(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法、コーティング組成物、塗装物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/333 20060101AFI20240806BHJP
C08F 20/36 20060101ALI20240806BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240806BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240806BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240806BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240806BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08G65/333
C08F20/36
C08F290/06
C08G18/00 C
C08G18/48 033
C08G18/67 010
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2019175862
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松浪 斉
(72)【発明者】
【氏名】三澤 蔵充
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303258(JP,A)
【文献】特開2014-237776(JP,A)
【文献】特開2005-182041(JP,A)
【文献】特開2007-191530(JP,A)
【文献】特開2004-292480(JP,A)
【文献】ADEKA,-水系ゲル化剤- アデカノール GT-930,2019年05月23日,p.1-10,https://www.adeka.co.jp/chemical/catalog/pdf/adeka_gt930.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/333
C08F 20/36
C08F 290/06
C08G 18/00
C08G 18/48
C08G 18/67
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、
次いで、得られた反応物に、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物
であるアルコキシポリエチレングリコールをmモル比反応させて、
式(1)に記載のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得、
該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を、
200rpm以下
の条件で緩やかに攪拌して、乳化することを特徴とする水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法。
(R
1O-CONH)
m-R
2-(NHCO-OR
3)
n (1)
(式中、
R
1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物
であるアルコキシポリエチレングリコールの脱水素残基、
R
2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
-OR
3は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
【請求項2】
前記攪拌を、パドル翼を用いて、回転数100rpm~
200rpmにて行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水を、固形分濃度が50重量%以下になるまで添加し、前記水の添加終了後、所定時間緩やかに攪拌を続ける請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水の添加終了後、10分間以上、回転数100rpm~
150rpmにて攪拌を続ける請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類である請求項1~4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物
であるアルコキシポリエチレングリコールが、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール及びブトキシポリエチレングリコールからなる群から選択される請求項1~5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である請求項1~6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の製造方法で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を含むコーティング組成物。
【請求項9】
さらに、エチレン性不飽和モノマー及び光重合開始剤の少なくとも1種を含む請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
樹脂分濃度を20重量%に換算した前記水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100重量部に対して、前記エチレン性不飽和モノマー0.1重量部~50重量部及び前記光重合開始剤0.01重量部~10重量部の少なくとも1種を含む請求項8又は9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記エチレン性不飽和モノマーが、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物である請求項8~10のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル酸化合物が、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類から選ばれる少なくとも一種類、前記ビニル基含有化合物が酢酸ビニル、N-ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類から選ばれる少なくとも一種類である請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
被塗物及び
該被塗物の表面に形成された、請求項8~12のいずれか1つに記載のコーティング組成物の膜を備える塗装物品。
【請求項14】
被塗物の表面に、請求項8~12のいずれか1つに記載のコーティング組成物を塗工し、80℃~100℃の温度範囲で1分~5分間乾燥することを含む塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法、コーティング組成物、塗装物品その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球環境保護への動きは急速に高まり、例えば、木材及び紙等の従来の基材からプラスチック基材へと、塗装基材において大きな変化をもたらした。また、プラスチック基材においても、ダイオキシン、環境ホルモン等の問題から塩化ビニル、ポリスチレン等からPET、PP、PEへと変化しつつある。このような基材の変遷により、プラスチックの弱点ともいうべき耐擦傷性を補うべく、コーティング剤の設計においても変化が求められた(例えば、特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-209448号公報
【文献】特開平11-279242号公報
【文献】特開2000-264939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コーティング材料においては、揮発性有機化合物削減、二酸化炭素の排出低減に貢献する水性化、無溶剤化への技術開発等が進められており、カルボキシル基をウレタンアクリレートの骨格に導入する場合、水性化に当たってカルボン酸を中和する必要があり、また、水分散させるに当たって乳化剤が必要となるうえ、得られる乳化液の放置安定性が不十分であり、塗膜物性においても、さらなる改善が求められている。
本願発明では、放置安定性に優れ、乳化粒子径が小さい水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法、コーティング組成物ならびに塗装物品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を含む。
(1)(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、
次いで、得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物をmモル比反応させて、
式(1)に記載のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得、
該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌及び/又は乳化することを特徴とする水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法。
(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n (1)
(式中、
R1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の脱水素残基、
R2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
R3O-は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
(2)前記攪拌を、パドル翼を用いて、回転数100rpm~300rpmにて行う上記の製造方法。
(3)前記水を、固形分濃度が50重量%以下になるまで添加し、前記水の添加終了後、所定時間緩やかに攪拌を続ける上記の製造方法。
(4)前記水の添加終了後、10分間以上、回転数100rpm~300rpmにて攪拌を続ける上記の製造方法。
(5)前記イソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類である上記の製造方法。
(6)前記片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類である上記の製造方法。
(7)前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加、又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものである上記の製造方法。
(8)前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である上記の製造方法。
(9)上記の製造方法で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を含むコーティング組成物。
(10)さらに、エチレン性不飽和モノマー及び光重合開始剤の少なくとも1種を含む上記コーティング組成物。
(11)樹脂分濃度を20重量%に換算した前記水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100重量部に対して、エチレン性不飽和モノマー0.1重量部~50重量部及び光重合開始剤0.01重量部~10重量部の少なくとも1種を含む上記コーティング組成物。
(12)前記エチレン性不飽和モノマーが、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物である上記のコーティング組成物。
(13)前記(メタ)アクリル酸化合物が、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類から選ばれる少なくとも一種類、前記ビニル基含有化合物が酢酸ビニル、N-ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類から選ばれる少なくとも一種類である上記のコーティング組成物。
(14)被塗物及び該被塗物の表面に形成された上記のコーティング組成物の膜を備える塗装物品。
(15)被塗物の表面に、上記コーティング組成物を塗工し、80℃~100℃の温度範囲で1分~5分間乾燥することを含む塗装物品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放置安定性に優れ、乳化粒子径が小さい水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を製造することができる。従って、この方法によって得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むコーティング組成物を良質かつ高性能のコーティング膜として、また、このような高性能のコーティング膜を備えた塗装物品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種」及び「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種」を意味する。
【0008】
本願における水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法では、まず、式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する。
式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、
次いで、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物をmモル比反応させることによって得ることができる。
(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n (1)
(式中、
R1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の脱水素残基、
R2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
R3O-は、は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
そして、得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、このウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌する。これによって、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を製造することができる。
【0009】
本願における上述した水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法で得られる乳化液は、平均粒子径が極めて小さく且つ長期に亘って安定(二次凝集が起こらない)でありながら、これを含む組成物によって得られた塗膜は、耐水性、耐溶剤性及び耐擦傷性に優れたコーティング剤とすることができる。つまり、硬化前は水溶性でありながら、硬化物となると耐水性が高いという、相反する独特の特性を有する。このような塗膜は、耐擦傷性に優れるとともに、帯電防止性を有しているため、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止、ひいては抗菌性を付与することができる。また、このような塗膜は、親水基を有するため、防曇性に優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用することができるとともに、水系顔料において分散性を良好なものとすることができる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー自体は分子量が比較的小さいため、水溶性UVインクジェットインキの成分としても利用することができる。
【0010】
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類及びジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類等が挙げられる。
ジイソシアネート類は、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、(o-、m-、又はp-)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物、イソホロンジイソシアネートのヌレート化物、トリレンジイソシアネートのヌレート化物及びこれらジイソシアネートのビュレット化物等が挙げられる。なかでも、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有する、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物、イソホロンジイソシアネートのヌレート化物、トリレンジイソシアネートのヌレート化物がより好ましい。
なお、イソシアネート化合物としては、その中に含まれる1以上のイソシアネート基に、アルコール化合物が付加したウレタン構造、アミン化合物が付加したウレア構造を有するものであってもよい。イソシアネート基に、アルコール化合物及びアミン化合物が付加している場合には、イソシアネート化合物の1分子あたりの官能基数を増大させることができる。ここでイソシアネート基に付加し得るアルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン等が挙げられる。これらアルコール化合物及びアミン化合物は、硬化重合体の耐擦傷性を増大させるという観点から、官能基あたりの分子量が小さいものを用いることが好ましい。
【0011】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオール(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類としては、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
イソシアネート化合物に水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる場合、反応を促進する目的で、ジブチルチンジラウレート等の金属系触媒、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のアミン系触媒等の存在下、50℃~80℃の温度範囲で攪拌することが好ましく、60℃~70℃の温度範囲がより好ましい。
【0013】
続いて、上記で得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物反応させる。
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物は、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物類は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等に代表されるアルキレンオキサイドを(メタ)アクリル酸に付加させることによって得られる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に代表されるポリアルキレングリコールからでも合成できる。(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の分子量は任意に選択できるが、900以上であることが好ましく、900~2000であることがより好ましい。また、別の観点から、アルキレンオキサイドの付加モル数は、20以上であることが好ましく、20~35であることがより好ましい。
片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物は、アルコキシポリエチレングリコール類であることが好ましい。アルコキシポリエチレングリコール類としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル等が挙げられる。アルコキシポリエチレングリコール類の分子量は任意に選択できるが、900以上であることが好ましく、900~2000であることがより好ましい。このような化合物を用いることにより、得られる水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、ノニオン性の乳化物とすることができ、コーティング組成物等に、種々の添加剤を添加する場合においても、凝集、沈殿、分離等の乳化物の特性の阻害を防止することができる。
【0014】
上記で得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物反応させる場合、ジブチル錫ジラウレート等の金属系触媒の存在下、50℃~80℃の温度範囲で攪拌することが好ましく、60℃~70℃の温度範囲がより好ましい。
得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、樹脂分濃度を100%とすることができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、5000~100000とすることができ、好ましくは7000~20000とすることができる。このような重量平均分子量とすることで、適切な粘度の組成物を得ることができ、自己乳化を起こしやすく、かつ、これを用いて水溶性組成物を容易に調整することができるとともに、このような水溶性組成物を含む塗膜等を形成した場合に、高硬度の塗膜を得ることができる。
なお、重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量を意味し、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「ShodexGPC system-11型」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定することができる。
【0015】
例えば、(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物を先に反応させると、ポリアルキレングリコール化合物は分子量に分布を有し、片末端水酸基のみならず両末端水酸基含有のポリアルキレングリコールが存在するため、ゲル化がしばしば起きる。ゲル化が生じると、安定した反応ができないばかりか、得られた反応物は、水に溶解しにくくなる。
一方、上述したように、(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を先に反応させ、次いで(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物を反応させることにより、ポリアルキレングリコール化合物がペンダント様に結合する、ペンダント型ウレタンアクリレート構造となるために、自己乳化が可能となる。
【0016】
続いて、式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに、水を添加して、乳化液状の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を製造する。
そのために、上記で得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに、水を徐々に添加する。この際、得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、30℃~80℃の温度範囲に維持するとともに、添加する水の温度も、これと同等の範囲に調整することが好ましく、40℃~70℃又は40℃~60℃の温度範囲とすることがより好ましい。
添加する水は、水道水、脱イオン水、イオン交換水、蒸留水等種々の水を用いることができる。水の添加は、例えば、滴下等によって又は分割して行うことが好ましい。分割添加の場合、1回量は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの質量の50重量%~200重量%、好ましくは、100重量%~200重量%とすることが好ましい。水の添加量は、樹脂分濃度が50重量%以下になる量とすることが好ましく、10重量%~45重量%がより好ましく、15重量%~40重量%又は20重量%~40重量%がさらに好ましい。例えば、水の添加に要する時間は、水の添加開始から終了までの時間を5分間以上とすることが挙げられ、5分間~2時間とすることが好ましく、10分間~30分間又は15分間~30分間とすることがより好ましい。
【0017】
また、水の添加と同時に、それらの界面、つまり、オリゴマーと水との界面付近又は界面よりやや水側に攪拌翼を配置して攪拌することが好ましい。ここでの攪拌は緩やかに行うことが好ましい。なお、スターラでの攪拌は、攪拌子が容器底面に沈み、オリゴマーと水の界面、つまり、W/O界面に配置することができないため、オリゴマーと水の界面付近に攪拌翼を配置することができる攪拌機を用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼としては、例えばパドル翼を用いることができる。パドル翼は、オリゴマーと水との界面付近又は界面よりやや水側に翼を配置することができ、1枚の翼を有するのみであってもよいし、2枚以上の翼を多段で有するものであってもよい。緩やかな攪拌としては、回転数500rpm以下が挙げられ、300rpm以下が好ましく、200rpm以下がより好ましく、100rpm~300rpm又は100rpm~150rpmが特に好ましい。
さらに、水の添加を終了した後においても、攪拌を続けることが好ましい。この場合の攪拌は、添加中の攪拌と異なってもよいが、同程度に緩やかに行うことが好ましい。水の添加終了後、例えば、10分間以上攪拌し続けることが挙げられ、20分間以上が好ましく、30分間以上がより好ましい。この際の回転数も上記と同様の範囲が挙げられる。
【0018】
このような乳化方法(転相乳化)によって乳化させることにより、得られた乳化物は、平均粒子径が極めて小さく、且つ保存安定性が高い。また、その乳化物をコーティング組成物として、例えば、塗工及び乾燥後、放射線硬化塗膜とした場合には、得られた塗膜は、レベリング性が良く、極めて高い耐水性を有し、硬化前のオリゴマーは水溶性でありながら、硬化後の塗膜は耐水性が高いという、相反する特性を併せもつコーティング組成物を得ることができる。これは、得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物におけるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粒径を均一な微粒子とすることに起因することを確認している。例えば、乳化物粒子の粒度分布において、粒子の累積50%の粒径が100nm以下であるもの等が挙げられる。また、50%の粒径が60nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm~45nmであることがより一層好ましい。また、粒子の95%積算径が150nm以下であるもの等が挙げられる。また、95%の粒径が140nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましく、30nm~115nmであることがより一層好ましい。さらに、別の観点から、算術平均径が110nm以下であるもの等が挙げられる。また、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、10nm~60nmであることがより一層好ましい。
これらは、堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500)にて乳化液の粒径分布を測定することにより求めた値である。
【0019】
本願における水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を含有するコーティング組成物は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100重量部に対して、エチレン性不飽和モノマー0.1重量部~50重量部及び光重合開始剤0.01重量部~10重量部の少なくとも1種を含む。なかでも、エチレン性不飽和モノマー及び光重合開始剤を含むものが好ましく、これらの双方を含むものがより好ましい。ここでの水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100重量部は、上記において添加した水の量によって樹脂分濃度に、例えば、10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~40重量%等の変動があるが、例えば、樹脂分濃度が20重量%であることを基準とした値である。
これらの成分は、同時に又は順次、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物に添加し、混合すればよい。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに光重合開始剤を添加することにより、活性エネルギー線、例えば、紫外線を照射することによって、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、任意にエチレン性不飽和モノマーが、架橋及び/又は重合して硬化重合体を構成する。この硬化重合体は、優れた、耐擦傷性と、表面硬度と、プラスチック基材への密着性を示す。
例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合成時に、重合性官能基をもたない片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物を用い、この化合物の比率を多くすると、架橋重合させた時に硬化性が低下し、硬度も低下する傾向がある。そのため片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物のモル比を、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のモル比以下とすることが好ましい。ポリアルキレングリコール鎖の分子量が大きいほど、架橋重合させた時に帯電防止効果は増大するが、硬度は低下する傾向がある。また、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の官能基の数が多いほど、架橋重合させた時に硬度が増大し、逆に少ないほど硬度は低下する。これらを調整することにより、適切な硬度の硬化重合体を得ることができる。
【0021】
光重合開始剤としては、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピレンフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、4’,4”-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。
【0022】
特に、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物としての機能をよりよく発揮させるためには、水溶性又は水分散性を有する光重合開始剤を使用することが好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメトクロライド(オクテルケミカルズ社製、「Quantacure QTX」)、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)等が挙げられ、なかでも、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)がより好ましい。
光重合開始剤は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(樹脂分濃度20重量%)100重量部に対して、0.002重量部~10重量部が挙げられ、0.01重量部~10重量部が好ましく、0.05重量部~8重量部より好ましく、0.6重量部~5重量部が特に好ましい。
【0023】
また、光重合開始剤とともに、光重合開始助剤を併用してもよい。光重合開始助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに添加するエチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、ビニル基含有化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸化合物としては、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。ビニル基含有化合物としては、酢酸ビニル、N-ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0025】
アクリル酸アミド類としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミノアルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類としては、例えば、アルキロイルアミノプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム塩等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートヘキサヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートヘキサヒドロ無水フタル酸付加物等が挙げられる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオールポリ(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類としては、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートアルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニルアルキルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
なかでも、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物は、帯電防止性を有する、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ビニルピロリドン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級塩、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ビニルスルホン酸及びビニルスルホン酸塩であることがより好ましい。
エチレン性不飽和モノマーは、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(樹脂分濃度20重量%)100重量部に対して、0.02重量部~100重量部が挙げられ、0.02重量部~80重量部が好ましく、0.1重量部~50重量部より好ましく、0.1重量部~40重量部が特に好ましく、1重量部~30重量部がより一層好ましい。
【0027】
水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物には、帯電防止剤を添加してもよい。これにより、架橋重合させたときに硬化重合体の有する帯電防止効果と相乗的作用し、帯電防止効果が著しく向上する。そして、帯電防止剤を、例えば、以下の範囲とすることにより、架橋重合させたときに硬化重合体から帯電防止剤を漏失することなく、十分な帯電防止効果が得られる。
帯電防止剤としては、第四級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一種類のアニオン型帯電防止剤、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種類のノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。なかでも、カチオン型帯電防止剤が好ましい。
帯電防止剤は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(樹脂分濃度20重量%)100重量部に対して、0重量部~10重量部が挙げられ、0.01重量部~5重量部が好ましく、0.05重量部~5重量部より好ましく、0.1重量部~5重量部が特に好ましい。
【0028】
コーティング組成物には、さらに、フィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤等を配合してもよい。これらは、当該分野で通常用いられているもののいずれを用いてもよい。
また、必要に応じて、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0029】
コーティング組成物は、被塗物として、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル系樹脂等)、ガラス、紙、木材、セメント等の基材に塗布後、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の活性エネルギー線を照射し、架橋/重合させることができる。架橋/重合されたコーティング組成物は、耐擦傷性に優れ、帯電防止性を有しているため、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止をすることができる。また、防曇性が優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用することができる。
コーティング組成物を、被塗物の表面に塗工する場合、その厚みは、1μm~50μm、好ましくは5μm~20μmが挙げられる。また、活性エネルギー線を照射する前に、60℃を超える温度、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、100℃以下の温度範囲で、1分~5分間、好ましくは3分~5分間乾燥することが好ましい。このように比較的高温で、かつ短時間で乾燥することにより、特に、塗膜の表面のレベリング性がより良くなり、耐スチールウール性をも向上させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、具体的には以下のようにして製造する。
【0031】
実施例1
(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量23%)159g(0.29モル)、2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.6g、ジブチルスズジラウリレート0.02gを仕込んだ。これに、70℃にて、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(0.58モル)(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(水酸基価59.8mgKOH/g)545gとして仕込む)を約1時間で滴下し、70℃で4時間反応させた。残存イソシアネート基が1.7%となった時点で60℃に冷却した。
さらに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量989.59、水酸基価56.7mgKOH/g)643.9g(0.30モル)を55℃にて約1時間で滴下した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで70℃に加熱し、3時間反応させて、オリゴマーの赤外吸収スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレートオリゴマー[A-1]を得た(樹脂分濃度100%)。
得られたウレタンアクリレートオリゴマー[A-1]の重量平均分子量は12,000であった。
【0032】
(乳化)
実施例1で得られたウレタンアクリレートオリゴマー[A-1]200gを60℃に保ち、室温(25℃)のイオン交換水800gを滴下または分割仕込み5回(初期400g、30分ごとに100g追加)(転相乳化法)しながら、パドル翼にて、オリゴマーとイオン交換水との界面(W/O界面)付近で撹拌した。このときの攪拌は、100~150rpmにて行った。樹脂分濃度が20%になった時点で滴下を終了し、乳化液を得た。その後、30分間撹拌を維持し、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物[A-2]を得た。
得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物[A-2]のpHは4~5、加熱残分は20重量%、25℃での粘度は5mPa・Sであった。
なお、加熱残分及び粘度は、以下の方法で測定した値である。
【0033】
(加熱残分)
アルミ皿(径約50mm)の重さを正確に測り(Ag)、試料約1.5gをアルミ皿にトリ、すばやくガラス棒でなるべく均一に、底面一杯に広げてからその重量を正確に測定する(Bg)。アルミ皿を105℃~110℃の電気定温乾燥機で3時間乾燥させる。アルミ皿を乾燥機から取り出し、室温まで放冷後、その重さを正確に測定する(Cg)。
加熱残分(%)=100×{(C-A)/(B-A)}
ここで、Aはアルミ皿の重さ(g)、Bは乾燥前の試料込みのアルミ皿の重さ(g)、Cは乾燥後の試料込みのアルミ皿の重さ(g)である。
(粘度)
試料約400mlを広口瓶に取り、蓋をして「品位規格に規定する」温度に調整してある恒温槽に入れ、4時間以上放置して試料の温度を調整する。B型回転粘度計に、予め所定の温度±0.2℃に保ってある「品位規格に規定する」ロータを気泡が付着しないようにして試料中にいれ、粘度計にロータを取り付け、標線に液面を合わせる。「品位規格に規定する」回転数にセットし、粘度計を回転させ、1分後の指針示度を読み取る。
粘度(cP)=指針示度×X
ここで、Xは粘度換算乗数(B方回転粘度計に付属する換算表による)
【0034】
実施例2
実施例1で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(樹脂分濃度:20重量%)100重量部に対して、光重合開始剤として1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア2959)1.4重量部を添加し、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリロイルモルフォリン20重量部を添加し、混合して活性エネルギー線硬化型のコーティング組成物[A-3]を得た(樹脂分濃度33%)。
【0035】
比較例1
(乳化)
実施例1で得られたウレタンアクリレートオリゴマー[A-1]を用い、ディスパーを利用して(撹拌位置:底部(樹脂中))、1000rpmの高速回転で攪拌し、樹脂分濃度が20重量%になった時点から10分間撹拌を維持する以外、実施例1の乳化方法と同様の方法で、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物[X-2]を得た。
比較例2
比較例1で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(樹脂分濃度:20重量%)100重量部に対して、光重合開始剤として1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア2959)1.4重量部を添加し、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリロイルモルフォリン5重量部を添加し、混合して活性エネルギー線硬化型のコーティング組成物[X-3]を得た(樹脂分濃度33%)。
【0036】
試験例A
実施例1の乳化後の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物[A-2]及び比較例1のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物[X-2]をそれぞれ目視で外観観察した。また、堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500)にて乳化液の粒径分布を測定し、粒子の累積50%の粒径、粒子の95%積算径(粒子径Max値)を求めた。算術平均径は、以下の式に従って算出した。
また、得られた乳化液を5℃及び60℃の下に静置し、目視によって観察した。
これらの結果を表1に示す。
【表1】
【0037】
試験例B
(プラスチック基材への密着性)
実施例2の活性エネルギー線硬化型のコーティング組成物[A-3]を、易接着PET、ABS、PC、PMMAの4種類のパネル上にバーコーターNo.16を用いて、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、80℃で3分間乾燥した。その後、無電極ランプ Hバルブ、ラインスピード:5.4m/min、照射量:600mJ/cm2、Peak照度:1500mW/cm2で紫外線照射を行い、硬化塗膜を形成した。得られた各パネルを40℃の温水に24時間浸漬した後、JIS K 5400に準じて、硬化塗膜に2mmの碁盤目を10×10にて100ヶ所作り、セロハンテープにより密着試験を行い、碁盤目の剥離状態を観察し、残存したマス目の数で評価した。その結果、全てのパネルに対して、残存したマス目は100/100の密着性を示した。このように、耐温水密着性が得られることが確認された。
【0038】
試験例C
(耐擦傷性)
実施例2及び比較例2の活性エネルギー線硬化型のコーティング組成物[A-3]及び[X-3]を用いて、塗膜の乾燥条件以外は、試験例Bと同様に硬化塗膜を形成した。得られた硬化塗膜の表面を目視により外観観察するとともに、約100g荷重をかけたスチールウール(#0000)で10往復擦った後の表面を目視により観察した。その結果を表2に示す。
【表2】
本発明の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法で得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、乳化液の放置安定性に優れることが確認された。
また、これを用いたコーティング組成物は、硬度、防曇性等の塗膜物性に優れた効果を示し、特に、上述した特定のエチレン性不飽和モノマーを併用することにより、プラスチック基材への密着性及び耐水性にも優れた効果を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法、コーティング組成物は、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、剥離剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。また、本発明の塗装物品は、耐擦傷性に優れ、帯電防止性を有しているので、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止をすることができる。また、防曇性が優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用できる。