(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H02M7/12 F
(21)【出願番号】P 2023508898
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009252
(87)【国際公開番号】W WO2022202206
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021051727
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 定典
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0263605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0098993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0016545(US,A1)
【文献】特開2011-217566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
第1キャパシタと、
前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、
第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、
を備え、
前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、
前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、
前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの前記一次巻線と接続され、
前記整流平滑回路は、前記トランスの前記二次巻線と接続されており、
前記電力変換装置は、前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、及び前記バッファスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成された制御部を備え、
前記制御部は、前記両アームスイッチング素子のいずれか一方が導通状態になることにより前記交流電源が前記第1インダクタを介して短絡され、且つ前記両アームスイッチング素子の他方が非導通状態となり、且つ前記バッファスイッチング素子が導通状態となるパターンを含むスイッチングパターンを順次切り替えるように、スイッチングを制御する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記バッファ回路は、前記ブリッジ回路に対して並列に接続されている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記バッファ回路は、前記トランスの前記一次巻線と並列に接続されている、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
第2キャパシタを更に有し、
前記整流平滑回路は、
前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、
前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、
前記第2インダクタの第1端が、前記二次側整流素子を介して、前記出力キャパシタの前記第1端に接続され、前記第2インダクタの第2端が、前記出力キャパシタの前記第2端に接続されており、
前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、
前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のうち少なくともどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合している、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
第2キャパシタを更に有し、
前記整流平滑回路は、
前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、
前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、
前記二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの前記第1端に接続され、前記二次側整流素子の第2端が、前記出力キャパシタの第2端に接続されており、
前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、
前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のうち少なくともどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合している、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記整流平滑回路は、
前記二次側整流素子として、第1二次側整流素子と、第2二次側整流素子とを有し、
前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、
前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、
前記第1二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの前記第1端に接続され、
前記第1二次側整流素子の第2端が、前記二次巻線の第1端に接続され、
前記第2二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタと前記第1二次側整流素子との接続点に接続され、
前記第2二次側整流素子の第2端が、前記二次巻線の第2端に接続され、
前記出力キャパシタの前記第2端は、前記二次巻線の中点に接続されており、
前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記第1二次側整流素子、又は前記第2二次側整流素子のいずれか一方が導通する極性を有するように磁気結合している、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、及び前記二次側整流素子のうちのいずれか1つまたは全てがスイッチング素子で構成される場合、前記制御部は当該スイッチング素子のスイッチングを制御するものであり、前記交流電圧と、前記第1インダクタを流れる電流とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれかまたは全てがスイッチング素子で構成される場合、前記制御部は当該スイッチング素子のスイッチングを制御するものであり、前記第1出力端と前記第2出力端との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチングを制御する、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、特に、交流電圧から直流電圧に変換するとともに、入力と出力とを絶縁する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧から直流電圧に変換する回路として、トランスと、トランスの一次側に設けられた整流回路及びインバータ回路と、トランスの二次側に設けられた整流回路とを備える電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の電力変換装置は、両整流回路及びインバータ回路が、それぞれフルブリッジ回路により構成されている。この回路では、入力された交流電圧は、1次側の整流回路で直流電圧に変換されたのち、インバータ回路で高周波の交流電圧に変換してトランスに印加される。その交流電圧は、トランスにより絶縁された状態でトランスの2次側に伝達され、再度2次側の整流回路で直流に変換される。
【0003】
特許文献1に記載の電力変換装置は、2つの整流回路と1つのインバータ回路との合計3つのフルブリッジ回路を用いるため、能動素子の数が12個になっていた。ここで、能動素子とは、スイッチング素子(例えば、MOSFET)と整流素子(例えば、ダイオード)の総称である。
【0004】
より少ない能動素子で、入力・出力間の絶縁と、交流電圧から直流電圧への変換とを実現する回路として、例えば、特許文献2の
図23に記載のスイッチング電源装置が知られている。特許文献2の
図23に記載のスイッチング電源装置は、2個のスイッチング素子と2個の整流素子とからなるブリッジ回路に、インダクタを介して交流電圧が印加され、当該ブリッジ回路で力率制御をしたのち、キャパシタ及びトランスを介して、電力がトランスの2次側に伝達される。トランスの2次側回路では、キャパシタを介して伝達された電力が、整流回路により直流電圧に変換され、出力される。特許文献2の
図23に記載のスイッチング電源装置は、7個の能動素子で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-41428号公報
【文献】米国特許出願公開2015/0263605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の
図23に記載のスイッチング電源装置では、ブリッジ回路を構成する2つのスイッチング素子S1、S2が同時に導通状態、または非導通状態となる。スイッチング素子Saは、特許文献の
図10Aに示されるように、スイッチング素子S1、S2が導通状態のときには非導通状態に、スイッチング素子S1、S2が非導通状態のときには導通状態になるように制御される。このため、特許文献2の
図23に記載のスイッチング電源装置では、制御パラメータが、スイッチング素子S1、S2のデューティーの一つだけである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みなされた電力変換装置は、交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換するものであって、一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、第1キャパシタと、前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、を備え、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの一次巻線と接続され、前記整流平滑回路は、前記トランスの二次巻線と接続されており、前記電力変換装置は、前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、及び前記バッファスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成された制御部を備え、前記制御部は、前記両アームスイッチング素子のいずれか一方が導通状態になることにより前記交流電源が前記第1インダクタを介して短絡され、且つ前記両アームスイッチング素子の他方が非導通状態となり、且つ前記バッファスイッチング素子が導通状態となるパターンを含むスイッチングパターンを順次切り替えるように、スイッチングを制御する。
【0008】
かかる構成によれば、各スイッチング素子のスイッチングを制御することにより、トランスにより入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧が直流電圧に変換される。これにより、従来の回路に比して、能動素子の数を少なくできる。また、バッファ回路を用いることにより、トランスの漏れインダクタンス等に起因するサージ電圧を抑制できる。
【0009】
更に、スイッチングパターンとして特定パターンが含まれることにより、制御パラメータを、上アームスイッチング素子または下アームスイッチング素子のデューティーと、バッファスイッチング素子のデューティーの2つにすることができる。制御パラメータが2つになることにより、例えば、力率制御および出力電圧制御の性能を保ちながら、出力電圧のリプルを低減できるようになる。
【0010】
上記電力変換装置において、前記バッファ回路は、前記ブリッジ回路に対して並列に接続されていてもよい。
かかる構成によれば、電力変換装置は、サージ電圧の発生を抑制できる。
【0011】
上記電力変換装置において、前記バッファ回路は、前記トランスの一次巻線と並列に接続されていてもよい。
かかる構成によれば、電力変換装置は、サージ電圧を抑制できる。また、電力変換装置は、バッファキャパシタに印加される電圧を低くできる。
【0012】
上記電力変換装置において、第2キャパシタを更に有し、前記整流平滑回路は、前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、前記第2インダクタの第1端が、前記二次側整流素子を介して、前記出力キャパシタの前記第1端に接続され、前記第2インダクタの第2端が、前記出力キャパシタの前記第2端に接続されており、前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のうち少なくともどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合していてもよい。
【0013】
上記電力変換装置において、第2キャパシタを更に有し、前記整流平滑回路は、前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、前記二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの前記第1端に接続され、前記二次側整流素子の第2端が、前記出力キャパシタの前記第2端に接続されており、前記整流平滑回路は、前記第2キャパシタを介して、前記トランスの二次巻線に接続され、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のうち少なくともどちらか一方が非導通状態のときに前記二次側整流素子が導通する極性を有するように磁気結合していてもよい。
【0014】
上記電力変換装置において、前記整流平滑回路は、前記二次側整流素子として、第1二次側整流素子と、第2二次側整流素子とを有し、前記第1出力端と前記出力キャパシタの第1端とが接続され、前記第2出力端と前記出力キャパシタの第2端とが接続され、前記第1二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタを介して、前記出力キャパシタの前記1端に接続され、前記第1二次側整流素子の第2端が、前記二次巻線の第1端に接続され、前記第2二次側整流素子の第1端が、前記第2インダクタと前記第1二次側整流素子との接続点に接続され、前記二次側整流素子の第2端が、前記二次巻線の第2端に接続され、前記出力キャパシタの前記第2端は、前記二次巻線の中点に接続されており、前記一次巻線と前記二次巻線は、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子のどちらか一方が非導通状態のときに前記第1二次側整流素子、又は前記第2二次側整流素子のいずれか一方が導通する極性を有するように磁気結合していてもよい。
【0015】
上記電力変換装置において、前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれかまたは全てがスイッチング素子で構成される場合、前記制御部は当該スイッチング素子のスイッチングを制御するものであり、前記交流電圧と、前記第1インダクタを流れる電流とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御してもよい。かかる構成によれば、交流電源から供給される電力の力率を制御できる。
【0016】
上記電力変換装置において、前記上アーム整流素子、前記下アーム整流素子、前記二次側整流素子のうちのいずれかまたは全てがスイッチング素子で構成される場合、前記制御部は当該スイッチング素子のスイッチングを制御するものであり、前記第1出力端と前記第2出力端との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチングを制御してもよい。かかる構成によれば、出力電圧を所望の値に制御できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、従来の回路に比して少ない能動素子で、入力と出力とを絶縁するとともに、交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置を実現できる。また、電力変換装置の制御パラメータを2つにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】第5-1状態の電力変換装置1を示す回路図。
【
図6】第5-2状態の電力変換装置1を示す回路図。
【
図8】第7-1状態の電力変換装置1を示す回路図。
【
図9】第7-2状態の電力変換装置1を示す回路図。
【
図12】1周期中の各スイッチング素子の状態と各電流の変化を模式的に示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を具体化した一実施形態を説明する。電力変換装置1は、交流電源V1から供給された交流電圧を直流電圧に変換し、電力変換装置1に接続される負荷に供給する装置である。
【0020】
電力変換装置1は、例えば、一次側回路10と、第1キャパシタ17と、トランス18と、第2キャパシタ19と、整流平滑回路20と、制御部50とを備える。
[一次側回路10について]
一次側回路10は、例えば、第1インダクタ11と、上アームダイオード12と、下アームダイオード13と、上アームスイッチング素子Q1と、下アームスイッチング素子Q2と、第1接続線CL1と、第2接続線CL2と、第1中間線ML1と、第2中間線ML2と、第1入力端t21と、第2入力端t22と、バッファ回路40とを備える。上アームダイオード12は「上アーム整流素子」の一例であり、下アームダイオード13は「下アーム整流素子」の一例である。
【0021】
交流電源V1と一次側回路10とは、電気的に接続される。具体的には、交流電源V1の第1端t11と、一次側回路10の第1入力端t21とは、第1入力線L1によって接続されている。交流電源V1の第2端t12と一次側回路10の第2入力端t22とは、第2入力線L2によって接続される。これにより、入力端t21,t22に交流電圧が入力される。
【0022】
上アームダイオード12と下アームダイオード13とは、第2接続線CL2によって直列に接続されている。具体的には、第2接続線CL2は、上アームダイオード12のアノードと、下アームダイオード13のカソードとを接続する。
【0023】
上アームスイッチング素子Q1は、第1端t31と、第2端t32とを有し、下アームスイッチング素子Q2は、第1端t41と、第2端t42とを有する。第1接続線CL1は、上アームスイッチング素子Q1の第2端t32と、下アームスイッチング素子Q2の第1端t41とを接続する。上アームスイッチング素子Q1及び下アームスイッチング素子Q2は、例えばパワースイッチング素子であり、本実施形態ではn型のパワーMOSFETである。両アームスイッチング素子Q1,Q2は、ボディダイオードを有している。ただし、上アームスイッチング素子Q1及び下アームスイッチング素子Q2は、MOSFETに限られず、逆並列ダイオードを有するIGBT等任意である。
【0024】
第1中間線ML1は、第1接続線CL1と第1入力端t21とを接続する。第1中間線ML1上には、第1インダクタ11が設けられる。第2中間線ML2は、第2接続線CL2と第2入力端t22とを接続する。したがって、両アームスイッチング素子Q1,Q2の接続点(つまり、第1接続線CL1上の点)と、両アームダイオード12,13の接続点(つまり、第2接続線CL2上の点)とが、一対の入力端t21,t22及び第1インダクタ11を介して接続されている。
【0025】
上アームダイオード12のカソードと上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とが接続され、下アームダイオード13のアノードと下アームスイッチング素子Q2の第2端t42とが接続される。したがって、上アームスイッチング素子Q1と下アームスイッチング素子Q2の直列接続と、上アームダイオード12と下アームダイオード13の直列接続とがブリッジ回路14を構成する。
【0026】
トランス18は、一次巻線W1と、二次巻線W2とを有する絶縁トランスである。一次巻線W1の始端(
図1中の黒丸が付された側)は、第1キャパシタ17を介して上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とに接続される。具体的には、第1キャパシタ17は、第1端t51と、第2端t52とを有している。一次巻線W1の始端は、第1キャパシタ17の第2端t52に接続され、第1キャパシタ17の第1端t51は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とに接続される。一次巻線W1の終端(
図1中の黒丸が付されていない側)は、下アームダイオード13のアノードと、下アームスイッチング素子Q2の第2端t42とに接続される。したがって、一次側回路10は、第1キャパシタ17を介して、トランス18の一次巻線W1と接続されている。
【0027】
[整流平滑回路20について]
整流平滑回路20は、第2インダクタ21と、二次側ダイオード22と、出力キャパシタ23と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。第2インダクタ21は、第1端t71と、第2端t72とを有し、出力キャパシタ23は、第1端t81と、第2端t82とを有する。二次側ダイオード22は、「二次側整流素子」の一例である。また、第1端t81は、「出力キャパシタの一端、即ち第1端」の一例であり、第2端t82は、「出力キャパシタの他端、即ち第2端」の一例である。
【0028】
二次巻線W2の始端(
図1中の黒丸が付された側)は、第2キャパシタ19を介して第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のアノードとに接続される。具体的には、第2キャパシタ19は、第1端t61と、第2端t62とを有している。二次巻線W2の始端は、第2キャパシタ19の第1端t61に接続され、第2キャパシタ19の第2端t62は、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のアノードとに接続される。二次巻線W2の終端(
図1中の黒丸が付されていない側)は、第2インダクタ21の第2端t72と接続される。したがって、整流平滑回路20は、第2キャパシタ19を介して、トランス18の二次巻線W2と接続されている。
【0029】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。第1出力線OL1は第1出力端t91に接続されている。このため、出力キャパシタ23の第1端t81は第1出力端t91に接続されているといえる。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。第2出力線OL2は第2出力端t92に接続されている。このため、出力キャパシタ23の第2端t82は第2出力端t92に接続されているといえる。
【0030】
第2インダクタ21は、二次側ダイオード22と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、第2インダクタ21の第1端t71は、二次側ダイオード22のアノードに接続され、第2インダクタ21の第2端t72は、第2出力線OL2に接続されている。第1端t71は、「第2インダクタの一端、即ち第1端」の一例であり、第2端t72は、「第2インダクタの他端、
即ち第2端」の一例である。
【0031】
二次側ダイオード22は、第2インダクタ21と出力キャパシタ23との間の部分に設けられている。上述したように、二次側ダイオード22のアノードと、第2インダクタ21の第1端t71とが接続されている。また、二次側ダイオード22のカソードと、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。
【0032】
[バッファ回路40について]
バッファ回路40は、バッファスイッチング素子Q3と、バッファキャパシタCcと、第3接続線CL3とを備える。バッファスイッチング素子Q3と、バッファキャパシタCcとは、第3接続線CL3によって直列に接続されている。バッファスイッチング素子Q3は、端子tq1と、端子tq2とを有し、バッファキャパシタCcは、端子tc1と、端子tc2とを有する。バッファスイッチング素子Q3の端子tq1と、バッファキャパシタCcの端子tc1とは、第3接続線CL3によって接続されている。バッファスイッチング素子Q3は、ボディダイオードを有している。バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードのアノードは、端子tq2に接続され、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードのカソードは、端子tq1に接続されている。
【0033】
また、バッファ回路40は、ブリッジ回路14と並列に接続されている。詳細には、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、上アームダイオード12のカソード及び上アームスイッチング素子Q1の第1端t31の接続点とが、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2と、下アームダイオード13のアノード及び下アームスイッチング素子Q2の第2端t42の接続点とが、接続されている。
【0034】
[制御部50について]
図1に示すように、電力変換装置1は、第1インダクタ11に流れる電流を検出する電流センサC1を備えている。また、電力変換装置1は、入力電圧を検出する電圧センサC2と、出力電圧を検出する電圧センサC3とを備えている。電流センサC1、電圧センサC2及び電圧センサC3は、その検出結果を制御部50に出力する。
【0035】
制御部50は、電流センサC1、電圧センサC2及び電圧センサC3からの信号に基づいて両アームスイッチング素子Q1,Q2及びバッファスイッチング素子Q3をON/OFFさせる。
【0036】
電力変換装置1は、各スイッチング素子Q1~Q3の導通状態と非導通状態とを切り替えることにより、交流電源V1が供給する交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧を両出力端t91,t92から出力する。
【0037】
ここで、各スイッチング素子Q1~Q3の導通状態(ON状態)または非導通状態(OFF状態)の組み合わせをスイッチングパターンという。本実施形態では、スイッチングパターンとして、第1パターンP1、第2パターンP2、第3パターンP3、第4パターンP4、第5パターンP5、第6パターンP6が設定されている。制御部50は、スイッチングパターンを、P1→P2→P3→P4→P5→P6→P1の順に切り替える動作を1単位として、その単位動作を所定の周期で繰り返し実行するスイッチングの制御を行う。
【0038】
第1パターンP1は、バッファスイッチング素子Q3が非導通状態であり、上アームスイッチング素子Q1及び下アームスイッチング素子Q2が導通状態であるスイッチングパターンである。
【0039】
第2パターンP2は、上アームスイッチング素子Q1及びバッファスイッチング素子Q3が非導通状態であり、下アームスイッチング素子Q2が導通状態であるスイッチングパターンである。
【0040】
第3パターンP3は、上アームスイッチング素子Q1が非導通状態であり、下アームスイッチング素子Q2及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態であるスイッチングパターンである。本実施形態では、第3パターンP3が「特定パターン」に対応する。
【0041】
第4パターンP4は、上アームスイッチング素子Q1及び下アームスイッチング素子Q2が非導通状態であり、バッファスイッチング素子Q3が導通状態であるスイッチングパターンである。本実施形態では、第4パターンP4が「デッドタイムパターン」に対応する。
【0042】
第5パターンP5は、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態であり、上アームスイッチング素子Q1及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態であるスイッチングパターンである。
【0043】
第6パターンP6は、下アームスイッチング素子Q2及びバッファスイッチング素子Q3が非導通状態であり、上アームスイッチング素子Q1が導通状態であるスイッチングパターンである。
【0044】
以下、
図1~
図12を参照して、電力変換装置1の動作の詳細について説明する。なお、交流電源V1において、第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも高い状態を「交流電位が正の状態」とする。そして、第1端t11の電位が第2端t12の電位よりも低い状態を「交流電位が負の状態」とする。なお、交流電位が正の状態とは、交流電源V1から入力される交流電圧が正極性である場合であり、交流電位が負の状態とは、交流電源V1から入力される交流電圧が負極性である場合ともいえる。
【0045】
交流電位が負の状態の動作は、極性が反転することに対応させて両アームスイッチング素子Q1,Q2の動作が入れ替わり且つ下アームダイオード13ではなく上アームダイオード12に電流が流れる点を除き、交流電位が正の状態と同様である。したがって、以下では、交流電位が正の状態について説明し、交流電位が負の状態については説明を省略する。
【0046】
なお、説明の便宜上、電力変換装置1が動作開始するタイミングにおいて、電力変換装置1は定常状態にあるものとする。すなわち、各キャパシタ17,19,23はそれぞれの電圧で充電されているものとする。また、第1インダクタ11、トランス18の一次巻線W1及び二次巻線W2、第2インダクタ21にはそれぞれの電流が流れているものとする。また、一次側回路10、第1キャパシタ17及び一次巻線W1を電力変換装置1の一次側ともいい、二次巻線W2、第2キャパシタ19及び整流平滑回路20を電力変換装置1の二次側ともいう。
【0047】
制御部50は、交流電位が正の状態である状況においてスイッチングパターンを第1パターンP1から各パターンP2~P6を介して第1パターンP1に切り替えるスイッチングの制御を繰り返し実行する。これにより、電力変換装置1の状態は、第1状態Φ1から第9状態Φ9まで遷移する。以下、各状態の詳細について説明する。
【0048】
[第1状態Φ1]
図1に示す第1状態Φ1は、制御部50がスイッチングパターンを第1パターンP1に制御した状態である。
図1に示すように、第1状態Φ1において、電力変換装置1の一次側には、交流電源V1からの電力の供給に伴う電流経路ra1と、第1キャパシタ17の放電に伴う電流経路ra2とに電流が流れる。
【0049】
電流経路ra1は、交流電源V1の第1端t11から、第1インダクタ11、下アームスイッチング素子Q2のドレイン-ソース間及び下アームダイオード13を経由した、交流電源V1の第2端t12までの経路である。第1状態Φ1において、電流経路ra1に流れる電流は、交流電源V1から第1インダクタ11に向かう方向に、時間の経過とともに大きくなる。
【0050】
電流経路ra2は、第1キャパシタ17の第1端t51から、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、下アームスイッチング素子Q2のドレイン-ソース間及び一次巻線W1の終端から始端を経由した、第1キャパシタ17の第2端t52までの経路である。トランス18の一次巻線W1には、第1キャパシタ17の両端の電圧が印加され、一次巻線W1の終端の電位が始端の電位よりも高くなる。この結果、トランス18の二次巻線W2の両端には、終端の電位が始端の電位よりも高くなるように電圧が発生する。
【0051】
第1状態Φ1において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb1と、出力キャパシタ23の放電に伴う電流経路rb2とに電流が流れる。電流経路rb1は、トランス18の二次巻線W2の両端に生じた電圧によって生じる電流経路である。電流経路rb1は、二次巻線W2の終端から、第2インダクタ21及び第2キャパシタ19を経由した、二次巻線W2の始端までの経路である。
【0052】
電流経路rb2は、出力キャパシタ23の第1端t81から、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷(図示せず)及び第2出力端t92を経由した、出力キャパシタ23の第2端t82までの経路である。第1出力端t91と第2出力端t92との間には、出力キャパシタ23の両端の電圧である直流電圧が生じる。出力キャパシタ23の放電により、負荷に電流を供給する。第1状態Φ1において、二次側ダイオード22は導通状態にはない。
【0053】
[第2状態Φ2]
図2に示す第2状態Φ2は、制御部50がスイッチングパターンを第2パターンP2に制御した状態である。
図2に示すように、第2状態Φ2において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra1と、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性による電流経路ra3とに電流が流れる。
【0054】
電流経路ra3は、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1から、第1キャパシタ17、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード及びバッファキャパシタCcを経由した漏れインダクタンスRw1までの経路である。第2状態Φ2では、一次巻線W1を流れる電流は、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを通ってバッファキャパシタCcに流れ、バッファキャパシタCcを充電する。このとき、一次巻線W1には、バッファキャパシタCc両端の電圧が印加される。また、第2状態Φ2に制御される前後では、一次巻線W1に印加される電圧の向きが逆になる。したがって、一次巻線W1を流れる電流は、急速に減少する。
【0055】
第2状態Φ2において、電力変換装置1の二次側には、第2インダクタ21及び二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2の電流の連続性による電流経路rb3と、電流経路rb4と、に電流が流れる。
【0056】
電流経路rb3は、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2から、第2インダクタ21及び第2キャパシタ19を経由した二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2までの経路である。第2状態Φ2において、一次巻線W1を流れる電流が減少するに伴い、二次巻線W2に流れる電流は減少する。
【0057】
電流経路rb4は、第2インダクタ21から負荷への第1経路と、出力キャパシタ23からの負荷への第2経路とを含む。電流経路rb4の第1経路は、第2インダクタ21の第1端t71から、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、第2インダクタ21の第2端t72までの経路である。これにより、二次側ダイオード22に電流が流れ始め、増加する。すなわち、交流電圧が正極性で、かつ、上アームスイッチング素子Q1が非導通状態で下アームスイッチング素子Q2が導通状態であるとき、二次側ダイオード22が導通するような極性で、トランス18の一次巻線W1と二次巻線W2とが磁気結合している。電流経路rb4の第2経路は、出力キャパシタ23から第1経路に合流しており、出力キャパシタ23の放電電流が負荷に向けて流れる。
【0058】
[第3状態Φ3]
図3に示す第3状態Φ3は、制御部50がスイッチングパターンを第3パターンP3に制御した状態である。
図3に示すように、第3状態Φ3において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra1と、電流経路ra3′とに電流が流れる。電流経路ra3′は、第2状態Φ2においてバッファスイッチング素子Q3のボディダイオードを経由していた電流経路ra3が、第3状態Φ3では、バッファスイッチング素子Q3のドレイン-ソース間経由に替わったものである。これにより、電流経路ra3と比較して、電流経路ra3′の抵抗を小さくすることができる。なお、第3状態Φ3においても、電流経路ra1に流れる電流は増加を継続し、一次巻線W1を流れる電流は減少を継続する。第3状態Φ3でも、一次巻線W1には、バッファキャパシタCc両端の電圧が印加される。
【0059】
第3状態Φ3において、第2状態Φ2と同様に、電力変換装置1の二次側には電流経路rb3,rb4に電流が流れる。この場合、二次巻線W2に流れる電流は減少を継続し、二次側ダイオード22に流れる電流は増加を継続する。
【0060】
ここで、第2状態Φ2の期間(換言すればスイッチングパターンが第2パターンP2である期間)は、各スイッチング素子Q1~Q3が同時に導通状態となることによってバッファキャパシタCcが短絡することを抑制するためのデッドタイム期間である。このため、第2状態Φ2の期間は、下アームスイッチング素子Q2を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すれば、第1状態Φ1(第1パターンP1)から第3状態Φ3(第3パターンP3)への遷移期間中に、各スイッチング素子Q1~Q3がすべて導通状態となり、バッファキャパシタCcが短絡状態とならなければ、第2状態Φ2である期間は、第1状態Φ1の期間または第3状態Φ3の期間よりも短い期間であってもよい。
【0061】
[第4状態Φ4]
図4に示す第4状態Φ4は、制御部50が第3状態Φ3に遷移してから所定の時間が経過した状態である。
図4に示すように、第4状態Φ4において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra1と、電流経路ra4とに電流が流れる。
【0062】
電流経路ra4は、バッファキャパシタCcの端子tc1から、バッファスイッチング素子Q3、第1キャパシタ17及び一次巻線W1を経由した、バッファキャパシタCcの端子tc2までの経路である。一次巻線W1に流れる電流が減少し、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1に蓄積されていたエネルギーがなくなることによって、電流経路ra4にバッファキャパシタCcの放電に伴う電流が流れる。これにより、一次巻線W1に流れる電流の向きが変わるとともに、当該電流が増加する。第4状態Φ4においても、一次巻線W1には、バッファキャパシタCcの両端電圧が印加されている。
【0063】
第4状態Φ4において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は、2つの経路を含む。一つは、二次巻線W2の始端から、第2キャパシタ19、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、二次巻線W2の終端までの経路である。もう一つは、第2インダクタ21の第1端t71から、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷及び第2出力端t92を経由した、第2インダクタ21の第2端t72までの経路である。
【0064】
第4状態Φ4において、二次側ダイオード22には、二次巻線W2に流れる電流と第2インダクタ21に流れる電流との合計の電流が流れる。第4状態Φ4において、第2インダクタ21に流れる電流はほぼ一定である一方、二次巻線W2に流れる電流は増加する。このため、第4状態Φ4において二次側ダイオード22に流れる電流は増加する。また、第4状態Φ4において、二次側ダイオード22を流れる電流の一部は、出力キャパシタ23に流れる。これにより、出力キャパシタ23の充電が行われる。
【0065】
[第5状態Φ5]
図5及び
図6に示す第5状態Φ5は、制御部50がスイッチングパターンを第4パターンP4に制御した状態である。第5状態Φ5は、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との大小関係に応じて、バッファスイッチング素子Q3及びバッファキャパシタCcに流れる電流の向きが異なる。このため、第1インダクタ11に流れる電流が一次巻線W1に流れる電流よりも大きい場合の第5状態Φ5を、第5-1状態Φ5(1)とする。そして、第1インダクタ11に流れる電流が一次巻線W1に流れる電流よりも小さい場合の第5状態Φ5を、第5-2状態Φ5(2)とする。
【0066】
ちなみに、第5状態Φ5へ遷移する時点における第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との大小関係は変動し得る。このため、第4状態Φ4から第5-1状態Φ5(1)に遷移する場合もあるし、第4状態Φ4から第5-2状態Φ5(2)に遷移する場合もある。また、第5-1状態Φ5(1)から第5-2状態Φ5(2)に遷移し、その後第6状態Φ6に遷移する場合もあり得る。
【0067】
[第5-1状態Φ5(1)]
図5に示すように、第5-1状態Φ5(1)において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra5-1に電流が流れる。
【0068】
電流経路ra5-1は、第1経路及び第2経路を含む。第1経路は、第1インダクタ11から、上アームスイッチング素子Q1のボディダイオード、第1キャパシタ17、一次巻線W1、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21を経由した、第1インダクタ11までの経路である。
【0069】
第2経路は、第1インダクタ11から、上アームスイッチング素子Q1のボディダイオード、バッファスイッチング素子Q3、バッファキャパシタCc、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21を経由した、第1インダクタ11までの経路である。第2経路には、第1インダクタ11を流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分δIが流れる。これにより、バッファキャパシタCcは充電される。
【0070】
第4状態Φ4から第5-1状態Φ5(1)に遷移すると、第1インダクタ11に印加される電圧の向きが逆になるため、第1インダクタ11に流れる電流は減少し始める。一方、一次巻線W1には、バッファキャパシタCcの両端電圧が印加され続けるため、一次巻線W1に流れる電流は増加を継続する。
【0071】
第5-1状態Φ5(1)において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。また、第5-1状態Φ5(1)において、二次巻線W2に流れる電流は増加を継続するため、二次側ダイオード22に流れる電流は増加を継続する。
【0072】
[第5-2状態Φ5(2)]
図6に示すように、第5-2状態Φ5(2)において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra5-2に電流が流れる。電流経路ra5-2は、第1経路及び第2経路を含む。電流経路ra5-2の第1経路は、電流経路ra5-1の第1経路と同じである。電流経路ra5-2の第2経路は、バッファキャパシタCcから、バッファスイッチング素子Q3、第1キャパシタ17、一次巻線W1を経由して、バッファキャパシタCcにもどる経路である。バッファキャパシタCcが放電することにより、第2経路には、第1インダクタ11を流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分δIが流れる。
【0073】
ここで、第4状態Φ4から第5-2状態Φ5(2)に遷移した場合、第1インダクタ11に印加される電圧の向きが逆になるため、第1インダクタ11に流れる電流は減少し始める。一方、一次巻線W1には、バッファキャパシタCcの両端電圧が印加され続けるため、一次巻線W1に流れる電流は増加を継続する。また、第5-1状態Φ5(1)から第5-2状態Φ5(2)に遷移した場合、第1インダクタ11に流れる電流は減少を継続し、一次巻線W1に流れる電流は増加を継続する。
【0074】
第5-2状態Φ5(2)において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。第5-2状態Φ5(2)において、二次巻線W2に流れる電流は増加を継続するため、二次側ダイオード22に流れる電流は増加を継続する。
【0075】
[第6状態Φ6]
図7に示す第6状態Φ6は、制御部50がスイッチングパターンを第5パターンP5に制御した状態である。
図7に示すように、第6状態Φ6において、電力変換装置1の一次側には、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との大小関係に応じて、電流経路ra5-1′または電流経路ra5-2′に電流が流れる。
【0076】
電流経路ra5-1′は、電流経路ra5-1において上アームスイッチング素子Q1のボディダイオードを経由していたものが、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間経由に替わったものである。これにより、電流経路ra5-1と比較して、電流経路ra5-1′の抵抗を小さくすることができる。
【0077】
同様に、電流経路ra5-2′は、電流経路ra5-2において上アームスイッチング素子Q1のボディダイオードを経由していたものが、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間経由に替わったものである。これにより、電流経路ra5-2と比較して、電流経路ra5-2′の抵抗を小さくすることができる。
【0078】
第6状態Φ6において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。また、第6状態Φ6において、二次巻線W2に流れる電流は増加を継続するため、二次側ダイオード22に流れる電流は増加を継続する。
【0079】
ここで、第5状態Φ5の期間(換言すればスイッチングパターンが第4パターンP4である期間)は、各スイッチング素子Q1~Q3が同時に導通状態となりバッファキャパシタCcが短絡することを抑制するためのデッドタイム期間である。このため、第5状態Φ5の期間は、下アームスイッチング素子Q2を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すれば、第4状態Φ4(第3パターンP3)から第6状態Φ6(第5パターンP5)への遷移期間中に、各スイッチング素子Q1~Q3がすべて導通状態とならなければ、第5状態Φ5の期間は、第4状態Φ4の期間または第6状態Φ6の期間よりも短くてもよい。
【0080】
[第7状態Φ7]
図8及び
図9に示す第7状態Φ7は、制御部50がスイッチングパターンを第6パターンP6に制御した状態である。第7状態Φ7は、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との大小関係に応じて、バッファスイッチング素子Q3及びバッファキャパシタCcに流れる電流の向きが異なる。このため、第1インダクタ11に流れる電流が一次巻線W1に流れる電流よりも大きい場合の第7状態Φ7を第7-1状態Φ7(1)とし、第1インダクタ11に流れる電流が一次巻線W1に流れる電流よりも小さい場合の第7状態Φ7を第7-2状態Φ7(2)とする。
【0081】
ちなみに、第7状態Φ7へ遷移する時点における第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との大小関係は変動し得る。このため、第6状態Φ6から第7-1状態Φ7(1)に遷移する場合もあるし、第6状態Φ6から第7-2状態Φ7(2)に遷移する場合もある。また、第7-1状態Φ7(1)から第7-2状態Φ7(2)に遷移し、その後第8状態Φ8に遷移する場合もあり得る。
【0082】
[第7-1状態Φ7(1)]
図8に示すように、第7-1状態Φ7(1)において、電力変換装置1の一次側には電流経路ra6に電流が流れる。
【0083】
電流経路ra6は、第1経路及び第2経路を含む。電流経路ra6の第1経路は、第1インダクタ11から、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、第1キャパシタ17、一次巻線W1、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21を経由した、第1インダクタ11までの経路である。
【0084】
電流経路ra6の第2経路は、第1インダクタ11から、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、バッファスイッチング素子Q3のドレイン-ソース間、バッファキャパシタCc、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21を経由した、第1インダクタ11までの経路である。電流経路ra6の第2経路には、第1インダクタ11を流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分δIが流れる。これにより、バッファキャパシタCcは充電される。
【0085】
第7-1状態Φ7(1)において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。また、第7-1状態Φ7(1)において、二次巻線W2に流れる電流は増加を継続するため、二次側ダイオード22に流れる電流は増加を継続する。
【0086】
[第7-2状態Φ7(2)]
図9に示すように、スイッチングパターンが第6パターンP6であって第1インダクタ11に流れる電流が一次巻線W1に流れる電流よりも小さい第7-2状態Φ7(2)では、電力変換装置1の一次側には電流経路ra7に電流が流れる。
【0087】
電流経路ra7は、第1インダクタ11から、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、第1キャパシタ17、一次巻線W1、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21を経由した、第1インダクタ11までの経路である。
【0088】
また、第7-2状態Φ7(2)では、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分δIが下アームスイッチング素子Q2のボディダイオードを通って、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、第1キャパシタ17及び一次巻線W1に流れる。第6状態Φ6または第7-1状態Φ7(1)から第7-2状態Φ7(2)に遷移することに伴い、一次巻線W1に印加される電圧の向きが逆になる。これにより、一次巻線W1に流れる電流は減少に転じる。
【0089】
第7-2状態Φ7(2)において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。ただし、第7-2状態Φ7(2)において、一次巻線W1に流れる電流が減少に転じることに伴い二次巻線W2に流れる電流は減少し始める。したがって、二次側ダイオード22に流れる電流は減少し始める。
【0090】
[第8状態Φ8]
図10に示す第8状態Φ8は、制御部50がスイッチングパターンを第6パターンP6に制御してから所定の時間が経過した状態である。第8状態Φ8は、第1インダクタ11に流れる電流と、一次巻線W1に流れる電流とが一致した状態である。
【0091】
図10に示すように、第8状態Φ8において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra7に電流が流れる。この場合、第1インダクタ11に流れる電流がすべて一次巻線W1に流れる。このため、第7-2状態Φ7(2)において下アームスイッチング素子Q2のボディダイオードを流れていた差分δIは、第8状態Φ8では存在しない。また、第8状態Φ8では、一次巻線W1に電圧が印加されない。これにより、一次巻線W1に流れる電流は一定となる。
【0092】
第8状態Φ8において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb5に電流が流れる。電流経路rb5は既に説明したとおりである。第8状態Φ8において、一次巻線W1に流れる電流が一定であるため、二次巻線W2に流れる電流は一定となる。したがって、二次側ダイオード22に流れる電流は一定となる。
【0093】
ここで、第7状態Φ7及び第8状態Φ8の期間(換言すればスイッチングパターンが第6パターンP6である期間)は、各スイッチング素子Q1~Q3が同時に導通状態となりバッファキャパシタCcが短絡することを抑制するためのデッドタイム期間である。このため、第7状態Φ7及び第8状態Φ8の期間は、バッファスイッチング素子Q3を完全に非導通状態に制御する時間が確保されれば短い期間であってもよい。換言すれば、第6状態Φ6から第9状態Φ9への遷移期間中に、各スイッチング素子Q1~Q3がすべて導通状態とならなければ、第7状態Φ7及び第8状態Φ8を合わせた期間は、第6状態Φ6または第9状態Φ9の期間よりも短くてもよい。
【0094】
[第9状態Φ9]
図11に示す第9状態Φ9は、制御部50がスイッチングパターンを第6パターンP6から第1パターンP1に切り替えた直後の状態である。
【0095】
図11に示すように、第9状態Φ9において、電力変換装置1の一次側には、電流経路ra8に電流が流れる。電流経路ra8は、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1から、一次巻線W1、下アームダイオード13、第2入力端t22、交流電源V1、第1入力端t21、第1インダクタ11、上アームスイッチング素子Q1のドレイン-ソース間、第1キャパシタ17を経由した、漏れインダクタンスRw1までの経路である。第9状態Φ9において、第1インダクタ11に流れる電流は増加する一方、一次巻線W1に流れる電流は減少する。また、電力変換装置1の一次側には、第1インダクタ11に流れる電流と一次巻線W1に流れる電流との差分δIが下アームスイッチング素子Q2に流れる。
【0096】
第9状態Φ9において、電力変換装置1の二次側には、電流経路rb6に電流が流れる。電流経路rb6は、2つの経路を含む。一つは、二次巻線W2の漏れインダクタンスRw2から、第2キャパシタ19、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷、第2出力端t92及び二次巻線W2を経由した、漏れインダクタンスRw2までの経路である。もう一つは、第2インダクタ21の第1端t71から、二次側ダイオード22、第1出力端t91、電力変換装置1に接続される負荷、第2出力端t92及び二次巻線W2を経由した、第2インダクタ21の第2端t72までの経路である。
【0097】
第9状態Φ9において、一次巻線W1に流れる電流は減少するため、二次巻線W2に流れる電流は減少する。したがって、二次側ダイオード22に流れる電流は減少する。また、第9状態Φ9において、二次側ダイオード22を流れる電流の一部は、出力キャパシタ23に流れる。これにより、出力キャパシタ23の充電が行われる。
【0098】
第9状態Φ9となってから所定の時間が経過すると、一次巻線W1に流れる電流の向きが反転する。すると、二次巻線W2に流れる電流の向きが反転する。これにより、二次巻線W2に流れる電流と第2インダクタ21に流れる電流との差分δIが二次側ダイオード22に流れることとなり、二次側ダイオード22に流れる電流は継続して減少する。そして、二次巻線W2に流れる電流と第2インダクタ21に流れる電流とが一致すると、二次側ダイオード22に流れる電流がなくなり、第1状態Φ1に戻る。
【0099】
なお、既に説明したとおり、交流電位が負の状態の動作は、極性が反転することに対応させて上アームスイッチング素子Q1と下アームスイッチング素子Q2の動作が入れ替わる。例えば、交流電位が負の状態である場合の第3パターンP3は、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態であり且つ上アームスイッチング素子Q1及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態であるスイッチングパターンである。すなわち、本実施形態の制御部50は、交流電源V1から入力される交流電圧が負極性である場合、上記第3パターンP3を含む複数のスイッチングパターンを順次切り替えるスイッチングの制御を行う。
【0100】
ちなみに、交流電位の正負の両方を統一的に考えると、第3パターンP3は、両アームスイッチング素子Q1,Q2のいずれか一方が非導通状態となり且つ両アームスイッチング素子Q1,Q2の他方及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態となるスイッチングパターンといえる。
【0101】
次に、
図12を用いて本実施形態の作用について説明する。
図12は、1周期中における各スイッチング素子Q1~Q3の状態と、各電流の変化を示すグラフである。
図12において、IL1は第1インダクタ11に流れる電流を示し、IQ1~IQ3はスイッチング素子Q1~Q3に流れる電流を示し、Ipは一次巻線W1に流れる電流を示し、Isは二次巻線W2に流れる電流を示し、Idは二次側ダイオード22に流れる電流を示す。なお、説明の便宜上、
図12においては、第6状態Φ6から第7-2状態Φ7(2)に遷移する場合を示す。
【0102】
図12に示すように、各スイッチング素子Q1~Q3のスイッチングパターンが第1パターンP1から各パターンP2~P6を介して第1パターンP1まで順に切り替わることにより、電力変換装置1が第1状態Φ1から第9状態Φ9まで順次遷移する。これにより、電力変換装置1において電力変換が行われる。すなわち、交流電源V1の交流電圧は直流電圧に変換される。
【0103】
特に、第2状態Φ2~第3状態Φ3において、第1インダクタ11の電流の向きと、一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流の向きとが逆であるため、バッファ回路40がない場合、両インダクタの電流の連続性を確保することが困難であり、結果として、サージ電圧が発生し得る。この点、本実施形態では、バッファ回路40は、当該両インダクタの電流を、バッファキャパシタCcに流すことによりサージ電圧の発生を抑制する。また、第4状態Φ4~第6状態Φ6においては、バッファ回路40において、第1インダクタ11を流れる電流と、一次巻線W1を流れる電流との差分δIを吸収したり、吸収したエネルギーを適宜放電したりする。
【0104】
ここで、
図12に示すように、本実施形態では、デッドタイムである第2状態Φ2を介して、第1状態Φ1から、下アームスイッチング素子Q2及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態となる第3状態Φ3に遷移する。これにより、一次巻線W1には、バッファキャパシタCcの両端電圧が印加され、二次側ダイオード22に電流が流れ始める。下アームスイッチング素子Q2が導通状態であっても、二次側ダイオード22に電流が流れる期間を設けることができる。
【0105】
かかる構成において、第2状態Φ2から第6状態Φ6までの期間は、1周期中に二次側ダイオード22に流れる電流量(二次側ダイオード22を通る電荷)が一定となるように設定してもよい。この場合、出力キャパシタ23と負荷に供給される電力が、入力電圧の値に関わらずほぼ一定となるため、出力電圧のリプル分を小さくすることができる。
【0106】
[制御部50の制御について]
本実施形態では、制御部50は、第1インダクタ11を流れる電流と、入力電圧とに基づいて、入力電力の力率が改善するようにスイッチングを制御することが可能である。例えば、制御部50は、第1状態Φ1及び第9状態Φ9の時間を制御することによりブリッジ回路14を力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路として動作させる。第1状態Φ1及び第9状態Φ9では、交流電源V1と第1インダクタ11とが閉回路を形成し、交流電源V1からの電流は第1インダクタ11により制限される。第1インダクタ11に流れる電流の増加分は、第1状態Φ1及び第9状態Φ9を継続する時間に比例するため、第1状態Φ1及び第9状態Φ9を継続する時間を制御することにより、第1インダクタ11の電流を制御することが可能となる。制御部50は、第1インダクタ11に流れる電流の波形が略正弦波状になり、当該正弦波の周波数と位相が、交流電源V1の周波数と位相と一致するように、電流センサC1と電圧センサC2からの信号に基づき、第1状態Φ1及び第9状態Φ9の継続時間を制御する。
【0107】
ここで、仮にバッファスイッチング素子Q3の動作と両アームスイッチング素子Q1,Q2の動作とが同期する場合、換言すれば特定パターンとしての第3パターンP3がない場合、バッファスイッチング素子Q3が導通状態となる期間はPFC動作によって決まる。このため、バッファスイッチング素子Q3が導通状態となる期間を調整しにくいため、二次側ダイオード22を通過する電流量を制御することが困難となる。この点、本実施形態では、特定パターンとしての第3パターンP3が設定されているため、バッファスイッチング素子Q3が導通状態となる期間を調整しやすい。これにより、PFC動作を行いつつ二次側ダイオード22を通過する電流量を制御することができる。したがって、力率改善と出力電圧のリプル低減とを図ることができる。
【0108】
また、制御部50は、電圧センサC3の検出結果に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、スイッチング制御を行うこともできる。詳細には、制御部50は、例えば、電圧センサC3によって検出された出力電圧と所定の直流電圧(目標電圧)との差に基づいて、両アームスイッチング素子Q1,Q2のデューティ比制御を行う。更に、制御部50は、入力電力の力率改善と、出力電圧の制御を同時に行うことも可能である。
【0109】
[本実施形態の電力変換装置1にかかる効果について]
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電力変換装置1は、交流電源V1の極性に応じて、制御部50が各スイッチング素子Q1~Q3のスイッチングを制御することにより、第1状態Φ1~第9状態Φ9に遷移する。これにより、ブリッジ回路14が交流電源V1の交流電圧を直流電圧に変換する。
【0110】
同時に、上アームスイッチング素子Q1と下アームスイッチング素子Q2とのスイッチング動作により、トランス18の一次巻線W1に高周波の交流電圧を印加する。これにより、トランス18を介して、絶縁しながら電力をトランス18の二次側に伝達する。
【0111】
特許文献1の電力変換装置では、交流電圧から直流電圧への変換と、変換された直流電圧から高周波の交流電圧への変換を別々のブリッジ回路で行っていた。一方、本実施形態の電力変換装置1では、交流から直流への変換と、変換された直流から高周波の交流への変換を一つのブリッジ回路で行っている。
【0112】
これにより、電力変換装置1は、特許文献1の電力変換装置の回路のようにフルブリッジ回路を用いる場合に比して、スイッチング素子や整流素子等の能動素子の数を少なくできる。また、本実施形態の電力変換装置1は、特許文献1の電力変換装置のようにフルブリッジ回路を用いる場合に比して、電流が通過する能動素子の数が少ないので、能動素子における導通損失を低減できる。
【0113】
(2)制御部50は、各スイッチング素子Q1~Q3の状態の組み合わせであるスイッチングパターンとして複数のパターンP1~P6を有する。制御部50は、特定パターンとしての第3パターンP3を含む複数のパターンP1~P6を順次切り替えるようにスイッチングを制御する。第3パターンP3は、両アームスイッチング素子Q1,Q2のいずれか一方が非導通状態となり、両アームスイッチング素子Q1,Q2の他方及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態となるスイッチングパターンである。これにより、一次巻線W1にバッファキャパシタCcの両端電圧が印加される期間を調整することができ、それを通じて1周期中における二次側ダイオード22に流れる電流量(二次側ダイオード22を通過する電荷の量)を制御することができる。
【0114】
1周期中における二次側ダイオード22に流れる電流量を制御することにより、出力電圧のリプルを低減することができる。出力電圧のリプルの発生要因の1つは、入力電力と出力電力の差異である。PFC動作により、入力電流を、入力電圧の周波数と位相に合わせた正弦波状に制御する場合、入力電力は、入力電圧の周波数の2倍の周波数で正弦波状に変化する。その一方、出力電力は一定に制御される場合が多く、入力される電力と出力される電力との差が時間の経過とともに変化する。二次側ダイオード22を流れる電流量を制御しない場合、入力電力が過剰時には、余剰分を出力キャパシタ23に蓄え、入力電力が不足するときに、出力キャパシタ23から不足分を放出している。そのため、出力電圧にリプルが生じる。
【0115】
本実施形態では、第3パターンP3が設定されていることにより、1周期内において二次側ダイオード22に電流が流れる期間をある程度調整することができる。これにより、入力電力によらず、二次側ダイオード22に流れる電流量を調整できるため、出力電力の変動を抑制できるようになる。この結果、出力電圧のリプルを低減することができる。
【0116】
更に、スイッチングパターンとして特定パターンが含まれることにより、電力変換装置1の制御パラメータを、上アームスイッチング素子Q1または下アームスイッチング素子Q2のデューティーと、バッファスイッチング素子Q3のデューティーの2つにすることができる。制御パラメータが2つになることにより、例えば、力率制御および出力電圧制御の性能を保ちながら、出力電圧のリプルを低減できるようになる。
【0117】
(3)交流電源V1から入力される交流電圧が正極性である場合、第3パターンP3は、上アームスイッチング素子Q1が非導通状態となり且つ下アームスイッチング素子Q2及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態となるスイッチングパターンである。これにより、交流電源V1から入力される交流電圧が正極性である場合にスイッチングパターンを第3パターンP3にすることにより、二次側ダイオード22に電流が流れる。したがって、(2)の効果を得ることができる。
【0118】
(4)交流電源V1から入力される交流電圧が負極性である場合、第3パターンP3は、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態となり且つ上アームスイッチング素子Q1及びバッファスイッチング素子Q3が導通状態となるスイッチングパターンである。これにより、交流電源V1から入力される交流電圧が負極性である場合にスイッチングパターンを第3パターンP3にすることにより、二次側ダイオード22に電流が流れる。したがって、(2)の効果を得ることができる。
【0119】
(5)第2状態Φ2~第3状態Φ3において、第1インダクタ11の電流の連続性と、トランス18の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性の両方の電流の連続性を確保できるように、バッファ回路40は、両電流の迂回経路を提供する。
【0120】
かかる構成によれば、電力変換装置1は、バッファ回路40を用いることにより、第1インダクタ11の電流の連続性と、トランス18の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性の不整合により生じ得るサージ電圧を抑制できる。
【0121】
(6)トランス18は、トランス18の一次巻線W1の始端と終端に印加される電圧の向きによらず、第2状態Φ2~第9状態Φ9の全てにおいて、一次側から二次側に電力を伝達する。したがって、電力変換装置1は、トランス18の利用効率を高くできる。
【0122】
(7)バッファ回路40は、両アームスイッチング素子Q1,Q2とバッファキャパシタCcとの間に設けられたバッファスイッチング素子Q3を有する。かかる構成によれば、第1インダクタ11を流れる電流が一次巻線W1を流れる電流よりも大きい場合に、差分δIをバッファキャパシタCcに充電させるだけでなく、バッファキャパシタCcから一次巻線W1に電流を供給することもできる。これにより、適切にバッファキャパシタCcを放電させ、バッファキャパシタCcの両端電圧の上昇を抑えることができるとともに、交流電源V1からのエネルギーを無駄なくトランス18を介して出力することができる。
【0123】
特に、本実施形態では、バッファスイッチング素子Q3として、逆並列ダイオードを有するスイッチング素子(例えばMOSFET)を用いている。これにより、サージ電圧に係る動作が必要な状態(例えば第3状態Φ3)では、バッファスイッチング素子Q3を導通状態にすることによって、バッファスイッチング素子Q3の抵抗を低くすることができる。したがって、ダイオードのみの場合と比較して、サージ電圧が流れることに起因する発熱などを抑制できる。また、バッファスイッチング素子Q3を制御にすることによって、バッファキャパシタCcからの放電制御を行うことができる。例えば、第4状態Φ4において、バッファスイッチング素子Q3が導通状態であることにより、バッファキャパシタCcの放電電流を一次巻線W1に流すことができる。
【0124】
(8)制御部50は、第1インダクタ11を流れる電流と、交流電源V1からの入力電圧とに基づいて、力率が改善するようにスイッチングを制御する。
かかる構成によれば、電力変換装置1は、交流電源V1から供給される電力の力率を改善できる。
【0125】
(9)制御部50は、第1出力端t91と第2出力端t92との間の電圧に基づいて、所定の直流電圧が出力されるように、上アームスイッチング素子Q1、下アームスイッチング素子Q2及びバッファスイッチング素子Q3のスイッチングを制御する。
【0126】
かかる構成によれば、電力変換装置1は、第1出力端t91と第2出力端t92との間の電圧に基づいてフィードバック制御し、電力変換装置1が出力する直流電圧を、所定の直流電圧(目標電圧)に近づけることができる。
【0127】
上記実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
○デッドタイムを除くスイッチングパターンは第1パターンP1、第3パターンP3、及び第6パターンP6に限られない。例えば、交流電圧が正極性の場合において、上アームスイッチング素子Q1のみが導通状態となるスイッチングパターンや、交流電圧が負極性の場合において、下アームスイッチング素子Q2のみが導通状態となるスイッチングパターンをデッドタイム以外にも設けてもよい。すなわち、特定パターンとして、両アームスイッチング素子Q1,Q2のいずれか一方が導通状態となり且つ両アームスイッチング素子Q1,Q2の他方及びバッファスイッチング素子Q3が非導通状態となるパターンを採用してもよい。
【0128】
交流電圧が正極性で、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態になるまで第1状態Φ1を継続してもよい。この場合、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態になると、上アームスイッチング素子Q1のみが導通状態となる(換言すれば特定パターンとなる)。第1インダクタ11の電流は、上アームスイッチング素子Q1、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード、バッファキャパシタCc,下アームダイオード13、交流電源V1を通って第1インダクタ11に戻る経路を流れる。一次巻線W1の漏れインダクタンスRw1の電流は、第1キャパシタ17、バッファスイッチング素子Q3のボディダイオード、バッファキャパシタCcを通って一次巻線W1に戻る経路を流れる。一次巻線W1には、バッファキャパシタCcの両端電圧が印加され、下アームスイッチング素子Q2が非導通状態になる前とは反対向きの電圧が印加されるため、一次巻線W1を流れる電流は減少し、結果として、二次側ダイオード22に電流が流れ始める。
【0129】
ブリッジ回路14がPFC動作をするように制御された場合において、入力電圧が低い場合に、当該スイッチングパターンが発生する可能性がある。当該スイッチングパターンの後、バッファスイッチング素子Q3を導通状態にすると、第5状態Φ5になる。
【0130】
なお、交流電圧が負極性の場合は、極性が反転することに対応させて両アームスイッチング素子Q1,Q2の動作が入れ替わり且つ下アームダイオード13ではなく上アームダイオード12に電流が流れる点を除き、交流電位が正の状態と同様である。
【0131】
○
図13に示すように、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が上記実施形態と異なっていてもよい。具体的には、本別例の電力変換装置2において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、下アームダイオード13のカソードと、下アームスイッチング素子Q2の第2端t42とに接続される。
【0132】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。
【0133】
かかる電力変換装置2においても、制御部50がスイッチングパターンを第1パターンP1から各パターンP2~P6を介して第1パターンP1に順次切り替えることにより、同様の効果を得ることができる。
【0134】
また、本別例によれば、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。このため、バッファキャパシタCc及び第1キャパシタ17は、第2状態Φ2~第3状態Φ3において、第1インダクタ11の電流の連続性と、トランス18の漏れインダクタンスRw1の電流の連続性の両方の電流の連続性を確保できるように、両電流の迂回経路を提供する。つまり、電力変換装置2によれば、バッファキャパシタCcと第1キャパシタ17との組み合わせにより、サージ電圧を抑制できる。
【0135】
また、電力変換装置2によれば、電力変換装置1においてバッファキャパシタCcの両端に印加されていた電圧が、第1キャパシタ17に印加される電圧とバッファキャパシタCcに印加される電圧とに分圧される。これにより、電力変換装置1に用いたバッファキャパシタCcに比して、バッファキャパシタCcの耐圧を小さくできる。
【0136】
なお、バッファキャパシタCcの端子tc2が接続される位置はこれに限られず、例えばブリッジ回路14の下アーム側(詳細には下アームダイオード13及び第2端t42)に接続されていてもよい。ただし、この場合、バッファキャパシタCcに印加される電圧は、電力変換装置1の場合と同じとなる。
【0137】
〇第2キャパシタ19は、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のカソードとの間に接続されていたが、第2キャパシタ19の位置はこれに限られるものではなく、二次巻線W2の終端と二次側ダイオード22のアノードとの間に接続してもよい。また、第2キャパシタ19は二つのキャパシタにより構成されてもよく、この場合、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のカソードとの間と、二次巻線W2の終端と二次側ダイオード22のカソードとの間の両方に接続される。
【0138】
○
図14に示すように、整流平滑回路20に代えて、整流平滑回路30を備える電力変換装置3でもよい。整流平滑回路30は、第2インダクタ21と、二次側ダイオード22と、出力キャパシタ23と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。
【0139】
二次巻線W2の終端は、第2キャパシタ19を介して第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとに電気的に接続される。具体的には、二次巻線W2の終端は、第2キャパシタ19の第1端t61に接続され、第2キャパシタ19の第2端t62は、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとに接続される。二次巻線W2の始端は、二次側ダイオード22のアノードと、第2出力線OL2とに接続されている。したがって、整流平滑回路30は、第2キャパシタ19を介して、トランス18の二次巻線W2に接続されている。本別例において、二次側ダイオード22のカソードは、「二次側整流素子の一端、即ち第1端」の一例であり、二次側ダイオード22のアノードは、「二次側整流素子の他端、即ち第2端」の一例である。また、本別例では、二次巻線W2の極性が反転している。詳細には、一次巻線W1と二次巻線W2とは始端が逆に配置されている。
【0140】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と、第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。第1出力線OL1は第1出力端t91に接続されている。このため、出力キャパシタ23の第1端t81は第1出力端t91に接続されているといえる。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。第2出力線OL2は第2出力端t92に接続されている。このため、出力キャパシタ23の第2端t82は第2出力端t92に接続されているといえる。
【0141】
第2インダクタ21の第2端t72は、第1出力線OL1に接続されている。上述したように、第2インダクタ21の第1端t71と、二次側ダイオード22のカソードとが接続されている。また、第2インダクタ21の第2端t72と、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。したがって、二次側ダイオード22のカソードが第2インダクタ21を介して出力キャパシタ23の第1端t81に接続されている。二次側ダイオード22のアノードが出力キャパシタ23の第2端t82に接続されている。
【0142】
かかる構成によれば、両アームスイッチング素子Q1,Q2のうちどちらか一方が非導通状態であるときに二次側ダイオード22が導通する。すなわち、一次巻線W1と二次巻線W2とは、両アームスイッチング素子Q1,Q2のうちどちらか一方が非導通状態であるときに二次側ダイオード22が導通する極性を有するように磁気結合している。かかる構成においても、制御部50が上述したスイッチング制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
【0143】
○
図15に示すように、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が電力変換装置3とは異なった電力変換装置4でもよい。具体的には、電力変換装置4において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、下アームダイオード13のアノードと、下アームスイッチング素子Q2の第2端t42とに接続される。
【0144】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、バッファスイッチング素子Q3を介してトランス18の一次巻線W1と並列に接続されている。また、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。かかる構成においても、制御部50が上述したスイッチング制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
【0145】
○
図16に示すように、二次側の構成が電力変換装置1と異なる電力変換装置5でもよい。電力変換装置5は、一次側回路10と、第1キャパシタ17と、トランス18aと、バッファ回路40と、制御部50と、整流平滑回路60とを備える。トランス18aは、二次巻線W2として、第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22とを備える。整流平滑回路60は、第2インダクタ21と、出力キャパシタ23と、第1二次側ダイオード24と、第2二次側ダイオード25と、第1出力線OL1と、第2出力線OL2と、第1出力端t91と、第2出力端t92とを備える。
【0146】
第1二次巻線W21の始端は、第1二次側ダイオード24のアノードに電気的に接続される。第2二次巻線W22の終端は、第2二次側ダイオード25のアノードに電気的に接続される。第1二次側ダイオード24のカソードは、第2インダクタ21を介して出力キャパシタ23の一端、即ち第1端に接続される。具体的には、第1二次側ダイオード24のアノードは、第2インダクタ21の第1端t71に接続される。第2二次側ダイオード25のカソードは、第1二次側ダイオード24のカソードと、第1端t71との接続点に接続される。第1二次巻線W21の終端と第2二次巻線W22の始端とは、接続されている。
【0147】
第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25は、上述したように接続されることにより、それぞれが、第1二次巻線W21に流れる電流と第2二次巻線W22に流れる電流とのうち、一方を許容し、他方を制限する。具体的には、一次巻線W1の始端の電位が終端の電位よりも高いとき、第1二次側ダイオード24が、二次巻線W2の第1二次巻線W21から第2インダクタ21以降に電流が流れることを許容する。また、第2二次側ダイオード25が二次巻線W2の第2二次巻線W22から第2インダクタ21以降に電流が流れることを禁止する。逆に、一次巻線W1を終端の電位が始端の電位よりも高いとき、第2二次側ダイオード25が、二次巻線W2の第2二次巻線W22から第2インダクタ21以降に流れることを許容する。また、第1二次側ダイオード24が、二次巻線W2の第1二次巻線W21から第2インダクタ21以降に電流が流れることを禁止する。
【0148】
本別例では、第1二次側ダイオード24は、「第1二次側整流素子」の一例であり、第1二次側ダイオード24のカソードは、「第1二次側整流素子の一端、即ち第1端」の一例であり、第1二次側ダイオード24のアノードは、「第1二次側整流素子の他端、即ち第2端」の一例である。また、第2二次側ダイオード25は、「第2二次側整流素子」の一例であり、第2二次側ダイオード25のカソードは、「第2二次側整流素子の一端、即ち第1端」の一例であり、第2二次側ダイオード25のアノードは、「第2二次側整流素子の他端、即ち第2端」の一例である。
【0149】
出力キャパシタ23は、第1出力線OL1と第2出力線OL2との双方に接続されている。具体的には、出力キャパシタ23の第1端t81は、第1出力線OL1に接続されている。そして、出力キャパシタ23の第2端t82は、第2出力線OL2に接続されている。
【0150】
第2インダクタ21は、第1出力線OL1上における第1二次側ダイオード24と出力キャパシタ23との間の部分に設けられている。具体的には、第2インダクタ21は、第1出力線OL1上における第1二次側ダイオード24の接続点と出力キャパシタ23の接続点との間の部分に設けられている。上述したように、第1二次側ダイオード24のカソードと、第2二次側ダイオード25のカソードとが、第2インダクタ21の第1端t71に接続されている。また、第2インダクタ21の第2端t72と、出力キャパシタ23の第1端t81とが接続されている。
【0151】
第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22との接続点は、出力キャパシタ23の第2端t82と、第2出力線OL2とに接続されている。第1二次巻線W21と、第2二次巻線W22との接続点は、例えば、二次巻線W2の中点である。したがって、出力キャパシタ23の第2端t82は、二次巻線W2の中点に接続されている。
【0152】
ここで、両アームスイッチング素子Q1,Q2のうちどちらか一方が非導通状態であるときに二次側ダイオード22が導通する。すなわち、一次巻線W1と二次巻線W2とは、両アームスイッチング素子Q1,Q2のうちどちらか一方が非導通状態であるときに二次側ダイオード22が導通する極性を有するように磁気結合している。かかる構成においても、制御部50が上述したスイッチング制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
【0153】
また、本別例によれば、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25により、一次巻線W1を流れる電流の向きに応じて、第1二次巻線W21及び第2二次巻線W22を流れる電流が切り替わる。これにより、第2キャパシタ19を省略できる。
【0154】
○電力変換装置5と電力変換装置2とを組み合わせてもよい。例えば、
図17に示すように、電力変換装置6は、例えば、電力変換装置5と同様の構成を備える一方で、一次側回路10、第1キャパシタ17、トランス18及びバッファ回路40の接続が電力変換装置5とは異なる。具体的には、電力変換装置6において、一次巻線W1の始端は、上アームダイオード12のカソードと、上アームスイッチング素子Q1の第1端t31とに電気的に接続される。また、一次巻線W1の終端は、第1キャパシタ17の第1端t51に接続され、第1キャパシタ17の第2端t52は、下アームダイオード13のアノードと、下アームスイッチング素子Q2の第2端t42とに接続される。
【0155】
また、バッファスイッチング素子Q3の端子tq2と、ブリッジ回路14(詳細には上アームダイオード12のカソード及び第1端t31)と一次巻線W1の始端との接続点とは、接続されている。また、バッファキャパシタCcの端子tc2は、一次巻線W1の終端及び第1キャパシタ17の第1端t51に接続されている。これにより、バッファキャパシタCcは、バッファスイッチング素子Q3を介してトランス18の一次巻線W1と並列に接続されている。また、バッファキャパシタCcは、第1キャパシタ17と直列に接続されている。かかる構成においても、制御部50が上述したスイッチング制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。また、電力変換装置6によれば、バッファキャパシタCcの耐圧を小さくできるとともに、第2キャパシタ19を省略できる。
【0156】
〇上アーム整流素子と下アーム整流素子としてダイオードを用いたが、これに限られず、ダイオードに代えてスイッチング素子を用いてもよい。この場合、制御部50は、上アームダイオード12、下アームダイオード13が導通するタイミングで、当該スイッチング素子をONする、いわゆる同期整流制御を行う。ダイオードに代えてスイッチング素子を用いることにより、導通損失を低減できる。
【0157】
○上述では、整流平滑回路20及び整流平滑回路30は、二次側整流素子として、二次側ダイオード22を備え、整流平滑回路60は、二次側整流素子として、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25を備えていたが、これに限られない。整流平滑回路20及び整流平滑回路30は、二次側ダイオード22に代えて、スイッチング素子を有していてもよい。また、整流平滑回路60は、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25に代えて、スイッチング素子を有していてもよい。この場合、制御部50は、二次側ダイオード22、第1二次側ダイオード24及び第2二次側ダイオード25が導通するスイッチングパターンの状態で、当該スイッチング素子をONする、いわゆる同期整流制御を行う。これにより、整流平滑回路20、整流平滑回路30及び整流平滑回路60は、ダイオードに代えてスイッチング素子を用いることにより、導通損失を低減できる。
【0158】
○実施形態では、第1インダクタ11が第1入力端t21と第1接続線CL1との間に接続されたが、第1インダクタ11の位置はこれに限られず、第2入力端t22と第2接続線CL2との間に接続されてもよい。また、第1インダクタ11は二つのインダクタであるとして、第1入力端t21と第1接続線CL1との間と、第2入力端t22と第2接続線CL2との間の両方に接続してもよい。
【0159】
〇実施形態では、第1キャパシタ17が、一次巻線W1の始端と上アームスイッチング素子Q1の第1端t31との間に接続されたが、第1キャパシタ17の位置はこれに限られない。例えば、第1キャパシタ17は、一次巻線W1の終端と下アームスイッチング素子Q2の第2端t42との間に接続されてもよい。また、第1キャパシタ17は、二つのキャパシタにより構成されてもよい。この場合、当該二つのキャパシタは、一次巻線W1の始端と上アームスイッチング素子Q1の第1端t31との間と、一次巻線W1の終端と下アームスイッチング素子Q2の第2端t42との間とに設けられているとよい。
【0160】
〇実施形態では、第2キャパシタ19が、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のアノードとの間に接続されたが、第2キャパシタ19の位置はこれに限られない。例えば、第2キャパシタ19は、二次巻線W2の終端と第2インダクタ21の第2端t72との間に接続されてもよい。また、第2キャパシタ19は、二つのキャパシタにより構成されてもよい。この場合、当該二つのキャパシタは、二次巻線W2の始端と二次側ダイオード22のアノードとの間と、二次巻線W2の終端と第2インダクタ21の第2端t72との間とに設けられてもよい。
【0161】
〇電流センサC1は、第1中間線ML1上ではなく、第2中間線ML2上に設けてもよい。
○制御部50は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。なお、制御部50は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路を含む回路として構成してもよいし、上記の1つ以上のプロセッサ及び1つ以上の専用のハードウェア回路の組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリ、すなわち非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリは、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0162】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(1)制御部は、特定パターンの後、バッファスイッチング素子が導通状態であり且つ両アームスイッチング素子が非導通状態となるデッドタイムパターンを介して、下アームスイッチング素子が非導通状態となり且つ上アームスイッチング素子及びバッファスイッチング素子が導通状態となるスイッチングパターンに切り替えてもよい。
【0163】
(2)制御部は、特定パターンの後、バッファスイッチング素子が導通状態であり且つ両アームスイッチング素子が非導通状態となるデッドタイムパターンを介して、上アームスイッチング素子が非導通状態となり且つ下アームスイッチング素子及びバッファスイッチング素子が導通状態となるスイッチングパターンに切り替えてもよい。
【0164】
(3)交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置であって、一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、第1キャパシタと、前記交流電源が接続される一対の入力端と、第1インダクタと、上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子と、上アーム整流素子と、下アーム整流素子と、を有する一次側回路と、第2インダクタと、二次側整流素子と、出力キャパシタと、第1出力端及び第2出力端と、を有する整流平滑回路と、を備え、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子の直列接続と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の直列接続とがブリッジ回路を構成するとともに、前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との接続点と、前記上アーム整流素子と前記下アーム整流素子の接続点とが、前記一対の入力端と、前記第1インダクタを介して接続され、前記一次側回路は、バッファスイッチング素子とバッファキャパシタとを有するバッファ回路を含み、前記一次側回路は、前記第1キャパシタを介して、前記トランスの前記一次巻線と接続され、前記整流平滑回路は、前記トランスの前記二次巻線と接続されており、前記電力変換装置は、前記上アームスイッチング素子、前記下アームスイッチング素子、及び前記バッファスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成された制御部を備え、前記制御部は、前記両アームスイッチング素子のいずれか一方が導通状態となり且つ前記両アームスイッチング素子の他方及び前記バッファスイッチング素子が非導通状態となる特定パターンを含む複数のスイッチングパターンを順次切り替えるように、スイッチングを制御する、電力変換装置。
【0165】
かかる構成によれば、スイッチングパターンを特定パターンとすることにより、一次巻線にバッファキャパシタの電圧を印加することができる。これにより、二次側整流素子に電流を流すことができる。
【符号の説明】
【0166】
1,2,3,4,5,6…電力変換装置、10…一次側回路、11…第1インダクタ、12…上アームダイオード、13…下アームダイオード、14…ブリッジ回路、17…第1キャパシタ、18,18a…トランス、19…第2キャパシタ、20,30,60…整流平滑回路、21…第2インダクタ、22…二次側ダイオード、23…出力キャパシタ、24…第1二次側ダイオード、25…第2二次側ダイオード、40…バッファ回路、50…制御部、C1…電流センサ、C2,C3…電圧センサ、Cc…バッファキャパシタ、CL1…第1接続線、CL2…第2接続線、CL3…第3接続線、L1…第1入力線、L2…第2入力線、ML1…第1中間線、ML2…第2中間線、OL1…第1出力線、OL2…第2出力線、Q1…上アームスイッチング素子、Q2…下アームスイッチング素子、Q3…バッファスイッチング素子、t21,t22…入力端、t91…第1出力端、t92…第2出力端、V1…交流電源、W1…一次巻線、W2…二次巻線、W21…第1二次巻線、W22…第2二次巻線。