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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20240806BHJP
   C25D 3/58 20060101ALI20240806BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240806BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C25D3/38
C25D3/38 101
C25D3/58
C25D7/00 J
C25D7/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020002514
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2020125539
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019017033
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】幡部 賢
(72)【発明者】
【氏名】村上 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山岡 芙有佳
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-202990(JP,A)
【文献】米国特許第03520784(US,A)
【文献】特開2017-222925(JP,A)
【文献】特開2013-229596(JP,A)
【文献】特表2003-533867(JP,A)
【文献】特開2017-036502(JP,A)
【文献】Рассеивающая способн ость сульфатных электролитов меднения , содержащих нитрат‐ионы.,Zashchita Metallov,ロシア,1988年,Vol.24 No.2 page. 305-307,ISSN 0044-1856 特にpage. 305
【文献】(和訳)硝酸イオンを含む銅めっき硫酸塩電解液の均一電着性,Zashchita Metallov,ロシア,1988年,Vol.24 No.2 page. 305-307,ISSN 0044-1856 特にpage. 305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/38-3/40
C25D 3/58
C25D 7/00
C25D 7/12
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の電解質が配合されており、
前記電解質は、硝酸と、少なくとも1つの硝酸塩と、少なくとも1つの他の電解質とを含み、
前記硝酸及び前記硝酸塩は、硝酸類であり、前記他の電解質は、前記硝酸類以外の電解質であり、
前記硝酸類と前記他の電解質との割合(硝酸類/他の電解質(重量比))は、0.1/1~2.769/1であり、
高さが240μm以上の銅柱又は銅合金柱の形成に適用されるものである、電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項2】
前記硝酸と前記硝酸塩との割合(硝酸/硝酸塩(重量比))は、0.2/1~10/1である、請求項1に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項3】
前記銅柱又は銅合金柱は、SiP(System in Package)型、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)型、FOPLP(Fan Out Panel Level Package)型、SoC(System on a Chip)型、又はPoP(Package on Package)型の電子部品に形成されるものである、請求項1に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項4】
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸亜鉛、硝酸銀、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸鉄(III)、及び硝酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項1に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項5】
前記電解質の含有量は、1g/L~500g/Lである、請求項1に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項6】
前記他の電解質、前記硝酸以外の酸、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び過塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項7】
前記硝酸以外の酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、乳酸、硫化水素、フッ化水素酸、ギ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、及び亜硫酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項8】
前記塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化銅(II)、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、及び塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項9】
前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸銅(II)、及び炭酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項10】
前記リン酸塩は、リン酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素2カリウム、及びリン酸水素カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項11】
前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸銅(II)、酢酸アルミニウム、及び酢酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【請求項12】
前記過塩素酸塩は、過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸カリウムから選ばれた少なくとも1つである、請求項6に記載の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば高アスペクトの突起電極群等の電着物を、非常に低い異常析出の発生頻度にて、高速でかつ均一な高さ又は厚さに形成することができる電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に電気メッキを適用して突起電極(銅柱:Copper Pillar)、電着皮膜等の電着物を形成する場合、例えば半導体チップでは、小型化及び小スペース化に対応するために、パッケージ面積を縮小した3次元構造のPoP(パッケージオンパッケージ:Package on Package)型の半導体部品等がある。
【0003】
半導体チップを立体配置するためには、上部のチップを下部の配線と接合する必要があり、その際には、高アスペクトの突起電極を形成して接合する方法等を採用することが好ましい。
【0004】
前記のごとき突起電極を形成するための電気メッキ浴として、従来、例えば特許文献1~3に開示のメッキ浴が提案されている。
【0005】
LSI、IC等のチップ部品を接合する場合、この接合を確実に担保するには、突起電極の形状、特に高さの均一性を確保することが重要である。この点は、突起電極を介して基板同士を接合する基板間接合についても同様である。
【0006】
ここで、従来の一般的な電解質、例えば硫酸やメタンスルホン酸は、溶解度に限界があるか、又はその特性上高速性を維持できない。よって、例えば前記特許文献1~3に開示されているように、これらの電解質を含むメッキ浴に、前記メタンスルホン酸以外にも所定の有機酸を配合して、又は特定の有機化合物を添加剤として配合して、メッキ浴の特性の向上が試みられている。
【0007】
しかしながら、前記のごとき従来のメッキ浴では、特にパッケージ面積を縮小した3次元構造のPoP型の半導体部品等の電子部品に、高速でかつ均一な高さに高アスペクトの電着物を形成することは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-302789号公報
【文献】特開2017-222925号公報
【文献】特開2018-012885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、例えば高アスペクトの突起電極群等の電着物を高速でかつ均一な高さ又は厚さに形成することができる電気銅メッキ浴を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明1は、
2種以上の電解質が配合されており、
前記電解質は、硝酸及び硝酸塩の少なくとも1つを含む、電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴
に関する。
【0011】
本発明2は、前記本発明1において、
高さが5μm以上の銅柱又は銅合金柱の形成に適用されるものである
ことを特徴とする。
【0012】
本発明3は、前記本発明2において、
前記銅柱又は銅合金柱は、SiP(System in Package)型、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)型、FOPLP(Fan Out Panel Level Package)型、SoC(System on a Chip)型、又はPoP(Package on Package)型の電子部品に形成されるものであることを特徴とする。
【0013】
本発明4は、前記本発明1において、
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸亜鉛、硝酸銀、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸鉄(III)、及び硝酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0014】
本発明5は、前記本発明1において、
前記電解質の含有量は、1g/L~500g/Lである
ことを特徴とする。
【0015】
本発明6は、前記本発明1において、
前記電解質として、前記硝酸以外の酸、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び過塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種がさらに配合されてなる
ことを特徴とする。
【0016】
本発明7は、前記本発明6において、
前記硝酸以外の酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、乳酸、硫化水素、フッ化水素酸、ギ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、及び亜硫酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0017】
本発明8は、前記本発明6において、
前記塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化銅(II)、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、及び塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0018】
本発明9は、前記本発明6において、
前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸銅(II)、及び炭酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0019】
本発明10は、前記本発明6において、
前記リン酸塩は、リン酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素2カリウム、及びリン酸水素カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0020】
本発明11は、前記本発明6において、
前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸銅(II)、酢酸アルミニウム、及び酢酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【0021】
本発明12は、前記本発明6において、
前記過塩素酸塩は、過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸カリウムから選ばれた少なくとも1つである
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いることにより、例えば高アスペクトの突起電極群等の電着物を、非常に低い異常析出の発生頻度にて、高速でかつ均一な高さ又は厚さに形成することができ、電子部品の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴は、2種以上の電解質が配合されており、該電解質は、硝酸及び硝酸塩の少なくとも1つを含んでいる。
【0024】
前記硝酸塩は、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸亜鉛、硝酸銀、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸鉄(III)、及び硝酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。これらの中でも、取扱いが容易であり、高速メッキ及び電着物の高さ又は厚さの均一性を向上させる効果が大きいという点で、硝酸銀及び硝酸銅(II)が好ましい。なお、これら硝酸塩のうち、硝酸銅(II)は、後述する銅イオン供給化合物としても作用し、硝酸亜鉛や硝酸銀は、後述する銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩としても作用する。
【0025】
前記2種以上の電解質の組み合わせには特に限定がなく、硝酸及び硝酸塩の少なくとも1つ(以下、硝酸類ともいう)を含んでいればよい。また、該2種以上の電解質として、いずれも該硝酸及び該硝酸塩の中から選ばれてもよく、該硝酸類以外に、硝酸以外の酸、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び過塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種(以下、他の電解質ともいう)が配合されてもよい。すなわち、該2種以上の電解質の組み合わせとしては、硝酸と硝酸塩の少なくとも1つ、硝酸塩の少なくとも2つ、硝酸と他の電解質の少なくとも1つ、硝酸塩の少なくとも1つと他の電解質の少なくとも1つ、及び、硝酸と硝酸塩の少なくとも1つと他の電解質の少なくとも1つが挙げられる。
【0026】
前記硝酸以外の酸は、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、乳酸、硫化水素、フッ化水素酸、ギ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、及び亜硫酸からなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。これらの中では、硝酸及び硝酸塩との親和性が良好であるという点で、硫酸、メタンスルホン酸、及び塩酸が好ましい。なお、塩酸は、塩化物イオン供給源としても作用する。
【0027】
前記塩化物は、前記塩酸と同様に塩化物イオン供給源として作用し、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化銅(II)、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、及び塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0028】
前記炭酸塩は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸銅(II)、及び炭酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0029】
前記リン酸塩は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素2カリウム、及びリン酸水素カリウムからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0030】
前記酢酸塩は、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸銅(II)、酢酸アルミニウム、及び酢酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0031】
前記過塩素酸塩は、例えば、過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸カリウムから選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴における前記電解質の含有量は、1g/L~500g/Lであることが好ましく、5g/L~300g/Lであることがさらに好ましい。該電解質の含有量が前記下限値未満の場合には、高速メッキ及び電着物の高さ又は厚さの均一性を向上させる効果が充分に発揮されなくなる恐れがある。該電解質の含有量が前記上限値を超える場合には、例えば後述する他の成分との相溶性が低く、均質なメッキ浴を得ることが困難になる恐れがある。
【0033】
また、前記硝酸類と前記他の電解質の少なくとも1つとを組み合わせて用いる場合、該硝酸類と該他の電解質との割合(硝酸類/他の電解質(重量比))は、硝酸類及び他の電解質双方の効果がバランスよく得られるという点から、0.001/1~1000/1程度、さらには0.01/1~100/1程度、特に0.1/1~50/1程度であることが好ましい。
【0034】
前記硝酸類と前記他の電解質との組み合わせにおいて、硝酸類が硝酸の場合、すなわち、硝酸と他の電解質の少なくとも1つとを組み合わせて用いる場合、該硝酸と該他の電解質との割合(硝酸/他の電解質(重量比))は、硝酸及び他の電解質双方の効果がバランスよく得られるという点から、0.05/1~30/1程度、さらには0.08/1~20/1程度であることが好ましい。
【0035】
前記硝酸類と前記他の電解質との組み合わせにおいて、硝酸類が硝酸塩の場合、すなわち、硝酸塩の少なくとも1つと他の電解質の少なくとも1つとを組み合わせて用いる場合、該硝酸塩と該他の電解質との割合(硝酸塩/他の電解質(重量比))は、硝酸塩及び他の電解質双方の効果がバランスよく得られるという点から、0.05/1~20/1程度、さらには0.05/1~10/1程度であることが好ましい。
【0036】
さらに、硝酸と硝酸塩の少なくとも1つとを組み合わせて用いる場合、該硝酸と該硝酸塩との割合(硝酸/硝酸塩(重量比))は、硝酸及び硝酸塩双方の効果がバランスよく得られるという点から、0.2/1~10/1程度、さらには0.5/1~5/1程度であることが好ましい。なお、硝酸塩の少なくとも2つを組み合わせて用いる場合は、用いる硝酸塩の種類に応じて適宜割合を調整することが好ましい。
【0037】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴には、前記2種以上の電解質の他に、例えば、1種以上の銅イオン供給化合物が配合される。
【0038】
前記銅イオン供給化合物は、基本的に水溶液中でCu2+を発生させる銅可溶性塩であればよく、特に限定がない。該銅イオン供給化合物としては、例えば、硫酸銅、酸化銅、硝酸銅、塩化銅、ピロリン酸銅、炭酸銅の他に、酢酸銅、シュウ酸銅、クエン酸銅等のカルボン酸銅塩;メタンスルホン酸銅、ヒドロキシエタンスルホン酸銅等のアルキルスルホン酸銅塩等が挙げられ、これらの中から1種以上を用いることができる。
【0039】
本発明の電気銅メッキ浴における前記銅イオン供給化合物の含有量は、特に限定がないが、1g/L~300g/L程度、さらには30g/L~250g/L程度であることが好ましい。
【0040】
本発明のメッキ浴が電気銅メッキ浴の場合には、前記銅イオン供給化合物を配合すればよいが、電気銅合金メッキ浴の場合には、銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩も1種以上配合すればよい。
【0041】
前記銅と共に合金を生成する金属には特に限定がなく、例えば、銀、亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、スズ、金、鉛等が挙げられる。
【0042】
銀の可溶性塩としては、例えば、炭酸銀、硝酸銀、酢酸銀、塩化銀、酸化銀、シアン化銀、シアン化銀カリウム、メタンスルホン酸銀、2-ヒドロキシエタンスルホン酸銀、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸銀等が挙げられる。
【0043】
亜鉛の可溶性塩としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ピロリン酸亜鉛、シアン化亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、2-ヒドロキシエタンスルホン酸亜鉛、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0044】
ニッケルの可溶性塩としては、例えば、硫酸ニッケル、ギ酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、ホウフッ化ニッケル、酢酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ニッケル等が挙げられる。
【0045】
ビスマスの可溶性塩としては、例えば、硫酸ビスマス、グルコン酸ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、メタンスルホン酸ビスマス、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマス等が挙げられる。
【0046】
コバルトの可溶性塩としては、例えば、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、ホウフッ化コバルト、メタンスルホン酸コバルト、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸コバルト等が挙げられる。
【0047】
インジウムの可溶性塩としては、例えば、スルファミン酸インジウム、硫酸インジウム、ホウフッ化インジウム、酸化インジウム、メタンスルホン酸インジウム、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸インジウム等が挙げられる。
【0048】
アンチモンの可溶性塩としては、例えば、ホウフッ化アンチモン、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム、ピロアンチモン酸カリウム、酒石酸アンチモン、メタンスルホン酸アンチモン、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸アンチモン等が挙げられる。
【0049】
スズの可溶性塩としては、例えば、硫酸第一スズ、酢酸第一スズ、ホウフッ化第一スズ、スルファミン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、塩化第一スズ、グルコン酸第一スズ、酒石酸第一スズ、酸化第一スズ、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2-ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸第一スズ、スルホコハク酸第一スズ等が挙げられる。
【0050】
金の可溶性塩としては、例えば、塩化金酸カリウム、塩化金酸ナトリウム、塩化金酸アンモニウム、亜硫酸金カリウム、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、チオ硫酸金カリウム、チオ硫酸金ナトリウム、チオ硫酸金アンモニウム等が挙げられる。
【0051】
鉛の可溶性塩としては、例えば、酢酸鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、ホウフッ化鉛、スルファミン酸鉛、メタンスルホン酸鉛、エタンスルホン酸鉛、2-ヒドロキシエタンスルホン酸鉛、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸鉛等が挙げられる。
【0052】
本発明の電気銅合金メッキ浴における、前記銅イオン供給化合物及び前記銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩の合計含有量は、特に限定がないが、1g/L~200g/L程度、さらには10g/L~150g/L程度であることが好ましい。
【0053】
前記銅イオン供給化合物と、前記銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩との組み合わせ及び割合には、特に限定がなく、本発明の電気銅合金メッキ浴から形成される電着物が所望の組成となるように、両化合物の組み合わせ及び割合を適宜調整すればよい。
【0054】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴には、前記2種以上の電解質、並びに、前記1種以上の銅イオン供給化合物及び前記1種以上の銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩の他に、例えば促進剤、高分子界面活性剤、レベラー等の各種添加剤を配合することができる。
【0055】
前記促進剤は、メッキ析出において成長核の生成を促進する成分である。該促進剤としては、例えば、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(別名:3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸))、ビス(2-スルホプロピル)ジスルフィド、ビス(3-スル-2-ヒドロキシプロピル)ジスルフィド、ビス(4-スルホプロピル)ジスルフィド、ビス(p-スルホフェニル)ジスルフィド、3-ベンゾチアゾリル-2-チオ)プロパンスルホン酸、N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロパンスルホン酸、N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロパンスルホン酸、N,N-ジメチル-ジチオカルバミン酸-(3-スルホプロピル)-エステル、3-[(アミノイミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホン酸、o-エチル-ジエチル炭酸-S-(3-スルホプロピル)エステル、メルカプトメタンスルホン酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、これらの塩等を用いることができる。
【0056】
前記高分子界面活性剤としては、特にノニオン系界面活性剤が好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテル、スルホン酸基含有ポリアルキレンオキシド付加型アミン類、ノニオン性ポリエーテル系高分子界面活性剤等を用いることができる。
【0057】
前記レベラー(平滑化剤)は、電着抑制の機能を有し、電着皮膜を平滑にする作用を呈する。該レベラーは、例えば、アミン類、染料、イミダゾリン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、ピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、アニリン類、アミノカルボン酸類等から選択されることが好ましい。
【0058】
前記アミン類としては、スルホン酸基含有アルキレンオキシド付加型アミン類が好ましい。該スルホン酸基含有アルキレンオキシド付加型アミン類は、アルキレンオキシドが付加しているので、前記のとおり、高分子界面活性剤に分類されるが、アミン類として分類することもでき、レベラーとして有効である。
【0059】
レベラーとして有効な、前記アミン類以外のその他の含窒素有機化合物の具体例としては、例えば、C.I.(Color Index)ベーシックレッド2、トルイジンブルー等のトルイジン系染料、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ベーシックブラック2等のアゾ系染料、3-アミノ-6-ジメチルアミノ-2-メチルフェナジン1塩酸等のフェナジン系染料、ポリエチレンイミン、ジアリルアミンとアリルグアニジンメタンスルホン酸塩の共重合物、テトラメチルエチレンジアミンのEO及び/又はPO付加物、コハク酸イミド、2’-ビス(2-イミダゾリン)等のイミダゾリン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、2-ビニルピリジン、4-アセチルピリジン、4-メルカプト-2-カルボキシルピリジン、2,2’-ビピリジル、フェナントロリン等のピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、アニリン、3,3’,3”-ニトリロ3プロピオン酸、ジアミノメチレンアミノ酢酸等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ベーシックレッド2等のトルイジン染料、C.I.ダイレクトイエロー1等のアゾ染料、3-アミノ-6-ジメチルアミノ-2-メチルフェナジン1塩酸等のフェナジン系染料、ポリエチレンイミン、ジアリルアミンとアリルグアニジンメタンスルホン酸塩との共重合物、テトラメチルエチレンジアミンのEO及びPO付加物、2’-ビス(2-イミダゾリン)等のイミダゾリン類、ベンゾイミダゾール類、2-ビニルピリジン、4-アセチルピリジン、2,2’-ビピリジル、フェナントロリン等のピリジン類、キノリン類、アニリン類、並びにアミノメチレンアミノ酢酸等のアミノカルボン酸類が好ましい。
【0060】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴における前記各種添加剤の含有量は、特に限定がなく、該メッキ浴から目的とする電着物が形成されるように適宜調整すればよい。
【0061】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴は、硝酸及び硝酸塩の少なくとも1つを含む2種以上の電解質と、必要に応じて、これら硝酸類以外の、硝酸以外の酸、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び過塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種の電解質、1種以上の銅イオン供給化合物、1種以上の銅と共に合金を生成する金属の可溶性塩、各種添加剤等とを適宜配合して、建浴することができる。
【0062】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用い、電気メッキにより所望の電着物を形成することができる。該電着物は、例えば、突起電極、電着皮膜等である。これらの電着物は、例えば、ウエハ、基板、リードフレーム等に形成され得る。
【0063】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いることにより、高アスペクトの突起電極群(銅柱又は銅合金柱)を、高速でかつ均一な高さに形成することができる。該銅柱又は銅合金柱は、例えば、5μm以上、さらには30μm~400μmの高さに形成されることが好ましい。
【0064】
また、本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いることにより、電着皮膜を、高速でかつ均一な厚さに形成することができ、例えばビアホールの充填では、ボイドの発生を円滑に防止することができる。
【0065】
前記電着物が形成される電子部品としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、サファイア基板、ウエハ、プリント配線板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線、太陽電池等が挙げられる。本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いることにより、前記高アスペクトの突起電極群(銅柱又は銅合金柱)を、例えばSiP型、FOWLP型、FOPLP型、SoC型、PoP型等の電子部品に、特に、パッケージ面積を縮小した3次元構造のPoP型の半導体部品等の電子部品に、高速でかつ均一な高さに形成することができる。
【0066】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いて電気メッキを行う際には、例えば、バレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキ、カップメッキ、ディップメッキ等の各種メッキ方式を採用することができる。
【0067】
電気メッキの条件には特に限定がないが、例えば、浴温は0℃以上、さらには10℃~50℃程度であることが好ましい。陰極電流密度は、0.001A/dm~100A/dm程度、さらには0.01A/dm~40A/dm程度であることが好ましい。
【0068】
前記電気メッキの後に、析出した銅又は銅合金を、必要に応じてリフローして、目的とする突起電極、電着皮膜等の電着物を形成することができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴の実施例、該実施例で得られたメッキ浴を用いて突起電極群を形成した製造例、並びに、該製造例で得られた突起電極群についての、異常析出の発生頻度及び高さの均一性の評価試験例を順次記載する。
【0070】
しかしながら、本発明は、前記実施例、製造例、及び試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0071】
≪電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴の実施例≫
下記実施例1~21のうち、実施例1~8及び実施例11~21は、電気銅メッキ浴の例であり、実施例9~10は、電気銅-銀合金メッキ浴の例である。
【0072】
また、比較例1~3は、電解質として硝酸及び硝酸塩の少なくとも1つを含まないブランク例である。
【0073】
(1)実施例1
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):50g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0074】
(2)実施例2
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):80g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0075】
(3)実施例3
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):70g/L
硫酸:110g/L
硝酸:140g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0076】
(4)実施例4
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):70g/L
硫酸:110g/L
硝酸:140g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:20A/dm
メッキ時間:約3250秒
【0077】
(5)実施例5
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):60g/L
メタンスルホン酸:110g/L
硝酸:120g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0078】
(6)実施例6
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):70g/L
硫酸:110g/L
硝酸:140g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):150mg/L
[メッキ条件]
浴温:40℃
陰極電流密度:35A/dm
メッキ時間:約1850秒
【0079】
(7)実施例7
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):60g/L
硫酸:110g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0080】
(8)実施例8
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):80g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):80mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
2,2’-ビピリジル:3mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):150mg/L
[メッキ条件]
浴温:40℃
陰極電流密度:40A/dm
メッキ時間:約1630秒
【0081】
(9)実施例9
下記組成で電気銅-銀合金メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):70g/L
硫酸:110g/L
硝酸:140g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
炭酸銀(Agとして):0.1g/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール(錯化剤として)
:0.2g/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):150mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0082】
(10)実施例10
下記組成で電気銅-銀合金メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):80g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
炭酸銀(Agとして):0.1g/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール(錯化剤として)
:0.2g/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):150mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0083】
(11)実施例11
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):50g/L
炭酸銅(Cu2+として):10g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0084】
(12)実施例12
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):50g/L
酢酸銅一水和物(Cu2+として):10g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0085】
(13)実施例13
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):50g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
リン酸:20g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0086】
(14)実施例14
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):50g/L
炭酸銅(Cu2+として):10g/L
硫酸:110g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0087】
(15)実施例15
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):60g/L
酢酸銅一水和物(Cu2+として):10g/L
硫酸:110g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0088】
(16)実施例16
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):60g/L
硝酸銀(Agとして):0.1g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール(錯化剤として)
:0.2g/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0089】
(17)実施例17
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):10g/L
硝酸ニッケル六水和物(Ni 2+ として):20g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
マロン酸(錯化剤として):75g/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0090】
(18)実施例18
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0091】
(19)実施例19
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:100g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0092】
(20)実施例20
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):50g/L
炭酸銅(Cu2+として):10g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:50g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0093】
(21)実施例21
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硝酸銅(Cu2+として):50g/L
炭酸銅(Cu2+として):10g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
硝酸:100g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0094】
(22)比較例1
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):50g/L
硫酸(遊離酸として):100g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:10mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):100mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0095】
(23)比較例2
下記組成で電気銅メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
酸化銅(Cu2+として):60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):110g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):200mg/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:15A/dm
メッキ時間:約4350秒
【0096】
(24)比較例3
下記組成で電気銅-銀合金メッキ浴を建浴した。また、メッキ条件も併せて示す。
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):60g/L
硫酸(遊離酸として):80g/L
塩酸(塩化物イオンとして):50mg/L
炭酸銀(Agとして):0.1g/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール(錯化剤として)
:0.2g/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム:30mg/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10000):150mg/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm
メッキ時間:約6500秒
【0097】
次に、実施例1~8、実施例11~21、及び比較例1~2の電気銅メッキ浴、並びに、実施例9~10及び比較例3の電気銅-銀合金メッキ浴を用いて、多数の突起電極(突起電極群)を形成し、突起電極の異常析出の発生頻度及び高さの均一性を評価した。
【0098】
≪突起電極群を形成した製造例≫
実施例1~8、実施例11~21、及び比較例1~2の電気銅メッキ浴、並びに、実施例9~10及び比較例3の電気銅-銀合金メッキ浴を用いて、各メッキ条件にて電気メッキを行い、シリコン基板上に突起電極群(銅柱又は銅-銀合金柱、高さ:約240μm、個数:約5000個)を形成した。
【0099】
≪突起電極の異常析出の発生頻度の評価試験例≫
形成した突起電極群について、異常(ヤケ被膜、塗布したレジスト上に突出するように異常成長した突起電極、及び突起電極表面で瘤状に小さく突出した異常成長)の有無を観測し、異常が認められた突起電極数を計測した。下記式(a)にしたがって異常析出割合A(%)を算出し、異常析出の発生頻度を、下記評価基準に基づいて定量評価した。
A(%)=[N(abn)/N(all)]×100 (a)
N(abn):異常が認められた突起電極数
N(all):総突起電極数
[評価基準]
○:Aが1%未満であった。
△:Aが1%以上であり、5%未満であった。
×:Aが5%以上であった。
【0100】
≪突起電極の高さの均一性の評価試験例≫
形成した突起電極群について、各突起電極の高さを計測した。下記式(b)にしたがってWID(%)を算出し、高さの均一性を定量評価した。
WID(%)=[(最大高さ-最小高さ)/平均高さ]×1/2×100 (b)
【0101】
下記表1に、前記突起電極の異常析出の発生頻度及び高さの均一性についての評価試験の結果を示す。
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1に示す結果より、以下のことが分かる。
【0104】
比較例1は、本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴に配合される硝酸類を含まないブランク例であり、この比較例1と実施例1~2とを比較すると、実施例1~2では、突起電極の高さの均一性が大幅に改善されていることが確認できる。
【0105】
前記製造例では、約240μmの高さの銅柱又は銅-銀合金柱を形成しており、1%の高さのバラツキは、約5μmの膜厚差となる。接合時の信頼性を考慮した場合に、この膜厚差はできる限り小さい方が望ましく、実施例1~2と比較例1とを比較すると、両者の差は顕著なものである。
【0106】
また、比較例1のように、10A/dmの陰極電流密度で約240μmの高さの銅柱を形成した場合には、約6500秒のメッキ時間が必要となる。これに対して、実施例6では、メッキ時間が約1850秒に短縮されており、本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴を用いることで、高速メッキが可能となり、生産性の大幅な向上が期待できる。
【0107】
実施例3~4では、硝酸を配合することで、高濃度の酸と銅イオンとの併用が実現されている。また実施例11~13では、硝酸及び他の電解質を配合することで、実施例14~15では、硝酸塩及び他の電解質を配合することで、高濃度の酸と銅イオンとの併用が実現されている。これに対して、比較例1のように、硝酸類を配合することなく、従来一般に使用されている硫酸を配合した場合には、高濃度の酸と銅イオンとの併用を実現することはできない。
【0108】
さらに、実施例18~19では、硝酸と硝酸塩とを併用することで、実施例20~21では、硝酸と硝酸塩とを併用し、他の電解質も配合することで、高濃度の酸と銅イオンとの併用が実現されており、併せて突起電極の高さの均一性も大幅に改善されていることが確認できる。
【0109】
同様に、比較例2のように、従来一般に使用されているメタンスルホン酸を配合し、高濃度の酸と銅イオンとの両立が試みられているが、高速メッキを行うと、異常析出が確認される。
【0110】
ところが、実施例5のように、硝酸類とメタンスルホン酸とを併用した場合には、比較例2と同じメッキ時間の高速メッキであっても、前記のごとき異常析出を防ぐことが可能である。
【0111】
なお、実施例8のように、硝酸類を含む電解質と適切なレベラー成分とを組み合わせることで、より高速かつ高い均一性を達成することができる。
【0112】
比較例3は、本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴に配合される硝酸類を含まないブランク例であり、この比較例3と実施例9~10とを比較すると、実施例9~10では、突起電極の異常析出及び高さの均一性の改善、並びに、高速メッキについての有効性が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の電気銅メッキ又は銅合金メッキ浴は、例えばSiP型、FOWLP型、FOPLP型、SoC型、PoP型等の各種電子部品、特にパッケージ面積を縮小した3次元構造のPoP型の半導体部品等の各種電子部品への電着物の形成に、効果的に利用することができる。