(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】解析装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240806BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/00 K
C12M1/34 Z
(21)【出願番号】P 2022558966
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037177
(87)【国際公開番号】W WO2022091740
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2020179184
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花房 信博
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 龍太
(72)【発明者】
【氏名】北村 顕一
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526060(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230043(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/150684(WO,A1)
【文献】特開2012-021752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記開口部を開閉する扉と、
前記筐体内に収容され、解析対象の検体が入れられた検体容器を設置可能な検体容器設置部と、
前記筐体内に空気の流れを発生させる送風機と、
前記送風機によって送風される空気をろ過するエアフィルタとを備え、
前記扉が開いた状態で、前記送風機の発生する空気の流れにおいて、前記送風機の上流側に前記検体容器設置部が設けられ、前記検体容器設置部の上流側に前記開口部が設けられ、前記検体容器設置部の下流側に前記エアフィルタが設けら
れ、
前記筐体は、前面と背面とを有し、前記開口部は前記前面側に設けられ、空気を前記筐体外に排出する排気口を前記背面に有する、解析装置。
【請求項2】
前記開口部は、上向きに開口しており、
前記送風機および前記エアフィルタは、前記検体容器設置部の下方に配置される、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記検体容器設置部は、前記検体容器設置部の外部から内部へ空気を吸引する吸気孔と、前記検体容器設置部の内部から外部に空気を流出させる通気孔とを有する、請求項1または請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記検体容器設置部は、解析に用いられる試薬が入れられた試薬容器をさらに設置可能である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記検体容器設置部は、前記検体容器に入れられた検体を分注するための分注チップをさらに設置可能である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記エアフィルタは、HEPAフィルタである、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析対象となる検体(血液、尿、鼻咽頭拭い液、唾液等の生体由来サンプルなど)に含まれる感染症ウィルスまたは遺伝子の解析を行なうための解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、以下「PCR」ともいう)を用いて検体に含まれる遺伝子の解析を行なうための装置が存在する(たとえば特許第4785862号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解析装置に検体をセットする時、解析中の検体分注時、撹拌時、装置から検体および使用済み分注チップを取り出す時などに、飛沫が発生したり、粉塵に付着したウィルスが浮遊したりすることにより、作業者の感染および検体のコンタミネーションが発生する可能性がある。
【0005】
本開示では、感染およびコンタミネーションの発生の可能性を低減できる解析装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る解析装置は、開口部を有する筐体と、開口部を開閉する扉と、筐体内に収容され、分析対象の検体が入れられた検体容器を設置可能な検体容器設置部と、筐体内に空気の流れを発生させる送風機と、送風機によって送風される空気をろ過するエアフィルタとを備えている。扉が開いた状態で、送風機の発生する空気の流れにおいて、送風機の上流側に検体容器設置部が設けられ、検体容器設置部の上流側に開口部が設けられ、検体容器設置部の下流側にエアフィルタが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示においては、送風機は、筐体の周辺の空気を誘引して気流を発生させている。送風機によって、開口部、検体容器設置部、エアフィルタの順に流れる空気の流れが作られている。送風機は、開口部よりも空気の流れの下流側に設けられている。
【0008】
検体容器などの解析対象を作業者が解析装置にセットする際に、開口部から筐体内へ流入する空気の流れをつくることにより、検体に含まれるウィルスなどの有害物質が作業者に向かって吐出されることが回避される。これにより、作業者が感染する可能性を低減することができる。開口部を経由して筐体内に流れ込んだ空気は、検体容器設置部の周囲を通過する。検体容器設置部の周囲に空気の流れをつくることにより、ある検体容器内の検体が浮遊して他の検体容器に入り込むことが抑制されるので、検体のコンタミネーションの発生の可能性を低減することができる。検体容器設置部を通過した空気は、エアフィルタに吸引されてろ過される。有害物質がエアフィルタによって吸着されて空気から除去されるので、筐体外に無害な空気を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】解析システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】容器が設置された状態の保持装置をZ軸に沿う方向から視た図である。
【
図3】容器が設置された状態の保持装置をY軸に沿う方向から視た断面図である。
【
図4】解析装置による解析処理の各工程を模式的に示す図である。
【
図6】上扉が閉められた状態の筐体の内部構成を示す断面模式図である。
【
図7】移動装置の概略構成を示す平面模式図である。
【
図8】
図7に示される移動装置の前方からの斜視図である。
【
図9】可動プレートに搭載された保持部付近を拡大して示す斜視図である。
【
図13】変形例の温調部の構成の詳細を示す部分断面図である。
【
図14】
図13中のXIV-XIV線に沿う、温調部の断面図である。
【
図15】温調部の他の変形例の構成の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
<解析システム1の構成>
図1は、本実施の形態による解析システム1の構成の一例を概略的に示す図である。解析システム1は、PCRによる遺伝子の増幅を経時的(リアルタイム)に測定して解析する処理を全自動で行なうことができる装置である。以下では、
図1に示すように、鉛直方向(
図1においては上下方向)に沿う方向を「Z軸方向」、鉛直方向に垂直であってかつ互いに直交する方向をそれぞれ「X軸方向」および「Y軸方向」とも称する。
【0012】
解析システム1は、解析装置2と、解析装置2と通信可能な端末3とを含む。端末3は、作業者によって操作される、ディスプレイを備えた一般的なパーソナルコンピュータである。
【0013】
解析装置2は、検査装置10と、制御装置20と、温調装置30と、移動装置4,5とを含む。温調装置30は、複数の容器50等を保持可能に構成される保持装置(ホルダ)40を含む。保持装置40は、温調部41と、保持部42とを含む。温調部41は、ペルチェ素子、ヒーター、冷却装置などに代表される温度源44、およびヒートリッド45による温調機能(加熱機能および冷却機能)を有する。保持部42は、温調機能を有さない。
【0014】
移動装置4は、検査装置10を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(図示せず)を含む。移動装置5は、保持装置40を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(
図1には不図示)を含む。移動装置4,5のアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。移動装置4,5によって検査装置10および保持装置40の少なくとも一方を水平方向に移動させることによって、検査装置10と保持装置40との水平方向の相対距離を調整することができる。なお、移動装置4,5のどちらか一方を省略するようにしてもよい。
【0015】
検査装置10は、光学ユニット11と、分注ユニット12と、開閉ユニット14と、照射ユニット16とを含む。
【0016】
分注ユニット12には、Z軸方向に延在するノズルが先端に取り付けられたシリンジ13が備えられる。ノズルの内部には、Z軸方向に沿って移動可能なプランジャ(図示せず)が備えられる。シリンジ13は、プランジャのZ軸正方向のストローク量に応じた量の液体を吸引し、プランジャのZ軸負方向のストローク量に応じた量の液体を排出するように構成される。分注ユニット12は、シリンジ13をZ軸方向に移動させるためのアクチュエータ(図示せず)と、ノズル内のプランジャをZ軸方向にストロークさせるためのアクチュエータ(図示せず)とを備える。これらのアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。
【0017】
開閉ユニット14は、保持装置40に保持されている容器50の蓋に触れて容器50の蓋を自動開閉するための突起部を有する開閉機構を備える。開閉ユニット14は、制御装置20からの指令によって動作する。
【0018】
照射ユニット16は、開閉ユニット14が容器50の蓋を開閉する際に開閉ユニット14の突起部に検体が付着して次の検体に混入(コンタミネーション)するおそれがあることに鑑み、開閉ユニット14の突起部周辺にUV光(紫外線)を照射することによってコンタミネーションを予防する。
【0019】
光学ユニット11は、励起用の光を容器50内の検体に照射したときに検体から放出される蛍光を検出することによって、検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子を解析する装置である。光学ユニット11は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長に対する蛍光検出をそれぞれ行ない、その結果を制御装置20に出力する。光学ユニット11には、光を発する光源(発光ダイオードなど)、光源からの光を検体に照射したり検体の蛍光を集めたりするためのレンズ、検体から放射される蛍光を検出し解析可能なデジタルデータに変換するフォトダイオードなどが含まれる。
【0020】
制御装置20は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力バッファ等を含んで構成される。制御装置20は、分析開始指令を端末3から受けると、解析装置2の各部(検査装置10内の各ユニット、移動装置4,5、温調装置30の温度源44およびヒートリッド45)を予め決められた手順に沿って制御することによって、検体に含まれる感染症ウィルスまたは遺伝子を解析する。制御装置20は、解析装置2による解析結果を端末3のディスプレイに表示させる。
【0021】
図2は、容器50が設置された状態の保持装置40をZ軸に沿う方向から視た図である。保持装置40は、XY平面に沿って延在し、複数の容器50が2次元状に配列される配列面を有している。検査装置10および保持装置40は、移動装置4,5によって、保持装置40の配列面に沿って2次元状に相対移動可能に構成される。
【0022】
保持装置40の配列面に配列される容器50には、サーマルサイクルの対象となる液体(各試薬が添加された検体)が入るPCR容器(反応容器)51と、各試薬の入った試薬容器52と、検体単体が入った検体容器54とが含まれる。
【0023】
PCR容器51は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つのPCR容器51a,51b,51c,51dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
【0024】
試薬容器52は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つの試薬容器52a,52b,52c,52dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。試薬容器52aには、検体処理液が予め入れられている。試薬容器52bには、反応液が予め入れられている。試薬容器52cには、プライマー/プローブ液(プライマーとプローブとを含む液)が予め入れられている。試薬容器52dには、酵素液が予め入れられている。なお、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dは、少なくとも1検体の分析に必要な量の試薬が予め封入された状態で1セットで試薬キットとして提供(市販)されている。
【0025】
検体容器54は、Y軸方向に沿って1次元状に4つ配列される。本実施の形態による解析装置2においては、Y軸方向に配列された4つの検体容器54にそれぞれ異なる検体を入れておくことによって、1度に4つの検体を分析することができる。
【0026】
保持装置40における、各容器50(PCR容器51、試薬容器52、検体容器54)が配置される箇所には、各容器50の一部をZ軸方向に沿って挿入可能な段差(穴または窪み)が形成されている。各容器50が対応する段差に挿入されることによって、各容器50のX軸方向およびY軸方向の位置が固定される。
【0027】
保持装置40における試薬容器52と検体容器54との間の領域には、検体および試薬を分注するための分注チップ53が配置される。分注チップ53は、シリンジ13のノズルに取り付けられて使用される。
【0028】
本実施の形態においては、分注チップ53として、検体容器54に用いられるロングチップ53aと、PCR容器51および試薬容器52に用いられるショートチップ(微量チップ)53bとが含まれる。分注チップ53は、X軸方向に沿って1次元状に配列される1つのロングチップ53aおよび2つのショートチップ53bを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
【0029】
サーマルサイクルの対象となるPCR容器51は温調機能を有する温調部41に配置され、その他の試薬容器52、分注チップ53、検体容器54は温調機能を有さない保持部42に配置される。
【0030】
さらに、保持装置40には、使用済みの分注チップ53を廃棄するためのチップ廃棄部43が備えられる。シリンジ13のノズルに嵌合された分注チップ53をノズルから取り外す際には、分注チップ53の上端をチップ廃棄部43の凹部下面に引っかけた状態でノズルを上方に移動させることによって、ノズルから分注チップ53が取り外されて廃棄される。
【0031】
なお、
図2には示されていないが、各容器50は、容器本体と、容器本体に対して開閉可能な蓋部とを有している。各容器50は、蓋と容器本体とが一体となった樹脂成型品である。
【0032】
図3は、容器50が設置された状態の保持装置40をY軸に沿う方向から視た断面図である。
図2にも示したように、保持装置40には、検体容器54、ロングチップ53a、2つのショートチップ53b、試薬容器52a,52b,52c,52d、PCR容器51a,51b,51c,51dが、X軸方向に沿ってこの順に配列されている。
【0033】
図2にも示したように、検体容器54は、保持部42に配置されている。保持部42は、解析対象の検体が入れられた検体容器54を設置可能な、実施の形態の検体容器設置部に相当する。保持部42は、解析に用いられる試薬が入れられた試薬容器52をさらに設置可能である。保持部42は、検体容器54に入れられた検体および試薬容器52に入れられた試薬を分注するための、分注チップ53をさらに設置可能である。保持部42は、中空に形成されている。
【0034】
保持部42の上面には、保持部42の外部から内部へ空気を吸引する複数の吸気孔61(
図2には不図示)が形成されている。吸気孔61は、検体容器54の近傍に形成されている。吸気孔61は、保持部42の上面のうち、検体容器54を挿入可能な段差の近傍に形成されている。典型的には吸気孔61は、検体容器54を挿入可能な段差の周囲に形成され、当該段差を取り囲んで形成されている。吸気孔61は、検体容器54の近傍に限られず、試薬容器52および分注チップ53の近傍に形成されていてもよい。
【0035】
保持部42の側面には、保持部42の内部から外部に空気を流出させる複数の通気孔62が形成されている。通気孔62は、検体容器54の近傍、および分注チップ53の近傍に形成されている。通気孔62の個数および配置は任意であり、保持部42の側面に加えて保持部42の底面にも通気孔62が形成されていてもよい。
【0036】
<解析処理>
作業者が、各容器50(PCR容器51、試薬容器52および検体容器54)および分注チップ53(ロングチップ53aおよびショートチップ53b)を保持装置40にセットし、分析を開始するための分析開始指令を端末3に入力すると、解析装置2による解析処理が開始される。
【0037】
図4は、解析装置2による解析処理の各工程を模式的に示す図である。解析処理においては、工程S1~S6がこの順に実行される。
【0038】
まず、工程S1では、検体5μLをPCR容器51bに分注する処理(サンプル注入)が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、シリンジ13のノズルにロングチップ53aを装着し、検体容器54から検体25μLを採取してPCR容器51aへ検体25μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0039】
次いで、制御装置20は、ロングチップ53aをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0040】
次いで、制御装置20は、シリンジ13のノズルにショートチップ53bを装着し、PCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bへ検体5μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0041】
なお、ロングチップ53aで検体を25μL採取して一時的にPCR容器51aに分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bに分注するのは、検体5μLを正確にPCR容器51bに分注するためである。すなわち、シリンジ13のノズルの内部に備えられるプランジャは基本的に微量の分注を行うショートチップ53bに対応させているために細く、同じストローク量では、ロングチップ53aの使用時において分注精度が低下し正確な結果が得られない場合が生じ得る。そこで、本実施の形態においては、ロングチップ53aで一度検体を採取してPCR容器51bとは別のPCR容器51aに5μLよりも多い25μLを分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから正確に5μLを採取してPCR容器51bへ分注する。これにより、5μLの微量の検体を正確にPCR容器51bに分注することができる。
【0042】
次の工程S2では、PCR容器51bに検体処理液5μLを添加する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、試薬容器52aから検体処理液5μLを採取してPCR容器51bへ検体処理液5μLを分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0043】
次いで、制御装置20は、ショートチップ53bをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0044】
次の工程S3では、PCR容器51bを加熱および急冷する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51bを加熱してPCR容器51b内の検体温度を90℃に5分維持し、その後、PCR容器51bを急冷してPCR容器51b内の検体温度を20℃(常温)に戻すように、温調部41を制御する。
【0045】
PCR容器51bは、温調部41の上面が窪んだ段差に挿し込まれている。温調部41は、熱伝導性に優れた金属板であり、たとえばアルミニウム製である。温調部41は、温度源44と熱的に接触している。温度源44によって、予め設定されていたプログラムに従って温調部41が加熱および冷却されることにより、PCR容器51b内の検体温度が制御される。これにより検体が、反応に適した所定の温度プロファイルに供される。
【0046】
PCR容器51bの、容器本体を閉じている状態の蓋には、ヒートリッド45が熱的に接触している。ヒートリッド45は金属板であり、シートヒーターなどの加熱源が取り付けられている。加熱源が蓋を加熱することで、PCR容器51b内で液体が気化して反応条件が変わることが防止されている。
【0047】
次の工程S4では、PCR容器51bに各試薬を添加する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、まず、試薬容器52bから反応液7.8μLを採取し、酵素2.4μLが予め入っている試薬容器52dへ分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0048】
次いで、制御装置20は、試薬容器52cからプライマ/プローブ液7.8μLを採取して試薬容器52dへ分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によって試薬容器52d内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。この時点での試薬容器52dに入っている試薬混合液の量は18μLとなる。
【0049】
次いで、制御装置20は、試薬容器52dから試薬混合液15μLを採取し、PCR容器51bへ試薬混合液15μLを分注し、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
【0050】
次の工程S5では、PCR容器51bのサーマルサイクル処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を42℃に10分維持して逆転写反応を生じさせ、その後、PCR容器51b内の液温度を95℃に1分維持して酵素を活性させるように、温調部41を制御する。
【0051】
次いで、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を95℃に5秒間維持した後にPCR容器51b内の液温度を60℃に30秒間維持して遺伝子を増幅させる増幅処理を行なうように、温調部41を制御する。なお、この増幅処理は45サイクル実施される。
【0052】
次の工程S6では、3波長蛍光検出が行なわれる。具体的には、制御装置20は、増幅処理後に、PCR容器51b内の液温度を60℃にした状態で、PCR容器51b内の液に対して3波長蛍光検出を行なうように、温調部41および光学ユニット11を制御する。なお、3波長蛍光検出は、増幅処理が行なわれる毎に実施される。3波長蛍光検出の結果(解析装置2による解析処理の結果)は、端末3のディスプレイに表示される。
【0053】
<筐体200の内部構成>
次に、解析装置2に含まれる各構成を収容する筐体200と、筐体200の内部構成とについて説明する。
図5は、筐体200の内部構成を示す断面模式図である。
図5に示されるように、解析装置2は、筐体200を備えている。
【0054】
筐体200の内部は、4階建ての構造を有しており、下から上に向かって順に、1階部分201、2階部分202、3階部分203、および4階部分204が設けられている。
図1にも示される光学ユニット11、および、
図2,3を参照して説明した保持装置40は、筐体200内に収容されている。より詳細には、保持装置40は、3階部分203に配置されている。光学ユニット11は、4階部分204に配置されている。
【0055】
筐体200は、作業者が解析装置2にアクセスする側の前面と、前面と反対側の背面とを有している。
図5においては、筐体200の左側の表面が前面であり、筐体200の右側の表面が背面である。
図5に示される保持装置40は、筐体200の内部の前面側に配置されている。
【0056】
筐体200は、開口部221を有している。開口部221は、筐体200の前面側に設けられている。より詳細には、開口部221は、3階部分203の天井部の一部分に形成されている。開口部221は、上向きに開口している。
【0057】
筐体200は、上扉211と、下扉212とを有している。上扉211と下扉212とは、開閉可能に構成されている。上扉211はたとえば、その上縁を回転軸として筐体200の本体に対して相対回転することにより、開閉する。上扉211は、上向きに回転して開く。下扉212はたとえば、その下縁を回転軸として筐体200の本体に対して相対回転することにより、開閉する。下扉212は、下向きに回転して開く。
図5に示される上扉211は、開いた状態である。
図5に示される下扉212は、閉じた状態である。
【0058】
上扉211は、開口部221を開閉する。上扉211が開いた状態で、保持装置40は、開口部221を通して外部に露出している。作業者は、開口部221を通して、保持装置40にアクセス可能である。作業者は、開口部221を通して、各容器50(PCR容器51、試薬容器52および検体容器54)および分注チップ53を、筐体200内の保持装置40にセットすることができる。これにより、作業者が容器50および分注チップ53を保持装置40にセットするスペースであるユーザー操作部220が構成されている。
【0059】
筐体200には、送風機230がさらに収容されている。送風機230は、1階部分201に配置されている。送風機230は、筐体200の前側に配置されている。送風機230は、閉じられた状態の下扉212の直ぐ後方に配置されている。送風機230は、保持装置40の下方に配置されている。
図5においては、送風機230は、保持装置40の真下の位置に配置されている。送風機230は、筐体200内に空気の流れを発生させる。
図5中に図示されている白抜き矢印は、送風機230の発生する空気の流れの方向を示す。
【0060】
図5に示される上扉211が開いた状態で、送風機230は、筐体200の周辺の空気を誘引して、筐体200の外部から内部へ流れる気流を発生させている。送風機230の発生する空気の流れにおいて、送風機230の上流側に保持装置40が設けられており、保持装置40の上流側に開口部221が設けられている。送風機230によって、開口部221付近に負圧が発生している。
【0061】
開口部221を通過して筐体200に流入した空気は、保持装置40(保持部42)の周辺を通過して下向きに流れる。空気の少なくとも一部は、吸気孔61を通過して保持部42に流入し、通気孔62を通って保持部42から流出する。空気は、保持装置40の周辺を流れた後、筐体200の奥に向かって吸引される。空気は、保持装置40の周辺を流れた後、開口部221から離れる方向に流れる。
【0062】
容器50および分注チップ53を作業者が保持装置40にセットする際に、開口部221から筐体200内へ流入する空気の流れが形成されている。これにより、検体に含まれるウィルスなどの有害物質が作業者に向かって吐出されることが抑制されている。
【0063】
筐体200には、エアフィルタ240と、プレフィルタ241とがさらに収容されている。エアフィルタ240は、送風機230の上方に配置されている。プレフィルタ241は、エアフィルタ240の上方に配置されている。エアフィルタ240は送風機230の真上に配置されており、プレフィルタ241はエアフィルタ240の真上に配置されている。
図5においては、エアフィルタ240およびプレフィルタ241は、保持装置40の真下の位置に配置されている。
【0064】
エアフィルタ240はたとえば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。HEPAフィルタは、定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持ちかつ処理圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ(JIS Z 8122による定義)である。エアフィルタ240は、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタなどの、他の種類のフィルタであってもよい。
【0065】
送風機230の発生する空気の流れにおいて、保持装置40(保持部42)の下流側に、エアフィルタ240が設けられている。保持装置40を経由して流れる空気は、プレフィルタ241、エアフィルタ240をこの順に通過する。エアフィルタ240およびプレフィルタ241は、送風機230によって送風される空気をろ過する。エアフィルタ240は、感染源となるウィルスなどの有害物質を吸着して、空気から有害物質を除去する。プレフィルタ241は、有害物質よりも大径の粒子を除去する。たとえばプレフィルタ241は、塵埃を空気から除去する。
【0066】
エアフィルタ240およびプレフィルタ241は、筐体200の前側に配置されている。プレフィルタ241およびエアフィルタ240は、閉じられた状態の下扉212の直ぐ後方に配置されている。作業者は、下扉212を開くことにより、エアフィルタ240およびプレフィルタ241に容易にアクセスすることができる。これにより作業者は、エアフィルタ240およびプレフィルタ241の清掃または交換などの、メンテナンス作業を容易に行なうことができる。
【0067】
図5中の白抜き矢印で示されるように、送風機230を通過した空気は、筐体200の背面へ向かって流れる。筐体200の背面には、排気口250が形成されている。排気口250は、空気を筐体200外に排出する。筐体200から排出される空気は、排気口250を通過する。送風機230によって、開口部221から筐体200内に流入した空気は、保持装置40を通過した後に、プレフィルタ241およびエアフィルタ240によってろ過され、筐体200の背面側へ排出される。
【0068】
図5においては、送風機230に対して空気の流れの上流側にエアフィルタ240およびプレフィルタ241が配置されている。空気の流れにおける、保持装置40と送風機230との間に、エアフィルタ240およびプレフィルタ241が配置されている。この配置に限られず、エアフィルタ240およびプレフィルタ241は、送風機230に対して空気の流れの下流側に配置されていてもよい。空気の流れにおける、送風機230と排気口250との間に、エアフィルタ240およびプレフィルタ241が配置されていてもよい。
【0069】
<移動装置5>
図6は、上扉211が閉められた状態の筐体200の内部構成を示す断面模式図である。閉じられた状態の上扉211によって、筐体200の開口部221が覆われており、開口部221は筐体200の外部に露出していない。上扉211が閉じられた状態で、移動装置5(
図1)の動作によって、保持装置40が筐体200内を背面側へ移動している。解析処理中に、保持装置40が開口部221から遠ざかるように移動しているので、検体の分注時に検体が飛散するなどして作業者が感染する可能性がより低減されている。解析処理中に、保持装置40の周辺を流れる空気の流れをつくり続けることで、検体の分注時および撹拌時などに検体のコンタミネーションが発生する可能性がより低減される。
【0070】
移動装置5の詳細について、以下に説明する。
図7は、移動装置5の概略構成を示す平面模式図である。
図8は、
図7に示される移動装置5の前方からの斜視図である。
【0071】
移動装置5は、平板状の支持プレート500を有している。平面視した支持プレート500は、略矩形状の形状を有している。支持プレート500は、筐体200の3階部分203の床部を構成しており、筐体200の2階部分202の天井部を構成している。支持プレート500の前縁部に、切り欠き部502が形成されている。
図5中に3階部分203から1階部分201まで延びる白抜き矢印で示される、下向きに流れる空気の流れは、切り欠き部502を通って、3階部分203から2階部分202へ流れる。
【0072】
移動装置5は、X軸モータ511を有している。X軸モータ511は、保持装置40をX軸方向に移動させる駆動力を発生する。X軸モータ511は、支持プレート500に支持されており、支持プレート500の下方に吊り下げられるように配置されている。X軸モータ511は、筐体200の2階部分202に配置されている。
【0073】
X軸モータ511の出力軸に、プーリ513が連結されている。X軸方向においてプーリ513から筐体200の背面側に離れる位置に、プーリ514が配置されている。X軸ベルト512が、プーリ513とプーリ514とに巻き掛けられている。X軸ベルト512は、X軸方向に延びている。X軸ベルト512は、X軸モータ511の発生する駆動力を受けて、両方向に回転する。
【0074】
支持プレート500の、X軸方向に延びる一方の縁部の近傍に、X軸レール521が配置されている。X軸レール521は、X軸方向に延びている。X軸レール521には、X軸スライダ522が搭載されている。X軸スライダ522は、X軸レール521に案内されて、X軸方向に往復移動する。
【0075】
支持プレート500の、X軸方向に延びる他方の縁部の近傍に、X軸レール531が配置されている。X軸レール531は、X軸方向に延びている。X軸レール521とX軸レール531とは、Y軸方向に間隔を空けて、平行に配置されている。X軸レール531には、X軸スライダ532が搭載されている。X軸スライダ532は、X軸レール531に案内されて、X軸方向に往復移動する。
【0076】
X軸スライダ522とX軸スライダ532とは、X軸モータ511の発生する駆動力を受けて回転するX軸ベルト512とともに、X軸方向に往復移動する。
【0077】
X軸スライダ532には、連結部533が搭載されている。X軸スライダ522と、連結部533とによって、可動プレート540の両端が支持されている。Y軸方向に長手方向を有する可動プレート540の第1端は、X軸スライダ522に固定されている。可動プレート540の第2端は、連結部533に固定されている。可動プレート540には、可動プレート540を厚み方向に貫通するとともにY軸方向に延びる貫通孔541が形成されている。可動プレート540に、Y軸レール561が搭載されている。
【0078】
移動装置5は、Y軸モータ551を有している。Y軸モータ551は、保持装置40をY軸方向に移動させる駆動力を発生する。Y軸モータ551は、支持プレート500に支持されており、支持プレート500の下方に吊り下げられるように配置されている。Y軸モータ551は、筐体200の2階部分202に配置されている。X軸モータ511とY軸モータ551とは、保持装置40を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータを構成している。
【0079】
Y軸モータ551の出力軸に、プーリ553が連結されている。X軸方向においてプーリ553から筐体200の背面側に離れる位置に、プーリ554が配置されている。プーリ553,554は、X軸レール531の近傍に配置されている。X軸方向におけるプーリ553とプーリ554との間の位置であって、Y軸方向においてX軸レール521の近傍の位置に、プーリ555が配置されている。プーリ555は、可動プレート540の下面に支持されている。Y軸ベルト552が、プーリ553、プーリ554、およびプーリ555に巻き掛けられている。Y軸ベルト552は、Y軸モータ551の発生する駆動力を受けて、両方向に回転する。
【0080】
Y軸ベルト552は、平面視において略T字状の形状を有している。T字の横線と縦線との付け根に相当する位置に、一対のアイドラー556,557が配置されている。アイドラー556,557は、Y軸ベルト552を案内する。アイドラー556,557は、可動プレート540の下面に支持されている。
【0081】
図9は、可動プレート540に搭載された保持部42付近を拡大して示す斜視図である。Y軸レール561には、Y軸スライダ562が搭載されている。Y軸スライダ562は、Y軸レール561に案内されて、Y軸方向に往復移動する。
【0082】
保持部42は、Y軸スライダ562に搭載されている。保持部42は、Y軸スライダ562およびY軸レール561を介して、可動プレート540に搭載されている。腕部563は、Y軸スライダ562から下方に延びている。腕部563は、可動プレート540の貫通孔541を貫通してZ軸方向に延びている。腕部563の下端部に、把持部564が設けられている。把持部564は、Y軸ベルト552を把持している。
【0083】
制御装置20(
図1)からの指令によってX軸モータ511が駆動すると、X軸ベルト512が回転し、X軸ベルト512の回転に伴ってX軸スライダ522,532がX軸方向に移動する。このとき、可動プレート540と、可動プレート540に搭載されているY軸レール561と、可動プレート540に支持されているプーリ555およびアイドラー556,557とが、一体でX軸方向に移動する。Y軸スライダ562を介して可動プレート540に搭載されている保持部42が、X軸方向に移動する。
【0084】
制御装置20からの指令によってY軸モータ551が駆動すると、Y軸ベルト552が回転する。Y軸ベルト552を把持する把持部564が、Y軸ベルト552の回転に伴ってY軸方向に移動する。これにより、Y軸スライダ562と、Y軸スライダ562に搭載されている保持部42とが、一体でY軸方向に移動する。
【0085】
このように、保持部42を水平方向に移動させる移動装置5をベルトプーリー駆動とすることで、支持プレート500の上方を移動する保持部42とはZ軸方向に異なる位置に、移動装置5のアクチュエータであるX軸モータ511およびY軸モータ551を配置することができる。保持部42をX軸方向に動かすためのX軸ベルト512およびプーリ513,514と、保持部42をY軸方向に動かすためのY軸ベルト552およびプーリ553,554,555とを、同一平面上に配置することができる。これにより、移動装置5を小型化することができる。
【0086】
X軸モータ511とY軸モータ551とは、いずれも支持プレート500の下方に支持されており、X軸モータ511とY軸モータ551とのいずれか一方がいずれか他方を移動させる構成とはされていない。X軸モータ511およびY軸モータ551によって搬送される搬送部が軽量化されていることで、X軸モータ511およびY軸モータ551に対する要求性能を小さくすることができる。したがって、移動装置5の製造コストを低減できる。保持部42の迅速な移動が可能になることで、検体の解析処理に要する時間を短縮することができる。
【0087】
<光学ユニット11>
図6に示される保持装置40は、温調部41が光学ユニット11の真下に配置されるように、移動装置5によって筐体200の背面側へ移動している。光学ユニット11は、温調部41に保持されているPCR容器51b内の、検体を含む液体に励起用の光を照射して、検体から放出される蛍光を検出する。光学ユニット11の詳細について、以下に説明する。
【0088】
図10は、光学ユニット11の構成を示す模式図である。光学ユニット11は、光源111と、蛍光分光部115と、光検出器118とを主に備えている。
【0089】
光源111は、たとえば白色LED(Light Emitting Diode)である。光源111は、多色光(白色光)を放射する。光源111から放射される白色光は、レンズ112で平行光束となり、蛍光分光部115に至る。
【0090】
蛍光分光部115は、励起光用のフィルタ113を有している。白色光は、フィルタ113で略単色化される。フィルタ113は、赤色フィルタ113Rと、緑色フィルタ113Gと、青色フィルタ113Bとを有している。白色光は、赤色フィルタ113Rを通過することで赤色の単色光になり、緑色フィルタ113Gを通過することで緑色の単色光になり、青色フィルタ113Bを通過することで青色の単色光になる。フィルタ113は、バンドパスフィルタであってもよい。
【0091】
図11は、蛍光分光部115の構成を示す斜視図である。蛍光分光部115は、赤色ユニット160、緑色ユニット170、青色ユニット180を有しており、3波長が切り替えられるようになっている。赤色ユニット160、緑色ユニット170、青色ユニット180および反射板190は、支持板部150の上面に搭載されている。
【0092】
図11に示される蛍光分光部115は一体的に、測定光学系平面と直交する方向(
図11中の実線矢印方向、
図10においては紙面垂直方向)に往復直線移動可能に構成されており、これにより測定波長の切り替えが可能となっている。蛍光分光部115を移動させる駆動部は、モータと、プーリーと、ベルトとを有してもよい。蛍光分光部115を移動させる駆動部は、ラックピニオン機構など、他の機構を有してもよい。蛍光分光部115を移動させることにより、測定波長の切り替えが可能とされている。
【0093】
赤色ユニット160は、上述した赤色フィルタ113R(
図11では隠れており図示されない)と、ダイクロイックミラー161と、蛍光フィルタ162とを有している。緑色ユニット170は、上述した緑色フィルタ113G(
図11では隠れており図示されない)と、ダイクロイックミラー171と、蛍光フィルタ172とを有している。青色ユニット180は、上述した青色フィルタ113B(
図11では隠れており図示されない)と、ダイクロイックミラー181と、蛍光フィルタ182とを有している。ダイクロイックミラー161,171,181は、蛍光分光部115に到達する平行光束と45°の角度を成して配置されている。
【0094】
ダイクロイックミラー161,171,181は、励起光の波長帯の光をほぼ反射するような光学的特性を有している。そのため励起光は、大部分がダイクロイックミラー161,171,181で反射されて
図10中の下方へ向かい、レンズ116によって集光されて、PCR容器51b内の試料の液面に照射される。
【0095】
励起光の照射によって試料から発生した蛍光の一部は、レンズ116に到達し、略平行光束となって
図10中の上方へ向かい、再びダイクロイックミラー161,171,181に至る。
【0096】
ダイクロイックミラー161,171,181は、蛍光の波長帯の光をほぼ透過させるような光学的特性を有している。そのため蛍光は、大部分がダイクロイックミラー161,171,181を透過して、蛍光フィルタ162,172,182へ至る。蛍光フィルタ162,172,182で蛍光の波長帯域以外の余分な波長域のエネルギをカットされた後、レンズ117で集光され、光検出器118に入射し電気信号に変換される。
【0097】
図11に示されるように、蛍光分光部115は、反射板190をさらに有している。反射板190は、光源111からの光を光検出器118に直接導くための光路を形成する部材である。反射板190は、たとえば金属製の平板である。反射板190の表面には、黒色表面処理が施されている。光源111のエネルギ量を測定する場合には、蛍光分光部115を移動させて、光源111からの光が反射板190に照射されるように蛍光分光部115を配置する。
【0098】
図12は、光源光測定時の光路を示す模式図である。反射板190は、上述したダイクロイックミラー161,171,181の面とは直交する面を成す。レンズ112で平行光束となった白色光が反射板190に照射され、反射板190からの拡散反射光の一部がレンズ117に至り、レンズ117で集光されて光検出器118に入射する。これにより、試料を介在することなく、光源111のエネルギ量を測定できる。
【0099】
光源111のエネルギ量の初期の値を、基準として制御装置20のメモリに記憶させておくことができる。解析装置2の運転時間が長くなるに従って、光源111が劣化し、光源111の放射エネルギ量に変化が生じたとしても、その劣化の影響を補正して結果を出力することが可能となる。光源光を測定するために別途光検出器を追加で設ける必要がなく、蛍光の測定に用いる光検出系をそのまま利用できるので、コスト低減および省スペース化の面でも有利となる。
【0100】
なお一般には、試料の蛍光のエネルギは、試料に照射された励起光のエネルギよりはるかに小さい。したがって光検出系は、励起光と蛍光とのエネルギ量の差に応じたゲイン設定になっていることが多い。その場合、光源光を反射板190を介して光検出器118に照射させた場合、ゲインオーバーで測定が不可となることが考えられる。このような事態を避けるため、反射板190として、ミラーなどの高い反射率かつ大半が整反射光となるような光学素子を用いず、一般的な金属板に黒色表面処理を施し、反射板190から拡散反射した成分のみを光検出器118に導くような構成としている。それでもエネルギオーバーとなるような場合は、フィルタ113を配置する部位に相当する位置(レンズ112の直後など)に、減光フィルタを配置してもよい。
【0101】
光源から放射された光源光を検出器系に直接入射する構成に替えて、光源からさらに間接的に照射された光を検出するようにすることにより、さらに光源エネルギを減衰させて光検出器118に導くことも考えられる。たとえば、
図12に示される光学ユニット11から反射板190を除いた構成とし、光学ユニット11の外部に照射された光源光が反射する面を光源面と想定して、その光源面から照射された光の2回目またはそれ以上の反射光が光検出器118に届く構成としてもよい。
【0102】
光学ユニット11の組み立て調整の際に、蛍光信号値の基準としてある定まった蛍光サンプルを測定し、その測定結果を管理して各々の光学ユニット11に固有の値として記憶させておくことができる。これにより、光学ユニット11の個体差によって同じサンプルを測定したときに生じる差を補正し、装置間の機差および各装置の経時変化に伴う変動要因を除くことができ、結果の信頼性をより向上させることが可能である。
【0103】
具体的には、工場での調整時に、装置個体毎に、第1の波長での基準サンプル蛍光測定値em(1)、第2の波長での基準サンプル蛍光測定値em(2)、第3の波長での基準サンプル蛍光測定値em(3)、および光源111の初期光強度値i0を測光測定し、それぞれ装置内不揮発性メモリに保存しておく。解析装置2の据え付け後の調整時に、測光した即値vi(n)に以下のような補正を施して、v(n)として出力する(nは1以上3以下の整数)。
【0104】
v(n)=vi(n)×(A(n)/em(n))×(i0/ic)
ここでicは、定期的に測定し更新記録していく光源111の光強度値である。A(n)は、任意の定数であって、全装置個体間で共通の値である。
【0105】
このようにすることで、どの装置を使ってどのタイミングで測定しても、同じサンプルを測定するのであればほぼ同じ値が得られる。
【0106】
以上説明した光学ユニット11によると、光源111からの光を試料を経由させずに光検出器118に直接導くための光路を形成する精度補償機構を備えることにより、光源111の輝度変化が最終的な蛍光検出強度値におよぼす影響を低減することができる。また、装置間機差に伴う蛍光検出強度値のばらつきを低減することができる。装置個体または測定のタイミング(装置の総運転時間)によらず、一定の蛍光の検出結果を得ることができる。
【0107】
<温調部41の変形例>
図4を参照して説明した解析処理を行なう際に、PCR容器51内の検体温度を調節するために、温調部41が制御される。解析処理の所要時間を短縮するために、検体温度を上昇および下降させる速度を大きくする要求がある。そのため、温度源44からPCR容器51への熱伝導効率を確保した上で、温調部41の熱容量を最小限に抑えることが求められている。複数のPCR容器51内の検体を同じ一つの解析装置2で同時に解析する場合には、検体温度のばらつきを抑えることも求められている。
【0108】
図13は、変形例の温調部41の構成の詳細を示す部分断面図である。
図13に示される温調部41は、平板状のベース部410と、ベース部410の表面に設けられた4つの容器収容部411A,411B,411C,411Dとを備えている。容器収容部411A,411B,411C,411Dは、ベース部410から突き出している。ベース部410と各容器収容部411A,411B,411C,411Dは、アルミニウムに代表される金属材料などの良熱伝導体を材料として、一体に成形されている。
【0109】
ベース部410の裏面に、温度源44が取り付けられている。温度源44は、ベース部410に熱的に接触している。温度源44は、たとえばペルチェ素子である。温度源44は、中央部441と、縁部442,443とを有している。ベース部410を挟んで縁部442と向き合う位置に、容器収容部411Aが配置されている。ベース部410を挟んで縁部443と向き合う位置に、容器収容部411Dが配置されている。ベース部410を挟んで中央部441と向き合う位置に、容器収容部411B,411Cが配置されている。
【0110】
容器収容部411Aは、ベース部410に接続されている根元部412Aと、ベース部410から最も離れる先端部414Aと、根元部412Aと先端部414Aとの間の小径部413Aとを有している。容器収容部411Aは先端部414Aにおいて開口し、容器収容部411Aの内部に収容穴415Aが形成されている。収容穴415Aは、PCR容器51aの先端部と略同一の形状を有している。収容穴415Aは、PCR容器51aの先端部の形状に合わせた先細り形状を有している。収容穴415AにPCR容器51aの先端部が収容されて、PCR容器51aが容器収容部411Aに熱的に接触することにより、PCR容器51aに熱が伝達され、PCR容器51a内の検体の温度が変動する。
【0111】
小径部413Aは、根元部412Aよりも小さい外径を有するように形成されている。根元部412Aと小径部413Aとは、略円筒状の外周面を有している。根元部412Aの外周面よりも、小径部413Aの外周面のほうが、径が小さくなっている。根元部412Aは、中実に形成されている。小径部413Aは、先端部414A側の端部が開口し根元部412A側の端部が閉塞されている。小径部413Aの内部に収容穴415Aの一部が形成されており、小径部413Aは内部が中空でかつ有底の形状を有している。
【0112】
容器収容部411B,411C,411Dは、容器収容部411Aと同様に、各々、根元部412B,412C,412Dと、先端部414B,414C,414Dと、小径部413B,413C,413Dとを有している。容器収容部411B,411C,411Dには、各々、収容穴415B,415C,415Dが形成されている。
【0113】
図14は、
図13中のXIV-XIV線に沿う、温調部41の断面図である。
図14に示されるように、根元部412A,412Dは、円形の断面形状を有している。一方、根元部412B,412Cは、略十字型の断面形状を有している。断面視した根元部412B,412Cの面積は、断面視した根元部412A,412Dの面積よりも小さくなっている。
【0114】
根元部412A、412B,412C,412Dは、略等しい最大差し渡し寸法を有している。小径部413B,413C,413Dは、小径部413Aと同じ形状を有している。小径部413Dは、根元部412Dよりも小さい径を有している。小径部413Bの円筒状の外周面の径は、根元部412Bの最大差し渡し寸法よりも小さくなっている。小径部413Cの円筒状の外周面の径は、根元部412Cの最大差し渡し寸法よりも小さくなっている。
【0115】
先端部414A,414B,414C,414Dは、同一の中空円筒状の形状を有している。先端部414A,414B,414C,414Dの外径は、小径部413A,413B,413C,413Dの外径よりも大きくなっている。先端部414A,414B,414C,414Dの肉厚が大きいことで、容器収容部411A,411B,411C,411Dの強度が向上され、温調部41の耐久性および信頼性が向上されている。
【0116】
図13,14に示される温調部41は、小径部413Aの外径が小さくされ、小径部413Aの肉厚が小さくされている。小径部を有しない温調部と比較して、小径部413Aを有する温調部41は、熱容量が小さくなっている。一方、小径部413Aよりも温度源44に近い根元部412Aの最大差し渡し寸法が、小径部413Aの外径よりも大きく、根元部412Aの肉厚が大きいことで、温度源44からPCR容器51aへの熱伝導効率が確保されている。これにより、温度源44の発生する熱を、PCR容器51a内の検体に迅速に伝達することができるので、検体温度を上昇および下降させる温度を大きくすることができる。
【0117】
温度源44がペルチェ素子の場合、中央部441に比べて縁部442,443の発熱および吸熱量が相対的に小さい傾向がある。
図13,14に示される温調部41では、温度源44の中央部441と縁部442,443との吸発熱量の差に対応して、温度源44から容器収容部411A,411B,411C,411Dへの熱伝導量を異ならせている。具体的には、熱伝導量は熱伝導経路の断面積に比例するので、温度源44の中央部441の直上の容器収容部411B,411Cへの熱伝導経路の断面積と、温度源44の縁部442,443にある容器収容部411A,411Dへの熱伝導経路の断面積とを異ならせている。
【0118】
より詳細には、温度源44の中央部441に近い容器収容部411B,411Cの根元部412B,412Cの断面積が、温度源44の縁部442,443に近い容器収容部411A,411Dの根元部412A,412Dの断面積よりも小さくなっている。吸発熱量が相対的に大きい中央部441の直上の根元部412B,412Cの断面積を相対的に小さくすることで熱伝導量を相対的に減らし、吸発熱量が相対的に小さい縁部442,443にある根元部412A,412Dの断面積を相対的に大きくすることで熱伝導量を相対的に増やしている。
【0119】
温度源44から各根元部412A,412B,412C,412Dへの熱伝導量の差に対応させて、各根元部412A,412B,412C,412Dの断面積を異ならせることで、各容器収容部411A,411B,411C,411DにおけるPCR容器51に接触する部分への流入熱量のばらつきが改善されている。これにより、各容器収容部411A,411B,411C,411Dに収容されるPCR容器51内の検体温度のばらつきを低減することができる。
【0120】
断面積の異なる根元部412A,412B,412C,412DよりもPCR容器51に近い小径部413A,413B,413C,413Dおよび先端部414A,414B,414C,414Dは、形状が同一であり、熱容量が等しくなっている。そのため、各容器収容部411A,411B,411C,411Dに収容されるPCR容器51内の検体温度の上昇および下降時における、過渡応答の均一性を向上させることができる。
【0121】
ある時刻における熱容量、熱抵抗、温度(熱抵抗の前後における温度差)の関係は、t秒後の温度差をΔT、時刻0の温度差をΔT0、熱抵抗をR、熱容量をCとして、
ΔT=ΔT0・EXP(-t/RC)
で表される。
【0122】
各容器収容部411A,411B,411C,411Dに収容されるPCR容器51は、等しい熱容量を持っている。温度源44の中央部441の発熱量と温度源44の縁部442,443の発熱量とが異なっている。この場合、中央部441の直上の容器収容部411B,411Cに収容されるPCR容器51の温度と縁部442,443にある容器収容部411A,411Dに収容されるPCR容器51の温度とをt秒後に等しくするには、中央部441から容器収容部411B,411Cに収容されるPCR容器51へのt秒間の熱伝導量と、縁部442,443から容器収容部411A,411Dに収容されるPCR容器51へのt秒間の熱伝導量とを揃える必要がある。
【0123】
容器収容部の根元部412A,412B,412C,412Dの断面積を異ならせることによって、温度源44の中央部441と縁部442,443との発熱量の差異を埋めて、中央部441から容器収容部411B,411Cに収容されるPCR容器51への熱伝導量と、縁部442,443から容器収容部411A,411Dに収容されるPCR容器51への熱伝導量とを略等しくすることができる。温度源44に対する各容器収容部411A,411B,411C,411Dの位置関係と、各根元部412A,412B,412C,412Dの断面形状からもたらされる熱抵抗とを、たとえば有限要素法(FEM)を用いたシミュレーションで解析することにより、根元部412B,412Cの断面積と根元部412A,412Dの断面積との関係を決めることができる。なお、ここでは容器収容部が4個の場合について説明したが、他の個数(n個:nは整数)の場合も、同様の手法で各容器収容部の根元部の断面積を決定することができる。
【0124】
図15は、温調部41の他の変形例の構成の詳細を示す断面図である。
図15に示される温調部41では、小径部413Aの外周面が、円筒面ではなくテーパ面とされている。小径部413Aは、円錐台状の外形を有している。小径部413Aは、先端部414A側の端部における外径が、根元部412A側の端部における外径よりも、大きくなっている。他の小径部413B,413C,413Dもまた、小径部413Aと同一の形状を有している。
【0125】
図13と比較して、
図15に示される温調部41では、小径部413Aの根元部412A側の外径が小さくされており、小径部413Aは全体としてより小さい肉厚を有している。このようにすれば、小径部413Aの熱容量をより小さくできるので、温度源44の発生する熱を、PCR容器51内の検体により迅速に伝達でき、検体温度を上昇および下降させる速度をさらに大きくすることができる。
【0126】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0127】
(第1項) 一態様に係る解析装置は、開口部を有する筐体と、開口部を開閉する扉と、筐体内に収容され、分析対象の検体が入れられた検体容器を設置可能な検体容器設置部と、筐体内に空気の流れを発生させる送風機と、送風機によって送風される空気をろ過するエアフィルタとを備えている。扉が開いた状態で、送風機の発生する空気の流れにおいて、送風機の上流側に検体容器設置部が設けられ、検体容器設置部の上流側に開口部が設けられ、検体容器設置部の下流側にエアフィルタが設けられている。
【0128】
送風機は、筐体の周辺の空気を誘引して気流を発生させている。送風機によって、開口部、検体容器設置部、エアフィルタの順に流れる空気の流れが作られている。送風機は、開口部よりも空気の流れの下流側に設けられている。
【0129】
検体容器などの解析対象を作業者が解析装置にセットする際に、開口部から筐体内へ流入する空気の流れをつくることにより、検体に含まれるウィルスなどの有害物質が作業者に向かって吐出されることが回避される。これにより、作業者が感染する可能性を低減することができる。開口部を経由して筐体内に流れ込んだ空気は、検体容器設置部の周囲を通過する。検体容器設置部の周囲に空気の流れをつくることにより、ある検体容器内の検体が浮遊して他の検体容器に入り込むことが抑制されるので、検体のコンタミネーションの発生の可能性を低減することができる。検体容器設置部を通過した空気は、エアフィルタに吸引されてろ過される。有害物質がエアフィルタによって吸着されて空気から除去されるので、筐体外に無害な空気を排出することができる。
【0130】
(第2項) 第1項に記載の解析装置において、開口部は、上向きに開口しており、送風機およびエアフィルタは、検体容器設置部の下方に配置されていてもよい。
【0131】
このような配置にすることで、送風機の発生する気流は、開口部を下向きに流れることになるので、開口部から筐体内へ流入する空気の流れを確実に形成することができる。気流はさらに、検体容器設置部を下向きに流れ、エアフィルタを通過して流れる。検体容器設置部の周囲を流れる際に、空気に有害物質が含まれても、エアフィルタで有害物質を確実に除去することができる。
【0132】
(第3項) 第1項に記載の解析装置において、検体容器設置部は、検体容器設置部の外部から内部へ空気を吸引する吸気孔と、検体容器設置部の内部から外部に空気を流出させる通気孔とを有してもよい。
【0133】
検体容器設置部の内部を通過する空気の流れをつくることにより、検体容器設置部に設置される検体容器に収容される検体のコンタミネーションを、より確実に抑制することができる。
【0134】
(第4項) 第1項に記載の解析装置において、検体容器設置部は、解析に用いられる試薬が入れられた試薬容器をさらに設置可能であってもよい。
【0135】
これにより、検体容器設置部に設置される試薬容器に収容される試薬を分注する際の作業者の感染および検体のコンタミネーションを、より確実に抑制することができる。
【0136】
(第5項) 第1項に記載の解析装置において、検体容器設置部は、検体容器に入れられた検体を分注するための分注チップをさらに設置可能であってもよい。
【0137】
これにより、分注チップを用いて試薬を分注する際の作業者の感染および検体のコンタミネーションを、より確実に抑制することができる。
【0138】
(第6項) 第1項に記載の解析装置において、筐体は、前面と背面とを有し、開口部は前面側に設けられ、空気を筐体外に排出する排気口を背面に有してもよい。
【0139】
筐体200から背面側に空気を排出する構成であるので、有害物質が含まれる空気が作業者に向かって吐出される可能性を、さらに低減することができる。
【0140】
(第7項) 第1項に記載の解析装置において、エアフィルタは、HEPAフィルタであってもよい。
【0141】
HEPAフィルタによって、高効率に空気中の有害物質を除去でき、筐体害に無害な空気を排出できるので、有害物質が含まれる空気が作業者に向かって吐出される可能性を、さらに低減することができる。
【0142】
(第8項) 一形態に係る温度調節装置は、内部に容器を収容可能であり、温度源から容器へ熱を伝達する。温度調節装置は、温度源と熱的に接触するベース部と、ベース部に接続されている根元部と、根元部よりも小さい外径を有する小径部とを備えている。小径部の内部に、容器を収容する収容穴が形成されている。
【0143】
根元部の外径を大きくすることで、温度源から容器への熱伝導効率を確保できる。小径部の外径を小さくすることで、小径部の熱容量を低減できる。これにより温度調節装置は、温度源から容器に迅速に熱を伝達することができる。
【0144】
(第9項) 第8項に記載の温度調節装置において、温度源は、発熱量が相対的に大きい中央部と、発熱量が相対的に小さい縁部とを有しており、温度調節装置は、根元部と小径部とを複数有しており、中央部に近い根元部の断面積が縁部に近い根元部の断面積よりも小さくてもよい。
【0145】
これにより、温度調節装置の内部に複数の容器を収容する場合に、温度源から各容器への熱伝導量のばらつきを低減できるので、各容器の温度ばらつきを改善することができる。
【0146】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
1 解析システム、2 解析装置、3 端末、4,5 移動装置、10 検査装置、11 光学ユニット、12 分注ユニット、13 シリンジ、14 開閉ユニット、16 照射ユニット、20 制御装置、30 温調装置、40 保持装置、41 温調部、42 保持部、43 チップ廃棄部、44 温度源、45 ヒートリッド、50 容器、51 PCR容器、52 試薬容器、53 分注チップ、54 検体容器、61 吸気孔、62 通気孔、111 光源、112,116,117 レンズ、113 フィルタ、115 蛍光分光部、118 光検出器、150 支持板部、160 赤色ユニット、161,171,181 ダイクロイックミラー、162,172,182 蛍光フィルタ、170 緑色ユニット、180 青色ユニット、190 反射板、200 筐体、201 1階部分、202 2階部分、203 3階部分、204 4階部分、211 上扉、212 下扉、220 ユーザー操作部、221 開口部、230 送風機、240 エアフィルタ、241 プレフィルタ、250 排気口、410 ベース部、411A,411B,411C,411D 容器収容部、412A,412B,412C,412D 根元部、413A,413B,413C,413D 小径部、414A,414B,414C,414D 先端部、415A,415B,415C,415D 収容穴、441 中央部、442,443 縁部、500 支持プレート、502 切り欠き部、511 X軸モータ、512 X軸ベルト、513,514,553,554,555 プーリ、521,531 X軸レール、522,532 X軸スライダ、533 連結部、540 可動プレート、541 貫通孔、551 Y軸モータ、552 Y軸ベルト、556,557 アイドラー、561 Y軸レール、562 Y軸スライダ、563 腕部、564 把持部。