(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20240806BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
(21)【出願番号】P 2020091684
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 眞示
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 喜充
(72)【発明者】
【氏名】久保田 嘉伸
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0185978(US,A1)
【文献】特開2014-092713(JP,A)
【文献】特開2016-206415(JP,A)
【文献】特開2020-020953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージの一辺から光信号が入出力される光変調器において、
前記パッケージの内部に、
前記光信号を導波路に沿って光変調し、前記光信号の入力導波路と出力導波路のうち一方が前記パッケージの前記一辺に対向する一端に導出され、他方が前記一端と直交する
前記一端側の側面に導出されるよう前記導波路が前記一端側に折り返されたチップと、
前記チップの前記
一端と前記パッケージの前記一辺との間に配置され、前記入力導波路
と出力導波路のうち一方に光結合された
、入力光学系
と出力光学系のうち一方の光学系と、
前記チップの前記一端側
の前記側面と前記パッケージの前記一辺との間に配置され、
前記入力導波路と前記出力導波路
のうち他方に光結合された
、入力光学系と出力光学系
のうち他方の光学系と、
を備えたことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記チップの
前記一端側の前記側面に導出される前記光信号の入力導波路あるいは出力導波路は、途中でほぼ直交する方向に折曲されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記チップには、前記入力導波路と前記出力導波路が形成された領域を覆うヤトイが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記入力導波路が前記チップの前記一端に導出され、前記出力導波路が前記チップの
前記一端側の前記側面に導出され、
前記入力光学系は、前記パッケージの前記一辺と、前記チップの前記一端との間に設けられ、
前記出力光学系は、前記パッケージの
前記一辺と、前記チップの前記一端側の前記側面との間に配置されたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光変調器。
【請求項5】
前記入力導波路は一つの導波路を有し、前記出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、
前記出力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子と、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記入力光学系の前記光路変更素子と前記偏波結合素子とが一つの部品からなることを特徴とする請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記出力光学系は、前記二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有することを特徴とする請求項5または6に記載の光変調器。
【請求項8】
前記入力光学系は、入射側と出射側で焦点距離が異なる一つのレンズを有することを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の光変調器。
【請求項9】
前記入力光学系は、光ファイバを前記チップの前記入力導波路に直接接合してなることを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の光変調器。
【請求項10】
前記出力導波路が前記チップの前記一端に導出され、前記入力導波路が前記チップの
前記一端側の前記側面に導出され、
前記出力光学系は、前記パッケージの前記一辺と、前記チップの前記一端との間に設けられ、
前記入力光学系は、前記パッケージの
前記一辺と、前記チップの前記一端側の前記側面との間に配置されたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光変調器。
【請求項11】
前記入力導波路は一つの導波路を有し、前記出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、
前記入力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子を含み、
前記出力光学系は、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含むことを特徴とする請求項10に記載の光変調器。
【請求項12】
前記出力光学系は、前記二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有することを特徴とする請求項11に記載の光変調器。
【請求項13】
前記入力光学系のレンズと、前記光路変更素子とが一つの部品からなることを特徴とする請求項11または12に記載の光変調器。
【請求項14】
前記入力光学系は、光ファイバが前記光路変更素子に直接接合され、前記光路変更素子が前記チップの前記入力導波路に直接接合されてなることを特徴とする請求項11または12に記載の光変調器。
【請求項15】
前記チップは、ニオブ酸リチウムからなることを特徴とする請求項1~14のいずれか一つに記載の光変調器。
【請求項16】
前記チップは、ニオブ酸リチウムからなる薄膜LN構造であることを特徴とする請求項15に記載の光変調器。
【請求項17】
前記入力光学系および前記出力光学系の少なくともいずれかの光学部品の一部は、前記パッケージの前記一辺に設けられる光ファイバの光ファイバブーツの内部に配置されたことを特徴とする請求項1~16のいずれか一つに記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を変調出力する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な光変調器は高速な光通信に必要不可欠なデバイスである。近年、光通信用デバイスを小型化および集積化したHB-CDM(High Bandwidth Coherent Driver Modulator)が開発されている。また、光変調器の基板(チップ)にニオブ酸リチウムLiNbO3(以下LNと称す)基板を用いることで、挿入損失や伝送特性の面で優れた特性を得ることができる。LN基板上にはチタン(Ti)拡散による光変調器が形成される。
【0003】
このようなLN光変調器(Bulk LN光変調器)は、広く用いられているが、HB-CDMに適用しようとするとチップのサイズが大きくなる。HB-CDMでは、パッケージの一辺に光信号の入出力ファイバが配置され、他辺にRF信号のドライバが配置された構造である。このため、HB-CDMでは、Bulk LN光変調器よりも小型化が可能なチップに薄膜LNを用いた薄膜LN光変調器の適用が検討されている。
【0004】
光変調器に関連する技術としては、例えば、光信号の入力および出力の導波路を基板の同じ端面に配置した構造とした光変調器が開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HB-CDMでは、二つの出力光を偏波結合する光学系と、入出力ファイバの距離に応じた入力光と出力光の間隔を広げるための光学系と、を光変調器のパッケージ内に組み込む必要がある。ここで、パッケージ内のチップの幅を広げるとチップのウェハあたりの取れ数が少なくなり、コスト高になる。
【0007】
光変調器のパッケージの長さは、OIF標準((Implementation Agreement for the High Bandwidth Coherent Driver Modulator(HB-CDM),IA #OIF-HB-CDM-01.0)で定められている。このため、パッケージ内に収容するチップの長さにも制限が生じる。
【0008】
LN光変調器では、チップの駆動電圧(Vπ)は、高周波電気信号と光の相互作用部長さに依存する。このため、チップの長さが短くなると、Vπが大きくなり、消費電力の増加、変調損失の増大等が生じる。HB-CDMでは、パッケージ内の長さ方向の他辺側にドライバが配置されており、その分だけパッケージ内でのチップの長さが短くなる。加えて、パッケージ内の一辺側に配置される光信号の入出力の光学系によってもチップの長さが短くなる。HB-CDMのLN光変調器で特性向上するためには、Vπをできるだけ小さくするためにパッケージ内でチップの長さをできるだけ長く取ることが求められる。
【0009】
一つの側面では、本発明は、パッケージの制約を受けずに特性向上できる光変調器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施態様によれば、パッケージの一辺から光信号が入出力される光変調器において、前記パッケージの内部に、前記光信号を導波路に沿って光変調し、前記光信号の入力導波路と出力導波路のうち一方が前記パッケージの前記一辺に対向する一端に導出され、他方が前記一端と直交する前記一端側の側面に導出されるよう前記導波路が前記一端側に折り返されたチップと、前記チップの前記一端と前記パッケージの前記一辺との間に配置され、前記入力導波路と出力導波路のうち一方に光結合された、入力光学系と出力光学系のうち一方の光学系と、前記チップの前記一端側の前記側面と前記パッケージの前記一辺との間に配置され、前記入力導波路と前記出力導波路のうち他方に光結合された、入力光学系と出力光学系のうち他方の光学系と、を備えた光変調器が提案される。
【発明の効果】
【0011】
一態様によれば、パッケージの制約を受けずに特性向上できる光変調器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態1にかかる光変調器を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その1)
【
図4】
図4は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その2)
【
図5】
図5は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その3)
【
図6】
図6は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その4)
【
図7】
図7は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その5)
【
図8】
図8は、実施の形態2にかかる光変調器を示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その1)
【
図10】
図10は、実施の形態2にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その2)
【
図11】
図11は、実施の形態2にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その3)
【
図12】
図12は、実施の形態2にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。(その4)
【
図13】
図13は、実施の形態にかかる光変調器のチップの製造時の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる光変調器の実施の形態を詳細に説明する。実施の形態では、HB-CDMの光変調器を例に説明する。HB-CDMの光変調器は、上述したように、パッケージの一辺に光信号の入出力ファイバが接続され、他辺にRF信号のドライバが配置された構造である。このため、パッケージ内の一辺側には光信号の入出力用の光学系が配置され、他辺側にはドライバが配置されており、光変調器のチップ(基板)は、これら光信号の入出力用の光学系と、ドライバとの間に配置される。
【0014】
実施の形態では、パッケージ内に配置されるチップ上の光導波路について、チップの長さ方向と幅方向に導出する。幅方向は、チップの長さ方向に対して直交(90°)する角度方向である。そして、光信号の入力または出力の光学系のうち一方を、チップの長さ方向で一部重なるように配置する。すなわち、入力または出力の光学系をチップの長さ方向上に配置せず、チップの長さ方向に関与しない幅方向の位置にずらして配置する。これにより、HB-CDMの光変調器においてパッケージ内でチップの長さをできるだけ長く確保し、チップ(光変調器)の特性向上を図ることができるようになる。
【0015】
例えば、入力または出力の光学系のうち、光路長が長い光学系、部品点数が多い光学系をチップの幅方向に配置する。
【0016】
また、入力光学系111または出力光学系112をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、チップ102の一端102aには、残る一方の光学系のみを配置できる。これにより、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置できるようになる。
【0017】
以下、実施の形態1では、入力用の光学系をチップの長さ方向上に配置し、出力用の光学系をチップの幅方向に配置した構成について説明する。この場合、チップ上に形成する光導波路について、入力用の光導波路をチップの長さ方向に沿って配置し、出力用の光導波路をチップの幅方向に曲げて配置する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる光変調器を示す平面図である。
図2は、
図1の部分拡大図である。光変調器100は、パッケージ101内に、各種部品が搭載されてなる。パッケージ101内には、マッハツェンダー形の光変調器を構成する薄膜LN構造のチップ102、終端基板103、入力光学系111、出力光学系112、ドライバ113が設けられる。
【0019】
パッケージ101は、HB-CDMで定められた横長な所定の大きさを有し、長さ方向Xの一辺101aに光信号を入力する入力光ファイバ131および出力光ファイバ132が設けられる。入力光ファイバ131は、ファイバブーツ133を介してパッケージ101に取り付けられ、入力光ファイバ131を介して伝送された光信号は、パッケージ101内部の入力光学系111に出射される。
【0020】
出力光ファイバ132は、ファイバブーツ133を介してパッケージ101に取り付けられる。パッケージ101内部の出力光学系112から出射された光信号(変調光)は、出力光ファイバ132を介して外部に伝送される。
【0021】
ここで、パッケージ101内部には、長さ方向Xの一辺101aから他辺101bにかけて、入出力光学系111,112、チップ102、ドライバ113が配置されている。ドライバ113に対する高周波電気信号(RF信号)は、パッケージ101の他辺101bから入力される。
【0022】
入力光ファイバ131から入射された光信号は、入力光学系111を介してチップ102上の入力導波路121を介してIQ変調部120に入力される。また、ドライバ113には変調用のRF信号が入力され、ドライバ113はRF信号を増幅してIQ変調部120に出力する。IQ変調部120は、マッハツェンダー形の光変調器であり、RF信号に基づき、相互作用部にて入力光を光変調する。光変調された出力光は、出力導波路122から出力光学系112を介して出力光ファイバ132に出射される。
【0023】
図2には、主にチップ102上のIQ変調部120の光導波路(
図1の領域A)の部分を拡大して示す。チップ102は、薄膜LNの基板上に光導波路を形成してなる。また、チップ102を駆動するドライバ113は、増幅器211およびコンデンサ212を含み形成されている。IQ変調部120上に形成される光導波路は、長さ方向Xで折り返された形状に形成されている。チップ102の一端102a側の入力光学系111に光結合された入力導波路121は、チップ102の長さ方向Xに沿って他端102b側まで導出される。そして、分岐部aでX偏波用とY偏波用の光導波路200として分岐され、一端102a側に戻す形で設けられている。これらX偏波用とY偏波用の光導波路200は、さらにIQ用に二つずつ分岐されて合計8つに分岐されている。
【0024】
IQ変調部120内の光導波路200は、相互作用長に相当する長さを有する。光導波路200の導波方向に沿って構成を順に説明する。分岐部aで分岐後の8本の光導波路200に沿って、ドライバ113から導出された8本のRF電極201が形成されている。このRF電極201は、チップ102の幅方向Yに配置された終端基板103に導出され、終端されている。
【0025】
この後、8本の光導波路200は、X偏波用とY偏波用、さらにIQ別の合計8つのDC電極202部分を通過後、4つの光導波路200に結合されてY偏波用、X偏波用の合計4つのDC電極202を通過する。DC電極202には、光変調器の動作点を調整するためのDCバイアスが印加される。4つの光導波路200は、Y結合部b、X結合部cでそれぞれY偏波、X偏波用の二つの光導波路200に結合された後、二つの出力導波路122から出力光学系112に出射される。
【0026】
そして、一つの入力導波路121の端面がチップ102の長さ方向Xの一端102a(端面Xin)に形成される。これに対し、二つの出力導波路122の端面は、チップ102の長さ方向Xと直交する幅方向Yの側端面102c(端面Yout)に形成される。このため、二つの出力導波路122は、チップ102上で長さ方向Xに沿って形成された後、幅方向Yに向けて長さ方向Xに対してほぼ直交する幅方向Yに向けて折曲形成されている。
【0027】
ここで、チップ102を薄膜LNで構成することで、出力導波路122を直角に曲げることが可能である。薄膜LN光変調器は、Bulk LN光変調器よりも光導波路に対する光の閉じ込めが強い。例えば、Bulk LNでの光導波路内での光の直径は5~10μm程度であるのに対し、薄膜LNでの光導波路内での光の直径は1μm程度であり、光を閉じ込めることができる。このように、チップ102を薄膜LNで構成することで、出力導波路122を直角に曲げることができる。
【0028】
ここで、
図1には、入力光学系111の大きさに対し、出力光学系112の大きさが大きいことが示されている。例えば、入力光学系111を構成する光部品の点数に対し、出力光学系112を構成する光部品の点数が多いことで、出力光学系112の大きさが大きくなる。例えば、出力光学系112が、二つの出力光を結合するプリズムや、偏波結合器(PBC:Polarization Beam Coupler)等を含む場合、この出力光学系112が大きくなる。
【0029】
ここで、仮に、チップ102の長さ方向Xにスぺ―ス(長さ)を取る出力光学系112を配置した場合、パッケージ101内の長さ方向Xにおいて、出力光学系112で必要な長さ分だけチップ102の長さが短くなってしまう。この点、実施の形態1では、設置のスペースを取る出力光学系112をパッケージ101内のチップ102の長さ方向X上に配置せず、チップ102の幅方向Yにずらして配置する。これにより、パッケージ101内部において出力光学系112に必要な大きさ(長さ)を確保しつつ、チップ102に所定の長さを確保できるようになる。
【0030】
そして、パッケージ101内部にスペースを取る出力光学系112を設置しても、チップ102の長さを短くすることなく、チップ102として所定の長さを確保できるようになる。チップ102に所定の長さを確保することで、IQ変調部120の相互作用部の長さを確保できることとなる。
【0031】
すなわち、光変調器のチップ102に対するドライバ113の駆動電圧Vπは、RF信号とIQ変調部120の光の相互作用長の長さに依存している。チップ102の長さを小さくすることなく、長さを確保できることで、駆動電圧Vπを小さくできる。これにより、以下のように、光変調器の特性向上を図ることができるようになる。
(1)ドライバ113出力電圧を低減し、消費電力を低減できる。
(2)光変調器の動作点を調整するためのDCバイアス用の電源サイズを小さくできる。
(3)変調度が大きくなり、デバイスの変調損失を低減できる。
【0032】
また、出力光学系112をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、チップ102の一端102aには、入力光学系111のみを配置できる。これにより、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置することができるようになる。
【0033】
図3~
図7は、実施の形態1にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。
図3~
図7を用いて、光変調器100内の入力光学系111、出力光学系112、チップ102の配置および光結合の各種構成例を説明する。
【0034】
図3(a)は光変調器の部分平面図、
図3(b)は光変調器の部分側面図である。
図3(a)に示すように、入力光学系111は、長さ方向Xに沿って配置された一対のレンズ301,302を含む。レンズ301は入力光ファイバ131の端面から拡散する光をコリメート(平行光に)する。レンズ302は、長さ方向Xに向けて平行光を集束させ、チップ102の入力導波路121の端面Xinに入射させる。
【0035】
出力光学系112は、レンズ311と、光路変更素子(光路変換プリズム)312と、偏波回転素子(1/2λ波長板)313と、偏波結合素子(PBC)314と、レンズ315を含む。
【0036】
レンズ311は、出力導波路122の端面Youtから幅方向Yに向けて出射されるX,Yの二つの光信号に対応して、長さ方向Xに沿って2個設けられ、それぞれ拡散する光をコリメートする。光路変換プリズム312は、幅方向Yから入射されるX,Yの光信号の光路を長さ方向Xに向けて反射させ、光路変換する。
【0037】
1/2λ波長板313は、光路変換プリズム312で光路変換された二つの光信号のうち一方(例えば光信号Y)の偏光方向を90度回転させる。PBC314には、光路変換プリズム312通過後の光信号X、および1/2λ波長板313通過後の光信号Yが入射され、これら光信号X,Yを偏波結合する。レンズ315は、PBC314により偏波結合された光信号を出力光ファイバ132の端面に集束させて入射させる。
【0038】
図3(b)に示すように、チップ102の一端102a部分の表面には、一端102aから長さ方向Xに対して所定長さ(例えば1mm)を有し、幅方向Yの全域に渡ってヤトイ320が設けられる。ヤトイ320は、ウェハ上に形成された光導波路(入力導波路121,出力導波路122)の表面部分を覆う形で設けられる。ヤトイ320は、ガラスやLN系の材質からなりチップ102の基板上に接着剤等により接着される。
【0039】
ヤトイ320は、ダイシングによってウェハからチップ102を切断、分離する際の光導波路の保護部材として機能する。また、チップ102上にヤトイ320を設けることで、ダイシングする際にチップ102の端面(一端102a,側端面102c)部分のバリや割れ等の発生を抑制し、入力導波路121の端面Xin、および出力導波路122の端面Youtを精度良く形成できる。
【0040】
チップ102上の出力導波路122は、長さ方向Xから幅方向Yにほぼ直交する方向に曲げて形成されており、拡大すると角部分は数百μmの半径Rを有して曲がっている。上述したように、薄膜LNでの光導波路内での光の直径は1μm程度であり、光を強く閉じ込めることができる。チップ102を薄膜LNで構成することで、出力導波路122を直角に曲げることができ、ヤトイ320の長さ(1mm)以下の範囲内で曲げることができる。
【0041】
なお、入力光学系111のレンズ301、出力光学系112のレンズ315は、それぞれファイバブーツ133内に配置することもできる。
【0042】
上記構成において、入力光学系111は、長さ方向Xに数mmの長さを有する。出力光学系112は、入力光学系111よりも長さ方向Xの長さが長い。したがって、上記構成によれば、パッケージ101内のチップ102の長さ方向Xに沿って入力光学系111のみを配置することで、チップ102として所定の長さを確保できるようになる。出力光学系112は、チップ102の幅方向Yにずらして配置しているため、長さ方向Xに対し長さx1分だけチップ102と重なる形にでき、この長さx1分、パッケージ101内でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。すなわち、パッケージ101内でチップ102の長さをできるだけ長くすることができるようになる。
【0043】
次に、
図4に示す光変調器の構成例を説明する。
図4では、
図3(a)に示した入力光学系111および出力光学系112での光路の広がりおよび集束と、
図3(b)の側面図を省略する。なお、チップ102上には、
図3(b)と同様のヤトイ320を有しているものとする。以下、
図3と同様の構成部には同一の符号を付している。
【0044】
図4の構成例では、入力光学系111は、
図3(a)と同様の構成である。出力光学系112は、レンズ311と、1/2λ波長板313と、光路変換兼PCBプリズム401と、レンズ315を含む。
【0045】
レンズ311は、出力導波路122の端面Youtから幅方向Yに向けて出射される二つの光信号X,Yに対応して、長さ方向Xに沿って2個設けられ、それぞれ拡散する光をコリメートする。
【0046】
1/2λ波長板313は、光路変換プリズム312で光路変換された二つの光信号のうち一方(例えば光信号X)の偏光方向を90度回転させる。光路変換兼PCBプリズム401は、光路変換プリズムとPCBの機能を有する。光路変換兼PCBプリズム401は、幅方向Yから入射される光信号X,Yの光路をそれぞれ長さ方向Xに向けて反射させ、光路変換する。また、光路変換兼PCBプリズム401は、光信号Y、および1/2λ波長板313通過後の光信号Xを偏波結合する。レンズ315は、光路変換兼PCBプリズム401により偏波結合された光信号を出力光ファイバ132の端面に集束させて入射させる。
【0047】
上記構成によれば、出力光学系112は、チップ102の幅方向Yにずらして配置しているため、パッケージ101内でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。すなわち、パッケージ101内でチップ102の長さをできるだけ長くすることができるようになる。また、光路変換兼PCBプリズム401を用いることで、
図3に記載の光路変換プリズム312とPCB314の機能を一つの光学部品に纏めることができ、
図3の構成に比べて出力光学系112の光路長を短くでき、部品点数を削減できる。
【0048】
次に、
図5に示す光変調器の構成例を説明する。
図5では、入力光学系111は、
図3(a)と同様の構成である。出力光学系112は、レンズアレイ501と、光路変換プリズム312と、1/2λ波長板313と、PCB314と、レンズ315を含む。
【0049】
レンズアレイ501は、長さ方向Xに沿って2個配列されたレンズ501a,501bを一体化してなる。レンズアレイ501のレンズ501a,501bは、出力導波路122の端面Youtから幅方向Yに向けて光信号X,Yそれぞれの拡散光をコリメートする。
【0050】
光路変換プリズム312は、幅方向Yから出射される光信号X,Yの光路を長さ方向Xに向けて光路変換する。1/2λ波長板313は、光路変換プリズム312で光路変換された二つの光信号のうち一方(例えば光信号X)の偏光方向を90度回転させる。PBC314には、光路変換プリズム312通過後の光信号Y、および1/2λ波長板313通過後の光信号Xが入射され、これら光信号X,Yを偏波結合する。レンズ315は、PBC314により偏波結合された光信号を出力光ファイバ132の端面に集束させて入射させる。
【0051】
上記構成によれば、出力光学系112は、チップ102の幅方向Yにずらして配置しているため、パッケージ101内でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。すなわち、パッケージ101内でチップ102の長さをできるだけ長くすることができるようになる。また、出力光学系112の入射側の二つの光信号X,Yに対応して必要な二つのレンズ501a,501bを一つのレンズアレイ501でアレイ化したため、レンズの部品点数を削減できる。
【0052】
また、レンズアレイ501を用いることで、二つのレンズ501a,501b間の距離を小さくでき、これに対応してチップ102上の二つの光信号X,Yの出力導波路122間の間隔をより近接できるようになる。二つの光信号X,Yの出力導波路122間の間隔は、長さ方向Xおよび幅方向Yのいずれについても近接でき、その分だけ出力導波路122の折り曲げに必要な長さ方向Xの長さを小さくできる。例えば、二つの光信号X,Yの出力導波路122間の間隔を
図3の構成よりも短くでき、その分だけ、チップ102上の相互作用長に関与する光導波路200の長さを長く確保できるようになる。
【0053】
次に、
図6に示す光変調器の構成例を説明する。
図6では、出力光学系112は、
図3(a)と同様の構成である。入力光学系111については、上記
図3(a)の構成では長さ方向Xに沿って一対のレンズ301,302で構成したが、
図6の構成では一つのレンズ601で構成している点のみが相違する。
【0054】
レンズ601は、入力光ファイバ131の端面から拡散する光を集束させ、チップ102の入力導波路121の端面Xinに入射させる。例えば、入力光ファイバ131の出射端面における光信号の直径は10μm程度であり、入力導波路121の端面Xinにおける光信号の直径は1μm程度である。レンズ601は、入力側と出力側のレンズでそれぞれ焦点距離を設定することで、入力導波路121から出射された光信号を入力導波路121の端面Xinに入射させることができる。
【0055】
上記構成によれば、出力光学系112は、チップ102の幅方向Yにずらして配置しているため、パッケージ101内でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。すなわち、パッケージ101内でチップ102の長さをできるだけ長くすることができるようになる。また、入力光学系111を一つのレンズ601で構成したため、レンズの部品点数を削減でき、入力光学系111の長さ方向Xの光路長を
図3に記載の構成よりもさらに短くできる。その分、パッケージ101内でのチップ102の長さを長くすることができるようになる。
【0056】
次に、
図7に示す光変調器の構成例を説明する。
図7では、出力光学系112は、
図3(a)と同様の構成である。入力光学系111については、上記
図3(a)の構成では長さ方向Xに沿って一対のレンズ301,302で構成したが、
図7の構成ではレンズを用いずに入力光ファイバ131を直接、入力導波路121の端面Xinにバッドジョイントで接合させる点が相違する。
【0057】
図7(a)の平面図に示すように、入力光ファイバ131の端部にはガラスブロック701を設け、このガラスブロック701を直接、入力導波路121の端面Xinに接着剤等を用いて接合させる。この接合時、
図7(b)の一部裁断側面図に示すように、入力光ファイバ131のクラッド内部のコア131aの軸心を、端面Xinにおける入力導波路121の軸心に一致させる軸調整を行う。この構成例では、入力光ファイバ131としてモードフィールドが小さい小径ファイバ(例えば3μm~4μm)を用いることが望ましい。
【0058】
以上の実施の形態1の各種具体例は、
図3~
図7で説明した入力光学系111および出力光学系112の各構成を適宜組み合わせることができる。
【0059】
上記構成によれば、出力光学系112は、チップ102の幅方向Yにずらして配置しているため、パッケージ101内でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。すなわち、パッケージ101内でチップ102の長さをできるだけ長くすることができるようになる。また、入力光学系111にレンズを用いず入力光ファイバ131を直接、入力導波路121に接合する構成であるため、レンズ等の部品点数を削減でき、入力光学系111の長さ方向Xの光路長を
図6に記載の構成よりもさらに短くできる。その分、パッケージ101内でのチップ102の長さを長くすることができるようになる。また、光信号を空間結合せずに直接光結合できるため、接合部における光結合の光損失を低減できるようになる。
【0060】
上述した実施の形態1において、入力光学系111、および出力光学系112を構成する光学部品の一部は、パッケージ101内に収容せず、ファイバブーツ133内に収容する構成としてもよい。例えば、
図3の具体的構成例において、チップ102より長さ方向Xで外側に位置する出力光学系112の1/2λ波長板313、PBC314、レンズ315は、パッケージ101外部のファイバブーツ133内に収容してもよい。また、この
図3の構成例において、チップ102より長さ方向Xで外側に位置するレンズ302をファイバブーツ133内に収容してもよい。これらにより、パッケージ101内部でチップ102の長さをより長く確保できるようになる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1とは逆に、出力用の光学系をチップの長さ方向上に配置し、入力用の光学系をチップの幅方向に配置した構成について説明する。この場合、チップ上に形成する光導波路について、出力用の光導波路をチップの長さ方向に沿って配置し、入力用の光導波路をチップの幅方向に曲げて配置する。
【0062】
図8は、実施の形態2にかかる光変調器を示す平面図である。
図8において、
図1と同様の構成部には同一の符号を付してある。
図8に示すように、パッケージ101内には、チップ102の長さ方向Xに出力光学系112が配置され、チップ102の幅方向Yにずれた位置に入力光学系111が配置される。
【0063】
そして、チップ102上において、一つの入力導波路121の端面は、チップ102の幅方向Yの側端面102c(端面Yin)に形成される。二つの出力導波路122の端面は、チップ102の長さ方向Xの一端102a(端面Xout)に形成される。このため、入力導波路121は、チップ102上で長さ方向Xに沿って形成された後、幅方向Yに向けて直角に曲げて形成される。
【0064】
図9~
図12は、実施の形態2にかかる光変調器の具体的構成例を示す図である。以下、実施の形態1(
図3等)で説明した構成と同様の構成部には同一の符号を付してある。
【0065】
図9の構成例では、入力光学系111は、一対のレンズ301,302と、光路変換プリズム312とを含む。レンズ301は入力光ファイバ131の端面から拡散する光をコリメート(平行光に)する。光路変換プリズム312は、長さ方向Xから入射される光信号の光路を幅方向Yに向けて反射させ、光路変換する。レンズ302は、幅方向Yに向けて平行光を集束させ、チップ102の入力導波路121の端面Yinに入射させる。
【0066】
出力光学系112は、レンズ311と、1/2λ波長板313と、PBC314と、レンズ315を含む。
【0067】
レンズ311は、出力導波路122上で長さ方向Xに導波されるX,Yの二つの光信号に対応して、幅方向Yに沿って2個設けられ、それぞれ拡散する光をコリメートする。
【0068】
1/2λ波長板313は、レンズ311で光路変換された二つの光信号のうち一方(例えば光信号Y)の偏光方向を90度回転させる。PBC314には、レンズ311通過後の光信号X、および1/2λ波長板313通過後の光信号Yが入射され、これら光信号を偏波結合する。レンズ315は、PBC314により偏波結合された光信号を出力光ファイバ132の端面に集束させて入射させる。
【0069】
また、チップ102の一端102a部分の表面には、ヤトイ320が設けられる。ヤトイ320は、ウェハ上に形成された光導波路(入力導波路121,出力導波路122)の表面部分を覆う形で設けられる。
【0070】
チップ102上の入力導波路121は、幅方向Yから長さ方向Xにほぼ直交する角度を有して曲げて形成されている。チップ102を薄膜LNで構成することで、入力導波路121を直角に曲げることができ、ヤトイ320の長さ(1mm)以下の範囲内で曲げることができる。
【0071】
ここで、入力光学系111および出力光学系112の光学部品の一部は、それぞれファイバブーツ133内に配置することもできる。例えば、出力光学系112のうち、1/2λ波長板313と、PBC314と、レンズ315をパッケージ101の端部Lより外部に位置するファイバブーツ133内部に配置してもよい。
【0072】
上記構成によれば、パッケージ101内のチップ102の一端102aには、出力光学系112のみを配置することができ、入力光学系111をチップ102の一端102aに配置する必要がない。これにより、チップ102の一端102aの幅方向Y内で入力光学系111と出力光学系112を配置する制約を無くすことができる。すなわち、入力光学系111をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、チップ102の一端102aには、出力光学系112の一方のみを配置できる。これにより、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置することができるようになる。
【0073】
また、チップ102の長さ方向X上に配置した出力光学系112を構成する光学部品の一部をパッケージ101の外部に配置することで、パッケージ101内部に配置するチップ102として所定の長さを確保できるようになる。
【0074】
図10の構成例では、入力光学系111は、
図9と同様の構成である。出力光学系112は、レンズアレイ501と、1/2λ波長板313と、PCB314と、レンズ315を含む。
【0075】
レンズアレイ501は、幅方向Yに沿って2個配列されたレンズ501a,501bを一体化してなる。レンズアレイ501のレンズ501a,501bは、出力導波路122の端面Xoutから長さ方向Xに向けて出射される光信号X,Yそれぞれの拡散光をコリメートする。
【0076】
1/2λ波長板313は、光路変換プリズム312で光路変換された二つの光信号のうち一方(例えば光信号Y)の偏光方向を90度回転させる。PBC314には、レンズ501b通過後の光信号X、および1/2λ波長板313通過後の光信号Yが入射され、これら光信号を偏波結合する。レンズ315は、PBC314により偏波結合された光信号を出力光ファイバ132の端面に集束させて入射させる。
【0077】
上記構成によれば、入力光学系111をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置することができるようになる。
【0078】
また、出力光学系112の入射側の二つの光信号X,Yに対応して必要な二つのレンズ501a,501bを一つのレンズアレイ501でアレイ化したため、レンズの部品点数を削減できる。
【0079】
また、レンズアレイ501を用いることで、二つのレンズ501a,501b間の距離を小さくでき、これに対応してチップ102上の二つの光信号X,Yの出力導波路122間の間隔をより近接できるようになる。その分だけ出力光学系112の幅方向Yの幅を小さくできる。
【0080】
また、チップ102の長さ方向X上に配置した出力光学系112を構成する光学部品の一部、例えば、1/2λ波長板313と、PBC314と、レンズ315をパッケージ101外部のファイバブーツ133内部に配置してもよい。このように、出力光学系112の光学部品の一部をパッケージ101の端部Lより外部(ファイバブーツ133内部)に配置することで、パッケージ101内部に配置するチップ102として所定の長さを確保できるようになる。
【0081】
図11の構成例では、出力光学系112は、
図9と同様の構成である。入力光学系111は、レンズ兼光路変換プリズム1101を用いて構成する。レンズ兼光路変換プリズム1101は、入力光ファイバ131の端面から長さ方向Xに沿って拡散する光信号の光路を幅方向Yに向けて反射させた後、幅方向Yに向けて信号光を集束させ、チップ102の入力導波路121の端面Yinに入射させる。
【0082】
上記構成によれば、入力光学系111をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置することができるようになる。
【0083】
また、入力光学系111の光学部品を一つのレンズ兼光路変換プリズム1101で構成したため、入力光学系111の部品点数を最小限に削減できる。
【0084】
また、チップ102の長さ方向X上に配置した出力光学系112を構成する光学部品の一部、例えば、1/2λ波長板313と、PBC314と、レンズ315をパッケージ101外部のファイバブーツ133内部に配置してもよい。このように、出力光学系112の光学部品の一部をパッケージ101の端部Lより外部(ファイバブーツ133内部)に配置することで、パッケージ101内部に配置するチップ102として所定の長さを確保できるようになる。
【0085】
図12の構成例は、
図11の変形例である。入力光学系111として用いる入力レンズ兼光路変換プリズム1101は、一側面1101aをチップ102の入力導波路121の端面Yin部分に直接、バッドジョイントにより接着剤等で接合する。
【0086】
また、入力光ファイバ131の端部にはガラスブロック701を設け、このガラスブロック701を直接、入力レンズ兼光路変換プリズム1101の他側面1101bに接着剤等で接合する。
【0087】
上記構成によれば、入力光学系111をチップ102の幅方向Yにずらして配置することで、入力光学系111および出力光学系112をいずれも余裕をもって配置することができるようになる。
【0088】
また、入力光学系111にレンズを用いず入力光ファイバ131を入力レンズ兼光路変換プリズム1101を介して直接、入力導波路121に接合する構成であるため、レンズ等の部品点数を削減できる。また、光信号を空間結合せずに直接光結合できるため、接合部における光結合の光損失を低減できるようになる。
【0089】
また、チップ102の長さ方向X上に配置した出力光学系112を構成する光学部品の一部、例えば、1/2λ波長板313と、PBC314と、レンズ315をパッケージ101外部のファイバブーツ133内部に配置してもよい。このように、出力光学系112の光学部品の一部をパッケージ101の端部Lより外部(ファイバブーツ133内部)に配置することで、パッケージ101内部に配置するチップ102として所定の長さを確保できるようになる。
【0090】
以上の実施の形態2の各種具体例は、
図9~
図12で説明した入力光学系111および出力光学系112の各構成を適宜組み合わせることができる。
【0091】
図13は、実施の形態にかかる光変調器のチップの製造時の状態を示す平面図である。
図13(a)は、ウェハ上のチップ配置状態を示し、
図13(b)は、
図13(a)のB部分の部分拡大図である。
【0092】
図13(a)に示すように、ウェハ1301上には、複数行列のマトリクス状にチップ102が配置される。ウェハ1301の状態で各チップ102部分に導波路(入力導波路121,出力導波路122,IQ変調部120等)が形成される。ヤトイ320は、複数のチップ102の表面上に、幅方向Yに長く形成されたものを用い、長さ方向Xに複数設ける。
【0093】
図13(b)に示すように、例えば、長さ方向Xに対して配置する一対のチップ102は、他端102b同士を中心として一端102aを対称位置に配置する。この際、一端102aは、それぞれ長さ方向Xに対し、一つのチップ102の倍の長さに相当する所定間隔を有して配置される。
【0094】
これにより、1本のヤトイ320あたり、幅方向Yに沿って幅方向Yに隣接する複数のチップ102間を跨ぐ形で配置することができる。ここで、HB-CDMの仕様に対応するため、チップ102上には、光導波路(入力導波路121,出力導波路122)が一端102a側にまとめて形成されている。これにより、ヤトイ320により入力導波路121と出力導波路122の表面部分を纏めて覆うことができる。ヤトイ320は、チップ102の入力導波路121と出力導波路122の表面部分に接着剤等により接合させる。
【0095】
この後、各チップ102の境界線に相当する縦横のダイシングラインDに沿ってウェハ1301を切断することで、ウェハ1301から複数のチップ102を切り出すことができる。このヤトイ320は、ダイシングによってウェハからチップ102を切断、分離する際の光導波路の保護部材として機能する。また、ダイシングする際にチップ102の端面(一端102a,側端面102c)部分のバリや割れ等の発生を抑制でき、入力導波路121の端面Xin、および出力導波路122の端面Youtの端面を精度良く設けることができる。
【0096】
このように、ウェハ1301上に複数のチップ102を配置し、光導波路を形成し、チップ102上にヤトイ320を設けることで、複数のチップ102に対し同時にヤトイ320を設けることができる。この例では、幅方向Yの複数のチップ102あたり1本のヤトイ320を配置することで、製造時のヤトイ320の数を削減できるようになる。
【0097】
以上説明したように、光変調器100は、パッケージの内部に、光信号を光変調し、光信号の入力導波路と出力導波路のうち一方がパッケージの一辺に対向する一端に導出され、他方が一端と直交する側面に導出されたチップと、チップの入力導波路と出力導波路にそれぞれ光結合された入力光学系および出力光学系と、を備えてなる。これにより、パッケージとチップとの間には入力光学系あるいは出力光学系の一方のみが配置され、チップの大きさ、特に、一端から他端への長さを確保できるようになる。例えば、光路長が短かいあるいは部品点数が少ない一方の光学系をパッケージとチップとの間に配置し、光路長が長いあるいは部品点数が多い他方の光学系をパッケージとチップとの間からずらした位置に配置する。これにより、チップの長さを確保でき、チップ上の相互作用長を長くとることができ、光変調器としての各種特性を向上できるようになる。
【0098】
また、チップの側面に導出される光信号の入力導波路あるいは出力導波路は、途中でほぼ直交する方向に折曲してもよい。これにより、チップの一端側に、入力導波路あるいは出力導波路の一方を配置し、チップの側面側に入力導波路あるいは出力導波路の他方を配置でき、対応する光学系をそれぞれチップの一端側と側面側に配置できるようになる。
【0099】
また、チップには、入力導波路と出力導波路が形成された領域を覆うヤトイを設けてもよい。このヤトイにより、チップの一端側に形成されている入力導波路と出力導波路とを纏めて保護することができるようになる。
【0100】
また、入力導波路がチップの一端に導出され、出力導波路がチップの側面に導出され、入力光学系は、パッケージの一辺と、チップの一端との間に設けられ、出力光学系は、パッケージの側面側にずらした位置に配置された構成としてもよい。例えば、入力光学系の光路長が短いあるいは部品点数が少ない場合、この入力光学系をパッケージとチップとの間に配置する。この場合、光路長が長いあるいは部品点数が多い出力光学系をパッケージとチップとの間からずらしたチップの側部側に配置する。これにより、チップの長さを確保でき、チップ上の相互作用長を長くとることができ、光変調器としての各種特性を向上できるようになる。
【0101】
また、入力導波路は一つの導波路を有し、出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、出力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子と、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含み構成してもよい。これにより、出力導波路は、変調後の光信号X,Yを二つの導波路から出力することができる。この場合、チップの側部から光信号を出力する出力光学系をパッケージの一辺に向けて光路変更素子により光路変更し、偏波回転素子により一方の偏波を回転させ、偏波結合素子により偏波を結合して出力することができる。
【0102】
また、入力光学系の光路変更素子と偏波結合素子とを一つの部品で構成してもよい。これにより、入力光学系の部品点数を削減して光路長を短くでき、その分だけチップの長さを長くでき、より特性向上を図れるようになる。
【0103】
また、出力光学系は、二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有する構成としてもよい。これにより、出力光学系の部品点数を削減できる。また、二つの導波路間の間隔を短くでき、その分だけチップの長さを長くでき、より特性向上を図れるようになる。
【0104】
また、入力光学系は、入射側と出射側で焦点距離が異なる一つのレンズを有することとしてもよい。これにより、入力光学系の部品点数を削減できる。また、光ファイバ等から出射された拡散光をチップの入力導波路に主束して入射させることができるようになる。
【0105】
また、入力光学系は、光ファイバをチップの入力導波路に直接接合した構成としてもよい。これにより、入力光学系の部品点数を削減できる。また、入力光の光損失を低減できるようになる。
【0106】
また、出力導波路がチップの一端に導出され、入力導波路がチップの側面に導出され、出力光学系は、パッケージの一辺と、チップの一端との間に設けられ、入力光学系は、パッケージの側面側にずらした位置に配置された構成としてもよい。これにより、チップの一端には、入力光学系あるいは出力光学系の一方のみが配置されるため、この一端に入力光学系と出力光学系を配置する制約を無くすことができ、パッケージ内に入力光学系と出力光学系を余裕をもって配置できるようになる。
【0107】
また、入力導波路は一つの導波路を有し、出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、入力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子を含み、出力光学系は、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含み構成してもよい。これにより、チップの側部に配置された入力光学系を介してチップの入力導波路に光信号を入力できる。また、出力導波路からは、変調後の光信号X,Yを二つの導波路から出力することができるようになる。
【0108】
また、出力光学系は、二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有する構成としてもよい。これにより、出力光学系の部品点数を削減できる。
【0109】
また、入力光学系のレンズと、光路変更素子とが一つの部品からなることとしてもよい。これにより、入力光学系の部品点数を削減できる。
【0110】
また、入力光学系は、光ファイバが光路変更素子に直接接合され、光路変更素子がチップの入力導波路に直接接合されてなることとしてもよい。これにより、入力光学系の部品点数を削減できる。また、入力光の光損失を低減できるようになる。
【0111】
また、チップは、ニオブ酸リチウムからなることとしてもよい。これにより、光変調時所定の特性を得ることができるようになる。また、チップは、ニオブ酸リチウムからなる薄膜LN構造としてもよい。これにより、チップ全体の大きさを小さくし、かつ特性向上を図ることができる。また、入力導波路および出力導波路を導波する光の閉じ込めが強く、導波路の大きさを小さくできるようになる。例えば、入力導波路または出力導波路のうちチップの側面に導出する方の導波路は折曲形成する必要があるが、この折曲部分を小さな曲率半径で形成できるため、折曲部分が長さ方向にスペースを取る必要がなく、その分だけチップを長く形成でき、特性向上できる。
【0112】
また、入力光学系および出力光学系の少なくともいずれかの光学部品の一部は、パッケージの一辺に設けられる光ファイバの光ファイバブーツの内部に配置してもよい。これにより、例えば、光路長が長い、あるいは部品点数が多い出力光学系をパッケージの一辺とチップの一端との間に配置した場合でも、パッケージ内におけるチップの長さを確保できるようになる。
【0113】
また、光変調器に用いるチップの製造方法として、ウェハ上に複数のチップをマトリクス状に配置し、複数のチップの一端に入力導波路および出力導波路を形成し、複数のチップの表面上に、一端に形成された入力導波路および出力導波路を繋ぐヤトイを接合し、ウェハを複数のチップの領域別にダイシングで分離する、工程を含んでもよい。ウェハ上で複数のチップを製造する際、複数のチップの一端に入力導波路および出力導波路をまとめた箇所に形成する。そして、複数のチップの一端に形成された入力導波路および出力導波路部分を繋ぐ形で1本のヤトイを配置および接合することで、チップを簡単に製造できるようになる。
【0114】
このような光変調器によれば、例えば、HB-CDMのようにパッケージの一辺から光信号を入出力する構成であっても、パッケージ内部のチップ、ドライバ、入出力の光学系等、の各種部品を適切に配置でき、光変調器の各種特性を向上できるようになる。
【0115】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0116】
(付記1)パッケージの一辺から光信号が入出力される光変調器において、
前記パッケージの内部に、
前記光信号を光変調し、前記光信号の入力導波路と出力導波路のうち一方が前記パッケージの前記一辺に対向する一端に導出され、他方が前記一端と直交する側面に導出されたチップと、
前記チップの前記入力導波路に光結合された入力光学系と、
前記チップの前記出力導波路に光結合された出力光学系と、
を備えたことを特徴とする光変調器。
【0117】
(付記2)前記チップの前記側面に導出される前記光信号の入力導波路あるいは出力導波路は、途中でほぼ直交する方向に折曲されていることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0118】
(付記3)前記チップには、前記入力導波路と前記出力導波路が形成された領域を覆うヤトイが設けられたことを特徴とする付記1または2に記載の光変調器。
【0119】
(付記4)前記入力導波路が前記チップの前記一端に導出され、前記出力導波路が前記チップの前記側面に導出され、
前記入力光学系は、前記パッケージの前記一辺と、前記チップの前記一端との間に設けられ、
前記出力光学系は、前記パッケージの前記側面側の位置に配置されたことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の光変調器。
【0120】
(付記5)前記入力導波路は一つの導波路を有し、前記出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、
前記出力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子と、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含むことを特徴とする付記4に記載の光変調器。
【0121】
(付記6)前記入力光学系の前記光路変更素子と前記偏波結合素子とが一つの部品からなることを特徴とする付記5に記載の光変調器。
【0122】
(付記7)前記出力光学系は、前記二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有することを特徴とする付記5または6に記載の光変調器。
【0123】
(付記8)前記入力光学系は、入射側と出射側で焦点距離が異なる一つのレンズを有することを特徴とする付記5~7のいずれか一つに記載の光変調器。
【0124】
(付記9)前記入力光学系は、光ファイバを前記チップの前記入力導波路に直接接合してなることを特徴とする付記5~7のいずれか一つに記載の光変調器。
【0125】
(付記10)前記出力導波路が前記チップの前記一端に導出され、前記入力導波路が前記チップの前記側面に導出され、
前記出力光学系は、前記パッケージの前記一辺と、前記チップの前記一端との間に設けられ、
前記入力光学系は、前記パッケージの前記側面側の位置に配置されたことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の光変調器。
【0126】
(付記11)前記入力導波路は一つの導波路を有し、前記出力導波路は異なる偏波に対応する二つの導波路を有し、
前記入力光学系は、光路を直交する方向に変更する光路変更素子を含み、
前記出力光学系は、偏波回転素子と、偏波結合素子と、を含むことを特徴とする付記10に記載の光変調器。
【0127】
(付記12)前記出力光学系は、前記二つの導波路に対応した二つのレンズのアレイを有することを特徴とする付記11に記載の光変調器。
【0128】
(付記13)前記入力光学系のレンズと、前記光路変更素子とが一つの部品からなることを特徴とする付記11または12に記載の光変調器。
【0129】
(付記14)前記入力光学系は、光ファイバが前記光路変更素子に直接接合され、前記光路変更素子が前記チップの前記入力導波路に直接接合されてなることを特徴とする付記11または12に記載の光変調器。
【0130】
(付記15)前記チップは、ニオブ酸リチウムからなることを特徴とする付記1~14のいずれか一つに記載の光変調器。
【0131】
(付記16)前記チップは、ニオブ酸リチウムからなる薄膜LN構造であることを特徴とする付記15に記載の光変調器。
【0132】
(付記17)前記入力光学系および前記出力光学系の少なくともいずれかの光学部品の一部は、前記パッケージの前記一辺に設けられる光ファイバの光ファイバブーツの内部に配置されたことを特徴とする付記1~16のいずれか一つに記載の光変調器。
【0133】
(付記18)ウェハ上に複数のチップをマトリクス状に配置し、
複数の前記チップの一端に入力導波路および出力導波路を形成し、
複数の前記チップの表面上に、前記一端に形成された前記入力導波路および前記出力導波路を繋ぐヤトイを接合し、
前記ウェハを複数の前記チップの領域別にダイシングで分離する、
ことを特徴とする光変調器のチップの製造方法。
【符号の説明】
【0134】
100 光変調器
101 パッケージ
102 チップ
103 終端基板
111 入力光学系
112 出力光学系
113 ドライバ
120 IQ変調部
121 入力導波路
122 出力導波路
131 入力光ファイバ
132 出力光ファイバ
133 ファイバブーツ
200 光導波路
201 RF電極
202 DC電極
301,302,311,315,601 レンズ
312 光路変換プリズム
313 1/2λ波長板
320 ヤトイ
401 光路変換兼PCBプリズム
501 レンズアレイ
701 ガラスブロック
1101 レンズ兼光路変換プリズム
1301 ウェハ
D ダイシングライン