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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20240806BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240806BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20240806BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20240806BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/442
B60K6/52
B60K17/04 G
B60K17/06 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022572063
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044475
(87)【国際公開番号】W WO2022138072
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020217700
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】小溝 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】所 昇平
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171258(JP,A)
【文献】特開2016-203898(JP,A)
【文献】特開2004-222462(JP,A)
【文献】特開2006-254570(JP,A)
【文献】特開2009-107491(JP,A)
【文献】特開平09-226392(JP,A)
【文献】特開2015-047946(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230441(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079843(WO,A1)
【文献】特開2018-044567(JP,A)
【文献】特開2012-096653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/40
B60K 6/442
B60K 6/52
B60K 17/04
B60K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ロータを備えた回転電機と、
前記ロータに駆動連結された回転電機駆動ギヤと、
動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置を備えた伝達機構と、
前記入力部材に駆動連結された第1回転要素、前記伝達機構に駆動連結された第2回転要素、及び前記回転電機駆動ギヤに駆動連結された第3回転要素を備えた分配用差動歯車機構と、
前記第2回転要素と一体的に回転するように連結された第1分配出力ギヤと、
前記入力部材と前記第1回転要素との間の動力伝達を断接する切離用係合装置と、を備え、
前記伝達機構は、前記分配用差動歯車機構から伝達された回転を前記出力部材に伝達するように構成され、
前記分配用差動歯車機構と、前記第1分配出力ギヤと、前記切離用係合装置とが、第1軸上に配置され、
前記回転電機と、前記回転電機駆動ギヤとが、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記伝達係合装置が、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる第3軸上に配置され、
前記回転電機の軸方向は、前記回転電機駆動ギヤに対して前記回転電機が配置された方向である第1軸方向と、当該第1軸方向とは反対方向である第2軸方向と、を含み、
前記分配用差動歯車機構は、前記第1分配出力ギヤ及び前記切離用係合装置に対して前記第2軸方向に配置され、
前記第3回転要素と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤを更に備え、
前記分配用差動歯車機構は、サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを備えた遊星歯車機構であり、
前記第3回転要素が前記リングギヤであり、
前記第2分配出力ギヤは、前記第1軸上であって、前記リングギヤに対して径方向の外側に配置され、
前記伝達機構は、前記第3軸上に配置されて前記第2分配出力ギヤに噛み合う第1ギヤを備え、
前記リングギヤと前記第2分配出力ギヤとが、前記径方向に沿う径方向視で互いに重複しており、
前記出力部材としての差動入力ギヤを備え、当該差動入力ギヤの回転を一対の前記車輪に分配する出力用差動歯車機構を更に備え、
前記伝達機構は、前記第3軸上に配置されて前記第1分配出力ギヤに噛み合う第2ギヤと、前記第3軸上に配置されて前記差動入力ギヤに噛み合う伝達出力ギヤと、を更に備え、
前記第3軸上において、前記第2軸方向から、前記伝達出力ギヤ、前記第1ギヤ、前記伝達係合装置、前記第2ギヤの順に配置され、
前記切離用係合装置を第1係合装置として、
前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素の3つの回転要素のうちから選択される2つの間の動力伝達を断接する第2係合装置を更に備え、
前記第2係合装置の前記軸方向の配置領域が、前記伝達出力ギヤの前記軸方向の配置領域と重なっている、車両用駆動装置。
【請求項2】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ロータを備えた回転電機と、
前記ロータに駆動連結された回転電機駆動ギヤと、
動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置を備えた伝達機構と、
前記入力部材に駆動連結された第1回転要素、前記伝達機構に駆動連結された第2回転要素、及び前記回転電機駆動ギヤに駆動連結された第3回転要素を備えた分配用差動歯車機構と、
前記第2回転要素と一体的に回転するように連結された第1分配出力ギヤと、
前記入力部材と前記第1回転要素との間の動力伝達を断接する切離用係合装置と、を備え、
前記伝達機構は、前記分配用差動歯車機構から伝達された回転を前記出力部材に伝達するように構成され、
前記分配用差動歯車機構と、前記第1分配出力ギヤと、前記切離用係合装置とが、第1軸上に配置され、
前記回転電機と、前記回転電機駆動ギヤとが、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記伝達係合装置が、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる第3軸上に配置され、
前記回転電機の軸方向は、前記回転電機駆動ギヤに対して前記回転電機が配置された方向である第1軸方向と、当該第1軸方向とは反対方向である第2軸方向と、を含み、
前記分配用差動歯車機構は、前記第1分配出力ギヤ及び前記切離用係合装置に対して前記第2軸方向に配置され、
前記出力部材の回転を一対の前記車輪に分配する出力用差動歯車機構を更に備え、
前記出力用差動歯車機構が、前記第1軸、前記第2軸、及び前記第3軸とは異なる第4軸上に配置され、
前記第2軸が、前記第1軸及び前記第4軸を含む仮想平面よりも、車両搭載状態における上側に配置され、
前記第3軸が、前記仮想平面よりも、車両搭載状態における下側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第3回転要素がリングギヤであり、
前記リングギヤと前記回転電機駆動ギヤとの前記軸方向の配置領域が互いに重なっている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1分配出力ギヤの前記軸方向の配置領域と、前記切離用係合装置の前記軸方向の配置領域との双方が、前記回転電機の前記軸方向の配置領域と重なっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第3回転要素と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤを更に備え、
前記分配用差動歯車機構は、サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを備えた遊星歯車機構であり、
前記第3回転要素が前記リングギヤであり、
前記第2分配出力ギヤは、前記第1軸上であって、前記リングギヤに対して径方向の外側に配置され、
前記伝達機構は、前記第3軸上に配置されて前記第2分配出力ギヤに噛み合う第1ギヤを備え、
前記リングギヤと前記第2分配出力ギヤとが、前記径方向に沿う径方向視で互いに重複している、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記出力部材としての差動入力ギヤを備え、当該差動入力ギヤの回転を一対の前記車輪に分配する出力用差動歯車機構を更に備え、
前記伝達機構は、前記第3軸上に配置されて前記第1分配出力ギヤに噛み合う第2ギヤと、前記第3軸上に配置されて前記差動入力ギヤに噛み合う伝達出力ギヤと、を更に備え、
前記第3軸上において、前記第2軸方向から、前記伝達出力ギヤ、前記第1ギヤ、前記伝達係合装置、前記第2ギヤの順に配置されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置を備えた伝達機構と、分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置は、内燃機関(3)に駆動連結される入力部材(8)と、車輪に駆動連結される出力部材(7)と、回転電機(4)と、第1回転要素(11)、第2回転要素(12)、及び第3回転要素(13)を備えた遊星歯車機構である分配用差動歯車機構(10)と、第2回転要素(12)と一体的に回転するように連結された分配出力ギヤと、当該分配出力ギヤの回転を変速して出力部材(7)に伝達する伝達機構(19)と、入力部材(8)と第1回転要素(11)との間の動力伝達を断接する切離用係合装置(17)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2020-525358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車両用駆動装置では、入力部材(8)と、切離用係合装置(17)と、分配用差動歯車機構(10)と、分配出力ギヤとが、同軸に配置されていると共に、軸方向に並んで配置されている。そのため、車両用駆動装置の軸方向の寸法が大型化し易いという課題があった。
【0006】
そこで、入力部材、出力部材、回転電機、分配用差動歯車機構、伝達機構、及び切離用係合装置を備えた構成において、軸方向の寸法を小さく抑え易い車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
ロータを備えた回転電機と、
前記ロータに駆動連結された回転電機駆動ギヤと、
動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置を備えた伝達機構と、
前記入力部材に駆動連結された第1回転要素、前記伝達機構に駆動連結された第2回転要素、及び前記回転電機駆動ギヤに駆動連結された第3回転要素を備えた分配用差動歯車機構と、
前記第2回転要素と一体的に回転するように連結された第1分配出力ギヤと、
前記入力部材と前記第1回転要素との間の動力伝達を断接する切離用係合装置と、を備え、
前記伝達機構は、前記分配用差動歯車機構から伝達された回転を前記出力部材に伝達するように構成され、
前記分配用差動歯車機構と、前記第1分配出力ギヤと、前記切離用係合装置とが、第1軸上に配置され、
前記回転電機と、前記回転電機駆動ギヤとが、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記伝達係合装置が、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる第3軸上に配置され、
前記回転電機の軸方向は、前記回転電機駆動ギヤに対して前記回転電機が配置された方向である第1軸方向と、当該第1軸方向とは反対方向である第2軸方向と、を含み、
前記分配用差動歯車機構は、前記第1分配出力ギヤ及び前記切離用係合装置に対して前記第2軸方向に配置されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、分配用差動歯車機構、第1分配出力ギヤ、及び切離用係合装置と、回転電機及び回転電機駆動ギヤと、伝達係合装置とが、互いに別軸に配置されている。これにより、それらの一部又は全部が同軸に配置された構成に比べて、車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑え易い。
また、このような構成において、回転電機駆動ギヤが回転電機に対して第2軸方向に配置されていると共に、分配用差動歯車機構が第1分配出力ギヤ及び切離用係合装置に対して第2軸方向に配置されている。つまり、回転電機駆動ギヤと分配用差動歯車機構とが、それぞれと同軸に配置された他の要素に対して、軸方向の同じ側に配置されている。これにより、分配用差動歯車機構の第3回転要素と回転電機駆動ギヤとの駆動連結を適切に行いつつ、回転電機と、第1分配出力ギヤ及び切離用係合装置との双方を、回転電機駆動ギヤ及び分配用差動歯車機構に対して第1軸方向の領域に配置することができる。したがって、入力部材、出力部材、回転電機、分配用差動歯車機構、伝達機構、及び切離用係合装置を備えた構成において、車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑え易い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の第1駆動ユニットのスケルトン図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の第2駆動ユニットのスケルトン図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の第1駆動ユニットの軸方向に沿う断面図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の第1駆動ユニットの軸方向に沿う断面図
図5】実施形態に係る車両用駆動装置の第1駆動ユニットの各要素の位置関係を示す図
図6】実施形態に係る車両用駆動装置の各動作モードにおける係合装置の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪W1を駆動する第1駆動ユニット100Aと、第2車輪W2を駆動する第2駆動ユニット100Bと、を備えている。本実施形態では、第1車輪W1は車両の前輪であり、第2車輪W2は車両の後輪である。
【0011】
図1に示すように、第1駆動ユニット100Aは、車両が備える内燃機関EGに駆動連結される入力部材Iと、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材O1と、第1回転電機MG1と、第1回転電機駆動ギヤDG1と、伝達係合装置CLtを備えた伝達機構Tと、分配用差動歯車機構SPと、第1分配出力ギヤSG1と、第1係合装置CL1と、を備えている。本実施形態では、第1駆動ユニット100Aは、第2分配出力ギヤSG2と、第1出力用差動歯車機構DF1と、第2係合装置CL2と、を更に備えている。
【0012】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0013】
分配用差動歯車機構SP、第1分配出力ギヤSG1、及び第1係合装置CL1は、それらの回転軸心としての第1軸X1上に配置されている。本実施形態では、入力部材I、第2分配出力ギヤSG2、及び第2係合装置CL2も、第1軸X1上に配置されている。第1回転電機MG1、及び第1回転電機駆動ギヤDG1は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。伝達係合装置CLtは、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。本実施形態では、第1出力部材O1、及び第1出力用差動歯車機構DF1は、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置されている。
【0014】
図2に示すように、本実施形態では、第2駆動ユニット100Bは、第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材O2と、第2回転電機MG2と、カウンタギヤ機構CGと、第2出力用差動歯車機構DF2と、を備えている。
【0015】
本実施形態では、第2回転電機MG2は、その回転軸心としての第5軸X5上に配置されている。そして、カウンタギヤ機構CGは、第5軸X5とは異なる第6軸X6上に配置されている。また、第2出力部材O2、及び第2出力用差動歯車機構DF2は、第5軸X5及び第6軸X6とは異なる第7軸X7上に配置されている。
【0016】
以下の説明では、図1に示すように、第1回転電機MG1の回転軸心(第2軸X2)に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。軸方向Lは、第1回転電機駆動ギヤDG1に対して第1回転電機MG1が配置された方向である「第1軸方向L1」と、当該第1軸方向L1とは反対方向である「第2軸方向L2」と、を含む。また、上記の軸X1~X7のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合や、どの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。なお、本例では、上記の軸X1~X7は、互いに平行に配置されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、入力部材Iの一部、分配用差動歯車機構SP、第1分配出力ギヤSG1、第2分配出力ギヤSG2、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2、第1回転電機MG1、第1回転電機駆動ギヤDG1、伝達機構T、第1出力用差動歯車機構DF1、及び第1出力部材O1が、ケース9に収容されている。
【0018】
本実施形態では、ケース9は、第1側壁部91と、当該第1側壁部91よりも第2軸方向L2に配置された第2側壁部92と、を備えている。第1側壁部91及び第2側壁部92のそれぞれは、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第1側壁部91と第2側壁部92との軸方向Lの間に、車両用駆動装置100の構成要素を収容するための収容空間が形成されている。
【0019】
図3に示すように、本実施形態では、入力部材Iは、軸方向Lに沿って延在する入力軸1である。本実施形態では、入力軸1は、分配用差動歯車機構SP、第1分配出力ギヤSG1、第2分配出力ギヤSG2、第1係合装置CL1、及び第2係合装置CL2を軸方向Lに貫通するように配置されている。また、入力軸1は、第2側壁部92を軸方向Lに貫通するように配置されている。図1に示すように、入力軸1は、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置DPを介して、内燃機関EGの出力軸ESに駆動連結されている。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。内燃機関EGは、第1車輪W1の駆動力源として機能する。
【0020】
第1回転電機MG1は、第1車輪W1の駆動力源として機能する。第1回転電機MG1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、第1回転電機MG1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置との間で電力の授受を行うように、当該蓄電装置と電気的に接続されている。そして、第1回転電機MG1は、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、第1回転電機MG1は、内燃機関EGの駆動力、又は第1出力部材O1の側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0021】
図3に示すように、第1回転電機MG1は、第1ステータST1と、当該第1ステータST1に対して回転自在に支持された第1ロータRT1と、を備えている。本実施形態では、第1ロータRT1は、第1ステータST1に対して径方向Rの内側に配置されている。
【0022】
第1ステータST1は、ステータコアSTCと、コイルエンド部CEと、を備えている。ステータコアSTCは、非回転部材(ここでは、ケース9)に固定されている。コイルエンド部CEは、ステータコアSTCから軸方向Lに突出したコイル部分である。具体的には、ステータコアSTCには、当該ステータコアSTCから軸方向Lの両側(第1軸方向L1及び第2軸方向L2)にそれぞれ突出するようにコイルが巻装されている。そして、このコイルにおけるステータコアSTCから第1軸方向L1及び第2軸方向L2に突出する部分のそれぞれが、コイルエンド部CEに相当する。
【0023】
第1ロータRT1は、第1ステータコアSTC1に対して回転自在に支持されたロータコアRTCを備えている。なお、図示は省略するが、ロータコアRTCの内部には、永久磁石が配置されている。
【0024】
本実施形態では、第1ロータRT1には、軸方向Lに沿って延在する第1ロータ軸RS1が一体的に回転するように連結されている。第1ロータ軸RS1は、第1軸受B1及び第2軸受B2によって回転可能に支持されている。本実施形態では、第1ロータ軸RS1は、ロータコアRTCから第1軸方向L1及び第2軸方向L2のそれぞれに突出するように配置されている。そして、第1ロータ軸RS1におけるロータコアRTCから第1軸方向L1に突出した部分は、第1軸受B1を介して、ケース9の第1側壁部91に対して回転可能に支持されている。一方、第1ロータ軸RS1におけるロータコアRTCから第2軸方向L2に突出した部分は、第2軸受B2を介して、ケース9の第2側壁部92に対して回転可能に支持されている。
【0025】
また、本実施形態では、第1回転電機駆動ギヤDG1が、第1ロータ軸RS1と一体的に回転するように連結されている。本例では、第1回転電機駆動ギヤDG1は、トルクリミッタTLを介して第1ロータ軸RS1に連結されている。そのため、トルクリミッタTLの許容値伝達トルク以下のトルクが第1回転電機駆動ギヤDG1に作用する平常時には、トルクリミッタTLによって第1回転電機駆動ギヤDG1と第1ロータ軸RS1とが連結した状態となっている。一方、トルクリミッタTLの許容伝達トルクを上回るトルクが第1回転電機駆動ギヤDG1に作用した場合には、トルクリミッタTLによる第1回転電機駆動ギヤDG1と第1ロータ軸RS1との連結が解除される。そして、第1回転電機駆動ギヤDG1が第1ロータ軸RS1に対して相対回転することにより、第1回転電機駆動ギヤDG1と第1ロータ軸RS1との間でのトルクの伝達が制限される。なお、図3に示す例では、トルクリミッタTLは、軸方向Lに並ぶ複数の板部材を備えた多板摩擦式の構成を有している。
【0026】
分配用差動歯車機構SPは、入力部材Iに駆動連結された第1回転要素E1と、伝達機構Tに駆動連結された第2回転要素E2と、第1回転電機駆動ギヤDG1に駆動連結された第3回転要素E3と、を備えている。
【0027】
本実施形態では、分配用差動歯車機構SPは、サンギヤS1、キャリヤC1、及びリングギヤR1を備えた遊星歯車機構である。本例では、分配用差動歯車機構SPは、ピニオンギヤP1を支持するキャリヤC1と、ピニオンギヤP1に噛み合うサンギヤS1と、当該サンギヤS1に対して径方向Rの外側に配置されてピニオンギヤP1に噛み合うリングギヤR1と、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0028】
本実施形態では、第1回転要素E1は、サンギヤS1である。そして、第2回転要素E2は、キャリヤC1である。また、第3回転要素E3は、リングギヤR1である。したがって、本実施形態に係る分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度の順は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の順となっている。ここで、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。
【0029】
第1分配出力ギヤSG1は、第2回転要素E2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1分配出力ギヤSG1は、第2回転要素E2としてのキャリヤC1に対して第1軸方向L1に配置されている。
【0030】
第2分配出力ギヤSG2は、第3回転要素E3と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1軸X1を軸心とする筒状のギヤ形成部材2の外周面に、第2分配出力ギヤSG2が形成されている。そして、ギヤ形成部材2の内周面に、第3回転要素E3としてのリングギヤR1が形成されている。
【0031】
本実施形態では、第2分配出力ギヤSG2は、リングギヤR1に対して径方向Rの外側に配置されている。そして、第2分配出力ギヤSG2は、径方向Rに沿う径方向視で、リングギヤR1と重複するように配置されている。ここで、ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0032】
また、本実施形態では、第2分配出力ギヤSG2は、アイドラギヤIGを介して、第1回転電機駆動ギヤDG1に駆動連結されている。つまり、第2分配出力ギヤSG2と第1回転電機駆動ギヤDG1とが、周方向の異なる位置でアイドラギヤIGに噛み合っている。アイドラギヤIGは、第1軸X1~第7軸X7とは別軸に配置されている。本実施形態では、アイドラギヤIGは、ケース9の第2側壁部92から第1軸方向L1に突出するように形成された突出部921に対して、第6軸受B6を介して回転可能に支持されている。本実施形態では、第6軸受B6は、突出部921により径方向Rの内側から支持されている。そして、第6軸受B6は、アイドラギヤIGを径方向Rの内側から回転可能に支持している。図3に示す例では、一対の第6軸受B6が、軸方向Lに互いに隣接して配置されている。
【0033】
本実施形態では、第1分配出力ギヤSG1と、第2分配出力ギヤSG2が形成されたギヤ形成部材2とが、ケース9が備える支持壁部93に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、支持壁部93は、第1分配出力ギヤSG1よりも径方向Rの内側に配置された筒状の第1筒状部931と、第1分配出力ギヤSG1よりも径方向Rの外側に配置された筒状の第2筒状部932と、を備えている。そして、第1分配出力ギヤSG1は、第3軸受B3を介して、第1筒状部931に対して回転可能に支持されている。また、ギヤ形成部材2は、第4軸受B4を介して、第1筒状部931に対して回転可能に支持されている。
【0034】
本実施形態では、第3軸受B3は、第1筒状部931により径方向Rの内側から支持されている。そして、第3軸受B3は、第1分配出力ギヤSG1を径方向Rの内側から回転可能に支持している。図3に示す例では、一対の第3軸受B3が、軸方向Lに互いに隣接して配置されている。また、本実施形態では、第4軸受B4は、第2筒状部932により径方向Rの外側から支持されている。そして、第4軸受B4は、ギヤ形成部材2を径方向Rの外側から回転可能に支持している。
【0035】
伝達機構Tは、分配用差動歯車機構SPから伝達された回転を第1出力部材O1に伝達するように構成されている。本実施形態では、伝達機構Tは、第1ギヤ21と、第2ギヤ22と、伝達出力ギヤ23と、伝達軸24と、を備えている。第1ギヤ21、第2ギヤ22、伝達出力ギヤ23、及び伝達軸24は、第3軸X3上に配置されている。
【0036】
第1ギヤ21は、第2分配出力ギヤSG2に噛み合っている。第2ギヤ22は、第1分配出力ギヤSG1に噛み合っている。本実施形態では、第1ギヤ21及び第2ギヤ22のそれぞれは、軸受を介して、伝達軸24に対して相対回転可能に支持されている。
【0037】
伝達出力ギヤ23は、第1出力用差動歯車機構DF1が備える第1差動入力ギヤ31に噛み合っている(図1及び図4参照)。本実施形態では、第1差動入力ギヤ31が、第1出力部材O1に相当する。
【0038】
本実施形態では、伝達出力ギヤ23は、伝達軸24と一体的に回転するように連結されている。図3に示す例では、伝達出力ギヤ23は、伝達軸24と一体的に形成されている。また、本実施形態では、伝達出力ギヤ23は、第1ギヤ21及び第2ギヤ22に対して第2軸方向L2に配置されている。
【0039】
伝達軸24は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、伝達軸24は、第7軸受B7及び第8軸受B8によって回転可能に支持されている。本実施形態では、第7軸受B7は、ケース9の第1側壁部91により径方向Rの外側から支持されている。そして、第7軸受B7は、伝達軸24の第1軸方向L1の端部を径方向Rの外側から回転可能に支持している。また、本実施形態では、第8軸受B8は、ケース9の第2側壁部92により径方向Rの外側から支持されている。そして、第8軸受B8は、伝達軸24の第2軸方向L2の端部を径方向Rの外側から回転可能に支持している。
【0040】
図4に示すように、第1出力用差動歯車機構DF1は、第1出力部材O1としての第1差動入力ギヤ31の回転を一対の第1車輪W1に分配するように構成されている。本実施形態では、第1出力用差動歯車機構DF1は、上記の第1差動入力ギヤ31に加えて、第1差動ケース32と、一対の第1ピニオンギヤ33と、一対の第1サイドギヤ34と、を更に備えている。ここでは、一対の第1ピニオンギヤ33、及び一対の第1サイドギヤ34は、いずれも傘歯車である。
【0041】
第1差動ケース32は、第1差動入力ギヤ31と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1差動ケース32は、第9軸受B9及び第10軸受B10によって回転可能に支持されている。本実施形態では、第9軸受B9は、ケース9の第1側壁部91により径方向Rの外側から支持されている。そして、第9軸受B9は、第1差動ケース32の第1軸方向L1の端部を径方向Rの外側から回転可能に支持している。また、本実施形態では、第10軸受B10は、ケース9の第2側壁部92により径方向Rの外側から支持されている。そして、第10軸受B10は、第1差動ケース32の第2軸方向L2の端部を径方向Rの外側から回転可能に支持している。
【0042】
第1差動ケース32は、中空の部材である。第1差動ケース32の内部には、一対の第1ピニオンギヤ33、及び一対の第1サイドギヤ34が収容されている。
【0043】
一対の第1ピニオンギヤ33は、第4軸X4を基準とした径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向するように配置されている。そして、一対の第1ピニオンギヤ33のそれぞれは、第1差動ケース32と一体的に回転するように支持された第1ピニオンシャフト33aに取り付けられている。一対の第1ピニオンギヤ33のそれぞれは、第1ピニオンシャフト33aを中心として回転(自転)可能、かつ、第4軸X4を中心として回転(公転)可能に構成されている。
【0044】
一対の第1サイドギヤ34は、第1出力用差動歯車機構DF1の出力要素である。一対の第1サイドギヤ34は、互いに軸方向Lに間隔を空けて、第1ピニオンシャフト33aを挟んで対向するように配置されている。一対の第1サイドギヤ34は、一対の第1ピニオンギヤ33に噛み合っている。一対の第1サイドギヤ34のそれぞれは、第1車輪W1に駆動連結された第1ドライブシャフトDS1が一体的に回転可能に連結されている。
【0045】
本実施形態では、第1出力用差動歯車機構DF1の軸方向Lの配置領域と、第1ギヤ21、第2ギヤ22、及び伝達係合装置CLtの軸方向Lの配置領域とが重なっている。図4に示す例では、第1ギヤ21と第2ギヤ22と伝達係合装置CLtとの軸方向Lの配置領域が、第1出力用差動歯車機構DF1の軸方向Lの配置領域内に収まっている。具体的には、第1ギヤ21、第2ギヤ22、及び伝達係合装置CLtのうち、最も第1軸方向L1に位置する第2ギヤ22の第1軸方向L1の端部が、第1出力用差動歯車機構DF1の第1差動ケース32の第1軸方向L1の端部よりも第2軸方向L2に位置している。そして、第1ギヤ21、第2ギヤ22、及び伝達係合装置CLtのうち、最も第2軸方向L2に位置する第1ギヤ21の第2軸方向L2の端部が、第1出力用差動歯車機構DF1の第1差動ケース32の第2軸方向L2の端部よりも第1軸方向L1に位置している。
【0046】
この構成によれば、第1出力用差動歯車機構DF1の軸方向Lの配置領域と、第1ギヤ21、第2ギヤ22、及び伝達係合装置CLtの少なくとも1つの軸方向Lの配置領域とが重複していない構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さくすることができる。
【0047】
図3に示すように、伝達機構Tの伝達係合装置CLtは、動力伝達の状態を切り替える係合装置である。本実施形態では、伝達係合装置CLtは、第1ギヤ21及び第2ギヤ22のいずれか一方を伝達軸24に対して選択的に連結する噛合い式係合装置(ドグクラッチ)である。
【0048】
ここで、上述したように、第1ギヤ21と第2ギヤ22とが同軸に配置されていると共に、第1分配出力ギヤSG1と第2分配出力ギヤSG2とが同軸に配置されている。また、本実施形態では、第1ギヤ21は、第2ギヤ22よりも小径に形成されている。そして、第1ギヤ21に噛み合う第2分配出力ギヤSG2は、第2ギヤ22に噛み合う第1分配出力ギヤSG1よりも大径に形成されている。そのため、本実施形態では、第1分配出力ギヤSG1に対する第2ギヤ22の歯数比は、第2分配出力ギヤSG2に対する第1ギヤ21の歯数比よりも大きい。
【0049】
このような構成において、伝達係合装置CLtが第2ギヤ22を伝達軸24に連結させた場合、比較的変速比が大きい変速段である低速段が形成される。一方、伝達係合装置CLtが第1ギヤ21を伝達軸24に連結させた場合、比較的変速比が小さい変速段である高速段が形成される。また、本実施形態では、伝達係合装置CLtは、いずれの変速段も形成しないニュートラル状態に切り替え可能に構成されている。伝達係合装置CLtがニュートラル状態の場合、伝達機構Tが分配用差動歯車機構SPと第1出力部材O1との間での回転の伝達を行わない状態となる。
【0050】
このように、本実施形態では、伝達機構Tは、互いに噛み合う第2分配出力ギヤSG2及び第1ギヤ21と、互いに噛み合う第1分配出力ギヤSG1及び第2ギヤ22と、を備えた平行軸歯車式の変速機として構成されている。
【0051】
また、本実施形態では、伝達係合装置CLtは、第1ギヤ21と第2ギヤ22との軸方向Lの間に配置されている。そして、伝達係合装置CLtは、支持部材41と、切替部材42と、第1被係合部43と、第2被係合部44と、を備えている。
【0052】
支持部材41は、伝達軸24から径方向Rの外側に突出するように形成されている。支持部材41は、伝達軸24と一体的に回転するように連結されている。図3に示す例では、支持部材41は、スプライン係合により伝達軸24に連結されている。
【0053】
切替部材42は、支持部材41の径方向Rの外側を覆う筒状に形成されている。そして、切替部材42の内周部には、複数の内歯を有する係合部42aが形成されており、それらの内歯に対応する複数の外歯が支持部材41の外周部に形成されている。これらの内歯及び外歯は、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合している。こうして、切替部材42は、支持部材41と一体的に回転すると共に、支持部材41に対して軸方向Lに相対移動するように支持されている。つまり、切替部材42は、噛合い式係合装置(ドグクラッチ)のスリーブである。
【0054】
第1被係合部43は、第1ギヤ21と一体的に回転するように連結されている。第1被係合部43は、支持部材41に対して第2軸方向L2に配置されている。第1被係合部43は、第3軸X3を軸心とする筒状に形成されている。そして、第1被係合部43の外周部には、切替部材42の係合部42aにおける複数の内歯に対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する複数の外歯が形成されている。
【0055】
第2被係合部44は、第2ギヤ22と一体的に回転するように連結されている。第2被係合部44は、支持部材41に対して第1軸方向L1に配置されている。第2被係合部44は、第3軸X3を軸心とする筒状に形成されている。そして、第2被係合部44の外周部には、切替部材42の係合部42aにおける複数の内歯に対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する複数の外歯が形成されている。
【0056】
切替部材42が支持部材41に対して第1軸方向L1に相対移動して、係合部42aの内歯と第2被係合部44の外歯とが互い係合した場合、第2ギヤ22が伝達軸24に連結した状態、つまり、上記の低速段が形成された状態となる。一方、切替部材42が支持部材41に対して第2軸方向L2に相対移動して、係合部42aの内歯と第1被係合部43の外歯とが互い係合した場合、第1ギヤ21が伝達軸24に連結した状態、つまり、上記の高速段が形成された状態となる。また、係合部42aの内歯が、第1被係合部43の外歯及び第2被係合部44の外歯のいずれにも係合していない場合には、第1ギヤ21及び第2ギヤ22のいずれも伝達軸24に連結していない状態、つまり、上記のニュートラル状態となる。
【0057】
第1係合装置CL1は、入力部材Iと分配用差動歯車機構SPの第1回転要素E1との間の動力伝達を断接する「切離用係合装置」である。本実施形態では、第1係合装置CL1は、第1分配出力ギヤSG1に対して第1軸方向L1に配置されている。また、本実施形態では、第1分配出力ギヤSG1は、分配用差動歯車機構SPに対して第1軸方向L1に配置されている。このように、分配用差動歯車機構SPは、第1分配出力ギヤSG1及び第1係合装置CL1に対して第2軸方向L2に配置されている。
【0058】
本実施形態では、第1係合装置CL1は、摩擦部材51と、当該摩擦部材51を押圧するピストン52と、を備えている。
【0059】
摩擦部材51は、第1支持部材53により径方向Rの内側から支持された複数の内側摩擦材と、第2支持部材54により径方向Rの外側から支持された複数の外側摩擦材とを含む。これらの内側摩擦材及び外側摩擦材は、軸方向Lに交互に配置されている。
【0060】
本実施形態では、第1支持部材53は、分配用差動歯車機構SPのサンギヤS1と一体的に回転するように連結されている。図3に示す例では、第1支持部材53は、ケース9における支持壁部93の第1筒状部931を軸方向Lに貫通するように、第1筒状部931と入力軸1との径方向Rの間に配置された筒状の連結部材20を介して、サンギヤS1と連結されている。そして、第1支持部材53は、連結部材20から径方向Rの外側に延出し、更に第1軸方向L1に延出するように形成されている。第1支持部材53における第1軸方向L1に延出している部分が、摩擦部材51の内側摩擦材を径方向Rの内側から支持している。
【0061】
また、本実施形態では、第2支持部材54は、入力軸1と一体的に回転するように連結されている。図3に示す例では、第2支持部材54は、入力軸1における第1支持部材53と連結部材20との連結部分よりも第1軸方向L1の部分から、径方向Rの外側に延出し、更に第1軸方向L1に延出し、更に径方向Rの外側に延出し、更に第2軸方向L2に延出するように形成されている。第2支持部材54における第2軸方向L2に延出している部分が、摩擦部材51の外側摩擦材を径方向Rの外側から支持している。
【0062】
ピストン52は、バネ等の付勢部材52aによって第1軸方向L1に向けて付勢されている。ピストン52は、付勢部材52aの付勢力に抗するように第1軸方向L1から押圧されると、第2軸方向L2に摺動して摩擦部材51を押圧する。
【0063】
本実施形態では、ピストン52は、径方向Rに沿う径方向視で、摩擦部材51と重複するように配置されている。図3に示す例では、ピストン52は、入力軸1と、第2支持部材54における入力軸1から径方向Rの外側に延出している部分と、当該部分の径方向Rの外側の端部から第1軸方向L1に延出している部分とによって形成されたシリンダ部を軸方向Lに摺動する摺動部521を備えている。そして、摺動部521が、径方向Rに沿う径方向視で、摩擦部材51と重複している。
【0064】
この構成によれば、ピストン52が径方向視で摩擦部材51と重複していない構成と比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さくすることができる。
【0065】
第2係合装置CL2は、分配用差動歯車機構SPの第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3の3つの回転要素のうちから選択される2つの間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第2係合装置CL2は、第2回転要素E2としてのキャリヤC1と、第3回転要素E3としてのリングギヤR1との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第2係合装置CL2は、支持部材61と、切替部材62と、被係合部63と、を備えた噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。また、本実施形態では、第2係合装置CL2の軸方向Lの配置領域が、伝達出力ギヤ23の軸方向Lの配置領域と重なっている。
【0066】
支持部材61は、リングギヤR1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、支持部材61は、ギヤ形成部材10から第2軸方向L2に突出する筒状に形成されている。また、本実施形態では、支持部材61は、第5軸受B5によって回転可能に支持されている。本実施形態では、第5軸受B5は、ケース9の第2側壁部92により径方向Rの外側から支持されている。そして、第5軸受B5は、支持部材61を径方向Rの外側から回転可能に支持している。
【0067】
切替部材62は、支持部材61と一体的に回転すると共に、支持部材61に対して軸方向Lに相対移動するように支持されている。本実施形態では、切替部材62は、支持部材61の径方向Rの内側を覆う筒状に形成されている。そして、切替部材62の外周部には、複数の外歯が形成されており、それらの外歯に対応する複数の内歯が支持部材61の内周部に形成されている。これらの内歯及び外歯は、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合している。このように、切替部材62は、噛合い式係合装置(ドグクラッチ)のスリーブである。
【0068】
また、本実施形態では、切替部材62の内周部には、複数の内歯を有する係合部62aが形成されている。
【0069】
被係合部63は、キャリヤC1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、被係合部63は、第1軸X1を軸心とする筒状に形成されている。そして、被係合部63の外周部には、切替部材62の係合部62aにおける複数の内歯に対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する複数の外歯が形成されている。
【0070】
切替部材62が支持部材61に対して軸方向Lに相対移動して、係合部62aの内歯が被係合部63の外歯に係合した場合、キャリヤC1とリングギヤR1とが互いに連結した状態となる。その結果、分配用差動歯車機構SPの3つの回転要素E1~E3が互いに一体的に回転する状態となる。一方、係合部62aの内歯が被係合部63の外歯に係合していない場合、キャリヤC1とリングギヤR1との連結が解除された状態となる。その結果、分配用差動歯車機構SPの3つの回転要素E1~E3が相対的に回転する状態となる。
【0071】
以上のように、車両用駆動装置100(ここでは、第1駆動ユニット100A)は、
内燃機関EGに駆動連結される入力部材Iと、
第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材O1と、
第1ロータRT1を備えた第1回転電機MG1と、
第1ロータRT1に駆動連結された第1回転電機駆動ギヤDG1と、
動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置CLtを備えた伝達機構Tと、
入力部材Iに駆動連結された第1回転要素E1、伝達機構Tに駆動連結された第2回転要素E2、及び第1回転電機駆動ギヤDG1に駆動連結された第3回転要素E3を備えた分配用差動歯車機構SPと、
第2回転要素E2と一体的に回転するように連結された第1分配出力ギヤSG1と、
入力部材Iと第1回転要素E1との間の動力伝達を断接する第1係合装置CL1と、を備え、
伝達機構Tは、分配用差動歯車機構SPから伝達された回転を第1出力部材O1に伝達するように構成され、
分配用差動歯車機構SPと、第1分配出力ギヤSG1と、第1係合装置CL1とが、第1軸X1上に配置され、
第1回転電機MG1と、第1回転電機駆動ギヤDG1とが、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置され、
伝達係合装置CLtが、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置され、
第1回転電機MG1の軸方向Lは、第1回転電機駆動ギヤDG1に対して第1回転電機MG1が配置された方向である第1軸方向L1と、当該第1軸方向L1とは反対方向である第2軸方向L2と、を含み、
分配用差動歯車機構SPは、第1分配出力ギヤSG1及び第1係合装置CL1に対して第2軸方向L2に配置されている。
【0072】
この構成によれば、分配用差動歯車機構SP、第1分配出力ギヤSG1、及び第1係合装置CL1と、第1回転電機MG1及び第1回転電機駆動ギヤDG1と、伝達係合装置CLtとが、互いに別軸に配置されている。これにより、それらの一部又は全部が同軸に配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
また、このような構成において、第1回転電機駆動ギヤDG1が第1回転電機MG1に対して第2軸方向L2に配置されていると共に、分配用差動歯車機構SPが第1分配出力ギヤSG1及び第1係合装置CL1に対して第2軸方向L2に配置されている。つまり、第1回転電機駆動ギヤDG1と分配用差動歯車機構SPとが、それぞれと同軸に配置された他の要素に対して、軸方向Lの同じ側に配置されている。これにより、分配用差動歯車機構SPの第3回転要素E3と第1回転電機駆動ギヤDG1との駆動連結を適切に行いつつ、第1回転電機MG1と、第1分配出力ギヤSG1及び第1係合装置CL1との双方を、第1回転電機駆動ギヤDG1及び分配用差動歯車機構SPに対して第1軸方向L1の領域に配置することができる。したがって、入力部材I、第1出力部材O1、第1回転電機MG1、分配用差動歯車機構SP、伝達機構T、及び第1係合装置CL1を備えた構成において、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑え易い。
【0073】
本実施形態では、第1分配出力ギヤSG1の軸方向Lの配置領域と、第1係合装置CL1の軸方向Lの配置領域との双方が、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域と重なっている。図3に示す例では、第1分配出力ギヤSG1と第1係合装置CL1との軸方向Lの配置領域が、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域内に収まっている。具体的には、第1分配出力ギヤSG1に対して第1軸方向L1に位置する第1係合装置CL1の第1軸方向L1の端部が、第1回転電機MG1における第1軸方向L1のコイルエンド部CEの第1軸方向L1の端部よりも第2軸方向L2に位置している。そして、第1分配出力ギヤSG1の第2軸方向L2の端部が、第1回転電機MG1における第2軸方向L2のコイルエンド部CEの第2軸方向L2の端部よりも第1軸方向L1に位置している。
【0074】
この構成によれば、第1分配出力ギヤSG1及び第1係合装置CL1の少なくとも一方の軸方向Lの配置領域が、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域と重なっていない構成と比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さくすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、車両用駆動装置100(ここでは、第1駆動ユニット100A)は、第3回転要素E3と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤSG2を更に備え、
分配用差動歯車機構SPは、サンギヤS1、キャリヤC1、及びリングギヤR1を備えた遊星歯車機構であり、
第3回転要素E3がリングギヤR1であり、
第2分配出力ギヤSG2は、第1軸X1上であって、リングギヤR1に対して径方向Rの外側に配置され、
伝達機構Tは、第3軸X3上に配置されて第2分配出力ギヤSG2に噛み合う第1ギヤ21を備え、
リングギヤR1と第2分配出力ギヤSG2とが、径方向Rに沿う径方向視で互いに重複している。
【0076】
この構成によれば、リングギヤR1と第2分配出力ギヤSG2とが、径方向Rに沿う径方向視で互いに重複していない構成と比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さくすることができる。
また、本構成によれば、第1回転電機駆動ギヤDG1に駆動連結された第3回転要素E3としてのリングギヤR1に対して径方向Rの外側に、当該リングギヤR1と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤSG2が配置されている。これにより、第2分配出力ギヤSG2と第1回転電機駆動ギヤDG1とを直接的又は間接的に噛み合うように構成することが容易となる。したがって、第1回転電機駆動ギヤDG1と第3回転要素E3との駆動連結を適切に行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、車両用駆動装置100(ここでは、第1駆動ユニット100A)は、第1出力部材O1としての第1差動入力ギヤ31を備え、当該第1差動入力ギヤ31の回転を一対の第1車輪W1に分配する第1出力用差動歯車機構DF1を更に備え、
伝達機構Tは、第3軸X3上に配置されて第1分配出力ギヤSG1に噛み合う第2ギヤ22と、第3軸X3上に配置されて第1差動入力ギヤ31に噛み合う伝達出力ギヤ23と、を更に備え、
第3軸X3上において、第2軸方向L2から、伝達出力ギヤ23、第1ギヤ21、伝達係合装置CLt、第2ギヤ22の順に配置されている。
【0078】
この構成によれば、伝達機構Tを、互いに噛み合う第2分配出力ギヤSG2及び第1ギヤ21と、互いに噛み合う第1分配出力ギヤSG1及び第2ギヤ22と、を備えた平行軸歯車式の変速機として構成することができると共に、当該変速機により変速された回転を第1出力用差動歯車機構DF1を介して一対の第1車輪W1に伝達することができる。
また、本構成によれば、第1ギヤ21と第2ギヤ22との軸方向Lの間に、伝達係合装置CLtが配置されている。これにより、伝達係合装置CLtを、第1ギヤ21及び第2ギヤ22の動力伝達の状態を切り替える構成とすることが容易となる。
【0079】
図2に示すように、第2回転電機MG2は、第2車輪W2の駆動力源として機能する。第2回転電機MG2は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、第2回転電機MG2は、上記の蓄電装置との間で電力の授受を行うように、当該蓄電装置と電気的に接続されている。そして、第2回転電機MG2は、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、第2回転電機MG2は、回生中には、第2出力部材O2の側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0080】
第2回転電機MG2は、第2ステータST2と、第2ロータRT2と、を備えている。第2ステータST2は、非回転部材(例えば、第2回転電機MG2等を収容するケース)に固定されている。第2ロータRT2は、第2ステータST2に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、第2ロータRT2は、第2ステータST2に対して径方向Rの内側に配置されている。
【0081】
本実施形態では、第2ロータRT2には、軸方向Lに沿って延在するように形成された第2ロータ軸RS2を介して、第2回転電機駆動ギヤDG2が一体的に回転するように連結されている。図2に示す例では、第2ロータギヤRG2は、第2ロータRT2よりも第1軸方向L1に配置されている。
【0082】
カウンタギヤ機構CGは、カウンタ入力ギヤ71と、カウンタ出力ギヤ72と、これらのギヤ71,72が一体的に回転するように連結するカウンタ軸73と、を備えている。
【0083】
カウンタ入力ギヤ71は、カウンタギヤ機構CGの入力要素である。本実施形態では、カウンタ入力ギヤ71は、第2回転電機駆動ギヤDG2に噛み合っている。カウンタ出力ギヤ72は、カウンタギヤ機構CGの出力要素である。図2に示す例では、カウンタ出力ギヤ72は、カウンタ入力ギヤ71よりも第2軸方向L2に配置されている。また、カウンタ出力ギヤ72は、カウンタ入力ギヤ71よりも小径に形成されている。
【0084】
第2出力用差動歯車機構DF2は、第2出力部材O2の回転を一対の第2車輪W2に分配するように構成されている。本実施形態では、第2出力部材O2は、カウンタギヤ機構CGのカウンタ出力ギヤ72に噛み合う第2差動入力ギヤ81である。
【0085】
本実施形態では、第2出力用差動歯車機構DF2は、傘歯車型の差動歯車機構である。具体的には、第2出力用差動歯車機構DF2は、中空の第2差動ケースと、当該第2差動ケースと一体的に回転するように支持された第2ピニオンシャフトと、当該第2ピニオンシャフトに対して回転可能に支持された一対の第2ピニオンギヤと、当該一対の第2ピニオンギヤに噛み合って出力要素として機能する一対の第2サイドギヤと、を備えている。第2差動ケースには、第2ピニオンシャフト、一対の第2ピニオンギヤ、及び一対の第2サイドギヤが収容されている。
【0086】
本実施形態では、第2差動ケースには、第2出力部材O2としての第2差動入力ギヤ81が、当該第2差動ケースから径方向Rの外側に突出するように連結されている。そして、一対の第2サイドギヤのそれぞれには、第2車輪W2に駆動連結された第2ドライブシャフトDS2が一体的に回転可能に連結されている。こうして、本実施形態では、第2出力用差動歯車機構DF2は、一対の第2ドライブシャフトDS2を介して、第2出力部材O2(ここでは、第2差動入力ギヤ81)の回転を一対の第2車輪W2に分配する。
【0087】
以下では、軸方向Lに沿う軸方向視における、車両用駆動装置100の各要素の位置関係について、図5を参照して説明する。なお、図5における矢印「V」は、車両に搭載された状態(車両搭載状態)の車両用駆動装置100の上下方向を示している。
【0088】
図5に示すように、本実施形態では、第1回転電機MG1及び第1回転電機駆動ギヤDG1の回転軸心としての第2軸X2が、分配用差動歯車機構SP、第1分配出力ギヤSG1、及び第2分配出力ギヤSG2等の回転軸心としての第1軸X1と、第1出力部材O1及び第1出力用差動歯車機構DF1の回転軸心としての第4軸X4とを含む仮想平面Pよりも、車両搭載状態における上側に配置されている。また、第1ギヤ21、第2ギヤ22、及び伝達出力ギヤ23等の回転軸心としての第3軸X3が、仮想平面Pよりも、車両搭載状態における下側に配置されている。
【0089】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100(ここでは、第1駆動ユニット100A)は、第1出力部材O1の回転を一対の第1車輪W1に分配する第1出力用差動歯車機構DF1を更に備え、
第1出力用差動歯車機構DF1が、第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置され、
第2軸X2が、第1軸X1及び第4軸X4を含む仮想平面Pよりも、車両搭載状態における上側に配置され、
第3軸X3が、仮想平面Pよりも、車両搭載状態における下側に配置されている。
【0090】
この構成によれば、第2軸X2上に配置された第1回転電機MG1及び第1回転電機駆動ギヤDG1と、第3軸X3上に配置された伝達係合装置CLtとを、車両搭載状態における上下方向Vに並べて配置することができる。したがって、車両用駆動装置100における軸方向Lに直交する方向の寸法、例えば、車両用駆動装置100における車両前後方向(図5における左右方向)の寸法を小さく抑え易い。
【0091】
図6に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、動作モードとして、電気式トルクコンバータモード(以下、「eTCモード」と記す)と、第1EVモードと、第2EVモードと、第1HVモードと、第2HVモードと、充電モードと、を備えている。
【0092】
図6に、本実施形態の車両用駆動装置100の各動作モードにおける、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2、及び伝達係合装置CLtの状態を示す。なお、図6の第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の欄において、「〇」は対象の係合装置が係合状態であることを示し、「×」は対象の係合装置が解放状態であることを示している。また、図6の伝達係合装置CLtの欄において、「Lo」は伝達係合装置CLtが低速段を形成していることを示し、「Hi」は伝達係合装置CLtが高速段を形成していることを示し、「N」は伝達係合装置CLtがニュートラル状態となっていることを示している。
【0093】
eTCモードは、分配用差動歯車機構SPにより、第1回転電機MG1のトルクを反力として内燃機関EGのトルクを増幅して第1出力部材O1に伝達することで車両を走行させるモードである。eTCモードは、内燃機関EGのトルクを増幅して第1出力部材O1に伝達することができるため、所謂、電気式トルクコンバータモードと称される。
【0094】
図6に示すように、本実施形態のeTCモードでは、第1係合装置CL1が係合状態であり、第2係合装置CL2が解放状態であり、伝達係合装置CLtが低速段を形成した状態となるように制御される。本実施形態のeTCモードでは、第1回転電機MG1は、負回転しつつ正トルクを出力して発電し、分配用差動歯車機構SPは、第1回転電機MG1の駆動力と内燃機関EGの駆動力とを合わせて、内燃機関EGの駆動力よりも大きい駆動力を第2回転要素E2(ここでは、キャリヤC1)から出力する。そして、第2回転要素E2の回転は、伝達機構Tにおいて低速段に応じた変速比で変速されて第1出力部材O1に伝達される。そのため、蓄電装置の充電量が比較的低い場合であってもeTCモードを選択可能である。
【0095】
第1EVモードは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1のうち、第1回転電機MG1のみの駆動力により、比較的低速で車両を走行させるモードである。第2EVモードは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1のうち、第1回転電機MG1のみの駆動力により、比較的高速で車両を走行させるモードである。
【0096】
本実施形態の第1EVモードでは、第1係合装置CL1が解放状態となり、第2係合装置CL2が係合状態となり、伝達係合装置CLtが低速段を形成した状態となるように制御される。一方、本実施形態の第2EVモードでは、第1係合装置CL1が解放状態となり、第2係合装置CL2が係合状態となり、伝達係合装置CLtが高速段を形成した状態となるように制御される。
【0097】
本実施形態の第1EVモード及び第2EVモードでは、第1係合装置CL1が解放状態とされることにより、内燃機関EGが分配用差動歯車機構SPから分離されて、内燃機関EGと第1出力部材O1との間での動力伝達が遮断された状態となる。そして、第2係合装置CL2が係合状態とされることにより、分配用差動歯車機構SPの3つの回転要素E1~E3が互いに一体的に回転する状態となる。その結果、第1回転電機MG1の側から分配用差動歯車機構SPに入力される回転が、そのまま伝達機構Tの第1ギヤ21及び第2ギヤ22に伝達される。そして、伝達機構Tに伝達された回転は、伝達係合装置CLtの状態に応じて、第1EVモードでは低速段の変速比、第2EVモードでは高速段の変速比で変速されて第1出力部材O1に伝達される。
【0098】
第1HVモードは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1のうち、少なくとも内燃機関EGの駆動力により、比較的低速で車両を走行させるモードである。第2HVモードは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1のうち、少なくとも内燃機関EGの駆動力により、比較的高速で車両を走行させるモードである。
【0099】
本実施形態の第1HVモードでは、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の双方が係合状態となり、伝達係合装置CLtが低速段を形成した状態となるように制御される。一方、本実施形態の第2HVモードでは、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の双方が係合状態となり、伝達係合装置CLtが高速段を形成した状態となるように制御される。
【0100】
本実施形態の第1HVモード及び第2HVモードでは、第1係合装置CL1が係合状態とされることにより、内燃機関EGが分配用差動歯車機構SPに連結された状態となる。そして、第2係合装置CL2が係合状態とされることにより、分配用差動歯車機構SPの3つの回転要素E1~E3が互いに一体的に回転する状態となる。その結果、内燃機関EGの側及び第1回転電機MG1の側から分配用差動歯車機構SPに入力される回転が、そのまま伝達機構Tの第1ギヤ21及び第2ギヤ22に伝達される。そして、伝達機構Tに伝達された回転は、伝達係合装置CLtの状態に応じて、第1EVモードでは低速段の変速比、第2EVモードでは高速段の変速比で変速されて第1出力部材O1に伝達される。
【0101】
充電モードは、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせて、蓄電装置を充電するモードである。本実施形態の充電モードでは、第1係合装置CL1が係合状態となり、第2係合装置CL2が係合状態となり、伝達係合装置CLtがニュートラル状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動力を出力し、第1回転電機MG1が内燃機関EGの駆動力によって回転する第1ロータRT1の回転方向とは反対方向の駆動力を出力することにより発電するように制御される。なお、充電モードでは、車両を停車させていても良いし、第1回転電機MG1が発電した電力により第2回転電機MG2を力行させ、当該第2回転電機MG2の駆動力を第2車輪W2に伝達することで車両を走行させても良い。このように充電モードとしつつ第2回転電機MG2の駆動力によって車両を走行させるモードは、所謂、シリーズハイブリッドモードと称される。
【0102】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、車両用駆動装置100が第1駆動ユニット100Aと第2駆動ユニット100Bとを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置100が第1駆動ユニット100Aを備え、第2駆動ユニット100Bを備えていない構成としても良い。この場合、第1駆動ユニット100Aが第2回転電機MG2を備えていても良い。
【0103】
(2)上記の実施形態では、伝達機構Tが低速段及び高速段の2つの変速段のいずれかを形成可能な変速機である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、伝達機構Tが、3つ以上の変速段のいずれかを形成する構成としても良い。或いは、伝達機構Tが、カウンタギヤ機構又は遊星歯車機構を備え、分配用差動歯車機構SPから伝達される回転を一定の変速比で変速して第1出力部材O1に伝達する構成であっても良い。
【0104】
(3)上記の実施形態では、第2分配出力ギヤSG2が、アイドラギヤIGを介して、第1回転電機駆動ギヤDG1に駆動連結された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2分配出力ギヤSG2が第1回転電機駆動ギヤDG1に直接噛み合う構成としても良い。
【0105】
(4)上記の実施形態では、第1分配出力ギヤSG1の軸方向Lの配置領域と、第1係合装置CL1の軸方向Lの配置領域との双方が、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域と重なっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1分配出力ギヤSG1の軸方向Lの配置領域と、第1係合装置CL1の軸方向Lの配置領域との一方のみが、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域と重なっている構成としても良い。また、第1分配出力ギヤSG1の軸方向Lの配置領域と、第1係合装置CL1の軸方向Lの配置領域との双方が、第1回転電機MG1の軸方向Lの配置領域と重なっていない構成としても良い。
【0106】
(5)上記の実施形態では、第2分配出力ギヤSG2が、リングギヤR1に対して径方向Rの外側であって、径方向Rに沿う径方向視でリングギヤR1と重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2分配出力ギヤSG2が、径方向視でリングギヤR1と重複しないように配置されていても良い。その場合において、第2分配出力ギヤSG2が、リングギヤR1と径方向Rの同じ位置に配置され、或いは、リングギヤR1に対して径方向Rの内側に配置されていても良い。
【0107】
(6)上記の実施形態では、第3軸X3上において、第2軸方向L2から、伝達出力ギヤ23、第1ギヤ21、伝達係合装置CLt、第2ギヤ22の順に配置された構成を例として説明した。しかし、第1ギヤ21、第2ギヤ22、伝達出力ギヤ23、及び伝達係合装置CLtの軸方向Lの配置順は、そのような構成に限定されることなく適宜変更可能である。
【0108】
(7)上記の実施形態では、第2軸X2が、第1軸X1及び第4軸X4を含む仮想平面Pよりも、車両搭載状態における上側に配置され、第3軸X3が、仮想平面Pよりも、車両搭載状態における下側に配置された構成を例として説明した。しかし、第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、及び第4軸X4の位置は、そのような構成に限定されることなく適宜変更可能である。
【0109】
(8)上記の実施形態では、第1係合装置CL1が係合状態であって第2係合装置CL2が解放状態で実現される車両用駆動装置100の動作モードが、上述した電気式トルクコンバータモード(eTCモード)である構成を例として説明したが、そのような構成に限定されない。例えば、分配用差動歯車機構SPが、第1係合装置CL1が係合状態であって第2係合装置CL2が解放状態で、いわゆるスプリットハイブリッドモードを実現するように構成されていても良い。ここで、スプリットハイブリッドモードとは、内燃機関EGのトルクを第1回転電機MG1と伝達機構Tとに分配し、第1回転電機MG1のトルクを反力として、内燃機関EGのトルクに対して減衰したトルクを伝達機構Tに伝達するモードである。この場合、分配用差動歯車機構SPの各回転要素の回転速度の順は、第2回転要素E2、第1回転要素E1、第3回転要素E3の順とすると良い。例えば、分配用差動歯車機構SPをシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成する場合、サンギヤを第3回転要素E3として第1ロータRT1に駆動連結し、キャリヤを第1回転要素E1として入力部材Iに駆動連結し、リングギヤを第2回転要素E2として分配用差動歯車機構SPの出力要素とすることができる。このモードでは、第1回転電機MG1は正回転しつつ負トルクを出力して発電し、分配用差動歯車機構SPは、当該第1回転電機MG1のトルクを反力として、内燃機関EGのトルクを第2回転要素E2から出力する。そして、当該第2回転要素E2の回転が、伝達機構Tに伝達される。
【0110】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0111】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0112】
車両用駆動装置(100)は、
内燃機関(EG)に駆動連結される入力部材(I)と、
車輪(W1)に駆動連結される出力部材(O1)と、
ロータ(RT1)を備えた回転電機(MG1)と、
前記ロータ(RT1)に駆動連結された回転電機駆動ギヤ(DG1)と、
動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置(CLt)を備えた伝達機構(T)と、
前記入力部材(I)に駆動連結された第1回転要素(E1)、前記伝達機構(T)に駆動連結された第2回転要素(E2)、及び前記回転電機駆動ギヤ(DG1)に駆動連結された第3回転要素(E3)を備えた分配用差動歯車機構(SP)と、
前記第2回転要素(E2)と一体的に回転するように連結された第1分配出力ギヤ(SG1)と、
前記入力部材(I)と前記第1回転要素(E1)との間の動力伝達を断接する切離用係合装置(CL1)と、を備え、
前記伝達機構(T)は、前記分配用差動歯車機構(SP)から伝達された回転を前記出力部材(O1)に伝達するように構成され、
前記分配用差動歯車機構(SP)と、前記第1分配出力ギヤ(SG1)と、前記切離用係合装置(CL1)とが、第1軸(X1)上に配置され、
前記回転電機(MG1)と、前記回転電機駆動ギヤ(DG1)とが、前記第1軸(X1)とは異なる第2軸(X2)上に配置され、
前記伝達係合装置(CLt)が、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)とは異なる第3軸(X3)上に配置され、
前記回転電機(MG1)の軸方向(L)は、前記回転電機駆動ギヤ(DG1)に対して前記回転電機(MG1)が配置された方向である第1軸方向(L1)と、当該第1軸方向(L1)とは反対方向である第2軸方向(L2)と、を含み、
前記分配用差動歯車機構(SP)は、前記第1分配出力ギヤ(SG1)及び前記切離用係合装置(CL1)に対して前記第2軸方向(L2)に配置されている。
【0113】
この構成によれば、分配用差動歯車機構(SP)、第1分配出力ギヤ(SG1)、及び切離用係合装置(CL1)と、回転電機(MG1)及び回転電機駆動ギヤ(DG1)と、伝達係合装置(CLt)とが、互いに別軸に配置されている。これにより、それらの一部又は全部が同軸に配置された構成に比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑え易い。
また、このような構成において、回転電機駆動ギヤ(DG1)が回転電機(MG1)に対して第2軸方向(L2)に配置されていると共に、分配用差動歯車機構(SP)が第1分配出力ギヤ(SG1)及び切離用係合装置(CL1)に対して第2軸方向(L2)に配置されている。つまり、回転電機駆動ギヤ(DG1)と分配用差動歯車機構(SP)とが、それぞれと同軸に配置された他の要素に対して、軸方向(L)の同じ側に配置されている。これにより、分配用差動歯車機構(SP)の第3回転要素(E3)と回転電機駆動ギヤ(DG1)との駆動連結を適切に行いつつ、回転電機(MG1)と、第1分配出力ギヤ(SG1)及び切離用係合装置(CL1)との双方を、回転電機駆動ギヤ(DG1)及び分配用差動歯車機構(SP)に対して第1軸方向(L1)の領域に配置することができる。したがって、入力部材(I)、出力部材(O1)、回転電機(MG1)、分配用差動歯車機構(SP)、伝達機構(T)、及び切離用係合装置(CL1)を備えた構成において、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑え易い。
【0114】
ここで、前記第1分配出力ギヤ(SG1)の前記軸方向(L)の配置領域と、前記切離用係合装置(CL1)の前記軸方向(L)の配置領域との双方が、前記回転電機(MG1)の前記軸方向(L)の配置領域と重なっていると好適である。
【0115】
この構成によれば、第1分配出力ギヤ(SG1)及び切離用係合装置(CL1)の少なくとも一方の軸方向(L)の配置領域が、回転電機(MG1)の軸方向(L)の配置領域と重なっていない構成と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さくすることができる。
【0116】
また、前記第3回転要素(E3)と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤ(SG2)を更に備え、
前記分配用差動歯車機構(SP)は、サンギヤ(S1)、キャリヤ(C1)、及びリングギヤ(R1)を備えた遊星歯車機構であり、
前記第3回転要素(E3)が前記リングギヤ(R1)であり、
前記第2分配出力ギヤ(SG2)は、前記第1軸(X1)上であって、前記リングギヤ(R1)に対して径方向(R)の外側に配置され、
前記伝達機構(T)は、前記第3軸(X3)上に配置されて前記第2分配出力ギヤ(SG2)に噛み合う第1ギヤ(21)を備え、
前記リングギヤ(R1)と前記第2分配出力ギヤ(SG2)とが、前記径方向(R)に沿う径方向視で互いに重複していると好適である。
【0117】
この構成によれば、リングギヤ(R1)と第2分配出力ギヤ(SG2)とが、径方向(R)に沿う径方向視で互いに重複していない構成と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さくすることができる。
また、本構成によれば、回転電機駆動ギヤ(DG1)に駆動連結された第3回転要素(E3)としてのリングギヤ(R1)に対して径方向(R)の外側に、当該リングギヤ(R1)と一体的に回転するように連結された第2分配出力ギヤ(SG2)が配置されている。これにより、第2分配出力ギヤ(SG2)と回転電機駆動ギヤ(DG1)とを直接的又は間接的に噛み合うように構成することが容易となる。したがって、回転電機駆動ギヤ(DG1)と第3回転要素(E3)との駆動連結を適切に行うことができる。
【0118】
前記第2分配出力ギヤ(SG2)を備えた構成において、
前記出力部材(O1)としての差動入力ギヤ(31)を備え、当該差動入力ギヤ(31)の回転を一対の前記車輪(W1)に分配する出力用差動歯車機構(DF1)を更に備え、
前記伝達機構(T)は、前記第3軸(X3)上に配置されて前記第1分配出力ギヤ(SG1)に噛み合う第2ギヤ(22)と、前記第3軸(X3)上に配置されて前記差動入力ギヤ(31)に噛み合う伝達出力ギヤ(23)と、を更に備え、
前記第3軸上において、前記第2軸方向(L2)から、前記伝達出力ギヤ(23)、前記第1ギヤ(21)、前記伝達係合装置(CLt)、前記第2ギヤ(22)の順に配置されていると好適である。
【0119】
この構成によれば、伝達機構(T)を、互いに噛み合う第2分配出力ギヤ(SG2)及び第1ギヤ(21)と、互いに噛み合う第1分配出力ギヤ(SG1)及び第2ギヤ(22)と、を備えた平行軸歯車式の変速機として構成することができると共に、当該変速機により変速された回転を出力用差動歯車機構(DF1)を介して一対の車輪(W1)に伝達することができる。
また、本構成によれば、第1ギヤ(21)と第2ギヤ(22)との軸方向(L)の間に、伝達係合装置(CLt)が配置されている。これにより、伝達係合装置(CLt)を、第1ギヤ(21)及び第2ギヤ(22)の動力伝達の状態を切り替える構成とすることが容易となる。
【0120】
前記出力用差動歯車機構(DF1)を備えた構成において、
前記切離用係合装置を第1係合装置(CL1)として、
前記第1回転要素(E1)、前記第2回転要素(E2)、及び前記第3回転要素(E3)の3つの回転要素のうちから選択される2つの間の動力伝達を断接する第2係合装置(CL2)を更に備え、
前記第2係合装置(CL2)の前記軸方向(L)の配置領域が、前記伝達出力ギヤ(23)の前記軸方向(L)の配置領域と重なっていると好適である。
【0121】
この構成によれば、第2係合装置(CL2)の軸方向(L)の配置領域が伝達出力ギヤ(23)の軸方向(L)の配置領域と重なっていない構成と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さくすることができる。
【0122】
また、前記出力部材(O1)の回転を一対の前記車輪(W1)に分配する出力用差動歯車機構(DF1)を更に備え、
前記出力用差動歯車機構(DF1)が、前記第1軸(X1)、前記第2軸(X2)、及び前記第3軸(X3)とは異なる第4軸(X4)上に配置され、
前記第2軸(X2)が、前記第1軸(X1)及び前記第4軸(X4)を含む仮想平面(P)よりも、車両搭載状態における上側に配置され、
前記第3軸(X3)が、前記仮想平面(P)よりも、車両搭載状態における下側に配置されていると好適である。
【0123】
この構成によれば、第2軸(X2)上に配置された回転電機(MG1)及び回転電機駆動ギヤ(DG1)と、第3軸(X3)上に配置された伝達係合装置(CLt)とを、車両搭載状態における上下方向(V)に並べて配置することができる。したがって、車両用駆動装置(100)における軸方向(L)に直交する方向の寸法、例えば、車両用駆動装置(100)における車両前後方向の寸法を小さく抑え易い。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置を備えた伝達機構と、分配用差動歯車機構と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
100:車両用駆動装置、I:入力部材、O1:第1出力部材(出力部材)、MG1:第1回転電機(回転電機)、RT1:第1ロータ(ロータ)、DG1:第1回転電機駆動ギヤ(回転電機駆動ギヤ)、T:伝達機構、SP:分配用差動歯車機構、E1:第1回転要素、E2:第2回転要素、E3:第3回転要素E3、SG1:第1分配出力ギヤ、CL1:第1係合装置(切離用係合装置)、CLt:伝達係合装置、EG:内燃機関、W1:第1車輪(車輪)、L:軸方向、L1:第1軸方向、L2:第2軸方向、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6