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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】入力装置、及び、入力判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/52 20060101AFI20240806BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01H13/52 B
H01H13/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023542198
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009533
(87)【国際公開番号】W WO2023021746
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2021132669
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤木 孝司
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169974(WO,A1)
【文献】特開2016-115401(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 25/00 - 25/06
H01H 36/00 - 36/02
H01H 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者による押圧操作が可能な操作部と、
前記操作部に対する押圧操作によって出力値が変化する操作検知センサと、
前記操作検知センサの出力値に基づき押圧操作の有無を判定するプロセッサと、
前記操作部の押圧操作に伴い操作者に対して操作感触を生成する感触生成部と
を備え、
前記プロセッサは、前記押圧操作時の経過時間に対する前記感触生成部が生成する前記操作感触の感触特性に応じた出力値を前記操作検知センサが出力し、前記操作検知センサの出力値の時間変化度合が所定の期間以上にわたって前記感触特性の傾きに応じており、前記所定の期間において、前記操作検知センサの出力値の時間変化度合が前記感触特性の所定の傾きの範囲内にある場合に、前記押圧操作が完了したと判定する、入力装置。
【請求項2】
前記操作部は押圧操作によって押圧方向に沿って変形可能又は変位可能であって、
前記操作部は前記押圧操作による押圧力を前記感触生成部に伝達する押圧部を有し、
前記感触生成部は、前記押圧力を受けて変形することで、操作者に対して前記操作感触を与える、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記感触生成部は、所定の押圧力を受けて反転変形するドーム部を有しており、前記感触特性は前記ドーム部の反転動作時の押圧力の特性を表す、請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記感触特性は、第1押圧変形期間及び反転期間をこの順で有し、
前記プロセッサは、前記操作検知センサの出力値が前記反転期間における前記感触特性の傾きに応じている場合に、前記押圧操作が完了したと判定する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記感触特性は、前記第1押圧変形期間及び前記反転期間の後に第2押圧変形期間をさらに有し、
前記プロセッサは、前記操作検知センサの出力値が前記反転期間における前記感触特性の傾きに応じている場合に、前記押圧操作が完了したと判定する、請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記所定の期間と、前記所定の傾きの範囲とは、調整可能である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項7】
前記操作検知センサは、前記操作部に対する押圧操作によって静電容量が変化する静電容量式の操作検知センサである、請求項1乃至のいずれか1項の入力装置。
【請求項8】
操作者による押圧操作が可能な操作部と、
前記操作部に対する押圧操作によって出力値が変化する操作検知センサと、
前記操作検知センサの出力値に基づき押圧操作の有無を判定するプロセッサと、
前記操作部の押圧操作に伴い操作者に対して操作感触を生成する感触生成部と
を備える入力装置において、
前記押圧操作時の経過時間に対する前記感触生成部が生成する前記操作感触の感触特性に応じた出力値を前記操作検知センサが出力し、前記操作検知センサの出力値の時間変化度合が所定の期間以上にわたって前記感触特性の傾きに応じており、前記所定の期間において、前記操作検知センサの出力値の時間変化度合が前記感触特性の所定の傾きの範囲内にある場合に、前記押圧操作が完了したと判定する、入力判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、及び、入力判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気的に接続可能に対向して配置され、一方が操作対象となる電極を有する電極部と、前記対向する電極部間に配設され、導電体の入力手段による前記操作対象の電極部に対する圧力に応じて電気抵抗が変化する感圧層と、を備えた入力部における静電容量と圧力の変化を検出して、前記入力手段の操作状態、操作位置及び操作圧力を算出する入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/176748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対向する電極部間の静電容量はノイズの影響を大きく受けて変化する。また、対向する電極部間の静電容量は、検出しようとする操作とは異なる操作によっても変化する場合がある。このため、対向する電極部間の静電容量の増大だけに基づいて操作の有無を判定すると、誤判定が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できる入力装置、及び、入力判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の入力装置は、操作者による押圧操作が可能な操作部と、前記操作部に対する押圧操作によって出力値が変化する操作検知センサと、前記操作検知センサの出力値に基づき押圧操作の有無を判定するプロセッサと、前記操作部の押圧操作に伴い操作者に対して押圧方向に沿った操作感触を生成する感触生成部とを備え、前記プロセッサは、前記押圧操作時の経過時間に対する前記感触生成部の押圧力の特性を表す感触特性に応じた出力値を前記操作検知センサが出力した場合に、前記押圧操作が完了したと判定する。
【発明の効果】
【0007】
ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できる入力装置、及び、入力判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態の入力装置100の構成及び動作の一例を示す断面図である。
図1B】実施形態の入力装置100の構成及び動作の一例を示す断面図である。
図2】入力装置100に行う押圧操作を完了する場合のFS特性を示す図である。
図3】入力装置100のプロセッサ140が利用する感触特性を説明する図である。
図4A】静電容量の時間変化特性における傾きの求め方を説明する図である。
図4B】静電容量の時間変化特性における傾きの求め方を説明する図である。
図5】静電容量の時間的変化を示す図である。
図6A】比較用の静電容量の時間的変化を示す図である。
図6B】比較用の静電容量の時間的変化を示す図である。
図7】入力装置100のプロセッサ140が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
図8A】実施形態の第1変形例の入力装置100M1の構成及び動作の一例を示す断面図である。
図8B】実施形態の第1変形例の入力装置100M1の構成及び動作の一例を示す断面図である。
図9A】実施形態の第2変形例の入力装置100M2の構成及び動作の一例を示す断面図である。
図9B】実施形態の第2変形例の入力装置100M2の構成及び動作の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の入力装置、及び、入力判定方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1A及び図1Bは、実施形態の入力装置100の構成及び動作の一例を示す断面図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す。平面視とはXY面視することをいう。上下関係は普遍的なものではない。
【0011】
図1Aは、指先FTがタッチしている状態(タッチのみの状態)を示す。図1Aに示す状態は、指先FTが入力装置100の上面に触れているだけで、下方向に押圧されていない状態である。このため、図1Aに示す状態は、押圧前の初期状態である。図1Bは、指先FTがタッチして、かつ、押圧している状態(タッチ&押圧の状態)を示す。図1Bに示す状態は、図1Aに示す状態に比べて、入力装置100が下方に押圧されている。
【0012】
<入力装置100の構成と動作>
入力装置100は、筐体110、静電センサ120、メタルコンタクト130、及びプロセッサ140を含む。静電センサ120は、操作検知センサの一例であり、メタルコンタクト130は、感触生成部の一例である。
【0013】
入力装置100は、操作者が手等の体(生体)の一部で押圧操作をすることが可能であり、静電センサ120の出力値が所定の条件を満たした場合に、押圧操作を完了することができる入力装置である。押圧操作を完了するとは、例えば操作者の押圧操作によって選択している操作内容が確定することをいう。
【0014】
また、入力装置100は、押圧操作が完了したかどうかを判定する際に、静電センサ120の出力値を用い、メタルコンタクト130の出力は用いない。メタルコンタクト130は、感触(触感)を操作者に提供するために用いられ、メタルコンタクト130の電気的な接続状態は、押圧操作が完了したかどうかの判定には利用されない。以下では、一例として、操作者が指先FTで入力装置100に押圧操作を行う形態について説明する。
【0015】
ここでは一例として、入力装置100は、押圧操作を受け付けるために用いる操作検知センサの一例として静電センサ120を用いる形態について説明するが、操作検知センサとしては、インダクティブセンサ(誘導型近接センサ)、光学系センサ、赤外線センサ、圧力センサ、歪センサ、磁気センサ等を用いてもよい。
【0016】
筐体110は、静電センサ120、メタルコンタクト130、及びプロセッサ140を収容又は保持するケースである。筐体110は、検知センサとして静電センサ120を用いる場合には、樹脂等の誘電体で作製すればよい。静電センサ120で指先FTの接近を検出可能にするためである。筐体110は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ゲーム機、車両の内部又は外部、及び、その他の入力操作を行う装置等の筐体又は筐体の一部である。
【0017】
筐体110は、固定部110Aと操作部110Bとを有する。固定部110Aは、入力装置100が配置される部位に固定される。固定部110Aは、基部111A、ガイド部112A、及び脚部113Aを有する。
【0018】
基部111Aは、固定部110Aのベースとなる板状の部分である。基部111Aの上面には、ガイド部112Aが一体的に設けられるとともに、静電センサ120の電極120Aが配置されている。
【0019】
ガイド部112Aは、基部111Aの上面から上方に延在する壁部であり、固定部110Aに対して操作部110Bを上下方向に移動可能に案内するとともに保持する部分である。ガイド部112Aには、操作部110Bの係合部112Bに対応した形状を有し上下方向に延在する溝等が設けられていてもよい。脚部113Aは、固定部110Aを入力装置100が配置される部位に固定する部分である。
【0020】
操作部110Bは、カバー部111B、係合部112B、及び押圧部113Bを有し、固定部110Aに対して移動可能(可動)に設けられている。移動可能であることは、変位可能であることである。ここでは、操作部110Bのカバー部111Bの上面に指先FTが直接触れる(タッチする)形態について説明するが、カバー部111Bの上面を覆う部材が設けられていてもよく、この場合には指先FTは、カバー部111Bの上面を覆う部材の上面に触れることになる。
【0021】
カバー部111Bは、操作部110Bのベースになる部分であり、指先FTによって触れられて押圧操作が行われる上面を有する。カバー部111Bの下面には静電センサ120の電極120Bが設けられている。
【0022】
ここでは、押圧操作とは、カバー部111Bの上面を下方向に押し下げる操作をいう。具体的には、図1Aに示す状態から、図1Bに示すように操作部110Bを押し下げる操作が押圧操作である。カバー部111Bに押圧操作が行われることは、入力装置100に押圧操作が行われることと同義である。
【0023】
係合部112Bは、カバー部111Bの下面から下方に延在する壁部であり、ガイド部112Aに対して摺動することによって、ガイド部112Aによって案内される。係合部112Bは、カバー部111Bと一体的に設けられていてもよいし、カバー部111Bとは別の部材として設けられていて、カバー部111Bに取り付けられていてもよい。係合部112Bは、固定部110Aに対する操作部110Bの位置決めをするとともに、固定部110Aに対して操作部110Bを上下方向に移動可能にするために設けられている。
【0024】
押圧部113Bは、カバー部111Bの下面から下方に延在する棒状の部材である。押圧部113Bは、カバー部111Bと一体的に設けられていてもよいし、カバー部111Bとは別の部材として設けられていて、カバー部111Bに取り付けられていてもよい。ここでは一例として、押圧部113Bはカバー部111Bとは別の部材であり、一例としてゴム製であることとする。
【0025】
押圧部113Bは、図1Aに示す初期状態では、下端がメタルコンタクト130の上端に当接している。この状態で、押圧部113Bの下端は、メタルコンタクト130の上端を少しだけ下方に押圧しており、メタルコンタクト130は、自然長に比べて少しだけ上下方向に圧縮されている。初期状態における押圧部113Bとメタルコンタクト130のガタつきを防ぐためである。
【0026】
押圧部113Bは、図1Aに示す初期状態から入力装置100に押圧操作が行われると、図1Bに示すようにメタルコンタクト130の中央部を押し潰し、メタルコンタクト130を反転動作させる。
【0027】
静電センサ120は、電極120A及び120Bを有する。電極120Aは、固定部110Aの基部111Aの上面に設けられ、電極120Bは、操作部110Bのカバー部111Bの下面に設けられている。電極120A及び120Bは、対向して配置されており、プロセッサ140に接続されている。
【0028】
静電センサ120の出力値は電圧値であり、静電センサ120の静電容量に基づいた値である。静電センサ120の静電容量は、電極120A及び120Bの間の静電容量であり、図1Aに示す初期状態から押圧操作が行われると、電極120A及び120Bの間の距離(電極間距離)が短くなることによって静電容量が変化し、静電センサ120の出力値(電圧値)も静電容量の変化に応じて変化する。このように、静電センサ120の出力値(電圧値)から静電センサ120の静電容量が分かる。
【0029】
メタルコンタクト130は、押圧力を受けて反転動作するメタルドームであり、金属部材で実現される金属ばねである。メタルコンタクト130は、ドーム部131と基部132とを有する。ドーム部131は、メタルコンタクト130の中央部の上側でドーム状に突出し、反転動作可能な部分である。基部132は、ドーム部131の周囲に延在する部分であり、平面視でドーム部131の周囲を囲んでいる。
【0030】
メタルコンタクト130は、入力装置100に押圧操作が行われて、ドーム部131の上面が押圧部113Bによって下方に押圧されると、基部132に対してドーム部131が反転し、図1Bに示すように潰れた状態になる。このようにメタルコンタクト130が反転動作を行うときに、ドーム部131が反転する際の反力が、押圧部113Bを介してカバー部111Bに伝わり、操作者の指先FTに感触が提供される。すなわち、メタルコンタクト130は、操作部110Bの押圧操作に伴い操作者に対して押圧方向に沿った操作感触を生成する。
【0031】
上述したように、メタルコンタクト130は、感触を操作者に提供するためだけに用いられ、メタルコンタクト130の電気的な接続状態は、押圧操作が完了したかどうかの判定には利用されない。このため、メタルコンタクト130を入力装置100内の回路等に接続する必要はない。また、このようにメタルコンタクト130は感触を操作者に提供するためだけに用いられるため、メタルコンタクト130の代わりに、感触を提供可能な部材を用いてもよい。そのような部材は、金属製であっても、非金属製であってもよい。
【0032】
プロセッサ140は、静電センサ120の出力値に基づき押圧操作の有無を判定する。また、プロセッサ140は、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧力の特性を表す感触特性に応じた出力値を静電センサ120が出力した場合に、押圧操作が完了したと判定する。このような判定の詳細については後述する。
【0033】
<FS特性>
図2は、入力装置100に押圧操作を行った場合に発生するFS(Force-Stroke)特性を示す図である。横軸は入力装置100の操作部110Bを下方に押し込むストロークSであり、縦軸は操作部110Bを下方に押し込む際に必要な力Fである。力Fは押圧力であり、押圧時のメタルコンタクト130の反力に等しい。図2に示すFS特性は、入力装置100全体のFS特性である。
【0034】
図2に示すように、ストロークSが0のときには力Fは0であり、押圧操作を開始してストロークSを増大させるには力Fを増大させることになる。力Fが極大値F1に到達すると、ストロークSはS1になる。このとき、メタルコンタクト130は反転動作する寸前である。
【0035】
操作部110Bをさらに押圧すると、ストロークSはS1を超えるが、メタルコンタクト130が反転動作するため、力Fは極大値F1よりも小さくなる。操作部110Bをさらに押圧すると、ストロークSがS2のところで力Fが極小値F2を取り、操作部110Bをさらに押圧すると力Fが極小値F2よりも再度増大する。
【0036】
ストロークSがS2の状態は、押圧部113Bが反転動作しているメタルコンタクト130を押し潰した状態である。入力装置100は、メタルコンタクト130の電気的な接続状態を押圧操作が完了したかどうかの判定に用いないが、入力装置100は、メタルコンタクト130が押し潰された時点で押圧操作が完了したと判定可能なように構成される。この詳細については図3を用いて後述する。
【0037】
ストロークSがS2で力Fが極小値F2の状態から、力Fが再度増大している状態は、反転動作して押し潰されているメタルコンタクト130を押圧部113Bがさらに押圧し、押し潰されているメタルコンタクト130を介して固定部110Aの基部111Aを押圧している状態であり、筐体110の撓み等によってストロークSがS2よりも僅かに増大する。
【0038】
入力装置100は、押圧操作の完了を判定する際に、FS特性自体を利用するのではなく、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧力の特性を表す感触特性を利用する。メタルコンタクト130の押圧力とは、メタルコンタクト130の押圧操作に必要な押圧力である。感触特性について図3を用いて説明する。
【0039】
<感触特性と静電容量の時間変化特性>
図3は、入力装置100のプロセッサ140が利用する感触特性を説明する図である。図3において、上段に感触特性の一例を示し、下段に静電容量の時間変化特性の一例を示す。図3において、横軸は時間を表し、上段の縦軸は力Fを表し、下段の縦軸は静電センサ120の静電容量を表す。
【0040】
図3の上段に示す感触特性は、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧操作に必要な押圧力の特性である。入力装置100の押圧操作は、操作部110Bを下方に押圧する操作であり、複数の操作者が通常の操作方法で押圧操作を行う場合に、押圧操作の開始から完了までの所要時間は、ある時間の範囲内に収まると考えられる。通常の操作方法とは、例えば、故意にゆっくりと押圧操作を行うことや、故意に素早く押圧操作を行うことを含まず、普通に操作することをいう。
【0041】
図3の上段に示す感触特性は、複数の操作者が通常の操作方法で押圧操作を行う場合の平均的な所要時間で力Fの変化を表したものである。一例として、時刻t1で指先FTが操作部110Bにタッチし、時刻t2で押圧操作を開始し、時刻t3で力Fが極大値F1に到達し、時刻t4で力Fが極小値F2に低下している。平均的な所要時間で押圧操作を行うと、図2に示すFS特性の横軸を時間軸に変換したような図3の上段に示す感触特性が得られる。
【0042】
感触特性における時刻t2から時刻t3の期間は、メタルコンタクト130が変形する第1押圧変形期間の一例である。感触特性における時刻t3から時刻t4の期間は、メタルコンタクト130が反転動作する反転期間の一例である。感触特性における時刻t4以降の期間は、メタルコンタクト130が変形する第2押圧変形期間の一例である。感触特性は、第1押圧変形期間、反転期間、及び第2押圧変形期間をこの順に有する。
【0043】
図3の下段に示す静電容量の時間変化特性は、図3の上段に示す感触特性が得られるように押圧操作を行った場合の静電センサ120の静電容量の時間変化を表している。静電容量はカウント値である。時刻t1で指先FTが操作部110Bにタッチすると静電容量がC1に増大する。時刻t1から、押圧操作を開始する時刻t2までは静電センサ120の電極120A及び120Bの間の距離が変わらないため、静電容量はC1で略一定である。
【0044】
時刻t2で押圧操作を開始すると、ストロークSが増え始めて電極120A及び120Bの間の距離が短くなるので徐々に静電容量が増加し始める。時刻t3でメタルコンタクト130が反転動作して潰れ始めると、電極120A及び120Bの間の距離が急激に短くなるので、メタルコンタクト130が完全に潰れる時刻t4にかけて静電容量が急激に増大する。時刻t4よりも後では、電極120A及び120Bの間の距離は変わらないので、静電容量は略一定になる。このように、静電容量の時間変化特性は、感触特性に基づいて変化するものである。
【0045】
複数の操作者が通常の操作方法で押圧操作を行った場合には、時刻t3から時刻t4のように、メタルコンタクト130が反転動作して潰れるときに静電容量が増大する割合は、ある範囲内に入ると考えられる。
【0046】
静電容量が増大する割合は、経過時間に対する静電容量の増大を表す傾きである。すなわち、静電センサ120の静電容量の傾きが、ある傾きの範囲内に入れば、操作者が押圧操作を完了させたと考えることができる。
【0047】
図3の下段に示す静電容量の時間変化特性には、時刻t3から時刻t4における静電容量の傾きの一例を示す直線Lを実線で示す。直線Lは、時刻t3から時刻t4までの間のある時点における静電容量の傾きを示す。
【0048】
入力装置100は、静電センサ120の静電容量の傾きが、ある傾きの範囲内に入れば、押圧操作が完了したと判定する。平均的な所要時間で押圧操作が行われて静電容量が急激に変化する場合の静電容量の傾きは、ある傾きの範囲内に入ると考えられるからである。
【0049】
ここで、静電容量の時間変化特性における時刻t3から時刻t4の特性は、感触特性の時刻t3から時刻t4の力Fの変化に応じた特性である。このため、時刻t3から時刻t4における静電センサ120の出力値は、感触特性の時刻t3から時刻t4の力Fの変化に応じた出力値である。
【0050】
入力装置100は、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧力の特性を表す感触特性に応じた出力値を静電センサ120が出力した場合に、押圧操作が完了したと判定することになる。感触特性における時刻t3から時刻t4の期間は反転期間であるため、プロセッサ140は、静電センサ120の出力値が反転期間における感触特性の傾きに応じている場合に、押圧操作が完了したと判定する。
【0051】
入力装置100は、静電センサ120の静電容量の値の変化だけではなく、静電容量の時間的な変化を表す傾きを用いることにより、ノイズに対するロバスト性を向上させ、押圧操作の完了の判定精度を向上させることによって、判定の信頼性を向上させる。
【0052】
<静電容量の傾きの求め方と押圧操作の完了の判定方法>
図4A及び図4Bは、静電容量の時間変化特性における傾きの求め方を説明する図である。図4A及び図4Bにおいて、横軸は時間(s)、縦軸は静電容量(カウント値)を表す。図4Aには、静電容量の時間変化特性を実線で示し、静電容量の基準値を破線で示す。
【0053】
図4Aには、一例として、7回連続で押圧操作を繰り返し行った場合の静電容量の時間変化特性を示す。図4Bには、1回目の押圧操作を行ったときの静電容量の時間変化特性を示す。図4Bは、縦軸及び横軸を図4Aよりも拡大して示す。また、図4Bには、所定のサンプリング周期でサンプリングしたカウント値としての静電容量の各々を点で示す。
【0054】
図4Bのような静電容量の時間変化特性において、各静電容量について、5回前のサンプリングで取得した静電容量との差を時間差で割ることによって、静電容量の傾きを求める。図4Bには、一例として時刻が3.22(s)のときの静電容量について求めた傾きを直線Lで表す。
【0055】
直線Lで表されるような大きな傾きで静電容量が急激に変化するときには、静電容量の傾きがある程度大きい状態が連続的に発生すると考えられる。操作者が押圧操作を完了させようとするときには、図3に示す静電容量の時間変化特性の時刻t3から時刻t4のように、ある程度の期間にわたって静電容量が急激に変化すると考えられるからであり、また、静電容量が急激に変化するときには、静電容量の傾きがある程度大きい状態が連続的に発生すると考えられるからである。
【0056】
このため、入力装置100は、静電容量の傾きが第1閾値THL以上になってから、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が連続的に所定回数以上にわたって得られた場合に、押圧操作が完了したと判定する。静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が連続的に所定回数以上にわたって得られることは、このような状態が所定の期間以上にわたって生じることであるため、プロセッサ140は、静電センサ120の出力値の時間変化度合が所定の期間以上にわたって感触特性の傾きに応じている場合に、押圧操作が完了したと判定することになる。
【0057】
第1閾値THLは、静電容量の傾きの下限に相当する閾値であり、第2閾値THHは、静電容量の傾きの上限に相当する閾値である。第1閾値THLと第2閾値THHは図5に示す。なお、ここでは静電容量の傾きが第1閾値THL以上になってから、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が連続的に所定回数以上にわたって得られた場合に、押圧操作が完了したと判定するが、静電容量の傾きが第1閾値THL以上になってから、静電容量の傾きが第1閾値THL以上の状態が連続的に所定回数以上にわたって得られた場合に、押圧操作が完了したと判定してもよい。
【0058】
<静電容量の時間的変化>
図5は、静電容量の時間的変化を示す図である。図5において、横軸は時間(s)、左側の縦軸は静電容量(カウント値)、右側の縦軸は静電容量の傾きを表す。図5には、図4Bに示す静電容量の時間変化特性と同一の特性に加えて、各静電容量について5つ前の静電容量との差を時間差で割って求めた静電容量の傾きの分布を実線で示す。また、図5には、静電容量の傾きの第1閾値THLと第2閾値THHを示す。
【0059】
ここでは、一例として、第1閾値THLは3、第2閾値THHは11であり、押圧操作が完了したと判定する連続的な所定回数は8回であることとする。また、静電容量の傾きは、5回前のサンプリングで取得した静電容量との差を時間差で割ることによって求める。
【0060】
図5では、3.1(s)あたりから静電容量が増大し始め、3.1(s)と3.2(s)の間の時刻t11において、静電容量の傾きが第1閾値THL以上になっている。そして、時刻t11以降は静電容量の傾きが第1閾値THL以上の状態が連続し、3.2(s)を過ぎた辺りで静電容量の傾きが極大値を取っている。静電容量の傾きの極大値は、第2閾値THH以下である。そして、その後の時刻t12において、連続的に8回にわたって静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が得られている。このため、入力装置100は、押圧操作が完了したと判定する。
【0061】
<比較用の静電容量の時間的変化>
図6A図6Bは、比較用の静電容量の時間的変化を示す図である。図6Aには、押圧操作を素早く行った場合の静電容量の時間的変化を示し、図6Bには、押圧操作をゆっくり行った場合の静電容量の時間的変化を示す。押圧操作を素早く行うとは、複数の操作者が通常の操作方法で押圧操作を行う場合に、生じ得ないほど素早く押圧操作を行うことである。また、押圧操作をゆっくり行うとは、複数の操作者が通常の操作方法で押圧操作を行う場合に、生じ得ないほど、ゆっくり押圧操作を行うことである。
【0062】
図6Aは、押圧操作を素早く行った場合の静電容量の時間的変化を表すため、図5に比べて短い期間における静電容量と傾きの変化を示す。押圧操作を素早く行った場合には、静電容量のサンプル数が少なくなり、また、より短い時間で急激に静電容量が増大するため、静電容量の傾きが大きくなる。このため、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下になるのは、連続で2回であった。約2.53(s)において、静電容量の傾きは、第2閾値THHを超えてしまった。このように、押圧操作を素早く行った場合には、入力装置100は、押圧操作が完了したとは判定しないことになる。また、瞬間的なノイズが入った場合にも、入力装置100は、押圧操作が完了したとは判定しないことになる。
【0063】
また、図6Bは、押圧操作をゆっくり行った場合の静電容量の時間的変化を表すため、図5に比べて長い期間における静電容量と傾きの変化を示す。押圧操作をゆっくり行った場合には、静電容量のサンプル数が多くなり、また、より長い時間で静電容量が緩やかに増大するため、静電容量の傾きが小さくなる。このため、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下になるのは、時刻6.8(s)辺りであり、連続回数が6回であった。このように、押圧操作をゆっくり行った場合には、入力装置100は、押圧操作が完了したとは判定しないことになる。また、時間経過に伴って緩やかに変化するノイズが入った場合にも、入力装置100は、押圧操作が完了したとは判定しないことになる。
【0064】
<フローチャート>
図7は、入力装置100のプロセッサ140が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。図7に示す処理は、入力装置100が実行する入力判定方法を表す。
【0065】
プロセッサ140は、処理をスタートさせると、パラメータを設定する(ステップS1)。パラメータは、例えば、第1閾値THL、第2閾値THH、静電容量を求める際に用いる過去の静電容量のサンプリング回数、及び、静電容量の傾きが連続的に第1閾値THL以上で第2閾値THH以下になる連続回数である。図5に示す例では、第1閾値THLが3、第2閾値THHが11、過去の静電容量のサンプリング回数が5回前、連続回数が8回である。
【0066】
上述のパラメータは、すべてステップS1で調整可能である。これらのうち、第1閾値THLと第2閾値THHは、静電容量の傾きの範囲を規定する。また、静電容量の傾きが連続的に第1閾値THL以上で第2閾値THH以下になる連続回数は、静電容量の傾きが連続的に第1閾値THL以上で第2閾値THH以下になる所定の期間に相当する。このため、静電容量の傾きの範囲と、静電容量の傾きが連続的に第1閾値THL以上で第2閾値THH以下になる所定の期間とは、調整可能である。
【0067】
プロセッサ140は、静電センサ120の静電容量を取得し、内部メモリに保存する(ステップS2)。ステップS2の処理により、所定のサンプリング周期で静電容量がサンプリングされる。プロセッサ140は、N回分のサンプリングで取得した静電容量をメモリに保持する。N回は、過去の静電容量のサンプリング回数が5回前であることから、5回よりも1回多い6回である。なお、プロセッサ140は、サンプリング回数が6回前よりも前の静電容量は、順次消去する。
【0068】
プロセッサ140は、N回分の静電容量がメモリに保存されているかどうかを判定する(ステップS3)。プロセッサ140は、N回分の静電容量がメモリに保存されていない(S3:NO)と判定すると、フローをステップS2にリターンする。
【0069】
プロセッサ140は、ステップS3においてN回分の静電容量がメモリに保存されている(S3:YES)と判定すると、今回の制御周期のステップS2でサンプリングした静電容量と、N-1回前にサンプリングした静電容量の差分を、N-1回分のサンプリング周期の時間で割ることにより、静電容量の傾きを求める(ステップS4)。図5に示す例では、今回サンプリングした静電容量と、5回前にサンプリングした静電容量の差分を、5回分のサンプリング周期の時間で割ることにより、静電容量の傾きを求めることになる。
【0070】
プロセッサ140は、静電容量の傾きが第1閾値THL以上、かつ、第2閾値THH以下であるかどうかを判定する(ステップS5)。図5に示す例では、プロセッサ140は、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の範囲にあるかどうかを判定することになる。
【0071】
プロセッサ140は、静電容量の傾きが第1閾値THL以上、かつ、第2閾値THH以下ではない(S5:NO)と判定すると、判定結果を表す判定結果データbをリセットする(ステップS5A)。プロセッサ140は、ステップS5Aの処理を終えると、フローをステップS2にリターンする。なお、ここでは判定結果を表す判定結果データbをリセットする形態について説明するが、ステップS5Aでは、プロセッサ140は、判定結果データbをインクリメントしないようにする、又は、判定結果データbをデクリメントするようにしてもよい。このようにしても、連続的に第1閾値THL以上で第2閾値THH以下になる所定の期間を設定できるからである。
【0072】
プロセッサ140は、ステップS5において、静電容量の傾きが第1閾値THL以上、かつ、第2閾値THH以下である(S5:YES)と判定すると、判定結果を表す判定結果データbの値をインクリメントする(ステップS6)。
【0073】
プロセッサ140は、判定結果データbの値がx以上であるかどうかを判定する(ステップS7)。xは、静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が連続的に得られている回数を表す。例えば、xを8に設定すれば、ステップS7の処理では、図5に示す例で説明したように、連続的に8回にわたって静電容量の傾きが第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下の状態が得られているかどうかを判定することになる。
【0074】
プロセッサ140は、判定結果データbの値がx以上ではない(S7:NO)と判定すると、フローをステップS2にリターンする。
【0075】
プロセッサ140は、判定結果データbの値がx以上である(S7:YES)と判定すると、押圧操作が完了したと判定する(ステップS8)。図5に示す例では、静電容量の傾きが連続して8回数以上にわたって第1閾値THL以上で、かつ、第2閾値THH以下である場合に、プロセッサ140は押圧操作が完了したと判定することになる。
【0076】
以上のように、入力装置100は、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧力の特性を表す感触特性に応じた出力値を静電センサ120が出力した場合に、押圧操作が完了したと判定する。
【0077】
したがって、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できる入力装置100を提供することができる。
【0078】
また、静電容量の変化に基づいて操作の有無を判定することが難しい場合がある。特に、押圧操作の完了の有無を判定するような重要度の高い操作の有無を静電容量の変化に基づいて判定した場合に誤判定が生じると、入力装置としての信頼性の問題が生じる。これに対して、入力装置100は、押圧操作時の経過時間に対するメタルコンタクト130の押圧力の特性を表す感触特性に応じた出力値を静電センサ120が出力した場合に、押圧操作が完了したと判定するので、ノイズに対するロバスト性が高く、信頼性を向上させることができる。
【0079】
また、操作部110Bは押圧操作によって押圧方向に沿って変位可能であって、操作部110Bは押圧操作による押圧力をメタルコンタクト130に伝達する押圧部113Bを有し、メタルコンタクト130は、押圧力が掛けられて変形することで、操作者に対して操作感触を与えるので、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できるとともに、メタルコンタクト130の変形に伴う感触を提供することができる。
【0080】
また、メタルコンタクト130は、所定の押圧力を受けて反転変形するドーム部131を有しており、感触特性はメタルコンタクト130の反転動作時の押圧力の特性を表すので、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できるとともに、メタルコンタクト130の反転動作に伴う感触を提供することができる。メタルコンタクト130の反転動作でクリック感を提供できるため、操作時の感触が良好な入力装置100を提供することができる。
【0081】
感触特性は、第1押圧変形期間、反転期間、及び第2押圧変形期間をこの順で有し、プロセッサ140は、静電センサ120の出力値が反転期間における感触特性の傾きに応じている場合に、押圧操作が完了したと判定するので、ノイズや押圧操作以外の操作による静電容量の変化を排除して、誤判定を効果的に抑制できる入力装置100を提供することができる。なお、感触特性は、第1押圧変形期間及び反転期間をこの順に有する特性であってもよい。例えば、反転期間で操作が完了する感触生成部を用いる場合には、感触特性は、第2押圧変形期間を含まなくてよい。
【0082】
プロセッサ140は、静電センサ120の出力値の時間変化度合が所定の期間以上にわたって感触特性の傾きに応じている場合に、押圧操作が完了したと判定するので、所定の期間以上にわたって感触特性の傾きに応じていることで、ノイズや押圧操作以外の操作による静電容量の変化をより効果的に排除して、誤判定をより効果的に抑制できる入力装置100を提供することができる。
【0083】
また、プロセッサ140は、所定の期間において、静電センサ120の出力値の時間変化度合が感触特性の所定の傾きの範囲内にある場合に、押圧操作が完了したと判定するので、通常の操作方法で押圧操作が行われた場合に、押圧操作が完了したことを判定でき、誤判定をより効果的に抑制できる入力装置100を提供することができる。
【0084】
また、押圧操作の完了の有無を判定する際の所定の期間と所定の傾きの範囲とは調整可能であるので、温度やその他の外部要因によって静電容量の値が変動する際に変動の影響を相殺することができる。また、用途等に応じて、押圧操作の完了の有無を判定する基準を調整でき、使い勝手の良好な入力装置100を提供することができる。
【0085】
また、静電センサ120は、操作部110Bに対する押圧操作によって静電容量が変化する静電容量式の静電センサ120であるので、静電容量に応じて、押圧操作の完了の有無を適切に判定可能な入力装置100を提供することができる。
【0086】
<第1変形例>
図8A及び図8Bは、実施形態の第1変形例の入力装置100M1の構成及び動作の一例を示す断面図である。入力装置100M1は、図1A及び図1Bに示す入力装置100のメタルコンタクト130の代わりにタクトスイッチ(押しボタンスイッチ)130M1を触感生成部として含む構成を有する。
【0087】
タクトスイッチ130M1は、ボタン131M1と基部132M1を有し、基部132M1に対して、ボタン131M1を押し込むと、メタルコンタクト130と同様にクリック感が提供されるスイッチである。このようなタクトスイッチ130M1をメタルコンタクト130の代わりに用いることによって、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できる入力装置100M1を提供することができる。
【0088】
<第2変形例>
図9A及び図9Bは、実施形態の第2変形例の入力装置100M2の構成及び動作の一例を示す断面図である。入力装置100M2は、図1A及び図1Bに示す入力装置100の筐体110及び静電センサ120の代わりに筐体110M2及び静電センサ120M2をそれぞれ含む構成を有する。
【0089】
筐体110M2は、図1A及び図1Bに示す筐体110の固定部110Aと操作部110Bを一体化し、図1A及び図1Bに示す筐体110のカバー部111Bに相当する部分を変形可能なドーム状のカバー部111MB2に置き換えた構成を有する。カバー部111MB2は、触感生成部の一例である。
【0090】
筐体110M2は、基部111MA2、脚部113MA2、カバー部111MB2を有する。基部111MA2、脚部113MA2は、図1A及び図1Bに示す筐体110の基部111A、脚部113Aに相当する。
【0091】
カバー部111MB2は、図9Aに示すようにタッチされていて押圧されていない状態では、中央部がドーム状に上方に突出している。カバー部111MB2は、押圧されると、図9Bに示すように反転動作し、指先FTにクリック感を提供する。
【0092】
静電センサ120M2は、電極120MA2及び120MB2を有する。電極120MB2は変形可能であり、図9Aに示すようにカバー部111MB2がドーム状に上方に突出しているときには、カバー部111MB2の形状に合わせて変形している。図9Bに示すように、カバー部111MB2が押圧されて反転動作すると、電極120MB2は、中央部が下側に突出するように変形する。これにより、電極120MA2と電極120MB2の間の距離は図9Aに示す状態に比べて短くなり、静電センサ120M2の静電容量が増大する。なお、変形可能な電極120MB2は、例えばITO(Indium Tin Oxide)で作製可能であり、電極120MA2は変形されないが、同様にITO製であってよい。
【0093】
入力装置100M2は、上述のように変形可能な筐体110M2と静電センサ120M2を用いることによって、図1A及び図1Bに示す入力装置100と同様に、ノイズや検出しようとする操作とは異なる操作等によって静電容量が変化するような状況においても誤判定を抑制できる。
【0094】
なお、以上では、メタルコンタクト130、タクトスイッチ130M1、カバー部111MB2を感触生成部として用いる形態について説明したが、これらの少なくともいずれか1つと同様の感触を呈示するものであれば、感触生成部は上述した具体例以外の構成であってもよい。
【0095】
以上、本発明の例示的な実施形態の入力装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0096】
なお、本国際出願は、2021年8月17日に出願した日本国特許出願2021-132669に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0097】
100、100M1、100M2 入力装置
110、110M2 筐体
110A 固定部
111A 基部
112A ガイド部
113A 脚部
110B 操作部
111B カバー部
112B 係合部
113B 押圧部
111MA2
111MB2 カバー部
120、120M2 静電センサ
120A、120B、120MA2、120MB2 電極
130 メタルコンタクト
131 ドーム部
132 基部
130M1 タクトスイッチ
131M1 ボタン
132M2 基部
140 プロセッサ
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B