(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240806BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240806BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240806BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240806BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/10
G08G1/16 C
B62D101:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2023031082
(22)【出願日】2023-03-01
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 俊彦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026210(WO,A1)
【文献】特許第7113931(JP,B1)
【文献】特開2022-059787(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230551(WO,A1)
【文献】特開2017-024675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00,30/00-60/00
B62D 6/00,15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路情報を検出する検出部と、
前記車両の位置情報を取得する取得部と、
前記検出部により検出された前記道路情報に基づいて前記車両が走行する第1車線情報を特定し、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて前記車両が走行する第2車線情報を特定し、前記車両が走行する車線を前記第1車線情報または前記第2車線情報に切り換えて前記車両の操舵を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記第2車線情報から前記第1車線情報に切り換える場合に、所定の遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と前記第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように前記切り換え前の車線情報を変更すると共に、変更した前記切り換え前の車線情報に基づいて前記車両の操舵を制御
し、
前記第1車線情報から前記第2車線情報に切り換える場合に、前記第1車線情報の位置と前記第2車線情報の位置との差に基づいて前記第2車線情報を変更し、変更した前記第2車線情報に基づいて前記車両の操舵を制御する、
ことを特徴とする操舵制御装置。
【請求項2】
前記検出部は、
カメラを備え、前記カメラによって撮影した画像に基づいて前記道路情報を検出し、
前記取得部は、
衛星測位システムから前記位置情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記差が大きいほど前記遷移時間を長くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記車両の車速が速いほど前記遷移時間を長くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
所定の上限値以下の前記遷移時間を設定する、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の操舵制御装置。
【請求項6】
前記切り換え前の車線情報は、
前記第2車線情報又は変更した前記第2車線情報である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の操舵制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記遷移時間において前記切り換え前の車線情報と前記第1車線情報とを用いて前記切り換え前の車線情報を変更すると共に、前記遷移時間の経過に伴って前記第1車線情報の使用比率を直線状に増加させる一方前記切り換え前の車線情報の使用比率を直線状に低下させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の操舵制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記遷移時間において前記切り換え前の車線情報と前記第1車線情報とを用いて前記切り換え前の車線情報を変更すると共に、前記遷移時間の経過に伴って前記第1車線情報の使用比率を曲線状に増加させる一方前記切り換え前の車線情報の使用比率を曲線状に低下させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の操舵を制御する操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転システム又は運転支援システム等において、走行中の車両が車線内を維持するように操舵を制御する操舵制御装置が提案されている。操舵制御装置に対しては、操舵制御を途切れずに継続するために、車両が走行する車線情報を途切れずに検出することが求められる。
【0003】
このような操舵制御装置は、カメラによって撮影した画像より検出される車線区切り線等の道路情報に基づいて車両の操舵を制御する。この際に、操舵制御装置は、気象条件等によってカメラによる道路情報の検出が困難であると判断した場合に、操舵制御に用いる車線情報をカメラにより検出される車線情報から地図データを用いた車線情報に切り替えて操舵制御を行う。また、操舵制御装置は、地図データを用いた車線情報に切り替えた後に、カメラによる道路情報の検出が可能となった場合に、地図データを用いた車線情報からカメラにより検出される車線情報に切り替えて操舵制御を行う。
【0004】
このような状況において、特許文献1は、地図情報に基づいて走行経路を決定する地図制御モード中に、カメラが白線を正常に検出した場合に、地図情報に基づいて決定した走行経路から、地図情報に基づいて決定した走行経路とカメラの画像に基づいて決定した走行経路との中間の走行経路を経て、カメラの画像に基づいて決定した走行経路に変更する車両制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、地図情報に基づいて決定した走行経路とカメラの画像に基づいて決定した走行経路との中間の走行経路と、カメラの画像に基づいて決定した走行経路と、が全く同じになるわけではないため、上記の中間の走行経路からカメラの画像に基づいて決定した走行経路に変更する際に、急操舵になってしまうおそれがあるという課題を有する。
【0007】
本開示の目的は、第2車線情報から第1車線情報に切り換える際における急操舵を抑制することができる操舵制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る操舵制御装置は、車両が走行する道路情報を検出する検出部と、前記車両の位置情報を取得する取得部と、前記検出部により検出された前記道路情報に基づいて前記車両が走行する第1車線情報を特定し、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて前記車両が走行する第2車線情報を特定し、前記車両が走行する車線を前記第1車線情報または前記第2車線情報に切り換えて前記車両の操舵を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第2車線情報から前記第1車線情報に切り換える場合に、所定の遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と前記第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように前記切り換え前の車線情報を変更すると共に、変更した前記切り換え前の車線情報に基づいて前記車両の操舵を制御し、前記第1車線情報から前記第2車線情報に切り換える場合に、前記第1車線情報の位置と前記第2車線情報の位置との差に基づいて前記第2車線情報を変更し、変更した前記第2車線情報に基づいて前記車両の操舵を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第2車線情報から第1車線情報に切り換える際における急操舵を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置を備えた車両の構成を示すブロック図
【
図2】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置が実行する操舵制御処理のフロー図
【
図3】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置によって車線情報を算出する処理を示す模式図
【
図4】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置において地図情報を用いて決定した車線情報とカメラにより撮影した画像に基づいて決定した車線情報との差を示す図
【
図5】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置が実行する操舵制御処理において第1車線情報から第2車線情報に切り換える際のタイミングチャート
【
図6】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置が実行する操舵制御処理において第2車線情報から第1車線情報に切り換える際のタイミングチャート
【
図7】本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置が実行する操舵制御処理における信号比率の変化を示す図
【
図8】本開示の実施の形態2に係る操舵制御装置を備えた車両の構成を示すブロック図
【
図9】本開示の実施の形態2に係る操舵制御装置の動作を示すフロー図
【
図10】本開示の実施の形態2に係る操舵制御装置の動作における遷移時間と地図情報を用いて決定した車線情報とカメラにより撮影した画像に基づいて決定した車線情報との差との関係を示す図
【
図11】本開示の実施の形態3に係る操舵制御装置を備えた車両の構成を示すブロック図
【
図12】本開示の実施の形態3に係る操舵制御装置の動作を示すフロー図
【
図13】本開示の実施の形態3に係る操舵制御装置の動作における遷移時間と地図情報を用いて決定した車線情報とカメラにより撮影した画像に基づいて決定した車線情報との差と車速との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示はこの実施の形態に限定されるものではない。なお、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
<操舵制御装置の構成>
本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置2の構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
操舵制御装置2は、乗用車、トラック、バス又はバン等の車両1に搭載されている。車両1は、操舵制御装置2と、操舵部3と、を有している。操舵部3は、操舵制御装置2から出力される電流又は電圧に応じて車輪の角度を変更して車両1を操舵するものであり、例えばモータ及びアクチュエータ等から構成されている。
【0014】
操舵制御装置2は、自動運転システム又は運転支援システム等において操舵部3を制御することにより車両1の操舵を制御する後述の操舵制御処理を実行する。具体的には、操舵制御装置2は、検出部4と、取得部5と、制御部6と、を有している。
【0015】
検出部4は、カメラ又はLiDAR等の道路情報を直接的に検出する装置から構成することができる。検出部4は、例えば、車両1の前部に配置されて、車両1の前方の道路情報を検出する。ここで、道路情報は、車線を示す情報、例えば、道路に引かれた区切り線(白線)、路肩及び路側帯等の情報を含んでもよい。検出部4は、車両1が走行する道路情報を検出して、検出した道路情報を制御部6の車線情報算出部7に出力する。
【0016】
取得部5は、衛星測位システム(例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System))、路車間通信部又は道路特徴検出部(例えば、LiDAR、カメラ)等から構成することができる。ここで、衛星測位システムは、衛星を用いて測定された車両1の位置情報を直接的に取得するシステムである。また、路車間通信部は、道路に設置された通信装置から位置情報を直接的に取得する装置である。また、道路特徴検出部は、地図情報から車両1の位置を特定するための道路の特徴情報、例えば道路の周囲に存在する建物、道路構造物及び道路標識等の情報を検出する。即ち、位置情報は、車両1の位置を直接的に示す情報だけでなく、車両1の位置を特定するための情報も含む。取得部5は、車両1の位置情報を取得して、取得した位置情報を制御部6の自車位置算出部9に出力する。
【0017】
制御部6は、検出部4より入力される道路情報と、取得部5より入力される位置情報と、に基づいて、操舵部3を制御する。制御部6は、車線情報算出部7と、判定部8と、自車位置算出部9と、記憶部10と、切換部11と、操舵量算出部12と、操舵制御部13と、タイマ14と、を備えている。
【0018】
車線情報算出部7は、検出部4より入力される道路情報を判定部8に出力すると共に、検出部4より入力される道路情報に基づいて、車両1が走行する第1車線情報を算出する。ここで、第1車線情報は、車両1が走行する車線の左右の区切り線(白線)の位置及び方向等の情報である。車線情報算出部7は、算出した第1車線情報を切換部11に出力する。
【0019】
判定部8は、車線情報算出部7より入力される道路情報の検出レベルが第1閾値以下であるか否かを判定する。ここで、第1閾値は、例えば、車両1の操舵の安定性に基づいて設定することができる。判定部8は、道路情報の検出レベルが第1閾値以下であるか否かの判定結果を切換部11に出力する。
【0020】
自車位置算出部9は、取得部5より入力される位置情報と記憶部10に記憶されている地図情報とに基づいて、車線に対する車両1の位置を算出する。自車位置算出部9は、例えば取得部5が道路特徴検出部である場合に、取得部5より入力される位置情報としての道路の特徴情報を、記憶部10に記憶されている地図情報に含まれる特徴情報と照合することにより、車線に対する車両1の位置を算出する。自車位置算出部9は、算出した車線に対する車両1の位置の算出結果を切換部11に出力する。
【0021】
記憶部10は、車両1が走行する道路を含む地図情報を記憶している。地図情報は、例えば、道路に設けられた車線の位置及び方向等の情報、車線の中央を通る目標走行ライン及び半径等の情報、又は道路の特徴情報を含んでもよい。
【0022】
切換部11は、判定部8より入力される判定結果に基づいて、操舵量算出部12に出力する車線情報を切り換える。具体的には、切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値以下の判定結果が入力された場合に、自車位置算出部9より入力される第2車線情報を操舵量算出部12に出力する。切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値を超えている判定結果が入力された場合に、車線情報算出部7より入力される第1車線情報を操舵量算出部12に出力する。
【0023】
操舵量算出部12は、切換部11から入力される第1車線情報又は第2車線情報に基づいて、車両1の操舵量を算出する。操舵量算出部12は、切換部11からの入力が第1車線情報から第2車線情報に切り換った場合に、第2車線情報の位置を第1車線情報の位置との差に基づいて変更して、その変更した第2車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する。また、操舵量算出部12は、切換部11からの入力が第2車線情報から第1車線情報に切り換った場合に、所定の遷移時間の計測をタイマ14に指示する。そして、操舵量算出部12は、タイマ14により計測する遷移時間において、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する。
【0024】
ここで、切り換え前の車線情報とは、第2車線情報、又は第1車線情報と第2車線情報との差に基づいて変更される第2車線情報である。また、遷移時間は、第2車線情報又は変更した第2車線情報から第1車線情報に切り換える際に、車両1の操舵量のステップ状の変化を抑制するために必要な時間である。なお、第2車線情報を変更する具体的な方法については、後述の操舵量制御処理において説明する。
【0025】
操舵量算出部12は、算出した操舵量の算出結果を操舵制御部13に出力する。操舵量としては、例えば、目標操舵角又は目標操舵トルク等が挙げられる。
【0026】
操舵制御部13は、操舵量算出部12より入力される操舵量の算出結果に基づいて操舵部3を制御する。操舵制御部13は、例えば、操舵量の算出結果に応じた電流又は電圧を操舵部3に出力することにより操舵部3を制御する。
【0027】
タイマ14は、操舵量算出部12の指示により遷移時間を計測する。
【0028】
<操舵制御処理>
本開示の実施の形態1に係る操舵制御装置2が実行する操舵制御処理について、
図2及び
図3を参照しながら、詳細に説明する。
【0029】
図2に示す操舵制御処理は、車両1の図示しないイグニションスイッチがオンされると共に自動で操舵制御を行うモード又はこのモードを含むモードが選択されたタイミングで開始される。ここで、自動で操舵制御を行うモードを含むモードとは、自動運転システム又は運転支援システム等のモードである。
【0030】
まず、検出部4が道路情報を検出すると共に、取得部5が車両1の位置情報を取得する(S1)。
【0031】
次に、車線情報算出部7は、検出部4により検出された道路情報に基づいて第1車線情報を算出すると共に、自車位置算出部9は、取得部により取得された位置情報に基づいて第2車線情報を算出する(S2)。
【0032】
次に、切換部11は、判定部8における判定結果において道路情報の検出レベルが閾値以下であるか否かを判定する(S3)。この際に、判定部8は、道路情報の検出レベルが閾値以下である判定結果として第2信号を出力し、道路情報の検出レベルが閾値より大きい判定結果として第1信号を出力する。
【0033】
切換部11は、判定部8より第2信号が入力されることにより道路情報の検出レベルが閾値以下である場合に(S3:YES)、第2車線情報を操舵量算出部12に出力する。この際に、切換部11は、第1車線情報に基づいて操舵を制御している場合に、第1車線情報から第2車線情報に切り換えて操舵量算出部12に出力する。この際に、操舵量算出部12は、第2車線情報の位置を第1車線情報の位置との差に基づいて変更して、その変更した第2車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する。そして、操舵制御部13は、操舵量算出部12における操舵量の算出結果に基づいて操舵部3を制御する(S4)。この後に、制御部6は、操舵制御処理を終了する。
【0034】
ここで、例えば、路面の摩耗等による車線Lの区切り線の部分的な除去、路面の濡れによる区切り線の不検出、又は雪による区切り線の隠れ等が生じた場合には、検出部4により検出される道路情報の検出レベルが低下するおそれがある。このような場合に、制御部6は、第2車線情報に基づいて操舵を制御する。
【0035】
第2車線情報に基づいて操舵を制御する場合に、自車位置算出部9は、車両1の位置情報に基づいて記憶部10に記憶された地図情報を参照して、車両1が走行する車線Lを特定する。そして、自車位置算出部9は、特定された車線Lの目標走行ラインLa及び半径Rを地図情報から取得すると共に、車両1の位置情報に基づいて車線Lに対する車両1の位置を算出する。そして、自車位置算出部9は、目標走行ラインLaに基づいて横偏差Y及び方位角θ等を算出する。このとき、自車位置算出部9は、直前の車両1の位置(例えば1つ前の車両1の情報)に基づいて車両1の向き(姿勢)を算出し、その車両1の向きに基づいて横偏差Y及び方位角θ等を算出してもよい。このようにして、目標走行ラインLa、横偏差Y、方位角θ及び半径R等の第2車線情報が、車両1の位置情報に基づいて算出される。
【0036】
一方、ステップS3の処理において、切換部11は、判定部8より第1信号が入力されることにより道路情報の検出レベルが閾値より大きい場合に(S3:NO)、第1車線情報を操舵量算出部12に出力する。そして、操舵量算出部12は、第1車線情報に基づいて操舵を制御中であるか否かを判定する(S5)。
【0037】
操舵量算出部12は、第1車線情報に基づいて操舵を制御中である場合に(S5:YES)、引き続き切換部11より入力される第1車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する。そして、操舵制御部13は、操舵量算出部12における操舵量の算出結果に基づいて操舵部3を制御する(S6)。この後に、制御部6は、操舵制御処理を終了する。
【0038】
第1車線情報に基づいて操舵を制御する場合に、車線情報算出部7は、車両1が走行する車線Lの左右の区切り線(白線)の位置及び方向等の情報を算出する。続いて、車線情報算出部7は、区切り線の情報に基づいて、例えば車線Lの中央を通るように目標走行ラインLaを算出する。そして、車線情報算出部7は、目標走行ラインLaに基づいて、横偏差Y、方位角θ及び半径R等を算出する。このように、第1車線情報は、例えば、目標走行ラインLa、横偏差Y、方位角θ及び半径R等を含むことができる。なお、横偏差Yは、例えば、目標走行ラインLaに対する車両1の横偏差を算出してもよい。また、方位角θは、目標走行ラインLaの接線に対する車両1の角度を算出してもよい。また、半径Rは、目標走行ラインLaの曲線半径を算出してもよい。
【0039】
また、ステップS5の処理において、操舵量算出部12は、第1車線情報に切り換える前の車線情報に基づいて操舵を制御中である場合に(S5:NO)、所定の遷移時間を設定する(S7)。
【0040】
次に、操舵量算出部12は、設定した遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する切換制御を行う(S8)。その後に、操舵制御部13は、ステップS6の処理を実行する。
【0041】
続いて、上記の操舵制御処理において、車線情報を切り換える処理について、更に詳細に説明する。この際に、
図4に示すように、第1車線情報の目標走行ラインL1と第2車線情報の目標走行ラインL2との位置が車線Lの車線幅方向にずれている場合を考える。
【0042】
最初に、第1車線情報から第2車線情報に切り換える処理について説明する。
【0043】
まずこの場合に、判定部8は、道路情報の検出レベルが閾値以下になることにより、切換部11に対して第1信号から第2信号に切り換えて出力する。この際に、第1車線情報の目標走行ラインL1から第2車線情報の目標走行ラインL2にそのまま切り換える場合には、目標走行ラインの位置がステップ状に大きく変化することになる。このため、目標走行ラインL2に基づいて算出される車両1の操舵量もまた大きく変化するおそれがある。特に、車線情報を微分した値に基づいて車両1の操舵量を算出する場合には、操舵量が急激に変化するおそれがある。
【0044】
そこで、制御部6は、第1車線情報から第2車線情報に切り換える場合に、第2車線情報の位置を第1車線情報の位置との差に基づいて変更して、変更した第2車線情報に基づいて車両1の操舵を制御する。
【0045】
例えば、
図5に示すように、操舵量算出部12は、時刻t1において判定部8が第1信号から第2信号に切り換えて出力した場合に、目標走行ラインL1と目標走行ラインL2との位置の差を算出する。また、操舵量算出部12は、算出された差の値だけ、目標走行ラインL2の位置を目標走行ラインL1側に移すように変更する。すなわち、操舵量算出部12は、算出された差の値を目標走行ラインL2に順次足し合わせることにより目標走行ラインL2の位置を変更する。これにより、目標走行ラインL1から目標走行ラインL2が連続して繋がる目標走行ラインL3が生成される。そして、操舵量算出部12は、目標走行ラインL3に基づいて車両1の操舵量を算出する。
【0046】
また、操舵量算出部12は、横偏差Y、方位角θ及び半径R等の他の第2車線情報についても、第1車線情報と第2車線情報との位置の差に基づいて変更することができる。操舵量算出部12は、算出された横偏差Y、方位角θ及び半径R等に基づいて操舵量を算出する。そして、操舵制御部13が、操舵量算出部12で算出された操舵量に基づいて操舵部3を制御する。これにより、第1車線情報から第2車線情報への切り換えに応じた操舵量の大きな変化を抑制することができ、車両1をスムーズに操舵することができる。
【0047】
次に、切り換え前の車線情報から第1車線情報に切り換える処理について説明する。ここで、切り換え前の車線情報は、第2車線情報又は上記の変更した第2車線情報である。
【0048】
まずこの場合に、判定部8は、道路情報の検出レベルが閾値より大きくなることにより切換部11に対して第2信号から第1信号に切り換えて出力する。この際に、目標走行ラインL2から目標走行ラインL1にそのまま切り換える場合には、目標走行ラインの位置がステップ状に大きく変化することになる。このため、目標走行ラインL1に基づいて算出される車両1の操舵量もまた大きく変化するおそれがある。特に、車線情報を微分した値に基づいて車両1の操舵量を算出する場合には、操舵量が急激に変化するおそれがある。
【0049】
また、判定部8は、目標走行ラインL3に基づいて車両1の操舵を制御している最中において、道路情報の検出レベルが閾値より大きくなることにより切換部11に対して第2信号から第1信号に切り換えて出力する。この場合には、目標走行ラインL2から目標走行ラインL1にそのまま切り換える場合に比べて、目標走行ラインの位置のステップ状の変化をある程度は抑制することはできるものの、依然として目標走行ラインの位置がステップ状に変化する。このため、目標走行ラインL1に基づいて算出される車両1の操舵量もまた変化するおそれがある。特に、車線情報を微分した値に基づいて車両1の操舵量を算出する場合、操舵量が急激に変化するおそれがある。
【0050】
そこで、制御部6は、切り換え前の車線情報から第1車線情報に切り換える場合に、所定の遷移時間において、切り換え前の車線情報の位置と前記第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵を制御する。
【0051】
例えば、
図6に示すように、変更した第2車線情報の目標走行ラインL3に基づいて車両1の操舵を制御している最中の時刻t2において、判定部8が第2信号から第1信号に切り換えて出力した場合に、操舵量算出部12は、目標走行ラインL1と目標走行ラインL3との位置の差を算出する。また、操舵量算出部12は、時刻t2から時刻t3までの遷移時間Tにおいて、目標走行ラインL1と目標走行ラインL3との位置の差を徐々に解消するように目標走行ラインL3の位置を変更する。これにより、目標走行ラインL3から目標走行ラインL1が連続して繋がる目標走行ラインL4が生成される。そして、操舵量算出部12は、目標走行ラインL4に基づいて車両1の操舵量を算出する。
【0052】
また、操舵量算出部12は、横偏差Y、方位角θ及び半径R等の他の第2車線情報又は変更した第2車線情報についても、第2車線情報又は変更した第2車線情報と、第1車線情報と、の位置の差に基づいて変更することができる。操舵量算出部12は、算出された横偏差Y、方位角θ及び半径R等に基づいて操舵量を算出する。そして、操舵制御部13が、操舵量算出部12で算出された操舵量に基づいて操舵部3を制御する。これにより、第2車線情報又は変更した第2車線情報から第1車線情報への切り換えに応じた操舵量の大きな変化を抑制することができ、車両1をスムーズに操舵することができる。
【0053】
操舵量算出部12は、第1車線情報と、第2車線情報又は変更した第2車線情報と、を用いて目標走行ラインL4を算出する。具体的には、操舵量算出部12は、第1車線情報の信号SR1と、第2車線情報又は変更した第2車線情報の信号SR2と、を足し合わせることにより目標走行ラインL4を算出すると共に、遷移時間Tが経過するにつれて、信号SR1の使用比率(信号比率)と信号SR2の使用比率との和が100%になるように、信号SR1の使用比率を0%から増加させる一方信号SR2の使用比率を100%から低下させる。
【0054】
この際に、操舵量算出部12は、
図6に示すように、遷移時間Tの経過に伴って、信号SR1を足し合わせる比率を直線状に増加させる一方、信号SR2を足し合わせる比率を直線状に低下させる。または、操舵量算出部12は、
図7に示すように、遷移時間Tの経過に伴って、信号SR1の足し合わせる比率を曲線状に増加させる一方、信号SR2の足し合わせる比率を曲線状に低下させる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、第2車線情報から第1車線情報に切り換える場合に、所定の遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵を制御することにより、第2車線情報から第1車線情報に切り換える際における急操舵を抑制することができる。
【0056】
なお、本実施の形態において、第1車線情報と、第2車線情報又は変更した第2車線情報と、を足し合わせることにより目標走行ラインL4を算出したが、これに限らず、第1車線情報と、第2車線情報又は変更した第2車線情報と、を乗算する等の足し合わせる以外の演算方法により目標走行ラインL4を算出してもよい。
【0057】
(実施の形態2)
<操舵制御装置の構成>
本開示の実施の形態2に係る操舵制御装置102の構成について、
図8を参照しながら、詳細に説明する。
【0058】
なお、
図8において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明および図示を省略する。
【0059】
操舵制御装置102は、乗用車、トラック、バス又はバン等の車両100に搭載されている。車両100は、操舵部3と、操舵制御装置102と、を有している。操舵部3は、操舵制御装置102から出力される電流又は電圧に応じて車輪の角度を変更して車両100を操舵するものであり、例えばモータ及びアクチュエータ等から構成されている。
【0060】
操舵制御装置102は、自動運転システム又は運転支援システム等において操舵部3を制御することにより車両100の操舵を制御する後述の操舵制御処理を実行する。具体的には、操舵制御装置102は、検出部4と、取得部5と、制御部106と、を有している。
【0061】
検出部4は、例えば、車両100の前部に配置されて、車両100の前方の道路情報を検出する。検出部4は、車両100が走行する道路情報を検出して、検出した道路情報を制御部106の車線情報算出部7に出力する。
【0062】
取得部5は、車両100の位置情報を取得して、取得した位置情報を制御部106の自車位置算出部9に出力する。
【0063】
制御部106は、検出部4より入力される道路情報と、取得部5より入力される位置情報と、に基づいて、操舵部3を制御する。制御部106は、車線情報算出部7と、判定部8と、自車位置算出部9と、記憶部10と、切換部11と、操舵制御部13と、タイマ14と、操舵量算出部111と、記憶部112と、を備えている。
【0064】
車線情報算出部7は、検出部4より入力される道路情報を判定部8に出力すると共に、検出部4より入力される道路情報に基づいて、車両100が走行する第1車線情報を算出する。ここで、第1車線情報は、車両100が走行する車線の左右の区切り線(白線)の位置及び方向等の情報である。
【0065】
自車位置算出部9は、取得部5より入力される位置情報と記憶部10に記憶されている地図情報とに基づいて、車線に対する車両100の位置を算出する。自車位置算出部9は、例えば取得部5が道路特徴検出部である場合に、取得部5より入力される位置情報としての道路の特徴情報を、記憶部10に記憶されている地図情報に含まれる特徴情報と照合することにより、車線に対する車両100の位置を算出する。
【0066】
記憶部10は、車両100が走行する道路を含む地図情報を記憶している。
【0067】
切換部11は、判定部8より入力される判定結果に基づいて、操舵量算出部111に出力する車線情報を切り換える。具体的には、切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値以下の判定結果が入力された場合に、自車位置算出部9より入力される第2車線情報を操舵量算出部111に出力する。切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値を超えている判定結果が入力された場合に、車線情報算出部7より入力される第1車線情報を操舵量算出部111に出力する。
【0068】
記憶部112は、切り換え前の車線情報と第1車線情報との差と、遷移時間と、を対応付けたテーブルを記憶している。
【0069】
操舵量算出部111は、切換部11から入力される第1車線情報、第2車線情報又はこの両方に基づいて、車両100の操舵量を算出する。具体的には、操舵量算出部111は、遷移時間設定部21と、算出部22と、を備えている。
【0070】
遷移時間設定部21は、切換部11からの入力が第1車線情報から第2車線情報に切り換った場合に、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を求めて、記憶部112に記憶されているテーブルにおいて、求めた差に対応付けられている遷移時間を求めて設定する。そして、遷移時間設定部21は、設定した遷移時間の設定結果を算出部22に出力する。
【0071】
算出部22は、切換部11から入力される第1車線情報又は第2車線情報に基づいて、車両100の操舵量を算出する。算出部22は、切換部11からの入力が第2車線情報から第1車線情報に切り換った場合に、遷移時間設定部21より入力される設定結果により設定された遷移時間の計測をタイマ14に指示する。そして、算出部22は、タイマ14により計測する遷移時間において、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵量を算出する。算出部22は、切換部11からの入力が第1車線情報から第2車線情報に切り換った場合に、第2車線情報の位置を第1車線情報の位置との差に基づいて変更して、その変更した第2車線情報に基づいて車両100の操舵量を算出する。算出部22は、算出した操舵量の算出結果を操舵制御部13に出力する。
【0072】
操舵制御部13は、操舵量算出部111の算出部22より入力される操舵量の算出結果に基づいて操舵部3を制御する。
【0073】
タイマ14は、操舵量算出部111の算出部22の指示により遷移時間を計測する。
【0074】
<操舵制御処理>
本開示の実施の形態2に係る操舵制御装置102が実行する操舵制御処理について、
図9及び
図10を参照しながら、詳細に説明する。
【0075】
なお、
図9において
図2と同一処理である部分については同一ステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0076】
図9に示す操舵制御処理は、車両100の図示しないイグニションスイッチがオンされると共に自動で操舵制御を行うモード又はこのモードを含むモードが選択されたタイミングで開始される。
【0077】
ステップS5の処理において、操舵量算出部111の遷移時間設定部21は、第1車線情報に切り換える前の車線情報に基づいて操舵を制御中である場合に(S5:NO)、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigを算出する(S11)。
【0078】
次に、遷移時間設定部21は、記憶部112に記憶されているテーブルにおいて、算出した切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigに対応付けられている遷移時間を求めて設定する(S12)。
【0079】
次に、算出部22は、遷移時間設定部21により設定された遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigを徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両100の操舵量を算出する切換制御を行う(S13)。その後に、操舵制御部13は、ステップS6の処理を実行する。
【0080】
上記の操舵制御処理において、
図10に示すように、遷移時間設定部21は、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigが大きいほど長い遷移時間Tを設定する。また、遷移時間設定部21は、設定する遷移時間が上限値THを超えないように設定する。
【0081】
このように、本実施の形態によれば、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigが大きいほど長い遷移時間Tを設定することにより、車両100の急操舵を確実に抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、上限値TH以下の遷移時間Tを設定することにより、遷移時間Tが上限値THを超えた場合には、第2車線情報よりも車線追従性が良好な第1車線情報に基づいて車両100の操舵を制御することができるため、車両100の急操舵の抑制と、車線追従性能の悪化の抑制と、の両立を図ることができる。
【0083】
(実施の形態3)
<操舵制御装置の構成>
本開示の実施の形態3に係る操舵制御装置202の構成について、
図11を参照しながら、詳細に説明する。なお、実施の形態2と同様に
図11において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明および図示を省略する。
【0084】
操舵制御装置202は、乗用車、トラック、バス又はバン等の車両200に搭載されている。車両200は、操舵部3と、操舵制御装置202と、車速センサ210と、を有している。操舵部3は、操舵制御装置202から出力される電流又は電圧に応じて車輪の角度を変更して車両200を操舵するものであり、例えばモータ及びアクチュエータ等から構成されている。車速センサ210は、車両200の車速を検出して、検出した車速の検出結果である車速情報を操舵量算出部211の算出部24に出力する。
【0085】
操舵制御装置202は、自動運転システム又は運転支援システム等において操舵部3を制御することにより車両200の操舵を制御する後述の操舵制御処理を実行する。具体的には、操舵制御装置202は、検出部4と、取得部5と、制御部206と、を有している。
【0086】
検出部4は、例えば、車両200の前部に配置されて、車両200の前方の道路情報を検出する。検出部4は、車両200が走行する道路情報を検出して、検出した道路情報を制御部206の車線情報算出部7に出力する。
【0087】
取得部5は、車両200の位置情報を取得して、取得した位置情報を制御部206の自車位置算出部9に出力する。
【0088】
制御部206は、検出部4より入力される道路情報と、取得部5より入力される位置情報と、に基づいて、操舵部3を制御する。制御部206は、車線情報算出部7と、判定部8と、自車位置算出部9と、記憶部10と、切換部11と、操舵制御部13と、タイマ14と、操舵量算出部211と、記憶部212と、を備えている。
【0089】
車線情報算出部7は、検出部4より入力される道路情報を判定部8に出力すると共に、検出部4より入力される道路情報に基づいて、車両200が走行する第1車線情報を算出する。
【0090】
自車位置算出部9は、取得部5より入力される位置情報と記憶部10に記憶されている地図情報とに基づいて、車線に対する車両200の位置を算出する。自車位置算出部9は、例えば取得部5が道路特徴検出部である場合に、取得部5より入力される位置情報としての道路の特徴情報を、記憶部10に記憶されている地図情報に含まれる特徴情報と照合することにより、車線に対する車両200の位置を算出する。自車位置算出部9は、算出した車線に対する車両200の位置の算出結果を切換部11に出力する。
【0091】
記憶部10は、車両200が走行する道路を含む地図情報を記憶している。
【0092】
切換部11は、判定部8より入力される判定結果に基づいて、操舵量算出部211に出力する車線情報を切り換える。具体的には、切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値以下の判定結果が入力された場合に、自車位置算出部9より入力される第2車線情報を操舵量算出部211に出力する。切換部11は、判定部8より道路情報の検出レベルが第1閾値を超えている判定結果が入力された場合に、車線情報算出部7より入力される第1車線情報を操舵量算出部211に出力する。
【0093】
記憶部212は、切り換え前の車線情報と第1車線情報との差と、遷移時間と、車速と、を対応付けたテーブルを記憶している。
【0094】
操舵量算出部211は、切換部11から入力される第1車線情報、第2車線情報又はこの両方と、必要に応じて車速センサ210より入力される車速情報と、に基づいて、車両200の操舵量を算出する。具体的には、操舵量算出部211は、遷移時間設定部23と、算出部24と、を備えている。
【0095】
遷移時間設定部23は、切換部11からの入力が第1車線情報から第2車線情報に切り換った場合に、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を求める。遷移時間設定部23は、記憶部112に記憶されているテーブルにおいて、求めた切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差、及び車速センサ210より入力される車速情報の車速に対応付けられている遷移時間を求めて設定する。そして、遷移時間設定部23は、設定した遷移時間の設定結果を算出部24に出力する。
【0096】
算出部24は、切換部11から入力される第1車線情報又は第2車線情報に基づいて、車両200の操舵量を算出する。算出部24は、切換部11からの入力が第2車線情報から第1車線情報に切り換った場合に、遷移時間設定部23より入力される設定結果により設定された遷移時間の計測をタイマ14に指示する。そして、算出部24は、タイマ14により計測する遷移時間において、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両200の操舵量を算出する。算出部24は、切換部11からの入力が第1車線情報から第2車線情報に切り換った場合に、第2車線情報の位置を第1車線情報の位置との差に基づいて変更して、その変更した第2車線情報に基づいて車両200の操舵量を算出する。算出部24は、算出した操舵量の算出結果を操舵制御部13に出力する。
【0097】
操舵制御部13は、操舵量算出部211の算出部24より入力される操舵量の算出結果に基づいて操舵部3を制御する。
【0098】
タイマ14は、操舵量算出部211の算出部24の指示により遷移時間を計測する。
【0099】
<操舵制御処理>
本開示の実施の形態3に係る操舵制御装置202が実行する操舵制御処理について、
図12及び
図13を参照しながら、詳細に説明する。
【0100】
なお、
図12において
図2と同一処理である部分については同一ステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0101】
図12に示す操舵制御処理は、車両200の図示しないイグニションスイッチがオンされると共に自動で操舵制御を行うモード又はこのモードを含むモードが選択されたタイミングで開始される。
【0102】
ステップS5の処理において、操舵量算出部211の遷移時間設定部23は、第1車線情報に切り換える前の車線情報に基づいて操舵を制御中である場合に(S5:NO)、車速センサ210より車速情報を取得する(S21)。
【0103】
次に、遷移時間設定部23は、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigを算出する(S22)。
【0104】
次に、遷移時間設定部23は、記憶部112に記憶されているテーブルにおいて、算出した切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsig、及び取得した車速情報の車速に対応付けられている遷移時間Tを求めて設定する(S23)。
【0105】
次に、算出部24は、遷移時間設定部23により設定された遷移時間Tにおいて切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigを徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更して、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両200の操舵量を算出する切換制御を行う(S24)。その後に、操舵制御部13は、ステップS6の処理を実行する。
【0106】
上記の操舵制御処理において、
図13に示すように、遷移時間設定部23は、切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差Δsigが大きいほど長い遷移時間Tを設定する。また、遷移時間設定部23は、車速が大きいほど長い遷移時間Tを設定する。例えば、遷移時間設定部23は、3つの速度域V1、V2及びV3(V1<V2<V3)において、車速が速度域V1に含まれる場合に、速度域V2及びV3に含まれる場合に比べて、遷移時間Tを小さく設定する。また、遷移時間設定部23は、車速が速度域V3に含まれる場合に、速度域V1及びV2に含まれる場合に比べて、遷移時間Tを大きく設定する。更に、遷移時間設定部23は、設定する遷移時間Tが上限値THを超えないように設定する。
【0107】
このように、本実施の形態によれば、車速が大きいほど大きい遷移時間Tを設定することにより、車両200の急操舵を確実に抑制することができる。
【0108】
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0109】
具体的には、上記の実施の形態1から実施の形態3において、第1車線情報から第2車線情報に切り換った際に、第1車線情報と第2車線情報との差に基づいて第2車線情報を変更して、変更した第2車線情報に基づいて操舵を制御したが、これに限らず、第2車線情報に基づいて操舵を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示は、車両の操舵を制御する操舵制御装置に好適である。
【符号の説明】
【0111】
1 車両
2 操舵制御装置
3 操舵部
4 検出部
5 取得部
6 制御部
7 車線情報算出部
8 判定部
9 自社位置算出部
10 記憶部
11 切換部
12 操舵量算出部
13 操舵制御部
14 タイマ
【要約】
【課題】第2車線情報から第1車線情報に切り換える際における急操舵を抑制すること。
【解決手段】操舵制御装置2は、第2車線情報から第1車線情報に切り換える場合に、所定の遷移時間において切り換え前の車線情報の位置と第1車線情報の位置との差を徐々に解消するように切り換え前の車線情報を変更すると共に、変更した切り換え前の車線情報に基づいて車両1の操舵を制御する。
【選択図】
図1