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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240806BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240806BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20240806BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
C08L63/00 C
C08K5/3492
C08K3/22
B32B27/18 H
H05K1/16 B
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023093290
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2019200131の分割
【原出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2023111955
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 達也
(72)【発明者】
【氏名】依田 正応
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大山 秀樹
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194099(WO,A1)
【文献】特開2015-187260(JP,A)
【文献】特開2013-212642(JP,A)
【文献】特開2019-067960(JP,A)
【文献】特開2019-065208(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194100(WO,A1)
【文献】特開2002-194057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
B32B 27/18
H05K 1/09
H05K 1/16
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)磁性粉体、
(B-1)固形樹脂、
(B-2)液状樹脂、及び
(C)融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤、を含み、
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-1)成分の含有量をb1とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-2)成分の含有量をb2とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をc1としたとき、b1/b2が0.15以上0.45以下であり、b1/c1が0.1以上5以下であり、b2/c1が、1以上20以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(B-1)成分が、固形エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B-2)成分が、液状エポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が、トリアジン骨格を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、軟磁性粉体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分が、酸化鉄粉である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
酸化鉄粉が、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトである、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分が、Fe-Mn系フェライト、及びFe-Mn-Zn系フェライトから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
インダクタ素子形成用である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ペースト状である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
スルーホール充填用である、請求項1~1のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~1のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、磁性シート。
【請求項13】
スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、請求項1~1のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する回路基板。
【請求項14】
請求項1~1のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である磁性層を含む、回路基板。
【請求項15】
請求項1又は1に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び樹脂組成物を用いて得られる磁性シート、回路基板、及びインダクタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、薄型化の要求により、プリント配線板やプリント配線板に搭載されるインダクタ部品(コイル)も、小型化、薄型化の要求が高まっている。チップ部品としてインダクタ部品を搭載した場合、プリント配線板の薄型化に限界が生じる。よって、磁性材料を樹脂組成物層に含有する接着フィルムを用いて、プリント基板に磁性層を形成することで、プリント配線板内層にインダクタを形成することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-187260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、樹脂組成物層に磁性材料を含有する磁性シート、又はペースト状の樹脂組成物を用いて、磁性層上に導体層を形成する際に湿式デスミア処理を行ったところ、酸化剤溶液による磁性材料の脱落、溶解に起因して、磁性層表面の粗化形状が悪化すること(即ちデスミア耐性が劣る)を知見した。それに起因して磁性層とめっき等の導体層との間の密着性が低下する傾向にある。また、本発明者らは、リフロー処理を行うと磁性層上に形成される導体層に膨れが生じることも知見した。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、デスミア耐性及び磁性層と導体層との間の密着性が向上し、リフロー処理後の導体層の膨れが抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いて得られる磁性シート、回路基板、及びインダクタ基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討したところ、固形樹脂及び液状樹脂が所定の含有比率となるように樹脂組成物に含有させ、さらに融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤を樹脂組成物に含有させることで、デスミア耐性及び磁性層と導体層との間の密着性が向上し、さらにリフロー処理後の導体層の膨れが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)磁性粉体、
(B-1)固形樹脂、
(B-2)液状樹脂、及び
(C)融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤、を含み、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-1)成分の含有量をb1とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-2)成分の含有量をb2としたとき、b1/b2が0.15以上0.45以下である、樹脂組成物。
[2] (B-1)成分が、固形エポキシ樹脂を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B-2)成分が、液状エポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分が、トリアジン骨格を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (A)成分が、軟磁性粉体である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (A)成分が、酸化鉄粉である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 酸化鉄粉が、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトである、[6]に記載の樹脂組成物。
[8] (A)成分が、Fe-Mn系フェライト、及びFe-Mn-Zn系フェライトから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] インダクタ素子形成用である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] ペースト状である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] スルーホール充填用である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、磁性シート。
[14] スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する回路基板。
[15] [1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物である磁性層を含む、回路基板。
[16] [14]又は[15]に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デスミア耐性及び磁性層と導体層との間の密着性が向上し、リフロー処理後の導体層の膨れが抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いて得られる磁性シート、回路基板、及びインダクタ基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのコア基板の模式的な断面図である。
図2図2は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホールを形成したコア基板の模式的な断面図である。
図3図3は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホール内にめっき層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図4図4は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホール内に磁性ペーストを充填させたコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図5図5は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての充填させた磁性ペーストを熱硬化させたコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図6図6は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての硬化物を研磨した後のコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図7図7は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての研磨した面上に導体層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図8図8は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのパターン導体層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
図9図9は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
図10図10は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
図11図11は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(B)工程を説明するための模式的な断面図である。
図12図12は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(D)工程を説明するための模式的な断面図である。
図13図13は、一例としての第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。
図14図14は、一例としてのII-II一点鎖線で示した位置で切断した第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品の切断端面を示す模式的な図である。
図15図15は、一例としての第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の実施形態によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)磁性粉体、(B-1)固形樹脂、(B-2)液状樹脂、及び(C)融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤、を含み、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-1)成分の含有量をb1とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-2)成分の含有量をb2としたとき、b1/b2が0.15以上0.45以下である。
【0012】
本発明では、固形樹脂及び液状樹脂が所定の含有比率となるように樹脂組成物に含有させ、さらに融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤を樹脂組成物に含有させることで、デスミア耐性が向上し、リフロー処理後の導体層の膨れが抑制されることが可能となる。磁性層のデスミア耐性が向上するので、通常は磁性層と導体層との間の密着性を向上させることができる。また、本発明では、通常、樹脂組成物の保存安定性に優れ、さらには、この樹脂組成物の硬化物は、周波数が10~200MHzで比透磁率の向上が可能である。
【0013】
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(D)その他の添加剤を含み得る。以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。ここで、(B-1)固形樹脂、及び(B-2)液状樹脂をまとめて「(B)樹脂」ということがある。
【0014】
<(A)磁性粉体>
樹脂組成物は、(A)成分として(A)磁性粉体を含有する。(A)磁性粉体を樹脂組成物に含有させることでその硬化物の比透磁率を向上させることが可能となる。(A)磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)磁性粉体としては、軟磁性粉体、硬磁性粉体のいずれであってもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、軟磁性粉体であることが好ましい。
【0016】
(A)磁性粉体としては、例えば、Fe-Mn系フェライト、Fe-Mn-Zn系フェライト、Mg-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;純鉄粉末;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類等が挙げられる。
【0017】
中でも、(A)磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましく、Fe-Mn系フェライト、及びFe-Mn-Zn系フェライトから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
【0018】
(A)磁性粉体としては、市販品を用いることができ、2種以上を併用してもよい。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」等のMシリーズ;パウダーテック社製「MZ05」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。
【0019】
(A)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすい。しかし、特に球状の磁性粉体を用いる方が、通常、磁気損失を低くでき、また好ましい粘度を有する樹脂組成物を得る観点から好ましい。
【0020】
(A)磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。また、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。
【0021】
(A)磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0022】
(A)磁性粉体の比表面積は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.05m/g以上、より好ましくは0.1m/g以上、さらに好ましくは0.3m/g以上である。また、好ましくは10m/g以下、より好ましくは8m/g以下、さらに好ましくは5m/g以下である。(A)磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。
【0023】
(A)磁性粉体は、樹脂組成物の粘度を調整し、さらに耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0024】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0025】
表面処理剤による表面処理の程度は、(A)磁性粉体の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(A)磁性粉体100質量部は、0.01質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.05質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.1質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0026】
(A)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは60体積%以上である。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。
【0027】
(A)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。一般に、樹脂組成物中の(A)磁性粉体の含有量が高くなるほど、本発明の課題である、デスミア耐性の低下、磁性層と導体層との密着性の低下、及びリフロー処理後の導体層の膨れの発生が顕著になるが、本発明の樹脂組成物においては、上記のように(A)磁性粉体の含有量が多くても、デスミア耐性及び磁性層と導体層との間の密着性が向上し、さらにはリフロー処理後の導体層の膨れが抑制された硬化物を得ることが可能である。
【0028】
<(B-1)固形樹脂、及び(B-2)液状樹脂>
樹脂組成物は、(B-1)成分として(B-1)固形樹脂、及び(B-2)成分として(B-2)液状樹脂を含有する。(B-1)固形樹脂及び(B-2)液状樹脂を所定の含有比率となるように併用することで、デスミア耐性及び密着性が向上し、リフロー処理後の導体層に膨れが抑制されることが可能となる。さらには保存安定性に優れるようになる。
【0029】
(B-1)固形樹脂とは、温度20℃で固形状の樹脂をいい、(B-2)液状樹脂とは、温度20℃で液状の樹脂をいう。(B-1)成分及び(B-2)成分は、それぞれ1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-1)成分の含有量をb1とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B-2)成分の含有量をb2としたとき、b1/b2が0.15以上であり、好ましくは0.17以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.23以上である。上限は0.45以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下である。b1/b2を斯かる範囲内にすることにより、リフロー処理後の導体層に膨れが抑制され、さらには保存安定性に優れるようになる。
【0031】
(B)樹脂としては、通常熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフタレン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。これら例示した樹脂を含めて、温度20℃で固形状の樹脂は(B-1)固形樹脂として、温度20℃で液状の樹脂は(B-2)液状樹脂として区別される。(B-1)成分としては、配線板の絶縁層を形成する際に使用される固形熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、中でも固形エポキシ樹脂、固形フェノール系樹脂が好ましく、固形エポキシ樹脂がより好ましい。また、(B-2)成分としては、配線板の絶縁層を形成する際に使用される液状熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、中でも液状エポキシ樹脂が好ましい。以下、各樹脂について説明する。
【0032】
ここで、フェノール系樹脂、ナフタレン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させられる成分をまとめて「硬化剤」ということがある。
【0033】
エポキシ樹脂は、例えば、グリシロール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;グリシジルエーテル型脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B-1)成分としての固形エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂であることが好ましい。また、(B-2)成分としての液状エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0034】
(B-1)成分としての固形エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固形エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、固形エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上の固形エポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。固形エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0035】
(B-1)成分としての固形エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましく、及びビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(B-2)成分としての液状エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、液状エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上の液状エポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。液状エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0037】
(B-2)成分としての液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「JER-630」、「JER-630LSD」、ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0039】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0040】
フェノール系樹脂及びナフタレン系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ナフトールアラルキル型、トリアジン骨格含有固形フェノール系樹脂が好ましく、ナフトールアラルキル型がより好ましい。
【0041】
フェノール系樹脂及びナフタレン系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「EXB-6000」等が挙げられる。
【0042】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0043】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0044】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0045】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0046】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0047】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0048】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0049】
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0050】
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0051】
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:262)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0052】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0053】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0054】
(B)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.5~1:3がより好ましく、1:1~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する固形エポキシ樹脂及び液状エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。
【0055】
(B-1)固形樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0056】
(B-2)液状樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0057】
(B)樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0058】
<(C)融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤>
樹脂組成物は、(C)成分として融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤を含む。一般に、硬化促進剤は(B)樹脂とは反応しないが、(B)樹脂の硬化を促進させる。(C)融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤を樹脂組成物に含有させることで、(B)樹脂の硬化を効果的に進行させるとともに、デスミア耐性及び保存安定性に優れ、リフロー後の膨れの発生を抑制することが可能となる。
【0059】
(C)成分の融点としては、保存安定性を向上させる観点から、120℃以上であり、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、さらに好ましくは180℃以上である。上限は、デスミア耐性及び密着性を向上させ、リフロー後の膨れの発生を抑制する観点から、245℃以下であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃、さらに好ましくは200℃以下である。本明細書における融点は、示差走査熱量計を用い、室温(25℃)から500℃まで20℃/minにて昇温を行い測定した値である。
【0060】
(C)成分は、融点が120℃以上245℃以下の硬化促進剤を用いることができる。このような硬化促進剤としては、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、脂環式構造を含む環状基、芳香環構造を含む環状基が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、芳香環構造を含む環状基であることが好ましい。
【0061】
環状構造は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、環状構造しては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0062】
環状構造における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は環状構造を構成する環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0063】
脂環式構造としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。
【0064】
芳香環構造を構成する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリアジン環等の芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環が好ましく、トリアジン環がより好ましい。トリアジン環としては、1,3,5-トリアジン環、1,2,3-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環、1,3,5-トリアジン環等が挙げられ、1,3,5-トリアジン環が好ましい。
【0065】
環状構造における環は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられる。
【0066】
(C)成分は、市販品を用いることができ、2種以上を併用してもよい。用いられ得る市販の(C)成分の具体例としては、四国化成社製の「C11Z-A」(融点187~195℃)、「2E4MZ-A」(融点215~225℃)、「C11Z-CNS」(融点123~129℃)、「2PZCNS-PW」(融点175~183℃)、「VT」(融点239~241℃)、「MAVT」(融点170℃以上)等が挙げられる。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
(C)成分の含有量は、デスミア耐性及び保存安定性を向上させ、リフロー後の膨れの発生を抑制する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0068】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をc1としたとき、b1/c1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0069】
b2/c1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0070】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量をb3としたとき、b3/c1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0071】
<(D)その他の添加剤>
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、(D)その他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、保存安定性向上のためのホウ酸トリエチル等の硬化遅延剤、分散剤、無機充填材(但し、磁性粉体に該当するものは除く)、硬化促進剤(但し(C)成分に該当するものは除く)、難燃剤、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0072】
上述した樹脂組成物中に含まれる溶剤の含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。下限は、特に制限はないが0.001質量%以上、又は含有しないことである。有機溶剤の含有量を斯かる範囲内とすることによりボイドの発生を抑制することができ、また取扱い性、作業性にも優れたものとすることができる。
【0073】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物は、例えば、配合成分を、3本ロール、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。
【0074】
<樹脂組成物の物性等>
樹脂組成物は、(B-1)成分及び(B-2)成分が所定の比率となるように含有し、さらに(C)成分を組み合わせて含有するので、通常は保存安定性に優れるという特性を示す。樹脂組成物の作製直後の25±2℃における粘度Aを、E型粘度計を用いて測定する。次に樹脂組成物を3日間静置した後の25±2℃における粘度Bを、E型粘度計を用いて測定し、粘度A/粘度Bを求める。粘度A/粘度Bは、好ましくは1.0以上であり、好ましくは1.5以下である。保存安定性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0075】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、粗面変化率が低いという特性を示す。即ち、デスミア耐性及び導体層との間の密着性に優れる磁性層をもたらす。粗面変化率は、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下である。下限は特に限定されないが、1.0以上等とし得る。粗面変化率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、リフロー後の膨れが抑制されるという特性を示す。即ち、リフロー耐性に優れる磁性層をもたらす。リフロー後の膨れの有無の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0077】
樹脂組成物は、粘度が低いという特性を示す。よって、樹脂組成物は、ペースト状(ペースト状の樹脂組成物)であるという特性をもたらし、スルーホール充填用の樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0078】
[磁性シート]
磁性シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む。
【0079】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0080】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0081】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0082】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0083】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0084】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0085】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0086】
磁性シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。磁性シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。磁性シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0087】
磁性シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。必要に応じて有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調整し、この樹脂ワニスを支持体上に塗布してもよい。有機溶剤を用いる場合、必要に応じて塗布後に乾燥を行ってもよい。
【0088】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中に含まれる成分によっても異なるが、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0089】
磁性シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。磁性シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0090】
[回路基板及びその製造方法]
第1実施形態の回路基板は、スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、本発明の樹脂組成物の硬化物とを含む。また、第2実施形態の回路基板は、磁性シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された磁性層を含む。以下、回路基板の製造方法の第1実施形態及び第2実施形態について説明する。但し、本発明に係る回路基板の製造方法は、以下に例示する第1及び第2実施形態に限定されない。
【0091】
<第1実施形態>
第1実施形態の回路基板は、例えば、下記の工程(1)~(5)を含む製造方法によって製造する。第1実施形態では、樹脂組成物を用いて磁性層を形成することが好ましく、ペースト状の樹脂組成物を用いて磁性層を形成することがより好ましい。
(1)スルーホールを有する基板のスルーホールに樹脂組成物を充填する工程、
(2)該樹脂組成物を熱硬化させ、硬化物を得る工程、
(3)硬化物又は樹脂組成物の表面を研磨する工程
(4)硬化物を粗化処理する工程、及び
(5)硬化物を粗化処理した面に導体層を形成する工程、を含む。
本発明の回路基板の製造方法は、工程(1)~(5)の順で行ってもよく、工程(3)の後に工程(2)を行ってもよい。
【0092】
<工程(1)>
工程(1)を行うにあたって、樹脂組成物を準備する工程を含んでいてもよい。樹脂組成物は、上記において説明したとおりである。
【0093】
また、工程(1)を行うにあたって、図1に一例を示すように、支持基板11、並びに該支持基板11の両表面に設けられた銅箔等の金属からなる第1金属層12、及び第2金属層13を備えるコア基板10を準備する工程を含んでいてもよい。支持基板11の材料の例としては、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。第1及び第2金属層の材料の例としては、キャリア付銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられる。
【0094】
また、図2に一例を示すように、コア基板10にスルーホール14を形成する工程を含んでいてもよい。スルーホール14は、例えば、ドリル、レーザー照射、プラズマ照射等により形成することができる。具体的には、ドリル等を用いてコア基板10に貫通穴を形成することにより、スルーホール14を形成することができる。
【0095】
スルーホール14の形成は、市販されているドリル装置を用いて実施することができる。市販されているドリル装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「ND-1S211」等が挙げられる。
【0096】
コア基板10にスルーホール14を形成した後、図3に一例を示すように、コア基板10の粗化処理を行い、スルーホール14内、第1金属層12の表面上、及び第2金属層13の表面上にめっき層20を形成する工程を含んでいてもよい。
【0097】
前記の粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0098】
めっき層20は、めっき法により形成され、めっき法によりめっき層20が形成される手順は、後述する工程(5)における導体層の形成と同様である。
【0099】
コア基板10を用意した後で、図4に一例を示すように、樹脂組成物30aをスルーホール14へ充填する。充填は、例えば印刷法で行い得る。印刷法としては、例えば、スキージを介してスルーホール14へ樹脂組成物30aを印刷する方法、カートリッジを介して樹脂組成物30aを印刷する方法、マスク印刷して樹脂組成物30aを印刷する方法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0100】
<工程(2)>
工程(2)では、スルーホール14内に樹脂組成物30aを充填後、樹脂組成物30aを熱硬化して、図5に一例を示すように、スルーホール14内に硬化物層(磁性層)30を形成する。樹脂組成物30aの熱硬化条件は、樹脂組成物30aの組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。樹脂組成物30aの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0101】
工程(2)における磁性層30の硬化度としては、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。硬化度は、例えば示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0102】
樹脂組成物30aを熱硬化させる前に、樹脂組成物30aに対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物30aを熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物30aを、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0103】
工程(2)の後に工程(3)を行う場合、工程(2)後工程(3)前に、磁性層の硬化度をさらに高める等の目的で、必要により熱処理を施してもよい。前記熱処理における温度は上記した硬化温度に準じて行えばよく、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0104】
また、工程(2)の前に工程(3)を行う場合、工程(3)の前に、樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。前記予備加熱処理における温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0105】
<工程(3)>
工程(3)では、図6に一例を示すように、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することにより除去し、平坦化する。研磨方法としては、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することができる方法を用いることができる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては石井表記社製「NT-700IM」等が挙げられる。
【0106】
磁性層の研磨面(磁性層の熱硬化後)の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0107】
工程(2)の後に工程(3)を行う場合、工程(2)後工程(3)前に、磁性層の硬化度をさらに高める等の目的で、必要により熱処理を施してもよい。前記熱処理における温度は上記した硬化温度に準じて行えばよく、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0108】
また、工程(2)の前に工程(3)を行う場合、工程(3)の前に、樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。前記予備加熱処理における温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0109】
<工程(4)>
工程(4)では、工程(3)にて研磨した面を粗化処理(デスミア処理)する。粗化工程の手順、条件は特に限定されず、多層プリント配線板の製造方法に際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。粗化工程として、例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施することにより第1磁性層32を粗化処理することができる。
【0110】
粗化工程に用いられ得る膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。膨潤液であるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。
【0111】
膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に第1磁性層32が設けられたコア基材20を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。第1磁性層32を構成する樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に第1磁性層32を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0112】
酸化剤による粗化処理に用いられ得る酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤の溶液に第1磁性層32を10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%とすることが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0113】
中和処理に用いられ得る中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた第1磁性層32を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0114】
磁性層の粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0115】
<工程(5)>
工程(5)では、図7に一例を示すように、磁性層30の研磨面、及びコア基板上に導体層40を形成する。さらに、導体層40を形成後、図8に一例を示すように、エッチング等の処理により導体層40、第1金属層12、第2金属層13、及びめっき層20の一部を除去してパターン導体層41を形成してもよい。図7では、導体層40はコア基板10の両面に形成されているが、導体層40は、コア基板10の一方の面のみに形成してもよい。
【0116】
導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって硬化物の表面にめっきして、所望の配線パターンを有するパターン導体層を形成する。導体層の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
【0117】
ここで、硬化物を研磨した面上にパターン導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。硬化物を研磨した面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成し、必要に応じて、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。導体層形成後、導体層のピール強度を向上させる等の目的で、必要によりアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、回路基板を150~200℃で20~90分間加熱することにより行うことができる。
【0118】
パターン導体層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0119】
<第2実施形態>
第2実施形態の回路基板は、樹脂組成物の硬化物により形成された磁性層を含む。第2実施形態では、磁性シートを用いて磁性層を形成することが好ましい。以下、製品基板の製造方法の第2実施形態について説明する。第1実施形態と説明が重複する箇所は適宜説明を省略する。
【0120】
第2実施形態の回路基板は、例えば、下記の工程(A)~(D)を含む製造方法によって製造する。
(A)磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程、
(B)磁性層に穴あけ加工を行う工程、
(C)磁性層の表面を粗化処理する工程、及び
(D)磁性層の研磨した面に導体層を形成する工程、を含む。
【0121】
以下、回路基板を製造するにあたっての上記の工程(A)~(D)について詳細に説明する。
【0122】
<工程(A)>
工程(A)は、磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程である。工程(A)の一実施形態として、磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。
【0123】
工程(A)において、図9に一例を示すように、支持体330と、該支持体330上に設けられた樹脂組成物層320aとを含む磁性シート310を、樹脂組成物層320aが内層基板200と接合するように、内層基板200に積層させる。
【0124】
内層基板200は、絶縁性の基板である。内層基板200の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。内層基板200は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
【0125】
図9に一例を示すように、内層基板200は、第1主表面200a上に設けられる第1導体層420と、第2主表面200b上に設けられる外部端子240とを有している。第1導体層420は、複数の配線を含んでいてもよい。図示例ではインダクタ素子のコイル状導電性構造体400を構成する配線のみが示されている。外部端子240は図示されていない外部の装置等と電気的に接続するための端子である。外部端子240は、第2主表面200bに設けられる導体層の一部として構成することができる。
【0126】
第1導体層420、及び外部端子240を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(5)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0127】
第1導体層420、及び外部端子240は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。また、第1導体層420、外部端子240の厚さは、後述する第2導体層440と同様である。
【0128】
第1導体層420及び外部端子240のライン(L)/スペース(S)比は特に制限されないが、表面の凹凸を減少させて平滑性に優れる磁性層を得る観点から、通常、900/900μm以下、好ましくは700/700μm以下、より好ましくは500/500μm以下、さらに好ましくは300/300μm以下、さらにより好ましくは200/200μm以下である。ライン/スペース比の下限は特に制限されないが、スペースへの樹脂組成物層の埋め込みを良好にする観点から、好ましくは1/1μm以上である。
【0129】
内層基板200は第1主表面200aから第2主表面200bに至るように内層基板200を貫通する複数のスルーホール220を有していてもよい。スルーホール220にはスルーホール内配線220aが設けられている。スルーホール内配線220aは、第1導体層420と外部端子240とを電気的に接続している。
【0130】
樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、例えば、支持体330側から、磁性シート310を内層基板200に加熱圧着することにより行うことができる。磁性シート310を内層基板200に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(ステンレス(SUS)鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を磁性シート310に直接的に接触させてプレスするのではなく、内層基板200の表面の凹凸に磁性シート310が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材からなるシート等を介してプレスするのが好ましい。
【0131】
加熱圧着する際の温度は、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは90℃~140℃、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲であり、加熱圧着する際の圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着する際の時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。磁性シートと内層基板との接合は、圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施することが好ましい。
【0132】
磁性シート310の樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
【0133】
磁性シート310と内層基板200との接合の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された磁性シート310の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0134】
磁性シートを内層基板に積層した後、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。図10に一例を示すように、内層基板200に接合させた樹脂組成物層320aを熱硬化し第1磁性層320を形成する。
【0135】
樹脂組成物層320aの熱硬化条件は、樹脂組成物の組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。樹脂組成物層320aの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0136】
支持体330は、工程(A)の熱硬化後と工程(B)との間に除去してもよく、工程(B)の後に剥離してもよい。
【0137】
磁性層の粗化処理前の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0138】
工程(A)は、磁性シートの代わりに樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて内層基板上に塗布し、熱硬化させることで磁性層を形成してもよい。
【0139】
<工程(B)>
工程(B)において、図11に一例を示すように、第1磁性層320に穴あけ加工をし、ビアホール360を形成する。ビアホール360は、第1導体層420と、後述する第2導体層440とを電気的に接続するための経路となる。ビアホール360の形成は、磁性層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0140】
<工程(C)>
工程(C)において、ビアホールを形成した磁性層の表面を粗化処理する。工程(C)における粗化処理としては、第1実施形態の「<工程(4)>」欄において説明したとおりである。
【0141】
磁性層の粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0142】
工程(C)では、粗化処理の代わりに研磨を行い、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層を除去し、平坦化してもよい。研磨方法としては上記したとおりである。
【0143】
<工程(D)>
工程(D)では、図12に一例を示すように、第1磁性層320上に、第2導体層440を形成する。
【0144】
第2導体層440を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(5)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0145】
第2導体層440の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0146】
第2導体層440は、めっきにより形成することができる。第2導体層440は、例えば、無電解めっき工程、マスクパターン形成工程、電解めっき工程、フラッシュエッチング工程を含むセミアディティブ法、フルアディティブ法等の湿式めっき法により形成されることが好ましい。湿式めっき法を用いて第2導体層440を形成することにより、所望の配線パターンを含む第2導体層440として形成することができる。なお、この工程により、ビアホール360内にビアホール内配線360aが併せて形成される。
【0147】
第1導体層420及び第2導体層440は、例えば後述する図13~15に一例を示すように、渦巻状に設けられていてもよい。一例において、第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端はビアホール内配線360aにより第1導体層420の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端に電気的に接続されている。第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360aにより第1導体層42のランド420aに電気的に接続されている。よって第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360a、ランド420a、スルーホール内配線220aを経て外部端子240に電気的に接続される。
【0148】
コイル状導電性構造体400は、第1導体層420の一部分である渦巻状の配線部、第2導体層440の一部分である渦巻状の配線部、第1導体層420の渦巻状の配線部と第2導体層440の渦巻状の配線部とを電気的に接続しているビアホール内配線360aにより構成されている。
【0149】
工程(D)後、さらに導体層上に磁性層を形成する工程を行ってもよい。詳細は、図14に一例を示すように、第2導体層440及びビアホール内配線360aが形成された第1磁性層320上に第2磁性層340を形成する。第2磁性層は既に説明した工程と同様の工程により形成してもよい。
【0150】
[インダクタ基板]
インダクタ基板は、本発明の回路基板を含む。このようなインダクタ基板は、第1実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、前記の樹脂組成物の硬化物の周囲の少なくとも一部に導体によって形成されたインダクタパターンを有する。このようなインダクタ基板は、例えば特開2016-197624号公報に記載のものを適用できる。
【0151】
また、第2実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、インダクタ基板は、磁性層と、この磁性層に少なくとも一部分が埋め込まれた導電性構造体とを有しており、この導電性構造体と、磁性層の厚さ方向に延在し、かつ導電性構造体に囲まれた磁性層のうちの一部分によって構成されるインダクタ素子を含んでいる。ここで図13は、インダクタ素子を内蔵するインダクタ基板をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。図14は、図13に示すII-II一点鎖線で示した位置で切断したインダクタ基板の切断端面を示す模式的な図である。図15は、インダクタ基板のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【0152】
回路基板100は、図13及び図14に一例として示されるように、複数の磁性層(第1磁性層320、第2磁性層340)及び複数の導体層(第1導体層420、第2導体層440)を有する、即ちビルドアップ磁性層及びビルドアップ導体層を有するビルドアップ配線板である。また、インダクタ基板100は、内層基板200を備えている。
【0153】
図14より、第1磁性層320及び第2磁性層340は一体的な磁性層としてみることができる磁性部300を構成している。よってコイル状導電性構造体400は、磁性部300に少なくとも一部分が埋め込まれるように設けられている。すなわち、本実施形態のインダクタ基板100において、インダクタ素子はコイル状導電性構造体400と、磁性部300の厚さ方向に延在し、かつコイル状導電性構造体400に囲まれた磁性部300のうちの一部分である芯部によって構成されている。
【0154】
図15に一例として示されるように、第1導体層420はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部と、スルーホール内配線220aと電気的に接続される矩形状のランド420aとを含んでいる。図示例では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とランド420aを迂回する迂回部を含んでいる。図示例では第1導体層420の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり反時計回りに巻いている形状を有している。
【0155】
同様に、第1磁性層320上には第2導体層440が設けられている。第2導体層440はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部を含んでいる。図13又は図14では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とを含んでいる。図13又は図14では第2導体層44の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり時計回りに巻いている形状を有している。
【0156】
このようなインダクタ基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0157】
またかかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
【実施例
【0158】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC7000X、日立ハイテク社製)を用い、室温(25℃)から500℃まで20℃/minにて昇温を行い測定した。
【0159】
<実施例1>
軟磁性粉体a(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、パウダーテック社製)を80質量部に対して、液状樹脂a(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、新日鉄住金化学社製)を5質量部、液状樹脂b(「EP-4088S」、ジシクロペンタジエン型脂肪族エポキシ樹脂、ADEKA社製)を5質量部、液状樹脂c(「JER-630」、多官能エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製)を2質量部、固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)を3質量部、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)を2質量部加え、高速回転ミキサーで均一に分散し樹脂組成物1を得た。
【0160】
<実施例2>
実施例1において、固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)の量を3質量部から2質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物2を得た。
【0161】
<実施例3>
実施例1において、固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)の量を3質量部から5質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物3を得た。
【0162】
<実施例4>
実施例1において、固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)3質量部を、固形樹脂b(「NC-3100」、ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬社製)3質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物4を得た。
【0163】
<実施例5>
実施例1において、固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)3質量部を、固形樹脂c(「SN-485」、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル社製)3質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物5を得た。
【0164】
<実施例6>
実施例1において、
固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)の量を3質量部から1.5質量部に変え、
さらに固形樹脂c(「SN-485」、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル社製)1.5質量部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物6を得た。
【0165】
<実施例7>
実施例1において、軟磁性粉体a(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、パウダーテック社製)80質量部を、軟磁性粉体b(「MZ05」、Fe-Mn-Zn系フェライト、パウダーテック社製)80質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物7を得た。
【0166】
<実施例8>
実施例1において、軟磁性粉体a(「M05S」Fe-Mn系フェライト、パウダーテック社製)80質量部を、軟磁性粉体c(「AW2-08」、Fe-Si系フェライト、エプソンアトミックス社製)80質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物8を得た。
【0167】
<実施例9>
実施例5において、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部を、硬化促進剤b(「2E4MZ-A」、融点210℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして樹脂組成物9を得た。
【0168】
<実施例10>
実施例5において、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部を、硬化促進剤c(「VT」、融点240℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして樹脂組成物10を得た。
【0169】
<実施例11>
実施例5において、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部を、硬化促進剤d(「C11Z-CNS」、融点129℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして樹脂組成物11を得た。
【0170】
<比較例1>
実施例1において、
液状樹脂a(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、新日鉄住金化学社製)の量を5質量部から7質量部に変え、
固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)の量を5質量部から1質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物12を得た。
【0171】
<比較例2>
実施例1において、
液状樹脂a(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、新日鉄住金化学社製)の量を5質量部から3質量部に変え、
固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)の量を3質量部から5質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物13を得た。
【0172】
<比較例3>
実施例1において、
液状樹脂a(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、新日鉄住金化学社製)の量を5質量部から8質量部に変え、
固形樹脂a(「NC-3000-L」、ビフェニル型芳香族エポキシ樹脂、日本化薬社製)3質量部を用いなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物14を得た。
【0173】
<比較例4>
実施例1において、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部を、硬化促進剤e(「2MZA-PW」、融点250℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物15を得た。
【0174】
<比較例5>
実施例1において、硬化促進剤a(「C11Z-A」、融点192℃、トリアジン骨格を有する硬化促進剤、四国化成社製)2質量部を、硬化促進剤f(「1B2PZ」、融点40℃、硬化促進剤、四国化成社製)2質量に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物16を得た。
【0175】
<保存安定性の評価>
作製直後の各樹脂組成物の温度を25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、3°×R9.7コーンロータ)を用いて、回転数が5rpmの条件にて粘度Aを測定した。
【0176】
次に室温(25℃)にて3日間静置した後の各樹脂組成物の温度を25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、3°×R9.7コーンロータ)を用いて、回転数が5rpmの条件にて粘度Bを測定した。粘度A/粘度Bの比率を求め、以下の基準で評価した。
○:粘度A/粘度Bが1.0以上1.5以下。
×:粘度A/粘度Bが1.5を超える。
【0177】
<デスミア後の粗面変化率の測定、及びリフロー後の膨れの有無の評価>
-評価基板の作製-
支持体として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の表面の銅箔を、すべてエッチングして除去した。その後、190℃にて30分乾燥を行った。各樹脂組成物を上記支持体上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、磁性シートを得た。得られた磁性シートを190℃で90分間加熱することにより樹脂組成物層を熱硬化し、シート状硬化物を得た。
【0178】
(樹脂組成物の熱硬化後(デスミア処理前)のRaの測定)
シート状硬化物の熱硬化された磁性層を、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製、WYKONT3300)を用いて、Ra(10点平均粗さ)を求めた。
【0179】
なお、Raは、全測定領域に渡って計算された高さの平均値であり、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものであり、下式(1)で表すことができる。ここで、式(1)中のMとNはアレイのそれぞれの方向にあるデータ個数を表す。
【数1】
【0180】
(デスミア処理)
シート状硬化物を、膨潤液(アトテックジャパン社製、スエリングディップ・セキュリガントP)に60℃で5分間浸漬し膨潤処理を行い、次に、アルカリ性酸化剤溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で5分間浸漬し、磁性層表面の粗化処理を行い、最後に中和液(アトテックジャパン社製、リダクションショリューシン・セキュリガントP)に40℃で5分間浸漬し、中和処理を行った。その後、内層回路基板を水洗浄し、乾燥させることで、評価基板を得た。
【0181】
(デスミア処理後のRaの測定)
デスミア処理後の磁性層を、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製、WYKONT3300)を用いて、Ra(10点平均粗さ)を求めた。
【0182】
(粗面変化率の測定)
デスミア処理前のRaと、デスミア処理後のRaとの比(デスミア処理前のRa/デスミア処理後のRa)を粗面変化率として算出した。
【0183】
(リフロー後の膨れの有無の評価)
評価基板の粗化処理された磁性層表面に無電解銅めっき薬液(アトテックジャパン社製)を使用し、無電解銅めっきプロセスを行った。無電解銅めっき層の厚さは1μmであった。その後、無電解銅めっき層上に電解銅めっきを行い、計30μm厚の導体層(銅層)を形成し、多層配線基板を得た。
【0184】
得られた多層配線基板を、リフロー装置(ANTOM社製、HAS-6116)を用い、260℃以上で1分以上の熱履歴の条件下にてリフロー工程を行った。リフロー工程後の導体層を観察し、膨れの有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:膨れなし
△:端面でふくれあり
×:全面でふくれあり
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
実施例1~11は、保存安定性に優れ、導体層の形成後にリフロー処理を行っても膨れ等の不具合が生じていないことがわかった。また、実施例1~11はデスミア処理前のRaとデスミア処理後のRaとの比(粗面変化率)が低いことからデスミア耐性に優れ、その結果、磁性層とめっき導体層との間の密着性に優れることもわかった。また、実施例1~11はデスミア耐性に優れることから、デスミア処理後においても非常に平滑な磁性層となるため、非常に平滑な磁性層表面に無電解めっきによるめっきシード層(無電解めっき層)が形成できる。よって、セミアディティブ法での回路形成後に、エッチングによって不要なめっきシード層を容易に除去することが可能となることもわかった。
【符号の説明】
【0188】
10 コア基板
11 支持基板
12 第1金属層
13 第2金属層
14 スルーホール
20 めっき層
30a 樹脂組成物
30 磁性層
40 導体層
41 パターン導体層
100 回路基板
200 内層基板
200a 第1主表面
200b 第2主表面
220 スルーホール
220a スルーホール内配線
240 外部端子
300 磁性部
310 磁性シート
320a 樹脂組成物層
320 第1絶縁層
330 支持体
340 第2絶縁層
360 ビアホール
360a ビアホール内配線
400 コイル状導電性構造体
420 第1導体層
420a ランド
440 第2導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15