(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】空気加圧具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240806BHJP
A61F 5/34 20060101ALI20240806BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61F5/01 N
A61F5/34
A61H1/02 N
A61H1/02 K
(21)【出願番号】P 2020085581
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】517441240
【氏名又は名称】a・エル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 太一
(72)【発明者】
【氏名】石川 定
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-119556(JP,A)
【文献】特開2015-116463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053735(US,A1)
【文献】特開2019-107439(JP,A)
【文献】米国特許第02531074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-02,34
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を挟んで近位側から遠位側までの肢体を
全体的に包容して空気で加圧する装具であって、
肢体を
全体的に包容
して加圧する筒形状の本体部と、
前記本体部の内側の、膨らむことによって前記関節を屈曲又は伸展させることが可能な位置に取り付けられた膨張部と、
を備え、
前記本体部の周壁の
全体が気密性の袋状であって、前記本体部は前記袋状の周壁の内部に空気を供給するための第1給気口を有し、
前記膨張部は気密性の袋状であって、前記膨張部の内部に空気を供給するための第2給気口を有し、
第1給気口から空気が供給されることによって前記本体部が膨らんで前記肢体を加圧し、
第2給気口から空気が供給されることによって前記膨張部が膨らんで前記関節を屈曲又は伸展させて前記関節の伸筋又は屈筋を伸張させる
ことを特徴とする空気加圧装具。
【請求項2】
前記本体部の中心軸が途中部において角度90°以上130°以下の範囲で屈曲している請求項1に記載の空気加圧装具。
【請求項3】
前記関節が足関節で、
前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、足底に対応する部分であり、
前記膨張部が膨らんで前記足関節を伸展させて前記足関節の屈筋を伸張させる
請求項1又は2に記載の空気加圧装具。
【請求項4】
前記関節が肘関節で、
前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、前腕部に対応する部分であり、
前記膨張部が膨らんで前記肘関節を伸展させて前記肘関節の屈筋を伸張させる
請求項1又は2に記載の空気加圧装具。
【請求項5】
前記関節が手指関節および手首関節で、
前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、手のひらに対応する部分であり、
前記膨張部が膨らんで前記手指関節および前記手首関節を伸展させて前記手指関節および前記手首関節の屈筋を伸張させる
請求項1又は2に記載の空気加圧装具。
【請求項6】
前記本体部の前記周壁が樹脂製シートからなり、その少なくとも一部が透明で、前記本体部で包容された肢体が外部から視認可能である請求項1~5のいずれかに記載の空気加圧装具。
【請求項7】
前記本体部が、中心軸方向に延在する線状開閉部を有する請求項1~6のいずれかに記載の空気加圧装具。
【請求項8】
前記線状開閉部が前記本体部の中心軸方向一方端側から他方端側にわたって形成され、前記線状開閉部を全開することで前記本体部が展開可能となる請求項7記載の空気加圧装具。
【請求項9】
前記膨張部が前記本体部に対して着脱自在である請求項1~8のいずれかに記載の空気加圧装具。
【請求項10】
前記本体部の中心軸方向両端が開口部である請求項1~9のいずれかに記載の空気加圧装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気加圧装具に関し、より詳細には、脳卒中などによる肢体の痙縮や拘縮を予防・抑制するのに好適に使用可能な空気加圧装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中の後遺症として、手指が握ったままとなり開きにくい、ひじが曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうといった「痙縮」の症状がよくみられる。痙縮は、日常生活に支障が生じるだけでなく、リハビリテーションの妨げにもなる。また、痙縮の症状を長い間放っておくと、筋肉が固まってさらに関節の運動が制限される「拘縮」という症状につながることもある。
【0003】
このような痙縮や拘縮などの症状を予防・抑制するためにこれまで種々の用具の提案がなされている。例えば特許文献1では、可撓性素材で構成された関節包容部に円弧形状の空気袋を取り付け、空気袋を間欠的加圧することで空気袋の中心角を変化させて関節を屈曲運動させる装置が提案されている。また特許文献2では、下肢固定部に足置き部材を回転自在に取り付け、足置き部材の下に二つ折りの空気袋を配置して、空気袋に空気を供給して膨張させることで足置き部材を回転させて足関節を背屈運動させる運動器が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に提案の装置では足関節を屈曲運動させることはある程度可能と考えられるが、曲がっている肘関節を伸展させることや手首や手指の関節を屈曲運動させることは難しいと考えられる。また特許文献2に提案の運動器は柔軟性が十分ではないと考えられ、様々に変形・拘縮した下肢を適切に固定することは難しい。
【0005】
本出願人も以前に手首・手指の関節及び肘関節の痙縮や拘縮を予防・抑制するエアー加圧装具を提案した(特許文献3)。この提案したエアー加圧装具によれば、様々に変形・拘縮した手首・手指の関節及び肘関節に対して容易に装着でき、手首・手指の関節及び肘関節を伸展させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5390043号
【文献】特開2005-058601号公報
【文献】特開2019-107439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リハビリテーションにおいて手首・手指の関節及び肘関節のみならず足関節などについても容易に装着できて関節を屈曲・伸展させることのできる装具がこれまでから求められていたが、未だ十分に満足できる装具は本出願人の知る限りなかった。
【0008】
そこで本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、手首・手指の関節及び肘関節のみならず足関節などについても容易に装着できて関節を屈曲又は伸展させることができ、肢体の痙縮や拘縮を予防・抑制できる空気加圧装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明に係る空気加圧装具は、関節を挟んで近位側から遠位側までの肢体を包容して空気で加圧する装具であって、肢体を包容する筒形状の本体部と、前記本体部の内側の、膨らむことによって前記関節を屈曲又は伸展させることが可能な位置に取り付けられた膨張部とを備え、前記本体部の周壁の少なくとも一部が気密性の袋状であって、前記本体部は前記袋状の周壁の内部に空気を供給するための第1給気口を有し、前記膨張部は気密性の袋状であって、前記膨張部の内部に空気を供給するための第2給気口を有し、第1給気口から空気が供給されることによって前記本体部が膨らんで前記肢体を加圧し、第2給気口から空気が供給されることによって前記膨張部が膨らんで前記関節を屈曲又は伸展させて前記関節の伸筋又は屈筋を伸張させることを特徴とする。
【0010】
前記構成の空気加圧装具において、前記本体部の中心軸が途中部において角度90°以上130°以下の範囲で屈曲している構成としてもよい。
【0011】
前記構成の空気加圧装具において、前記関節が足関節で、前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、足底に対応する部分であり、前記膨張部が膨らんで前記足関節を伸展させて前記足関節の屈筋を伸張させる構成としてもよい。
【0012】
前記構成の空気加圧装具において、前記関節が肘関節で、前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、前腕部に対応する部分であり、前記膨張部が膨らんで前記肘関節を伸展させて前記肘関節の屈筋を伸張させる構成としてもよい。
【0013】
前記構成の空気加圧装具において、前記関節が手指関節および手首関節で、前記膨張部の取り付け位置が、前記本体部の内側の、手のひらに対応する部分であり、前記膨張部が膨らんで前記手指関節および前記手首関節を伸展させて前記手指関節および前記手首関節の屈筋を伸張させる構成としてもよい。
【0014】
前記構成の空気加圧装具において、前記本体部の前記周壁が樹脂製シートからなり、その少なくとも一部が透明で、前記本体部で包容された肢体が外部から視認可能である構成としてもよい。
【0015】
前記構成の空気加圧装具において、前記本体部が、中心軸方向に延在する線状開閉部を有する構成としてもよい。ここで、前記線状開閉部が前記本体部の中心軸方向一方端側から他方端側にわたって形成され、前記線状開閉部を全開することで前記本体部が展開可能となる構成としてもよい。
【0016】
また前記構成の空気加圧装具において、前記膨張部が前記本体部に対して着脱自在である構成としてもよい。
【0017】
前記構成の空気加圧装具において、前記本体部の中心軸方向両端が開口部である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空気加圧装具では、本体部が膨らんで肢体に装着固定されるので様々に変形・拘縮した肢体に対しても容易に装着できる。また、膨張部が膨らんで関節を屈曲又は伸展させるので手指の関節のみならず足関節や肘関節についても屈曲又は伸展させることができる。そして、本発明に係る空気加圧装具では、所望の関節を屈曲又は伸展させることで当該関節の伸筋又は屈筋を伸張させることができ、肢体の痙縮や拘縮を効果的に予防・抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】足関節に装着する本発明に係る空気加圧装具E1の線ファスナ3を閉めたとき斜視図である。
【
図2】
図1の空気加圧装具E1の線ファスナ3を開けたときの斜視図である。
【
図3】
図1の空気加圧装具E1の本体部の左右側面図である。
【
図4】本体部を構成する内シート(a)及び外シート(b)の展開図である。
【
図5】膨張部を構成する表シート(a)及び裏シート(b)の展開図である。
【
図6】
図1の空気加圧装具E1の使用方法を説明する概説図である。
【
図7】手首関節及び手指関節に装着する空気加圧装具E2の線ファスナ3を開けたときの斜視図である。
【
図8】
図7の空気加圧装具E2の線ファスナ3を閉めたときの斜視図である。
【
図9】肘関節に装着する空気加圧装具E3の側面図である。
【
図10】
図9の空気加圧装具E3の使用方法を説明する概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る空気加圧装具について図に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
(第1実施形態)
図1及び
図2に、足関節に装着する本発明に係る空気加圧装具の一実施形態を示す斜視図を示す。
図1は空気加圧装具E1の線ファスナ3を閉めたときの斜視図であり、
図2は空気加圧装具E1の線ファスナ3を開けたときの斜視図である。
【0022】
図1及び
図2に示す空気加圧装具E1は、円筒形状で軸方向の途中部において屈曲した本体部1aと、本体部1aの内側の装着者の足底に対応する位置に取り付けられた膨張部2とを有する。以下、本体部1aと膨張部2について個別に説明する。
【0023】
(本体部1a)
図1,
図2と共に空気加圧装具E1の左右側面図である
図3に基づき本体部1aについて説明する。本体部1aは円筒形状で周壁は気密性の連続する袋状であり、中心軸方向途中部において所定角度に屈曲した屈曲部11と、屈曲部11から上方側に延在する下肢包容部12と、屈曲部11から前方に向かって斜め下方に延在する足包容部13とを有する。下肢包容部12、屈曲部11、足包容部13は連続一体に成形されている。
【0024】
図3に示されるように、下肢包容部12は上方端側から屈曲部11に向かって連続して縮径された円錐台形状を有し、足包容部13は屈曲部11から前方端側に向かって連続して緩やかに縮径された円錐台形状を有している。下肢包容部12及び足包容部13の周壁には所定幅で中心軸O方向に所定長さの透明な樹脂シートからなる窓部15a,15b(
図3(b)に図示)が設けられており、装着者の下肢及び足の状態が外部から視認可能とされている。また下肢包容部12の上部外周面には本体部への空気の給排気を行うための第1給排気口14(
図4に図示)が設けられ、そこにチューブtに接続するためのプラグP1が取り付けられる。足包容部13の前端下部の周壁には貫通孔16a,16b(
図4に図示)が形成されており、後述する膨張部2の第2給排気口21に接続されているプラグP2が貫通孔16a,16bから足包容部13の外方に突出可能としている。
【0025】
屈曲円筒形状の本体部1aは中心軸O方向両端部が開口とされ、本体部1aには、一方の開口から他方の開口に至る、屈曲部11の内角側を通って中心軸Oと平行に延在する線ファスナ(線状開閉部)3が設けられている。この線ファスナ3の開閉によって本体部1aは
図1及び
図2に示す閉状態及び開状態とすることができる。なお、線状開閉部材としては線ファスナ3の外、本体部1aに空気を供給して膨張させたときに本体部1aの閉状態を維持できる限りにおいて、面ファスナや点ファスナなど従来公知の開閉部材を用いることができる。
【0026】
図4に、袋状の本体部1aを構成する内シートSi(
図4(a))及び外シートSo(
図4(b))の展開図を示す。内シートSi及び外シートSoは同一の外形形状を有する。より詳細には、内シートSi及び外シートSoは中心軸Oを中心として左右対称形状で上側から下側に向かって左右の幅が連続して狭くなり、上下方向途中部の屈曲部11に対応する部分において左右両側縁が内方に向かって三角形状の切り込み119a,119bが形成されている。また内シートSi及び外シートSoの上端辺及び下端辺は外方に向かって突出する円弧形状である。内シートSi及び外シートSoはポリ塩化ビニルやポリエチレン、ポリポロピレンなど従来公知の樹脂材料でよい樹脂シートからなる。内シートSi及び外シートSoには、下肢包容部12及び足包容部13の左側縁に沿って所定幅で延在する開口111a,112a,111b,112bが形成され、開口111a,112a,111b,112bには透明の樹脂シートが開口を封鎖するように気密に溶着されている。この透明の樹脂シートが溶着された開口111a,112a,111b,112bが本体部の窓部15a,15bとなる。また内シートSi及び外シートSoの下端部には膨張部の第2給排気口21に接続されるプラグP2を本体部1aから外方に突出させるための貫通孔16a,16bが形成されている。一方で、内シートSiの足包容部13の左右方向略中央部には足包容部13を着脱可能に取り付けるための面ファスナ17が取り付けられている。勿論、この面ファスナ17は本体部1aを袋状に形成した後に取り付けても構わない。また外シートSoには右上方位置に第1給排気口14が形成されている。
【0027】
本体部1aは内シートSiと外シートSoの外周縁が一致するように重ね合わされて外周縁の溶着部WP1が溶着されることで袋状に作製される。なお、内シートSiの外縁部113a,114aと外シートSoの外縁部113b,114b及び内シートSiの外縁部115a,116aと外シートSoの外縁部115b,116bはそれぞれ重ね合わされて溶着される。これによって本体部1aは中心軸O方向の途中部において屈曲した形状となる。内シートSiと外シートSoとに形成される三角形状の切り込み119a,119bの形成角度によって本体部1aの屈曲角度が制御される。屈曲角度に特に限定はないが、通常、90°以上130°以下の範囲が好ましい。その後、屈曲円筒状とされた本体部1aの左右縁部に線ファスナ3が取り付けられる。
【0028】
(膨張部)
図5に、膨張部を構成する表シート20a(
図5(a))及び裏シート20b(
図5(b))を示す。表シート20a及び裏シート20bは同一の外形形状を有し、平面形状が一方側の円弧の曲率半径が他方側よりも大きい楕円形状の樹脂シートからなる。本体部1aの内周面と対向する裏シート20bの左右方向中央部で前側部には第2給排気口21が形成され、第2給排気口21と前後方向に所定距離隔てて面ファスナ22が設けられている。膨張部2は、表シート20aと裏シート20bとが外周縁が一致するように重ね合わされて外周縁の溶着部WP2が溶着されることによって袋状に形成される。
【0029】
また、膨張部2には、左右方向に所定距離隔てて前後方向に直線状に延在する2本の線状溶着部WP3が形成される。これらの線状溶着部WP3の前後方向両端部は膨張部2の外周縁までは至らない。これらの線状溶着部WP3で表シート20aと裏シート20bとが溶着され、膨張部2の内部空間は前後方向両端部において連通する左右方向に並んだ3つの空間に分割される。このような線状溶着部WP3が設けられていることによって、膨張部2に空気が供給されて膨張部2が膨らんだ際に、左右方向に並んで3つの凸条が形成され、線状溶着部WP3を形成しない場合に比べて膨張部2の上下面の高さをより均一にさせることができ、装着者の足底に膨張部2がより均等に接触する。
【0030】
膨張部2は、本体部1aの足包容部13の内側、より詳細には装着者の足底に対向する部分に取り付けられる。具体的には、膨張部2の面ファスナ22が本体部1aの足包容部13の面ファスナ17に取り付けられる。また、膨張部2の面ファスナ22と第2給排気口21との距離と、本体部1aの面ファスナ17と貫通孔16a,16bとの距離は略同一に設定されているので、本体部1aに膨張部2が取り付けられると膨張部2の第2給排気口21が本体部1aの貫通孔16a,16bに対向し、第2給排気口21に取り付けられたプラグP2が貫通孔16a,16bを通って本体部1aの外方に突出する。なお、膨張部2の本体部1aへの取り付けは、面ファスナ17,22に限定されるものではなく着脱可能な従来公知の取り付け手段によって取り付けられる。勿論、熱溶着や接着などによって膨張部2を本体部1aに着脱不能に固着しても構わないが、膨張部2及び本体部1aの清掃のし易さや膨張部2の取り替え可能化などの観点からは膨張部2は本体部1aに対して着脱可能であるのが好ましい。
【0031】
(使用方法)
以上説明した構成の空気加圧装具E1の使用方法について説明する。
図6を参照して、まず、本体部1a及び膨張部2の第1給排気口14(
図4に図示)及び第2給排気口21(
図5に図示)に取り付けられたプラグP1,P2にチューブtの一方端が接続される。チューブtの他方端にはハンドポンプHP1,HP2が接続され、チューブtの途中には手動の開閉弁V1,V2が設けられる。次に、線ファスナ3が閉まっているときは線ファスナ3が開けられて本体部1aが開状態とされる。そして、装着者の踵部分が本体部1aの屈曲部11に位置するように装着者の下肢及び足が本体部1a内に載置される。このとき、
図1及び
図2に示すように、本体部1aは線ファスナ3が外れると左方向と右方向に展開して略平面状となるので、装着者が寝た状態であっても装着者の下肢及び足を容易に包容することが可能となる。その後、線ファスナ3が開状態から閉状態とされ、装着者の下肢及び足は本体部1aで包容される。
【0032】
次いで、ハンドポンプHP1が駆動されて本体部1aに空気が供給され本体部1aが膨張する。これにより装着者の下肢及び足が膨張した本体部1aによって全体的に加圧される。下肢及び足の加圧状態は本体部1aに設けられた窓部15a,15bから視認可能であり、ハンドポンプHP1の駆動による空気の供給は下肢及び足の状態を窓部15a,15bから確認しながら、また必要により本体部1aの膨張による弾力性を手で確認しながら行われる。そして、所定の加圧状態になると開閉弁V1が「閉」とされ本体部1aへの空気の供給が停止されるとともに本体部1aの膨張状態が保持される。
【0033】
次に、ハンドポンプHP2が駆動されて膨張部2に空気が供給され膨張部2が膨張する。これにより膨張した膨張部2によって足関節が伸展され(爪先が下肢に近づく方向に回動)、足関節の屈筋が伸張される。足関節の伸展の度合いは膨張部2の膨張度合いによって調整可能である。膨張部2への空気供給は、本体部1aの場合と同様に、足包容部13に設けられた窓部15bから足の状態を確認しながら行われる。そして、膨張部2が所定の膨張状態(加圧状態)になると開閉弁V2が「閉」とされ膨張部2への空気の供給が停止されるとともに膨張部2の膨張状態が保持される。
【0034】
本体部1a及び膨張部2による下肢及び足の加圧と足関節の伸展の継続時間は、装着者の症状などから適宜判断すればよいが、通常、数分から十数分程度である。また、本体部1a及び膨張部2の一方又は両方について膨張と収縮とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0035】
このように本体部1aによって下肢及び足が圧迫されることで末梢循環の改善や筋緊張の緩和、関節の支持・固定及び良肢位保持がなされる。また膨張部2によって足関節が伸展することで足関節の屈筋が伸張されてIb抑制と呼ばれる現象が起こって屈筋の緊張が低下し(抑制される)、足指関節を含む足関節の痙縮や拘縮が効果的に予防・抑制される。
【0036】
(第2実施形態)
図7及び
図8に、手首関節及び手指関節に装着する空気加圧装具E2の斜視図を示す。
図7は線ファスナ3が開けられて本体部が開状態とされたときの斜視図であり、
図8は線ファスナ3が閉じられて本体部1bが閉状態とされたときの斜視図である。
【0037】
これらの図に示す空気加圧装具E2は、閉状態において円筒形状となる本体部1bと、本体部1bの内側の装着者の手のひらに対応する位置に取り付けられた膨張部2とを有する。膨張部2については第1実施形態の膨張部2と同一構造であるのでここでは説明を省略し、以下、本体部1bについて説明する。
【0038】
(本体部1b)
図7に示すように、本体部1bは、長方形状の内シートSiと外シートSoとが外周縁が一致するように重ね合わされ、外周縁が溶着された袋状とされている。なお、内シートSiと外シートSoの対向する位置には所定幅で前後方向に帯状に延在する透明シートからなる窓部18が形成されている。また、外シートSoには第1給排気口(不図示)が形成され、第1給排気口にはプラグP1(不図示)が接続されている。そして、プラグP1には一方端にハンドポンプHP1が接続され途中部に開閉弁V1が設けられたチューブtが接続される。また、内シートSiの手のひらに対応する部分には膨張部2を着脱可能に取り付けるための面ファスナ17が設けられている。本体部1bの左右両端縁には線ファスナ3が取り付けられており、線ファスナ3が閉状態にされることにより本体部1bは円筒形状となる。
【0039】
(使用方法)
このような構成の空気加圧装具E2の使用方法について説明する。
図7を参照して、まず、本体部1bの手のひらに対応する位置に膨張部2を面ファスナ17によって取り付ける。そして、手のひらが膨張部2に接触するように装着者の手が本体部1bの内シートSi上に載置される。このとき、本体部1bは線ファスナ3が開けられると左方向と右方向に展開して略平面状となるので、装着者は手を内シートSi上に載置すれば足り装着者の装着動作が容易となる。次いで、線ファスナ3が閉じられ装着者の前腕及び手が本体部1bで包容される。
【0040】
次に、ハンドポンプHP1が駆動されて本体部1bに空気が供給され本体部1bが膨張する。これにより装着者の前腕及び手が膨張した本体部1bによって全体的に加圧される。前腕及び手の加圧状態は本体部1bに設けられた窓部18から視認可能であり、ハンドポンプHP1の駆動による空気の供給は前腕及び手の状態を窓部18から確認しながら、また必要により本体部1bの膨張による弾力性を手で確認しながら行われる。そして、所定の加圧状態になると開閉弁V1が「閉」とされ本体部1bへの空気の供給が停止されるとともに本体部1bの膨張状態が保持される。
【0041】
次に、ハンドポンプHP2が駆動されて膨張部2に空気が供給され膨張部2が膨張する。これにより膨張した膨張部2によって手関節及び手指関節が伸展され、手関節及び手指関節の屈筋が伸張される。手関節及び手指関節の伸展の度合いは膨張部2の膨張度合いによって調整可能である。膨張部2への空気供給は、本体部1bの場合と同様に、膨張部2に設けられた窓部18から手の状態を確認しながら行われる。そして、膨張部2が所定の膨張状態(加圧状態)になると開閉弁V2が「閉」とされ膨張部2への空気の供給が停止されるとともに膨張部2の膨張状態が保持される。
【0042】
本体部1b及び膨張部2による前腕と手の加圧及び手関節と手指関節の伸展の継続時間は、装着者の症状などから適宜判断すればよいが、通常、数分から十数分程度である。また、本体部1b及び膨張部2の一方又は両方について膨張と収縮とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0043】
このように本体部1bによって前腕と手が圧迫されることで末梢循環の改善や筋緊張の緩和、関節の支持・固定及び良肢位保持がなされる。また膨張部2によって手関節と手指関節が伸展することで手関節と手指関節の屈筋が伸張されて、Ib抑制と呼ばれる現象が起こって屈筋の緊張が低下し(抑制される)、手関節と手指関節の痙縮や拘縮が効果的に予防・抑制される。
【0044】
(第3実施形態)
図9に肘関節に装着する空気加圧装具E3を示す。
図9に示す空気加圧装具E3は、第1実施形態で説明した足関節に装着する空気加圧装具E1と基本的構成は同じであって、円筒形状で軸方向の途中部において屈曲した本体部1cと、本体部1cの内側の装着者の前腕に対応する位置に取り付けられた膨張部2とを有し、本体部1cは円筒形状で周壁は気密性の連続する袋状であり、中心軸O方向途中部の所定角度に屈曲した屈曲部51と、屈曲部51から上方側に延在する上腕包容部52と、屈曲部51から前方に延在する前腕包容部53とを有する。上腕包容部52、屈曲部51、前腕容部53は連続一体に成形されている。
【0045】
第1実施形態の空気加圧装具E1と異なる点は、線ファスナ3が屈曲部11の外角側を通って中心軸Oと平行に延在する点と、膨張部2が前腕部の内角側に対応する位置に設けられている点である。
【0046】
(使用方法)
このような構成の空気加圧装具E3の使用方法について説明する。
図10を参照して、まず、空気加圧装具E3の本体部1cの線ファスナ3が開けられて本体部1cが開状態とされる。そして、装着者の肘部分が本体部1cの屈曲部51に位置するように装着者の前腕及び上腕が本体部1c内に載置される。その後、線ファスナ3が開状態から閉状態とされ、装着者の前腕及び上腕が本体部1cで包容される。
【0047】
次いで、ハンドポンプHP1が駆動されて本体部1cに空気が供給され本体部1cが膨張する。これにより装着者の前腕及び上腕が膨張した本体部1cによって全体的に加圧される。前腕及び上腕の加圧状態は本体部1cに設けられた窓部15a,15bから視認可能であり、ハンドポンプHP1の駆動による空気の供給は前腕及び上腕の状態を窓部15a,15bから確認しながら、また必要により本体部1cの膨張による弾力性を手で確認しながら行われる。そして、所定の加圧状態になると開閉弁V1が「閉」とされ本体部1cへの空気の供給が停止されるとともに本体部1cの膨張状態が保持される。
【0048】
次に、ハンドポンプHP2が駆動されて膨張部2に空気が供給され膨張部2が膨張する。これにより膨張した膨張部2によって肘関節が伸展され、肘関節の屈筋が伸張される。肘関節の伸展の度合いは膨張部2の膨張度合いによって調整可能である。膨張部2への空気供給は、本体部1cの場合と同様に、膨張部2に設けられた窓部15bから前腕の状態を確認しながら行われる。そして、膨張部2が所定の膨張状態(加圧状態)になると開閉弁V2が「閉」とされ膨張部2への空気の供給が停止されるとともに膨張部2の膨張状態が保持される。
【0049】
本体部1c及び膨張部2による前腕及び上腕の加圧と肘関節の伸展の継続時間は、装着者の症状などから適宜判断すればよいが、通常、数分から十数分程度である。また、本体部1c及び膨張部2の一方又は両方について膨張と収縮とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0050】
このように本体部1cによって前腕及び上腕が圧迫されることで末梢循環の改善や筋緊張の緩和、関節の支持・固定及び良肢位保持がなされる。また膨張部2によって肘関節が伸展することで肘関節の屈筋が伸張されて、Ib抑制が起こって屈筋の緊張が低下し(抑制される)肘関節の痙縮や拘縮が効果的に予防・抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る空気加圧装具は、本体部が膨らんで肢体に装着固定されるので様々に変形・拘縮した肢体に対しても容易に装着できる。また、膨張部が膨らんで関節を屈曲又は伸展させるので手指の関節のみならず足関節や肘関節についても屈曲又は伸展させることができる。そしてまた、所望の関節を屈曲又は伸展させることで当該関節の伸筋又は屈筋を伸張させることができ、肢体の痙縮や拘縮を効果的に予防・抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b,1c 本体部
2 膨張部
3 線ファスナ(線状開閉部)
O 中心軸
E1,E2,E3 空気加圧装具
11 屈曲部
12 下肢包容部
13 足包容部
14 第1給排気口(第1給気口)
15a,15b 窓部
17 面ファスナ
18 窓部
21 第2給排気口(第2給気口)
22 面ファスナ