(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】栽培施設の熱交換システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240806BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20240806BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G9/24 R ZAB
A01G31/00 612
(21)【出願番号】P 2020120786
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(73)【特許権者】
【識別番号】514231295
【氏名又は名称】株式会社テヌート
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-000865(JP,B2)
【文献】特開2009-236329(JP,A)
【文献】特開2012-075329(JP,A)
【文献】特開2020-000018(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058347(WO,A1)
【文献】特開平08-228596(JP,A)
【文献】特開2016-116451(JP,A)
【文献】特開2020-000009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/24
A01G 31/00
F24F 3/00- 3/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を栽培する栽培施設の熱交換システムであって、
前記栽培施設内の空気を前記施設外に取り出す空気取出し手段と、
前記空気取出し手段により取り出された空気を移送する第一の配管と、
前記栽培施設外に設けられ、冷媒が収容された第一の冷却タンクと、
前記空気取出し手段によって前記栽培施設から取り出され、前記第一の配管により移送された空気を前記栽培施設内に放出する放出部とを備え、
前記第一の配管は、その一部が前記第一の冷却タンク内に収容された前記冷媒内に配置されたことを特徴と
し、さらに、
前記栽培施設内に設けられた温度センサと、
前記第一の配管内を移送される空気の流路を開閉する第一の流路開閉手段と、
前記放出部において前記栽培施設内に放出される炭酸ガスの供給源と、
前記供給源から供給される炭酸ガスを移送する炭酸ガス供給管と、
前記栽培施設内の炭酸ガス濃度を測る炭酸ガス濃度センサと、
前記炭酸ガス供給管内を移送される炭酸ガスの流路を開閉する第二の流路開閉手段を備え、
前記空気取り出し手段は、作物を栽培する栽培槽の上方において、前記栽培槽の長手方向に延びるよう配設された第1の多孔管により空気を吸引するように構成され、
前記放出部は、前記栽培槽の上面近傍に配設され、かつ、前記栽培槽の長手方向に延びるよう配設された第2の多孔管により、炭酸ガスを混合した空気を供給するよう構成されたことを特徴とする栽培施設の熱交換システム。
【請求項2】
前記空気取出し手段が、少なくともその一部が前記栽培施設内に配置された第一の多孔管であって、前記栽培施設内の空気を取り出す第一の多孔管を備え、
前記放出部が、前記栽培施設内に配置された第二の多孔管であって、前記第一の配管により移送された空気を前記栽培施設内に放出する第二の多孔管を備えたことを特徴とする請求項1に記載の栽培施設の熱交換システム。
【請求項3】
前記第一の冷却タンク内の冷媒内に配置された前記第一の配管の部分が、金属により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の栽培施設の熱交換システム。
【請求項4】
さらに、前記栽培施設内に設けられた栽培槽から水耕液を前記栽培施設外に取り出すポンプと、
前記ポンプにより取り出された前記水耕液を移送する第二の配管とを備え、
前記第二の配管の一部が、前記第一の冷却タンク内に収容された冷媒内または第二の冷却タンク内に収容された冷媒内に配置され、
前記第二の配管が下流端側において、前記栽培施設の前記栽培槽内に開口していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の栽培施設の熱交換システム。
【請求項5】
前記第一の冷却タンクまたは前記第二の冷却タンク内の冷媒内に配置された前記第二の配管の部分が、金属により形成され
、かつ、螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項4に記載の栽培施設の熱交換システム。
【請求項6】
前記冷媒が水であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の栽培施設の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培施設内の空気を冷却する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の栽培施設においては、季節によっては施設内の空気の温度が、栽培する植物の生育に適した温度を超えてしまうという問題があった。
【0003】
たとえば、レタスやイチゴなどの作物を栽培する植物工場においては、光合成のための光を作物に当てるため、工場内の温度が高くなりすぎることが多々あり、そのために、工場内の空気を冷却する空調設備が広く使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、植物工場の一方の壁面に設けられた大型のファンと、これに対向する壁面に設けられた通気性のある大型のパッドと、パッドに霧を噴霧する噴水手段を備え、ファンを回転させることにより、外から湿らせたパッドを通して工場内に風を送り、水の気化熱を利用して工場内の空気を冷却するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような空調設備は、消費電力が非常に大きく、栽培施設内の空気の冷却にかかるランニングコストがかさむという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、栽培施設内の空気を低いランニングコストで、効果的に冷却することができる栽培施設の熱交換システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかかる目的は、
作物を栽培する栽培施設の熱交換システムであって、
前記栽培施設内の空気を前記施設外に取り出す空気取出し手段と、
前記空気取出し手段により取り出された空気を移送する第一の配管と、
前記栽培施設外に設けられ、冷媒が収容された第一の冷却タンクと、
前記空気取出し手段によって前記栽培施設から取り出され、前記第一の配管により移送された空気を前記栽培施設内に放出する放出部とを備え、
前記第一の配管は、その一部が前記第一の冷却タンク内に収容された前記冷媒内に配置されたことを特徴とする栽培施設の熱交換システム。
【0009】
本発明によれば、栽培施設内に存在する空気が、空気取出し手段によって施設外に取り出され、第一の冷却タンク内に収容された冷媒の中において、第一の配管内を移送される間に冷却された後に、放出部において、栽培施設内に放出されるから、栽培施設内の空気を冷却することができる。
【0010】
また、本発明によれば、栽培施設から取り出した空気を、第一の冷却タンク内の冷媒内を通過させるという簡潔な構成によって空気を冷却するから、ランニングコストを抑えることが可能になる。
【0011】
さらに、本発明によれば、栽培施設内に光を多く取り入れる場合であっても、熱交換システムによる栽培施設内の空気の冷却を行うことにより、栽培施設内の温度上昇を防止することができるから、光飽和点または光補償点が高い作物であっても栽培施設内で栽培することができ、したがって、多様な品種の作物を栽培することが可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、
前記空気取出し手段が、少なくともその一部が前記栽培施設内に配置された第一の多孔管であって、前記栽培施設内の空気を取り出す第一の多孔管を備え、
前記放出部が、前記栽培施設内に配置された第二の多孔管であって、前記第一の配管により移送された空気を前記栽培施設内に放出する第二の多孔管を備えている。
【0013】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、栽培施設の熱交換システムは、栽培施設内から空気を取り出す第一の多孔管と、栽培施設内に空気を放出する第二の多孔管を備えているから、多孔管に備わる多数の孔を通じて栽培施設内から空気が均一に取り出され、栽培施設内へ均一に空気が供給されるから、栽培施設内で風が発生する事態を効果的に防止することができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記第一の冷却タンク内の冷媒内に配置された前記第一の配管の部分が、金属により形成されている。
【0015】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、空気を移送する第一の配管において、冷媒内に配置される部分が、熱伝導率の高い金属によって形成されているから、第一の配管内を移送される空気を効率的に冷却することができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
さらに、前記栽培施設内に設けられた栽培槽から水耕液を前記栽培施設外に取り出すポンプと、
前記ポンプにより取り出された前記水耕液を移送する第二の配管とを備え、
前記第二の配管の一部が、前記第一の冷却タンク内に収容された冷媒内または第二の冷却タンク内に収容された冷媒内に配置され、
前記第二の配管が下流端側において、前記栽培施設の前記栽培槽内に開口している。
【0017】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、栽培槽内に収容された水耕液が、ポンプによって、栽培施設外に取り出され、第一の冷却タンクまたは第二の冷却タンク内に収容された冷媒内において、第二の配管内を移送される間に冷却された後に、栽培槽内に還流されるから、栽培槽内に収容された水耕液を効果的に冷却することができる。
【0018】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、ポンプによって栽培施設外に取り出された水耕液を、第二の配管内を移送された状態で、第一の冷却タンク内または第二の冷却タンク内に収容された冷媒内を通過させて冷却するように構成されているから、水耕液57に冷水を加えて冷却する場合のように、水耕液の成分、pH、電気伝導度などが変化することがない。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記第一の冷却タンクまたは前記第二の冷却タンク内の冷媒内に配置された前記第二の配管の部分が、金属により形成されている。
【0020】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、水耕液を移送する第二の配管において、冷媒内に配置される部分が、熱伝導率の高い金属によって形成されているから、第二の配管内を移送される水耕液を効率的に冷却することができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記冷媒が水である。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
さらに、前記栽培施設内に設けられた温度センサと、
前記第一の配管内を移送される空気の流路を開閉する第一の流路開閉手段と、
前記放出部において前記栽培施設内に放出される炭酸ガスの供給源と、
前記供給源から供給される炭酸ガスを移送する炭酸ガス供給管と、
前記栽培施設内の炭酸ガス濃度を測る炭酸ガス濃度センサと、
前記炭酸ガス供給管内を移送される炭酸ガスの流路を開閉する第二の流路開閉手段を備えている。
【0023】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、温度センサによって検出される栽培施設内の温度が高い場合には、空気取出し手段を駆動させて栽培施設内の空気の取り出しを開始すると同時に、第一の流路開閉手段を制御して空気の流路を開くことによって、放出部から冷却された空気を栽培施設内に供給することが可能になり、したがって、栽培施設内の空気を冷却することができる。
【0024】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、炭酸ガス濃度センサによって検出される栽培施設内の炭酸ガス濃度が低い場合には、第二の流路開閉手段を制御して炭酸ガスの流路を開き、炭酸ガスを栽培施設内へ供給することによって、栽培施設内で栽培される作物の光合成を促進させることができる。
【0025】
さらに、本発明のこの好ましい実施態様によれば、第一の冷却タンクを通過させることによって空気を冷却可能であると同時に、栽培施設内に炭酸ガスを供給可能に構成されているから、特許文献1に記載されたシステムを用いて、栽培施設2内に外気を取り込んで栽培施設2内の空気を冷却する場合のように、炭酸ガス供給源からの炭酸ガスの供給によって上昇された栽培施設内の炭酸ガス濃度が空気の冷却に伴って低下することがなく、効率的に栽培施設内の作物に炭酸ガスを供給することができると同時に、炭酸ガスの浪費を防止することができ、ランニングコストを抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、栽培施設内の空気が、空気取出し手段から取り出され、第一の冷却タンク内に収容された冷媒内に配置された配管内を通過する間に冷却された後に、栽培施設内に還流されるから、栽培施設内の空気を効果的に冷却することができると同時に、栽培施設から取り出した空気を、冷媒中に配置された配管内を通過させるという簡潔な構成によって空気を冷却するから、ランニングコストを抑えることが可能な熱交換システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる熱交換システムおよび熱交換システムが適用された栽培施設2の全体を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された矢印αの方向から見た熱交換システムの空気取出し手段の近傍の部分断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された熱交換システムの第一の冷却タンク内に配置された金属管の近傍の部分断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図1のX-X線に沿った栽培槽の近傍を手前側から見た部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された熱交換システムの制御系、検出系、駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図6】
図6は、栽培施設内の空気の冷却にかかる制御部による第一の冷却部の制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、制御部による栽培施設内への炭酸ガスの供給制御の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、栽培槽内に収容された水耕液の冷却にかかる制御部による第二の冷却部の制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる熱交換システムが適用された栽培施設内の栽培槽の近傍の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0029】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる熱交換システム1および熱交換システム1が適用された栽培施設2の全体を示す構成図である。
【0030】
本実施態様にかかる栽培施設2はリーフレタスを栽培するもので、
図1に示されるように、栽培施設2は、気密性が高く、略直方体状をなす建物を備えており、天面53と、図面左側かつ手前側に位置する壁29と、図面右側かつ手前側に位置する壁44と、図面左側かつ奥側に位置する壁66を備え、天面53は日光を取り入れ可能に構成されている。以下の説明において、栽培施設2の壁29側を「前」といい、その反対側を「後」という。また、壁66に対する壁44側を「手前」といい、その反対側を「奥」という。
【0031】
なお、
図1においては、天面53、壁29および壁44との間のそれぞれの境目を表す線が一点鎖線で示されており、栽培施設2の近傍のみならず、天面53、壁29および壁44を透けさせて、栽培施設2内をも視認できるようにした状態が
図1に示されている。
【0032】
図1に示されるように、栽培施設2内の下部には、リーフレタス34を水耕栽培するための栽培槽17が設けられている。
【0033】
図1に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかる熱交換システム1は、栽培施設2内の空気を冷却するための第一の冷却部21と、栽培施設2の下端部に設けられた栽培槽17内に収容された水耕液を冷却するための第二の冷却部22と、熱交換システム1全体の動作を制御する制御部9を備えている。
【0034】
図1に示されるように、第一の冷却部21は、栽培施設2内の空気を栽培施設2外に取り出す空気取出し手段3と、空気取出し手段3により取り出された空気を移送する第一の配管4と、冷水を貯蔵する第一の冷却タンク5と、栽培施設2内に供給する炭酸ガスを収容する炭酸ガスボンベ20と、第一の配管4に設けられ、冷却された空気の流路と炭酸ガスの流路とを開閉可能に構成された気体用バルブユニット19と、第一の配管4によって移送される冷却された空気または炭酸ガスを、栽培施設2内に放出する放出部6と、栽培施設2内のリーフレタス34の近傍の温度および炭酸ガス濃度を計測可能なセンサ手段11を備えている。
【0035】
第一の配管4は、第一の冷却タンク5内に収容された冷水内を延び、空気取出し手段3によって栽培施設2内から取り出された空気を冷却可能に構成されている。
【0036】
すなわち、第一の冷却部21においては、空気取出し手段3によって栽培施設2内から取り出された空気は、第一の冷却タンク5内に収容された冷水内にその一部が配置された第一の配管4内を流れて冷却され、放出部6において栽培施設2内の下部に放出される。
【0037】
図1に示されるように、第一の配管4は、空気取出し手段3に接続された第一の上流管41と、第一の冷却タンク5内に位置し、第一の上流管41の下端部に接続された金属管10と、金属管10および気体用バルブユニット19に接続された下流管42と、気体用バルブユニット19の下流側に接続された第一の供給管37を備えている。
【0038】
図1に示されるように、本実施態様においては、放出部6は多数の孔が形成されたパイプによって構成された第二の多孔管8を備えている。
【0039】
一方、
図1に示されるように、第二の冷却部22(図面右側)は、栽培槽17内に収容された水耕液を栽培施設2外へ送り出すポンプ14と、水耕液を移送する第二の配管15と、第二の冷却タンク16と、栽培槽17内において、水耕液の温度を測る第二の温度センサ30を備えている。
【0040】
図1に示されるように、第二の配管15は、その一端部がポンプ14に接続された第二の上流管43と、第二の冷却タンク16内に位置し、一方の端部が第二の上流管43の他端部に接続された金属管31と、その一端部が金属管31の他方の端部に接続され、他端部が栽培施設2内に設けられた栽培槽17内へ導かれた第二の供給管39を備えている。
【0041】
したがって、第二の冷却部22においては、栽培施設2内に設けられた栽培槽17からポンプ14によって取り出された水耕液は、第二の上流管43を介して、第二の冷却タンク16内に収容された冷水内を延びる金属管31に導かれて、冷却され、次いで、第二の供給管39を介して、栽培槽17にリサイクル(循環)される。
【0042】
図2は、
図1に示された矢印αの方向から見た熱交換システム1の空気取出し手段3の近傍の部分断面模式図であり、空気の流れは矢印付きの一点鎖線で示されている。
【0043】
図1および
図2に示されるように、空気取出し手段3は、栽培施設2の外部に設けられたエア圧送機25と、エア圧送機25に取り付けられ、壁29に形成された貫通孔32内を通る配管64と、配管64の後部に接続された第一の多孔管7を備えている。配管64と第一の多孔管7との接続部分は、栽培施設2外ではなく、栽培施設2内または貫通孔32内に構成するのが、冷却に伴って炭酸ガス濃度が減少する事態を防止する上で好適である。
【0044】
エア圧送機25は、その内部に設けられた羽根を回転駆動するモータ(
図1および
図2には図示せず)と、後部に設けられた空気の吸込口54(
図2参照)と、下端部に設けられた吹出口65を備え、配管64は、その前方側端部が吸込口54を囲うようにして、エア圧送機25に接続されている。エア圧送機25のモータは
図1に示された制御部9によって制御可能に構成されている。エア圧送機25としては、ブロア(ブロワ)やプロペラファン、コンプレッサなどを用いることができる。なお、本実施態様においては、エア圧送機25は、栽培施設2外に設けられた柱67に固定されている。
【0045】
第一の多孔管7は、本実施態様においては、外周面に多数の孔が設けられたパイプにより構成されており、第一の多孔管7は前後方向に延びている。
【0046】
図2に示されるように、貫通孔32と連なる孔56を有する環状カバー55が、壁29に形成された貫通孔32の周囲に固定されており、配管64は、孔56を通って栽培施設2の外部に延びている。
【0047】
エア圧送機25のモータが駆動されると、栽培施設2内の上部に存在する温かい空気が、第一の多孔管7の外周面の多数の孔および
図2における第一の多孔管7の後ろ側の開口部からその内部に取り込まれた後に、配管64を介して、栽培施設2の外部に設けられたエア圧送機25の吸込口54からその内部へ吸引される。
【0048】
ここに、第一の多孔管7を用いることなく、エア圧送機25に取り付けられた配管64の後端部から直接栽培施設2内に存在する空気が取り出される場合には、栽培施設2内に風が発生してしまうおそれがある。
【0049】
これに対して、本実施態様においては、第一の多孔管7の後端部のみならず、第一の多孔管7の壁部に形成された多数の孔を通じて、栽培施設2内の空気が第一の多孔管7内へ取り込まれるから、栽培施設2内において、風が発生する事態を防止することができる。
【0050】
エア圧送機25のモータの駆動によって、吸込口54へ吸引された空気は、吹出口65に取り付けられた第一の配管4の第一の上流管41内を通じて下方へ移送される。
【0051】
図3は、
図1に示された熱交換システム1の第一の冷却タンク5内に配置された金属管10の近傍の部分断面模式図である。
【0052】
本実施態様においては、第一の配管4は、第一の冷却タンク5の上端部からその内部へ貫通するように配置されており、第一の冷却タンク5への貫通部5aにおいて、第一の配管4の第一の上流管41の下端部が、第一の冷却タンク5内に配置された金属管10の上流側の上端部に接続されている。
【0053】
ここに、
図3に示されるように、金属管10は、第一の冷却タンク5の上端部から、第一の冷却タンク5内を、下端部に向かって、螺旋状に延びるように構成されており、このように金属管10を螺旋状に配置することによって、第一の配管4の金属管10が冷水と接する面積を増大させ、第一の配管4内を移送される空気の迅速な冷却が図られている。
【0054】
また、本実施態様においては、第一の配管4の第一の冷却タンク5内に位置する部分、すなわち、金属管10が、他の材料に比して熱伝導率が高い金属によって形成されているから、第一の冷却タンク5内に収容された冷水と冷水に浸された金属管10内の空気との間の熱交換を促進することができ、したがって、金属管10内を移送される空気を効果的に冷却することができる。
【0055】
図2に示されるように、第一の配管4の金属管10は、螺旋状に形成された部分よりも下流側において、上方に延び、第一の冷却タンクの上端部への貫通部5b(
図1および
図3参照)において、下流管42の一端部に接続されており、
図1に示されるように、下流管42の他端部は、気体用バルブユニット19に接続されている。
【0056】
一方、気体用バルブユニット19には、炭酸ガスボンベ20から延びる炭酸ガス供給管35が接続されており、気体用バルブユニット19は、制御部9からの出力信号に基づき、第一の配管4を通じて供給される冷却された空気の流路と、炭酸ガスボンベ20から供給される炭酸ガスの流路をそれぞれ、開閉可能に構成されている。
【0057】
炭酸ガスの流路が開かれた場合には、炭酸ガスが気体用バルブユニット19に接続された第一の供給管37へ供給され、冷却された空気の流路が開かれた場合は、冷却された空気が第一の供給管37へ供給される。
【0058】
また、本実施態様においては、気体用バルブユニット19には逆止弁(図示せず)が設けられており、炭酸ガスボンベ20から供給された炭酸ガスが下流管42へ流れることが防止され、下流管42から供給される冷却された空気が炭酸ガス供給管35へ流れることが防止されている。
【0059】
栽培施設2の前側の壁29の下部には貫通孔(図示せず)が形成されており、
図1に示されるように、壁29の外面の貫通孔の周囲に、環状のカバー38が設けられている。第一の供給管37は、壁29に形成された貫通孔よりも後方に延びた直後、すなわち、栽培施設2内の前端部において、栽培施設内に配置された第二の多孔管8の前端部に接続されている。
【0060】
ここに、第一の供給管37から、直接、栽培施設2内に空気または炭酸ガスが供給される場合には、栽培施設2内に風が発生してしまうおそれがある。
【0061】
これに対して、本実施態様においては、空気または炭酸ガスは、第一の供給管37から第二の多孔管8内に供給された後に、第二の多孔管8の壁部に形成された多数の孔から栽培施設2内に均一に供給されるから、栽培施設2内において、風が発生する事態を防止することができる。
【0062】
図4は、
図1のX-X線に沿った栽培槽17の近傍を手前側から見た部分断面図である。
【0063】
図1および
図4に示されるように、栽培槽17内において、水耕液57の水面58の上方には、発泡スチロール板18が設けられており、発泡スチロール板18に形成された貫通穴40内を、リーフレタス34の茎が上下方向に貫通している。
【0064】
図1および
図4に示されるように、第二の多孔管8は、栽培槽17内に設けられた発泡スチロール板18上のリーフレタス34に近接する位置に配置されており、本実施態様においては、その終端開口部が栽培槽17内にあるように構成されている。
【0065】
したがって、第一の冷却タンク5内で冷却された空気が、気体用バルブユニット19および第一の供給管37を介して、第二の多孔管8に供給された場合には、第二の多孔管8の壁部に形成された多数の孔および第二の多孔管8の終端開口部から、冷却された空気が放出され、その結果、栽培施設2内の空気が冷却される。
【0066】
一方、炭酸ガスボンベ20から供給された炭酸ガスが、気体用バルブユニット19および第一の供給管37を介して、第二の多孔管8に供給された場合には、第二の多孔管8の壁部に形成された多数の孔および第二の多孔管8の終端開口部から、リーフレタス34の近傍に炭酸ガスが放出されるから、リーフレタス34の光合成が促進される。
【0067】
図1および
図4に示されるように、栽培槽17内には、ポンプ14が設けられており、ポンプ14には、第二の配管15の第二の上流管43が接続されている。
【0068】
本実施態様においては、ポンプ14は、制御部9によって制御され、栽培槽17内に収容された水耕液57を第二の上流管43を通じて栽培施設2外へ移送するためのものである。
【0069】
第二の配管15は、栽培施設2内から、栽培施設2外に延び、第二の冷却タンク16の上端部への貫通部16aから第二の冷却タンク16の内部へ延び、第二の冷却タンク16内において、下方に向かって螺旋状に延びている。第二の配管15の第二の上流管43は、貫通部16a内で金属管31へ接続されており、すなわち、第二の配管15は、第二の冷却タンク16内では金属管31によって形成されている。このように、第二の冷却タンク16内において、第二の配管15は熱伝導率の高い金属管31によって螺旋状をなすように形成されているため、第二の冷却タンク16内に収容された冷水と接する面積が増大され、第二の配管15内を移送される水耕液57を効果的に冷却することができる。
【0070】
図1に示されるように、第二の配管15の金属管31は、螺旋状に形成された部分よりも下流側において、上方に延び、第二の冷却タンク16の上端部への貫通部16b内において、第二の冷却タンク16の外部に配置された第二の供給管39の上流側の端部に接続されている。また、本実施態様においては、第二の冷却タンク16の高さが、第一の冷却タンク5の高さよりも低く構成されており、このように構成することによって、水耕液57が、第二の上流管43の栽培施設2の外部に位置する部分および金属管31の螺旋状に形成された部分を下降される際の位置エネルギーを利用して、動力を用いることなく、金属管31の下流側部分(上方に延びる部分)を通過させることができる。
【0071】
栽培施設2の第二の冷却タンク16に面する壁44の下部には、貫通穴(図示せず)が形成されており、壁44の外面の貫通穴の周囲に、環状のカバー45が設けられている。第二の供給管39は、壁44に形成された貫通孔を通って、栽培施設2内に延びている(
図1参照)。
【0072】
栽培施設2内へ案内された第二の供給管39の下流側の端部は、
図4に示されるように、栽培槽17の水耕液57内に配置されており、第二の冷却タンク16内の金属管31から第二の供給管39を介して、栽培槽17内に供給された水耕液57は、ポンプ14によって栽培槽17から吸い上げられ、第二の配管15によって、第二の冷却タンク16(
図1参照)に供給されて、冷却される。このように、冷却された水耕液57は、第二の供給管39によって栽培槽17内へ還流可能である。
【0073】
本実施態様においては、第二の配管15の金属管31および第二の供給管39は、下流の部分が上流の部分よりも下方または上流の部分と同程度の高さに位置するように配置されており、したがって、ポンプ14によって第二の冷却タンク16の上端部まで持ち上げられた水耕液57をスムースに還流させることができる。
【0074】
なお、第二の供給管39の下流端部は、
図1のX-X線によって切断される断面の手前側に位置しているが、便宜上、
図4に示している。
【0075】
図5は、
図1に示された熱交換システム1の制御系、検出系、駆動系のブロックダイアグラムである。
【0076】
図5に示されるように、熱交換システム1の制御系は、熱交換システム1全体の動作を制御する制御部9と、制御プログラムなどが格納されたROM46および種々のデータが格納されるRAM47を備えている。
【0077】
図5に示されるように、熱交換システム1の検出系は、栽培槽17内のリーフレタス34の近傍に設けられたセンサ手段11(
図1参照)と、栽培槽17内に収容された水耕液57の温度を検出する第二の温度センサ30(
図1参照)を備え、センサ手段11は、栽培施設2内の空気の温度を検出する第一の温度センサ12と、栽培施設2内の炭酸ガスの濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ13を備えている。
【0078】
図5に示されるように、熱交換システム1の駆動系は、エア圧送機25の羽根を回転させるモータ24と、気体用バルブユニット19(
図1参照)において、第一の冷却タンク5内で冷却された空気が供給される下流管42を開閉する電磁弁48(第一の流路開閉手段)と、気体用バルブユニット19において、炭酸ガスボンベ20(
図1参照)から延びる炭酸ガス供給管を開閉する電磁弁49(第二の流路開閉手段)と、栽培槽17内に収容された水耕液57を栽培施設2外へ取り出すポンプ14を備えている。
【0079】
図5に示されるように、熱交換システム1の入力系は、栽培施設2内の空気の温度を設定する温度設定スイッチ50と、設定された温度を表示するディスプレイ51を備え、温度設定スイッチ50およびディスプレイ51はそれぞれ、
図1に示された制御部9の外面に取り付けられている。
【0080】
以上のように構成された本発明の好ましい実施態様にかかる熱交換システム1においては、制御部9によって、栽培施設2内の空気は、以下のようにして、冷却される。
【0081】
図6は、栽培施設2内の空気の冷却にかかる制御部9による第一の冷却部21の制御手順を示すフローチャートである。
【0082】
図6に示されるように、制御部9は、まず、センサ手段11(
図1参照)の第一の温度センサ12から栽培施設2内の空気の温度の検出値を取得する(ステップS1)。
【0083】
次いで、制御部9は、第一の温度センサ12によって検出された栽培施設2内の空気の温度が、温度設定スイッチ50の操作によって設定された温度を超えているか否かを判定する(ステップS2)。
【0084】
判定の結果、栽培施設2内の空気の温度が設定温度を超えている場合には、制御部9は、エア圧送機25のモータ24を駆動させ、羽根の回転によって、栽培施設2内の空気を第一の配管4内へ取り出すと同時に、気体用バルブユニット19の電磁弁48を開き、第一の冷却タンク5内で冷却された空気を栽培施設2内に還流させることにより、栽培施設2内の空気の冷却を開始する(ステップS3)。
【0085】
これに対して、判定の結果、栽培施設2内の空気の温度が設定温度以下である場合には、栽培施設2内の空気の温度が設定温度を超えるまで、制御部9による第一の温度センサ12からの検出値の取得と判定が繰り返される。
【0086】
第一の冷却部21において、栽培施設2内の空気の冷却を開始した後に、制御部9は、第一の温度センサ12から栽培施設2内の空気の温度についての検出値を取得する(ステップS4)。
【0087】
こうして、検出値を取得した後に、制御部9は、栽培施設2内の空気の温度が設定温度以下であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0088】
判定の結果、栽培施設2内の空気の温度が設定温度以下である場合には、制御部9は、エア圧送機25のモータ24の駆動を停止させ、気体用バルブユニット19の電磁弁48を閉じて、第一の冷却部21による栽培施設2内の空気の冷却を停止する(ステップS6)。
【0089】
こうして、空気の冷却を停止した後に、制御部9は、再びステップS1へ戻り、第一の温度センサ12による検出値の取得を開始する。
【0090】
これに対して、判定の結果、栽培施設2内の空気の温度が依然として設定温度を超えている場合には、モータ24が駆動され、電磁弁48が開かれた状態が継続されると同時に、栽培施設2内の空気の温度が設定温度以下になるまで、制御部9による第一の温度センサ12による検出値の取得と判定が繰り返される。
【0091】
一方、本実施態様においては、以下のようにして、制御部9によって電磁弁49が開閉され、栽培施設2内のリーフレタス34の近傍の炭酸ガス濃度が制御される。
【0092】
図7は、制御部9による栽培施設2内への炭酸ガスの供給制御の手順を示すフローチャートである。
【0093】
図7に示されるように、制御部9は、まず、センサ手段11(
図1参照)の炭酸ガス濃度センサ13から栽培施設2内の炭酸ガス濃度の検出値を取得する(ステップSS1)。
【0094】
次いで、制御部9は、炭酸ガス濃度センサ13によって検出された栽培施設2内の炭酸ガス濃度が、所定値未満であるか否かを判定する(ステップSS2)。
【0095】
判定の結果、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が所定値を下回っている場合には、制御部9は、気体用バルブユニット19(
図1参照)内の電磁弁49を開くことにより、炭酸ガスボンベ20内に収容された炭酸ガスを、栽培施設2内のリーフレタス34の近傍に供給する(ステップSS3)。
【0096】
ここに、炭酸ガス供給管35を開閉する電磁弁49が開かれた際に、モータ24が駆動されると同時に、電磁弁48が開かれて、栽培施設2内の空気の冷却が行われている場合(
図6のステップS3参照)には、
図1に示された下流管42によって供給される冷却された空気と、炭酸ガスボンベ20から炭酸ガス供給管35を通じて供給される炭酸ガスとが混合された状態で、第一の供給管37および第二の多孔管8を介して栽培施設2内へ供給される。この場合には、栽培施設2内の空気の冷却と、リーフレタス34の近傍における炭酸ガス濃度の上昇を同時に図ることができる。
【0097】
これに対して、判定の結果、炭酸ガス濃度が所定値以上である場合には、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が所定値を下回るまで、制御部9による炭酸ガス濃度センサ13からの検出値の取得と判定が繰り返される。
【0098】
一方、ステップSS3において、栽培施設2内への炭酸ガスの供給を開始した後に、制御部9は、センサ手段11の炭酸ガス濃度センサ13から検出値を取得する(ステップSS4)。
【0099】
こうして、栽培施設2内の炭酸ガス濃度についての検出値を取得した後に、制御部9は、検出された炭酸ガス濃度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップSS5)。
【0100】
栽培施設2内の炭酸ガス濃度が所定値以上である場合には、制御部9は、電磁弁49を閉じて、栽培施設2内への炭酸ガスの供給を停止する(ステップSS6)。次いで、制御部9は、再びステップSS1へ戻り、炭酸ガス濃度センサ13からの検出値の取得を開始する。
【0101】
これに対して、判定の結果、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が依然として所定値を下回っている場合には、栽培施設2内への炭酸ガスの供給、すなわち、電磁弁49が開かれた状態が継続されると同時に、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が所定値以上になるまで、制御部9による炭酸ガス濃度センサ13からの検出値の取得と判定が繰り返される。
【0102】
一方、本実施態様においては、以下のようにして、制御部9によってポンプ14が駆動され、栽培槽17内に収容された水耕液57が冷却される。
【0103】
図8は、栽培槽17内に収容された水耕液57の冷却にかかる制御部9による第二の冷却部22の制御手順を示すフローチャートである。
【0104】
図8に示されるように、制御部9は、まず、
図1に示された第二の温度センサ30から栽培槽17内の水耕液57の温度の検出値を取得する(ステップSSS1)。
【0105】
次いで、制御部9は、第二の温度センサ30によって検出された水耕液57の温度が、温度設定スイッチ50の操作によって設定された温度を超えているか否かを判定する(ステップSSS2)。
【0106】
判定の結果、水耕液57の温度が設定温度を超えている場合には、制御部9は、ポンプ14を駆動させ、水耕液57を、第二の配管15を介して第二の冷却タンク16内で冷却した後に、栽培槽17内に還流させることにより、水耕液57の冷却を開始する(ステップSSS3)。
【0107】
これに対して、判定の結果、栽培槽17内に収容された水耕液57の温度が設定温度以下である場合には、水耕液57の温度が設定温度を上回るまで、制御部9による第二の温度センサ30からの検出値の取得と判定が繰り返される。
【0108】
こうして、水耕液57の冷却を開始した後に、制御部9は、第二の温度センサ30から水耕液57の温度の検出値を取得する(ステップSSS4)。
【0109】
こうして、検出値を取得した後に、制御部9は、栽培施設2内の空気の温度が設定温度以下であるか否かを判定する(ステップSSS5)。
【0110】
その結果、水耕液57の温度が設定温度以下である場合には、制御部9は、ポンプ14の駆動を停止させて、水耕液57の冷却を停止する(ステップSSS6)。次いで、制御部9は、再びステップSSS1へ戻り、第二の温度センサ30からの検出値の取得を開始する。
【0111】
これに対して、判定の結果、水耕液57の温度が依然として設定温度を上回っている場合には、水耕液57の冷却、すなわち、ポンプ14の駆動が継続されると同時に、水耕液57の温度が設定温度以下になるまで、制御部9による第二の温度センサ30からの検出値の取得と判定が繰り返される。
【0112】
本実施態様によれば、栽培施設2内の上部に存在する暖められた空気が、空気取出し手段3のエア圧送機25によって栽培施設2外に取り出され、第一の冷却タンク5内に収容された冷水の中に配置された第一の配管4の金属管10内を移送される間に、冷水によって冷却されて、栽培施設2内の下部にリサイクルされるから、栽培施設2内の空気を冷却することができる。
【0113】
また、本実施態様によれば、空気取出し手段3によって栽培施設2から取り出された空気を、冷却タンク5内に収容された冷水中に配置された金属管10内を通過させるという簡潔な構成によって、空気を冷却するように構成されているから、空気を冷却させるためのランニングコストを抑制することが可能になる。ここに、冷水として雨水や地下水を利用すれば、ランニングコストをより抑えることができる。
【0114】
さらに、本実施態様によれば、栽培施設2の熱交換システム1は、栽培施設2内の空気を、空気取出し手段3の第一の多孔管7を介して栽培施設2の外部に取り出し、栽培施設2外の空気を、放出部6の第二の多孔管8を介して、栽培施設2内に取り込むように構成されているから、栽培施設2から空気が取り出される際および栽培施設2内に還流される際に、栽培施設2内で、空気の移動に起因する風が発生することを効果的に防止することができ、風の発生に起因して、リーフレタス34の近傍に供給された炭酸ガスが栽培施設2全体に直ちに拡散されることを効果的に抑制することができる。
【0115】
また、本実施態様によれば、
図1ないし
図3に示された第一の配管4および
図1に示された第二の配管15において、第一の冷却タンク5または第二の冷却タンク16内に収容された冷水内に配置される部分が、金属管10または金属管31によって構成されているから、栽培施設2から取り出された空気と水耕液57をそれぞれ、効率的に冷却することができる。
【0116】
さらに、本実施態様によれば、
図6に示されるように、センサ手段11(
図1参照)の第一の温度センサ12から出力された栽培施設2内の検出温度が、温度設定スイッチ50を操作して設定された温度を超えている場合には、制御部9は、エア圧送機25のモータ24を駆動すると同時に、気体用バルブユニット19の電磁弁48を開いて、空気の冷却を開始し、その結果、栽培施設2内の検出温度が設定温度以下になったときに、モータ24の駆動を停止させると、同時に電磁弁48を閉じて、空気の冷却を停止するように構成されているから、栽培施設2内の温度を自動的に調節することができる。
【0117】
また、本実施態様によれば、栽培槽17内の水耕液57が、ポンプ14によって第二の配管15を通って、栽培施設2外に取り出され、第二の冷却タンク16内に収容された冷水内で冷却された後に、栽培槽17内へ戻されるから、栽培槽17内に収容された水耕液57の温度を自動的に所定温度に制御することができる。
【0118】
さらに、本実施態様によれば、ポンプ14により栽培施設2外に取り出された水耕液57を、第二の冷却タンク16内に収容された冷水内に配置された第二の配管15の金属管31を通過させることによって冷却するように構成されているから、水耕液57に冷水を加えて冷却する場合のように、水耕液57の成分、pH、電気伝導度などが変化することがない。
【0119】
また、本実施態様によれば、制御部9は、
図7に示されるように、炭酸ガス濃度センサ13の検出値に基づき、気体用バルブユニット19の電磁弁49を開閉するように構成されているから、栽培施設内の炭酸ガス濃度が低い場合には、電磁弁49が開かれて、第一の供給管37(
図1参照)および第二の多孔管8(
図1および
図4参照)を介して、炭酸ガスを栽培施設2内へ供給し、リーフレタス34の光合成を促進させることができる。
【0120】
さらに、本実施態様によれば、栽培施設2内の空気が空気取出し手段3によって取り出され、第一の冷却部21の金属管10を通過させることによって冷却されるように構成されているから、栽培施設2内に外気を取り込んで、栽培施設2内の空気を冷却する場合のように、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が、空気の冷却に伴って低下することがなく、効率的にリーフレタス34に炭酸ガスを供給することができると同時に、炭酸ガスの浪費を防止することができ、ランニングコストを抑えることが可能になる。
【0121】
図9は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる熱交換システム1が適用された栽培施設2内の栽培槽17aないし17cの近傍の部分断面図である。
【0122】
図9に示されるように、本実施態様においては、栽培施設2内において、上方に位置する栽培槽17aと、その下方に位置する栽培槽17bと、さらに下方に位置する栽培槽17cの計3つの栽培槽が上下方向に並べて設けられている。栽培槽17bおよび17cの上方には栽培槽17aまたは17bがあり、栽培施設2内に取り入れられた光をリーフレタス34に照射できないため、栽培槽17bおよび17cの上方にそれぞれ、ライト59が設けられている。なお、
図9においては、第一の多孔管8や種々のセンサは省略されている。
【0123】
本実施態様においては、上段の栽培槽17aは、その底面61を、上下方向に延びるパイプ60が貫通するように、パイプ60と一体的に形成されており、中段の栽培槽17bは、その底面61を、上下方向に延びるパイプ62が貫通するように、パイプ60と一体的に形成されている。このように構成することによって、1つのモータ14ですべての栽培槽17aないし17c内の水耕液57を冷却可能に構成されている。
【0124】
具体的には、まず、制御部9は、下段の栽培槽17cの水耕液57内に配置された第二の温度センサ30(
図1参照)からの出力値に基づき、下段の栽培槽17c内に収容された水耕液57中に設けられたモータ14を駆動して、水耕液57を、第一の配管15の第二の上流管43を通じて栽培施設2の外部へ取り出す。
【0125】
こうして、下段の栽培槽17c内から取り出された水耕液57は、
図1ないし
図8に示された実施態様と同様に、栽培施設2外に設けられた第二の冷却タンク16内に収容された冷水の中に配置された金属管31内を、重力によって下端部まで通過する間に冷却された後に、下流の部分がより上流の部分よりも低い位置または同程度の位置になるように配置された第二の供給管39によって栽培施設2内に移送される。
【0126】
本実施態様においては、第二の供給管39の下流側の端部は、
図9に示されるように、上段の栽培槽17a内に配置されており、したがって、第二の冷却タンク16内で冷却された水耕液57は、上段の栽培槽17a内に供給される。
【0127】
ここに、上段の栽培槽17aのパイプ60の上端部60aは、栽培槽17a内に設けられた発泡スチロール板18よりも下方の位置となるように構成されている。その結果、第二の供給管39からの水耕液57の供給に伴って、上段の栽培槽17a内の水耕液57の水面58の高さ位置が、パイプ60の上端部60aを超えると、パイプ60を通じて水耕液57が中段の栽培槽17bに供給されるように構成されている。
【0128】
中段の栽培槽17bにおいても、同様に、その底面61を貫通するパイプ62の上端部62aは、栽培槽17b内に設けられた発泡スチロール板18よりも下方の位置となるように構成されている。その結果、パイプ60を通じて上方から水耕液57が供給されるに伴って、中断の栽培槽17b内の水耕液57の水面58の高さ位置が、パイプ62の上端部62aを超えると、パイプ62を通じて水耕液57が下段の栽培槽17cに供給されるように構成されている。
【0129】
下段の栽培槽17cに供給された水耕液57は、モータ14によって再び第二の冷却タンク16内において冷却された後に、第二の供給管39を通じて、上段の栽培槽17a内へリサイクル(循環)される。
【0130】
図9に示された本実施態様によれば、制御部9からの出力信号に基づき、単一のモータ14の駆動によって、上下方向に並べて配置された3つの栽培槽17aないし17c内に収容された水耕液57を冷却可能に構成されているから、3つの栽培槽17aないし17cにそれぞれ、モータ14を設けて栽培施設2外に水耕液57を取り出す場合に比して、水耕液57の冷却に必要な第二の冷却部22の構成を簡潔にできると同時に、冷却にかかるランニングコストを効果的に抑えることが可能になる。
【0131】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0132】
例えば、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、栽培施設2内に設けられた栽培槽17内でリーフレタスの水耕栽培を行っているが、栽培する作物は他のレタスやイチゴ、ブルーベリーなどであってもよい。
【0133】
また、
図1ないし
図9に示された各実施態様においては、栽培施設の例として、気密性が高く、略直方体状をなす建物に熱交換システム1を適用しているが、熱交換システム1を適用する栽培施設はこれに限られず、一般的なビニルハウスの他に、軟化ウドを栽培するために地下に形成された室(むろ)のような特殊な栽培施設に対しても適用することができ、この場合には、室の中の空気の温度が高温になる夏場においても、熱交換システム1によって室の中の空気を冷却することができるから、季節を問わずに軟化ウドを栽培することが可能になる。
【0134】
さらに、
図1ないし
図9に示された各実施態様においては、栽培槽17内において水耕栽培されるリーフレタスの近傍に第二の多孔管8を配置し、栽培施設2内の空気を冷却可能に構成されているが、栽培方法は水耕栽培に限られない。例えば、ビニルハウスなどの栽培施設の下部に堆積した土などの培地で作物を栽培する場合には、その培地内に、配管として構成された放出部を配置することによって、特に、夏場に蓄熱した培地を冷却することができ、その結果、栽培施設内の空気の温度を低下させることが可能になる。この場合においては、コンプレッサにより圧縮された空気を冷却した後に、培地内に供給するように構成してもよい。
【0135】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、第一の冷却タンク5および第二の冷却タンク16内に、冷媒として冷水が用いられているが、水以外の冷媒を用いることもできる。
【0136】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、栽培施設2内の空気を栽培施設2外へ取り出して、第一の冷却部5内で冷却した後に、栽培施設2内に還流するように構成されているが、栽培施設2内から取り出した空気を施設2内に還流させずに施設外へ放出し、冷却された炭酸ガスを、栽培施設2内のリーフレタス34の近傍に供給するように構成して、栽培施設2内の空気の冷却とリーフレタス34の光合成の促進を同時に図ってもよい。
【0137】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、第二の多孔管8を、栽培槽17内のリーフレタス34の近傍に配置しているが、栽培施設2内であれば、第二の多孔管8を配置する場所はこれに限られない。
【0138】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、エア圧送機25のみによって空気を栽培施設2内から取り出し、栽培施設2内に還流させるように構成されているが、前端部が気体用バルブユニット19に接続された第一の供給管37の後端部を栽培施設2内へ延ばして圧送手段の吸込口に接続させ、第一の冷却タンク5内で冷却された空気を、栽培施設2内へ引っ張るように構成することにより、さらに空気の循環力を向上させることができる。この場合には、圧送手段の吹出口に多孔管を取り付けることにより、栽培施設2内において風の発生を防止することができる。
【0139】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、栽培施設2内の空気を、第一の冷却タンク5に収容された冷水内に配置された第一の配管4の金属管10内を通過させて冷却し、栽培槽17内に収容された水耕液57を、第二の冷却タンク16に収容された冷水内に配置された第二の配管15の金属管31内を通過させて冷却するように構成されているが、第一の配管4の金属管10および第二の配管15の金属管31を同じ(単一の)冷却タンク内に収容された冷水内に配置し、空気を金属管10内を通過させて冷却し、水耕液57を金属管31内を通過させて冷却するように構成することもできる。
【0140】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、気体用バルブユニット19の電磁弁48および電磁弁49を開いて、冷却された空気と炭酸ガスを、第一の供給管37および第二の多孔管8を介して、栽培施設2内へ供給可能に構成されているが、電磁弁48および電磁弁49をそれぞれ、流量調整弁により構成し、第一の冷却タンク5内で冷却された空気に、炭酸ガスボンベ20から供給された炭酸ガスを所望の割合で混合することにより、冷却させ、かつ、炭酸ガスの濃度を上昇させた空気を栽培施設2内へ供給可能に構成してもよい。
【0141】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、気体用バルブユニット19において、電磁弁48および電磁弁49を開閉することにより、栽培施設2への冷却された空気と炭酸ガスを供給可能に構成されているが、さらに、気体用バルブユニット19に酸素ボンベなどの酸素供給源を接続して、酸素または酸素濃度の高い冷却空気を栽培施設2内へ供給可能に構成することもできる。このように構成することによって、光合成が行われていないときに、酸素をリーフレタス34に供給することにより、リーフレタス34の呼吸を促進することができる。この場合においては、炭酸ガスを供給する場合と同様に、空気の冷却に伴って栽培施設2内の酸素濃度が低下することがないため、酸素供給のためのランニングコストを低く抑えることができる。
【0142】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、第一の冷却タンク5内に冷水を収容することによって、第一の配管4内を移送される空気を冷却可能に構成されているが、栽培施設内の温度が低い時期においては、タンク内に暖かい空気などの熱媒を収容し、栽培施設内から取り出された空気を、熱媒内において、第一の配管内を移送される間に暖められた空気を放出部から栽培施設内へ還流させることによって、栽培施設内の空気を加熱可能に構成してもよい。
【0143】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、
図1に示された第一の供給管37は、栽培施設2内の前端部で第二の多孔管8に接続されているが、第一の供給管37と第二の多孔管8とが栽培施設2内において接続されていれば、接続箇所を栽培施設内の前端部に構成することは必ずしも必要でなく、例えば、栽培槽17の近傍で第一の供給管37と第二の多孔管8とが接続されるように構成することによって、リーフレタス34の近傍へ炭酸ガスを集中的に供給することが可能になり、リーフレタス34の光合成を一層促進することができると同時に、炭酸ガスの浪費を抑えることが可能になる。同様に、栽培施設2の上部に配置された配管64と第一の多孔管7との接続部分についても、
図2に示された貫通孔32内に配置してもよく、栽培施設2内に配置してもよい。
【0144】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、
図6および
図8に示されるように、空気または水耕液57の冷却が開始される際と、停止される際に、いずれも温度設定スイッチ50を操作して設定された温度を基準に、制御部9によって冷却の開始と停止が制御されるように構成されているが、空気または水耕液57の冷却が開始される際の基準となる温度と、停止される際の基準となる温度とが異なるように構成してもよい。この場合には、栽培施設2内の空気の温度が上昇して、例えば、25℃に達したら、第一の冷却部21による空気の冷却を開始し、栽培施設2内の空気の温度が、例えば、15℃まで低下した時点で、空気の冷却を停止するように構成することなどが考えられる。
【0145】
また、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、
図1に示された第一の配管4のうち、第一の冷却タンク5内に位置する部分には金属管10が用いられ、
図1に示された第二の配管15のうち、第二の冷却タンク16内に位置する部分には金属管31が用いられているが、金属管10、31に代えて、水道ホースを用いることができる。
【0146】
さらに、
図1ないし
図8に示された実施態様においては、第二の冷却タンク16の高さを低く(平らに)構成することによって、第二の上流管43の栽培施設2の外側に位置する部分および金属管31の螺旋状に形成された部分を流れる際の位置エネルギーを利用して、その下流側(上方に延びる部分)において、第二の冷却タンク16の上端部に配置された第二の供給管39まで水耕液57を移送可能に構成されているが、第二の冷却タンク16の高さ位置をさらに低く構成することによって、水耕液57が下方に流れる速度を上昇させ、金属管31から第二の供給管39へ水耕液57を一層容易に移送可能に構成してもよい。
【0147】
さらに、
図9に示された実施態様においては、単一のモータ14を用いて取り出され、第二の冷却タンク16内で冷却された水耕液57を、
図1ないし
図8に示された実施態様と同様に、重力によって上段の栽培槽17aに供給した後に、パイプ60および62を用いて、上段の栽培槽17aから中段の栽培槽17bへ、中段の栽培槽17bから下段の栽培槽17cへ供給可能に構成されているが、第二の冷却タンク16内で冷却された水耕液57を、単一のモータによって施設外へ取り出し、電力をかけずにすべての栽培槽17に供給可能であれば、その構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0148】
1 熱交換システム
2 栽培施設
3 空気取出し手段
4 第一の配管
5 第一冷却タンク
5a 貫通部
5b 貫通部
6 放出部
7 第一の多孔管
8 第二の多孔管
9 制御部
10 金属管
11 センサ手段
12 第一の温度センサ
13 炭酸ガス濃度センサ
14 ポンプ
15 第二の配管
16 第二の冷却タンク
16a 貫通部
16b 貫通部
17 栽培槽
17a 栽培槽
17b 栽培槽
17c 栽培槽
18 発泡スチロール板
19 気体用バルブユニット
20 炭酸ガスボンベ
21 第一の冷却部
22 第二の冷却部
23 羽根
24 モータ
25 エア圧送機
26 回転軸
27 異径ソケット
28 開口部
29 壁
30 第二の温度センサ
31 金属管
32 貫通孔
33 冷水
34 リーフレタス
35 炭酸ガス供給管
36 筐体
37 第一の供給管
38 カバー
39 第二の供給管
40 貫通穴
41 第一の上流管
42 下流管
43 第二の上流管
44 壁
45 カバー
46 ROM
47 RAM
48 電磁弁
49 電磁弁
50 温度設定スイッチ
51 ディスプレイ
52 開口部
53 天面
54 吸込口
55 カバー
56 孔
57 水耕液
58 水耕液の水面
59 ライト
60 パイプ
60a 上端部
61 底面
62 パイプ
62a 上端部
63 カバー
64 配管
65 吹出口
66 壁
67 柱