(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】防曇システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240806BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60H1/00 103S
B60H1/34 671B
B60H1/34 651C
B60H1/00 103A
(21)【出願番号】P 2023091278
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2019176587の分割
【原出願日】2019-09-27
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】山根 龍一
(72)【発明者】
【氏名】山口 和哉
(72)【発明者】
【氏名】豊田 明寿
(72)【発明者】
【氏名】縣 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】福元 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 佑香
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202768(JP,A)
【文献】特開平01-254421(JP,A)
【文献】特開平11-139262(JP,A)
【文献】特開平01-226416(JP,A)
【文献】特開2000-280722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設置され、前記車両外部の周辺情報を撮影するカメラと、
前記カメラによる撮影範囲内となる部分を含む前記車両の窓ガラスに向けて送風するデフロスタと、
前記カメラで撮影した前記車両外部の周辺情報に基づいて、前記カメラによる撮影範囲内における前記窓ガラスの曇りレベルを検知する画像処理部と、
前記画像処理部で曇りを検知した場合に設定した風量で前記デフロスタを作動させる空調制御部と、
前記デフロスタの作動状態を表示する表示装置と
を含み、
前記空調制御部は、
前記曇りを検知した場合に設定した前記風量で前記デフロスタが作動しているときと、手動操作により設定された風量で前記デフロスタが作動しているときとで、前記表示装置における前記デフロスタの作動状態を示す表示を異なる表示にし、
手動操作による前記デフロスタの風量の設定情報の入力を受け付けた場合には、該手動操作による設定風量と前記曇りを検知した場合に設定した前記風量のうちの大きいほうの風量で前記デフロスタを作動させる
ことを特徴とする防曇システム。
【請求項2】
前記空調制御部は、前記画像処理部で検知した前記曇りレベルに基づいて、前記曇りを検知した場合の前記デフロスタの風量を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の防曇システム。
【請求項3】
前記カメラは、運転者による車両の運転を支援する運転支援システムに用いられるカメラであり、
前記運転支援システムのオフ時の前記カメラの動作がオフである場合には、前記曇りの検知による前記デフロスタの作動を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の防曇システム。
【請求項4】
前記空調制御部は、前記曇りを検知した場合に設定した前記風量で前記デフロスタが作動しているときと、前記手動操作により設定された前記風量で前記デフロスタが作動しているときとで、前記表示装置における前記デフロスタの作動状態を示す情報の表示を、一方のときには点灯表示にさせ、他方のときには点滅表示にさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の防曇システム。
【請求項5】
前記空調制御部は、前記曇りを検知した状態から検知しない状態になった場合、前記手動操作により設定された前記風量で前記デフロスタが作動していなければ、前記デフロスタの作動を非作動にする
ことを特徴とする請求項1に記載の防曇システム。
【請求項6】
前記防曇システムは、前記車室内の前記窓ガラスとは異なる方向に送風する送風部、をさらに含み、
手動操作による前記送風部の作動時の前記デフロスタの風量の最大風量と、検知した前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の最大風量とでは、前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の前記最大風量のほうが大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の防曇システム。
【請求項7】
車両の車室内に設置され、前記車両外部の周辺情報を撮影するカメラと、
前記カメラによる撮影範囲内となる部分を含む前記車両の窓ガラスに向けて送風するデフロスタと、
前記カメラで撮影した前記車両外部の周辺情報に基づいて、前記カメラによる撮影範囲内における前記窓ガラスの曇りレベルを検知する画像処理部と、
前記画像処理部で曇りを検知した場合に設定した風量で前記デフロスタを作動させる空調制御部と、
前記デフロスタの作動状態を表示する表示装置と、
前記車室内の前記窓ガラスとは異なる方向に送風する送風部と
を含み、
前記空調制御部は、
前記曇りを検知した場合に設定した前記風量で前記デフロスタが作動しているときと、手動操作により設定された風量で前記デフロスタが作動しているときとで、前記表示装置における前記デフロスタの作動状態を示す表示を異なる表示にし、
手動操作による前記送風部の作動時の前記デフロスタの風量の最大風量と、検知した前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の最大風量とでは、前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の前記最大風量のほうが大きい
ことを特徴とする防曇システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇システムに関し、より具体的には、車両のフロントガラスの結露による曇りに対する防曇システムに関する。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車等の車両には、例えば、結露によるフロントガラスの曇りの発生を防止し、また発生した曇りを除去するためのデフロスタが装備されたものがある。車両のデフロスタは、一般に、車両の乗員が車室内に設けられたスイッチを操作することにより作動し、風量を調整することができる。
【0003】
関連技術の1つとして、フロントガラスの曇りの程度に応じて、複数の異なるレベルの防曇手段のうちの最適な防曇手段を自動的に選択して作動させることで、フロントガラスの曇りを除去するものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の車両には、自車両前方の映像(画像を含む)を撮影するカメラが搭載されたものが増えている。カメラで撮影した自車両前方の映像は、例えば、運転者による車両の安全運転を支援する運転支援システムで利用される。
【0006】
自車両前方の映像を撮影する上記のカメラは、通常、車室内に設置され、車両のフロントガラス越しに自車両前方の映像を撮影する。このため、車室内に設置されたカメラにより自車両前方の映像を撮影する場合、車両前方の視認性の確保の観点から、車両のフロントガラスに結露による曇りが生じないようにすること、及び発生した曇りを迅速に除去することが望まれる。
【0007】
しかしながら、車両の乗員は、車室内の環境等に応じて手動操作によりデフロスタの風量の調節等を行うことがある。手動操作により設定されたデフロスタの作動状態は、フロントガラスの曇りを迅速に除去するための好ましい作動状態とは必ずしも一致しない。このため、カメラが搭載された車両における防曇対策として、車両の乗員の意思と、車両前方の視認性の確保とのより好適な協調が望まれている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、カメラが搭載された車両における乗員の意思と車両前方の視認性の確保との協調が可能な防曇システムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防曇システムは、車両の車室内に設置され、前記車両外部の周辺情報を撮影するカメラと、前記カメラによる撮影範囲内となる部分を含む前記車両の窓ガラスに向けて送風するデフロスタと、前記カメラで撮影した前記車両外部の周辺情報に基づいて、前記カメラによる撮影範囲内における前記窓ガラスの曇りレベルを検知する画像処理部と、前記画像処理部で曇りを検知した場合に設定した風量で前記デフロスタを作動させる空調制御部と、前記デフロスタの作動状態を表示する表示装置とを含み、前記空調制御部は、前記曇りを検知した場合に設定した前記風量で前記デフロスタが作動しているときと、手動操作により設定された風量で前記デフロスタが作動しているときとで、前記表示装置における前記デフロスタの作動状態を示す表示を異なる表示にし、手動操作による前記デフロスタの風量の設定情報の入力を受け付けた場合には、該手動操作による設定風量と前記曇りを検知した場合に設定した前記風量のうちの大きいほうの風量で前記デフロスタを作動させる防曇システムである。
本発明に係る別の防曇システムは、車両の車室内に設置され、前記車両外部の周辺情報を撮影するカメラと、前記カメラによる撮影範囲内となる部分を含む前記車両の窓ガラスに向けて送風するデフロスタと、前記カメラで撮影した前記車両外部の周辺情報に基づいて、前記カメラによる撮影範囲内における前記窓ガラスの曇りレベルを検知する画像処理部と、前記画像処理部で曇りを検知した場合に設定した風量で前記デフロスタを作動させる空調制御部と、前記デフロスタの作動状態を表示する表示装置と、前記車室内の前記窓ガラスとは異なる方向に送風する送風部とを含み、前記空調制御部は、前記曇りを検知した場合に設定した前記風量で前記デフロスタが作動しているときと、手動操作により設定された風量で前記デフロスタが作動しているときとで、前記表示装置における前記デフロスタの作動状態を示す表示を異なる表示にし、手動操作による前記送風部の作動時の前記デフロスタの風量の最大風量と、検知した前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の最大風量とでは、前記曇りレベルに基づいて設定した前記風量の前記最大風量のほうが大きい防曇システムである。
【発明の効果】
【0011】
上記の防曇システムによれば、カメラが搭載された車両における乗員の意思と車両前方の視認性の確保との協調が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る防曇システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】防曇システムの車両への設置例を説明する図である。
【
図3】防曇システムの自動制御の設定例を説明する図である。
【
図5】防曇システムの制御動作を説明するフローチャートである。
【
図6】防曇システムの制御動作の別の例を説明するフローチャートである。
【
図7】
図6のフローチャートにおける足元送風制御処理の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る防曇システム及び防曇方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、カメラが搭載された車両に適用された防曇システム及び防曇方法を例示するが、カメラが搭載された車両における防曇システムと直接の関係がない既知の構成に関する詳細な説明は省略する。また、以下に例示する防曇システムは、結露による曇りの発生を防止し、また結露により発生した曇りを除去するシステムである。以下の説明における「曇り」は、特に断りのない限り、結露による曇りのことを指す。
【0014】
図1は、一実施形態に係る防曇システムの構成例を示すブロック図である。
図2は、防曇システムの車両への設置例を説明する図である。
【0015】
図1に例示する防曇システム1は、カメラ2と、ヨーレートセンサ3と、デフロスタ4と、足元送風部5と、空調制御部6と、コントローラ7とを含む。
【0016】
カメラ2は、防曇システム1が搭載された車両10の前方の画像(映像を含む)を撮影し、該車両10の前方に存在する物体等の検出、及び曇りレベルの検知を行う。カメラ2は、撮影部11と、画像処理部12とを含む。撮影部11は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含む。画像処理部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。画像処理部12は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含むものであってもよい。
【0017】
カメラ2は、例えば、
図2に示すように、車両10の車室10R内に、該車両10のフロントガラス1001越しに車両10の前方を撮影する向きで取り付けられる。カメラ2で撮影した車両前方の風景の画像は、例えば、衝突被害軽減ブレーキであり得るブレーキ制御装置8等の、車両10に搭載された運転支援システムによる自動制御に使用される。この種のカメラ2は、例えば、ステレオカメラであり、撮影部11は、視点の異なる2つの画像を撮影する。画像処理部12は、例えば、撮影部11により撮影した画像(ステレオ画像)に基づいて車両10の前方に存在する障害物を検出する処理を行う。画像処理部12における障害物の検出結果は、例えば、該車両10に搭載されたブレーキ制御装置8における衝突被害を軽減するための自動制御に使用される。
【0018】
また、本実施形態の防曇システム1における画像処理部12は、撮影部11により撮影した画像に基づいてフロントガラス1001の曇りレベルを検知する。画像処理部12は、例えば、撮影した画像における物体の鮮明さの度合いや視点が異なる画像間での物体の類似度等に基づいて、フロントガラス1001の曇りレベルがあらかじめ定めた多段階の曇りレベルのうちのどのレベルであるかを検知する。カメラ2がステレオカメラである場合には、画像処理部12は、ヨーレートセンサ3で検出したヨーレートに基づいて車両10が直進していると判定された場合にのみ、フロントガラス1001の曇りレベルを検知してもよい。走行中の車両10がカーブ路等で旋回しているときにステレオカメラで撮影される1組の画像の視差は、該車両10が直進している場合の視差とは異なる場合がある。このため、車両10が旋回しているときにステレオカメラで撮影した1組の画像を用いて曇りレベルを検知した場合、画像間での同一物体の対応付けの精度が低下し、検知した曇りレベルが実際の曇りレベルよりも高くなってしまうことがある。したがって、カメラ2がステレオカメラである場合、車両10が直進している場合にのみ曇りレベルを検知することが好ましい。なお、車両10が直進しているか否かの判定に用いる情報は、ヨーレートセンサ3で検出したヨーレートに限らず、車両10に搭載された他のセンサ等により検出又は計測される車両10の操舵情報であってもよい。
【0019】
デフロスタ4は、フロントガラス1001における車室10R内に向いた面の曇りの発生を防止し、また発生した曇りを除去するための送風部である。足元送風部5は、運転席の運転者20及び助手席の乗員の足が置かれる空間(以下「足元」という)に向けて送風する送風部である。デフロスタ4は、例えば、
図2に示すように、ダッシュボード1002の上面からフロントガラス1001における車室10R内に向いた面に向けて送風するように設置される。足元送風部5は、例えば、
図2に示すように、ダッシュボード1002の下面から車室10Rの床面1003に向けて送風するように設置される。デフロスタ4と足元送風部5とは、例えば、デフロスタ4及び足元送風部5がオンである場合に、デフロスタ4又は図示しない空調部で生成した、除湿された暖かい空気をデフロスタ4と足元送風部5とに分配して送風することができるようになっていてもよい。
【0020】
空調制御部6は、デフロスタ4及び足元送風部5を含む車室10R内に対する空調機器の動作を制御する。本実施形態における空調制御部6が行う制御は、画像処理部12で検知したフロントガラス1001の曇りレベルに基づくデフロスタ4の動作の自動制御を含む。また、空調制御部6が行う制御は、運転者20等の車両10の乗員がコントローラ7を操作してデフロスタ4の風量を設定した場合に、曇りレベルに基づく設定風量と該操作による設定風量との大小関係に基づくデフロスタ4の風量の自動制御を含む。コントローラ7は、空調制御部6に対する入出力装置であり、入力装置として機能するスイッチ15と、出力装置として機能するディスプレイ16とを含む。スイッチ15は、例えば、デフロスタ4のオン/オフを切り替えるスイッチ、足元送風部5のオン/オフを切り替えるスイッチ、カーエアコンのオン/オフを切り替えるスイッチ等を含む。ディスプレイ16は、デフロスタ4及び足元送風部5を含む空調機器の動作状態、温度等の情報を表示する。空調制御部6は、例えば、車両10に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。
【0021】
なお、
図2では省略しているが、カメラ2には、車両10内の所定位置に設置されたヨーレートセンサ3及びブレーキ制御装置8が接続されている。また、
図1及び
図2では省略しているが、車両10の防曇システム1は、車両10のリアガラスの曇りの防止、及び発生した曇りを除去するデフォッガー等を含む。
【0022】
カメラ2が搭載された車両10には、走行中にカメラ2で撮影した画像に基づいて、運転者20による車両10の安全運転を支援する運転支援システムが搭載されている。
図1に示したブレーキ制御装置8は、上述したように、運転支援システムの一例である衝突被害軽減ブレーキであり得る。衝突被害軽減ブレーキであるブレーキ制御装置8は、例えば、カメラ2で撮影した画像に基づいて車両10の前方に障害物を検出した場合に、衝突被害を軽減するために運転者20への警告やブレーキの補助操作を行う。
【0023】
カメラ2で撮影した画像を利用する運転支援システムが搭載された車両10では、カメラ2で撮影した画像が鮮明であることが好ましい。このため、この種の車両10においては、フロントガラス1001に曇りが発生しないようにすること、及び曇りが発生した場合に迅速に曇りを除去することが望まれる。したがって、本実施形態の防曇システム1における空調制御部6は、上述したように、画像処理部12で検知したフロントガラス1001の曇りレベルに基づくデフロスタ4の動作の自動制御を行う。
【0024】
図3は、防曇システムの自動制御の設定例を説明する図である。
図3の設定情報30は、防曇システム1の空調制御部6がデフロスタ4を自動制御する場合(言い換えると、車両10の乗員によるデフロスタ4の手動操作が行われていない場合)の、フロントガラス1001の曇りレベルと動作の内容との対応関係の一例を示している。
【0025】
図3に例示した設定情報30では、画像処理部12で検知したフロントガラス1001の曇りレベルをレベル0からレベル6までの7段階に分割している。曇りレベル0は、フロントガラス1001に曇りが無いと判定される曇りレベルである。曇りレベル0は、カメラ2の動作がオフである場合を含む。曇りレベル6は、例えば、フロントガラス1001に発生する曇りのうち想定される最も重度の曇りと対応する曇りレベルである。曇りレベル1~6は、数値が大きくなるほどフロントガラス1001の曇りの度合いが増し、カメラ2で撮影した画像内の物体の輪郭が不鮮明になる。
【0026】
設定情報30のモード及び風量は、曇りレベルと対応付けられたデフロスタ4の作動設定及び風量を示す。曇りレベルが0である場合には、デフロスタ4を作動させる必要はない。このため、デフロスタ4の手動操作が行われておらず、かつ曇りレベルが0である場合には、モードを停止(非作動)に設定し、風量を0に設定する。また、フロントガラス1001の曇りの度合いが比較的低い曇りレベル1~3である場合には、デフロスタ4の風量が最大風量よりも小さい風量であっても迅速に曇りを除去することができる。このため、デフロスタ4の手動操作が行われておらず、曇りレベル1~3である場合には、それぞれ、デフロスタ4を作動させるが、風量は最大風量よりも小さい4/8段~6/8段の風量で作動させる。ここで、n/m段の風量は、最小風量から最大風量までm段階で調節可能である風量のうちの最小風量からn番目の段階の風量であることを意味する。例えば、4/8段は、8段階で調節可能なデフロスタ4の風量のうち、最小風量から4番目の段階の風量であることを意味する。このように、曇りレベルが小さく、最大風量と比べて比較的小さい風量でデフロスタ4を作動させる場合、デフロスタ4又は図示しない空調部には、湿度の低い暖かい空気をより多く生成するための余力がある。このため、曇りレベルが低い場合には、デフロスタ4とともに足元送風部5を作動させることを許容してもよい。
【0027】
これに対し、フロントガラス1001の曇りレベル4~6である場合、迅速に曇りを除去するためにはデフロスタ4の風量を大きくする必要がある。このため、デフロスタ4の手動操作が行われておらず、かつ曇りレベル4~6である場合には、それぞれ、最大風量に近い又は最大風量である6/8段~8/8段の風量で作動させる。このような場合、デフロスタ4又は図示しない空調部により生成される湿度の低い暖かい空気はできるだけ多くフロントガラス1001に向けて送風することが好ましく、足元送風部5に分配できるだけの十分な余力がない。このため、曇りレベルが高い場合には、足元送風部5の作動を禁止(不可)にする。このように、曇りレベルが高くデフロスタ4の風量を大きくする必要がある場合にのみ、足元送風部5の作動を禁止することにより、曇りの除去に要する時間が長くなることを防ぎつつ、足元送風部5の作動を望む車両10の乗員の意思とは異なる作動状態になることを抑制することができる。
【0028】
また、設定情報30のDFR表示は、デフロスタ4の動作(風量)を自動制御している場合の、コントローラ7のディスプレイ16におけるデフロスタ4の作動状態を示す情報の表示方法を示す。デフロスタ4の手動操作が行われておらず、かつ曇りレベルが0でデフロスタ4を非作動状態に維持する制御をしている場合、ディスプレイ16におけるデフロスタ4の作動状態を示す情報は消灯又は非表示とする。曇りレベルが1以上であり曇りレベルに基づいてデフロスタ4の風量を自動制御している場合、ディスプレイ16におけるデフロスタ4の作動状態を示す情報は、手動操作により設定された風量でデフロスタ4が作動している場合の表示方法とは異なる方法で表示する。例えば、ディスプレイ16におけるデフロスタ4の作動状態を示す情報は、手動操作によりデフロスタ4が作動している場合には点灯させ、自動制御している場合には点滅させる。なお、ディスプレイ16におけるデフロスタ4の作動状態を示す情報の表示は、例えば、点灯時の色を変える、又はデフロスタ4が作動しているか否かを示す情報とともに自動制御中であることを示す付加情報を点灯させる等の別の方法で自動制御中であるか否かを識別することができるようにしてもよい。
【0029】
このように、本実施形態の防曇システム1では、フロントガラス1001の曇りレベルに応じてデフロスタ4の風量を自動制御することにより、フロントガラス1001に発生した曇りを効率よく除去することができる。特に、曇りレベルを多段階で検知し、それぞれの曇りレベルに応じた風量でデフロスタ4を作動させることにより、早期に曇りを検知し効率よく除去することができる。例えば、軽度の曇りが発生した段階でデフロスタ4を自動で作動させることにより、曇りレベルが高くなってからデフロスタ4を作動させる場合と比べて小さい風量で短時間に曇りを除去することができる。このため、デフロスタ4を作動させることによる電力消費量の増大を抑制することができる。また、フロントガラス1001の曇りがカメラ2で撮影した画像を使用するブレーキ制御装置8等の制御に影響を与える可能性のある期間の長期化を抑制することができる。
【0030】
なお、
図3に示した設定情報30は、デフロスタ4に対する手動操作が行われていない場合の曇りレベルとデフロスタ4の作動モード及び風量との関係の一例に過ぎない。曇りレベルは、
図3に例示した0~6の7段階に限らず、2段階(曇りなしと曇り有りのみ)から6段階までのいずれか、或いは8段階以上であってもよい。また、曇りレベルに応じたデフロスタ4の風量を示す値n/mにおけるn及びmの値は、
図3に例示した値に限らず、適宜変更可能である。また、曇りレベルに応じた風量と対応して、足元送風を許容する曇りレベルと足元送風を禁止する曇りレベルとの境界を変動させてもよい。
【0031】
また、本実施形態の防曇システム1におけるデフロスタ4の風量は、上記のように、運転者20等の車両10の乗員がコントローラ7のスイッチ15を操作することにより調節することもできる。このため、運転者20等の車両10の乗員は、フロントガラス1001の曇りの度合いや車室10R内の環境(温度や湿度等)に応じて、手動操作により、デフロスタ4の風量を自動制御で設定される風量とは異なる風量に設定することができる。
【0032】
図4は、コントローラの構成例を説明する図である。
図4には、本実施形態の防曇システム1のコントローラ7として利用可能なA/Cコントローラの操作パネルの一例を示している。
【0033】
コントローラ7の操作パネルには、スイッチ15として、エアコンのオン/オフスイッチ1501、モード切替スイッチ1502、オートA/Cスイッチ1503、デフロスタ切替スイッチ1504、風量調整スイッチ1505、及び温度調整スイッチ1506を含む複数のスイッチが配置されている。エアコンのオン/オフスイッチ1501は、車両10に搭載されたカーエアコンのオン/オフを切り替えるスイッチである。モード切替スイッチ1502は、カーエアコンの動作モードを切り替えるスイッチである。オートA/Cスイッチ1503は、カーエアコンの自動制御のオン/オフを切り替えるスイッチである。デフロスタ切替スイッチ1504は、手動操作により設定された風量でデフロスタ4を作動させる手動制御のオン/オフを切り替えるスイッチである。風量調整スイッチ1505は、カーエアコン、デフロスタ4、及び足元送風部5等の風量を調整するスイッチである。温度調整スイッチ1506は、カーエアコン等の設定温度を調整するスイッチである。これらのスイッチ1501~1506を含むコントローラ7のスイッチ15は、例えば、モーメンタリー式のスイッチとする。
【0034】
コントローラ7の操作パネルには、ディスプレイ16として、例えば、液晶ディスプレイが配置されている。ディスプレイ16には、例えば、風量を示すインジケータ1601、デフロスタ4の作動状態を示すマーク1602、及び足元送風部5の作動状態を示すマーク1603を含む、車内空調に関する各種情報の表示領域が設けられている。デフロスタ4の作動状態を示すマーク1602は、上述したように、デフロスタ4が作動していない場合には消灯又は非表示となり、デフロスタ4の風量を曇りレベルに基づいて自動制御している場合には点滅する。また、車両10の乗員がデフロスタ切替スイッチ1504を操作して手動操作によるデフロスタ4の風量の調整を有効にした場合には、マーク1602は点灯する。足元送風部5の作動状態を示すマーク1603は、例えば、足元送風部5が作動していない場合には消灯又は非表示となり、足元送風部5が作動している場合には点灯する。
【0035】
ディスプレイ16のデフロスタ4の作動状態を示すマーク1602は、上記のように、デフロスタ4が曇りレベルに基づく自動制御により設定された風量で作動している場合には点滅し、手動操作により設定された風量で作動している場合には点灯する。このようにすることで、運転者20等の車両10の乗員は、マーク1602の表示に基づいてデフロスタ4の作動状態を容易に識別することができる。
【0036】
なお、コントローラ7のスイッチ15及びディスプレイ16は、
図4に例示した構成に限らず、スイッチの種類やレイアウト、及びディスプレイ16の表示内容等は適宜変更可能である。また、コントローラ7のスイッチ15及びディスプレイ16は、それらが一体化されたタッチパネル式であってもよい。例えば、コントローラ7のスイッチ15のうち、デフロスタ4の風量の調整に関係するスイッチがレバー式である場合、該スイッチにより設定(指定)されているデフロスタ4の設定風量と、実際のデフロスタ4の風量とにずれ(アンマッチ)が生じることがあり、運転者20等の車両10の乗員に違和感を与えることがある。これに対し、コントローラ7におけるデフロスタ4の風量の調整に関係するスイッチをモーメンタリー式又はタッチパネル式にした場合、実際のデフロスタ4の風量によらずスイッチの状態が一定であるため、運転者20等の車両10の乗員に違和感が生じにくい。
【0037】
本実施形態の防曇システム1は、例えば、車両10のイグニッション電源がオンになると、カメラ2で撮影した車両前方の風景の画像信号を利用して検知したフロントガラス1001の曇りレベルに基づいて、デフロスタ4の風量の自動制御を行う。また、防曇システム1は、運転者20等の車両10の乗員がコントローラ7を手動操作することにより入力されるデフロスタ4の風量を指定する情報を受け付けることができる。例えば、車両10の乗員は、デフロスタ切替スイッチ1504を操作してデフロスタ4の手動操作が可能な状態にした後、風量調整スイッチ1505を操作してデフロスタ4の風量を大きくする情報又は小さくする情報を入力することができる。このため、車両10の乗員は、フロントガラス1001の曇りの度合いや車室10R内の環境(温度や湿度等)に応じて、手動操作により、デフロスタ4の風量を自動制御で設定される風量とは異なる風量に設定することができる。
【0038】
しかしながら、手動操作により設定されたデフロスタ4の風量がフロントガラス1001の曇りレベル及び設定情報30に基づいて設定される風量とは異なる場合、曇りの除去効率が低下し、曇りレベルが0になるまでに要する時間が長くなることがある。すなわち、車両10の乗員の意思である手動操作に応じてデフロスタ4の風量を設定した場合、フロントガラス1001の曇りが車両前方の視認性の確保に影響を与える可能性のある期間が長くなってしまうことがある。このような事態の発生を防ぐ、乗員の意思と車両前方の視認性の確保とのより好適な協調を可能にするため、本実施形態の防曇システム1では、例えば、
図5のフローチャートに沿ってデフロスタ4の風量(作動状態)を制御する。
【0039】
図5は、防曇システムの制御動作を説明するフローチャートである。車両10に搭載された防曇システム1は、例えば、車両10のイグニッション電源がオンになると、
図5に例示したステップS1~S8、並びにステップS11及びS12を含む制御処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0040】
防曇システム1は、まず、車両10が前進しており、かつ車速が曇りレベル検知開始車速であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1の判定処理は、例えば、カメラ2が行う。カメラ2の撮影部11は、車両前方の風景を撮影し該風景の画像信号を画像処理部12に出力する処理を、所定の時間間隔で繰り返す。カメラ2の画像処理部12は、撮影部11が出力する画像信号における風景の時間変化に基づいて、車両10が前進しているか否かを判定し、前進している場合には現在の車両10の車速を算出する。画像処理部12は、既知である、画像信号を使用した物体の移動速度の算出方法に従って、車両10の移動方向及び車速を算出する。例えば、画像処理部12は、撮影時刻が異なる複数の画像信号から抽出した同一の静止物体の位置の時間変化に基づいて、車両10の移動方向及び車速を算出する。なお、車両10の移動方向及び車速は、画像処理部12により算出する代わりに、例えば、
図1等には示していない車両10の車速センサ等の各種センサや計測機器から取得してもよい。例えば、車両10が前進しているか否かの判定は、車両10のギアの状態を利用してもよく、例えば、Rギアに入っている場合には前進していないと判定してもよい。
【0041】
曇りレベル検知開始車速は、フロントガラス1001の曇りレベルを検知する車速の下限値である。本実施形態の防曇システム1では、衝突被害軽減ブレーキとして機能するブレーキ制御装置8に対して車両前方の障害物の有無を示す情報を提供するカメラ2の撮影範囲内におけるフロントガラス1001の曇りレベルを検知する。このような場合、曇りレベル検知開始車速は、衝突被害軽減ブレーキが作動する車速範囲よりも低くすることが好ましい。例えば、衝突被害軽減ブレーキが作動する車速範囲が5km/h以上である場合には、例えば、曇りレベル検知開始車速は3km/h等に設定する。
【0042】
車両が前進していない、又は前進している車両10の車速が曇りレベル検知開始車速よりも低い場合(ステップS1;NO)、防曇システム1は、曇りレベルを検知する処理等を行わず、デフロスタ4の作動(風量の設定)に関する手動操作が行われた状態であるか否かを判定する(ステップS11)。空調制御部6は、イグニッション電源がオンになり防曇システム1が動作を開始してからステップS11の判定処理を行う直前までの期間内にコントローラ7を通してデフロスタ4の風量を指定する情報を受け付けた場合に、手動操作が行われた状態であると判定する。手動操作が行われていない場合(ステップS11;NO)、防曇システム1は、デフロスタ4を非作動(風量0)の状態にし(ステップS12)、制御処理を終了(リターン)する。手動操作が行われた状態である場合(ステップS11;YES)、防曇システム1は、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させ(ステップS8)、制御処理を終了(リターン)する。なお、ステップS11の判定処理を行った時点ですでにデフロスタ4が作動している場合のステップS8の処理は、デフロスタ4の作動を手動操作により設定された風量で継続する処理になる。
【0043】
車両10が前進しており、かつ車速が曇りレベル検知開始車速以上である場合(ステップS1;YES)、防曇システム1は、次に、車両10が直進しているか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2の判定処理は、例えば、画像処理部12が行う。画像処理部12は、ヨーレートセンサ3が検出した車両10のヨーレートに基づいて、車両10が直進しているか否かを判定する。画像処理部12は、例えば、ヨーレートが0度/sを含む所定の範囲内(例えば-0.1度/sから+0.1度/sまでの範囲内)である場合に、車両10が直進していると判定する。なお、画像処理部12は、ヨーレートを利用したその他の方法、又はヨーレートとは別の情報を利用した方法で、車両10が直進しているか否かを判定してもよい。車両10が直進していない場合(ステップS2;NO)、防曇システム1は、曇りレベルを検知する処理等を行わず、上述したステップS11の判定処理を行い、その後ステップS12又はS8の処理を行って制御処理を終了(リターン)する。
【0044】
車両10が直進している場合(ステップS2;YES)、防曇システム1は、次に、フロントガラス1001の曇りレベルを検知する(ステップS3)。ステップS3の処理は、例えば、画像処理部12が行う。画像処理部12は、例えば、撮影部11で撮影した1組のステレオ画像(車両前方の風景の画像信号の組)から抽出した物体の輪郭の鮮明度や同一物体の類似度等に基づいて、フロントガラス1001の曇りレベルを検知する。曇りレベルは、例えば、
図3に例示した設定情報30のようなレベル0からレベル6までの7段階とする。画像処理部12は、検知した曇りレベルを空調制御部6に通知する。
【0045】
次に、防曇システム1は、検知した曇りレベルに基づいて、フロントガラス1001に曇りが有るか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4の判定処理は、曇りレベルの通知を受けた空調制御部6が行う。
図3に例示した設定情報30のような7段階のレベルで曇りレベルを検知した場合、空調制御部6は、曇りレベルが0であれば曇りがないと判定し、曇りレベルが1~6のいずれかであれば曇りがあると判定する。曇りがない場合(ステップS4;NO)、防曇システム1は、続けて上述したステップS11の判定処理を行い、その後ステップS12又はS8の処理を行って制御処理を終了(リターン)する。ステップS4において曇りがないと判定する(すなわち検知した曇りレベルが0である)場合には、現在行っている制御処理よりも前に行われた制御処理において曇りレベルが1以上であったためデフロスタ4を作動させたことにより曇りが除去され、曇りレベルが0に戻った場合が含まれる。デフロスタ4を作動させたことにより曇りレベルが1以上のレベルから0に戻った場合には、デフロスタ4を作動した状態で維持する必要がない。このため、デフロスタ4の手動操作が行われていない状態である場合には、防曇システム1は、ステップS12でデフロスタ4を非作動にする(すなわち停止させる)。これにより、曇りが除去された後もデフロスタ4の作動が継続することによる電力消費量の増大を抑制することができる。また、デフロスタ4の手動操作が行われた状態である場合には、防曇システム1は、曇りが除去された後も、手動操作の設定風量(すなわち車両10の乗員の意思)に応じたデフロスタ4の作動を継続する。
【0046】
また、曇りが有る場合(ステップS4;YES)も、防曇システム1は、次に、デフロスタ4の作動(風量の設定)に関する手動操作が行われたか否かを判定する(ステップS5)。ステップS11がデフロスタ4を非作動にするか手動操作の設定風量で作動させるかの判定を目的としているのに対し、ステップS5は、曇りレベルに応じた設定風量と手動操作の設定風量とのどちらでデフロスタ4を作動させるかの判定を目的としている。ステップS5の判定処理は、空調制御部6が行う。空調制御部6は、イグニッション電源がオンになり防曇システム1が動作を開始してからステップS5の判定処理を行う直前までの期間内にコントローラ7を通してデフロスタ4の風量を指定する情報を受け付けた場合に、手動操作が行われたと判定する。
【0047】
手動操作が行われていない場合(ステップS5;NO)、空調制御部6は、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4を作動させ(ステップS6)、制御処理を終了(リターン)する。なお、ステップS5の判定処理を行った時点ですでにデフロスタ4が作動している場合のステップS6の処理は、予め設定された曇りレベルと風量との対応関係(例えば、
図3に例示した設定情報30)に基づいて設定された、現在の曇りレベルに応じた風量でデフロスタ4の作動を継続する処理になる。
【0048】
手動操作が行われた状態である場合(ステップS5;YES)、空調制御部6は、次に、現在の手動操作の設定風量が、曇りレベルに応じた設定風量よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7の判定処理における曇りレベルに応じた設定風量は、予め設定された曇りレベルと風量との対応関係(例えば、
図3に例示した設定情報30)に基づいて設定される、現在の曇りレベルに応じた風量である。
【0049】
手動操作の設定風量が曇りレベルに応じた設定風量以下である場合(ステップS7;NO)、空調制御部6は、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4の作動を継続し(ステップS6)、制御処理を終了(リターン)する。すなわち、ステップS5の判定処理を行った時点で、デフロスタ4が手動操作の設定風量で作動しており、かつ手動操作の設定風量が現在の曇りレベルに応じた設定風量以下である場合、空調制御部6は、デフロスタ4の設定風量を現在の曇りレベルに応じた設定風量に変更(大きく)してデフロスタ4の作動を継続する。これに対し、手動操作の設定風量が曇りレベルに応じた設定風量よりも大きい場合(ステップS7;YES)、空調制御部6は、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させ(ステップS8)、制御処理を終了(リターン)する。例えば、曇りレベルに応じた設定風量が5/8段の風量であり、手動操作の設定風量が4/8段の風量である場合、空調制御部6は、曇りレベルに応じた設定風量(5/8段)でのデフロスタ4の作動を継続する。この場合、空調制御部6は、ディスプレイ16のデフロスタ4の作動状態を示すマーク1602を点滅する状態に維持させる。これに対し、例えば、曇りレベルに応じた設定風量が5/8段の風量であり、手動操作の設定風量が6/8段の風量である場合、空調制御部6は、手動操作の設定風量(6/8段)でデフロスタ4を作動させる。この場合、空調制御部6は、ディスプレイ16のマーク1602を点滅する状態から点灯した状態に変更させる。
【0050】
このように、本実施形態の防曇システム1は、フロントガラス1001の曇りレベルを多段階にし、該曇りレベルに応じてデフロスタ4の風量を多段階で自動制御する。このため、曇りレベルが小さい段階でデフロスタ4を作動させ、効率よく曇りを除去することができる。なお、上述のように、検知する曇りレベルは、曇りなしのレベルと曇りの度合いが異なる2段階以上の曇り有りのレベルとを含む3段階以上のレベルに限らず、曇りなしのレベルと曇り有りのレベルとの2段階のレベルであってもよい。
【0051】
また、本実施形態の防曇システム1は、フロントガラス1001に曇りが有ると判定された場合であって、コントローラ7を利用した手動操作によるデフロスタ4の風量の設定情報の入力を受け付けた場合には、手動操作による設定風量と曇りレベルに応じた設定風量のうちの大きいほうの風量でデフロスタ4を作動させる。すなわち、手動操作の設定風量が、フロントガラス1001の曇りレベルに応じて自動設定されたデフロスタ4の設定風量以下である場合には、曇りレベルに応じた設定風量でのデフロスタ4の作動を維持する。このため、風量が小さくなり曇りの除去能力が低下することにより、フロントガラス1001の曇りが車両前方の視認性の確保(言い換えるとカメラ2で撮影した画像の鮮明度)に影響を与える可能性のある期間が長くなってしまうことを防ぐことができる。その一方で、本実施形態の防曇システム1は、手動操作の設定風量が、フロントガラス1001の曇りレベルに応じて自動設定されたデフロスタ4の設定風量よりも大きい場合には、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させる。すなわち、車両10の乗員が曇りレベルに応じた設定風量よりも大きい風量でのデフロスタ4の作動を望む場合には、乗員の意思を優先してデフロスタ4の風量を増大させる。このように、乗員の意思を優先してデフロスタ4の風量を増大させた場合には、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4を作動させた場合と比べて、短時間で曇りを除去することが可能となる。このため、車両10の乗員の意思とは異なる作動状態でデフロスタ4が作動することを抑えつつ、フロントガラス1001の曇りが車両前方の視認性の確保に影響を与える可能性のある期間の長期化を防ぐことができる。したがって、本実施形態の防曇システム1は、乗員の意思と車両前方の視認性の確保との協調を可能にすることができる。
【0052】
また、本実施形態の防曇システム1は、カメラ2の撮影範囲内におけるフロントガラス1001の曇りレベルに応じて、デフロスタ4の風量を多段階で自動制御する。このため、カメラ2の撮影範囲内におけるフロントガラス1001の曇りレベルが低い段階でデフロスタ4を自動的に作動させることができ、例えば、曇りレベルが高くなることを抑制することができる。したがって、カメラ2が、例えば、上述したような衝突被害軽減ブレーキとしてのブレーキ制御装置8に対して車両前方の障害物の有無の情報を提供するカメラである場合には、フロントガラス1001の曇りが障害物の検出精度に与える影響を小さな状態に維持することが容易になる。よって、本実施形態の防曇システム1は、衝突被害軽減ブレーキをより適切に作動させることができる。更に、カメラ2が、撮影した画像に基づいて衝突被害軽減ブレーキとは別の運転支援システムに対して情報を提供する場合には、当該別の運転システムもより適切に作動させることができる。このため、本実施形態の防曇システム1は、車両10の運転に対する安全性をより一層向上させることができる。
【0053】
また、カメラ2としてステレオカメラを用いる場合には、上述したように、車両10が直進している場合にのみ曇りレベルを検知することにより、1組のステレオ画像間における視差のずれ等に起因する曇りレベルの検知精度の低下を抑制することができる。このため、検知した曇りレベルと実際の曇りレベルとのずれにより曇りの除去に要する時間が長くなってしまうこと等を防ぐことができる。
【0054】
また、防曇システム1は、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4を作動させた場合(ステップS6)と、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させた場合(ステップS8)とで、ディスプレイ16のデフロスタ4の作動状態を示すマーク1602の表示方法を変更する。このため、運転者20等の車両10の乗員は、作動中のデフロスタ4の設定風量が、曇りレベルに応じた自動制御により設定された風量であるか、手動操作により設定された風量であるかを容易に把握することができる。したがって、例えば、乗員が手動操作により風量を設定した後で、設定した風量と実際の風量とにずれがある場合に、ディスプレイ16のマーク1602の表示を見ることにより、風量のずれの原因を容易に把握することができる。例えば、乗員が風量を小さくする手動操作をしたにもかかわらず風量が小さくならない場合、乗員は、マーク1602が点滅していることから視認性の確保のため曇りの除去を優先していると把握することができる。
【0055】
また、コントローラ7のスイッチ15(例えば、
図4に例示したスイッチ1501~1506等)をモーメンタリー式又はタッチパネル式のスイッチにすることにより、スイッチ15により設定された風量と実際の風量とのずれによる違和感をなくすことができる。
【0056】
なお、本実施形態の防曇システム1は、上述したように足元送風部5の動作をデフロスタ4の動作と連動させることができる。この種の防曇システム1におけるより好適な制御処理の一例を、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0057】
図6は、防曇システムの動作の別の例を説明するフローチャートである。
図7は、
図6のフローチャートにおける足元送風制御処理の内容を説明するフローチャートである。
図6に例示したフローチャートにおける各処理ブロックのうち、
図5のフローチャートにおける処理ブロックと処理内容が同一である処理ブロックについては、同一のステップ番号を付している。
図6に例示したフローチャートにおける各処理ブロックのうち、
図5のフローチャートにおける処理ブロックと処理内容が同一である処理ブロックについては、詳細な説明を省略する。
【0058】
防曇システム1は、まず、車両10が前進しており、かつ車速が曇りレベル検知開始車速であるか否かを判定する(ステップS1)。車両が前進していない、又は前進している車両10の車速が曇りレベル検知開始車速よりも低い場合(ステップS1;NO)、防曇システム1は、続けて手動操作が行われた状態であるか否かを判定する(ステップS11)。手動操作が行われていない場合(ステップS11;NO)、防曇システム1は、デフロスタ4を非作動にし(ステップS12)、制御処理を終了(リターン)する。手動操作が行われた状態である場合(ステップS11;YES)、防曇システム1は、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させる(ステップS8)。ステップS8の処理の後、防曇システム1は、後述する第2の足元送風制御処理(ステップS15B)を行い、制御処理を終了(リターン)する。
【0059】
車両10が前進しており、かつ車速が曇りレベル検知開始車速以上である場合(ステップS1;YES)、防曇システム1は、次に、車両10が直進しているか否かを判定する(ステップS2)。車両10が直進していない場合(ステップS2;NO)、防曇システム1は、続けてステップS11の判定処理をし、その判定結果に応じてステップS12又はS8の処理を行う。
【0060】
車両10が直進している場合(ステップS2;YES)、防曇システム1は、次に、フロントガラス1001の曇りレベルを検知する(ステップS3)。
【0061】
次に、防曇システム1は、検知した曇りレベルに基づいて、フロントガラス1001に曇りがあるか否かを判定する(ステップS4)。曇りがない場合(ステップS4;NO)、防曇システム1は、続けてステップS11の判定処理をし、その判定結果に応じてステップS12又はS8の処理を行う。
【0062】
フロントガラス1001に曇りがある場合(ステップS4;YES)、防曇システム1は、次に、曇りレベルに応じた設定風量と手動操作の設定風量とのどちらの風量でデフロスタ4を作動させるかを決定するために、デフロスタ4の作動(風量の設定)に関する手動操作が行われたか否かを判定する(ステップS5)。手動操作が行われていない場合(ステップS5;NO)、空調制御部6は、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4を作動し(ステップS6)、その後、第2の足元送風制御処理(ステップS15B)を実行する。第2の足元送風制御処理の内容は後述する。
【0063】
手動操作が行われた場合(ステップS5;YES)、空調制御部6は、現在の手動操作の設定風量が、曇りレベルに応じた設定風量よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。手動操作の設定風量が曇りレベルに応じた設定風量以下である場合(ステップS7;NO)、空調制御部6は、曇りレベルに応じた設定風量でデフロスタ4を作動し(ステップS6)、その後、第2の足元送風制御処理(ステップS15B)を実行する。
【0064】
これに対し、手動操作の設定風量が曇りレベルに応じた設定風量よりも大きい場合(ステップS7;YES)、空調制御部6は、第1の足元送風制御処理(ステップS15A)を実行する。第1の足元送風制御処理の内容は後述する。
【0065】
第1の足元送風制御処理が終了すると、空調制御部6は、手動操作の設定風量でデフロスタ4を作動させ(ステップS8)、その後、第2の足元送風制御処理(ステップS15B)を実行する。
【0066】
ステップS6又はステップS8でデフロスタ4を作動させ、第2の足元送風制御処理(ステップS15B)を行うと、防曇システム1(空調制御部6)は、足元送風部5の制御を含む制御処理を終了(リターン)する。
【0067】
図6に例示したフローチャートにおける第1の足元送風制御処理(ステップS15A)、及び第2の足元送風制御処理(ステップS15B)として、防曇システム1の空調制御部6は、例えば、
図7のフローチャートに沿った処理を行う。
図7は、
図6のフローチャートにおける足元送風制御処理の内容を説明するフローチャートである。
【0068】
足元送風制御処理を開始すると、空調制御部6は、まず、足元送風部5がオンであるか否かを判定する(ステップS1501)。空調制御部6は、例えば、コントローラ7に設けられた足元送風のオン/オフを切り替えるスイッチの状態、又は該スイッチにより入力されたオン/オフの状態を示す情報に基づいて、足元送風部5がオンであるか否かを判定する。足元送風部5がオフである場合(ステップS1501;NO)、空調制御部6、後続の処理をスキップして足元送風制御処理を終了(リターン)する。
【0069】
足元送風部5がオンである場合(ステップS1501;YES)、空調制御部6は、次に、デフロスタ4の現在の設定風量と対応する曇りレベルが所定レベル以上であるか否かを判定する(ステップS1502)。デフロスタ4の現在の設定風量は、カメラ2で検知したフロントガラス1001の曇りレベルに応じた設定風量と手動操作の設定風量のうちの大きいほうの設定風量である。また、所定レベルは、デフロスタ4が作動している場合の足元送風を許容するか否かの判定閾値であり、
図3に例示した設定情報30における所定レベルは4である。
【0070】
設定風量と対応する曇りレベルが所定レベル以上である場合(ステップS1502;YES)、空調制御部6は、足元送風部5をオフにしてデフロスタ4のみを作動させ(ステップS1503)、足元送風制御処理を終了(リターン)する。この場合、空調制御部6は、デフロスタ4又は
図1等に図示していない空調部においてデフロスタ4の設定風量に応じた量の除湿された暖かい空気が生成されるよう、デフロスタ4又は空調部の動作を制御する。
【0071】
設定風量と対応する曇りレベルが所定レベルよりも低い場合(ステップS1502;NO)、空調制御部6は、デフロスタ4及び足元送風部5を作動させ(ステップS1504)、足元送風制御処理を終了(リターン)する。この場合、空調制御部6は、デフロスタ4の設定風量と足元送風部5の設定風量との合計風量に応じた量の除湿された暖かい空気が生成されるよう、デフロスタ4又は空調部の動作を制御する。
【0072】
このように、防曇システム1が足元送風制御処理を含む制御処理を実行する場合、現在のデフロスタ4の設定風量の大きさと対応する曇りレベルが所定レベル以上の高レベルである場合には、足元送風部5による足元送風を無効にし、デフロスタ4のみを作動させる。このように、曇りレベルが高い場合には足元送風を無効にしてデフロスタ4による曇りの除去を優先することで、フロントガラス1001の曇りが車両前方の視認性の確保に影響を与える可能性のある期間の長期化を防ぐことができる。また、
図7に例示した足元送風制御処理における現在のデフロスタ4の設定風量は、上記のように、カメラ2で検知したフロントガラス1001の曇りレベルに応じた設定風量と手動設定の設定風量のうちの大きいほうの設定風量とする。このようにすると、検知した曇りレベルが足元送風を許容する低レベルであっても、手動操作の設定風量と対応する曇りレベルが足元送風を許容しない高レベルであれば、足元送風を無効にし、デフロスタ4のみを作動させることができる。
【0073】
一方、検知した曇りレベル及び手動操作の設定風量と対応する曇りレベルが所定レベルよりも低い場合には、足元送風部5をオンにする操作をした車両10の乗員の意思を優先して足元送風を行うことができる。
【0074】
以上、防曇システム1及び防曇方法の実施形態を説明したが、本発明に係る防曇システム1及び防曇方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0075】
例えば、防曇システム1は、
図1に示した構成に限らず、適宜変更可能である。防曇システム1のカメラは、ブレーキ制御装置8と組み合わせて用いるカメラに限らず、車両10の運転支援システムに含まれる、車室10R内に設置された車載カメラであればよい。また、防曇システム1のカメラは、ステレオカメラに限らず、単眼カメラであってもよい。例えば、防曇システム1は、ドライブレコーダのカメラで撮影した画像に基づいて、該カメラの撮影範囲内におけるフロントガラス1001等の曇りレベルを検知してもよい。また、防曇システム1は、カメラ2に含まれる画像処理部12とは別の画像処理部によりフロントガラス1001の曇りレベルを検知してもよい。また、防曇システム1は、上述したように、車両10のリアガラスの曇りレベルに応じてリアガラスの曇りを除去するデフォッガーの作動(風量)を自動制御することも可能なシステムであってもよい。また、防曇システム1は、足元送風部5が省略されたものであってもよい。
【0076】
また、防曇システム1が実行する制御処理は、
図5のフローチャートに沿った処理、又は
図6及び
図7のフローチャートに沿った処理に限らず、適宜変更可能である。例えば、走行中の車両10は、一時停止中やカーブ路の走行中等、一時的にステップS1の判定やステップS2の判定がNOとなる場合がある。このため、防曇システム1は、例えば、ステップS1又はステップS2の判定処理においてNOと判定された場合に、デフロスタ4が作動中であり、かつ連続してNOと判定された期間又は回数が閾値以上となった場合に、ステップS11の判定処理を行ってもよい。また、
図6に例示したフローチャートは、足元送風制御処理15A及び15Bを含む制御処理の一例に過ぎず、足元送風制御処理を行うタイミングは、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 防曇システム
2 カメラ
3 ヨーレートセンサ
4 デフロスタ
5 足元送風部
6 空調制御部
7 コントローラ
8 ブレーキ制御装置
10 車両
1001 フロントガラス
1002 ダッシュボード
1003 床面
10R 車室
11 撮影部
12 画像処理部
15 スイッチ
1501 エアコンのオン/オフスイッチ
1502 モード切替スイッチ
1503 オートA/Cスイッチ
1504 デフロスタ切替スイッチ
1505 風量調整スイッチ
1506 温度調整スイッチ
16 ディスプレイ
1601 インジケータ
1602,1603 マーク
20 運転者
30 設定情報