(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インバータ装置、モータユニットおよび車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240806BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020192285
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】ニデックエレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
(72)【発明者】
【氏名】内尾 勇貴
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082822(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159621(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子および前記コンデンサ素子を収容するコンデンサケースを有するコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールを収容する収容空間を有するハウジングと、を備え、
前記ハウジングを構成する壁部には、冷媒が流れる流路と、前記流路の一部を前記収容空間側に開口する第1開口部と、が設けられ、
前記コンデンサケースは、前記第1開口部を覆う金属製の伝熱部を有し、
前記冷媒が、前記第1開口部の内壁面と前記伝熱部との間を流れる、
インバータ装置。
【請求項2】
前記第1開口部は、前記壁部の厚さ方向に凹み前記コンデンサモジュールの少なくとも一部を収容する凹状であり、
前記第1開口部の内壁面は、前記壁部の厚さ方向を向く底壁面と前記底壁面から厚さ方向に延びる側壁面とを含み、
前記伝熱部は、前記底壁面に対向する第1対向面と、前記側壁面に対向する第2対向面とを有する、
前記冷媒が、前記底壁面と前記第1対向面の間、および前記側壁面と前記第2対向面の間を流れる、
請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
パワーモジュールを備え、
前記コンデンサモジュールと前記パワーモジュールとは、前記壁部の面方向に沿って横並びに配置される、
請求項1又は2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記壁部には、前記流路の一部を前記収容空間側に開口する第2開口部が設けられ、
前記パワーモジュールは、スイッチング素子と、前記スイッチング素子を保持し前記第2開口部を覆う金属製の素子台座部材と、を有し、
前記冷媒が、前記第2開口部の内壁面と前記素子台座部材との間を流れる、
請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
マイコンおよびゲートドライバ集積回路が実装されるメイン基板を有し、
前記メイン基板は、前記壁部に沿って配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
外部から延びる端子が接続される外部用コネクタと、
前記外部用コネクタが接続され前記メイン基板に沿って配置されるサブ基板と、
前記サブ基板と前記メイン基板とが板厚方向に重なった部分で、前記サブ基板と前記メイン基板とを接続する基板間コネクタと、を備え
る、
請求項5に記載のインバータ装置。
【請求項7】
外部から延びる給電端子が接続されるバスバーを備え、
前記コンデンサケースは、前記バスバーを支持する樹脂製の端子台を有する、
請求項1~6の何れか一項に記載のインバータ装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のインバータ装置を備える、モータユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のモータユニットを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置、モータユニットおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車のモータのための制御装置として、インバータ装置が開発されている。インバータ装置には、発熱部品が含まれるため、これらを適切に冷却することが求められる。例えば、特許文献1には、冷却水が流れる冷却器が設けられる電力変換装置が開示されている。この冷却器は、パワー半導体モジュールを直接的に冷却し、コンデンサモジュールを、伝熱板を介して冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインバータ装置では、冷媒が直接コンデンサを冷却していなかった。コンデンサモジュールを、他部材を介して冷却する方式よりも、冷却効率を高める必要がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、他部材を介して冷却するよりも、コンデンサを効率的に冷却可能なインバータ装置、並びにモータユニットおよび車両を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバータ装置の一つの態様は、コンデンサ素子および前記コンデンサ素子を収容するコンデンサケースを有するコンデンサモジュールと、前記コンデンサモジュールを収容する収容空間を有するハウジングと、を備える。前記ハウジングを構成する壁部には、冷媒が流れる流路と、前記流路の一部を前記収容空間側に開口する第1開口部と、が設けられる。前記コンデンサケースは、前記第1開口部を覆う金属製の伝熱部を有する。前記冷媒が、前記第1開口部の内壁面と前記伝熱部との間を流れる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、他部材を介して冷却するよりも、コンデンサを効率的に冷却可能なインバータ装置、並びにモータおよび車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のインバータ装置が搭載されるモータユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のインバータ装置の断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のインバータ装置を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のインバータ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインバータ装置1について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
以下の説明では、インバータ装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。なお、本明細書におけるインバータ装置1の姿勢は一例であって、実際にインバータ装置1が取り付けられる姿勢を限定するものではない。
【0011】
図面には、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってインバータ装置1が搭載される車両の前後方向を示す。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示す。
【0012】
(モータユニット)
図1は、インバータ装置1が搭載されるモータユニット3の斜視図である。
モータユニット3は、インバータ装置1と、モータ2と、モータハウジング4と、減速装置5と、を有する。
【0013】
本実施形態のモータユニット3は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0014】
モータハウジング4は、内部にモータ2および減速装置5を収容する。モータハウジング4の外側面には、インバータ装置1が固定される。モータ2は、インバータ装置1から交流電流を供給される。モータ2は、インバータ装置1により、制御される。減速装置5は、モータ2のロータに接続される。減速装置5は、モータ2の回転を減速し出力する。
【0015】
(インバータ装置)
図2は、インバータ装置1の断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
なお、
図3は、冷媒Rの流れを明示的に示すために、
図2の寸法比率と異なって模式的に図示されている。
【0016】
インバータ装置1は、ハウジング10と、コンデンサモジュール30と、パワーモジュール40と、メイン基板50と、を備える。さらに、後段において説明する
図4に示すように、インバータ装置1は、バスバー7と、サブ基板60と、を備える。
【0017】
(ハウジング)
図2に示すように、ハウジング10は、ハウジング本体11と、蓋部(壁部)12と、を有する。ハウジング本体11および蓋部12は、例えばアルミニウム合金から構成され、ダイカスト等の鋳造により成形される。ハウジング本体11は、モータハウジング4の一部であってもよい。
【0018】
ハウジング本体11は、上側に開口する。ハウジング本体11の上側の開口は、蓋部12により覆われる。ハウジング10は、ハウジング本体11および蓋部12によって囲まれる収容空間Sを有する。収容空間Sには、コンデンサモジュール30と、パワーモジュール40と、バスバー7と、メイン基板50と、サブ基板60と、が収容される。コンデンサモジュール30と、パワーモジュール40と、バスバー7と、メイン基板50と、サブ基板60は、収容空間Sの内部において、蓋部12に固定される。
【0019】
ハウジング本体11は、水平平面に沿って延びる底壁11aと、底壁11aの外縁から上側に突出する側壁11bと、を有する。底壁11aは、収容空間Sの下側に位置する。側壁11bは、収容空間Sを水平方向から囲む。側壁11bの上端面には、蓋部12が固定される。
【0020】
蓋部12は、上下方向と直交する平面に沿って延びる。蓋部12には、冷媒が流れる流路19が設けられる。流路19を流れる冷媒は、収容空間Sに配置されるパワーモジュール40とコンデンサモジュール30とを冷却する。流路19は、蓋部12の内部を上下方向と直交する平面に沿って延びる。
【0021】
流路19は、流路19内を流れる冷媒の上流側に位置する上流側端部19aと、下流側に位置する下流側端部19bと、を有する。上流側端部19aには、冷媒を冷却する冷却器(図示略)に繋がる配管(図示略)が接続される。下流側端部19bは、ハウジング本体11の側壁11bに設けられるサブ流路11cに接続される。サブ流路11cは、インバータ装置1よりも下側にあるオイルクーラ(図示略)に繋がる。冷媒は、オイルクーラにおいて、モータハウジング4内を循環するオイルと熱交換を行う。
【0022】
本実施形態の冷媒は、冷却器(図示略)によって冷やされた後に、蓋部12を通過してパワーモジュール40とコンデンサモジュール30とを冷却し、さらにオイルクーラを通過してオイルを冷却する。冷媒は、以上の経路をたどった後に、再び冷却器に戻り、同一の経路を循環する。
【0023】
蓋部12は、上側を向く上面12aと、下側を向く下面12bとを有する。下面12bは、収容空間Sと対向する。下面12bには、第1開口部13と第2開口部14と、が設けられる。すなわち、蓋部12には、第1開口部13および第2開口部14が設けられる。第1開口部13および第2開口部14は、それぞれ下側に開口する。第1開口部13と第2開口部14とは、蓋部12の面方向に沿って横並びに配置される。第1開口部13と第2開口部14とは、蓋部12の厚さ方向(より具体的には、上側)に凹む凹状である。第1開口部13は、コンデンサモジュール30の少なくとも一部を収容する。一方で、第2開口部14は、パワーモジュール40の少なくとも一部を収容する。
【0024】
第1開口部13および第2開口部14は、流路19の経路中に配置される。第1開口部13と第2開口部14とは、それぞれ流路19の一部を収容空間S側に開口する。第1開口部13は、第2開口部14よりも流路19の下流側に配置される。流路19は、上流側端部19aと第2開口部14とを繋ぐ第1区画19fと、第2開口部14と第1開口部13とを繋ぐ第2区画19sと、第1開口部13と下流側端部19bとを繋ぐ第3区画19tと、を有する。上流側端部19aから流路19に流入した冷媒は、第1区画19f、第2開口部14、第2区画19s、第1開口部13、第3区画19tの順で通過する。
【0025】
第1開口部13の内壁面は、蓋部12の厚さ方向(本実施形態では下側)を向く第1底壁面(底壁面)13aと第1底壁面13aから厚さ方向に延びる第1側壁面(側壁面)13bとを含む。第1側壁面13bには、流路19の第2区画19sおよび第3区画19tが開口する。ここで、第2区画19sへの開口を第1流入口19pとよび、第3区画19tへの開口を第1流出口19qと呼ぶ。冷媒は、第1流入口19pから第1開口部13に流入し第1流出口19qから流出する。
【0026】
図3に示すように、蓋部12の下面12bには、第1開口部13の周囲を囲む第1台座部12fが設けられる。第1台座部12fは、下側に突出する。第1台座部12fは、下側を向く第1台座面12faを有する。第1台座面12faには、第1開口部13の周囲を囲む第1凹溝12fgが設けられる。第1凹溝12fgは、下側に開口する。第1凹溝12fgには、第1シール部材12fhが配置される。
【0027】
図2に示すように、第2開口部14の内壁面は、蓋部12の厚さ方向(本実施形態では下側)を向く第2底壁面14aと第2底壁面14aから厚さ方向に延びる第2側壁面14bとを含む。第2底壁面14aには、流路19の第1区画19fおよび第2区画19sが開口する。ここで、第1区画19fへの開口を第2流入口19rとよび、第2区画19sへの開口を第2流出口19uと呼ぶ。冷媒は、第2流入口19rから第2開口部14に流入し第2流出口19uから流出する。
【0028】
蓋部12の下面12bには、第2開口部14の周囲を囲む第2台座部12sが設けられる。第2台座部12sは、それぞれ下側に突出する。第2台座部12sは、下側を向く第2台座面12saを有する。第2台座面12saには、第2台座面12saには、第2開口部14の周囲を囲む第2凹溝12sgが設けられる。第2凹溝12sgは、下側に開口する。第2凹溝12sgには、第2シール部材12shが配置される。
【0029】
(コンデンサモジュール)
図4は、蓋部12および蓋部12に固定されるインバータ装置1の各部を示す斜視図である。また、
図5は、インバータ装置1の一部を下側から見る平面図である。
なお、
図4および
図5において、コンデンサモジュール30とパワーモジュール40とを電気的に接続する配線部等は省略されている。
【0030】
図5に示すように、コンデンサモジュール30は、第1コンデンサ素子(コンデンサ素子)31と、第2コンデンサ素子32と、コンデンサケース33と、を有する。コンデンサケース33は、第1コンデンサ素子31および第2コンデンサ素子32を収容する。
図5に示したコンデンサモジュール30の構成は一例であって、これに限らない。コンデンサモジュール30のコンデンサケース33に少なくとも1つのコンデンサ素子が収容されていればよく、複数もしくは数種類のコンデンサ素子がコンデンサケース33に収容されていなくとも構わない。
以下の説明において、第1コンデンサ素子31および第2コンデンサ素子32を互いに区別しない場合、これらを単にコンデンサ素子31、32と呼ぶ。
【0031】
第1コンデンサ素子31は、Xコンデンサである。第1コンデンサ素子31は、パワーモジュール40に供給される電源を平滑化する。第1コンデンサ素子31には、大電流が供給される。このため、第1コンデンサ素子31は、第2コンデンサ素子32と比較して発熱量が大きい。第1コンデンサ素子31は、冷媒によって冷却される。本実施形態において、インバータ装置1には、4つの第1コンデンサ素子31が設けられる。
【0032】
第2コンデンサ素子32は、第1コンデンサ素子31と比較して、発熱量の小さいコンデンサである。第2コンデンサ素子32は、例えば、Yコンデンサである。すなわち、第2コンデンサ素子32は、パワーモジュール40のスイッチングノイズを除去するためのコンデンサである。また、第2コンデンサ素子32は、第1コンデンサ素子31と比較して容量の小さいXコンデンサであってもよい。
【0033】
コンデンサケース33は、ハウジング10の蓋部12の下面12bに固定される。コンデンサケース33は、ケース本体34と、ケース本体34の上面側に配置される伝熱部6(
図3参照)とを有する。ケース本体は、絶縁性の樹脂材料から構成される。
【0034】
図5に示すように、ケース本体34は、コンデンサ素子31、32を保持する素子保持部35と、バスバー7を保持する端子台38と、を有する。
【0035】
バスバー7は、給電端子8とコンデンサモジュール30とを接続する。バスバー7の一部は、給電端子8とコンデンサモジュール30との間で、電磁両立性(EMC:Electromagnetic Compatibility)対策のためのマグネット7cに囲まれた領域を通過する。
【0036】
給電端子8は、車両に搭載されるバッテリ(不図示)から延び出る。給電端子8は、インバータ装置1の側面からバスバー7に接続される。インバータ装置1は、給電端子8を介して、バッテリから高電圧の直流電流を供給される。
【0037】
本実施形態によれば、コンデンサケース33は、バスバー7を保持する樹脂製の端子台38を有する。バスバー7には、外部から延びる給電端子が接続されるため、バスバー7にも、高電圧の電流が流れる。バスバー7を樹脂製の端子台38によって保持することによって、バスバー7と他の部材との短絡を抑制しつつ、給電端子8との接続工程を容易に行うことができる。加えて、コンデンサケース33に端子台38を設けることで、他の部材を別途用意する場合と比較して、部品点数の削減を図ることができる。
【0038】
図2に示すように、ケース本体34の素子保持部35は、上下方向と直交する平面に沿って延びる主板部35aと、主板部35aに対して上側に凹む凹状部35bと、平板部の外縁から下側に突出する周壁部35cと、を有する。
【0039】
周壁部35cは、コンデンサモジュール30の配線部材(図示略)などを外周から囲む。周壁部35cは、コンデンサモジュール30の各部とハウジング10の内壁面との間の沿面距離を確保し、コンデンサモジュール30とハウジング10との絶縁を確保する。
【0040】
凹状部35bは、略一定の板厚を有する。したがって、凹状部35bは、上側に向かって凸状に突出する。凹状部35bには、コンデンサ素子31、32が収容される。すなわち、凹状部35bの内側には、コンデンサ素子31、32が配置されるコンデンサ素子室Cが設けられる。
【0041】
凹状部35bは、上下方向と直交する平面に沿って延びる底板部36aと、底板部36aの外縁から下側に延びる側板部36bと、を有する。底板部36aは、コンデンサ素子31、32と上下方向に対向する。側板部36bは、コンデンサ素子31、32の周囲を外側から囲む。
【0042】
伝熱部6は、伝熱性の高い金属材料から構成される。伝熱部6を構成する材料として、例えばアルミニウム合金、銅合金などが例示される。
【0043】
伝熱部6は、ケース本体34の素子保持部35に固定される。伝熱部6とケース本体34との固定方法としては、超音波かしめや熱かしめなどのかしめが例示される。また、伝熱部6は、ケース本体34の成形時にケース本体34の一部に埋め込まれるインサート成形によってケース本体34に固定されていてもよい。伝熱部6とケース本体34とをインサート成形によって固定する場合、伝熱部6とケース本体34との密着性を高めることができるため、相互に伝熱性を高め易い。
【0044】
図3に示すように、伝熱部6は、板状である。伝熱部6は、例えば、プレス工程により成形される。伝熱部6は、素子保持部35の主板部35aおよび凹状部35bを上側から覆う。
【0045】
伝熱部6は、素子保持部35の主板部35aに重なる平板部6cと、素子保持部35の凹状部35bに重なる挿入部6dと、を有する。
【0046】
平板部6cは、蓋部12の板厚方向から見て、第1開口部13の周囲に配置される。平板部6cの上面は、第1台座面12faと上下方向に対向する。平板部6cの上面と、第1台座面12faに設けられた第1凹溝12fgの底面との間には、第1シール部材12fhが挟み込まれる。これによって、蓋部12の板厚方向から見て、第1シール部材12fhの内側に配置される領域が封止され、冷媒Rの漏出が抑制される。
【0047】
挿入部6dは、平板部6cに対して上側に突出する。挿入部6dは、蓋部12の第1開口部13に挿入される。こにより、伝熱部6は、第1開口部13を覆う。
【0048】
挿入部6dは、素子保持部35の底板部36aの上面を覆う底部6aと、側板部36bの外側に配置される側部6bを有する。底部6aは、上下方向と直交する平面に沿って延びる平板状である。側部6bは、底部6aの外縁から下側に延びて下端部において平板部6cに繋がる。側部6bは、凹状部35bの、側板部36bを外側から囲む。
【0049】
底部6aは、第1開口部13の第1底壁面13aと隙間を介して対向する。同様に、側部6bは、第1開口部13の第1側壁面13bと隙間を介して対向する。ここで、底部6aの上面を第1対向面6fと呼び、側部6bの外周面を第2対向面6sと呼ぶ。すなわち、伝熱部6は、第1底壁面13aに対向する第1対向面6fと、第1側壁面13bに対向する第2対向面6sとを有する。
【0050】
第1開口部13の第1側壁面13bには、第1開口部13内に冷媒Rを流入させる第1流入口19pが設けられる。第1開口部13内に流入した冷媒Rは、第1開口部13の第1底壁面13aと伝熱部6の第1対向面6fの間を流れる。また、第1開口部13内に流入した冷媒Rは、第1開口部13の第1側壁面13bと伝熱部6の第2対向面6sの間を流れる。第1開口部13内の冷媒Rは、第1開口部13の第1側壁面13bに設けられる第1流出口19qから流出する。
【0051】
本実施形態によれば、コンデンサケース33の一部が、蓋部12の第1開口部13を覆い、冷媒Rが第1開口部13の内壁面と伝熱部6との間を流れる。このため、冷媒Rが、コンデンサモジュール30に直接的に接触して冷却する。換言すると、コンデンサケース33の一部が開口部13の蓋をし、コンデンサモジュール30の冷却を行う、という2つの役割を担う。結果的に、冷媒Rによって、コンデンサモジュール30を早急かつ効率的に冷却することができる。
【0052】
本実施形態によれば、冷媒Rは、コンデンサケース33の伝熱部6に接触する。伝熱部6は、伝熱性の高い金属製であるため、冷媒Rとの接触による冷却によって温度が即座に下がり易く、加えて熱容量が大きいため冷却効果が持続し易い。このため、本実施形態のコンデンサケース33は、内部に収容されるコンデンサ素子31、32を即座に、かつ持続的に冷却できる。
【0053】
本実施形態において、金属製の伝熱部6は、樹脂製のケース本体34に接触する。また、ケース本体34は、コンデンサ素子31、32と接触してコンデンサ素子31、32を保持する。このため、コンデンサケース33は、伝熱部6とコンデンサ素子31、32との絶縁を確保しつつ、伝熱部6によってコンデンサ素子31、32を効率的に冷却できる。
【0054】
本実施形態において、伝熱部6は、コンデンサケース33のコンデンサ素子室Cを上側および外周側から囲む底部6aおよび側部6bを有する。このため、冷媒Rによって冷却された伝熱部6が、コンデンサ素子室Cの内部を上側および外周側から冷却することができる。本実施形態の伝熱部6によれば、コンデンサ素子室Cに配置されるコンデンサ素子31、32の冷却効率を高めることができる。
【0055】
本実施形態によれば、コンデンサモジュール30の少なくとも一部は、凹状の第1開口部13に収容される。通常、コンデンサモジュール30に収容されるコンデンサ素子31、32の部品体格を大きくするほど、コンデンサモジュール30とインバータ装置1の上下方向長さは大きくなる傾向がある。しかし、本実施形態ではコンデンサモジュール30の一部を、凹状の第1開口部13に収容することで、蓋部12の厚み方向に埋め込むような形をとることができる。このため、インバータ装置1を、上下方向において小型化することができる。
【0056】
本実施形態において、冷媒Rは、第1底壁面13aと第1対向面6fの間、および第1側壁面13bと第2対向面6sの間を流れる。すなわち、冷媒Rは、コンデンサモジュール30の一面のみならず、複数の面を広範囲に亘って冷却する。これにより、冷媒Rは、コンデンサモジュール30を早急に、かつ効率的に冷却することができる。加えて、本実施形態において、第1開口部13内の冷媒Rの流路は、コンデンサ素子室Cを下側および外周側から囲むように設けられる。すなわち、冷媒Rは、コンデンサ素子31、32を、複数方向から囲んで冷却する。このため、冷媒Rによるコンデンサ素子31、32の冷却効率を高めることができる。
【0057】
図5において、第1流入口19pにおいて第1開口部13に流入し、第1流出口19qにおいて第1開口部13から流出する冷媒Rの流れを模式的に示す。
図5に示すように、第1流入口19pと第1流出口19qとは、第1開口部13の対角線上に配置される。このため、第1開口部13を通過する冷媒Rは、第1開口部13の各部を全体的に行き渡る。
【0058】
(パワーモジュール)
図2に示すように、パワーモジュール40は、スイッチング素子41と、素子台座部材42と、を有する。素子台座部材42はスイッチング素子41を固定する台座となる。
【0059】
パワーモジュール40は、ハウジング10の蓋部12に沿って配置される。パワーモジュール40とコンデンサモジュール30とは、蓋部12の面方向に沿って横並びに配置される。すなわち、パワーモジュール40とコンデンサモジュール30とは、蓋部12の厚さ方向から見て互いに重なることなく隣り合って配置される。
【0060】
近年では、インバータ装置を一体化した機電一体型のモータユニットの開発が進められる。このようなインバータ装置では、高さ方向の寸法が大きくなると、車両内の搭乗スペースを圧迫する虞があった。このため、より薄型のインバータ装置の開発が求められている。本明細書において説明する態様によれば、薄型化されたインバータ装置が提供される。
【0061】
本実施形態によれば、パワーモジュール40とコンデンサモジュール30とが、蓋部12の面方向に沿って横並びに配置されるため、インバータ装置1を、蓋部12の厚さ方向において小型化することができる。
【0062】
本実施形態のスイッチング素子41は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子41は、コンデンサ素子31、32と比較して、さらに発熱量が大きい。スイッチング素子41は、冷媒によって冷却される。
【0063】
素子台座部材42は、伝熱性の高い金属材料から構成される。素子台座部材42を構成する材料として、例えばアルミニウム合金、銅合金などが例示される。素子台座部材42は、スイッチング素子41から冷媒に熱を移動させる素子台座部材42として機能する。
【0064】
素子台座部材42は、スイッチング素子41を保持する。素子台座部材42は、板状のカバー本体42aと、カバー本体42aの上面から上側に突出する複数の放熱ピン42cと、を有する。カバー本体42aの下面は、スイッチング素子41と接触し固定する。
【0065】
カバー本体42aの上面は、第2開口部14を覆う。また、カバー本体42aの上面は、第2台座面12saと上下方向に対向する。カバー本体42aの上面と、第2台座面12saに設けられた第2凹溝12sgの底面との間には、第2シール部材12shが挟み込まれる。これにより、蓋部12の板厚方向から見て、第2シール部材12shの内側に配置される領域が封止され、冷媒の漏出が抑制される。
【0066】
複数の放熱ピン42cは、第2開口部14の内部に配置される。第2開口部14の第2底壁面14aには、第2開口部14内に冷媒を流入させる第2流入口19rが設けられる。第2開口部14に流入した冷媒は、第2開口部14の第2底壁面14aとカバー本体42aの上面との間において、複数の放熱ピン42cの間の隙間を流れる。第2開口部14内の冷媒は、第2開口部14の第2底壁面14aに設けられる第2流出口19uから流出する。
【0067】
本実施形態によれば、冷媒が、第2開口部14の内壁面と素子台座部材42との間を流れる。すなわち、冷媒は、パワーモジュール40に直接的に接触して冷却する。さらに、素子台座部材42は、スイッチング素子を冷却する。これにより、冷媒は、パワーモジュール40を早急かつ効率的に冷却する。
【0068】
本実施形態によれば、素子台座部材42は、第2開口部14内に配置される複数の放熱ピン42cを有する。また、冷媒は、複数の放熱ピン42cの間を通過する。このため、素子台座部材42と冷媒との接触面積を広く確保することができ、素子台座部材42を冷媒によって効率的に冷却できる。
【0069】
なお、本実施形態において、コンデンサモジュール30は、パワーモジュール40と比較して発熱量が小さい。このため、コンデンサモジュール30の伝熱部6は、発熱量に対して、冷媒との接触面積を十分に確保することができており、パワーモジュール40のような放熱ピンを必ずしも必要としない。しかしながら、コンデンサ素子31、32の発熱量に対して、冷媒との伝熱部6との接触面積を十分に確保し難い場合、伝熱部6に放熱ピンを設けてもよい。
【0070】
本実施形態において、第2開口部14は、流路19において第1開口部13の上流側に配置される。したがって、冷却器(図示略)において冷却された冷媒は、第2開口部14において、パワーモジュール40を冷却した後に、第1開口部13においてコンデンサモジュール30を冷却する。本実施形態によれば、発熱量の大きなパワーモジュール40を温度の低い冷媒で効率的に冷却することができる。
【0071】
(メイン基板)
図4に示すように、メイン基板50は、蓋部12に沿って配置される。メイン基板50は、蓋部12の厚さ方向から見て、コンデンサモジュール30およびパワーモジュール40と重なる。
【0072】
メイン基板50は、基板本体51と、基板本体51に実装されるマイコン52およびゲートドライバ集積回路53を有する。
【0073】
基板本体51は、上下方向と直交する平面に沿って延びる。基板本体51の下面には、マイコン52およびゲートドライバ集積回路53が実装される。基板本体51の下面には、複数のマイコン52が実装される領域と複数のゲートドライバ集積回路53が領域とが、隣り合って設けられる。
【0074】
マイコン52は、モータ2に接続されてモータ2を制御する。ゲートドライバ集積回路53は、パワーモジュール40を制御する。本実施形態によれば、マイコン52およびゲートドライバ集積回路53が1つのメイン基板50に実装される。
【0075】
従来構造として、マイコンを実装するコントロール基板と、ゲートドライバ集積回路を実装するパワー基板とをそれぞれ用意し、これらを積層配置するものが知られている。本実施形態によれば、コントロール基板とパワー基板とを1つの基板(メイン基板50)に集約したことで、基板を積層配置する必要がなく、インバータ装置1の薄型化を図ることができる。また、従来構造と比較して、コントロール基板とパワー基板とを繋ぐ配線が不要となり、部品点数の削減を図ることができる。
【0076】
(サブ基板)
サブ基板60は、蓋部12に沿って配置される。サブ基板60は、蓋部12の板厚方向から見て、蓋部12の外縁に沿って一方向(X軸方向)に延びる。
【0077】
サブ基板60は、コンデンサモジュール30およびパワーモジュール40の側部に配置される。サブ基板60は、コンデンサモジュール30およびパワーモジュール40に対し、蓋部12の面方向に沿って横並びに配置される。一方で、サブ基板60の一部は、蓋部12の板厚方向から見て、メイン基板50と重なる。すなわち、サブ基板60は、メイン基板50に沿って配置される。
【0078】
サブ基板60は、サブ基板本体61と、フィルタリング素子62と、を有する。サブ基板本体61は、上下方向と直交する平面に沿って延びる。サブ基板本体61の下面には、フィルタリング素子62が実装される。
【0079】
サブ基板本体61の下面には、オスコネクタ68aが接続される。同様に、メイン基板50の基板本体51の上面には、メスコネクタ68bが接続される。オスコネクタ68aとメスコネクタ68bとは、上下方向において互いに重なり接続される。オスコネクタ68aとメスコネクタ68bとは、サブ基板60とメイン基板50とを接続する基板間コネクタ68を構成する。すなわち、インバータ装置1は、サブ基板60とメイン基板50とが板厚方向に重なった部分で、メイン基板50とサブ基板60とを接続する基板間コネクタ68を備える。
【0080】
本実施形態によれば、メイン基板50とサブ基板60とは、基板間コネクタ68によって接続される。このため、メイン基板50とサブ基板60とをハーネスを用いて接続する必要がなく、ハーネスの取り回しに要する組み立て工程を簡素化することができる。
【0081】
サブ基板本体61の上面には、2つの外部用コネクタ65、66が接続される。すなわち、インバータ装置1は、外部用コネクタ65、66を備える。外部用コネクタ65、66には、それぞれ外部から延びる端子(図示略)が接続される。外部用コネクタ65、66に接続される端子は、例えば車両側からの指令信号を伝達する信号端子である。
【0082】
フィルタリング素子62は、スイッチング素子41のオンオフ切替によるスイッチングノイズを、外部用コネクタ65、66を介して、インバータ装置1の外部のハーネスに伝える事を抑制する。一般的に、外部信号の含まれるノイズは、他部材の磁場から影響を受けやすい。このため、フィルタリング素子62の構成は、他部材の配置および構成が定まった後に調整される。本実施形態によれば、フィルタリング素子62が、サブ基板60に設けられる。このため、インバータ装置1の他の部材、モータユニット3の各部の構成が定まった後に、サブ基板60を様々入れ替えてノイズフィルタの調整を行うことができる。これにより、フィルタリング素子62の調整が容易となり、より信頼性の高いインバータ装置1を構成できる。
【0083】
本実施形態のインバータ装置1は、メイン基板50とは別に、外部用コネクタ65、66を接続するためのサブ基板60を備える。このため、外部用コネクタ65、66の配置に合わせて、サブ基板60を配置することで、外部用コネクタ65、66をサブ基板60に直接的に接続できる。すなわち、本実施形態によれば、外部用コネクタ65、66に、基板に接続するためのハーネス等を接続する必要がなく、部品点数を削減できる。
【0084】
本実施形態のインバータ装置1はモータユニット3に搭載される。モータユニット3は車両に搭載される。本実施形態のインバータ装置1は、上述したように、コンデンサの効率的な冷却が可能である。よって、モータユニット3や車両で使用する大電流への耐性が高まる。さらに、本実施形態のインバータ装置1は上下方向において小型化が可能であるため、モータユニット3の上下方向の小型化も可能になる。したがって、車両においてもモータユニット3以外の部材を配置できるスペースが広がる。
【0085】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0086】
例えば、上述の実施形態では、蓋部12に第1開口部13、第2開口部14および流路19が設けられる場合について説明した。しかしながら、ハウジング10の他の壁部(底壁11a、側壁11b)に、第1開口部13、第2開口部14および流路19設けられてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…インバータ装置、3…モータユニット、6…伝熱部、6f…第1対向面、6s…第2対向面、7…バスバー、8…給電端子、10…ハウジング、11a…底壁、11b…側壁、12…蓋部(壁部)、13…第1開口部、13a…第1底壁面(底壁面)、13b…第1側壁面(側壁面)、14…第2開口部、19…流路、30…コンデンサモジュール、31…第1コンデンサ素子(コンデンサ素子)、32…第2コンデンサ素子、33…コンデンサケース、38…端子台、40…パワーモジュール、41…スイッチング素子、42…素子台座部材、50…メイン基板、52…マイコン、53…ゲートドライバ集積回路、60…サブ基板、65…外部用コネクタ、68…基板間コネクタ、R…冷媒、S…収容空間