(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】立体配線構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20240806BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240806BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240806BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H05K1/11 B
H05K1/02 J
H05K1/18 R
H05K3/40 K
(21)【出願番号】P 2020123456
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019210418
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114400
【氏名又は名称】メイショウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】角田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】小池 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 浩一
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233033(JP,A)
【文献】特開2004-064039(JP,A)
【文献】特開平04-087383(JP,A)
【文献】特開昭60-046093(JP,A)
【文献】特開平08-167522(JP,A)
【文献】特開平09-074283(JP,A)
【文献】特開2003-248131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 1/02
H05K 1/18
H05K 3/40
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出することにより所定の配線パターンに対応する複数の配線溝(2)を有するベース基材(1)を成形するベース基材成形工程と、導電性インクを塗布して前記配線溝(2)の底部に導電路(4)を形成する導電路形成工程と、前記導電路(4)の表面にレジストインクを塗布して前記導電路(4)を被覆する絶縁層(5)を積層する絶縁層形成工程と、を有する立体配線構造体の製造方法であって、
前記ベース基材成形工程が、前記ベース基材(1)に、前記配線溝(2)を形成すると同時に、前記配線溝(2)を貫通するリードフレーム(44)を取り付けるインサート成形を行う工程を含むことを特徴する立体配線構造体の製造方法。
【請求項2】
導電路形成工程が、配線溝(2)内の導電路(4)とリードフレーム(44)とを導通接続する工程を含む請求項1記載の立体配線構造体の製造方法。
【請求項3】
ベース基材成形工程に、交差する一方の配線溝(2a)と他方の配線溝(2b)の凹設寸法に差を設ける工程が含まれる請求項1又は2に記載の立体配線構造体の製造方法。
【請求項4】
導電路形成工程と絶縁層形成工程の少なくとも一方に、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷機又はディスペンサーを使用する工程が含まれる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の立体配線構造体の製造方法。
【請求項5】
絶縁層形成工程が、樹脂材料に絶縁性フェライト粒子を含有させたレジストインクを使用して絶縁層(5)を形成する工程が含まれる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の立体配線構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装される立体配線構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、従来のガラスエポキシ基板のような平面基板では対応できなくなったため、成型品の表面に立体的に直接導体配線を形成した立体配線構造体や、更に電子部品を実装した3D-MID(3 Dimensional-Molded Interconnect Device、三次元成型回路部品)が使われるようになっている。
以下の特許文献1に記載の立体配線構造体の製造方法は、合成樹脂成形品の表面に予め化学メッキ等により金属被覆加工を行って厚さが
0.2~2.0μmの金属薄膜を形成し、次いで該薄膜表面の絶縁回路となる部分の輪郭線上にレーザー光を照射して金属薄膜を除去し、絶縁回路となる部分を絶縁閉回路で囲んだ後、導電回路となる部分に電気メッキを行い所望の厚さの回路を形成した後、エッチング液によりフラッシュエッチングを行い絶縁回路となる部分に残った金属薄膜を除去し回路形成を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の配線構造において配線路間の交差を避ける必要がある場合には、迂回配線や曲げ配線を多用する必要があることから配線長が必要以上に長くなる傾向があり、結果として高速通信においては信号成分を減衰させてしまう挿入損失(インサーションロス)やノイズを低減し難いという問題がある。
【0005】
更に従来の配線構造では、基板上に電子部品が露出される構成であるため、基板の表面を触れると電子部品が脱落する虞があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、簡単な構成且つ低コストで挿入損失やノイズの低減を可能とする立体配線構造体の製造方法を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の手段は、
金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出することにより所定の配線パターンに対応する複数の配線溝を有するベース基材を成形するベース基材成形工程と、導電性インクを塗布して配線溝の底部に導電路を形成する導電路形成工程と、導電路の表面にレジストインクを塗布して導電路を被覆する絶縁層を積層する絶縁層形成工程と、を有する立体配線構造体の製造方法であって、
前記ベース基材成形工程が、前記ベース基材に、前記配線溝を形成すると同時に、前記配線溝を貫通するリードフレームを取り付けるインサート成形を行う工程を含むことを特徴する、と云うものである。
本発明の第1の手段では、一度の射出成形において、配線溝とリードフレームとを同時に形成することができ、立体配線構造体を安価なコストで製造し得る。
【0018】
また本発明の第2の手段は、上記第1の手段に、導電路形成工程が、配線溝内の導電路とリードフレームとを導通接続する工程を含む、との手段を加えたものである。
上記手段では、配線溝内に導電インクを塗布して導電路を形成する際に同時に導電路とリードフレームと導通接続することができる。
【0019】
また本発明の第3の手段は、上記第1又は第2の手段に、ベース基材成形工程に、交差する一方の配線溝と他方の配線溝の凹設寸法に差を設ける工程が含まれる、との手段を加えたものである。
上記手段では、簡単な構成によって立体配線を実現し得る。
【0020】
また本発明の第4の手段は、上記第1乃至第3のいずれかの手段に、導電路形成工程と絶縁層形成工程の少なくとも一方に、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷機又はディスペンサーを使用する工程が含まれる、との手段を加えたものである。
上記手段では、導電路と絶縁層の一方又は双方を高精度に形成することができる。
【0021】
また本発明の第5の手段は、上記第1乃至第4のいずれかの手段に、絶縁層形成工程が、樹脂材料に絶縁性フェライト粒子を含有させたレジストインクを使用して絶縁層を形成する工程が含まれる、との手段を加えたものである。
上記手段では、電磁シールド効果や放熱効果を備えた立体配線構造体を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、導電路の表面を絶縁層で被覆した複数のケーブルをベース基材に配線するという簡単な構成で立体配線構造を実現できる。
また、インクジェットプリンタやスクリーン印刷機を使用して導電路及び絶縁層を形成するという簡単は製造方法により、立体配線構造を抵コストで製造することがきる。
またベース基材の成形時にリードフレームを設けることで後工程でリードフレームを取り付ける必要がなくなるため、製造工程を容易化できると共に製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施例としての立体配線構造体を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線における拡大断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における拡大断面図である。
【
図4】電子部品を実装した位置における立体配線構造体の断面図である。
【
図5】スルーホールが形成された立体配線構造体を示す断面図である。
【
図6】立体配線構造体の製造方法としての一工程を概念的に示す断面図である。
【
図7】交差部における導通状態の一例を示し、(a)は
図2に相当する断面図、(b)は
図3に相当する断面図である。
【
図8】第1実施例の変形例として、リードフレームを備えた立体配線構造体の断面図である。
【
図9】本発明の第2実施例としての立体配線構造体を示す斜視図である。
【
図10】
図9のX-X線における拡大断面図である。
【
図11】
図9のXI-XI線における拡大断面図である。
【
図12】本発明の第3実施例の立体配線構造体の製造方法として、LDS工法を用いたコネクタ付きアンテナの製造方法を示す斜視図であり、(a)はベース基材成形工程、(b)は活性化工程、(c)はメッキ処理による第1導電路形成工程、(d)は金フラッシメッキ処理による第2導電路形成工程である。
【
図13】
図12の部分断面図であり、(a)はベース基材成形工程、(b)は活性化工程、(c)はメッキ処理による第1導電路形成工程、(d)は金フラッシメッキ処理による第2導電路形成工程である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例としての立体配線構造体を示す斜視図、
図2は
図1のII-II線における拡大断面図、
図3は
図2のIII-III線における拡大断面図、
図4は電子部品を実装した位置における立体配線構造体の断面図、
図5はスルーホールが形成された立体配線構造体を示す断面図、
図6は立体配線構造体の製造方法としての一工程を概念的に示す断面図、
図7は交差部における導通状態の一例を示し、(a)は
図2に相当する断面図、(b)は
図3に相当する断面図、
図8は第1実施例の変形例として、リードフレームを備えた立体配線構造体の断面図である。
【0026】
本発明の第1実施例に示す立体配線構造体は、ベース基材1と、所定の配線パターンに対応して凹設された複数の配線溝2を有して形成されている。ベース基材1は、所定の金型内のキャッビティ内に、溶融状態の合成樹脂材料、例えばガラスエポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などを射出して成形する射出成形法によって形成されている。
【0027】
各配線溝2の底部には導電路4が夫々敷設され、各導電路4の上にはその表面を被覆する絶縁層5が夫々積層されている。本発明では導電路4とこれを被覆する絶縁層5とが一種のケーブル3を構成している。
複数の配線溝2のうち、互いに交差して延びる配線溝2は異なる凹設寸法を有して形成されている。すなわち、一方向に延びる配線溝2aの凹設寸法は、他方向に延びる配線溝2bよりも深い凹設寸法で形成されている。そして、一方向に延びる配線溝2aの底部上にケーブル3aが敷設され、他方向に延びる配線溝2bの底部上にケーブル3bが敷設されており、互いの交差部Pでは一方向に延びる配線溝2aに敷設されたケーブル3aの上に他方向に延びる配線溝2bに敷設されたケーブル3bが部分的に重なるようにして立体的に配線されている。
下層側のケーブル3aを構成する導電路4と上層側のケーブル3bを構成する導電路4との間は、下層側のケーブル3aを構成する絶縁層5が介在しており、両者は電気的に絶縁される状態が確保されている。
尚、配線溝2は断面四角形状に限るものではなく、例えば断面三角形状、断面円形状などその他の形状であっても良い。
【0028】
図1及び
図4に示すように、配線溝2aの経路上には、配線溝2aよりも深い凹設寸法から成る凹部6が形成されている。凹部6には、配線溝2aの底部から凹部6の壁面を通って凹部6の底部まで断面クランク状に連続して延びるケーブル3が配線されており、凹部6の底部上の、長手方向の両側の位置には、各ケーブル3の端部から導電路4のみを露出させて構成したランド部4aが夫々設けられている。そして、凹部6には、長手方向の両側に電極端子11を備えた電子部品10が実装されており、両電極端子11を両ランド部4aに導電性接着剤20を介して夫々接続されている。
【0029】
図5に示すように、配線溝2内にケーブル3を敷設する構成は、ベース基材1の表裏両面に配置しても良い。そして、表面側に設けられたケーブル3の導電路4と裏面側のケーブル3の導電路4との間は、ベース基材1内に穿孔されたスルーホール7内に配線された柱状導電路8を介して電気的に接続することが可能となっている。
【0030】
次に上記構成からなる立体配線構造体の製造方法について説明する。
先ず、
図6に示すように、複数の配線溝2、凹部6及びスルーホール7などを形成する複数の凸部31が、所定の配線パターンに対応して形成されている金型30を使用し、金型30のキャビティ(図示せず)内に、溶融樹脂を射出することによりベース基材1を製造する(ベース基材成形工程)。
金型30からベース基材1を離型した後、複数の配線溝2の底部に、導電性インクを塗布して導電路4を形成する(導電路形成工程)。
続いて、導電路4の表面にレジストインクを塗布し、導電路4を被覆する絶縁層5を積層してケーブル3を形成する(絶縁層形成形工程)。
【0031】
尚、配線溝2内を絶縁層5で埋め尽くし、絶縁層5とベース基材1の表面を同一面に形成しても良い。あるいは導電路形成工程の後工程において、その他の樹脂材料で配線溝2を埋め尽くしても良い。絶縁層5又はその他の樹脂材料を使用し、配線溝2をベース基材1の表面と同一面になるまで埋め尽し、ベース基材1上に配線溝2が現れない構成とすることにより、立体配線構造体をすっきりとした外観とすることが可能となる。
【0032】
上記導電路形成工程及び絶縁層形成形工程においては、例えばインクジェットプリンタを使用し、複数の配線溝2の底部の夫々に導電路4を形成する導電性インクを塗布し、次に各導電路4の表面に絶縁層5を形成するレジストインクを塗布することにより、複数のケーブル3を有する立体配線を高精度に形成することが可能である。
【0033】
またインクジェットプリンタの代わりに、例えばスクリーン印刷機又はディスペンサーを使用して導電路4及び絶縁層5から成るケーブル3を形成してもよい。
【0034】
このように。第1実施例ではケーブル3を配線溝2内に収まる状態で配線することができるため、塗布時に導電性インクが配線溝2の外部であるベース基材1の表面に飛び散る虞を防止することができる。
尚、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷機又はディスペンサーの使用は、導電路形成工程と絶縁層形成形工程の少なくとも一方のみでも良い。
【0035】
また導電性インクを配線溝2の底部に塗布する方法としては、配線溝2の底部を粗面加工した立体配線構造体を、導電性インクを溜めた容器内に沈降させる方法も採用できる。この方法では、立体配線構造体を導電性インク内に沈降させると、導電性インクが粗面加工された配線溝2の底部のみに残留することから、配線溝2の底部に導電性インクからなる導電路4を形成することが可能となる。しかもこの方法では、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷機又はディスペンサーが不要となるため、製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0036】
尚、配線溝2の底部への粗面加工は、
図6に示すように凸部31の先端を粗面状に加工した金型30を使用した射出成形において成形と同時に形成する方法でもよいし、成形後に配線溝2の底部に対してサンドブラスト加工を行うことで粗面に仕上げる方法又は薬品を用いて粗面に仕上げるケミカルエッチングであっても良い。
【0037】
第1実施例の、凹設寸法の異なる配線溝2については、先に凹設寸法の深い配線溝2aに対して導電路形成工程に続いて絶縁層形成工程を行ってケーブル3aを形成し、次に凹設寸法の浅い配線溝2bに対して導電路形成工程に続いて絶縁層形成工程を行ってケーブル3bを行うことにより、ケーブル3が立体的に交差する配線を行うことが可能である。
【0038】
また互いに立体的に交差するケーブル3同士を導通接続させることもできる。例えば、互いに立体的に交差するケーブル3aとケーブル3bとを導通接続させたい場合には、
図7(a)(b)に示すように、凹設寸法の深い配線溝2aに対して先に行うケーブル3aの絶縁層形成工程において、交差部Pとなる位置に絶縁層5の一部に欠損部9を形成し、続く凹設寸法の浅い配線溝2bに対して行うケーブル3aの導電路形成工程及び絶縁層形成工程を通常どおりに行うと、欠損部9を介してケーブル3aの導電路4の上にケーブル3aの導電路4が直接積層されるようになるため、ケーブル3aとケーブル3bとを導通接続させることが可能となる。
【0039】
このように、上記第1実施例では、所定の配線パターンに応じて、各配線溝2の凹設寸法を調整し、また凹設寸法の深い配線溝2aに対する絶縁層形成工程における絶縁層5の形成位置を調整し、更には電子部品10を実装するための凹部6の形成位置を調整することにより、所望の立体配線構造体とすることができる。
そして、ケーブル3を配線溝2内に埋設し且つ電子部品10を凹部6内に埋設することにより、ケーブル3及び電子部品10が表面に現れない立体配線構造体とすることができる。
【0040】
尚、凹部6の凹設寸法は、実装された電子部品10の天面がベース基材1の表面と同一面となる寸法、又は電子部品10が凹部6内に完全に埋設される寸法が好ましいが、その他電子部品10を半分程度埋没させる寸法であっても良い。このように、少なくとも電子部品10の一部を凹部6内に埋没させることにより、ベース基材1の表面を触っても電子部品10の脱落が起き難くさせることができ(部品剥離強度の向上)、更にはベース基材1内にすっきり収まる立体配線構造体をすることができ、3D-MIDへの応用も可能となる。
【0041】
また上記立体配線構造体では、従来多く採用されていた迂回配線や曲げ配線を避け、直線による最短距離で配線することができるようになることから、従来に比較して配線長を短くすることが可能となるため、結果として高速通信においては信号成分を減衰させてしまう挿入損失の低減を図ることができる(高周波伝送性能の向上)。
【0042】
ここで、絶縁層5は、絶縁性フェライト粒子を樹脂含有させたレジストインクで形成される構成が好ましい。この構成では、電磁シールド効果の向上によるケーブル3間の干渉を避けることが可能となり、結果として高速通信を妨げるノイズの低減を図ることができる(高周波伝送性能の向上)。また放熱を高める効果をも発揮し得る。
【0043】
更には、ケーブル3を流す電流量に応じて配線溝2の凹設寸法及びケーブル3の導電路4の断面積を調整することができる。例えば、配線溝2の凹設寸法を浅くし且つ導電路4の断面積を小さく形成したケーブル3は信号用ケーブルとすることでき、配線溝2の凹設寸法を深くし且つ導電路4の断面積を大きく形成したケーブル3は電力用ケーブルとすることができる。
【0044】
また例えば、
図8に示すように、立体配線構造体中の導電路4にリードフレーム44を設けることにより、図示しない外部配線との接続を行う構成とすることもできる。
リードフレーム44は、導電性の金属棒がベース基材1を貫通する状態で、配線溝2内に立設する構成である。リードフレーム44は、その上端が配線溝2の底部上に突出した状態で導電路4と導通接続されており、下端はベース基材1の下面から突出している。
図8では、ベース基材1中に設けられた3つの配線溝2に対応するリードフレーム44が3本設けられた構成を示しているが、リードフレーム44の数量は配線溝2の数に応じて適宜変更可能である。そして、ベース基材1の下面から突出する各リードフレーム44は電力用又は信号用の接続端子として用いることが可能であり、ベース基材1の下面から突出しているリードフレーム44の下端と外部配線とを例えば半田付けし、あるいはリードフレーム44をコネクタピンとして活用し、図示しないコネクタ部材を介して接続することにより、立体配線構造体と外部配線とが導通接続される。
【0045】
リードフレーム44を立体配線構造体に取り付けるには、ベース基材成形工程に、インサート成形法を取り入れることにより行うことができる。すなわち、金型30内の所定の位置にリードフレーム44を夫々セットした後、上記同様に、溶融樹脂を射出してインサート成形した後に離型すると、各リードフレーム44が各配線溝2内に立設するベース基材1を得ることができる。
【0046】
続く、導電路形成工程において、上記同様に、複数の配線溝2の底部に、導電性インクを塗布して導電路4を形成すると、リードフレーム44と導電路4とを導通接続させることができる。尚、導電性インクを用いるので、ベース基材1には低耐熱性樹脂を使用することができる。
絶縁層形成形工程では、絶縁層5内にリードフレーム44を埋設してもよいし、
図8に示すように、この部分にレジストインクを塗布せずに、リードフレーム44の上端が露出する構成としてもよい。
【0047】
上記製造方法では、一度のベース基材成形工程において、配線溝2とこの配線溝2内にリードフレーム44が立設するベース基材1を同時に形成することができるため、ベース基材成形後にリードフレーム44を取り付ける別工程を要する場合に比較し、製造工程を簡単化できると共に製造コストを低減することが可能となる。
【0048】
上記第1実施例では配線溝2内にケーブル3を配置した構成を示して説明したが、本発明の立体配線構造体では配線溝2は必須の構成要素ではない。以下の第2実施例では配線溝を有しない立体配線構造体について説明する。
図9は本発明の第2実施例としての立体配線構造体を示す斜視図、
図10は
図9のX-X線における拡大断面図、
図11は
図9のXI-XI線における拡大断面図である。
【0049】
図9乃至
図11に、第2実施例として示す立体配線構造体は、可撓性を備えた樹脂フィルムから成るベース基材(フレキシブル基板)1と複数のケーブル3とを有して構成される。各ケーブル3は、ベース基材1上に導電性インクを直線状に塗布して形成された導電路4と、その表面に導電路4を被覆するように積層された絶縁層5とを有して夫々形成されている。
【0050】
導電路4は導電路形成工程において所定の配線パターンに応じて導電性インクをベース基材1上に塗布することにより形成され、絶縁層5は絶縁層形成工程においてレジストインクを導電路4の上に重ねて塗布することにより形成されている。導電性インク及びレジストインクは、いずれもインクジェットプリンタ、スクリーン印刷機又はディスペンサーを使用してプリント形成することが可能である。尚、導電性インク及びレジストインクを塗布する厚み寸法は、乾燥後の導電路4及び絶縁層5からなるケーブル3がベース基材(フレキシブル基板)1に追従して変形できる程度の薄い寸法が好ましい。
【0051】
図9乃至
図11に示す立体配線構造体は、ベース基材1上に、Y方向に一定の間隔を有してX方向に沿って延びる3本のケーブル3x1、3x2、3x3と、X方向に一定の間隔を有してY方向に延びる3本のケーブル3y1、3y2、3y3をマトリックス状に配設されてした場合を示している。尚、ケーブル3の数量及び配置はこれに限られるものではない。
【0052】
この立体配線構造体では、複数の交差部Pにおいて、ケーブル3y1、3y2、3y3の上にケーブル3x1、3x2、3x3が重なるように配設されている。
そして、交差部P1ではケーブル3x1とケーブル3y1とが導通接続され、交差部P2ではケーブル3x2とケーブル3y2とが導通接続され、交差部P3ではケーブル3x3とケーブル3y3とが導通接続されている。また交差部P1、P2及びP3を除く他の交差部Pの位置では、ケーブル3y1、3y2、3y3とケーブル3x1、3x2、3x3とは互いに電気的に絶縁された状態にある。
【0053】
交差部P1、P2及びP3においてケーブル同士を導通接続する方法は、上記第1実施例同様である。すなわち、先に行う下層側のケーブル3y1、3y2、3y3の絶縁層形成工程において、交差部P1、P2、P3となる位置に絶縁層5の一部に欠損部9を夫々形成し、続く上層側のケーブル3x1、3x2、3x3の導電路形成工程及び絶縁層形成工程を通常どおりに行う。すると、交差部P1、P2、P3の位置では、欠損部9を介して下層側のケーブル3y1、3y2、3y3の各導電路4の上に上層側のケーブル3x1、3x2、3x3の各導電路4が直接積層されるため、交差部P1ではケーブル3x1とケーブル3y1とを導通接続させることができ、交差部P2ではケーブル3x2とケーブル3y2とを導通接続させることができ、交差部P3ではケーブル3x3とケーブル3y3とを導通接続させることが可能となる。
【0054】
第2実施例として示す立体配線構造体においても、電磁シールド効果を発揮する絶縁性フェライト粒子を樹脂含有させたレジストインクで絶縁層5を形成する構成が好ましく、この構成では可撓性を有する立体配線構造体を高周波伝送性能に優れた電磁シールドケーブルとしての利用が期待できる。
【0055】
図12、
図13は本発明の第3実施例の立体配線構造体の製造方法として、LDS工法を用いたコネクタ付きアンテナの製造方法を示し、
図12は製造工程を示す斜視図、
図13は
図12の部分断面図であり、共に(a)はベース基材成形工程、(b)は活性化工程、(c)はメッキ処理による第1導電路形成工程、(d)は金フラッシメッキ処理による第2導電路形成工程を示している。
【0056】
図12(d)に示すように、コネクタ付きアンテナ40は、平板状のベース基材1に、渦巻き状に複数回巻かれた同一面上の面状の導電路4により構成されたコイルアンテナ41と、コイルアンテナ41の外周端42と内周端43の位置にベース基材1を貫通する状態で立設された一対の導電性の金属棒から成るリードフレーム44とを有して構成される。
【0057】
次に、LDS工法を用いたコネクタ付きアンテナ40の製造方法について説明する。
先ず、ベース基材成形工程として、リードフレーム44を所定の位置にセットした金型(図示せず)内に、所定の金属触媒(LDS添加剤)45を含有させた熱可塑性の溶融樹脂を射出してしてインサート成形し、硬化後に離型することにより、
図12(a)及び
図13(a)に示すようなリードフレーム44が立設するベース基材1(成形品)を成形する。
ベース基材1上にレーザー光を所定の配線パターンに合わせて照射する。
図12(b)、
図13(b)に示すように、本実施例ではコイルアンテナ41の配線パターン、すなわちレーザー光を渦巻き状に照射して金属触媒45を活性させる(活性化工程)。
【0058】
次にメッキ処理による導電路形成工程を行う。
図12(c)、
図13(c)に示す第1導電路形成工程では、ベース基材1にメッキ処理を行って活性したパターンエリアに渦巻き状の導電路4を形成する。より具体的には、渦巻き状に活性化された金属触媒45の上に銅メッキ処理を行った後にニッケルメッキ処理を続けて行い、銅-ニッケル層47が積層された渦巻き状の導電路4を形成する。
続く
図12(d)、
図13(d)に示す第2導電路形成工程において、銅-ニッケル層47を下地層とする導電路4の表面に金フラッシュメッキ層48を積層する金フラッシュメッキ処理を行うことにより、コイルアンテナ41が完成する。
第1導電路形成工程と第2導電路形成工程の少なくとも一方では、コイルアンテナ41の外周端42及び内周端43において、導電路4とリードフレーム44が導通接続される。
第3実施例では、下面側から突出するリードフレーム44の下端が、図示しない外部配線と導通接続するためのコネクタとしての機能を果たすことが可能である。
【0059】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、第1実施例及び第2実施例では、ケーブル同士が交差部Pにおいて直交する場合を示して説明したが、これに限られるものではなく様々な角度で交差するものであっても良い。
【0060】
また第1実施例では、配線溝2aに敷設されたケーブル3aと配線溝2bに敷設されたケーブル3bとが1つの交差部Pで交差する場合を示して説明したが、配線溝2に敷設されるケーブル3及び交差部Pの数量はこれらに限定されるものではない。
【0061】
また第3実施例では、配線パターンの形状として渦巻き状のコイルアンテナ41を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、第1実施例又は第2実施例に示したような配線パターンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、立体配線を備えるプリント基材やフレキシブルケーブルの分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 : ベース基材
2、2a、2b : 配線溝
3、3a、3b : ケーブル
3x1、3x2、3x3 : 上層側のケーブル
3y1、3y2、3y3 : 下層側のケーブル
4 : 導電路
4a : ランド部
5 : 絶縁層
6 : 凹部
7 : スルーホール
8 : 柱状導電路
9 ; 欠損部
10 : 電子部品
11 : 電極端子
20 : 導電性接着剤
30 : 金型
31 : 凸部
40 : コネクタ付きアンテナ(立体配線構造体)
41 : コイルアンテナ
42 : コイルアンテナの外周端
43 : コイルアンテナの内周端
44 : リードフレーム
45 : 金属触媒
47 : 銅-ニッケル層
48 : 金フラッシュメッキ層
P、P1、P2、P3 : 交差部