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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】プリチャージ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240806BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240806BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J1/00 304H
B60R16/02 645D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023073522
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145867(JP,A)
【文献】特開2019-205297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 1/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリと、
前記第1バッテリから電力が供給される電気回路と、
前記第1バッテリから前記電気回路への電力供給を切り替えるリレーと、
前記第1バッテリよりも出力電圧が低いバッテリである第2バッテリと、
前記第2バッテリと前記電気回路との間に配置されたDC/DCコンバータと、
前記リレーおよび前記第2バッテリと前記電気回路間の電力のやり取りを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記リレーが開状態である間に、前記DC/DCコンバータを制御して前記第2バッテリから前記電気回路に電力を供給させ、
前記制御部は、さらに、DC/DC制御部、バッテリ管理部、および、車両制御部を備え、
前記DC/DC制御部は、前記電気回路の電圧を調整するように前記DC/DCコンバータを制御し、
前記バッテリ管理部は、前記第1バッテリの出力電圧の数値である第1電圧値、および、前記電気回路の出力電圧の数値である第2電圧値のそれぞれを監視するとともに、前記リレーの開閉を制御し、
前記車両制御部は、前記バッテリ管理部から前記第1電圧値を取得し、取得した前記第1電圧値に基づいて目標値を決定し、前記DC/DC制御部に対して昇圧要求を出すと共に、前記バッテリ管理部から前記第2電圧値を取得し、取得した前記第2電圧値が前記目標値に対して所定範囲内であるか否かを判定し、前記第2電圧値が前記第1バッテリの出力電圧に対応する数値である目標値に対して所定範囲内であると判定した場合、前記バッテリ管理部に対して前記リレーの閉じ要求を出す共に、前記DC/DC制御部に対して昇圧停止要求を出す、
プリチャージ装置。
【請求項2】
前記バッテリ管理部は、前記車両制御部から前記目標値を取得し、前記リレーの閉じ要求が出された場合、取得した前記目標値に対して前記第2電圧値が前記所定範囲内であるか否かを判定し、前記第2電圧値が前記所定範囲内である場合、前記リレーを閉状態に制御する、
請求項に記載のプリチャージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリチャージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用のバッテリが搭載された電気自動車(EV)では、バッテリから電力供給ラインを介して電気回路に電力が供給される。電力供給ライン上にはメインリレーが配置され、メインリレーを開状態から閉状態にすることで、バッテリから電気回路へ電力が供給される。
【0003】
ところで、バッテリの電圧に対する電気回路の電圧が低い状態で、バッテリから電気回路に電力を供給すると、大電流により電気回路が故障する場合がある。このため、バッテリの電圧に対する電気回路の電圧を上げ、バッテリの電圧と電気回路の電圧との差異が所定範囲内になってから、メインリレーを閉状態にする必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、バッテリの電圧に基づいて、電気回路を昇圧するためのプリチャージリレー回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-167780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、EVには、その制御系のコンポーネントに電力を供給するための制御用のバッテリが搭載されている。制御用のバッテリには、例えば鉛バッテリが用いられている。
【0007】
EVにおいては、駆動用のバッテリの電力が制御用のバッテリ(鉛バッテリ)に供給される。これにより、鉛バッテリが充電される。なお、鉛バッテリを充電する際に、例えば、駆動用のバッテリの電圧が鉛バッテリの電圧よりも高い場合、DC/DCコンバータにより駆動用のバッテリの電圧が鉛バッテリの電圧と同じ電圧まで下げた後、駆動用のバッテリの電力が鉛バッテリに供給される。
【0008】
本開示の目的は、メインリレーを排除することが可能なプリチャージ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示におけるプリチャージ装置は、
第1バッテリと、
前記第1バッテリから電力が供給される電気回路と、
前記第1バッテリから前記電気回路への電力供給を切り替えるリレーと、
前記第1バッテリよりも出力電圧が低いバッテリである第2バッテリと、
前記第2バッテリと前記電気回路との間に配置されたDC/DCコンバータと、
前記リレーおよび前記第2バッテリと前記電気回路間の電力のやり取りを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記リレーが開状態である間に、前記DC/DCコンバータを制御して前記第2バッテリから前記電気回路に電力を供給させ、
前記制御部は、さらに、DC/DC制御部、バッテリ管理部、および、車両制御部を備え、
前記DC/DC制御部は、前記電気回路の電圧を調整するように前記DC/DCコンバータを制御し、
前記バッテリ管理部は、前記第1バッテリの出力電圧の数値である第1電圧値、および、前記電気回路の出力電圧の数値である第2電圧値のそれぞれを監視するとともに、前記リレーの開閉を制御し、
前記車両制御部は、前記バッテリ管理部から前記第1電圧値を取得し、取得した前記第1電圧値に基づいて目標値を決定し、前記DC/DC制御部に対して昇圧要求を出すと共に、前記バッテリ管理部から前記第2電圧値を取得し、取得した前記第2電圧値が前記目標値に対して所定範囲内であるか否かを判定し、前記第2電圧値が前記第1バッテリの出力電圧に対応する数値である目標値に対して所定範囲内であると判定した場合、前記バッテリ管理部に対して前記リレーの閉じ要求を出す共に、前記DC/DC制御部に対して昇圧停止要求を出す。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、メインリレーを排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施の形態におけるプリチャージ装置を備えた電動車両の電力システムの一例を示す図である。
図2図2は、本実施の形態におけるプリチャージ装置の一例を機能的に示す図である。
図3図3は、本実施の形態におけるプリチャージ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態におけるプリチャージ装置を備えた電動車両(EV)の電力システムの一例を示す図である。なお、以下の説明では、本開示をトラックや、バスなどの商用車に適用する場合について説明するが、本開示は、これに限らず、乗用車などの車両に適用してもよい。
【0013】
図1に示すように、電力システム1には、外部負荷2と、プリチャージ装置3と、複数のバッテリパック6と、ジャンクションボックス7(Junction Box:JB)と、車両制御部8(Vehicle Control Unit:VCU)とを備えている。プリチャージ装置3は、鉛バッテリ4と、DC/DCコンバータ5とを有している。DC/DCコンバータ5は、DC/DC制御部5aを有する。バッテリパック6は、バッテリ管理部10(バッテリマネジメントシステム:BMS)を有している。なお、バッテリパック6が本開示の「第1バッテリ」に対応する。また、鉛バッテリ4が本開示の「第2バッテリ」に対応する。また、ジャンクションボックス7(JB)が本開示の「電気回路」を構成する。また、車両制御部8(VCU)、バッテリ管理部10(BMS)およびDC/DC制御部5aが、本開示におけるプリチャージ装置の「制御部」に対応する。
【0014】
(外部負荷2)
外部負荷2にはモータ、ヒータおよび架装などが含まれる。外部負荷2には、コンデンサ2aを有するものがある。モータは、バッテリパック6から電力が供給されることで駆動する走行用のモータである。ヒータは、バッテリパック6から電力が供給されることでバッテリパック6自身を加温するヒータである。架装は、EVに搭載され、バッテリパック6から電力が供給されることで動作する装置である。架装には、例えば、荷受台昇降装置や、冷蔵・冷凍庫が含まれる。
【0015】
(鉛バッテリ4)
鉛バッテリ4は、EVに搭載される制御系のコンポーネント(不図示)に電力を供給するための制御用のバッテリである。鉛バッテリ4は、所定の電圧Vpbを有する。電圧Vpbは、例えば、11[V]から14[V]までの範囲の電圧である。なお、EVには、制御用のバッテリとして、例えば、22[V]から28[V]までの範囲の電圧を有する他の鉛バッテリが搭載されてもよい。
【0016】
(DC/DCコンバータ5)
EVにおいては、バッテリパック6の電力が鉛バッテリ4に供給される。これにより、鉛バッテリ4が充電される。鉛バッテリ4は、バッテリパック6よりも出力電圧(本開示の「第1電圧値」に対応する)が低いバッテリである。以下、第1電圧値を「セル電圧V1」という。鉛バッテリ4の電圧Vpbがセル電圧V1よりも低い場合(Vpb<V1)、鉛バッテリ4を充電する際に、バッテリパック6を降圧した後、バッテリパック6の電力が鉛バッテリ4に供給される。そこで、DC/DCコンバータ5は、バッテリパック6を降圧する降圧機能を有する。
【0017】
ところで、バッテリパック6の電圧レベルに対する電気回路の電圧レベル(本開示の「第2電圧値」に対応する)が低い場合がある。以下、第2電圧値を「電気回路の電圧V2」また「リレー外側電圧V2」という。この場合、バッテリパック6から電気回路に電力を供給すると、バッテリパック6からの大電流により電気回路が故障する場合がある。このため、バッテリパック6の電圧レベルに対する電気回路の電圧レベルを上げ、電気回路の電圧レベルが目標値になった後、バッテリリレー(+)6bおよびバッテリリレー(-)6cのそれぞれを閉状態にして、バッテリパック6と電気回路とを接続する必要がある(リレー接続要求)。なお、目標値はセル電圧V1に対応する数値である。なお、目標値は予め定められた固定値でもよい。
【0018】
以上から、本実施の形態では、DC/DCコンバータ5は、鉛バッテリ4の電圧Vpbを入力電圧とし、入力電圧よりも高い電圧を出力(昇圧)する昇圧機能を有する。昇圧された電圧はコンデンサ2aに印加される。これにより、電気回路の電圧レベルがセル電圧V1とほぼ同じ電圧値に昇圧する。
【0019】
DC/DCコンバータ5は、DC/DC制御部5aを有する。DC/DC制御部5aは、車両制御部8(VCU)から要求(例えば、昇圧要求、昇圧停止要求、降圧要求、降圧停止要求など)により、降圧機能と昇圧機能とが相互に切り替わるようにDC/DCコンバータ5を制御する。具体的には、DC/DC制御部5aは、車両制御部8(VCU)からの昇圧要求により、鉛バッテリ4の電圧Vpbを昇圧するようにDC/DCコンバータ5を制御する。また、DC/DC制御部5aは、車両制御部8(VCU)からの昇圧停止要求により、鉛バッテリ4の電圧Vpbの昇圧を停止するようにDC/DCコンバータ5を制御する。
【0020】
(バッテリパック6)
複数のバッテリパック6のそれぞれは、同じ構成をしているため、複数のバッテリパック6の中の1つのバッテリパック6を代表して説明する。バッテリパック6は、複数のセル6a、バッテリリレー(+)6b、バッテリリレー(-)6c、および、バッテリ管理部10(BMS)を有している。
【0021】
バッテリリレー(+)6bの一端子は、高電圧ライン6L(+)を介してセル6aのプラス端子に接続されている。バッテリリレー(+)6bの他端子は、高電圧ライン7L(+)に接続されている。バッテリリレー(-)6cの一端子は、高電圧ライン6L(-)を介してセル6aのマイナス端子に接続されている。バッテリリレー(-)6cの他端子は、高電圧ライン7L(-)に接続されている。
【0022】
セル6aは、温度センサ6eおよび電圧センサ6fを有している。温度センサ6eは、セル温度を検出する。温度センサ6eは、検出結果(セル温度)をバッテリ管理部10(BMS)に出力する。電圧センサ6fは、セル電圧V1を検出する。電圧センサ6fは、セル電圧V1をバッテリ管理部10に出力する。また、電圧センサ(不図示)は、電気回路の電圧V2を検出する。電圧センサは、電気回路の電圧V2をバッテリ管理部10に出力する。
【0023】
(ジャンクションボックス7)
ジャンクションボックス7(JB)は、電気回路を構成する。ジャンクションボックス7(JB)は、バッテリパック6と外部負荷2との間に配置されている。JB7は、高電圧ライン7L(+)および高電圧ライン7L(-)を有している。高電圧ライン7L(+)および高電圧ライン7L(-)のそれぞれは、DC/DCコンバータ5を介して鉛バッテリ4に接続されている。
【0024】
次に、プリチャージ装置3の具体例について図2を参照して説明する。図2は、プリチャージ装置3一例を機能的に示す図である。
【0025】
(バッテリ管理部10)
バッテリ管理部10(BMS)は、入力されたセル温度およびセル電圧V1のそれぞれに基づいて、高電圧ライン6L(+)と高電圧ライン7L(+)との間の接続/切断を行うようにバッテリリレー(+)6bを制御するとともに、高電圧ライン6L(-)と高電圧ライン7L(-)との間の接続/切断を行うようにバッテリリレー(-)6cを制御する。
【0026】
バッテリ管理部10(BMS)は、例えば、バッテリパック6の開放電圧(Open Circuit Voltage:OCV)およびセル温度に基づいて、セル温度毎に設定されたSOC(State Of Charge:残容量)とOCVとの関係を表す曲線を参照して、SOCを算出する。
【0027】
バッテリ管理部10(BMS)は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部(例えば、内部メモリ)に記憶されたプログラムを実行することによって通信部10aと、取得部10bと、判定部10cと、監視部10dとして機能する。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0028】
(通信部10a)
通信部10aは、通信ライン(CANバス)を介して車両制御部8(VCU)の通信部8aに接続されている。通信部10aは、取得部10bが取得した電圧値、セル温度およびSOCのそれぞれを車両制御部8(VCU)に送信する。具体的には、通信部10aは、セル温度、セル電圧V1を車両制御部8(VCU)に送信する。また、通信部10aは、電気回路の電圧V2を車両制御部8(VCU)に送信する。また、通信部10aは、車両制御部8(VCU)からリレー接続要求、および、目標値を受信する。
【0029】
(取得部10b)
取得部10bは、バッテリパック6の状態である例えば、セル電圧V1、電気回路の電圧V2、セル温度、およびSOCを一定時間経過する毎に取得する。また、取得部10bは、通信部10aが受信した目標値を取得する。
【0030】
(判定部10c)
判定部10cは、車両制御部8(VCU)からリレー接続要求がされた場合、電気回路の電圧V2が目標値に対して所定範囲内であるか否かを判定する。電気回路の電圧V2のダブルチェックが車両制御部8(VCU)およびバッテリ管理部10(BMS)により行われるため、自己保護を実現することが可能となる。バッテリ管理部10(BMS)は、電気回路の電圧V2が目標値に対して所定範囲内であると判定された場合、車両制御部8(VCU)に対してリレー接続完了通知を出す。
【0031】
(監視部10d)
監視部10dは、バッテリパック6の状態(セル温度、セル電圧V1、電気回路の電圧V2、電流値、および、SOCなど)を監視するとともに、バッテリパック6を安全かつ有効に使うための制御を行う。
【0032】
(車両制御部8)
車両制御部8(VCU)は、EVの状態を判断し、EVを最適な状態に維持する制御を実行する。具体的には、車両制御部8は、EVの異常を検知した場合、EVを停止するようにモータを制御する。また、車両制御部8は、バッテリパック6とモータとの間の電圧を変化させることで、バッテリパック6からモータへの供給電力を制御する。
【0033】
車両制御部8は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部8eに記憶されたプログラムを実行することによって通信部8a、取得部8b、決定部8c、判定部8dとして機能する。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0034】
(通信部8a)
通信部8aは、バッテリ管理部10からバッテリの状態(セル温度、セル電圧V1、電気回路の電圧V2、および、電流値など)を受信する。
【0035】
(取得部8b)
取得部8bは、通信部8aが受信したセル電圧V1および電気回路の電圧V2を取得する。また、取得部8bは、通信部8aが受信した電気回路の電圧V2を取得する。
【0036】
(決定部8c)
決定部8cは、取得部8bにより取得されたセル電圧V1に基づいて目標値を決定する。
【0037】
(判定部8d)
判定部8dは、電気回路の電圧V2が目標値(セル電圧V1)に対して所定範囲内(±X%以内)の数値であるか否かを判定する。
【0038】
車両制御部8は、目標値が決定された場合、DC/DCコンバータ5に対して昇圧要求(プリチャージ要求)を出す。車両制御部8は、電気回路の電圧V2が目標値(セル電圧V1)に対して所定範囲内(±X%以内)の数値であると判定された場合、バッテリ管理部10(BMS)に対してリレー接続要求を出す。車両制御部8は、バッテリ管理部10(BMS)からリレー接続完了通知がされた場合、DC/DCコンバータ5に対して昇圧停止要求(プリチャージ終了要求)を出す。
【0039】
(記憶部8e)
記憶部8eは、車両制御部8を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や車両制御部8の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0040】
バッテリ管理部10および車両制御部8を構成する各装置は、単一の装置で構成されてもよく、別々の装置として構成されてもよい。また、各装置を組み合わせたものと、他の一つの装置で構成されてもよい。図2に示すバッテリ管理部10および車両制御部8を構成する各装置は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。なお、バッテリ管理部10および車両制御部8は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態におけるプリチャージ装置3の動作の一例について図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態におけるプリチャージ装置3の動作の一例を示すフローチャートである。図3に示すフローは、外部負荷2へ供給される電力として、バッテリパック6の電力が用いられる場合に開始される。
【0042】
先ず、ステップS110において、バッテリ管理部10(BMS)は、パック電圧V1を取得する。
【0043】
次に、ステップS210において、車両制御部8(VCU)は、パック電圧V1を受信する。
【0044】
次に、ステップS220において、車両制御部8(VCU)は、目標値を決定する。また、車両制御部8(VCU)は、DC/DCコンバータ5に対して昇圧要求(プリチャージ要求)を送信する。
【0045】
次に、ステップS120において、バッテリ管理部10(BMS)は、リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)を取得する。バッテリ管理部10(BMS)は、車両制御部8(VCU)に対して、リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)を送信する。
【0046】
次に、ステップS310において、DC/DCコンバータ5は、車両制御部8(VCU)からの昇圧要求により、昇圧処理を開始する。
【0047】
次に、ステップS230において、車両制御部8(VCU)は、リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)の数値であるか否かを判定する。リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)である場合(ステップS230:YES)、処理はステップS130に遷移する。リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)でない場合(ステップS230:NO)、処理はステップS230の前に戻る。
【0048】
ステップS130において、バッテリ管理部10(BMS)は、リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)の数値であるか否かを判定する。リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)である場合(ステップS130:YES)、処理はステップS140に遷移する。リレー外側電圧(電気回路の電圧V2)が目標値に対して所定範囲内(±X%以内)でない場合(ステップS130:NO)、本フローは終了する。
【0049】
ステップS140において、バッテリ管理部10(BMS)は、リレーを接続する。また、バッテリ管理部10(BMS)は、車両制御部8(VCU)に対してリレー接続完了通知を行う。車両制御部8(VCU)は、リレー接続完了通知により、DC/DCコンバータ5に対して、昇圧停止要求(プリチャージ終了要求)を送信する。
【0050】
ステップS320において、DC/DCコンバータ5は、昇圧処理を終了する。その後、本フローは、終了する。
【0051】
上記実施の形態におけるプリチャージ装置3は、バッテリパック6と、バッテリパック6から電力が供給される電気回路と、バッテリパック6から電気回路への電力供給を切り替えるバッテリリレー(+)6aおよびバッテリリレー(-)6cと、鉛バッテリ4と、バッテリリレー(+)6a、バッテリリレー(-)6cおよび鉛バッテリ4と電気回路間の電力のやり取りを制御する制御部と、を備え、制御部は、バッテリリレー(+)6aおよびバッテリリレー(-)6cが開状態である間に、鉛バッテリ4からDC/DCコンバータ5を介して電気回路に電力を供給させ、電気回路の電圧レベルが目標値になった場合、バッテリリレー(+)6aおよびバッテリリレー(-)6cを閉状態に制御する。
【0052】
上記構成により、鉛バッテリ4およびDC/DCコンバータ5を用いて、電気回路を昇圧することができるため、メインリレーを排除することが可能となる。
【0053】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、目標値は、バッテリパック6の出力電圧に対応する数値である。これにより、電気回路の電圧をバッテリパック6の出力電圧に対応する電圧に上げることが可能となる。
【0054】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、鉛バッテリ4は、バッテリパック6よりも出力電圧が低いバッテリであり、鉛バッテリ4と電気回路との間にDC/DCコンバータ5を有する。これにより、バッテリパック6よりも出力電圧が低い鉛バッテリ4であっても、DC/DCコンバータ5を用いて、電気回路の出力を上げることが可能となる。
【0055】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、制御部は、DC/DCコンバータ5を制御して鉛バッテリ4から電気回路に電力を供給する。これにより、鉛バッテリ4から電気回路に供給される電力が調整可能となるため、例えば、電気回路の電圧をバッテリパック6の出力電圧に対応する電圧に上げることが可能となる。
【0056】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、制御部は、DC/DC制御部5a、バッテリ管理部10(BMS)、および、車両制御部8(VCU)を備え、DC/DC制御部5aは、電気回路の電圧を調整するようにDC/DCコンバータ5を制御し、バッテリ管理部10(BMS)は、バッテリパック6の出力電圧の数値である第1電圧値、および、電気回路の出力電圧の数値である第2電圧値のそれぞれを監視するとともに、リレーの開閉を制御し、車両制御部8(VCU)は、バッテリ管理部10(BMS)から第1電圧値を取得し、取得した第1電圧値に基づいて目標値を決定し、DC/DC制御部5aに対して昇圧要求を出すと共に、バッテリ管理部10(BMS)から第2電圧値を取得し、取得した第2電圧値が目標値に対して所定範囲内であるか否かを判定し、第2電圧値が目標値に対して所定範囲内であると判定した場合、バッテリ管理部10(BMS)に対してリレーの閉じ要求を出す共に、DC/DC制御部5aに対して昇圧停止要求を出す。これにより、電気回路の電圧がバッテリパック6の出力電圧に対応する電圧に上がった後、リレーが閉じられるため、バッテリパック6からの大電流により電気回路が故障することがない。その結果、電気回路上に配置されるメインリレーを排除することが可能となる。
【0057】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、バッテリ管理部10(BMS)は、車両制御部8(VCU)から目標値を取得し、リレーの閉じ要求が出された場合、取得した目標値に対して第2電圧値が所定範囲内であるか否かを判定し、第2電圧値が所定範囲内である場合、リレーを閉状態に制御する。これにより、電気回路の電圧V2のダブルチェックが車両制御部8(VCU)およびバッテリ管理部10(BMS)により行われるため、自己保護を実現することが可能となる。
【0058】
なお、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、目標値をバッテリパック6の出力電圧に対応する数値とした。しかし、本開示はこれに限らず、例えば、目標値は予め定められた固定値でもよい。この場合、固定値は、電力システム1の種類毎に行われる実験やシミュレーションにより設定される。
【0059】
また、上記実施の形態におけるプリチャージ装置3では、鉛バッテリ4の電圧Vpbは、例えば、11[V]から14[V]までの範囲の電圧である。しかし、本開示はこれに限らず、鉛バッテリ4の電圧Vpbは、例えば、22[V]から28[V]までの範囲の電圧でもよい。この場合、制御部は、22[V]から28[V]までの範囲の電圧を有する鉛バッテリ4を用いて、電気回路を昇圧する制御を実行する。なお、11[V]から14[V]までの範囲の電圧を有する鉛バッテリ4と、22[V]から28[V]までの範囲の電圧を有する鉛バッテリ4との両方のバッテリを備えてもよい。この場合、制御部は、両方のバッテリを切り替えて用いて、電気回路を昇圧する制御を実行する。
【0060】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、メインリレーを排除することが要求される電力供給システムを備えたEVに好適に利用される。
【符号の説明】
【0062】
1 電力システム
2 外部負荷
3 プリチャージ装置
4 鉛バッテリ
5 DC/DCコンバータ
6 バッテリパック
6a セル
6b バッテリリレー(+)
6c バッテリリレー(-)
6L 高電圧ライン
7 ジャンクションボックス(JB)
7L 高電圧ライン
8 車両制御部(VCU)
8a 通信部
8b 取得部
8c 決定部
8d 判定部
8e 記憶部
10 バッテリ管理部(BMS)
10a 通信部
10b 取得部
10c 判定部
10d 監視部
【要約】
【課題】メインリレーを排除することが可能なプリチャージ装置を提供する。
【解決手段】プリチャージ装置は、第1バッテリと、第1バッテリから電力が供給される電気回路と、第1バッテリから電気回路への電力供給を切り替えるリレーと、第2バッテリと、リレーおよび第2バッテリと電気回路間の電力のやり取りを制御する制御部と、を備え、制御部は、リレーが開状態である間に、第2バッテリから電気回路に電力を供給させ、電気回路の電圧レベルが所定の値以上になった場合、リレーを閉状態に制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3