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特許7533762処理方法、処理システム、処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】処理方法、処理システム、処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20240806BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240806BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240806BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023503670
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005111
(87)【国際公開番号】W WO2022185870
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2021035483
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】馬場 厚志
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-031027(JP,A)
【文献】特表2022-544770(JP,A)
【文献】特表2016-536220(JP,A)
【文献】特開2009-301406(JP,A)
【文献】特開2020-021471(JP,A)
【文献】特開2018-045397(JP,A)
【文献】特開2010-182236(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146050(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090306(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/157785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B60R 16/00 - 16/08
B60R 21/00 - 21/017
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲のうち前記ホスト車両が走行している車線と同じ車線上に前記ターゲット移動体が検出できていないことを含処理方法。
【請求項2】
ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリア(91)が存在することを含処理方法。
【請求項3】
ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
構造のない道路における前記限定ルールは、前記構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に前記標準ルールを変更して前記安全エンベロープを固定範囲とするルールである、処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の処理方法であって、
前記限定ルールは、駐車スペースに対する入出庫動作時に適用されるルールである、処理方法。
【請求項5】
ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープおよび前記ホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、前記加速度に対して仮定される制限値と前記ホスト車両の加速度との比較、および、前記ホスト車両の速度と前記速度に対して仮定される制限値との比較を含む前記シナリオのシミュレーションに基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、を含み、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
前記シナリオのシミュレーションに基づいて前記安全エンベロープの違反を監視することは、選択された前記シナリオに基づいて前記違反の判定方法を選択することを含む、処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の処理方法であって、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に代えて、地域の交通慣習に適合した走行をするための制限値である、処理方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の処理方法であって、
前記安全エンベロープを設定することは、安全距離を設定すること、又は、安全距離に基づいて前記境界、前記マージン又は前記緩衝区域を確定することを含む、処理方法。
【請求項8】
プロセッサ(12)を含み、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを実行し、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲のうち前記ホスト車両が走行している車線と同じ車線上に前記ターゲット移動体が検出できていないことを含む、処理システム。
【請求項9】
プロセッサ(12)を含み、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを実行し、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリア(91)が存在することを含む、処理システム。
【請求項10】
プロセッサ(12)を含み、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを実行し、
構造のない道路における前記限定ルールは、前記構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に前記標準ルールを変更して前記安全エンベロープを固定範囲とするルールである、処理システム。
【請求項11】
プロセッサ(12)を含み、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープおよび前記ホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、前記加速度に対して仮定される制限値と前記ホスト車両の加速度との比較、および、前記ホスト車両の速度と前記速度に対して仮定される制限値との比較を含む前記シナリオのシミュレーションに基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、を実行し、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
前記シナリオのシミュレーションに基づいて前記安全エンベロープの違反を監視することは、選択された前記シナリオに基づいて前記違反の判定方法を選択することを含む、処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の処理システムであって、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に代えて、地域の交通慣習に適合した走行をするための制限値である、処理システム。
【請求項13】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲のうち前記ホスト車両が走行している車線と同じ車線上に前記ターゲット移動体が検出できていないことを含む、処理プログラム。
【請求項14】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
前記限定ルールは、前記ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、前記標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
前記適用条件は、前記検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリア(91)が存在することを含む、処理プログラム。
【請求項15】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべき状況を判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープと、前記ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、
前記安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、前記適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、前記適用条件の成否に基づき、前記安全エンベロープを設定するルールを決定すること(S104、S121)、とを含み、
構造のない道路における前記限定ルールは、前記構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に前記標準ルールを変更して前記安全エンベロープを固定範囲とするルールである、処理プログラム。
【請求項16】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得すること(S100)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定すること(S101)と、
前記検知情報に基づき、前記ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定すること(S105、S122)と、
前記安全エンベロープおよび前記ホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、前記加速度に対して仮定される制限値と前記ホスト車両の加速度との比較、および、前記ホスト車両の速度と前記速度に対して仮定される制限値との比較を含む前記シナリオのシミュレーションに基づいて、前記安全エンベロープの違反を監視すること(S110、S130)と、を含み、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
前記シナリオのシミュレーションに基づいて前記安全エンベロープの違反を監視することは、選択された前記シナリオに基づいて前記違反の判定方法を選択することを含む、処理プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の処理プログラムであって、
前記加速度に対して仮定される制限値と、前記速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に代えて、地域の交通慣習に適合した走行をするための制限値である、処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年3月5日に日本に出願された特許出願第2021-35483号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ホスト移動体の運転制御に関する処理を遂行するための、処理技術に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に開示される技術は、ホスト車両のナビゲーション動作に関する運転制御を、ホスト車両の内外環境に関する検知情報に応じて計画している。運転ポリシに従う安全モデルと検知情報とに基づき潜在的な事故責任があると判断される場合には、運転制御に対して制約が与えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6708793号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に開示される技術は、さらなる変更が求められる。
【0006】
本開示の課題は、ホスト車両の運転制御に関する新規の技術を提供することにある。
【0007】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
本開示の第一態様は、
ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲のうちホスト車両が走行している車線と同じ車線上にターゲット移動体が検出できていないことを含む。
本開示の第二態様は、
ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリアが存在することを含む。
本開示の第三態様は、
ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の位置関係との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
構造のない道路における限定ルールは、構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に標準ルールを変更して安全エンベロープを固定範囲とするルールである。
【0009】
本開示の第四態様は、
ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するために、プロセッサにより実行される処理方法であって、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープおよびホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、加速度に対して仮定される制限値とホスト車両の加速度との比較、および、ホスト車両の速度と速度に対して仮定される制限値との比較を含むシナリオのシミュレーションに基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、を含み、
加速度に対して仮定される制限値と、速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
シナリオのシミュレーションに基づいて安全エンベロープの違反を監視することは、選択されたシナリオに基づいて違反の判定方法を選択することを含む
【0010】
本開示の第態様は、
プロセッサを含み、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを実行し、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲のうちホスト車両が走行している車線と同じ車線上にターゲット移動体が検出できていないことを含む
本開示の第六態様は、
プロセッサを含み、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを実行し、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリアが存在することを含む。
本開示の第七態様は、
プロセッサを含み、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを実行し、
構造のない道路における限定ルールは、構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に標準ルールを変更して安全エンベロープを固定範囲とするルールである。
【0011】
本開示の第八態様は、
プロセッサを含み、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープおよびホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、加速度に対して仮定される制限値とホスト車両の加速度との比較、および、ホスト車両の速度と速度に対して仮定される制限値との比較を含むシナリオのシミュレーションに基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、を実行し、
加速度に対して仮定される制限値と、速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
シナリオのシミュレーションに基づいて安全エンベロープの違反を監視することは、選択されたシナリオに基づいて違反の判定方法を選択することを含む
【0012】
本開示の第態様は、
記憶媒体に記憶され、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲のうちホスト車両が走行している車線と同じ車線上にターゲット移動体が検出できていないことを含む。
本開示の第十態様は、
記憶媒体に記憶され、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
限定ルールは、ターゲット移動体が法規に適合して走行する仮定に基づいたルールであって、標準ルールよりも制限が緩和されたルールであり、
適用条件は、検知情報においてセンサの検出範囲内に死角エリアが存在することを含む。
本開示の第十一態様は、
記憶媒体に記憶され、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべき状況を判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープと、ホスト車両とターゲット移動体との間の距離との比較に基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、
安全エンベロープを設定するルールには、適用条件が成立したときに適用する限定ルールと、適用条件が不成立のときに適用する標準ルールとが含まれ、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定すること、とを含み、
構造のない道路における限定ルールは、構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に標準ルールを変更して安全エンベロープを固定範囲とするルールである。
【0013】
本開示の第十二態様は、
記憶媒体に記憶され、ホスト車両の運転制御に関する処理を遂行するためにプロセッサに実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト車両の走行環境において検知される状態を記述した検知情報を取得することと、
検知情報に基づき、ホスト車両に対して監視すべきシナリオを、予め定義された複数のシナリオから選択するように判定することと、
検知情報に基づき、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含むように安全エンベロープを設定することと、
安全エンベロープおよびホスト車両とターゲット車両との間の位置関係とに基づき加速度に対して仮定される制限値を設定し、加速度に対して仮定される制限値とホスト車両の加速度との比較、および、ホスト車両の速度と速度に対して仮定される制限値との比較を含むシナリオのシミュレーションに基づいて、安全エンベロープの違反を監視することと、を含み、
加速度に対して仮定される制限値と、速度に対して仮定される制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をするための制限値であり、
シナリオのシミュレーションに基づいて安全エンベロープの違反を監視することは、選択されたシナリオに基づいて違反の判定方法を選択することを含む
【0014】
第一三、五~七、九~十一態様によると、適用条件の成否に基づき、安全エンベロープを設定するルールを決定するので、適切な安全エンベロープを設定してその違反を監視することができる。
【0015】
第四八、十二態様によると、ホスト車両は、道路走行に対して定められた法規に適合した走行を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における用語の説明を示す説明表。
図2】本開示における用語の説明を示す説明表。
図3】本開示における用語の説明を示す説明表。
図4】本開示における用語の定義を示す説明表。
図5】本開示における用語の定義を示す説明表。
図6】第一実施形態の処理システムを示すブロック図。
図7】第一実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図。
図8】第一実施形態の処理システムを示すブロック図。
図9】ホスト車両がターゲット車両の後続車となって走行している図。
図10】リスク監視ブロッが実行する処理方法を示すフローチャート。
図11】リスク監視ブロッが実行する処理方法を示すフローチャート。
図12】先行車、後続車の速度と加速度の時間変化を示す図。
図13】2台の車両が向き合って走行している図。
図14】2台の車両が隣り合って走行している図。
図15】検出範囲Asの遠点Pfに想定する仮想的なターゲット車両を示す図。
図16】検出範囲Asの遠点Pfに想定する仮想的なターゲット車両を示す図。
図17】死角エリアの端に想定する仮想的なターゲット車両を示す図。
図18】軌道衝突の不在状況を保証する第一条件を説明する図。
図19】軌道衝突の不在状況を保証する第二条件を説明する図。
図20】構造のない道路における第一安全状態を説明する図。
図21】構造のない道路における第二安全状態を説明する図。
図22】構造のない道路における第三安全状態を説明する図。
図23】構造のない道路における縦方向の加減速プロファイルを示す図。
図24】構造のない道路における横方向の速度プロファイルを示す図。
図25】ターゲット移動体3が人である場合に設定する安全範囲を示す図。
図26】第一実施形態の入出庫ルールにより設定される安全範囲を説明する図。
図27】第二実施形態の入出庫ルールにより設定される安全範囲を説明する図。
図28】第三実施形態の入出庫ルールにより設定される安全範囲を説明する図。
図29】第四実施形態の処理システムを示すブロック図である。
図30】第五実施形態の処理システムを示すブロック図である。
図31】第六実施形態の処理システムを示すブロック図である。
図32】第六実施形態の処理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示による複数の実施形態を、図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0018】
図1~5は、本開示の各実施形態に関連する用語の説明を、示している。但し、用語の定義は、図1~5に示される説明に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において解釈されるものである。
【0019】
(第一実施形態)
図6に示される第一実施形態の処理システム1は、ホスト移動体の運転制御に関連する処理(以下、運転制御処理と表記)を、遂行する。ホスト車両2の視点において、ホスト車両2は自車両(ego-vehicle)であるともいえる。処理システム1が運転制御処理の対象とするホスト移動体は、図7に示されるホスト車両2である。ホスト車両2は、例えば処理システム1の全てが搭載される場合等には、当該処理システム1にとっての自車両(ego-vehicle)であるといえる。
【0020】
ホスト車両2においては、自動運転が実行される。自動運転は、動的運転タスク(Dynamic Driving Task:以下、DDTと表記)における乗員の手動介入度に応じて、レベル分けされる。自動運転は、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全てのDDTを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転は、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員としてのドライバが一部若しくは全てのDDTを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転は、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより、実現されてもよい。
【0021】
ホスト車両2には、図6,8に示されるセンサ系5、通信系6、地図DB(Data Base)7、及び情報提示系4が搭載される。センサ系5は、処理システム1により利用可能なセンサデータを、ホスト車両2における外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系5は、外界センサ50及び内界センサ52を含んで構成される。
【0022】
外界センサ50は、ホスト車両2の外界に存在する物標を、検出してもよい。物標検出タイプの外界センサ50は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーザレーダ、ミリ波レーダ、及び超音波ソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ50は、ホスト車両2の外界における大気の状態を、検出してもよい。大気検出タイプの外界センサ50は、例えば外気温センサ、及び湿度センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
内界センサ52は、ホスト車両2の内界において車両運動に関する特定の物理量(以下、運動物理量と表記)を、検出してもよい。物理量検出タイプの内界センサ52は、例えば速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ52は、ホスト車両2の内界における乗員の状態を、検出してもよい。乗員検出タイプの内界センサ52は、例えばアクチュエータセンサ、ドライバステータスモニタ、生体センサ、着座センサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。ここで特にアクチュエータセンサとしては、ホスト車両2の運動アクチュエータに関する乗員の操作状態を検出する、例えばアクセルセンサ、ブレーキサンサ、及び操舵センサ等のうち、少なくとも一種類が採用される。
【0024】
通信系6は、処理システム1により利用可能な通信データを、無線通信により取得する。通信系6は、ホスト車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から、測位信号を受信してもよい。測位タイプの通信系6は、例えばGNSS受信機等である。通信系6は、ホスト車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系6は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系6は、ホスト車両2の内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系6は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0025】
図DB7は、処理システム1により利用可能な地図データを、記憶する。地図DB7は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図DB7は、自己位置を含んだホスト車両2の自己状態量を推定するロケータのDBであってもよい。地図DBは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、DBであってもよい。地図DB7は、複数種類のDBの組み合わせにより、構築されてもよい。
【0026】
図DB7は、例えばV2Xタイプの通信系6を介した外部センタとの通信等により、最新の地図データを取得して記憶する。地図データは、ホスト車両2の走行環境を表すデータとして、二次元又は三次元にデータ化されている。三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されてもよい。地図データは、例えば道路構造の位置座標、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路データを含んでいてもよい。地図データは、例えば道路に付属する道路標識、道路表示、及び区画線の、位置座標並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示データを含んでいてもよい。地図データに含まれる標示データは、ランドマークのうち、例えば交通標識、矢印マーキング、車線マーキング、停止線、方向標識、ランドマークビーコン、長方形標識、ビジネス標識、又は道路のラインパターン変化等を表していてもよい。地図データは、例えば道路に面する建造物及び信号機の、位置座標並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物データを含んでいてもよい。地図データに含まれる標示データは、ランドマークのうち、例えば街灯、道路のエッジ、反射板、ポール、又は道路標識の裏側等を表していてもよい。
【0027】
情報提示系4は、ホスト車両2のドライバを含む乗員へ向けた報知情報を提示する。情報提示系4は、視覚提示ユニット、聴覚提示ユニット、及び皮膚感覚提示ユニットを含んで構成される。視覚提示ユニットは、乗員の視覚を刺激することより、報知情報を提示する。視覚提示ユニットは、例えばHUD(Head-up Display)、MFD(Multi Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。聴覚提示ユニットは、乗員の聴覚を刺激することにより、報知情報を提示する。聴覚提示ユニットは、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。皮膚感覚提示ユニットは、乗員の皮膚感覚を刺激することにより、報知情報を提示する。皮膚感覚提示ユニットにより刺激される皮膚感覚には、例えば触覚、温度覚、及び風覚等のうち、少なくとも一種類が含まれる。皮膚感覚提示ユニットは、例えばステアリングホイールのバイブレーションユニット、運転席のバイブレーションユニット、ステアリングホイールの反力ユニット、アクセルペダルの反力ユニット、ブレーキペダルの反力ユニット、及び空調ユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0028】
図6に示されるように処理システム1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系5、通信系6、地図DB7、及び情報提示系4に接続される。処理システム1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を統合する、統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御におけるDDTを判断する、判断ECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0029】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の自己位置を含む自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運動アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2における情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、例えば通信系6を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構築する、少なくとも一つの外部コンピュータであってもよい。
【0030】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0031】
プロセッサ12は、ソフトウェアとしてメモリ10に記憶された処理プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより処理システム1は、ホスト車両2の運転制御処理を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。このように処理システム1では、ホスト車両2の運転制御処理を遂行するためにメモリ10に記憶された処理プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることにより、複数の機能ブロックが構築される。処理システム1により構築される複数の機能ブロックには、図8に示されるように検知ブロック100、計画ブロック120、リスク監視ブロック140、及び制御ブロック160が含まれる。
【0032】
検知ブロック100は、センサ系5の外界センサ50及び内界センサ52からセンサデータを取得する。検知ブロック100は、通信系6から通信データを取得する。検知ブロック100は、地図DB7から地図データを取得する。検知ブロック100は、これらの取得データを入力としてフュージョンすることにより、ホスト車両2の内外環境を検知する。内外環境の検知により検知ブロック100は、後段の計画ブロック120とリスク監視ブロック140とへ与える検知情報を生成する。このように検知情報の生成に当たって検知ブロック100は、センサ系5及び通信系6からデータを取得し、取得データの意味を認識又は理解し、ホスト車両2の外界状況及びその中での自己の置かれた状況、並びにホスト車両2の内界状況を含む状況全般を、取得データを統合して把握するといえる。検知ブロック100は、計画ブロック120とリスク監視ブロック140とへ実質同一の検知情報を与えてもよい。検知ブロック100は、計画ブロック120とリスク監視ブロック140とへ相異なる検知情報を与えてもよい。
【0033】
検知ブロック100が生成する検知情報は、ホスト車両2の走行環境においてシーン毎に検知される状態を、記述している。検知ブロック100は、ホスト車両2の外界における道路ユーザ、障害物、及び構造物を含んだ物体を検知することにより、当該物体の検知情報を生成してもよい。物体の検知情報は、例えば物体までの距離、物体の相対速度、物体の相対加速度、物体の追尾検知による推定状態等のうち、少なくとも一種類を表していてもよい。物体の検知情報はさらに、検知された物体の状態から認識又は特定される種別を、表していてもよい。検知ブロック100は、ホスト車両2の現在及び将来に走行する走路を検知することにより、当該走路の検知情報を生成してもよい。走路の検知情報は、例えば路面、車線、道路端、及びフリースペース等のうち、少なくとも一種類の状態を表していてもよい。
【0034】
検知ブロック100は、ホスト車両2の自己位置を含む自己状態量を推定的に検知するローカリゼーションにより、当該自己状態量の検知情報を生成してもよい。検知ブロック100は、自己状態量の検知情報と同時に、ホスト車両2の走路に関する地図データの更新情報を生成して、当該更新情報を地図DB7へフィードバックしてもよい。検知ブロック100は、ホスト車両2の走路に関連付けられた標示を検知することにより、当該標示の検知情報を生成してもよい。標示の検知情報は、例えば標識、区画線、及び信号機等のうち、少なくとも一種類の状態を表していてもよい。標示の検知情報はさらに、標示の状態から認識又は特定される交通ルールを、表していてもよい。検知ブロック100は、ホスト車両2の走行するシーン毎の気象状況を検知することにより、当該気象状況の検知情報を生成してもよい。検知ブロック100は、ホスト車両2の走行シーン毎の時刻を検知することにより、当該時刻の検知情報を生成してもよい。
【0035】
計画ブロック120は、検知ブロック100から検知情報を取得する。計画ブロック120は、取得した検知情報に応じてホスト車両2の運転制御を計画する。運転制御の計画では、ホスト車両2のナビゲーション動作及びドライバの支援動作に関する制御指令が生成される。計画ブロック120が生成する制御指令は、ホスト車両2の運動アクチュエータを制御するための制御パラメータを、含んでいてもよい。制御指令の出力対象となる運動アクチュエータとしては、例えば内燃機関、電動モータ、及びそれらが組み合わされたパワトレイン、ブレーキ装置、並びに操舵装置等のうち、少なくとも一種類が挙げられる。
【0036】
計画ブロック120は、運転ポリシとその安全性に従って記述された安全モデルを用いることにより、当該運転ポリシと適合するように制御指令を生成してもよい。安全モデルの従う運転ポリシとは、例えば意図された機能の安全性(Safety Of The Intended Functionality:以下、SOTIFと表記)を保証する車両レベル安全戦略を踏まえて、規定される。換言すれば安全モデルは、車両レベル安全戦略の実装となる運転ポリシに従うことにより、且つSOTIFをモデリングすることにより、記述される。計画ブロック120は、運転制御結果を安全モデルに逆伝播させる機械学習アルゴリズムにより、安全モデルをトレーニングしてもよい。トレーニングされる安全モデルとしては、例えばDNN(Deep Neural Network)といったニュラーラルネットワークによるディープラーニング、及び強化学習等のうち、少なくとも一種類の学習モデルが用いられてもよい。
【0037】
計画ブロック120は、運転制御によってホスト車両2に将来走行させる経路を、制御指令の生成に先立って計画してもよい。経路計画は、検知情報に基づいてホスト車両2をナビゲートするために、例えばシミュレーション等の演算によって実行されてもよい。計画ブロック120はさらに、計画経路を辿るホスト車両2に対して、取得した検知情報に基づく適正な軌道を、制御指令の生成に先立って計画してもよい。計画ブロック120が計画する軌道は、ホスト車両2に関する運動物理量として、例えば走行位置、速度、加速度、及びヨーレート等のうち、少なくとも一種類を時系列に規定してもよい。時系列な軌道計画は、ホスト車両2のナビゲートによる将来走行のシナリオを、構築する。計画ブロック120は、安全モデルを用いた計画によって軌道を生成してもよい。この場合には、生成された軌道に対してコストを与えるコスト関数が演算されることにより、当該演算結果に基づく機械学習アルゴリズムによって安全モデルがトレーニングされてもよい。
【0038】
計画ブロック120は、ホスト車両2における自動運転レベルの調整を、取得した検知情報に応じて計画してもよい。自動運転レベルの調整には、自動運転と手動運転との間での引き継ぎも含まれていてもよい。自動運転と手動運転との間での引き継ぎは、自動運転を実行する運行設計領域(Operational Design Domain:以下、ODDと表記)の設定により、当該運行設計領域に対する進入又は退出に伴うシナリオにおいて実現されてもよい。運行設計領域からの退出シナリオ、即ち自動運転から手動運転への引き継ぎシナリオでは、例えば安全モデル等に基づき不合理なリスクが存在すると判断される不合理な状況が、ユースケースとして挙げられる。このユースケースにおいて計画ブロック120は、フォールバック予備ユーザとなるドライバが最小リスク操作をホスト車両2に与えてホスト車両2を最小リスク状態へ移行させるためのDDTフォールバックを、計画してもよい。
【0039】
自動運転レベルの調整には、ホスト車両2の縮退走行が含まれてもよい。縮退走行のシナリオでは、手動運転モードへの引き継ぎによっては不合理なリスクが存在すると、例えば安全モデル等に基づき判断される不合理な状況が、ユースケースとして挙げられる。このユースケースにおいて計画ブロック120は、自律走行及び自律停止によりホスト車両2を最小リスク状態へ移行させるためのDDTフォールバックを、計画してもよい。ホスト車両2を最小リスク状態へ移行させるためのDDTフォールバックは、自動運転レベルを引き下げる調整において実現されるだけでなく、自動運転レベルを維持して縮退走行させる調整、例えばMRM(Minimum Risk Maneuver)等において実現されてもよい。
【0040】
リスク監視ブロック140は、検知ブロック100から検知情報を取得する。リスク監視ブロック140は、取得した検知情報に基づくことにより、ホスト車両2とその他のターゲット移動体3(図7参照)との間におけるリスクを、シーン毎に監視する。リスク監視ブロック140は、ターゲット移動体3に対してホスト車両2のSOTIFを保証するように、検知情報に基づくリスク監視を時系列に実行する。リスク監視において想定されるターゲット移動体3は、ホスト車両2の走行環境に存在する他の道路ユーザである。ターゲット移動体3には、例えば自動車、トラック、バイク、及び自転車といった脆弱性のない道路ユーザと、歩行者といった脆弱な道路ユーザとが、含まれる。ターゲット移動体3にはさらに、動物が含まれてもよい。
【0041】
リスク監視ブロック140は、ホスト車両2においてSOTIFを保証する、例えば車両レベル安全戦略等を踏まえた安全エンベロープを、取得したシーン毎の検知情報に基づき設定する。リスク監視ブロック140は、上述の運転ポリシに従う安全モデルを用いて、ホスト車両2及びターゲット移動体3間における安全エンべーロープを設定してもよい。安全エンベロープの設定に用いられる安全モデルは、不合理なリスク又は道路ユーザの誤用に起因する潜在的な事故責任を、事故責任規則に則って回避するように設計されてもよい。換言すれば安全モデルは、運転ポリシに従う事故責任規則をホスト車両2が遵守するように設計されてもよい。こうした安全モデルとしては、例えば特許文献1に開示されるような責任敏感型安全性モデル(Responsibility Sensitive Safety model)等が、挙げられる。
【0042】
安全エンベロープの設定では、運転ポリシに従うと仮定したホスト車両2及びターゲット移動体3に対する安全モデルに基づくことにより、少なくとも一種類の運動物理量に関するプロファイルから、安全距離が想定されてもよい。安全距離は、予測されるターゲット移動体3の運動に対して、ホスト車両2の周囲に物理ベースのマージンを確保した境界を、画定する。安全距離は、道路ユーザにより適切な応答が実行されるまでの反応時間を加味して、想定されてもよい。安全距離は、事故責任規則を遵守するように、想定されてもよい。例えば車線等の車線構造が存在するシーンでは、ホスト車両2の縦方向において追突及び正面衝突のリスクを回避する安全距離と、ホスト車両2の横方向において側面衝突のリスクを回避する安全距離とが、演算されてもよい。一方、車線構造が存在しないシーンでは、ホスト車両2の任意方向において軌道の衝突するリスクを回避する安全距離が、演算されてもよい。
【0043】
リスク監視ブロック140は、ホスト車両2及びターゲット移動体3間における相対運動のシーン毎での状況を、上述した安全エンベロープの設定に先立って特定してもよい。例えば車線等の車線構造が存在するシーンでは、縦方向において追突及び正面衝突のリスクが想定される状況と、横方向において側面衝突のリスクが想定される状況とが、特定されてもよい。これら縦方向及び横方向の状況特定では、直線状の車線を前提とする座標系へ、ホスト車両2及びターゲット移動体3に関する状態量が変換されてもよい。一方、車線構造が存在しないシーンでは、ホスト車両2の任意方向において軌道が衝突するリスクの想定される状況が、特定されてもよい。尚、以上の状況特定機能については、検知ブロック100により少なくとも一部が実行されることにより、状況特定結果が検知情報としてリスク監視ブロック140に与えられてもよい。
【0044】
リスク監視ブロック140は、ホスト車両2及びターゲット移動体3間における安全判定を、設定した安全エンベロープと、取得したシーン毎の検知情報とに基づき、実行する。即ちリスク監視ブロック140は、ホスト車両2及びターゲット移動体3間において検知情報に基づき解釈される走行シーンには、安全エンベロープの違反があるか否かをテストすることにより、安全判定を実現する。安全エンベロープの設定において安全距離が想定される場合には、ホスト車両2及びターゲット移動体3間の現実距離が当該安全距離超過となることにより、安全エンベロープの違反はないとの判定が下されてもよい。一方、ホスト車両2及びターゲット移動体3間の現実距離が安全距離以下となることにより、安全エンベロープの違反があるとの判定が下されてもよい。
【0045】
リスク監視ブロック140は、安全エンベロープの違反ありとの判定を下した場合に、適切な応答として取るべき適正な行動をホスト車両2へ与えるための合理的なシナリオを、シミュレーションにより演算してもよい。合理的シナリオのシミュレーションでは、ホスト車両2及びターゲット移動体3間での状態遷移が推定されることにより、遷移する状態毎に取るべき行動が、ホスト車両2に対する制約として設定されてもよい。行動の設定では、ホスト車両2へ与える少なくとも一種類の運動物理量を、ホスト車両2に対する制約として制限するように、当該運動物理量に対して仮定される制限値が演算されてもよい。
【0046】
リスク監視ブロック140は、運転ポリシに従うと仮定したホスト車両2及びターゲット移動体3に対しての安全モデルに基づくことにより、少なくとも一種類の運動物理量に関するプロファイルから、事故責任規則を遵守するための制限値を直接的に演算してもよい。直接的な制限値の演算は、それ自体が安全エンべーロープの設定であって、運転制御に対する制約の設定でもあるといえる。そこで、制限値よりも安全側の現実値が検知される場合、安全エンベロープの違反なしとの判定が下されてもよい。一方、制限値を外れる側の現実値が検知される場合、安全エンベロープの違反ありとの判定が下されてもよい。
【0047】
リスク監視ブロック140は、例えば安全エンベロープの設定に用いられた検知情報、安全エンベロープの判定結果を表す判定情報、当該判定結果を左右した検知情報、及びシミュレートしたシナリオ等のうち、少なくとも一種類のエビデンス情報をメモリ10に記憶してもよい。エビデンス情報の記憶されるメモリ10は、処理システム1を構成する専用コンピュータの種類に応じて、ホスト車両2内に搭載されていてもよいし、例えばホスト車両2外の外部センタ等に設置されていてもよい。エビデンス情報は、非暗号化状態で記憶されてもよいし、暗号化又はハッシュ化されて記憶されてもよい。エビデンス情報の記憶は、安全エンベロープの違反はあるとの判定の場合に、少なくとも実行される。勿論、安全エンベロープの違反はないとの判定の場合にも、エビデンス情報の記憶は実行されてもよい。安全エンベロープの違反なしとの判定の場合におけるエビデンス情報は、記憶時点では遅行型指標として利活用可能であり、将来に対しては先行型指標としても利活用可能となる。
【0048】
制御ブロック160は、計画ブロック120から制御指令を取得する。制御ブロック160は、リスク監視ブロック140から安全エンベロープに関する判定情報を取得する。制御ブロック160は、安全エンベロープの違反なしとの判定情報を取得した場合に、計画されたホスト車両2の運転制御を、制御指令に従って実行する。
【0049】
これに対して制御ブロック160は、安全エンベロープの違反ありとの判定情報を取得した場合に、計画されたホスト車両2の運転制御に対して、判定情報に基づき運転ポリシに従う制約を与える。運転制御に対する制約は、機能的な制約(functional restriction)であってもよい。運転制御に対する制約は、縮退した制約(degraded constraints)であってもよい。運転制御に対する制約は、これらとは別の制約であってもよい。運転制御に対して制約は、制御指令の制限によって与えられる。合理的なシナリオがリスク監視ブロック140によりシミュレートされている場合に制御ブロック160は、当該シナリオに従って制御指令を制限してもよい。このとき、ホスト車両2の運動物理量に関して制限値が設定されている場合には、制御指令に含まれる運動アクチュエータの制御パラメータが、当該制限値に基づき補正されてもよい。
【0050】
以下、第一実施形態の詳細を説明する。
【0051】
図9に示されるように第一実施形態は、ホスト車両2が車線の区切られた車線構造8を走行する場合に適用できる。また、後述するように、第一実施形態は、ホスト車両2が、車線構造8がない道路を走行する場合にも適用できる。車線構造8は、車線の延伸する方向を縦方向として、ホスト車両2及びターゲット移動体3の運動を規制する。車線構造8は、車線の幅方向又は並ぶ方向を横方向として、ホスト車両2及びターゲット移動体3の運動を規制する。
【0052】
車線構造8におけるホスト車両2及びターゲット移動体3間の運転ポリシは、例えばターゲット移動体3がターゲット車両3aの場合、次の(A)~(E)等に規定される。尚、ホスト車両2を基準とする前方とは、例えばホスト車両2の現在舵角における旋回円上の進行方向、ホスト車両2の車軸と直交する車両重心を通る直線の進行方向、又はホスト車両2のセンサ系5のうちフロントカメラモジュールから同カメラのFOE(Focus of Expansion)の軸線上における進行方向等を、意味する。
(A) 車両は、前方を走行している車両に、後方から追突しない。
(B) 車両は、他の車両間に強引な割り込みをしない。
(C) 車両は、自己が優先の場合でも、状況に応じて他の車両と譲り合う。
(D) 車両は、見通しの悪い場所では、慎重に運転する。
(E) 車両は、自責他責に関わらず、自己で事故を防止可能な状況であれば、そのために合理的行動を取る。
【0053】
運転ポリシに従うモデルであって、SOTIFのモデリングされた安全モデルは、不合理な状況には至らない道路ユーザの行動を、取るべき適正な合理的行動として想定する。車線構造8におけるホスト車両2及びターゲット移動体3間での不合理な状況とは、正面衝突、追突、及び側面衝突である。正面衝突における合理的行動は、例えばホスト車両2に対するターゲット移動体3がターゲット車両3aの場合、逆走している車両がブレーキを掛けること等を、含む。追突における合理的行動は、例えばホスト車両2に対するターゲット移動体3がターゲット車両3aの場合、前方を走行している車両が一定以上の急ブレーキを掛けないこと、及びそれを前提として後方を走行している車両が追突を回避すること等を、含む。側面衝突における合理的行動は、例えばホスト車両2に対するターゲット移動体3がターゲット車両3aの場合、並走する車両同士が互いの離間方向へ操舵すること等を、含む。合理的行動の想定に際してホスト車両2及びターゲット移動体3に関する状態量は、車線がカーブする車線構造8と、車線が高低する車線構造8とのいずれであっても、直線状且つ平面状の車線構造8を仮定して縦方向及び横方向を規定する、直交座標系に変換される。
【0054】
安全モデルは、合理的行動を取らなかった移動体が事故責任を負うとする、事故責任規則に則って設計されるとよい。車線構造8での事故責任規則下、ホスト車両2及びターゲット移動体3間のリスクを監視するために用いられる安全モデルは、合理的行動によって潜在的な事故責任を回避するように、ホスト車両2に対する安全エンベロープをホスト車両2に対して設定する。そこで、処理システム1の全体が正常な状況でのリスク監視ブロック140は、ホスト車両2及びターゲット移動体3間の現実距離に対して、走行シーン毎に安全モデルに基づく安全距離を照らし合わせることにより、安全エンベロープ違反の有無を判定する。正常な状況でのリスク監視ブロック140は、安全エンベロープの違反がある場合に、合理的行動をホスト車両2へ与えるためのシナリオを、シミュレーションする。シミュレーションによりリスク監視ブロック140は、制御ブロック160での運転制御に対する制約として、例えば速度及び加速度等のうち少なくとも一方に関する制限値を、設定する。以下の説明において、正常な状況における違反判定機能及び制約設定機能は、正常時安全機能と表記される。
【0055】
図9では、ホスト車両2はターゲット車両3aに対して後続車である。ターゲット車両3aはターゲット移動体3の一例である。ターゲット移動体3は、ホスト車両2との間で安全判定を行う移動体である。ホスト車両2との間に他の移動体がいない移動体をターゲット移動体3としてもよい。ホスト車両2との間に他の移動体がいても、安全距離dminを算出できれば、ターゲット移動体3としてもよい。
【0056】
図10は、リスク監視ブロック140が実行する処理方法を示している。処理方法は、一定周期で繰り返し実行する。処理方法のS100では、リスク監視ブロック140は、検知ブロック100から検知情報を取得する。
【0057】
処理方法のS101では、S100で取得した検知情報をもとに、状況を判定する。状況は、ターゲット移動体3ごとに判定する。状況を判定する理由は、安全判定(安全エンベロープの違反判定ともいう)の方法を選択するためである。状況は、監視すべき状況あるいは判定すべき状況である。状況は、シナリオ又はシーンであってもよい。S101の処理は、予め定義された複数のシナリオの中から、合理的に予見可能なシナリオを選択する処理であってもよい。
【0058】
状況は、縦方向と横方向と分けて判定してもよい。縦方向の状況は、追突を判定する状況と、正面衝突を判定する状況とを含んでいてもよい。追突を判定する状況の一例には、ホスト車両2が先行車であり、ターゲット車両3aが後続車である状況と、ターゲット車両3aが先行車であり、ホスト車両2が後続車である状況とを含んでいてもよい。正面衝突を判定する状況には、ホスト車両2とターゲット車両3aがともに正しい車線を走行している状況と、いずれか一方のみが正しい車線を走行している状況と、いずれも正しくない車線を走行している状況と、車線情報が不明な状況とを含んでいてもよい。ここで、正しい車線を走行している状況とは、法規、道路標識及び道路標示によって定められた正規の進行方向に沿って、車線を走行している状況であってよい。ホスト車両2とターゲット車両3aがともに正しい車線を走行している状況の例としては、ホスト車両2及びターゲット車両3aが中央線のない道路を走行している状況などが挙げられる。いずれか一方のみが正しい車線を走行している状況の例としては、当該一方(この車両は、緊急車両であってもよい)が、片側一車線道路の他方の車両(この車両は、路上駐車中の車両であってもよい)を追い越すために対向車線へはみ出して走行している状況、当該一方が一方通行道路を逆走している状況などが挙げられる。いずれも正しくない状況の例としては、両方が通行禁止区間を走行している状況などが挙げられる。車線状況が不明な状況の例としては、走行中の道路が地図に未掲載の道路である状況などが挙げられる。横方向の状況は、側面衝突を判定する状況を含んでいてもよい。側面衝突を判定する状況には、ホスト車両2が右、ターゲット車両3aが左である状況と、ホスト車両2が左、ターゲット車両3aが右である状況とを含んでいてもよい。
【0059】
処理方法のS102では、ホスト車両2の走行を、道路走行に対して定められた法規に適合させるためのルールを取得する。法規に適合させるためのルールは、道路走行に対して定められた法規そのものであってもよい。道路走行に対して定められた法規とは、いわゆる道路交通法などの交通法規であってもよい。法規に適合させるためのルールの一例には、ホスト車両2が走行している道路に対して設定されている制限速度以下の速度で走行するというルールがある。法規に適合させるためのルールの一例には、赤信号であれば停止線で停止する、停止線があれば一時停止するというルールがある。法規に適合させるためのルールの一例には、バス以外の車両はバス専用レーンを走行しないというルール、バス優先レーンでは、バス以外の車両はバスが近づいてきたら速やかに他の車線へ移動するというルールがある。法規に適合させるためのルールの一例には、緊急車両が接近してきたときは、道路の左側あるいは右側によって一時停止するというルールがある。法規に適合させるためのルールは、センサ系5、通信系6、地図DB7の1つ以上から、検知ブロック100を介して、あるいは、直接に取得することができる。なお、法規に適合させるルールのうち、ホスト車両2が走行している道路によらないルールについては、事前に取得しておいてもよい。
【0060】
処理方法のS103では、ホスト車両2は、車線構造8のある道路を走行しているか否かを判断する。車線区画線の有無によらず、ホスト車両2が走行している道路が1車線以上の車線がある道路であればS103の判断結果がYESになる。S103の判断結果がYESであればS104に進む。
【0061】
処理方法のS104では、安全距離dminを設定するルールを決定する。S104において決定し得るルールには、標準ルールと切り替えルールとが含まれている。切り替えルールは、切り替えルールに対する適用条件が成立することを条件に適用する限定的なルール、すなわち、限定ルールである。標準ルールは、切り替えルールが適用されない場合に適用されるルールである。切り替えルールは、S102で説明した、法規に適合させるためのルールをターゲット移動体3が遵守しているとして、標準ルールを修正したルールである。
【0062】
切り替えルールには、S102で取得した法規に適合させるルールの1つ以上が含まれ得る。切り替えルールには、S102で取得した法規に適合させるルールの全部が含まれていてもよい。S101~104の処理の全体が、すなわち、ルールを決定することを含めた処理が、予め定義された複数のシナリオの中から、合理的に予見可能なシナリオを選択する処理に相当していてもよく、シナリオを選択する処理の例を示すものであってもよい。また、S101~104の処理の全体及び後述のS105の処理の一部を含んだ処理が、すなわち、ルールを決定することを含めた処理が、合理的に予見可能なシナリオを選択する処理及びシナリオ毎の仮定のセットを定義する処理に相当していてもよく、シナリオを選択する処理及び仮定のセットを定義する処理の例を示すものであってもよい。
【0063】
処理方法のS105では、安全距離dminを設定する。安全距離dminは、ターゲット移動体3ごとに設定する。安全距離dminは、S101で判定した状況別に異なる計算式により設定してもよい。安全距離dminを算出する計算式は、事前に設定されている。安全距離dminを算出する計算式は、ホスト車両2とターゲット車両3aのそれぞれの速度vと加速度aとを用いて算出してもよい。安全距離は、他の道路ユーザに対して維持すべき適切な距離(appropriate distances)と言い換えることができる。安全距離dminの設定は、実質的に、ホスト車両の周囲の物理ベースの境界、マージン又は緩衝区域を定義することを含む安全エンベロープの設定そのものであってもよい。あるいは、安全距離dminの設定に基づいて、安全エンベロープの設定に含まれる境界、マージン又は緩衝区域が定義されてもよい。安全エンベロープは、シナリオ毎に定義された仮定のセットに基づき、設定されてよい。この仮定のセットは、仮定の最小セット、又は当該最小セットを一部に含むセットであってよい。
【0064】
〔標準ルール適用時の安全距離dmin
図9には、追突を判定する状況における安全距離dminも図示している。追突を判定する状況における安全距離dminと、先行車である車両cの停止距離dbrake,frontと、後続車である車両cの空走距離dreaction,rearと、車両cの制動距離dbrake,rearとの間には、式1に示す関係がある。
(式1) dmin=dreaction,rear+dbrake,rear-dbrake,front
追突を判定する状況における安全距離dminは、先行車である車両cが速度vで走行中、最大減速度amax,brakeでブレーキをかけて停車したとき、後続車である車両cが反応時間ρ秒間、最大加速度amax,accelで加速し、その後、最小減速度amin,brakeでブレーキをかけて停車したとしても、追突しない距離としてもよい。各車両間の最大減速度amax,brake、最大加速度amax,accel、最小減速度amin,brakeは、同じ値であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
最大加速度amax,accelは車両が加速能力を最大限に発揮した場合の加速度aとは異なっていてもよい。例えば、最大加速度amax,accelは、安全に走行を継続するという観点で設定する値であってもよい。また例えば、最大加速度amax,accelは、ターゲット移動体3(他の道路ユーザ)が示し得る合理的に予見可能な最大想定加速度であってもよい。最大減速度amax,brakeは、車両が減速能力を最大限に発揮した場合の減速度とは異なっていてもよい。例えば、最小減速度amin,brakeは、安全に走行を継続するという観点で設定する値であってもよい。また例えば、最小減速度amin,brakeは、ターゲット移動体3(他の道路ユーザ)が示し得る合理的に予見可能な最小想定減速度であってよい。反応時間ρは、先行車が減速を開始してから後続車が減速を開始するまでの時間である。例えば反応時間ρは、事前に設定されていてもよい。尚、減速度は正の値とする。また例えば反応時間ρは、ターゲット移動体3(他の道路ユーザ)が示し得る合理的に予見可能な最大想定反応時間であってもよい。尚、減速度は、マイナスの符号がつくことにより減速を示す。
【0066】
図12には、先行車が減速を開始してからの先行車と後続車の速度vと加速度aの時間変化を示している。先行車が減速を開始してからの先行車と後続車の速度vと加速度aの時間変化は、加減速プロファイルとも言う。
【0067】
先行車加速度は、時刻t0から時刻t1まで-amax,brakeで一定である。後続車加速度は、時刻t0から反応時間ρが経過するまではamax,accelであり、反応時間ρが経過してから時刻t2までは-amax,brakeである。したがって、先行車速度の時間変化は3段目のグラフになり、後続車速度の時間変化は4段目のグラフになる。
【0068】
正面衝突を判定する状況では、図13に示すように、車両cと車両cがそれぞれ速度v、vで向き合って走行中、反応時間ρ秒間、最大加速度amax,accelで加速し、その後、最小減速度amin,brakeでブレーキをかけて停車したとしても、正面衝突しない距離を安全距離dminとしてもよい。ただし、正しい車線を走行している車両については、最小減速度をamin,brakeより小さいamin,brake,correctとしてもよい。最大加速度amax,accelと最小減速度amin,brakeの意味は、追突を判定する状況と同じである。
【0069】
側面衝突を判定する状況では、図14に示すように、車両c、cがそれぞれ横速度v、vで隣り合って走行中、反応時間ρ秒間、最大加速度amax,accel,latで加速し、その後、最小減速度amin,brake,latで横方向に減速したとしても、最低距離μを空けて衝突しない距離を安全距離dminとしてもよい。例えば最大加速度amax,accel,latは、安全に走行を継続するという観点で設定する値であってもよい。また例えば最大加速度amax,accel,latは、ターゲット移動体3(他の道路ユーザ)が示し得る合理的に予見可能な最大想定加速度であってもよい。例えば、最小減速度amin,brake,latは、安全に走行を継続するという観点で設定する値であってもよい。また例えば、最小減速度amin,brake,latは、ターゲット移動体3(他の道路ユーザ)が示し得る合理的に予見可能な最小想定減速度であってもよい。最低距離μは事前に設定する値である。
【0070】
〔切り替えルール適用時の安全距離dmin
切り替えルール適用時の安全距離dminを具体例により説明する。切り替えルールの適用例として、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aとの安全距離dminを説明する。切り替えルールは、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aの速度を制限速度とする点において、標準ルールを修正する。制限速度は、道路により異なる。そのため、切り替えルールにおいて、制限速度は変更可能なパラメータである。
【0071】
図15図16に示されるように、第一実施形態の外界センサ50は、ホスト車両2の縦方向に関して検出範囲Asが設定される単一の縦方向センサ500を含む。切り替えルールでは、検出範囲Asにおいて検出限界の距離にある遠点Pfに、ターゲット車両3aを仮想する。即ち、仮想的なターゲット車両3aの位置が、検出限界距離の遠点Pfに想定される。遠点Pfとは、検出範囲Asにおいて縦方向又は横方向に最長距離となる検出限界距離の位置に定義される。図15では、仮想的なターゲット車両3aはホスト車両2と同一方向に走行している。図16では、仮想的なターゲット車両3aはホスト車両2に向かって走行している。
【0072】
標準ルールの一例は、ホスト車両2にとって最も厳しい条件を、換言すると不合理なリスクを最小化する条件を、シナリオ毎に定義された仮定のセットとして定義している。図15のシナリオにおいて、標準ルールは、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aが停車していること、すなわち速度が0であることを想定してもよい。図16のシナリオにおいて、標準ルールは、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aが上限速度を超えた速度で走行していることを想定してもよい。一方、切り替えルールの一例は、標準ルールの条件よりも緩和された条件を、シナリオ毎に定義された仮定のセットとして定義している。ここで標準ルールの条件よりも緩和された条件とは、合理的かつ予見可能な仮定に基づいた条件であってよい。図15のシナリオにおいて道路の下限速度が法規又は道路標識により規定されている場合、切り替えルールは、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aが下限速度で走行していることを想定してもよい。図16のシナリオにおいて道路の上限速度が法規又は道路標識により規定されている場合、センサ検知範囲外を走行するターゲット車両3aが上限速度で走行していることを想定してもよい。ターゲット車両3aの速度が、走行中の道路の制限速度であるとして、ホスト車両2とターゲット車両3aとの間の安全距離dminを設定する。ターゲット車両3aの速度を、走行中の道路の制限速度であると想定する以外は、ターゲット車両3aが検出できている場合と同じ計算により安全距離dminを算出してもよい。ターゲット車両3aの速度を、走行中の道路の制限速度であると想定する以外に、ターゲット車両2aの最大減速度amax,brake、最大加速度amax,accel、最小減速度amin,brake、最大反応時間ρminなどを、合理的に予見可能なパラメータとして想定した上で、安全距離dminを算出してもよい。
【0073】
車線構造8があり、検出範囲As内に存在しているターゲット車両3aを検出できている場合、検出範囲Asの遠点Pfに仮想的なターゲット車両3aを想定する必要がない。したがって、切り替えルールの適用条件の1つは、センサの検出範囲のうちホスト車両2が走行している車線と同じ車線上にターゲット車両3aが検出できていない(存在が確認されていない)ことである。
【0074】
切り替えルールの他の適用例を説明する。切り替えルールの他の適用例として、死角からのターゲット車両3aの飛び出しを説明する。換言すると、死角からのターゲット車両3aの飛び出しとは、遮蔽領域からのターゲット車両3aの出現である。切り替えルールは、死角からのターゲット車両3aの飛び出しを想定する際に、ターゲット車両3aの速度を制限速度とする。また、ターゲット車両3aも赤信号であれば停止線で停止し、停止線があれば一時停止すると想定する。これらの点において標準ルールを修正する。
【0075】
図17に示されるように、経路が交差するときにホスト車両2から見て死角エリア91がある場合、死角エリア91の端に仮想的なターゲット車両3aを設定する。交差部に信号があり、仮想的なターゲット車両3aが走行している道路が赤信号であれば、仮想的なターゲット車両3aは交差部手前で停止すると想定する。仮想的なターゲット車両3aが走行している道路に、交差部の手前に停止線があれば、仮想的なターゲット車両3aは停止線で停止すると想定する。停止線がない場合においても、仮想的なターゲット車両3aが走行している道路が非優先道路であれば、仮想的なターゲット車両3aは交差部手前で止まれる速度で走行すると想定する。
【0076】
一方、仮想的なターゲット車両3aが走行している道路が優先であれば、仮想的なターゲット車両3aは、仮想的なターゲット車両3aが走行している道路の制限速度で交差部を通過すると想定する。なお、仮想的なターゲット車両3aは、非優先道路を走行しているホスト車両2よりも交差部に後に進入するのであれば、ホスト車両2に追突しない速度で走行すると想定してもよい。この場合、ホスト車両2よりも交差部に先に進入するのであれば、仮想的なターゲット車両3aは制限速度で交差部を通過すると想定する。このように想定した速度により、ホスト車両2とターゲット車両3aとの間の安全距離dminを設定する。
【0077】
センサ検知範囲内に死角エリア91がない場合には、死角エリア91の端に仮想的なターゲット車両3aを想定する必要がない。したがって、切り替えルールの適用条件の1つは、検知範囲内に死角エリア91があることである。
【0078】
説明を図10に戻す。処理方法のS110では、安全エンベロープの違反を監視する。S110は、S111~S114を含む。S111では、安全判定をする。安全判定は、状況別に設定した安全距離dminと、ホスト車両2とターゲット移動体3との間の現在距離とを比較して行う。安全距離dminが現在距離よりも短ければ安全エンベロープの違反状態と判定する。つまり、安全距離dminよりも現在距離が長ければ安全エンベロープの違反状態でないと判定する。安全判定はターゲット移動体3ごとに行う。
【0079】
処理方法のS112では、加速度aを評価する。この評価は、加速度aの制限値と、ホスト車両2の現在の加速度aを比較して行う。
【0080】
加速度aの制限値は、安全判定の結果に基づいて決定することができる。安全判定の結果、安全エンベロープの違反状態であるという判定結果であれば、加速度aには制限は課されない。安全ではないという判定結果になった場合、縦方向及び横方向のうち、安全エンベロープの違反状態ではないとの判定結果になった側の加速度aが制限されたり、制動が必要になったりする。安全判定は例えばターゲット移動体3ごとに行うので、縦方向及び横方向において、複数の加速度aの制限値が設定される場合もある。
【0081】
さらに、赤信号により交差点手前で停止する必要がある場合、および、停止線があり、停止線の手前で停止する必要がある場合には、停止する必要がある位置で停止する加減速度プロファイルを算出する。ここで算出する加減速度プロファイルは、停止する位置として、ターゲット車両3aに追突しない位置に代えて、交差点手前あるいは停止線手前において停止する必要がある位置とする。これ以外は、追突を判定する場合において安全距離dminを算出する場合と同様に算出する。そして、算出した加減速度プロファイルから定まる各位置での加速度aも加速度aの制限値とする。
【0082】
赤信号により交差点手前で停止すること、および、停止線の手前で停止することは、法規に適合した走行をすることである。赤信号により交差点手前で停止する際の加減速度プロファイル、および、停止線の手前で停止する際の加減速度プロファイルから定まる加速度aの制限値は、法規に適合するために停止する際に安全に停止する加速度aの制限値である。
【0083】
複数の加速度aの制限値が設定される場合、複数の制限値を統合して評価する。統合は、複数の制限値のうち、最も制限する値を、ホスト車両2の現在の加速度aと比較する制限値として採用することであってもよい。
【0084】
処理方法のS106とS113は、S104からS112とは独立した処理である。S106とS113は、S104からS112と並列的に実行してもよい。また、S106とS113は、S104からS112の前または後に実行してもよい。
【0085】
S106では、速度vの制限値を決定する。速度vの制限値の一例は、S102で取得した制限速度である。速度vの制限値の他の例を説明する。速度vの制限値の他の例は、前述した図17に示すように、仮想的なターゲット車両3aを設定する例である。この例において、ホスト車両2が優先道路を走行しており、死角エリア91から仮想的なターゲット車両3aが出てくることが想定される。このとき、ホスト車両2が仮想的なターゲット車両3aよりも交差部に先に進入する場合、ホスト車両2及び仮想的なターゲット車両3aのうち交差部の通行権は、ホスト車両2に定義される。仮想的なターゲット車両3aに追突されない下限速度を制限値に設定する。反対に、ホスト車両2が仮想的なターゲット車両3aよりも後に交差部に進入する場合、ホスト車両2及び仮想的なターゲット車両3aのうち交差部の通行権は、ターゲット車両3aに定義される。仮想的なターゲット車両3aに追突しない上限速度又はターゲット車両3aと適切な距離を維持できるような上限速度を制限値に設定する。ホスト車両2が非優先道路を走行している場合、交差部の手前で停止できる上限速度を制限値に設定する。
【0086】
処理方法のS113では、速度vを評価する。この評価は、速度vの制限値と、ホスト車両2の現在の速度vを比較して行う。複数の速度vの制限値が設定される場合、複数の制限値を統合して評価する。統合は、複数の制限値のうち、最も制限する値を、ホスト車両2の現在の速度vと比較する制限値として採用することであってもよい。
【0087】
処理方法のS114では、S112での評価結果、および、S113での評価結果を出力する。評価結果は、制御ブロック160に与える。評価結果は、判定情報に含まれて制御ブロック160に与えてもよい。判定情報には、S111で実行した安全判定の結果が含まれる。判定情報には、評価結果により規定される制約が含まれ得る。制約は、加速度の制約および速度の制約の一方または両方を含み得る。
【0088】
次に図11を説明する。図11は、ホスト車両2が構造のない道路を走行している場合に実行する。処理方法のS121では、安全距離dminを設定するルールを決定する。S121において決定し得るルールには、フリースペース標準ルールとフリースペース限定ルールとが含まれている。フリースペース限定ルールは、フリースペース限定ルールに対する適用条件が成立することを条件に適用する限定的なルール、すなわち、限定ルールである。フリースペース標準ルールは、切り替えルールが適用されない場合に適用される。
【0089】
フリースペース限定ルールは、構造のない道路において、事前に設定された車両動作を行う際に適用されるルールである。フリースペース限定ルールの適用条件は、ホスト車両2が事前に設定された車両動作を行うエリアに位置するという条件とすることができる。フリースペース限定ルールの適用条件は、ホスト車両2が事前に設定された車両動作を行っていることが検出できたという条件とすることができる。フリースペース限定ルールの適用条件は、上記2つの適用条件のAND条件とすることもできる。ターゲット移動体3がターゲット車両3aである場合、フリースペース限定ルールの適用条件は、ホスト車両2およびターゲット車両3aの少なくとも一方が、事前に設定された車両動作を行うエリアに位置するという条件とすることができる。フリースペース限定ルールの適用条件は、ホスト車両2およびターゲット車両3aのうち、事前に設定された車両動作を行うエリアに位置する車両が、事前に設定された車両動作を行っていることが検出できたという条件とすることができる。
【0090】
〔構造のない道路における標準ルール〕
フリースペース限定ルールを適用する適用条件を満たさない場合、フリースペース標準ルールを適用する。構造のない道路においてフリースペース標準ルールが前提とする運転ポリシは、例えばターゲット移動体3がターゲット車両3aの場合、次の(F)~(H)等に規定される。
(F) 車両同士は、互いにブレーキを掛ける。
(G) ブレーキにより不合理な状況に至ることを回避するシーンでは、ブレーキを掛けない。
(H) 車両は、前方における他の車両が不在の場合に、前進を許可される。ここで、フリースペース標準ルールでは、構造のある道路での標準ルール、すなわち(A)~(E)に基づいたルールのうち一部又は全部が適用されなくてもよい。
【0091】
この運転ポリシに従う安全モデルは、ホスト車両2及びターゲット移動体3の各軌道が衝突することを、不合理な状況として定義する。換言すれば安全モデルは、ホスト車両2及びターゲット移動体3に対して、軌道衝突という不合理なリスクを不在にするSOTIFのモデリングにより規定されてもよい。ここでいう安全モデルは、安全関連モデル(safety-related models)そのものであってもよく、安全関連モデルのうちの一部を構成するモデルであってもよい。本実施形態におけるすべて又は一部の標準ルール及び限定ルールは、動的運転タスクにおいて使用される安全関連モデルの属性に基づいて、定義されてよい。軌道衝突の不在状況は、次の第一及び第二条件のうち、少なくとも一方の成立により保証される。(G)において、不合理な状況を、危険な状況(hazardous situation)に置換したルールが採用されてもよい。
【0092】
第一条件は、図18に示す、ホスト車両2及びターゲット移動体3の各軌道間の最小距離Δdが、例えば事故責任規則等に基づく設計値よりも大きいことである。第一条件の成立により、ホスト車両2及びターゲット移動体3が止まるまでの各走行距離は、常に一定値以上となる。
【0093】
第二条件は、図19に示す、ホスト車両2の停止時における相対位置ベクトルとターゲット移動体3の進行方向とがなす角度θstopが、例えば事故責任規則等に基づく設計値よりも小さいことである。第二条件の成立により、ホスト車両2が軌道上で止まるまでの距離が常に一定以上になると共に、停止したホスト車両2の前方にターゲット移動体3が存在することとなる。
【0094】
図20図21図22において、ホスト車両2及びターゲット車両3aから、それらの前方に延びている破線で示す図形は、ホスト車両2及びターゲット車両3aが制動制御により停止するまでに到達する到達範囲を示す。破線で示す図形は、到達範囲を計算した時点から所定時間経過した後は、到達範囲を計算した時点の軌道を、進行方向右側或いは左側に逸れることを想定している。したがって、到達範囲を示す図形においてホスト車両2及びターゲット車両3aから最も遠い位置は、円弧形状になっている。破線で示す到達範囲は、構造がある道路において追突を判定する際の加減速プロファイルで制動制御した場合に到達する範囲である。
【0095】
図21図22において、ホスト車両2及びターゲット車両3aから延びている実線で示す図形は、ホスト車両2及びターゲット車両3aが停止するための制動制御をしないで到達する到達範囲を示している。実線で示す到達範囲は、破線で示す到達範囲と同じ時間で到達する範囲を示している。
【0096】
図23には、構造のない道路における縦方向の加減速プロファイルの一例を示している。図23においてC、Cの意味は図9と同じである。cの加速度は、車両がそのまま前進する際の加速度の上下限値を示している。そのまま前進するとは、停止するための制動制御に移行しないことを意味する。そのまま前進するので、加速度は変化しない。amax,accelは安全モデルにおいて設定されている加速度aの上限値、-amax,brakeは安全モデルにおいて設定されている加速度aの下限値である。車両がそのまま前進する際の加速度aは変化しない。加速度aの上下限値は事前に設定されている値である。cの加速度は、車両が制動制御をして停止する際の加速度の上下限値を示しており、時刻t0において制動制御を開始する。ρは反応時間である。-amin,brakeは、最小の減速度、換言すれば減速度の最小値である。
【0097】
図24には、構造のない道路における横方向の速度プロファイルの一例を示している。横方向の速度プロファイルは、c、cで共通である。γmaxは最大ヨーレートであり、-γmaxは最小ヨーレートである。c’maxは曲率変化の最大値であり、c’maxは曲率変化の最小値である。これらは、安全モデルにおいて事前に設定されている値である。
【0098】
図23図24に示す縦及び横方向の加速度、速度プロファイルに基づき、図20図21図22に示す到達範囲が定まる。このようにして定まる到達範囲を安全範囲とし、ホスト車両2の安全範囲とターゲット移動体3の安全範囲とが重ならないようにするルールが標準ルールである。破線で示す安全範囲を停止時安全範囲とし、実線で示す安全範囲を通過時安全範囲とする。通過時安全範囲は、非停止時安全範囲と言うこともできる。ホスト車両2から安全範囲の円弧状の各点までの距離が安全距離dminである。
【0099】
図25に、ターゲット移動体3が人である場合に設定する安全範囲を示している。ターゲット移動体3が人である場合にも、停止時安全範囲と通過時安全範囲を設定し得る。ターゲット移動体3が人である場合の安全範囲は、人を含む範囲に設定する。ターゲット移動体3が人である場合、通過時安全範囲は停止時安全範囲を包含する。これら2つの安全範囲の大きさは、固定されていてもよいし、人の移動速度に応じて広くなってもよい。安全範囲は、人の移動する方向に相対的に大きく延びる形状とすることができる。大人と子供とでは、それぞれに予見される行動に応じて、互いに異なる停止時安全範囲と通過時安全範囲とを設定してもよい。自転車、バイク、キックボード、ローラースケート、セグウェイ(登録商標)、車椅子、ベビーカー、馬車、路面電車に対しても、それぞれに予見される行動に応じて、停止時安全範囲と通過時安全範囲とを設定してもよい。
【0100】
構造のない道路における安全モデルは、軌道衝突という不合理な状況には至らない安全エンベロープを設定する。安全エンベロープは、次の第一~第三安全状態のうち、いずれかの成立させるように設定される。
【0101】
第一安全状態は、図20に示されるように、ホスト車両2及びターゲット移動体3が共に止まるまでに、両者の到達可能範囲において軌道同士の衝突が発生しない状態である。第二安全状態は、図21に示されるように、ホスト車両2が制動制御をして停止する一方、ターゲット車両3aは制動制御をしないでそのまま通過する場合にも、両者の到達可能範囲において軌道同士の衝突が発生しない状態である。この第二安全状態は、ターゲット車両3aが制動制御をして停止する一方、ホスト車両2がそのまま前進した場合に、両者の到達可能範囲において軌道同士の衝突が発生する事態を回避する。
【0102】
第三安全状態は、図22に示されるように、ターゲット車両3aが制動制御をして停止する一方、ホスト車両2はそのまま前進した場合にも、両者の到達可能範囲において軌道同士の衝突が発生しない状態である。この第三安全状態は、ホスト車両2が制動制御をして停止する一方、ターゲット車両3aがそのまま前進した場合に、両者の到達可能範囲において軌道同士の衝突が発生する事態を回避する。
【0103】
構造のない道路における標準ルールは、万が一に不合理な状況となったときに、ホスト車両2が取るべき適正な合理的行動として、次の第一~第三行動を想定する。第一行動では、ホスト車両2及びターゲット移動体3の両者が完全に停止している状態であれば、ホスト車両2の前方にターゲット車両3aが位置していなければ、ホスト車両2が前方に動いてターゲット車両3aから離間する。また一方で第一行動では、両者の完全停止状態でも、ホスト車両2の前方にターゲット車両3aが位置していれば、不合理な状況が不在となるまでホスト車両2は完全停止状態を継続する。
【0104】
第二行動では、ホスト車両2が上述の第二又は第三安全状態から不合理な状況へ陥った場合、ターゲット車両3aが停止していない限り、ホスト車両2は前進を継続する。第二行動では、この前進継続中にターゲット車両3aが停止した場合には、前方にターゲット車両3aが位置していなければ、ホスト車両2は前進をさらに継続する。
【0105】
また一方で第二行動では、前進継続中にターゲット車両3aが停止した場合に、前方にターゲット車両3aが位置していれば、ホスト車両2が停止動作を実行する。第三行動では、第一及び第二行動以外の場合に、ホスト車両2が停止動作を実行する。尚、第一及び第二行動においてホスト車両2の前方にターゲット車両3aが位置しているか否かは、上述の第二条件に基づき判断される。
【0106】
〔フリースペース限定ルール〕
フリースペース限定ルールは、標準ルールにおける到達範囲を変更する。フリースペース限定ルールの一例として、駐車スペース92に対する入出庫に適用されるルール(以下、入出庫ルール)を説明する。
【0107】
入出庫ルールは、ホスト車両2が入出庫動作をしている場合に適用される。入出庫ルールは、ホスト車両2が駐車スペースの付近に位置しているときに適用されてもよい。入出庫ルールは、ターゲット移動体3が駐車スペース92の付近に存在しているときに適用されてもよい。よって、入出庫ルールの適用条件の1つは、ホスト車両2が入出庫動作をしているという条件である。他の1つは、ホスト車両2が駐車スペースの付近に位置しているという条件である。他の1つは、ターゲット移動体3が駐車スペース92の付近に位置しているという条件である。なお、この駐車スペース92は、構造のない道路に存在している。
【0108】
入出庫ルールは、入出庫動作をしている車両(以下、入出庫中車両)が存在している場合に適用される。入出庫中車両は、ホスト車両2またはターゲット車両3aである。入出庫ルールが適用されると、入出庫中車両に対する安全範囲を、固定範囲とする。安全範囲には、停止時安全範囲と、通過時安全範囲がある。これら2つの安全範囲をともに固定範囲とする。この点において、入出庫ルールは、フリースペース標準ルールを修正するルールである。通過時安全範囲の大きさは、入出庫動作中の車両の移動範囲を含む大きさである。停止時安全範囲も、入出庫動作中の車両の移動範囲を含む大きさであってもよい。
【0109】
図26には、入出庫中車両をターゲット車両3aとして、固定範囲とした2つの安全範囲を示している。2つの安全範囲は、駐車スペース92を基準として範囲が定められている。2つの安全範囲は、いずれも矩形である。いずれの安全範囲も駐車スペース92に接しており、かつ、破線で示す安全範囲は実線で示す安全範囲よりも狭い。実線で示す安全範囲は、破線で示す安全範囲を内包する。なお、固定範囲とした安全範囲は、矩形以外の形状とすることもできる。安全範囲が固定範囲になっているので、ターゲット車両3aが駐車動作をしている間、ターゲット車両3aについての安全範囲は変化しない。
【0110】
説明を図11に戻す。処理方法のS121にてルールを決定した後、S122を実行する。処理方法のS122では、安全範囲を設定する。安全範囲を設定すると安全距離dminも設定される。フリースペース標準ルールが適用されている場合、ホスト車両2の速度に基づき、図21図22に示す2つの安全範囲を設定する。フリースペース限定ルールが適用されていれば、入出庫中車両に対する安全範囲を固定範囲とする。ホスト車両2とターゲット移動体3のうち入出庫中車両ではない移動体は、フリースペース標準ルールと同じ手法で安全範囲を設定する。
【0111】
図26の例では、ホスト車両2はフリースペース標準ルールと同じ手法で安全範囲を設定する。また、ホスト車両2にて実行する処理方法では、ターゲット車両3aに対する安全範囲を、固定範囲に設定する。
【0112】
処理方法のS130では、安全エンベロープの違反を監視する。S130は、S131~S134を含む。S131では、安全判定をする。例えば安全判定では、ホスト車両2に設定した安全範囲と、ターゲット移動体3に設定した安全範囲とが重なるかどうかを判定する。安全範囲が重なっていれば、安全エンベロープの違反と判定する。安全判定はターゲット移動体3ごとに行う。
【0113】
安全エンベロープの違反と判定する安全範囲の重なりは、具体的には、停止時安全範囲同士の重なりであるとすることができる。停止時安全範囲と通過時安全範囲とが重なっている場合も安全エンベロープの違反と判定してもよい。さらに、通過時安全範囲同士が重なっている場合も安全エンベロープの違反と判定してもよい。
【0114】
処理方法のS132では、加速度aを評価する。S132は、S112と同じ手法で加速度aを評価する。
【0115】
処理方法のS123とS133は、S122からS132とは独立した処理である。S123とS133は、S122からS132と並列的に実行してもよい。また、S123とS133は、S122からS132の前または後に実行してもよい。
【0116】
S123では、速度vの制限値を決定する。S123の処理は、S106と同じである。したがって、速度vの制限値には、走行中の道路の制限速度が含まれる。道路は、車両が走行してよい場所を意味し、駐車場も道路に含まれる。駐車場に制限速度の標示がある場合など、ホスト車両2が駐車場を走行している場合、S102において駐車場の制限速度を取得し得る。
【0117】
S133では、速度vを評価する。S133の処理は、S113と同じである。
【0118】
処理方法のS134では、S132での評価結果、および、S133での評価結果を出力する。評価結果は、制御ブロック160に与える。評価結果は、判定情報に含まれて制御ブロック160に与えてもよい。判定情報には、S131で実行した安全判定の結果が含まれる。判定情報には、前述した第一行動、第二行動、第三行動のいずれかが含まれていてもよい。
【0119】
〔第一実施形態のまとめ〕
第一実施形態では、リスク監視ブロック140が実行する処理方法は、適用条件の成否に基づき、安全距離dminを設定するルールを、標準ルールとするか、限定ルールとするかを決定する(S104、S121)。したがって、適切な安全距離dminを設定して安全違反を監視することができる。
【0120】
限定ルールには、ホスト車両2が走行している道路が車線構造8のある道路である場合に適用される可能性がある切り替えルールが含まれる。切り替えルールは、ターゲット車両3aが、道路走行に対して定められた法規に適合した走行をしているとするルールを含む。この切替ルールを適用して安全距離dminを算出することで、不必要に長い安全距離dminを設定してしまうことを抑制できる。
【0121】
限定ルールには、ホスト車両2が走行している道路が車線構造8のない道路である場合に適用される可能性があるフリースペース限定ルールが含まれる。フリースペース限定ルールの一例は、入出庫ルールである。入出庫ルールは、駐車スペース92に対する入出庫動作時に適用される。
【0122】
仮に、ホスト車両2あるいはターゲット車両3aの入出庫動作時に、フリースペース標準ルールを適用すると、ホスト車両2およびターゲット車両3aのうちの入出庫中車両の進行方向は短時間で大きく変化し得る。そのため、入出庫中車両に設定される安全範囲も、短時間で向きが大きく変化し得る。入出庫中車両の安全範囲の向きによっては、他の車両の安全範囲が、入出庫中車両が停止しなければいけない位置となる恐れがある。
【0123】
一方、本実施形態の処理方法では、入出庫ルールが適用されると、駐車スペース92の付近に位置している入出庫中車両に対する安全範囲を、駐車スペース92を基準として範囲が定められた固定範囲とする。これにより、他の車両の安全範囲が、入出庫中車両が停止しなければいけない位置となる可能性が低減するので、入出庫中車両はスムーズに入出庫ができる。
【0124】
第一実施形態の処理方法では、加速度aに対する制限値に、法規に適合するために停止する際に安全に停止する制限値が含まれる。したがって、ホスト車両2は、法規に適合しつつ、安全に停止できる。
【0125】
第一実施形態の処理方法では、速度vに対する制限値に、ホスト車両2が走行する道路の制限速度が含まれる。したがって、ホスト車両2は、法規に適合しない速度で走行してしまうことを抑制できる。
【0126】
(第二実施形態)
第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0127】
第二実施形態では、入出庫ルールの内容が第一実施形態で説明した入出庫ルールと以下の点で相違する。第二実施形態の入出庫ルールは、ターゲット移動体3が人であるか車両であるかで、設定する安全距離が相違する。第二実施形態の入出庫ルールは、ターゲット移動体3がターゲット車両3aである場合は、第一実施形態と同じである。
【0128】
一方、ターゲット移動体3が人である場合、人に対する安全範囲は、構造のない道路における標準ルールを適用して、ターゲット移動体3が人である場合に設定する安全範囲と同じである。図27に、ターゲット移動体3が人である場合を示す。ホスト車両2に設定される安全範囲および人に設定される安全範囲は、ともに、標準ルールに従う。
【0129】
図27には、比較のため、図26では実線で示した安全範囲を二点鎖線で示している。二点鎖線で示す安全範囲は、人に設定される安全範囲と重なっている。したがって、ホスト車両2は停止をする必要がある。
【0130】
しかし、この第二実施形態のように、ターゲット移動体3が人である場合にはフリースペース標準ルールに従うとすると、ターゲット車両3aに設定される安全範囲と、人に設定される安全範囲は重なりにくくなる。したがって、ホスト車両2は駐車動作を継続しやすい。
【0131】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0132】
第三実施形態では、入出庫ルールの内容が第一実施形態で説明した入出庫ルールと以下の点で相違する。第三実施形態の入出庫ルールは、入出庫中車両に設定する安全範囲が、第一実施形態の入出庫ルールと相違する。
【0133】
第三実施形態では、図28に示すように、入出庫中車両は、進行方向前方のみではなく、進行方向後方にも停止時安全範囲と通過時安全範囲を設定する。進行方向前方に設定する停止時安全範囲および通過時安全範囲は、フリースペース標準ルールで設定する停止時安全範囲および通過時安全範囲と同じである。進行方向後方に設定する停止時安全範囲と通過時安全範囲は、進行方向前方に設定する対応する安全範囲よりも小さくしてもよい。小さくする一例は、進行方向前方において対応する安全範囲に1よりも小さい固定の係数を乗じた大きさとすることである。
【0134】
図28では、ホスト車両2が入出庫中車両である。ホスト車両2が入出庫中に、進行方向前方のみではなく、進行方向後方にも停止時安全範囲と通過時安全範囲を設定すると、進行方向前方にのみ安全範囲を設定する場合に比較して、ターゲット車両3aが近づきすぎてホスト車両2の駐車動作が中断してしまうことを抑制できる。
【0135】
(第四実施形態)
第四実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0136】
図29に示されるように第四実施形態の制御ブロック4160では、リスク監視ブロック140から安全エンベロープに関する判定情報の取得処理が、省かれている。そこで第四実施形態の計画ブロック4120は、リスク監視ブロック140から安全エンベロープに関する判定情報を取得する。計画ブロック4120は、安全エンベロープの違反なしとの判定情報を取得した場合に、計画ブロック120に準じてホスト車両2の運転制御を計画する。一方、安全エンベロープの違反ありとの判定情報を取得した場合に計画ブロック4120は、計画ブロック120に準じた運転制御を計画する段階において、判定情報に基づく制約を当該運転制御に与える。即ち計画ブロック4120は、計画する運転制御を制限する。いずれの場合においても、計画ブロック4120により計画されたホスト車両2の運転制御を、制御ブロック4160が実行する。
【0137】
(第五実施形態)
第五実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0138】
図30に示されるように第五実施形態の制御ブロック5160では、リスク監視ブロック5140から安全エンベロープに関する判定情報の取得処理が、省かれている。そこで第五実施形態のリスク監視ブロック5140は、ホスト車両2に対して制御ブロック5160により実行された運転制御の結果を表す情報を、取得する。リスク監視ブロック5140は、運転制御の結果に対して安全エンベロープに基づく安全判定を実行することにより、当該運転制御を評価する。
【0139】
(第六実施形態)
第六実施形態は、第一及び第五実施形態の変形例である。
【0140】
図31図32に示されるように、処理システム1の観点では第一実施形態の変形例となる第六実施形態には、処理システム1による運転制御を、例えば安全性認可用等にテストするテストブロック6180が、追加されている。テストブロック6180には、検知ブロック100及びリスク監視ブロック140に準ずる機能が、与えられる。尚、図31図32では、検知情報の障害を監視且つ判定するためのデータ取得の経路について、図示が省略されている。
【0141】
テストブロック6180は、各ブロック100,120,140,160を構築する処理プログラムに追加されるテストプログラムを、図31に示される処理システム1が実行することにより、構築されてもよい。テストブロック6180は、各ブロック100,120,140,160を構築する処理プログラムとは異なるテスト用の処理プログラムを、図32に示されるように処理システム1とは異なるテスト用の処理システム6001が実行することにより、構築されてもよい。ここでテスト用の処理システム6001は、運転制御をテストするために処理システム1と接続される(通信系6を通じた接続の場合の図示は省略)、メモリ10及びプロセッサ12を有した少なくとも一つの専用コンピュータにより、構成されるとよい。
【0142】
テストブロック6180による安全判定は、運転制御の結果を表す情報の制御サイクル一回分が処理システム1又は別の処理システム6001のメモリ10に記憶される毎に、実行されてもよい。また、テストブロック6180による安全判定は、上記制御サイクル複数回分がメモリ10に記憶されるごとに、実行されてもよい。
【0143】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0144】
実施形態において、標準ルールが、合理的かつ予見可能な仮定に基づいた条件を、定義するようなルールであってもよい。この標準ルールが採用された場合に、切り替え対象となる切り替えルールは、ホスト車両2にとって標準ルールよりも厳しい条件を、例えば不合理なリスクを最小化する条件を、定義するようなルールであってもよい。また、この標準ルールが採用された場合に、切り替え対象となる切り替えルールは、ホスト車両2にとって標準ルールよりも緩和された条件を、定義するようなルールであってもよい。
【0145】
限定ルールは、特定のシナリオ及びシーンが選択されたこと、及び、特定の法規が適用される区域であることのうち少なくとも一方を適用条件として、設定されてもよい。例えば、ラウンドアバウト、ミシガン式交差点(Michigan left)など地域の特色ある構造の道路において適用される限定ルールが設定されてもよい。
【0146】
実施形態において、フリースペース標準ルールは、通常の標準ルールに対して、ホスト車両2が構造のない道路を走行しているという適用条件が成立するときに適用する限定ルールの位置付けであってもよい。
【0147】
実施形態において、ルールを定義するための安全関連モデルの属性には、以下の属性が含まれていてもよい。安全関連モデルは、許容可能なリスクの概念に対応していてもよい。許容可能なリスクのレベルは、法規によって定められたり、自動運転システムの開発者によって設定されてもよい。安全関連モデルは、運行設計領域内の合理的に予見可能なシナリオの包括範囲を提供可能であってもよい。動的運転タスク内で使用される安全関連モデルは、行動と運動制御にのみ着目されていてもよく、検知が含まれていなくてもよい。安全関連モデルは、他の安全関連オブジェクト(道路ユーザ)の行動に関する仮定を組み込んでいてもよい。安全関連モデルは、危険なシナリオを発生させた道路ユーザ(イニシエータ)と、危険なシナリオに応答する道路ユーザ(レスポンサ)とを、区別可能であってもよい。安全関連モデルは、一貫性を有する再現可能な行動を生成可能であってもよい。安全関連モデルは、運行設計領域内で、ホスト車両2の有用性を維持可能であってもよい。安全関連モデルは、人間のドライバとの共存をサポートする方法で運転するための(換言すると自然な運転をするための)自動運転システムを搭載した車両の能力を有効にしてもよく、少なくとも禁止しないようにしてもよい。安全関連モデルは、合理的に予見可能な仮定を用いた他の安全関連オブジェクトの現在位置、進行方向及び速度の理解に基づくことが可能であってもよい。安全関連モデルは、安全関連オブジェクトが常に直線移動するとは限らずに、様々な方向に移動する可能性をサポートしてもよい。安全関連モデルは、視界の遮蔽に関連するシナリオをサポートしてもよい。安全関連モデルは、有用性を維持しながら、自動運転システムを搭載した車両の運行設計領域に適した合理的な注意を示すことが可能であってもよい。安全関連モデルは、通行権は与えられ、取られないという、広く受け入れられている公理を組み込んでいてもよい。安全関連モデルは、特定のシナリオにおいて、人間の道路ユーザが交通ルールに違反する場合があることを考慮に入れてもよい。安全関連モデルは、合理的に予見可能な仮定の範囲内では衝突がないという理論的保証をサポートしてもよい。安全関連モデルは、他の安全関連オブジェクトの合理的に予見可能な動作を定義するための経験的証拠に基づく方法をサポートしてもよい。
【0148】
安全関連モデルは、行動の地域差、すなわち地域の交通慣習を考慮に入れてもよい。安全エンベロープの違反の監視に用いられる加速度に対する制限値と速度に対する制限値のうちの少なくとも一方は、道路走行に対して定められた法規に代えて、地域の交通慣習に適合した走行をするための制限値であってもよい。
【0149】
安全関連モデルは、その出力の競合を生じさせることが不可能となるように設計されてよい。適切な応答と法規などの交通ルールが競合する場合、安全関連モデル及びそれに基づく標準ルール及び制限ルールは、安全上のリスクを解決するために、競合を解決するための優先順位付け処理を実行する、又はプロセッサに実行させるように構成されていてもよい。
【0150】
安全関連モデルは、高レベルの行動を安全関連モデル内で使用される特定のパラメータに関連付けできるように追跡可能であってもよい。特定のパラメータは、例えば安全距離、速度、加速度、応答時間、速度の制限値、加速度の制限値など、安全エンベロープを設定するために用いられるパラメータであってもよい。
安全関連モデルは、複数の異なる安全関連オブジェクトをサポートしてもよい。例えば、歩行者と車両とは異なる行動及び仮定を持っているので、安全関連モデルは、異なる安全関連オブジェクト感の違いを認識するだけでなく、異なる数及びクラスのオブジェクトのダイナミックレンジをサポートすることが好ましい。
【0151】
安全関連モデルは、強力なエビデンスを提供する正式な検証技術を許容し、また、検証方法の再現性を有する結果を生成するために、正式な表記法で表現可能に構成されてもよい。正式な表記法による表現のうち全部又は一部は、例えば、標準ルールを用いた表現、限定ルールを用いた表現など、安全関連モデルの属性を具現化したルールによる表現であってもよい。
【0152】
実施形態において、処理システム1は、標準ルールと限定ルールとを切り替えるように構成されていなくてもよい。例えば、処理システム1は、標準ルールと限定ルールとの切り替えに代えて、又は、標準ルールと限定ルールとの切り替えに併用して、標準の安全モデルと、適用条件が成立する場合に適用する限定的な安全モデルとを、切り替えるようにしてもよい。処理システム1は、標準ルールと限定ルールとの切り替えに代えて、又は、標準ルールと限定ルールとの切り替えに併用して、標準の運転ポリシと、適用条件が成立する場合に適用する限定的な運転ポリシとを、切り替えるようにしてもよい。
【0153】
実施形態において処理システム1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路、及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32