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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】神経疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/473 20060101AFI20240806BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/473
A61P1/04
A61P3/00
A61P3/10
A61P5/00
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P19/08
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/28
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021547037
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2019056998
(87)【国際公開番号】W WO2020081975
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】62/747,961
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521161705
【氏名又は名称】アクリプス ワン インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507330176
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シェフィールド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ニン
(72)【発明者】
【氏名】ショー,パメラ ジーン
(72)【発明者】
【氏名】オゴエ,クロード
(72)【発明者】
【氏名】フェライウォーロ,ローラ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506410(JP,A)
【文献】BioMed Research International,2014年,Vol.2014, Article ID 852163,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胞におけるミスフォールドしたCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)の蓄積を減少させる方法における使用のための組成物であって、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含み、前記方法は、前記細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む、組成物
【請求項2】
胞におけるミスフォールドしたCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)の蓄積を減少させるための組成物であって、有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む、組成物
【請求項3】
前記細胞が、副腎、骨髄、脳、乳、気管支、尾状核、小脳、大脳皮質、頸部、子宮、結腸、子宮内膜、精巣上体、食道、卵管、胆嚢、心筋、海馬、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、鼻咽頭、口腔粘膜、卵巣、膵臓、副甲状腺、胎盤、前立腺、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸十二指腸、空腸腸、平滑筋、脾臓、胃、精巣甲状腺、扁桃腺、膀胱、または膣のうちのいずれか1つ以上から選択される組織に由来する細胞である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
記細胞が、大脳、小脳、間脳、または脳幹から選択される脳組織に由来する脳細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物
【請求項5】
前記脳細胞が、ニューロン、星状細胞、希突起膠細胞、またはミクログリアから選択される、請求項に記載の組成物
【請求項6】
前記ニューロンが、感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、または脳ニューロンである、請求項に記載の組成物
【請求項7】
前記細胞が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)またはパーキンソン病(PD)を有する動物に由来する罹患した細胞である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物
【請求項8】
記有効量が、少なくとも0.12mg/kgである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物
【請求項9】
記有効量が、5mg/日~5000mg/日である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物
【請求項10】
口投与により投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物
【請求項11】
経口投与用に製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
皮下投与用に製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月19日出願の米国特許仮出願第62/747,961号の利益を主張するものであり、その仮特許出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)タンパク質のミスフォールディング、または運動ニューロンの生存に影響を与える星状細胞毒性に関連するメカニズムによって媒介される疾患の治療のための治療剤および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、HGNC:7782https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/4780UniProtKB-P00441(SODC_HUMAN)は、細胞、より具体的には、細胞質ゾル、核、ミトコンドリア、およびペルオキシソーム中に見られる32kDaの遍在的に発現される酵素であり、これは有毒なスーパーオキシドアニオンを酸素および過酸化物に変換する。
【0004】
変異型SOD1酵素、および機能不全のタンパク質恒常性ネットワーク(PN)は、例えば、環境要因、遺伝子変異/変異タンパク質、および加齢により、SOD1酵素のミスフォールディングを引き起こす。SOD1酵素の持続的なミスフォールディングは、SOD1がスーパーオキシドを不均化する能力を阻害し、このため細胞中のスーパーオキシドの蓄積を増加させ、これが酸化ストレスを引き起こす。ユビキチンプロテアソームシステムおよび/またはオートファジーのいずれによっても除去されない、最終的にミスフォールドし凝集したSOD1は、最終的に細胞プロセスに重要なタンパク質を隔離し、PNを維持するシャペロンを共隔離し、細胞内輸送をかき乱し、細胞膜の完全性を混乱させる。
【0005】
したがって、異常なミスフォールディングをする、最終的にミスフォールドした、および凝集したSOD1は、脂質膜、タンパク質、および核酸を損傷する酸化ストレスを増強し、細胞の変性を促進し、最終的に細胞死を引き起こす。
【0006】
ミトコンドリア機能障害に起因するミトコンドリア病は、酸化ストレスをもたらす活性酸素種(ROS)の形成を増加させる。ROSの過剰な生成は、ミスフォールドしたSOD1を悪化させ、それは過剰なスーパーオキシドを不均化するSOD1の能力を弱める。これは最終的に、機能不全のミトコンドリアプロセス、ミトコンドリアの変性およびミトコンドリア死につながる。
【0007】
ミトコンドリア病としては、リー脳症、Alpers-Huttenlocher症候群、小児ミオセレブロヘパトパシースペクトル(Childhood myocerebrohepatopathy spectrum)、運動失調ニューロパチースペクトル、ミオクローヌスてんかんミオパチー感覚性運動失調、センジャーズ症候群、MEGDEL症候群(難聴を伴う3-メチルグルタコン酸尿症、脳症およびリー様症候群としても公知である)、ピアソン症候群、先天性乳酸アシドーシス(CLA)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)症候群、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経性筋力低下、運動失調および網膜色素変性症(NARP)、慢性進行性外眼筋麻痺症(CPEO)、ミトコンドリア神経胃腸管性脳症(MNGIE)症候群、一過性脳虚血発作、虚血、脳出血、老人性白内障、網膜虚血、網膜血管炎、Brown-Vialetto-Van Laere症候群、イールズ病、髄膜炎および脳炎、心的外傷後ストレス障害、シャルコー・マリー・トゥース病、黄斑変性症、X連鎖性筋萎縮症、初老期認知症、うつ病性障害、側頭葉てんかん、脆弱X症候群、マチャドジョセフ病、レーベル遺伝性視神経症、脳血管事故、くも膜下出血、ならびに統合失調症が挙げられる。SOD1経路中の薬理学的介入は、SOD1タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積、およびSOD1タンパク質の凝集を伴う疾患における治療的介入の有望な手段である。SOD1のミスフォールディングを減少させる治療法は、SOD1経路が関与する疾患において根底にある疾患プロセスを遅延させる、停止させる、または逆転させる可能性のある新規治療戦略を表す。
【0008】
近年、隣接するグリア細胞が非細胞自律プロセスを介して運動ニューロンの変性に寄与することがわかった。健康な運動ニューロンは、キメラSOD1マウスモデルにおいて変異SOD1を発現する非ニューロン細胞に囲まれる場合、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病理に典型的な特徴(すなわち、ユビキチン化封入体)を発達させる。変異SOD1病理がミクログリアから排除された場合、疾患の進行が50%遅延した。星状細胞における変異SOD1の標的発現は、ALS表現型をもたらさないが、変異遺伝子のサイレンシングは、疾患の進行を遅延させる。変異SOD1を発現する初代星状細胞は、周囲の運動ニューロンに対して毒性作用を有しており、このことは、星状細胞がこの毒性を物理的に発揮しているか、または運動ニューロンを効果的にサポートできないことを示している。ALS患者集団に非常に関連性があるのは、同じ毒性/非支持的特性が、いかなる変異も保持せず散発性ALSを発症する患者において見られることである。世界のALS症例の90%以上が散発性である。
【0009】
変異SOD1マウスモデルおよび、より近年、SOD1がミスフォールドした形態で検出された、散発性患者に由来する星状細胞を使用して発見された、星状細胞毒性のいくつかの潜在的なメカニズムがある。星状細胞からの馴化培地が運動ニューロンの喪失を誘発するという発見は、星状細胞が毒性因子を分泌するという考えに至った。いくつかの研究は、これらの分泌された毒性因子を特定することを試みた。一方、他のエビデンスは、星状細胞が代わりにサポートの欠如を通じて毒性を発揮する可能性があることを示唆した。ALS星状細胞と共に培養された運動ニューロンにおけるBCL2関連Xタンパク質(BAX)などのアポトーシス促進因子の活性化、ALS星状細胞からの活性酸素種の制御されない放出、および過興奮をもたらす不十分なイオン恒常性はすべて、星状細胞によって放出される潜在的な因子である。星状細胞は、運動ニューロンに乳酸塩などの代謝基質を提供できず、また、シナプスグルタミン酸などの毒性傷害およびプロNGF-p75シグナル伝達経路の活性化からの保護が不十分である。運動ニューロンとクロストークする複数の星状細胞経路において観察される異常な挙動も存在し、この毒性が生理学的機能の喪失および毒性機能の獲得の両方の結果であることを示唆している。
【0010】
上に示したとおり、星状細胞は、神経機能および生存に影響を与える一連の毒性メカニズムに寄与している。したがって星状細胞の毒性を減少させ、特に神経変性疾患を標的とする薬物開発において、運動ニューロンなどの細胞の生存を改善するための努力が払われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在承認されている(6aR)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールのエナンチオマーである、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは、弱いドーパミン拮抗薬であり、投与後にドーパミン作動薬に関連する副作用を呈しない。(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(S-(+)-10,11-ジヒドロキシアポルフィンとしても公知である)は、次の化学構造によって表される:
【化1】
【0012】
本発明は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールが、SOD1タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積、およびSOD1タンパク質の凝集を有意に減少できることを実験的に実証した。
【0013】
(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させるための、SOD1タンパク質のミスフォールディングを阻害するための、ミスフォールドしたSOD1を再度折り畳むための、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積を減少させるための、SOD1タンパク質の凝集を減少させるための、および細胞中の最終的にミスフォールドしたおよび/または凝集したSOD1を取り除くための方法で使用され得る。(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは、SOD1タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積、およびSOD1タンパク質の凝集により媒介される疾患を治療するための方法でさらに使用され得る。
【0014】
一態様では、本発明は、細胞中のミスフォールドしたSOD1のレベルを減少させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0015】
一態様では、本発明は、細胞中のミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積を減少させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0016】
一態様では、本発明は、細胞中のSOD1タンパク質の凝集を減少させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果または結果をもたらす量、例えば、ミスフォールドしたSOD1レベルの減少、ミスフォールドしたSOD1の蓄積の減少、および/またはSOD1タンパク質の凝集の減少をもたらす量を意味する。
【0018】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0019】
別の態様では、本発明は、SOD1タンパク質ミスフォールディングの頻度、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させ、細胞中の最終的にミスフォールドしたおよび/または凝集したSOD1タンパク質を除去する方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0020】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0021】
別の態様では、本発明は、細胞の寿命を延長させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0022】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0023】
一実施形態では、上記の態様の1つ、または本明細書の他の態様の細胞は、副腎、骨髄、脳、乳、気管支、尾状核、小脳、大脳皮質、頸部、子宮、結腸、子宮内膜、精巣上体、食道、卵管、胆嚢、心筋、海馬、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、鼻咽頭、口腔粘膜、卵巣、膵臓、副甲状腺、胎盤、前立腺、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸(十二指腸、空腸および回腸など)、平滑筋、脾臓、胃、精巣甲状腺、扁桃腺、膀胱および膣の1つ以上のいずれかから選択される細胞型であるまたは組織由来である。さらなる実施形態では、脳細胞は、大脳(大脳皮質、大脳基底核(多くの場合、線条体と呼ばれる)、および嗅球など)、小脳(歯状核、介在核、固定核、および前庭神経核など)、間脳(視床、視床下部など、および下垂体の後部)、ならびに脳幹(橋、黒質、延髄)ら選択された脳組織に由来する。さらなる実施形態では、脳細胞は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、星状細胞、希突起膠細胞、またはミクログリア)から選択される。さらなる実施形態では、ニューロンは、感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、または脳ニューロンである。
【0024】
一実施形態では、細胞は、動物細胞、例えば、哺乳動物細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、in vitro、in vivo、またはex vivoである。
【0025】
別の実施形態では、細胞は、罹患細胞である。別の実施形態では、細胞は、以下に定義されるような疾患または障害に罹患している患者由来の罹患細胞である。
【0026】
別の態様では、本発明は、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させること、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させること、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させることから利益を得るであろう疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させる、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させる、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させることによる疾患または障害の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0028】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度の増加、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積の増加、またはSOD1タンパク質の凝集の増加を特徴とする疾患または障害を有する動物の治療で使用するためであり得る。
【0029】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0030】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0031】
一実施形態では、動物は哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。さらなる実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0032】
別の実施形態では、疾患または障害は、タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたタンパク質の蓄積、またはタンパク質の凝集により引き起こされる。一実施形態では、疾患または障害は、SOD1タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積、またはSOD1タンパク質の凝集により引き起こされる。
【0033】
別の実施形態では、疾患は、神経変性疾患である。
【0034】
別の実施形態では、疾患は、加齢性黄斑変性症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アテローム性動脈硬化症、自閉症スペクトラム障害(ASD)、良性限局性筋萎縮症(benign focal amyotrophy)、脳梗塞、クロイツフェルト・ヤコブ病クローン病、デュシェンヌ型麻痺、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症(FTD)、緑内障、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、ハンチントン病(HD)、封入体ミオパチー(IBM)炎症性腸疾患、虚血、クーゲルベルグ・ウェランダー症候群、レビー小体型認知症(LBD)、ルーゲーリック病、多発性硬化症(MS)、心筋梗塞、壊死性腸炎、神経線維腫症I型、骨ページェット病(PDB)、パーキンソン病(PD)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、偽球麻痺、脊髄性筋萎縮症(SMA)、潰瘍性大腸炎、バロシン含有タンパク質(VCP)関連障害、またはウェルドニッヒホフマン病、一過性脳虚血発作、虚血、脳出血、老人性白内障、網膜虚血、網膜血管炎、ブラウンヴィアレットヴァンレアー症候群、イールズ病、髄膜炎および脳炎、心的外傷後ストレス障害、シャルコー・マリー・トゥース病、黄斑変性症、X連鎖球脊髄性萎縮症、初老期認知症、うつ病性障害、側頭葉てんかん、遺伝性レーバー視神経症、脳血管事故、くも膜下出血、ならびに統合失調症のいずれか1つ以上から選択される。
【0035】
一実施形態では、疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
【0036】
一実施形態では、疾患は、変異により引き起こされるALSである。一実施形態では、この疾患は、C9orf72変異、SOD1変異、または散発性変異から選択される変異により引き起こされるALSである。一実施形態では、疾患は、SOD1変異により引き起こされるALSである。
【0037】
別の態様では、本発明は、動物において寿命を延長するあるいは老化の加速または他の異常な老化プロセスをもたらす疾患もしくは障害を治療する方法を提供し、本方法は、動物に治療有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0038】
別の態様では、本発明は、動物において老化の加速または他の異常な老化プロセスをもたらす疾患または障害の治療において使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、動物の寿命を延長することによる疾患または障害の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0040】
一実施形態では、疾患または障害は早期老化である。
【0041】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0042】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0043】
一実施形態では、動物は哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。
【0044】
関連する態様では、本発明は、動物、例えば、ヒトにおける化学物質または放射線曝露による早期老化を治療する方法を提供し、本方法は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0045】
関連する態様では、本発明は、動物において化学物質または放射線曝露による早期老化の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0046】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0047】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0048】
一実施形態では、早期老化は、化学療法、放射線療法、またはUV放射線への曝露によるものである。さらなる実施形態では、UV放射は、人工的、例えば、日焼けベッド、または太陽UV放射、すなわち、日光曝露である。一実施形態では、医薬組成物は、皮膚への局所投与用である。
【0049】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させることにより細胞の生存を改善する方法を提供する。
【0050】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0051】
一実施形態では、細胞は、動物細胞、例えば、哺乳動物細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、in vitro、in vivo、またはex vivoである。
【0052】
さらなる実施形態では、星状細胞は、細胞と関連している。一実施形態では、星状細胞は、細胞と同じ発生源由来である。一実施形態では、星状細胞は、神経変性疾患罹患患者由来のものである。一実施形態では、星状細胞は、ALS罹患患者由来のものである。
【0053】
別の実施形態では、細胞は、罹患細胞である。別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の罹患細胞である。別の実施形態では、細胞は、ALS罹患患者由来の罹患細胞である。
【0054】
別の実施形態では、細胞は、運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の罹患運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、ALS罹患患者由来の罹患運動ニューロン細胞である。別の態様では、本発明は、細胞中の星状細胞毒性を減少させることにより細胞生存を改善する方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の抗酸化化合物と接触させるステップを含む。
【0055】
別の態様では、本発明は、細胞における星状細胞毒性を減少させることにより細胞生存を改善する方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0056】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させるか、または細胞生存を改善することから利益を得るであろう疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に抗酸化化合物を含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0057】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させるか、または細胞生存を改善することから利益を得るであろう疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0058】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させることによるおよび/または細胞生存を増加させることによる疾患または障害の治療で使用するための抗酸化化合物を提供する。
【0059】
一実施形態では、疾患または障害は、神経変性疾患または障害、例えば、上に列挙されたもののいずれかである。一実施形態では、疾患または障害はALSである。一実施形態では、この疾患は、C9orf72変異、SOD1変異、または散発性変異から選択される変異により引き起こされるALSである。
【0060】
一実施形態では、細胞は、運動ニューロン細胞である。
【0061】
一実施形態では、星状細胞は、細胞と関連している。
【0062】
一実施形態では、抗酸化化合物は、星状細胞の毒性を減少させることにより細胞生存を増加させる。一実施形態では、抗酸化化合物は、関連する星状細胞の毒性を減少させることにより運動ニューロン細胞の生存を増加させる。
【0063】
一実施形態では、抗酸化化合物は、フマル酸モノメチル(MMF)、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよびリルゾールから選択される。
【0064】
一実施形態では、抗酸化化合物は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールである。
【0065】
一実施形態では、疾患は、C9orf72変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、MMF、アンドログラフォライド、または(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールであり、好適には、アンドログラフォライドである。
【0066】
一実施形態では、疾患は、SOD1変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたはリルゾールであり、好適には、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールである。
【0067】
一実施形態では、疾患は、散発性変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、MMF、アンドログラフォライド、リルゾール、または(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールであり、好適には、アンドログラフォライドである。
【0068】
別の態様では、本発明は、星状細胞においてミスフォールディングSOD1タンパク質のレベルを減少させるその能力について候補治療剤(複数可)をスクリーニングするin vitro方法を提供し、本方法は、
1)線維芽細胞幹細胞に由来する誘導星状細胞を候補治療剤に曝露することと、
2)候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でミスフォールドしたSOD1の量を比較すること、
を含む。
【0069】
一実施形態では、対照細胞は、候補治療剤に曝露されていない誘導星状細胞(曝露されていない誘導星状細胞)である。
【0070】
一実施形態では、本方法は、候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でSOD1凝集体の量を比較することを含み得る。一実施形態では、本方法は、候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でSOD1核周囲凝集体の量を比較することを含み得る。
【0071】
別の態様では、本発明は、運動ニューロン細胞の生存を増加させるその能力について候補治療剤(複数可)をスクリーニングするin vitro方法を提供し、本方法は、
1)運動ニューロン細胞を候補治療剤に曝露することと、
2)一定期間後に、候補治療剤に曝露された運動ニューロン細胞と対照に曝露された運動ニューロン細胞の間で生存する細胞の数を比較すること、
を含む。
【0072】
一実施形態では、期間は、1~5日間、好適には2~4日間、好適には3日間である。
【0073】
一実施形態では、運動ニューロン細胞は、星状細胞の存在下にある。一実施形態では、星状細胞および運動ニューロン細胞は、神経変性疾患罹患患者に由来する。一実施形態では、星状細胞および運動ニューロン細胞は、ALS罹患患者由来のものである。
【0074】
本発明の前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して進める以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。そのような説明は、本発明を例示するものであり、限定するものではないことを意味する。図面および実施例によって説明されているものなど、本文中の開示された(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール結晶性複合体の明らかな変形体は、本開示を有する当業者には容易に明らかであり、そのような変形体は、本発明の一部であると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】ALS患者の線維芽細胞のiNPCへの直接変換。線維芽細胞は、再プログラミング因子Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを含み、NPC培地および成長因子が補充されたレトロウイルスベクターを使用して形質導入される。細胞を、iNPCが得られた18日目まで増殖させた。
図2】健康な対照およびALS患者(CRT:3名の健康対照からのプールされたデータ;C9orf72変異:C9orf72_183、C9orf72_78およびC9orf72_201を有するALS患者;SOD1変異:SOD1_210、SOD1_102およびSOD1_100を有するALS患者;散発性ALS患者:sALS_17、sALS_12およびsALS_009)から誘導された星状細胞との共培養におけるマウス運動ニューロンレスキューの定量化。5μMまたは10μMのアンドログラフォライドおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(薬物と表示)を使用した運動ニューロンの生存率の変化をビヒクル(DMSO)と比較した。
図3】健康な対照およびALS患者(CRT:3名の健康対照からのプールされたデータ;C9orf72変異:C9orf72_183、C9orf72_78およびC9orf72_201を有するALS患者;SOD1変異:SOD1_210、SOD1_102およびSOD1_100を有するALS患者;散発性ALS患者:sALS_17、sALS_12およびsALS_009)から誘導された星状細胞との共培養におけるマウス運動ニューロンレスキューの定量化。5μMまたは10μMのフマル酸モノメチルおよびリルゾールを使用した運動ニューロンの生存率の変化をビヒクル(DMSO)と比較した。
図4】ビヒクル(DMSO)と比較して10μMにおいて、リルゾール、アンドログラフォライドおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(薬物と表示)の投与3日後の運動ニューロン生存率の増加による誘導星状細胞との共培養におけるマウスHb9GFP+運動ニューロンレスキューの定量化を示すさらなるデータ。ヒトiAstrocyteは、同じ様々なALS患者由来であった。健康な対照(対照)および3名の異なる散発性ALS患者(sALS、n=3)、SOD1変異を有する3名の異なるALS患者(SOD1、n=3)およびC9orf72変異を有する3名の異なるALS患者(C9orf、n=3)。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。
図5】健康な対照およびALS患者(健康な対照:CTR_155、CTR_3050およびCTR_209;C9orf72変異を有するALS患者:C9orf72_183、C9orf72_78およびC9orf72_201;SOD1変異を有するALS患者:SOD1_210;散発性ALS患者:sALS_17、sALS_12およびsALS_009)由来の誘導星状細胞との共培養におけるヒト誘導運動ニューロンレスキューの定量化。10μMのアンドログラフォライドおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(薬物と表示)を使用した運動ニューロンの生存率の変化をビヒクル(DMSO)と比較した。
図6】健康な対照およびALS患者(健康な対照:CTR_155、CTR_3050およびCTR_209;C9orf72変異を有するALS患者:C9orf72_183、C9orf72_78およびC9orf72_201;SOD1変異を有するALS患者:SOD1_210;散発性ALS患者:sALS_17、sALS_12およびsALS_009)由来の誘導星状細胞との共培養におけるヒト誘導運動ニューロンレスキューの定量化。10μMのフマル酸モノメチルおよびリルゾールを使用した運動ニューロンの生存率の変化をビヒクル(DMSO)と比較した。
図7】ヒトiAstrocyteにおけるアンドログラフォライドおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(薬物と表示)によるSOD1ミスフォールディングの減少。iAstrocyteは、様々なALS患者由来であった(健康対照:CTR_3050、CTR_155およびCTR_AG;C9orf72変異を有するALS患者:C9orf72_78、C9orf72_183およびC9orf72_201;SOD1変異を有するALS患者:SOD1_100、SOD1_102およびSOD1_ND;散発性ALS患者:sALS_009およびsALS_17)。
図8】ヒトiAstrocyteにおけるフマル酸モノメチルおよびリルゾールによるSOD1ミスフォールディングの減少。iAstrocyteは、様々なALS患者由来であった(健康な対照:CTR_3050、CTR_155およびCTR_AG;C9orf72変異を有するALS患者:C9orf72_78、C9orf72_183およびC9orf72_201;SOD1変異を有するALS患者:SOD1_100、SOD1_102およびSOD1_ND;散発性ALS患者:sALS_009およびsALS_17)。
図9】ヒトiAstrocyteに対する10μMで48時間(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール(薬物と表示)の投与後のミスフォールディングSOD1核周囲凝集体の割合(パーセンテージ)の減少によるSOD1ミスフォールディングの減少を示すさらなるデータ。iAstrocyteは、同じ様々なALS患者由来であった。健康な対照(CTR n=3)および3名の異なる散発性ALS患者(sALS、n=3)、SOD1変異を有する3名の異なるALS患者(SOD1、n=3)およびC9orf72変異を有する3名の異なるALS患者(C9orf、n=3)。個々のドナーについてDMSO治療条件は、100%と見なされ、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールによる治療はその値の割合(パーセンテージ)である。治療を受けたすべての患者系統でミスフォールディングSOD1が減少し、6つの異なる患者系統でミスフォールディングSOD1が有意に減少したことを報告する。*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0076】
用語「(6aR)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール」は、R-(-)-10,11-ジヒドロキシアポルフィンを意味し、それらのプロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物、および共結晶を含む。
【0077】
用語「(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール」は、S-(+)-10,11-ジヒドロキシアポルフィンを意味し、それらのプロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物、および共結晶を含む。
【0078】
用語「6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール」は、(6aR)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aR)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールのラセミ体を意味し、それらのプロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物、および共結晶を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、疾患の1つ以上の症状または特徴を軽減する、減少させるまたは無効にすることを意味し、治癒的、緩和的、予防的でありまたは疾患の進行を遅延させることができる。
【0080】
「有効量」という用語は、例えば、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させる、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させる、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させるなど、所望の効果または結果をもたらすであろう量を意味する。用語「治療有効量」は、単独で、または他の活性成分と組み合わされた(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの量を意味し、それは、例えば、疾患もしくは障害の症状を防止、緩和もしくは改善するのに効果的である、基礎疾患のプロセスもしくは進行を遅延させる、停止させるもしくは逆転させる、細胞機能を部分的もしくは完全に回復させる、または治療対象の生存を延長させる、所望の生物学的または薬理学的応答を誘発するであろう。
【0081】
「患者」または「対象」という用語は、非ヒト動物および特にヒトを含む、哺乳動物を含む。一実施形態では、患者または対象は、ヒトである。別の実施形態では、患者または対象は、ヒト男性である。別の実施形態では、患者または対象は、ヒト女性である。
【0082】
「有意(significant)」または「有意に(significantly)」という用語は、0.05レベルの有意性でt検定により決定される。
【0083】
本発明は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを用いて、細胞、組織または動物においてSOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させる、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させる、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させるための方法に関する。
【0084】
本発明は、SOD1タンパク質のミスフォールディングまたはミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積により媒介される疾患の治療、防止、緩和、または改善のために(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを用いる方法にさらに関する。本発明は、細胞、組織、器官、または動物の寿命を延長する/延ばすために、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを用いる方法にさらに関する。
【0085】
したがって、一態様では、本発明は、細胞中のミスフォールドしたSOD1のレベルを減少させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0086】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0087】
関連する態様では、本発明は、細胞中の適切に折り畳まれたSOD1のレベルを増加させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0088】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0089】
別の態様では、本発明は、(a)SOD1タンパク質のミスフォールディングが発生する頻度または速度の観点から、細胞中のSOD1タンパク質のミスフォールディングを減少させる、(b)細胞中のミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積を減少させる、または(c)細胞中のSOD1タンパク質の凝集を減少させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0090】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0091】
別の態様では、本発明は、細胞の寿命を延長させる方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0092】
一実施形態では、この方法は、in vitro方法であり得る。
【0093】
一実施形態では、上記の態様の1つ、または本明細書の他の態様または実施形態の細胞は、副腎、骨髄、脳、乳、気管支、尾状核、小脳、大脳皮質、頸部、子宮、結腸、子宮内膜、精巣上体、食道、卵管、胆嚢、心筋、海馬、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、鼻咽頭、口腔粘膜、卵巣、膵臓、副甲状腺、胎盤、前立腺、直腸、唾液腺、精嚢、骨格筋、皮膚、小腸(十二指腸、空腸および回腸など)、平滑筋、脾臓、胃、精巣甲状腺、扁桃腺、膀胱および膣の1つ以上のいずれかから選択される細胞型であるまたは組織由来である。さらなる実施形態では、脳細胞は、大脳(大脳皮質、大脳基底核(多くの場合、線条体と呼ばれる)、および嗅球など)、小脳(歯状核、介在核、固定核、および前庭神経核など)、間脳(視床、視床下部など、および下垂体の後部)、ならびに脳幹(橋、黒質、延髄)ら選択される脳組織に由来する。さらなる実施形態では、脳細胞は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、星状細胞、希突起膠細胞、またはミクログリア)から選択される。さらなる実施形態では、ニューロンは、感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、または脳ニューロンである。
【0094】
一実施形態では、細胞は、動物細胞、例えば、哺乳動物細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、in vitro、in vivo、またはex vivoである。
【0095】
別の実施形態では、細胞は、罹患細胞である。別の実施形態では、細胞は、本明細書に開示の疾患または障害に罹患している患者由来の罹患細胞である。
【0096】
別の態様では、本発明は、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させること、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させること、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させることから利益を得る(例えば、症状が防止される、緩和される、もしくは改善されるか、または疾患プロセスまたは進行が遅延される、停止される、もしくは逆転される)疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0097】
別の態様では、本発明は、SOD1タンパク質のミスフォールディングの頻度を減少させること、SOD1のミスフォールドしたタンパク質の蓄積を減少させること、またはSOD1タンパク質の凝集を減少させることにより、疾患または障害の治療において(例えば、症状が防止される、緩和される、もしくは改善されるか、または疾患プロセスまたは進行が遅延される、停止される、もしくは逆転される)使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0098】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0099】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0100】
一実施形態では、動物は哺乳動物である。さらなる実施形態では、哺乳動物はヒトである。別の実施形態では、哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である。
【0101】
別の実施形態では、疾患または障害は、SOD1タンパク質のミスフォールディング、ミスフォールドしたSOD1タンパク質の蓄積、またはSOD1タンパク質の凝集によって引き起こされる。
【0102】
別の実施形態では、疾患は、加齢性黄斑変性症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アテローム性動脈硬化症、自閉症スペクトラム障害(ASD)、良性限局性筋萎縮症(benign focal amyotrophy)、脳梗塞、クロイツフェルト・ヤコブ病クローン病、デュシェンヌ型麻痺、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症(FTD)、緑内障、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、ハンチントン病(HD)、封入体ミオパチー(IBM)炎症性腸疾患、虚血、クーゲルベルグ・ウェランダー症候群、レビー小体型認知症(LBD)、ルーゲーリック病、多発性硬化症(MS)、心筋梗塞、壊死性腸炎、神経線維腫症I型、骨ページェット病(PDB)、パーキンソン病(PD)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、偽球麻痺、脊髄性筋萎縮症(SMA)、潰瘍性大腸炎、バロシン含有タンパク質(VCP)関連障害、またはウェルドニッヒホフマン病、一過性脳虚血発作、虚血、脳出血、老人性白内障、網膜虚血、網膜血管炎、ブラウンヴィアレットヴァンレアー症候群、イールズ病、髄膜炎および脳炎、心的外傷後ストレス障害、シャルコー・マリー・トゥース病、黄斑変性症、X連鎖球脊髄性萎縮症、初老期認知症、うつ病性障害、側頭葉てんかん、遺伝性レーバー視神経症、脳血管事故、くも膜下出血、ならびに統合失調症のいずれか1つ以上から選択される。
【0103】
別の実施形態では、疾患は神経学的疾患である。
【0104】
一実施形態では、疾患は神経変性疾患または障害である。
【0105】
一実施形態では、疾患は、ALSである。
【0106】
一実施形態では、疾患は、変異により引き起こされるALSである。一実施形態では、この疾患は、C9orf72変異、SOD1変異、または散発性変異から選択される変異により引き起こされるALSである。一実施形態では、疾患は、SOD1変異により引き起こされるALSである。
【0107】
別の態様では、本発明は、動物において寿命を延長する、または老化の加速または他の異常な老化プロセスをもたらす疾患もしくは障害を治療する方法を提供し、本方法は、動物に治療有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0108】
別の態様では、本発明は、動物において老化の加速または他の異常な老化プロセスをもたらす疾患または障害の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0109】
別の態様では、本発明は、動物の寿命を延長することによる疾患または障害の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0110】
一実施形態では、疾患または障害は早期老化である。
【0111】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0112】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたは(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0113】
一実施形態では、動物は哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。
【0114】
関連する態様では、本発明は、化学的または放射線曝露による早期老化を治療する方法を提供する。一実施形態では、早期老化は、化学療法、放射線療法、またはUV放射線への曝露によるものである。さらなる実施形態では、UV放射は、人工的、例えば、日焼けベッド、または太陽UV放射、すなわち、日光曝露である。
【0115】
関連する態様では、本発明は、化学物質または放射線曝露による早期老化の治療で使用するための(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを提供する。
【0116】
一実施形態では、早期老化は、化学療法、放射線療法、またはUV放射線への曝露によるものである。
【0117】
一実施形態では、UV放射は、人工的、例えば、日焼けベッド、または太陽UV放射、すなわち、日光曝露である。
【0118】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは医薬組成物に含まれ得る。
【0119】
一実施形態では、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたはそれらを含む医薬組成物は、有効量で動物に投与するためのものであり得る。
【0120】
本発明はさらに、本明細書に開示される疾患もしくは障害のいずれか1つを有するヒトを治療するためのまたはヒトへの(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの投与を伴う本発明のいずれかの方法において使用するための医薬品を調製するため、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを使用することを提供する。
【0121】
別の態様では、本発明は、星状細胞においてミスフォールドしたSOD1タンパク質のレベルを減少させるその能力について候補治療剤(複数可)をスクリーニングするin vitro方法を提供し、本方法は、
(a)線維芽細胞幹細胞に由来する誘導星状細胞を候補治療剤に曝露することと;
(b)候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でミスフォールディングSOD1の量を比較すること、
を含む。
【0122】
一実施形態では、対照細胞は、候補治療剤に曝露されていない誘導星状細胞(すなわち、曝露されていない誘導星状細胞)である。
【0123】
一実施形態では、本方法は、候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でSOD1凝集体の量を比較することを含み得る。一実施形態では、本方法は、候補治療剤に曝露された誘導星状細胞と対照細胞の間でSOD1核周囲凝集体の量を比較することを含み得る。
【0124】
別の態様では、本発明は、運動ニューロン細胞の生存を増加させるその能力について候補治療剤(複数可)をスクリーニングするin vitro方法を提供し、本方法は、
1)運動ニューロン細胞を候補治療剤に曝露することと、
2)一定期間後に、候補治療剤に曝露された運動ニューロン細胞と対照に曝露された運動ニューロン細胞の間で生存する細胞の数を比較すること、
を含む。
【0125】
一実施形態では、期間は、1~5日の間、好適には2~4日の間、好適には3日である。
【0126】
一実施形態では、運動ニューロン細胞は、星状細胞の存在下にある。一実施形態では、星状細胞および運動ニューロン細胞は、神経変性疾患罹患患者に由来する。一実施形態では、星状細胞および運動ニューロン細胞は、ALS罹患患者由来のものである。
【0127】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させることにより細胞の生存を改善する方法を提供する。
【0128】
一実施形態では、細胞は、動物細胞、例えば、哺乳動物細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞である。さらなる実施形態では、細胞は、in vitro、in vivo、またはex vivoである。
【0129】
別の実施形態では、細胞は、罹患細胞である。別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の疾患細胞である。別の実施形態では、細胞は、ALS罹患患者由来の罹患細胞である。
【0130】
さらなる実施形態では、星状細胞は、細胞と関連している。一実施形態では、星状細胞は、細胞と同じ発生源由来である。一実施形態では、星状細胞は、神経変性疾患罹患患者由来のものである。一実施形態では、星状細胞は、ALS罹患患者由来のものである。
【0131】
別の実施形態では、細胞は、運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、ALS罹患患者由来の運動ニューロン細胞である。
【0132】
別の実施形態では、細胞は、神経変性疾患罹患患者由来の罹患運動ニューロン細胞である。別の実施形態では、細胞は、ALS罹患患者由来の罹患運動ニューロン細胞である。
【0133】
別の態様では、本発明は、細胞内の星状細胞毒性を減少させることにより細胞生存を改善する方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の抗酸化化合物と接触させるステップを含む。
【0134】
別の態様では、本発明は、細胞における星状細胞毒性を減少させることにより細胞生存を改善する方法を提供し、本方法は、細胞を有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールと接触させるステップを含む。
【0135】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させるか、または細胞生存を改善することから利益を得るであろう疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に抗酸化化合物を含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0136】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させるか、または細胞生存を改善することから利益を得るであろう疾患または障害を有する動物を治療する方法を提供し、本方法は、動物に(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールを含む治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0137】
別の態様では、本発明は、星状細胞の毒性を減少させることによる、および/または細胞生存を増加させることによる、疾患または障害の治療で使用するための抗酸化化合物を提供する。
【0138】
一実施形態では、疾患または障害は、神経変性疾患または障害、例えば、上に列挙されたもののいずれかである。一実施形態では、疾患または障害はALSである。
【0139】
一実施形態では、細胞は、運動ニューロン細胞である。
【0140】
一実施形態では、星状細胞は、細胞と関連している。
【0141】
一実施形態では、抗酸化化合物は、星状細胞の毒性を減少させることにより細胞生存を増加させる。一実施形態では、抗酸化化合物は、関連する星状細胞の毒性を減少させることにより運動ニューロン細胞の生存を増加させる。
【0142】
一実施形態では、抗酸化化合物は、フマル酸モノメチル(MMF)、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよびリルゾールから選択される。
【0143】
一実施形態では、抗酸化化合物は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールである。
【0144】
一実施形態では、疾患は、C9orf72変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、フマル酸モノメチル(MMF、アンドログラフォライド、または(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールであり、好適にはアンドログラフォライドである。
【0145】
一実施形態では、疾患は、SOD1変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールまたはリルゾールであり、好適には(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールである。
【0146】
一実施形態では、疾患は、散発性変異により引き起こされるALSであり、抗酸化化合物は、MMF、アンドログラフォライド、リルゾール、または(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールであり、好適にはアンドログラフォライドである。
【0147】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよび少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。「賦形剤」という用語は、薬学的に活性な成分((6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール)の担体として使用される薬学的に許容される不活性物質を指し、付着防止剤、結合剤、コーティング、崩壊剤、充填剤、希釈剤、溶剤、香料、増量剤、着色剤、流動促進剤、分散剤、湿潤剤、潤滑剤、保存剤、吸着剤および甘味料を含む。賦形剤(複数可)の選択は、特定の投与様式および剤形の性質などの因子に依存する。注射または注入に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含んでよい:注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調整するための剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基で調整され得る。非経口調整剤は、アンプル、自動注射器などの使い捨て注射器、またはガラス製もしくはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入されてよい。
【0148】
本発明の製剤は、任意の医薬剤形であり得る。医薬製剤は、例えば、錠剤、カプセル、ナノ粒子材料、例えば、粒状粒子状物質または粉末、再構成のための凍結乾燥材料、液体溶液、懸濁液、エマルジョンまたは他の液体形態、注射可能な懸濁液、溶液、乳剤など、坐剤、または局所もしくは経皮製剤もしくはパッチであってよい。医薬製剤は一般に、約1重量%~約99重量%の(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよび99重量%~1重量%の好適な医薬賦形剤を含む。一実施形態では、剤形は、経口剤形である。別の実施形態では、剤形は非経口剤形である。別の実施形態では、剤形は経腸剤形である。別の実施形態では、剤形は局所剤形である。一実施形態では、医薬剤形は単位用量である。用語「単位用量」は、単回用量で患者に投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの量を指す。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、非経口経路、経腸経路、または局所経路を介して対象に送達される。
【0150】
本発明の親経路の例としては、これらに限定されないが、腹腔内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、海綿体内、腔内、脳内、槽内、角膜内、冠状動脈、冠状動脈内、体内、頭蓋内、皮内、椎間板内、乳管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、管腔内、リンパ内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、眼内、鼻腔内、脊髄内、関節滑液嚢内、腱内、精巣内、くも膜下腔内、胸腔内、尿細管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内(ボーラスまたは点滴)、脳室内、膀胱内、および/または皮下のいずれか1つ以上が挙げられる。
【0151】
本発明の経腸投与経路としては、口(経口)、胃(stomach)(胃(gastric))、および直腸(rectum)(直腸(rectal))を介した胃腸管への投与が挙げられる。胃内投与は典型的には、鼻腔を通るチューブ(NGチューブ)または胃に直接つながる食道内のチューブ(PEGチューブ)の使用を伴う。直腸投与は典型的には、直腸坐剤を伴う。経口投与としては、舌下および頬側投与が挙げられる。
【0152】
局所投与としては、鼻腔内および肺投与などの、皮膚または粘膜などの体表面への投与が挙げられる。経皮形態としては、クリーム、気泡、ジェル、ローションまたは軟膏が挙げられる。鼻腔内および肺の形態としては、液体および粉末、例えば液体スプレーが挙げられる。
【0153】
用量は、使用される剤形、患者の感受性、および投与経路に応じて変化し得る。投与量および投与は、十分なレベルの活性剤(複数可)を提供するために、または所望の効果を維持するために調整される。考慮されてよい因子としては、病状の重症度、対象の全身健康、対象の年齢、体重、性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ(複数可)、反応感受性、および治療に対する耐性/応答が挙げられる。
【0154】
一実施形態では、患者に投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの1日量は、最大で200mg、175mg、150mg、125mg、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、30mg、25mg、20mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、5mg、4mg、3mg、または最大で2mgから選択される。別の実施形態では、1日量は、少なくとも1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1,000mg、2,000mg、3,000mg、4,000mg、または少なくとも5,000mgである。別の実施形態では、1日量は、1~2mg、2~4mg、1~5mg、5~7.5mg、7.5~10mg、10~15mg、10~12.5mg、12.5~15mg、15~17.7mg、17.5~20mg、20~25mg、20~22.5mg、22.5~25mg、25~30mg、25~27.5mg、27.5~30mg、30~35mg、35~40mg、40~45mg、または45~50mg、50~75mg、75~100mg、100~125mg、125~150mg、150~175mg、175~200mg、5~200mg、5~300mg、5~400mg、5~500mg、5~600mg、5~700mg、5~800mg、5~900mg、5~1,000mg、5~2,000mg、5~5,000mgである、または5,000mgより多い。
【0155】
別の実施形態では、患者に投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの単回用量は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg,150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg490mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1,000mg、2,000mg、3,000mg、4,000mg、または5,000mgから選択される。別の実施形態では、患者に投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの単回用量は、1~2mg、2~4mg、1~5mg、5~7.5mg、7.5~10mg、10~15mg、10~12.5mg、12.5~15mg、15~17.7mg、17.5~20mg、20~25mg、20~22.5mg、22.5~25mg、25~30mg、25~27.5mg、27.5~30mg、30~35mg、35~40mg、40~45mg、45~50mg、50~75mg、75~100mg、100~125mg、125~150mg、150~175mg、175~200mg、200~225mg、225~250mg、250~275mg、275~300mg、300~325mg、325~350mg、350~375mg、375~400mg、400~425mg、425~450mg、450~475mg、475~500mg、500~1,000mg、1,000~2,000mg、3,000~4,000mg、4,000~5,000mg、または5,000mgより多くから選択される。一実施形態では、単回用量は、経口、頬側、または舌下投与のいずれか1つから選択される経路により投与される。別の実施形態では、単回用量は、注射、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内により投与される。別の実施形態では、単回用量は、吸入または鼻腔内投与により投与される。
【0156】
非制限的例として、皮下注射により投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの用量は、分割用量で投与される場合、約3~5,000mg/日であってよい。皮下注射により投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの単回用量は、約1~6mg、好ましくは、約1~4mg、1~3mg、または2mgであってよい。他の実施形態としては、約5~5,000mg、好ましくは約100~1,000mg、100~500mg、200~400mg、250~350mg、または300mgの範囲が挙げられる。皮下注入は、注射を1日10用量より多く分割する必要がある患者において好ましい場合がある。連続皮下注入用量は、1日1mg/時間であり、一般的に4mg/時間まで応答に応じて増加させる。
【0157】
肺投与、例えば、加圧式計量用量吸入器(pMDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、ソフトミスト吸入器、ネブライザー、または他の装置を使用する吸入により投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの微粒子用量は、約0.5~15mg、好ましくは約0.5~8mgまたは2~6mgの範囲であり得る。他の実施形態は、約5~5,000mg、好ましくは約100~1,000mg、100~500mg、200~400mg、250~350mg、または300mgの範囲を含む。肺投与により投与される(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの公称用量(ND)、すなわちレセプタクルで計量された薬物の量(計量用量とも呼ばれる)は、例えば、0.5~15mg、3~10mg、10~15mg、10~12.5mg、12.5~15mg、15~17.7mg、17.5~20mg、20~25mg、20~22.5mg、22.5~25mg、25~30mg、25~27.5mg、27.5~30mg、30~35mg、35~40mg、40~45mg、または45~50mgの範囲であり得る。他の実施形態は、約5~5,000mg、好ましくは約100~1,000mg、100~500mg、200~400mg、250~350mg、または300mgの範囲を含む。長時間作用型医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス率に応じて、1回/日、2回/日、3回/日、4回/日、5回/日、6回/日、7回/日、8回/日、9回/日、10回/日、または10回/日を超えて(好ましくは10回/日以下)、1日おきに、3~4日ごとに、毎週、または2週間に1回投与され得る。
実施例
【0158】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを意図することなく、本発明を説明する。
実施例1
【0159】
過去10年間で、神経変性のin vitroモデリングは、主に成人のヒト線維芽細胞の人工多能性幹細胞(iPSC)および誘導された神経前駆細胞(iNPC)への再プログラミングにより、目覚ましい発展を遂げてきた。ALSの研究分野では、これはin vitroで家族性疾患および散発性疾患をモデル化する機会を提供する。
【0160】
ALS患者の死後脊髄から採取されたNPCはすでに、運動ニューロン、星状細胞、および希突起膠細胞にうまく分化している。この方法を使用して星状細胞を得ることは、主要なエピジェネティックな変化の誘導を回避する。しかし、死後のサンプルの可用性は制限的である。さらに、ヒト由来のiPSC細胞由来の星状細胞の再プログラミングの不利な点としては、時間を要するプロトコル、および星状細胞の複雑かつ非常に可変的な成熟時間が挙げられる。
【0161】
したがって、iPSCリソースの有望な代替手段は、免疫適合宿主から星状細胞への線維芽細胞の直接的な再プログラミングである。iPSCを生成する代わりに、直接再プログラミングすることは、成体体細胞を別の細胞型に変換するための細胞系列転写因子の使用を伴う。この技術は、コリン作動性、ドーパミン作動性、および運動ニューロンなどの亜種の神経系統を生成するために使用されている。直接再プログラミング技術は、ALS患者の線維芽細胞から星状細胞を誘導するためにも使用され、ALS患者および対照から3価のiNPCが1ヶ月以内に生成された。これらの細胞が星状細胞に分化したとき、それらは、共培養における運動ニューロンに対し、剖検由来の星状細胞と同様の毒性を示し、これにより、薬物スクリーニングの開発における有用なツールとなった(図1)。
方法論:
【0162】
iNPCを、以前に報告されたアプローチを使用して、ALSと診断された患者の成人ヒト線維芽細胞からおよび年齢を一致させた健康な対照から生成した(Kimら、PNAS,2001年、108(19)、7838-7843;Meyerら、PNAS,2014年.111(2)、829-832)。iNPCを、前駆細胞をiAstrocyte培地で合計7日間培養し、3日目に培地を交換することにより、誘導星状細胞(iAstrocyte)に分化させる。
【0163】
対照またはALS患者由来の誘導星状細胞を、マウス運動ニューロン(MN)の生存に対するそれらの効果を決定するために共培養アッセイで使用した。HB9プロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するマウス胚性幹細胞由来の運動ニューロンを分別し、患者由来および対照由来のiAstrocyteに添加した。一方、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール、フマル酸モノメチル(MMF)、およびリルゾールを、患者のiAstrocyteおよび野生型マウスMNのこの共培養システムでスクリーニングした。マウスMNの生存を、共焦点画像取得により1日目および3日目に監視した。

結果:
【0164】
3日目のMN生存率を、1日目に観察された生存MN細胞の割合(パーセンテージ)として評価した。予想どおり、健康な対照由来のiAstrocyteは、3日目のマウスMNの生存率を有意に変化させなかった。4つの薬物のいずれの導入も、マウスMNの生存率を変えなかった(図2および図3)。
【0165】
C9orf72変異を有する3名のALS患者(すなわち、患者C9orf72_183、C9orf72_201、およびC9orf72_78)由来のiAstrocyteをマウスMNと共培養した場合、3名のALS患者全員において、3日目に生存していたMN細胞は33%以下であった。しかし、3日目のMN細胞の生存率は、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよびMMFが培地に導入された場合、大幅に改善した。より具体的には、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールは、MNの生存率を最大で38%改善した。
【0166】
SOD1変異を有するALS患者(すなわち、患者SOD1_210、SOD1_102、SOD1_100)由来のiAstrocyteをマウスMNと共培養した場合、約40%以下のMN細胞が3日目に生存していた。3日目のMN細胞の生存率は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの導入により最も有意な改善を示した。
【0167】
sALS変異を有する3名のALS患者(すなわち、患者sALS_17、患者sALS_12、患者sALS_009)由来のiAstrocyteをマウスMNと共培養した場合、3日目のMN細胞の生存率は21~40%で変動した。この研究では、3日目のMN細胞の生存は、アンドログラフォライドの存在下で最も有意に改善した(図2図3、および図4)。
実施例2
【0168】
健康な対照またはALS患者由来の誘導星状細胞をまた、同じ健康な対照またはALS患者由来の誘導MN細胞の生存に対するそれらの効果を決定するために共培養アッセイで使用した。

方法論:
【0169】
iAstrocyteおよび誘導MN細胞の調製は、実施例1に記載されている。同様に、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール、MMFおよびリルゾールをこの共培養システムでスクリーニングした。3日目のMN生存率を、1日目に観察された生存MN細胞の割合(パーセンテージ)として評価した。
結果:
【0170】
予想どおり、健康な対照由来のiAstrocyteは、3日目に同じ健康な対照由来の誘導MNの生存を有意に変化させなかった。また、4つの薬物のいずれの導入も、ヒトMNの生存率を変えなかった(図5および図6)。
【0171】
C9orf72変異を有するALS患者由来のiAstrocyteを、同じALS患者由来の誘導MNと共培養した場合、32%以下のヒトMN細胞が3日目に生存していた。4つの薬物すべてが、10μMにおいてMNの生存を改善するいくつかのエビデンスを示し、アンドログラフォライドおよび(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールが、最も顕著な結果を呈した。
【0172】
SOD1変異を有するALS患者由来のiAstrocyteを、同じ患者由来の誘導MNと共培養した場合、MN細胞の約36%が3日目に生存していた。評価を行ったすべての薬物の中で、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールが、SOD1由来の星状細胞の毒性を最も効果的に減弱した。
【0173】
sALS変異を有するALS患者由来のiAstrocyteを、同じ患者由来の誘導MNと共培養した場合、3日目のMN細胞の生存率は19~45%で変動した。この研究では、4つの薬物すべてが10μMでMN生存率を改善するいくつかのエビデンスを示した。さらに、この研究の結果は、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールおよび他の薬物が、他の患者に対し一部の散発性患者由来のiAstrocyteにより引き起こされる毒性を減少させることにおいて有益であることを示し、個別化医療アプローチの可能性を示した。
実施例3
【0174】
健康な対照またはALS患者由来のiAstrocyte中のミスフォールドしたSOD1を、アンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール、MMFおよびリルゾールの有無で評価した(図7図8および図9)。
方法論:
【0175】
iAstrocyteの調製は、実施例1に記載されている。5日目に、96ウェルプレートを、PBSで1:400に希釈したフィブロネクチンでコーティングし、細胞接着のために固定化させた。iAstrocyteを最初に適切な容量のPBSで洗浄し、その後、1mlのアキュターゼ中で37℃で5分間インキュベートした。アキュターゼを適切な容量のiAstrocyte培地で中和し、細胞を15mlのfalconに収集し、200gで4分間遠心分離してペレットを形成した。ペレットを適切な容量の培地に再懸濁し、細胞を、Burker血球計算盤を使用して数えた。細胞を所望の密度で播種し、24時間放置して付着させた。
【0176】
4つの薬物、すなわちアンドログラフォライド、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール、MMFおよびリルゾールを10mMストック濃度に作成し、iAstrocyte培地で1:1000に希釈して10μMの作業濃度にした。6日目に、細胞を、細胞アッセイの24時間前に薬物で処理した。
【0177】
7日目に、iAstrocyteを4%PFAで固定した。次に、これらをミスフォールドしたSOD1抗体(B8H10)、CD44で染色して、細胞領域およびDAPIを特定した。コロンバス分析ソフトウェアを使用して、免疫細胞化学画像を定量化した。それぞれの条件で、核の数を確立した。ミスフォールドしたSOD1タンパク質凝集体について染色した星状細胞において、核および周囲の核周辺領域内のミスフォールドしたSOD1凝集体の数、強度および面積、ならびにミスフォールドしたSOD1の蓄積について陽性の細胞の割合(パーセンテージ)を定量化した。
結果:
【0178】
コロンバス分析ソフトウェア(PE)は、凝集体が識別される可能性が高い、細胞質内およびiAstrocyteの核周辺領域内でミスフォールドしたSOD1凝集体を検出できた。すべてのパラメーターの中で、SOD1変異を保有するALS患者由来の星状細胞は、核周囲凝集体の数が最も多く、陽性細胞の割合が高かった。散発性およびC9orf72系統は、対照よりも高いレベルを示した。この抗体は、ミスフォールドしたSOD1に特異的であり、野生型SOD1(wtSOD1)と変異型SOD1とを区別せず、そのため対照細胞中のwtSOD1タンパク質の凝集を検出できる。(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールの処置は、すべての細胞型においてミスフォールドしたSOD1陽性細胞の減少をもたらし、SOD1星状細胞の最大の減少を示す。(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオール処置条件でのミスフォールドしたSOD1のこの減少は、他の薬物処置では見られず、(6aS)-6-メチル-5,6,6a,7-テトラヒドロ-4H-ジベンゾ[de,g]キノリン-10,11-ジオールがミスフォールドしたSOD1を特異的に標的とし得ることを暗示する。
図1
図2
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図5
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図8
図9