(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240806BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
G08G1/09 H
H04W4/46
(21)【出願番号】P 2023504697
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2021000178
(87)【国際公開番号】W WO2022189824
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中村 光範
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-14087(JP,A)
【文献】特開2017-34496(JP,A)
【文献】特開2010-238053(JP,A)
【文献】特開2002-342887(JP,A)
【文献】特表2020-526944(JP,A)
【文献】特開2012-79032(JP,A)
【文献】国際公開第2019/106704(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107769829(CN,A)
【文献】特開2019-33409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
(削除)
【請求項17】
前記重心位置は、複数の前記対象移動体から信号を受信したときの電波のエネルギーである受信電力と、複数の前記対象移動体の相対位置とに基づいて決定される
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の周辺に存在する複数の他車両とアンテナ部を介して車車間通信を行う通信部を備える通信装置が開示されている。この通信装置は、複数の他車両に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得した情報に基づいて、アンテナ部の指向性を制御する制御部とをさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された手法は、レーダ装置が検出した他車両に対してアンテナ部の指向性を制御している。そのため、将来の走行に影響がある他車両であっても、他車両をレーダ装置が現に検出することができるまでは、その他車両に対してアンテナ部の指向性を制御していない。そのため、必要な情報を適切に受け取ることができない虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要な情報を適切に受け取ることができる情報処理装置及び情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、第1移動体の周囲に存在する複数の第2移動体とデータ通信を行う通信部と、通信部によって行われるデータ通信を制御するコントローラと、を備えている。コントローラは、第1移動体との間の通信品質が所定の基準を満たさない第2移動体のそれぞれを対象移動体として特定し、対象移動体それぞれの相対位置と受信電力とに基づいて、通信部の無線通信に関する指向性を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る通信ネットワークを示す構成図である。
【
図2B】
図2Bは、通信部の指向性モードを説明する図である。
【
図3】
図3は、通信ネットワークにおける車車間通信の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る走行状況及び第1領域を説明する図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る走行状況及び第2領域を説明する図である。
【
図6】
図6は、目標位置である電力の重心位置を説明する図である。
【
図7】
図7は、目標位置に向けた指向性ビームを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、本実施形態に係る通信ネットワークを説明する。本実施形態に係る通信ネットワークは、車両Aと、車両Bとを備えている。車両A及び車両Bは、移動体(第1移動体及び第2移動体)の一例である。車両Aは、自車両であり、車両Bは、自車両の周囲に存在する他車両である。
図1では、車両Bが1台のみが描かれているが、車両Bは複数でもよい。
【0011】
車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両でもよく、自動運転機能を有しない車両でもよい。また、車両A及び車両Bは、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両でもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、自動運転機能を有する車両として説明する。
【0012】
通信ネットワークは、路側機300と、基地局400とをさらに備えている。
【0013】
車両Aは、データ通信機能を有する通信部100を備える。車両Bは、データ通信機能を有する通信部200を備える。個々の通信部100、200は、例えば一つ以上のアンテナ、モデム、アプリケーションプロセッサ、メモリなどで構成されている。
【0014】
通信部100と通信部200とは、通信を直接的に行うことができる。通信部100と通信部200とが行う直接的な通信を、以下では直接通信と定義する。直接通信は、車車間通信と表現されてもよい。本実施形態では、車両A及び車両Bは、直接通信によって、車両(車両A及び車両B)の情報など複数のデータを共有することができる。
【0015】
通信部100と通信部200とは、基地局400及び図示しないネットワーク(例えば携帯電話網など)を経由して、相互に通信を行うことも可能である。基地局400は、移動しない固定の通信装置であり、ネットワークをカバーするアクセスポイントである。基地局400及びネットワークを経由した通信部100と通信部200との通信は、直接通信との対比で、間接通信と定義される。
【0016】
直接通信は、基地局400及びネットワークを経由しないため、低遅延、かつ簡易な構成で相手方へデータを送信することができる。間接通信は、直接通信では送ることができない大容量データ、一定時間情報が変わらずに繰り返し送るデータを送信する際に用いられる。また、間接通信は、直接通信できない場合に用いることができる。
【0017】
個々の通信部100、200は、路側機300と通信を行うことができる。路側機300は、例えば道路路肩の道路設備に配備される固定の通信装置であり、所定の情報を含む配信データを、道路上の車両に対して配信する。路側機300は、RSU(roadside unit)、又はITS(intelligent transport systems)スポットと称されることもある。
【0018】
本実施形態に示す路側機300は、送信局に相当し、通信部100、200は、受信局に相当する。路側機300と通信部100、200とは、路側機300から通信部100、200に向かうダウンリンクの通信を行う。もっとも、路側機300と通信部100、200とは、逆方向のアップリンクの通信を行うこともできる。この場合、通信部100、200が送信局に相当し、路側機300が受信局に相当する。通信部100、200と路側機300との通信は路車間通信とも称される。
【0019】
路側機300から配信される配信データには、路側機300の情報を示す路側機データと、路側機300の周囲に存在する車両の情報を示す交通データとが含まれる。路側機300の情報には、路側機300の位置情報などが含まれる。車両の情報には、車両の位置情報、速度情報、進行方向情報などが含まる。
【0020】
つぎに、車両Aの構成について説明する。
【0021】
車両Aは、上述した通信部100と、GPS受信機101と、地図情報取得部102と、物体センサ103と、コントローラ110とを備える。通信部100、GPS受信機101、地図情報取得部102、及びコントローラ110は、本実施形態に示す車車間通信を実現する情報処理装置を構成する。
【0022】
GPS受信機101は、人工衛星からの電波を受信することにより、地上における車両Aの位置情報を検出する。GPS受信機101が検出する車両Aの位置情報には、緯度情報、経度情報、及び時刻情報が含まれる。GPS受信機101は、検出した車両Aの位置情報をコントローラ110に出力する。なお、車両Aの位置情報を検出する方法は、GPS受信機101に限定されない。例えば、オドメトリと呼ばれる方法を用いて位置を推定してもよい。オドメトリとは、車両Aの回転角、回転角速度に応じて車両Aの移動量及びと移動方向を求めることにより、車両Aの位置を推定する方法である。なお、GPS(Global Positioning System)は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一部である。
【0023】
地図情報取得部102は、車両Aが走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図情報取得部102は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図情報取得部102は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
【0024】
地図情報には、交差点や分岐点などを示すノードの種別、ノードの位置などを含むノード情報、ノード間を繋ぐ道路区間であるリンクの種別、リンク長、車線数、曲率、勾配などを含むリンク情報が含まれる。また、リンク情報には、車線の絶対位置、車線の接続関係などの道路構造の情報が含まれる。さらに、地図情報には、交通規則、道路標識などの情報が含まれる。
【0025】
物体センサ103は、車両Aに搭載され、車両Aの周囲の物体を検出する。物体センサ103は、カメラ、ライダ、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナーなどを含む。これらのセンサにより、車両Aの周囲の物体として、他車両(車両Bも含まれる)、歩行者を含む移動体、及び、障害物、落下物などを含む静止物体が検出される。具体的な検出データとして、車両Aの周囲に他車両が存在する場合、他車両の識別番号、位置、速度、種類(車種)、高さ、進行方向、過去の走行軌跡、過去の走行軌跡に基づく将来の軌跡などが検出される。物体センサ103は、検出したデータをコントローラ110に出力する。
【0026】
コントローラ110は、例えばマイクロコンピュータにより構成されている。コントローラ110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有している。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。
【0027】
マイクロコンピュータには、情報処理装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、情報処理装置が備える複数の情報処理回路として機能する。コントローラ110は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部111を備える。
【0028】
通信制御部111は、通信部100によって行われる無線通信(データ通信)を制御する。
【0029】
通信制御部111は、通信部100の動作モードの切り替え、通信部100が形成するビームの制御などを行う。通信部100は、切り替え可能な動作モードとして、通常モードと、指向性モードとを有している。
【0030】
図2Aを参照し、通常モードについて説明する。通常モードは、通信部100の無線通信に関する指向性を制御せずに予め設定された範囲(領域)に対して無線通信を行うモードである。通常モードで動作する場合、通信部100、具体的には通信部100のアンテナは、所定の範囲(領域)に対して、通常ビームBnを形成する。通常ビームBnは、例えば、全方位に対して均等に形成されるビームであり、特定の方位に対して指向性を持たない。通常ビームBnは、通信部100を中心として所定距離を半径とする円形状の範囲に形成される。このように、通常ビームBnが形成する所定範囲を、所定距離を半径とする円形状の範囲としてもよいし、他の例としては、所定範囲を車両進行方向など所定の方向に指向性を持たせた所定範囲としてもよい。このように、通常モードでは、通信部100のアンテナにより、予め設定された所定範囲に対して通常ビームBnを形成する。
【0031】
車両Aは、通常ビームBnが形成される領域内に存在する車両Bと通信を行うことができる。通常モードで動作する通信部100と通信を行うことができる領域を通常通信領域という。通常通信領域は、基本的には、通常ビームBnが形成される領域と対応する。ただし、電波の減衰の影響、遮蔽物の存在といった通信環境の影響により、通常ビームBnが形成される領域であっても、一定レベル以上の通信品質で車両Bと通信できないことがある。すなわち、通常通信領域は、一定レベル以上の通信品質で車両Bと通信できる領域をいい、必ずしも通常ビームBnが形成される領域(所定の範囲)と一致するものではない。
【0032】
図2Bを参照し、指向性モードについて説明する。指向性モードは、通信部100の無線通信に関する指向性を制御することができるモードである。本明細書では、以下、無線通信に関する指向性を、単に「指向性」という。指向性モードで動作する場合、通信部100のアンテナは、指向性ビームBdを形成する。指向性ビームBdは、特定の方位に向けて形成されるビームであり、特定の方位に対して指向性を有している。方位は、方向の水平成分に相当する。指向性ビームBdは、所定の方位角となるビーム軸Bd1を中心に所定のビーム幅Bd2を有するビームとして形成される。ビーム軸Bd1の方位角と、ビーム幅Bd2とはそれぞれ調整することができ、これにより、通信部100の指向性を調整することができる。このように、指向性モードは、通信部100のアンテナが指向性を有する動作モードに相当する。
【0033】
車両Aは、指向性ビームBdが形成される領域内に存在する車両Bと通信を行うことができる。指向性ビームBdは、ビーム軸Bd1に沿う方向に長く形成され、その距離(軸方向の距離)は通常ビームBnの半径距離よりも長くなっている。また、車両Bが同一位置に存在すると仮定した場合、指向性ビームBdを用いた通信での受信電力は、通常ビームBnを用いた通信での受信電力よりも相対的に高くなる。よって、指向性ビームBdを用いることで、通常通信領域の外にいる車両Bとも通信を行うことができる。指向性ビームBdは、通常ビームBnではデータ通信を行うことができない位置に存在する車両Bとデータ通信を行うことができるビームである。すなわち、指向性モードは、通常モードと比べて指向性を制御することで、通常モードではデータ通信を行うことができない位置に存在する車両Bとデータ通信を行うことができるモードである。
【0034】
通信部100が指向性モードで動作する場合、通信制御部111は、指向性ビームBdの制御を行う。指向性ビームBdの制御には、ビーム軸Bd1の方位角とビーム幅Bd2とを調整するビームフォーミングが含まれる。通信制御部111は、ビームフォーミングにより、通信部100の指向性、すなわち、通信部100のアンテナによって形成されるビームの指向性を制御する。
【0035】
通信部100は、車両Aの周囲に、車両Aの現在の位置情報、走行計画情報など含む車両A位置データをブロードキャスト送信する。ブロードキャスト送信には、直接通信方式が用いられる。直接通信方式は、例えばIEEE 802.11pに準拠したDSRC方式(周波数:5.9GHz帯)、あるいは3GPP Release14以降の仕様に準拠したセルラV2X方式である。
【0036】
現在の位置情報は、車両Aの現在位置を示す緯度及び経度と、当該位置を取得した際の時間とを関連付けたデータである。
【0037】
走行計画情報とは、車両Aが将来走行する将来位置に対して車速が関連付けられた車速計画データと、将来の走行経路データとを含む走行計画データである。将来の走行経路データ(将来経路データ)は、車両Aが将来走行する経路の情報を含んでいる。将来の走行経路データは、予め設定された目的地まで走行する走行道路のルート情報でもよいし、車速計画データに基づいて将来位置(緯度、経度)と通過予定時刻が関連付けられたデータであってもよい。例えば、走行計画情報は、SAE2735(Dedicated Short Range Communications(DSRC)Message Set Dictionary)のメッセージに準拠したデータに対して、車速計画データを追加したデータである。なお、「将来」とは、現在から所定時間後に到来するある時点を指す。
【0038】
ブロードキャスト送信される車両A位置データの例を表1に示す。車両A位置データは、ヘッダ及びコンテンツデータを含むパッケージデータである。
【表1】
【0039】
表1に示すように、車両A位置データのヘッダには、送信元である車両Aの識別番号と、コンテンツデータに含まれるコンテンツの種別を示す識別情報(例えば、現在の位置情報、走行計画情報などを示す識別用のID)が格納される。コンテンツデータには、緯度、経度とこれらの位置情報を取得した時間とを関連付けたデータである現在の位置情報、および走行計画情報とが格納される。
【0040】
通信制御部111は、通信部100によって行われる無線通信を制御する機能以外にも、無線通信の遂行に必要な各種の処理を行うデータ処理機能を担っている。ヘッダ及びコンテンツデータを含むパッケージデータである車両A位置データは、通信制御部111によって、GPS受信機101などから取得したデータ及びコントローラ110に備えるメモリに予め記録されたデータに基づいて生成される。車両A位置データは、通信部100より送信され、車両Bの通信部200により受信される。
【0041】
通信部100は、車両Bの通信部200より送信された、車両B位置データを受信し、受信した車両B位置データを通信制御部111に出力する。通信制御部111は、通信部100から車両B位置データを取得する。通信部100が、車両B位置データを受信したということは、車両Aと車両Bとの間で直接通信が確立したことを意味する。
【0042】
本実施形態との関係において、通信制御部111は、データ処理機能を利用して、車両Aとの間の通信品質が所定の基準を満たさない車両Bのそれぞれを対象車両として特定する。通信制御部111は、対象車両毎に、車両Aに対する相対位置、並びに対象車両から受信した電波のエネルギーである受信電力を特定する。通信制御部111は、対象車両それぞれの相対位置と受信電力とに基づいて、通信部100の指向性を制御する。
【0043】
つぎに、車両Bの構成について説明する。
【0044】
図1に示すように、車両Bは、上述した通信部200と、GPS受信機201と、地図情報取得部202と、物体センサ203と、コントローラ210とを備えている。通信部200、GPS受信機201、地図情報取得部202、及びコントローラ210は、本実施形態に示す車車間通信を実現する情報処理装置を構成する。
【0045】
GPS受信機201、地図情報取得部202及び物体センサ203の機能は、GPS受信機101、地図情報取得部102及び物体センサ203の機能と同様である。コントローラ210は、コントローラ110と同様に、ハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを備えたマイクロコンピュータにより構成されている。コントローラ210は、複数の情報処理回路の一例として、通信制御部211を備える。通信制御部211の機能は、通信制御部111の機能と同じであり、通信部100によって行われる無線通信を制御する機能、車両B位置データの生成など無線通信の遂行に必要な各種の処理を行うデータ処理機能を備えている。
【0046】
図3から
図7を参照し、通信ネットワークにおける車車間通信の処理の流れを説明する。
図3のフローチャートに示す処理は、自車両A(
図1の車両Aに対応)のコントローラ110によって実行される。通信部100の動作モードは、初期的には通常モードに設定されている。また、以下の説明では、
図4に示すような交差点を走行する状況を想定する。自車両Aは、ノードN1で示される交差点に接続する第1道路を走行している。自車両Aの現在位置は、交差点より所定距離だけ手前の位置Pa(Xa、Xb)である。自車両Aが将来走行する経路は、交差点で左折する経路とする。
【0047】
4台の他車両B1~B4(それぞれ
図1の車両Bに対応)のうち、2台の他車両B1、B3が、ノードN1で示される交差点において第1道路と交差する交差道路を走行している。他車両B1の現在位置は、交差点を通過した位置Pb1(Xb1、Yb1)であり、他車両B3の現在位置は、交差点より所定の距離だけ手前の位置(Xb3、Yb3)である。また、他車両B2は、第1道路における自車両Aと同じ走行車線を走行し、他車両B4は、第1道路における対向車線を走行している。他車両B2の現在位置は、自車両Aの前方、かつ、交差点より所定距離だけ手前の位置Pb2(Xb2、Yb2)であり、他車両B4の現在位置は、交差点から所定距離だけ離れた位置Pb4(Xb4、Yb4)である。
【0048】
まず、コントローラ110は、自車両Aが将来走行する将来位置を特定する(S10)。コントローラ110は、例えば、車両A位置データに含まれる車速計画データを取得し、この車速計画データから将来位置を特定する。あるいは、コントローラ110は、車両A位置データに含まれる将来の走行経路データを取得し、将来の走行経路に基づいて将来位置を特定してもよい。
【0049】
コントローラ110は、自車両Aの走行状況が注意すべき状況であるか否かを判断する。注意すべき状況の一例は、
図4に示すように、自車両Aが交差点を走行する状況である。コントローラ110は、地図情報取得部102によって取得される地図情報、自車両Aの将来位置を参照して、この判断を行う。コントローラ110は、自車両Aの将来位置が交差点と対応する場合、或いは、自車両Aの将来の走行経路に交差点が含まれる場合には、自車両Aの走行状況が注意すべき状況であると判断する。
【0050】
つぎに、コントローラ110は、自車両Aが最も注目すべき他車両が存在する第1領域を決定する。自車両Aが交差点を左折する状況では、交差道路を通って交差点に進入する他車両B3に注意を払う必要がある。そこで、コントローラ110は、地図情報に基づいて、交差道路のうち、交差点に進入する他車両が存在する領域を第1領域R1として決定する。なお、自車両Aが最も注目すべき他車両は、自車両Aと同時刻に交差点に到達する他車両である。そこで、コントローラ110は、自車両Aから交差点までの距離を基準距離として定める。コントローラ110は、交差点から基準距離だけ手前の位置を起点に、第1領域R1を設定してもよい。
【0051】
コントローラ110は、通信部100の動作モードを通常モードから指向性モードへと切り替える。そして、コントローラ110は、指向性ビームBdを方位角方向にスイープ制御して、第1領域R1をスキャンする(S12)。指向性ビームBdによって第1領域R1をスキャンすることで、第1領域R1にいる他車両B3が検出される。また、第1領域R1と自車両Aとの間に位置する他車両B2も同時に検出される。通信部100が他車両B2、B3(通信部200)とデータ通信を行うことで、コントローラ110は、他車両B2、B3の車両B位置データをそれぞれ取得する。
【0052】
自車両Aからの距離が遠い他車両、或いは、遮蔽物などの影響で見通し外にいる他車両の場合、通常ビームBnを用いた通信では、他車両から受信した電波のエネルギーである受信電力が一定のレベル以下となる。この場合、他車両との通信における通信品質は、所定の基準を満たさない。一方で、指向性ビームBdに切り替えると、受信電力が一定のレベルを超えるので、このような他車両であっても通信を行うことができる。そこで、コントローラ110は、指向性ビームBdによる第1領域R1のスキャン動作で検出された他車両であって、通信品質(例えば受信強度)が判定値以下となる他車両を、通信品質が所定の基準を満たさない対象車両として特定する。
図4に示す例では、他車両B2、B3が対象車両として特定されたとする。
【0053】
通信リソースに余裕がある場合(ステップS14でYES)、コントローラ110は、地図情報を参照し、第2領域R2があるか否かを判断する(S16)。
【0054】
第2領域R2は、第1領域R1のつぎに、自車両Aが注目すべき他車両が存在する領域である。自車両Aが交差点で左折する状況においては、左折後の交差道路にいる他車両が、自車両Aの走行計画に影響を与える可能性がある。よって、交差道路において交差点を通過した後の他車両B1にも注意を払う必要がある。そこで、
図5に示すように、コントローラ110は、交差道路のうち、交差点を通過した他車両が存在する領域を第2領域R2として決定する。なお、自車両Aが注目すべき他車両は、交差点近傍に位置する他車両である。そこで、コントローラ110は、交差点に近接する所定領域を第2領域R2として設定してもよい。
【0055】
第2領域R2がある場合には(S16でYES)、コントローラ110は、第1領域R1の他車両B3と通信する指向性ビームBdを維持しつつ、新たな指向性ビームBdを方位角方向にスイープ制御して、第2領域R2をスキャンする(S18)。指向性ビームBdによって第2領域R2をスキャンすることで、第2領域R2にいる他車両B1が検出される。通信部100が他車両B1(通信部200)とデータ通信を行うことで、コントローラ110は、他車両B1の車両B位置データを取得する。
【0056】
第1領域R1のスキャン動作と同様、指向性ビームBdに切り替えることで、受信電力が一定のレベルを超えるので、他車両であっても通信を行うことができる。そこで、コントローラ110は、指向性ビームBdによる第1領域R1のスキャン動作で検出された他車両であって、通信品質(例えば受信強度)が判定値以下となる他車両を、通信品質が所定の基準を満たさない対象車両として特定する。
図5に示す例では、他車両B1が対象車両として特定されたとする。
【0057】
必要な領域R1、R2のスキャン動作が終了すると、
図6に示すように、コントローラ110は、指向性ビームBdを振り向けるための目標位置Pcを決定する。以下、目標位置Pcについて具体的に説明する。
【0058】
まず、コントローラ110は、3つの他車両B1~B3に対して優先度を決定する。コントローラ110は、他車両B1~B3それぞれの車両B位置データから、他車両B1~B3それぞれの現在の位置及び速度を特定する。コントローラ110は、自車両Aの現在の位置及び速度に基づいて、他車両B1~B3それぞれについて、自車両Aに対する相対位置及び相対速度を特定する。そして、コントローラ110は、これらの相対位置及び相対速度に基づいて、他車両B1~B3の優先度を決定する。この優先度により、自車両Aが優先的に通信すべき他車両の順位が確定される。本実施形態では、自車両Aの将来の走行に対して与える影響が大きい他車両ほど、高い優先度が決定される。
【0059】
他車両B1~B3に対して決定される優先度の概念を説明する。まず、他車両B1は、例えば渋滞といった前方の交通環境により、交差点を通過した直後に停止することがある。この場合には、交差点を左折する自車両Aは、交差点に進入することができないので走行計画を変更する必要が生じる。ただし、他車両B1は、交差点を通り過ぎているので、自車両Aに対する他車両B1の影響は、他車両B2、B3よりは小さい。一方、他車両B2は、自車両Aの前方を先行しているため、他車両B2が減速することで、自車両Aと交錯する可能性がある。また、他車両B3は、交差点からの距離が自車両Aと概ね同じであるため、交差点において自車両Aと交錯する可能性がある。そのため、他車両B2、B3は、自車両Aに対する影響が大きい。
【0060】
コントローラ110は、他車両B1~B3それぞれの相対位置及び相対速度から、自車両Aへ与える影響を特定し、他車両B1~B3の優先度を決定する。
図6に示す例では、他車両B2、B3の優先度が高く、他車両B1の優先度が低くなる。なお、コントローラ110は、他車両B1~B3の優先度を決定するにあたり、他車両B1~B3の将来位置、将来走行する経路を参照してもよい。
【0061】
また、コントローラ110は、優先度を決定するにあたり、物体センサ103による物体の検出結果を参照する。
図6に示すように、他車両B2は自車両Aの前方を走行している。物体センサ103により他車両B2を検出することで、他車両B2の位置、速度といった情報が取得可能である。よって、物体センサ103によって検出することができない他車両B1、B3と比べ、他車両B2の優先度は低くてもよい。よって、コントローラ110は、物体センサ103の検出結果を加味して、他車両B1~B3の最終的な優先度を決定する。
図6に示す例では、他車両B1、B3の優先度が高く、他車両B2の優先度が低くなる。
【0062】
例えば、指向性ビームBdが第1領域R1の他車両B3に向けられている場合、指向性ビームBdとの位置が近い他車両B2、B3の受信電力は高い値を示す。例えば、他車両B3の受信電力はSN比で20dB以上、他車両B2の受信電力はSN比で10dB以上とする。一方、指向性ビームBdが向いていない第2領域R2の他車両B1の受信電力は、他車両B2、B3の受信電力よりも相対的に低い値を示す。例えば、他車両B1の受信電力は、SN比で0dB以下となるといった如くである。
【0063】
そこで、コントローラ110は、優先度の高い他車両B1、B3の双方と通信を行うために、指向性ビームBdを向けるべき目標位置Pcを決定する。この目標位置Pcは、他車両B1、B3から信号(車両B位置データ)を受信したときの電波のエネルギーである受信電力と、他車両B1、B3の相対位置とに基づいて決定される電力の重心位置によって定義される。
【数1】
【0064】
数式1は、他車両B1、B3から受信する電波の電力の重心位置を示す。Pb1は他車両B1の相対位置、Pb3は他車両B3の相対位置である。また、Gb1は他車両B1からの受信電力、Gb3は他車両B3からの受信電力である。
【0065】
図6に示すように、目標位置(電力の重心位置)Pcは、他車両B1と他車両B3とを結ぶ線分上に定義され、この線分を所定の比率で分割する点となる。ただし、他車両B1、B3が走行する交差道路が、他車両B1と他車両B3とを結ぶ線分に沿っていない場合には、目標位置Pcが交差道路上に存在しないことがある。そこで、コントローラ110は、交差道路の形状と、他車両B1と他車両B3とを結ぶ線分とが一致しない場合には、他車両B1と他車両B3とを結ぶ線分を、交差道路の形状に沿うような曲線へと補正してもよい。そして、コントローラ110は、補正した曲線上に、この曲線を所定の比率で分割する点へと目標位置Pcを補正することが好ましい。
【0066】
目標位置Pcが決定すると、コントローラ110は、指向性ビームBdの角度制御を開始する(S22)。
図7に示すように、コントローラ110は、指向性ビームBdが目標位置Pcに向くように、指向性ビームBdを制御する。すなわち、コントローラ110は、指向性ビームBdのビーム軸Bd1を所定の方位角に調整する。ビーム軸Bd1を向けるべき方位角は、自車両Aから目標位置Pcを観測したときの方位角を演算することで、特定することができる。ビーム軸Bd1の方位角を制御することで、指向性ビームBdは、目標位置Pcに向くように調整される。
【0067】
また、コントローラ110は、ビーム軸Bd1の角度制御とともに、ビーム幅Bd2の制御を行ってもよい。ビーム幅Bd2の制御は、他車両B1、B3からの受信電力が最大となるようにビーム幅Bd2を調整する制御である。
【0068】
このように、目標位置Pcに指向性ビームBdを向けると、他車両B3にとっては指向性ビームBdが遠ざかることになるが、他車両B1にとっては指向性ビームBdが近づくことなる。指向性ビームBdが第1領域R1の他車両B3に向けられている場合と比べ、他車両B3の受信電力は相対的に下がるが、他車両B1の受信電力は相対的に上がることなる。例えば、他車両B3の受信電力はSN比で10dB以上になり、他車両B1の受信電力がSN比で10dB以上になる。これにより、優先度の高い複数の他車両B1、B3との間で、一定レベルの通信品質を確保することができる。
【0069】
指向性ビームBdが目標位置Pcに向けられると、コントローラ110は、優先度の高い他車両B1、B3とデータ通信を開始する。その後、コントローラ110は、走行する他車両B1、B3の位置の推移に合わせて、目標位置Pcを再計算する。そして、コントローラ110は、更新された目標位置Pcに基づいて指向性ビームBdの方位角を制御する。
【0070】
コントローラ110は、他車両B1、B3を監視する(S24)。他車両B3の監視には、他車両B3の現在位置の監視が含まれる。
【0071】
コントローラ110は、他車両B1、B3が通常ビームBnでも通信できる条件を具備したかどうかを判断する。具体的には、他車両B1と他車両B3との間の距離が一定の判定距離よりも短くなった場合、或いは、他車両B1、B3の現在位置が通常ビームBnの領域内に存在する場合、コントローラ110は、上記の条件を具備したと判断し(S26でYES)、通信部100の動作モードを通常モードへと切り替える(S28)。一方、コントローラ110は、条件を具備していないと判断した場合には(ステップS26でNO)、他車両B3の監視を継続する(S24)。
【0072】
なお、通信リソースに余裕がない場合(ステップS14でNO)、或いは、第2領域R2がない場合には(ステップS16でNO)、コントローラ110は、第1領域R1の他車両B1の現在位置に基づいて、後述する指向性ビームBdの角度制御を行うことが好ましい(S22)。
【0073】
このように本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、対象車両それぞれの相対位置と受信電力とに基づいて、通信部100の指向性を制御している。対象車両それぞれの相対位置と受信電力と考慮することで、複数の対象車両との通信をカバーするように、通信部100の指向性を制御することができる。これにより、複数の対象車両との間でデータ通信を行うことができるので、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【0074】
本実施形態では、自車両が将来走行する経路に含まれる交差点を通過する経路を有する他車両が、対象車両として例示されている。この他車両は、自車両の将来の走行に影響を与える可能性が高いので、対象車両として扱うことが好ましい。これにより、自車両の将来の走行に影響がある他車両を適切に把握することができる。
【0075】
本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、対象車両のそれぞれに決定された優先度に基づいて、通信部100の指向性を制御している。これにより、優先度に応じて複数の対象車両を選別することができるので、必要な対象車両をカバーするように通信部100の指向性を制御することができる。その結果、所望の対象車両との間でデータ通信を行うことができるので、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【0076】
本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、物体センサ103による対象車両の検出結果に基づいて、対象車両のそれぞれに優先度を決定している。物体センサ103によって検出できる対象車両については、物体センサ103によって得られる情報を活用することができるので、通信を行う優先度は低いと判断することもできる。そこで、物体センサ103の検出結果を用いることで、対象車両それぞれの優先度を適切に決定することができる。
【0077】
本実施形態において、通信部100は、指向性ビームBdを形成することで、通信部100の指向性を調整することができる。この場合、コントローラ110は、ビーム軸Bd1とビーム幅Bd2とをそれぞれ調整することで、指向性ビームBdの指向性を制御している。これにより、通信部100の指向性を適切に制御することができる。
【0078】
本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、対象車両それぞれの相対位置と受信電力とに基づいて指向性ビームBdを向けるべき電力の重心位置(目標位置)を求め、重心位置に向けて指向性ビームBdを制御している。これにより、対象車両のそれぞれと通信可能な位置へと指向性ビームBdを向けることができるので、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【0079】
本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、対象車両が将来走行する経路に沿うように重心位置を補正している。対象車両が走行する経路に合わせて指向性ビームBdを制御することができるので、対象車両との通信を適切に行うことができる。
【0080】
本実施形態において、情報処理装置のコントローラ110は、指向性ビームBdで自車両Aの周囲をスキャンして、対象車両と通信することで受信電力を検出している。これにより、対象車両の受信電力を適切に特定することができる。
【0081】
本実施形態において、通信部100は、切り替え可能な動作モードとして、指向性を制御することができる指向性モードと、指向性を有しない通常モードとを有している。通常通信領域は、通常モードで動作する通信部100とデータ通信を行うことができる領域である。通信部100が指向性を有しない通常モードで動作する場合、所望の他車両の情報が得られる通信対象との間でデータ通信を良好に行うことができない場合がある。しかしながら、通信部100が動作モードを指向性モードに切り替えることで、所望の通信対象に対して通信部100の指向性を制御することができる。これにより、通信対象とデータ通信を良好に行うことができるので、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【0082】
上述した実施形態では、注意すべき状況として、交差点を走行する状況を例示した。しかしながら、注意すべき状況は、自車両と他車両とが交錯するといったように、自車両の将来の走行に影響がある他車両が存在する状況であればよい。例えば、走行車線を走行する自車両が追い越し車線へ車線変更する状況であってもよい。追い越し車線を走行する他車両は、自車両と交錯する可能性があるので、将来の走行に影響を与える可能性が高い。したがって、車線変更の状況では、自車両が走行する道路の追い越し車線を走行する経路を有する他車両が、対象車両として特定される。これにより、自車両の将来の走行に影響がある他車両を適切に把握することができる。なお、追い越しを行う状況は、追い越し車線を利用して追い越しを行う以外にも、対向車線を利用して追い越しを行う状況であってもよい。
【0083】
そして、コントローラ110は、自車両が追い越しを行うと判定した場合に、対象車両を特定する処理を行うことが好ましい。例えば、コントローラ110は、乗員による追い越しを許可する操作信号を検出した場合に、自車両が追い越しを行うと判定する。あるいは、コントローラ110は、地図情報や先行車両のデータに基づいて、走行車線における自車両の前方に障害物が存在すること、或いは自車両よりも速度が遅い先行車両が存在することを条件に、自車両が追い越しを行うことを自律的に判定してもよい。このように、自車両が追い越しを行う場合には、自車両の追い越しをトリガーとして、対象車両を特定する処理を行うことで、適切なタイミングで対象車両を特定することができる。
【0084】
また、注意すべき状況は、特定の走行状況に限らない。また、通信すべき他車両が複数存在する場合、指向性ビームを形成すると特定の他車両としか通信ができないので、通常は、通常ビームを形成することとなる。しかしながら、通信部100の通常通信領域の外に他車両が存在している場合には、これらの他車両とは通信することができなくなる。また、これらの他車両は自車両の将来の走行に影響を与えることがある。そこで、通信部100の通常通信領域の外に存在している他車両を対象車両とすることで、この対象車両が複数存在しているような場合であっても、複数の対象車両との通信をカバーするように、通信部100の指向性を制御することができる。これにより、自車両の将来の走行に影響がある他車両を適切に把握することができる。例えば、コントローラ110は、指向性ビームBdをスイープ制御して、自車両の周囲に対してスキャン動作を行うことで、通常通信領域の外に位置する他車両の有無及び受信強度を判定することができる。
【0085】
また、本実施形態では、対象車両を特定すると、コントローラ110は、指向性ビームBdが対象車両に向くように、指向性ビームBdを制御している。しかしながら、自車両が対象車両と通信を行うことの趣旨は、自車両と交錯する対象車両の情報を取得することにある。また、指向性ビームBdを形成した場合であっても、対象車両との間に遮蔽物が存在するといったように、通信環境によっては対象車両との間で車車間通信を行うことができない場合がある。
【0086】
図8に示すように、自車両が走行する道路には、車両の情報を配信する路側機300が存在することがある。そこで、対象車両の情報を含む配信データを送信する路側機300が存在する場合、コントローラ110は、路側機300に向けて、指向性ビームBdを制御してもよい。例えば、コントローラ110は、上述したスキャン動作の際に、路側機300と通信することができた場合には、配信データを解析することで、対象車両の情報を含む配信データを送信する路側機300であるかどうかを判断することができる。また、配信データより、指向性ビームBdを向けるべき路側機300の位置情報を取得することができる。
【0087】
このように、コントローラ110は、対象車両に関する情報を含む配信データを送信する路側機300に向けて、通信部100の指向性を制御してもよい。これにより、路側機300との間でデータ通信を確実に行うことができるので、交錯すると判断された対象車両の情報を適切に受け取ることができる。すなわち、コントローラ110は、対象車両そのものに代えて、対象車両の情報を含む配信データを送信する路側機300を、対象車両として扱ってもよい。
【0088】
また、本実施形態に開示する情報処理方法によれば、情報処理装置と同様、対象車両それぞれの相対位置と受信電力とに基づいて、通信部100の指向性を制御している。それぞれの対象車両の相対位置と受信電力と考慮することで、複数の対象車両との通信をカバーするように、通信部100の指向性を制御することができる。これにより、複数の対象車両との間でデータ通信を行うことができるので、必要な情報を適切に受け取ることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、ソフトウェアによってコントローラ110、210が備える複数の情報処理回路を実現する例を示したが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0090】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0091】
A 車両、自車両(第1移動体、情報処理装置)
100 通信部
101 GPS受信機
102 地図情報取得部
103 物体センサ
110 コントローラ
111 通信制御部
B 車両、他車両(第2移動体、情報処理装置)
200 通信部
201 GPS受信機
202 地図情報取得部
203 物体センサ
210 コントローラ
211 通信制御部
300 路側機
400 基地局