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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022051431
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023079141
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2022-03-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165493
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、イエ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェ ジョーン
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】篠原 功一
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-264120(JP,A)
【文献】特開2002-299145(JP,A)
【文献】特開2014-53584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含む本体と、前記本体上に配置されて前記第1内部電極と連結される第1外部電極及び前記第2内部電極と連結される第2外部電極とを含み、
前記誘電体層は、前記第1内部電極に隣接した第1誘電体層、前記第2内部電極に隣接した第2誘電体層、前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層の間に配置される第3誘電体層を含み、
前記第1誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD1、前記第2誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD2、前記第3誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD3とするとき、前記D1と前記D3との差は50nm以上であり、前記D2と前記D3との差は50nm以上であり、前記D1に対する前記D3の比(D3/D1)は1.3~2.3を満たし、前記D2に対する前記D3の比(D3/D2)は1.3~2.3を満たす、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記第1誘電体層の平均厚さをt1、前記第2誘電体層の平均厚さをt2、前記第3誘電体層の平均厚さをt3とするとき、t1<t3及びt2<t3を満たす、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記t3に対する前記t1の比(t1/t3)は1/10~1/3を満たし、前記t3に対する前記t2の比(t2/t3)は1/10~1/3を満たす、請求項2に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体層の平均厚さは0.41μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記誘電体層の厚さをtdとするとき、前記tdに対する前記t1の比(t1/td)は1/4以下であり、前記tdに対するt2の比(t2/td)は1/4以下である、請求項2または3に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、前記本体上に配置されて前記内部電極と連結される外部電極とを含み、
前記誘電体層は、第4誘電体層及び第4誘電体層を含む誘電体グレインの平均粒径より大きい平均粒径を有する誘電体グレインを含む第5誘電体層を含み、
前記第4誘電体層の平均厚さをt4、前記第5誘電体層の平均厚さをt5とするとき、t4<t5を満たし、
前記第4誘電体層が含む誘電体グレインの平均粒径をD4、前記第5誘電体層が含む誘電体グレインの平均粒径をD5とするとき、前記D4と前記D5との差は50nm以上であり、前記D4に対する前記D5の比(D5/D4)は1.3~2.3であり、
前記誘電体層の平均厚さは0.41μm以下である、積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記t5に対する前記t4の比(t4/t5)は1/10~1/3である、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、前記tdに対する前記t4の比は1/4以下である、請求項6又は7のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記第4誘電体層は前記第5誘電体層の上部に配置される、請求項6~のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記第4誘電体層は前記第5誘電体層の下部に配置される、請求項6~のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子機器の部品として使用されることができる。最近は、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックキャパシタも小型化及び高容量化する傾向であり、このような流れにより積層セラミックキャパシタの高信頼性を確保する重要度が高まっている。
【0004】
最近、積層セラミックキャパシタは、小型化及び高容量化を達成するために誘電体層または内部電極層の薄層化が進んでいる。このように、積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さが減少する場合、静電容量のような電気的性能は向上することができるが、電歪現象による電歪破壊に至る頻度が増加し、高温信頼性が弱くなるという問題が発生する可能性がある。また、薄い誘電体層を形成する場合、信頼性が弱くなる現象を緩和するために誘電体の粒径を小さくして微粒化する方案が考えられているが、誘電率が小さくなって所望の容量が得られないという問題が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、静電容量のような電気的性能の向上のために誘電体層の厚さを薄く形成する場合、電歪現象による電歪破壊が起こる現象を減らし、高温信頼性が弱くなるという問題を解決することである。
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させるために誘電体層の粒径を小さくする場合、誘電率が低くなるという問題点を解決することである。
【0007】
ただし、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記第1内部電極と連結される第1外部電極及び上記第2内部電極と連結される第2外部電極とを含み、上記誘電体層は、上記第1内部電極に隣接した第1誘電体層、上記第2内部電極に隣接した第2誘電体層、上記第1誘電体層及び上記第2誘電体層の間に配置される第3誘電体層を含み、上記第1誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD1、上記第2誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD2、上記第3誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD3とするとき、D1<D3を満たし、D2<D3を満たす。
【0009】
本発明の他の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記誘電体層は、上記第4誘電体層及び上記第4誘電体層が含む誘電体グレインの平均粒径より大きい平均粒径を有する誘電体グレインを含む第5誘電体層を含み、上記第4誘電体層の平均厚さをt4、上記第5誘電体層の平均厚さをt5とするとき、t4<t5を満たす。
【発明の効果】
【0010】
本発明のいくつかの効果の一つは、誘電体層の厚さを薄く形成する場合、電歪現象による電歪破壊が起こる現象を減らし、高温信頼性が弱くなるという問題を解決することである。
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させるために誘電体層の粒径を小さくする場合、誘電率が低くなるという問題点を解決することである。
【0012】
ただし、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの斜視図を概略的に示したものである。
図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図3図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図4】本発明の一実施形態または他の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による図2のP1領域を拡大して示した図である。
図6】本発明の他の一実施形態による図2のP2領域を拡大して示した図である。
図7】誘電体グレインの平均粒径に実質的な差がない場合、電歪現象が起こる様相を示したグラフである。
図8】誘電体グレインの平均粒径に実質的な差がある場合、電歪現象が起こる様相を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は積層方向または厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0017】
積層セラミックキャパシタ
以下では、図1図8を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタについて詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記第1内部電極と連結される第1外部電極及び上記第2内部電極と連結される第2外部電極とを含み、上記誘電体層は、上記第1内部電極に隣接した第1誘電体層、上記第2内部電極に隣接した第2誘電体層、上記第1誘電体層及び上記第2誘電体層の間に配置される第3誘電体層を含み、上記第1誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD1、上記第2誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD2、上記第3誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径をD3とするとき、D1<D3を満たし、D2<D3を満たす。
【0019】
図1を参照すると、本体110は、誘電体層111及び第1内部電極及び第2内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状またはこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0020】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1面及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0021】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶された(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)OまたはBa(Ti1-yZr)O等が挙げられる。
【0023】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0024】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0025】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極及び第2内部電極121、122を反復的に積層して形成することができる。
【0026】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0027】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0028】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されてよい。マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されてよい。
【0029】
マージン部114、115は、図3に示すように、上記本体110を第1及び第3方向(幅-厚さ)方向に切断した断面において、第1内部電極及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0030】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0031】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってよい。
【0032】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成してもよい。
【0033】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置することができる。内部電極121、122は、第1内部電極及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1内部電極及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4において、それぞれ第1内部電極及び第2外部電極と接触することができる。
【0034】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3で第1外部電極と接触し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4で第2外部電極と接触することができる。このとき、第1内部電極及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてよい。
【0035】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0036】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上であってよく、本発明がこれに限定されるものではない。
【0037】
また、内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷して内部電極を形成することができ、内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができる。
【0038】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてよく、さらに多層構造を有してよい。
【0039】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0040】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、又は導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってよい。
【0041】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってよい。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってよい。
【0042】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうち1つ以上であってよい。
【0043】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であってよく、複数の層で形成されてよい。
【0044】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であってよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0045】
積層セラミックキャパシタ100のサイズは特に限定する必要はない。ただし、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品において、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0046】
したがって、本体の第3及び第4面間の距離をL、上記第5及び第6面間の距離をWと定義するとき、上記Lは0.4mm以下であり、上記Wは0.2mm以下であってよい。すなわち、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)サイズ以下の積層型電子部品であってよい。
【0047】
積層セラミックキャパシタの場合、高エネルギー密度及び電気容量を得るために、誘電体材料としてPZT、BaTiOのような強誘電体(ferroelectrics)材料を使用することが多い。このような材料は、外部電場に対して機械的変形が発生するが、このような現象を電歪効果(Flexoelectricity)という。
【0048】
従来、小型化及び高容量化のために誘電体層を薄く形成する積層セラミックキャパシタの場合、キャパシタの内部電極の間に配置される誘電体層を同じ大きさの粉末を用いて焼結した。したがって、焼結後に上記誘電体層の誘電体グレインの粒径も一定の散布内に存在することができる。
【0049】
外部から交流電場が印加されると、誘電体層を形成する強誘電体粒子は電歪効果により持続的に振動するようになるため、誘電体層をなす誘電体グレインの誘電体粒径に大きな差がない場合は、電歪効果により発生した振動を相殺できない可能性がある。その結果、積層セラミックキャパシタに持続的な応力を加えるようになり、積層セラミックキャパシタの内部に電歪クラックを形成させる可能性があり、このようなクラックは高温信頼性の劣化を招く可能性がある。
【0050】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタによると、上記誘電体層111及び上記誘電体層111と交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置されて上記第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び上記第2内部電極122と連結される第2外部電極132とを含み、上記誘電体層111は、上記第1内部電極121に隣接した第1誘電体層111a、上記第2内部電極122に隣接した第2誘電体層111b、上記第1誘電体層111a及び第2誘電体層111bの間に配置される第3誘電体層111cを含み、上記第1誘電体層111aに含まれる誘電体グレインの平均粒径をD1、上記第2誘電体層111bに含まれる誘電体グレインの平均粒径をD2、上記第3誘電体層111cに含まれる誘電体グレインの平均粒径をD3とするとき、D1<D3を満たし、D2<D3を満たすことができる。
【0051】
図7は、誘電体層の各領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径に実質的な差がない場合、電歪現象が起こる様相を、図8は、誘電体層の各領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径に実質的な差がある場合の様相を示したグラフである。
【0052】
図7及び図8を参照すると、図7の場合、誘電体グレインの粒径に実質的な差がなく、電歪効果を相殺し難い。これに対し、図8の場合、誘電体層の各領域をなす誘電体グレインの粒径に実質的な差があるため、各領域別に電歪現象が起こる様相が異なる場合がある。具体的に、平均粒径のサイズが大きい領域では、電歪現象による振動の振動数が大きく、振幅が小さい。一方、平均粒径のサイズが小さい領域では、電歪現象による振動の振動数が小さく、振幅が大きい。したがって、誘電体層をなす各領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径に十分に差がある場合、電歪効果による振動の相殺効果が発生する可能性がある。
【0053】
電歪効果による振動の相殺効果が現れるようにするためには、好ましくは、各領域をなす誘電体グレインの平均粒径の差は50nm以上であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0054】
したがって、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタによると、上記誘電体層が複数の層で形成され、各層をなす誘電体グレインの平均粒径が互いに異なるため、電歪現象の相殺効果を誘導することができる。
【0055】
また、誘電体層の一部の領域に小さい誘電体粒径を有する第1内部電極及び第2誘電体層を形成し、BDV、DC-BIAS特性を向上させることができるとともに、上記第1内部電極及び第2誘電体層の間に相対的に大きい誘電体粒径を有する第3誘電体層を形成することにより、静電容量を確保することができる。
【0056】
図5を参照すると、上記第1誘電体層111a、第2誘電体層111b及び第3誘電体層111cは、互いに異なる平均粒径の誘電体グレインからなる誘電体層111を区分する単位であってよい。各領域をなしている誘電体グレインの粒径は、その製造方法に応じて各領域内で実質的に同一であってよく、一定の散布内の粒径を有するように調節されてよい。
【0057】
また、第1誘電体層111aに含まれる誘電体グレインの平均粒径D1、第2誘電体層111bに含まれる誘電体グレインの平均粒径D2、及び第3誘電体層111cに含まれる誘電体グレインの平均粒径D3は互いに異なるか又は実質的に同一であってよい。
【0058】
D1、D2、D3が互いに異なる場合、誘電体層を走査電子顕微鏡(SEM)を使用して観察すれば各領域の区別が容易となり得る。ここで、各領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径の差は50nm以上であることが好ましい。
ここで、第1誘電体層111aは第1内部電極121の下面から第3誘電体層111cの上面までの領域を、第2誘電体層111bは第2内部電極122の上面から第3誘電体層111cの下面までの領域を意味することができる。
【0059】
積層セラミックキャパシタのマージン部、カバー部及び誘電体層は誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの「平均粒径」は積層セラミック電子部品の中心を通る長さ方向-厚さ方向の断面に対して、長さ方向における等間隔の10箇所を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、イメージ分析プログラム(Leica Microsystem社のLAS X Grain Expert)を用いて計算した平均値を意味することができる。
【0060】
一実施形態によると、上記D1に対する上記D3の比(D3/D1)は1.3~2.3を満たし、上記D2に対する上記D3の比(D3/D2)は1.3~2.3を満たすことができる。D3/D1及びD2/D1が1.3未満の場合、各領域別誘電体グレインの粒径差が少ないため、電歪現象を相殺する効果を誘導しにくい可能性がある。D3/D1及びD2/D1が2.3を超える場合、各領域別誘電体グレインの粒径差が大きくなるため、高温信頼性の劣化を招く可能性がある。D3/D1及びD2/D1を上記範囲となるように調節することにより、電歪現象をさらに相殺することができ、高温信頼性の劣化を防止することができる。
【0061】
一実施形態によると、上記第1誘電体層111aの平均厚さをt1、上記第2誘電体層111bの平均厚さをt2、上記第3誘電体層111cの平均厚さをt3とするとき、t1<t3を満たし、t2<t3を満たすことができる。第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bは、第3誘電体層111cより小さい平均粒径を有する誘電体グレインからなっているため、DC-bias、TCC特性の向上、Short不良の改善など、信頼性を向上させる役割を果たすことができる。
【0062】
一方、第3誘電体層111cは、第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bより大きい平均粒径を有する誘電体グレインからなっているため、高容量の積層セラミックキャパシタを確保する役割を果たすことができる。第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bは信頼性の向上に寄与し、第3領域を間に挟んで配置されるため、その厚さt1、t2が第3誘電体層111cの厚さt3に比べて1/3~1/10のレベルであっても信頼性増加効果を奏することができる。
【0063】
したがって、誘電体層111の各領域111a、111b、111cの厚さt1、t2、t3を有機的に調節することにより、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させながらも高容量を確保することができる。
【0064】
誘電体層111及び第1誘電体層~第3誘電体層111a、111b、111cの平均厚さは、長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、容量形成部Aの長さ方向における等間隔の10箇所で誘電体層111の誘電体グレインの平均粒径が厚さ方向に沿って1.3倍~2.3倍に変化する区間を分けて第1誘電体層~第3誘電体層111a、111b、111cに区分し、その厚さを測定した平均値であってよい。
【0065】
誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下の薄膜の場合、電歪現象による振動によってより多くのクラックが発生する可能性があり、高容量を確保しにくい可能性がある。
【0066】
しかし、誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下の場合であっても、D1<D3を満たし、D2<D3を満たすことにより、電歪現象を相殺して電歪クラックの発生を抑制すると同時に十分な静電容量を確保することができる。
【0067】
ここで、誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下であるとは、必ずしも誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下でなければならないという意味ではなく、従来の積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さより薄いことを意味することができる。
【0068】
第1誘電体層111a及び第2誘電体層111bに含まれる誘電体グレインの平均粒径D1、D2と第3誘電体層111cに含まれる誘電体グレインの平均粒径D3との差が50nm未満の場合、電歪効果の相殺効果が十分でないため、電歪クラックの発生防止が難しい可能性があり、第1誘電体層~第3誘電体層111a、111b、111cを区分しにくい可能性がある。
【0069】
一実施形態によると、上記D1と上記D3との差は50nm以上であり、上記D2と上記D3との差を50nm以上に調節することにより、電歪効果の相殺効果を十分に確保して電歪クラックの発生を抑制することができる。一方、D1とD3との差及びD2とD3との差の上限値は、誘電体層111の厚さを考慮して決定することができる。
【0070】
上述したように、第3誘電体層111cは、第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bより誘電体グレインの粒径が大きく、積層セラミックキャパシタの容量を向上させる役割を果たすことができる。
【0071】
したがって、第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bを第3誘電体層111cの上面及び下面に配置する場合、信頼性確保の面では容易であるが、第3誘電体層111cの厚さt3が誘電体層の厚さtdに対して十分でない場合、積層セラミックキャパシタの高い静電容量を確保しにくい可能性がある。
【0072】
一実施形態によると、上記誘電体層の厚さをtdとするとき、上記tdに対する上記t1の比(t1/td)は1/4以下であり、上記tdに対するt2比(t2/td)は1/4以下に調節することにより、第1内部電極及び第2誘電体層111a、111bが第3誘電体層111cの上面または下面に配置されても積層セラミックキャパシタの高容量を確保することができると同時に、信頼性を向上させることができる。
【0073】
以下では、本発明の他の一実施形態による積層セラミックキャパシタについて詳細に説明するが、上述した本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの実施形態と重複する説明は省略する。
【0074】
本発明の他の一実施形態による積層セラミックキャパシタによると、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記内部電極と連結される外部電極とを含み、上記誘電体層は、第4誘電体層及び第4誘電体層が含む誘電体グレインの平均粒径より大きい平均粒径を有する誘電体グレインを含む第5誘電体層を含み、上記第4誘電体層の平均厚さをt4、上記第5誘電体層の平均厚さをt5とするとき、t4<t5を満たす。
【0075】
図6を参照すると、上記誘電体層111は、互いに異なる平均粒径の誘電体グレインを含む第4誘電体層111d及び第5誘電体層111eからなることができる。すなわち、第4誘電体層111dに含まれる誘電体グレインの平均粒径D4より第5誘電体層111eに含まれる誘電体グレインの平均粒径D5が大きくてよい。
【0076】
ここで、D5がD4よりも大きいとは、上述した電歪現象の相殺効果が起こるのに十分な差があるという意味であってよく、好ましくは50nm以上の差があるか、上記第4誘電体層111dに含まれる誘電体グレインの平均粒径D4に対する上記第5誘電体層111eに含まれる誘電体グレインの平均粒径D5の比(D5/D4)は1.3以上であることを意味することができる。
【0077】
図6では、第4誘電体層111dが誘電体層111の上部に、第5誘電体層111eが誘電体層111の下部に形成されているが、本発明はこれに限定されず、第4誘電体層111dと第5誘電体層111eが配置される位置は互いに変わることができる。
【0078】
したがって、上記誘電体層111は、上記内部電極121、122の積層方向への一端面に隣接する第4誘電体層111d及び上記内部電極の積層方向への他端面に隣接した第5誘電体層111eを含むことができるが、これに限定されるものではなく、上記誘電体層111は、第4誘電体層111d及び第4誘電体層111dが含む誘電体グレインの平均粒径より大きい平均粒径を有する誘電体グレインを含む第5誘電体層111eを含むことができる。
【0079】
また、上記第4誘電体層111dに含まれる誘電体グレインの平均粒径D4は、第5誘電体層111eに含まれる誘電体グレインの平均粒径D5より小さくてよい。ここで、D4とD5は50nm以上の差があってよく、このような差により誘電体層は走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)で観察すれば十分に区分できる。一方、D4とD5との差の上限値は、誘電体層111の厚さを考慮して決定することができる。
【0080】
第4誘電体層111dは、誘電体グレインの平均粒径D4が第5誘電体層111eの誘電体グレインの平均粒径D5より小さいため、高温信頼性を向上させる役割を果たすことができる。
【0081】
第5誘電体層111eは、誘電体グレインの平均粒径D5が第4誘電体層111dの誘電体グレインの平均粒径D4より小さいため、静電容量を確保する役割を果たすことができる。
【0082】
第4誘電体層111dは信頼性の向上に寄与するため、その厚さが第5誘電体層111eに比べて1/3~1/10のレベルであっても信頼性増加効果を奏することができるのに対し、第5誘電体層111eは十分な静電容量を確保しなければならないため、全体誘電体層111内で十分な比重を占める必要がある。
【0083】
本発明の他の一実施形態による積層セラミックキャパシタによると、誘電体グレインの平均粒径が相対的に小さい第4誘電体層111dの平均厚さt4より誘電体グレインの平均粒径が相対的に大きい第5誘電体層111eの厚さt5を大きくすることにより、積層セラミックキャパシタの信頼性を確保すると同時に、十分な静電容量を確保することができる。
【0084】
一実施形態によると、上記第5誘電体層111eの平均厚さt5に対する上記第4誘電体層111dの平均厚さt4の比(t4/t5)は1/10~1/3を満たすことができる。したがって、上述したように十分な静電容量を確保すると同時に高温信頼性を向上させることができる。
【0085】
上述のようにD5/D4が1.3未満の場合、各領域別誘電体グレインの粒径差が少ないため、電歪現象を相殺する効果を誘導しにくい可能性がある。また、D5/D4が2.3を超える場合、各領域別誘電体グレインの粒径差が大きくなるため、高温信頼性の劣化を招く可能性がある。
【0086】
一実施形態によると、上記第4誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径D4に対する上記第5誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径D5の比(D5/D4)は1.3~2.3を満たすことにより、電歪現象の相殺効果を誘導することができる程度に十分なD4及びD5の差を確保すると同時に、高温信頼性の劣化を防止することができる。
【0087】
一実施形態によると、上記誘電体層111の平均厚さは0.41μm以下であってよい。誘電体層の平均厚さが0.41μm以下の薄膜の場合、電歪現象による振動によってより多くのクラックが発生する可能性があり、高容量を確保しにくい可能性がある。
【0088】
しかし、誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下の場合であってもD4<D5を満たし、t4<t5を満たすことにより、電歪現象を相殺して電歪クラックの発生を抑制すると同時に十分な静電容量を確保することができる。ここで、誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下であるとは、必ずしも誘電体層111の平均厚さが0.41μm以下でなければならないという意味ではなく、従来の積層セラミックキャパシタの誘電体層の厚さより薄いことを意味することができる。
【0089】
積層セラミックキャパシタの製造方法
以下では、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法について説明し、上述する製造方法は、本発明の他の一実施形態による積層セラミックキャパシタを製造する場合にも同様に適用することができる。
【0090】
まず、複数のセラミックグリーンシートを準備する。上記セラミックグリーンシートは、本体110の誘電体層111を形成するためのものであって、セラミック粉末、ポリマー及び溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード等の工法により所定の厚さ、例えば、0.41μm以下の厚さを有するシート(sheet)状に作製することができる。
【0091】
通常、電極と電極との間の誘電体層は一つのセラミックシートで形成されるが、十分な厚さを確保するために同じセラミックシートを複数枚積層することもある。一方、本発明の一実施形態によると、内部電極の間の誘電体層を2つ以上の互いに異なるセラミックグリーンシートで形成することができる。ここで、互いに異なるセラミックグリーンシートとは、組成や材料となる粉末の大きさを意味することができる。
【0092】
本発明の一実施形態によると、PETフィルムの上面に微粒母材と粒成長を抑制することができるMg、DyまたはTbを添加して第1セラミックグリーンシートを形成する。その後、第1セラミックグリーンシートの上面に粗粒母材を使用して第2セラミックグリーンシートを形成する。
【0093】
次に、第2セラミックグリーンシートの上面に第1セラミックグリーンシートと同じ組成を有する第3セラミックグリーンシートを形成する。このとき、セラミックグリーンシートに含まれる母材は、チタン酸バリウム(BaTiO)系化合物であってよく、好ましくはBa/Tiが0.9950~1.0050であってよいが、これに限定されるものではない。
【0094】
したがって、焼成後、第1セラミックグリーンシートに対応する領域は誘電体層の第1誘電体層、第2セラミックグリーンシートに対応する領域は誘電体層の第3誘電体層、第3セラミックグリーンシートに対応する領域は誘電体層の第2誘電体層であってよい。誘電体層の各領域が形成される位置、厚さ、誘電体グレインの粒径は、上述した方法を用いて調節することができるが、これに限定されるものではない。
【0095】
その後、上記各々のセラミックグリーンシートの少なくとも一面に所定の厚さ、例えば0.41μm以下の厚さで内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極を形成する。
【0096】
上記内部電極用導電性ペーストは、Ni:94.0~99.6wt%及びCu:0.4~6.0wt%を含んで形成することができる。例えば、Ni粉末とCu粉末を混合したり、Ni-Cu合金粉末を含んで内部電極用導電性ペーストを形成することができる。このとき、内部電極用導電性ペーストは、Ni-Cu合金粉末を含み、セラミック共材を含まなくてよい。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができる。
【0097】
図4を参照すると、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層し、積層方向から加圧して積層された複数のセラミックグリーンシートとセラミックグリーンシート上に形成された内部電極とを互いに圧着させて積層体を構成することができる。
【0098】
また、積層体の上下には、少なくとも1つ以上のセラミックグリーンシートを積層してカバー部112、113を形成することができる。カバー部112、113は、積層体の内部に位置する誘電体層111と同じ組成からなってよく、内部電極を含まないという点で誘電体層111との差異を有する。
【0099】
その後、上記積層体を1つのキャパシタに対応する領域毎に切断してチップ化した後、高温で焼成して本体110を完成する。その後、本体110の両側面に露出した第1内部電極及び第2内部電極の露出部分を覆って第1内部電極及び第2内部電極と電気的に連結できるように第1内部電極及び第2外部電極131、132を形成することができる。このとき、第1内部電極及び第2外部電極131、132の表面には、必要に応じてニッケルまたは錫などでめっき処理を行うことができる。
【0100】
(実施例)
下記表1は、積層セラミックキャパシタの活性領域内の誘電体層が互いに異なる、及び誘電体グレインの平均粒径を有する第4及び第5誘電体層に分けられるサンプルチップを準備した後、第4誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径D4に対する第5誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均粒径D5の比による高温加速寿命、電歪クラックの発生頻度の変化を測定して記載したものである。
【0101】
各領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、以下のように測定することができる。誘電体グレインの「平均粒径」は、積層セラミック電子部品の中心を通る長さ方向-厚さ方向の断面に対して、長さ方向における等間隔の10箇所を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、イメージ分析プログラム(Leica Microsystem社のLAS X Grain Expert)を用いて計算した平均値を意味することができる。
【0102】
高温加速寿命試験は、各試験番号当たり400個のサンプルについて、150℃、2.0V、24HRの条件で高温加速寿命を評価し、発生故障の数を確認した。発生故障の場合、高温加速寿命の評価において絶縁抵抗が10Ω以下の場合を発生故障であると判断した。
【0103】
電歪クラックの発生頻度は電圧による変位発生量から確認することができ、電歪クラックを評価するために電圧を印加することができる基板に実装した。基板に実装する時に、基板のめっき部にペーストを塗布し、本体のカバー部で実装後、熱処理を行って基板上に固定した。本体カバー部の上段に変位センサーを装着し、電圧を加えて電歪クラックを確認することができる。電圧印加時の昇圧速度を20V/secに設定し、0V~350Vまで印加した時にクラックが発生する電圧を確認することができ、D5/D4の比率に対する電歪クラックの発生電圧を相対比較することができる。
【0104】
【表1】
*比較例
【0105】
D5/D4が2.3を超える試験番号1~2の場合、高温加速寿命の向上効果が不足するか又はないことが確認できる。D5/D4が1.3より小さい試験番号9~10の場合、電歪現象を相殺する効果がないか又は不足することが確認でき、11~12の場合、高温加速寿命の向上効果が不足することが確認できる。したがって、D5/D4は1.3~2.3を満たすことが好ましく、より好ましくはD5/D4が1.5~2.3を満たすことができる。
【0106】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当該技術分野の通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するものと言える。
【符号の説明】
【0107】
100:積層セラミックキャパシタ
110:本体
111:誘電体層
111a:第1誘電体層
111b:第2誘電体層
111c:第3誘電体層
111d:第4誘電体層
111e:第5誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8