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特許7533834プリント配線板及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】プリント配線板及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240806BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K1/02 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021502273
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007490
(87)【国際公開番号】W WO2020175476
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019034017
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
(72)【発明者】
【氏名】一松 拓馬
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087600(JP,A)
【文献】特開2000-294925(JP,A)
【文献】特開2005-050912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、
上記ベースフィルムに積層され、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンと、
上記ベースフィルム及び導電パターンに積層される絶縁層と
を備えるプリント配線板であって、
上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、
上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、
上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下であり、
以下の構成Aおよび構成Bの少なくも一方を備えるプリント配線板。
構成A:上記複数の配線のうち、上記第2領域側に配設される1又は複数の配線の厚さが、上記第1領域の中心側に配設される1又は複数の配線の厚さよりも小さい。
構成B:上記複数の配線の幅方向の外側に、これらの配線と電気的絶縁状態で、かつこれらの配線と平行に配設される1又は複数のダミー配線を備え、上記1又は複数のダミー配線の平均厚さが、上記1又は複数のダミー配線に隣接する1又は複数の配線の平均厚さよりも小さい。
【請求項2】
上記複数の配線が、第1の厚さを有する1又は複数の第1配線と、上記1又は複数の第1配線よりも上記第2領域側に配設され、上記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する1又は複数の第2配線とを含む請求項に記載のプリント配線板。
【請求項3】
上記導電パターンがめっきリード線を有し、
上記めっきリード線と電気的絶縁状態で、かつこのめっきリード線と並列に配設される1又は複数のダミーリード線をさらに備える請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
上記導電パターンがランド部を有し、
上記ランド部と電気的絶縁状態で、かつこのランド部を取り囲むよう配設される1又は複数のダミー配線をさらに備える請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
上記導電パターンが、上記複数の配線のうち少なくとも1の配線の端部にT字状に接続される接続配線を有し、
上記配線及び接続配線の接続部分において、上記接続配線の上記配線に接続される側と反対側の側縁と、この側縁に対向する側縁との幅が均一である請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
絶縁性を有するベースフィルムに、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンを積層する第1積層工程と、
上記第1積層工程後に、上記ベースフィルム及び導電パターンに絶縁層を積層する第2積層工程と
を備えるプリント配線板の製造方法であって、
上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、
上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、
上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、上記第2積層工程で(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御し、
以下の構成Aおよび構成Bの少なくも一方を備えるプリント配線板の製造方法。
構成A:上記複数の配線のうち、上記第2領域側に配設される1又は複数の配線の厚さが、上記第1領域の中心側に配設される1又は複数の配線の厚さよりも小さい。
構成B:上記第1積層工程で、上記複数の配線の幅方向の外側に、これらの配線と電気的絶縁状態で、かつこれらの配線と平行に配設される1又は複数のダミー配線を積層し、上記1又は複数のダミー配線の平均厚さが、上記1又は複数のダミー配線に隣接する1又は複数の配線の平均厚さよりも小さい。
【請求項7】
上記第2積層工程で、上記絶縁層を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する請求項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムに積層される導電パターンと、上記ベースフィルム及び導電パターンに積層される絶縁層とを備えるプリント配線板が知られている。
【0003】
上記絶縁層を形成するための絶縁層形成材料としては、例えば硬化性樹脂層を有するドライフィルムが用いられる。具体的には、上記絶縁層は、導電パターンがベースフィルムの一方の面に積層された状態で、ベースフィルムの導電パターンが積層された面側からドライフィルムを加熱しつつ押圧することで形成される(特開2015-229734号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-229734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記プリント配線板は、導電パターンの一部が絶縁層の外面側に露出する不具合が生じる場合がある。また、この不具合は、導電パターンが形成された導電パターン形成領域の外側端部(導電パターン形成領域のうち、導電パターン形成領域と導電パターンが形成されていない領域との境界近辺)で生じやすい。
【0006】
具体的には、上記不具合は、絶縁層形成材料が、導電パターン形成領域の外側端部で、導電パターンとベースフィルム表面との段差によってベースフィルム側(導電パターンが形成されていない側)に流動することで生じやすい。
【0007】
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、導電パターンの絶縁層の外面側への露出を防止することができるプリント配線板及びプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示に係るプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムに積層され、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンと、上記ベースフィルム及び導電パターンに積層される絶縁層とを備えるプリント配線板であって、上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0009】
また、上記課題を解決するためになされた本開示に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムに、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンを積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、上記ベースフィルム及び導電パターンに絶縁層を積層する第2積層工程とを備えるプリント配線板の製造方法であって、上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、上記第2積層工程で(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るプリント配線板は、導電パターンの絶縁層の外面側への露出を防止することができる。本開示に係るプリント配線板の製造方法は、導電パターンの絶縁層の外面側への露出が防止されたプリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。
図2図2は、図1のプリント配線板のA-A線部分断面図である。
図3図3は、図2のプリント配線板の部分拡大図である。
図4図4は、図1のプリント配線板の製造方法を示すフロー図である。
図5図5は、図1のプリント配線板とは異なる実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。
図6図6は、図5のプリント配線板のB-B線部分断面図である。
図7図7は、図6のプリント配線板の部分拡大図である。
図8図8は、図1及び図5のプリント配線板とは異なる実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。
図9図9は、図8のプリント配線板のC-C線部分断面図である。
図10図10は、図9のプリント配線板の部分拡大図である。
図11図11は、図1図5及び図8のプリント配線板とは異なる実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。
図12図12は、図11のプリント配線板のD-D線部分断面図である。
図13図13は、図12のプリント配線板の部分拡大図である。
図14図14は、図1図5図8及び図11のプリント配線板とは異なる実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。
図15図15は、図14のプリント配線板の部分拡大図である。
図16図16は、図15のプリント配線板のE-E線部分端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
本開示に係るプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムに積層され、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンと、上記ベースフィルム及び導電パターンに積層される絶縁層とを備えるプリント配線板であって、上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0014】
当該プリント配線板は、第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が上記範囲内であるので、導電パターンの絶縁層の外面側への露出を防止することができる。
【0015】
上記複数の配線の幅方向の外側に、これらの配線と電気的絶縁状態で、かつこれらの配線と平行に配設される1又は複数のダミー配線をさらに備えるとよい。このように、上記複数の配線の幅方向の外側に、これらの配線と電気的絶縁状態で、かつこれらの配線と平行に配設される1又は複数のダミー配線をさらに備えることによって、上記傾斜部の厚さの変化率を上記範囲内に制御しやすく、上記導電パターンの絶縁層の外面側への露出をより確実に防止することができる。
【0016】
上記複数の配線のうち、上記第2領域側に配設される1又は複数の配線の厚さが、上記第1領域の中心側に配設される1又は複数の配線の厚さよりも小さいとよい。このように、上記複数の配線のうち、上記第2領域側に配設される1又は複数の配線の厚さが、上記第1領域の中心側に配設される1又は複数の配線の厚さよりも小さいことによって、上記傾斜部の厚さの変化率を上記範囲内に制御しやすく、上記導電パターンの絶縁層の外面側への露出をより確実に防止することができる。
【0017】
上記複数の配線が、第1の厚さを有する1又は複数の第1配線と、上記1又は複数の第1配線よりも上記第2領域側に配設され、上記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する1又は複数の第2配線とを含むとよい。このように、上記複数の配線が、第1の厚さを有する1又は複数の第1配線と、上記1又は複数の第1配線よりも上記第2領域側に配設され、上記第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する1又は複数の第2配線とを含むことによって、上記傾斜部の厚さの変化率を上記範囲内に容易かつ確実に制御することができる。
【0018】
上記導電パターンがめっきリード線を有し、上記めっきリード線と電気的絶縁状態で、かつこのめっきリード線と並列に配設される1又は複数のダミーリード線をさらに備えるとよい。このように、上記導電パターンがめっきリード線を有し、上記めっきリード線と電気的絶縁状態で、かつこのめっきリード線と並列に配設される1又は複数のダミーリード線をさらに備えることによって、上記めっきリード線の絶縁層の外面側への露出を容易に防止することができる。
【0019】
上記導電パターンがランド部を有し、上記ランド部と電気的絶縁状態で、かつこのランド部を取り囲むよう配設される1又は複数のダミー配線をさらに備えるとよい。このように、上記導電パターンがランド部を有し、上記ランド部と電気的絶縁状態で、かつこのランド部を取り囲むよう配設される1又は複数のダミー配線をさらに備えることによって、上記ランド部の絶縁層の外面側への露出を容易に防止することができる。
【0020】
上記導電パターンが、上記複数の配線のうち少なくとも1の配線の端部にT字状に接続される接続配線を有し、上記配線及び接続配線の接続部分において、上記接続配線の上記配線に接続される側と反対側の側縁と、この側縁に対向する側縁との幅が均一であるとよい。このように、上記導電パターンが、上記複数の配線のうち少なくとも1の配線の端部にT字状に接続される接続配線を有し、上記配線及び接続配線の接続部分において、上記接続配線の上記配線に接続される側と反対側の側縁と、この側縁に対向する側縁との幅が均一であることによって、上記配線及び接続配線の接続部分の厚さが他の部分の厚さよりも大きくなることを抑制することができる。これにより、上記接続部分とベースフィルム表面との段差に起因して上記接続部分が絶縁層の外面側に露出することを防止することができる。
【0021】
本開示に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムに、平行に配設される複数の配線を含む導電パターンを積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、上記ベースフィルム及び導電パターンに絶縁層を積層する第2積層工程とを備えるプリント配線板の製造方法であって、上記絶縁層が、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合う第1領域と、平面視で上記導電パターンの形成領域に重なり合わない第2領域とを有し、上記第2領域が、上記第1領域から連続し、上記ベースフィルム表面からの厚さが漸減する傾斜部を有し、上記第1領域及び第2領域の境界面と垂直な厚さ方向断面において、上記傾斜部の頂部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh1、上記傾斜部の底部から上記ベースフィルム表面に下した垂線の足の長さをh2、上記頂部及び底部間の上記ベースフィルムの平面方向距離をWとした場合、上記第2積層工程で(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。
【0022】
当該プリント配線板の製造方法は、上記第2積層工程で、(h1-h2)/Wで示される傾斜部の厚さの変化率の平均値を上記範囲内に制御するので、導電パターンの絶縁層の外面側への露出を防止することができる。
【0023】
上記第2積層工程で、上記絶縁層を感光性ドライフィルムの硬化によって積層するとよい。このように、上記第2積層工程で、上記絶縁層を感光性ドライフィルムの硬化によって積層することによって、上記導電パターンの絶縁層の外面側への露出が防止されたプリント配線板を容易かつ確実に製造することができる。
【0024】
なお、本開示において、「平行」とは、両者のなす角度が5°以下、好ましくは3°以下であることをいう。「導電パターンの形成領域」とは、導電パターンを構成する導体が密に配設された領域をいい、具体的には隣接する導体同士が50μm以下、好ましくは30μm以下の間隔で配設される領域をいう。「厚さの変化率の平均値」とは、任意の10点における厚さの変化率の平均値を意味する。接続配線が配線の端部に「T字状に接続される」とは、配線の端部が接続配線の他方側(接続側と反対側)から突出しない状態で接続されることをいう。「幅が均一」とは、最大幅と最小幅との差が4μm以下、好ましくは2μm以下であることをいう。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の各実施形態に係るプリント配線板及びプリント配線板の製造方法ついて図面を参照しつつ詳説する。
【0026】
[第一実施形態]
<プリント配線板>
図1及び図2のプリント配線板1は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2に積層され、平行に配設される複数の配線3aを含む導電パターン3と、ベースフィルム2及び導電パターン3に積層される絶縁層4とを備える。絶縁層4は、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合う第1領域4aと、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合わない第2領域4bとを有する。第2領域4bは、第1領域4aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部4cを有する。
【0027】
当該プリント配線板1は、複数の配線3aの幅方向の外側に、これらの配線3aと電気的絶縁状態で、かつこれらの配線3aと平行に配設される複数のダミー配線(以下、「第1ダミー配線5a」ともいう)を備える。複数の第1ダミー配線5aは、導電パターン3の形成領域外に、導電パターン3の形成領域と隣接して配設されている。なお、「複数の配線の幅方向の外側」とは、平行に配設される複数の配線群の並列方向の外側を意味し、当該プリント配線板における外縁側及び中心側のいずれであってもよい。
【0028】
図2及び図3に示すように、当該プリント配線板1は、第1領域4a及び第2領域4bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部4cの頂部4e、つまり傾斜部4cの上端、からベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部4cの底部4f、つまり傾斜部4cの下端、からベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部4e及び底部4f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0029】
当該プリント配線板1は、第1領域4a及び第2領域4bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部4cの頂部4eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部4cの底部4fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部4e及び底部4f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が上記範囲内であり、傾斜部4cの傾斜が十分になだらかである。そのため、当該プリント配線板1は、導電パターン3のうち、導電パターン3の形成領域の外側端部のエッジが絶縁層4に適切に被覆され、導電パターン3の絶縁層4の外面側への露出を防止することができる。
【0030】
当該プリント配線板1は、複数の配線3aの幅方向の外側に、複数の配線3aと電気的絶縁状態で、かつ複数の配線3aと平行に配設される複数の第1ダミー配線5aを備えるので、例えば感光性ドライフィルムを用いて絶縁層4を形成する際に、溶融した感光性ドライフィルムの複数の配線3a側から第2領域4b側への流動をせき止めやすい。その結果、傾斜部4cの厚さの変化率を上記範囲内に制御しやすく、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出をより確実に防止することができる。
【0031】
(ベースフィルム)
ベースフィルム2は、合成樹脂を主成分とし、電気絶縁性を有する。ベースフィルム2は、導電パターン3を形成するための基材層である。ベースフィルム2は可撓性を有していてもよい。ベースフィルム2が可撓性を有する場合、当該プリント配線板1はフレキシブルプリント配線板として構成される。なお、「主成分」とは、質量換算で最も含有割合の大きい成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0032】
上記合成樹脂としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0033】
当該プリント配線板1がフレキシブルプリント配線板である場合、ベースフィルム2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、ベースフィルム2の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。ベースフィルム2の平均厚さが上記下限に満たないと、ベースフィルム2の絶縁強度が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム2の平均厚さが上記上限を超えると、当該プリント配線板1が不必要に厚くなるおそれや、可撓性が不十分となるおそれがある。なお、本明細書において「平均厚さ」とは、任意の10点の厚さの平均値をいう。
【0034】
(導電パターン)
導電パターン3は、導電性を有する導体からなる層であり、平行に配設される複数の配線3aを含む。複数の配線3aは、例えばコイルパターンを形成する。また、導電パターン3は、複数の配線3a以外の例えばランド部3b等のパターンを含んでもよい。
【0035】
複数の配線3aは、例えばベースフィルム2に積層されるシード層と、このシード層に積層される電気めっき層との積層体である。また、複数の配線3aは、上記シード層及び電気めっき層によって構成される芯体と、この芯体の外面にめっきによって積層される被覆層とを有する構成とすることもできる。上記シード層の主成分としては、例えば銅、ニッケル、銀等が挙げられる。上記シード層は、例えば無電解めっきによって形成される。また、上記シード層は、ベースフィルム2の表面に金属粒子を含むインクを塗布し、金属粒子を焼結させた金属粒子の焼結体層であってもよく、上記焼結体層及び無電解めっき層の積層体であってもよい。また、上記電気めっき層は電気めっきによって形成される。上記電気めっき層の主成分としては、銅、ニッケル、銀等が挙げられる。
【0036】
複数の配線3aの平均厚さの上限としては、90μmが好ましく、70μmがより好ましい。上記平均厚さが上記上限を超えると、当該プリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。一方、複数の配線3aの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、電気抵抗が大きくなるおそれがある。また、上記平均厚さの下限としては、例えば30μmであってもよく、40μmであってもよい。一般に配線の厚さが厚くなると、この配線が絶縁層の外面側に露出しやすくなるが、当該プリント配線板1は、複数の配線3aの平均厚さの下限を上記値とした場合でも、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を十分に防止することができる。
【0037】
複数の配線3aの平均幅の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、複数の配線3aの平均幅の上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。上記平均幅が上記下限に満たないと、複数の配線3aの形成が容易でなくなるおそれがある。また、上記平均幅が上記下限に満たないと、複数の配線3aの厚さを十分に大きくすることができないおそれがある。逆に、上記平均幅が上記上限を超えると、所望の配線密度を得難くなるおそれがある。なお、「平均幅」とは、任意の10点の幅の平均値をいう。
【0038】
複数の配線3aは同一ピッチで配設されていることが好ましい。隣接する配線3a間の平均ピッチの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、上記平均ピッチの上限としては、100μmが好ましく、60μmがより好ましい。上記平均ピッチが上記下限に満たないと、複数の配線3aの形成が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記平均ピッチが上記上限を超えると、所望の配線密度を得難くなるおそれがある。
【0039】
隣接する配線3a間の平均間隔の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、上記平均間隔の上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。上記平均間隔が上記下限に満たないと、複数の配線3aの形成が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記平均間隔が上記上限を超えると、所望の配線密度を得難くなるおそれがある。なお、「平均間隔」とは、任意の10点の間隔の平均値をいう。
【0040】
(ダミー配線)
複数の第1ダミー配線5aは、導電パターン3と同一の階層に設けられる。複数の第1ダミー配線5aは、ベースフィルム2と絶縁層4との間に、複数の配線3aと並列に配設される。
【0041】
複数の第1ダミー配線5aは、例えば複数の配線3aと同様、ベースフィルム2に積層されるシード層と、このシード層に積層される電気めっき層との積層体である。また、複数の第1ダミー配線5aは、上記シード層及び電気めっき層によって構成される芯体と、この芯体の外面にめっきによって積層される被覆層とを有する構成とすることもできる。当該プリント配線板1は、複数の配線3aの幅方向の外側に第1ダミー配線5aが複数設けられることで、溶融した感光性ドライフィルムの第1領域4aから第2領域4b側への流動をより確実にせき止めることができる。複数の第1ダミー配線5aが設けられる場合、これらの第1ダミー配線5aの本数の下限としては、2本が好ましく、3本がより好ましい。また、複数の第1ダミー配線5aの本数の上限としては、例えば5本とすることができる。
【0042】
複数の第1ダミー配線5aの平均厚さは、複数の第1ダミー配線5aに隣接する1又は複数の配線3aの平均厚さ以下であることが好ましい。複数の第1ダミー配線5aの平均厚さを上記複数の配線3aの平均厚さより小さくする具体的構成としては、例えば複数の配線3aを上記芯体及び被覆層を有する構成とし、複数のダミー配線3aを上記芯体からなる構成(つまり、上記シード層及び電気めっき層の積層体)とすることが挙げられる。複数の配線3aを上記芯体及び被覆層を有する構成とし、複数のダミー配線3aを上記芯体からなる構成とする場合、複数の第1ダミー配線5aの幅は複数の配線3aよりも小さくなる。この場合、複数の配線3aと複数の第1ダミー配線5aとの平均厚さの差としては、例えば3μm以上12μm以下とすることができる。また、複数の配線3aと複数の第1ダミー配線5aとの平均幅の差としては、例えば6μm以上24μm以下とすることができる。当該プリント配線板1は、複数の第1ダミー配線5aの平均厚さをこれらの第1ダミー配線5aに隣接する1又は複数の配線3aの平均厚さ以下とすることで、複数の第1ダミー配線5aとベースフィルム2の表面との段差を小さくし、複数の第1ダミー配線5aの絶縁層4の外面側への露出を防止しやすい。なお、当該プリント配線板1は、複数の第1ダミー配線5aの絶縁層4の外面側への露出を確実に防止する観点から、第1領域4a側に位置する1又は複数の第1ダミー配線5aの平均厚さよりも第1領域4aと反対側に位置する1又は複数の第1ダミー配線5aの平均厚さを小さくしてもよい。
【0043】
複数の第1ダミー配線5aは、複数の配線3aと同一ピッチで配設されることが好ましい。このように、複数の第1ダミー配線5aが複数の配線3aと同一ピッチで配設されることによって、絶縁層4全体の厚さの均一化を図り、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を防止しやすい。また、隣接する配線3a及び第1ダミー配線5aの平均間隔としては、隣接する配線3a間の平均間隔と同様とすることができる。
【0044】
(絶縁層)
絶縁層4は、導電パターン3、複数の第1ダミー配線5a、並びにベースフィルム2の導電パターン3及び複数の第1ダミー配線5aが積層されていない領域に積層される。絶縁層4は、主として導電パターン3の他の部材等との接触による損傷及び短絡を防止する。そのため、絶縁層4は、意図的に設けられる開口や切欠きを除いて導電パターン3の外面を全面的に被覆していることが好ましい。
【0045】
絶縁層4は、ソルダーレジスト、カバーレイ等を用いて形成することができ、中でも感光性ドライフィルムの硬化によって形成されることが好ましい。感光性ドライフィルムを用いる場合、複数の配線3aの外面側から感光性ドライフィルムを加熱しつつ押圧することで、この感光性ドライフィルムが流動し、複数の配線3aの外面を被覆しつつ、複数の配線3a間の隙間を埋める。また、この感光性ドライフィルムの平均厚さは、複数の配線3aの平均厚さよりも小さいことが好ましい。感光性ドライフィルムの平均厚さを複数の配線3aの平均厚さよりも小さくすることで、絶縁層4の厚さを小さくして、当該プリント配線板の薄型化を促進することができる。また、一般に感光性ドライフィルムの平均厚さが複数の配線の平均厚さよりも小さい場合、感光性ドライフィルムが導電パターンの形成領域外に流れ過ぎると複数の配線の外面が絶縁層の外面側に露出するおそれがあるが、当該プリント配線板1は、複数の第1ダミー配線5aによって感光性ドライフィルムの流動を抑制することができるため、複数の配線3aの露出を防止することができる。複数の配線3aよりも平均厚さの小さい感光性ドライフィルムを用いる場合、複数の配線3aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層4の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、15μmがより好ましい。また、上記平均厚さの上限としては、40μmが好ましく、35μmがより好ましい。
【0046】
複数の配線3aよりも平均厚さの小さい感光性ドライフィルムを用いる場合、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を防止する観点から、複数の配線3aの平均厚さと上記感光性ドライフィルムの平均厚さとの差の上限としては、10μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、当該プリント配線板1の薄型化を図る観点から、複数の配線3aの平均厚さと上記感光性ドライフィルムの平均厚さの差の下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。
【0047】
上述のように、絶縁層4は、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合う第1領域4aと、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合わない第2領域4bとを有する。絶縁層4は、第1領域4a以外の領域が第2領域4bとして構成されている。また、平面視において、第1領域4aの外縁は、導電パターン3の形成領域の外縁と一致している。つまり、平面視において、第1領域4a及び第2領域4bの境界面Xは、導電パターン3の形成領域の最も外側に位置する導体の側縁と一致している。また、この境界面Xでは、複数の配線3aは、意図する開口及び切欠きを除き、絶縁層4の外面側には露出していない。
【0048】
傾斜部4cは、第1領域4aとの境界面Xを端縁として第2領域4bに形成されている。傾斜部4cは、境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、第1領域4aとの境界面Xの位置を頂部4eとし、第2領域4b側に厚さが漸減している。本実施形態において、傾斜部4cの底部4fは、例えば隣接する配線3a及び第1ダミー配線5aの中間位置に形成される。なお、傾斜部4cは、途中に厚さが略均一な領域を含んでいてもよく、例えば境界面Xから第2領域4b側に向けた一定の領域の厚さが略均一であってもよい。
【0049】
第1領域4a及び第2領域4bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部4cの頂部4eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部4cの底部4fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部4e及び底部4f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値の下限としては、上述のように0.01であり、0.1が好ましい。一方、上記変化率の平均値の上限としては、上述のように1.0であり、0.5が好ましい。上記変化率が上記下限に満たないと、絶縁層4の薄膜化が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記変化率が上記上限を超えると、複数の配線3a、特に導電パターン3の最外部に位置する配線3aが絶縁層4の外面側に露出するおそれがある。
【0050】
<プリント配線板の製造方法>
次に、図4を参照して、図1のプリント配線板1の製造方法の一例について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム2に、平行に配設される複数の配線3aを含む導電パターン3を積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、ベースフィルム2及び導電パターン3に絶縁層4を積層する第2積層工程とを備える。当該プリント配線板の製造方法では、絶縁層4が、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合う第1領域4aと、平面視で導電パターン3の形成領域に重なり合わない第2領域4bとを有し、第2領域4bが、第1領域4aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部4cを有する。
【0051】
(第1積層工程)
上記第1積層工程では、ベースフィルム2の表面に、導電パターン3と同時に複数の第1ダミー配線5aを積層する。上記第1積層工程は、例えばセミアディティブ法を用いて複数の配線3aを含む導電パターン3及び複数の第1ダミー配線5aを積層する。具体的には、上記第1積層工程は、ベースフィルム2の表面に、シード層を積層する工程と、このシード層積層工程後に上記シード層の表面に導電パターン3及び複数の第1ダミー配線5aの反転形状を有するレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターン形成工程後のシード層の表面に電気めっきする工程と、上記電気めっき工程後に、上記レジストパターン及び上記シード層のレジストパターンと重なり合う領域を除去する工程とを有する。なお、上記レジストパターン形成工程では、複数の配線3a及び複数の第1ダミー配線5aの全部又は一部について、芯体の反転形状を有するレジストパターンを形成してもよい。この場合、上記第1積層工程は、上記除去工程後に上記芯体に被覆層を積層する工程をさらに有する。上記シード層積層工程は、例えば無電解めっきによって行ってもよく、金属粒子を含むインクを塗布し、この金属粒子を焼結することで行ってもよく、上記金属粒子の焼結及び無電解めっきの両方によって行ってもよい。また、上記被覆工程は、例えば無電解めっきによって行ってもよく、電気めっきによって行ってもよい。
【0052】
(第2積層工程)
上記第2積層工程では、絶縁層4を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する。上記第2積層工程では、複数の配線3aの平均厚さよりも平均厚さの小さい感光性ドライフィルムを導電パターン3及び複数の第1ダミー配線5aの外面側から熱ラミネートすることが好ましい。上記感光性ドライフィルムを導電パターン3及び複数の第1ダミー配線5aの外面側から加熱しつつ押圧することで、この感光性ドライフィルムが流動し、複数の配線3aの外面及び複数の第1ダミー配線5aの外面を被覆しつつ、複数の配線3a間の隙間及び複数の第1ダミー配線5a間の隙間を埋める。これにより、絶縁層4の厚さを小さくして、当該プリント配線板の薄型化を促進することができる。当該プリント配線板の製造方法は、複数の第1ダミー配線5aによって感光性ドライフィルムの流動を抑制することができるため、複数の配線3aの平均厚さよりも平均厚さの小さい感光性ドライフィルムを用いた場合でも、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を防止することができる。
【0053】
複数の配線3aよりも平均厚さの小さい感光性ドライフィルムを用いる場合、複数の配線3aの平均厚さと上記感光性ドライフィルムの平均厚さとの差の下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、上記差の上限としては、10μmが好ましく、7μmがより好ましい。上記差が上記下限に満たないと、当該プリント配線板1の薄型化を促進し難くなるおそれがある。逆に、上記差が上記上限を超えると、複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を防止し難くなるおそれがある。
【0054】
上記第2積層工程では、第1領域4a及び第2領域4bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部4cの頂部4eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部4cの底部4fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部4e及び底部4f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。上記変化率の下限としては、0.1が好ましい。上記変化率の上限としては、0.5が好ましい。上記変化率が上記下限に満たないと、絶縁層4の薄膜化が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記変化率が上記上限を超えると、複数の配線3a、特に導電パターン3の最外部に位置する配線3aが絶縁層4の外面側に露出するおそれがある。
【0055】
当該プリント配線板の製造方法は、上記第2積層工程で、(h1-h2)/Wで示される傾斜部4cの厚さの変化率の平均値を上記範囲内に制御するので、導電パターン3、特に複数の配線3aの絶縁層4の外面側への露出を防止することができる。
【0056】
当該プリント配線板の製造方法は、上記第2積層工程で、絶縁層4を感光性ドライフィルムの硬化によって積層するので、導電パターン3の絶縁層4の外面側への露出が防止されたプリント配線板を容易かつ確実に製造することができる。また、この構成によると、絶縁層4の厚さを薄くして、当該プリント配線板1の薄型化を促進することができる。
【0057】
[第二実施形態]
<プリント配線板>
図5及び図6のプリント配線板11は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2に積層され、平行に配設される複数の配線13aを含む導電パターン13と、ベースフィルム2及び導電パターン13に積層される絶縁層14とを備える。絶縁層14は、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合う第1領域14aと、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合わない第2領域14bとを有する。第2領域14bは、第1領域14aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部14cを有する。当該プリント配線板11のベースフィルム2としては、図1のプリント配線板1のベースフィルム2と同様の構成とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
当該プリント配線板1は、複数の配線13aのうち、第2領域14b側に配設される1又は複数の配線13a(本実施形態では第2領域14bに隣接する1つの配線13a)の厚さが、第1領域14aの中心側に配設される複数の配線13aの厚さよりも小さい。また、当該プリント配線板11は、厚さの小さい1又は複数の配線13aの幅方向の外側にダミー配線を有しない。
【0059】
図6及び図7に示すように、当該プリント配線板11は、第1領域14a及び第2領域14bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部14cの頂部14eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部14cの底部14fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部14e及び底部14f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0060】
当該プリント配線板11は、複数の配線13aのうち、第2領域14b側に配設される1又は複数の配線13aの厚さが、第1領域14aの中心側に配設される複数の配線13aの厚さよりも小さいので、傾斜部14cの厚さの変化率を上記範囲内に制御しやすく、複数の配線13aの絶縁層14の外面側への露出をより確実に防止することができる。より詳しくは、当該プリント配線板11は、第1領域14aの中心側に配設される複数の配線13aと第2領域14b側に配設される1又は複数の配線13aとの間の段差、並びに第2領域14b側に配設される1又は複数の配線13aとベースフィルム2表面との段差をいずれも小さくすることで、感光性ドライフィルムの流動に起因して複数の配線13aが絶縁層14の外面側へ露出することを防止することができる。
【0061】
(導電パターン)
導電パターン13は、導電性を有する導体からなる層であり、平行に配設される複数の配線13aを含む。複数の配線13aは、例えばコイルパターンを形成する。また、導電パターン13は、複数の配線13a以外の例えばランド部13b等のパターンを含んでもよい。
【0062】
図7に示すように、複数の配線13aは、第1の厚さを有する複数の第1配線13cと、複数の第1配線13cよりも第2領域14b側に配設され、第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する1又は複数の第2配線13d(本実施形態では1つの第2配線13d)とを含む。複数の配線13aは、複数の第1配線13c及び1又は複数の第2配線13dの2種類の配線から構成されている。複数の配線13aは、複数の第1配線13cが幅方向に隣接して設けられる第1配線群と、1又は複数の第2配線13dが幅方向に隣接して設けられる第2配線群とを有しており、第2配線群が第1配線群の第2領域14b側に配設されている。また、当該プリント配線板11は、第2配線群よりも外側(第2領域14b側)においてはベースフィルム2の表面には他の配線及びダミー配線は積層されていない。当該プリント配線板11は、複数の配線13aが、複数の第1配線13cと、複数の第1配線13cよりも第2領域14b側に配設される1又は複数の第2配線13dとを含むことによって、傾斜部14cの厚さの変化率を容易かつ確実に制御することができる。
【0063】
複数の第1配線13cは、例えばベースフィルム2に積層されるシード層と、このシード層に積層される電気めっき層とによって構成される芯体13eと、この芯体13eの外面にめっきによって積層される被覆層13fとを有する。一方、1又は複数の第2配線13dは、上記シード層及び電気めっきが積層された芯体13eによって構成される。上記シード層、電気めっき層及び被覆層の具体的構成としては、図1のプリント配線板1と同様とすることができる。
【0064】
複数の第1配線13cの平均厚さの上限としては、90μmが好ましく、70μmがより好ましい。また、複数の第1配線13cの平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限に満たないと、電気抵抗が大きくなるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該プリント配線板11の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0065】
複数の第1配線13cの平均幅の下限としては、15μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、複数の第1配線13cの平均幅の上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。上記平均幅が上記下限に満たないと、複数の第1配線13cの形成が容易でなくなるおそれがある。また、上記平均幅が上記下限に満たないと、複数の第1配線13cの厚さを十分に大きくすることができないおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、所望の配線密度を得難くなるおそれがある。
【0066】
1又は複数の第2配線13dは、被覆層13fの厚さ分だけ複数の第1配線13cよりも厚さが小さい。また、1又は複数の第2配線13dは、被覆層13fの厚さの2倍分だけ複数の第1配線13cよりも幅が小さい。被覆層13fの平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、被覆層13fの平均厚さの上限としては、15μmが好ましく、12μmがより好ましい。被覆層13fの平均厚さが上記下限に満たないと、複数の第1配線13cと1又は複数の第2配線13dとの段差に対して、1又は複数の第2配線13dとベースフィルム2表面との段差が大きくなり過ぎるおそれがある。逆に、被覆層13fの平均厚さが上記上限を超えると、複数の第1配線13cと1又は複数の第2配線13dとの段差が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0067】
複数の配線13aは同一ピッチで配設されていることが好ましい。隣接する第1配線13c間の平均間隔の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、上記平均間隔の上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。上記平均間隔が上記下限に満たないと、複数の配線13aの形成が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記平均間隔が上記上限を超えると、所望の配線密度を得難くなるおそれがある。
【0068】
(絶縁層)
絶縁層14は、導電パターン13及びベースフィルム2の導電パターン13が積層されていない領域に積層される。絶縁層14は、主として導電パターン13の他の部材等との接触による損傷及び短絡を防止する。そのため、絶縁層14は、意図的に設けられる開口や切欠きを除いて導電パターン13の外面を全面的に被覆していることが好ましい。
【0069】
絶縁層14は、図1のプリント配線板1と同様、ソルダーレジスト、カバーレイ等によって構成することができ、感光性ドライフィルムの硬化によって形成されることが好ましい。また、この感光性ドライフィルムの平均厚さは、複数の配線13aの平均厚さよりも小さいことが好ましい。複数の配線13aの平均厚さと上記感光性ドライフィルムの平均厚さとの差としては、図1のプリント配線板1と同様とすることができる。また、複数の第1配線13cのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層14の平均厚さとしては、図1のプリント配線板1における複数の配線3aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層4の平均厚さと同様とすることができる。
【0070】
上述のように、絶縁層14は、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合う第1領域14aと、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合わない第2領域14bとを有する。絶縁層14は、第1領域14a以外の領域が第2領域14bとして構成されている。また、平面視において第1領域14aの外縁は、導電パターン13の形成領域の外縁と一致している。第1領域14a及び第2領域14bの境界面Xでは、複数の配線13aは、意図する開口及び切欠きを除き、絶縁層14の外面側には露出していない。
【0071】
傾斜部14cは、第1領域14aとの境界面Xを端縁として第2領域14bに形成されている。傾斜部14cは、境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、第1領域14aとの境界面Xの位置を頂部14eとし、第2領域14b側に厚さが漸減している。本実施形態において、傾斜部14cの底部14fは、当該プリント配線板11の外縁に位置している。
【0072】
第1領域14a及び第2領域14bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値としては図1のプリント配線板1と同様とすることができる。
【0073】
<プリント配線板の製造方法>
次に、図5のプリント配線板11の製造方法の一例について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム2に、平行に配設される複数の配線13aを含む導電パターン13を積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、ベースフィルム2及び導電パターン13に絶縁層14を積層する第2積層工程とを備える。当該プリント配線板の製造方法では、絶縁層14が、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合う第1領域14aと、平面視で導電パターン13の形成領域に重なり合わない第2領域14bとを有し、第2領域14bが、第1領域14aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部14cを有する。
【0074】
(第1積層工程)
上記第1積層工程では、例えば図4のプリント配線板の製造方法と同様、セミアディティブ法を用いて複数の配線13aを含む導電パターン13を積層する。上記第1積層工程では、複数の配線13aのうち、第2領域14b側に配設される1又は複数の配線13aの厚さが、第1領域14aの中心側に配設される複数の配線13aの厚さよりも小さくなるよう複数の配線13aを積層する。上記第1積層工程では、図4のプリント配線板の製造方法で説明した上述の被覆工程で、複数の第1配線13cを構成する複数の芯体13eにのみ被覆層13fを積層する。具体的には、上記被覆工程では、複数の第1配線13cを構成する複数の芯体13eにのみめっきリード線(不図示)を接続しておき、これらの芯体13eにのみ被覆層13fを積層する。
【0075】
(第2積層工程)
上記第2積層工程では、絶縁層14を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する。上記第2積層工程では、図4のプリント配線板の製造方法と同様にして絶縁層14を積層する。当該プリント配線板の製造方法は、複数の第1配線13cと1又は複数の第2配線13dとの間の段差、並びに1又は複数の第2配線13dとベースフィルム2表面との段差をいずれも小さくすることで、感光性ドライフィルムの流動に起因して複数の配線13aが絶縁層14の外面側へ露出することを防止することができる。
【0076】
上記第2積層工程では、第1領域14a及び第2領域14bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部14cの頂部14eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部14cの底部14fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部14e及び底部14f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。上記変化率の好ましい下限値及び好ましい上限値としては、図4のプリント配線板の製造方法と同様である。
【0077】
[第三実施形態]
<プリント配線板>
図8及び図9のプリント配線板21は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2に積層され、平行に配設される複数の配線(不図示)を含む導電パターン23と、ベースフィルム2及び導電パターン23に積層される絶縁層24とを備える。導電パターン23は、めっきリード線23aを有する。絶縁層24は、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合う第1領域24aと、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合わない第2領域24bとを有する。第2領域24bは、第1領域24aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部24cを有する。当該プリント配線板21のベースフィルム2としては、図1のプリント配線板1のベースフィルム2と同様の構成とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
当該プリント配線板21は、めっきリード線23aと電気的絶縁状態で、かつこのめっきリード線23aと並列に配設される1又は複数のダミーリード線25aを備える。
【0079】
図9及び図10に示すように、当該プリント配線板21は、第1領域24a及び第2領域24bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部24cの頂部24eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部24cの底部24fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部24e及び底部24f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0080】
当該プリント配線板21は、導電パターン23がめっきリード線23aを有し、めっきリード線23aと電気的絶縁状態で、かつこのめっきリード線23aと並列に配設される1又は複数のダミーリード線25aを備えることによって、例えば感光性ドライフィルムを用いて絶縁層24を形成する際に、溶融した感光性ドライフィルムのめっきリード線23a側から第2領域24b側への流動をせき止めやすい。その結果、めっきリード線23aの絶縁層24の外面側への露出を容易に防止することができる。
【0081】
(導電パターン)
導電パターン23は、導電性を有する導体からなる層であり、平行に配設される複数の配線を含む。導電パターン23は、めっきリード線23aを有する以外、例えば図1のプリント配線板1と同様の構成を有するものとすることができる。
【0082】
めっきリード線23aは、導電パターン23に含まれる1又は複数の上記配線と電気的に接続されており、例えばこれらの配線の被覆層を形成するために用いられる。めっきリード線23aの具体的構成としては、特に限定されるものではないが、例えば図7の芯体13eと同様の構成とすることができる。また、めっきリード線23aの本数としては、特に限定されるものではないが、本実施形態では平行な2本のめっきリード線23aが形成されている。2本のめっきリード線23aの平均厚さ、平均幅及び平均ピッチとしては、図7の第2配線13dと同様とすることができる。
【0083】
(ダミーリード線)
1又は複数のダミーリード線25aは、導電パターン23の形成領域外に配設されている。1又は複数のダミーリード線25aは、導電パターン23と同一の階層に設けられる。1又は複数のダミー配線25aは、ベースフィルム2と絶縁層24との間に、めっきリード線23aと隣接して配設されている。本実施形態では、2本のめっきリード線23aの幅方向の両外側に各1本のダミーリード線25aが配設されている。なお、当該プリント配線板21は、めっきリード線23aの絶縁層24の外面側への露出をより確実に防止するため、2本のめっきリード線23aの両外側に、それぞれ2以上のダミーリード線25aが配設されていてもよい。
【0084】
1又は複数のダミーリード線25aの平均厚さは、めっきリード線23aの平均厚さ以下であることが好ましい。1又は複数のダミーリード線25aの平均厚さ及びめっきリード線23aの平均厚さを均一にする場合、例えば1又は複数のダミーリード線25a及びめっきリード線23aを図7の芯体13eと同様の構成とすればよい。
【0085】
1又は複数のダミーリード線25a及びめっきリード線23aは、同一ピッチで配設されることが好ましい。これにより、絶縁層24の厚さの均一化を図り、めっきリード線23aの絶縁層24の外面側への露出を防止しやすい。また、隣接するめっきリード線23a及びダミーリード線25aの平均間隔としては、図1のプリント配線板1の隣接する配線3a及びダミーリード線5aの平均間隔と同様とすることができる。
【0086】
(絶縁層)
絶縁層24は、導電パターン23、1又は複数のダミーリード線25a、並びにベースフィルム2の導電パターン23及び1又は複数のダミーリード線25aが積層されていない領域に積層される。絶縁層24は、主として導電パターン23の他の部材等との接触による損傷及び短絡を防止する。そのため、絶縁層24は、意図的に設けられる開口や切欠きを除いて導電パターン3の外面を全面的に被覆していることが好ましい。
【0087】
絶縁層24は、図1のプリント配線板1と同様、ソルダーレジスト、カバーレイ等によって構成することができ、感光性ドライフィルムの硬化によって形成されることが好ましい。めっきリード線23aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層24の平均厚さとしては、図1のプリント配線板1における複数の配線3aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層4の平均厚さと同様とすることができる。
【0088】
上述のように、絶縁層24は、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合う第1領域24aと、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合わない第2領域24bとを有する。絶縁層24は、第1領域24a以外の領域が第2領域24bとして構成されている。また、平面視において第1領域24aの外縁は、導電パターン23の形成領域の外縁と一致している。第1領域24a及び第2領域24bの境界面Xでは、めっきリード線23aは、意図する開口及び切欠きを除き、絶縁層24の外面側には露出していない。
【0089】
傾斜部24cは、第1領域24aとの境界面Xを端縁として第2領域24bに形成されている。傾斜部24cは、境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、第1領域24aとの境界面Xの位置を頂部24eとし第2領域24b側に厚さが漸減している。本実施形態において、傾斜部24cの底部24fは、例えば隣接するめっきリード線23a及びダミーリード線25aの中間位置に形成される。
【0090】
第1領域24a及び第2領域24bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値としては図1のプリント配線板1と同様とすることができる。
【0091】
<プリント配線板の製造方法>
次に、図8のプリント配線板21の製造方法の一例について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム2に、平行に配設される複数の配線を含む導電パターン23を積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、ベースフィルム2及び導電パターン23に絶縁層24を積層する第2積層工程とを備える。当該プリント配線板の製造方法では、絶縁層24が、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合う第1領域24aと、平面視で導電パターン23の形成領域に重なり合わない第2領域24bとを有し、第2領域24bが、第1領域24aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部24cを有する。
【0092】
(第1積層工程)
上記第1積層工程は、ベースフィルム2の表面に、導電パターン23を構成する複数の配線の芯体、めっきリード線23a、並びに1又複数のダミーリード線25aを同時に積層する工程(芯体積層工程)と、上記芯体積層工程で積層された所望の芯体に被覆層を積層する工程(被覆層積層工程)とを有する。上記第1積層工程では、1又は複数のダミーリード線35aをめっきリード線23aと電気的絶縁状態で、かつめっきリード線23aと並列に積層する。上記芯体積層工程は、図4のプリント配線板の製造方法と同様、セミアディティブ法を用いて行うことができる。
【0093】
(第2積層工程)
上記第2積層工程では、絶縁層24を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する。上記第2積層工程では、図4のプリント配線板の製造方法と同様にして絶縁層24を積層する。当該プリント配線板の製造方法は、感光性ドライフィルムを用いて絶縁層24を積層する際に、溶融した感光性ドライフィルムのめっきリード線23a側から第2領域24b側への流動をせき止めやすく、めっきリード線23aの絶縁層24の外面側への露出を防止することができる。
【0094】
上記第2積層工程では、第1領域24a及び第2領域24bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部24cの頂部24eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部24cの底部24fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部24e及び底部24f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。上記変化率の好ましい下限値及び好ましい上限値としては、図4のプリント配線板の製造方法と同様である。
【0095】
[第四実施形態]
<プリント配線板>
図11及び図12のプリント配線板31は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2に積層され、平行に配設される複数の配線(不図示)を含む導電パターン33と、ベースフィルム2及び導電パターン33に積層される絶縁層34とを備える。導電パターン34はランド部33cを有する。絶縁層34は、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合う第1領域34aと、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合わない第2領域34bとを有する。第2領域34bは、第1領域34aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部34cを有する。当該プリント配線板31は、導電パターン33及び絶縁層34がベースフィルム2の両面に積層されている。当該プリント配線板31のベースフィルム2としては、図1のプリント配線板1のベースフィルム2と同様の構成とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0096】
当該プリント配線板31は、ランド部33cと電気的絶縁状態で、かつランド部33cを取り囲むよう配設される複数のダミー配線(以下、「第2ダミー配線35a」ともいう)を備える。
【0097】
図12及び図13に示すように、当該プリント配線板31は、第1領域34a及び第2領域34bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部34cの頂部34eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部34cの底部34fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部34e及び底部34f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0098】
当該プリント配線板31は、導電パターン33がランド部33c部を有し、ランド部33cと電気的絶縁状態で、かつこのランド部33cを取り囲むよう配設される複数の第2ダミー配線35aを備えることによって、例えば感光性ドライフィルムを用いて絶縁層34を形成する際に、溶融した感光性ドライフィルムのランド部33c側から第2領域34b側への流動をせき止めやすい。その結果、ランド部33cの絶縁層34の外面側への露出を容易に防止することができる。
【0099】
(導電パターン)
導電パターン33は、導電性を有する導体からなる層であり、平行に配設される複数の配線を含む。導電パターン33は、ランド部33cを有する以外、例えば図1のプリント配線板1と同様の構成を有するものとすることができる。
【0100】
本実施形態において、ランド部33cは、スルーホール33bのベースフィルム2の表面側に設けられるスルーホールランドである。ランド部33cは、例えばベースフィルム2の両面に芯体33dを積層した後、この芯体33dを貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔に上述の被覆層と同様のめっきを施すことで形成される。そのため、ランド部33cは、芯体33d及びベースフィルム2の両面側に設けられるめっき層を含む。ランド部33cは平面視円環状である。ランド部33cの平均厚さとしては、特に限定されるものではない。但し、一般にランド部33cは平面面積が大きいためめっきを施した際にめっき厚が大きくなりやすい。そのため、ランド部33cの平均厚さは、図7の第1配線13cよりも大きくなりやすい。
【0101】
(ダミー配線)
複数の第2ダミー配線35aは、導電パターン33の形成領域外に配設されている。複数の第2ダミー配線35aは、導電パターン33と同一の階層に設けられる。本実形態では、複数の第2ダミー配線35aは、ベースフィルム2の両面に配設されている。複数の第2ダミー配線35aは、ベースフィルム2と絶縁層34との間で、ランド部33cに隣接して配設されている。第2ダミー配線35aは、ランド部33cとの間隔が長手方向の全域に亘って均一となるようにランド部33cを取り囲んでいる。そのため、本実施形態では、各第2ダミー配線35aは、ランド部33cに接続される配線33aを通すための開口が形成されたC字状に形成されている。当該プリント配線板31は、ランド部33cを取り囲むように、第2ダミー配線35aが複数設けられることで、溶融した感光性ドライフィルムのランド部33c側から第2領域34b側への流動をより確実にせき止めることができる。特に、当該プリント配線板31は、ランド部33cの厚さが比較的大きくなった場合でも、複数の第2ダミー配線35aを有することで、溶融した感光性ドライフィルムの流動を十分に抑制することができる。複数の第2ダミー配線35aが設けられる場合、これらの第2ダミー配線35aの本数の下限としては、2本が好ましく、3本がより好ましい。一方、複数の第2ダミー配線35aの本数の上限としては、例えば5本とすることができる。
【0102】
複数の第2ダミー配線35aは、例えばベースフィルム2に積層されるシード層と、このシード層に積層される電気めっき層との積層体である。また、複数の第2ダミー配線35aは、上記シード層及び電気めっき層によって構成される芯体と、この芯体の外面にめっきによって積層される被覆層とを有する構成とすることもできる。複数の第2ダミー配線35aが上記シード層及び電気めっき層の積層体からなる場合、これらの第2ダミー配線35aの平均厚さ及び平均幅としては、図7の第2配線13dと同様とすることができる。また、複数の第2ダミー配線35aが上記芯体及び被覆層からなる場合、これらの第2ダミー配線35aの平均厚さ及び平均幅としては、図7の第1配線13cと同様とすることができる。
【0103】
複数の第2ダミー配線35aの平均厚さは、ランド部33cの平均厚さ以下であることが好ましい。複数の第2ダミー配線35aの平均厚さをランド部33cの平均厚さよりも小さくする場合、ランド部33cと複数の第2ダミー配線35aとの平均厚さの差としては、例えば3μm以上12μm以下とすることができる。当該プリント配線板31は、複数の第2ダミー配線35aの平均厚さをランド部33cの平均厚さ以下とすることで、複数の第2ダミー配線35a(より詳しくは、ランド部33cから最も離れた位置に配設される第2ダミー配線35a)の絶縁層34の外面側への露出を防止しやすい。
【0104】
複数の第2ダミー配線35aは同一ピッチで配設されることが好ましい。また、ランド部33cとこのランド部33cに隣接する第2ダミー配線35aとの間隔、及び隣接する第2ダミー配線35a同士の間隔は同じであることが好ましい。これにより、絶縁層34の厚さの均一化を図り、ランド部33cの絶縁層34の外面側への露出を防止しやすい。上記ピッチとしては、図1のプリント配線板1の隣接する配線3a間の平均ピッチと同様とすることができる。また、ランド部33cとこのランド部33cに隣接する第2ダミー配線35aとの間隔、及び隣接する第2ダミー配線35a同士の間隔としては、図1のプリント配線板1の隣接する配線3a間の平均間隔と同様とすることができる。
【0105】
(絶縁層)
絶縁層34は、導電パターン33、複数の第2ダミー配線35a、並びにベースフィルム2の導電パターン33及び複数の第2ダミー配線35aが積層されていない領域に積層される。絶縁層34は、主として導電パターン33の他の部材等との接触による損傷及び短絡を防止する。そのため、絶縁層34は、意図的に設けられる開口や切欠きを除いて導電パターン33の外面を全面的に被覆していることが好ましい。
【0106】
絶縁層34は、図1のプリント配線板1と同様、ソルダーレジスト、カバーレイ等によって構成することができ、感光性ドライフィルムの硬化によって形成されることが好ましい。ランド部33cのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層34の平均厚さとしては、図1のプリント配線板1における複数の配線3aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層4の平均厚さと同様とすることができる。
【0107】
上述のように、絶縁層34は、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合う第1領域34aと、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合わない第2領域34bとを有する。絶縁層34は、第1領域34a以外の領域が第2領域34bとして構成されている。また、平面視において第1領域34aの外縁は、導電パターン33の形成領域の外縁と一致している。第1領域34a及び第2領域34bの境界面Xでは、ランド部33cは、意図する開口及び切欠きを除き、絶縁層34の外面側には露出していない。
【0108】
傾斜部34cは、第1領域34aとの境界面Xを端縁として第2領域34bに形成されている。傾斜部34cは、境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、第1領域34aとの境界面Xの位置を頂部34eとし第2領域34b側に厚さが漸減している。本実施形態において、傾斜部34cの底部34fは、例えばランド部33c及びランド部33cに隣接するダミーリード線35aの中間位置に形成される。
【0109】
第1領域34a及び第2領域34bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値としては図1のプリント配線板1と同様とすることができる。
【0110】
<プリント配線板の製造方法>
次に、図11のプリント配線板31の製造方法の一例について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム2に、平行に配設される複数の配線を含む導電パターン33を積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、ベースフィルム2及び導電パターン33に絶縁層34を積層する第2積層工程とを備える。当該プリント配線板の製造方法では、絶縁層34が、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合う第1領域34aと、平面視で導電パターン33の形成領域に重なり合わない第2領域34bとを有し、第2領域34bが、第1領域34aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部34cを有する。
【0111】
(第1積層工程)
上記第1積層工程は、ベースフィルム2の表面に、ランド部33cを有する導電パターン33と同時に複数の第2ダミー配線35aを積層する。上記第1積層工程では、複数の第2ダミー配線35aを、ランド部33cと電気的絶縁状態で、かつランド部33cを取り囲むよう積層する。上記第1積層工程は、ランド部33cの芯体33d及び複数の第2ダミー配線35aの芯体をセミアディティブ法によって積層する工程と、ランド部33cの芯体33dに貫通孔を形成する工程と、上記貫通孔、及び必要に応じて複数の第2ダミー配線35aの芯体にめっきを施す工程とを有する。
【0112】
(第2積層工程)
上記第2積層工程では、絶縁層34を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する。上記第2積層工程では、図4のプリント配線板の製造方法と同様にして絶縁層34を積層する。当該プリント配線板の製造方法は、感光性ドライフィルムを用いて絶縁層34を積層する際に、溶融した感光性ドライフィルムのランド部33c側から第2領域34b側への流動をせき止めやすく、ランド部33cの絶縁層33の外面側への露出を防止することができる。
【0113】
上記第2積層工程では、第1領域34a及び第2領域34bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部34cの頂部34eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部34cの底部34fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部34e及び底部34f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。上記変化率の好ましい下限値及び好ましい上限値としては、図4のプリント配線板の製造方法と同様である。
【0114】
[第五実施形態]
<プリント配線板>
図14図16のプリント配線板41は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2に積層され、平行に配設される複数の配線43aを含む導電パターン43と、ベースフィルム2及び導電パターン43に積層される絶縁層44とを備える。導電パターン43は、複数の配線43aのうちの少なくとも1の配線43aの端部にT字状に接続される接続配線43bを有する。接続配線43bは、当該プリント配線板41の外縁に沿って配設されている。絶縁層44は、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合う第1領域44aと、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合わない第2領域44bとを有する。第2領域44bは、第1領域44aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部44cを有する。当該プリント配線板41のベースフィルム2としては、図1のプリント配線板1のベースフィルム2と同様の構成とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
図15に示すように、当該プリント配線板41は、配線43a及び接続配線43bの接続部分Cにおいて、接続配線43bの配線43aに接続される側と反対側の側縁(以下、「第1側縁43c」ともいう)と、この第1側縁43cに対向する側縁(以下、「第2側縁43d」ともいう)との幅wが均一である。
【0116】
図16に示すように、当該プリント配線板41は、第1領域44a及び第2領域44bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部44cの頂部44eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部44cの底部44fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部44e及び底部44f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値が0.01以上1.0以下である。
【0117】
当該プリント配線板41は、導電パターン43が、複数の配線43aのうち少なくとも1の配線43aの端部にT字状に接続される接続配線43bを有し、配線43a及び接続配線43bの接続部分Cにおいて、接続配線43bの第1側縁43cと、この第1側縁43cに対向する第2側縁43dとの幅wが均一であることによって、接続部分Cのめっき厚が他の部分よりも大きくなることを抑制することができる。その結果、当該プリント配線板41は、図16に示すように、接続部分Cの厚さが他の部分よりも大きくなることを抑制することができる。これにより、接続部分Cとベースフィルム2表面との段差に起因して接続部分Cが絶縁層2の外面側に露出することを防止することができる。
【0118】
(導電パターン)
導電パターン43は、導電性を有する導体からなる層であり、平行に配設される複数の配線43aと、少なくとも1つの配線43aの端部にT字状に接続される接続配線43bとを含む。複数の配線43aは、図1のプリント配線板1と同様、シード層及び電気めっき層の積層体であってもよく、上記シード層及び電気めっき層の積層体からなる芯体に被覆層を積層した構成であってもよい。
【0119】
接続配線43bは、図1のプリント配線板1と同様、シード層及び電気めっき層の積層体であってもよく、上記シード層及び電気めっき層の積層体からなる芯体に被覆層を積層した構成であってもよい。接続配線43bは、複数の配線43aと同様の積層構造を有する場合、複数の配線43aとの厚さの均一化を図りやすい。また、複数の配線43bが上記芯体に被覆層を積層した構成であり、これらの配線43bに接続される接続配線43bが上記シード層及び電気めっき層の2積層体(つまり、被覆層を積層しない構成)である場合、接続配線43bの厚さを小さくして、接続配線43bとベースフィルム2表面との段差を小さくしやすい。
【0120】
本実施形態では、接続配線43bは、平行に配設される複数の配線43aの端部間を接続している。図15に示すように、接続配線43bは均一な幅を有する。接続配線43bは、複数の配線43aとの接続部分Cで配線43a側に窪み、かつ隣接する配線43a間の領域で配線43aと反対側に突出したアーチ構造が長手方向に連続した構成を有する。これにより、接続配線43bは複数の配線43aとY字状に接続されている。接続配線43bは、第1側縁43cから下した垂線が第1側縁43cの他方側の側縁に略直交するよう設けられている。これにより、配線43a及び接続配線43bの接続部分Cにおいて、接続配線43bの第1側縁43cと、この第1側縁43cに対向する第2側縁43dとの幅wが均一に保たれている。なお、「配線及び接続配線の接続部分」とは、配線を接続配線側に延長した場合に、この配線と接続配線とが交差する部分をいう。
【0121】
(絶縁層)
絶縁層44は、導電パターン43、及びベースフィルム2の導電パターン43が積層されていない領域に積層される。絶縁層44は、主として導電パターン43の他の部材等との接触による損傷及び短絡を防止する。そのため、絶縁層44は、意図的に設けられる開口や切欠きを除いて導電パターン43の外面を全面的に被覆していることが好ましい。
【0122】
絶縁層44は、図1のプリント配線板1と同様、ソルダーレジスト、カバーレイ等によって構成することができ、感光性ドライフィルムの硬化によって形成されることが好ましい。複数の配線43aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層44の平均厚さとしては、図1のプリント配線板1における複数の配線3aのベースフィルム2と反対側の面に積層される絶縁層4の平均厚さと同様とすることができる。
【0123】
上述のように、絶縁層44は、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合う第1領域44aと、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合わない第2領域44bとを有する。絶縁層44は、第1領域44a以外の領域が第2領域44bとして構成されている。また、平面視において第1領域44aの外縁は、導電パターン43の形成領域の外縁と一致している。第1領域44a及び第2領域44bの境界面Xでは、複数の配線43a及び接続配線43bは、意図する開口及び切欠きを除き、絶縁層44の外面側には露出していない。
【0124】
傾斜部44cは、第1領域44aとの境界面Xを端縁として第2領域44bに形成されている。傾斜部44cは、境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、第1領域44aとの境界面Xの位置を頂部44eとし第2領域44b側に厚さが漸減している。本実施形態において、傾斜部44cの底部44fは、当該プリント配線板41の外縁に位置している。
【0125】
第1領域44a及び第2領域44bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値としては図1のプリント配線板1と同様とすることができる。
【0126】
<プリント配線板の製造方法>
次に、図14のプリント配線板41の製造方法の一例について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム2に、平行に配設される複数の配線43aを含む導電パターン43を積層する第1積層工程と、上記第1積層工程後に、ベースフィルム2及び導電パターン43に絶縁層44を積層する第2積層工程とを備える。当該プリント配線板の製造方法では、絶縁層44が、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合う第1領域44aと、平面視で導電パターン43の形成領域に重なり合わない第2領域44bとを有し、第2領域44bが、第1領域44aから連続し、ベースフィルム2表面からの厚さが漸減する傾斜部44cを有する。
【0127】
(第1積層工程)
上記第1積層工程は、ベースフィルム2の表面に、複数の配線43a及び複数の配線43aのうちの少なくとも1の配線43aの端部にT字状に接続される接続配線43bを積層する。上記第1積層工程では、配線43a及び接続配線43bの接続部分Cにおいて、接続配線43bの配線43aに接続される側と反対側の側縁(第1側縁43c)と、この第1側縁43cに対向する側縁(第2側縁43d)との幅wが均一になるよう複数の配線43a及び接続配線43bを積層する。上記第1積層工程は、例えば図4のプリント配線板の製造方法の第1積層工程と同様、セミアディティブ法を用いて行うことができる。
【0128】
(第2積層工程)
上記第2積層工程では、絶縁層44を感光性ドライフィルムの硬化によって積層する。上記第2積層工程では、図4のプリント配線板の製造方法と同様にして絶縁層44を積層する。当該プリント配線板の製造方法は、上記第1積層工程で、配線43a及び接続配線43bの接続部分Cの盛り上がりを抑制することができるので、上記第2積層工程で感光性ドライフィルムを用いて絶縁層44を積層する際に、この盛り上がり部分が絶縁層44の外面側に露出することを防止することができる。
【0129】
上記第2積層工程では、第1領域44a及び第2領域44bの境界面Xと垂直な厚さ方向断面において、傾斜部44cの頂部44eからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh1、傾斜部44cの底部44fからベースフィルム2表面に下した垂線の足の長さをh2、頂部44e及び底部44f間のベースフィルム2の平面方向距離をWとした場合、(h1-h2)/Wで示される厚さの変化率の平均値を0.01以上1.0以下に制御する。上記変化率の好ましい下限値及び好ましい上限値としては、図4のプリント配線板の製造方法と同様である。
【0130】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0131】
例えば当該プリント配線板は、上述の第一実施形態から第五実施形態までの構成を必要に応じて組み合わせて用いることができる。また、上記第一実施形態及び第二実施形態では、複数の配線がコイルパターンを形成する構成について説明したが、複数の配線の配設パターンはコイルパターンに限定されるものではない。さらに、当該プリント配線板は、ベースフィルムの一方の面側のみに導電パターン及び絶縁層が積層されてもよく、ベースフィルムの両面側に導電パターン及び絶縁層が積層されてもよい。
【0132】
上記各実施形態では、複数の配線の具体的構成として、シード層及び電気めっき層の積層体、又はこの積層体に被覆層を被覆した構成について説明したが、複数の配線の具体的層構造は上記実施形態に記載の構成に限定されるものではない。また、上記シード層及び電気めっき層の構成も限定されるものではなく、例えば電気めっき層が2層以上の積層体であってもよい。さらに、上記ランド部は、必ずしもスルーホールランドでなくてもよい。
【0133】
当該プリント配線板は、複数の配線の幅方向の外側に1つのダミー配線(第1ダミー配線)のみを有していてもよい。また、当該プリント配線板は、ランド部を取り囲む1つのダミー配線(第2ダミー配線)のみを有していてもよい。
【0134】
当該プリント配線板は、複数の配線のうち、第2領域側に配設される1又は複数の配線の厚さを、第1領域の中心側に配設される1つの配線の厚さよりも小さくしてもよい。例えば当該プリント配線板は、複数の配線が、第1の厚さを有する1つの第1配線と、この第1配線よりも第2領域側に配設され、第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有する1又は複数の第2配線とを含んでいてもよい。
【0135】
当該プリント配線板の製造方法は、上記第2積層工程で、感光性ドライフィルム以外の材料を用いて絶縁層を積層してもよい。例えば上記第2積層工程では、感光性ドライフィルム以外の樹脂フィルムを用いて絶縁層を形成してもよい。上記第1積層工程では、セミアディティブ法以外の方法を用いてベースフィルムに導電パターンを積層してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本開示の実施形態に係るプリント配線板は、導電パターンの絶縁層の外面側への露出を防止することができるので、導電パターンの損傷及び短絡の防止に適している。
【符号の説明】
【0137】
1,11,21,31,41 プリント配線板
2 ベースフィルム
3,13,23,33,43 導電パターン
3a,13a,33a,43a 配線
3b,13b,33c ランド部
4,14,24,34,44 絶縁層
4a,14a,24a,34a,44a 第1領域
4b,14b,24b,34b,44b 第2領域
4c,14c,24c,34c,44c 傾斜部
4e,14e,24e,34e,44e 頂部
4f,14f,24f,34f,44f 底部
5a 第1ダミー配線
13c 第1配線
13d 第2配線
13e,33d 芯体
13f 被覆層
23a めっきリード線
25a ダミーリード線
33b スルーホール
35a 第2ダミー配線
43b 接続配線
43c 第1側縁
43d 第2側縁
X 境界面
C 接続部分
図1
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