(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20240806BHJP
H02K 1/2783 20220101ALI20240806BHJP
H02K 1/2792 20220101ALI20240806BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/2783
H02K1/2792
(21)【出願番号】P 2023506828
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003361
(87)【国際公開番号】W WO2022196128
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2021044585
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】大田 慧
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152668(JP,A)
【文献】特開2002-354721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の着磁済み磁石を
環状にハルバッハ配列させる磁石配列方法
を用いて、前記複数の着磁済み磁石をロータの周方向に配列するロータの製造方法であって、
前記複数の着磁済み磁石は、周方向に向かって各磁石の磁極の向きが45度ずつ順に回転するように配置されており、
前記環状に配列された磁石を平面視した際、前記環状に配列された磁石の径方向内側に向かう方向を第1の方向とし、前記環状に配列された磁石の径方向外側に向かう方向を第2の方向とした場合、前記複数の着磁済み磁石は、前記第1の方向を0度とした際に磁極の向きが0度である磁石a、磁極の向きが45度である磁石b、磁極の向きが90度である磁石c、磁極の向きが135度である磁石d、磁極の向きが180度である磁石e、磁極の向きが225度である磁石f、磁極の向きが270度である磁石g、及び磁極の向きが315度である磁石hをそれぞれ含み、
前記磁石配列方法は、
(1)前記磁石b、前記磁石c及び前記磁石dをこの順に配列し、所定の治具を用いて前記磁石cを前記第2の方向に押した後、前記磁石b、前記磁石c及び前記磁石dを接着剤で接着し、その後、前記磁石bの前記磁石cと反対側の面に前記磁石aを周方向に沿って接着し、前記磁石dの前記磁石cと反対側の面に前記磁石eを周方向に沿って接着して第1磁石群を形成する第1工程と、
(2)前記磁石f、前記磁石g及び前記磁石hをこの順に配列し、所定の治具を用いて前記磁石gを前記第1の方向に押した後、前記磁石f、前記磁石g及び前記磁石hを接着剤で接着して第2磁石群を形成する第2工程と、
(3)1つの前記第1磁石群を挟むように2つの前記第2磁石群を周方向に沿って近づけ、前記磁石aと前記磁石hとを接着剤を用いて接着し、前記磁石eと前記磁石fとを接着剤を用いて接着して、1つの前記第1磁石群と2つの前記第2磁石群とを備える第3磁石群を形成する第3工程と、
(4)複数の前記第3磁石群を間隔を空けて配置した後、複数の前記第1磁石群の各々を複数の前記第3磁石群の間に配置して環状のハルバッハ配列を形成する第4工程と、を備える、
ロータの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程は、複数の前記第3磁石群を固定した状態で、複数の前記第1磁石群を鉛直方向に移動させて、複数の前記第3磁石群の各々の隙間に複数の前記第1磁石群を配置する、請求項1に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石配列方法、及びロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを有するステータと、磁石を有するロータとを備える電動モータが知られている。特許文献1には、アウタロータモータにおいて、永久磁石により発生する磁束量を大きくすることによって、マグネットトルクをより有効に利用して、同一電流で発生するトルクを最大にできるモータに関する技術が開示されている。また、特許文献2には、発生磁界方向に磁化された複数の主磁極永久磁石と、主磁極永久磁石の間に配置される副磁極永久磁石と、これらの永久磁石を固定するバックヨークとを有するハルバッハ磁石配列を備える周期磁界発生装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-308793号公報
【文献】特開2007-110822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータを製造する際は、複数の着磁済み磁石をロータの所定の場所に配列する必要がある。磁石の配列方法としてハルバッハ配列が知られている。ハルバッハ配列は、特定の方向への磁場強度を最大化する配列である。
【0005】
しかしながら、複数の着磁済み磁石を1枚ずつ組み付けてハルバッハ配列を形成する場合は、組み付ける磁石の磁極の向きによって磁石を押さえる方向が変化するので、組み付けが煩雑になるという問題がある。
【0006】
上記課題に鑑み本発明の目的は、磁石の組み付けを容易にすることが可能な磁石配列方法、及びロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる磁石配列方法は、複数の着磁済み磁石をハルバッハ配列させる磁石配列方法であって、磁石にかかる磁力方向が第1の方向を向くように磁石を組み合わせて第1磁石群を形成する工程と、磁石にかかる磁力方向が前記第1の方向と逆方向である第2の方向を向くように磁石を組み合わせて第2磁石群を形成する工程と、複数の前記第1磁石群と複数の前記第2磁石群とを組み付ける工程と、を備える。
【0008】
上述の磁石配列方法では、磁石にかかる磁力方向が第1の方向を向くように磁石を組み合わせて第1磁石群を形成し、磁石にかかる磁力方向が第2の方向を向くように磁石を組み合わせて第2磁石群を形成し、複数の第1磁石群と複数の第2磁石群とを組み付けることで、ハルバッハ配列を形成している。ここで、第1磁石群の磁力方向と第2磁石群の磁力方向は互いに逆向きであるので、第1磁石群と第2磁石群とを組み付ける際に、磁石を押さえる方向が変化しなので、磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0009】
上述の磁石配列方法において、前記第1磁石群を構成する磁石の数と前記第2磁石群を構成する磁石の数とが異なるようにしてもよい。これにより、磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0010】
上述の磁石配列方法において、前記複数の着磁済み磁石は環状にハルバッハ配列されていてもよく、前記環状に配列された磁石を平面視した際、前記第1の方向は前記環状に配列された磁石の径方向内側に向かう方向であってもよく、前記第2の方向は前記環状に配列された磁石の径方向外側に向かう方向であってもよい。これにより、環状にハルバッハ配列を形成する際に磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0011】
上述の磁石配列方法において、前記環状に配列された磁石を平面視した際、前記複数の着磁済み磁石は周方向に向かって各磁石の磁極の向きが45度ずつ順に回転するように配置されてもよく、前記第1の方向を0度とした場合、磁極の向きが0度、45度、90度、135度、180度の5つの磁石が前記第1磁石群であってもよく、磁極の向きが225度、270度、及び315度の3つの磁石が前記第2磁石群であってもよい。これにより、環状にハルバッハ配列を形成する際に磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0012】
上述の磁石配列方法において、少なくとも一つの前記第1磁石群と少なくとも一つの前記第2磁石群とを組み合わせて第3磁石群を形成してもよく、複数の前記第3磁石群を間隔を空けて配置した後、複数の前記第1磁石群の各々を複数の前記第3磁石群の間に配置して環状のハルバッハ配列を形成してもよい。これにより、環状にハルバッハ配列を形成する際に磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0013】
上述の磁石配列方法において、前記環状に配列された磁石を平面視した際、前記複数の着磁済み磁石は周方向に向かって各磁石の磁極の向きが90度ずつ順に回転するように配置されてもよく、前記第1の方向を0度とした場合、磁極の向きが0度の磁石が前記第1磁石群であってもよく、磁極の向きが90度、180度、及び270度の3つの磁石が前記第2磁石群であってもよい。これにより、環状にハルバッハ配列を形成する際に磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0014】
本発明の一態様にかかるロータの製造方法は、上述の磁石配列方法を用いて、複数の着磁済み磁石をロータの周方向に配列する、ロータの製造方法である。これにより、ロータを製造する際に磁石の組み付けを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、磁石の組み付けを容易にすることが可能な磁石配列方法、及びロータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる磁石配列方法の他の例を説明するための平面図である。
【
図7】従来の磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。
【
図8】実施の形態2にかかるロータの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図9】実施の形態2にかかるロータの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図10】実施の形態2にかかるロータの製造方法の一例を説明するための平面図である。
【
図11】実施の形態2にかかるロータの製造方法の一例を説明するための斜視図である。
【
図12】実施の形態2にかかるロータの製造方法の一例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1~
図5は、実施の形態1にかかる磁石配列方法の一例を説明するための平面図である。本実施の形態にかかる磁石配列方法は、複数の着磁済み磁石をハルバッハ配列させる磁石配列方法である。なお、以下では一例として、本実施の形態にかかる磁石配列方法を用いて着磁済み磁石を環状にハルバッハ配列する場合について説明する。しかし本実施の形態にかかる磁石配列方法は、環状以外の形状(例えば直線状)に着磁済み磁石をハルバッハ配列する場合にも用いることができる。
【0018】
図1は、複数の着磁済み磁石をハルバッハ配列した状態を示しており、環状にハルバッハ配列した複数の着磁済み磁石を示す図面である。
図1に示すハルバッハ配列1は、磁石10の磁極の向きが各々異なる8種類の磁石a~hを用いて構成されている。各々の磁石10において磁極の向きはS極からN極に向かうものとする。本明細書では、磁極の向きを実線矢印で示している。
【0019】
また、
図1において、外側とは環状に配列した磁石の外側であり、内側とは環状に配列した磁石の内側である。各々の磁石a~hは、鉛直方向(紙面を貫く方向)に伸びるように形成されている。また、各々の磁石a~hの磁極の向きは水平面(紙面と平行な面)と平行になるように構成されている。なお、本実施の形態では、環状に配列した磁石の内側において磁場強度が最大化するようにハルバッハ配列されているものとする。以下では、環状に配列した磁石の内側において磁場強度が最大化するようにハルバッハ配列を形成した場合を例として説明するが、本実施の形態では、環状に配列した磁石の外側において磁場強度が最大化するようにハルバッハ配列を形成してもよい。例えば、
図1に示したハルバッハ配列の内側と外側を反転させることで、外側の磁場強度を最大化させることができる。また、本実施の形態にかかる発明は、アウターロータ型およびインナーロータ型の両方のタイプのロータに適用可能である。
【0020】
図2を用いてハルバッハ配列について詳細に説明する。
図2に示すように、ハルバッハ配列は、磁石の磁極の向きが各々異なる8種類の磁石a~hを用いて構成されている。本実施の形態では、環状に配列された磁石の径方向内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが0度の磁石a、磁極の向きが45度の磁石b、磁極の向きが90度の磁石c、磁極の向きが135度の磁石d、磁極の向きが180度の磁石e、磁極の向きが225度の磁石f、磁極の向きが270度の磁石g、及び磁極の向きが315度の磁石hの8種類の磁石が用いられている。なお、
図2に示す構成例では、磁極の回転の向きを時計方向としている。また、磁石a~hの各々の磁極の向き(角度)は、設計に応じて若干(数度程度)ずれていてもよいものとする。
【0021】
これらの磁石a~hは、環状に配列された磁石を平面視した際、周方向に向かって各磁石の磁極の向きが45度ずつ順に回転するように配置されている。
図1に示す磁石a~hは
図2に示す磁石a~hに対応している。
【0022】
図1に示すように、各々の磁石a~hには、周囲の磁石によって所定の方向に磁力が働いている。一例を示すと、
図1に示す例では、磁石aには内側に向かう方向の磁力が働き(働く磁力を白抜き矢印で示す。以下、同様。)、磁石bには周方向(時計回り)に向かう方向の磁力が働き、磁石cには外側に向かう方向の磁力が働き、磁石dには周方向(反時計回り)に向かう方向の磁力が働き、磁石eには内側に向かう方向の磁力が働く。
【0023】
ここで、磁石に働く磁力とは、各々の磁石の磁極の向きに起因して生じる力である。具体的には、磁石に働く磁力とは、特定の磁石の磁極の向きと、特定の磁石に隣接する磁石の磁極の向きとに起因して生じる力である。例えば、磁石cには、磁石cの磁極の向きと、隣接する磁石bおよび磁石dの磁極の向きとに起因して、外側に向かう方向の磁力が働いている。
【0024】
このように、ハルバッハ配列された各々の磁石a~hには、それぞれ異なる方向の力が働くため、組み付けが煩雑になるという問題があった。つまり、
図7に示すように、複数の着磁済み磁石を1枚ずつ組み付けてハルバッハ配列を形成する場合は、組み付ける磁石の磁極の向きによって磁石を押さえる方向が変化するので、組み付けが煩雑になるという問題があった。
【0025】
具体的には、
図7に示すように、磁石bの隣に磁石cを配列する場合は、磁石cに紙面上向きの力が働く。また、磁石cの隣に磁石dを配列する場合は、磁石dに紙面左向きの力が働く。また、磁石dの隣に磁石eを配列する場合は、磁石eに紙面右向きの力が働く。このように、複数の着磁済み磁石を1枚ずつ組み付けてハルバッハ配列を形成する場合は、組み付ける磁石の磁極の向きによって磁石を押さえる方向が変化するので、組み付けが煩雑になるという問題があった。
【0026】
このような問題を解決するために、本実施の形態にかかる磁石配列方法では、以下の方法を用いてハルバッハ配列を形成している。すなわち、本実施の形態にかかる磁石配列方法では、磁石にかかる磁力方向が第1の方向を向くように磁石を組み合わせて第1磁石群を形成する。また、磁石にかかる磁力方向が第1の方向と逆方向である第2の方向を向くように磁石を組み合わせて第2磁石群を形成する。そして、複数の第1磁石群と複数の第2磁石群とを組み付けることで、ハルバッハ配列を形成している。ここで、第1磁石群を構成する磁石の数と第2磁石群を構成する磁石の数とが異なるようにしてもよい。また、ハルバッハ配列が環状である場合、第1の方向は環状に配列された磁石の径方向内側に向かう方向であり、第2の方向は環状に配列された磁石の径方向外側に向かう方向である。
【0027】
以下、
図1~
図5を用いて本実施の形態にかかる磁石配列方法について具体的に説明する。本実施の形態にかかる磁石配列方法では、まず、
図3に示すように、磁石a~eの5つの磁石を組み合わせて第1磁石群11を形成する。つまり、内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが0度の磁石a、磁極の向きが45度の磁石b、磁極の向きが90度の磁石c、磁極の向きが135度の磁石d、及び磁極の向きが180度の磁石eを用いて、第1磁石群11を形成する。
【0028】
このとき第1磁石群11の磁石にかかる磁力方向は内側に向かう方向21(第1の方向)である。第1磁石群11の磁石にかかる磁力方向とは、各々の磁石a~eに働く磁力のベクトル(各々白抜き矢印で示す)を合成した方向21である。
【0029】
次に、
図4に示すように、磁石f~hの3つの磁石を組み合わせて第2磁石群12を形成する。つまり、内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが225度の磁石f、磁極の向きが270度の磁石g、及び磁極の向きが315度の磁石hを用いて、第2磁石群12を形成する。
【0030】
このとき第2磁石群12の磁石にかかる磁力方向は外側に向かう方向22(第2の方向)である。第2磁石群12の磁石にかかる磁力方向とは、各々の磁石f~hに働くベクトル(各々白抜き矢印で示す)を合成した方向22である。
【0031】
次に、
図5に示すように、複数の第1磁石群11と複数の第2磁石群12とを組み付けてハルバッハ配列を形成する。つまり、第1磁石群11と第2磁石群12とを交互に配置し、これらを互いに接合することで、ハルバッハ配列を形成する。なお、磁石の接合には接着剤を用いることができる。
【0032】
以上で説明したように、本実施の形態にかかる磁石配列方法では、磁石にかかる磁力方向が第1の方向(内側)を向くように磁石を組み合わせて第1磁石群11を形成し、磁石にかかる磁力方向が第2の方向(外側)を向くように磁石を組み合わせて第2磁石群12を形成し、複数の第1磁石群11と複数の第2磁石群12とを組み付けることで、ハルバッハ配列を形成している。ここで、第1磁石群11の磁力方向と第2磁石群12の磁力方向は互いに逆向きであるので、第1磁石群11と第2磁石群12とを組み付ける際に、磁石を押さえる方向が変化しなので、磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0033】
具体的には、第1磁石群11の磁石にかかる磁力方向と第2磁石群12の磁石にかかる磁力方向は径方向において互いに逆向きであるので(
図5参照)、環状に第1磁石群11と第2磁石群12とを組み付ける際に必要な力を低減させることができる。なお、第1磁石群11および第2磁石群12を形成する順番は特に限定されることはない。
【0034】
図6は、本実施の形態にかかる磁石配列方法の他の例を説明するための平面図である。
図6では、磁石の磁極の向きが各々異なる4種類の磁石α~δを用いてハルバッハ配列を構成している例を示している。
図6に示す構成例では、環状に配列された磁石の径方向内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが0度の磁石α、磁極の向きが90度の磁石β、磁極の向きが180度の磁石γ、及び磁極の向きが270度の磁石δの4種類の磁石が用いられている。これらの磁石α~δは、環状に配列された磁石を平面視した際、周方向に向かって各磁石の磁極の向きが90度ずつ順に回転するように配置されている。なお、
図6に示す構成例では、磁極の回転の向きを反時計方向としている。また、磁石α~δの各々の磁極の向き(角度)は、設計に応じて若干(数度程度)ずれていてもよいものとする。
【0035】
図6に示すハルバッハ配列を形成する際は、内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが0度の磁石αを用いて、第1磁石群31を形成する。このとき第1磁石群31にかかる磁力方向は内側に向かう方向(第1の方向)である。なお、本発明では、1つの磁石を用いて第1磁石群31を形成してもよいものとする。つまり、「磁石群」は単一の磁石も含むものとする。
【0036】
また、内側に向かう方向を0度とした場合、磁極の向きが90度の磁石β、磁極の向きが180度の磁石γ、及び磁極の向きが270度の磁石δの3つの磁石を用いて、第2磁石群32を形成する。このとき第2磁石群32の磁石にかかる磁力方向は外側に向かう方向(第2の方向)である。
【0037】
そして、複数の第1磁石群31と複数の第2磁石群32とを組み付けることで、ハルバッハ配列を形成する。つまり、第1磁石群31と第2磁石群32とを交互に配置して、これらを互いに接合することで、ハルバッハ配列を形成する。なお、磁石の接合には接着剤を用いることができる。
【0038】
図6に示す構成例の場合も同様の理由から、磁石の組み付けを容易にすることができる。
【0039】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1にかかる磁石配列方法を用いてロータを製造する方法について説明する。
【0040】
図8は、本実施の形態にかかるロータの製造方法の一例を説明するための斜視図であり、3つの磁石f~hを組み合わせて第2磁石群12を形成する場合を説明するための図である。
図8に示すように、磁極の向きが225度の磁石f、磁極の向きが270度の磁石g、及び磁極の向きが315度の磁石hを配列すると、磁石gには外側に向かう方向に力が働く。よって、3つの磁石f~hを配列する際は、所定の治具を用いて磁石gを内側に押した後、3つの磁石f~hを接着剤で固定する。このような方法を用いることで、第2磁石群12を形成することができる。
【0041】
図9は、本実施の形態にかかるロータの製造方法の一例を説明するための斜視図であり、5つの磁石a~eを組み合わせて第1磁石群11を形成する場合を説明するための図である。第1磁石群11を形成する際は、まず、磁極の向きが45度の磁石b、磁極の向きが90度の磁石c、及び磁極の向きが135度の磁石dを配列して固定する。この場合、磁石cには内側に向かう方向に力が働くので、所定の治具を用いて磁石cを外側に押した後、3つの磁石b~dを接着剤で固定する。
【0042】
その後、磁極の向きが0度の磁石aと磁極の向きが180度の磁石eをそれぞれ、周方向に沿って3つの磁石b~dに近づけて接着剤で固定する。このような方法を用いることで、第1磁石群11を形成することができる。
【0043】
その後、
図10に示すように、第1磁石群11と第2磁石群12とを周方向に沿って近づけて、接着剤を用いてこれらの磁石群を固定する。このような方法を用いて、1つの第1磁石群11と2つの第2磁石群12とを固定して、
図10に示すような第3磁石群13を形成する。
【0044】
なお、
図10では一例として、1つの第1磁石群11と2つの第2磁石群12とを用いて、合計11個の磁石が配列された第3磁石群13を形成した場合を示している。しかし、第3磁石群13を構成する磁石の数は任意に決定することができる。換言すると、使用する第1磁石群11と第2磁石群12の数はそれぞれ少なくとも一つ以上であればよく、これらの数は任意に決定することができる。
【0045】
その後、
図11、
図12に示すように、治具41、42を用いて磁石を配列してロータ2を作製する。具体的には、複数の第3磁石群13を間隔(隙間15)を空けて配置した後、複数の第1磁石群11の各々を複数の第3磁石群13の間(隙間15)に配置して環状のハルバッハ配列を形成する。
【0046】
つまり、治具41を用いて第3磁石群13を固定する。そして、第1磁石群11を治具42に固定した状態で、治具42を鉛直方向に移動させて、第3磁石群13の隙間15に第1磁石群11を配置する。このとき、第1磁石群11には内側に向かう力が働くので、第1磁石群11の外側を押さえる治具は不要となる。なお、
図11、
図12では各々の磁石10の配列を説明するために、ロータ2を構成するロータ本体部の図示を省略している。
【0047】
以上で説明した磁石配列方法を用いることで、複数の着磁済み磁石をロータの周方向に配列することができる。また、本実施の形態にかかる方法を用いることで、磁石の組み付けを容易にすることができる。なお、上述のロータの製造方法は一例であり、本実施の形態では、他の構成を備えるロータ(例えば、環状に配列する磁石の数が異なるロータ)を製造することもできる。
【0048】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0049】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-44585を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0050】
1 ハルバッハ配列
2 ロータ
11、31 第1磁石群
12、32 第2磁石群
13 第3磁石群
15 隙間
41、42 治具