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  • 特許-土壌改良剤、及び土壌改良方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】土壌改良剤、及び土壌改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/42 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
C09K17/42 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024058899
(22)【出願日】2024-04-01
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
(72)【発明者】
【氏名】根岸 昌範
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】黒木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-121723(JP,A)
【文献】特開2009-279492(JP,A)
【文献】特開平10-337575(JP,A)
【文献】特開2019-182884(JP,A)
【文献】特開2018-149499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00-17/52
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌の付着性を低減させる土壌改良剤であって、
水と親和性を有する高分子製剤として、親水性高分子、吸水性高分子、及び高分子凝集剤からなる群から選択される少なくとも一つの高分子製剤と、
撥水性を付与する無機多孔質製剤(ゼオライトを除く)として、粒径が45~600μmであり、細孔径が100~500nmの微細孔を有する黒曜石パーライトと、
を含み、ゼオライトを含まない土壌改良剤。
【請求項2】
前記無機多孔質製剤は、嵩比重が0.7~1.2である請求項1に記載の土壌改良剤。
【請求項3】
重量ベースで、前記無機多孔質製剤の配合量が前記高分子製剤の配合量より多くなるように調製されている請求項1に記載の土壌改良剤。
【請求項4】
土壌としての化学的性質を変化させない請求項1に記載の土壌改良剤。
【請求項5】
前記含水土壌に添加すると、重量ベースで、当該含水土壌の95%以上が目開き9.5mmの篩を通過する粒度にまで粒状化される請求項1に記載の土壌改良剤。
【請求項6】
土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌の付着性を低減させる土壌改良方法であって、
サンプルとして採取した含水土壌に、請求項1~5の何れか一項に記載の土壌改良剤を所定量ずつ添加し、JIS R5201に準拠したテーブルフロー試験の結果が105mm×105mm以内になるまで前記土壌改良剤の添加を繰り返して、前記含水土壌に対する前記土壌改良剤の添加量を決定する準備工程と、
処理対象の含水土壌に前記土壌改良剤を前記準備工程で決定した添加量で添加し、攪拌する処理工程と、
を包含する土壌改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌を改質する土壌改良剤、及び土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事、建設工事、及び土壌改良作業等で発生した土壌(以下、「建設汚泥等」と称する。)には多量の水分が含まれていることが多く、その水分に起因する土壌の付着性(粘着性)により、運搬や保管等の取り扱いやその後の処理が困難なものとなっていた。建設汚泥等の取り扱いや処理を容易にするためには、土壌改良剤を用いて土壌を改質し、土壌の付着性を低減させる必要がある。
【0003】
しかしながら、従来の土壌改良剤においては、浚渫土等の多量の水分を含んだ土砂の脱水性を高めることを目的としたものはあったが(例えば、特許文献1を参照)、特に建設汚泥等の付着性の低減に着目したものは見られなかった。
【0004】
なお、建設汚泥等を対象としたものではないが、本出願人が発明した土壌改良剤として、混合廃棄物や災害廃棄物として発生した土壌を改質することを目的としたものがある(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-188620号公報
【文献】特許第6765661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の土壌改良剤は、土壌に含まれる可燃物や不燃物等の異物を分別するために開発された薬剤であり、アクリル酸ナトリウムと多孔質物質とを含有する。アクリル酸ナトリウムは、土壌に含まれる水分を吸収する目的で配合されている。多孔質物質は、アクリル酸ナトリウムによって水分を吸収した後の土壌粒子を分散させることにより、土壌の付着性を低減するように機能する。
【0007】
このように、特許文献2の土壌改良剤は、アクリル酸ナトリウムと多孔質物質とが協働して土壌の付着性を低減させるものである。土壌の付着性が低減すると、土壌を篩にかけたときに土壌粒子が篩の網目に付着し難くなり、土壌と当該土壌に含まれる可燃物や不燃物等の異物との分別が容易となる。因みに、特許文献2では多孔質物質としてゼオライトを使用している。多孔質物質としてゼオライトを使用した場合、ゼオライトの高い吸着能により、放射性物質のような有害物質を吸着除去することも可能となる。
【0008】
しかしながら、建設汚泥等には通常、放射性物質のような有害物質は殆ど含まれていない。したがって、土壌改良剤の材料として、敢えてゼオライトのようなコストが高い多孔質物質を使用する必要性は低い。そればかりか、特に建設汚泥等を処理対象とした場合、土壌改良剤にゼオライトが含まれていると、ゼオライトの高い陽イオン交換能や吸着能のため改質後の土壌の化学的性質が変化し、却って取り扱いや処理が難しくなることも考えられる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、土壌として特に建設汚泥等を対象としたものにおいて、改質後の土壌の取り扱いや処理を容易にする低コストの土壌改良剤、及び土壌改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明にかかる土壌改良剤の特徴構成は、
土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌を改質する土壌改良剤であって、
水と親和性を有する高分子製剤と、
撥水性を付与する無機多孔質製剤(ゼオライトを除く)と、
を含むことにある。
【0011】
本構成の土壌改良剤によれば、水と親和性を有する高分子製剤と、撥水性を有する無機多孔質製剤(ゼオライトを除く)とを含むため、改質対象となる土壌が水分を多く含む取り扱いが難しい建設汚泥等であっても、本構成の土壌改良剤を建設汚泥等に配合して攪拌すると、高分子製剤と無機多孔質製剤とが協働して付着性(粘着性)が強い建設汚泥等をパラパラの状態へと改質し、土壌の団粒化が防止される。その結果、土壌の付着性が低減する。この改質された土壌は、土壌としての化学的性質に変化はなく、機械装置等への付着が抑えられるため、輸送や保管等の取り扱いやその後の処理が容易なものとなる。また、高価格のゼオライトを含まない配合としたことで、土壌改良剤の製造コストを抑えることができる。
【0012】
本発明にかかる土壌改良剤において、
前記高分子製剤は、親水性高分子、吸水性高分子、及び高分子凝集剤からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0013】
本構成の土壌改良剤によれば、高分子製剤として、親水性高分子、吸水性高分子、及び高分子凝集剤からなる群から選択される少なくとも一つを使用することで、含水土壌に含まれる水分(特に、遊離水)が高分子製剤によって土壌から引き離される。この状態で無機多孔質製剤が土壌粒子の表面に付着すると、無機多孔質製剤に由来する撥水性が土壌粒子に付与される。その結果、土壌の団粒化が防止され、土壌の付着性を大きく低減することができる。
【0014】
本発明にかかる土壌改良剤において、
前記無機多孔質製剤は、黒曜石パーライトであることが好ましい。
【0015】
本構成の土壌改良剤によれば、無機多孔質製剤として黒曜石パーライトを使用することで、高分子製剤によって水分が引き離された土壌粒子に優れた撥水性を付与し、団粒化を防止して、土壌の付着性を低減することができる。また、黒曜石パーライトは、ゼオライトのようなイオン交換能や吸着能を有さないため、改質前の建設汚泥等の化学的性質を変化させることなく、当該建設汚泥等を取り扱いや処理が容易な形態(パラパラの状態)へと改質することができる。
【0016】
本発明にかかる土壌改良剤において、
前記無機多孔質製剤は、細孔径が100~500nmの微細孔を有することが好ましい。
【0017】
本構成の土壌改良剤によれば、無機多孔質製剤として細孔径が100~500nmの微細孔を有する多孔質材料を使用すると、濡れの原因である土壌粒子の表面に残留する水分は無機多孔質製剤の微細孔に十分に入り込めず、無機多孔質製剤が打ち粉のようになって水を弾くので、土壌粒子に撥水性が発現する。その結果、土壌の付着性を低減することができる。
【0018】
本発明にかかる土壌改良剤において、
前記無機多孔質製剤は、嵩比重が0.7~1.2であることが好ましい。
【0019】
本構成の土壌改良剤によれば、無機多孔質製剤として0.7~1.2の嵩比重を有する多孔質材料を使用することで、土壌改良剤を添加した後の土壌の重量変動幅が小さく抑えられ、改質後の土壌の取り扱いや処理が容易なものとなる。
【0020】
本発明にかかる土壌改良剤において、
重量ベースで、前記無機多孔質製剤の配合量が前記高分子製剤の配合量より多くなるように調製されていることが好ましい。
【0021】
本構成の土壌改良剤によれば、重量ベースで、無機多孔質製剤の配合量を高分子製剤の配合量より多くすることで、土壌粒子の撥水性がより高められるため、土壌の付着性をより低減することができる。
【0022】
本発明にかかる土壌改良剤において、
土壌としての化学的性質を変化させないことが好ましい。
【0023】
本構成の土壌改良剤によれば、土壌としての化学的性質を変化させない、すなわち、土壌と化学反応しないものであるため、改質前の建設汚泥等の化学的性質を変化させることなく、当該建設汚泥等を取り扱いや処理が容易な形態(パラパラの状態)へと改質することができる。
【0024】
本発明にかかる土壌改良剤において、
前記含水土壌に添加すると、重量ベースで、当該含水土壌の95%以上が目開き9.5mmの篩を通過する粒度にまで粒状化されることが好ましい。
【0025】
本構成の土壌改良剤によれば、含水土壌の95%以上が目開き9.5mmの篩を通過する粒度にまで粒状化することができるため、取り扱いや処理が容易な形態(パラパラの状態)へと改質することができる。
【0026】
上記課題を解決するための本発明にかかる土壌改良方法の特徴構成は、
土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌を改質する土壌改良方法であって、
サンプルとして採取した含水土壌に、上記の何れか一つに記載の土壌改良剤を所定量ずつ添加し、JIS R5201に準拠したテーブルフロー試験の結果が105mm×105mm以内になるまで前記土壌改良剤の添加を繰り返して、前記含水土壌に対する前記土壌改良剤の添加量を決定する準備工程と、
処理対象の含水土壌に前記土壌改良剤を前記準備工程で決定した添加量で添加し、攪拌する処理工程と、
を包含することにある。
【0027】
本構成の土壌改良方法によれば、準備工程において、含水土壌に対する土壌改良剤の最適な添加量が決定されるため、改質対象となる土壌が水分を多く含む取り扱いが難しい建設汚泥等であっても、本構成の土壌改良方法に従って、建設汚泥等に土壌改良剤を準備工程で決定した添加量で添加し、これを攪拌すると、高分子製剤と無機多孔質製剤とが協働して付着性(粘着性)が強い建設汚泥等をパラパラの状態へと改質し、土壌の団粒化が防止される。その結果、土壌の付着性が低減する。この改質された土壌は、土壌としての化学的性質に変化はなく、機械装置等への付着が抑えられるため、輸送や保管等の取り扱いやその後の処理が容易なものとなる。また、高価格のゼオライトを含まない配合としたことで、土壌改良方法の施工コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、黒曜石パーライトが土壌に作用するメカニズムを説明するイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する付着性(粘着性)の高い建設汚泥等を改質することにより、運搬や保管等の取り扱いやその後の処理を容易にするものである。以下、本発明にかかる土壌改良剤、及び土壌改良方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や実施例に記載される構成に限定されるものではない。
【0030】
<含水土壌>
本発明が処理対象とする建設汚泥等は、水を含んだ含水土壌である。含水土壌は、含水率が10~60重量%(含水比として11~122%)であり、主成分として、砂(平均粒径が概ね2~0.6mm)、シルト(平均粒径が概ね0.6~0.004mm)、粘土(平均粒径が概ね0.004mm以下)等の比較的粒径が小さい粒子を含む土壌である。ただし、礫等の比較的粒径が大きい粒子を含む土壌であっても、本発明の処理対象となり得る。
【0031】
ここで、建設汚泥等は、粘性が大きく機械装置への付着が顕著であり、含水率が高いため分級装置による篩分けも困難である。そこで、本発明者らは、建設汚泥等の取り扱いや処理を容易なものとするためには、土壌としての化学的性質を変化させることなく、建設汚泥等の性状を改善することが必要であるとの認識に立ち、建設汚泥等の改質に適した土壌改良剤を創作するに至った。
【0032】
本発明の土壌改良剤は、例えば、固形分として、粘土及びシルトと砂とを2:8~8:2(重量比)の割合で含有し、含水率が45~50重量%(含水比として82~100%)の含水土壌を好適に処理することができる。このような性状の含水土壌は、土木工事、建設工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生する殆どの建設汚泥等に含まれるため、本発明の土壌改良剤は、多くの工事現場で使用することができる。
【0033】
<土壌改良剤>
本発明の土壌改良剤は、土壌としての化学的性質を変化させないように(すなわち、土壌と化学反応しないように)設計されており、高分子製剤と、無機多孔質製剤とを含む。以下、本発明の土壌改良剤における主要な成分である高分子製剤、及び無機多孔質製剤について説明する。
【0034】
[高分子製剤]
高分子製剤は、土壌に含まれる水分の低減に寄与する成分である。高分子製剤は、土壌粒子の周囲に存在する水分(遊離水)を吸収することで、或いは土壌の周囲に存在する水分(遊離水)を土壌とともにまとめる(周囲から隔離する)ことで、土壌粒子が集合して団粒化することを防止するように機能する。したがって、高分子製剤には、水と親和性を有する高分子材料が用いられる。
【0035】
代表的な高分子製剤として、親水性高分子、吸水性高分子(SAP)、及び高分子凝集剤が挙げられる。このうち、親水性高分子及び吸水性高分子は、土壌粒子の周囲に存在する水分(遊離水)を吸収することにより、土壌の団粒化を防止する。高分子凝集剤は、土壌の周囲に存在する水分(遊離水)を土壌とともにまとめる(周囲から隔離する)ことにより、土壌の団粒化を防止する。高分子製剤は、親水性高分子、吸水性高分子、又は高分子凝集剤を夫々単独で含むものであってもよいし、これらの二種以上の混合物であってもよい。
【0036】
親水性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体、ポリカルボン酸系ポリマー等が挙げられる。これらのうち、好ましい親水性高分子は、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体である。
【0037】
吸水性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリメタクリル酸系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、カルボキシメチルセルロース系ポリマー等が挙げられる。これらのうち、好ましい吸水性高分子は、ポリアクリル酸系ポリマーとして代表的なポリアクリル酸ナトリウムである。
【0038】
高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、及びノニオン性高分子凝集剤の何れも使用可能であるが、土壌の付着防止性に優れている点や、環境に与える影響が少ないという点から、アニオン性高分子凝集剤が好ましく使用される。また、両性高分子凝集剤のうち、アニオン性基がカチオン性基より多いアニオンリッチ両性高分子凝集剤についても、アニオン性高分子凝集剤と同様に使用可能である。すなわち、分子構造中にアニオン性基を含む高分子凝集剤(アニオン性高分子凝集剤、又はアニオンリッチ両性高分子凝集剤)が好ましく利用される。
【0039】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩又はポリカルボン酸塩とアクリルアミドとの共重合物、ポリスルホン酸塩又はポリスルホン酸塩とアクリルアミドとの共重合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。ポリカルボン酸塩を形成するためのポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸等が挙げられる。ポリスルホン酸塩を形成するためのポリスルホン酸としては、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0040】
カチオン系高分子凝集剤としては、例えば、アルキルアミノアクリレート塩重合体又はアルキルアミノアクリレート塩重合体とアクリルアミドとの共重合物、アルキルアミノメタクリレート塩重合体又はアルキルアミノメタクリレート塩重合体とアクリルアミドとの共重合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。アルキルアミノアクリレート塩重合体としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等が挙げられる。アルキルアミノメタクリレート塩重合体としては、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイル2-ヒドロキシプロピルリド等が挙げられる。
【0041】
両性高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤の構成単位であるアニオン性モノマーと、カチオン性高分子凝集剤の構成単位であるカチオン性モノマーと、ノニオン性モノマー(必要に応じて)とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられるが、安定性の点からランダム共重合体又は交互共重合体が好ましい。アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとの重合比は、アニオン性基が30~45mol%、好ましくは35~42mol%であり、カチオン性基が0.1~10.0mol%、好ましくは0.1~4.0mol%であり、残部がノニオン性基である。両性高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤が有するアニオン性基と、カチオン性高分子凝集剤が有するカチオン性基とが同一の高分子構造中に存在するが、アニオン性高分子凝集剤とカチオン性高分子凝集剤との混合物のように相分離することがないため、安定した性能を発揮することができる。
【0042】
高分子製剤の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、1.0×10~2.5×10が好ましく、1.3×10~2.2×10がより好ましい。高分子製剤の分子量が上記の範囲にあれば、土壌の付着防止性に優れるとともに、土壌改良剤としての取り扱いも容易なものとなる。土壌改良剤中の高分子製剤の含有量は、5~50重量%の範囲で任意に設定することができるが、10~30重量%とすることが好ましい。
【0043】
[無機多孔質製剤]
無機多孔質製剤は、撥水性を有する多孔質材料である。無機多孔質製剤には無数の微細孔が形成されている。無機多孔質製剤が土壌粒子に付着すると、濡れの原因である土壌粒子の表面に残留する水分は無機多孔質製剤の微細孔に十分に入り込めず、無機多孔質製剤が打ち粉のようになって水を弾く(これを「打ち粉効果」と称する)。これにより、土壌粒子に撥水性が発現する。無機多孔質製剤の微細孔のサイズ(細孔径)は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。また、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましい。無機多孔質製剤として細孔径が100~500nmの微細孔を有する多孔質材料を使用することで、上記の打ち粉効果により土壌粒子に良好な撥水性が付与され、その結果、土壌の付着性を低減することができる。
【0044】
無機多孔質製剤の嵩比重は、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。また、1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましい。無機多孔質製剤として0.7~1.2の嵩比重を有する多孔質材料を使用することで、土壌改良剤を添加した後の土壌の重量変動幅が小さく抑えられ、改質後の土壌の取り扱いが容易なものとなる。
【0045】
無機多孔質製剤の粒径は、45μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、600μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。無機多孔質製剤として45~600μmの粒径を有する多孔質材料を使用することで、土壌粒子の表面に付着し易いものとなり、土壌粒子に高い撥水性を付与することができる。
【0046】
好適な無機多孔質製剤としては、黒曜石パーライトが挙げられる。黒曜石パーライトは、天然の黒曜石を高温で焼成することによって得られる多孔質鉱石であり、100~500nmの微細孔を有する。黒曜石パーライトは、この微細孔が撥水性の発現に寄与する。
【0047】
図1は、黒曜石パーライトが土壌に作用するメカニズムを説明するイメージ図である。図1(a)は、含水土壌のイメージ図である。含水土壌は、土壌の周囲が水(遊離水)で取り囲まれた状態にある。含水土壌に土壌改良剤を添加し、攪拌すると、図1(b)に示すように、土壌改良剤に含まれる高分子製剤が土壌の周囲に存在する遊離水を吸収する。一方、土壌改良剤に含まれる黒曜石パーライトは、図1(c)に示すように、土壌の表面に付着する。このとき、土壌粒子の表面には濡れの原因である残留水分が存在するが、残留水分は黒曜石パーライトの微細孔に十分に入り込めず、黒曜石パーライトが打ち粉のようになって残留水分を弾くので、土壌粒子に撥水性が発現する。この状態でさらに攪拌を継続すると、図1(d)に示すように、土壌が粉砕され細かく粒状化される。このようにして、高分子製剤によって水分が吸収された土壌粒子の表面に黒曜石パーライトが付着することで土壌に撥水性が付与される。その結果、土壌はパラパラの状態となって団粒化を防ぐことができる。このような土壌の改質は、改質前の土壌の化学的性質を変化させるものではないため、輸送や保管等の取り扱いやその後の処理が容易なものとなる。
【0048】
ところで、無機多孔質鉱石としてゼオライトが知られている。ゼオライトは0.3~1nmの微細孔を有する多孔質物質である。ところが、ゼオライトは高い陽イオン交換能や吸着能を有するため、ゼオライトが土壌粒子の表面に付着すると、当該土壌の化学的性質を変化させる可能性がある。建設汚泥等においても、土壌としての化学的性質が変化すると、輸送や保管等の取り扱いやその後の処理が却って難しくなることがある。また、ゼオライトは高価な多孔質物質であるため、建設汚泥処理のような低コスト化が求められる場面には適さない。以上のような理由から、本発明において、無機多孔質製剤にはゼオライトは含まないものとする。なお、黒曜石パーライトは、ゼオライトのようなイオン交換能や吸着能を有さないため、改質前の建設汚泥等の化学的性質を変化させることがない。
【0049】
[高分子製剤と無機多孔質製剤との配合]
土壌改良剤は、重量ベースで、無機多孔質製剤の配合量が高分子製剤の配合量より多くなるように調製される。具体的には、高分子製剤と無機多孔質製剤との配合比率は、重量比で、1/99~49/51に設定されることが好ましく、3/97~30/70に設定されることがより好ましい。高分子製剤と無機多孔質製剤との配合比率が上記の範囲に設定されていれば、含水土壌の改質(付着性の低減)がより促進されるとともに、取り扱いが容易な土壌を得ることができる。
【0050】
[その他の成分]
土壌改良剤には、必要に応じて、その他の成分を配合することも可能である。その他の成分としては、消泡剤、pH調整剤、溶剤、増粘剤、安定化剤、着色剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの成分は、単独で配合してもよいし、複数種を配合してもよい。
【0051】
<土壌改良方法>
本発明の土壌改良方法は、上記の土壌改良剤を使用して、土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌を改質するものであり、以下の準備工程、及び処理工程を実行することにより実施される。
【0052】
[準備工程]
サンプルとして採取した含水土壌に、土壌改良剤を所定量ずつ添加し、JIS R5201に準拠したテーブルフロー試験の結果が105mm×105mm以内になるまで土壌改良剤の添加を繰り返して、含水土壌に対する土壌改良剤の添加量を決定する。テーブルフロー試験の詳細については、後述する実施例の「事前準備」において説明する。
【0053】
[処理工程]
処理対象の含水土壌に土壌改良剤を準備工程で決定した添加量で添加し、攪拌する。
【0054】
上記の土壌改良方法によれば、準備工程において、含水土壌に対する土壌改良剤の最適な添加量が決定されるため、改質対象となる土壌が水分を多く含む取り扱いが難しい建設汚泥等であっても、上述した土壌改良方法に従って、建設汚泥等に土壌改良剤を準備工程で決定した添加量で添加し、これを攪拌すると、高分子製剤と無機多孔質製剤とが協働して付着性(粘着性)が強い建設汚泥等をパラパラの状態へと改質し、土壌の団粒化が防止される。その結果、土壌の付着性が低減する。この改質された土壌は、土壌としての化学的性質に変化はなく、機械装置等への付着が抑えられるため、輸送や保管等の取り扱いやその後の処理が容易なものとなる。また、高価格のゼオライトを含まない配合としたことで、土壌改良方法の施工コストを抑えることができる。
【実施例
【0055】
本発明の土壌改良剤の性能を確認するため、模擬土壌を用いて各種試験を実施した。以下、実施例について説明する。
【0056】
<模擬土壌の調製>
改質が必要な含水土壌は、含水率(含水比)が高く、有機質を含み、強度が低い土壌である。本実施例では、含水土壌を模擬するため、国土交通省より通知された「発生土利用基準について」(平成18年8月10日付け国官技第112号、国官総第309号)において、コーン指数200kN/m未満の泥土であって含水比80%程度以上とされている有機質土を再現した。
【0057】
具体的には、笠岡粘土(岡山県笠岡市の粘土)と黒土(栃木県鹿沼市の表層土)とを重量比で1:1の配合となるように混合し、次いで含水比が100%程度になるように加水して塊が無くなるまで攪拌した。2日間静置後に含水比を測定し、80%以上を維持していれば、含水土壌を模擬した模擬土壌として使用した。実際に調製した模擬土壌の性状は、含水比100%、pH7.2(土壌1w/v%)であった。なお、含水比、及びpHは、以下の測定装置又は方法により測定した。
[含水比]
加熱乾燥式水分計(型式:MF-50、株式会社エー・アンド・デイ製)
[pH]
模擬土壌1gを1Lの水に分散させ、分散液(土壌1w/v%)のpHをpH計(アズワン株式会社製)により測定する。
【0058】
<土壌改良剤の調製>
土壌改良剤の調製に使用した成分(薬剤)は、以下のとおりである。
[高分子製剤]
・吸水性高分子 テクニカ合同株式会社製の「SAP」
外観:微粉状、粒径:75~150μm、吸水倍率:100~300倍
・高分子凝集剤 テクニカ合同株式会社製の「ウォータフロック」
外観:微粉状、粒径:75μm以下
[無機多孔質製剤]
・黒曜石パーライト 太平洋パーライト株式会社製
細孔径:100~500nm、粒径:45~600μm
・真珠岩パーライト 太平洋パーライト株式会社製
細孔径:数百nm~数十μm、粒径:0.6mm以下
・バーミキュライト ベルミテック株式会社製
細孔径:数μm以上、粒径:75~150μm
[無機化合物]
・炭酸カルシウム 日東粉化工業株式会社製
粒径:150~425μm
【0059】
高分子製剤と無機多孔質製剤とを以下の表1に示すように配合し、実施例1~3及び比較例1~6にかかる土壌改良剤を調製した。また、高分子製剤と無機化合物である炭酸カルシウムとを配合した土壌改良剤を参考例1~3とした。表1中に記載する数値の単位は重量部とする。したがって、各実施例は、高分子製剤と無機多孔質製剤との重量比率が維持されていれば、任意の倍率でのスケールアップが可能である。なお、以降の説明において、吸水性高分子を使用した土壌改良剤を吸水系土壌改良剤、高分子凝集剤を使用した土壌改良剤を凝集系土壌改良剤、吸水性高分子及び高分子凝集剤を使用した土壌改良剤を混合系土壌改良剤と称する場合がある。
【0060】
【表1】
【0061】
<事前準備>
含水土壌(模擬土壌)に対する土壌改良剤の添加量は、当該土壌改良剤の種類(配合)により異なる。そこで、事前準備として、以下の手順にて模擬土壌の攪拌条件、及び模擬土壌に対する土壌改良剤の添加量を決定した。
(1)模擬土壌1Lをボウルに投入し、土壌改良剤を適量添加する。
(2)模擬土壌をスタンドミキサーで30秒間攪拌し、停止後、ボウル内面に付着した一部の模擬土壌を剥がしてボウル内に戻す。
(3)スタンドミキサーによる攪拌を再開し、模擬土壌の肉眼による外観の変化が無くなった時点で攪拌を終了する。
(4)攪拌が完了した模擬土壌(試料)について、JIS R5201に準拠したテーブルフロー試験を実施する。
(5)測定したフロー値が105mm×105mm以内であれば、上記(1)の添加量を採用する。フロー値が105mm×105mmを超えていれば、上記(1)において添加量を増加し、上記(2)~(5)を繰り返す。
【0062】
以上の事前準備の結果、模擬土壌の攪拌条件は、スタンドミキサーによる30秒間の攪拌後、ボウル内面に付着した一部の模擬土壌を剥がしてボウル内に戻し、再度30秒間攪拌するものとし、模擬土壌に対する土壌改良剤の添加量を以下のとおり決定した。
・吸水系土壌改良剤(実施例1、比較例1、比較例2、参考例1):25kg/m
・凝集系土壌改良剤(実施例2、比較例3、比較例4、参考例2):40kg/m
・混合系土壌改良剤(実施例3、比較例5、比較例6、参考例3):32.5kg/m(吸水系土壌改良剤12.5kg/m+凝集系土壌改良剤20kg/m
【0063】
<含水比、及びpHの測定>
本発明の土壌改良剤は、ゼオライトのような高い陽イオン交換能や吸着能を有する無機多孔質製剤を使用していないため、含水土壌(模擬土壌)に添加しても土壌の化学的性質は変化しない。そこで、このことを確認するため、以下の手順にて改質後の模擬土壌の含水比、及びpHを測定し、土壌改良剤を添加しない未改質の模擬土壌(コントロール)の含水比、及びpHと比較した。改質により模擬土壌の含水比、及びpHが大きく変化していなければ、模擬土壌の化学的性質は変化していないものと評価できる。
(1)模擬土壌1Lをボウルに投入し、土壌改良剤を上記の「事前準備」で決定した添加量で添加する。
(2)模擬土壌をスタンドミキサーで30秒間攪拌し、停止後、ボウル内面に付着した一部の模擬土壌を剥がしてボウル内に戻す。
(3)模擬土壌を再度30秒間攪拌し、停止後、上記の「模擬土壌の調製」で説明した方法と同様にして、模擬土壌の含水比、及びpH(土壌1wt%)を測定する。
(4)コントロールとして、上記(1)で土壌改良剤を添加しない模擬土壌についても同様の作業を行い、含水比、及びpH(土壌1wt%)を測定する。
測定結果を以下の表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、未改質の模擬土壌(コントロール)と比較して、含水比は95%以上を維持しており、pHにも大きな変化は見られなかった。したがって、黒曜石パーライトを含む土壌改良剤は、模擬土壌の化学的性質を変化させないことが確認された。なお、比較例1~6、及び参考例1~3の土壌改良剤についても、模擬土壌の化学的性質を変化させないものと評価できるが、これは、真珠岩パーライト、バーミキュライト、及び炭酸カルシウムも、黒曜石パーライトと同様に、陽イオン交換能や吸着能を有さない物質であるためと考えられる。
【0066】
<付着性の評価>
本発明の土壌改良剤を用いて改質した含水土壌(模擬土壌)について、付着性が改善されているか(パラパラの状態になっているか)を確認するため、以下の手順にて付着性を評価した。
(1)上から、蓋、目開き9.5mmの第一篩、目開き4.75mmの第二篩、及び受け皿を重ねて積み上げた篩装置を準備する。
(2)試験体として、上記の「含水比、及びpHの測定」で使用した改質後の模擬土壌1kgを篩装置に投入し、JIS K0069:1992(化学製品のふるい分け試験方法)の3の3.1の(1)に記載されている「手動ふるい分け」に準拠して、ふるい分けを行う。
(3)第一篩、及び第二篩に残った試験体の重量から各篩における透過率(%)を計算し、あわせて各篩に残った試験体の外観から付着性を評価する。
付着性の評価結果を以下の表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、いずれも目開き9.5mmの篩透過率が95%以上、かつ目開き4.75mmの篩透過率が65%以上であり、土壌の外観は粒子が細かくパラパラした良好な状態であった。特に、吸水系土壌改良剤を用いて改質した実施例1の模擬土壌は、目開き4.75mmの篩透過率が群を抜いて良好であり、篩装置への土壌の付着は殆ど見られなかった。このように、実施例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は適切なサイズに粒状化され、取り扱いが容易な形態(パラパラの状態)へと改質されることが示された。
【0069】
これに対し、比較例1~6の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、いずれも目開き9.5mmの篩透過率が95%未満であり、土壌の外観についても程度の差はあるが全体的に粒子が大きくなる傾向が確認された。特に、比較例3~6の土壌改良剤で改質した模擬土壌については団粒化が確認され、篩装置への土壌の付着が確認された。参考例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、篩透過率が非常に悪く、土壌の外観についても湿っている状態であり、土壌の団粒化及び篩装置への土壌の付着が確認された。
【0070】
以上の結果から、建設汚泥(含水土壌)を改質するために用いる土壌改良剤としては、付着性低減の点において、吸水性高分子と黒曜石パーライトとの組み合わせが最も効果的であることが確認された。
【0071】
<強度の評価>
本発明の土壌改良剤を用いて改質した含水土壌(模擬土壌)について、取り扱いや処理を容易なものとするためには、土壌添加剤の添加量を抑えつつ、土壌としての強度を一定以上に保つ必要がある。そこで、以下の手順にて土壌の強度を評価した。
(1)室内のコンクリートの床の上にブルーシートを敷く。
(2)試験体として、上記の「含水比、及びpHの測定」で使用した改質後の模擬土壌1Lをブルーシートの上に40cm×40cmの大きさに敷き均す。
(3)自然換気可能な条件下で、室温18±3℃、湿度45±10%に調整し、試験体を24時間静置する。
(4)静置後の試験体を混ぜ合わせた後、含水比を測定する。
(5)含水比を測定した試験体について、JIS A 1228に準拠してコーン指数を測定し、含水比の測定結果とあわせて試験体の強度を評価する。
強度の評価結果を以下の表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
実施例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、いずれもコーン指数が670kN/m以上であり、土壌として一定以上の強度を有していると評価された。また、実施例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、体積換算での土壌改良剤の添加量が比較的少なく済むため、改質後の土壌は嵩張らず、取り扱いが容易なものであった。したがって、改質後の土壌を二次利用する場合でも、ハンドリングに優れており、施工性が悪化することはないものと思われる。
【0074】
これに対し、比較例1~6の土壌改良剤で改質した模擬土壌について、吸水系土壌改良剤を単独で用いている比較例1及び2の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、土壌として一定以上の強度が得られたが、比較例3~6の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、土壌としての強度が不十分であった。参考例1~3の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、土壌としての強度が劣っているため取り扱いや処理が難しく、二次利用に適さないものであった。なお、比較例1~6の土壌改良剤で改質した模擬土壌は、体積換算での土壌改良剤の添加量が多くなるため、改質後の土壌は嵩張ったものとなり、取り扱いが容易なものとは言えなかった。
【0075】
以上の結果から、建設汚泥(含水土壌)を改質するために用いる土壌改良剤としては、強度発現の点においても、吸水性高分子と黒曜石パーライトとの組み合わせが効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の土壌改良剤、及び土壌改良方法は、土木工事、建設工事等により発生した多量の水分を含む建設汚泥(含水土壌)の改質に利用することができる。
【要約】
【課題】土壌として特に建設汚泥を対象としたものにおいて、改質後の土壌の取り扱いや処理を容易にする低コストの土壌改良剤を提供する。
【解決手段】土木工事又は建設工事、或いは土壌改良作業において存在する含水土壌を改質する土壌改良剤であって、水と親和性を有する高分子製剤と、撥水性を付与する無機多孔質製剤(ゼオライトを除く)と、を含む。高分子製剤は、親水性高分子、吸水性高分子、及び高分子凝集剤からなる群から選択される少なくとも一つである。無機多孔質製剤は、黒曜石パーライトである。
【選択図】なし
図1