IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

<>
  • 特許-積層セラミック電子部品 図1
  • 特許-積層セラミック電子部品 図2
  • 特許-積層セラミック電子部品 図3
  • 特許-積層セラミック電子部品 図4
  • 特許-積層セラミック電子部品 図5
  • 特許-積層セラミック電子部品 図6
  • 特許-積層セラミック電子部品 図7
  • 特許-積層セラミック電子部品 図8
  • 特許-積層セラミック電子部品 図9a
  • 特許-積層セラミック電子部品 図9b
  • 特許-積層セラミック電子部品 図9c
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023005019
(22)【出願日】2023-01-17
(65)【公開番号】P2023124814
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0025075
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビュン チュル
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-080903(JP,A)
【文献】特表2017-519349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380160(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0084392(US,A1)
【文献】特開2013-016454(JP,A)
【文献】特開平08-186059(JP,A)
【文献】特開2016-196606(JP,A)
【文献】特開2019-176117(JP,A)
【文献】特開2017-168746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで積層され、導電性金属並びにインジウムスズ酸化物(ITO)を含む複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極に含まれたインジウム(In)の平均含有量は、前記複数の内部電極に含まれたスズ(Sn)の平均含有量よりも高く、
前記複数の内部電極のそれぞれの全域にインジウム(In)及びスズ(Sn)が分布し、インジウム(In)及びスズ(Sn)は、前記内部電極の内部において、前記内部電極の厚さ方向の中央領域よりも前記誘電体層との界面に隣接する領域により多く含まれる、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は0.6at%から1at%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は0.4at%から0.6at%である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層はインジウム(In)及びスズ(Sn)を含む、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記内部電極はニッケル(Ni)を最も多く含有する、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記内部電極の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで積層され、導電性金属並びにインジウムスズ酸化物(ITO)を含む複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極のそれぞれの全域にインジウム(In)及びスズ(Sn)が分布し、
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は前記内部電極の前記領域以外の領域におけるインジウム(In)の平均含有量より高く、
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は、前記内部電極の前記領域以外の領域におけるスズ(Sn)の平均含有量より高い、積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層の前記内部電極との界面から前記誘電体層の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は、前記誘電体層の前記内部電極との界面から前記誘電体層の厚さ方向に2nm以外の領域におけるインジウム(In)の平均含有量より高い、請求項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の前記内部電極との界面から前記誘電体層の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は、前記誘電体層の前記内部電極との界面から前記誘電体層の厚さ方向に2nm以外の領域におけるスズ(Sn)の平均含有量より高い、請求項またはに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は0.6at%から1at%である、請求項またはに記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記内部電極の前記誘電体層との界面から前記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は0.4at%から0.6at%である、請求項またはに記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC;Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など様々な電子製品のプリント回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割をするチップ型のコンデンサである。このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。
【0003】
最近、自動車業界で電気自動車、自律走行自動車などの開発が進むにつれて、より多い数の積層セラミックキャパシタが必要となった。例えば、電気自動車の場合は10,000個以上の積層セラミックキャパシタを要求しており、自律走行自動車の場合は12,000から15,000個の積層セラミックキャパシタを要求している。
【0004】
すなわち、自動車内の電装システムが高性能化しながら高容量の積層セラミックキャパシタが求められている。また、自動車などに用いられる積層セラミックキャパシタは、エンジン、変速機など150℃以上の高温環境で長時間安定的に作動する必要があるため、高温信頼性が保障されることが求められている。これにより、高い容量を有し、高温信頼性に優れた積層セラミックキャパシタに対する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、高温信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することである。
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、絶縁抵抗に優れた積層セラミック電子部品を提供することである。
【0007】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含む複数の内部電極を含む本体、及び上記本体の外側に配置される外部電極を含み、上記内部電極に含まれたインジウム(In)の平均含有量は、上記内部電極に含まれたスズ(Sn)の平均含有量よりも高い積層セラミック電子部品を提供する。
【0009】
一方、本発明の他の一実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含む複数の内部電極を含む本体、及び上記本体の外側に配置される外部電極を含み、上記内部電極の上記誘電体層との界面から上記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は、上記内部電極の上記領域以外の領域におけるインジウム(In)の平均含有量より高く、上記内部電極の上記誘電体層との界面から上記内部電極の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は、上記内部電極の上記領域以外の領域におけるスズ(Sn)の平均含有量より高い積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果の一つとして、高温信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することができる。
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、絶縁抵抗に優れた積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図である。
図2】積層セラミック電子部品の本体を概略的に示した斜視図である。
図3図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
図4図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
図5】積層セラミック電子部品の内部電極を形成する内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示した模式図である。
図6】積層セラミック電子部品の内部電極を形成する内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示した模式図である。
図7】誘電体層と内部電極との界面における透過電子顕微鏡(TEM;Trasmission Electron Microscope)イメージ(a)及びインジウム(In)の含有量を示したTEM-EDS line profile分析グラフ(b)である。
図8】誘電体層と内部電極との界面における透過電子顕微鏡(TEM;Trasmission Electron Microscope)イメージ(a)及びスズ(Sn)の含有量を示したTEM-EDS line profile分析グラフ(b)である。
図9a】誘電体層及び内部電極を撮影した走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)イメージである。
図9b図9aのSEMイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)を介してインジウム(In)の検出強度を測定したイメージである。
図9c図9aのSEMイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)を介してスズ(Sn)の検出強度を測定したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0014】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は長さ(L)方向、第2方向は厚さ(T)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図であり、図2は、積層セラミック電子部品の本体を概略的に示した斜視図であり、図3は、図1のI-I'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、図4は、図1のII-II'線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
【0017】
図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111、及び誘電体層111を間に挟んで積層された複数の内部電極121、122を含む本体110、及び本体110の外側に配置される外部電極131、132を含む。
【0018】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。本体110は、第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、第1面から第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0019】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0020】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックグリーンシートの焼成によって形成されることができる。セラミック粉末は十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系(BaTiO)材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系材料などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0021】
このとき、誘電体層111の平均厚さは、本体110の大きさ及び容量を考慮して10μm以下であることができ、積層セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために0.6μm以下、より好ましくは0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第1方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。また、このような平均値測定を多数の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0022】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、容量形成部Acの上部に配置される第1カバー部112及び容量形成部Acの下部に配置される第2カバー部113を含むことができる。
【0023】
第1カバー部112及び第2カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第2方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。第1及び第2カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ構成を有することができる。第1及び第2カバー部112、113の平均厚さはそれぞれ20μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。カバー部112、113の厚さは、カバー部112、113の第2方向への長さを意味し、本体110の第1方向及び第2方向の断面において第1方向に等間隔の30個の地点での厚さを測定した平均値を意味することができる。
【0024】
本体110は、第3方向を基準に容量形成部Acの側面に配置されるマージン部114、115をさらに含むことができる。マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置される第1マージン部114と第6面6に配置される第2マージン部115を含むことができる。マージン部114、115は、本体110を第2方向及び第3方向に切断した断面において内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。マージン部114、115は、誘電体層111と同一または相違する材料を含むことができる。
【0025】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いては導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。または、内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向の両側面に積層してマージン部114、115を形成することもできる。マージン部114、115の平均厚さはそれぞれ20μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。マージン部114、115の厚さは、マージン部114、115の第3方向の長さを意味し、本体110の第2方向及び第3方向の断面において第2方向に等間隔の30個の地点での厚さを測定した平均値を意味することができる。
【0026】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができ、複数の第1内部電極121と複数の第2内部電極122は、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。複数の第1内部電極121と複数の第2内部電極122は、誘電体層111の積層方向に沿って本体110の第1面及び第2面1、2を介して交互に露出するように形成されることができる。
【0027】
例えば、複数の第1内部電極121はそれぞれ第2面2から離隔し、第1面1を介して露出することができる。また、複数の第2内部電極122は、それぞれ第1面1から離隔し、第2面2を介して露出することができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0028】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、インジウム(In)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上であることができ、より好ましくはインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むことができる。また、内部電極121、122はニッケル(Ni)を最も多く含有することができる。
【0029】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の大きさ及び容量を考慮して10μm以下であることができ、積層セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために0.6μm以下、より好ましくは0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡でスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの内部電極の多数の地点、例えば、第1方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。このような平均値測定を多数の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを印刷した後に焼成することで形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明はこれに限定されるものではない。内部電極用導電性ペーストに関する詳細な事項は後述する。
【0031】
外部電極131、132は、本体110の第1面及び第2面1、2に配置され、第3面、第4面、第5面及び第6面3、4、5、6のそれぞれの一部まで延びることができる。外部電極131、132は、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0032】
外部電極131、132は、金属などの電気導電性を有するものであれば、如何なる物質を用いても形成されることができ、さらに多層構造を有することができる。例えば、外部電極131、132は、本体110上に配置され、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び第1電極層131a、132a上に配置され、導電性金属を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。このとき、第1電極層131a、132aは焼成電極であることができる。
【0033】
第1電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/またはこれを含む合金などを含むことができ、好ましくは銅(Cu)及び/またはニッケル(Ni)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
第1電極層131a、132aは、本体110の第1面及び第2面1、2を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後に焼成することで形成されることができる。または、導電性金属及びガラスを含むシートを転写する方式で形成されることもできる。
【0035】
第2電極層131b、132bは実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。第2電極層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層またはスズ(Sn)めっき層であることができ、ニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順次形成された形態であることもできる。
【0036】
図面では、積層セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の内部電極を形成する内部電極用導電性ペースト及び内部電極を詳細に説明する。
【0038】
上記内部電極用導電性ペーストは、金属粉末21及びITO粉末23を含むことができる。後述するように、内部電極用導電性ペーストがITO粉末23を含むことで積層セラミック電子部品100の絶縁抵抗を増加させ、高温信頼性を向上させることができる。
【0039】
上記内部電極用導電性ペーストに含まれる金属粉末21の種類は特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができ、ニッケル(Ni)を最も多く含有することができる。このとき、金属粉末21の平均粒径D50は150から300nmであることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。金属粉末21の平均粒径は、直径測定法またはASTM結晶粒度試験法など様々な方法で測定されることができる。
【0040】
ITO粉末23とは、インジウムスズ酸化物(Indium tin oxide)粉末を意味し、ITOはタッチスクリーンなどディスプレイパネルで透明電極物質として用いられているセラミック酸化物である。ITOは、インジウム酸化物(Indium oxide)及びスズ酸化物(Tin oxide)が一定の重量比で混合されていることができる。例えば、90wt%のインジウム酸化物(In)及び10wt%のスズ酸化物(SnO)からなることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
図5及び図6は、積層セラミック電子部品の内部電極を形成する内部電極用導電性ペーストの焼結収縮挙動を概略的に示した模式図である。
【0042】
図5を参照すると、上記内部電極用導電性ペーストに含まれたITO粉末23は、焼成工程の初期には金属粉末21とともに均一に分散されていることができる。この後、ITO粉末23は、温度の上昇とともに図6のように誘電体層を形成するセラミック粉末11側に拡散することができる。特に、ITO粉末23は、内部電極を形成する金属粉末21と誘電体層111を形成するセラミック粉末11との間の領域に拡散することができる。これにより、焼成後の内部電極121、122と誘電体層111との界面での絶縁抵抗を向上させ、リーク電流を遮断して積層セラミック電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0043】
上記内部電極用導電性ペーストに含まれたITO粉末23の含有量は、100モルの金属粉末21に対して0.33モル以下であることができる。上記条件を満たすことで積層セラミック電子部品100の絶縁抵抗及び高温信頼性を向上させることができる。ITO粉末23の含有量が100モルの金属粉末21に対して0.33モルを超過する場合、積層セラミック電子部品100の容量が過度に低下することがある。ITO粉末23の含有量の下限値は特に制限されるものではなく、0を超過することができる。
【0044】
一方、ITO粉末23の平均粒径D50は10から50nmであることができる。これにより、焼成過程で内部電極用導電性ペーストの金属粉末21と誘電体層を形成するセラミック粉末11との間の領域に容易に拡散することができる。これにより、積層セラミック電子部品100の絶縁抵抗及び高温信頼性を向上させることができる。ITO粉末23の平均粒径は、直径測定法またはASTM結晶粒度試験法など様々な方法で測定されることができる。
【0045】
一方、上記内部電極用導電性ペーストは、セラミック粉末22をさらに含むことができる。内部電極用導電性ペーストがセラミック粉末22を含むことにより金属粉末21の収縮開始を抑制することで金属粉末21の粒成長を制御し、内部電極121、122の連結性を向上させることができる。このとき、セラミック粉末22はABO系粉末を含むことができる。ここで、AはBa、Sr及びCaの少なくとも1つであり、BはTi、Hf及びZrの少なくとも1つであることができる。また、上記内部電極用導電性ペーストは、分散剤、バインダー、及び溶剤などを含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
上述したように、上記内部電極用導電性ペーストはITO粉末23を含むことができる。また、内部電極用導電性ペーストが焼成されて内部電極121、122が形成される過程で、ITO粉末23が内部電極を形成する金属粉末21と誘電体層111を形成するセラミック粉末11との間の界面に向かって拡散することができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、内部電極121、122に含まれたインジウム(In)の平均含有量が内部電極121、122に含まれたスズ(Sn)の平均含有量より高いことができる。ここで、インジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量とは、本体110の第1方向及び第2方向の断面または本体110の第2方向及び第3方向の断面における内部電極121、122の厚さ方向に等間隔の5つの地点のインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量を測定して平均値を測定したものを意味することができる。後述するように、上記インジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量は、TEM-EDS line profileによって測定することができる。
【0048】
内部電極121、122に含まれたインジウム(In)の平均含有量が内部電極121、122に含まれたスズ(Sn)の平均含有量より高いのは、上記内部電極用導電性ペーストに含まれたITO粉末23が、例えば、90wt%のインジウム酸化物(In)及び10wt%のスズ酸化物(SnO)からなるためである。一方、インジウム(In)及びスズ(Sn)の一部は、上記ITOが焼成過程で還元されるにつれて元素状態で存在することができ、インジウム(In)及びスズ(Sn)の一部は、インジウム(In)酸化物及びスズ(Sn)酸化物の形態で存在することもできる。すなわち、内部電極121、122は、焼成過程で還元されていないインジウムスズ酸化物(ITO)を含むことができる。
【0049】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、内部電極121、122がインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むが、内部電極121、122に含まれたインジウム(In)の平均含有量が内部電極121、122に含まれたスズ(Sn)の平均含有量よりも高いことで、高温信頼性及び絶縁抵抗に優れることができる。
【0050】
一実施形態において、誘電体層111はインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むことができる。ITO粉末23を含む内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを多数個積層して焼成して本体110を形成する過程で、インジウム(In)及びスズ(Sn)は誘電体層111側に拡散することができる。したがって、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110の全域にインジウム(In)及びスズ(Sn)が分布することで、積層セラミック電子部品100の高温信頼性及び絶縁抵抗が向上することができる。
【0051】
一実施形態において、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は0.6at%から1.0at%であることができる。また、一実施形態において、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は0.4at%から0.6at%であることができる。上記条件を満たす場合、積層セラミック電子部品100の高温信頼性及び絶縁抵抗が向上することができる。
【0052】
内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量が0.6at%未満であるか、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量が0.4at%未満の場合、高温信頼性及び絶縁抵抗の向上効果が僅かであることがある。また、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量が1.0at%超過であるか、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量が0.6at%超過である場合、積層セラミック電子部品100の容量が過度に低下することがある。
【0053】
一方、本発明の他の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、誘電体層111、及び誘電体層111を間に挟んで積層され、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含む複数の内部電極121、122を含む本体110、及び本体110の外側に配置される外部電極131、132を含み、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は、上記領域以外の領域におけるインジウム(In)の平均含有量より高く、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は、上記領域以外の領域におけるスズ(Sn)の平均含有量より高いことができる。
【0054】
より具体的には、上記領域以外の領域とは、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域を除いた領域を意味する。なお、上記領域以外の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量とは、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以外の領域で内部電極121、122の厚さ方向に等間隔の5つの地点でのインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量をそれぞれ測定してそれぞれの平均値を測定したものを意味することができる。
【0055】
すなわち、内部電極121、122がインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むが、インジウム(In)及びスズ(Sn)が内部電極121、122の厚さ方向の中央領域よりも誘電体層111との界面に隣接する領域により多く存在することでリーク電流を遮断して絶縁抵抗を向上させ、積層セラミック電子部品100の高温信頼性を向上させることができる。
【0056】
一方、上述したように、上記内部電極用導電性ペーストに含まれたITO粉末23は、誘電体層を形成するセラミック粉末11側に拡散するにつれて、焼成後の誘電体層111もインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むことができる。
【0057】
これにより、一実施形態において、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域におけるインジウム(In)の平均含有量より高いことができる。また、一実施形態において、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域におけるスズ(Sn)の平均含有量より高いことができる。
【0058】
すなわち、拡散により誘電体層111がインジウム(In)及びスズ(Sn)を含むが、インジウム(In)及びスズ(Sn)が誘電体層111の厚さ方向の中央領域よりも内部電極121、122との界面に隣接する領域により多く存在することでリーク電流を遮断して絶縁抵抗を向上させ、積層セラミック電子部品100の高温信頼性を向上させることができる。
【0059】
上述したように、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量は、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域で誘電体層111の厚さ方向に等間隔の5つの地点でのインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量をそれぞれ測定してそれぞれの平均値を測定したものを意味することができる。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0061】
まず、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を含むセラミックスラリーを製造した後、製造されたセラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上にドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート(sheet)状に塗布した後、乾燥してセラミックグリーンシートを用意した。
【0062】
次に、ニッケル(Ni)粉末及びITO粉末を含む内部電極用導電性ペーストを用意した後、上記セラミックグリーンシート上に上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法で塗布して内部電極パターンを形成した。このとき、ITO粉末はニッケル(Ni)粉末100モルに対して0.22モル添加した。この後、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層してセラミック積層体を形成し、上記積層体を圧着して個別の部品単位サイズに切断した。
【0063】
この後、切断された積層体を400℃以下、窒素雰囲気で加熱してバインダーを除去した後、焼成温度1200℃以下、水素濃度0.5%H以下の条件で焼成して誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110を用意した。次に、焼成された本体を銅(Cu)及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(Dipping)した後、電極焼成を経て外部電極131、132を形成することでサンプルチップを完成した。このとき、サンプルチップは2012(長さ×幅、2.0mm×1.2mm)サイズを有するように製造した。
【0064】
<インジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量の測定>
上記完成されたサンプルチップを本体110の第1方向への長さが半分の地点まで研磨した後、本体110の第2方向及び第3方向への断面において本体110の第2方向への長さ及び本体110の第3方向への長さがそれぞれ半分の地点に隣接した領域、すなわち、本体110の中央領域における内部電極121、122及び誘電体層111を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した。この後、上記TEMイメージを内部電極121、122及び誘電体層111の厚さ方向にEDS line profileを介して分析してインジウム(In)の含有量及びスズ(Sn)の含有量を測定した。
【0065】
図7は、誘電体層と内部電極との界面における透過電子顕微鏡(TEM;Trasmission Electron Microscope)イメージ(a)及びインジウム(In)の含有量を示したTEM-EDS line profile分析グラフ(b)であり、図8は、誘電体層と内部電極との界面における透過電子顕微鏡(TEM;Trasmission Electron Microscope)イメージ(a)及びスズ(Sn)の含有量を示したTEM-EDS line profile分析グラフ(b)である。このとき、誘電体層111より明るい領域は内部電極121、122であり、TEM-EDS line profile分析グラフに示された点線は、誘電体層111と内部電極121、122との界面を示す。
【0066】
図7及び図8を参照すると、内部電極121、122に含まれたインジウム(In)の平均含有量は内部電極121、122に含まれたスズ(Sn)の平均含有量より高いことが確認できる。また、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)の含有量は0.6at%から1at%であり、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるスズ(Sn)の含有量は0.4at%から0.6at%であることが確認できる。
【0067】
また、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量は、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以外の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量より高いことが確認できる。上記インジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量は、内部電極121、122の誘電体層111との界面から内部電極121、122の厚さ方向に2nm以外の領域で内部電極121、122の厚さ方向に等間隔の5つの地点におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量をそれぞれ測定してそれぞれの平均値を測定した。
【0068】
同様に、図7及び図8を介して誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以内の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量は、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量よりそれぞれ高いことが確認できる。上述したように、誘電体層111に含まれた上記インジウム(In)及びスズ(Sn)の平均含有量は、誘電体層111の内部電極121、122との界面から誘電体層111の厚さ方向に2nm以外の領域で誘電体層111の厚さ方向に等間隔の5つの地点におけるインジウム(In)及びスズ(Sn)の含有量をそれぞれ測定してそれぞれの平均値を測定した。
【0069】
図9aは、誘電体層及び内部電極を撮影した走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)イメージである。より具体的には、本体110の第1方向及び第2方向の断面を5000倍率でスキャンしたイメージであり、図9bは、図9aのSEMイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)を介してインジウム(In)の検出強度を測定したイメージであり、図9cは、図9aのSEMイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)を介してスズ(Sn)の検出強度を測定したイメージである。
【0070】
図9aから図9cを参照すると、インジウム(In)及びスズ(Sn)が誘電体層111及び内部電極121、122の全域に分布したことが確認できる。また、インジウム(In)及びスズ(Sn)が内部電極121、122の厚さ方向の中央領域よりも内部電極121、122のうち誘電体層111との界面と隣接する領域に多く分布したことが確認できる。これにより、積層セラミック電子部品100の絶縁抵抗及び高温信頼性が向上することができる。
【0071】
<MTTF及び容量測定>
まず、ITO粉末を含まない内部電極用導電性ペーストで製作された比較例とITO粉末の含有量がニッケル(Ni)粉末100モルに対して0.22モルである内部電極用導電性ペーストで製作されたサンプルチップをそれぞれ80個ずつ用意した。すなわち、比較例はインジウム(In)及びスズを含まない内部電極を含み、実施例はインジウム(In)及びスズ(Sn)を含む内部電極を含む。この後、HALT測定用基板2つに比較例によるサンプルチップ及び実施例によるサンプルチップをそれぞれ40個ずつ実装した後、150℃、87.5V(DC)の印加条件で過酷信頼性テスト(HALT)を12時間実施して、平均故障時間(MTTF)及び初期故障時間(B 0.43)を測定した。
【0072】
また、LCR meterを用いて1kHz、AC 0.5V/μmの条件で比較例及び実施例のそれぞれ80個のサンプルチップの容量及び損失係数(DF;Dissipation factor)を測定した後、その平均値を測定して表1に記載した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1を参照すると、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含む内部電極を含む実施例の場合、平均故障時間(MTTF)及び初期故障時間に優れることが確認できる。一方、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含まない比較例の場合、平均故障時間(MTTF)及び初期故障時間が実施例に比べて低下することが確認できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0076】
なお、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に記載されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【符号の説明】
【0077】
100 積層セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
11 誘電体層を形成するセラミック粉末
21 金属粉末
22 セラミック粉末
23 ITO粉末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c