(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ロボット部署位置計算装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A62C27/00 507
(21)【出願番号】P 2020076798
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591078712
【氏名又は名称】消防庁長官
(73)【特許権者】
【識別番号】000192338
【氏名又は名称】深田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394025094
【氏名又は名称】三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 久徳
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】花井 佑一朗
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 武士
(72)【発明者】
【氏名】森園 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直人
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-226064(JP,A)
【文献】特開2010-029314(JP,A)
【文献】特開2017-219901(JP,A)
【文献】米国特許第05398765(US,A)
【文献】中国実用新案第203060641(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00 - 99/00
A62C 3/02
A62C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水砲ロボットが部署できる位
置を決定するための装置であって、
入力画面を通じてプラント名が選択されると、選択されたプラント名で特定されるプラントの構内の電子地図を取得し、前記プラントに含まれる施設から入力画面を通じて火災箇所として施設が選択されると、選択された施設の形状、及び、その施設に貯蔵されている燃料の種類を取得するデータ取得部と、
前記プラント内の構内の道路の各地点の
中から、その地点と火災箇所の施設との位置関係、及び前記データ取得部によって取得した前記燃料の種類から求まる輻射受熱量が、前記放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる地点を
、部署位置候補として選出する第1選出部と、
前記第1選出部が選出した部署位置候補の中から、前記放水砲ロボットに搭載された風センサによって測定された
前記プラント内の風向に基づい
て火災箇所の施設に対して風上とな
る部署位置候補
を選出する第2選出部と、
前記第2選出部が選出した前記風上となる部署位置候補の中からの一の選択を操作者から受け付ける受付部と、
を含む装置。
【請求項2】
前記受付部で受け付けた一の部署位置候補について、その部署位置候補と前記火災箇所の施設との距離、前記施設の形状から求まる放水標的の高さ、放射物体の種別、放水圧力、風速、及び風向から前記放水砲ロボットの最適な俯仰角を求める状況解析部
を更に含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、更に、前記施設に貯蔵されている燃料の貯蔵量を取得し、
前記状況解析部は、
前記受付部で受け付けた一の部署位置候補について、その部署位置候補と前記火災箇所の施設との距離と、前記施設の形状と前記燃料の貯蔵量に基づく油面高さから求まる放水標的の高さ、放射物体の種別、放水圧力、風速、及び風向から前記放水砲ロボットの最適な俯仰角を求める請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記
第2選出部により複数の部署位置候補が
選出された場合、前記複数の部署位置候補の各々について、部署位置余裕度を計算
する計算部を更に含み、
前記受付部は、前記第2選出部が選出した前記複数の部署位置候補の各々を、前記部署位置余裕度と共に表示部に表示させる請求項
1記載の
装置。
【請求項5】
受け付けた前記部署位置候補へ前記放水砲ロボットを移動させる指令を出力するロボット制御部
を更に含む請求項
1記載の
装置。
【請求項6】
放水砲ロボットが部署できる位
置を決定するための
プログラムであって、
コンピュータを、
入力画面を通じてプラント名が選択されると、選択されたプラント名で特定されるプラントの構内の電子地図を取得し、前記プラントに含まれる施設から入力画面を通じて火災箇所として施設が選択されると、選択された施設の形状、及び、その施設に貯蔵されている燃料の種類を取得するデータ取得部、
前記プラント内の構内の道路の各地点の
中から、その地点と火災箇所の施設との位置関係、及び前記データ取得部によって取得した前記燃料の種類から求まる輻射受熱量が、前記放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる地点を
、部署位置候補として選出する第1選出部、
前記第1選出部が選出した部署位置候補の中から、前記放水砲ロボットに搭載された風センサによって測定された前記プラント内の風向に基づいて
火災箇所の施設に対して風上とな
る部署位置候補
を選出する第2選出部、及び
前記第2選出部が選出した前記風上となる部署位置候補の中からの一の選択を操作者から受け付ける受付部
として機能させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット部署位置計算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放水砲から放水された水の着水点制御については、予め座標系が決められた閉じられた空間における制御方法が提案されている。例えば、固定設置された放水砲について、火源位置に消火用水を落下させるための、放水砲の俯仰角及び旋回角の制御方法が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
また、石油タンク火災に対する消火設備や防災資機材の部署位置を計画するために、火災現象が起こるための種々のファクターを考慮しながら火災・消火現象を数値解析し、視覚的に表示するシミュレーションプログラムが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-042128号公報
【文献】特開平08-141103号公報
【文献】特開2006-317814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、放水軌跡のシミュレーション結果を基に防災資機材(大容量泡放水砲等)の部署位置を決定する手法が提案されているが、計算結果が算出されるまでに長い時間を要し、火災現場のように相応性が求められ、更には環境(風向風速や火災状況)が時々刻々と変化する現場では使用できなかった。
【0006】
また、従来技術では消火設備である放水砲が固定されており、かつその防護(放水)区画の座標が定められていることを条件として、風向風速に応じた放水砲の俯仰角及び旋回角の補正式を予め組み立てて、風に影響されることなく火源位置に消火用水を落下させることが可能であった。しかしながら、消火ロボットでは放水砲の設置位置や防護(放水)エリアが予め決定されていない場合、また防護(放水)区画が定められていない場合には、補正式を予め組み立てることが困難であり、従来技術を適用できなかった。
【0007】
本発明は上記問題点を解消するためになされたもので、放水砲を搭載して移動する放水砲ロボットにおいて、任意箇所で発生した火災の消火活動や冷却活動等に対して最適な部署位置を、高速で精度よく計算することができるロボット部署位置計算装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の態様に係るロボット部署位置計算装置は、放水砲ロボットの部署位置候補を計算するロボット部署位置計算装置であって、データの入力画面を表示部に表示すると共に、入力部によって指定された火災箇所又は活動対象又は活動内容を受け付けることで、前記火災箇所における火災現象を数値計算するためのデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得したデータ、及び構内道路を表す電子地図に基づいて、前記火災箇所における火災現象を数値計算し、前記火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ前記活動対象の位置に対して風上側であり、かつ前記構内道路内であり、かつ前記放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、前記放水砲ロボットの部署位置候補として計算する状況解析部と、を含んで構成されている。
【0009】
第2の態様に係るロボット部署位置計算プログラムは、放水砲ロボットの部署位置候補を計算するためのロボット部署位置計算プログラムであって、コンピュータを、データの入力画面を表示部に表示すると共に、入力部によって指定された火災箇所又は活動対象又は活動内容を受け付けることで、前記火災箇所における火災現象を数値計算するためのデータを取得するデータ取得部、及び前記データ取得部によって取得したデータ、及び構内道路を表す電子地図に基づいて、前記火災箇所における火災現象を数値計算し、前記火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ前記活動対象の位置に対して風上側であり、かつ前記構内道路内であり、かつ前記放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、前記放水砲ロボットの部署位置候補として計算する状況解析部として機能させるためのプログラムである。
【0010】
第1の態様及び第2の態様によれば、火災箇所における火災現象を数値計算し、火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ前記活動対象の位置に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、放水砲ロボットの部署位置候補として計算することにより、リアルタイムで放水砲ロボットの部署位置を適切に計算することができる。
【0011】
また、前記状況解析部は、前記データ取得部によって取得したデータと、センサによって計測された風向及び風速と、構内道路を表す電子地図と、前記放水砲ロボットの放水角毎に予め定められた放水軌跡の近似曲線のデータとに基づいて、前記活動対象に対して最適な放水角度を算出し、放水軌跡に対する風向及び風速の影響度合いと、放水軌跡に対する放射消火薬剤の種類の影響度合いと、放水軌跡に対する放水圧力の影響度合いと、をそれぞれ無次元化係数として表現したものを、前記放水角度に応じた前記放水軌跡の近似曲線へ乗積させることにより、放水軌跡に対する複数の風向及び前記風速に応じた放水軌跡の近似曲線のデータを生成し、前記生成された前記放水軌跡の近似曲線のデータを用いて、前記放水砲ロボットの部署位置候補を計算することができる。これにより、種々活動条件に応じた放水軌跡の近似曲線を高速で組立て、前記部署位置候補を高速で算出することができる。
【0012】
また、前記状況解析部は、複数の部署位置候補が計算された場合、前記複数の部署位置候補の各々について、部署位置余裕度を計算し、前記複数の部署位置候補の各々を、前記部署位置余裕度と共に前記表示部に表示させることができる。これにより、操作者の部署位置決定を手助けすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様であるロボット部署位置計算装置及びプログラムによれば、火災箇所における火災現象を数値計算し、火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ活動対象の位置に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、放水砲ロボットの部署位置候補として計算することにより、リアルタイムで放水砲ロボットの部署位置を適切に計算することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る消火システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る消防ロボット制御装置として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る消防ロボット制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る消防ロボット制御装置における消防ロボット制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る消防ロボット制御装置における放水角を再計算する処理の流れを示す処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態では、石油コンビナート等の大規模・特殊な災害時において、消火活動や冷却散水活動等を自律的に行う消防システムについて説明する。
【0017】
消防システムにおいて実装されたプログラムでは、操作者が、GUIに表示された電子地図から火災箇所(石油タンク、防油堤、その他任意箇所等)や活動対象(石油タンク、防油堤、その他任意施設等)及び消火活動内容(泡消火、消火、冷却散水等)を任意に選択すると、上記選択肢毎に設定される放水目標位置や火災箇所の規模、現場環境の風向風速等に応じて放水砲ロボットの部署位置候補を、自動的に複数個所算出する。
【0018】
電子地図については、消防ロボット制御装置に搭載されたGPSセンサによって得られる位置情報を基に、消防ロボットが活動する付近の電子地図を制御装置が自動的に取得する。また、火災位置が予めわかっている場合は本電子地図上に当該位置を設定可能である。
【0019】
取得された電子地図を基に、操作者は火災箇所と活動対象と活動内容を指定すると、上記選択肢毎に設定される放水目標位置や火災箇所の規模、現場環境の風向風速等に応じて放水砲ロボットの部署位置候補を、自動的に複数個所算出する。なお、火災位置や活動対象、および活動内容の決定は、予め実施される偵察ロボットによる偵察結果も反映でき、操作者が行う。
【0020】
また、部署位置候補が複数算出される場合を考慮し、各部署位置候補での種々パラメータ(風向風速の変化に対応できる範囲、部署位置から水源までの距離等)に対する余裕度を算出し、表示することで、操作者の部署位置決定を手助けする。
【0021】
更に、放水砲ロボットが上記部署位置候補の何れか一か所に部署した後、上記放水目標位置へ放水又は泡放射するために最適な放水砲の俯仰角及び旋回角を再度算出し、放水砲ロボットに出力する。なお放水後においても、上記電子地図上で放水目標位置や活動内容を任意に変更可能である。
【0022】
なお放水砲ロボットが何れか一か所に部署した後、当該位置にてロボット搭載のGPSによる部署位置座標の取得、及びロボット搭載の風向風速計による部署位置風向風速の取得を行い、上記放水目標位置の座標との位置関係を基に放水又は泡放射するために最適な放水砲の俯仰角及び旋回角を算出する。この時、当該角度が算出されれば当該値を放水砲ロボットに出力し、算出されなければ再度上記部署位置候補の算出を行い、現在の部署位置から最も近い算出された位置へ自動的に移動する(算出されない場合とは、例えば部署位置に到着するまでに風向きが大きく変わり目標位置へ水が届かなくなる場合である。あるいは、算出されない場合とは、自動運転の精度の問題から出力されたロボット部署位置と実際の部署位置がずれ、目標位置へ水が届かなくなる場合等である)。
【0023】
このように、本発明の実施の形態に実装されたプログラムでは、石油コンビナート等の大規模・特殊な災害時において、運用者が指定した消火活動内容及び消火活動対象に応じて放水砲ロボットの部署位置を算出する。本算出結果を基に、放水砲ロボットは放水可能な部署位置まで自律移動し、指定内容に沿った放水、消火活動を行う。また、操作者(運用者)は火源から離れた安全な場所で、消火活動の指示や監視を行うことができる。
【0024】
また、本発明の実施の形態は、防護空間が広域な(防護空間が予め限定されてない)系において、指定した火源情報に基づいて、各種数値計算値から放水砲ロボットの部署位置を決定することを特徴とする。
【0025】
また、システム操作者(消火活動を行う隊員など)が、複数の部署候補位置の中から、直感的に最適な部署位置を選択できるように、部署位置候補のランク付けを行うことを特徴とする。また、ランク付けの基準は、部署位置自由度、搬送車(ポンプ車)などの水源位置までの距離、風向きに対する余裕、危険度(火元からの距離)などとする。
【0026】
また、放水砲ロボットが部署した座標、部署環境、及び火源情報に応じて、放水砲の最適な俯仰角及び旋回角を算出することを特徴とする。
【0027】
また、放水軌跡曲線の簡易化(高次式による近似、係数のテーブル化)により、部署位置を高速に算出することを特徴とする。
【0028】
<システム構成>
以下、本発明の実施の形態に係る消火システムについて説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る消火システム100は、消防ロボット制御装置10と、飛行型偵察ロボット60と、走行型偵察ロボット70と、放水砲ロボット80と、を備えている。飛行型偵察ロボット60と走行型偵察ロボット70との各々は、消防ロボット制御装置10と無線通信により接続されている。放水砲ロボット80は、消防ロボット制御装置10と有線又は無線通信により接続されている。
【0030】
飛行型偵察ロボット60は、消防ロボット制御装置10からの指令に応じて飛行し、搭載したカメラによって撮影された画像、及びGPS等により計測した自装置の位置情報を、消防ロボット制御装置10へ送信する。
【0031】
走行型偵察ロボット70は、消防ロボット制御装置10からの指令に応じて地上を走行し、搭載したカメラによって撮影された画像、及びGPS等により計測した自装置の位置情報を、消防ロボット制御装置10へ送信する。
【0032】
放水砲ロボット80は、ポンプ車から送られてきた水又は泡消火薬剤を放射する放水砲80Aを備えている。放水砲ロボット80は、消防ロボット制御装置10からの指令に従って、放水砲80Aによる放水を制御する。具体的には、消防ロボット制御装置10からの指令に従って、放水砲80Aの俯仰角及び旋回角を制御すると共に、放水砲80Aの放水量を制御する。また、放水砲ロボット80は、搭載した風センサによって検出したセンサ情報、及びGPS等により計測した自装置の位置情報を、消防ロボット制御装置10へ送信する。
【0033】
<消防ロボット制御装置の構成>
図2に示すように、消防ロボット制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0034】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、放水砲ロボットを制御するための消防ロボット制御プログラムが格納されている。消防ロボット制御プログラムは、1つのプログラムであっても良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であっても良い。
【0035】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0036】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0037】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0038】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0039】
次に、消防ロボット制御装置10の機能構成について説明する。
図3は、消防ロボット制御装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0040】
消防ロボット制御装置10は、機能的には、
図3に示すように、火災箇所受付部21、活動対象受付部20、放水目標計算部22、部署位置候補計算部24、部署位置選択受付部26、ロボット制御部28、計測データ取得部30、及び放水角再計算部32を備えている。なお、火災箇所受付部21及び活動対象受付部20はデータ取得部の一例であり、放水目標計算部22及び部署位置候補計算部24は、状況解析部の一例である。
【0041】
火災箇所受付部21は、データの入力画面を表示部16に表示すると共に、入力部15によって指定された火災箇所を受け付けることで火災箇所における火災現象を数値計算するためのデータを取得する。 活動対象受付部20は、データの入力画面を表示部16に表示すると共に、入力部15によって指定された活動対象及び活動内容を受け付けることで、火災箇所における火災現象を数値計算するためのデータを取得する。
【0042】
具体的には、活動対象として、対象地域やプラント名称を選択し、また、消防ロボット制御装置10に搭載されたGPSセンサを基に、消防ロボットが存在する箇所(プラントや地域)の地図をインターネット経由で自動的に取得する。
【0043】
また、選択されたプラント名に含まれる施設から、火災位置(石油タンク番号、防油堤番号、その他任意箇所等)の設定や活動対象(石油タンク番号、防油堤番号、建造物等)の選択をおこなう。ここで、例えば石油タンクにおいては、タンク番号に対して、タンクの形状(タンクの半径、タンクの高さ)や貯蔵している油種、貯蔵量等が予め紐づけられており、選択内容に応じて火災現象のパラメータが読み込まれる。なお、これらを手動で入力してもよい。
【0044】
また、活動内容として、泡消火活動、消火活動、及び冷却散水活動の何れかを選択する。ここで、泡消火放射とは、タンク内に、泡消火薬剤を水で一定希釈した水溶液及び、それが空気と撹拌、混合されて発生した消火泡を入れる活動である。泡消火活動での目標は、石油タンクや防油堤等が主であり、前者であればタンク側壁を越えて油面又はタンク内に存在する浮き屋根(水平面)に目標が設定され、後者であれば防油堤を越えて防油堤内に目標が設定される。ただし、これら目標は、電子地図上で任意に設定もできる。
【0045】
また、冷却散水活動とは、燃えているタンクの側板、隣接するタンクや施設、任意の施設へ水をかけて冷やす活動である。また、燃料の種類によってはタンク内部に水放射する消火活動も選択可能である。そのため放水は放物線を描き、タンク側壁(垂直面)に目標が設定される。なお高さ方向の位置の初期設定値は例えばタンク高さの2/3であり、変更可能である。消火活動とは、操作者が指定した位置に放水する活動である。地図上で位置を選択し、高さを入力することで目標位置を設定される。同時に対象が水平面か垂直面かも操作者が指定する。
【0046】
放水目標計算部22は、活動対象受付部20で指定された内容に応じて、当該内容を実施するにあたり最適な放水目標位置を算出する。例えば、活動対象として「石油タンク」が、活動内容として「泡消火活動」が選択された場合、放水は放物線を描き、タンク側壁を越えて油面又は屋根(水平面)に放水目標位置が設定される。また、活動対象として「防油堤」が、活動内容として「泡消火活動」が選択された場合、放水は放物線を描き、防油堤を越えて防油堤内に放水目標位置が設定される。また水平方向の放水目標位置の初期設定値は、例えば、タンクの中心であり、任意箇所へ放水目標位置を修正することも可能である(電子地図にて放水目標位置を任意に設定可能である)。また垂直方向については、例えば石油タンク火災の場合、タンク形状とタンク内の燃料貯蔵量から油面高さを求め、当該タンクの中心かつ、油面高さの位置を放水目標位置として算出する。
【0047】
また、活動対象として「石油タンク」が、活動内容として「冷却散水活動」が選択された場合、放水は放物線を描き、タンク側壁(垂直面)に放水目標位置が設定される。なお高さ方向の放水目標位置はタンク高さの2/3となる。また、地図上で位置を選択し、高さを入力することで任意の箇所及び高さを放水目標位置として設定できる。同時に対象が水平面か垂直面かも操作者が指定できる。
【0048】
このように、本実施の形態では、活動の内容及び活動の対象となる施設を指定する事により、放水目標位置が自動的に決定される。あるいは、地図上の任意の点を指定することにより、当該指定された点が放水目標位置として設定される。
【0049】
部署位置候補計算部24は、火災箇所受付部21および活動対象受付部20によって取得したデータ、放水目標位置、及び構内道路を表す電子地図に基づいて、火災箇所における火災現象を数値計算し、活動対象の位置に対して風上側であり、かつ火災箇所に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボット80の耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、放水砲ロボット80の部署位置候補として計算する。
【0050】
具体的には、部署位置候補計算部24は、火災箇所受付部21および活動対象受付部20によって取得したデータに含まれる、火災箇所(タンクや防油堤等)の形状、火災箇所に貯蔵されている燃料の種類、火災箇所と放水砲ロボット80との位置関係、及び電子地図に基づいて、放水砲ロボット80における輻射受熱量を計算し、放水砲ロボット80の部署位置が構内道路内に制限されるように、電子地図上に制限を付与した上で、計算された輻射受熱量と、放水砲ロボット80に搭載された風向風速計(図示省略)により測定された複数の風向風速値とを用いて、放水砲ロボット80の耐輻射熱性能値以下となる部署位置候補であって、火災箇所の位置に対して風上側であって、活動対象の位置に対して風上側の部署位置候補を計算する。
【0051】
部署位置候補について、一例として石油タンクの消火をする場合は、対象の石油タンクの高さを越えて放水又は泡消火でき、かつ放水を高く上げすぎない俯仰角の範囲を決定し、当該範囲に踏まれる角度それぞれに対応する放水軌跡式と、風向風速とに基づいて、放水の有効射程内となる部署位置を算出する。
【0052】
また、一例として任意施設を冷却する場合、対象の任意施設の高さの2/3の位置に放水でき、かつ放水を高く上げすぎない俯仰角の範囲を決定し、当該範囲に踏まれる角度それぞれに対応する放水軌跡式と、風向風速とに基づいて、放水の有効射程内となる部署位置を算出する。
【0053】
そして、部署位置候補計算部24は、放水軌跡と、活動対象の形状と、活動対象に貯蔵されている燃料の貯蔵量とに基づいて、放水角を決定し、放水角と、風センサにより測定された風速及び風向と、放水軌跡とに基づいて、放水の有効射程内となる部署位置を計算する。そして、部署位置候補計算部24は、火災箇所に対して風上側であり、かつ活動対象の位置に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所として、部署位置候補を計算する。
【0054】
例えば、以下の条件1~条件5をすべて満たす箇所を、放水砲ロボット80の部署位置候補として算出し、表示部16により表示する。
【0055】
条件1:放水砲ロボット80の耐輻射熱性能値(例えば20kW/m2)以下の場所であること。ただし、輻射熱についても、油種や貯蔵タンクの形状を基に、「石油コンビナートの防災アセスメント指針(平成25年3月、消防庁特災室)」記載の輻射熱算出式を用いて算出を行う。
【0056】
条件2:電子地図における道路上に部署すること。
【0057】
条件3:放水砲ロボット80に搭載している放水砲ノズルに応じた有効射程内に部署すること。
【0058】
条件4:冷却散水の場合は放水目標位置への放水が可能な場所に部署すること。石油タンク火災への泡消火放射の場合は泡が石油タンク側板を超えて内部に有効に入る高さへの放水が可能な場所に部署すること。
【0059】
条件5:活動対象および火災箇所に対し風上側に部署すること。
【0060】
部署位置候補計算部24は、複数の部署位置候補が計算された場合、複数の部署位置候補の各々について、部署位置余裕度を計算し、複数の部署位置候補の各々を、部署位置余裕度と共に表示部16に表示させる。
【0061】
具体的には、部署位置候補計算部24は、放水砲ロボット80の部署が可能なエリアである複数の部署位置候補の各々について、4種類の部署位置余裕度として、エリアの大きさに応じた部署位置自由度、放水の水源位置までの距離に応じた余裕度、風向と放水方向との関係に応じた風向き余裕度、及び輻射受熱量を考慮した危険度に応じた余裕度を計算する。
【0062】
ここで、部署位置自由度は、部署位置候補のエリアの面積が大きいほど余裕度が高くなる。水源位置までの距離に応じた余裕度は、部署位置候補から水源である搬送車までの距離が小さいほど余裕度が高くなる。風向き余裕度は、放水位置から放水対象までの角度と、風向との差が小さいほど余裕度が高くなる。危険度に応じた余裕度は、輻射受熱量が低い(部署位置が火元から遠い)ほど余裕度が高くなる。
【0063】
また、本実施の形態では、部署位置候補を計算する際に、計測された風速に基づいて、放水砲ロボット80の放水角毎に予め定められた放水軌跡の近似曲線のデータを取得し、放水軌跡として、放水軌跡の近似曲線のデータを用いて、部署位置候補を計算する。
【0064】
具体的には、放水の有効射程内となる場所を求める際に、放水砲の俯仰角及び風速に基づいて決定される放水軌跡の近似曲線を用いて算出される、上記放水目標位置への放水が可能な場所を求める。
【0065】
このとき、放水軌跡について、予め各放水砲俯仰角で放射された水滴(ならびに水柱)に対して運動方程式を解き、放水軌跡実測値での補正ののち算出された放水曲線を当該角度別に高次式で予め近似表現する。本手法により、任意角度での放水曲線について、各次数に係る係数を参照し、簡易的かつ素早く表現できるようになる。
【0066】
また、上記係数に対して、放水軌跡に対する相対的な風向、風速や放射物体(水/泡消火薬剤)、放水圧力による放水曲線への影響を無次元化した係数をそれぞれ乗積させることで、有風下等の各種条件において、精度良く放水軌跡の近似曲線を表現できる。本放水軌跡の近似曲線を用いて、部署位置候補を計算する。
【0067】
ここで、放水軌跡の近似曲線の具体例について説明する。水を標準放射量(例えば4000L/min)かつ無風環境下で放射した場合の放水軌跡について、運動方程式を基に俯仰角別に作成し、それぞれ4次関数で近似式を作成した。更に各近似関数の係数に対して、風向風速や放水物質の影響を無次元化して積算することで、近似曲線を数学的に伸縮させ、種々条件の放水軌跡を簡易的に表現可能とした。
【0068】
例えば、放水軌跡式は以下の式に示す4次関数で近似的に表される。
【0069】
【0070】
上記(1)式のWは、放射圧力に係る無次元パラメータとなり、標準放射量(4000L@1MPa)を基準として標準放射圧力が1.0MPa未満の場合はW<1.0となり、1.0MPaを超える場合はW>1.0となる。なお、基本は標準放射圧力を使用するため、W=1となる。
さらに同式において定数を纏めて
【0071】
【0072】
と置くことで、最終的に以下の式で放水軌跡式は表現される。
【0073】
【0074】
ここで同式について、xは放水砲ロボット80と放水目標位置を結ぶ水平方向座標、yは高さ方向座標である。また、a,b,c,d,eは放水砲の俯仰角毎に固有値となる各係数であり、hは放水対象が位置する地盤面に対する放水砲ロボット80の部署位置の地盤面の相対高さである。また、Nは安全率、Mは風によるx方向着水点増減係数、Kは泡放射低減係数、αは放水砲ロボット80と放水目標位置を結ぶ直線と風向の相対角度である。ここで安全率Nはプログラム上の変数として任意に変更可能(100<N<200)とするが、初期値は120[%]と設定しておく。更に泡放射低減係数Kについては、プログラム上の変数として任意に変更可能(0.0<K<1.0)とするが、水放射時は固定値1.0とし、泡放射時は初期値0.85とする。また角度αは、放水砲ロボット80と放水目標位置を結ぶ直線を基準0[°]とし、放水砲ロボット80に対して左側をプラス、右側をマイナスとする。すなわちαが、-90°(+270°)~0°~+90°の場合は追い風での放水となり、+90°~+180°~+270°の場合は向い風での放水となる。なお、hについては、最初の部署位置項の算出時において、電子地図のデータに高さ情報が含まれている場合は当該値を使用するが、含まれない場合は放水対象と放水砲ロボット部署位置のそれぞれの地盤面に差がないと仮定しh=0とする。また、実際に放水砲ロボットが部署位置に部署した場合において、GPS情報を基に高さ情報が取得可能であれば、それを用いてもよい。
【0075】
ここで、放水砲俯仰角別のa,b,c,d,eを予め定めたテーブルと、放水砲の俯仰角別及び風速別のx方向増減係数Mを予め定めたテーブルをストレージ14に格納しておく。そして、放水砲ロボット80の部署位置候補の算出においては、当該テーブルを参照し、任意の放水角及び風速における放水軌跡式を得る。
【0076】
部署位置選択受付部26は、表示部16に表示された部署位置候補のうち一か所の選択を受け付け、放水砲ロボット80のスタート位置から選択された箇所に対して電子地図を基に最短経路を生成する。
【0077】
操作者が、部署位置候補を選択する際に、部署位置候補毎の余裕度表示等を参考に、実際の部署位置を選択する。また、表示部16により画面上に表示された複数の部署位置候補うち、操作者が一箇所の部署位置を選択することで、部署位置までの最短ルート候補が矢印線で地図上に表示される。なおルート候補として最短ルートが複数算出される場合、飛行型偵察ロボット60又は走行型偵察ロボット70による偵察結果等を基に、操作者が何れかの最短ルートを選択する。
【0078】
ロボット制御部28は、部署位置選択受付部26により選択された部署位置までの最短ルートに従って放水砲ロボット80を移動させる指令を出力する。これにより、放水砲ロボット80は、選択された部署位置へ移動する。
【0079】
計測データ取得部30は、選択された部署位置へ放水砲ロボット80が移動した後、飛行型偵察ロボット60又は走行型偵察ロボット70による偵察結果に基づいて、移動後の放水砲ロボット80の部署位置と、放水砲ロボット80に搭載された風センサにより測定された風向及び風速を取得する。
【0080】
放水角再計算部32は、消火活動対象の形状と、計測データ取得部30により得られた、放水砲ロボットの位置、及び測定された風向及び風速とに基づいて、放水砲ロボット80の放水角を計算する。
【0081】
具体的には、放水砲ロボット80が何れか一か所に部署した後、当該位置にて放水砲ロボット80搭載のGPSセンサで部署位置座標を取得し、上記放水目標位置の座標との位置関係を基に放水又は泡放射するために最適な放水砲80Aの俯仰角及び旋回角を算出する。このとき、当該角度が算出されれば当該値を放水砲ロボット80に出力し、角度が算出されなければ、再度上記部署位置候補の算出を行い、算出された位置のうち、現在の部署位置から最も近い位置へ自動的に移動する。なお、角度が算出されない場合とは、例えば部署位置に到着するまでに風向が大きく変わり目標位置へ水が届かなくなる場合である。また、角度が算出されない場合とは、自動運転の精度の問題から出力されたロボット部署位置と実際の部署位置がずれ、目標位置へ水が届かなくなる場合等である。自律移動の後、再度GPSセンサで部署位置座標を取得し、上記放水目標位置の座標との位置関係を基に放水又は泡放射するために最適な放水砲の俯仰角及び旋回角を算出する。
【0082】
<消火システムの作用>
次に、本発明の実施の形態に係る消火システム100の作用について説明する。まず、火災が発生している際に、消防ロボット制御装置10によって、
図4に示す消防ロボット制御処理ルーチンが実行される。
【0083】
ステップS100では、火災箇所受付部21及び活動対象受付部20は、表示部16のインタフェース画面にて現場周辺の電子地図を表示すると共に、複数の環境情報(風向風速や、飛行型偵察ロボット60又は走行型偵察ロボット70で撮影した現場写真、火災箇所、燃えている燃料種)を表示する。操作者は、上記複数の環境情報を基に、火災箇所、消火活動対象(石油タンク、防油堤、施設)や活動内容(泡消火活動、消火活動、冷却活動等)の指定をインタフェース画面にて行う。
【0084】
ステップS102では、放水目標計算部22は、指定された内容に応じて、当該内容を実施するにあたり最適な放水目標位置を算出する。
【0085】
ステップS106では、部署位置候補計算部24は、活動対象の位置に対して風上側であり、火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボット80の耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、部署位置候補として計算する。
【0086】
そして、ステップS108では、部署位置選択受付部26は、計算された部署位置候補を、インタフェース画面に表示する。ステップS110において、操作者は、環境情報を参考に、インタフェース画面上に表示された複数の部署位置候補から実際に放水砲ロボット80が部署する位置を一か所選択する。これにより、部署位置選択受付部26は、選択された部署位置を受け付ける。
【0087】
ステップS112において、ロボット制御部28は、上記ステップS110の選択結果に応じて、放水砲ロボット80に対して指令を送信する。これにより、放水砲ロボット80が、選択された部署位置まで移動する。
【0088】
ステップS114において、放水砲ロボット80は、実際に放水砲ロボット80が部署した位置と、部署位置の風向風速とを計測して、消防ロボット制御装置10へ送信し、計測データ取得部30は、実際に放水砲ロボット80が部署した位置と放水目標位置との位置関係、及び部署位置の風向風速を含む計測データを取得する。ステップS116では、放水角再計算部32は、計測された放水目標位置との位置関係、及び風向風速に基づいて、放水角を再計算する。
【0089】
上記ステップS116は、
図5に示す処理ルーチンによって実現される。
【0090】
ステップS120では、放水砲ロボット80の部署位置と放水目標位置を結ぶ水平距離x=L及び、油面高さy=hfの算出を行う。
【0091】
ステップS122では、上記式(3)に対してx=L(L>0)を代入して得られるf(L)を、俯仰角θ=20°~80°まで1°毎に算出する。なお、ここで得られたf(L)は、放水砲ロボット80からx方向にLだけ離れた場所(放水目標位置)における放水軌跡のy方向高さとなる。したがって、油面高さy=hfと最も近い数値を示すf(L)に該当する俯仰角が、最適な俯仰角となる。なお、最適な俯仰角が2通り以上算出された場合は、最も低い俯仰角を採用する。ただし算出された俯仰角においては、放水がタンク壁面にあたり放水目標位置へ水が届かない条件である可能性がある。したがって算出では、上記式(3)に対してx=L-D/2を代入して得られる解f(L-D/2)を同時に算出し、以下の式を満たす俯仰角範囲のみを算出対象とする。なお同式中のHは放水対象高さ、hmは余裕幅である。またhmはプログラム上の変数として任意に変更可能とするが、初期値は1[m]と設定しておく。
【0092】
【0093】
ステップS124では、放水目標位置と放水砲ロボット80の部署位置を結ぶ直線を基準として、放水砲ロボット80の部署方向の相対角度βを算出する。なおβは放水対象物と放水砲ロボット80を結ぶ直線を、放水砲ロボット80から見て、左側をプラス、右側をマイナスと定義して算出する。ただしβについて、放水砲ロボット80の部署向きが出力されない場合は算出できないため、この場合は放水砲ロボット80が放水目標位置に正対しているもの(β=0)と仮定し、以降の計算を行うものとする。
【0094】
ステップS126では、風による放水軌跡のズレを補正するための補正角度γを算出する。算出においては、上記ステップS122で得られた俯仰角及び風速に対応する放水軌跡式y=f(x)において、y=0となる解(10<x)のうち最小解xLを算出する。
【0095】
ここで得られた解xLは、当該条件下における放水砲ロボットから着水点までの水平方向距離となる。したがってγは、xLを用いて以下の式から算出される。
【0096】
【0097】
なお、上記式において、Kは風速によるz方向着水点増減係数、αは放水砲ロボット80と放水目標位置を結ぶ直線と風向の相対角度である。ここで、風速によるz方向増減係数Kは、俯仰角及び風速の組み合わせ毎に予め定められている。
【0098】
ここでγは-90°~+90°の範囲で算出されるが、放水砲ロボット80と放水目標位置を結ぶ直線を基準(0°)とし、放水砲ロボット80に対して左側をプラス、右側をマイナスとする。参考として、補正角度β及び補正角度γのイメージを
図6に示す。
【0099】
ステップS128では、放水砲80Aの旋回角ζを、部署向きに対する補正角度βと風向を考慮した補正角度γの和として算出する。なお同式の通り、放水砲ロボット80の部署方向が出力されない場合(β=0)は、算出されたγがそのまま旋回角ζとして出力されることとなる。
【0100】
【0101】
ステップS130では、上記ステップS122で算出された俯仰角及び上記ステップS128で算出された旋回角を含む指令を、放水砲ロボット80に対して送信し、処理ルーチンを終了する。
【0102】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る消火システムによれば、火災箇所における火災現象を数値計算し、火災箇所の位置に対して風上側であり、かつ活動対象の位置に対して風上側であり、かつ構内道路内であり、かつ放水砲ロボットの耐輻射熱性能値以下となる場所であり、かつ放水の有効射程内となる場所を、放水砲ロボットの部署位置候補として計算することにより、リアルタイムで放水砲ロボットの部署位置を適切に計算することができる。
【0103】
また、消防隊員は、消火活動を遠方の安全な場所から実施することが可能となり、大規模・特殊な災害に対する消火活動の安全性が向上する。また、本実施の形態に係る消防ロボット制御装置では種々の火災状況を素早くシミュレーション可能であり、より精度の高い防災計画を実現できる。
【0104】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0105】
例えば、上記の実施の形態では、石油コンビナート等の大規模・特殊な災害時に対応する消火システムを例に説明したが、これに限定されるものではなく、一般火災や原子力施設における冷却水損失等の有事にも対応可能である。
【0106】
また、普通泡放水砲、或いは大容量泡放水砲などの防災資機材の配置計画や、各種防災計画等にも有用である。
【0107】
また、電子地図は日本全国をカバーしており、各自治体消防が保有する消防車両等に対しても、本発明を適用してもよい。これにより、火災に対して消火活動をどこから実施すればよいか等、効果的な消火活動が可能となる。
【符号の説明】
【0108】
10 消防ロボット制御装置
15 入力部
16 表示部
20 活動対象受付部
21 火災箇所受付部
22 放水目標計算部
24 部署位置候補計算部
26 部署位置選択受付部
28 ロボット制御部
30 計測データ取得部
30 測定データ取得部
32 放水角再計算部
60 飛行型偵察ロボット
70 走行型偵察ロボット
80 放水砲ロボット
80A 放水砲
100 消火システム