびにフレーム282の上部、右部および下部を通り、光コネクタ105に接続される。光ファイバケーブル103は、ルーフ29に配置されたスレーブ機能部、ルームミラーステイ283ならびにフレーム282の上部、右部および下部を通り、光コネクタ105に接続される。
【0093】
電気用ワイヤハーネス11は、バッテリとルーフ29に配置されたスレーブ機能部とを接続する。電気用ワイヤハーネス11は、バッテリからAピラーに沿って延び、ルーフ29に配線される。
【0094】
電気用ワイヤハーネス11は、ルーフ29において光ファイバケーブル101,102,103と一体となった状態で併設される。一方、電気用ワイヤハーネス11は、光カプラ106とは一体となった状態で併設されない。
【0095】
より詳細には、電気用ワイヤハーネス11は、光ファイバケーブル101と束ねられた状態でAピラーからルーフ29に配線される。電気用ワイヤハーネス11は、ルームミラーステイ283の手前で光ファイバケーブル101と分離する。電気用ワイヤハーネス11は、ルームミラーステイ283からルーフ29に配線された光ファイバケーブル102,103と合流し、束ねられる。すなわち、ルームミラーステイ283およびフレーム282においては、電気用ワイヤハーネス11は配線されず、光伝送路のみが配線される。
【0096】
このような構成によれば、光カプラ106を車両2の構成部品であるルームミラー281に配置することで、別途光カプラ106の配置スペースを設ける必要がなく、車載配線システムを省スペース化することができる。
【0097】
(変形例)
図8は、本開示の第2の実施の形態の変形例に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。
【0098】
図8を参照して、光カプラ106は、たとえば車両2の操縦室内の照明器具30に配置される。
図8に示す例では、光カプラ106が照明器具30としての室内灯301に配置される場合を示す。光カプラ106は、室内灯301を車両2の左右方向に横断するように配置される。光カプラ106は、接着剤または粘着剤等によって室内灯301の図示しないカバー(ランプカバー)に固定される。なお、電気用ワイヤハーネスはある程度の厚さがあるため、車両の照明器具に配線することは難しい。
【0099】
光コネクタ104,105は、たとえば室内灯301を取り付けるハウジングに接着剤または粘着剤等によって固定される。
【0100】
電気用ワイヤハーネス11は、ルーフ29において光ファイバケーブル101,102,103と併設される。一方、電気用ワイヤハーネス11は、光カプラ106とは併設されない。
【0101】
より詳細には、電気用ワイヤハーネス11は、光ファイバケーブル101と束ねられた状態でAピラーからルーフ29に配線される。電気用ワイヤハーネス11は、室内灯301の手前で光ファイバケーブル101と分離する。電気用ワイヤハーネス11は、室内灯301を迂回するように配線される。電気用ワイヤハーネス11は、室内灯301からルーフ29に配線された光ファイバケーブル102,103と合流し、束ねられる。すなわち、室内灯301においては、電気用ワイヤハーネス11は配線されず、光伝送路のみが配線される。
【0102】
このような構成によれば、光カプラ106を車両2の構成部品である室内灯301に配置することで、別途光カプラ106の配置スペースを設ける必要がなく、車載配線システムを省スペース化することができる。
また、車両の操縦室内に有する照明器具に配置すれば、より効率的に車載配線システムを省スペース化することができる。
なお、光カプラ106は、車両2の操縦室内の照明器具30に配置される構成に限らない。たとえば電気用ワイヤハーネス11が光ファイバケーブル101,102,103と併設されていない区間におけるルーフ29内部など、車両2のボディ内に配置される構成であってもよい。
【0103】
<第3の実施の形態>
図9は、本開示の第3の実施の形態に係る車載配線システムの構成の一例を示す図である。第3の実施の形態に係る車載配線システムでは、光カプラ106が車両2のルーフに配置される点で第1の実施の形態と異なる。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る車載配線システム1と同様である。
【0104】
図9では、マスタ機能部およびスレーブ機能部は図示していない。
図9では、マスタ機能部は車両2のトランクに搭載され、2つのスレーブ機能部は車両2のエンジンルームに搭載されていることを想定している。
【0105】
図9を参照して、光ファイバケーブル101は、マスタ機能部からDピラー25、リアルーフクロスメンバ31A、ルーフサイドレール23およびセンタールーフクロスメンバ31Bを通り、光コネクタ104に接続される。光ファイバケーブル102は、スレーブ機能部からAピラー22、フロントルーフクロスメンバ31Cおよびルーフサイドレール23を通り、光コネクタ105に接続される。光ファイバケーブル103は、スレーブ機能部からAピラー22およびルーフサイドレール23を通り、光コネクタ105に接続される。
【0106】
光カプラ106は、車両2のルーフサイドレール23とセンタールーフクロスメンバ31Bとを接続するように配置される。光カプラ106は、ルーフサイドレール23、フロントルーフクロスメンバ31Cおよびセンタールーフクロスメンバ31Bで形成される開口部32を通る。
【0107】
図10は、
図9中のX-X線矢視断面図である。
図10を参照して、光カプラ106は、車両2のルーフパネル33と天井内張り34との間に配置される。ルーフパネル33は、たとえば鋼板で形成され、車両2の天井部を構成する外装部品である。天井内張り34は、たとえば布、皮または化学繊維等を材料とするシート状の内装部品である。天井内張りは、ルーフパネル33の車内側の面に取り付けられ、車両2の室内における天井部を形成する。光カプラ106は、接着剤または粘着剤等でルーフパネル33に固定されていてもよいし、天井内張り34に固定されていてもよい。
【0108】
図9を参照して、光コネクタ104は、センタールーフクロスメンバ31Bに配置される。光コネクタ105は、ルーフサイドレール23に配置される。光コネクタ104,105は、たとえば接着剤または粘着剤等によってセンタールーフクロスメンバ31Bおよびルーフサイドレール23に固定される。
【0109】
電気用ワイヤハーネス11は、バッテリとエンジンルームに配置されたスレーブ機能部とを接続する。電気用ワイヤハーネス11は、バッテリとトランクに配置されたマスタ機能部とを接続する。電気用ワイヤハーネス11は、バッテリからAピラー22、ルーフサイドレール23、リアルーフクロスメンバ31AおよびDピラー25に沿って延びる。
【0110】
電気用ワイヤハーネス11は、Aピラー22において光ファイバケーブル102と併設される。電気用ワイヤハーネス11は、ルーフサイドレール23の一部区間、リアルーフクロスメンバ31AおよびDピラー25において光ファイバケーブル101と併設される。一方、電気用ワイヤハーネス11は、開口部32を通らないため、光カプラ106とは併設されない。
【0111】
ルーフパネル33と天井内張り34との間に、たとえば電気用ワイヤハーネス11等の厚みのある物が配置される場合、電気用ワイヤハーネス11を考慮してルーフパネル33等のルーフ構成部品の厚さおよび形状等を設計する必要がある。しかしながら、光カプラ106の厚さは1mm以下と薄いため、光カプラ106をルーフパネル33と天井内張り34との間を通しても、ルーフ構成部品の設計に影響を与えにくい。したがって、ルーフ設計の自由度を維持しながら電気用ワイヤハーネスの配置されないスペースを有効活用することができる。
【0112】
上記実施の形態では、車載配線システムにおいて光カプラ106が、車両2の窓20C、ルームミラー281、室内灯301およびルーフ29に配置される場合について説明した。しかしながら、本開示の車載配線システムは、これに限定されるものではない。光カプラ106は、車両2において電気用ワイヤハーネス11が配線されない部分に配置されればよい。
【0113】
上記実施の形態における車載配線システムは、車両2に搭載される複数の機能部21と、光伝送路10と、電気用ワイヤハーネス11と、光カプラ106とを準備するステップと、機能部21の光信号を伝送するように機能部21間に光伝送路10を配線するステップと、光伝送路10の一部の区間において、光伝送路10と一体となった状態で光伝送路10と併設されるように電気用ワイヤハーネス11を配線するステップと、光伝送路10の一部の区間以外の区間に光カプラ106を配置し、光カプラ106を光伝送路10の一部とするステップとを含む方法によって構築することもできる。
【0114】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0115】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される機能部間の光信号を伝送する光伝送路と、
前記光伝送路の一部区間において前記光伝送路と併設される電気用ワイヤハーネスとを備え、
前記光伝送路は、前記電気用ワイヤハーネスと前記光伝送路とが併設されない区間に配置される光カプラを含み、
前記光カプラは、
樹脂により形成された本体部と、
前記本体部に形成された、分岐部を有する光導波路とを含む、車載配線システム。
【0116】
[付記2]
車両に搭載される機能部間の光信号を伝送する光伝送路と、
前記光伝送路の一部区間において前記光伝送路と併設される電気用ワイヤハーネスとを備え、
前記光伝送路は、前記電気用ワイヤハーネスと前記光伝送路とが併設されない区間に配置される光カプラを含み、
前記機能部は、ECU、センサおよびアンテナモジュールのうちの少なくともいずれか1つである、車載配線システム。
【符号の説明】
【0117】
1 車載配線システム
10 光伝送路
101,102,103 光ファイバケーブル
101A テンションメンバ
101B 光ファイバ
101C 保護層
101D 押さえ巻
101E シース
104,105 光コネクタ
106 光カプラ
106A 本体部
106B 光導波路
106C 第1端
106D 第2端
106E 第3端
11 電気用ワイヤハーネス
2 車両
20A,20B,20C,20C1 窓
20C2 板ガラス
20C3 中間層
21 機能部
211 マスタ機能部
212,213 スレーブ機能部
22 Aピラー
23 ルーフサイドレール
24 Cピラー
25 Dピラー
26 バッテリ
27 ベルトライン
28 ミラー
281 ルームミラー
282 フレーム
283 ルームミラーステイ
29 ルーフ
30 照明器具
301 室内灯
31A リアルーフクロスメンバ
31B センタールーフクロスメンバ
31C フロントルーフクロスメンバ
32 開口部
33 ルーフパネル
34 天井内張り
40 結束バンド(結束部材、固定部材)