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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ダイヤモンド基塊状工具素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 3/08 20060101AFI20240806BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20240806BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20240806BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20240806BHJP
   C04B 35/528 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B01J3/08 D
B23B27/14 B
B23B27/20
B23P15/28 Z
C04B35/528
B01J3/08 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020036521
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137715
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000147811
【氏名又は名称】トーメイダイヤ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520060818
【氏名又は名称】荒木 正任
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正任
(72)【発明者】
【氏名】細見 暁
(72)【発明者】
【氏名】石塚 良彰
(72)【発明者】
【氏名】石塚 博
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-322454(JP,A)
【文献】特開2003-095743(JP,A)
【文献】特開2011-046555(JP,A)
【文献】特開2019-189500(JP,A)
【文献】特開2001-240932(JP,A)
【文献】特開2003-147410(JP,A)
【文献】特開2013-115096(JP,A)
【文献】特開2006-026870(JP,A)
【文献】特開平02-199069(JP,A)
【文献】特開2019-006662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/08
B23B 27/14
B23B 27/20
B23P 15/28
C04B 35/528
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 質量比にて全体の35乃至90% のダイヤモンド粒子と、残部が炭化物を形成し得る結合材形成金属の粉末との混合粉末からなる出発材料を、爆縮加工容器に封入し、
(2) 上記容器を衝撃超高圧に供して出発材料全体を理論密度の90%以上の密度とし、
(3) 次いで内容物を含んだままの容器を800℃以上1800℃以下の加熱温度に保持して熱処理する
ことにより、ダイヤモンド粒子表面及び衝撃加圧によって新たに生じた粒子表面を、熱処理においてその場で生成した金属炭化物を介して結合一体化する、
ダイヤモンド基塊状工具素材の製造方法。
【請求項2】
前記出発材料がさらに、予め形成された結合材形成金属種のホウ化物、窒化物、炭化物、酸化物から選ばれる一種類以上を含有する、請求項1に記載のダイヤモンド基塊状工具素材の製造方法。
【請求項3】
前記結合材形成金属種がSi、Ti、Zr、Hfから選ばれる一種類以上を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記衝撃超高圧が1GPa以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記爆縮加工容器が軸方向に延伸した筒状であり、出発材料は該容器の外周に沿って配置した爆薬の爆轟(爆発)によって半径方向及び軸方向に加圧される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記爆縮加工容器の軸に垂直な断面が円形又は多角形である、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項7】
出発材料を爆縮加工容器内に収納して対向する一対の平板間に挟装乃至封入し、該平板の一方または両方の背面で爆薬を爆発させることによって出発材料を衝撃圧縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
出発材料を複数個の爆縮加工容器内に収納して、対向する一対の平板間に積層挟装し、平板の背面で爆薬を爆発させて出発材料を衝撃圧縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記爆縮加工容器の軸上に耐圧性の板状体を配置し、爆薬の爆発によって該板状体を軸方向に高速で飛翔移動させて出発材料を加圧する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料が粉末の成形体であり、該成形体の軸方向に垂直な断面が軸に沿って変化している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱温度が1000℃以上1500℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記出発材料を成形された支持材原料と隣接して容器内に配置し、爆薬の爆発による衝撃負荷によって両者を接合する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記支持材原料が超硬合金組成の混合粉末成型体である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成成分であるダイヤモンド粒子同士及び遷移金属炭化物が互いに強固に結合・一体化された、高硬度の塊状工具素材に関する。
【0002】
本発明は特にダイヤモンド粒子同士が周期表第4族、5族、6族、から選ばれる1種又は複数種の金属の炭化物の介在により、以て遷移金属炭化物とダイヤモンドとの強力な親和性によって強力に接合された硬質焼結材に関する。本発明はまたダイヤモンド粒子同士が周期表第4族、5族、及び6族から選ばれる1種又は複数種の金属の炭化物あるいは鉄族金属の介在により、かかる化合物の電気的性質に基づいて適度の導電性乃至比抵抗を呈する硬質焼結材にも関する。
【0003】
本発明は同時に、かかる焼結材の製法、特に硬度及び耐熱性の優れた切削工具要素として、鉄系金属材を始め多様な材種の加工に適用可能で、また幅広い分野の切削、研削・研磨加工に使用可能なダイヤモンド基塊状工具素材集合体及びその製造方法に関する。
【0004】
本発明は硬度及び耐熱性に加えて、さらに放電加工による加工性の優れた切削工具要素として、現行の工具製作方式を用いることができるダイヤモンド基塊状工具素材集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0005】
硬度が高く耐摩耗性に優れた研磨材である粉状ダイヤモンドを結合させた焼結体が切削工具のチップ等の製作に利用されてきた。このような焼結体はダイヤモンド多結晶体(PCD)とも呼ばれ、一般には超高圧高温下でコバルト(Co)を溶融してダイヤモンド粉末間に流入させ、融液相を介した溶解・析出作用によってダイヤモンド粉末の一体化が行われている。得られる焼結体内にはコバルトが閉じ込まれていることから導電性があり、切削工具などの製作に際しては面出し、切断などの工程に放電加工方式を用いることで、生産性を高めることが可能である。
【0006】
しかしながら結合材のコバルトは700℃位からダイヤモンドをグラファイト化させる触媒として作用し、温度上昇に伴ってこの作用が顕著になるので、切削時の発熱による高温条件下での使用が困難という耐熱性の問題があった。また、ダイヤモンド自体、鉄との反応性があるという問題もある。従ってダイヤモンドに内包されるこれらの問題を克服し、極めて硬いダイヤモンドの特性が発揮できる切削チップ材として、鉄系材質の切削にも適用可能なダイヤモンド質塊体の開発が望まれている。
【0007】
コバルト等の鉄族金属を使用せずにダイヤモンド多結晶体(塊体)を調製する方法は公知である。例えば結合材として4a、5a、6a族遷移金属粉末とダイヤモンド粒子とからなる混合物を加圧、焼成し、金属炭化物を介して一体化されたダイヤモンド焼結体が知られている。
【0008】
特許文献1(特開昭51-735112)の方法においては、ダイヤモンド粉体とチタン、ジルコニウム等の金属粉体とを混合し、ダイヤモンド安定領域の高圧・高温条件で金属を溶融し、ダイヤモンドとの反応によって生成した金属炭化物を介してダイヤモンド粉体を固結(焼結)する方法が示されており、焼結温度として最高1950℃の記載がある。
【0009】
また特許文献2(特開平5-194032)の方法では、 ダイヤモンド粉末とチタン、ジルコニウム等の金属粉末とを混合し、1700~1900℃に加熱してダイヤモンド表面に金属を分散させ、次いで2000℃以上に加熱して金属をダイヤモンドとの反応による炭化物に変える方法が示されている。
【0010】
さらに特許文献3(特開平8-176696)においては、ダイヤモンド粒子とチタン、ジルコニウム等の遷移金属粉末とを混合し、1300~1500℃の温度に加熱して、ダイヤモンドと金属との固相反応で生じた金属炭化物中にダイヤモンド粒子が分散固定された複合焼結体の製造方法が開示されている。
【0011】
上記各公知技術においては、いずれも粉状ないし粒状のダイヤモンドを、結合材と共にカプセルへ充填し、グラファイトからダイヤモンドを得る際に用いられるのと同様の高圧・高温装置内に収容し、超高圧-高温を付加する、静的高圧・高温処理によって一体化した焼結体を得る操作によって製造されている。
【0012】
従って焼結原料のダイヤモンドに、焼結に必要な1000℃を超える高温と、その温度においてダイヤモンドが熱力学的に安定相として存在しうる5GPa以上の高圧力とを一定時間同時に加えることが要求される高圧・高温装置は、処理容積に制限があり、被処理焼結材料の寸法、数量が限られることから、生産性の向上が困難である。
【0013】
加えて焼結に用いられる高圧・高温装置は、耐久力の限界に近い条件で繰り返し高い圧力と温度とが付加されることから寿命が短く、高価な装置の短寿命が製品コストを高める要因の一つとなっている。
【0014】
高圧・高温装置を用いる静的手法に固有の上記諸問題、特に処理サイズの制限、製造装置の短寿命に伴うコストアップを回避する手法として、爆発衝撃或いは衝撃的加圧を用いる動的高圧・高温処理方法による焼結体の製造が試みられてきた。しかし高い衝撃圧力による出発材料の混合粉末の緻密化は達成されるものの、粉末同士を結合させて一体化した焼結体を得ることは出来なかった。
【0015】
この理由としては、爆発衝撃を付加する動的加圧方式における、有効加圧付加時間がマイクロ秒のごく短時間であり、断熱圧縮によって一瞬温度も上昇するが、圧力の低下と共に温度も低下することから、溶融や拡散による粉体粒子の接合には至らなかったと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開昭51-735112号公報
【文献】特開平5-194032号公報
【文献】特開平8-176696号公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】R. G. McQueen 他 (1970) "The equation of state of solids from shock wave studies" in High-Velocity Impact Phenomena (ed. R. Kinslow) Academic Press、 New York、 pp. 293-300.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、従来の静的及び動的手法に基づく高圧・高温工程に伴う上記の各問題、特に製品サイズについての制限を排除し、あらゆるサイズ・形状のダイヤモンド焼結体の製造を可能とする、画期的な手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明においては、焼結体の製造工程を前段と後段とに分割し、前段工程において動的加圧方式による出発材料としての混合粉末の緻密化を行い、後段工程で、前段で緻密化された混合粉末の加熱処理によって混合粉末間の接合を実施する。このように加圧処理と加熱処理とを別工程で実施することによって、ダイヤモンド焼結体の大型品の製作、多量処理を可能とし、高価な静的高圧・高温装置が不要となることによるコストダウンも含めて、低価格のダイヤモンド焼結体の供給を可能にすることとした。
【0020】
本発明品は、衝撃超高圧により出発材料が理論密度の90%以上に圧縮され、さらに加熱処理が施された固結体であって、35乃至90質量%のダイヤモンド粒子を含有する。該ダイヤモンド粒子は、実質的に結合材形成金属との反応によって形成される、金属炭化物を介して結合一体化され、高靭性のダイヤモンド基塊状工具素材となる。
【0021】
前記塊状工具素材は、以下の方法により達成される。即ち、
(1)ダイヤモンド粒子が質量比にて全体の35乃至90%、残部が炭化物を形成し得る結合材形成金属の粉末である出発材料を爆縮加工容器に封入し、
(2) 上記容器を衝撃超高圧に供して全体の理論密度の90%以上の密度とし、
(3) 次いで加熱温度に保持して熱処理する
ことにより、ダイヤモンド粒子表面と、衝撃加圧によって新たに生じた粒子表面とを、熱処理においてその場で生成した金属炭化物を介して結合一体化する。
【発明の効果】
【0022】
即ち本発明においては、1GPa以上の爆発衝撃或いは衝撃的加圧を出発材料の混合粉末に加えて高密度体とし、これを800℃から1800℃、好ましくは1000℃から1500℃の温度に加熱維持する。この操作によって出発材料中のダイヤモンド粉末に添加混合されているSi、ならびに周期表4a、 5a、 6a族金属から選ばれる一種類以上の結合材形成金属、および/または予め形成された結合材形成金属種の炭化物、ホウ化物、窒化物、酸化物のセラミックスから選ばれる一種類以上、特にSi、Ti、Zr、Hfから選ばれる一種類以上の金属等のダイヤモンド粉末粒子間への拡散、濡れを促進し、ダイヤモンド粒子との化学結合、融液相の出現による粒子の再配列等により、緻密一体化した焼結体が得られる。
【0023】
本発明において、ダイヤモンドと金属等、或いは金属等同士の結合機構は、ダイヤモンド粉末粒子間への固相または液相金属の拡散、濡れによって生じた化合物を介した接合と考えられる。また、出発材料の混合粉末に爆発衝撃を加えるため、必然的に高硬度脆性材料であるダイヤモンド等に亀裂が入るが、加熱によって金属等が亀裂の間隙に入り込み、接合して亀裂を埋めるため、本来のダイヤモンド等の表面積より広い面積でダイヤモンド粒子等を接合することとなり、高い強度が得られる。
【0024】
また、ダイヤモンドは高硬度である反面、衝撃によって破砕され易いという脆い性質があるが、硬度はダイヤモンドより低いものの、高い靱性を有するセラミックスによって結合されるため、圧縮後の加熱処理によって得られたダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンドのみからなる焼結体よりも高い靱性を有している。
【0025】
出発材料中に添加される予め形成された結合材形成金属種の炭化物、ホウ化物、窒化物、酸化物等のセラミックスは、ダイヤモンド粒子との直接結合は期待できないものの、結合相の物性改善、特に靭性付与への寄与という効果が期待できる。
【0026】
出発材料の緻密化を達成するために加えるべき爆発衝撃或いは衝撃的加圧を1GPa以上と規定する理由は、経験的に1GPa未満では必要な密度まで圧縮することができないためである。
【0027】
爆薬によって生じる爆発圧力は数式1)から算出される。
P= ρ0DUp・・・・・・・・・・ 1)
ここで、Pは爆発圧力、ρ0は充填時における爆薬の密度、Dは爆発速度、Upは爆発生成物の流速である。
【0028】
p = D/4 ・・・・・・・・・・・ 2)
で近似できることが知られているので、数式1)は次式に変形することができる。
P= ρ02/4 ・・・・・・・・・・ 3)
【0029】
高速で衝突する金属体が金属容器に負荷する圧力は、金属体と、爆縮加工容器を構成する金属材が等しい場合、次式から求められる。
P= ρ0sp ・・・・・・・・・・ 4)
p = Ufs/2 ・・・・・・・・・・ 5)
ここでUfsは衝突速度である。
【0030】
衝突速度Ufsの測定は比較的容易であるが、衝撃波速度Usの測定は困難である。そこで、例えば金属容器と衝突する金属体の材質が等しく鋼である場合、UsとUpとの関係は知られていて、
s = 3.574 + 1.920Up - 0.068Up 2 ・・・・・・・・・・ 6)
上記においてUsとUpとの単位はkm/sである。
【0031】
金属容器と金属体の材質とが鋼以外であったり、異なる材質のものが衝突する場合に発生する圧力の計算方法は、非特許技術文献1によって求めることができる。
【0032】
本発明によってダイヤモンドと金属等からなる粉体の混合体(以後混合体)を衝撃によって圧縮し、構成材料の密度を集計した値の90%を超える密度にまで圧縮する必要がある理由は、それ以下の密度では、熱処理によってダイヤモンドと金属等とを一体に接合しても、ダイヤモンドを含む高硬度焼結体としての必要な硬度と強度とが得られないためである。
【0033】
圧縮された状態での密度の計算方法としては、構成する材料の理論密度を集計した密度と圧縮されて一体となった材料の密度との比を用いる。現実には、セラミック材料の理論密度と現実の密度とは、そのセラミックを構成する実際の原子比率が理論原子比率から多少異なるため僅かに異なるが、実用上の問題はないため、計算には各材料の理論密度を用いる。
【0034】
以下、本発明によってダイヤモンド等を含む高硬度焼結体を製造する方法の形態を添付図面1~3に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第一の実施例においてい、立体形状の焼結体物品を同時に多量製造するための構成例を示す縦断面図である。
図2図1の構成を収容して爆発衝撃圧縮加工を実施するための爆発構成の概略を示す縦断面図である。
図3】本発明の第二の実施例において、従来の静的高圧装置では製造不可能な大面積の板状焼結体材を製造するための構成例を示す、下記図4のB-B面における縦断面図である。
図4】上記図3のA-A面における平面断面図である。
図5】本発明の第三の実施例において、爆発圧力によって飛翔する金属板の衝撃によって出発材料の混合粉末等を加圧するための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図において参照符号11はダイヤモンドを含む出発材料の混合粉末成型体部を示し、また12はダイヤモンド焼結層に隣接して配置され、これを補強する支持材原料の粉末成型体部をそれぞれ示し、支持材料原料としてはWC-Co系超硬合金、各種のサーメット原料の粉末を用いることが可能である。
【0037】
両粉末は予め金型成形により一体の複合成形体13として、グラファイト製の型14に収納し、爆縮加工容器15に充填して、同時に圧縮・焼結の操作が加えられ、強固に接合した一体品(複合材)として取り出される。上記複合成形体は単独、または図1に示すように複数個を例えば円筒形の金属容器内乃至爆縮加工容器15内に並置して同時に処理し、多量生産を図ることが可能である。
【0038】
複数個のグラファイト製の型14に収納した複合成形体を爆縮加工容器に充填する際には、隣接グラファイト製型の間に、相互の接合を防止する目的で分離材16を板状、または層状で配置するのが効果的である。分離材としてはグラファイト、六方晶系窒化ホウ素、セラミック粉末など、本発明の操作において焼結しない耐熱材料を用いることができる。
【0039】
爆縮加工容器の両端は金属製の栓17、18で閉鎖して内容物を密封し、さらに栓の内側には衝撃加圧の際に金属栓17、18から内容物への影響を防止するために緩衝材19、20が配置されており、これは上記分離材16と同じ材質を用いることができる。
【0040】
複合成形体を収容した金属容器はさらに爆縮加工のために金属、プラスチック、紙などで形成された爆薬容器21に入れ、周囲に爆薬22が充填される。爆薬は所要の加圧力に応じて、ダイナマイト、ANFO(アンホ=硝安油剤爆薬)、化合爆薬など、爆薬の全ての種類及びグレードが適宜選択使用される。容器21には起爆用の電気雷管23が、また爆縮加工容器内を排気するための真空引きパイプ24が連結されている。
【0041】
図3及び4は出発材料のダイヤモンド含有混合粉末成型体を平面方向に加圧するための配置図であって、衝撃加圧用の対向する金属平板33、34の間に出発材料の混合粉末成型体31を型枠内に装填し、爆薬を配置した状態を示している。金属製型枠32の厚み方向に切り取った空間内に平板状の出発材料の混合粉末成形体31を充填し、その上下両面に出発材料と同サイズの加圧用の金属平板33、34をグラファイトシート35、36を介して積層し、金属製の型枠32上下面を金属同士の爆着防止を兼ねた緩衝材(例えばグラファイトシート)37、38で覆って外側に衝撃加圧板39、40を配置する。なお型枠32の側面にも緩衝・分離材41を配置するのが好ましい。
【0042】
この構成をグラファイトシートを挟んで複数段(図では二段)積み重ね、全体を気密性のプラスチック袋42中に収め、真空引きパイプ43を介して袋内を十分に排気してから、パイプを圧し潰して真空密封する。これを爆薬容器44に充填した爆薬45で挟み、起爆用の電気雷管46を取り付ける。
【0043】
図5の構成例においては、爆薬容器51に充填された爆薬52の爆発によって、爆薬の下面に置いた金属飛翔板53を高速で飛翔させ、出発材料の混合粉末成型体54を収納した金属製受台55の金属製蓋56に衝突させて衝撃圧力を負荷させる。爆薬容器51及び飛翔板53は紙等の筒体57によって支持され、電気雷管58によって起爆される。
以下実施例によって本発明の実施態様を説明する。
【実施例1】
【0044】
図1及び2に示すビット部材の製作を行った。出発材料を収容するグラファイト製の型は外径25.5mm、長さ30mmであって、型の内寸は円筒部の直径20mm、長さ17mm、半球部は長さ10mmであり、負荷が加わる先端部はダイヤモンド-TiC系材料、支持材の円筒部はWC系材料とした。
【0045】
先端部材料の混合粉末として、質量%において平均粒径12μmのダイヤモンド(IRM 8-20、トーメイダイヤ(株)製):50、平均粒径2μm以下のTiC粉 (TiC1-2、日本新金属(株)製):45、平均粒径4μmのカルボニルニッケル粉(T123、Vale社製):5を秤取し、アセトンを用いた湿式ボールミルで2時間混合し、600℃2時間の真空乾燥で調製した。支持材の円筒部材料の混合粉末は、WC粉87質量%と、Co粉13質量%とを湿式ボールミルで2時間混合し、600℃、2時間の真空乾燥で調製した。
【0046】
グラファイト型の内寸と同じ金属製の金型を用意し、型の先端半球部にダイヤモンド含有混合粉末6.0gを突き固めて充填し、次いでWC系材料54gを充填し、理論密度の70%まで加圧成型した。
【0047】
爆縮加工用鋼管は外径30.0mm、内径26.0mm、長さ250mmであって、成型品6ケを鋼管の軸心に直列に配置した。両端に9mmのアルミナ層を挟んで鋼栓で封じ、真空引き銅管経由で排気し、鋼管内を真空密封した。なおアルミナ層に接する円筒部の底については、0.5mmのグラファイトシートを介して厚さ1.6mmの軟鋼板で仕切った。
【0048】
この爆縮加工用鋼管を紙筒に収容した外径120mm、長さ330mmの爆薬筒の軸心に設置した。爆薬は粉状で、電気雷管により起爆したところ、爆発速度2340m/sで爆発した。爆薬の充填密度は0.92g/cm3であって、数値を数式3)に当てはめると、爆発圧力の概算値は1.26GPaに相当した。
【0049】
爆発処理後に回収した金属管の鋼栓部分以外の外径は、平均で27mmに収縮していた。内容物を含んだままの金属管を、加熱炉で1350℃に加熱し、2時間保持してから1時間かけて徐冷し、旋盤旋削によって爆縮加工用鋼管を取り除いた。
【0050】
取出した焼結品は直径が約17mm、 全長約26mm、対理論密度約96%の緻密品であった。円筒部の外周を芯無し研削によってφ16mmに研磨仕上げし、実用に供することができた。
【実施例2】
【0051】
図3及び4に示す形状の構成で平板状の焼結体2組を製作した。第一の組として、平均粒径70μmのダイヤモンド粉 (IMS 200/230、トーメイダイヤ(株)製): 49質量%、平均粒径3.5μmのダイヤモンド粉(IRM4-6、トーメイダイヤ(株)製):21 質量%、粒径1μm以下のシリコン粉(高純度化学製品を粉砕)30質量%、を秤取し、平均厚さ6mm、幅39mm、長さ79mmにプレス成形し、充填密度が理論密度に対して75%の混合粉末成型体とした。
【0052】
第二の組は平均粒径9μmのダイヤモンド粉(IRM8-16、トーメイダイヤ(株)製):50 質量%、平均粒径平均粒径2μm以下のTiC粉 (TiC1-2、日本新金属(株)製):40質量%、粒径1-2μmのMo2C粉(日本新金属(株)製):5質量%、平均粒径4μmのカルボニルニッケル粉(T123、Vale社製):5質量%の混合粉とし、第一の組と同様に平均厚さ6mm、幅39mm、長さ79mmにプレス成形し、充填密度が理論密度に対して72%の混合粉末成型体を作製した。
【0053】
衝撃加圧用の金属製型枠は、幅55mm、長さ90mm、厚さ8mmであって、内部に設けた幅40mm、長さ80mmの切り取り部分に混合粉末成型体を収納し、上下に同寸法で厚さ0.5 mm のグラファイトシートを介して、当て板として2mmの軟鋼板を嵌め込んだ。この当て板の上下に厚さ3mmで型枠と同寸法のグラファイトシートを置き、厚さ3.2mmの衝撃加圧用軟鋼板で挟んだ。
【0054】
上記のように構成した2組の組み立て体を、厚さ6 mmのグラファイトシートを挟んで積み重ね、全体をプラスチック袋に収容し、真空引き用パイプ経由で排気し、袋内を真空密封した。
【0055】
以上の構成の上下面に厚さ25mmの膠質ダイナマイトを設置し、一端から電気雷管により起爆した。その際の爆発速度は4100m/sであり、爆薬の密度は1.38g/cm3、発生圧力は数式3)から5.8GPaと推定された。2組の組み立て体は境界部のグラファイトシートの箇所で分離してそれぞれ回収された。
【0056】
爆縮工程からの上記回収物は水素雰囲気中において、第一の組み立て体は1450℃、第二の組み立て体は1300℃にそれぞれ2時間加熱し、放冷して100℃以下で取り出した。焼結層を両面から挟んでいる軟鋼板を研削によって除去し、加圧の際に生じた若干の波うちを研削によって平坦化し、厚さ4mm、幅41mm、長さ82mmの平板を得た。
【0057】
この平板からワイヤーカットにより、所望の形状、サイズの切削チップ素材を切り出すことができた。
【0058】
平板のマイクロビッカース硬度は、中央部と周辺部との10点ずつの測定の結果、第一の組み立て体は37~39GPa、第二の組み立て体は40~42GPaの範囲に収まり、実用上問題ないことが確認された。
【実施例3】
【0059】
図5に示す構成の衝撃加圧方式を用いて焼結体を製造した。
内径20mm、高さ40mmの紙製円筒を爆薬容器として用いた。粉状爆薬14gを収納し筒の底部に、厚さ2mm、直径20mmの銅円板を配置した。出発材料は混合粉末を直径18.9mm、厚さ6mmの円板状のペレットに成型して、直径30mm、 高さ13mm の鋼製受台の中央に設けた深さ8mm、直径20mmの窪みに充填した。ペレットの周囲には周壁及び底面との間に厚さ0.5mmのグラファイトシートを敷いた。窪みは銅円板の蓋で覆った。
【0060】
出発材料としての混合粉末は下記素材を用いて調製した。
ダイヤモンド : 平均粒径12μm (IRM 8-20、トーメイダイヤ(株)製)
Si : 粒径 1μm以下 (高純度化学製品からの粉砕品)
Ti : 粒径 45μm以下 TSPT ((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製)
Zr : 粒径 45μm以下 試薬
Hf : 粒径 45μm以下 試薬
Nb : 粒径 45μm以下 試薬
Ta : 粒径 45μm以下 試薬
TiC : 平均粒径 2μm以下 (TiC1-2、日本新金属(株)製)
TaC: 平均粒径2μm (日本新金属(株)製)
TiN : 平均粒径2μm (TiN-02、日本新金属(株)製)
TiB2: 粒径2.5~45μm (TiB2-N、日本新金属(株)製)
ZrO2: 粒径10μm以下 (福島製鋼(株)製)
【0061】
上記構成において、電気雷管への通電によって粉状爆薬を爆発させ、爆薬容器底部の銅製の飛翔円板を推進、秒速420m/sで混合体を覆う銅円板の蓋に衝突させた。衝突によって発生した圧力は、数式4)、1)及び6)に基づく算出の結果、7.98GPaと見積もられた。銅円板で覆われた部分は、衝突圧力によって鋼製受台の窪み内部に沈み込んでいた。
【0062】
回収された被処理物をそのまま、窒素雰囲気中で1350℃に加熱し、2時間半保持してから炉中で徐冷し、取り出して旋削によって焼結した混合体を取り出した。混合体の外周から約2mmを研削によって除去し、上下面も平滑に仕上げて、直径16mm、厚さ4mmの強固な焼結体を得た。得られた各焼結体のビッカース硬さを、出発原料の配合比と共に表1に示す。
【0063】
【表1】
【符号の説明】
【0064】
11出発材料混合粉末成型体部
13 複合成形体
14 グラファイト製型
15 爆縮加工容器
16 分離材
17、18 金属製の栓
19、20 緩衝材
21 爆薬容器
22 爆薬
23 電気雷管
32 金属製型枠
33、34 金属平板
35、36 グラファイトシート
37、38 爆着防止を兼ねた緩衝材(例えばグラファイトシート)
39、40 衝撃加圧板
41 緩衝・分離材
42 プラスチック袋
44 爆薬容器
45 爆薬
46 電気雷管
51 爆薬容器
52 爆薬
53 金属飛翔板
54 混合粉末成型体
55 金属製受台
56 金属製蓋
57 紙等製筒体
58 電気雷管
図1
図2
図3
図4
図5