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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】雷検知システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20240806BHJP
【FI】
F03D80/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023001206
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2021084587の分割
【原出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2023026673
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517264742
【氏名又は名称】株式会社D―eyes
(73)【特許権者】
【識別番号】521216658
【氏名又は名称】ケイプラス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520060081
【氏名又は名称】株式会社エイプス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194836
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 優一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
(72)【発明者】
【氏名】菊地 孝
(72)【発明者】
【氏名】脇 恒平
(72)【発明者】
【氏名】前田 峰志
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/234983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備への落雷を検知する雷検知システムにおいて、
回転翼を有する風車を撮影する1又は複数の撮像装置と、
1台の前記撮像装置により撮像された雷検知時の画像を含む時系列の画像、又は、複数の前記撮像装置のそれぞれにより撮像された雷検知時の画像を含む時系列の画像を用いて、雷検知時の画像解析により特定した稲妻部分の先端位置が、前記風車の前記回転翼の回転領域に存在していることを検出すると、雷検知時の画像に基づいて前記風車への落雷位置を検知する解析手段と、
を備え
前記解析手段が、
雷検知時に前記撮像装置の画像から抽出した前記稲妻部分の先端位置を検出する雷先端位置検出部と、
雷検知時を含む時間の前記撮像装置の画像を用いて、雷検知時の前記回転翼の位置を推定する回転翼位置推定部と、
前記雷先端位置検出部により検出された前記稲妻部分の先端位置のうち、前記回転領域に存在する前記稲妻部分の先端位置と、前記回転翼の推定位置とに基づいて、前記風車への落雷位置を検知する落雷位置検知部と、
を有する
ことを特徴とする雷検知システム。
【請求項2】
前記回転翼位置推定部が、時系列の画像から前記風車を含む画像領域を特定して、前記回転翼の中心点と回転半径とに基づいて前記回転翼の前記回転領域を推定することを特徴とする請求項に記載の雷検知システム。
【請求項3】
前記回転翼位置推定部が、時系列の画像のうち、ある時刻のフレームにおける前記回転翼の位置と、予め設定されたフレームレートとに基づいて、雷検知時のフレームにおける前記回転翼の位置を推定することを特徴とする請求項に記載の雷検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷検知システムに関し、例えば、風力発電設備への落雷を検知する雷検知システムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、風力発電等の設備は、開けた平地や海岸付近等の陸上、洋上等に建設され、その周囲に他の高いものがないため、風力発電設備に落雷することが多い。風力発電設備の中でも、風車の回転翼(以下、「ブレード」とも呼ぶ。)に雷が落ちることが多く、損傷したまま風車を稼働させてしまうと、危険であり、被害も大きくなってしまう。そのため、従来は、落雷発生時に、発電機を停止し、作業員が高所作業でブレードの損傷の程度を目視確認して、ブレードの損傷が激しいときには、ブレードを修理・交換した後、発電機を稼働している。
【0003】
また、特許文献1には、落雷対策として、雷電流を大地に流すためのレセプタ(受雷装置)をブレードに設置し、そのレセプタで雷電流を捕捉して落雷を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-173580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来、風力発電設備への落雷後、発電機を停止させているのでダウンタイムが長時間となり、そのあいだ発電できず大きな損害が発生してしまうという課題がある。
【0006】
また、特許文献1の記載技術は、レセプタを用いて雷電流を検出して落雷検知することは開示されているが、雷が落ちたブレードを特定できず、又雷が落ちたブレードの落雷位置やその損傷状態を確認することができない。そのため、作業員による目視確認に頼っているのが現状である。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、落雷したブレードを特定し、ブレードにおける落雷点を特定できる雷検知システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明に係る雷検知システムは、風力発電設備への落雷を検知する雷検知システムにおいて、回転翼を有する風車を撮影する1又は複数の撮像装置と、1台の撮像装置により撮像された雷検知時の画像を含む時系列の画像、又は、複数の撮像装置のそれぞれにより撮像された雷検知時の画像を含む時系列の画像を用いて、雷検知時の画像解析により特定した稲妻部分の先端位置が、風車の回転翼の回転領域に存在していることを検出すると、雷検知時の画像に基づいて風車への落雷位置を検知する解析手段と、を備え、解析手段が、雷検知時に撮像装置の画像から抽出した稲妻部分の先端位置を検出する雷先端位置検出部と、雷検知時を含む時間の撮像装置の画像を用いて、雷検知時の回転翼の位置を推定する回転翼位置推定部と、雷先端位置検出部により検出された稲妻部分の先端位置のうち、回転領域に存在する稲妻部分の先端位置と、回転翼の推定位置とに基づいて、風車への落雷位置を検知する落雷位置検知部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、落雷したブレードを特定し、ブレードにおける落雷点を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る風車監視装置における機能的な構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る雷検知システムの全体構成を示す全体構成図である。
図3】実施形態に係る風車監視装置の内部構成を示す内部構成図である。
図4】実施形態に係る解析サーバの内部構成を示す内部構成図である。
図5】実施形態における雷検知システムにおける雷検知方法を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る雷検知処理の動作を示すフローチャートである。
図7】落雷発生時刻における雷検知用カメラの画像例である。
図8】落雷発生時刻における雷検知用カメラとブレードの回転領域と合わせた画像例である。
図9】監視用カメラのフレームを時系列に沿って並べた図である。
図10】雷検知用カメラの画像と、監視用カメラの画像とを座標系を一致させた合成画像である。
図11】変形実施形態における風車監視装置1の内部構成を示す内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る雷検知システムの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、実施形態に係る雷検知システムの全体構成を示す全体構成図である。
【0013】
図2において、実施形態に係る雷検知システムNTは、風車監視装置1、雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2、蓄積サーバ4、解析サーバ5、コミュニケーションサーバ6、マイク7を有する。
【0014】
雷検知システムNTにおいて、風車監視装置1、雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2、及び、マイク7は、監視対象とする風車3近傍に配置されている。また、蓄積サーバ4、解析サーバ5、及び、コミュニケーションサーバ6は、ネットワーク8-1及び8-2に接続しており、風力発電設備から離れた位置に配置される。
【0015】
この実施形態では、1台の風車監視装置1と、2台のカメラ2(雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2)とを有する1ユニットが、1台の風車3を監視する場合を例示する。しかし、1ユニットが、2台以上の風車3を監視するようにしてもよい。
【0016】
風車監視装置1、雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2、及び、風車3は、一意に識別する識別情報(例えば、識別番号、ID、名称など)が付与されており、例えば映像ファイルを区別可能とするため、風車監視装置1、雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2、及び、風車3の識別情報が、適宜、映像ファイルの情報に含まれるようにしてもよい。
【0017】
なお、実際は、雷検知システムNTは、例えばルータ、光終端装置(ONU:Optical Network Unit)のネットワーク通信機器を実装するが、図2ではこれらネットワーク通信機器を省略している。
【0018】
[雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2]
雷検知用カメラ2-1は、発生した雷を検知するためのカメラであり、稲妻の軌跡を撮影することができるカメラである。例えば、雷検知用カメラ2-1は、所定のフレームレート(例えば30fps等)で画像を撮影し、可視光から近赤外線までの高感度グローバルシャッターカメラを適用できる。また、雷検知用カメラ2-1は、稲妻の軌跡を撮影するため、減光フィルタ21を取り付けている。なお、雷検知用カメラ2-1の性能は特に限定されるものではない。
【0019】
監視用カメラ2-2は、常時、監視対象とする風車3を撮影するカメラである。監視用カメラ2-2は、雷検知用カメラ2-1と同様に、例えば、所定のフレームレート(例えば30fps等)で、可視光から近赤外線までの高感度グローバルシャッターカメラを適用できる。なお、この実施形態では、監視用カメラ2-2が減光フィルタを取り付けていない場合を例示するが、必要であれば、監視用カメラ2-2も減光フィルタを取り付けてもよい。
【0020】
ここで、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2は、互いに近い位置に配置され、監視対象とする風車3を撮影する。雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の撮影方向は、互いに近似させることが望ましい。
【0021】
なお、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の各カメラ画像を座標変換して、各カメラ画像の座標系を合わせることが可能であれば、必ずしも、雷検知用カメラ2-1と監視用カメラ2-2の撮影方向が一致している必要はない。言い換えると、雷発生時に、雷軌跡の画像と、風車3の画像とを画像合成して、風車3への落雷点の位置を特定できるように、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2は配置される。
【0022】
この実施形態では、2台のカメラ(雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2)を設ける場合を例示するが、カメラ台数は1台であってもよいし、3台以上であってもよい。例えば、1台のカメラを設けて、後述する風車監視装置1が、そのカメラ画像から雷検知を行ない、解析サーバ5が、風車3への落雷解析をしてもよい。また例えば、3台のカメラを設けて、そのうち、1台の監視用カメラと、2台の雷検知用カメラとし、1台目の雷検知用カメラが北側から風車3を撮影し、2台目の雷検知用カメラが南側から風車3を撮影し、撮影方向の異なるカメラ画像を用いて、風車監視装置1が雷検知をし、解析サーバ5が落雷解析をしてもよい。
【0023】
さらに、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2は、1台の風車3だけでなく、複数台の風車3を同時に撮影するものであってもよい。
【0024】
[風車監視装置1]
風車監視装置1は、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2と接続しており、監視用カメラ2-2からの映像に基づいて風車3を監視すると共に、雷検知用カメラ2-1からの映像に基づいて雷をリアルタイムに検知するものである。
【0025】
例えば、風車監視装置1は、風車3を常時撮影する監視用カメラ2-2からの画像信号に基づいて、所定時間(例えば10分)毎の映像ファイルを作成して蓄積する。また、風車監視装置1は、所定時間毎の映像ファイルをコピーして、ネットワーク8-1に接続する蓄積サーバ4に送信して、蓄積サーバ4にも蓄積する。これにより、監視用カメラ2-2の撮影映像を、風車監視装置1内で蓄積すると共に、クラウド上の蓄積サーバ4にも同期して蓄積させることができる。
【0026】
また例えば、風車監視装置1は、雷検知用カメラ2-1からの画像信号を用いて画像処理を行ない、雷をリアルタイムで検知する。風力発電設備の近傍に位置している風車監視装置1が、リアルタイムで雷を検知できるので、雷発生の対応を迅速にとることができる。
【0027】
ここで、雷検知手法については後述するが、例えば、風車監視装置1は、雷検知用カメラ2-1の画像フレームを解析して雷を検知する。
【0028】
また、雷検知手法に関して、次のような変形例を適用してもよい。例えば、風車監視装置1は、雷の発生を確実に検知するため、マイク7からの信号(例えば、雷の音信号、骨伝導信号(振動信号)など)の値が雷検知用の閾値を超える場合に雷を検知したと判断し、その結果を併用して雷検知を行なってもよい。例えば、風車監視装置1は、マイク7の信号値に基づいて雷が検知されて、かつ、雷検知用カメラ2-1の画像に基づいて雷が検知された場合、総合的に雷を検知したと判断してもよい。勿論、マイク7の信号値に基づく雷検知結果と、雷検知用カメラ2-1の画像に基づく雷検知結果とのいずれかを用いて雷検知を判断してもよい。また例えば、風車監視装置1は、風車3への落雷を確実に検知するため、風車3に受雷部(レセプタ)を設置して雷電流を検知するなどの既存技術を併用してもよい。
【0029】
また、例えば、風車監視装置1は、雷検知時の雷検知用カメラ2-1の画像フレーム、雷検知時の画像処理のパラメータ等を含む落雷イベント情報をファイル化して蓄積すると共に、クラウド上の蓄積サーバ4にも同期させて蓄積する。
【0030】
さらに、例えば、風車監視装置1は、雷検知時の雷検知用カメラ2-1の画像と、雷検知時の監視用カメラ2-2の画像とを含むイベント別映像ファイルを作成して蓄積すると共に、ネットワーク8-1に接続する蓄積サーバ4に送信して、蓄積サーバ4にも蓄積する。これにより、雷検知時の雷検知用カメラ2-1の映像と、雷検知時の風車3の撮影映像(監視用カメラ2-2の映像)とを対応させることができる。
【0031】
[マイク7]
マイク7は、雷の発生や風車3への落雷を検知する際に、空気中を伝播する雷の音信号や、風車3の構成部材を伝播する振動を捉えるものである。したがって、マイク7は、音信号を収音するマイクロホン、骨伝導マイク、振動センサ、超音波センサ等のいずれか又は全てを適用でき、複数種類のものを組み合わせてもよい。
【0032】
マイク7がマイクロホンのとき、マイク7は、発生した雷の音を捕捉し、音信号を電気信号に変換して風車監視装置1に与える。言い換えると、マイクロホンとしてのマイク7は、発生した雷の音、すなわち雷が発生して空気中に伝播する雷音の周波数を捉えて電気信号に変換するものである。
【0033】
また、マイク7が骨伝導マイクであるとき、風車3に接触して設置されている骨伝導マイクが、風車3への落雷により風車3が振動し、その振動を電気信号に変換して風車監視装置1に与える。言い換えると、骨伝導マイクとしてのマイク7は、風車3に雷が落ち、風車3のブレードやタワー等の構成部材を伝播する振動周波数を捉えて電気信号に変換するものである。
【0034】
[蓄積サーバ4]
蓄積サーバ4は、クラウド上のストレージを適用できる。蓄積サーバ4は、例えば、風車監視装置1毎に、監視用カメラ2-2が風車3を常時撮影した連続撮影映像、落雷イベント情報、イベント別映像のファイル等を蓄積する。また例えば、蓄積サーバ4は、風車3への落雷を解析する解析サーバ5の解析結果も蓄積する。
【0035】
例えば、蓄積サーバ4は、風車監視装置1からの映像ファイルを、階層的に蓄積することができ、「風車監視装置1の識別情報(識別番号、ID、名称等)」、「監視用カメラ2-2の識別情報」、「撮影日時情報(撮影年月日)」の順で、フォルダを分けて、監視用カメラ2-2の映像ファイルを蓄積できる。
【0036】
なお、蓄積サーバ4は、クライアントとして機能する風車監視装置1から映像ファイルを受信して蓄積し、風車監視装置1の映像蓄積部11と同期する。
【0037】
[解析サーバ5]
解析サーバ5は、蓄積サーバ4に蓄積されている映像を用いて風車3への落雷を解析するものである。これにより、風車3への落雷の有無、風車3に雷が落ちた位置(以下では、「落雷位置」、「落雷点」等と呼ぶ。)の推定、落雷による被害状態などを知ることができる。
【0038】
[コミュニケーションサーバ6]
コミュニケーションサーバ6は、例えば、チャット、ソーシャルネットワークサービス、メール等を送信するサーバである。コミュニケーションサーバ6は、雷発生の旨のメッセージや、風車3への落雷発生の旨のメッセージ、落雷解析結果を含むメッセージ等を送信する。
【0039】
例えば、コミュニケーションサーバ6は、風車監視装置1と解析サーバ5のいずれか又は両方と接続しており、風車監視装置1又は解析サーバ5から通知を受けて、対応するメッセージを送信する。
【0040】
(A-1-2)風車監視装置1
図3は、実施形態に係る風車監視装置1の内部構成を示す内部構成図である。
【0041】
図3において、風車監視装置1は、コンピュータ10、映像蓄積部11、通信部12、無停電電源装置13を有する。
【0042】
コンピュータ10は、風車監視装置1の処理を司る処理部又は装置である。コンピュータ10は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を備え、CPUがROMに格納される処理プログラムを実行して、各種機能を行なう。コンピュータ10が行なう機能については後述するが、コンピュータ10は、監視用カメラ2-2からの画像信号に基づく映像ファイルの作成、雷検知用カメラ2-1の画像信号を用いて、雷検知のための画像処理などを行なう。
【0043】
映像蓄積部11は、コンピュータ10により作成された映像ファイルを蓄積するストレージであり、例えば、NAS(Network Attached Storage)等を適用できる。
【0044】
通信部12は、ネットワーク8-1との間で情報を授受するものである。
【0045】
無停電電源装置13は、風車監視装置1に搭載される構成要素に対して電源電力を供給する電源装置であり、例えば、UPS(Uninterruptible Power Supply)等を適用できる。
【0046】
図1は、実施形態に係る風車監視装置1における機能的な構成を示すブロック図である。
【0047】
図1において、風車監視装置1は、カメラ制御部110、画像処理部120、マイク用雷検知部125、一時ファイル格納部130、蓄積サーバ同期ファイル格納部140、ファイル同期部150、データ同期部170、映像分別部180、遠隔操作制御部190を有する。
【0048】
[遠隔操作制御部190]
遠隔操作制御部190は、ネットワーク8-1を介して、遠隔端末(図示しない)との接続を許可して、その遠隔端末からの操作情報に基づいて風車監視装置1(コンピュータ10)の動作を制御する。
【0049】
例えば、遠隔操作制御部190は、リモートデスクトップ等のアプリケーションソフトウェアを適用することができ、高いセキュリティを確保するため、ログインID及びパスワードを用いた所定のログイン処理を行う。
【0050】
[カメラ制御部110]
カメラ制御部110は、カメラ2(雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2)のパラメータの設定・変更等を行なうものである。
【0051】
例えば、カメラ制御部110は、制御対象とするカメラ2(雷検知用カメラ2-1、監視用カメラ2-2)の選択、撮影方向、撮影開始、停止、一時停止、再生、拡大率、サイズ、縦横比等を制御する。なお、カメラ2のパラメータ設定は、上述したものに限定されない。
【0052】
また例えば、カメラ制御部110は、遠隔操作制御部190により、遠隔端末からの操作情報に基づいて、カメラ2のパラメータを遠隔設定するようにしてもよい。
【0053】
[マイク用雷検知部125]
マイク用雷検知部125は、マイク7からの信号に基づいて雷を検知するものである。この実施形態では、画像処理部120が雷検知用カメラ2-1の画像を解析して雷を検知する実施例を主として例示するが、マイク用雷検知部125による雷検知結果を併用することで、より高い精度で雷の発生を検知でき、さらに風車3への落雷も検知できる。
【0054】
例えば、マイク7がマイクロホンであれば、マイク用雷検知部125は、雷の音を特定するためのマイク雷検知用閾値を設定し、マイクロホンとしてのマイク7からの信号が閾値を超えるとき、雷が発生したことを検知する。マイク7が捉えた雷音は、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の映像と時刻同期させて、同じ映像ファイルに保存してもよい。
【0055】
また例えば、マイク7が骨伝導マイクであれば、マイク用雷検知部125は、骨伝導マイクとしてのマイク7からの振動周波数の信号値が振動雷検知用閾値を超えるとき、雷が発生したことを検知する。例えば当該風車3に雷が落ちた場合や、当該風車3の近傍に落雷した場合大きな雷鳴が発生して、風車3に振動が生じ、骨伝導マイクとしてのマイク7が特徴的な振動周波数を捉える。そして、マイク用雷検知部125は、骨伝導マイクとしてのマイク7からの信号値と、振動雷検知用閾値とを比較し、信号値が振動雷検知用閾値を超えるときに雷を検知する。
【0056】
[画像処理部120]
画像処理部120は、雷検知用カメラ2-1及び又は監視用カメラ2-2からの画像信号に基づいて画像処理を行なう。図1に示すように、画像処理部120は、一時ファイル作成部121と、雷検知部122と、落雷イベント情報生成部123とを有する。
【0057】
一時ファイル作成部121は、風車3を常時撮影する監視用カメラ2-2からの画像信号に基づいて、所定時間毎の映像ファイルを作成する。そして、一時ファイル作成部121は、所定時間毎の映像ファイルを、一時ファイルとして一時ファイル格納部130に格納する。
【0058】
例えば、一時ファイル作成部121は、監視用カメラ2-2が撮影した10分間の映像を1つの映像ファイルとし、その映像ファイルに、撮影日時を特定できるファイル名を付与して、一時ファイル格納部130に格納する。
【0059】
なお、監視用カメラ2-2の映像を区切る時間は、特に限定されず、5分間、30分間、1時間などとしてもよい。また、一時ファイルのファイル名は、上述した例に限定されず、ファイルに格納される映像を特定できる形式であればよい。
【0060】
また、映像ファイル形式は、特に限定されず、例えば、MP4、AV1、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、H.264、H.265等を適用することができる。
【0061】
雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1からの画像に基づいて雷を検知する。雷検知方法の詳細な説明は動作の項で行うが、雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1の画像フレームにおいて、稲妻とみなすことができる、明るさと形状を特定して雷を検知する。
【0062】
落雷イベント情報生成部123は、雷が検知されると、落雷イベント情報を含むファイルを生成して、そのファイルに、雷検知日時(落雷発生日時)を特定するファイル名を付与して一時ファイル格納部130に格納する。雷はある程度の時間に亘って複数回発生するが、落雷イベント情報生成部123は、雷検知毎に、落雷イベント情報を生成する。
【0063】
ここで、落雷イベント情報は、雷検知部122が雷検知用カメラ2-1の画像に基づいて雷を検知したときの情報を含むものである。
【0064】
例えば、落雷イベント情報は、雷検知日時情報(落雷発生日時情報)、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の識別情報、雷検知時点が含まれる動画ファイル名(例えば、雷検知用カメラ2-1と監視用カメラ2-2の映像ファイル名)、雷検知時の瞬間的な雷検知用カメラ2-1の画像(画像フレーム)、雷検知時の画像処理に係るパラメータ(例えば、雷検知に係る閾値等)を含むものである。また、落雷イベント情報は、上述した情報項目に限定されず、そのほかに、例えば、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の撮影方向、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2のカメラのパラメータなどを含むようにしてもよい。
【0065】
[一時ファイル格納部130]
一時ファイル格納部130は、画像処理部120が生成した一時ファイル、落雷イベント情報のファイル等を一時的に格納する。
【0066】
[ファイル同期部150]
ファイル同期部150は、一時ファイル格納部130に格納されている各ファイル(例えば、一時ファイル、落雷イベント情報)をコピーして、映像蓄積部11と、蓄積サーバ同期ファイル格納部140とに格納する。
【0067】
[映像蓄積部11]
映像蓄積部11は、ファイル同期部150によりコピーされた一時ファイルの映像を結合して連続撮影映像(動画)を蓄積する。
【0068】
[蓄積サーバ同期ファイル格納部140]
蓄積サーバ同期ファイル格納部140は、ネットワーク8-1上の蓄積サーバ4に同期するファイルを一時的に格納する。例えば、蓄積サーバ同期ファイル格納部140は、連続する一時ファイルを組み立てた連続撮影映像(動画)、落雷イベント情報ファイル、イベント分別動画を格納する。
【0069】
[映像分別部180]
映像分別部180は、落雷イベント情報が生成されると、蓄積サーバ同期ファイル格納部140に格納されている連続撮影映像から、落雷発生時刻を含む映像(監視用カメラ2-2が撮影した映像)を抽出し、その抽出した映像を含むイベント分別映像を生成する。これにより、風車3を常時撮影する監視用カメラ2-2の映像から、雷検知時刻の映像(風車3を含む映像)を特定してファイル化することができる。
【0070】
映像分別部180は、連続撮影映像から抽出した日時情報を特定できるファイル名を、イベント分別映像ファイルに付与する。また、映像分別部180は、雷検知時の監視用カメラ2-2の映像を抽出するため、雷検知時刻から所定時間(例えば10分程度)の映像を抽出してもよいし、雷検知時刻より少し前の時刻から所定時間の映像を抽出してもよい。
【0071】
なお、イベント分別映像ファイルは、雷検知時の監視用カメラ2-2の映像だけでなく、例えば、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2の識別情報など他の情報を含むようにしてもよい。
【0072】
[データ同期部170]
データ同期部170は、蓄積サーバ同期ファイル格納部140に格納されているファイルを、ネットワーク8-1上の蓄積サーバ4に送信して同期するものである。データ同期部170は、蓄積サーバ4のクライアントとして機能する。
【0073】
(A-1-3)解析サーバ5
図4は、実施形態に係る解析サーバ5の内部構成を示す内部構成図である。
【0074】
図4において、実施形態に係る解析サーバ5は、通信部51、制御部52を有する。
【0075】
解析サーバ5は、汎用サーバ等を適用でき、ネットワーク8-2を介して蓄積サーバ4に蓄積されている映像を用いて、風車3への落雷の有無、落雷位置の特定、落雷による被害状況などを解析する。
【0076】
通信部51は、ネットワーク8-2との間で情報を送受信する。また、通信部51は、コミュニケーションサーバ6に対して、例えば、落雷が発生した情報、落雷被害に関する情報等の送信指令を通知するようにしてもよい。
【0077】
制御部52は、解析サーバ5の各種機能を司る処理部及び装置である。制御部52は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM等を有し、CPUが、ROMに格納されている処理プログラム(例えば、落雷解析プログラム等)を実行することにより、各種機能が実現される。
【0078】
図4に示すように、制御部52は、主な機能として、映像取得部521、落雷位置検知部522、ブレード状態検出部523を有する。
【0079】
映像取得部521は、ネットワーク8-2を介して、蓄積サーバ4に蓄積されているファイル(例えば、落雷イベント情報ファイル、イベント分別映像ファイル、連続撮影映像ファイル等)を取得するものである。
【0080】
落雷位置検知部522は、雷検知用カメラ2-1の画像と、監視用カメラ2-2の画像とを用いて風車3に雷が落ちた落雷位置を検知する。例えば、落雷位置検知部522は、落雷イベント情報ファイルに含まれている落雷日時情報に基づいて、落雷発生時の雷検知用カメラ2-1の画像と監視用カメラ2-2の画像とを合成して、風車3のブレードのどの位置に雷が落ちたかを検知する。
【0081】
図4に示すように、落雷位置検知部522は、雷先端検出部5221と、ブレード位置推定部5222と、落雷点検知部5223とを有する。
【0082】
雷先端検出部5221は、落雷発生時の雷検知用カメラ2-1の画像を用いて画像処理を行ない、稲妻(雷)部分の先端を検出する。
【0083】
ブレード位置推定部5222は、落雷発生時の監視用カメラ2-2の画像から、風車3のブレードの位置を推定する。
【0084】
一般的に、風車3は、風向きに応じて、ブレードを含むロータの向き、ブレードのピッチ角、ナセルのヨー角等が可変制御され、ブレードの回転速度も変化する。したがって、風向きや風速等の環境条件によっては、ブレードの位置を特定することが難しいことがある。また、昼間に撮影した映像には風車3の全体が映っているが、夜間や撮影環境が悪いときには、風車3の映りが悪く、回転しているブレードの位置を特定することができないことがある。そこで、この実施形態では、落雷点を検知する際、ブレード位置推定部5222が、監視用カメラ2-2の画像を用いた画像処理により風車3のブレードの位置を推定する。なお、ブレード位置推定手法については動作の項で例示するが、様々な方法を適用できる。
【0085】
落雷点検知部5223は、落雷発生時の雷検知用カメラ2-1の画像の画像座標系と監視用カメラ2-2の画像の画像座標系とを合わせた後、雷検知用カメラ2-1の画像と監視用カメラ2-2の画像とを合成して、風車3に雷が落ちた落雷点を検知する。
【0086】
ブレード状態検出部523は、落雷点検知部5223が検知した、ブレード上における落雷点の状態を検出する。例えば、ブレード状態検出部523は監視用カメラ2-2の画像を用いて落雷点をズームして損傷しているか否かを判定してもよい。また例えば、落雷点の位置が分かれば、カメラを搭載したドローン等の無人飛行体を落雷点に向けて飛行させて、無人飛行体のカメラが撮影した映像に基づいて、損傷しているか否かを検出してもよい。
【0087】
解析結果ファイル作成部524は、落雷位置検知部522が検知した落雷点に関する情報と、ブレード状態検出部523が検出したブレード上の落雷点の状態とを含む情報に基づいて、解析結果ファイルを作成して、解析結果ファイルを蓄積サーバ4に送信する。
【0088】
(A-2)実施形態の動作
次に、この実施形態における雷検知システムNTにおける処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0089】
図5は、実施形態における雷検知システムNTにおける雷検知方法を説明する説明図である。
【0090】
(A-2-1)基本動作
風車監視装置1において、コンピュータ10は、雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2のパラメータを設定して動作を制御する。
【0091】
例えば、コンピュータ10は、遠隔端末からのリモート制御が可能であり、遠隔操作制御部190は、遠隔端末から取得したカメラ制御情報をカメラ制御部110に通知し(S101)、カメラ制御部110は、カメラ制御情報に基づいてカメラ2(雷検知用カメラ2-1及び監視用カメラ2-2)の動作を制御する(S102)。
【0092】
監視用カメラ2-2は、風車3を常時撮像し、撮影した画像信号をコンピュータ10の画像処理部120に与える(S103)。風車監視装置1において、画像処理部120は、監視用カメラ2-2からの画像信号に基づいて、所定時間(例えば10分間)毎の映像ファイルを作成して一時ファイル格納部130に与える(S104)。このとき、画像処理部120は、一時ファイルには、撮影日時情報、監視用カメラ2-2の識別情報等を特定することができるファイル名を付与する。
【0093】
次に、ファイル同期部150は、一時ファイル格納部130に格納されている一時ファイルを読み出し(S105)、一時ファイルをコピーして、映像蓄積部11と蓄積サーバ同期ファイル格納部140とに、一時ファイルを格納する(S106、S107)。
【0094】
このとき、ファイル同期部150は、一時ファイルに含まれている映像を用いて映像を結合し、撮影時刻が連続する連続撮影映像を作成する。そして、ファイル同期部150は、連続撮影映像を、映像蓄積部11及び蓄積サーバ同期ファイル格納部140に蓄積する。
【0095】
次に、データ同期部170は、映像ファイルを蓄積サーバ4に同期するため、蓄積サーバ同期ファイル格納部140に蓄積されている連続撮影映像のファイルを読み出して(S108)、蓄積サーバ4の指定フォルダにアップロードする(S109)。このようにして、監視用カメラ2-2が撮像した映像ファイルは、映像蓄積部11と蓄積サーバ4との間で同期して蓄積される。
【0096】
(A-2-2)雷発生時の動作
次に、雷発生時の雷検知システムNTにおける雷検知処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0097】
雷発生時においても、図5のS101~S109の処理は有効に行なわれる。特に、監視用カメラ2-2が撮影した映像は、一時ファイルとしてファイル化されて蓄積される。
【0098】
また、雷検知用カメラ2-1は撮影動作を開始し、雷検知用カメラ2-1が撮影した画像信号は画像処理部120に与えられ、画像処理部120は雷検知用カメラ2-1の画像信号を用いて雷を検知する。
【0099】
図6は、実施形態に係る雷検知処理の動作を示すフローチャートである。
【0100】
画像処理部120では、雷検知部122が雷検知用カメラ2-1からの画像信号を取得し(S21)、雷検知部122は雷検知用カメラ2-1の全フレームの画像を用いて雷を検知する。
【0101】
まず、雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1の前後する2つのフレームを比較して、雷とみなすことができる明るさを検知する。例えば、雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1からの前後する2つのフレームを比較し、それぞれのフレームにおいて対応する画素の画素値の差分を取る(S22)。そして、雷検知部122は、各画素の差分値の絶対値(差分絶対値)を取り、各画素の差分絶対値を合計する(S23)。このとき、雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1の各フレームをグレースケールに変換してもよい。
【0102】
次に、雷検知部122は、差分絶対値の合計値と、事前に設定した差分検出用閾値とを比較し(S24)、差分絶対値の合計値が差分検出用閾値以下のとき(S24/NO)、雷検知部122は雷の明るさは発生していないと判断し、処理をS22に移行して、次のフレームと比較する。
【0103】
差分絶対値が差分検出用閾値を超えるとき(S24/YES)、雷検知部122は、雷の明るさが発生したと判断し、次に、その明るい部分の形状が稲妻の形状とみなすことができるかを判断するため、処理をS25に移行する。
【0104】
S25において、雷検知部122は、フレームにおいて明るい部分の領域を抽出するため、最も差分値の高い領域を、事前に設定した稲妻部分抽出用閾値を用いて分離する(S25)。つまり、各画素の差分値が稲妻部分抽出用閾値以下であれば、その画素は抽出せず、各画素の差分値が稲妻部分抽出用閾値よりも大きい画素を抽出対象とし、さらに最も差分値が高い領域を抽出する。
【0105】
次に、雷検知部122は、抽出した領域の輪郭線の複雑度を求める(S26)。
【0106】
一般的に、雷は空気中の分子とぶつかりながら進むので、稲妻はギザギザの形状となっており複雑な形状となっている。したがって、雷検知部122は、明るい部分の領域が稲妻のような複雑な形状となっているか否かを、領域の面積と領域の輪郭線の長さとの比で表す複雑度を用いて判断する。つまり、輪郭線の複雑度が複雑度判定用閾値を超えるとき(S27/YES)、雷検知部122は当該領域が稲妻部分と判定し、雷を検知する(S28)。他方、輪郭線の複雑度が複雑度判定用閾値以下であれば(S27/NO)、雷検知部122は稲妻部分でないと判断し、S22に処理を戻す。
【0107】
上述したように、雷検知部122は、雷検知用カメラ2-1の全フレームから、一定以上の明るい領域があり、その明るい領域の形状が複雑な形状であるか否かを判断して、雷をリアルタイムに検知する。
【0108】
なお、マイク用雷検知部125が、マイク7からの信号に基づいて雷を検知し、雷検知部122は、マイク用雷検知部125の雷検知結果を利用して、より確実に雷検知の判断をするようにしてもよい。
【0109】
次に、雷検知部122は、が雷検知用カメラ2-1の全フレームから雷を検知すると、雷検知部122は、雷検知日時(落雷発生日時)を読み取り(S29)、雷検知用カメラ2-1の識別情報を読み出して(S30)、落雷イベント情報を作成し、落雷イベント情報を一時ファイル格納部130に格納する(S31)。
【0110】
このとき、ファイル同期部150は、一時ファイル格納部130に格納されている落雷イベント情報をコピーして、蓄積サーバ同期ファイル格納部140に格納する。
【0111】
映像分別部180は、落雷イベントを検出すると、雷検知日時(落雷発生日時)の時刻を含む映像(監視用カメラ2-2の映像)を連続撮影映像から抽出してイベント分別映像ファイルを作成する(S32)。そして、映像分別部180は、イベント分別映像ファイルを蓄積サーバ同期ファイル格納部140に格納する(S33、図5のS201)。
【0112】
そして、データ同期部170は、蓄積サーバ同期ファイル格納部140に蓄積されているデータ(例えば、落雷イベント情報、イベント分別映像ファイルを含む)を読み出して、蓄積サーバ4の指定フォルダにアップロードする(S34)。
【0113】
また、映像分別部180は、落雷が発生した旨をコミュニケーションサーバ6に通知し(図5のS204)、コミュニケーションサーバ6が、落雷発生の旨をチャットやメール等のメッセージを送信する。
【0114】
(A-2-3)落雷点の測定処理
次に、風車3に雷が落ちた落雷点の測定処理を、図面を用いて説明する。落雷点の測定処理は、解析サーバ5が、蓄積サーバ4に蓄積されている情報を用いて行なう。
【0115】
解析サーバ5は、蓄積サーバ4から落雷イベント情報を取得し、落雷イベント情報から雷検知日時(落雷発生日時)を読み取り、その雷検知日時のイベント別映像ファイルを蓄積サーバ4から取得する(図5のS202)。
【0116】
解析サーバ5は、以下のようにして、風車3への落雷点を解析して、その解析結果を、蓄積サーバ4に蓄積する(図5のS203)。また、解析サーバ5は、落雷解析の結果を含むメッセージをコミュニケーションサーバ6に通知し(図5のS205)、コミュニケーションサーバ6が、チャットやメール等でメッセージを送信する。
【0117】
次に、解析サーバ5による落雷点の測定処理の詳細な動作を説明する。
【0118】
[稲妻部分の先端位置の導出]
まず、雷先端検出部5221は、雷検知時の雷検知用カメラ2-1の画像(フレーム)から、稲妻部分の領域を特定して、その稲妻部分の先端を検出する。
【0119】
例えば、雷先端検出部5221は、雷検知用カメラ2-1の画像(フレーム)において稲妻部分と背景とを区分して、稲妻部分を検出し、その稲妻部分の軌跡を辿り、先端の位置座標を導出する。より具体的には、例えば、雷先端検出部5221は、雷検知時の前後するフレームにおいて、各画素の差分値(差分絶対値でもよい)と事前に設定した閾値との比較により、稲妻部分と背景とを区分して稲妻部分の領域を特定する。そして、雷先端検出部5221は、稲妻部分を辿って先端の位置座標を導出する。
【0120】
図7は、落雷発生時刻における雷検知用カメラ2-1の画像例である。なお、図7の画像例は、点O1を基準としてX1-Y1座標系としている。
【0121】
図7の例の場合、雷先端検出部5221は、5本の稲妻部分の軌跡を辿っていき、それぞれの稲妻部分の先端の位置座標を導出する。例えば、5本の稲妻部分の軌跡の先端を、左から点P1、点P2、点P3、点P4、点P5としたとき、雷先端検出部5221は点P1~点P5の位置座標を求める。
【0122】
なお、雷先端検出部5221は、複数の稲妻部分の軌跡がある場合に、全ての稲妻の先端の位置を求めてもよいが、風車3に落雷したと思われる稲妻の先端の位置を求めるようにしてもよい。
【0123】
例えば、図8に例示するように、画像上で風車3のブレードが回転する範囲がわかっている場合、ブレードの回転領域Cがわかるので、雷先端検出部52221は、ブレードの回転領域Cに存在する稲妻部分の先端の座標位置を求めるようにする。つまり、この例の場合、図8のブレードの回転領域Cに存在する点P3、点P5の位置のみを検出するようにしてもよい。
【0124】
また変形例として、ブレードに雷が落ちると、大きな電流が流れる傾向があり、稲妻の軌跡幅も太くなるので、雷先端検出部5221は、複数の稲妻部分の先端のうち、軌跡幅の太い稲妻部分の先端の位置を求めるようにしてもよい。
【0125】
例えば、雷先端検出部5221は、複数の稲妻部分のうち、軌跡幅が太い順に稲妻を並び替え、軌跡幅が太いものから順に、1又は複数の稲妻部分の選択し、その選択した稲妻部分の先端の位置を求める。図7の例では、雷先端検出部5221は、軌跡幅が太い稲妻部分の先端として点P3、点P5、点P4の位置座標を求めることになる。
【0126】
なお、雷先端検出部5221による稲妻部分の検出処理や稲妻部分の先端の位置の導出処理は、上述したものに限定されず、広く適用できる。
【0127】
[風車ブレードの位置・回転半径の推定]
次に、ブレード位置推定部5222は、雷検知時刻を含む監視用カメラ2-2のフレームを用いて、回転するブレードの雷検知時の位置と回転半径を推定する。
【0128】
ここで、風力発電機は、風向きに合わせてブレードとハブの向きを制御したり(ヨー角制御)、ブレードの傾きを制御したり(ピッチ角制御)する。また、風速に応じてブレードの回転速度も異なる。また例えば、昼間には、監視用カメラ2-2の画像に風車3が映り込んでいるが、夜間や荒天のときには画質が悪く、風車3がよく見えないことがある。
【0129】
そこで、ブレード位置推定部5222は、雷検知時刻を含む監視用カメラ2-2の画像(フレーム)を用いて、雷検知時の風車3のブレードの位置と回転半径(回転領域)を推定する。
【0130】
例えば、図9を用いて、ブレード位置の推定手法の一例を説明する。図9は、監視用カメラ2-2のフレームを時系列に沿って並べた図である。図9(D)は、雷検知時(落雷発生日時)のフレームであり、図9(A)~図9(C)は、雷検知時よりも前のフレームである。図9(D)の画像は、ブレードへの落雷により損傷が生じている。
【0131】
まず、ブレード位置推定部5222は、監視用カメラ2-2のフレームにおいて、風車3の構造部の部分と、背景とを区分して、風車3の構造部の画像部分を抽出して背景分離する。
【0132】
なお、背景分離の方法は、特に限定されず、例えば、フレームにおける各画素の画素値と、事前に用意した背景分離用閾値とを比較し、背景分離用閾値を超える画素値は背景の領域とし、背景分離用閾値以下の画素値は風車3の構成部の部分とする方法等を適用する。
【0133】
次に、監視用カメラ2-2のフレームレートが30fpsであるので、ブレード位置推定部5222は、雷検知時刻付近のフレームのうち、風車3のブレードが映っている画像が2枚以上あれば、そのフレーム上でブレードの位置と回転するブレードの中心点を特定できる。例えば、2枚のフレームでブレードの先端を結ぶ円弧から、ブレードの回転半径を推定できるので、ブレードの回転範囲を推定できる。
【0134】
さらに、ブレード位置推定部5222は、監視用カメラ2-2のフレームレートと、ブレードの回転半径とがわかるので、ある時刻のフレームでブレード位置が分かれば、雷検知時(落雷発生時刻)のフレームでブレードの位置を推定できる。
【0135】
なお、風車3の複数(例えば3本)のブレードを画像上で区別が難しいので、例えば、各ブレードに直接マーカを付したり、直接ナンバリングしたりしてもよい。
【0136】
またブレード位置の推定方法の別の方法として、例えばセマンティックセグメンテーション等の機械学習モデルを用いるようにしてもよい。例えば、ブレード位置推定部5222は、機械学習モデルの学習器に、監視用カメラ2-2の画像を逐次学習させる。このとき、学習させる情報は、監視用カメラ2-2の画像に関するすべての情報とし、例えば、画像フレーム、フレームレート、カメラパラメータ、撮影日時等を含む情報とすることができる。そして、ブレード位置推定部5222は、雷検知時(落雷発生日時)の画像を、機械学習モデルの推定器に入力して、雷検知時のブレードの位置、回転半径を推定してもよい。この場合でも、夜間など画像上で風車3を特定できない場合でも、ブレードの位置を推定することができる。
【0137】
[落雷点の測定]
次に、落雷点検知部5223は、落雷発生日時の雷検知用カメラ2-1の画像の画像座標系と、監視用カメラ2-2の画像の画像座標系とを合わせた後、雷検知用カメラ2-1の画像と監視用カメラ2-2の画像とを合成して、風車3に雷が落ちた落雷点を検知する。
【0138】
図10は、雷検知用カメラ2-1の画像と、監視用カメラ2-2の画像とを座標系を一致させた合成画像である。
【0139】
落雷点検知部5223は、図10に例示する合成画像を用いて、稲妻部分の先端P3が風車3のブレードに落ちたことを検知することができる。
【0140】
落雷点検知部5223は、画像上でブレードの位置、ブレードの回転半径がわかっているので、雷がブレードに落ちた画像上の落雷点を求めることができる。これにより、落雷点の位置を絞り込むことができる。
【0141】
[落雷点の状態検出]
次に、ブレード状態検出部523は、落雷点検知部5223が検知した落雷点に基づいて、蓄積サーバ4から取得した監視用カメラ2-2の最新画像を用いて落雷点をズームさせて損傷状態などを検出する。
【0142】
解析結果ファイル作成部524は、ブレード状態検出部523の検出結果を含む解析結果ファイルを作成して、解析結果ファイルを蓄積サーバ4に送信して蓄積する。
【0143】
例えば、ブレードの損傷には、「折れ」、「めくれ」等がある。損傷の程度によっては、そのまま回転させることができる場合、緊急性はないが修理等が必要な場合、修理等を緊急に行う場合等のように対応が異なる。そこで、損傷の程度をランク付けして、そのランクに応じた対処方法を決定付けてもよい。
【0144】
例えば、事前に損傷の程度に応じて複数の評価値(例えば、3段階等の評価値)を設定しておき、画像上で損傷の程度を評価して評価値を求める。ここで、評価方法は、様々な方法を適用できるが、例えば過去に生じたブレードの損傷状態と評価値とを学習させておき、今回のブレードの損傷に応じた評価値を推定するようにしてもよい。
【0145】
また例えば、評価値に応じて、アラーム警報、風力発電機の停止、具体的な保守作業の指令などの対処方法を対応付けておき、ブレード状態検出部523は、今回得られた評価値に応じたアラームを、例えば保守会社などの外部に通知するようにしてもよい。
【0146】
さらに例えば、落雷点検知部5223により落雷点が絞られるので、例えばカメラを搭載したドローンを落雷点に向けて飛行させて、落雷点の画像を撮影させるようにしてもよい。落雷点への飛行には、画像上で検知した落雷点を、現実の位置に変換して、例えばGPS等を用いて、ドローンの飛行を制御するようにしてもよい。
【0147】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、風車を常時撮像するカメラの画像と、雷検知用のカメラの画像とを備え、雷検知用のカメラ画像に基づいて、風車のブレードへの落雷を検知することができる。
【0148】
また、この実施形態によれば、雷検知用のカメラ画像と、風車を捉えるカメラ画像とに基づいて、ブレードに落雷した落雷点を検出することができるので、その落雷点を絞り込んでブレードの損傷状態を速やかに検知することができる。
【0149】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0150】
(B-1)上述した実施形態では、風車3が3枚のブレードを備えるプロペラ型である場合を例示したが、これに限定されず、多翼型、オランダ型など他の種類であってもよい。
【0151】
(B-2)図11に例示すように、複数台の風車監視装置1A及び1Bが無線通信部14を備え、互いに無線通信が可能であってもよい。例えば落雷により風車監視装置1の電源が落ちたり、通信機能が機能しなくなったりする場合が生じ得、その場合に、ネットワーク8-1への接続ができず、蓄積サーバ4へデータ同期ができないことがある。
【0152】
そのため、例えば、図11に例示するように、複数台の風車監視装置1A及び1Bが無線通信部14を備え、風車監視装置1Bが、蓄積サーバ4に送信すべきデータを、他の風車監視装置1Aに無線通信してネットワーク8-1接続できるようにしてもよい。
【0153】
(B-3)風車3への落雷により火災も生じ得る。上述した実施形態の雷検知システムNTは、風車3への落雷点の検知だけでなく、火災が発生した否かも検知でき、その火災している位置、状態も検知できる。
【0154】
(B-4)上述実施形態では、1台のカメラ(監視用カメラ2-2、雷検知用カメラ2-1)が1台の風車3を監視する場合を例示したが、1台のカメラが、複数の風車を撮影可能としてもよい。例えば、複数の風車3のそれぞれを一意に識別するため識別情報を付与し、風車監視装置1が雷検知用カメラ2-1の画像を画像処理して雷を検知する。また解析サーバ5は、画像上の複数の風車3毎にブレードの位置と回転半径を推定することができれば、上述した実施形態を利用して、風車3毎の落雷点の位置を測定できる。
【符号の説明】
【0155】
NT:雷検知システム、1:風車監視装置、2-1:雷検知用カメラ、2-2:監視用カメラ、21:減光フィルタ、3:風車、4:蓄積サーバ、5:解析サーバ、6:コミュニケーションサーバ、8-1及び8-2:ネットワーク、
10:コンピュータ、11:映像蓄積部、12:通信部、13:無停電電源装置、14:無線通信部、110:カメラ制御部、120:画像処理部、121:一時ファイル作成部、122:雷検知部、123:落雷イベント情報生成部、130:一時ファイル格納部、140:蓄積サーバ同期ファイル格納部、150:ファイル同期部、170:データ同期部、180:映像分別部、190:遠隔操作制御部、
51:通信部、52:制御部、521:映像取得部、522:落雷位置検知部、523:ブレード状態検出部、524:解析結果ファイル作成部、5221:雷先端検出部、5222:ブレード位置推定部、5223:落雷点検知部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11