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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インク補給容器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 133
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023034163
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2022025178の分割
【原出願日】2016-10-25
(65)【公開番号】P2023060217
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2016116155
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 良一
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 学
(72)【発明者】
【氏名】小林 睦
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚己
(72)【発明者】
【氏名】奥村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 聖真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 徹也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宏明
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081635(JP,A)
【文献】特開2013-226830(JP,A)
【文献】特開2009-241608(JP,A)
【文献】特開2001-146021(JP,A)
【文献】特開昭59-042963(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079547(WO,A1)
【文献】中国実用新案第202186122(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを導入するための針と該針を挟んで配置される一対の凹部とを備えたプリンターのインクタンクにインクを補給するインク補給容器であって、
インクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、
前記容器本体部に接続され、且つ、前記容器本体部の側とは反対側に、前記針を挿入可能に構成されたインク出口を有するインク出口形成部と、
前記インク出口を覆うように前記インク出口形成部に着脱可能に取り付けられるキャップと、
を備え、
前記インク出口形成部は、
前記容器本体部に接続される大径部であって、該大径部の内周面には、前記容器本体部に形成された雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が設けられ、前記大径部の外周面には、前記キャップの内周面に設けられた雌ねじ部と螺合可能な雄ねじ部が設けられた大径部と、
前記大径部の外周より小さい外周を有し、前記インク出口を有する小径部と、
前記インク出口の中心軸方向に延び、且つ、前記インク出口を中心とする放射方向で前記インク出口の外側となる領域に前記凹部に挿入可能に構成された一対の凸部と、
を有し、
前記キャップは、前記インク出口と前記一対の凸部とを覆い、且つ、前記大径部の前記雄ねじ部と螺合するように構成された、
インク補給容器。
【請求項2】
請求項1に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口形成部は、前記インク出口を上方に向けた状態において前記大径部の前記雄ねじ部より下方に位置し、前記大径部の前記雄ねじ部より径方向外側に突出して形成された取付面を有し、
前記キャップは該キャップの内底面から突出する円環状の封止部を有し、
前記キャップは前記大径部の前記雄ねじ部と螺合して前記取付面に接触し、且つ、前記封止部が前記小径部に接触するように構成された、
インク補給容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口形成部は、前記小径部の周囲に沿って形成された少なくとも一つの環状凸部を有し、前記インク出口を上方に向けた状態で、前記環状凸部の径方向先端における径は、前記環状凸部の上方における前記小径部の径よりも大きく、且つ、前記環状凸部の下方における前記小径部の径よりも大きい、
インク補給容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のインク補給容器であって、
前記一対の凸部と前記小径部との間には隙間が設けられている、
インク補給容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口形成部は、前記インク出口内に前記針が挿入されることにより開き、前記インク出口内から前記針が脱抜することにより閉じるように作用する弁を備えた、
インク補給容器。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口形成部は、前記インク出口内に前記針が挿入されることにより開き、前記インク出口内から前記針が脱抜することにより閉じるように作用する弁を備え、
前記弁は、膜の弾性部材に中心部で交わる複数のスリットが設けられた弁である、
インク補給容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口の先端に溝部が形成されている、
インク補給容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に供給するインクを内部に貯留するインクタンクに対してインクを補給するインク補給容器、そのようなインク補給容器を含んで構成されるインク補給システム及びそのようなインク補給システムで用いるインク補給用アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを媒体に吐出して記録を行う記録装置には、インクを内部に貯留したインクタンクがインクを供給可能な状態で接続されている。そして、こうした記録装置においてインクタンク内のインクの残量が僅かとなった場合には、そのようなインクタンクに対して外部からインク補給容器を用いてインクが補給される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-146021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクタンクに対するインクの補給作業は、インクの補給不良等を抑制して適切に行う必要があるところ、そうした補給作業は従来から記録装置のユーザーが行っていた。そのため、こうしたインクの補給作業がユーザーにより適切に行われるためには、例えばインク補給容器等において更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクタンクに対して適切にインクを補給できるインク補給容器、そのようなインク補給容器を含むインク補給システム及びそのようなインク補給システムで用いるインク補給用アダプターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するインク補給容器は、内部にインクを貯留可能なインクタンクにインクを補給するインク補給容器であって、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室を有する容器本体部と、前記容器本体部の端部に設けられ、前記インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口が形成されたインク出口形成部と、前記インク出口形成部に設けられ、前記インク出口を開閉可能に封止する弁と、を備え、前記インク出口形成部は、該インク出口形成部の外側で、且つ、前記インク出口の中心軸の方向において前記弁よりも前記容器本体部側となる位置に位置決め部を備え、前記位置決め部は前記弁が開弁されるときに前記インクタンク側の一部と当接して前記弁を前記インクタンクに対して位置決めする。
【0007】
この構成によれば、インク補給容器からインクタンクへのインク補給時に、弁はインクタンクに対して位置決めされた状態で開弁されるため、開弁時に弁が位置ずれした場合に生じる虞のあるインク漏れやインク補給不良等の不具合を抑制でき、インクタンクに対して適切にインクを補給することができる。
【0008】
また、上記インク補給容器において、前記弁は、前記インク出口を封止する弾性部材に1つ以上のスリットが設けられ、該スリットが前記インク出口の外側から内側に押し広げられることで開弁される構成であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、少ない部品点数で簡単な構造のインク補給容器を提供できる。
また、上記インク補給容器において、前記位置決め部は、前記インク出口をその中心軸の方向に見たとき、前記インク出口の放射方向外側に位置するように設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、インク補給容器からインクタンクへのインク補給時に、インク補給容器は位置決め部がインクタンク側の一部に対してインク出口の放射方向外側に位置する状態で当接することになるため、安定した姿勢でインク補給を行うことができる。
【0011】
また、上記インク補給容器において、前記位置決め部は、前記インク出口形成部とは別部材で構成されていることが好ましい。
この構成によれば、インクタンク、インク補給容器の設計態様に合わせて位置決め部を最適化したものにすることができる。
【0012】
一方、上記課題を解決するインク補給システムは、インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室の内部と外部とを連通させる流路を有して延びる針と、該針の延びる方向において該針の先端よりも外側の位置で該針が延びる方向と交差する方向に延びる受け面と、を備え、該受け面が前記インクタンク側の前記一部を構成するインクタンクと、上記構成のインク補給容器と、を備え、前記インク補給容器は、前記針が前記インク出口内に先端を挿入させて前記弁を開弁させるときに、前記位置決め部が前記受け面に当接する。
【0013】
この構成によれば、インク補給容器のインク出口にインクタンクの針を挿入させて弁を開弁させるときには、インクタンクの受け面にインク補給容器の位置決め部が当接して弁と針との相対的な位置関係を決定するので、弁を針により適切に開弁させることができ、インク補給不良の発生を抑制できる。
【0014】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インクタンクは、前記針を中心とする放射方向で該針の外側となる領域に、該針が延びる方向に開口する凹部を有し、前記インク補給容器は、前記インク出口を中心とする放射方向で該インク出口の外側となる領域に、前記針が前記インク出口内に先端を挿入させるときに前記凹部と嵌合可能な凸部を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、インクタンクの凹部にインク補給容器の凸部が嵌合しない状態ではインク出口に針が挿入されないので、インクタンクとインク補給容器との不適合な接続を抑制することができる。
【0016】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インク補給容器は、該インク出口形成部の外側で、且つ、前記インク出口の中心軸の方向において前記凸部よりも前記容器本体部側となる位置に前記位置決め部を備えることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、インクタンクとインク補給容器との不適合な接続を抑制した上で、インク補給容器のインク出口に対するインクタンクの針の挿入具合を適切な位置決め状態で確保できる。
【0018】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インクタンクは、前記針の先端が前記受け面よりもインク貯留室側に位置することが好ましい。
この構成によれば、インクタンクの針は、その先端が受け面よりも外側に突出しないため、針の先端にインクが付着している場合でも、そのインクがインク補給作業を行うユーザーの手やインク補給容器に付着する虞を低減できる。
【0019】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インクタンクは、前記針の前記流路が、各々の流路の先端開口が前記針を中心とする放射方向に並んで配置された2つの流路からなり、一方の流路がインクを流通させるインク流路として機能する場合には他方の流路が空気を流通させる空気流路として機能することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、インク補給容器をインクタンクに対して針の延びる方向から2つの流路が並ぶ放射方向に沿って傾けた状態から接続する場合、2つの流路のうちインク補給容器のインク出口が先に近づいた側の一方の流路がインク流路として機能し、他方の流路が空気流路として機能する。そのため、ユーザーは、2つの流路のうち何れの流路をインク流路としてもよいので、インク流路とする流路を迷って選ぶようなこともなく、迅速にインク補給作業を行うことができる。
【0021】
さらに、上記課題を解決する別のインク補給システムは、インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室内へのインクの流入を可能とするインク入口と、該インク入口を中心とする放射方向で該インク入口の外側となる領域に形成された凹部と、を有するインクタンクと、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室と、該インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口と、該インク出口を中心とする放射方向で該インク出口の外側となる領域に前記凹部と嵌合可能に形成された凸部と、を有するインク補給容器と、を備え、前記インクタンクは、前記凹部の内面において該凹部の開口縁よりも底面側となる位置に第1凹凸部を備え、前記インク補給容器は、前記インクタンクの前記第1凹凸部と係合可能な第2凹凸部を前記凸部に設けた。
【0022】
この構成によれば、インクタンクの凹部にインク補給容器の凸部を嵌合させると共に、その凹部の内面の第1凹凸部に凸部の外面の第2凹凸部を係合させることにより、インクタンクに対して適合したインク補給容器が接続されたことをユーザーは認識できる。そのため、インクタンクとインク補給容器との不適合な接続を抑制することができると共に、インクタンクの凹部の内面において凹部の開口縁よりも底面側となる位置に第1凹凸部があるため、インク補給容器は、その凸部がインクタンクの凹部の開口側から底面側に誘導され易く、その挿入作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インクタンクは、前記凹部の深さ方向が前記インク入口の中心軸の方向であり、前記第1凹凸部が前記凹部の内面に前記凹部の深さ方向に沿って延びるように設けられ、前記インク補給容器は、前記凸部を前記凹部に嵌合させ、前記第2凹凸部を前記第1凹凸部に係合させたときに、前記インク出口が前記インク入口に接続されることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、インクタンクの凹部の内面に該凹部の深さ方向に沿って延びるように設けられた第1凹凸部に対してインク補給容器における凸部の外面の第2凹凸部を凹部への凸部の嵌合に伴い係合させることにより、インクタンクのインク入口に対するインク補給容器のインク出口の接続方向を認識し易くできる。
【0025】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インクタンクにおける前記凹部の深さ方向は、前記インク入口に前記インク出口を接続させた状態において水平方向と交差して上方から下方に向かう方向であることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、インクタンクのインク入口にインク補給容器のインク出口を接続させた状態において、インク補給容器のインク出口からインク収容室内にインクが戻ることを抑制でき、インク補給容器からインクタンクへのインクの補給作業を適切に行うことができる。
【0027】
さらに、上記課題を解決する更に別のインク補給システムは、インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室内へのインクの流入を可能とするインク入口と、該インク入口を中心とする放射方向で該インク入口の外側となる領域に該インク入口を中心として点対称となるように形成された複数の第1嵌合部と、を備えたインクタンクと、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室と、該インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口と、該インク出口を中心とする放射方向で該インク出口の外側となる領域に前記第1嵌合部と嵌合可能に形成された第2嵌合部と、を備えたインク補給容器と、を備えている。
【0028】
この構成によれば、インク補給容器は、その第2嵌合部をインクタンクにおいてインク入口を中心として点対称に形成された複数の第1嵌合の何れに嵌合させた場合にも、そのインク補給容器のインク出口をインクタンクのインク入口に接続できるため、インク補給時にはインク補給容器のインクタンクに対する接続作業を容易に行うことができる。
【0029】
さらに、上記課題を解決する更に別のインク補給システムは、インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室内へのインクの流入を可能とするインク入口と、該インク入口を中心とする放射方向で該インク入口の外側となる領域に形成された第1嵌合部と、を備えたインクタンクと、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室と、該インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口と、該インク出口を中心とする放射方向で該インク出口の外側となる領域に前記第1嵌合部と嵌合可能に形成された第2嵌合部と、を備えたインク補給容器と、を備え、前記インクタンクは、前記インク貯留室に貯留する前記インクに関わる情報を示す第1部分を有し、前記インク補給容器は、前記インク収容室に収容する前記インクに関わる情報を示す第2部分を有し、前記第1部分と前記第2部分は、前記インク補給容器の前記第2嵌合部を前記インクタンクの前記第1嵌合部に嵌合させたときに外部から視認可能となる位置に設けられている。
【0030】
この構成によれば、インク補給容器をインクタンクに接続してインクの補給を行うときに、補給するインクが適合しているか否かを第1部分と第2部分とを視認することで容易に確認できる。
【0031】
さらに、上記課題を解決する更に別のインク補給システムは、インクを貯留可能なインク貯留室と、該インク貯留室内へのインクの流入を可能とするインク入口と、該インク入口を中心とする放射方向で該インク入口の外側となる領域に形成された凹部と、を備えたインクタンクと、前記インクタンクに補給するインクを収容可能なインク収容室と、該インク収容室内からの前記インクの流出を可能とするインク出口と、該インク出口を中心とする放射方向で該インク出口の外側となる領域に前記凹部と嵌合可能に形成された凸部と、を備えたインク補給容器と、を備え、前記インク補給容器は、前記凸部が前記インク出口の中心軸の方向において前記インク出口よりも前記インク収容室とは反対方向に突出している。
【0032】
この構成によれば、インク補給時において、インク補給容器ではインク出口よりも凸部の方が突出しているため、ユーザーの手やインクタンクの周辺部分にインク出口が触れる虞を低減でき、インクの付着による汚染の発生を抑制できる。
【0033】
逆に、インク出口を凸部よりも前記中心軸の方向においてインク収容室とは反対方向に突出させることも可能である。その場合は、インク補給時にインク出口を視認し易くなる。
【0034】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インク補給容器は、前記凸部が前記インク出口を中心とする放射方向において前記インク収容室が設けられた容器本体部の外周面よりも外側に突出していることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、ユーザーは、インク補給容器を見たときに凸部を視認し易くなり、インク補給時にインク補給容器の凸部をインクタンクの凹部に対して嵌合させ易くなる。その結果、インクタンクに対するインク補給容器の誤接続を低減することができる。
【0036】
また、上記インク補給システムにおいて、前記インク補給容器は、前記凸部が前記インク出口を中心とする放射方向において前記インク収容室が設けられた容器本体部の外周面よりも内側に形成されていることが好ましい。
【0037】
この構成によれば、インクタンクのインク入口にインク補給容器のインク出口を接続させるときに、インク補給容器の凸部が邪魔になり難くすることができる。
さらに、上記課題を解決するインク補給用アダプターは、インク補給容器からインクタンクにインクを補給するときに前記インク補給容器と前記インクタンクとの間を接続するインク補給用アダプターであって、インクを貯留可能なインク貯留室を有する複数のインクタンクに対してそれらを一括にした状態で係合可能なタンク係合部と、前記インク補給容器のインク出口から流出したインクの前記インク貯留室内への流入を可能とするように前記インクタンクごとに設けられた複数のインク入口と、複数の前記インク入口ごとに設けられ、該インク入口に接続可能な前記インク出口を有する前記インク補給容器を識別可能とする複数の識別部と、を備える。
【0038】
この構成によれば、インクタンクは汎用的な共通構造とした上で、それら複数のインクタンクを一括状態にして補給用アダプターのタンク係合部を係合させれば、インク補給時にインク補給容器の誤装着を抑制可能な構造を簡単に実現できる。
【0039】
さらに、上記課題を解決する別のインク補給用アダプターは、インク補給容器からインクタンクにインクを補給する状態で、前記インクタンク上に装着されるインク補給用アダプターであって、前記インクを前記インクタンクに設けられたインク貯留室内へ流入可能とするように前記インクタンクに設けられたインク入口流路部を挿通可能で、前記インク入口流路部の周囲の少なくとも一部を囲む入口形成部と、前記インクタンクに設けられたタンク側位置決め部と係合可能であり、前記インクタンクに対し前記インク補給用アダプターの位置決めを行うアダプター側位置決め部と、前記インク入口流路部に接続可能なインク出口を有する前記インク補給容器を識別可能とする識別部と、を備えた。
【0040】
この構成によれば、インクタンクに対してインク補給用アダプターが位置決めされるため、インクタンクに設けられたインク入口流路部とインク補給用アダプターに設けられた入口形成部との位置ずれが抑制される。したがって、インク補給用アダプターを介して、インク補給容器からインクタンクに対して適切にインクを補給できる。
【0041】
また、上記インク補給用アダプターにおいて、複数の前記入口形成部と、複数の前記入口形成部に対応する前記識別部と、複数の前記アダプター側位置決め部と、が一体的に形成されたことが好ましい。
【0042】
この構成によれば、入口形成部と識別部とアダプター側位置決め部とが一体的に形成されているため、これらを別々に形成する場合に比べてインク補給用アダプターを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】記録装置の第1実施形態の概略構成を透視状態で模式的に示す斜視図。
図2】記録装置の筐体内に備えられたインク供給ユニットを示す斜視図。
図3】同じくインク供給ユニットの平面図。
図4図3における4-4線矢視の一部破断面図。
図5図3における5-5線矢視の一部破断面図。
図6】キャップが取り外された状態にあるインク補給容器の斜視図。
図7】インク補給容器の側面図。
図8】インク補給容器の正面図。
図9】インク補給容器の平面図。
図10図9における10-10線矢視断面図。
図11図9における11-11線矢視断面図。
図12】インクタンクに対するインク補給作業直前の状態を示す一部破断正面図。
図13】インクタンクに対するインク補給作業直前の状態を示す一部破断側面図。
図14】インクタンクに対するインク補給作業中の状態を示す一部破断正面図。
図15】インクタンクに対するインク補給作業中の状態を示す一部破断側面図。
図16】インク補給時にインク補給容器の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断正面図。
図17】インク補給時にインク補給容器の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断側面図。
図18】第2実施形態の記録装置を備える複合機の斜視図。
図19】インクタンクにインクを補給する状態を示す複合機の斜視図。
図20】インク供給ユニットの筐体を外した状態を示す斜視図。
図21】インクタンクの部分斜視図。
図22】インクタンクの部分平面図。
図23】インク供給ユニットの部分斜視図。
図24】インク供給ユニットの部分平面図。
図25】インク補給用アダプターの下面側からの斜視図。
図26】インク補給用アダプターの底面図。
図27図23におけるF27-F27線矢視断面図。
図28図23におけるF28-F28線矢視断面図。
図29】変形例のインク補給容器の側面図。
図30】変形例のインク補給容器の正面図。
図31】他の変形例のインク補給容器の斜視図。
図32】変形例のインク供給ユニットの斜視図。
図33】変形例のインク補給用アダプターの斜視図。
図34】変形例のインク補給容器の部分斜視図。
図35】変形例のインク出口と第2凹凸部の平面図。
図36】変形例のインク補給容器とキャップの部分断面図。
図37】変形例のインク出口と封止部の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
以下、記録装置の第1実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、この実施形態の記録装置は、媒体に対してインクを吐出することによって、媒体に画像等の記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。
【0045】
図1に示すように、記録装置21は、左右方向を長手方向とする直方体形状の筐体22を備えている。なお、図1は、記録装置21における筐体22内を透視した状態で簡略的に図示している。筐体22内における後方寄りの下部には、左右方向を長手方向とする支持台23が、その上面を略水平方向に沿わせるようにして設けられている。媒体の一例である用紙Pは、この支持台23の上面に支持されつつ、搬送方向となる前方に向けて搬送される。また、筐体22内における支持台23の上方位置には、左右方向に沿って延びるガイド軸24が架設され、そのガイド軸24にはインクを吐出する記録ヘッド25を下面側に備えたキャリッジ26が支持されている。すなわち、キャリッジ26は、左右方向に貫通する支持孔27にガイド軸24が挿通された状態で、そのガイド軸24に対して左右方向への往復移動自在に支持されている。
【0046】
また、筐体22内においてガイド軸24の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー28と従動プーリー29とがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー28にはキャリッジモーター30の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー28と従動プーリー29との間には一部がキャリッジ26に連結された無端状のタイミングベルト31が巻き掛けられている。そして、キャリッジモーター30の駆動によりキャリッジ26がタイミングベルト31を介してガイド軸24にガイドされつつ用紙Pに対する走査方向となる左右方向に沿って往復移動するときに、支持台23上を前方に搬送される用紙Pに対してキャリッジ26の下面側の記録ヘッド25から用紙Pに対してインクが吐出される。
【0047】
また、図1に示すように、筐体22の前面側において支持台23の前方側となる位置には、筐体22内で支持台23上を搬送されるときに記録ヘッド25からのインクの吐出により記録を行われた用紙Pを前方側に排出する矩形の排出口32が開口している。排出口32には、筐体22内から排出される用紙Pを支持可能な矩形板状の排出トレイ33が、排出方向である前方への出没自在に設けられている。また、排出口32内において、排出トレイ33の下側には記録に用いる複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な給紙カセット34が前後方向への挿抜自在に装着されている。
【0048】
また、図1に示すように、筐体22における前面であって排出口32よりも左右方向の端部側(図1では、右端部側)となる位置には、前面と上面が矩形状で右側面が直角三角形状をなす開閉扉35が、その下端に設けられた左右方向に沿う回転軸36を回転中心として前後方向への開閉動作自在に設けられている。この開閉扉35の前面には、矩形状の透明部材からなる窓部37が形成されており、ユーザーは開閉扉35を閉じた状態で筐体22の内部(特に、開閉扉35の前面の裏側)を視認できるようになっている。
【0049】
記録装置21の筐体22内において、開閉扉35の裏側となる位置、すなわち前面寄りで且つ端部寄り(この場合は右端部寄り)となる位置には、記録ヘッド25に対してインクを供給するインク供給ユニット40が収容されている。インク供給ユニット40は、複数(本実施形態では5つ)のインクタンク41~45を含んで一体的に取り扱い可能とされた構造体であり、後で述べるように、各インクタンク41~45にはインクが補給可能とされている。
【0050】
図2及び図3に示すように、インク供給ユニット40は、前後方向に長い変形箱形状の5つのインクタンク41~45と、各インクタンク41~45の後面側から引き出された5つのインク供給チューブ46と、それらのインクタンク41~45を一括にした状態で組み付けられる直方体形状のインク補給用アダプター47を含んで構成されている。このインク補給用アダプター47は、全てのインクタンク41~45が厚さ方向を左右方向にして横並びに配置された状態において、全てのインクタンク41~45の上部前半部分に切欠形成された段差部48に組み付けられることで、インクタンク41~45と一体化されている。なお、図1に示すように、インクタンク41~45から引き出されたインク供給チューブ46は、キャリッジ26内に形成されたインク流路(図示略)に接続され、そのインク流路を介して記録ヘッド25に接続されている。尚、インク補給用アダプター47は、インクタンク41~45を覆う筐体22の一部を構成するものであってもよく、インクタンク41~45と一体的に形成されていてもよい。
【0051】
図4及び図5に示すように、インクタンク41~45は、その内部にインクIKを貯留可能なインク貯留室49を有している。本実施形態の場合、その横並び方向で右端に位置するインクタンク41のインク貯留室49にはブラックインクが貯留される。そして、横並び方向で右端のインクタンク41よりも左側に並ぶ他の各インクタンク42~45のインク貯留室49にはブラック以外のカラー(シアン、マゼンタ、イエローなど)インクが貯留される。また、インクタンク41~45において筐体22の前面の窓部37を介して視認可能とされる前壁部には、インク貯留室49内のインクIKの液面を視認可能とする透明樹脂で形成された視認部50が設けられている。そして、その視認部50には、インク貯留室49内に貯留されるインクIKの液面の上限の目安(インクをインク入口53から溢れさせずに注入可能なインク量の目安の例)を示す上限マーク51と下限の目安(例えば、インクの補給を促す目安)を示す下限マーク52が記されている。
【0052】
図4に示すように、インクタンク41~45において段差部48の水平部分の上側には外部からインク貯留室49内へのインクの流入を可能とするインク入口53が設けられている。インク入口53は、インク貯留室49の内部と外部とを連通する流路54,55を有して鉛直上方に向けて延びる針56を含んで構成されている。針56の流路54,55は、各々の先端開口が針56を中心とする放射方向に並んで配置された2つの流路54,55からなり、それら2つの流路54,55のうち一方(図4では右側)の流路54は、他方(図4では左側)の流路55よりも、その先端開口の高さが低く且つその流路の断面積が大きく形成されている。なお、インク貯留室49内の後方寄り下部には、インク貯留室49内のインクIKの残量を検出するための残量センサー57が設けられている。尚、残量センサー57は設けられていなくてもよい。
【0053】
図2図5に示すように、インク補給用アダプター47は、その上面58が針56の延びる方向と直交(交差)する方向に沿う水平な面とされ、その上面58には下面59まで上下方向に貫通する貫通孔60がインク入口形成部として形成されている。この貫通孔60は、針56が中央に配置される円孔形状のインク入口53と、インク入口53の前後に連なる前後一対の矩形孔部からなり、その下側の開口はインクタンク41~45において針56を上方に向けて突設した段差部48の水平部分により塞がれている。
【0054】
そのため、貫通孔60において、インク入口53を中心とする放射方向でインク入口53の外側となる領域には、下側の開口を塞がれた前後一対の矩形孔部により、針56の延びる方向である上側に開口する前後一対の凹部61が、インク入口53を中心として点対称となるように鉛直下方を深さ方向として窪み形成される。すなわち、インクタンク41~45に一体化されたインク補給用アダプター47において針56を含むインク入口53の外側となる領域には、インク入口53を中心として点対称をなす複数(この場合は前後で対をなす2つ)の凹部61が形成されることになる。なお、この場合において、円孔形状のインク入口53の中心に配置される針56の先端は、インク入口53と凹部61とが含まれる貫通孔60の開口縁となるインク補給用アダプター47の上面58よりも、インク貯留室49側に位置している。すなわち、インク補給用アダプター47の上面58は、針56の延びる方向において該針56の先端よりも外側の位置で該針56が延びる方向と交差する方向に延びている。その一方、インク補給用アダプター47の下面59は、左右方向へ横並びにした複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にして上側から係合するタンク係合部として機能する。
【0055】
また、インク補給用アダプター47の上面58のうち、各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、特定の色に着色されている。すなわち、その貫通孔60のインク入口53を介してインクが流入されるインクタンク41~45のインク貯留室49に貯留されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給用アダプター47における各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、その貫通孔60のインク入口53とインク貯留室49が連通するインクタンク41~45が内部に貯留しているインクに関わる情報を外部に示す第1部分として機能している。因みに、ブラックインクを貯留するインクタンク41のインク貯留室49と連通するインク入口53が配置される貫通孔60の上側開口の周辺部分はブラックに着色される。
【0056】
また、凹部61の内面(具体的には上下方向に沿う内側面)において、その凹部61の上側の開口縁よりも底面側(すなわち、段差部48の水平部分側)となる位置には、水平方向に特徴的な凹凸形状を呈する第1凹凸部(第1キー構造部)62が、凹部61の深さ方向(換言すると、インク入口53の中心軸の方向)に沿って延びるように設けられている。図2及び図3に示すように、第1凹凸部62は、複数(本実施形態では5つ)あるインクタンク41~45のインク入口53ごとに設けられる。そのため、インク補給用アダプター47において、各インクタンク41~45と上下方向で各々対応する位置に形成された各貫通孔60における矩形の凹部61には、それぞれ貫通孔60ごとに他の貫通孔60の凹部61の内面に設けられた第1凹凸部62とは異なる第1凹凸部62が形成されている。すなわち、これらの第1凹凸部62は、その第1凹凸部62が形成された貫通孔60内のインク入口53に接続されるインク出口65(図6等参照)を有するインク補給容器63(図6等参照)を識別可能とする識別部として機能するものである。尚、「凹部61の上側の開口縁よりも底面側となる位置」とは、開口縁よりも若干でも底面側に後退した位置であればよいことを意味する。
【0057】
そこで次に、インクタンク41~45と共にインク補給システムを構成し、インク残量が少なくなったインクタンク41~45にインクを補給するインク補給容器63について説明する。
【0058】
図6図8に示すように、インク補給容器63は、その主体となる円筒状の容器本体部64と、容器本体部64の先端部に設けられ、インク補給容器63内からのインクの流出を可能とするインク出口65が先端に開口形成されたインク出口形成部66と、インク出口形成部66にインク出口65を囲むように付加される容器付加部67とを備えている。インク出口形成部66のインク出口65は、その周りの容器付加部67も含めて有底筒状のキャップ68により覆われることで、インク補給容器63の保管時には、外部から隠蔽される。すなわち、容器付加部67の円筒状をなす下端部の外周面には雄ねじ部69が形成される一方、キャップ68の内周面には図示しない雌ねじ部が形成されており、容器付加部67の雄ねじ部69にキャップ68の雌ねじ部を螺合させることにより、キャップ68はインク補給容器63の先端部に対してインク出口65を覆うように取着される。
【0059】
なお、容器付加部67は、その外面全体が特定の色に着色されている。すなわち、その容器付加部67が付加される容器本体部64内に収容されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給容器63における容器付加部67は、そのインク補給容器63が内部に収容しているインクに関わる情報を外部に示す第2部分として機能している。因みに、ブラックインクを収容するインク補給容器63における容器付加部67の外面はブラックに着色される。また、容器本体部64とキャップ68の各基端部の外周面には、等角度間隔(一例として90度間隔)で複数(本実施形態では4つ)の突起70が形成されている。因みに、これらの突起70は円筒状をなすインク補給容器63の転がり防止を図るために形成されたものである。更に、例えばブラックインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64は、他の色のインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64よりも太く形成してもよい。その場合、インク出口形成部66はブラックインク用と他の色のインク用と共通の太さ、形状にしてもよい。
【0060】
また、図6図8に示すように、容器付加部67の外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部よりも上方部分には、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる領域に、インク出口65の中心軸の方向でインク出口65よりも容器本体部64とは反対方向となる上方に向けて突出する凸部71が形成されている。この凸部71は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端を挿入させるときに、インク補給用アダプター47の上面58の凹部61を第1嵌合部として嵌合可能な第2嵌合部として機能するものであり、インク入口53を前後から挟む一対の凹部61と同様にインク出口65を前後から挟んで対をなすように設けられている。なお、図6及び図7に示すように、凸部71は、インク補給容器63においてインク出口65を中心とする放射方向で容器本体部64の外周面よりも内側に形成されている。
【0061】
図6及び図9に示すように、各凸部71の外面(図6及び図9では左右両側面)には、インク補給用アダプター47の凹部61の内面に形成された第1凹凸部(第1キー構造部)62と係合可能な第2凹凸部(第2キー構造部)72が形成されている。この第2凹凸部72は、凸部71の突出方向(換言すると、インク出口65の中心軸の方向)に沿って延びるように設けられており、凸部71を凹部61に嵌合させると共に、第2凹凸部72を第1凹凸部62に係合させたときに、インク補給容器63のインク出口65をインクタンク41~45側のインク入口53に接続させる。
【0062】
また、容器付加部67の雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部と第2凹凸部72が形成された凸部71との間には、インク出口65の中心軸と直交(交差)する平面形状の位置決め部73が、インク出口65をその中心軸の方向に見たときインク出口65の放射方向外側に位置するように設けられている。すなわち、この位置決め部73は、インク補給容器63の外面の一部である容器付加部67の外面の一部を構成し、インク出口65の中心軸の方向において凸部71の先端よりも容器本体部64側となる位置に設けられている。そして、この位置決め部73は、インク補給容器63においてインク出口形成部66に付加される容器付加部67に設けられていることから、インク出口形成部66とは別部材の構成であり、且つインク出口形成部66の外側に備えられる構成であるといえる。
【0063】
また、図9に示すように、インク出口形成部66に形成されたインク出口65内には、そのインク出口65を開閉可能に封止する例えばシリコン膜等の弾性部材からなる弁74が設けられている。なお、弁74は、インク出口65の中心軸の方向において、位置決め部73の方が容器本体部64側となる位置に設けられている(例えば図14参照)。そして、この弁74には、その中心を交点として等角度間隔(一例として120度間隔)で交わる複数(本実施形態では3つ)のスリット75が設けられており、それらのスリット75がインク出口65の外側から内側に押し広げられることで開弁するように構成されている。すなわち、常閉弁である弁74は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端が挿入されたときに、その針56の先端で内側に押し広げられて開弁する。
【0064】
そして、その際には、インク出口65の放射方向の外側で位置決め部73がインク入口53及び凹部61を含む貫通孔60が形成されたインク補給用アダプター47の上面58に当接し、インク出口65の中心軸方向において弁74をインクタンク41~45に対して位置決めする。この点で、インク補給用アダプター47の上面58は、インクタンク41~45へのインク補給のためにインク補給容器63のインク出口65の弁74が開弁されるときにインク補給容器63の位置決め部73が当接するインクタンク41~45側の一部であって、平面形状の位置決め部73を受け止める受け面として機能する。
【0065】
図10及び図11に示すように、インク補給容器63における容器本体部64は、その内部にインクIKを収容可能なインク収容室76を有するボトル形状をなす部材であり、その上端部の頸部77の外周面には雄ねじ部78が形成されている。一方、容器本体部64の上端部に設けられるインク出口形成部66は、容器本体部64の頸部77の外周側に位置する大径部79と、容器本体部64から最も離れた位置でインク出口65を形成する小径部80と、その大径部79と小径部80の間を連結する中間部81とを有している。そして、大径部79の内周面に形成された雌ねじ部82を、容器本体部64の頸部77の外周面に形成された雄ねじ部78に螺合させることにより、インク出口形成部66は容器本体部64の上端部に取着されている。
【0066】
また、インク補給容器63におけるインク出口形成部66にインク出口65を囲むように付加される容器付加部67は、その外周面に雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部が、その下端面をインク出口形成部66の大径部79の上端面に接合される接合部83を構成している。この接合部83は、その内周面の前後方向で対向する面領域がインク出口形成部66の中間部81の前側の外面及び後側の外面と面接触状態となってインク出口形成部66の大径部79に接合される。
【0067】
そこで次に、上記のように構成されたインク補給システムの作用について、インク補給容器63を用いてインク供給ユニット40のインクタンク41~45にインクを補給する際の作用に着目して以下説明する。
【0068】
なお、前提として、図2に示すように、複数の横並びに配置されたインクタンク41~45のうち一番右側に位置するブラックインクのインクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の下部に記された下限マーク52の高さまで低下しているため、以下においては、このインクタンク41にインク補給する場合について説明するものとする。また、インク補給に用いるインク補給容器63にはブラックインクが十分に収容されているものとし、そのインク補給容器63からは、前もってキャップ68が取り外されているものとする。さらに、そのインク補給容器63の凸部71の外面に形成されている第2凹凸部72の形状はインクタンク41へのインク入口53の前後に位置する凹部61の内面に形成されている第1凹凸部62の形状と一致し、凹部61に対する凸部71の挿入に伴い係合可能であるものとする。
【0069】
さて、インクタンク41へのインク補給を行う際、まずユーザーは、筐体22の開閉扉35を図1に示す閉鎖状態から回転軸36を中心に前方へ回動させて開放状態とする。すると、インク供給ユニット40は、インクタンク41~45内へのインク入口53が形成されたインク補給用アダプター47の上面58が筐体22の外部に露出し、ユーザーは、所望のインク入口53に対して上方からインク補給容器63のインク出口65を接続することが可能となる。
【0070】
そこで、図12及び図13に示すように、ユーザーは、インク補給に用いるブラックインクを収容したインク補給容器63を上下逆さまにして、インク出口65がインク補給用アダプター47における一番右側の貫通孔60の上方に位置するように保持する。すなわち、そのインク補給容器63のインク出口65の中心軸線をインク補給対象のインクタンク41のインク入口53の中心軸線と位置合わせする。このとき、ユーザーは、手に保持しているインク補給容器63の容器付加部67に着色されている色(第2部分)と、そのときのインク補給対象であるインクタンク41のインク入口53が設けられた貫通孔60の上側の開口縁周辺に着色されている色(第1部分)とを見比べる。そして、それぞれの色が同じ(この場合は、ブラック同士)であれば、今回のインク補給に適合したインク補給容器63を手に保持していると確認し、インク補給における後続作業に移行する。
【0071】
そして、図12及び図13に示す状態からインク補給容器63を下降させ、そのインク補給容器63の凸部71をインクタンク41と一体的なインク補給用アダプター47の凹部61に挿入する。すると、その凹部61に対する凸部71の挿入状態の実現により、インク入口53の中心軸線に対するインク出口65の中心軸線の一致状態が確保される。なお、この場合において凹部61はインク入口53の中心である針56に対して点対称の位置状態にあるため、凸部71は何れの凹部61に対しても挿入可能とされる。そのため、インク補給容器63をインク出口65の中心軸線を中心にして何度も回転させて凹部61と凸部71との適合した位置関係を確かめる必要もなく、ユーザーは、凹部61に対する凸部71の挿入作業を容易に行い得る。
【0072】
但し、この時点では、凹部61に凸部71が僅かに挿入されただけで、インク入口53の中心に位置する針56の先端も、その凸部71の先端より少し突出したインク出口65の開口内には挿入されているものの、インク出口65の内奥に位置する弁74にまでは至っていない。その理由は、図13に示すように、凹部61の開口縁が位置するインク補給用アダプター47の上面58と凹部61内の第1凹凸部62の上端との距離L1よりも凸部71の先端とインク出口65内の弁74との距離L2の方が長いからである。そこで、その状態から凸部71を凹部61の深さ方向である下方に向けて更に挿入させると、凸部71の外面の第2凹凸部72が凹部61の内面の第1凹凸部62に係合する。そして、その係合状態を維持しつつ、更に凸部71を凹部61の深さ方向で底面側に向けて挿入すると、インク入口53の針56の先端がインク出口65の弁74の位置にまで至り、その弁74を開弁させる。
【0073】
すなわち、図14及び図15に示すように、針56の先端が弁74に対して、スリット75を下方から上方に(つまり、インク出口65の外側から内側に)押し広げることで、弁74を開弁状態とする。その結果、インク補給容器63のインク出口65とインクタンク41のインク入口53の針56とが接続され、インク補給容器63内からインクタンク41内へのブラックインクの補給が行われる。このとき、インク入口53の針56は2つある流路54,55のうち、弁74を開弁させてインク出口65から流出させたインクに対して先に先端開口が触れる一方の流路がインクを流通させるインク流路として機能し、他方の流路が空気を流通させる空気流路として機能する。例えば、ユーザーがインク補給容器63を傾けた状態でインク入口53にインク出口65を接続しようとした場合には、その傾ける方向の違いにより、2つの流路54,55のうちインク流路となる流路も変更になる。
【0074】
なお、凹部61内に凸部71を挿入させた後において第2凹凸部72が第1凹凸部62に係合しない場合、その時点で、ユーザーはブラック以外の他の色のインク補給容器63を間違って挿入しようとしていると認識できる。この場合、もし仮に第1凹凸部62の上端が凹部61の開口縁と同じ高さに位置している構成であると、その第1凹凸部62に対する第2凹凸部72の係合が拒否されるだけでなく、凹部61に対する凸部71の挿入も拒否されるため、ユーザーは、凹部61への凸部71の挿入を何度も試みて、いたずらに無駄な作業時間を費やしてしまうこともある。この点、本実施形態では、第1凹凸部62の高さが凹部61の開口縁よりも低いため、凸部71は凹部61に挿入されるときに凹部61の深さ方向で底面側に誘導され易くなり、作業時間が無駄に長くなることも抑制される。
【0075】
さらに、図14図16及び図17に示すように、インク補給容器63のインク出口65内の弁74をインクタンク41側のインク入口53の針56が開弁させるとき、インク補給容器63は位置決め部73がインクタンク41側の一部であるインク補給用アダプター47の上面58に当接する。すなわち、インク補給容器63は、この位置決め部73とインク補給用アダプター47の上面58との当接により、弁74がインクタンク41側の針56に対してインク出口65の中心軸の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0076】
また、その際において、位置決め部73はインク出口65の放射方向外側に位置するため、インク補給容器63はインク入口53にインク出口65を接続させた姿勢が安定的に保持される。また、図14及び図15に示すように、インク補給用アダプター47の上面58にインク補給容器63の位置決め部73が当接したとき、インク入口53における針56の基端が位置するインク入口53の底面とインク補給容器63のインク出口65の先端との間には隙間が存在する。そのため、インク入口53の針56の基端が位置する底面にはインクが溜まり易いが、そのように溜まっているインクがインク出口65の先端に付着してインク補給容器63を汚すことも回避される。
【0077】
そして、図14及び図16に示すように、インクタンク41に対するインク補給容器63からのインク補給が終了したとき、インクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の上限マーク51よりも未だ低い場合には、更に同じブラックのインク補給容器63を用いて上限マーク51まで更に継ぎ足すインク補給を行ってもよい。なお、以上のようなインク補給作業は、ブラックインクのインクタンク41以外の他の色のインクタンク42~45に対する場合も同様に行われる。
【0078】
上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インク補給容器63からインクタンク41~45へのインク補給時に、弁74はインクタンク41~45に対して位置決めされた状態で開弁される。そのため、開弁時に弁74が位置ずれした場合に生じる虞のあるインク漏れやインク補給不良等の不具合を抑制でき、インクタンク41~45に対して適切にインクを補給することができる。
【0079】
(2)弁74は、シリコン膜等からなる弾性部材に1つ以上のスリット75が設けられたスリット弁で構成されているため、少ない部品点数で簡単な構造のインク補給容器63を提供できる。
【0080】
(3)インク補給容器63からインクタンク41~45へのインク補給時に、インク補給容器63は位置決め部73がインクタンク41~45側の一部に対してインク出口65の放射方向外側に位置する状態で当接することになるため、安定した姿勢でインク補給を行うことができる。
【0081】
(4)インク補給容器63において位置決め部73はインク出口形成部66とは別部材の容器付加部67に設けられているため、インクタンク41~45、インク補給容器63の設計態様に合わせて位置決め部73を最適化したものにすることができる。
【0082】
(5)インク補給容器63のインク出口65にインクタンク41~45の針56を挿入させて弁74を開弁させるときには、インクタンク41~45においてインク補給容器63の受け面として機能するインク補給用アダプター47の上面58にインク補給容器63の位置決め部73が当接して弁74と針56との相対的な位置関係を決定する。そのため、弁74を針56により適切に開弁させることができ、インク補給不良の発生を抑制できる。
【0083】
(6)インク補給時において、インクタンク41~45の凹部61にインク補給容器63の凸部71が嵌合しない状態ではインク出口65に針56が挿入されないので、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制することができる。
【0084】
(7)インク補給容器63は、インク出口形成部66の外側で、且つ、インク出口65の中心軸の方向で凸部71よりも容器本体部64側となる位置に、位置決め部73を備える。そのため、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制した上で、インク補給容器63のインク出口65に対するインクタンク41~45の針56の挿入具合を適切な位置決め状態で確保できる。
【0085】
(8)また、インクタンク41~45の針56は、その先端がインク補給容器63の位置決め部73の受け面となるインク補給用アダプター47の上面58よりも外側に突出しないため、針56の先端にインクが付着している場合でも、そのインクがインク補給作業を行うユーザーの手やインク補給容器63に付着する虞を低減できる。
【0086】
(9)インク補給容器63をインクタンク41~45に対して針56の延びる方向から2つの流路54,55が並ぶ放射方向に沿って傾けた状態から接続する場合、2つの流路54,55のうちインク補給容器63のインク出口65が先に近づいた側の一方の流路がインク流路として機能し、他方の流路が空気流路として機能する。そのため、ユーザーは、2つの流路54,55のうち何れの流路をインク流路としてもよいので、インク流路とする流路を迷って選ぶようなこともなく、迅速にインク補給作業を行うことができる。
【0087】
(10)インクタンク41~45の凹部61にインク補給容器63の凸部71を嵌合させると共に、その凹部61の内面の第1凹凸部62に凸部71の外面の第2凹凸部72を係合させることにより、インクタンク41~45に対して適合したインク補給容器63が接続されたことをユーザーは認識できる。そのため、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制することができる。また、インクタンク41~45の凹部61の内面において凹部61の開口縁よりも底面側となる位置に第1凹凸部62があるため、インク補給容器63は、その凸部71がインクタンク41~45の凹部61の開口側から底面側に誘導され易く、その挿入作業を容易に行うことができる。
【0088】
(11)インクタンク41~45の凹部61の内面に凹部61の深さ方向に沿って延びるように設けられた第1凹凸部(第1キー構造部)62に対してインク補給容器63における凸部71の外面の第2凹凸部72(第2キー構造部)を凹部61への凸部71の嵌合に伴い係合させることができる。その結果、インクタンク41~45のインク入口53に対するインク補給容器63のインク出口65の接続方向を認識し易くできる。
【0089】
(12)インク入口53の放射方向の外側に設けられる凹部61はその深さ方向が鉛直下方に向かう方向であるため、インクタンク41~45のインク入口53にインク補給容器63のインク出口65を接続させた状態において、インク補給容器63のインク出口65からインク収容室76内にインクが戻ることを抑制できる。その結果、インク補給容器63からインクタンク41~45へのインクの補給作業を適切に行うことができる。
【0090】
(13)インク補給容器63は、その凸部(第2嵌合部)71をインクタンク41~45においてインク入口53を中心として点対称に形成された複数の凹部(第1嵌合)61の何れに嵌合させた場合にも、そのインク補給容器63のインク出口65をインクタンク41~45のインク入口53に接続できる。そのため、インク補給時にはインク補給容器63のインクタンク41~45に対する接続作業を容易に行うことができる。
【0091】
(14)インクタンク41~45におけるインク補給用アダプター47のインク入口53の周辺部分に着色された色はインク貯留室49に貯留しているインクに関わる情報を示す第1部分として機能し、インク補給容器63の容器付加部67に着色された色はインク収容室76に収容しているインクに関わる情報を示す第2部分として機能する。そのため、インク補給容器63をインクタンク41~45に接続してインクの補給を行うときに、補給するインクが適合しているか否かをインクタンク41~45側の第1部分とインク補給容器63側の第2部分とを視認することで容易に確認できる。
【0092】
(15)インク補給容器63は、凸部71がインク出口65を中心とする放射方向でインク収容室76が設けられた容器本体部64の外周面よりも内側に形成されているため、インクタンク41~45のインク入口53にインク補給容器63のインク出口65を接続させるときに、インク補給容器63の凸部71が邪魔になり難くすることができる。
【0093】
(16)インク補給用アダプター47は、複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にした状態で下面(タンク係合部)59側を係合させた上で、インクタンク41~45ごとのインク入口53に接続可能なインク出口65を有するインク補給容器63を識別可能とする複数の第1凹凸部(識別部)62を備えている。そのため、インクタンク41~45は汎用的な共通構造とした上で、それら複数のインクタンク41~45を一括状態にしてインク補給用アダプター47のタンク係合部となる下面59を係合させれば、インク補給時にインク補給容器63の誤装着を抑制可能な構造を簡単に実現できる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、記録装置の第2実施形態について図を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、インクタンクとインク補給用アダプターとの位置決めが第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0095】
図18に示すように、複合機14は、記録装置21と、記録装置21上に配置されて記録装置21の上側を覆う画像読取装置15とを備え、全体として略直方体状をなしている。記録装置21の前側(前面側)には、複合機14の各種の操作を行うためのボタンなどの操作部16と、記録装置21や複合機14の情報などを表示する表示部17と、を有する操作パネル18が設けられている。さらに、操作パネル18の右側には、インク供給ユニット40が設けられている。
【0096】
図19示すように、画像読取装置15は、後側(背面側)に設けられたヒンジなどの回転機構19を介して取り付けられている。画像読取装置15は、記録装置21に対して開閉可能であり、図18に示す閉位置と、図19に示す開位置との間で回動する。そして、画像読取装置15を開位置に位置させると、インク供給ユニット40のユニットカバー100及び弾性キャップ92が開閉可能となる。インクタンク41~45(図20参照)にインクを補給する場合には、図19に示すように、画像読取装置15、ユニットカバー100、及び弾性キャップ92を開位置に位置させ、インク補給容器63をインク補給用アダプター47及びインクタンク41~45に接続する。すなわち、インク補給用アダプター47は、インク補給容器63からインクタンク41~45にインクを補給する状態で、インクタンク41~45上に位置するように装着されている。換言すると、インク補給用アダプター47は、インク補給容器63からインクタンク41~45にインクを補給するときにインク補給容器63とインクタンク41~45との間を接続する。
【0097】
図20に示すように、インク供給ユニット40には、収容可能なインクの量が異なる2種類のインクタンク41~45が、厚さ方向を左右方向にして横並びに配置されている。なお、収容量が多いインクタンク41と、収容量が少ないインクタンク42~45は、厚みが異なるもののその構成は同じである。そのため、インクタンク41~45において、共通する構成については同一符号を付すことで重複した説明を省略する。
【0098】
さて、針56は、インクタンク41~45の天面111から上方に向かって突出するように形成されている。そして、天面111と交差する視認部50側(前側)の側面112には、タンク側位置決め部113が前方に向かって突出するように設けられている。各インクタンク41~45のタンク側位置決め部113は、上下方向において略同じ位置に位置し、隣り合うインクタンク41~45におけるタンク側位置決め部113の間隔は、略同じである。
【0099】
インクタンク41~45の天面111には、平面視で略矩形状をなし、インクを吸収可能な吸収材123が設けられている。吸収材123には、複数(本実施形態では6つ)の円孔123aが形成されている。そして、吸収材123は、円孔123aにそれぞれ針56を挿通させると共に、インクタンク41~45の開口を封止するフィルム124のうち、天面111よりも上側に延出した部分を折り畳むようにしてインクタンク41~45に取り付けられる。また、吸収材123は、天面111の全体を覆う大きさとしてもよい(図28参照)。
【0100】
図21図22に示すように、タンク側位置決め部113は、天面111よりも下方の位置に側面112から突出するように設けられた底壁114と、底壁114から上方に立設する一対の側壁115と、を備えている。そして、タンク側位置決め部113は、前方及び上方に向かって開口するように設けられている。
【0101】
また、インクタンク41~45の天面111において、タンク側位置決め部113と隣合う前端の位置には、インク補給用アダプター47を支持する突起状の突出部116が設けられている。また、突出部116は、天面111の後端にも設けられている。換言すると、突出部116は、天面111の前後方向の両端の位置に針56を挟んで一対設けられている。
【0102】
図22に示すように、円筒状の針56内には、前後方向の中央位置に、上下方向に沿って延びる区画壁117が形成されている。そして、この区画壁117により流路54,55が区画されている。そのため、本実施形態の流路54,55は、先端開口の高さ及び断面積が略等しく形成されている。また、この針56は、インクをインクタンク41~45に設けられたインク貯留室49内へ流入可能とするようにインクタンク41~45に設けられている。
【0103】
次に、インク補給用アダプター47について説明する。
図23図24に示すように、インク補給用アダプター47は、インク入口流路部の一例である針56の周囲の少なくとも一部を囲む入口形成部119を備えている。この入口形成部119は、インク補給用アダプター47の上面58に、左右方向に複数(本実施形態ではインクタンク41~45と同数の5つ)並んで設けられている。本実施形態の入口形成部119は、有底の凹部であり、その形状は貫通孔60(図3参照)と平面視で略同じである。さらに、インク補給用アダプター47は、針56に接続可能なインク出口65を有するインク補給容器63を識別可能とする識別部の一例である第1凹凸部62を備えている。本実施形態の第1凹凸部62は、入口形成部119の底面から凸部が立設するように設けられている。
【0104】
図24に示すように、各入口形成部119の底面には、針56を挿通可能な挿通孔120が形成されている。挿通孔120の直径は、針56の直径よりも大きく、針56と挿通孔120との間には、隙間が設けられている。そのため、インク補給容器63や針56からインクが漏れた場合には、漏れたインクは挿通孔120と針56との間の隙間を通じて吸収材123に吸収される。
【0105】
図25図26に示すように、インク補給用アダプター47の下面59には、インクタンク41~45に対しインク補給用アダプター47の位置決めを行うアダプター側位置決め部121が設けられている。アダプター側位置決め部121は、インクタンク41~45に設けられたタンク側位置決め部113と係合可能であり、挿通孔120よりも前側の位置に、左右方向に複数(本実施形態ではインクタンク41~45と同数の5つ)並んで設けられている。また、複数のアダプター側位置決め部121の左右方向の間隔は、インクタンク41~45が備えるタンク側位置決め部113の左右方向の間隔と略等しい。
【0106】
さらに、インク補給用アダプター47の下面59には、前後方向に間隔を有して設けられた一対のリブ122が、左右方向に複数組(本実施形態では5組)並んで設けられている。一対のリブ122の前後方向の間隔は、インクタンク41~45の天面111の大きさと略等しい。そして、アダプター側位置決め部121とリブ122は、1つの挿通孔120の左右方向の両側に1つずつ設けられている。具体的には、図26に示すように、挿通孔120の中心を通って前後方向に沿う中心線Aとアダプター側位置決め部121との間隔Bは、中心線Aとリブ122との間隔Cと略等しい。また、アダプター側位置決め部121及びリブ122の角は、面取りされている。
【0107】
図24図25に示すように、インク補給用アダプター47は、複数の入口形成部119と、複数の入口形成部119に対応する第1凹凸部62と、複数のアダプター側位置決め部121と、複数組のリブ122が一体的に形成されている。
【0108】
次に、上記のように構成されたインク補給用アダプター47の作用について説明する。
図27図28に示すように、インク補給用アダプター47の挿通孔120に針56を挿通させるように、インク補給用アダプター47をインクタンク41~45に取り付けると、アダプター側位置決め部121がタンク側位置決め部113と係合する。具体的には、アダプター側位置決め部121は、タンク側位置決め部113の側壁115の間に入り込むことで左右方向に位置決めされる。また、インク補給用アダプター47は、リブ122が前後両側からインクタンク41~45を挟むことにより、前後方向に位置決めされる。そして、インクタンク41~45に対して位置決めされたインク補給用アダプター47は、筐体22にねじ(図示略)により固定される。
【0109】
また、インク補給用アダプター47とインクタンク41~45の天面111との間に設けられる吸収材123は、インクタンク41~45ごとに設けてもよい。また、吸収材123は、インクタンク41~45の天面111から側面112まで延ばして設けてもよい(図27ではインクタンク45に対応する部分だけ図示)。
【0110】
上記第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)~(16)の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(17)インクタンク41~45に対してインク補給用アダプター47が位置決めされるため、インクタンク41~45に設けられた針56とインク補給用アダプター47に設けられた入口形成部119との位置ずれが抑制される。したがって、インク補給用アダプター47を介して、インク補給容器63からインクタンク41~45に対して適切にインクを補給できる。
【0111】
(18)入口形成部119と第1凹凸部62とアダプター側位置決め部121とが一体的に形成されているため、これらを別々に形成する場合に比べてインク補給用アダプター47を容易に製造できる。
【0112】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図29及び図30に示すように、インク補給容器63は、インク出口65の中心軸の方向で凸部71の先端がインク出口65よりも容器本体部64とは反対側に突出していてもよい。この構成によれば、インク補給時において、インク補給容器63ではインク出口65よりも凸部71の方が突出しているため、ユーザーの手やインク補給容器63の周辺部分にインク出口65が触れる虞を低減でき、インクの付着による汚染の発生を抑制できる。
【0113】
図31に示すように、インク補給容器63は、インク出口65の中心軸の方向で弁74よりも容器本体部64側となる位置に、インクタンク41~45へのインク補給時にインクタンク41~45側の一部と当接して弁をインクタンク41~45に対して位置決めする位置決め部73を有しているならば、凸部71はなくてもよい。なお、この場合には、インクタンク41~45側にも凹部61を設けなくてよい。
【0114】
図32に示す変形例のように、インク供給ユニット40は、インク入口53が普段は閉塞される構造であってもよい。すなわち、この変形例のインク供給ユニット40は複数のインク入口53ごとにレバー状のキャップ支持部材90を備えている。キャップ支持部材90の基端部は、インク補給用アダプター47の上面58にインク入口53の中心軸と交差する方向(水平方向)に延びるように設けられた回動軸91に回動自在に支持されている。各キャップ支持部材90の長手方向における中央よりも先端側にはインク入口53に嵌合可能な形状をした弾性キャップ92が設けられ、キャップ支持部材90は、この弾性キャップ92が普段はインク入口53に嵌合した閉塞状態にある。そして、インク補給時には、弾性キャップ92がインク入口53に嵌合して閉塞状態にあるキャップ支持部材90が、その先端の曲折した取手部93に手を掛けたユーザーにより、弾性キャップ92がインク入口53から離間させられる開放状態に傾動される。なお、図32に示すように、複数のキャップ支持部材90の上方を一括して覆うユニットカバー100を更に開閉自在に設けてもよい。また、弾性キャップ92は例えばエラストマー等の弾性材料で形成され、キャップ支持部材90は例えば、ポリスチレンやABS樹脂等からなる、弾性キャップ92より剛性の高い材料で形成される。
【0115】
図33に示す変形例のように、インク補給用アダプター47は、インクタンク41~44に対して移動可能にインク供給ユニット40に取り付けられてもよい。すなわち、インク補給用アダプター47は、筐体22に固定される固定部125と、インクタンク41~44に対して変位可能な変位部126と、固定部125と変位部126とを接続する接続部127とを備えている。なお、接続部127は、変形可能であり、変位部126は、針56が延びる上下方向と交差する方向に変位可能である。そのため、変位部126は、入口形成部119にインク補給容器63が係合した状態で変位し、インク補給容器63と針56とを相対移動させることができる。したがって、インク補給容器63のインク出口65と、針56とを容易に位置合わせさせることができるため、インク漏れの虞を低減できる。
【0116】
図34に示す変形例のように、インク出口65の先端に溝部129を形成してもよい。さらに、インク出口65の先端と位置決め部73との間には、小径部80の外周に沿うように少なくとも1つ(本変形例では2つ)の環状凸部130を形成してもよい。溝部129を設けることにより、インクタンク41~45に対してインクを補給したインク補給容器63を起立させた場合に、インク出口65からインクが垂れる虞を低減できる。さらに、環状凸部130を設けることにより、インク出口65からインクが垂れてしまった場合でも、インクを堰き止めることができる。
【0117】
図35に示す変形例のように、インク出口65の中心を通る直線Dに沿って一対形成された凸部71を複数(本変形例では6つ)の領域Eに分け、領域Eごとに設けられた識別凸部132a~132cにより第2凹凸部72を構成してもよい。なお、本変形例では3種類の識別凸部132a~132cにより第2凹凸部72が構成されている。具体的には、直線Dから凸部71の側面までの長さが長い第1識別凸部132aと、第1識別凸部132aよりも短い第2識別凸部132bと、第2識別凸部132bよりも短い第3識別凸部132cとを任意に組み合わせて第2凹凸部72を構成してもよい。領域Eの数や識別凸部132a~132cの種類を増やすことで、第2凹凸部72のパターンを増やし、インクの量や種類に合わせて対応することができる。
【0118】
図36に示す変形例のように、小径部80は、透明もしくは半透明の材料で形成してもよい。さらに、小径部80の内側の面であって、弁74よりもインク収容室76側の面は、例えばシボ加工などにより凹凸がつけられた粗面80aとしてもよい。粗面80aは、濡れ性が高くインクが残りやすいため、小径部80の外側からインクの色を認識しやすくできる。
【0119】
図36図37に示す変形例のように、キャップ68は、インク補給容器63の取付面134に接触するように取り付けられ、取付状態とされる。さらに、キャップ68は、取付状態において、インク出口65を封止する円環状の封止部135を備えている。封止部135の内面135aは、先端ほど広がるように斜めに形成されている。そして、キャップ68は、取付状態において、内面135aがインク出口65の角136に接触することにより、インク出口65を封止する。そのため、キャップ68が取付面134に対してゆるく係合して取り付けられた状態でも、内面135aと角136との接触によりインク出口65からインクが漏れる虞を低減できる。なお、角136は、異なる方向を向く2つの面が交差する部分であり、湾曲していてもよい。
【0120】
・インク補給用アダプター47は、第1凹凸部62、アダプター側位置決め部121、リブ122のうち、少なくとも1つを別体で形成してもよい。また、前後両側に設けられたリブ122のうち、前側のリブ122を設けない構成としてもよい。後側のリブ122は、少なくとも1つ設けられていればよく、後側のリブ122とアダプター側位置決め部121とによりインク補給用アダプター47を前後方向に位置決めしてもよい。さらに、リブ122を設けない構成としてもよい。
【0121】
・タンク側位置決め部113とアダプター側位置決め部121は、互いに係合してインク補給用アダプター47をインクタンク41~45に位置決めできれば、その形状は任意に変更できる。例えば、タンク側位置決め部113は、針56の周囲に形成された段差部とし、アダプター側位置決め部121は、段差部を囲う凹部や孔としてもよい。タンク側位置決め部113やアダプター側位置決め部121は、針56に近い位置に設けることにより、針56に対する入口形成部119の位置精度を向上できる。
【0122】
・インク補給容器63は、凸部71がインク出口65を中心とする放射方向でインク収容室76が設けられた容器本体部64の外周面よりも外側に突出していてもよい。この構成によれば、ユーザーは、インク補給容器63を見たときに凸部71を視認し易くなり、インク補給時にインク補給容器63の凸部71をインクタンク41~45側の凹部61に対して嵌合させ易くなる。その結果、インクタンク41~45に対するインク補給容器63の誤接続を低減することができる。
【0123】
・そのインクタンク41~45が貯留するインクに関わる情報を示すものとしてインクタンク41~45ごとに設けられる第1部分及びそのインク補給容器63が収容するインクに関わる情報を示すものとしてインク補給容器63ごとに設けられる第2部分は、着色情報による以外に文字情報や形状情報などでもよい。また、この第1部分及び第2部分に関する構成はなくてもよい。
【0124】
・インクタンク41~45側に複数の凹部61が設けられているならば、インク補給容器63側の凸部71は単一の構成でもよい。また、凹部61は複数であるならば、必ずしもインク入口53を中心とする点対称の配置でなくてもよい。
【0125】
・インクタンク41~45側の複数の凹部61は、点対称な位置になるならば、180度点対称の一対の凹部61以外に、120度点対称の3つや、90度点対称の4つなど、他の複数の点対称の配置構成でもよい。
【0126】
・インク補給時に嵌合させる凹部61と凸部71のうち、凸部71を第1嵌合部としてインクタンク41~45側に設け、凹部61を第2嵌合部としてインク補給容器63側に設けてもよい。
【0127】
・インクタンク41~45側の凹部61の深さ方向はインク入口53の中央に位置する針56の延びる方向に沿っているのであれば、必ずしも鉛直下方に向かうものに限らず、鉛直方向と斜めに交差する方向でもよい。但し、インク漏れを抑制するためには水平方向に沿う方向を凹部61の深さ方向とすることは好ましくない。
【0128】
・凹部61の内面の第1凹凸部62は、その先端の高さが凹部61の開口縁の高さ以上であってもよい。
・インクタンク41~45のインク入口53に接続可能なインク出口65を有するインク補給容器63を識別可能とする識別部が別に設けられているならば、凹部61の内面の第1凹凸部62と凸部71の外面の第2凹凸部72は必ずしもなくてよい。
【0129】
・インク入口53の針56が有する2つの流路54,55は、両方の先端開口が同じ高さであってもよく、また、2つ以外の複数の流路構成でもよい。
・インク補給容器63は、凸部71や位置決め部73を、インク出口形成部66に付加される容器付加部67にではなく、インク出口形成部66に直接形成してもよい。すなわち、容器付加部67は、インク出口形成部66に付加される構成ではなく、インク出口形成部66に一体的に形成される構成であってもよい。
【0130】
・インク補給容器63における位置決め部73はインク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる領域ならば、インク出口65を複数の放射方向の外側からでなく1つの放射方向の外側に設けられる構成でもよい。
【0131】
・インク補給容器63のインク出口65の弁は、1つ以上のスリット75ならば、3本に限らず2本や4本など他の複数本のスリット75が設けられたものでもよい。また、スリット75が設けられたスリット弁に限らず、スリット75無しで、針56に下方から押されて開弁方向に変位する構成の弁であってもよい。
【0132】
・インク補給容器63における位置決め部73は、平面形状に限らず、インク補給時にインク補給用アダプター47の上面(受け面)58に当接するものならば、1つ以上の突起形状やリブ形状のものでもよい。
【符号の説明】
【0133】
40…インク供給ユニット、41~45…インクタンク、46…インク供給チューブ、47…インク補給用アダプター、48…段差部、49…インク貯留室、50…視認部、53…インク入口、54,55…流路、56…針(インク入口流路部)、57…残量センサー、58…上面(受け面)、59…下面(タンク係合部)、60…貫通孔、61…凹部(第1嵌合部)、62…第1凹凸部(識別部)、63…インク補給容器、64…容器本体部、65…インク出口、66…インク出口形成部、67…容器付加部、69…雄ねじ部、70…突起、71…凸部(第2嵌合部)、72…第2凹凸部、73…位置決め部、74…弁、75…スリット、76…インク収容室、113…タンク側位置決め部、119…入口形成部、121…アダプター側位置決め部、IK…インク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図37