(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】管理方法及び管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240806BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240806BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B5/16 130
A61B5/0245 C
(21)【出願番号】P 2023044139
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩男 眞由美
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-148605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
A61B 5/16
A61B 5/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得ステップと、
前記運行時間の情報に基づいて、前記ドライバーの睡眠を、運行時間外での睡眠と運行時間内での仮眠とに分け、前記ドライバーの前記運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの前記運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含む管理方法。
【請求項2】
請求項1の管理方法であって、
前記判定ステップは、前記ドライバーの前記運行時間内での仮眠中の心拍数の度数分布が、前記覚醒中の心拍数度数分布又は前記睡眠中の心拍数度数分布のどちらに類似しているかに基づいて、前記仮眠の質を判定する。
【請求項3】
請求項1の管理方法であって、
前記判定ステップは、さらに、
前記ドライバーの睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、前記ドライバーの前記睡眠中の睡眠の質を判定するステップと、
前記仮眠の質と、前記睡眠の質と、に基づいて、前記ドライバーの休息レベルを判定するステップと、
を含む。
【請求項4】
請求項3の管理方法であって、
前記判定ステップは、さらに、
前記睡眠中の心拍数度数分布における平均心拍数と、前記覚醒中の心拍数度数分布における平均心拍数との差が大きいほど睡眠の質が高いと判定する。
【請求項5】
請求項3の管理方法であって、
前記判定ステップは、さらに、
前記睡眠中の心拍数度数分布に囲まれた領域と、前記覚醒中の心拍数度数分布に囲まれた領域とが重なっていないほど睡眠の質が高いと判定する。
【請求項6】
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得ステップと、
前記運行時間の情報に基づいて、前記ドライバーの睡眠を、運行時間外での睡眠と運行時間内での仮眠とに分け、前記ドライバーの睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、前記ドライバーの前記睡眠中の睡眠の質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含む管理方法。
【請求項7】
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得部と、
前記運行時間の情報に基づいて、前記ドライバーの睡眠を、運行時間外での睡眠と運行時間内での仮眠とに分け、前記ドライバーの前記運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの前記運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定す
る判定部と、
前記判定の結果を提示する判定結果提示部と、
を備える、管理システム。
【請求項8】
請求項7の管理システムであって、
前記判定部は、さらに、
前記ドライバーの睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、前記ドライバーの前記睡眠中の睡眠の質を判定するとともに、前記仮眠の質と、前記睡眠の質と、に基づいて、前記ドライバーの休息レベルを判定し、
かつ、
前記睡眠中の心拍数度数分布における平均心拍数と、前記覚醒中の心拍数度数分布における平均心拍数との差が大きいほど睡眠の質が高いと判定する。
【請求項9】
請求項7の管理システムであって、
前記判定部は、さらに、
前記ドライバーの睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、前記ドライバーの前記睡眠中の睡眠の質を判定するとともに、前記仮眠の質と、前記睡眠の質と、に基づいて、前記ドライバーの休息レベルを判定し、
かつ、
前記睡眠中の心拍数度数分布に囲まれた領域と、前記覚醒中の心拍数度数分布に囲まれた領域とが重なっていないほど睡眠の質が高いと判定する。
【請求項10】
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得部と、
前記運行時間の情報に基づいて、前記ドライバーの睡眠を、運行時間外での睡眠と運行時間内での仮眠とに分け、前記ドライバーの睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、前記ドライバーの前記睡眠中の睡眠の質を判定する睡眠判定部と、
前記判定の結果を提示する判定結果提示部と、
を備える、管理システム。
【請求項11】
ドライバーの運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含み、
前記判定ステップでは、前記睡眠中の心拍数度数分布における平均心拍数と、前記覚醒中の心拍数度数分布における平均心拍数との差が大きいほど睡眠の質が高いと判定する、
管理方法。
【請求項12】
ドライバーの運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含み、
前記判定ステップでは、
前記睡眠中の心拍数度数分布に囲まれた領域と、前記覚醒中の心拍数度数分布に囲まれた領域とが重なっていないほど睡眠の質が高いと判定する、
管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理方法及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両を数多く所有する運送業者は、それらを安全に運行するようにドライバーを管理することが要求されている。
【0003】
運送業者等が使用する運行管理システムとして、勤務中(運転中)のドライバーに着脱可能な生体センサーを装着させ、ドライバーの心拍数や体温などの生体情報を取得し、勤務中の健康状態を管理するものがある(例えば特許文献1参照)。このようなシステムでは、ドライバーが運行中に眠気を感じた場合などに、警告や休息を促すことにより、安全性を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の運行管理では、長距離運転をするドライバーには仮眠をとる時間を与えるようにしている。仮眠をとることによって運転中に眠気が生じるのを抑制できるので、仮眠は長距離を安全に運転する上で非常に重要である。
【0006】
仮眠は、例えば就寝中の睡眠不足を補うだけでなく、体調不良時のリカバリーとしても有用である。例えば、さほど眠くはないが、だるい、目が疲れている場合などにも仮眠をとることが有用である。
【0007】
しかし、仮眠は、自宅での一般的な睡眠とは異なり、イレギュラーな時間及び環境でとる場合が多いので、ドライバーは仮眠時間中にしっかりと眠ることができず、十分な休息となっていない場合がある。ドライバーが仮眠時間中にしっかりと眠ることができなかった場合には、運転中のドライバーに眠気が生じ、運行の安全性が低下する。
【0008】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、仮眠の質も含めた管理を行うことで、安全性のより向上した管理を行うことができる、管理方法及び管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の管理方法の一つの態様は、
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得ステップと、
前記ドライバーの前記運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの前記運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含む。
【0010】
本開示の管理システムの一つの態様は、
ドライバーの運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得部と、
前記ドライバーの前記運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの覚醒中の心拍数度数分布と、前記ドライバーの前記運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、前記ドライバーの仮眠の質を判定する仮眠判定部と、
前記判定の結果を提示する判定結果提示部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、仮眠の質も含めた管理を行うことで、安全性のより向上した管理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態における運行管理システムの全体構成を示す図
【
図2】実施の形態の運行管理システムの要部構成を示すブロック図
【
図3A】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図3B】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図3C】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図3D】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図3E】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図3F】あるドライバーの日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフ
【
図4A】仮眠判定部によって行われる判定の説明に供する図
【
図4B】仮眠判定部によって行われる判定の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<1>運行管理システムの全体構成
図1は、実施の形態における運行管理システムの全体構成を示す図である。
【0015】
本実施の形態の運行管理システム1は、管理者側システム10と、ドライバー側システム20と、クラウド30と、を有する。
【0016】
管理側システム10は、端末11を有する。端末11は、運送業者の運行管理部門のオフィスに設置されている。端末11は、いわゆるパソコンであり、管理者M1の操作に応じて安全運行管理に必要な動作を実行する。
【0017】
端末11には、ドライバーD1に関する、睡眠不足の情報、仮眠取得状況及び仮眠の質に関する情報を含む仮眠状況情報、自己申告情報、運行情報などが表示される。管理者M1は、ドライバーD1に対して、点呼時の声掛けやアフターフォローを行う。また管理者M1は、運行計画を立てて、それを端末11に入力する。
【0018】
ドライバー側システム20は、端末21と生体情報センサー22とを有する。本実施の形態の場合、端末21はドライバーD1が携帯しているいわゆるスマートフォンであり、生体情報センサー22はリング型のセンサーである。
【0019】
なお、生体情報センサー22としては、腕時計型のものを用いてもよく、要はドライバーD1の生体情報を睡眠中も含めて取得できるものであればどのようなものを用いてもよい。
【0020】
生体情報センサー22により取得された生体情報は、端末21に無線にて送られる。生体情報センサー22は、生体情報として、睡眠に関する情報と仮眠に関する情報とを取得する。生体情報センサー22は、少なくとも睡眠中及び仮眠中の心拍数を計測する。
【0021】
なお、本明細書において、「睡眠」とはドライバーが運行時間外の就寝時にとった眠りを意味し、「仮眠」とはドライバーが運行時間内にとった眠りを意味する。一般的には、睡眠は非就業日の自宅の寝床等で眠ることを指し、仮眠は睡眠不足を補う意図で、車室内や詰所等で座ってあるいは楽な姿勢で眠ることを指す。また,眠った状態が「睡眠中」「仮眠中」「それ以外」を区別するのは、運行情報(就業時間帯か否か、走行中か否か)によって判断できる。
【0022】
端末21には、生体情報センサー22と連携してドライバーD1の生体情報を計測するためのアプリケーションプログラムと、ドライバーD1からの自己申告情報を受け付けるためのアプリケーションプログラムとが予めインストールされている。端末21が計測する生体情報としては、例えば、睡眠中及び仮眠中における、平均心拍数、最低心拍数、平均呼吸数、体温などが含まれる。端末21には、ドライバーD1の生体情報が時系列に蓄積される。
【0023】
また、端末21には、健康管理アプリケーションプログラムとして、ドライバーD1の生体情報に基づいて、ドライバーD1の睡眠レベルを判定可能なものがインストールされていてもよい。生体情報に基づいて睡眠レベルを判定する方法は既知のものなので、ここでの詳細な説明は省略する。例えば、端末21は、生体情報センサー22からの加速度情報に基づいてドライバーD1の寝入り及び目覚めを検出する。また、端末21は、ドライバーD1の心拍数や体温に基づいて睡眠レベルを判定する。端末21又はクラウド30によって、睡眠スコアを算出してもよい。
【0024】
クラウド30は、管理者側システム10及びドライバー側システム20と無線にてデータのやりとりが可能な構成とされている。
【0025】
クラウド30は、管理者側システム10から管理者見立て情報を入力する。管理者見立て情報とは、管理者M1が点呼時に観察したドライバーD1に関する情報であり、例えばドライバーD1が眠そうであるとか、体調が悪そうであるなどといった情報である。
【0026】
また、クラウド30は、ドライバー側システム20から、生体情報及び自己申告情報を入力する。
【0027】
また、クラウド30は、運送業者の所有するトラックなどの車両B1から運行情報を入力する。運行情報は、車載器によって得られた情報であり、例えば実際の車両B1が走行していた時間の情報や走行距離の情報である。また、運行情報には、ドライバーの視線などに基づく、ドライバーの眠気の情報などが含まれていてもよい。
【0028】
クラウド30は、少なくとも記憶装置及び情報処理装置を含んで構成されており、ドライバー側システム20から入力した生体情報及び自己申告情報、管理者側システム10から入力した管理者見立て情報、車両B1から入力した運行情報などを用いて、所定のプラグラムを実行することにより、各種の情報を生成する。
【0029】
クラウド30は、生成した各種の情報のうち、健康アドバイス情報をドライバー側システム20の端末21に、点呼時健康コメント情報を管理者側システム10の端末11に送る。健康アドバイス情報及び点呼時健康コメント情報には、ドライバーD1についての、睡眠及び仮眠に関する情報が含まれる。
【0030】
<2>運行管理システムの要部構成
図2は、本実施の形態の運行管理システムの機能ブロック図である。
【0031】
図2に示した機能ブロックの各要素は、
図1の管理者側システム10、ドライバー側システム20及びクラウド30のいずれかに設けられている。例えば、運行取得部101は、管理者側システム10に設けられ、生体情報取得部102はドライバー側システム20に設けられている。自己申告情報取得部107はドライバー側システム20に設けられている。判定部103、提示部104、睡眠判定部105及び仮眠判定部106は、管理者側システム10、ドライバー側システム20又はクラウド30に設けられている。
【0032】
実際上、管理者側システム10、ドライバー側システム20及びクラウド30の各々は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して
図2に示した各部の機能を実現する。なお、
図2に示した各部の機能の全部又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路により実現してもよい。運行管理システム10の各機能ブロックは、1以上のプロセッサ、1以上の電子回路、又はそれらの組合せによって実現可能である。
【0033】
運行情報取得部101は、ドライバーD1の運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する。運行情報は、例えば管理者M1により端末11から入力され、クラウド30又は端末11などに記憶されている。運行情報取得部101は、記憶された運行情報を読み出すことで運行情報を取得する。また、運行情報取得部101は、車両B1からの通信情報(実績)からも運行情報を取得する。
【0034】
生体情報取得部102は、少なくとも睡眠中、仮眠中及び覚醒中のドライバーD1の心拍数を取得する。この生体情報は、端末21と生体情報センサー22との連携により計測されたものであり、端末21、クラウド30又は端末11に記憶されている。
【0035】
睡眠判定部105は、生体情報取得部102によって取得された睡眠中及び覚醒中の心拍数に基づいてドライバーD1の睡眠の質を判定する。この判定については、後で詳述する。
【0036】
仮眠判定部106は、生体情報取得部102によって取得された仮眠中、睡眠中及び覚醒中の心拍数に基づいてドライバーD1の睡眠の質を判定する。この判定については、後で詳述する。
【0037】
なお、睡眠判定部105及び仮眠判定部106には、運行情報取得部101からの運行情報が入力されており、睡眠判定部105及び仮眠判定部106は、運行情報に基づいて、運行時間以外の眠りが睡眠であり、運行時間内の眠りが仮眠であると識別する。
【0038】
勿論、どの眠りが睡眠であるか仮眠であるかの識別は、これに限らず、様々な方法を適用できる。例えば位置情報や時刻情報などに基づいて、睡眠と仮眠を識別してもよい。また、例えば、ドライバーD1が端末21を仮眠モードに設定操作することで仮眠を識別する可能としてもよい。ドライバーD1が覚醒中(活動時)であることは、例えば端末21の加速度情報に基づいて、認識できる。
【0039】
判定部103は、睡眠判定部105及び仮眠判定部106の判定結果を入力する。判定部103は、睡眠判定部105及び仮眠判定部106の両方、あるいは、睡眠判定部105及び仮眠判定部106のいずれか一方の判定結果に基づいて、ドライバーD1の休息レベルを判定する。判定部103による判定結果は、提示部104に出力され、提示部104によって表示又は音声により提示される。
【0040】
自己申告情報取得部107は、ドライバーD1からの自己申告を受け付ける入力部であり、例えば端末21のタッチパネルや音声入力部により具現化されている。また、自己申告情報取得部107は、例えば端末11のタッチパネルや音声入力部により具現化されていてもよい。
【0041】
自己申告情報取得部107は、運行前に、ドライバーD1からの体調などに関する自己申告情報を取得する。運行前とは、例えば運行開始までの所定時間以内(例えば運行前の1時間以内)であったり、点呼時である。自己申告情報とは、例えば、ドライバーD1が感じている疲労や体調の度合い、服薬状況などである。
【0042】
<3>休息レベルの判定
次に、本実施の形態による休息レベルの判定処理について詳細に説明する。本実施の形態の場合、休息レベルの判定は、睡眠判定部105、仮眠判定部106及び判定部106によって実現される。
【0043】
図3A-
図3Fは、6人のドライバーの日中活動中(覚醒中と言ってもよい)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布を示したグラフである。本実施の形態では、この日中活動中(覚醒中)、睡眠中及び仮眠中における心拍数の度数分布に基づいて、各ドライバーの休息レベルを判定する。
【0044】
この判定を行うにあたって、以下の知見を利用する。
(1)睡眠中・仮眠中の心拍数が低い場合には、質の良い睡眠・仮眠がとれており、質の良い休息がとれている(休息レベルが高い)可能性が高い。逆に、睡眠中・仮眠中の心拍数が高い場合には、質の良い睡眠・仮眠がとれておらず、質の良い休息がとれていない(休息レベルが低い)可能性が高い。
(2)各人によって、睡眠中、仮眠中、覚醒中の度数分布は異なる。
【0045】
本実施の形態では、上記(1)、(2)の知見を踏まえて、各ドライバーの度数分布グラフを用いて、各ドライバーの睡眠の質、仮眠の質、及び、休息レベルを判定し、判定結果を提示するようになっている。
【0046】
睡眠の質の判定は、睡眠判定部105によって行われる。睡眠判定部105は、睡眠中の度数分布グラフと覚醒中の度数分布グラフの心拍数方向への離間の度合いに基づいて、睡眠の質を判定する。具体的には、睡眠判定部105は、離間の度合いが大きいほど、睡眠の質が高いと判定する。
【0047】
仮眠の質の判定は、仮眠判定部106によって行われる。仮眠判定部106は、仮眠中の度数分布グラフを、睡眠中の度数分布グラフ及び覚醒中の度数分布グラフと比較し、仮眠中の度数分布が睡眠中及び覚醒中の度数分布のうちのどちらに類似しているかに基づいて、仮眠の質を判定する。具体的には、仮眠判定部106は、仮眠時の度数分布が睡眠時の度数分布に近いほど(逆に言えば、覚醒時の度数分布から離れているほど)、睡眠の質が高いと判定する。
【0048】
睡眠判定部105による離間の度合いの判定の仕方、及び、仮眠判定部106による類似の度合いの判定の仕方は、特に限定されず、様々な方法を適用できる。
【0049】
例えば、睡眠中の度数分布グラフにおいて度数のピークが得られている心拍数と、覚醒中の度数分布グラフにおいて度数のピークが得られている心拍数との差に基づき、当該差が大きいほど睡眠の質が高いと判定する。
【0050】
また、例えば、睡眠中の度数分布グラフにおける平均心拍数と、覚醒中の度数分布グラフにおける平均心拍数との差に基づき、これらの平均心拍数の差が大きいほど睡眠の質が高いと判定してもよい。
【0051】
また、例えば、睡眠中の度数分布グラフに囲まれた領域と、覚醒中の度数分布グラフに囲まれた領域とにおける、互いに重なっている領域と重なっていない領域の割合に基づき、重なっていない割合が大きいほど睡眠の質が高いと判定してもよい。
【0052】
図3A、
図3B、
図3C及び
図3Dに示した4人のドライバーについては、睡眠中の度数分布グラフと覚醒中の度数分布グラフとが心拍数方向へ所定値以上離間しているので、良い質の睡眠をとれていると言える。一方、
図3E及び
図3Fに示した2人のドライバーについては、睡眠中の度数分布グラフと覚醒中の度数分布グラフとが心拍数方向への所定値以上離間していないので、良い質の睡眠をとれていないと言える。
【0053】
睡眠判定部105が、どのタイミングで判定を行うかは適宜選択可能となっている。例えば点呼日の前日の、睡眠中の度数分布グラフ及び覚醒中の度数分布グラフを用いてもよく、例えば点呼日の前の数日分(例えば1週間分)の睡眠中の度数分布グラフ及び覚醒中の度数分布グラフを用いてもよい。
【0054】
また、あるドライバーの睡眠中の度数分布グラフと覚醒中の度数分布グラフとの長期間での関係に対して、運転予定日の直前の睡眠中の度数分布グラフと覚醒中の度数分布グラフの関係とを比較して判定を行ってもよい。
【0055】
具体的には、長期間(1週間、1ヶ月、3ヶ月、1年など)での睡眠中の心拍数分布及び覚醒中の心拍数分布の関係と、点呼日前日の睡眠中の心拍数分布及び覚醒中の心拍数分布の関係に基づいて、点呼時前日の睡眠の質を判定してもよい。
【0056】
図4A及び
図4Bは、仮眠判定部106によって行われる判定の説明に供する図である。仮眠判定部106は、長期間(1週間、1ヶ月、3ヶ月、1年など)での睡眠中の心拍数分布及び覚醒中の心拍数分布と、今回の仮眠中の心拍数の平均値とを比較する。仮眠判定部106は、
図4Aのように、今回の仮眠中の心拍数の平均値が睡眠中の心拍数分布に近い場合には質の高い仮眠がとれていたと判定する。一方、仮眠判定部106は、
図4Bのように、今回の仮眠中の心拍数の平均値が覚醒中の心拍数分布に近い場合には質の高い仮眠がとれていなかったと判定する。
【0057】
判定部103は、睡眠判定部103により得られた睡眠の質、及び、仮眠判定部106により得られた仮眠の質に基づいて、ドライバーD1に対する総合的な休息レベルを判定する。総合的な休息レベルは、睡眠の質及び仮眠の質に加えて、睡眠時間及び仮眠時間などを用いて判定するとよい。つまり、もしも睡眠の質や仮眠の質が低くても睡眠時間及び仮眠時間が十分に長ければ、休息レベルは高くなるので、これを考慮した判定を行うことが好ましい。
【0058】
さらに、本実施の形態の場合、判定部103は、自己申告情報取得部107からの自己申告情報も用いて、休息レベルの判定を行うようになっている。判定部103は、例えば、睡眠判定部105及び仮眠判定部106による判定結果を用いた休息レベルが高かった場合でも、ドライバーから疲労感があるといった自己申告があった場合には、休息レベルが十分ではないと判定してもよい。例えば、いくら睡眠及び仮眠が十分であっても、覚醒時の活動量が多く、或いは、疲労が蓄積していて、休息レベルが十分ではない場合もある。このような場合に、自己申告情報を用いた判定が有効となる。
【0059】
提示部104は、運行中であれば、例えば「仮眠でよく休めていない可能性があります。次に取れる機会があれば、できるだけ横たわって休むようにしてください。」、「睡眠の質がよくありませんでした。できるだけ仮眠をとるようにしてください。」、「休息レベルが十分ではありません。仮眠をとるようにしてください。」などと表示や音声で提示する。または、仮眠をアラーム音などで催促してもよい。
【0060】
<4>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、運行管理システム1は、ドライバーD1の運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得部101と、ドライバーD1の運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、ドライバーD1の覚醒中の心拍数度数分布と、ドライバーD1の運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、ドライバーD1の仮眠の質を判定する仮眠判定部106と、判定の結果を提示する判定結果提示部(提示部103)と、を有する。
【0061】
これにより、仮眠の質も含めた運行管理を行うことができるようになるので、安全性のより向上した運行管理を行うことができるようになる。
【0062】
また、運行管理システム1は、ドライバーD1の睡眠中の心拍数度数分布と、ドライバーD1の覚醒中の心拍数度数分布と、に基づいて、ドライバーD1の睡眠中の睡眠の質を判定する睡眠判定部105と、仮眠の質と睡眠の質とに基づいて、ドライバーD1の休息レベルを判定する判定部103と、有する。
【0063】
これにより、仮眠の質及び睡眠の質を加味した休息レベルを得て、これを提示するので、安全性のより向上した運行管理を行うことができるようになる。
【0064】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は、例えば運送業者が安全な管理を行うための技術として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 運行管理システム
10 管理者側システム
11、21 端末
20 ドライバー側システム
22 生体情報センサー
30 クラウド
101 運行情報取得部
102 生体情報取得部
103 判定部
104 提示部
105 睡眠判定部
106 仮眠判定部
107 自己申告情報取得部
【要約】
【課題】仮眠の質も含めた管理を行うことで、安全性のより向上した管理を行うことができる、管理方法及び管理システムを提供すること。
【解決手段】本開示の管理システムは、ドライバーD1の運行開始から運行終了までの運行時間の情報を取得する運行情報取得部101と、ドライバーD1の運行時間外での睡眠中の心拍数度数分布と、ドライバーD1の覚醒中の心拍数度数分布と、ドライバーD1の運行時間内での仮眠中の心拍数と、に基づいて、ドライバーD1の仮眠の質を判定する仮眠判定部106と、判定の結果を提示する提示部103と、を有する。
【選択図】
図2