(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】直描型水なし平版印刷版原版およびそれを用いた水なし平版印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20240806BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20240806BHJP
B41C 1/055 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B41N1/14
B32B27/00 101
B41C1/10
B41C1/055 501
(21)【出願番号】P 2024509361
(86)(22)【出願日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2024004954
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023028022
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023193350
(32)【優先日】2023-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯原 明宏
(72)【発明者】
【氏名】久世 康典
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-199454(JP,A)
【文献】特開2009-163159(JP,A)
【文献】特開2001-130155(JP,A)
【文献】特開2003-337421(JP,A)
【文献】特開2009-080479(JP,A)
【文献】特開平4-268560(JP,A)
【文献】特開平10-244771(JP,A)
【文献】特開2003-266966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
B32B 27/00
B41C 1/10
B41C 1/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、プライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、その断面における該プライマー層の幅750μmの範囲において、プライマー層の基準高さよりも突出した部分の面積の合計とプライマー層の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~60μm
2である、直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項2】
前記断面におけるプライマー層の幅750μmの範囲において、前記プライマー層の基準高さと、前記プライマー層と前記感熱層との界面を表す線との交点の数が0~600である、請求項1に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項3】
支持体上に、プライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、該プライマー層の表面における最大山高さが0.5μm以下である、直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項4】
前記感熱層の最薄部の厚みが0.2μm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項5】
前記プライマー層の最薄部の厚みが1μm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項6】
断面における前記感熱層の幅750μmの範囲において、感熱層の基準高さよりも突出した部分の面積の合計と感熱層の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~30μm
2である、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項7】
前記プライマー層の平均厚みが2~500μmである、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項8】
前記感熱層の平均厚みが0.5~2μmである、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項9】
前記シリコーンゴム層の平均厚みが3.2~4.8μmである、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項10】
前記感熱層が熱破壊型である、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項11】
前記シリコーンゴム層が硬質ドメインを含む、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項12】
断面における前記支持体の幅750μmの範囲において、支持体の基準高さよりも突出した部分の面積の合計と支持体の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~300μm
2である、請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項13】
請求項1~3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版にレーザー光を照射し、潜像を形成する露光工程、および、潜像の画線部に対応するシリコーンゴム層を除去する現像工程を有する、水なし平版印刷版の製造方法。
【請求項14】
前記潜像を形成する露光工程において、AMスクリーン180線~650線相当精度のAMスクリーンまたはAM/FM混合スクリーンを用いる、請求項13に記載の水なし平版印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直描型水なし平版印刷版原版およびそれを用いた水なし平版印刷版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷には、凸版印刷、凹版印刷、孔版(スクリーン)印刷、平版印刷、インクジェット印刷など様々な方式があり、各方式の特徴を活かして印刷が行われている。これらの中でも、平版印刷は精細度の高い印刷物が得られる点などにおいて、他の印刷方式に比べ有利である。平版印刷に用いられる印刷版(以下、平版印刷版という)は、湿し水の作用によって非画線部をインキ反発性とする水あり平版印刷版と、湿し水を用いることなく、シリコーンゴムやフッ素樹脂をインキ反発性の非画線部として使用する水なし平版印刷版とに大別される。
【0003】
シリコーンゴムをインキ反発性の非画線部として使用する水なし平版印刷版を得る技術に関して、これまでに様々な提案がなされてきた。例えば、粗面化表面を有する金属板上に、架橋ポリマー性画像層、疎油性最上層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)や、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10,011,137号明細書
【文献】特開2004-334025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、平版印刷は、軟包装印刷や建材印刷などに用いられており、これらの用途においては、大型の印刷物が求められる傾向にある。このため、大サイズの水なし平版印刷版において、画像再現性の向上、印刷ムラの抑制、および耐刷性の向上が望まれている。
【0006】
特許文献1に記載の直描型水なし平版印刷版原版は、近赤外線レーザーの照射により架橋ポリマー性画像層が熱破壊され、その後の現像処理により熱破壊された架橋ポリマー性画像層とその上部の疎油性最上層を除去することにより、水なし平版印刷版を得ることができる。しかしながら、金属板表面が粗面化されていることにより、金属板表面の凸部上に設けられた架橋ポリマー性画像層は厚みが薄くなりやすく、薄くなった部分の架橋ポリマー性画像層は発熱効率が低下するため、その部分では画像再現性が低下しやすくなり、これに伴い印刷ムラも発生しやすくなる課題があった。また、架橋ポリマー性画像層表面にも金属板表面の粗面化に由来する凹凸が形成されやすく、凸部において印刷時に応力が集中することから、凸部の上部に存在するシリコーンゴム層がダメージを受けやすく、耐刷性にも課題があった。
【0007】
特許文献2に記載の直描型水なし平版印刷版原版は、近赤外線レーザーの照射により感熱層の上部に潜像を形成し、その後の現像処理により潜像の画線部に対応するシリコーンゴム層を除去することにより、水なし平版印刷版を得ることができる。特許文献1に比べ、基板の表面粗度が低く、かつ基板と感熱層の間に断熱層が設けられていることから、感熱層の厚みが均一になりやすいため、画像再現性と耐刷性の低下や印刷ムラが抑制される。しかしながら、特許文献2に具体的に例示された断熱層溶液はいすれも固形分濃度が高く、高粘度であることから、大サイズの直描型水なし平版印刷版原版においては感熱層に薄膜部分や凸部が形成されやすい傾向にあり、画像再現性や耐刷性のさらなる向上と印刷ムラのさらなる抑制が求められていた。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、大サイズ版において良好な画像再現性と耐刷性を有し、印刷ムラの少ない水なし平版印刷版を得ることのできる直描型水なし平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は主として以下の構成を有する。
(1)支持体上に、プライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、その断面における該プライマー層の幅750μmの範囲において、プライマー層の基準高さよりも突出した部分の面積の合計とプライマー層の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~60μm2である、直描型水なし平版印刷版原版。
(2)前記断面におけるプライマー層の幅750μmの範囲において、前記プライマー層の基準高さと、前記プライマー層と前記感熱層との界面を表す線との交点の数が0~600である、(1)に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(3)支持体上に、プライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有し、該プライマー層の表面における最大山高さが0.5μm以下である、直描型水なし平版印刷版原版。
(4)前記感熱層の最薄部の厚みが0.2μm以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(5)前記プライマー層の最薄部の厚みが1μm以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(6)断面における前記感熱層の幅750μmの範囲において、感熱層の基準高さよりも突出した部分の面積の合計と感熱層の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~30μm2である、(1)~(5)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(7)前記プライマー層の平均厚みが2~500μmである、(1)~(6)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(8)前記感熱層の平均厚みが0.5~2μmである、(1)~(7)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(9)前記シリコーンゴム層の平均厚みが3.2~4.8μmである、(1)~(8)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(10)前記感熱層が熱破壊型である、(1)~(9)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(11)前記シリコーンゴム層が硬質ドメインを含む、(1)~(10)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(12)断面における前記支持体の幅750μmの範囲において、支持体の基準高さよりも突出した部分の面積の合計と支持体の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~300μm2である、(1)~(11)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
(13)(1)~(12)のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版にレーザー光を照射し、潜像を形成する露光工程、および、潜像の画線部に対応するシリコーンゴム層を除去する現像工程を有する、水なし平版印刷版の製造方法。
(14)前記潜像を形成する露光工程において、AMスクリーン180線~650線相当精度のAMスクリーンまたはAM/FM混合スクリーンを用いる、(13)に記載の水なし平版印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版により、大サイズ版において良好な画像再現性と耐刷性を有し、印刷ムラの少ない水なし平版印刷版を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例において、支持体の基準高さと支持体との関係を示す断面模式図である。
【
図2】従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例の断面模式図である。
【
図3】本発明の直描型水なし平版印刷版原版の一例の断面模式図である。
【
図4】従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例において、プライマー層の基準高さとプライマー層との関係を示す断面模式図である。
【
図5】従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例において、プライマー層の基準高さとプライマー層と感熱層との界面を表す線との交点を示す断面模式図である。
【
図6】従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例において、感熱層の基準高さと感熱層との関係を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
直描型水なし平版印刷版原版(以下、「印刷版原版」と略記する場合がある)とは、水なし平版印刷版(以下、「印刷版」と略記する場合がある)にインキ着肉部/インキ反発部を形成する前の前駆体である。本発明に係る直描型水なし平版印刷版原版は、支持体上にプライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する。支持体は、印刷版原版や印刷版の形状を保持する機能を有する。プライマー層は、支持体表面の凹凸の影響を抑制し、支持体と感熱層とを接着する機能や、断熱の機能を有する。感熱層は、レーザー光吸収による発熱作用により潜像を形成する機能、および、印刷版においてインキを着肉する画線部を形成する機能を有する。ただし、感熱層が後述する熱破壊型の場合には、レーザー光吸収による発熱作用により破壊された感熱層は製版工程で除去されるため、印刷版においてインキは感熱層ではなくプライマー層表面に着肉する。シリコーンゴム層は、インキを反発する機能を有し、印刷版における非画線部を形成する。また、直描型平版印刷版原版とは、レーザー光を用いて原稿から直接画像を書き込むことができる平版印刷版原版を指し、別途の原画フィルムを必要とすることなく、露光により潜像を形成することができる。
【0013】
まず、支持体について説明する。
【0014】
支持体の材質としては、寸法的に安定な金属やプラスチックなどが好ましい。具体的には、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅などの金属やこれら金属を主成分とする合金;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂などのプラスチックやこれらプラスチックとガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維などの繊維を含む繊維強化プラスチックなどが挙げられる。軽量で取り扱いやすく、耐刷性により優れる点で、アルミニウム合金や繊維強化プラスチックが好ましい。
【0015】
支持体の形状としては、例えば、板状、ロール状、円筒状、円柱状などが挙げられる。円筒状や円柱状の支持体を用いた場合には、連続絵柄の印刷が可能なシームレス水なし平版印刷版原版が得られる。シームレス水なし平版印刷版原版の支持体の形状としては、より軽量で、取り扱いやすい点で、円筒状がより好ましい。印刷版原版から印刷版を作製した後、直ちに印刷を行える点で、円筒状支持体は印刷機の版胴であることが好ましい。とりわけ、円筒状支持体が印刷機の版胴軸に脱着可能な版胴スリーブであることが、シームレス水なし平版印刷版作製までの一連の工程や印刷後の支持体再生などの操作を印刷機外で行える点で、より好ましい。
【0016】
支持体の寸法としては、支持体が板状の場合には、使用する印刷機に適切な寸法(長さ、幅、厚みなど)を選択すればよい。また、支持体が円筒状の場合には、使用する印刷機の版胴として適切な直径や幅を選択すればよい。
【0017】
支持体表面の粗度としては、算術平均粗さ(Ra)で0.4μm以下が好ましい。支持体表面のRaを0.4μm以下とすることにより、プライマー層の表面が平滑化しやすくなり、画像再現性や耐刷性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。Raは、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。一方、支持体表面のRaが0.04μm以上であると、研磨処理を施すことなく、圧延のみで製造することが可能であるため、支持体の生産性向上の点で、支持体表面のRaは0.04μm以上が好ましい。前述のとおり、従来の印刷版原版には、支持体表面の粗面化によって、画像再現性や耐刷性が低下しやすく、印刷ムラが発生しやすくなる課題があったが、本発明においては、後述のようにプライマー層表面を平滑化することにより、支持体表面のRaが0.04μm以上の場合に本発明の効果がより顕著に奏される。支持体表面のRaは、0.06μm以上がより好ましく、0.08μm以上がさらに好ましい。
【0018】
支持体表面のRaは、表面粗さ測定機:“サーフコム”(登録商標)1400G((株)東京精密製)を用いて測定することができる。
【0019】
支持体表面の平滑性の別の指標として、本発明においては、印刷版原版の断面において、支持体の基準高さを設定し、基準高さに対する支持体の凹凸に着目した。印刷版原版の断面における支持体の幅750μmの範囲において、支持体の基準高さよりも支持体が突出した部分の面積の合計(以下、「凸部面積」と略記する場合がある)と支持体の基準高さよりも支持体が陥没した部分の面積の合計(以下、「凹部面積」と略記する場合がある)との総和が、0~300μm2であることが好ましい。
【0020】
ここで、印刷版原版の断面における支持体の幅750μmの範囲における凸部面積および凹部面積は、後述のように印刷版原版の断面をSEM観察して求めることができる。なお、本発明においては、支持体の凸部面積と凹部面積の測定バラツキを十分に抑制して支持体表面の平滑性を適切に評価するため、観察範囲を支持体の幅750μmの範囲に設定した。
【0021】
支持体の凸部面積と凹部面積との総和を300μm2以下とすることにより、上層であるプライマー層の表面もより平滑化されやすくなり、後述するプライマー層の最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和を好ましい範囲に設計しやすくなる。その結果、画像再現性や耐刷性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。支持体の凸部面積と凹部面積との総和は、240μm2以下がより好ましく、180μm2以下がさらに好ましい。一方、支持体の凸部面積と凹部面積との総和が30μm2以上であると、研磨処理を施すことなく、圧延のみで製造することが可能であるため、支持体の生産性向上の点で、支持体の凸部面積と凹部面積との総和は30μm2以上が好ましい。前述のとおり、従来の印刷版原版には、支持体表面の粗面化によって、画像再現性や耐刷性が低下しやすく、印刷ムラが発生しやすくなる課題があったが、本発明においては、後述のようにプライマー層表面を平滑化することにより、支持体の凸部面積と凹部面積との総和が30μm2以上の場合に本発明の効果がより顕著に奏される。支持体の凸部面積と凹部面積との総和は、45μm2以上がより好ましく、60μm2以上がさらに好ましい。
【0022】
本発明における支持体の基準高さと支持体との関係について、
図1を用いて説明する。
図1は従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。支持体1がアルミニウム合金板である場合、その表面には、圧延時に形成される圧延目や、化学的、物理的または電気化学的な研磨処理により形成された凹凸が存在することが一般的である。本発明においては、下記のようにして求めた支持体表面が平滑であると仮定した場合の支持体の表面位置の高さを支持体の基準高さc0と定義し、支持体の基準高さc0よりもプライマー層2側に突出した部分を支持体の基準高さよりも突出した部分c1、支持体の基準高さc0よりもプライマー層2とは反対側に陥没した部分を支持体の基準高さよりも陥没した部分c2とそれぞれ表す。ここで、印刷版原版の断面SEM画像において、断面SEM画像の支持体部分の面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さとすることにより、支持体の基準高さc0を求めた。詳細は後述する。
【0023】
支持体の凸部面積と凹部面積との総和は、印刷版原版の断面をSEM観察することにより求めることができる。より詳しくは、印刷版原版を、幅方向の位置が異なる30箇所がそれぞれ試料のほぼ中心となるように10mm×10mmサイズの30枚の試料に断裁する。ここで、幅方向の位置が異なる30箇所は次のように選択する。印刷版原版の幅方向の一方の端から100mmの箇所を1箇所目、他方の端から100mmの箇所を30箇所目とし、1箇所目と30箇所目の間の長さを29等分した長さに位置する点をそれぞれ2~29箇所目とする。例えば、幅1070mmの印刷版原版の場合、幅方向の一方の端から100mmの箇所が1箇所目、970mmの箇所が30箇所目となり、間の870mmを29等分した長さ(30mm)に位置する点が2~29箇所目となる。具体的には、印刷版原版の幅方向の一方の端からそれぞれ、100、130、160、190、220、250、280、310、340、370、400、430、460、490、520、550、580、610、640、670、700、730、760、790、820、850、880、910、940および970mmの箇所の計30箇所となる。断裁後の30枚の各試料をそれぞれ樹脂包埋した後、BIB法によりアルミ基板の圧延目に対して垂直方向の断面を作製し、観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料を作製する。得られた断面観察用の試料を、観測条件:反射電子像、加速電圧:3.0kV、倍率:5,000倍の条件で、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。得られた30箇所の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、支持体の基準高さの線を引く。支持体の基準高さは、断面SEM画像における支持体部分の面積を、各断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さ(ただし、SEM画像中に支持体の底辺が観察される場合は支持体の底辺からの高さ)とすることにより求めることができる。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置する支持体の幅25μm分について、凸部面積と凹部面積の合計を算出し、断面SEM画像30枚分の凸部面積と凹部面積の合計値を全て合計することにより、断面における支持体の幅750μmの範囲において、凸部面積と凹部面積との総和を求めることができる。
【0024】
支持体の凸部面積と凹部面積との総和を前述の範囲にする手段としては、例えば、圧延時に圧延目を形成する方法、化学的、物理的または電気化学的に研磨処理する方法などが挙げられる。
【0025】
支持体表面には、コロナ放電処理やグロー放電処理などの表面処理を施してもよく、支持体とプライマー層との接着力を高めることができる。
【0026】
次に、プライマー層について説明する。
【0027】
本発明の一態様におけるプライマー層は、その表面における最大山高さが0.5μm以下である。プライマー層の表面における最大山高さを0.5μm以下とすることにより、画像再現性や耐刷性を向上させ、印刷ムラを抑制することができる。プライマー層の表面の平滑化により画像再現性や耐刷性が向上し、印刷ムラが抑制される理由は明確ではないが、プライマー層の表面における最大山高さが0.5μm以下の平滑なプライマー層上に感熱層を設けることにより、感熱層表面の凸部に印刷時の応力が集中しにくくなることから耐刷性が向上するものと推察される。また、かかる平滑なプライマー層上に感熱層を設けることにより、感熱層の薄膜箇所が発生しにくくなることから、画像再現性が向上し、印刷ムラが抑制されるものと推測される。プライマー層の表面における最大山高さは、0.4μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。
【0028】
本発明におけるプライマー層の表面における最大山高さについて、
図2を用いて説明する。
図2は従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。前述のとおり、支持体1がアルミニウム合金板である場合、その表面には凹凸が存在する。支持体1上にプライマー層2を形成する方法としては、プライマー層形成用組成物を塗布する方法が一般的に用いられるが、表面に凹凸が存在する支持体1上に高粘度のプライマー層形成用組成物を塗布すると、レベリング前に乾燥や硬化により、プライマー層2の表面にも支持体表面の凹凸に由来する凹凸が形成される。本発明においては、プライマー層2の基準高さa0(下記のようにして求めた、プライマー層が、プライマー層形成用組成物が完全にレベリングして形成されたと仮定した場合のプライマー層の表面位置の高さ)から最凸部の山頂までの高さをプライマー層の表面における最大山高さa3と定義する。また、後述するプライマー層の平均厚みをa1、プライマー層の最薄部の厚みをa2、感熱層の平均厚みをb1、感熱層の最薄部の厚みをb2とする。ここで、印刷版原版の断面SEM画像において、断面SEM画像の支持体部分とプライマー層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより、支持体とプライマー層の合計の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さとすることにより、プライマー層の基準高さa0を求めた。詳細は後述する。
【0029】
一方、
図3は本発明の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。表面に凹凸が存在する支持体1上に、例えば、レベリング性に優れた低粘度のプライマー層形成用組成物を塗布することにより、プライマー層形成用組成物が乾燥や硬化の前に支持体1の表面にレベリングするため、プライマー層2の表面が平滑となる。ここでは、プライマー層2の基準高さa0とプライマー層2の表面との差が小さいことが好ましく、
図3においてはこれらが一致する。さらに表面が平滑なプライマー層2の上に感熱層3を設けることにより、感熱層3の表面も平滑となる。
【0030】
プライマー層の表面における最大山高さは、印刷版原版の断面をSEM観察することにより求めることができる。より詳しくは、印刷版原版を樹脂包埋した後、BIB法により断面を作製する。このとき、支持体が圧延目を有する場合は、圧延目に対して垂直方向の断面を作製する。観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料とする。得られた断面観察用の試料を、観測条件:反射電子像、加速電圧:3.0kV、倍率:10~30,000倍(プライマー層の厚みにより適宜選択)の条件で、走査型電子顕微鏡を用いて観察する。幅方向で無作為に選択した30箇所について断面SEM観察を行い、得られた30箇所全ての断面SEM画像において、プライマー層の表面における山高さを求め、このうち山高さが最も高い部分をプライマー層の表面における最大山高さとする。各断面SEM画像におけるプライマー層の基準高さは、断面SEM画像の支持体部分とプライマー層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより、支持体とプライマー層の合計の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さとすることにより求めることができる。また、各断面SEM画像におけるプライマー層の表面の山高さは、上述の方法により求めたプライマー層の基準高さから断面SEM画像におけるプライマー層の最凸部の山頂までの高さを測長することにより求めることができる。
【0031】
プライマー層の表面における最大山高さを0.5μm以下にする手段としては、例えば、前述の表面が平滑な支持体上にプライマー層形成用組成物を塗布する方法、プライマー層形成用組成物の粘度を低粘度化してレベリング性を高める方法、プライマー層形成用組成物に高沸点溶剤を用いてレベリング時間を確保する方法、プライマー層形成用組成物を塗布してから加熱するまでの間に十分な時間をとってレベリング時間を確保する方法、プライマー層を厚膜化する方法などが挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0032】
プライマー層の平滑性の別の指標として、本発明においては、印刷版原版の断面において、プライマー層の基準高さを設定し、基準高さに対するプライマー層の凹凸に着目した。本発明の一態様において、印刷版原版の断面におけるプライマー層の幅750μmの範囲において、プライマー層の基準高さよりもプライマー層が突出した部分の面積の合計(以下、「凸部面積」と略記する場合がある)とプライマー層の基準高さよりもプライマー層が陥没した部分の面積の合計(以下、「凹部面積」と略記する場合がある)との総和が0~60μm2である。
【0033】
ここで、プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和は、後述のように印刷版原版の断面をSEM観察して求めることができる。なお、本発明においては、プライマー層の凸部面積と凹部面積の測定バラツキを十分に抑制してプライマー層表面の平滑性を適切に評価するため、観察範囲をプライマー層の幅750μmの範囲に設定した。
【0034】
プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和を0~60μm2とすることにより、画像再現性や耐刷性を向上させ、印刷ムラを抑制することができる。プライマー層表面の平滑化により画像再現性が向上し、印刷ムラが抑制される理由については、プライマー層の最大山高さと同様に推察される。プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和は、48μm2以下が好ましく、36μm2以下がより好ましい。
【0035】
本発明におけるプライマー層の基準高さとプライマー層との関係について、
図4を用いて説明する。
図4は従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。前述のとおり、支持体1がアルミニウム合金板である場合、その表面には凹凸が存在し、かかる支持体1上に高粘度のプライマー層形成用組成物を塗布すると、プライマー層2の表面にも支持体表面の凹凸に由来する凹凸が形成される。本発明においては、前述のプライマー層の基準高さa0に対して、プライマー層の基準高さa0よりも感熱層3側に突出した部分をプライマー層の基準高さよりも突出した部分a4、プライマー層の基準高さa0よりも支持体1側に陥没した部分をプライマー層の基準高さよりも陥没した部分a5とそれぞれ表す。
【0036】
一方、
図3に示す本発明の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図においては、プライマー層2の表面が平滑となり、プライマー層2の基準高さa0とプライマー層2の表面が一致する。すなわち、プライマー層の基準高さよりも突出した部分も陥没した部分も存在しないことから、
図3においては、凸部面積と凹部面積の総和は0となる。
【0037】
プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和を0~60μm2にする手段としては、例えば、表面が平滑な支持体上にプライマー層形成用組成物を塗布する方法、プライマー層形成用組成物の粘度を低粘度化してレベリング性を高める方法、プライマー層形成用組成物に高沸点溶剤を用いてレベリング時間を確保する方法、プライマー層形成用組成物を塗布してから加熱するまでの間に十分な時間をとってレベリング時間を確保する方法、プライマー層を厚膜化する方法などが挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0038】
断面におけるプライマー層の幅750μmの範囲において、プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点の数(以下、「交点の数」と略記する場合がある)は、0~600であることが好ましい。交点の数が600以下であれば、プライマー層の突出箇所、すなわち感熱層の薄膜箇所が少なくなるため、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。交点の数は、450以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。なお、本発明においては、プライマー層の交点の数の測定バラツキを十分に抑制してプライマー層表面の平滑性を適切に評価するため、観察範囲をプライマー層の幅750μmの範囲に設定した。
【0039】
本発明におけるプライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点について、
図5を用いて説明する。
図5は直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。前述のプライマー層の基準高さa0と、プライマー層2と感熱層3との界面を表す線とが交わる点を、プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点a6と表す。
【0040】
一方、
図3に示す本発明の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図においては、プライマー層2の基準高さa0と、プライマー層と感熱層との界面を表す線とが一致する。すなわち、プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点の数は、0となる。
【0041】
プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和と交点の数は、印刷版原版の断面をSEM観察することにより求めることができる。より詳しくは、支持体の凸部面積と凹部面積との総和を求める場合と同様に、幅方向の位置が異なる10mm×10mmの大きさの印刷版原版の試料を30枚断裁し、それぞれ樹脂包埋した後、BIB法によりアルミ基板の圧延目に対して垂直方向の断面を作製し、観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料を作製する。得られた断面観察用の試料を、観測条件:反射電子像、加速電圧:3.0kV、倍率:5,000倍の条件で、走査型電子顕微鏡を用いて観察する。得られた30箇所の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、プライマー層の基準高さの線を引く。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置するプライマー層の幅25μm分について、凸部面積と凹部面積の合計を算出し、プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点の数を計数する。それぞれについて、断面SEM画像30枚分の値を全て合計することにより、凸部面積と凹部面積の総和と交点の数を求めることができる。
【0042】
交点の数を0~600にする手段としては、例えば、前述の支持体の凸部面積と凹部面積との総和を前述の範囲にする手段や、プライマー層の最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和を前述の範囲にする手段として挙げられた方法などが挙げられる。
【0043】
プライマー層の平均厚みは、2~500μmが好ましい。平均厚みが2μm以上であれば、支持体表面の凹凸の影響を抑え、プライマー層の表面をより平滑にすることができる。また、良好な隠蔽性や耐傷性が得られる。プライマー層の平均厚みは、4μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。一方、プライマー層の平均厚みが500μm以下であれば、塗工時のプライマー層形成用組成物の垂れ落ちを抑制することができ、また、塗布後のプライマー層形成用組成物から溶剤が効率良く揮発するため、表面をより平滑化することができる。プライマー層の平均厚みは、400μm以下が好ましく、300μm以下がさらに好ましい。プライマー層の平均厚みは、断面SEM観察により測定できる。より詳しくは、プライマー層の表面における最大山高さの測定と同様にして断面SEM観察を行い、得られた30箇所の断面SEM画像のうち、無作為に選択した20箇所についてその厚みを測長し、その算術平均値を算出することにより求めることができる。
【0044】
プライマー層の最薄部厚みは、1μm以上が好ましい。プライマー層の最薄部厚みを1μm以上とすることにより、後述する平版印刷版の製造方法において、レーザー光の照射により発生した熱が支持体への伝導することを抑制できるため、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。プライマー層の最薄部厚みは、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。プライマー層の最薄部厚みは、断面SEM観察により求めることができる。より詳しくは、プライマー層の表面における最大山高さの測定と同様にして断面SEM観察を行い、得られた30箇所全ての断面SEM画像のうち、プライマー層が最も薄い部分の厚みを測長することにより求めることができる。
【0045】
プライマー層の最薄部厚みを1μm以上にする手段としては、例えば、プライマー層を厚膜化する方法などが挙げられる。
【0046】
本発明において、プライマー層の光透過率は、400~650nmの全ての波長において15%以下であることが好ましい。プライマー層の光透過率が15%以下であれば、機械検版が可能となる。プライマー層の光透過率は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0047】
プライマー層の光透過率は、例えば可視分光光度計を用いて測定できる。支持体が透明な場合には透過法により測定することができ、また支持体が不透明な場合には反射法により測定することができる。このような可視分光光度計としては、日立製作所製U-3210自記分光光度計が挙げられる。
【0048】
次に、本発明の印刷版原版における感熱層について説明する。
【0049】
感熱層としては、これまでに直描型水なし平版印刷版用の感熱層として開示された、熱溶解型、熱膨張型、熱破壊型、熱分離型、熱硬化型の感熱層などが挙げられる。
【0050】
[熱溶解型感熱層]
熱溶解型感熱層は、印刷版原版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、レーザー光の照射により発生する熱によって、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー光照射部の感熱層は、現像後も大部分が残存する。熱溶解型感熱層としては、例えば、活性水素を有するポリマー、架橋剤および光熱変換物質を含む組成物やその希釈液、活性水素を有するポリマー、有機錯化合物および光熱変換物質を含む組成物やその希釈液を、塗布し、(加熱)乾燥して得られる層が挙げられる。活性水素を有するポリマーとしては、p-ヒドロキシスチレンの単独重合体または共重合体、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などのフェノール性水酸基を有するポリマーが好ましい。架橋剤としては、例えば、有機錯化合物、多官能イソシアネート、多官能ブロックドイソシアネート、多官能エポキシ化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルデヒド、多官能メルカプト化合物、多官能アルコキシシリル化合物、多官能アミン化合物、多官能カルボン酸、多官能ビニル化合物、多官能ジアゾニウム塩、多官能アジド化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。有機錯化合物としては、例えば、Al(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)、Zr(IV)のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体などが挙げられる。光熱変換物質としては、例えば、赤外線または近赤外線を吸収する染料や顔料などが挙げられる。熱溶解型感熱層の具体例としては、例えば、特開平11-221977号公報、特開2004-334025号公報、特開2005-309126号公報、特開2009-014946号公報に記載の感熱層などを挙げることができる。
【0051】
[熱膨張型感熱層]
熱膨張型感熱層の具体例としては、例えば、特開2005-300586号公報、特開2005-331924号公報に記載の気泡を有する感熱層や、国際公開第2010/113989号に記載の液泡を有する感熱層などが挙げられる。
【0052】
感熱層に気泡や液泡を有する高感度の印刷版原版は、露光後に物理的な力を加えるだけで現像することができる。このため、印刷版を製造する工程において、露光部のシリコーンゴム層が浮き上がる「火膨れ」と呼ばれる現象が生じる場合がある。「火膨れ」は、露光阻害や現像阻害などの原因となるが、印刷版原版が高感度であるほど、また、露光量が多くなるほど起こりやすくなる。
【0053】
このような火膨れ現象を抑制するための熱膨張型感熱層の具体例としては、例えば、特開2012-93728号公報、特開2012-133321号公報、特開2012-133322号公報、国際公開第2012/043282号などに記載の非感光性粒子を含む感熱層や、国際公開第2012/099003号に記載のノボラック樹脂、ポリウレタンならびに光熱変換物質を少なくとも含有し、かつ、少なくともノボラック樹脂を含む相と、ポリウレタンを含む相とを有する相分離構造を有する感熱層などを挙げることができる。
【0054】
[熱破壊型感熱層]
熱破壊型感熱層とは、レーザー光の照射により熱破壊するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、表面のシリコーンゴム層が破壊された感熱層と一緒に除去され画線部となる。熱破壊型感熱層の具体例としては、例えば、特開平7-314934号公報や特開平9-086065号公報、特開平9-131981号公報、米国特許第5,353,705号明細書、米国特許第10,011,137号明細書に記載の感熱層などを挙げることができる。
【0055】
[熱分離型感熱層]
熱分離型感熱層とは、下記画像形成システムにおいて、印刷パターンが形成される第2の層である。該画像形成システムとは、第1の層およびこれに付着された第2の層を含み、これら第1の層と第2の層がインキおよびインキ忌避性液体からなる群より選ばれる少なくとも1つの印刷液体に対して異なる親和性を有する印刷部材を加熱して、第2の層を実質的に融除することなしに、第1の層を第2の層からイメージに関連するパターンでもって不可逆的に分離させる画像形成システムや、第1の層と、この第1の層の下側に付着して配置された第2の層と、この第2の層の下側に配置された第3の層とを含み、前記第1の層と第2の層および第3の層の少なくとも一方とがインキおよびインキ忌避性液体からなる群より選ばれる少なくとも1つの印刷液体に対して異なる親和性を有する印刷部材を加熱して、第2の層を融除することなしに、第1の層を第2の層からイメージに関連するパターンでもって不可逆的に分離させる画像形成システムである。熱分離型感熱層の具体例としては、例えば、米国特許第6,107,001号明細書に記載の感熱層などを挙げることができる。
【0056】
[熱硬化型感熱層]
熱硬化型感熱層とは、レーザー光の照射により発生する熱で熱活性化架橋剤による架橋構造が形成されるタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部のシリコーンゴム層が除去される。レーザー光未照射部の感熱層は現像後も残存する。熱硬化型感熱層の具体例としては、例えば、特開平11-157236号公報や、特開平11-240271号公報に記載の熱硬化型感熱層などを挙げることができる。
【0057】
これら感熱層の中では、高感度であり、画像再現性により優れ、印刷ムラをより抑制することができる点で、熱溶解型、熱膨張型または熱破壊型の感熱層が好ましい。中でも、露光部の感熱層が製版工程で除去される熱破壊型の感熱層を用いた場合、現像後の画線部染色を必要とせずに検版が可能となる点で、より好ましい。
【0058】
感熱層の平均厚みは、0.5~2.0μmが好ましい。感熱層の平均厚みを0.5μm以上とすることにより、発熱効率を高めることができ、画像再現性や感度をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。一方、感熱層の平均厚みを2.0μm以下とすることにより塗布膜からの溶剤揮発が容易となり、また、熱破壊型感熱層の場合には、感熱層下部までの熱破壊が容易になることから、画像再現性や検版性をより向上させることができる。
【0059】
感熱層の最薄部の厚みは、0.2μm以上が好ましい。感熱層の最薄部の厚みを0.2μm以上とすることにより、発熱効率を高めることができ、画像再現性や感度をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。感熱層の最薄部の厚みは、0.3μm以上が好ましく、0.4μm以上がさらに好ましい。
【0060】
感熱層の平滑性の指標として、本発明においては、印刷版原版の断面において、感熱層の基準高さを設定し、基準高さに対する感熱層の凹凸に着目した。印刷版原版の断面における感熱層の幅750μmの範囲において、感熱層の基準高さよりも感熱層が突出した部分の面積の合計(以下、「凸部面積」と記載する場合がある)と感熱層の基準高さよりも感熱層が陥没した部分の面積の合計(以下、「凹部面積」と記載する場合がある)との総和は0~30μm2が好ましい。感熱層の凸部面積と凹部面積の総和を30μm2以下とすることにより、耐刷性をより向上させることができる。感熱層の凸部面積と凹部面積との総和は24μm2以下がより好ましく、18μm2以下がさらに好ましい。ここで、感熱層の凸部面積と凹部面積との総和は、後述のように印刷版原版の断面をSEM観察して求めることができる。なお、本発明においては、感熱層の凸部面積と凹部面積の測定バラツキを十分に抑制して感熱層表面の平滑性を適切に評価するため、観察範囲を感熱層の幅750μmの範囲に設定した。
【0061】
本発明における感熱層の基準高さと感熱層との関係について、
図6を用いて説明する。
図6は従来公知の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図であり、下から支持体1、プライマー層2、感熱層3、シリコーンゴム層4を有する。プライマー層2上に感熱層3を形成する方法としては、感熱層形成用組成物を塗布する方法が一般的に用いられるが、表面に凹凸が存在するプライマー層2上に感熱層形成用組成物、特に高粘度の感熱層形成用組成物を塗布すると、レベリング前に乾燥や硬化により、感熱層3の表面にもプライマー層表面の凹凸に由来する凹凸が形成されやすい。本発明においては、下記のようにして求めた、感熱層形成用組成物が完全にレベリングして感熱層が形成されたと仮定した場合の感熱層の表面位置の高さを感熱層3の基準高さb0と定義し、感熱層の基準高さb0よりもシリコーンゴム層4側に突出した部分を感熱層の基準高さよりも突出した部分b3、感熱層の基準高さb0よりもプライマー層2側に陥没した部分を感熱層の基準高さよりも陥没した部分b4とそれぞれ表す。ここで、印刷版原版の断面SEM画像において、断面SEM画像の支持体部分、プライマー層部分および感熱層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体、プライマー層および感熱層の合計の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さとすることにより、感熱層3の基準高さb0を求めた。詳細は後述する。
【0062】
一方、
図3に示す本発明の直描型水なし平版印刷版原版の一例を示す断面模式図においては、プライマー層2の表面が平滑となる。表面が平滑なプライマー層2上に、例えば、レベリング性に優れた低粘度の感熱層形成用組成物を塗布することにより、感熱層形成用組成物が乾燥や硬化の前にプライマー層2の表面にレベリングするため、感熱層3の表面も平滑となり、感熱層3の基準高さb0と感熱層3の表面とが一致する。すなわち、感熱層の基準高さよりも突出した部分も陥没した部分も存在しないことから、
図3においては、凸部面積と凹部面積の総和は0となる。
【0063】
感熱層の凸部面積と凹部面積の総和は、印刷版原版の断面をSEM観察することにより求めることができる。より詳しくは、支持体の凸部面積と凹部面積との総和を求める場合と同様に、幅方向の位置が異なる10mm×10mmの大きさの印刷版原版の試料を30枚断裁し、それぞれ樹脂包埋した後、BIB法によりアルミ基板の圧延目に対して垂直方向の断面を作製し、観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料を作製する。得られた断面観察用の試料を、観測条件:反射電子像、加速電圧:3.0kV、倍率:5,000倍の条件で、走査型電子顕微鏡を用いて観察する。得られた30箇所の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、感熱層の基準高さの線を引く。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置する感熱層の幅25μm分について、凸部面積と凹部面積の合計を算出し、断面SEM画像30枚分の値を全て合計することにより、凸部面積と凹部面積との総和を求めることができる。
【0064】
感熱層の凸部面積と凹部面積との総和を0~30μm2にする手段としては、例えば、表面が平滑なプライマー層上に感熱層形成用組成物を塗布する方法、感熱層形成用組成物の粘度を低粘度化してレベリング性を高める方法、感熱層形成用組成物に高沸点溶剤を用いてレベリング時間を確保する方法、感熱層形成用組成物を塗布してから加熱するまでの間に十分な時間をとってレベリング時間を確保する方法、感熱層を厚膜化する方法などが挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0065】
シリコーンゴム層としては、これまでに水なし平版印刷版用のインキ反発層として開示された付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のシリコーンゴム層などが挙げられる。
【0066】
付加反応型、縮合反応型または付加反応-縮合反応併用型のシリコーンゴム層としては、例えば、特開2021-66175号公報においてジオルガノシロキサン単位含有層として例示された層、国際公開第2019/203261号においてシリコーンゴム層として例示された層、国際公開第2019/203263号において第1のシリコーン層として例示された層などが挙げられる。
【0067】
シリコーンゴム層は、硬質ドメインを含むことが好ましく、耐刷性や耐傷性をより向上させることができる。シリコーンゴム層中における硬質ドメインの有無は、先端鋭利な探針を用いて極僅かな荷重にて分析を行う原子間力顕微鏡を用いたフォースボリューム法により分析することができる。先端曲率半径が5~20nmのシリコン製または窒化珪素製の探針を使用し、1~20nNの荷重で分析することにより、下層や支持体の影響を排除したシリコーンゴム層の最表面のみの正確な弾性率を測定することができる。フォースボリューム法は、探針(カンチレバー)を垂直移動させ、層表面に押し当ててから離す、という一連の動作を繰り返しながら探針を2次元走査する方法である。その際、1サイクル毎にフォースカーブを取得しているため、その解析により弾性率などの力学物性のマッピングを調べることができる。本発明においては、得られた走査範囲内での全測定点における弾性率をマッピングして全体を100面積%とした際、10MPa以下の低弾性率の海部分中の100MPa以上の高弾性率の島部分の存在率が0.5面積%未満の場合を、硬質ドメインの含有なしと判断し、100MPa以上の高弾性率の島部分の存在率が0.5面積%以上の場合を、硬質ドメインの含有ありと判断する。
【0068】
硬質ドメインは、架橋剤の反応凝集物を主成分とするものである。付加反応型シリコーンゴム層用の架橋剤としては、例えば、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物などが挙げられる。縮合反応型シリコーンゴム層用の架橋剤としては、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。付加反応-縮合反応併用型シリコーンゴム層用の架橋剤としては、例えば、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0069】
シリコーンゴム層の平均厚みは、2~20μmが好ましい。シリコーンゴム層の平均厚みを2μm以上とすることにより、インキ反発性や耐傷性、耐刷性をより向上させることができる。シリコーンゴム層の平均厚みは、2.5μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、3.2μm以上がさらに好ましい。一方、シリコーンゴム層の平均厚みを20μm以下とすることにより、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。シリコーンゴム層の平均厚みは、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、4.8μm以下がさらに好ましい。シリコーンゴム層の平均厚みは断面SEM観察により測定することができ、前述したプライマー層の平均厚みの測定方法と同様の方法により求めることができる。
【0070】
また、シリコーンゴム層には、25℃における表面張力が30mN/m以下の液体を含んでもよく、インキ反発性を向上させることができる。25℃における表面張力が30mN/m以下の液体としては、例えば、国際公開第2016/076286号などに記載の液体などが挙げられる。
【0071】
本発明に係る印刷版原版は、シリコーンゴム層上に、カバーフィルムおよび/または合紙をさらに有してもよく、シリコーンゴム層表面を保護することができる。
【0072】
カバーフィルムとしては、厚み100μm以下のフィルムが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどのフィルムが挙げられる。
【0073】
合紙としては、秤量30~90g/m2のものが好ましい。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m2(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m2(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m2(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m2(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m2(王子製紙(株)製)、クルパック73g/m2(王子製紙(株)製)などが挙げられる。
【0074】
次に、本発明に係る印刷版原版の製造方法について説明する。
【0075】
本発明に係る印刷版原版の製造方法は、少なくとも、
(1)支持体上に、プライマー層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥/硬化することによりプライマー層を得る工程、および、
(2)工程(1)により得られたプライマー層上に、感熱層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥/硬化することにより感熱層を得る工程、および、
(3)工程(2)により得られた感熱層上に、シリコーンゴム層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥/硬化することによりシリコーンゴム層を得る工程
を有することが好ましい。
【0076】
プライマー層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、スリットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、ダイレクトロールコーター、リバースロールコーター、ワイヤーバーコーターなどを用いた方法が挙げられる。これらの中でも、密閉系塗工方式であるスリットダイコーターやリップコーターを用いた塗布が好ましい。
【0077】
加熱する場合、加熱装置としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などが挙げられる。加熱温度は50~200℃が好ましく、加熱時間は30秒間~10分間が好ましい。
【0078】
感熱層形成用組成物の塗布方法としては、プライマー層形成用組成物の塗布方法として例示した方法が挙げられ、密閉系塗工方式であるスリットダイコーターやリップコーターを用いた塗布が好ましい。
【0079】
加熱する場合、加熱条件の好ましい態様は、プライマー層の加熱条件と同様である。
【0080】
シリコーンゴム層形成用組成物の塗布方法としては、プライマー層形成用組成物の塗布方法として例示した方法が挙げられ、密閉系塗工方式であるスリットダイコーターやリップコーターを用いた塗布が好ましい。塗布に際しては、感熱層表面に付着した水分を可能な限り除去することが、接着性を向上させる点で好ましい。
【0081】
加熱する場合、加熱条件の好ましい態様は、プライマー層の加熱条件と同様である。
【0082】
次に、本発明に係る印刷版原版の製造方法において好適に用いられる、プライマー層形成用組成物について説明する。
【0083】
本発明におけるプライマー層形成用組成物は、ポリウレタン、活性水素基含有芳香族化合物および金属キレート化合物を含むことが好ましい。
【0084】
ポリウレタンは、一般的に、ポリイソシアネートと多価アルコールの反応により得られる。ポリイソシアネートとしては、例えば、パラフェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0085】
ポリウレタンの含有量は、プライマー層形成用組成物の全固形分中の10~75質量%が好ましい。ここで、プライマー層形成用組成物の全固形分とは、プライマー層形成用組成物を塗布し、乾燥して、揮発成分を除去した後に残存する成分を表す。他の層形成用組成物における全固形分の定義についても同様である。ポリウレタンの含有量を10質量%以上とすることにより、耐傷性を向上させることができる。一方、ポリウレタンの含有量を75質量%以下とすることにより、現像ラチチュードを広くすることができる。
【0086】
活性水素基含有芳香族化合物としては、例えば、水酸基含有芳香族化合物、アミノ基含有芳香族化合物、カルボキシル基含有芳香族化合物、チオール基含有芳香族化合物などが挙げられる。これらの中でも、水酸基含有芳香族化合物が好ましい。
【0087】
水酸基含有芳香族化合物としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物、芳香族を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0088】
フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば、ヒドロキノン、カテコール、グアヤコール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、ビスフェノール類などが挙げられる。
【0089】
芳香族を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAグリシジルエステル、その他のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエステル、その他のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールADジグリシジルエステル、その他のビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエステル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アニリンとエピクロルヒドリンを反応させたもの、フェノールとアニリンをホルムアルデヒドと共縮合させノボラックタイプの樹脂をエポキシ化させたもの、トリレンジイソシアネートとグリシドールを反応させたもの等が挙げられる。
【0090】
また、活性水素基含有芳香族化合物の含有量は、プライマー層形成用組成物の全固形分中の15~50質量%が好ましい。活性水素基含有芳香族化合物の含有量を15質量%以上とすることにより、支持体や感熱層と良好に接着し、また、溶剤に対する耐性も高くなる。さらには、後述の金属キレート化合物との架橋反応が十分に進行し、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。一方、活性水素基含有芳香族化合物の含有量を50質量%以下とすることにより、未反応の活性水素基含有芳香族化合物の感熱層形成用組成物中への抽出を抑制し、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。
【0091】
金属キレート化合物としては、例えば、分子中に配位基を2個以上含み、金属との間で1個またはそれ以上の環状構造を形成可能な有機配位子が金属に配位した有機錯塩を挙げることができる。
【0092】
金属としては、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfなどが挙げられる。着色しにくい点でAlまたはZrが好ましく、反応性の点でAlがより好ましい。
【0093】
分子中に配位基を2個以上含み、金属との間で1個またはそれ以上の環状構造を形成可能な有機配位子としては、例えば、β-ジケトン類、ケトエステル類、ジエステル類、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類、ケトアルコール類、アミノアルコール類、エノール性活性水素化合物などが挙げられる。ポットライフの点で、β-ジケトン類、ケトエステル類が好ましく、反応性の点で、ケトエステル類がより好ましい。
【0094】
β-ジケトン類、ケトエステル類の具体的な化合物としては以下のようなものが挙げられる。
【0095】
(1)β-ジケトン類:2,4-ペンタンジオン、2,4-ヘプタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン等。
【0096】
(2)ケトエステル類:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル等。
【0097】
本発明に用いられる金属キレート化合物としては、Alにケトエステル類が2個以上配位したアルミキレート化合物が好ましい。ケトエステル類が2個以上配位することにより、プライマー層形成用組成物中における架橋反応を抑制し、プライマー層形成用組成物の粘度を後述する好ましい範囲にすることができ、プライマー層の表面をより平滑化することができる。また、プライマー層形成用組成物のポットライフが飛躍的に改善される。一方、加熱時には活性水素含有化合物との間で容易に配位子を交換して架橋反応を起こすため、硬化性に優れ、かつアルミキレート化合物そのものの昇華や蒸発も抑えられる。
【0098】
金属キレート化合物の含有量は、プライマー層形成用組成物の全固形分中の1~30質量%が好ましい。金属キレート化合物の含有量を1質量%以上とすることにより、支持体や感熱層と良好に接着し、また、溶剤に対する耐性も高くなる。さらには、前述の活性水素基含有芳香族化合物との架橋反応が十分に進行し、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。金属キレート化合物の含有量は、2質量%以上がより好ましい。一方、金属キレート化合物を30質量%以下とすることにより、未反応の金属キレート化合物の感熱層形成用組成物中への抽出を抑制することができる。金属キレート化合物の含有量は、20質量%以下がより好ましい。
【0099】
本発明におけるプライマー層形成用組成物には、顔料を含むことが好ましい。顔料を含むことにより、プライマー層の光透過率を400~650nmの全ての波長に対して15%以下とすることが可能となる。これにより、機械読み取りによる検版性が向上する。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料、有機黄色顔料などが好ましい。有機黄色顔料としては、アセト酢酸アリライド系モノアゾ顔料、アセト酢酸アリライド系ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料等のアゾ顔料やイソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、金属錯体顔料、アントラピリミジン系顔料、アシルアミノイエロー系顔料、キノフタロン系顔料、フラバントロン系顔料等の多環式顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力および着色力の点から酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンは、分散性や耐候性の向上を目的に、表面が含水アルミナ、シリカ、含水チタニア、含水ジルコニアなどによって処理されていてもよい。これら表面処理を施した酸化チタンの表面は、さらにチタネート系カップリング剤などの顔料分散剤によって処理されていてもよい。かかる処理によりフィラー効果がより抑制され、プライマー層形成用組成物の増粘をより抑制して粘度を低く維持することができるため、プライマー層の表面をより平滑化することができる。また、酸化チタンの分散性が向上するため、酸化チタン粒子の含有率を高めることが可能となる。さらに、プライマー層形成用組成物中における酸化チタン粒子の分散安定性が良好になる。
【0100】
酸化チタンの粒子径は、一次粒子径が0.2~0.4μmが好ましい。一次粒子径が0.2μm以上であれば、隠蔽性を向上させることができる。一方、一次粒子径が0.4μm以下であれば、自然沈降しにくく、分散が安定したプライマー層形成用組成物溶液が得られ、光沢のある良好な塗膜を得ることができる。
【0101】
顔料の含有量は、プライマー層形成用組成物の全固形分中の2~30体積%が好ましい。顔料の含有量を2体積%以上とすることにより、良好な隠蔽性能が得られる。一方、顔料の含有量を30体積%以下とすることにより、良好な塗工性能を示し、耐傷性、耐刷性、画像再現性をより向上させることができる。
【0102】
本発明におけるプライマー層形成用組成物には、レベリング性をより向上させてプライマー層の表面をより平滑化する目的で、アルキルエーテル類(例えばエチルセルロース、メチルセルロースなど)、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを含有することが好ましい。
【0103】
プライマー層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含むことにより、プライマー層形成用組成物の粘度を大きく下げることができるため、レベリング性が向上し、プライマー層の表面がより平滑化する。
【0104】
プライマー層形成用組成物に用いられる溶剤としては、ポリウレタン、活性水素基含有芳香族化合物、金属キレート化合物およびその他の添加物を良く溶かす性質を有することが好ましい。また、顔料を添加する場合には、顔料表面を良く濡らし、良好な顔料分散性が得られる溶剤を選択することが好ましい。溶剤を2種以上含んでもよい。
【0105】
プライマー層形成用組成物の粘度は、液温25℃において3~100mPa・sが好ましい。液温25℃における粘度は、プライマー層形成時のプライマー層形成用組成物の状態を表す指標である。プライマー層形成用組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、塗工時のプライマー層形成用組成物の垂れ落ちやビード切れが抑制され、プライマー層の表面をより平滑化し、プライマー層の表面における最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和をより小さくすることができる。プライマー層形成用組成物の粘度は、5mPa・s以上がより好ましい。一方、プライマー層形成用組成物の粘度を100mPa・s以下とすることにより、支持体表面でレベリングしやすくなり、プライマー層の表面をより平滑化してプライマー層の表面における最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和をより小さくすることができる。プライマー層形成用組成物の粘度は、50mPa・s以下がより好ましい。
【0106】
プライマー層形成用組成物の液温25℃における粘度は、回転粘度計により測定することができる。
【0107】
プライマー層形成用組成物の液温25℃における粘度は、例えば、プライマー層形成用組成物の固形分濃度を調節することにより、前述の範囲にすることができる。
【0108】
プライマー層形成用組成物の固形分濃度は、プライマー層形成用組成物の液温25℃における粘度を前述の範囲にする観点から、1~5質量%が好ましい。固形分濃度を1質量%以上とすることにより、表面をより平滑化してプライマー層の表面における最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和をより小さくすることができる。プライマー層形成用組成物の固形分濃度は、2質量%以上がより好ましい。一方、固形分濃度を5質量%以下とすることにより、プライマー層の表面をより平滑化してプライマー層の表面における最大山高さや凸部面積と凹部面積との総和をより小さくすることができる。プライマー層形成用組成物の固形分濃度は、4質量%以下がより好ましい。
【0109】
プライマー層形成用組成物は、例えば、容器中に酸化チタン分散液を投入して撹拌を開始した後、エポキシ樹脂およびポリウレタン溶液を少量ずつ投入して高濃度の分散液を作製し、次いで、溶剤、架橋剤およびレベリング剤を順次投入し、成分が均一になるまで撹拌する方法などにより得ることができる。
【0110】
酸化チタン分散液は、例えば、溶剤中に酸化チタンと必要によりチタネート系カップリング剤を添加し、ペイントシェイカーやボールミル、ビーズミル等の分散機により分散することにより得ることができる。
【0111】
感熱層形成用組成物としては、例えば特開2004-334025号公報、米国特許第10,011,137号などに記載された組成物が挙げられる。
【0112】
シリコーンゴム層形成用組成物としては、例えば、特開2021-66175号公報においてジオルガノシロキサン単位含有層形成用組成物として例示された組成物、国際公開第2019/203261号においてシリコーンゴム層形成用組成物として例示された組成物、国際公開第2019/203263号において第1のシリコーン層形成用組成物として例示された組成物などが挙げられる。
【0113】
硬質ドメインを含むシリコーンゴム層を形成する場合、シリコーンゴム層形成用組成物は、前述の架橋剤を含有することが好ましく、シリコーンゴム層形成用組成物の乾燥時や硬化時に、架橋剤の反応凝集物を主成分とする硬質ドメインを容易に形成することができる。
【0114】
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、オルガノハイドロポリシロキサン、オルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子内にジオルガノハイドロシロキシ基を3個以上有する化合物が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、オルガノハイドロポリシロキサンまたはオルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体が好ましい。
【0115】
オルガノハイドロポリシロキサンやオルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体の分子構造としては、直鎖状、環状、分岐状、網状などが挙げられ、いずれでもよい。また、珪素原子と結合している有機基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基が好ましい。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0116】
シリコーンゴム層形成用組成物に分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物を含有する場合、そのSiH基に由来するH基濃度は、全固形分中、0.050~0.150質量%が好ましい。かかるSiH基に由来するH基濃度を0.050質量%以上とすることにより、反応凝集物を主成分とする硬質ドメインを生成しやすくなるため、耐刷性や耐傷性をより向上させることができる。SiH基に由来するH基濃度は、0.070質量%以上がより好ましい。一方、かかるSiH基に由来するH基濃度を0.150質量%以下とすることにより、画像再現性やインキ反発性の低下を抑制することができる。SiH基に由来するH基濃度は、0.130質量%以下がより好ましい。
【0117】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、トルイルトリアセトキシシラン、キシリルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、トルイルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、キシリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、3-アクリロキシプロピルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ビニルトリアセトキシシランまたはビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランが好ましい。
【0118】
シリコーンゴム層形成用組成物にシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、全固形分中、8~38質量%が好ましい。シランカップリング剤の含有量を8質量%以上とすることにより、硬質ドメインを生成し易くなるため、耐刷性や耐傷性をより向上させることができる。シランカップリング剤の含有量は、15質量%以上がより好ましい。一方、シランカップリング剤の含有量を38質量%以下とすることにより、インキ反発性の低下を抑制することができる。シランカップリング剤の含有量は、30質量%以下がより好ましい。
【0119】
次に、印刷版原版から印刷版を製造する方法について説明する。本発明の印刷版の製造方法としては、前述の印刷版原版にレーザー光を照射し、潜像を形成する露光工程、および、潜像の画線部に対応するシリコーンゴム層を除去する現像工程を有する方法が好ましい。
【0120】
まず、露光工程について説明する。印刷版原版のシリコーンゴム層上にカバーフィルムや合紙が設けられている場合には、予めこれらを取り除くことが好ましい。
【0121】
印刷版原版を露光する方法としては、原画フィルムを用いることなく、デジタルデータに従い、近赤外線(波長:800~1,500nm)のレーザー光により印刷版原版に直接画像を書き込む方法(CTP)が挙げられる。
【0122】
露光工程における潜像の形成には、AMスクリーン180線~650線相当精度のAMスクリーンまたはAM/FM混合スクリーンを用いることが好ましい。AMスクリーン180線相当精度以上であれば、印刷物上でのモアレや線切れ、粒状感などを抑制することができる。一方、AMスクリーン650線相当精度以下であれば、画像再現性をより向上させ、印刷ムラをより抑制することができる。市販のAM/FM混合スクリーンとしては、Fairdot2-350、-650(いずれも、(株)SCREENグラフィックソリューションズ製)、Staccato-10、-20、-25、-35、-36(いずれも、コダック合同会社製)、Sublima-190、-210、-240、-280、-300、-340、-360(いずれも、アグファ・ゲバルト(株)製)などが挙げられる。
【0123】
次に、現像工程について説明する。
【0124】
露光後の印刷版原版は、液体の存在下または非存在下で摩擦することにより、露光部または未露光部のいずれかのシリコーンゴム層が除去される。印刷版原版に設けられた感熱層の種類が前述した熱溶解型、熱膨張型、熱破壊型および熱分離型のいずれかの場合には露光部のシリコーンゴム層が除去される。一方、感熱層の種類が熱硬化型の場合には未露光部のシリコーンゴム層が除去される。摩擦処理としては、例えば、(i)液体の非存在下、現像用パッド、ブラシ、乾燥木綿パッドなどで版面を擦る方法、(ii)水または界面活性剤を添加した水を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(iii)水または界面活性剤を添加した水を版面に接触させながら回転ブラシで擦る方法、(iv)高圧の水や温水または水蒸気を版面に噴射する方法などが挙げられる。界面活性剤としては、水溶液にしたときにpHが5~8になるものが好ましく、界面活性剤の含有量としては水溶液の10質量%以下であることが好ましい。このような水溶液は安全性が高く、廃棄コストなどの経済性の点でも好ましい。
【0125】
現像に先立ち、前処理液中に一定時間版を浸漬する前処理を行ってもよい。前処理液としては、例えば、水、水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。中でも、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いた前処理液が好ましい。また、前処理液中にアミン化合物や、前述した界面活性剤などを添加してもよい。
【0126】
前処理液の例としては、特開昭63-179361号公報、特開平4-163557号公報、特開平4-343360号公報、特開平9-34132号公報、国際公開第1997/017634号に記載された前処理液などを挙げることができる。前処理液の具体例としては、PP-1、PP-3、PP-F、PP-FII、PTS-1、PH-7N、CP-1、NP-1、DP-1、CP-Y、CP-X、PX(いずれも東レ(株)製)などを挙げることができる。
【0127】
また、画線部の視認性や網点の計測精度を高める目的から、現像に用いる水または界面活性剤を添加した水に、クリスタルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、アストラゾンレッドなどの染料を添加することにより、現像と同時に画線部のインキ受容層の染色を行うこともできる。さらには、現像の後に上記の染料を添加した液によって画線部のインキ受容層を染色することもできる。
【0128】
上記現像工程の一部または全部は、自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部および現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部および後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部および水洗部がこの順に設けられた装置などを使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL-650シリーズ、TWL-860シリーズ、TWL-1160シリーズ(いずれも東レ(株)製)などや、特開平4-2265号公報、特開平5-2272号公報、特開平5-6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができる。これらを単独または併用して使用することができる。
【0129】
得られた平版印刷版を積み重ねて保管する場合には、版面保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【0130】
次に、印刷物の製造方法について説明する。
【0131】
印刷物の製造方法としては、前述の印刷版、インキおよび被印刷媒体を用いることが好ましい。具体的には、印刷版のインキ着肉部表面にインキを付着させる工程と、インキ着肉部表面に付着したインキを直接またはブランケットを介して被印刷媒体に転写する工程を含むことが好ましい。
【0132】
印刷機としては公知の直刷り印刷機やオフセット印刷機を用いることができる。印刷時の水なし平版印刷版へのダメージ抑制により多くの印刷物が得られる点から、オフセット印刷機が好ましい。オフセット印刷機としては、揺動ローラーおよび/または版胴に冷却機構が備わったオフセット印刷機が耐地汚れ性を向上させる点で好ましい。
【0133】
インキとしては、公知の酸化重合型インキや活性エネルギー線硬化型インキを用いることができる。速乾により印刷後直ちに次工程へ移ることができる点で、活性エネルギー線硬化型インキの方が好ましい。また、インキは油溶性であっても水溶性であってもよいが、作業者や環境への負荷低減の点で、水溶性が好ましい。水溶性活性エネルギー線硬化型インキがより好ましい。
【0134】
本発明に好ましく用いられる水溶性活性エネルギー線硬化型インキとしては、例えば、特開2017-52817号公報、国際公開第2017/047817号、国際公開第2017/090663号などで開示された水または水系洗浄液で洗浄可能な公知の水溶性活性エネルギー線硬化型インキが挙げられる。
【0135】
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線、粒子線などが挙げられる。これらの中でも、線源の扱いやすさなどの点から紫外線や電子線が好ましい。
【0136】
インキを紫外線により硬化させる場合は、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED等の紫外線照射装置が好ましく用いられる。例えば、メタルハライドランプを用いる場合、80~150W/cm2の照度を有するランプを用いて、コンベアーにより搬送速度50~150m/分で搬送しながら硬化させることが、生産性の面から好ましい。特に、被印刷媒体としてプラスチックフィルムや金属を含む被印刷媒体を用いる場合、活性エネルギー線による発熱によって被印刷媒体が伸縮しやすくなるため、発熱の少ない電子線、またはLEDを用いた紫外線照射装置(LED-UV)を好ましく用いることができる。
【0137】
電子線により硬化させる場合は、100~500eVのエネルギー線を有する電子線照射装置が好ましく用いられる。
【0138】
被印刷媒体としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙、新聞用紙などの紙類;アルミニウムやアルミニウム合金、鉄、鋼、亜鉛、銅などの金属類;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム類;またはこれら紙類、金属類、プラスチックフィルム類の複合体(金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属、紙がラミネートされた金属またはプラスチックフィルム等)などが挙げられる。
【0139】
中でも、本発明に係る印刷物の製造方法では、被印刷面が金属またはプラスチックフィルムで構成される、合成紙、金属類、プラスチックフィルム類、金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などのインキ成分非吸収性の被印刷媒体への印刷に好適である。
【0140】
上記のうち、被印刷面がプラスチックフィルムで構成される、合成紙、プラスチックフィルム類、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などの被印刷媒体の被印刷面は、接着性向上の点で、プライマー樹脂の塗布や、コロナ放電処理、グロー放電処理などの表面処理を施してもよい。
【0141】
被印刷媒体の形状としては、枚葉状、ロール状のいずれの形状も用いることができる。軟包装用の薄膜フィルムに印刷する場合は、ロール状フィルムを用い、ロールトゥロール法により印刷することが好ましい。また、円筒状や円柱状の支持体を用いたシームレス印刷版とロール状の長尺被印刷媒体を用いてロールトゥロール法により印刷することにより、絵柄パターンに継ぎ目のない高精細な印刷物を大量生産することができる。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。各実施例・比較例における測定/評価は次の方法で行った。
【0143】
(1)支持体表面の算術平均粗さ(Ra)
各実施例および比較例に用いた支持体について、その表面の算術平均粗さ(Ra)を日本産業規格(JIS B 0601:2001)に準拠した方法で測定した。具体的には、表面粗さ測定機:“サーフコム”(登録商標)1400G((株)東京精密製)を用いて、圧延目に対して垂直方向のRaを測定した。
【0144】
(2)支持体の凸部面積と凹部面積との総和
各実施例および比較例により得られた1,170mm×854mmサイズの印刷版原版を、印刷版原版の幅方向の端から、それぞれ100、133、167、200、234、267、301、334、368、401、434、468、501、535、568、602、635、669、702、736、769、802、836、869、903、936、970、1003、1037および1070mmの箇所の計30箇所がそれぞれ試料のほぼ中心となるように10mm×10mmサイズの30枚の試料に断裁した。断裁後の30枚の各試料をそれぞれ樹脂包埋した後、BIB法によりアルミ基板の圧延目に対して垂直方向の断面を作製し、観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料を作製した。得られた断面観察用の試料から、下記条件で断面SEM観察を行った。
[断面SEM観察]
電界放出型走査電子顕微鏡:SU8020((株)日立ハイテク製)
観察条件:反射電子像
加速電圧:3.0kV
倍率:5,000倍。
【0145】
得られた30箇所の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、支持体の基準高さの線c0を引いた。各断面SEM画像において支持体部分の面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体の平均高さを算出した。得られた支持体の平均高さを断面SEM画像の底辺からの支持体の基準高さとした。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置する支持体の幅25μm分について、支持体の凸部面積と凹部面積の合計を算出し、断面SEM画像30枚分の凸部面積と凹部面積の合計値を全て合計することにより、凸部面積と凹部面積との総和(表面凹凸面積総和)を求めた。
【0146】
(3)プライマー層形成用組成物の粘度
各実施例および比較例により得られたプライマー層形成用組成物の粘度を、日本産業規格(JIS Z 8803:2011)に準拠した方法で測定した。具体的には、デジタル粘度計:DVNext(英弘精機((株))製)が設置された25℃の恒温室内で24時間静置して、組成物から脱泡し、液温を25℃にした。24時間静置後のプライマー層形成用組成物の粘度を、上記デジタル粘度計を用いて各3回測定し、その算術平均値をプライマー層形成用組成物の粘度とした。
【0147】
(4)プライマー層の凸部面積と凹部面積との総和、交点の数
前記(2)項において得られた印刷版原版の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、プライマー層の基準高さの線a0を引いた。各断面SEM画像における支持体部分とプライマー層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体とプライマー層の合計の平均高さを算出した。得られた支持体とプライマー層の合計の平均高さを断面SEM画像の底辺からのプライマー層の基準高さとした。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置するプライマー層の幅25μm分について、プライマー層の凸部面積と凹部面積の合計を算出し、断面SEM画像30枚分の凸部面積と凹部面積の合計値を全て合計することにより、凸部面積と凹部面積との総和(表面凹凸面積総和)を求めた。
【0148】
また、それぞれの断面SEM画像において、プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点の数を計数し、断面SEM画像30枚分の交点の数を全て合計することにより、交点の数を求めた。
【0149】
(5)プライマー層の平均厚み、最大山高さ、最薄部厚み
各実施例および比較例により得られた印刷版原版を樹脂包埋した後、BIB法によりアルミ基板の圧延目に対して垂直方向の断面を作製し、観察面に導電処理(Ptコート)を行い、断面観察用の試料を作製した。得られた断面観察用の試料から、幅方向で無作為に選択した30箇所について、下記条件で断面SEM観察を行った。
[断面SEM観察]
電界放出型走査電子顕微鏡:SU8020((株)日立ハイテク製)
観察条件:反射電子像
加速電圧:3.0kV
倍率:100倍~30,000倍(プライマー層の厚みにより適宜選択)。
【0150】
得られた30箇所の断面SEM画像のうち、無作為に選択した20箇所について、プライマー層厚みを測長し、その算術平均値をプライマー層の平均厚みとした。
【0151】
得られた30箇所全ての断面SEM画像のうち、プライマー層が最も薄い部分の厚みを測長し、その値をプライマー層の最薄部厚みとした。
【0152】
得られた30箇所全ての断面SEM画像において、断面SEM画像の支持体部分とプライマー層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより、支持体とプライマー層の合計の平均高さを算出し、得られた平均高さを断面SEM画像の底辺からの高さとすることにより、プライマー層の基準高さを求めた。プライマー層の基準高さから断面SEM画像におけるプライマー層の最凸部の山頂までの高さを測長してプライマー層の表面における山高さを求め、このうち山高さが最も高い部分をプライマー層の表面における最大山高さとした。
【0153】
(6)感熱層の凸部面積と凹部面積との総和
前記(2)項において得られた印刷版原版の断面SEM画像において、シリコーンゴム層と包埋樹脂との界面を表す線と平行となるように、感熱層の基準高さの線b0を引いた。各断面SEM画像における感熱層の基準高さは、断面SEM画像の支持体部分、プライマー層部分および感熱層部分の合計面積を、断面SEM画像の観測幅により除することにより支持体、プライマー層および感熱層の合計の平均高さを算出した。得られた支持体、プライマー層および感熱層の合計の平均高さを断面SEM画像の底辺からの感熱層の基準高さとした。それぞれの断面SEM画像において、画像の幅方向の中央に位置する感熱層の幅25μm分について、感熱層の凸部面積と凹部面積の合計を算出し、断面SEM画像30枚分の凸部面積と凹部面積の合計値を全て合計することにより、凸部面積と凹部面積との総和(表面凹凸面積総和)を求めた。
【0154】
(7)感熱層の平均厚み、最薄部厚み
前記(5)項において得られた30箇所の断面SEM画像のうち、無作為に選択した20箇所の感熱層厚みを測長し、その算術平均値を感熱層の平均厚みとした。
【0155】
得られた30箇所全ての断面SEM画像のうち、感熱層が最も薄い部分の厚みを測長し、その値を感熱層の最薄部厚みとした。
【0156】
(8)シリコーンゴム層の平均厚み
前記(5)項において得られた30箇所の断面SEM画像のうち、無作為に選択した20箇所のシリコーンゴム層厚みを測長し、その算術平均値をシリコーンゴム層の平均厚みとした。
【0157】
(9)シリコーンゴム層中の硬質ドメインの有無
各実施例、比較例に記載の方法で得られた印刷版原版のシリコーンゴム層中の硬質ドメインの有無を以下の分析法により評価した。
分析装置:走査型プローブ顕微鏡(SPM):NanoScopeV dimension Icon(Bruker社製)
探針:シリコンカンチレバー(ばね定数=6N/m)
先端曲率半径:8nm
荷重:5~20nN
走査モード:フォースボリューム(コンタクトモード)
走査範囲:シリコーンゴム層の任意の25μm2(縦:5μm×横:5μm)
走査範囲内での測定点:4,096点(縦:64点×横:64点)
測定環境:室温、大気中。
【0158】
得られた走査範囲内での全測定点(4,096点)における弾性率をマッピングして全体を100面積%とした際、10MPa以下の低弾性率の海部分中の100MPa以上の高弾性率の島部分の存在率が0.5面積%未満の場合を、硬質ドメインの含有なしと判断し、100MPa以上の高弾性率の島部分の存在率が0.5面積%以上の場合を、硬質ドメインの含有ありと判断した。
【0159】
(10)画像再現性
各実施例および比較例により得られた1,170mm×854mmサイズの印刷版原版をレーザー露光機:PlateRite 8900N-E(大日本スクリーン製造(株)製)に装着し、露光量:150mJ/cm2の条件で1070mm×840mmの範囲に以下に記載の網点画像(AMスクリーン175線(解像度:2400dpi))を露光し、以下に記載の現像条件で現像を行い、印刷版を得た。
【0160】
<網点画像>
画像パターン:網点面積率が0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100%の全25種類の平網パターン
各平網の露光面積:幅は、いずれも1,070mm、長さは、0%平網のみ120mm、0.5~100%平網はいずれも30mm。
【0161】
<現像条件>
(実施例1-12、14-24と比較例1-9)
自動現像機:TWL-1160FII(東レ(株)製)
前処理液:CP-Y(東レ(株)製、液温:45℃)
現像液:水道水(液温:30℃)
後処理液:PA-1(液温:30℃)
水洗:水道水(液温:30℃)
現像速度:60cm/分
(実施例13、実施例25、実施例26、実施例27と比較例10)
自動現像機:TWL-1160FII(東レ(株)製)
前処理液:なし
現像液:水道水(液温:30℃)
後処理液:なし
水洗:水道水(液温:30℃)
現像速度:60cm/分。
【0162】
得られた印刷版の網点画像部分を、25倍のルーペを用いて観察し、現像不良が発生しない最小の網点面積率を画像再現性として評価した。網点面積率が小さいほど、画像再現性に優れる。
【0163】
(11)印刷ムラ
露光工程における潜像形成に用いるスクリーン種類として、以下の4種類を用いたこと以外は前記(10)項に記載の露光条件/現像条件で印刷版を得た。
【0164】
<スクリーン種類>
AMスクリーン-1:AMスクリーン175線(解像度:2400dpi)
AMスクリーン-2:AMスクリーン210線(解像度:2400dpi)
AM/FM混合スクリーン-1:Fairdot2-350(AMスクリーン350線相当、解像度:2400dpi)
AM/FM混合スクリーン-2:Fairdot2-650(AMスクリーン650線相当、解像度:2400dpi)。
【0165】
得られた印刷版を、EBオフセット印刷機:OFFSET CI/8(COMEXI社製)の版胴に装着し、以下の印刷条件/インキ硬化条件にて印刷を実施し、各印刷物上での印刷ムラの有無を目視評価した。より高精度相当のスクリーンにおいても印刷ムラが認められないほど印刷ムラが抑制されている。
【0166】
<印刷条件>
インキローラー:#8000(明和ゴム工業(株)製)
ブランケット:MC1300((株)金陽社製)
水溶性EBインキ:オフセットEBインキFタイプFE1908紅(三星インキ(株)製)
インキ成分非吸収性の被印刷媒体:“エンブレット”(登録商標)PTM-12(ロール状2軸延伸PETフィルム、厚み:12μm、印刷面:易接着処理、ユニチカ(株)製)
版面温度:28±2℃
印刷速度:150m/分
ベタ部反射濃度:1.50±0.05
<インキ硬化条件>
EB照射線量:40kGy
EB照射雰囲気:窒素雰囲気。
【0167】
(12)インキ反発性
上記(11)項において得られた印刷開始から500m付近の印刷物を切り出し、5枚重ねにしたコート紙:OK“トップコート”(登録商標)+(王子製紙(株)製)の上に置き、分光濃度・測色計:イグザクト アドバンス(X-Rite社製)を用いて、白ベタ部(網点面積率:0%の部分に相当)の反射濃度を測定した。反射濃度が低いほど、インキ反発性に優れる。
【0168】
(13)耐刷性
上記(10)項において得られた印刷版を、EBオフセット印刷機:OFFSET CI/8(COMEXI社製)の版胴に装着し、上記(11)項に記載の印刷条件/インキ硬化条件にて印刷を実施し、5,000m毎の印刷物をサンプリングした。印刷版の網点面積率0%部分(1,070mm×120mm)に対応する印刷箇所である非画線部に意図しない画線が形成される地汚れの有無を観察した。地汚れが認められない限界印刷長さを耐刷性として評価した。限界印刷長さが長いほど、耐刷性に優れる。
【0169】
[実施例1]
厚み:0.24mm、表面の算術平均粗さ(Ra):0.18μmのアルミニウム合金板を支持体として用いた。支持体上に、スリットダイコーター(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、加熱後の平均膜質量が8.0g/m2となるように下記プライマー層形成用組成物-1を塗布し、180℃で2分間加熱することにより、平均膜質量が8.0g/m2のプライマー層を設けた。
【0170】
<プライマー層形成用組成物-1>
(a)エポキシ樹脂:“jER(登録商標)”1010(三菱ケミカル(株)製、固形分濃度:100質量%):18質量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D(三洋化成工業(株)製、N,N-ジメチルホルムアミド/2-エトキシエタノール溶液(固形分濃度:20質量%)):285質量部(ポリウレタン:57質量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):アルミキレートALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製、固形分濃度:100質量%):4質量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製、シンナー溶液(固形分濃度:10質量%)):0.1質量部
(e)下記酸化チタン分散液(N,N-ジメチルホルムアミド分散液(固形分濃度:50質量%)):42質量部(酸化チタン:21質量部)
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:1445質量部
(g)メチルエチルケトン:1540質量部。
【0171】
<酸化チタン分散液の作製>
N,N-ジメチルホルムアミド50質量部中に、酸化チタン“CR-50(石原産業(株)製)50質量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08)を75質量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去り、酸化チタン分散液を得た。
【0172】
プライマー層上に、スリットダイコーターを用いて下記感熱層形成用組成物-1を塗布し、150℃で80秒間加熱することにより、平均膜質量が1.5g/m2の熱溶解型の感熱層を設けた。
【0173】
<感熱層形成用組成物-1>
(a)近赤外線吸収染料:PROJET 825LDI((株)Avecia製、固形分濃度:100質量%):10質量部
(b)チタンジ-n-ブトキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート):“ナーセム(登録商標)”チタン(日本化学産業(株)製、チタン濃度:8.8質量%、n-ブタノール溶液(固形分濃度:73質量%)):22質量部
(c)フェノールノボラック樹脂:“スミライトレジン(登録商標)”PR54652(住友デュレズ(株)製、固形分濃度:100質量%):60質量部
(d)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:50質量部
(e)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15質量部
(f)テトラヒドロフラン:668質量部
(g)エタノール:40質量部。
【0174】
感熱層上に、スリットダイコーターを用いて下記シリコーンゴム層形成用組成物を塗布し、125℃で80秒間加熱して、平均膜質量が2.0g/m2のシリコーンゴム層を設けることにより、印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度は0.013質量%であった。
【0175】
<シリコーンゴム層形成用組成物>
(a)α,ω-ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS-V52(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製、固形分濃度:100質量%):100質量部
(b)両末端トリメチルシリル-メチルハイドロジェンポリシロキサン/ジメチルシロキサン共重合体:HMS-151(MeHSiOのモル%:15~18%、GELEST Inc.製、固形分濃度:100質量%):7質量部
(c)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:3質量部
(d)白金触媒:SRX-212(東レダウコーニングシリコーン(株)製、固形分濃度:85.6質量%):5質量部
(e)“アイソパー(登録商標)”E(エッソ化学(株)製):1035重量部。
【0176】
[実施例2]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0177】
<プライマー層形成用組成物-2>
(a)“jER(登録商標)”1010:16質量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ-SZ18D(三洋化成工業(株)製、N,N-ジメチルホルムアミド溶液(固形分濃度:15質量%)):480質量部(ポリウレタン:72質量部)
(c)“アルミキレート”ALCH-TR:4質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:16質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:2818質量部。
【0178】
[実施例3]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-3に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0179】
<プライマー層形成用組成物-3>
(a)“jER(登録商標)”1010:28質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:160質量部
(c)“アルミキレート”ALCH-TR:6質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:2102質量部
(g)メチルエチルケトン:969質量部。
【0180】
[実施例4]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-4に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0181】
<プライマー層形成用組成物-4>
(a)“jER(登録商標)”1010:36質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:110質量部
(c)“アルミキレート”ALCH-TR:8質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:2142質量部
(g)メチルエチルケトン:969質量部。
【0182】
[実施例5]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-5に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0183】
<プライマー層形成用組成物-5>
(a)“jER(登録商標)”1010:46質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:50質量部
(c)“アルミキレート”ALCH-TR:10質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:2190質量部
(g)メチルエチルケトン:969質量部。
【0184】
[実施例6]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-6に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0185】
<プライマー層形成用組成物-6>
(a)“jER(登録商標)”1010:41質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:235質量部
(c)“アルミキレート”ALCH-TR:9質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:6質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:2073質量部
(g)メチルエチルケトン:969質量部。
【0186】
[実施例7]
加熱後の平均膜質量が3.5g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が3.5g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0187】
[実施例8]
加熱後の平均膜質量が5.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が5.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0188】
[実施例9]
加熱後の平均膜質量が11.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が11.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0189】
[実施例10]
加熱後の平均膜質量が500.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-5を塗布し、平均膜質量が500.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例5と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0190】
[実施例11]
加熱後の平均膜質量が700.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-5を塗布し、平均膜質量が700.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例5と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0191】
[実施例12]
加熱後の平均膜質量が900.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-5を塗布したこと以外は実施例5と同様の方法で印刷版原版を得た。プライマー層形成用組成物塗工時に垂れ落ちが生じ、プライマー層の平均膜質量は808.0g/m2であった。
【0192】
[実施例13]
感熱層形成用組成物-1を下記感熱層形成用組成物-2に変更し、感熱層の平均膜質量を1.8g/m2に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷版原版を得た。なお、得られた感熱層は、熱破壊型の感熱層である。
【0193】
<感熱層形成用組成物-2>
(a)メチル化メラミン樹脂:“CYMEL(登録商標)”303:50.16質量部
(b)青色色素:ビクトリアブルーBO Dye:0.69質量部
(c)リン酸エステル:“Lubrizol(登録商標)”2062:0.50質量部
(d)近赤外線吸収染料:S009 NIR Dye:28.09質量部
(e)p-トルエンスルホン酸触媒:“Cycat(登録商標)”4040:4.20質量部
(f)界面活性剤:“BYK”307:1.31質量部
(g)ニトロセルロース樹脂:“Walsroder(登録商標)”E400 NC:15.05質量部
(h)1-メトキシプロパン-2-オール:550.00質量部
(i)N-メチル-2-ピロリドン:129.00質量部。
【0194】
[実施例14]
表面の算術平均粗さ(Ra):0.27μmのアルミ合金板に変更したこと以外は実施例8と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0195】
[実施例15]
表面の算術平均粗さ(Ra):0.39μmのアルミ合金板に変更したこと以外は実施例8と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0196】
[実施例16]
プライマー層形成用組成物-5を下記プライマー層形成用組成物-7に変更したこと以外は実施例11と同様の方法で印刷版原版を得た。プライマー層形成用組成物塗工時に垂れ落ちが生じ、プライマー層の平均膜質量は628.5g/m2であった。
【0197】
<プライマー層形成用組成物-7>
(a)“jER(登録商標)”1010:46質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:50質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:10質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:6857質量部
(g)メチルエチルケトン:2970質量部。
【0198】
[実施例17]
プライマー層形成用組成物-2を下記プライマー層形成用組成物-8に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0199】
<プライマー層形成用組成物-8>
(a)“jER(登録商標)”1010:16質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-SZ18D:480質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:4質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:16質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:914質量部
(g)メチルエチルケトン:570質量部。
【0200】
[実施例18]
シリコーンゴム層の平均膜質量を3.4g/m2に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0201】
[実施例19]
シリコーンゴム層の平均膜質量を4.4g/m2に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0202】
[実施例20]
シリコーンゴム層の平均膜質量を5.0g/m2に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0203】
[実施例21]
シリコーンゴム層形成用組成物の(b)HMS-151:7質量部を、(b)両末端トリメチルシリル-メチルハイドロジェンポリシロキサン:HMS-991(MeHSiOのモル%:100%、GELEST Inc.製、固形分濃度:100質量%):4質量部に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度は0.054質量%であった。
【0204】
[実施例22]
シリコーンゴム層形成用組成物の(b)HMS-991の量を5.5質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法で印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度は0.073質量%であった。
【0205】
[実施例23]
シリコーンゴム層形成用組成物の(b)HMS-991の量を10質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法で印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度は0.127質量%であった。
【0206】
[実施例24]
シリコーンゴム層形成用組成物の(b)HMS-991の量を11.5質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法で印刷版原版を得た。なお、シリコーンゴム層形成用組成物に含まれる全固形分中のSiH基に由来するH基濃度は0.145質量%であった。
【0207】
[実施例25]
加熱後の平均膜質量が3.5g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が3.5g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例13と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0208】
[実施例26]
加熱後の平均膜質量が5.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が5.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例13と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0209】
[実施例27]
加熱後の平均膜質量が8.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-1を塗布し、平均膜質量が8.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は実施例13と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0210】
[比較例1]
プライマー層形成用組成物-1を下記プライマー層形成用組成物-9に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0211】
<プライマー層形成用組成物-9>
(a)“jER(登録商標)”1010:18質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:285質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:4質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:42質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:48質量部
(g)メチルエチルケトン:270質量部。
【0212】
[比較例2]
プライマー層形成用組成物-2を下記プライマー層形成用組成物-10に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0213】
<プライマー層形成用組成物-10>
(a)“jER(登録商標)”1010:16質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-SZ18D:480質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:4質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:16質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:151質量部。
【0214】
[比較例3]
プライマー層形成用組成物-2を下記プライマー層形成用組成物-11に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0215】
<プライマー層形成用組成物-11>
(a)“jER(登録商標)”1010:16質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-SZ18D:480質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:4質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:16質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:514質量部
(g)メチルエチルケトン:399質量部。
【0216】
[比較例4]
プライマー層形成用組成物-3を下記プライマー層形成用組成物-12に変更したこと以外は実施例3と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0217】
<プライマー層形成用組成物-12>
(a)“jER(登録商標)”1010:28質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:160質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:6質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:235質量部
(g)メチルエチルケトン:170質量部。
【0218】
[比較例5]
プライマー層形成用組成物-4を下記プライマー層形成用組成物-13に変更したこと以外は実施例4と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0219】
<プライマー層形成用組成物-13>
(a)“jER(登録商標)”1010:36質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:110質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:8質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:275質量部
(g)メチルエチルケトン:170質量部。
【0220】
[比較例6]
プライマー層形成用組成物-5を下記プライマー層形成用組成物-14に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0221】
<プライマー層形成用組成物-14>
(a)“jER(登録商標)”1010:46質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:50質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:10質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:68質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:323質量部
(g)メチルエチルケトン:170質量部。
【0222】
[比較例7]
プライマー層形成用組成物-6を下記プライマー層形成用組成物-15に変更したこと以外は実施例6と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0223】
<プライマー層形成用組成物-15>
(a)“jER(登録商標)”1010:41質量部
(b)“サンプレン(登録商標)”LQ-T1331D:235質量部
(c)アルミキレートALCH-TR:9質量部
(d)“ディスパロン(登録商標)”LC951:0.1質量部
(e)酸化チタン分散液:6質量部
(f)N,N-ジメチルホルムアミド:206質量部
(g)メチルエチルケトン:170質量部。
【0224】
[比較例8]
加熱後の平均膜質量が16.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-10を塗布し、平均膜質量が16.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は比較例2と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0225】
[比較例9]
加熱後の平均膜質量が16.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-15を塗布し、平均膜質量が16.0g/m2のプライマー層を設けたこと以外は比較例7と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0226】
[比較例10]
加熱後の平均膜質量が11.0g/m2となるようにプライマー層形成用組成物-9を塗布し、平均膜質量が16.0g/m2のプライマー層を設けたこと、感熱層形成用組成物-1を感熱層形成用組成物-2に変更し、感熱層の平均膜質量を1.8g/m2に変更したこと以外は比較例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0227】
実施例1~27および比較例1~10について、評価結果を表1~4に示す。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【符号の説明】
【0232】
1 支持体
2 プライマー層
3 感熱層
4 シリコーンゴム層
a0 プライマー層の基準高さ
a1 プライマー層の平均厚み
a2 プライマー層の最薄部の厚み
a3 プライマー層の表面における最大山高さ
a4 プライマー層の基準高さよりも突出した部分
a5 プライマー層の基準高さよりも陥没した部分
a6 プライマー層の基準高さと、プライマー層と感熱層との界面を表す線との交点
b0 感熱層の基準高さ
b1 感熱層の平均厚み
b2 感熱層の最薄部の厚み
b3 感熱層の基準高さよりも突出した部分
b4 感熱層の基準高さよりも陥没した部分
c0 支持体の基準高さ
c1 支持体の基準高さよりも突出した部分
c2 支持体の基準高さよりも陥没した部分
【要約】
支持体上に、プライマー層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、その断面における該プライマー層の幅750μmの範囲において、プライマー層の基準高さよりも突出した部分の面積の合計とプライマー層の基準高さよりも陥没した部分の面積の合計との総和が0~60μm2である、直描型水なし平版印刷版原版。大サイズ版において良好な画像再現性と耐刷性を有し、印刷ムラの少ない水なし平版印刷版を得ることのできる直描型水なし平版印刷版原版を提供する。