(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】遠心圧縮機および過給機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20240806BHJP
F04D 29/46 20060101ALI20240806BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F04D29/58 S
F04D29/46 C
F04D29/66 H
(21)【出願番号】P 2023535117
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2022011013
(87)【国際公開番号】W WO2023286350
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021115967
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米村 淳
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 亮太
(72)【発明者】
【氏名】中村 一諒
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073584(WO,A1)
【文献】特開2019-167931(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/46
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流路を含むハウジングと、
前記吸気流路に配されるコンプレッサインペラと、
前記ハウジングのうち前記コンプレッサインペラよりも吸気の流れにおいて上流側に形成される収容室と、
前記収容室に配される
絞り部材
であって、前記吸気流路内に突出する絞り位置と、前記絞り位置よりも径方向外側の退避位置と、に移動可能な絞り部材と、
前記ハウジングに形成される環状路であって、当該環状路は、前記ハウジングの外部と連通し、前記ハウジングの外部から供給される熱媒体を流通させ、当該環状路の少なくとも一部は、
前記コンプレッサインペラの回転軸方向において、前記収容室と前記コンプレッサインペラのリーディングエッジとの間に配置され
、当該環状路の内径端は、前記収容室の外径端より径方向内側に位置する、環状路と、
を備える遠心圧縮機。
【請求項2】
前記環状路の導入口は、前記環状路の排出口より鉛直下方に位置する、
請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記環状路の外径端は、前記収容室の外径端より径方向外側に位置する、
請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記環状路の外径端の幅は、内径端の幅より狭い、
請求項1~3のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の遠心圧縮機を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機および過給機に関する。本出願は2021年7月13日に提出された日本特許出願第2021-115967号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、吸気流路が形成されたコンプレッサハウジングを備える。吸気流路には、コンプレッサインペラが配される。コンプレッサインペラに流入する空気の流量が減少すると、コンプレッサインペラで圧縮された空気が吸気流路を逆流し、サージングと呼ばれる現象が発生する。
【0003】
特許文献1には、コンプレッサハウジングに絞り機構を設ける遠心圧縮機について開示がある。絞り機構は、コンプレッサインペラに対し、吸気の流れにおいて上流側に配される。絞り機構は、可動部材を備える。可動部材は、吸気流路内に突出する突出位置と、吸気流路から退避する退避位置とに移動可能に構成される。絞り機構は、可動部材を吸気流路内に突出させることで、吸気流路の流路断面積を小さくする。可動部材が吸気流路内に突出すると、吸気流路内を逆流する空気は、可動部材により堰き止められる。吸気流路内を逆流する空気が堰き止められることで、サージングが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンプレッサインペラにより圧縮された空気は、200℃程度の高温になる。このような高温の空気が吸気流路内を逆流し、可動部材により堰き止められると、可動部材が高温となり、可動部材の強度が低下し、可動部材が正常に作動しなくなる要因となる。
【0006】
本開示の目的は、可動部材を正常作動させることが可能な遠心圧縮機および過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、吸気流路を含むハウジングと、吸気流路に配されるコンプレッサインペラと、ハウジングのうちコンプレッサインペラよりも吸気の流れにおいて上流側に形成される収容室と、収容室に配される絞り部材であって、吸気流路内に突出する絞り位置と、絞り位置よりも径方向外側の退避位置と、に移動可能な絞り部材と、ハウジングに形成される環状路であって、当該環状路は、ハウジングの外部と連通し、ハウジングの外部から供給される熱媒体を流通させ、当該環状路の少なくとも一部は、コンプレッサインペラの回転軸方向において、収容室とコンプレッサインペラのリーディングエッジとの間に配置され、当該環状路の内径端は、収容室の外径端より径方向内側に位置する、環状路と、を備える。
【0008】
環状路の導入口は、環状路の排出口より鉛直下方に位置してもよい。
【0009】
環状路の外径端は、収容室の外径端より径方向外側に位置してもよい。
【0010】
環状路の外径端の幅は、内径端の幅より狭くてもよい。
【0011】
本開示の一態様に係る過給機は、上記の遠心圧縮機を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、可動部材を正常作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る過給機の概略断面図である。
【
図3】
図3は、リンク機構を構成する部材の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、リンク機構の動作を説明するための第1の図である。
【
図6】
図6は、リンク機構の動作を説明するための第2の図である。
【
図7】
図7は、リンク機構の動作を説明するための第3の図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る熱媒体流路の概略断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る熱媒体流路の概略断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る熱媒体流路の概略断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る排出路の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る過給機TCの概略断面図である。
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。過給機TCのうち、後述するコンプレッサハウジング100を含む部分は、遠心圧縮機CCとして機能する。以下では、遠心圧縮機CCは、後述するタービンインペラ8により駆動されるものとして説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、不図示のエンジンにより駆動されてもよいし、不図示の電動機(モータ)により駆動されてもよい。このように、遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0016】
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング4と、コンプレッサハウジング(ハウジング)100と、リンク機構200とを含む。リンク機構200の詳細については、後述する。ベアリングハウジング2の左側には、締結ボルト3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング100が連結される。
【0017】
ベアリングハウジング2には、収容孔2aが形成される。収容孔2aは、ベアリングハウジング2を過給機TCの左右方向に貫通する。収容孔2aには、軸受6が配される。
図1では、軸受6の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受6は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。収容孔2aには、シャフト7の一部が配される。シャフト7は、軸受6によって回転可能に支持される。シャフト7の左端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンインペラ8は、タービンハウジング4内に回転可能に収容される。シャフト7の右端部には、コンプレッサインペラ9が設けられる。コンプレッサインペラ9は、コンプレッサハウジング100内に回転可能に収容される。本開示において、シャフト7、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向、周方向および回転方向は、それぞれ単に回転軸方向、径方向、周方向および回転方向と称され得る。
【0018】
コンプレッサハウジング100には、吸気口10が形成される。吸気口10は、過給機TCの右側に開口する。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング100の間には、ディフューザ流路11が形成される。ディフューザ流路11は、空気を加圧する。ディフューザ流路11は、径方向の内側から外側に向けて環状に形成される。ディフューザ流路11は、径方向の内側において、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0019】
また、コンプレッサハウジング100には、コンプレッサスクロール流路12が形成される。コンプレッサスクロール流路12は、例えば、コンプレッサインペラ9よりも径方向の外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口、および、ディフューザ流路11と連通している。コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング100内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ9の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12でさらに加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0020】
このように、過給機TCは、遠心圧縮機CCを備える。遠心圧縮機CCは、コンプレッサハウジング100と、コンプレッサインペラ9と、後述するリンク機構200とを含む。
【0021】
タービンハウジング4には、排気口13が形成される。排気口13は、過給機TCの左側に開口する。排気口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング4には、連通流路14と、タービンスクロール流路15とが形成される。タービンスクロール流路15は、タービンインペラ8よりも径方向の外側に位置する。連通流路14は、タービンインペラ8とタービンスクロール流路15との間に位置する。
【0022】
タービンスクロール流路15は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。連通流路14は、タービンスクロール流路15と排気口13とを連通させる。ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、連通流路14およびタービンインペラ8の翼間を介して排気口13に導かれる。排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させる。
【0023】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ9の回転力によって加圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0024】
図2は、
図1の破線部分の抽出図である。
図2に示すように、コンプレッサハウジング100は、第1ハウジング部材110と、第2ハウジング部材120とを含む。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120よりも、ベアリングハウジング2から離隔する側に位置する。第2ハウジング部材120は、ベアリングハウジング2に接続される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120に接続される。
【0025】
第1ハウジング部材110は、大凡円筒形状である。第1ハウジング部材110には、貫通孔111が形成される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120と近接(接続)する側に端面112を有する。また、第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120から離隔する側に端面113を有する。端面113には、吸気口10が形成される。貫通孔111は、回転軸方向に沿って、端面112から端面113まで延在する。つまり、貫通孔111は、第1ハウジング部材110を回転軸方向に貫通している。貫通孔111は、端面113において吸気口10を有する。
【0026】
貫通孔111は、平行部111aと、縮径部111bとを有する。平行部111aは、縮径部111bよりも端面113側に位置する。平行部111aの内径は、回転軸方向に亘って大凡一定である。縮径部111bは、平行部111aよりも端面112側に位置する。縮径部111bは、平行部111aと連続する。縮径部111bの、平行部111aと連続する部位の内径が、平行部111aの内径と大凡等しい。縮径部111bの内径は、平行部111aから離隔するほど小さくなる。縮径部111bの内径は、端面112に近づくほど小さくなる。
【0027】
端面112には、切り欠き部112aが形成される。切り欠き部112aは、端面112から端面113に向かって窪む。切り欠き部112aは、端面112の外周部に形成される。切り欠き部112aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。
【0028】
端面112には、収容室ACが形成される。収容室ACは、第1ハウジング部材110のうちコンプレッサインペラ9の羽根のリーディングエッジLEよりも吸気口10近くに形成される。収容室ACは、後述する収容溝112b、軸受穴112d、収容穴115により形成される。
【0029】
収容溝112bは、端面112に形成される。収容溝112bは、切り欠き部112aと貫通孔111との間に位置する。収容溝112bは、端面112から端面113に向かって窪む。収容溝112bは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝112bは、径方向内側において貫通孔111と連通する。
【0030】
収容溝112bのうち端面113と平行な壁面112cには、軸受穴112dが形成される。軸受穴112dは、壁面112cから端面113に向かって回転軸方向に延在する。軸受穴112dは、回転方向に離隔して2つ設けられる。2つの軸受穴112dは、回転方向に180度ずれた位置に配されている。
【0031】
第2ハウジング部材120には、貫通孔121が形成される。第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110と近接(接続)する側に端面122を有する。また、第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110から離隔する側に端面123を有する。換言すれば、第2ハウジング部材120は、ベアリングハウジング2と接続する側に端面123を有する。貫通孔121は、回転軸方向に沿って、端面122から端面123まで延在する。つまり、貫通孔121は、第2ハウジング部材120を回転軸方向に貫通する。
【0032】
貫通孔121のうち端面122近くの端部の内径は、貫通孔111のうち端面112近くの端部の内径と大凡等しい。貫通孔121の内壁には、シュラウド部121aが形成される。シュラウド部121aは、コンプレッサインペラ9に対して径方向の外側から対向する。コンプレッサインペラ9の外径は、コンプレッサインペラ9の羽根のリーディングエッジLEから離隔するほど大きくなる。シュラウド部121aの内径は、端面122から離隔するほど大きくなる。換言すれば、シュラウド部121aの内径は、端面123に近接するほど大きくなる。
【0033】
端面122には、収容溝122aが形成される。収容溝122aは、端面122から端面123に向かって窪む。収容溝122aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝122aには、第1ハウジング部材110が挿入される。収容溝122aのうち端面123と平行な壁面122bに、第1ハウジング部材110の端面112が当接する。このとき、第1ハウジング部材110の壁面112cと第2ハウジング部材120の壁面122bとの間には、収容室ACが形成される。
【0034】
第1ハウジング部材110の貫通孔111と、第2ハウジング部材120の貫通孔121によって、吸気流路130が形成される。つまり、吸気流路130は、コンプレッサハウジング100に形成される。吸気流路130は、不図示のエアクリーナから吸気口10を介してディフューザ流路11まで延在する。吸気流路130のエアクリーナ側(吸気口10側)を吸気の流れにおいて上流側とし、吸気流路130のディフューザ流路11側を吸気の流れにおいて下流側とする。
【0035】
コンプレッサインペラ9は、吸気流路130に配される。吸気流路130は、回転軸方向に垂直な断面において、例えば、コンプレッサインペラ9の回転軸を中心とする円形である。ただし、吸気流路130の断面形状は、これに限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。
【0036】
第1ハウジング部材110の切り欠き部112aには、不図示のシール材が配される。シール材により、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との隙間を流通する空気の流量が抑制される。ただし、切り欠き部112aおよびシール材の構成は、必須ではない。
【0037】
図3は、リンク機構200を構成する部材の分解斜視図である。
図3では、コンプレッサハウジング100のうち、第1ハウジング部材110のみが示される。
図3に示すように、リンク機構200は、第1ハウジング部材110、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230、ロッド240を含む。以下、第1可動部材210および第2可動部材220を、まとめて可動部材210、220と呼ぶ場合がある。リンク機構200は、回転軸方向において、コンプレッサインペラ9の羽根のリーディングエッジLEより吸気流路130の吸気口10近く(上流側)に配される。
【0038】
第1可動部材210は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第1可動部材210は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。
【0039】
第1可動部材210は、上流面S1と、下流面S2と、外面S3と、内面S4とを有する。上流面S1は、第1可動部材210のうち上流側の面である。吸気下流面S2は、第1可動部材210のうち下流側の面である。外面S3は、第1可動部材210のうち径方向外側の面である。内面S4は、第1可動部材210のうち径方向内側の面である。
【0040】
第1可動部材210は、本体部B1を有する。本体部B1は、湾曲部211と、アーム部212とを含む。湾曲部211は、周方向に延在する。湾曲部211は、大凡半円弧形状である。湾曲部211のうち、周方向の第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面211aおよび第2端面211bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0041】
湾曲部211の第1端面211aには、アーム部212が設けられる。アーム部212は、湾曲部211の外面S3から径方向の外側に延在する。また、アーム部212は、径方向に対して傾斜する方向(第2可動部材220側)に延在する。
【0042】
第2可動部材220は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第2可動部材220は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。
【0043】
第2可動部材220は、上流面S1と、下流面S2と、外面S3と、内面S4とを有する。上流面S1は、第2可動部材220のうち上流側の面である。吸気下流面S2は、第2可動部材220のうち下流側の面である。外面S3は、第2可動部材220のうち径方向外側の面である。内面S4は、第2可動部材220のうち径方向内側の面である。
【0044】
第2可動部材220は、本体部B2を有する。本体部B2は、湾曲部221と、アーム部222とを含む。湾曲部221は、周方向に延在する。湾曲部221は、大凡半円弧形状である。湾曲部221のうち、周方向の第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、第1端面221aおよび第2端面221bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0045】
湾曲部221の第1端面221aには、アーム部222が設けられる。アーム部222は、湾曲部221の外面S3から径方向の外側に延在する。また、アーム部222は、径方向に対して傾斜する方向(第1可動部材210側)に延在する。
【0046】
湾曲部211は、湾曲部221とコンプレッサインペラ9の回転中心(吸気流路130)を挟んで対向する。湾曲部211の第1端面211aは、湾曲部221の第2端面221bと周方向に対向する。湾曲部211の第2端面211bは、湾曲部221の第1端面221aと周方向に対向する。可動部材210、220は、詳しくは後述するように、湾曲部211、221が径方向に移動可能に構成される。
【0047】
連結部材230は、可動部材210、220と連結する。連結部材230は、第1可動部材210、第2可動部材220よりも吸気口10近くに位置する。連結部材230は、大凡円弧形状である。連結部材230の周方向における一端側に第1軸受穴231が形成され、他端側に第2軸受穴232が形成される。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230のうち、可動部材210、220近くの端面233に開口する。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、回転軸方向に延在する。ここでは、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、非貫通の穴で構成される。ただし、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230を回転軸方向に貫通してもよい。
【0048】
連結部材230には、第1軸受穴231と第2軸受穴232の間に、ロッド接続部234が形成される。ロッド接続部234は、連結部材230のうち、可動部材210、220と反対側の端面235に形成される。ロッド接続部234は、端面235から回転軸方向に突出する。ロッド接続部234は、例えば、大凡円柱形状である。
【0049】
ロッド240は、大凡円柱形状である。ロッド240の一端部に平面部241が形成され、他端部に連結部243が形成される。平面部241は、回転軸方向に大凡垂直な面方向に延在する。平面部241には、軸受穴242が開口する。軸受穴242は、回転軸方向に延在する。連結部243は、連結孔243aを有する。連結孔243aには、後述するアクチュエータ250(
図5参照)が連結される。軸受穴242は、例えば、回転軸方向およびロッド240の軸方向に垂直な方向の長さが、ロッド240の軸方向の長さよりも長い長穴であってもよい。
【0050】
ロッド240には、平面部241と連結部243の間に、ロッド大径部244と、2つのロッド小径部245とが形成される。ロッド大径部244は、2つのロッド小径部245の間に配される。2つのロッド小径部245のうち平面部241近くのロッド小径部245は、ロッド大径部244と平面部241とを接続する。2つのロッド小径部245のうち連結部243近くのロッド小径部245は、ロッド大径部244と連結部243とを接続する。ロッド大径部244の外径は、2つのロッド小径部245の外径よりも大きい。
【0051】
第1ハウジング部材110には、挿通穴114が形成される。挿通穴114の一端114aは、第1ハウジング部材110の外部に開口する。挿通穴114は、例えば、回転軸方向に垂直な面方向に延在する。挿通穴114は、吸気流路130よりも径方向の外側に位置する。挿通穴114には、ロッド240の平面部241側が挿通される。ロッド大径部244は、挿通穴114の内壁面によってガイドされる。ロッド240は、挿通穴114の中心軸方向(ロッド240の中心軸方向)以外の移動が規制される。
【0052】
第1ハウジング部材110には、収容穴115が形成される。収容穴115は、収容溝112bの壁面112cに開口する。収容穴115は、壁面112cから吸気口10に向かって窪む。収容穴115は、挿通穴114よりも吸気口10から離隔するよう(第2ハウジング部材120近く)に位置する。収容穴115は、回転軸方向から見たとき、大凡円弧形状である。収容穴115は、連結部材230よりも周方向に長く延在する。収容穴115は、軸受穴112dから周方向に離隔する。
【0053】
第1ハウジング部材110には、連通孔116が形成される。連通孔116は、挿通穴114と収容穴115とを連通させる。連通孔116は、収容穴115のうち、周方向の大凡中間部分に形成される。連通孔116は、例えば、挿通穴114の延在方向に大凡平行に延在する長孔である。連通孔116の長手方向(延在方向)の幅が、短手方向(延在方向と垂直な方向)の幅よりも大きい。挿通穴114の短手方向の幅は、連結部材230のロッド接続部234の外径よりも大きい。
【0054】
連結部材230は、収容穴115(収容室AC)に収容される。このように、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230は、第1ハウジング部材110に形成された収容室AC内に配される。収容穴115は、連結部材230よりも周方向に長く、径方向に大きい。そのため、連結部材230は、収容穴115の内部で、回転軸方向に垂直な面方向への移動が許容される。
【0055】
ロッド接続部234は、連通孔116から挿通穴114に挿通される。挿通穴114には、ロッド240の平面部241が挿通されている。平面部241の軸受穴242は、連通孔116に対向している。ロッド接続部234は、軸受穴242に挿通され、ロッド240と接続する。ロッド接続部234は、軸受穴242に支持される。
【0056】
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図4に破線で示すように、第1可動部材210は、連結軸部213および回転軸部214を有する。連結軸部213および回転軸部214は、第1可動部材210のうち、壁面112cと対向する上流面S1(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部213および回転軸部214は、
図4中、奥側に延在する。回転軸部214は、連結軸部213と平行に延在する。連結軸部213および回転軸部214は、大凡円柱形状である。
【0057】
連結軸部213の外径は、連結部材230の第1軸受穴231の内径よりも小さい。連結軸部213は、第1軸受穴231に挿通される。連結軸部213は、第1軸受穴231に回転可能に支持される。回転軸部214の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部214は、2つの軸受穴112dのうち鉛直上側(ロッド240に近接する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部214は、軸受穴112dに回転可能に支持される。
【0058】
第2可動部材220は、連結軸部223および回転軸部224を有する。連結軸部223および回転軸部224は、第2可動部材220のうち、壁面112cと対向する上流面S1(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部223および回転軸部224は、
図4中、奥側に延在する。回転軸部224は、連結軸部223と平行に延在する。連結軸部223および回転軸部224は、大凡円柱形状である。
【0059】
連結軸部223の外径は、連結部材230の第2軸受穴232の内径よりも小さい。連結軸部223は、第2軸受穴232に挿通される。連結軸部223は、第2軸受穴232に回転可能に支持される。回転軸部224の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部224は、2つの軸受穴112dのうち鉛直下側(ロッド240から離隔する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部224は、軸受穴112dに回転可能に支持される。
【0060】
第1可動部材210の上流面S1には、下流面S2に向かって窪む溝310が形成される。また、第2可動部材220の上流面S1には、下流面S2に向かって窪む溝320が形成される。
【0061】
このように、リンク機構200は、4節リンク機構により構成される。4つのリンク(節)は、第1可動部材210、第2可動部材220、第1ハウジング部材110、連結部材230である。リンク機構200が、4節リンク機構により構成されることから、限定連鎖となり1自由度であって制御が容易である。
【0062】
図5は、リンク機構200の動作を説明するための第1の図である。以下の
図5、
図6、
図7では、リンク機構200を吸気口10から見た図が示される。
図5に示すように、ロッド240の連結部243には、アクチュエータ250の駆動シャフト251の端部が連結される。
【0063】
図5に示す配置では、第1可動部材210と第2可動部材220は、互いに当接する。このとき、
図2および
図4に示すように、第1可動部材210のうち、径方向の内側の部位である突出部215は、吸気流路130内に突出する。第2可動部材220のうち、径方向の内側の部位である突出部225は、吸気流路130内に突出する。この状態における第1可動部材210、第2可動部材220の位置を、突出位置(あるいは絞り位置)という。
【0064】
図5に示すように、突出位置では、突出部215のうち、周方向の端部215a、215bが、突出部225のうち、周方向の端部225a、225bとそれぞれ当接する。突出部215と突出部225によって環状孔260が形成される。環状孔260の内径は、吸気流路130のうち、突出部215、225が突出する位置の内径よりも小さい。環状孔260の内径は、例えば、吸気流路130のいずれの位置の内径よりも小さい。
【0065】
図6は、リンク機構200の動作を説明するための第2の図である。
図7は、リンク機構200の動作を説明するための第3の図である。アクチュエータ250は、回転軸方向と交差する方向(
図6、
図7中、上下方向)にロッド240を直動させる。
図6および
図7では、ロッド240は、
図5に示す位置から上側に移動する。
図6の配置よりも
図7の配置の方が、
図5の配置に対するロッド240の移動量が大きい。
【0066】
ロッド240が移動すると、連結部材230は、ロッド接続部234を介して、
図6、
図7中、上側に移動する。このとき、連結部材230は、ロッド接続部234を回転中心とする回転が許容される。また、ロッド接続部234の外径に対し、ロッド240の軸受穴242の内径に僅かに遊びがある。そのため、連結部材230は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が僅かに許容される。
【0067】
上述したように、リンク機構200は、4節リンク機構である。連結部材230、可動部材210、220は、第1ハウジング部材110に対して、1自由度の挙動を示す。具体的には、連結部材230は、上記の許容範囲内で、
図6、
図7中、反時計回りに僅かに回転しつつ、左右方向に僅かに動く。
【0068】
第1可動部材210のうち、回転軸部214は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部214は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部213は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部213は、回転軸方向に垂直な面方向に移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第1可動部材210は、回転軸部214を回転中心として、
図6、
図7中、時計回り方向に回転する。
【0069】
同様に、第2可動部材220のうち、回転軸部224は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部224は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部223は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部223は、回転軸方向に垂直な面方向へ移動可能に設けられる。その結果、連結部材230の移動に伴って、第2可動部材220は、回転軸部224を回転中心として、
図6、
図7中、時計回り方向に回転する。
【0070】
こうして、第1可動部材210と第2可動部材220は、
図6、
図7の順に、互いに離隔する方向に移動する。突出部215、225は、突出位置よりも径方向の外側に移動し、退避位置に配置される。退避位置では、例えば、突出部215、225は、吸気流路130の内壁面と面一となるか、吸気流路130の内壁面よりも径方向の外側に位置する。退避位置から突出位置に移動するときは、
図7、
図6、
図5の順に、第1可動部材210と第2可動部材220が互いに近づいて当接する。このように、可動部材210、220は、回転軸部214、224を回転中心とする回転角度に応じて、突出位置と退避位置とに切り替わる。
【0071】
可動部材210、220は、吸気流路130内に突出する突出位置と、吸気流路130内に突出しない退避位置とに移動可能に構成される。本実施形態では、可動部材210、220は、径方向に移動する。ただし、これに限定されず、可動部材210、220は、回転軸周り(周方向)に回転してもよい。例えば、可動部材210、220は、2以上の羽根を有するシャッター羽根であってもよい。
【0072】
可動部材210、220は、退避位置に位置するとき、吸気流路130内に突出しないことから、吸気流路130を流れる空気の圧損を小さくすることができる。
【0073】
また、
図2に示すように、可動部材210、220は、突出位置において、突出部215、225が吸気流路130内に位置するように、配される。可動部材210、220が突出位置に位置すると、吸気流路130の流路断面積が小さくなる。
【0074】
コンプレッサインペラ9に流入する空気の流量が減少するに従い、コンプレッサインペラ9で圧縮された空気が吸気流路130内を逆流する場合がある。すなわち、コンプレッサインペラ9で圧縮された空気が吸気流路130の下流側から上流側に向かって流れる場合がある。
【0075】
図2に示すように、可動部材210、220が突出位置に位置するとき、突出部215、225は、コンプレッサインペラ9の羽根のリーディングエッジLEの最外径端よりも径方向内側に位置する。これにより、吸気流路130内を逆流する空気は、突出部215、225に堰き止められる。したがって、可動部材210、220は、吸気流路130内の空気の逆流を抑制することができる。
【0076】
また、吸気流路130の流路断面積が小さくなることから、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流速が増大し、サージングの発生を抑制することができる。つまり、第1実施形態の遠心圧縮機CCは、可動部材210、220が突出位置に配されることにより、遠心圧縮機CCの作動領域を小流量側に拡大することができる。
【0077】
このように、可動部材210、220は、吸気流路130を絞る絞り部材として構成される。つまり、本実施形態において、リンク機構200は、吸気流路130を絞る絞り機構として構成される。可動部材210、220は、リンク機構200が駆動されることで、吸気流路130の流路断面積を変化させることができる。
【0078】
遠心圧縮機CCは、寒冷地に位置する車両に搭載される場合がある。遠心圧縮機CCが寒冷地に位置する車両に搭載された場合、エンジン始動時に可動部材210、220が凍結し、正常に作動しなくなる場合がある。
【0079】
また、可動部材210、220は、軽量化のため樹脂材料で形成される場合がある。コンプレッサインペラ9により圧縮された空気は、200℃程度の高温になる。このような高温の空気が吸気流路130内を逆流し、可動部材210、220により堰き止められると、可動部材210、220が高温となり、可動部材210、220の強度が低下し、可動部材210、220が正常に作動しなくなる要因となる。
【0080】
そこで、本実施形態の遠心圧縮機CCは、コンプレッサハウジング100に熱媒体流路400を備える。以下、
図8および
図9を用いて、熱媒体流路400について詳細に説明する。
【0081】
図8は、第1実施形態に係る熱媒体流路400の概略断面図である。
図9は、
図8のIX-IX線断面図である。
図8および
図9に示すように、熱媒体流路400は、導入路410と、環状路420と、排出路430とを含む。
【0082】
導入路410は、導入開口412を備える。導入開口412は、コンプレッサハウジング100の外部に開口し、不図示の循環流路と接続される。循環流路の一端が導入路410に接続され、他端が排出路430に接続される。
【0083】
循環流路には、不図示の熱交換器およびポンプが設けられる。循環流路は、熱媒体を導入路410→環状路420→排出路430→循環流路の順で循環させる。なお、ポンプは、遠心圧縮機CCの空気の圧縮前後の圧力比が閾値以上となった際にON制御され、圧力比が閾値未満となった際にOFF制御される。また、ポンプは、リンク機構200の温度が所定値未満となった際にON制御され、温度が所定値以上となった際にOFF制御される。
【0084】
導入開口412には、循環流路から熱媒体が導入される。熱媒体は、例えば、エンジン冷却水、水、オイル等である。導入路410は、循環流路と環状路420とを接続させる。導入路410は、導入開口412から導入された熱媒体を、環状路420の導入口422へと導く。
【0085】
図8に示すように、環状路420は、収容室ACから回転軸方向に離隔している。つまり、環状路420は、収容室ACと連通していない。回転軸方向において環状路420の少なくとも一部は、リーディングエッジLEと収容室ACの間に配置される。また、環状路420の外径端は、収容室ACの外径端と等しいか、収容室ACの外径端より径方向外側に位置する。環状路420の外径端は、収容室AC内に収容される可動部材210、220の位置よりも径方向外側に位置する。
【0086】
図9に示すように、環状路420は、導入口422と、排出口424とを備える。環状路420の導入口422は、環状路420の排出口424より鉛直下方に位置する。換言すれば、環状路420の排出口424は、環状路420の導入口422より鉛直上方に位置する。
図9では、過給機TCの使用時における、導入路410、環状路420、導入口422、排出口424、排出路430の位置関係を表している。したがって、過給機TCの使用時の状態で、導入口422が排出口424よりも鉛直下方に位置する。
【0087】
導入口422は、導入路410と環状路420とを連通させる。導入口422は、導入路410を通過した熱媒体を環状路420内に導入させる。導入口422は、環状路420の外径側に位置し、環状路420の外周面と回転軸方向に連続している。
【0088】
環状路420は、吸気流路130の周囲に形成され、導入口422から周方向に沿って排出口424まで第1方向R1に円弧状に延在する。環状路420は、径方向に一定の幅を有する。ただし、これに限定されず、環状路420の径方向の幅は、周方向に変化してもよい。環状路420と吸気流路130との間には、隔壁426が形成され、環状路420は、吸気流路130から径方向に離隔している。
【0089】
環状路420は、C形状に形成され、第1方向R1とは反対の第2方向R2において、導入口422から排出口424までの間には、隔壁428が形成される。そのため、環状路420は、第2方向R2において導入口422から排出口424までの間、不連続となる。
【0090】
環状路420は、導入口422から導入された熱媒体を、導入口422から第1方向R1に沿って排出口424まで導く。排出口424は、環状路420と排出路430とを連通させる。排出口424は、環状路420を通過した熱媒体を排出路430内に導入させる。排出口424は、環状路420の外径側に位置し、環状路420の外周面と回転軸方向に連続している。
【0091】
排出路430は、排出開口432を備える。排出開口432は、コンプレッサハウジング100の外部に開口し、不図示の循環流路と接続される。排出路430は、環状路420と循環流路とを接続させる。排出路430は、排出口424から導入された熱媒体を排出開口432に導く。排出開口432は、排出路430を通過した熱媒体を循環流路に排出する。
【0092】
以上のように、熱媒体流路400は、コンプレッサハウジング100の外部に設けられた循環流路と連通する。また、熱媒体流路400は、コンプレッサハウジング100の外部の循環流路から供給される熱媒体を流通させる。そして、環状路420の少なくとも一部は、回転軸方向においてリーディングエッジLEと収容室ACの間に配置される。
【0093】
これにより、遠心圧縮機CCが寒冷地に位置する車両に搭載され、エンジン始動時に可動部材210、220が凍結していても、収容室AC近傍を流通する熱媒体により可動部材210、220を温めることができる。したがって、可動部材210、220の凍結を解除し、可動部材210、220を正常に作動させることが可能となる。
【0094】
また、可動部材210、220により吸気流路130内を逆流する高温の圧縮空気が堰き止められるような場合にも、収容室AC近傍を流通する熱媒体により可動部材210、220を冷却することができる。したがって、可動部材210、220が高温となって可動部材210、220の強度が低下することを抑制することができる。その結果、可動部材210、220を正常に作動させることが可能となる。
【0095】
一般的に、環状の流路内を周方向に移動する流体は、遠心力により内径側から外径側に向かって移動する。そのため、環状の流路内には、内径側に流体が存在しない空間が形成されやすくなる。
【0096】
導入口422が排出口424より鉛直下方に位置する場合、導入口422から排出口424に向かう熱媒体は、少なくとも重力方向とは反対方向に向かって環状路420内を移動する。これにより、環状路420の内径側に熱媒体が満たされやすくなり、環状路420の内径側に熱媒体が存在しない空間が形成され難くなる。その結果、特に収容室ACの内径側に位置する可動部材210、220を効果的に加熱または冷却することができる。
【0097】
また、環状路420の外径端は、収容室ACの外径端より径方向外側に位置する。これにより、収容室ACの外径端を含む収容室AC全体を加熱または冷却することができる。
【0098】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る熱媒体流路500の概略断面図である。上記第1実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態の熱媒体流路500は、第1環状路510、第2環状路520、第3環状路530、第4環状路540を備える点で上記第1実施形態と異なっている。ここで、第1環状路510の構成は、上記第1実施形態の環状路420の構成と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0099】
図10に示すように、第1環状路510は、収容室ACから回転軸方向に離隔している。つまり、第1環状路510は、収容室ACと連通していない。回転軸方向において第1環状路510の少なくとも一部は、リーディングエッジLEと収容室ACの間に配置される。また、第1環状路510の外径端は、収容室ACの外径端と等しいか、収容室ACの外径端より径方向外側に位置する。第1環状路510の外径端は、収容室AC内に収容される可動部材210、220の位置よりも径方向外側に位置する。
【0100】
第2環状路520は、導入路410と連通している。第2環状路520は、導入路410に対し、第1環状路510と反対側に配される。第1環状路510および第2環状路520は、導入路410を挟んで配置される。第2環状路520は、第1環状路510および導入路410よりもディフューザ流路11近くに配置される。第2環状路520は、ディフューザ流路11に対し回転軸方向に離隔して形成される。第2環状路520は、回転軸方向においてディフューザ流路11と対向して配置される。
【0101】
第3環状路530は、導入路410、排出路430、第1環状路510および第2環状路520と連通しておらず、導入路410とは別の不図示の導入路により熱媒体が供給される。また、第3環状路530は、排出路430とは別の不図示の排出路により熱媒体を排出する。第3環状路530は、第1環状路510に対してディフューザ流路11近くに配置される。第3環状路530は、第2環状路520に対して収容室AC近くに配置される。第3環状路530は、第1環状路510および第2環状路520の間に配置される。第3環状路530は、第1環状路510および第2環状路520よりも、コンプレッサインペラ9の羽根のチップ端の中央部に近接して配置される。
【0102】
第4環状路540は、導入路410、排出路430、第1環状路510および第2環状路520と連通しておらず、導入路410とは別の不図示の導入路により熱媒体が供給される。また、第4環状路540は、排出路430とは別の不図示の排出路により熱媒体を排出する。第4環状路540は、収容室ACに対して第1環状路510とは反対側に配置される。第1環状路510および第4環状路540の間には、収容室ACが配置される。換言すれば、回転軸方向において収容室ACの両側には、第1環状路510および第4環状路540が配される。なお、第2環状路520、第3環状路530、第4環状路540は、それぞれ
図9に示す環状路420と同様に、吸気流路130の周囲にC形状に形成され、導入口から周方向に沿って排出口まで第1方向R1に円弧状に延在する。
【0103】
第2実施形態によれば、熱媒体流路500は、第2環状路520、第3環状路530、第4環状路540を備える。第2環状路520により、ディフューザ流路11を流通する圧縮空気を冷却することができる。また、ディフューザ流路11からコンプレッサハウジング100を介して収容室ACに伝達する熱をシャットアウトすることができる。
【0104】
第3環状路530により、第1環状路510とともに、シュラウド部121aに沿って逆流する空気を冷却することができる。また、第4環状路540により、可動部材210、220を両側から加熱または冷却することができる。
【0105】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係る熱媒体流路600の概略断面図である。上記第1実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第3実施形態の熱媒体流路600は、導入路410、環状路420、排出路430の形状が上記第1実施形態と異なっている。
【0106】
図11に示すように、熱媒体流路600は、導入路610、環状路620、排出路630を備える。導入路610は、導入開口412から環状路620の導入口622に向かって熱媒体を導く。導入口622は、環状路620の内径側に位置し、環状路620の内周面と回転軸方向に連続している。
【0107】
環状路620は、収容室ACから回転軸方向に離隔している。つまり、環状路620は、収容室ACと連通していない。回転軸方向において環状路620の少なくとも一部は、リーディングエッジLEと収容室ACの間に配置される。また、環状路620の外径端は、収容室ACの外径端と等しいか、収容室ACの外径端より径方向外側に位置する。環状路620の外径端は、収容室AC内に収容される可動部材210、220の位置よりも径方向外側に位置する。
【0108】
環状路620は、回転軸方向に沿った断面において台形状を有する。ただし、これに限定されず、環状路620は、回転軸方向に沿った断面において三角形状や半円形状を有してもよい。環状路620の外径端の幅は、内径端の幅より狭い。換言すれば、環状路620の内径端の幅は、外径端の幅より広い。なお、環状路620は、
図9に示す環状路420と同様に、吸気流路130の周囲にC形状に形成され、導入口622から周方向に沿って排出口624まで第1方向R1に円弧状に延在する。
【0109】
図12は、第3実施形態に係る排出路630の概略断面図である。排出路630は、環状路620の排出口624から排出開口432に向かって熱媒体を導く。排出口624は、環状路620の内径側に位置し、環状路620の内周面と回転軸方向に連続している。なお、排出路630の構成は、導入路610の構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0110】
第3実施形態によれば、導入口622および排出口624は、環状路620の内径側に位置し、環状路620の内周面と回転軸方向に連続している。また、環状路620の外径端側の幅は、内径端側の幅より狭い。これにより、環状路620の外径側よりも内径側に多くの熱媒体を供給することができ、熱媒体に遠心力が作用しても収容室ACの内径側の冷却に必要な熱媒体の量を確保することができる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
例えば、上述した第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【0113】
上記第1実施形態では、環状路420の導入口422が排出口424より鉛直下方に位置する例について説明した。しかし、これに限定されず、導入口422は、排出口424より鉛直上方に位置してもよい。
【0114】
上記第1実施形態では、環状路420の外径端が収容室ACの外径端より径方向外側に位置する例について説明した。しかし、これに限定されず、環状路420の外径端は、収容室ACの外径端より径方向内側に位置してもよい。
【0115】
上記第3実施形態では、環状路620の外径端側の幅が内径端側の幅より狭い例について説明した。しかし、これに限定されず、環状路620の外径端側の幅は、内径端側の幅より広くてもよい。
【符号の説明】
【0116】
9 コンプレッサインペラ
100 コンプレッサハウジング(ハウジング)
130 吸気流路
210 第1可動部材(可動部材)
220 第2可動部材(可動部材)
400 熱媒体流路
410 導入路
412 導入開口
420 環状路
422 導入口
424 排出口
430 排出路
432 排出開口
500 熱媒体流路
510 第1環状路
520 第2環状路
530 第3環状路
540 第4環状路
600 熱媒体流路
610 導入路
620 環状路
630 排出路
AC 収容室
CC 遠心圧縮機
TC 過給機