(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/562 20210101AFI20240806BHJP
H01M 50/109 20210101ALI20240806BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240806BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M50/562
H01M50/109
H01M10/052
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2022557559
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038626
(87)【国際公開番号】W WO2022085682
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020175351
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】南島 康人
(72)【発明者】
【氏名】秋月 直人
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太
(72)【発明者】
【氏名】石濱 和也
(72)【発明者】
【氏名】谷田 昌義
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-184390(JP,A)
【文献】特開2016-207510(JP,A)
【文献】特開2021-077517(JP,A)
【文献】特開平10-064497(JP,A)
【文献】特開平10-208710(JP,A)
【文献】特開2009-129704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0268583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体、および、該電極組立体を収納する外装体を有して成る二次電池であって、
前記外装体には絶縁部材を介して接合された平板状端子が具備されており、
前記平板状端子は第1端子部材と第2端子部材とを含んで成り、
前記第1端子部材および前記第2端子部材は互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されており、
前記第1端子部材が前記第2端子部材上に積層するように前記第1端子部材と前記第2端子部材とが互いに積層しており、
前記第2端子部材が前記絶縁部材に対向するように前記平板状端子が前記絶縁部材上に配置されて
おり、
ボタン形またはコイン形の形状を有する、二次電池。
【請求項2】
昇温により前記平板状端子が反ることで前記平板状端子が前記絶縁部材から剥離する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1端子部材の線膨張係数が前記第2端子部材の線膨張係数よりも大きい、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第2端子部材の線膨張係数が前記第1端子部材の線膨張係数よりも大きい、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1端子部材の線膨張係数と前記第2端子部材の線膨張係数との差が5×10
-6/K以上である、請求項1~4のいずれかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項7】
前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、前記第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がニッケルであり、前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1端子部材を形成する材料がニッケルであり、前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
前記絶縁部材が前記平板状端子の周囲縁部の少なくとも一部を覆う隆起部を有する、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記平板状端子の前記周囲縁部の少なくとも一部を覆う前記隆起部の厚みが、前記平板状端子の厚みの5%以上20%以下である、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記平板状端子は正極および負極の一方であり、前記外装体は該正極および該負極の他方である、請求項1~12のいずれかに記載の二次電池。
【請求項14】
前記外装体が金属外装体であり、該金属外装体がカップ状部材および蓋状部材の2パーツ構成を有して成る、請求項1~13のいずれかに記載の二次電池。
【請求項15】
前記電極組立体の電極として、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極および負極が含まれる、請求項1~
14のいずれかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関する。具体的には、本発明は、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層を含んで成る電極組立体を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、いわゆる蓄電池ゆえ充電・放電の繰り返しが可能であり、様々な用途に用いられている。例えば、携帯電話、スマートフォンおよびノートパソコンなどのモバイル機器に二次電池が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-46639号公報
【文献】特開2020-47536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、従前の二次電池には克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0005】
例えば、特許文献1には、封止構造を有する密閉型の電池が開示されている。例えば
図14に示す通り、従前の密閉型の電池100では、例えば、正極と負極とがセパレータを介して積層または捲回されてなる電極組立体111(
図10参照)が外装ケース104に収納されている。この外装ケース104の開口部を覆うように、平板状電極端子部材101が、絶縁性および接着性を有するシール部材103を介して、外装ケース104の表面に接着されている。例えば、
図14に示す電池100では、このような平板状電極端子部材101とシール部材103とを使用した封止構造によって、電池の封止性を確保している。ここで、平板状電極端子部材101とシール部材103とが接着する領域の面積が大きいほど、電池の封止性は向上する。
【0006】
図14に示す電池100では、平板状電極端子部材101と電極組立体111とがリード体などを介して電気的に接続されているが、説明の便宜上、
図14において、リード体の記載は省略している。
【0007】
図14に示すような従前の電池100では、平板状電極端子部材101とシール部材103とを使用した封止構造によって、電池の封止性が向上する(
図14A参照)。
しかし、その一方で、異常な充放電などに起因する昇温や発熱によって、電池内部にガスが発生し、例えば力(F
0)で矢印に沿って平板状電極端子部材101を押圧することで電池内部の圧力が上昇し、その結果、電池が破裂して破損に至る虞がある(
図14B参照)。したがって、このような電池では、密封性とともに、より高い安全性の確保が求められている。
【0008】
より高い安全性を確保するために、例えば特許文献2には、防爆弁などを備えた密閉型の電池が開示されている。例えば
図15に示す通り、正極と負極とがセパレータを介して捲回されてなる電極組立体211(
図10B参照)が電池缶204に収納され、電池缶204の開口を塞ぐように封口板205が設けられている。封口板205には、絶縁性のガスケット203およびワッシャ202を介して、外部端子201が固定されている。つまり、封口板205は、カシメ構造による外部端子201を有する。さらに、封口板205には、2つの溝、すなわち第1溝206および第2溝207が互いに対向するよう設けられていて、封口板205の厚みが部分的に小さくなるように薄肉部が形成されている。電池内部の圧力が上昇すると、封口板205の薄肉部にて破断が生じ、封口板205が防爆弁として機能し、電池内部の圧力が低下する。
【0009】
例えば
図15に示す従前の電池200では、外部端子201と電極組立体211とがリード体などを介して電気的に接続されているが、説明の便宜上、
図15において、リード体の記載は省略している。
【0010】
図15に示す従前の電池200では、防爆弁によって、電池内部の圧力の上昇を抑制することができる。しかし、このような防爆弁を利用した構成は、煩雑であることから、その製造コストが増加する。また、このような防爆弁を利用した電池200では、封口板205に第1溝206および第2溝207を設けなければならないので、このような溝の領域確保に伴って、設計の自由度が低下する。また、
図15に示す従前の電池200において、外部端子201は、電極組立体211が配置されるスペースを侵食するため、電池の体積エネルギー密度が低下する。また、電池内部にデッドスペースが生じる。
【0011】
そこで、本願発明者は、例えば
図14に示すような従前の電池100において、異常な昇温により電池内部の圧力が上昇した場合、封止部を開裂させることで圧力を低下させることを検討した。より具体的には、平板状電極端子部材101をシール部材103から剥離させることで封止部を開裂させることを検討した。
【0012】
検討の結果、異常な温度上昇によって電池内部の圧力が上昇した場合、より低い圧力で平板状電極端子部材101をシール部材103から剥離させることが好ましいことがわかった。しかし、電池の封止性を高めるためには平板状電極端子部材101とシール部材103との接着面積を大きくして封止性を確保しなければならないこともわかった。つまり、電池の封止性を確保することと、封止部を開裂させることとはトレードオフの関係にあることがわかった。このように、電池の封止性を確保しつつ、異常な昇温により内圧が上昇した場合に、より低い圧力で封止部を開裂させることは困難であることが本願発明者の検討により初めて明らかとなった。
【0013】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、封止性を確保しつつ、異常な昇温により内圧が上昇した場合、より低い圧力で封止部が開裂する二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された二次電池の発明に至った。
【0015】
具体的には、二次電池の外装体と平板状端子と絶縁部材とで形成され得る封止部において、平板状端子を線膨張係数の異なる少なくとも2種類の材料から形成することで電池の異常な昇温時には平板状端子が変形して反ることができる構成を考えた(より具体的には
図1~
図5、特に
図2Bおよび
図4Bを参照のこと)。このような構成によって、正常な温度範囲では電池の封止性を確保することができ、異常な昇温時には平板状端子を反らせることで絶縁部材から平板状端子を少なくとも部分的に剥離させることができ(
図2Bおよび
図4B参照)、このような剥離によって、より低い圧力で封止部を開裂させて、電池内部の圧力が低下できると考えた。
【0016】
本発明では、電極組立体、および、該電極組立体を収納する外装体を有して成る二次電池が提供される。当該二次電池において、
前記外装体には絶縁部材を介して接合された平板状端子が具備されており、
前記平板状端子は第1端子部材と第2端子部材とを含んで成り、
前記第1端子部材および前記第2端子部材は互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されており、
前記第1端子部材が前記第2端子部材上に積層するように前記第1端子部材と前記第2端子部材とが互いに積層しており、
前記第2端子部材が前記絶縁部材に対向するように前記平板状端子が前記絶縁部材上に配置されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、封止性を確保しつつ、異常な昇温により内圧が上昇した場合、より低い圧力で封止部が開裂する二次電池が得られる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る二次電池の断面を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る二次電池の封止部の構造を模式的に示す概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る二次電池の平板状端子の反りを模式的に示す概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の他の実施形態に係る二次電池の封止部の構造を模式的に示す概略図である。
【
図5】
図5は、本開示の他の実施形態に係る二次電池の平板状端子の反りを模式的に示す概略図である。
【
図6】
図6は、本開示の別の実施形態に係る二次電池の封止部の構造を模式的に示す概略図である。
【
図7】
図7は、本開示のさらに別の実施形態に係る二次電池の封止部の構造を模式的に示す概略図である。
【
図8】
図8は、本開示のさらに別の実施形態に係る二次電池の封止部の構造を部分的に拡大して模式的に示す概略図である。
【
図9】
図9は、本開示のさらに別の実施形態に係る二次電池の平板状端子の反りを部分的に拡大して模式的に示す概略図である。
【
図10】
図10は、電極組立体の構成を模式的に示した断面図である。
【
図11】
図11は、(a)ボタン形またはコイン形の形状および(b)角形の形状の二次電池を例示説明するための模式的斜視図である。
【
図12】
図12は、平板状端子の昇温時の反りをシミュレーションした結果を示す。
【
図13】
図13は、「接着面積」と「開裂圧」との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、従来の他の電池を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は二次電池に関し、具体的には、電極組立体と、この電極組立体を収納することができる外装体とを有して成る二次電池に関する。本開示の二次電池において、外装体には絶縁部材を介して接合された平板状端子が具備されていてよい。平板状端子は、第1端子部材と第2端子部材とを含んで成る。第1端子部材および第2端子部材は、互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されている。第1端子部材が第2端子部材上に積層するように第1端子部材と第2端子部材とが互いに積層している。第2端子部材が絶縁部材に対向するように平板状端子が絶縁部材上に配置されている。
上記の二次電池を本開示では「本開示の二次電池」または「本開示の電池」あるいは単に「二次電池」または「電池」と省略して記載する場合もある。
【0020】
例えば
図1に示す通り、本開示の一実施形態に係る二次電池10では、第1端子部材1と第2端子部材2とを含んで成る平板状端子5が絶縁部材3を介して外装体4に結合または接着されている。以下にて詳説する通り、絶縁部材3は、絶縁性および接着性または融着性を有していてよい。外装体4は、導電性を有する金属外装体であってよい。
【0021】
平板状端子5に含まれ得る第1端子部材1および第2端子部材2は、いずれも平板状端子5が電極端子として機能するために導電性を有していてよい。第1端子部材1および第2端子部材2は、いずれも金属および/または合金などを含む材料から構成されていてよい。第1端子部材1および第2端子部材2は、いずれも板状の形状を有していてよい。
【0022】
第1端子部材1および第2端子部材2は互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されている。このように互いに異なる線膨張係数を有する第1端子部材1および第2端子部材2を積層して配置することで、例えば、接合などの手段によって互いに結合させることによって(
図2Aおよび
図4A参照)、例えば電池の異常な昇温の際に平板状端子5が変形して「反る」ことができる(
図2Bおよび
図4B参照)。
【0023】
このような昇温時の平板状端子5の反りによって、例えば
図2Bに示すように平板状端子5、特に第2端子部材2が絶縁部材3から少なくとも部分的に剥離することができる。このように平板状端子5が絶縁部材3から部分的に剥離することによって、より低い圧力で封止部を開裂させることができる。
【0024】
また、通常の温度範囲、例えば常温または周囲温度では、より十分な封止性を確保することができる。このように本開示の電池によると、封止性を確保しつつ、異常な昇温により内圧が上昇した場合、より低い圧力で封止部を開裂させることができる。
【0025】
本開示の電池では、外装体の外側表面に平板状端子が配置されていることから、電池内部のスペースも有効に活用することができる。さらに、電池の体積エネルギー密度を向上させることもできる。また、本開示の電池では、カシメ構造などを使用しないことから、電池製造コストを低減することができる。
【0026】
以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観および/または寸法比などは実物と異なり得る。
【0027】
本明細書で直接的または間接的に説明される「断面視」は、例えば、二次電池を任意に切り取った仮想的な断面に基づいている。同様にして、本明細書で直接的または間接的に説明される“厚み”の方向は、例えばボタン形またはコイン形などの形状の「板状に厚みを有する二次電池」でいえば、かかる二次電池の板厚方向に相当する。本明細書で用いる「平面視」または「平面視形状」とは、かかる厚みの方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。
【0028】
また、本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当してよい。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材および/または部位もしくは同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
【0029】
以下、電池の基本的構成を説明した上で、本開示の電池の特徴について詳説する。
【0030】
[電池の基本的構成]
本明細書でいう「二次電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本開示に係る二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
【0031】
本開示の二次電池は、正極(または正極体)、負極(または負極体)およびセパレータを含む電極構成層が少なくとも1つ積層した電極組立体を有して成る。例えば
図10(A)および
図10(B)には、本開示において使用することができる典型的な電極組立体11を模式的に例示している。図示されるように、正極12と負極14とがセパレータ13を介して積み重なって電極構成層15を成している。電極構成層15は少なくとも1つ以上積層して電極組立体11が構成されている。
図10(A)では、電極構成層15が平面状に積層した平面積層構造を有している。一方、
図10(B)では、電極構成層15が巻回状に巻かれた巻回積層構造を有している。つまり、
図10(B)では、正極、負極、および正極と負極との間に配置されたセパレータを含む電極構成層15がロール状に巻回した巻回積層構造を有している。本開示の二次電池ではこのような電極組立体が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。なお、電極組立体の構造は必ずしも平面積層構造または巻回積層構造に限定されない。例えば、電極組立体は、正極、セパレータおよび負極を長いフィルム上に積層してから折りたたんだ、いわゆるスタック・アンド・フォールディング型構造を有していてもよい。
【0032】
正極は、少なくとも正極材層および必要に応じて正極集電体から構成されている。正極では例えば正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられている。正極材層には電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の正極は、それぞれ、正極集電体の両面に正極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、正極集電体の片面にのみ正極材層が設けられているものでもよい。
【0033】
負極は、少なくとも負極材層および必要に応じて負極集電体から構成されている。負極では例えば負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられている。負極材層には電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の負極は、それぞれ、負極集電体の両面に負極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられているものでもよい。
【0034】
正極および負極に含まれ得る電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与し得る物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正極および負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれ得る正極活物質」および「負極材層に含まれ得る負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされ得る。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であってよい。つまり、本開示の二次電池は、非水電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われ得る非水電解質二次電池となっていてよい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン電池”に相当し、正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する。
【0035】
正極材層の正極活物質は、例えば粒状体から構成され得るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていてよい。さらには、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は、例えば粒状体から構成され得るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが負極材層に含まれていてよい。さらには、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。
このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層は、それぞれ“正極合材層”および“負極合材層”などと称すこともできる。
【0036】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であってよい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であってよい。つまり、本開示の二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として含まれていてよい。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0037】
正極材層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、例えば、高分子化合物などが挙げられる。具体的には、スチレンブタジエン系ゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
正極材層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0038】
正極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下であってよく、例えば5μm以上200μm以下である。正極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
【0039】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、リチウム合金および/またはリチウム金属などであってよい。
【0040】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛および/もしくは人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ならびに/またはダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、例えば負極集電体との接着性が優れる。
負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属と、リチウムとの合金であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていてよい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。
【0041】
負極材層に含まれ得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、例えば、高分子化合物などが挙げられる。具体的には、スチレンブタジエン系ゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
負極材層に含まれ得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0042】
負極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下であってよく、例えば5μm以上200μm以下である。負極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
【0043】
正極および負極に用いられ得る正極集電体および負極集電体は、電池反応に起因して電極活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような電極集電体は、シート状の金属部材であってよい。また、電極集電体は、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、電極集電体は、金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられ得る正極集電体は、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)およびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられ得る負極集電体は、銅、ステンレス鋼(SUS)およびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよく、例えば銅箔であってよい。
【0044】
本開示において、「ステンレス鋼」(SUS)とは、例えば、「JIS G 0203 鉄鋼用語」に規定されているステンレス鋼のことを指しており、クロムまたはクロムとニッケルとを含有させた合金鋼であってよい。
【0045】
正極集電体および負極集電体の各厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上100μm以下であってよく、例えば10μm以上70μm以下である。正極集電体および負極集電体の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
【0046】
正極および負極に用いられ得るセパレータは、正極と負極との接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられ得る部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極との間の電子的接触を防止しつつ、イオンを通過させる部材であるといえる。例えば、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であってよく、その小さい厚みに起因して膜形態を有していてよい。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられ得る微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成され得る積層体であってもよい。セパレータの表面が無機粒子コート層および/または接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面が接着性を有していてもよい。なお、本開示において、セパレータは、その名称によって特に拘泥されるべきでなく、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、および/または絶縁性の無機粒子などであってもよい。
【0047】
セパレータの厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上100μm以下であってよく、例えば2μm以上20μm以下である。セパレータの厚み寸法は二次電池内部での厚み(特に正極と負極との間での厚み)であり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
【0048】
本開示の二次電池では、概して、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層から成る電極組立体が電解質と共に外装体に封入されていてよい。電解質は有機電解質および/または有機溶媒などを含む“非水系”の電解質であってよく、または水を含む“水系”の電解質であてもよい。正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は“非水系”の電解質であってよい。すなわち、電解質が非水電解質または非水電解液となっていてよい。電解質では電極(正極および/または負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することができる。リチウムイオンの移動を助力する電解質を使用してよい。なお、電解質は液体状またはゲル状などの形態を有していてよい。
【0049】
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。溶媒は有機溶媒であってよい。具体的な非水電解質の有機溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものであってよい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物を用いてよい。また、具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPF6および/またはLiBF4などのLi塩が用いられてよい。
【0050】
本開示において二次電池に含まれ得る「外装体」は、概して、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層が少なくとも1つ積層して成る電極組立体を必要に応じて電解質と共に収納または包み込むことができる部材を意味する。
【0051】
外装体は、例えば、非ラミネート構成を有する金属外装体であってよい。非ラミネート構成を有する金属外装体とは、金属シート/融着層/保護層から成るようなラミネート部材ではなく、金属単一部材から成る構成を有する。例えば、金属外装体は、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウムなどの金属から成る単一部材であってもよい。ここでいう「金属単一部材」とは、広義には、外装体がいわゆるラミネート構成を有さないことを意味しており、狭義には、外装体が実質的に金属のみから成る部材となることを意味している。したがって、実質的に金属のみから成る部材となるのであれば、金属外装体の表面に適当な表面処理がなされていてもよい。
【0052】
金属外装体は、その厚さが例えば50μm以上300μm以下、好ましくは50μm以上200μm以下である。このような薄い外装体を用いることで、二次電池の小型化やエネルギー密度の向上に寄与することができる。
【0053】
外装体は金属外装体であってよい。また、このような金属外装体は、カップ状部材と蓋状部材とから構成され得る2パーツ構成を有していてよい。カップ状部材および蓋状部材がそれぞれ金属から成る単一部材であってよい。
【0054】
本開示において二次電池に含まれる「絶縁部材」は、「外装体」と以下にて詳説する「平板状端子」との間に介在し、それらの間の“絶縁”に寄与し得る部材である。絶縁部材は、“絶縁性”を呈すのであれば、その種類に特に制限はない。絶縁部材は、“絶縁性”だけでなく、“接着性”および/または“融着性”を有していてよい。
【0055】
絶縁部材としては、例えば、樹脂材料、エラストマー材料、ガラス材料などを用いることができる。
【0056】
樹脂材料として、例えば熱融着性樹脂を用いることができる。熱融着性樹脂としては、例えば、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂およびその共重合体などを挙げることができる。熱融着性樹脂は化学的に変性されていてもよい。絶縁部材としては、熱融着性樹脂の単一層フィルムや、熱融着性樹脂を含む多層フィルムなどを用いることができる。多層フィルムの例としては、中間層となる高融点樹脂層の両面を低融点樹脂層(例えば熱融着性樹脂層)でサンドイッチした多層熱融着性フィルムなどを挙げることができる。
【0057】
別の切り口で捉えると、樹脂材料は、絶縁性を呈する接着剤の成分を含んでいてもよい。かかる接着剤としては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系接着剤、天然ゴム等のゴム系接着剤、シリコーンゴム等のシリコーン系接着剤、ウレタン樹脂等のウレタン系接着剤、α-オレフィン系接着剤、エーテル系接着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、水性高分子-イソシアネート系接着剤、スチレン-ブタジエンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、反応性ホットメルト系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリアミド樹脂系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、ポリオレフィン樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール樹脂系接着剤、ポリベンズイミダソール系接着剤、ポリメタクリレート樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、および/またはレゾルシノール系接着剤等を挙げることができる。
【0058】
エラストマー材料として、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
【0059】
ガラス材料としては、例えば、ホウ酸塩系、ケイ酸塩系、ゲルマネート系、バナデート系、リン酸塩系等の低融点の酸化物系ガラスなどを挙げることができる。
【0060】
絶縁部材は、1層以上であればよく、その層数は特に限定されない。絶縁部材の厚みは、例えば10μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0061】
[本開示の電池の特徴]
本発明の二次電池は、電極組立体および必要に応じて電解質を収納する又は包み込むことができる外装体およびその周辺部品に関して特徴を有している。特に、二次電池の外装体とそれに取り付けられる電極端子(すなわち正極端子または負極端子)として機能し得る「平板状端子」に関連する要素の点で特徴を有している。
【0062】
具体的には、本発明の二次電池は、電極組立体と、この電極組立体および必要に応じて電解質を収納または包み込むことができる外装体とを含み、この外装体には絶縁部材を介して接合された平板状端子が具備されていることを特徴とする。
【0063】
本開示の二次電池に含まれ得る「平板状端子」は、「第1端子部材」と「第2端子部材」とを含んで成り、第1端子部材および第2端子部材は互いに異なる「線膨張係数」を有する材料から形成されていてよい。
【0064】
本開示において「線膨張係数」は、「線膨張率」とも呼ばれ、概して、単位温度(例えば1Kまたは1℃)の温度変化によって生じ得る物体の単位長さあたりの伸縮量を意味する。例えば金属などの物体は温度が上昇すると膨張し、温度が低下すると収縮する。このような物体の長さをlとし、温度をTとした場合、線膨張係数βは、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0065】
本開示において、第1端子部材および第2端子部材が互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されている限り、第1端子部材および第2端子部材を形成するために使用することができる材料に特に制限はない。
【0066】
例えば
図1の本開示の一実施形態に係る二次電池10で示すように、平板状端子5において、第1端子部材1と第2端子部材2とが互いに積層していてよく、第1端子部材1が第2端子部材2の上側に積層していてよい。平板状端子5に含まれ得る第2端子部材2は、絶縁部材3に直接的または間接的に対向するように、絶縁部材3の上側に配置されていてよい。
【0067】
本開示において、平板状端子に含まれ得る第1端子部材および第2端子部材の形状に特に制限はない。第1端子部材および第2端子部材はいずれも平板状であってよい。第1端子部材および第2端子部材は同一の寸法および/または形状を有していてよい。
【0068】
本開示において、第1端子部材を形成することができる材料は、金属または合金であることが好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅およびニッケルから成る群から選択されることがより好ましい。第1端子部材を形成することができる材料は、カーボン、導電性樹脂であってもよい。
【0069】
本開示において、第2端子部材を形成することができる材料は、金属または合金であることが好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅およびニッケルから成る群から選択されることがより好ましい。第2端子部材を形成することができる材料は、カーボン、導電性樹脂であってもよい。
【0070】
材料がアルミニウムの場合、線膨張係数は約23×10-6/Kである。
ステンレス鋼(SUS)の場合、線膨張係数は約17×10-6/Kである。
銅の場合、線膨張係数は約17×10-6/Kである。
ニッケルの場合、線膨張係数は約13×10-6/Kである。
【0071】
第1端子部材および第2端子部材が互いに異なる線膨張係数を有する限り、第1端子部材を形成する材料と第2端子部材を形成する材料との組み合わせに特に制限はない。
【0072】
本開示において、第1端子部材と第2端子部材とが結合して平板状端子を形成してよい。平板状端子は、第1端子部材および第2端子部材からなるクラッド材から形成されてよい。本開示において、平板状端子には、第1端子部材および第2端子部材だけでなく、他の端子部材の層が任意に積層されてよい。
【0073】
3層以上の積層の例としては、例えば、第1端子部材と第2端子部材との間に、1層以上の第3端子部材を配置した例や、第1端子部材と接し、絶縁部材の反対側に位置する1層以上の第4端子部材を配置する例などを挙げることができる。第3端子部材および第4端子部材を構成する材料に特に制限はなく、第1端子部材および第2端子部材と同様の材料を使用してもよい。
【0074】
第1端子部材および第2端子部材は、それぞれ独立して、各層に対して10%以下の厚みを有するメッキ層または表面処理層を有していてよい。メッキ層または表面処理層は、クロムあるいはニッケルなどを含む材料から形成されてよい。
【0075】
平板状端子は、第1端子部材および第2端子部材が互いに異なる線膨張係数を有することから、温度の上昇に伴って、変位または変形して反ることができる。
【0076】
例えば
図3に示すように平板状端子は全体的に上方に湾曲しながら反ることができる。例えば、ドーム状又は弓形に湾曲することができる。具体的には、断面視で中央部が上方に反ることができる。換言すると、断面視で両端部が下方に反ることができる。
【0077】
例えば
図5に示すように平板状端子は全体的に下方に湾曲しながら反ることもできる。例えば、すり鉢状又は弓形に湾曲することができる。具体的には、断面視で中央部が下方に反ることができる。換言すると、断面視で両端部が上方に反ることができる。
【0078】
例えば、昇温により平板状端子が反ることで平板状端子は絶縁部材から少なくとも部分的に剥離することができる(
図2Bおよび
図4B参照)。このような状態で電池の内部から圧力がかかると、より低い圧力で封止部を開裂させることができる。
【0079】
本開示において「封止部」とは、外装体の表面、特に開口部の周囲において、平板状端子が絶縁部材を介して外装体に結合された部分を意味する。封止部は、例えば、
図1の破線で囲んだ部分として示すことができる。
【0080】
本開示において「封止部」の「開裂」とは、概して、平板状端子と絶縁部材との結合が解除されることを意味する。換言すると、平板状端子と絶縁部材とが結合していないことを意味する。また、「封止部」の「開裂」には、絶縁部材と外装体との結合の解除も含まれ得る。
【0081】
封止部が「開裂」するときの直前の電池内部の圧力を「開裂圧」と称する。「開裂圧」は、概して、平板状端子と絶縁部材との接着面積に依存する(例えば
図13参照)。つまり、「開裂圧」と、「接着面積」および「封止性」とはトレードオフの関係にある。しかし、本開示の二次電池では、「接着面積」および「封止性」を確保しつつ、換言すると封止性が低減することなく、昇温時に熱応力が発生することによって、平板状端子が反ることで「開裂圧」をより低減することができる。
【0082】
本開示において、第1端子部材の線膨張係数が第2端子部材の線膨張係数よりも大きくてよい。換言すると、第2端子部材の線膨張係数が第1端子部材の線膨張係数よりも小さくてよい。
あるいは、第2端子部材の線膨張係数が第1端子部材の線膨張係数よりも大きくてよい。換言すると、第1端子部材の線膨張係数が第2端子部材の線膨張係数よりも小さくてよい。
【0083】
第1端子部材の線膨張係数が第2端子部材の線膨張係数よりも大きい場合、例えば
図3に示すように断面視で平板状端子の中央部が上方に反ることができる。
【0084】
例えば、第1端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される場合、あるいは第2端子部材を形成する材料がニッケルであり、第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される場合、第1端子部材の線膨張係数が第2端子部材の線膨張係数よりも大きくなる。例えば
図3に示すように断面視で平板状端子の中央部が上方に反ることができる。また、このような組み合わせによって、作動電位範囲においてより安定な電極とすることができる。
【0085】
第2端子部材の線膨張係数が第1端子部材の線膨張係数よりも大きい場合、例えば
図5に示すように断面視で平板状端子の中央部が下方に反ることができる。
【0086】
例えば、第1端子部材を形成する材料がニッケルであり、第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される場合、あるいは第2端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される場合、第2端子部材の線膨張係数が第1端子部材の線膨張係数よりも大きくなる。例えば
図5に示すように断面視で平板状端子の中央部が下方に反ることができる。また、このような組み合わせによって、リード体や外部端子との溶接を促進することができる。さらに、電解液による腐食にも耐えることができる。
【0087】
尚、第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される場合、あるいは第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される場合、平板状端子の中央部を断面視で任意に上方および下方のいずれにも反らせることができる。
【0088】
上述のような平板状端子の反りを達成するために、第1端子部材の線膨張係数と第2端子部材の線膨張係数との差は5×10-6/K以上であってよい。
【0089】
以下、より具体的な実施形態を挙げて本開示の二次電池を詳説する。
【0090】
[実施形態]
図1に本開示の一実施形態に係る二次電池10を示す。
例えば
図1Aに示す通り、二次電池10は、第1端子部材1と第2端子部材2とが互いに結合されて成る平板状端子5と、絶縁部材3と、電極組立体11(例えば
図10参照)と、この電極組立体11および必要に応じて電解質を収納することができる外装体4とから主に構成されていてよい。
【0091】
外装体4は、その上方に開口部を有していてよく、この開口部を通して、電極組立体11(より具体的には正極または負極)と平板状端子5とを電気的に接続することができるリード体(図示せず)を配置することができる。
【0092】
外装体4の開口部の周囲の外側表面には、例えば円盤形、好ましくは上面視がドーナツ形の絶縁部材3が配置されていてよい。絶縁部材3の上方には、平板状端子5の第2端子部材2が絶縁部材3の少なくとも一部と接するように、平板状端子5が配置されて結合されていてよい。
【0093】
平板状端子5は、円盤状の形状を有していてよい。平板状端子5が円盤状の形状を有する場合、その直径に特に制限はなく、例えば5mm~10mmである。
【0094】
絶縁部材3を介して外装体4と平板状端子5とが結合することによって、例えば
図1Aの破線で示すような封止部を形成することができる。例えば絶縁部材3の接着性および/または融着性によって上記の結合を形成することができる。このような封止部により封止性を確保することができる。
【0095】
図1Bに封止部を模式的に示す。例えば充放電の際に異常な温度の上昇(例えば40℃以上120℃以下)によってガスが電池内部に発生した場合あるいは圧力上昇した場合、力(F
1)で平板状端子5、特に第2端子部材2を矢印に沿って押圧する。ここで、第2端子部材2を“内側端子部材”と称し、第1端子部材1を“外側端子部材”と称してもよい。
【0096】
平板状端子5では、第1端子部材1および第2端子部材2は互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されていてよく、第1端子部材1の線膨張係数は、第2端子部材2の線膨張係数よりも大きい。
【0097】
例えば、充放電の際、通常の温度範囲(例えば0℃以上40℃未満)、好ましくは周囲温度(例えば25℃)では、例えば
図2Aに模式的に示す通り、平板状端子5において「反り」を形成することなく、高い密封性を維持することができる。
【0098】
例えば、充放電の際に異常な温度上昇が発生すると、例えば
図2Bに模式的に示す通り、この温度上昇の影響を受けて、平板状端子5において「反り」が発生し、平板状端子5が絶縁部材3から少なくとも部分的に剥離することができる。本開示では、平板状端子5の左右の結合端部のうち、いずれか一方が剥離すればよい。
【0099】
このような状態では、より小さな力(F1)で封止部を開裂させることができる。すなわち、より低い内圧で封止部を開裂させることができる。
【0100】
ここで、各部材の厚みに特に制限はない。例えば、
図1Bに示す通り、第1端子部材1の厚みT
1は、例えば50μm~150μmである。第2端子部材2の厚みT
2は、例えば50μm~150μmである。平板状端子5の全体の厚みT
0(=T
1+T
2)は、例えば100μm~300μmである。
【0101】
第1端子部材1の厚みT1と第2端子部材2の厚みT2との比(T1/T2)に特に制限はなく、例えば1/1であってよい。
【0102】
絶縁部材3の厚みT3は、例えば10μm~100μmである。
【0103】
外装体4の厚みT4は、例えば50μm~200μmである。
【0104】
例えば
図3において、平板状端子5が上方に反った状態を模式的に示す。平板状端子5の反りの大きさD
1(または中心部もしくは端部の変位量)に特に制限はなく、例えば1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらにより好ましくは40μm以上である。平板状端子5の反りの大きさD
1は50μm以下であることが好ましい。
【0105】
図4に他の実施形態に係る二次電池20を示す。
例えば
図4Aに示す通り、二次電池20は、第1端子部材21と第2端子部材22とが互いに結合されて成る平板状端子25と、絶縁部材23と、電極組立体11(
図10参照)と、この電極組立体11および必要に応じて電解質を収納することができる外装体24とから主に構成されていてよい。
【0106】
二次電池20において、絶縁部材23、外装体24および平板状端子25は、
図1に示す二次電池10の絶縁部材3、外装体4および平板状端子
25にそれぞれ対応してよい。ただし、
図4に示す平板状端子25に含まれる第1端子部材21および第2端子部材22に関して、第2端子部材22の線膨張係数は、第1端子部材21の線膨張係数よりも大きい。
【0107】
平板状端子25において、第2端子部材22の線膨張係数が、第1端子部材21の線膨張係数よりも大きいことから、例えば
図4Bに模式的に示す通り、充放電の際に異常な温度上昇が発生すると、平板状端子25は、この温度上昇の影響を受けて、断面視で平板状端子25の中央部に下方の「反り」が発生し、平板状端子25、特に端部が絶縁部材33から少なくとも部分的に剥離することができる。
【0108】
例えば
図5において、平板状端子25が下方に反った状態を模式的に示す。平板状端子25の反りの大きさD
2(または中心部もしくは端部の変位量)に特に制限はなく、例えば1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらにより好ましくは40μm以上である。
【0109】
二次電池20においても、封止性を確保しつつ、異常な昇温により内圧が上昇した場合、より低い圧力で封止部を開裂させることができる。
【0110】
図6に別の実施形態に係る二次電池30を示す。
二次電池30は、第1端子部材31と第2端子部材32とが互いに結合されて成る平板状端子35と、絶縁部材33と、電極組立体11(
図10参照)と、この電極組立体11および必要に応じて電解質を収納することができる外装体34とから主に構成されていてよい。
【0111】
二次電池30において、絶縁部材33、外装体34および平板状端子35は、
図4に示す二次電池20の絶縁部材23、外装体24および平板状端子25にそれぞれ対応してよい。ただし、
図6に示す二次電池30では、異常な昇温により内圧が上昇した場合、外装体34も上方に変形することができるように構成されている。例えば、外装体34の厚みを小さくすることや材料を変更することで外装体34を上方に変形することができる。二次電池30は、このような構成を有することで平板状端子35の反り形状が外装体34の変形に追従することがないので、平板状端子35の第2端子部材32と絶縁部材33との間の接触面積をさらに低減することができる。従って、異常な昇温により内圧が上昇した場合、さらにより低い圧力で封止部を開裂させることができる。
【0112】
外装体34の開口部の周囲縁部の変位量D3に特に制限はなく、例えば1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらにより好ましくは40μm以上である。
【0113】
図7にさらに別の実施形態に係る二次電池40を示す。
二次電池40は、第1端子部材41と第2端子部材42とが互いに結合されて成る平板状端子45と、絶縁部材43と、電極組立体11(
図10参照)と、この電極組立体11および必要に応じて電解質を収納することができる外装体44とから主に構成されていてよい。
【0114】
二次電池40において、絶縁部材43、外装体44および平板状端子45は、
図4に示す二次電池20の絶縁部材23、外装体24および平板状端子25にそれぞれ対応してよい。ただし、
図7に示す二次電池40の絶縁部材43は、平板状端子45の周囲縁部の少なくとも一部を覆う隆起部43bを有していてよい(
図8参照)。
【0115】
本開示において平板状端子の「周囲縁部」とは、概して、平板状端子の2つの主面を除く側部を意味する。
【0116】
より具体的には、
図8Aに示す通り、絶縁部材43は、平坦部43aと、隆起部43bとを有する。
【0117】
例えば
図8Aに示す通り、隆起部43bは、平板状端子45の周囲縁部、特に第2端子部材42の周囲縁部の少なくとも一部を覆うことができる。このような構成によって、平板状端子45と絶縁部材43との結合ならびに封止性をさらに高めることができる。
【0118】
隆起部43bの厚みT
3bは、平板状端子45の厚みT
0の5%以上20%以下であってよい。より具体的には、
図8Aに示す平板状端子の厚みT
0に対する隆起部43bの厚みT
3bの比(T
3b/T
0)は、例えば1/20以上1/5以下であってよい。このようの範囲内であると、封止性を確保するとともに、昇温時の封止部の開裂を円滑に促進することができる。尚、T
3b/T
0の比は、1/2以上であってもよく、隆起部43bが第1端子部材41の周囲縁部の少なくとも一部まで覆っていてもよい。
【0119】
隆起部43bの厚みT3bは、例えば10μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0120】
平板状端子45が下方に反った状態を
図8Bに模式的に示す。より具体的には、
図9に示す通り、平板状端子45の反りの大きさD
4(端部の変位量)に特に制限はなく、例えば10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上である。
【0121】
平板状端子45の反りの大きさD
4は、
図8Aに示す隆起部43bの厚みT
3bよりも大きいことが好ましい。
【0122】
本開示の二次電池は、上記の実施形態に限定して解釈されるべきではない。
【0123】
(他の構成)
本開示において「リード体」または「タブ」とは、電極組立体の正極または負極と電気的に接続され得る導電性部材を意味し、電極組立体から突出又は延出していてよい。かかるタブは、少なくとも外装体の開口部を通して平板状端子の内側主面、特に内側端子部材に取り付けられることができ、当該内側端子部材と電極組立体の正極または負極のいずれか一方の電極層との間の電気的接続を担うことができる。このようなリード体またはタブは、上記で説明した「集電体」(すなわち、「正極集電体」または「負極集電体」)から延出していてよく、このような集電体と同じ材料から構成されてよい。
【0124】
本開示において、平板状端子は電極端子であってよい。平板状端子が正極および負極の一方であり、外装体が正極および負極の他方であってよい。特に、本開示の二次電池では、平板状端子が正極であり、外装体が負極であってよい。このような構成とすることで、正極に対して負極を大きくすることができる。
【0125】
従って外装体は金属外装体であってよい。金属外装体がカップ状部材および蓋状部材の2パーツ構成を有して成るものであってよい。
【0126】
本開示の二次電池は、平面視で円形の二次電池であってよく、ボタン形またはコイン形など全体として略円筒形の形状を有する二次電池であってよい(例えば
図11(a)参照)。ただし、本開示の二次電池は、ボタン形またはコイン形の形状を有する二次電池に限定されるものではない。本開示の二次電池は、例えば角形の形状を有する二次電池であってもよい(例えば
図11(b)参照)。つまり、本開示の二次電池は、その平面視形状が、円形に限られず、四角形や矩形などの形状を有していてもよい。
また、
図11に示す態様では、平板状端子を円形で記載しているが、矩形や他の幾何学的な形状であってよい。
【0127】
本開示の二次電池において電極組立体の電極として、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極および負極が含まれていてよい。このような二次電池は、リチウムイオン二次電池として使用することができる。ただし、本開示の二次電池は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではない。
【0128】
(製造方法)
本開示の二次電池、特に電極端子(又は端子部材)付近の構成は、従来公知の製造方法と同様に製造することができる。
具体的には、平板状端子と、開口部を有する絶縁部材と、同じく開口部を有する外装体とをこの順序で積層し、加熱しながら加圧することで、本発明に従う電極端子(又は端子部材)付近の構成を形成することができる。
平板状端子における第1端子部材と第2端子部材との結合方法に特に制限はない。例えば従来公知の金属板の接合方法などを特に制限なく使用することができる。
【0129】
以下、本開示の二次電池をいくつかの実施例を挙げて詳説する。
【実施例】
【0130】
[実施例1]
実施例1の二次電池として、例えば
図1に模式的に示すボタン型の構造を有する二次電池10を作製した。各構成は以下に記載する通りであった。電極組立体11は、常套的な電極組立体の製法に準じて作製した。
【0131】
平板状端子5:第1端子部材1と第2端子部材2とのクラッド材(バイメタル系)
第1端子部材1:線膨張係数23×10-6/Kのアルミニウム(Al)
第2端子部材2:線膨張係数17×10-6/Kステンレス鋼(SUS304)
絶縁部材3:変性ポリプロピレン
外装体4:ステンレス鋼(SUS304)
【0132】
外装体4を円筒形のカップ状部材と、円盤形の蓋状部材の2パーツ構成とし、蓋状部材の中央部に円形の開口部を設けた。
外装体4の円筒形のカップ状部材内に非水電解液とともに電極組立体11を配置し、蓋状部材でカップ状部材を溶接で閉じた。このときタブを介して電極組立体11の正極と平板状端子5の第2端子部材2とを電気的に接続し、同じく、タブを介して電極組立体11の負極と外装体4のカップ状部材とを電気的に接続した。
蓋状部材の円形の開口部の周囲に同様の開口部を有する同心円状の円盤形の絶縁部材3を配置した。
絶縁部材3の上面にさらに円盤形の平板状端子5を加熱しながら押圧することで配置した。このとき、平板状端子5の第2端子部材2と絶縁部材3とが互いに接着していた。
【0133】
実施例1の二次電池10では、120℃まで昇温する間、平板状端子5の第1端子部材1と第2端子部材2との間で線膨張係数の違いにより熱応力が生じ、この熱応力により平板状端子5の中央部が上方に反ることで第2端子部材2と絶縁部材3との接着面を剥離させる力が働いた(
図2B参照)。その結果、二次電池10の内圧が上昇することで外装体4の開口部の周囲の表面において平板状端子5と絶縁部材3とで形成された封止部が開裂した。
【0134】
以上の結果から、電池の通常の作動温度領域(例えば常温(25℃))では熱応力がほとんど生じないため、封止性を確保することができ、異常時の温度上昇では平板状端子5が反ることで、より低い圧力で封止部が開裂することが実証された。
【0135】
[実施例2]
以下の平板状端子を用いたことを除いて実施例1と同様にして
図1に示す二次電池10を作製した。
平板状端子5:第1端子部材1と第2端子部材2とのクラッド材
第1端子部材1:線膨張係数23×10
-6/Kのアルミニウム(Al)
第2端子部材2:線膨張係数13×10
-6/Kのニッケル(Ni)
実施例1と同様の結果を得ることができた。
【0136】
[実施例3]
以下の平板状端子を用いたことを除いて実施例1と同様にして
図1に示す二次電池10を作製した。
平板状端子5:第1端子部材1と第2端子部材2とのクラッド材
第1端子部材1:線膨張係数17×10
-6/Kのステンレス鋼(SUS304)
第2端子部材2:線膨張係数13×10
-6/Kのニッケル(Ni)
実施例1と同様の結果を得ることができた。
【0137】
[実施例4]
以下の平板状端子を用いたことを除いて実施例1と同様にして
図4に示す二次電池20を作製した。
平板状端子25:第1端子部材21と第2端子部材22とのクラッド材
第1端子部材21:線膨張係数17×10
-6/Kのステンレス鋼(SUS304)
第2端子部材22:線膨張係数23×10
-6/Kのアルミニウム(Al)
二次電池20では、
図4Bに示す通り、平板状端子25の中央部が下方に反ることで異常な昇温時により低い圧力で封止部が開裂した。
【0138】
[実施例5]
以下の平板状端子を用いたことを除いて実施例4と同様にして
図4に示す二次電池20を作製した。
平板状端子25:第1端子部材21と第2端子部材22とのクラッド材
第1端子部材21:線膨張係数13×10
-6/Kのニッケル(Ni)
第2端子部材22:線膨張係数17×10
-6/Kのステンレス鋼(SUS304)
この二次電池20では、
図4Bに示す通り、平板状端子25の中央部が下方に反ることで異常な昇温時により低い圧力で封止部が開裂した。
【0139】
[実施例6]
以下の平板状端子を用いたことを除いて実施例4と同様にして
図4に示す二次電池20を作製した。
平板状端子25:第1端子部材21と第2端子部材22とのクラッド材
第1端子部材21:線膨張係数13×10
-6/Kのニッケル(Ni)
第2端子部材22:線膨張係数23×10
-6/Kのアルミニウム(Al)
この二次電池20では、
図4Bに示す通り、平板状端子25の中央部が下方に反ることで異常な昇温時により低い圧力で封止部が開裂した。
【0140】
常温(25℃)から120℃に昇温した際の平板状端子25(φ7.2mm)の外周縁部の反りを
図12に示す。平板状端子25の中央部から外周縁部にかけて40μm程度の反りが生じた。
【0141】
第2端子部材22と絶縁部材23との接着面積と、開裂圧との関係を
図13のグラフに示す(常温(25℃))。
図13のグラフから、接着面積と開裂圧との間に比例の関係があることが分かった。
【0142】
以上の結果から、電池の通常の作動温度領域(例えば常温(25℃))では熱応力がほとんど生じないため、封止性を確保することができ、異常時の温度上昇では平板状端子25が反ることで、接着面積が減少し、より低い圧力で封止部が開裂することが実証された。
【0143】
[実施例7~9]
外装体、特に外装体の蓋状部材の厚みを小さくしたことを除いて実施例4~6と同様にして
図6に示す二次電池30をそれぞれ作製した(実施例7~9の二次電池)。
二次電池30では、
図6に示す通り、平板状端子35の中央部が下方に反り、それに対向するように外装体34が上方に反ることで異常な昇温時に絶縁部材33と第2端子部材32との接着面積がより減少し、さらにより低い圧力で封止部が開裂した。
【0144】
[実施例10~12]
絶縁部材に隆起部を設けたことを除いて実施例4~6と同様にして
図7に示す二次電池40を作製した(実施例10~12の二次電池)。
図7および
図8に示す二次電池40において、製造の際に平板状端子45よりも大きな面積を有する均一な厚みの絶縁部材を準備し、この絶縁部材に平板状端子45を押圧することで絶縁部材の平坦部43aおよび隆起部43bを形成した(
図8参照)。
図7に示す二次電池40において、隆起部43bの高さ(T
3b)は、第2端子部材42の厚み(T
2)の範囲内に調節した。
実施例4~6で作製した二次電池(
図4)と比較して、実施例10~12の二次電池40では、第2端子部材42と絶縁部材43との接着面積が向上することで、正常な温度範囲(例えば常温(25℃))において封止性が向上した(
図8A)。また、安全性をより高めることができた。さらに、異常に昇温した場合には、
図8Bに示すように平板状端子45が反ることで第2端子部材42と絶縁部材の平坦部43aとの接着面積が減少し、より低い圧力で封止部を開裂させることができた。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれらに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
【0146】
(態様1)
電極組立体と、前記電極組立体を収納する外装体とを備え、
前記外装体には絶縁部材を介して接合された平板状端子が具備されており、
前記平板状端子は第1端子部材と第2端子部材とを含んで成り、
前記第1端子部材および前記第2端子部材は互いに異なる線膨張係数を有する材料から形成されており、
前記第1端子部材が前記第2端子部材上に積層するように前記第1端子部材と前記第2端子部材とが互いに積層しており、
前記第2端子部材が前記絶縁部材に対向するように前記平板状端子が前記絶縁部材上に配置されている、二次電池。
(態様2)
昇温により前記平板状端子が反ることで前記平板状端子が前記絶縁部材から剥離する、態様1に記載の二次電池。
(態様3)
前記第1端子部材の線膨張係数が前記第2端子部材の線膨張係数よりも大きい、態様1または2に記載の二次電池。
(態様4)
前記第2端子部材の線膨張係数が前記第1端子部材の線膨張係数よりも大きい、態様1または2に記載の二次電池。
(態様5)
前記第1端子部材の線膨張係数と前記第2端子部材の線膨張係数との差が5×10-6/K以上である、態様1~4のいずれかに記載の二次電池。
(態様6)
前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の二次電池。
(態様7)
前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、態様1~6のいずれかに記載の二次電池。
(態様8)
前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、前記第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がニッケルであり、前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される、態様1に記載の二次電池。
(態様9)
前記第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がステンレス鋼であり、前記第1端子部材を形成する材料がアルミニウム、銅およびニッケルから成る群から選択される、態様1に記載の二次電池。
(態様10)
前記第1端子部材を形成する材料がニッケルであり、前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウム、ステンレス鋼および銅から成る群から選択される、あるいは前記第2端子部材を形成する材料がアルミニウムであり、第1端子部材を形成する材料がステンレス鋼、銅およびニッケルから成る群から選択される、態様1に記載の二次電池。
(態様11)
前記絶縁部材が前記平板状端子の周囲縁部の少なくとも一部を覆う隆起部を有する、態様1~10のいずれかに記載の二次電池。
(態様12)
前記平板状端子の周囲縁部の少なくとも一部を覆う前記隆起部の厚みが、前記平板状端子の厚みの5%以上20%以下である、態様11に記載の二次電池。
(態様13)
前記平板状端子は正極および負極の一方であり、前記外装体は前記正極および前記負極の他方である、態様1~12のいずれかに記載の二次電池。
(態様14)
前記外装体が金属外装体であり、前記金属外装体がカップ状部材および蓋状部材の2パーツ構成を有して成る、態様1~13のいずれかに記載の二次電池。
(態様15)
ボタン形またはコイン形の形状を有する、態様1~14のいずれかに記載の二次電池。
(態様16)
前記電極組立体の電極として、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極および負極が含まれる、態様1~15のいずれかに記載の二次電池。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示の二次電池は、蓄電が想定され得る様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本開示の二次電池は、電気・電子機器などが使用され得る電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、ウェアラブルデバイス、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1,21,31,41 第1端子部材
2,22,32,42 第2端子部材
3,23,33,43 絶縁部材
4,24,34,44 外装体
5,25,35,45 平板状端子
10,20,30,40 二次電池
11,111,211 電極組立体
12 正極
13 セパレータ
14 負極
15 電極構成層
100,200 従来の電池
101 平板状電極端子部材
103 シール部材
104 外装ケース
201 外部端子
202 ワッシャ
203 ガスケット
204 電池缶
205 封口板
206 第1溝
207 第2溝