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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】名寄せ方法および名寄せプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240806BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024045255
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518209023
【氏名又は名称】日本グリーン電力開発株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513087677
【氏名又は名称】PCIソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523114143
【氏名又は名称】データステップス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 淳也
(72)【発明者】
【氏名】君塚 健太
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 芳典
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋史
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048523(JP,A)
【文献】特開2017-219912(JP,A)
【文献】特開2020-112499(JP,A)
【文献】特開2021-085812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00,7/00-7/90
G06V 10/00-10/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理端末またはコンピュータが、
複数の対象物が映り込んでいる複数の撮影画像のうち対をなす撮影画像のそれぞれから指定属性を有する対象物として検出された指定対象物の1次ペア候補のうち、距離が第1所定距離以下である前記指定対象物の2次ペア候補を特定し、
前記対をなす撮影画像のそれぞれにおける前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれと、他の前記指定対象物との相対配置態様の類似度である第1類似度と、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれの前記指定属性の類似度である第2類似度と、を算出し、
前記第1類似度に応じた順で前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物を対象として、前記第2類似度が閾値以上であることを要件として、当該一対の前記指定対象物が同一の指定対象物であると判定する一方、当該要件を満たす場合でも一の前記撮影画像から抽出された別個の前記指定対象物が同一の前記指定対象物であると判定されるという矛盾が生じる場合、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物が異なる指定対象物であると判定する判定処理を、実行する
名寄せ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の名寄せ方法において、
前記複数の撮影画像のうち、距離が前記第1所定距離よりも長い第2所定距離以下である、撮影画像ペアを構成する一対の撮影画像のそれぞれから検出された前記指定対象物の前記1次ペア候補の中から前記2次ペア候補を特定する
名寄せ方法。
【請求項3】
請求項1に記載の名寄せ方法において、
すべての前記2次ペア候補について前記判定処理が完了していないことを要件として、前記閾値を低下させたうえで前記判定処理が繰り返される
名寄せ方法。
【請求項4】
請求項1に記載の名寄せ方法において、
前記第1類似度に加えて前記第2類似度に応じた順で前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物を対象として、前記判定処理を実行する
名寄せ方法。
【請求項5】
請求項に記載の名寄せ方法において、
前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれを基準とした、前記撮影画像ペアを構成する一対の撮影画像のそれぞれにおける他の前記指定対象物までの距離が長いほどノルムが短く定義され、かつ、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれから、前記撮影画像ペアを構成する一対の撮影画像のそれぞれにおける他の前記指定対象物に向かう一のベクトルまたは複数のベクトルの合成ベクトルの類似度を、前記第1類似度として算出する
名寄せ方法。
【請求項6】
請求項5に記載の名寄せ方法において、
前記他の前記指定対象物の数が、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれからの距離が短い順に選定された指定数以下になるように調整される
名寄せ方法。
【請求項7】
請求項1に記載の名寄せ方法において、
前記指定属性が異常箇所の存在であり、前記指定対象物における当該異常箇所の配置パターンの類似度を前記第2類似度として算出する
名寄せ方法。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の名寄せ方法を実施する機能を前記情報処理端末または前記コンピュータに対して付与する名寄せプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮影画像のそれぞれに映り込んでいる対象物の名寄せ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス状に縦横に整列された複数の太陽光発電のパネル(またはモジュール)のそれぞれの異常の有無を判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-117466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常があると判定されたパネル(異常パネル)を特定するため、例えば、整列された複数のパネルの上空撮影画像がオルソ画像に変換され、当該オルソ画像に異常パネルを指し示すアイコンを重畳表示させることが考えられる。具体的には、図12上段に示されているように、オーバーラップ撮影により得られた複数の画像img1、img2、‥のそれぞれが複数のオルソ画像のそれぞれに変換され、図12下段に示されているように当該複数のオルソ画像が位置合わせされて統合されて統合画像IMGが生成される。この場合、図12下段に示されているように、同一の異常パネルであるにもかかわらず統合画像における位置がずれてしまい、当該同一の異常パネルを指し示す複数のアイコンまたはマークM1、M2、‥が併存して表示される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、複数の撮像画像のそれぞれに映り込んでいる太陽光パネル等の対象物が同一であるか否かの判定精度の向上を図りうる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の名寄せ方法は、
情報処理端末またはコンピュータが、
複数の対象物が映り込んでいる複数の撮影画像のうち対をなす撮影画像のそれぞれから指定属性を有する対象物として検出された指定対象物の1次ペア候補のうち、距離が第1所定距離以下である前記指定対象物の2次ペア候補を特定し、
前記対をなす撮影画像のそれぞれにおける前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれと、他の前記指定対象物との相対配置態様の類似度である第1類似度と、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物のそれぞれの前記指定属性の類似度である第2類似度と、を算出し、
前記第1類似度に応じた順で前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物を対象として、前記第2類似度が閾値以上であることを要件として、当該一対の前記指定対象物が同一の指定対象物であると判定する一方、当該要件を満たす場合でも一の前記撮影画像から抽出された別個の前記指定対象物が同一の前記指定対象物であると判定されるという矛盾が生じる場合、前記2次ペア候補を構成する一対の前記指定対象物が異なる指定対象物であると判定する判定処理を、実行する。
【0007】
本発明の名寄せ方法によれば、複数の対象物(整列した複数の対象物のほか、不規則に配置された複数の対象物)が映り込んでいる複数の撮影画像のうち対をなす撮影画像のそれぞれから指定属性を有する対象物として検出された指定対象物の1次ペア候補のうち、距離が第1所定距離以下である指定対象物の2次ペア候補が特定される。これにより、距離の長短に鑑みて同一の対象物である蓋然性が低い一対の指定対象物が、同一の対象物であると判定されることが回避される。
【0008】
判定処理において、第2類似度が閾値以上であることを要件として、当該一対の指定対象物が同一の指定対象物であると判定される。「第2類似度」は、2次ペア候補を構成する一対の指定対象物のそれぞれの指定属性の類似度である。これにより、指定属性の類似度に鑑みて同一の対象物である蓋然性が低い一対の指定対象物が、同一の対象物であると判定されることが回避される。さらに、当該要件を満たす場合でも一の撮影画像から抽出された別個の指定対象物が同一の指定対象物であると判定されるという矛盾が生じる場合、当該一対の指定対象物が異なる指定対象物であると判定される。
【0009】
判定処理は、第1類似度に応じた順で2次ペア候補を構成する一対の指定対象物を対象として実行される。「第1類似度」は、対をなす撮影画像のそれぞれにおける2次ペア候補を構成する一対の指定対象物のそれぞれと、他の指定対象物との相対配置態様の類似度である。これにより、指定属性の類似度に鑑みて同一の対象物である蓋然性が高い一対の指定対象物が、同一の対象物であると判定される一方で、当該矛盾が生じるような一対の指定対象物が、同一の対象物であると判定されることが回避されうる。
【0010】
これらの結果、複数の撮像画像のそれぞれに映り込んでいる太陽光パネル等の対象物が同一であるか否かの判定精度の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】名寄せシステムの構成説明図。
図2】名寄せ方法の手順を表わすフローチャート。
図3】1次パネルペアの選定処理に関する説明図。
図4】2次パネルペアの選定処理に関する説明図。
図5】2次パネルペアの選定処理に関する説明図(続き)。
図6】異常類似度の評価処理に関する説明図。
図7】異常類似度の評価結果に関する説明図。
図8】RPIベクトルの定義に関する説明図。
図9】RPIベクトルの一例に関する説明図。
図10】異常パネルのペアリング処理に関する説明図。
図11】異常パネルの名寄せ結果に関する説明図。
図12】従来技術に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(名寄せシステムの構成)
本発明の一実施形態としての名寄せ方法は、図1に示されている名寄せ装置10と、無人飛行機20および当該無人飛行機20に搭載されているカメラ22と、により構成されている名寄せシステムが用いられて実施される。
【0013】
名寄せ装置10は、無人飛行機20と相互通信可能に構成されている情報処理端末またはコンピュータにより構成され、演算処理装置(CPUなど)が記憶装置(メモリ)に格納されているデータおよび名寄せプログラムを読み出すことにより、当該データを対象にして当該プログラムにしたがって後述する名寄せ処理を実行するように構成されている。
【0014】
(名寄せ方法の予備処理)
無人飛行機20を移動させながら、当該無人飛行機20に搭載されているカメラ22によって、整列されて配置されている複数のパネルP(対象物)が映り込んでいる撮影画像imgn(n=1,2,‥,N)が逐次的に空撮または取得される(図2/STEP10)。なお、一の無人飛行機20に搭載されている一または複数のカメラ22を通じて複数の撮影画像imgが取得されてもよく、複数の無人飛行機20のそれぞれに搭載されている一または複数のカメラ22を通じて複数の撮影画像imgが取得されてもよい。整列されて配置されている複数の対象物として車両などの他の物体が映り込んでいる撮影画像imgnが取得されてもよい。
【0015】
撮影画像imgの画像解析により、各パネルPの異常の有無、さらに各異常パネルP(異常があると判定されたパネル)の異常箇所の配置パターンが求められる(図2/STEP12)。
【0016】
これにより、例えば、図7左側上段(1)に示されているように、撮影画像img1において異常パネルP1およびP2が検出される。さらに、図7左側下段(2)に示されているように、当該異常パネルP1およびP2(例えば、16×16セル領域)のそれぞれにおける異常箇所(白色セル)の配置パターンが特定される。同様に、図7右側上段(3)に示されているように、撮影画像img2において異常パネルP3およびP4が検出される。さらに、図7右側下段(4)に示されているように、当該異常パネルP3およびP4(例えば、16×16セル領域)のそれぞれにおける異常箇所(白色セル)の配置パターンが特定される。
【0017】
無人飛行機20に搭載されている測位装置により測定された当該無人飛行機20の緯度・経度に基づき、各撮影画像imgの代表点(例えば、中心)の緯度・経度が求められる(図2/STEP13)。さらに、無人飛行機20の緯度・経度に基づき、各撮影画像imgに映り込んでいる異常パネルPの緯度・経度が求められる(図2/STEP14)。
【0018】
複数の撮影画像imgのそれぞれに対して、個々の撮影画像を識別するための画像識別子(imgID)が付与される(図2/STEP15)。さらに、異常パネルPのそれぞれに対して、個々の異常パネルPを識別するためのパネル識別子(globalID)が付与される(図2/STEP16)。
【0019】
これにより、図3に模擬的に示されているように、撮影画像imgの画像識別子imgIDと当該撮影画像において検出された異常パネルPのパネル識別子globalIDとの組み合わせに該当する成分にTrueが入力されたM×Nの疎行列Aが定義されうる。「N」は撮影画像imgの総数である。「M」は異常パネルPの総数である。
【0020】
(名寄せ方法の手順)
まず、複数の撮影画像imgnの中から、代表点の距離(={(緯度偏差)2+(経度偏差)21/2)が第1指定距離(第2所定距離(例えば、50m))以下である一対の撮影画像が撮影画像ペアとして抽出される(図2/STEP20)。
【0021】
これにより、図3に模擬的に示されているように、撮影画像ペアを構成する一対の撮影画像のそれぞれの画像識別子imgIDの組み合わせに該当する成分にTrueが入力された疎行列Bが定義されうる。例えば、画像識別子imgID=n1の撮影画像および画像識別子imgID=n2の撮影画像が撮影画像ペアを構成する場合、疎行列Bの(n1,n2)成分に「True」が入力されている。
【0022】
次に、撮影画像ペアを構成する一対の撮影画像imgのそれぞれにおける異常パネルPの対が「1次パネルペア候補」として特定される(図2/STEP21)。
【0023】
図3に模式的に示されているように、疎行列Aおよびその転置行列tAと、疎行列Bと、を用いて定義される疎行列C=A・B・tAにおいてTrueを値として有する成分に相当するパネル識別子globalIDの組み合わせにより識別される一対の異常パネルPが「1次パネルペア候補」として特定される。数値演算時にはTrueを具体的な数値1に置き換えて演算を行う。
【0024】
また、1次パネルペア候補の中から、距離が第2指定距離(第1所定距離(例えば、7.5m))以下である一対の異常パネルPにより構成されている1次パネルペアが「2次パネルペア候補」として選定される(図2/STEP22)。
【0025】
図4(1)に模擬的に示されているように、疎行列C(上三角行列(図3参照))およびその転置行列tC(下三角行列)の組み合わせ行列(C+tC)と、パネル識別子globalIDにより識別される各パネルの緯度を表わすベクトルγlatとのアダマール積が計算される。ベクトルγ(M×1)においては、各行の値を列方向へ、列数がMになるよう拡張した上で、アダマール積が計算される。当該行列(C+tC)において「True」を値として有する成分が、図4(1)において黒色で表わされている。これにより、図4(2)に模擬的に示されているM×M疎行列Γlatが得られる。当該行列Γlatにおいて0ではない値を有する(m1,m2)成分が、図4(2)において黒色で表わされている。疎行列Γlatの当該(m1,m2)成分は、パネル識別子globalID=m1により識別される異常パネルPm1の緯度を値として有している。図4(2)に模擬的に示されているように、疎行列Γlatおよびその転置行列tΓlat の差分行列(ΓlattΓlat)が計算される。差分行列(ΓlattΓlat)の(m1,m2)成分は、パネル識別子globalID=m1により識別される異常パネルPm1の緯度と、パネル識別子globalID=m2により識別される異常パネルPm2の緯度との偏差を値として有している。そして、図4(3)に模式的に示されているように、差分行列(ΓlattΓlat)の各成分の2乗を各成分の値として有する行列Δlatが得られる。経度についても緯度と同様の手順で行列Δlngが得られる。
【0026】
図5(4)に模擬的に示されているように、行列ΔlatおよびΔlngが足し合わせられることにより、異常パネルPm1およびPm2の緯度偏差の2乗と経度偏差の2乗との和(すなわち、異常パネルPm1およびPm2の2乗)を(m1,m2)成分の値として有する行列Δlat+Δlngが得られる。図5(4)に模擬的に示されている行列の(m1,m2)成分のうち、第2指定距離の2乗以下である値を有する成分が選定される。これにより、図5(5)に模擬的に示されているように、当該選定成分を有する行列Δが得られる。そして、当該行列Δの上三角成分のみが残されることにより、図5(6)に模擬的に示されているように、上三角行列Δupperが得られる。上三角行列Δupperにおいて0でない値を有する(m1,m2)成分(黒色で表わされている。)に相当する一対の異常パネルPm1およびPm2により「2次パネルペア候補」が構成される。
【0027】
2次パネルペア候補を構成する一対の異常パネルPの異常類似度Sabが評価または算定される(図2/STEP23)。異常類似度は0~1の範囲で定義され、一対の異常パネルPのそれぞれの異常パターン(異常領域の配置パターン)が類似しているほど「1」に近くなるように定義されている。
【0028】
図6(1)に示されている、2次パネルペア候補を構成する一対の異常パネルPm1およびPm2の異常類似度の評価方法の一実施例について説明する。異常パネルPm1およびPm2のそれぞれにおける正常領域(正常なセルに相当する)が黒色領域で表わされ、異常領域F(Pm1)およびF(Pm2)(異常が発生したセルに相当する)のそれぞれが白色領域で表わされている。この実施例では、異常パネルPm1およびPm2が8×8セル領域として表現されているが、16×16セル領域などの異なるサイズ(および/または形状)のセル領域により表現されていてもよい。
【0029】
まず、異常パネルPm1およびPm2のそれぞれに対してゼロパディング処理が実行される。これにより、図6(2)に示されているように、異常パネルPm1およびPm2のそれぞれを取り囲む、1セル分の幅を有する区形枠状領域の分だけ、当該異常パネルPm1およびPm2のそれぞれが拡張されることにより、拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eのそれぞれが生成される。
【0030】
続いて、拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eのそれぞれに対して、(3,3)dilation(MAXフィルタ)処理(または平均化処理)が実行される。これにより、例えば、図6(3)に示されているように、異常領域F(Pm1)およびF(Pm2)のそれぞれが拡張されたような、白色領域として表現されている異常領域F(Pm1)_EおよびF(Pm2)_Eのそれぞれを有する拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eのそれぞれが生成される。
【0031】
次に、フィルタ処理が施された拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eが統合(積み上げ)される。これにより、図6(4)に示されているように、拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eのうち少なくとも一方において白色領域であったセルが白色領域として定義され、その余のセルが黒色領域として定義された統合セル領域UP_Eが生成される。
【0032】
そして、統合セル領域UP_Eに基づき、異常パネルPm1およびPm2の異常類似度SabとしてIoU(Intersection over Union)が計算される。これにより、図6(4)に示されている統合セル領域UP_Eの白色領域(F(Pm1)_E∪F(Pm2)_E)を構成するセル数Or area(=15)に対する、拡張異常パネルPm1_EおよびPm2_Eの両方において白色領域(F(Pm1)_E∪F(Pm2)_E)であったセル数And area(=9)の比率(=9/15)=0.6が異常パネルPm1およびPm2の異常類似度Sabとして計算される。なお、IoUに代えてJaccard係数が一対の異常パネルの異常類似度Sabとして計算されてもよい。
【0033】
図7には、異常パネルが16×16セル領域により表現されている場合の、一対の異常パネルPm1およびPm2の異常類似度Sab(=IoU)の算出結果が示されている。図7左側上段(1)に示されている一方の異常パネルPm1における異常領域F(Pm1)および他方の異常パネルPm2における異常領域F(Pm2)(白色領域)の配置パターンは完全に同一であるため、異常類似度Sabが上限値である「1」であった。図7左側下段(2)に示されている一方の異常パネルPm1における異常領域F(Pm1)および他方の異常パネルPm2における異常領域F(Pm2)の配置パターンは比較的類似しているため、異常類似度Sabが比較的高い「0.65」であった。図7右側上段(3)および右側下段(4)のそれぞれに示されている一方の異常パネルPm1における異常領域F(Pm1)および他方の異常パネルPm2における異常領域F(Pm2)の配置パターンはあまり類似していないため、異常類似度Sabが比較的低い「0.05」、「0.17」であった。
【0034】
2次パネルペアを構成する一対の異常パネルの画像内相対位置(RPI:Relative Position in an Image)の類似度SRPIが計算される(図2/STEP24)。
【0035】
具体的には、まず、異常パネルのそれぞれのRPIベクトルηが重力モデルにしたがって定義される。重力モデルによれば、異常パネルのそれぞれが単位質量の天体とみなされ、一の異常パネルが周辺の他の異常パネルから受ける引力がRPIベクトル(「向き」および「大きさ」)により表現される。当該他の異常パネルの数が、当該一の異常パネルからの距離が短い順に選定された指定数以下になるように調整されてもよい。例えば、図8に示されているように、一の撮影画像において3つの異常パネルPm0、Pm1およびPm2が検出された場合、一の異常パネルPm0のRPIベクトルηm0の求め方について説明する。一の異常パネルPm0の代表点から、他の異常パネルPm1、Pm2の代表点までのベクトルη01およびη02、ならびに、これらの長さ(ノルム)|η01|および|η02|に基づき、関係式(02)にしたがって一の異常パネルPm0のRPIベクトルηm0が定義されている。
【0036】
ηm0=η01/|η01q+1+η02/|η02q+1 ‥(02)。
【0037】
RPIベクトルは緯度・経度座標系において定義される。前記のように、例えば、異常パネルの重心の緯度・経度が当該異常パネルの緯度・経度として定義される。2つの異常パネルのそれぞれの位置を始端および終端とするRPIベクトルηm0の成分ベクトルであるη01および/またはη02の大きさ(ノルム)は、2つの異常パネルの距離のq乗(1<q(例えば、q=2))に反比例するように定義されている。
【0038】
これにより、図9左側上段に示されているように撮影画像img1において検出された異常パネルP1、P2およびP3のそれぞれについて、RPIベクトルη1、η2およびη3が定義される。同様に、図9右側上段に示されているように撮影画像img2において検出された異常パネルP4およびP5のそれぞれについて、RPIベクトルη4およびη5が定義される。そして、2次パネルペア候補を構成する一対のRPIベクトルηm1およびηm2の類似度がRPI類似度SRPIとして求められる。
【0039】
2つのRPIベクトルηm1およびηm2のそれぞれの「向き」の類似度が、次の関係式(11)で表わされるcosine類似度Scosにより定義されている。
【0040】
cos=(ηm1・ηm2)/(|ηm1|・|ηm2|)‥(11)。
【0041】
関係式(11)から明らかなように、cosine類似度Scosは、-1~1の範囲に含まれ、2つのRPIベクトルηm1およびηm2の向きが同一の場合は「1」になり、2つのRPIベクトルηm1およびηm2が直交する場合には「0」になり、2つのRPIベクトルηm1およびηm2の向きが反対の場合は「-1」となるように定義されている。2つのRPIベクトルηm1およびηm2の少なくとも一方がゼロベクトルの場合、cosine類似度Scosは「0」になるように定義されている。
【0042】
2つのRPIベクトルηm1およびηm2のそれぞれの「大きさ」の類似度が、次の関係式(12)で表わされるmagnitude類似度Smagにより定義されている。
【0043】
mag=(|ηm1|+|ηm2|)/2max(|ηm1|,|ηm2|)‥(12)。
【0044】
関係式(12)から明らかなように、magnitude類似度Smagは、0.5~1の範囲に含まれるように定義されている。magnitude類似度Smagの下限値が0.5にとどめられていることにより、RPI類似度SRPIに対する影響度が調整されている。
【0045】
なお、一方のRPIベクトルηm1のノルム|ηm1|と、他方のRPIベクトルηm2のノルム|ηm2|との偏差の絶対値||ηm1|-|ηm2||が小さくなるほど1に近づくように、magnitude類似度Smagが定義されていてもよい。例えば、magnitude類似度Smagが関係式(121)により定義されていてもよい。
【0046】
mag=exp(-C・||ηm1|-|ηm2||) (0<C)‥(121)。
RPI類似度SRPIは、cosine類似度Scosおよびmagnitude類似度Smagに基づき、関係式(14)にしたがって定義されている。
【0047】
RPI=(Scos×Smag+1)/2 ‥(14)。
【0048】
関係式(14)から明らかなように、RPI類似度SRPIは0~1の範囲になるように定義されている。
【0049】
RPI類似度SRPIは、cosine類似度Scosおよびmagnitude類似度Smagの重み付き和として、関係式(141)にしたがって定義されていてもよい。
【0050】
RPI=αScos+(1-α)Smag (0<α<1)‥(141)。
【0051】
ペアリングの指標として、2つの指標、すなわち優先度指標PI(priority indicator)および決定指標DI(decision indicator)が求められる(図2/STEP25)。
【0052】
優先度指標PIは、異常類似度SabおよびRPI類似度SRPIに基づき、関係式(21)にしたがって定義されている。
【0053】
PI=Sab×SRPI ‥(21)。
【0054】
優先度指標PIは、異常類似度SabおよびRPI類似度SRPIの重み付き和として、関係式(211)にしたがって定義されていてもよい。
【0055】
PI=βSab+(1-β)SRPI (0<β<0.5)‥(211)。
【0056】
優先度指標PIは、RPI類似度SRPIの増加関数により定義されていてもよい。例えば、優先度指標PIは、関係式(212)にしたがって定義されていてもよい。
【0057】
PI=SRPI ‥(212)。
【0058】
決定指標DI(ぺア成立決定指標)は、異常類似度Sabの増加関数により定義されている。例えば、決定指標DIは、関係式(22)にしたがって定義されている。
【0059】
DI=Sab ‥(22)。
【0060】
優先度指標PIおよび決定指標DIに基づき、異常パネルのペアリング処理が実行される(図2/STEP26)。
【0061】
ここで、図9上段に示されているように、異常パネルP1~P5のRPIベクトルη1~η5が定義され、図9下段に示されているように、異常パネルP1、P2、P4およびP5のそれぞれの異常領域(白色領域)の配置パターンが求められている場合について説明する。
【0062】
この場合、図10(1)に示されているように、2次パネルペア候補(P1,P4)、(P1,P5)、(P2,P4)および(P2,P5)のそれぞれについて、異常類似度SabおよびRPI類似度SRPIが算出される。さらに、図10(2)に示されているように、優先度指標PIおよび決定指標DIが算出される。そして、図10(3)に示されているように、2次パネルペア候補(P1,P4)、(P1,P5)、(P2,P4)および(P2,P5)が、優先度指標PIが大きい(P2,P5)→(P1,P4)→(P2,P4)→(P1,P5)の順に優先度の高低が定められる。
【0063】
この状態で、まず、決定指標DIの閾値DIthが例えば「0.75」に設定されている状況で、優先度指標PIが高い順に異常パネル候補のペアリングが試行される。2次パネルペア候補(P2,P5)の決定指標DI(=1.0)は閾値DIth以上であるため、異常パネルP2およびP5がペアリングされる。異常パネルペア候補(P1,P4)の決定指標DI(=0.5)が閾値DIth未満であるため、異常パネルP1およびP4のペアリングが保留される。異常パネルペア候補(P2,P4)の決定指標DI(=1.0)が当該閾値DIth以上である。しかるに、異常パネルP2およびP4がペアリングされると、撮影画像img2において別個の異常パネルであるP4およびP5が同一パネルであるという矛盾した結果になるため、当該ペアリングは却下される。すなわち、同一の異常パネルがグルーピングされ、既存グループと矛盾するような後続のペア成立が制限されている。異常パネルペア候補(P1,P5)の決定指標DI(=0.5)が閾値DIth未満であるため、異常パネルP1およびP5のペアリングが保留される。
【0064】
続いて、決定指標DIの閾値DIthが例えば「0.50」に下げられ、この状況で、優先度指標PIが高い順に、ペアリングされていない異常パネル候補のペアリングが試行される。異常パネルペア候補(P1,P4)の決定指標DI(=0.5)が閾値DIth以上であるため、異常パネルP1およびP4がペアリングされる。異常パネルペア候補(P1,P5)の決定指標DI(=0.5)が当該閾値DIth以上である。しかるに、異常パネルP1およびP5がペアリングされると、撮影画像img1において別個の異常パネルであるP1およびP2が同一パネルであるという矛盾した結果になるため、当該ペアリングは却下される。
【0065】
これらの結果、異常パネルペア候補(P2,P5)および(P1,P4)がペアリングされて異常パネルペアとして定義される。撮影画像img1の異常パネルP2と撮影画像img2の異常パネルP4の異常類似度Sab(=IoU)が、本来同一である撮影画像img1の異常パネルP1および撮影画像img2のP4の異常類似度Sabよりも高い場合がある。しかるに、優先度指標PIが高い順にペアリングが試行されるので、異常パネルP1およびP4がペアリングされた後、異常パネルP2およびP4がペアリングされることが回避される。
【0066】
これにより、例えば、図11上段に示されているように撮影画像img1、img2およびimg3のそれぞれにおいて検出された異常パネルのそれぞれが名寄せされ、同一の異常パネルには同一のパネル識別子(異常ID)が割り当てられていることが検証された。図11下段に示されている、パネル識別子globalID「294」、「295」、「296」、「297」、「300」、「301」、「303」、「305」および「306」のそれぞれが付された異常パネルは、同一のパネルを指している。例えば「globalID5(from img1)とglobalID13(from img4)とglobalID129(from img28)が名寄せさせて1つの異常ID5となる。
【0067】
(作用効果)
本発明の名寄せ方法によれば、以下のような性質により誤認識が生じにくい。
【0068】
(1)異常類似度Sabがランダムな確率では高くなりにくい。
【0069】
(2)RPI類似度SRPIが異なる撮影画像の間で競争的な性質を有している。
【0070】
(3)信頼性の高いペアリングが優先的に実行され、信頼性の高いグループが序盤に形成される。
【0071】
(4)グループ間に矛盾が生じる後発ペアリングの成立が防止される。
【0072】
精度が高くなる条件は、異なる撮影画像においてオーバーラップしている領域が大きくなるように撮影されることがあげられる。
【0073】
誤認が生じる状況として、異なる2つのグループG1およびG2における全てのメンバーが第2指定距離(例えば、7.5m)以下の距離にある範囲に存在すること、同一の撮影画像においてグループG1およびG2のメンバーが共存しないこと、および/または、グループG1およびG2の中にDIの高い組み合わせが存在すること、が満たされる状況があげられる。
【0074】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、複数の撮影画像imgnの中から、代表点の距離(={(緯度偏差)2+(経度偏差)21/2)が第1指定距離(例えば、50m)以下である一対の撮影画像が撮影画像ペアとして抽出された(図2/STEP20参照)。他の実施形態として、オーバーラップ度合が指定度合以上である一対の撮影画像が撮影画像ペアとして抽出されてもよい。さらに他の実施形態として、代表点の距離とは無関係に撮影画像imgのすべての対のそれぞれにおける異常パネルPの対が「1次パネルペア候補」として特定されてもよい(図2/STEP21参照)。この場合、全ての異常パネルPの対を1次パネルペア候補とするには、単純に「別の画像のパネルPは全て該当」にするか「(対角成分を除いた)Bの上三角成分が全て1(True)のBを使う」。あるいは、C=A・tAとして、Cを「非」1次パネルペア候補(ペアとならない候補)として定義されてもよい。対象物同士の位置関係が類似している状況で適用が可能である。例えば「川を流れている対象物」または「ベルトコンベアー上の対象物」の名寄せが可能である。この場合、対象物の位置関係(RPI類似度)は緯度・経度ではなく、画像中の位置(xy座標)により定義されてもよい。
【0075】
前記実施形態によれば、指定属性として異常が存在する対象物としての太陽光パネル(異常パネルP)が名寄せ対象として抽出されたが、他の実施形態として、指定属性として「指定物品(または指定形状の物品)が装着されている」、「指定色(または色相)の部分を有している」などの属性を有する対象物としての車等の物体が名寄せ対象とされてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10‥名寄せ装置
20‥無人飛行機
22‥カメラ
P‥太陽光パネル(異常パネル)。
【要約】
【課題】複数の撮像画像のそれぞれに映り込んでいる太陽光パネル等の対象物が同一であるか否かの判定精度の向上を図りうる方法等を提供する。
【解決手段】複数の対象物(太陽光パネルP)が映り込んでいる対をなす各撮影画像から検出された指定対象物のペア候補が特定される。第1類似度に応じた順で当該ペア候補を構成する一対の指定対象物を対象として判定処理が実行される。「第1類似度」は、対をなす各撮影画像における一対の各指定対象物と、他の指定対象物との相対配置態様の類似度である。判定処理において、第2類似度が閾値以上であることを要件として、当該一対の指定対象物が同一の指定対象物であると判定される。「第2類似度」は、当該一対の各指定対象物の指定属性の類似度である。さらに、当該要件を満たす場合でも矛盾が生じる場合、当該一対の指定対象物が異なる指定対象物であると判定される。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12