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特許7533655車両に搭載されたマネージャと、複数のアクチュエータシステムとを備えるシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両に搭載されたマネージャと、複数のアクチュエータシステムとを備えるシステム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20240806BHJP
   B60W 50/06 20060101ALI20240806BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W50/06
B60W60/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023035329
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2022072327の分割
【原出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2023063370
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁真
(72)【発明者】
【氏名】神田 渉
(72)【発明者】
【氏名】板橋 界児
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳久
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】近藤 保
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/098680(WO,A1)
【文献】特開2011-063098(JP,A)
【文献】特開2016-203888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたマネージャと、複数のアクチュエータシステムとを備えるシステムであって、
前記アクチュエータシステムは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記マネージャは、
複数のADASアプリケーションから複数の第1の要求を受け付ける第1受付部と、
前記複数の第1の要求を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、第2の要求を算出する算出部と、
前記第2の要求を前記複数のアクチュエータシステムの前記制御部の少なくとも1つに分配する分配部と、
ドライバーの操作情報を受け付ける第2受付部と、
前記ADASアプリケーションに対し、前記第2受付部が受け付けた前記ドライバーの操作情報を出力する第1出力部とを備える、システム。
【請求項2】
前記ADASアプリケーションに対し、前記調停結果を出力する第2出力部を備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたマネージャと、複数のアクチュエータシステムとを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバ操作に基づくエンジンに対する駆動要求と、運転支援システムからエンジンへの駆動要求とを調停する調停手段を備えた、車両の制御装置が記載されている。特許文献1に記載の調停手段は、ドライバ操作に基づく駆動要求の目標値と、ドライバ操作以外に基づく駆動要求の目標値とを同じ物理量に変換してから調停を行う。調停手段は、物理量を変換する前の目標値を保持している。調停手段は、調停の結果、選択された目標値を元の物理量に逆変換する必要がある場合には、保持している目標値を用いてエンジンの目標制御量を算出することにより、物理量の変換及び逆変換による誤差や有効桁数の減少を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-120352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動運転や自動駐車といった、車両に実装される運転支援システム(運転支援アプリケーション)が増加している。運転支援システムの種類が増えると、一つのアクチュエータに対する駆動要求も増えるため、特許文献1に記載の方法では、調停処理が煩雑となる。
【0005】
それ故に、本発明は、運転支援アプリケーションから出力された駆動要求の調停処理を容易に行うことができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、車両に搭載されたマネージャと、複数のアクチュエータシステムとを備えるシステムであって、アクチュエータシステムは、アクチュエータと、アクチュエータを制御する制御部と、を備え、マネージャは、複数のADASアプリケーションから複数の第1の要求を受け付ける第1受付部と、複数の第1の要求を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて、第2の要求を算出する算出部と、第2の要求を複数のアクチュエータシステムの制御部の少なくとも1つに分配する分配部と、ドライバーの操作情報を受け付ける第2受付部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転支援システムから出力された駆動要求の調停処理を容易に行うことができるシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両制御システムの機能ブロック図
図2】実施形態に係る情報処理装置の詳細な機能ブロック図
図3】実行部から要求調停部へと出力される要求情報のデータセットのフォーマットを示す図
図4】要求調停部から実行部へと出力される結果情報のデータセットのフォーマットを示す図
図5】要求生成部からパワートレイン制御部へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図
図6】要求生成部からステアリング制御部へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図
図7】要求生成部からブレーキ制御部へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図
図8】本実施形態に係る車両制御システムにおける制御処理を説明するためのシーケンス
図9】車両の縦方向の運動制御の一例を説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(概要)
本発明に係る情報処理装置は、複数の運転支援アプリケーションのそれぞれからアクチュエータに対して出力される要求を調停する。情報処理装置は、複数の運転支援アプリケーションから、前後方向の運動制御量(要求加速度)と、横方向の運動制御量(舵角、ヨーレート及び回転半径の少なくとも1つ)との一方または両方を受け付け、受け付けた運動制御量に基づいて調停を行う。予め定められた情報に基づいて、複数の運転支援アプリケーションからの要求の受け付け及び調停を行うことにより、調停処理を容易に行うことができ、運転支援アプリケーションの増加にも容易に対応できる。
【0010】
(実施形態)
<車両制御システムの全体構成>
図1は、実施形態に係る車両制御システムの機能ブロック図である。
【0011】
図1に示す車両制御システムは、複数の実行部1a~1cと、アクセル2と、ブレーキ3と、ステアリング4と、要求調停部5と、要求生成部6~8と、車両運動制御部9と、パワートレイン制御部10と、ブレーキ制御部11と、ステアリング制御部12と、アクチュエータ13a~13dとを備える。
【0012】
実行部1a~1cは、運転支援アプリケーション(以下、単に「アプリケーション」という)を実行することにより、自動運転や自動駐車、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、衝突軽減ブレーキ等の車両の運転支援機能を実現する装置である。実行部1a~1cは、CPU等のプロセッサとメモリとを有するECU等のコンピュータによって実現される。実行部1a~1cは、運転支援機能を実現するアプリケーションと共に運転支援システムの一部を構成する。複数の実行部1a~1cは、それぞれ異なる運転支援機能を実現し、同時に動作可能である。尚、図1においては、説明を簡略化するため、3つの実行部1a~1cを示しているが、運転支援機能を実現する実行部の数は限定されず、2以下または4以上の実行部が車両に実装される場合もある。実行部1a~1cは、アクチュエータ13a~13dの駆動を要求するための要求情報を、後述する要求調停部5に出力する。
【0013】
アクセル2、ブレーキ3及びステアリング4は、それぞれ車両の運動を制御するためにドライバによって操作される入力装置である。ドライバによるアクセル2(アクセルペダル)の操作量は、図示しないアクセルペダルセンサにより検出され、ドライバが要求する加速度(以下、「ドライバ要求加速度」という)を特定するための情報として要求生成部6に出力される。また、ドライバによるブレーキ3(ブレーキペダル)の操作量は、図示しないブレーキペダルセンサにより検出され、ドライバ要求加速度を特定するための情報として要求生成部7に出力される。尚、ブレーキ3の操作により入力されるドライバ要求加速度は、車両に制動力を発生させる負の加速度である(ただし、車両の進行方向の加速度を正の加速度とする)。また、ドライバによるステアリング4(ステアリングホイール)の操作量は、図示しない操舵センサにより検出され、ドライバが要求する車両の横方向
への操舵量(以下、「ドライバ要求横制御量」という)を特定する情報として要求生成部8に出力される。アクセル2またはブレーキ3の操作により入力されるドライバ要求加速度及びステアリング4の操作により入力されるドライバ要求横制御量は、後述する要求調停部5にも出力され、要求調停部5を介してアプリケーションに通知可能である。
【0014】
要求調停部5は、実行部1a~1cの各アプリケーションから送信される要求情報を受け付け、受け付けた要求情報を調停する。要求調停部5がアプリケーションから受け付ける要求情報は、車両の前後方向の運動を制御するための情報と、車両の横方向の運動を制御するための情報とを含む。尚、本明細書において、車両の前後方向を「縦方向」という場合がある。車両の前後方向の運動を制御するための情報は、少なくとも、アプリケーションが要求する加速度(以下、「要求加速度」という)を含む。また、車両の横方向の運動を制御するための情報は、舵角、ヨーレート及び回転半径の少なくとも1つ(以下、「横制御量」という)を含む。尚、要求調停部5がアプリケーションから受け付ける要求情報の詳細については後述する。
【0015】
要求調停部5は、調停処理として、例えば、所定の選択基準に基づいて、受け付けた複数の要求情報の中から1つの要求情報を選択したり、受け付けた複数の要求情報に基づいて制御の許容範囲を設定したりする。また、要求調停部5は、調停結果を含む結果情報を生成し、生成した結果情報を実行部1a~1cに送信する。また、要求調停部5は、車両に搭載される各種センサの出力値や後述するパワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12から通知されるアクチュエータ13a~13dの動作状態やアベイラビリティを表す情報に基づいて、現在の車両の運動制御の状態を表す情報や車両が現在実現可能な運動制御を表す情報、ドライバの操作量を表す情報等を生成し、生成した各種情報を実行部1a~1cに送信可能である。尚、要求調停部5の構成及び調停処理の詳細は後述する。
【0016】
また、要求調停部5は、調停により選択した要求情報に含まれる、アプリケーションによって指示された車両の制御量を、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12に配分することができる。例えば、車両の制動力は、パワートレイン及びブレーキ装置の両方で発生させることが可能である。要求調停部5は、アプリケーションによって要求される制動力を、要求される応答性やアクチュエータ13a~13cのアベイラビリティ等に応じて、パワートレインとブレーキ装置に配分することができる。また、車両の横方向の運動は、ステアリング装置の他に、各車輪のブレーキ装置を個別に制御することによっても実現できる。要求調停部5は、アプリケーションによって要求される横制御量を、要求される応答性やアクチュエータ13c及び13dのアベイラビリティ等に応じて、ブレーキ装置とステアリング装置とに配分することも可能である。
【0017】
要求生成部6は、アクセル2から出力されるドライバ要求加速度と要求調停部5により調停された要求情報とに基づいて、パワートレインを構成するアクチュエータ13a及び13bに駆動力を発生させるための指示情報を生成する。要求生成部6は、生成した指示情報をパワートレイン制御部10に出力する。要求生成部6には、アクセル2と要求調停部5の両方から要求が入力される場合がある。例えば、アダプティブクルーズコントロールによる制御中に、ドライバがアクセル2を操作することが考えられる。要求生成部6は、アクセル2と要求調停部5のそれぞれからの要求をパワートレイン制御部10に出力する。
【0018】
要求生成部7は、ブレーキ3から出力されるドライバ要求加速度と要求調停部5により調停された要求情報とに基づいて、ブレーキ装置を構成するアクチュエータ13cに制動力を発生させるための指示情報を生成する。要求生成部7は、生成した指示情報をブレーキ制御部11に出力する。要求生成部7には、ブレーキ3と要求調停部5の両方から要求
が入力される場合がある。例えば、自動運転中や自動駐車中にドライバが危険回避等のために、意図的にブレーキ3を操作することが考えられる。要求生成部7は、ドライバからの要求と要求調停部5からの要求とが同時に入力された場合、予め用意された選択基準に基づいていずれか一方の要求を選択する。ドライバからの要求と要求調停部5からの要求との一方を選択するための選択基準は、ドライバから要求される制御量の大きさや符号、アプリケーションのそれぞれに設定された優先度等に基づいて適宜設定することができる。要求生成部7は、ブレーキ3と要求調停部5のそれぞれからの要求をブレーキ制御部11に出力する。
【0019】
要求生成部8は、ステアリング4から出力されるドライバ要求横制御量と要求調停部5により調停された要求情報とに基づいて、ステアリング装置を構成するアクチュエータ13dに車両の横方向の運動を発生させるための指示情報を生成する。要求生成部8は、生成した指示情報をステアリング制御部12に出力する。要求生成部8には、ステアリング4と要求調停部5の両方から駆動要求が入力される場合がある。例えば、レーンキープアシストによる制御中に、ドライバが危険回避等のために、意図的にステアリング4を操作して車両を横移動または旋回させることが考えられる。要求生成部8は、ドライバからの駆動要求と要求調停部5からの駆動要求とが同時に入力された場合、予め用意された選択基準に基づいていずれか1つの駆動要求を選択する。ドライバからの要求と要求調停部5からの要求との一方を選択するための選択基準は、ドライバから要求される制御量の大きさや符号、アプリケーションのそれぞれに設定された優先度等に基づいて適宜設定することができる。要求生成部8は、ドライバからの駆動要求と要求調停部5からの駆動要求のいずれかを選択した場合、選択結果を要求調停部5に通知する。
【0020】
車両運動制御部9は、要求調停部5を介することなく、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12に直接指示してアクチュエータ13a~13dを制御することにより、車両の走行安定性を統合的かつ自律的に制御する。車両運動制御部9が行う制御としては、パワートレインの出力や車両の制動力を調整することによりタイヤの空転や車両の横滑りを抑制する制御、急ブレーキ時におけるタイヤのロックを防止する制御、ブレーキの踏み込み量及び踏み込み速度から緊急ブレーキであることを検出して大きい制動力を発生させる制御等を例示できる。車両運動制御部9が行う車両安定化制御は、車両の走行安定性が損なわれると即座に行う必要があるので、ドライバからの要求及び実行部1a~1cからの要求とは独立かつ優先的に実行される。車両運動制御部9は、車両安定化制御の実行中に、車両安定化制御を実行中であることを要求調停部5に通知する。また、車両運動制御部9は、車両安定化制御の実行中に、アクチュエータ13a~13dが現在実現可能な運動制御(アベイラビリティ)に関する情報を要求調停部5に通知する。このアベイラビリティに関する情報は、要求調停部5から実行部1a~1cへと通知される。車両運動制御部9による車両安定化制御の実行中は、実行部1a~1cからの要求をアクチュエータ13a~13dが実現できない場合がある。車両運動制御部9がアベイラビリティに関する情報を、要求調停部5を介して実行部1a~1cに通知することにより、運転支援アプリケーションにおいて、実行中の処理を修正することができる。
【0021】
パワートレイン制御部10は、パワートレイン(ドライブトレインと呼ばれる場合もある)を構成するアクチュエータ13a及び13bの動作を制御することにより、要求生成部6または車両運動制御部9から要求された駆動力を発生させる。パワートレイン制御部10は、パワートレインの構成に応じて、例えば、エンジン制御ECU、ハイブリッド制御ECU、トランスミッションECU等のいずれかまたは組み合わせにより実現される。図1においては、説明の簡略化のために、パワートレイン制御部10の制御対象として、2つのアクチュエータ13a及び13bを示しているが、パワートレイン制御部10が制御するアクチュエータの数は、車両のパワートレインの構成に応じて1つまたは3つ以上
の場合もある。パワートレインを構成するアクチュエータ13a及び13bの例としては、エンジン、駆動用モータ、クラッチ、トランスミッション、トルクコンバータ等が挙げられる。また、パワートレイン制御部10は、アクチュエータ13a及び13bから出力された信号またはセンサによる測定値に基づいて、アクチュエータ13a及び13bの動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータの動作状態に関する情報の例としては、アクチュエータのアベイラビリティを表す情報(アクチュエータが故障しているか否かを表す情報、アクチュエータの故障の程度を表す情報)や、アクチュエータが実現している駆動力のモニター値を表す情報等が挙げられる。パワートレイン制御部10は、取得したアクチュエータ13a及び13bの動作状態に関する情報を要求調停部5に通知する。
【0022】
ブレーキ制御部11は、各車輪に設けられたブレーキ装置を動作させるアクチュエータ13cを制御することにより、要求生成部7または車両運動制御部9から要求された制動力を発生させる。ブレーキ制御部11には、各車輪に設けられた車輪速センサの出力値がジカ線により入力される。また、ブレーキ制御部11は、アクチュエータ13cから出力される信号またはセンサによる測定値に基づいて、アクチュエータ13cの動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータ13cの動作状態に関する情報としては、上述したアベイラビリティを表す情報や、アクチュエータ13cが実現している制動力のモニター値を表す情報の他に、ブレーキパッドの温度が過熱方向に遷移しているか否か等のアクチュエータ13cに固有の情報を例示できる。ブレーキ制御部11は、取得したアクチュエータ13cの動作状態に関する情報を要求調停部5に通知する。
【0023】
ステアリング制御部12は、電動パワーステアリング(EPS)が備えるアクチュエータ13dを制御することにより、舵角、すなわち、ラック&ピニオン機構を介して接続されたタイヤの向きを制御する。ステアリング制御部12は、例えば、パワーステアリング制御ECUにより実現される。また、ステアリング制御部12は、アクチュエータ13dから出力される信号またはセンサによる測定値に基づいて、アクチュエータ13dの動作状態に関する情報を取得する。アクチュエータ13dの動作状態に関する情報の例としては、上述したアベイラビリティを表す情報や、アクチュエータ13dが実現しているピニオン角(舵角)またはヨーレートまたは回転半径のモニター値を表す情報等が挙げられる。ステアリング制御部12は、取得したアクチュエータ13dの動作状態に関する情報を要求調停部5に通知する。
【0024】
パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12には、要求生成部6~8のいずれかからの駆動要求と、車両運動制御部9からの駆動要求とが同時に入力される場合がある。例えば、パワートレイン制御部10がドライバ要求駆動力を発生させている場合に、車輪の横滑りが検出されると、車両運動制御部9は、車両の横滑りを抑制するために、各車輪のブレーキ装置に発生させる制動力と、エンジンまたは駆動用モータの出力とを制御する。この場合、車両運動制御部9による横滑り抑制を実現するために、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12は、車両運動制御部9からの指示を優先させてアクチュエータ13a~13dを制御する。
【0025】
<情報処理装置の構成>
図2は、実施形態に係る情報処理装置20の詳細な機能ブロック図である。図1及び2を併せて参照しながら、情報処理装置20の構成を説明する。
【0026】
本実形態に係る情報処理装置20は、上述した要求調停部5と、要求生成部6~8と、車両運動制御部9とを含む。情報処理装置20は、車両の運動を管理する車両運動マネージャーとしての機能を有する。本実施形態においては、情報処理装置20は、ブレーキ制御部11と同一のECU(ブレーキECU)に設けられており、ECU内の配線を介してブレーキ制御部11と信号を送受信可能である。また、情報処理装置20は、実行部1a
~1c、パワートレイン制御部10及びステアリング制御部12と、CAN等の車載ネットワークを介して通信可能に接続されている。本実施形態のように、情報処理装置20及びブレーキ制御部11を同一のECUに設ける場合、情報処理装置20からブレーキ制御部11への送信信号は、車載ネットワーク上に流れない。ただし、情報処理装置20及びブレーキ制御部11を同一のECUに設けることは必須ではなく、情報処理装置20及びブレーキ制御部11をそれぞれ別のECUに設け、両者を車載ネットワークを介して通信可能に接続しても良い。尚、本実施形態のように、情報処理装置20及びブレーキ制御部11を同一のECUに設けることの利点については後述する。
【0027】
図2に示すように、要求調停部5は、受付部21と、調停部22と、情報取得部23と、調停結果出力部24とを備える。
【0028】
受付部21は、実行部1a~1cのそれぞれにおいて実行されるアプリケーションからアクチュエータ13a~13dに対する要求情報を受け付ける。要求情報は、所定フォーマットのデータセットとして、例えば一定時間毎に、車載ネットワークに送信される。この所定フォーマットのデータセットには、アプリケーションが要求する車両の運動(縦方向の運動及び/または横方向の運動)を表す情報が含まれる。受付部21は、実行部1a~1cから送信されたデータフレームを受信し、要求情報を含むデータセットを取得する。実行部1a~1cのそれぞれから受付部21に送信されるデータセットは、車両の前後方向の運動を表す情報と車両の横方向の運動を表す情報の両方を含んでいても良いし、いずれか一方のみを含んでいても良い。受付部21が実行部1a~1cから受信するデータセットの詳細については後述する。
【0029】
調停部22は、受付部21が受け付けた複数のデータセットに基づき、要求情報を調停する。調停部22は、受け付けたデータセットに含まれる車両の前後方向の運動を表す情報と、受け付けたデータセットに含まれる車両の横方向の運動を表す情報とのそれぞれについて調停を行う。上述したように、受付部21が受信したデータセットには、車両の前後方向の運動を表す情報として、加速度が含まれている。調停部22は、車両の前後方向の運動に関する要求情報の調停を、受信した複数のデータセットに含まれる加速度の大小を比較することにより行う。また、受付部21が受信したデータセットには、車両の横方向の運動を表す情報として、舵角、ヨーレート及び回転半径のいずれか(横制御量)が含まれている。調停部22は、車両の横方向の運動に関する要求情報の調停を、受信した複数のデータセットに含まれる横制御量の大小を比較することにより行う。尚、調停部22による調停処理の詳細については後述する。
【0030】
情報取得部23は、現在の車両の運動制御状態やドライバによる車両の操作状態等に関する種々の情報を取得する。例えば、情報取得部23は、アクセル2、ブレーキ3及びステアリング4から、操作の有無、ドライバが要求する加速度、ドライバが要求する操舵量等を取得することができる。また、情報取得部23は、車両運動制御部9から、車両安定化制御が実行中であるか否かの情報や、車両安定化制御実行中におけるアクチュエータ13a~13dのアベイラビリティ等を取得することができる。また、情報取得部23は、パワートレイン制御部10から、パワートレインを構成するアクチュエータ13a及び13bの動作状態に関する情報や、パワートレイン制御部10において採用された要求加速度等を取得することができる。また、情報取得部23は、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12から、ブレーキ装置を構成するアクチュエータ13cの動作状態に関する情報やステアリング装置を構成するアクチュエータ13dの動作状態に関する情報を取得することができる。また、情報取得部23は、車両に搭載された各種センサの出力データに基づいて、加速度や車速、車輪速等を取得することができる。
【0031】
調停結果出力部24は、調停部22による調停結果を反映した結果情報を実行部1a~
1cに送信する。結果情報は、パワートレイン制御部10において選択された加速度と、調停部22が調停処理で選択した車両の横制御量(舵角、ヨーレート及び回転半径のいずれか)とを含む。尚、調停結果出力部24が生成及び出力する結果情報のデータセットの詳細については後述するが、結果情報のデータセットは、選択加速度及び選択横制御量の他にも、アプリケーションが制御を行うために有用な情報として、現在の車両の運動制御状態や、現在実現可能な車両の運動制御(アベイラビリティ)、ドライバによる操作状態、実行部1a~1c及び要求調停部5の通信状態等を含んでいても良い。結果情報のデータセットが、現在の車両の運動制御状態や、現在実現可能な車両の運動制御と、ドライバによる操作状態、通信状態等の情報を含む場合、実行部1a~1cで実行されるアプリケーションは、結果情報から車両の状態やドライバ要求等を取得することができる。
【0032】
要求生成部6~8は、調停部22によって選択された要求加速度と横制御量とに基づいて、アクチュエータ13a~13dのそれぞれを駆動するための指示情報を生成し、生成した指示情報を、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12に送信する。要求生成部6及び7は、調停部22によって選択された要求加速度及びドライバ要求加速度を、パワートレイン及びブレーキ装置の出力の物理量である力に変換する機能を有する。要求生成部6及び7は、変換後の力を含む指示情報のデータセットを生成する。尚、要求生成部6~8のそれぞれが生成及び出力する指示情報のデータセットの詳細については後述する。
【0033】
尚、本実施形態の情報処理装置20の構成において、要求生成部6~8が、調停部22による調停結果に基づいて、アクチュエータ13a~13dに対する指示情報を出力する第1の出力部に相当し、調停結果出力部24が、調停部22による調停結果を含む結果情報を複数の実行部1a~1cに出力する第2の出力部に相当する。
【0034】
本実施形態に係る情報処理装置20においては、情報取得部23が取得した各種情報が、調停結果出力部24によって、実行部1a~1cで実行されるアプリケーションにフィードバックされる。アプリケーションは、調停結果出力部24から取得した結果情報に基づいて、運転支援機能を提供するための制御処理の実行状況をモニターすることができ、必要に応じての制御処理の変更や中止を行うことができる。要求調停部5に設けられた情報取得部23が各種情報を集約し、調停結果出力部24が必要とされる情報を実行部1a~1cにフィードバックすることにより、情報処理装置20と実行部1a~1cとの間の通信量の増加を抑制することができる。
【0035】
ここで、情報処理装置20及びブレーキ制御部11を同一のECUに設けることの利点について説明する。
【0036】
本実施形態に係る情報処理装置20は、複数の実行部1a~1cから同じフォーマットの要求情報を受け付けるため、新たな運転支援アプリケーションを実行する実行部が追加される場合でも、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12の制御処理を変更する必要がなくなるという利点がある。このような情報処理装置20は、独立したECUとして設けても良いが、既存のECUに実装することによってコストを抑制できるという利点がある。ここで、ブレーキを制御するためのブレーキECUは、どの種類の車両にも搭載されている。したがって、情報処理装置20とブレーキ制御部11とを同一のブレーキECUに実装すれば、どの種類の車両にも、複数のアプリケーションからの要求を調停するための情報処理装置20の機能を付与することができる。
【0037】
車両の種類にかかわらず車両に搭載されているECUとしては、パワートレインを制御するECUやステアリングを制御するECUもあるが、ECU間の通信が途絶した場合、ステアリングを制御するECUは、単独で制動力を発生させることができない。また、パ
ワートレインを制御するECUは、トランスミッションや回生により制動力を発生させることができるが、摩擦ブレーキを使用できないため、発生できる制動力には限界がある。したがって、故障発生時の安全性確保の観点から、既存のECUの中でも、情報処理装置20をブレーキECUに設けることがより好ましい。
【0038】
また、自動運転中等にECU間の通信途絶等の故障が発生した場合、安全を確保するために行うべき制御が車両の速度に応じて異なる。例えば、故障発生時の車速が3km/h以下の場合には、即座にブレーキをかけて車両を停止させることが好ましいのに対して、故障発生時の車速が50km/hの場合には、急ブレーキをかけることは危険であり、徐々に減速してから車両を停止させることが求められる。車速を信頼性高く検出するためには、車輪速センサが不可欠であるが、ブレーキECUには、ブレーキの制御のために、ジカ線で車輪速センサの測定値が入力される。したがって、故障発生時等に、車速に応じて安全状態に遷移させるための制御を行う観点でも、情報処理装置20をブレーキECUに設けることが望ましい。ブレーキECUには、四輪それぞれの車輪速センサの測定値が信号線を通じて直接入力される。したがって、仮にいずれかの車輪速センサが故障した場合でも、残りの車輪速センサの測定値に基づいて車速を推定し、車速に応じたブレーキ制御を行うことが可能である。
【0039】
<要求情報のデータセット>
図3は、実行部から要求調停部へと出力される要求情報のデータセットのフォーマットを示す図である。以下、図1及び3を併せて参照しながら、要求情報のデータセットの詳細を説明する。
【0040】
図3に示すフォーマットは、実行部1a~1cで実行されるアプリケーションが、アクチュエータ13a~13dの駆動を要求するために、要求調停部5の受付部21へと出力する要求情報のデータセットを表す。要求情報のデータセットは、車両の前後方向の運動を表す複数のデータ項目(縦方向インタフェース(IF)パッケージ)と、車両の横方向の運動を表す複数のデータ項目(横方向インタフェース(IF)パッケージ)と、その他の車両の運動に関する複数のデータ項目とを含む。
【0041】
また、本実施形態では、車両の前後方向の運動を表す複数のデータ項目には、下限値を表す複数のデータ項目(縦方向IFパッケージ(下限側))と、上限値を表す複数のデータ項目(縦方向IFパッケージ(上限側))とが含まれる。実行部1a~1cが出力するデータセットに、上限値を表すデータ項目と、下限値を表すデータ項目とを設けることにより、車両の前後方向の運動制御を範囲で設定することができる。尚、図3に示すデータセットは、CAN等の車載ネットワークを介して実行部1a~1cから情報処理装置20の要求調停部5に送信される。以下、各データ項目について説明する。
【0042】
[1-1.縦方向IFパッケージ(下限側)]
要求縦ID(下限)は、アプリケーションの識別子を指定するためのデータ項目である。要求縦ID(下限)には、後述する要求加速度(下限)に値をセットするアプリケーションの識別子がセットされる。
【0043】
要求加速度(下限)は、アプリケーションが要求する加速度の下限値を指定するためのデータ項目である。要求加速度(下限)は、アプリケーションが車両に最低限発生させたい加速度を意味する。
【0044】
ブレーキ許可フラグ(下限)は、要求加速度(下限)を達成するためにブレーキの使用を許可するか否かを指定するためのデータ項目である。ブレーキ許可フラグ(下限)には、「許可」を表す値または「不許可」を表す値のいずれかをセットすることができる。
【0045】
変速優先要求(下限)は、要求加速度(下限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように行うかを指定するためのデータ項目である。変速優先要求(下限)には、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかをセットすることができる。ここで、「成り行き」の変速制御とは、要求加速度(下限)を達成するために、予め用意された駆動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、要求加速度(下限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、要求加速度(下限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0046】
応答性要求(下限)は、要求加速度(下限)を達成するためのフィードバック制御の強弱(応答性)を指定するためのデータ項目である。
【0047】
アクセルオーバライド禁止フラグは、ドライバによるアクセルペダル操作を無効にするか否かを指定するためのデータ項目である。アプリケーションは、アクセルオーバライド禁止フラグに、「無効」を表す値または「有効」を表す値のいずれかをセットすることができる。
【0048】
[1-2.縦方向IFパッケージ(上限側)]
要求縦ID(上限)は、アプリケーションの識別子を指定するためのデータ項目である。要求縦ID(上限)には、後述する要求加速度(上限)に値をセットするアプリケーションの識別子がセットされる。
【0049】
要求加速度(上限)は、アプリケーションが要求する加速度の上限値を指定するためのデータ項目である。要求加速度(上限)は、アプリケーションが車両に許容する最大限の加速度を意味する。
【0050】
ブレーキ許可フラグ(上限)は、要求加速度(上限)を達成するためにブレーキの使用を許可するか否かを指定するためのデータ項目である。ブレーキ許可フラグ(上限)には、「許可」を表す値または「不許可」を表す値のいずれかをセットすることができる。
【0051】
変速優先要求(上限)は、要求加速度(上限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように行うかを指定するためのデータ項目である。変速優先要求(上限)には、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかをセットすることができる。ここで、「成り行き」の変速制御とは、要求加速度(上限)を達成するために、予め用意された駆動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、要求加速度(上限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、要求加速度(上限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0052】
応答性要求(上限)は、要求加速度(上限)を達成するためのフィードバック制御の強弱(応答性)を指定するためのデータ項目である。
【0053】
[1-3.横方向IFパッケージ]
要求横IDは、アプリケーションの識別子を指定するためのデータ項目である。要求横IDには、後述する要求舵角/ヨーレート/回転半径に値をセットするアプリケーションの識別子がセットされる。
【0054】
要求舵角/ヨーレート/回転半径は、アプリケーションが要求する横方向の運動の制御量を指定するためのデータ項目である。要求舵角/ヨーレート/回転半径には、要求舵角
、要求ヨーレート及び要求回転半径のいずれかをセットすることができる。要求舵角は、アプリケーションが算出した車両の横運動を達成するために必要なタイヤの切れ角である。また、要求ヨーレートは、アプリケーションが算出した車両の横運動を達成するために必要なヨー角の変化速度である。また、要求回転半径は、アプリケーションが算出した車両の横運動を達成するために必要な車両の回転半径である。アプリケーションにおいて、車両の横制御量として、要求舵角、要求ヨーレート及び要求回転半径のいずれを使用するかは、車両の仕様に応じて適宜決定することができるが、要求調停部による調停処理を容易に行うことができるように、車両全体で使用する横制御量を統一する。
【0055】
舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグは、上記の要求舵角/ヨーレート/回転半径のデータ項目にセットされている情報の種類を指定するためのデータ項目である。舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグを用いて、要求舵角/ヨーレート/回転半径のデータ項目にセットされている情報の種類を指定可能とすることにより、データ項目の数を増やすことなく、使用する情報の種類を車両の使用等に応じて柔軟に変更することができる。
【0056】
ドライバ操舵フラグは、ドライバが操舵しているか否かを指定するためのデータ項目である。アプリケーションは、ドライバ操舵フラグに、「ドライバが操舵している」ことを表す値、または、「ドライバが操舵していない」ことを表す値のいずれかをセットすることができる。尚、アプリケーションは、ドライバが操舵しているか否かの情報を、ステアリングに設けたセンサやの出力値やカメラで撮像したドライバの画像に基づいて取得しても良い。
【0057】
応答性要求は、要求舵角/ヨーレート/回転半径を達成するためのフィードバック制御の強弱(応答性)を指定するためのデータ項目である。
【0058】
[1-4.その他のデータ項目]
要求シフトレンジは、アプリケーションが要求するシフトレンジを指定するためのデータ項目である。要求シフトレンジには、「D(ドライブ)」、「N(ニュートラル)」、「R(リバース)」、「P(パーキング)」、「M(マニュアル)」、「S(スポーツドライブ)」等を指定する値のいずれかをセットすることができる。
【0059】
シフトオーバライド禁止フラグは、ドライバによるシフト操作を無効にするか否かを指定するためのデータ項目である。シフトオーバライド禁止フラグには、「無効」を指定する値または「有効」を指定する値のいずれかをセットすることができる。
【0060】
<結果情報のデータセット>
図4は、要求調停部5から実行部1a~1cへと出力される結果情報のデータセットのフォーマットを示す図である。以下、図1及び4を併せて参照しながら、結果情報のデータセットの詳細を説明する。
【0061】
図4に示すフォーマットは、要求調停部5の調停結果出力部24が実行部1a~1cへと出力する結果情報のデータセットを表す。結果情報のデータセットは、調停後の結果を表す複数のデータ項目と、現在の車両の運動制御状態を表す複数のデータ項目と、現在実現可能な車両の運動制御を表す複数のデータ項目と、ドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作状態を表す複数のデータ項目とを含む。尚、図4に示すデータセットは、CAN等の車載ネットワークを介して、情報処理装置20の要求調停部から実行部1a~1cに送信される。以下、各データ項目について説明する。
【0062】
[2-1.調停後の結果を表すデータ項目]
調停結果_横IDは、要求調停部5により選択された横制御量(要求舵角、要求ヨーレ
ート及び要求回転半径のいずれか)を要求したアプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目である。アプリケーションは、調停結果_横IDに設定された識別IDと自身の識別IDとの比較に基づいて、自身が要求した横制御量が採用されたか否かを判定することができる。
【0063】
選択要求舵角/ヨーレート/回転半径は、要求調停部5により選択された横制御量(要求舵角、要求ヨーレート及び要求回転半径のいずれか)をセットするためのデータ項目である。
【0064】
舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグは、選択要求舵角/ヨーレート/回転半径のデータ項目にセットされている情報の種類を指定するためのデータ項目である。
【0065】
調停結果_縦IDは、パワートレイン制御部10において採用された加速度の要求元の識別子をセットするためのデータ項目である。パワートレイン制御部10には、要求調停部5での調停により選択された縦方向の要求加速度を含む指示情報と、アクセルペダル操作に基づくドライバ要求加速度とが入力される。パワートレイン制御部10は、受信した指示情報に含まれる要求加速度とドライバ要求加速度との比較に基づき、いずれか1つの加速度を選択し、選択した加速度に基づいてアクチュエータ13a及び13bを駆動する。パワートレイン制御部10において、アプリケーションからの要求加速度が選択された場合、調停結果_縦IDには、要求加速度の出力元のアプリケーションの識別子がセットされる。一方、パワートレイン制御部10において、ドライバ要求加速度が選択された場合、調停結果_縦IDには、ドライバ要求であることを判別可能な値がセットされる。各アプリケーションは、調停結果_縦IDに設定された識別IDと自身の識別IDとの比較に基づいて、自身が出力した縦方向の要求加速度が採用されたか否かを判定することができる。
【0066】
選択加速度は、パワートレイン制御部10において採用された加速度をセットするためのデータ項目である。
【0067】
尚、調停結果_縦ID及び選択加速度は、パワートレイン制御部10から要求調停部5(図2の情報取得部23)に通知される情報に基づいてセットすることができる。
【0068】
[2-2.現在の車両の運動制御状態を表すデータ項目]
推定車体加速度は、車両に搭載されるセンサの出力値から推定される車体の加速度をセットするためのデータ項目である。推定車載加速度は、加速度センサまたは車輪速センサの出力に基づいて算出することができる。
【0069】
推定車体加速度無効フラグは、推定車体加速度が無効な値であるか否かを表すフラグをセットするためのデータ項目である。車両に搭載される加速度センサの出力値が故障等により無効である場合、または、各車輪に搭載される車輪速センサの1以上の出力値が故障等により無効である場合、推定車体加速度無効フラグには、推定車体加速度が「無効」であることを表す値が設定される。一方、車両に搭載される加速度センサ及び各車輪に搭載される車輪速センサの全ての出力値が無効でない場合、推定車体加速度無効フラグには、推定車体加速度が「無効でない」ことを表す値が設定される。
【0070】
現在シフトレンジは、現在選択されているシフトレンジをセットするためのデータ項目である。現在シフトレンジには、「D(ドライブ)」、「N(ニュートラル)」、「R(リバース)」、「P(パーキング)」、「M(マニュアル)」、「S(スポーツドライブ)」等を指定する値のいずれかをセットすることができる。現在シフトレンジにセットする値は、パワートレイン制御部10がシフトを制御するアクチュエータから取得すること
ができる。
【0071】
ブレーキ制御実行中フラグは、ブレーキ制御が実行中であるか否かを表すフラグをセットするためのデータ項目である。ブレーキ制御実行中フラグには、ブレーキ制御が「実行中」であることを表す値、または、ブレーキ制御が「実行されていない」ことを表す値のいずれかをセットすることができる。ブレーキ実行中フラグは、ブレーキ制御部(ブレーキ制御ECU)から取得するブレーキの動作状態を表す情報に基づいて設定することができる。
【0072】
停止保持状態は、ブレーキで停車した後、所定条件を満たすまでブレーキによる制動状態を維持する制御(ブレーキホールド制御)の作動状態または異常状態をセットするためのデータ項目である。停止保持状態には、ブレーキホールド制御が「作動中」であることを表す値、ブレーキホールド制御が「作動していない」ことを表す値、ブレーキホールド制御に発生した「異常状態」を表す値を設定可能である。停止保持状態は、ブレーキ制御部11から取得するブレーキの動作状態を表す情報に基づいて設定することができる。
【0073】
[2-3.現在実現可能な車両の運動制御を表すデータ項目]
車速制限中フラグは、現在車両が実現可能な車速に制限があるか否かを表す情報をセットするためのデータ項目である。アクチュエータ13a~13dのいずれかが故障した場合、故障したアクチュエータまたはこれを制御する制御部(ECU)から故障状態に関する情報が出力される。車速制限中フラグは、アクチュエータの故障状態に関する情報に基づいて、車速の制限が「要求されている」ことを表す情報、または、車速の制限が「要求されていない」ことを表す情報のいずれかがセットされる。
【0074】
車両制限車速は、車速の制限が要求されている場合における車速の上限値をセットするためのデータ項目である。車両制限車速には、故障したアクチュエータまたはこれを制御する制御部(ECU)から出力された故障状態に関する情報に基づいて算出した値がセットされる。車両制限車速は、故障状態に関する情報に基づいて要求調停部5において算出しても良いし、想定される故障状態に対応して予め定めておいても良い。
【0075】
制動系支援レベルは、ブレーキ制御に関連する機能の使用可否や機能制限を表す情報をセットするためのデータ項目である。制動系支援レベルにセットする情報は、ブレーキ装置を構成するアクチュエータ13cまたはこれを制御するブレーキ制御部11から出力された故障状態に関する情報に基づいて、要求調停部5において生成しても良い。
【0076】
駆動系支援レベルは、パワートレイン制御に関連する機能の使用可否や機能制限を表す情報をセットするためのデータ項目である。駆動系支援レベルにセットする情報は、パワートレインを構成するアクチュエータ13a及び13b、または、これらを制御するパワートレイン制御部10から出力された、アクチュエータ13a及び13bの状態を表する情報(高温等の一時的な状態異常や故障などを表す情報)に基づいて、要求調停部5において生成しても良い。
【0077】
横制御系支援レベルは、車両の横方向の運動制御に関連する機能の使用可否や機能制限を表す情報をセットするためのデータ項目である。車両の横方向の運動は、ステアリング装置を用いて制御する他に、各車輪に発生させる制動力を個別に調整することによっても制御することが可能である。そこで、横制御系支援レベルには、ステアリング装置及びブレーキ装置に関する複合的な情報がセットされる。横制御系支援レベルにセットする情報は、ステアリング装置を構成するアクチュエータ13d、ステアリング制御部12、ブレーキ装置を構成するアクチュエータ13c、ブレーキ制御部11から出力された故障状態に関する情報に基づいて、要求調停部5において生成しても良い。
【0078】
全閉推定対地加速度は、アクセルを全閉した時にパワートレインが出力可能な加速度の推定値をセットするためのデータ項目である。全閉推定対地加速度は、パワートレイン制御部10から要求調停部5に通知される情報に基づいてセットすることができる。
【0079】
全開推定対地加速度は、アクセルを全開した時にパワートレインが出力可能な加速度の推定値をセットするためのデータ項目である。全閉推定対地加速度は、パワートレイン制御部10から要求調停部5に通知される情報に基づいてセットすることができる。
【0080】
[2-4.ドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作状態を表すデータ項目]
アクセルペダルドライバ要求加速度は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量に基づいて算出される要求加速度をセットするためのデータ項目である。アクセルペダルドライバ要求加速度は、パワートレイン制御部10から要求調停部5に通知される情報に基づいてセットすることができる。
【0081】
ブレーキペダルドライバ要求加速度は、ドライバによるブレーキペダルの踏み込み量に基づいて算出される要求加速度をセットするためのデータ項目である。ブレーキペダルドライバ要求加速度にセットされる要求加速度は、運転支援アプリケーションの自動ブレーキ機能によって要求される加速度を含まない値である。ブレーキペダルドライバ要求加速度は、ブレーキ制御部11から要求調停部5に通知される情報に基づいてセットすることができる。
【0082】
<指示情報のデータセット(パワートレイン制御部用)>
図5は、要求生成部6からパワートレイン制御部10へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図である。以下、図1及び5を併せて参照しながら、パワートレイン制御部用の指示情報のデータセットの詳細を説明する。
【0083】
図5に示すフォーマットは、情報処理装置20の要求生成部6がパワートレイン制御部10へと出力する指示情報のデータセットを表す。パワートレイン制御部用のデータセットは、要求生成部6が生成し、CAN等の車載ネットワークを介してパワートレイン制御部10に送信する。以下、各データ項目について説明する。
【0084】
目標駆動力(上限)は、アプリケーションの要求加速度(上限)を達成するために必要な目標駆動力を指定するためのデータ項目である。目標駆動力(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)を駆動力に変換した値がセットされる。
【0085】
目標縦ID(上限)は、アプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目である。目標縦ID(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)を出力したアプリケーションの識別子がセットされる。
【0086】
目標加速度(上限)は、アプリケーションの要求加速度(上限)を指定するためのデータ項目である。目標加速度(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)がセットされる。
【0087】
目標駆動力(下限)は、アプリケーションの要求加速度(下限)を達成するために必要な目標駆動力を指定するためのデータ項目である。目標駆動力(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)を駆動力に変換した値がセットされる。
【0088】
目標縦ID(下限)は、アプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目であ
る。目標縦ID(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)を出力したアプリケーションの識別子がセットされる。
【0089】
目標加速度(下限)は、アプリケーションの要求加速度(下限)を指定するためのデータ項目である。目標加速度(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)がセットされる。
【0090】
アクセルオーバライド禁止フラグは、ドライバによるアクセルペダル操作を無効にするか否かを指定するためのデータ項目である。アクセルオーバライド禁止フラグは、要求調停部5による調停により選択された要求加速度(下限)と共に要求情報のデータセットに含まれるアクセルオーバライド禁止フラグがセットされる。アクセルオーバライド禁止フラグは、ドライバのアクセルペダル操作よりもアプリケーションからの要求の優先度が高い場合に、パワートレイン制御部10においてアクセルペダル操作に基づくドライバ要求加速度を棄却するために使用される。
【0091】
変速優先フラグ(上限)は、目標駆動力(上限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように制御するかを指定するためのデータ項目である。変速優先フラグには、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)と共に要求情報のデータセットに含まれる変速優先要求(上限)がセットされる。したがって、変速優先フラグ(上限)には、変速優先要求(上限)と同様に、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかがセットされる。「成り行き」の変速制御とは、目標駆動力(上限)を達成するために、予め用意された駆動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、目標駆動力(上限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、目標駆動力(上限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0092】
変速優先フラグ(下限)は、目標駆動力(下限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように制御するかを指定するためのデータ項目である。変速優先フラグには、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)と共に要求情報のデータセットに含まれる変速優先要求(下限)がセットされる。したがって、変速優先フラグ(下限)には、変速優先要求(下限)と同様に、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかがセットされる。「成り行き」の変速制御とは、目標駆動力(下限)を達成するために、予め用意された駆動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、目標駆動力(下限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、目標駆動力(下限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0093】
尚、通信の信頼性に関する情報をパワートレイン制御部10に対して通知するためのデータ項目を更に設けても良い。
【0094】
<指示情報のデータセット(ステアリング制御部用)>
図6は、要求生成部8からステアリング制御部12へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図である。以下、図1及び6を併せて参照しながら、ステアリング制御部用の指示情報のデータセットの詳細を説明する。
【0095】
図6示すフォーマットは、情報処理装置20の要求生成部8がステアリング制御部12へと出力する指示情報のデータセットを表す。ステアリング制御部用のデータセットは、要求生成部8が生成し、CAN等の車載ネットワークを介してステアリング制御部12に送信する。以下、各データ項目について説明する。
【0096】
目標横IDは、アプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目である。目標横IDには、要求調停部5の調停により選択された横制御量を出力したアプリケーションの識別子がセットされる。
【0097】
目標舵角/ヨーレート/回転半径は、アプリケーションが要求する横制御量を達成するための目標値を指定するためのデータ項目である。目標舵角/ヨーレート/回転半径には、目標舵角、目標ヨーレート及び目標回転半径のいずれかがセットされる。また、目標舵角/ヨーレート/回転半径には、要求調停部5の調停により選択された要求情報のデータセットに含まれる要求舵角/ヨーレート/回転半径の値がセットされる。
【0098】
舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグは、上記の目標舵角/ヨーレート/回転半径のデータ項目にセットされている情報の種類を特定するためのデータ項目である。舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグには、要求調停部5が受け付けた要求情報のデータセットに含まれる舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグの値がセットされる。
【0099】
ドライバ操舵フラグは、ドライバが操舵しているか否かを指定するためのデータ項目である。ドライバ操舵フラグには、要求調停部5の調停により選択された要求舵角/ヨーレート/回転半径と共に要求情報のデータセットに含まれるドライバ操舵フラグがセットされる。
【0100】
応答性要求は、上記の目標舵角/ヨーレート及び回転半径を達成するためのフィードバック制御の強弱(応答性)を指定するためのデータ項目である。応答性要求には、要求調停部5の調停により選択された要求舵角/ヨーレート/回転半径と共に要求情報のデータセットに含まれる応答性要求の値がセットされる。
【0101】
<指示情報のデータセット(ブレーキ制御部用)>
図7は、要求生成部7からブレーキ制御部11へと出力される指示情報のデータセットのフォーマットを示す図である。以下、図1及び7を併せて参照しながら、ブレーキ制御部用の指示情報のデータセットの詳細を説明する。
【0102】
図7に示すフォーマットは、情報処理装置20の要求生成部7がブレーキ制御部11へと出力する指示情報のデータセットを表す。図7に示すデータセットは、要求生成部7が生成する。情報処理装置20がブレーキ制御部11とは別のECUに設けられる場合、図7に示すデータセットは、要求生成部7がCAN等の車載ネットワークを介してブレーキ制御部11に送信する。また、情報処理装置20とブレーキ制御部11とが同じECUに設けられる場合は、図7に示すデータセットは、車載ネットワーク上を流れず、要求生成部7がECU内の信号線を介してブレーキ制御部11に出力する。
【0103】
ブレーキ装置が発生させる制動力は、パワートレインが発生させる駆動力と向きが異なるが同じ物理量である。したがって、要求生成部8からブレーキ制御部11へと出力されるデータセットは、基本的には、要求生成部6からパワートレイン制御部10へと出力されるデータセットにおける駆動力を制動力に置き換えたものである。以下、各データ項目について説明する。
【0104】
目標制動力(上限)は、アプリケーションの要求加速度(上限)を達成するために必要な目標制動力を指定するためのデータ項目である。目標制動力(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)を制動力に変換した値がセットされる。
【0105】
目標縦ID(上限)は、アプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目である。目標縦ID(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)
を出力したアプリケーションの識別子がセットされる。
【0106】
目標加速度(上限)は、アプリケーションの要求加速度(上限)を指定するためのデータ項目である。目標加速度(上限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)がセットされる。
【0107】
目標制動力(下限)は、アプリケーションの要求加速度(下限)を達成するために必要な目標制動力を指定するためのデータ項目である。目標制動力(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)を制動力に変換した値がセットされる。
【0108】
目標縦ID(下限)は、アプリケーションの識別子をセットするためのデータ項目である。目標縦ID(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)を出力したアプリケーションの識別子がセットされる。
【0109】
目標加速度(下限)は、アプリケーションの要求加速度(下限)を指定するためのデータ項目である。目標加速度(下限)には、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)がセットされる。
【0110】
変速優先フラグ(上限)は、目標制動力(上限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように制御するかを指定するためのデータ項目である。変速優先フラグには、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(上限)と共に要求情報のデータセットに含まれる変速優先要求(上限)がセットされる。したがって、変速優先フラグ(上限)には、変速優先要求(上限)と同様に、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかがセットされる。「成り行き」の変速制御とは、目標制動力(上限)を達成するために、予め用意された制動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、目標制動力(上限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、目標制動力(上限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0111】
変速優先フラグ(下限)は、目標制動力(下限)を達成するために変速制御(シフト変更)をどのように制御するかを指定するためのデータ項目である。変速優先フラグには、要求調停部5の調停により選択された要求加速度(下限)と共に要求情報のデータセットに含まれる変速優先要求(下限)がセットされる。したがって、変速優先フラグ(下限)には、変速優先要求(下限)と同様に、「成り行き」を表す値、「許可」を表す値及び「不許可」を表す値のいずれかがセットされる。「成り行き」の変速制御とは、目標制動力(下限)を達成するために、予め用意された制動力変速線に従って変速を行う制御をいう。「許可」の変速制御とは、目標制動力(下限)を達成するために、積極的に変速(シフトダウン)を行う制御をいう。また、「不許可」の変速制御とは、目標制動力(下限)を達成するために、変速(シフトダウン)を禁止し、特定のギヤ段に固定する制御をいう。
【0112】
尚、通信の信頼性に関する情報をブレーキ制御部11に対して通知するためのデータ項目を更に設けても良い。
【0113】
<車両制御システムにおける制御処理>
図8は、本実施形態に係る車両制御システムにおける制御処理を説明するためのシーケンス図である。図8の説明において、アクセル、ブレーキ及びステアリングを「操作部」と総称し、パワートレイン制御部、ブレーキ制御部及びステアリング制御部を「制御部」と総称する。以下、図1、2及び8を併せて参照しながら、車両制御システムにおいて行われる制御を説明する。
【0114】
ステップ1.1:ドライバにより操作部2~4が操作されると、操作部2~4は、操作量に応じたドライバ要求加速度及びドライバ要求横制御量を要求生成部6~8に出力する。
【0115】
ステップ1.2:ドライバにより操作部2~4が操作されると、操作部2~4は、ステップ1.1で出力したドライバ要求加速度及びドライバ要求横制御量を要求調停部5にも出力する。
【0116】
ステップ2.1:実行部1a~1cにおいて実行されるアプリケーションが、運転支援機能の実行に必要な制御をアクチュエータに対して要求するための要求情報を生成し、生成した要求情報を車載ネットワークを介して要求調停部5に送信する。より詳細には、アプリケーションは、図3に示したフォーマットの必要なデータ項目に要求値をセットしたデータセットを生成し、生成したデータセットを通信用のデータフレームに格納して車載ネットワークに送出する。アプリケーションが要求値をセットすべきデータ項目は、アプリケーションが提供する運転支援機能により異なる。例えば、アダプティブクルーズコントロールを提供するアプリケーションの場合、図3に示す縦方向IFパッケージ(下限側)及び縦方向IFパッケージ(上限側)の両方に要求値をセットすることにより、車両の加速度(車速)の範囲を規定することができる。また、レーンキープアシストを提供するアプリケーションの場合、少なくとも、図3に示す横方向IFパッケージに要求値をセットすれば良い。また、自動運転や自動駐車のように、車両の縦方向の運動及び横方向の運動の両方を制御する機能を提供するアプリケーションの場合、図3に示す縦方向IFパッケージ(下限側)、縦方向IFパッケージ(上限側)及び横方向IFパッケージのそれぞれに要求値をセットする。図3に示すその他の情報については、アプリケーションが提供する機能や制御に応じて適宜設定される。尚、要求調停部5において行う調停に使用するデータ項目は、要求加速度(下限)、要求加速度(上限)及び要求横制御量(要求舵角/ヨーレート/回転半径)であるので、これらのデータ項目の少なくとも1つがセットされていれば、調停処理を行うことが可能である。
【0117】
ステップ2.2:要求調停部5が、アプリケーションから受け付けた要求を調停する。要求調停部5において、まず、受付部21が複数の実行部1a~1cから送信された要求情報のデータセットを受け付ける。次に、調停部22が、受け付けたデータセットに含まれる要求加速度及び横制御量に基づいて調停処理を行う。調停部22は、図3に示した縦方向IFパッケージ(下限側)、縦方向IFパッケージ(上限側)及び横方向IFパッケージのそれぞれを調停単位として行う。以下、調停方法の一例を説明する。
【0118】
縦方向IFパッケージ(下限側)の調停は、受け付けた複数のデータセットのそれぞれに含まれる要求加速度(下限)の比較に基づいて行う。例えば、調停部22は、複数の要求加速度(下限)の値の最小値を調停後の要求加速度(下限)として選択しても良い。停部22は、選択した要求加速度(下限)と同じ要求情報のデータセットに含まれる縦方向IFパッケージ(下限側)を、縦方向の運動の下限側の調停結果として選択する。
【0119】
縦方向IFパッケージ(上限側)の調停も、受け付けた複数のデータセットのそれぞれに含まれる要求加速度(上限)の比較に基づいて行う。例えば、調停部22は、複数の要求加速度(上限)の値の最小値を調停後の要求加速度(上限)として選択しても良い。調停部22は、選択した要求加速度(上限)と同じ要求情報のデータセットに含まれる縦方向IFパッケージ(上限側)を、縦方向の運動の上限側の調停結果として選択する。
【0120】
横方向IFパッケージの調停は、受け付けた複数のデータセットのそれぞれに含まれる要求舵角/ヨーレート/回転半径(横制御量)の比較に基づいて行う。調停対象の横制御量に相反する要求がない場合には、例えば、調停部22は、要求される横制御量が最も大
きい横制御量を調停後の横制御量として選択しても良い。また、相反する要求がある場合は、予め定められたルールに則って、特定の条件を満たす要求を優先的に選択しても良い。
【0121】
ステップ2.3:要求調停部5の調停部22が、調停結果として選択された縦方向IFパッケージ(下限側)及び(上限側)を要求生成部6及び7に出力し、調停結果として選択された横方向IFパッケージを要求生成部8に出力する。
【0122】
ステップ2.4:要求生成部6~8が、調停部22による調停結果に基づいて、アクチュエータ13a~13dを駆動するための制御目標値を含む、指示情報のデータセットを生成する。
【0123】
要求生成部6は、調停部22によって選択された縦方向IFパッケージ(下限側)及び(上限側)(以下、これらを併せて「選択された縦方向IFパッケージ」という)を用いて、パワートレイン制御部に対する指示情報のデータセット(図5)を生成する。具体的には、要求生成部6は、選択された縦方向IFパッケージに含まれる、要求加速度(上限)及び(下限)を力に変換し、変換後の値を、図5に示すデータセットの目標駆動力(上限)及び(下限)にセットする。また、要求生成部6は、選択された縦方向IFパッケージに含まれる、要求縦ID(上限)及び(下限)、要求加速度(上限)及び(下限)、アクセルオーバライド禁止フラグ、変速優先要求(上限)及び(下限)を、図5に示すデータセットの目標縦ID(上限)及び(下限)、目標加速度(上限)及び(下限)、アクセルオーバライド禁止フラグ、変速優先フラグ(上限)及び(下限)にそれぞれセットする。また、要求生成部6は、必要に応じて、通信無効フラグに値をセットする。尚、縦方向IFパッケージ(下限側)及び(上限側)のいずれかが調停部22によって選択されていない場合は、要求生成部6は、選択された何れか一方の情報に対応する指示値のみを含むデータセットを生成する。
【0124】
要求生成部7は、調停部22によって選択された縦方向IFパッケージを用いて、ブレーキ制御部11に対する指示情報のデータセット(図7)を生成する。具体的には、要求生成部7は、選択された縦方向IFパッケージに含まれる、要求加速度(上限)及び(下限)を力に変換し、変換後の値を、図5に示すデータセットの目標制動力(上限)及び(下限)にセットする。また、要求生成部7は、選択された縦方向IFパッケージに含まれる、要求縦ID(上限)及び(下限)、要求加速度(上限)及び(下限)、変速優先要求(上限)及び(下限)を、図7に示すデータセットの目標縦ID(上限)及び(下限)、目標加速度(上限)及び(下限)、アクセルオーバライド禁止フラグ、変速優先フラグ(上限)及び(下限)にそれぞれセットする。また、要求生成部6は、必要に応じて、通信無効フラグに値をセットする。
【0125】
要求生成部8は、調停部22によって選択された横方向IFパッケージを用いて、ステアリング制御部12に対する指示情報のデータセット(図6)を生成する。具体的には、要求生成部8は、選択された横方向IFパッケージに含まれる、要求横ID、要求舵角/ヨーレート/回転半径、舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグ、ドライバ操舵フラグ、応答性目標を、図6に示すデータセットの目標横ID、目標舵角/ヨーレート/回転半径、舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグ、ドライバ操舵フラグ、応答性要求にそれぞれセットする。
【0126】
ステップ2.5:要求生成部6~8が、生成した指示情報のデータセットを制御部10~12にそれぞれ出力する。また、操作部2~4からの入力がある場合、要求生成部6~8は、操作部2~4により入力されたドライバ要求を指示情報と併せて制御部10~12にそれぞれ出力する。
【0127】
ステップ2.6:制御部10~12が、要求生成部6~8から受信した指示情報に含まれる目標値とドライバ要求とに基づいてアクチュエータ13a~13dを制御する。尚、パワートレイン制御部10において、指示情報に含まれる目標値とドライバ要求とのいずれを採用するかは、指示情報に含まれる各データ項目の上限値及び下限値とドライバ要求との大小、アクセルオーバライド禁止フラグに基づいて、パワートレイン制御部10が決定することができる。パワートレイン制御部10における駆動力(加速度)の制御処理の一例については後述する。
【0128】
ステップ2.7:制御部10~12が、アクチュエータ13a~13dの動作状態や採用した制御量に関する情報を要求調停部5に出力する。
【0129】
ステップ2.8:要求調停部5が、結果情報のデータセット(図4)を生成する。要求調停部5において、調停結果出力部24は、調停部22により選択された横方向IFパッケージに含まれる、要求横ID、要求舵角/ヨーレート/回転半径、舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグを、図4に示すデータセットの調停結果_横ID、選択舵角/ヨーレート/回転半径、舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグにセットする。また、調停結果出力部24は、情報取得部23がパワートレイン制御部10から取得した、パワートレイン制御部10で採用された加速度に関する情報に基づいて、図4に示すデータセットの調停結果_縦ID及び選択加速度をセットする。更に、調停結果出力部24は、情報取得部23が取得した各種情報に基づき、図4に示すデータセットの「現在の車両の運動制御状態を表す情報」、「現在実現可能な運動制御を表す情報」及び「ドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作状態を表す情報」とをセットする。
【0130】
ステップ2.9:調停結果出力部24は、生成した結果情報を実行部1a~1cに出力する。
【0131】
尚、上記のステップ1.1~1.2と、ステップ2.1~2.9は、並行して行われる処理である。また、上記のステップ2.1~2.9は、一定時間間隔で繰り返し実行される処理である。
【0132】
以下、図9を参照しながら、要求生成部6により生成された指示情報とドライバ要求加速度とに基づいて、パワートレイン制御部10が行う車両の駆動力制御の一例を説明する。図9に示す車両の駆動力制御は、図8のステップ2.6において、パワートレイン制御部10が実行する制御に相当する。
【0133】
図9は、車両の縦方向の運動制御の一例を説明するためのグラフである。図9において、横軸は時刻を表し、縦軸は駆動力を表す。また、図9に示す太い実線は、パワートレインにより出力される実現駆動力であって、車両の進行方向の駆動力と進行方向とは反対方向の制動力との和を表す。
【0134】
図9において、横軸と平行な長破線は、自動運転やクルーズコントロール等の運転支援アプリケーションからの要求加速度に基づいて設定された要求駆動力の上限及び下限を表す。パワートレイン制御部10には、要求調停部5による調停結果に基づいて要求生成部6により生成された指示情報と、アクセルペダル操作に応じたドライバ要求加速度とが同時に入力される。以下の説明では、要求生成部6により生成された指示情報には、目標駆動力(上限)及び(下限)のデータ項目の両方に目標値がセットされている場合を想定する。第1段階として、パワートレイン制御部10は、ドライバ要求駆動力を目標駆動力(下限)と比較し、より大きい駆動力を選択する。第2段階として、パワートレイン制御部10は、第1段階で選択した駆動力を要求駆動力(上限)とを比較し、より小さい駆動力
を選択する。第2段階において、第1段階で選択した要求駆動力と目標駆動力(上限)の小さい方を選択するのは、車両をより安全に制御するためである。パワートレイン制御部10は、採用した要求駆動力の要求元を表す情報を要求調停部5の情報取得部23に通知する。
【0135】
具体的に、図9に示す時刻t0においては、短破線で示されるドライバ要求駆動力は、アプリケーションからの要求情報に基づいて設定された要求駆動力の下限未満である。この場合、パワートレイン制御部10は、アプリケーションの要求駆動力の下限より小さいドライバ要求駆動力を棄却し、アプリケーションの要求駆動力の下限値に相当する駆動力をアクチュエータ13a及び13bに出力させる。
【0136】
図9に示す時刻t1~t2においては、ドライバ要求駆動力が、アプリケーションからの要求情報に基づいて設定された要求駆動力(下限)以上、かつ、要求駆動力(上限)以下であるため、パワートレイン制御部10は、ドライバ要求駆動力に相当する駆動力をアクチュエータ13a及び13bに出力させる。
【0137】
また、図9に示す時刻t3においては、短破線で示されるドライバ要求駆動力が、アプリケーションからの要求情報に基づいて設定された要求駆動力(上限)を超えている。この場合、パワートレイン制御部10及び/またはブレーキ制御部11は、アクチュエータ13a~13cの一部または全部を制御して、要求駆動力(上限)を超えた過剰な駆動力と等しい大きさの制動力を発生させることにより、過剰な駆動力を相殺し、実現駆動力を設定された要求駆動力の上限に抑制する。
【0138】
このように、パワートレイン制御部10及びブレーキ制御部11では、要求調停部5によって調停されたアプリケーション要求とドライバ要求とに基づいて車両の縦方向の運動を制御することができる。
【0139】
<効果等>
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置20は、車両の前後方向の運動を表す情報として要求加速度を含み、車両の横方向の運動を表す情報として舵角、ヨーレート及び回転半径のいずれかを含む要求情報のデータセットを受け付け、受け付けた要求情報に基づいて複数のアプリケーションの要求を調停し、調停結果に基づいてアクチュエータの駆動指示を行う。情報処理装置20が予め定められた情報(要求加速度及び/または横制御量)に基づいて調停を行うことにより、運転支援機能を実現するアプリケーションの種類が増えた場合でも、要求値の変換等を行うことなく調停処理を容易に行うことができる。また、情報処理装置20で受け付ける情報が予め定められていることにより、運転支援機能を実現するアプリケーションの種類が増えた場合でも、運転マネージャー20における調停処理や、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12における制御処理を変更する必要がなくなるという利点もある。要求調停部5による調停で使用するデータ項目として、要求加速度を用いた場合、運転支援アプリケーションでは、車両の質量や空気抵抗といった車両の種類毎に特有の情報を考慮する必要がなく、車両に要求する純粋な運動を考慮すれば良い。また、アプリケーションの要求を加速度で指示した場合、力への物理量換算は比較的容易に行うことができる。したがって、車両の前後方向の運動を表す情報として要求加速度を採用することにより、運転支援アプリケーションの開発を容易に行えるという利点がある。また、車両の横方向の運動を表す情報として使用する舵角/ヨーレート/回転半径は、アプリケーション、情報処理装置20、パワートレイン制御部10、ブレーキ制御部11及びステアリング制御部12で共通して使用することができ、他の制御量に変換する必要がない。したがって、車両の横方向の運動を表す情報として、舵角/ヨーレート/回転半径を採用することにより、調停処理を容易にすることができる。
【0140】
また、本実施形態に係る情報処理装置20が受け付ける要求情報のデータセットには、車両の横方向の運動を表す情報が、舵角、ヨーレート及び回転半径のいずれであるかを指定するデータ項目(舵角/ヨーレート/回転半径切替フラグ)が設けられている。このデータ項目を利用することにより、複数の情報種別のいずれかを表すために1つのデータ項目を切り替えて使用することができる。複数の情報種別のそれぞれにデータ項目を割り当てる場合と比べてデータ量を低減することができる。
【0141】
また、本実施形態に係る情報処理装置20が受け付ける要求情報のデータセットは、要求加速度として、要求加速度の上限及び要求加速度の下限を含んでいる。要求情報のデータセットをこのように構成した場合、アプリケーションが要求する加速度を範囲で規定することが可能となる。
【0142】
また、本実施形態に係る情報処理装置20は、調停結果を含む結果情報を要求元のアプリケーションに対して出力する調停結果出力部24を備えている。調停結果をアプリケーションにフィードバックすることにより、アプリケーションにおいて、運転支援機能を実現するための制御処理を適宜修正することができる。この場合、結果情報出力部は、調停結果に加えて、現在の車両の運動制御の状態を表す情報と現在実現可能な車両の運動制御を表す情報との少なくとも一方を含む結果情報をアプリケーションにフィードバックすることが好ましい。現在の車両の運動制御の状態を表す情報と現在実現可能な車両の運動制御を表す情報との少なくとも一方が結果情報に含まれる場合、アプリケーションでは、現在の車両の状態を踏まえて、運転支援機能を実現するための制御処理を修正することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る情報処理装置20は、要求調停部5の調停部22によって調停された要求加速度をパワートレインの出力の単位である力に変換し、変換後の力を含む指示情報によりアクチュエータ13a~13cに対する駆動要求を行う要求生成部6及び7を備える。要求生成部6及び7により必要な変換処理を行うことにより、要求調停部5の受付部21が受け付ける要求情報のフォーマットの変更や、調停部22における物理量の変換処理が不要となる。
【0144】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上気の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、複数の運転支援アプリケーションの要求に基づいて車両の運動を制御可能な車両制御装置に利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1a~1c 実行部
6~8 要求生成部
10 パワートレイン制御部
11 ブレーキ制御部
12 ステアリング制御部
20 情報処理装置
21 受付部
22 調停部
23 情報取得部
24 調停結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9