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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】造花石鹸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 1/00 20060101AFI20240806BHJP
   C11D 9/26 20060101ALI20240806BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A41G1/00 B
C11D9/26
C11D17/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020095318
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021188189
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】514003005
【氏名又は名称】株式会社九州フラワーサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】田中 正文
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132046(JP,A)
【文献】特開2012-021246(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107674796(CN,A)
【文献】特開平04-245902(JP,A)
【文献】特開平05-017800(JP,A)
【文献】特開平01-178599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 1/00
C11D 9/26
C11D 13/14
C11D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離弁した花弁を持つ花の花冠に似せて界面活性剤を含む花びら形状の複数の花弁模造体が配置された、前記花弁模造体をちぎって洗浄に供する造花石鹸の製造方法であって、
51.5~62.9重量部の水と、25.7~31.5重量部の粉末状の陰イオン界面活性剤と、9.0~11.0重量部のポリビニルアルコールと、2.7~3.3重量部のグリセリンとを少なくとも含むデンプン不含の生地材料を混練する原料混合工程と、
所定温度に加熱した円筒状のドラム表面に混練物を塗着し、熱によって乾燥させつつスクレーパにて剥離し、連続的にシート状に成形するシート形成工程と、
所定の大きさの花びら形状を備え複数の花弁模造体の基部集合させ互いに連結させて放射状に構成した花弁結合体であって前記所定の大きさが異なる複数の花弁結合体をシート状の混練物から切り抜く花弁模造体切抜工程と、
前記花弁模造体の大きさの異なる前記花弁結合体を1種ずつ種類分だけ順不同で重ねて1つのユニットとし、このユニットを入れ子状に繰り返して組み合わせることで離弁した花弁を持つ花の花冠に似せた花部を形成する花部組立工程と、
を有することを特徴とする造花石鹸の製造方法。
【請求項2】
前記シート状の混練物から切り抜く前の花弁模造体切抜領域内または切抜後の花弁模造体の表面に凸条を圧接し花脈状の凹溝を形成する請求項1に記載の造花石鹸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造花石鹸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指の洗浄や入浴時の体の洗浄に際し、効率的に汚れを落とすために石鹸が使用されている。近年では液体タイプの石鹸が主流となりつつあるが、固形の石鹸もまだ広く用いられている。
【0003】
固形石鹸は、定形性を有し造形が可能であることから、種々趣向を凝らした製品がこれまでに提案されている。
【0004】
中でも、花を模した造花石鹸は見た目も美しく、洗面所やバスルームを華やかに彩ることができ、しかも手指の洗浄など実用性にも優れることから、贈答品や宿泊施設でのアメニティ用品として好評である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-132046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、洗面所などに手洗い用として配置された固形石鹸は、数十回に亘り繰り返し使用できるため、使用後は水切りを兼ねて石鹸置きへ戻し、再び手洗いに供されるのが一般的である。
【0007】
しかし、このような石鹸の使いまわしは、微生物的な観点によればさほど問題ではないのであろうが、先の使用者の手指の汚れが石鹸の表面に既に付着している場合もあり、衛生的にも気分的にも良好な状態とは言い難い。
【0008】
これに対し造花石鹸は、石鹸として機能する花びら部分をちぎり取ると花の形が変わってしまうこともあり、基本的には他の人への使いまわしを行わないため、衛生的な問題や気分的な問題は起こりにくい。
【0009】
しかし、これまでの造花石鹸はいずれの花びらも同形同大であり、実際に手洗いを行ってみると、石鹸量が多すぎたり少なすぎることもあって、うまく使い切るのが困難な場合があった。
【0010】
本願は係る事情に鑑みてなされたものであって、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることのできる造花石鹸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る造花石鹸の製造方法では、(離弁した花弁を持つ花の花冠に似せて界面活性剤を含む花びら形状の複数の花弁模造体が配置された、前記花弁模造体をちぎって洗浄に供する造花石鹸の製造方法であって、51.5~62.9重量部の水と、25.7~31.5重量部の粉末状の陰イオン界面活性剤と、9.0~11.0重量部のポリビニルアルコールと、2.7~3.3重量部のグリセリンとを少なくとも含むデンプン不含の生地材料を混練する原料混合工程と、所定温度に加熱した円筒状のドラム表面に混練物を塗着し、熱によって乾燥させつつスクレーパにて剥離し、連続的にシート状に成形するシート形成工程と、所定の大きさの花びら形状を備え複数の花弁模造体の基部集合させ互いに連結させて放射状に構成した花弁結合体であって前記所定の大きさが異なる複数の花弁結合体をシート状の混練物から切り抜く花弁模造体切抜工程と、前記花弁模造体の大きさの異なる前記花弁結合体を1種ずつ種類分だけ順不同で重ねて1つのユニットとし、このユニットを入れ子状に繰り返して組み合わせることで離弁した花弁を持つ花の花冠に似せた花部を形成する花部組立工程と、を有することとした。
【0014】
また、本発明に係る造花石鹸の製造方法では、()前記シート状の混練物から切り抜く前の花弁模造体切抜領域内または切抜後の花弁模造体の表面に凸条を圧接し花脈状の凹溝を形成することにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る造花石鹸によれば、離弁した花弁を持つ花の花冠に似せて界面活性剤を含む花びら形状の複数の花弁模造体が配置された、前記花弁模造体をちぎって洗浄に供する使い切り型の造花石鹸であって、前記複数の花弁模造体は、少なくとも大小2種以上の大きさの異なる花びら形状を備えることとしたため、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることのできる造花石鹸を提供することができる。
【0016】
また、前記花弁模造体の先端の外縁近傍に含水遅延部を設けることとすれば、手指の洗浄中や入浴中に濡れた手で花弁模造体をちぎるときでも、水濡れによって早々に崩壊してしまうことを抑制することができ、堅実に花弁模造体を根元からちぎらせることができる。
【0017】
また、前記複数の花弁模造体の少なくとも一部は、基部を互いに連結してなる放射状の花弁結合体を構成していることとすれば、複数の花弁模造体を花弁結合体として一体的に取り外すことができ、洗浄に使用する際も、複数の花弁模造体が互いに重畳結着して崩壊が妨げられることを防止できる。
【0018】
また、本発明に係る造花石鹸の製造方法では、離弁した花弁を持つ花の花冠に似せて界面活性剤を含む花びら形状の複数の花弁模造体が配置された、前記花弁模造体をちぎって洗浄に供する造花石鹸の製造方法であって、51.5~62.9重量部の水と、25.7~31.5重量部の粉末状の陰イオン界面活性剤と、9.0~11.0重量部のポリビニルアルコールと、2.7~3.3重量部のグリセリンとを少なくとも含むデンプン不含の生地材料を混練する原料混合工程と、所定温度に加熱した円筒状のドラム表面に混練物を塗着し、熱によって乾燥させつつスクレーパにて剥離し、連続的にシート状に成形するシート形成工程と、所定の大きさの花びら形状を備え複数の花弁模造体の基部集合させ互いに連結させて放射状に構成した花弁結合体であって前記所定の大きさが異なる複数の花弁結合体をシート状の混練物から切り抜く花弁模造体切抜工程と、前記花弁模造体の大きさの異なる前記花弁結合体を1種ずつ種類分だけ順不同で重ねて1つのユニットとし、このユニットを入れ子状に繰り返して組み合わせることで離弁した花弁を持つ花の花冠に似せた花部を形成する花部組立工程と、を有することとしたため、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることのできる造花石鹸の製造方法を提供することができる。
【0019】
また、前記シート状の混練物から切り抜く前の花弁模造体切抜領域内または切抜後の花弁模造体の表面に凸条を圧接し花脈状の凹溝を形成すれば、光にかざした際に花脈の透け感が美しい花弁模造体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】造花石鹸の外観を示す説明図である。
図2】造花石鹸の構成を示す説明図である。
図3】造花石鹸の構成を示す説明図である。
図4】花弁模造体の構成を示す説明図である。
図5】造花石鹸の組立過程を示す説明図である。
図6】造花石鹸の組立過程を示す説明図である。
図7】造花石鹸の組立過程を示す説明図である。
図8】造花石鹸の組立過程を示す説明図である。
図9】造花石鹸の組立過程を示す説明図である。
図10】凹溝の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、花の形を模した造花石鹸の製造方法に関するものであり、特に、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることのできる造花石鹸やその製造方法を提供するものである。
【0022】
ここで、造花のモチーフとなる花は、実在の花であっても良いし、実在しない想像上の花とすることも可能である。本実施形態に係る造花石鹸やその製造方法(以下、本造花石鹸や本製造方法ともいう。)は、後述するように、生花独特のしっとりしながらもサラっとした感触が再現された造花石鹸や製造方法であることから、実在の花をモチーフとする場合には、例えば、バラやチューリップ、ユリなど比較的大きく肉厚で、しっとりサラリとした手触りの花弁を有する花をモチーフとすると、よりリアルに再現することが可能である。
【0023】
また造花は、花の構造を必ずしも正確に模する必要はない。例えば、一見してバラとわかるような花弁の集合が形成されていれば、萼やおしべ、めしべに相当する構造が再現される必要はない。花弁部分は、その薄手な形状や大きさから、一回の手洗いに使用する石鹸の量として適当であり、また、花びらをちぎるという所作も雰囲気があるため、主要な構成要素の一つである。
【0024】
本造花石鹸の用途は特に限定されるものではない。例えば、手洗いや洗顔、体の洗浄などを目的とする石鹸であっても良いが、いわゆる泡風呂のためのバブルバス入浴剤としての石鹸であっても良い。すなわち、本製造方法にて得られる造花石鹸は、バブルバス入浴剤の概念も含む。ただし、出願人が本願を権利化するにあたり、これら用途を限定することは妨げない。
【0025】
本造花石鹸は、離弁した花弁を持つ花の花冠に似せて界面活性剤を含む花びら形状の複数の花弁模造体が配置された、前記花弁模造体をちぎって洗浄に供する使い切り型の造花石鹸である。
【0026】
ここで使い切り型の造花石鹸とは、基本的には別の人との使いまわしを行わない造花石鹸であり、通常の固形石鹸のように数週間に亘り使用されるものではなく、厳密に日数が規定されるものでもないが、1日~数日をめどに使い切られることが想定された石鹸を意味している。
【0027】
そして、本造花石鹸の特徴としては、複数の花弁模造体は、少なくとも大小2種以上の大きさの異なる花びら形状を備えることが挙げられる。
【0028】
このような構成により、例えば手洗いに際して使用者は、自分の手の大きさや汚れ度合い等に応じて大小の花弁模造体を適宜選択しつつ界面活性剤の使用量を調整できる。
【0029】
また、残りがあと数枚程度となって使い切りが近くなると、花弁模造体を次回の洗浄のために残すべきか、それとも今回の洗浄で使い切るべきかの判断に応じ、大小の花弁模造体を使い分けて適宜使用量を調整することができ、最後までうまく使い切るのが容易となる。
【0030】
また本造花石鹸では、前記花弁模造体の先端の外縁近傍に含水遅延部を設けても良い。すなわち、花弁模造体に、水の浸透を遅延させる処理を施すなどして含水遅延手段を構築し、同含水遅延手段が配された花弁模造体の部分を含水遅延部とすることができる。
【0031】
含水遅延部は、花弁模造体に含水遅延手段を形成することで構築される。含水遅延手段は、例えば花弁模造体の表面よりも水の浸み込みがやや遅い表面構造などが挙げられる。水の浸透を遅延させる処理として、例えば多糖類やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)など水溶性の薄膜形成処理を施し、これにより形成された薄膜を薄膜がない場合に比して含水スピードを若干遅らせることが可能な含水遅延手段とし、含水遅延部を構築することができる。ただし、薄膜の膜厚は、花弁模造体の独特の手触りを阻害しない程度の薄さとすべきである。
【0032】
そして、このような含水遅延部を設けることで、花弁模造体が水を含んで脆くなるまでの時間を遅くすることができ、特に濡れた手であっても花弁模造体を根元からしっかりとちぎることが可能となる。
【0033】
付言すれば、花弁模造体を摘まんでちぎる場合、本来であれば引張力が根元まで伝搬して根元からちぎれるところ、含水した部分は乾燥している部分に比して脆化してしまうため、濡れた手でこれを行うと含水部に引張力が集中してしまい、根本以外の部分でちぎれてしまうおそれがあるが、含水遅延部を設けることで脆化を抑制し、引張力の根元までの伝達を堅実なものとすることができる。
【0034】
特に、この含水遅延部は、摘まみやすい場所である花弁模造体の先端の外縁近傍に設けると良い。このような構成とすることにより、花弁模造体の外縁近傍を濡れた手でつまんだとしても、花弁模造体の根元以外の場所からちぎれてしまうことを防止することができる。
【0035】
また、含水遅延部は、先端の外縁近傍以外の場所に設けることも可能である。例えば、花弁模造体の略中央部にて凡そ指の腹が当接する領域に亘り含水遅延部を形成することもできる。
【0036】
なお、含水遅延部を花弁模造体の全体に形成することは特に妨げるものではないが、含水遅延部の非形成領域を設ける方が望ましい。たとえば、先端の外縁近傍や略中央部などを含水遅延部とする一方、花弁模造体の根元部分に含水遅延部の非形成領域を設ければ、濡れた手で花弁模造体をちぎった場合、根元部分が他の部位に比して早々に脆化するため、根元からちぎれやすくすることができる。
【0037】
また、本造花石鹸では、前記複数の花弁模造体の少なくとも一部は、基部を互いに連結してなる放射状の花弁結合体を構成していることとしても良い。
【0038】
すなわち、本造花石鹸の花冠に相当する部分は、一枚一枚の花びらを模した花弁模造体が離弁した独立状態で組み合わされて形成されたものでも良いが、花弁模造体が根本近傍で互いに結合した花弁結合体を用いて形成されていても良いし、これら両者を用いて形成されていても良い。
【0039】
このような構成とすることで、複数の花弁模造体を花弁結合体として一体的に取り外すことができ、洗浄に使用する際も、複数の花弁模造体が互いに重畳結着して崩壊が妨げられることを防止できる。
【0040】
また本願は、造花石鹸の製造方法についても提供する。本製造方法は、原料混合工程と、シート形成工程と、花弁模造体切抜工程と、花部組立工程とを備えている。
【0041】
原料混合工程は、水と粉末状の陰イオン界面活性剤とポリビニルアルコールとグリセリンとを少なくとも含むデンプン不含の生地材料を混練し混練物を調製するための工程である。
【0042】
生地材料は、後述の花弁模造体の造形材料であるとともに、界面活性剤やグリセリンの担体となる材料である。生地材料は水と粉末状の陰イオン界面活性剤とポリビニルアルコールとグリセリンとを少なくとも含むを含むが、例えば香料など更なる材料を添加することも可能である。
【0043】
生地材料の各成分は、化粧品製造に使用されるグレードのものであれば特に限定されるものではない。また、デンプンは使用しない。これは、本製造方法や本製造方法にて製造した造花石鹸の特徴である花弁模造体表面の手触りが、しっとりとしながらもサラリとした風合いとならず、乾いた紙のようなしっとり感が失われた感触となってしまうためである。
【0044】
生地材料は、51.5~62.9重量部の水と、25.7~31.5重量部の粉末状の陰イオン界面活性剤と、9.0~11.0重量部のポリビニルアルコールと、2.7~3.3重量部のグリセリンの少なくとも4つの材料を含む。
【0045】
水は51.5重量部を下回ると後述の混練物が硬くなり、造形性に難があるため好ましくなく、また62.9重量部を上回ると混練物が柔らかくなりすぎて同じく造形性に難があるため好ましくない。陰イオン界面活性剤は、25.7重量部を下回ると花弁模造体の単位量あたりの洗浄効果が低下するとともに、混練物が柔らかくなりすぎて造形性に難があるという問題があり、また31.5重量部を上回ると泡切れが悪く、また混練物が硬くなり造形性に影響が出るため好ましくない。ポリビニルアルコールは、9.0重量部を下回ると生地のつなぎが少なくなって成形性に劣るという問題があり、また11.0重量部を上回ると粘性が増して使用時にべたつきが出るため好ましくない。グリセリンは、2.7重量部を下回ると後述する独特の手触りが得られず、また、花脈様の構造の現出が困難となる問題があり、また3.3重量部を上回ると成形性に影響を及ぼすため好ましくない。水を51.3~62.7重量部、粉末状の陰イオン界面活性剤を27.0~33.0重量部、ポリビニルアルコールを9.0~11.0重量部、グリセリンを2.7~3.3重量部とすることにより、造花石鹸の完成時に良好な手触りを付与することができる。
【0046】
界面活性剤は、本製造方法により製造される造花石鹸に洗浄機能を付与するための成分であり、化粧品製造グレードで一般に洗浄用途で使用されるアニオン、両性、ノニオンの各界面活性剤を適宜採用することができる。界面活性剤の一例としては、例えば、陰イオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムや、アルカノール(C=12~16)モノ硫酸エステルナトリウム塩(CAS:73296-89-6)、N-ラウロイルサルコシンナトリウム(CAS:137-16-6)、コカミドMEA(CAS:68140-00-1)のいずれか、またはこれらの混合物、更にはこれらとこれら以外の界面活性剤との混合物とすることができる。
【0047】
グリセリンは、化粧品製造グレードのものであれば、市販のものを適宜使用することができる。
【0048】
そして、本原料混合工程では、これら生地材を混練機に供して混合し混練物を調製する。なお、後述のシート形成工程にて使用する装置に混練の機能が備えられている場合には、本原料混合工程とシート形成工程とを連続的に行うことも可能である。
【0049】
シート形成工程では、原料混合工程にて調製した混練物を圧延し、必要に応じて乾燥等を施してシート状とする。圧延の方法は麺棒の如き道具を使用して手作業にて行ってもよいが、均一な厚みなど規格安定性の観点でいえば、手動又は自動の圧延機を使用するのが好ましい。
【0050】
また別の例として、所定温度に加熱した円筒状のドラム表面に混練物を塗着し、熱によって乾燥させつつスクレーパにて剥離し、連続的にシート状に成形することもできる。付言すれば、本願における圧延は、前者及び後者の両方の態様を含む。
【0051】
圧延の厚さは、モチーフとなる花の花弁の厚みと概ね同様の厚みとすることで、生花により似た仕上がりとすることができる。
【0052】
花弁模造体切抜工程では、シート状混練物から複数の花弁模造体を切り抜く。なお、以下の説明において、花弁模造体の切抜前におけるシート状混練物の切抜対象となる領域を、花弁模造体切抜領域ともいう。
【0053】
花弁模造体は、花弁模造体切抜領域の形状を離弁花の花びら1枚の形状として得たものであっても良いが、後述の花部組立工程をより簡便にすべく、花弁模造体切抜領域の形状を複数の花びらが連結した形状、すなわち前述の花弁結合体の形状としても良い。
【0054】
また花弁模造体は、1枚の花びらの状態と花弁結合体の状態のいずれであっても、少なくとも大小2種以上の大きさの異なる花びら形状を備えるよう構成しており、これによって、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることが可能となる。
【0055】
花部組立工程は、複数の花弁模造体を組み合わせ、必要に応じてその他のパーツ、例えば萼やめしべ、おしべを模したパーツを用いつつ、花部を構築する工程である。本工程における構築の手順や形態は特に限定されるものではなく、モチーフとした実際の花や、想像上の花に合わせて適宜行うことができる。
【0056】
そして、このようにして花部の外観を呈するよう製造された造花石鹸は、例えば手指の洗浄の場合、花部から花弁模造体を1~2枚ちぎり、通常の石鹸のように手指に擦り込むことで泡立たせ、洗浄用途に供することができる。
【0057】
また特に、本製造方法では、原料混合工程にて使用する生地材料を前述の構成としたため、花部から花弁模造体をちぎり取るときの指先の感触が、しっとりしながらもサラっとした状態となり、あたかも生花の花びらをちぎって洗浄を行っているような趣のあるひと時を演出することができる。
【0058】
この点について詳述すれば、これまで世間一般に提案されていた従来の造花石鹸は、その見た目の観点から検討すると、メーカーの製造技術の良し悪しに左右されるものの、外観を生花に似せて造形を施すことは可能であるといえる。
【0059】
しかしながら、手触りや指ざわりの如き感触(触感)の観点では、未だ改良の余地が残されていた。特に、花びらを摘まんだときのしっとりしながらもサラっとした、ビロードの手触りの如き感触が花びらの模造部分(花弁模造体)に十分に再現された造花石鹸は、これまで提供されていなかった。
【0060】
本願は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、柔軟性に富み、指の腹で摩擦した際に花びら独特の感触が再現された花弁模造体を備える造花石鹸やその製造方法を提供するものであるともいえる。
【0061】
そして、本実施形態によれば、柔軟性に富み、指の腹で摩擦した際にバラの花びらのしっとりしながらもサラっとした、ビロードの手触りの如き感触が再現された花弁模造体を備える造花石けんや、その製造方法を提供することができる。
【0062】
また、本製造方法では、シート状の混練物から切り抜く前の花弁模造体切抜領域内または切抜後の花弁模造体の表面に押型の凸条を圧接し花脈状の凹溝を形成することとしても良い。
【0063】
花脈は、実際の花に備わる構造であって花びらに水分や養分を運ぶ管であり、花びらを透かして見ると葉脈のように薄く筋状に見える部位である。本製造方法により製造した造花石鹸に、このような花脈状の凹溝が形成されれば、本物の花びらに近い外観とすることができる。
【0064】
この凹溝の形成は、花弁模造体の切抜前でも切抜後でもよい。すなわち、シート状混練物の花弁模造体切抜領域内に凸条を押し当てて凹溝を形成し、これを切り抜いて花弁模造体を得ても良いし、切抜後の花弁模造体に凸条を押し当てて凹溝を形成しても良い。
【0065】
そして、このような工程を経ることにより、押し付けられた部分が凹状となって厚みがやや薄くなるとともに、混練物内に含まれるグリセリンが押付跡部分に集まって半透明状の透け感が生起され、美しい花脈状の凹溝とすることができる。
【0066】
以下、本実施形態に係る造花石鹸やその製造方法に関し、図面を参照しながら更に説明する。なお以下では、造花石鹸のモチーフをバラとした例について説明するが、他の花をモチーフにしても良いのは前述の通りである。
【0067】
図1は本実施形態に係る造花石鹸の製造方法にて製造された造花石鹸Aの外観を示す説明図でである。図1に示すように、造花石鹸Aはバラをモチーフとして本製造方法により製造されたものであり、花びら部分を1~2枚程度ちぎり取り、手指の洗浄に用いることが想定されている。
【0068】
図2は、造花石鹸Aの一部分解状態を示した説明図である。造花石鹸Aは追って図示するが、複数の花弁結合体10を幾重に重ねてバラの花冠形状としており、図2はその最外方の花弁結合体10である第1花弁結合体10aと、同第1花弁結合体10aが取り外された半製品体11(半製品体11b)とを示している。
【0069】
図示するように第1花弁結合体10aは、本実施形態において一片の花びら形状を模したものではなく、複数片(第1花弁結合体10aは三片)の花びら形状の花弁模造体13がそれぞれの基部で略放射状に連結してなる花弁結合体10の形状としている。
【0070】
そして使用時は、図2のように第1花弁結合体10a自体を取り外すことも可能ではあるが、通常は、図1に示す状態で、図2の第1花弁結合体10aにて破線で示す花弁模造体13の根元部分から一片乃至数片をちぎり取り、手指洗浄に供する。
【0071】
図3は、造花石鹸Aを分解した状態を示す説明図である。図3に示すように、造花石鹸Aは、4つの花弁結合体10と、心材12とで構成している。
【0072】
花弁結合体10は、先述した造花石鹸Aの最外部を構成する第1花弁結合体10aのほかに、最外から一段内方に配された三片の花弁模造体13を備える第2花弁結合体10bと、最外から二段内方に配された四片の花弁模造体13を備える第3花弁結合体10cと、最内方の花弁模造体である五片の花弁模造体13を備えた第4花弁結合体10dとを備えている。
【0073】
各花弁結合体10のそれぞれの花弁模造体13は、おおむね同じ大きさに形成されている。すなわち、第1花弁結合体10aに配された3つの第1花弁模造体13aはいずれもおよそ同じ大きさとしており、第2花弁結合体10b~第4花弁結合体10dにおいても同様である。
【0074】
またこれに対し、第1花弁結合体10aの第1花弁模造体13aと、第2花弁結合体10bの第2花弁模造体13b、第3花弁結合体10cの第3花弁模造体13c、第4花弁結合体10dの第4花弁模造体13dをそれぞれ比較すると、大小2種の異なる大きさで形成している。具体的には、第1花弁模造体13aと第3花弁模造体13cは相対的に大きめに形成し、第2花弁模造体13bと第4花弁模造体13dは相対的に小さめ(例えば、第1花弁模造体13aや第3花弁模造体13cの重量の3/4~1/3程度)に形成している。
【0075】
このように、花弁模造体の大きさの異なる花弁結合体を1種ずつ種類分だけ順不同で重ねて1つのユニットとし、このユニットを入れ子状に繰り返して造花石鹸を形成することで、ちぎりやすい外方の花弁模造体から使用した場合であっても、大きさの異なる花弁模造体を容易に取ることができる。
【0076】
例えば、第1~第6の花弁結合体で形成された造花石鹸であって、花弁模造体の大きさの種類が大中小の3種あると仮定した場合、外方から内方へ「大大中中小小」の順であると、大と小とを取り混ぜて使用したい場合、大は最外方にあるので容易にちぎることが可能であるが、小は指先を造花石鹸の中心部深くに挿入しなければならず容易とは言い難い。
【0077】
これに対し、1種ずつ種類分だけ順不同で重ね、大中小や中大小のような1つのユニットとし、このユニットを繰り返し「(大中小)(中大小)」のようにして造花石鹸を形成すれば、いずれの大きさも前述の例に比して外方からちぎりやすくなるため、取扱性を向上させることができる。なお、ユニットは必ずしも整数分だけとする必要はなく、「(大中小)(中大小)(中)」のように2と1/3ユニットそろえても良い。
【0078】
また、各花弁模造体13の先端の外縁近傍には、水の浸透を遅延させるべく水溶性物質による表面処理が施されており、同処理によって形成された薄膜や薄層を含水遅延手段とする含水遅延部が形成形成されている。
【0079】
図4は、含水遅延部の形成部位を示す説明図であり、ここでは第2花弁結合体10bを構成する一つの第2花弁模造体13bを用いて、含水遅延部16や非遅延部18を例示している。
【0080】
図4に示すように、第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dの各花弁模造体13は、破線で囲われた同花弁模造体13の先端部の外縁近傍領域15aの表面に、水溶性物質としてポリビニルアルコール(PVA)を用いた含水遅延手段としての薄層を形成して含水遅延部16としている。
【0081】
この含水遅延部16では、含水遅延手段(ここではPVAの薄層)を備えていない花弁模造体13の表面領域、すなわち含水遅延部の非形成領域に比して水分の浸み込み方が遅く、含水による急速な脆化が抑制されることとなる。
【0082】
また本実施形態では更に、破線で囲われた内方領域15bについても、同様の含水遅延手段を設けることで含水遅延部16としており、内方領域15bの含水による急速な脆化を抑制している。
【0083】
これに対し、花弁結合体10を構成する各花弁模造体13が互いに連結する部位、図4にて実線で囲った基部領域17は、含水遅延手段としてのPVA薄層形成処理を施さず、含水遅延部の非形成領域としての非遅延部18としている。
【0084】
心材12は、造花石鹸Aの中心部の保形のために配置された涙滴型の部材であり、本実施形態では発泡スチロールにて形成している。第4花弁結合体10dの各花びらは、図5に示すように各花びらを心材12に順次巻き付けながら組み立てることで保形性を向上させることができる。
【0085】
ここまで、本方法にて製造した造花石鹸Aの構成について説明したが、次に、本実施形態に係る造花石鹸の製造方法について、実際の製造工程を追いながら順次説明する。
【0086】
〔1.原料混合工程〕
造花石鹸Aの製造にあたり、まず、花弁結合体10を作成するための各原料の計量を行った。表1に示すように、生地材料として57.185重量部の水と、28.6重量部の粉末状の陰イオン界面活性剤と、10重量部のポリビニルアルコールと、3重量部のグリセリンを計量した。粉末状の陰イオン界面活性剤は、15重量部のN-ラウロイルサルコシンナトリウムと8重量部のラウリルアルコール(ドデシル硫酸ナトリウム)、4重量部のコカミドMEA、1.6重量部のラウレス硫酸ナトリウムを使用した。なお、本実施形態ではさらに、保湿、湿潤剤、保水剤として0.5重量部のエリスリトール、抗菌剤、酸化防止剤として0.1重量部のチャ葉エキス、保湿目的で0.01重量部のヒアルロン酸ナトリウム、0.1重量部のココナッツオイル、着色目的で0.005重量部の着色料、着香目的で0.5重量部の香料も添加した。次に、これら各原料を混練機に投入し、十分に混練することで混練物を調製した(原料混合工程)。
【表1】
【0087】
〔2.シート形成工程〕
次に、〔1.原料混合工程〕にて調製した混練物をドラム式のシート形成機に供し、乾燥させながら厚さ1mmのシート状とすることで、シート形成工程を行った。
【0088】
〔3.花弁模造体切抜工程〕
次に、〔2.シート形成工程〕にて得られたシート状混練物を型を用いて挟圧し、第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dに相当する花弁模造体切抜領域からの切抜を行うことで、花弁結合体10を得た(花弁模造体切抜工程)。
【0089】
具体的には、第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dに対応する各凹型が形成された下部金型と、同じく第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dに対応する各凸型が形成された上部金型との間にシート状混練物を配置し、上下金型でシート状混練物を挟圧して型抜きすることにより、第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dを得た。
【0090】
なお、各花弁結合体10の凹型には、花びら先端のカール形状を模した立体的な形状が形成されており、凸型もこれに合わせた形状となし、切り抜かれた花弁結合体10に立体的な造形が施されるよう構成している。
【0091】
また、各花弁結合体10の凸型表面には花脈状の凸条を形成しており、挟圧成型された花弁結合体10の凸型対向面に花脈状の凹溝が形成されるよう構成している。
【0092】
〔4.花部組立工程〕
次に、〔3.花弁模造体切抜工程〕にて得た複数の花弁結合体10、すなわち、第1花弁結合体10a~第4花弁結合体10dを組み合わせて花部を形成する花部組立工程を行った。
【0093】
まず、先に図5を参照しつつ説明したように、第4花弁結合体10dの各花びら心材12に順次巻き付けながら組み立てることで、図6に示すような第4花弁結合体10dを最外層とする保形性に優れた半製品体11dを形成する。なお、第4花弁結合体10dは、花びら同士を一部接着したり、心材12と接着することで、保形性を向上させることも可能である。
【0094】
すなわち、第4花弁結合体10dの花びらの心材12への接着や、花びら同士の接着は適宜接着剤を用いて行うことが可能である。この場合、接着剤は、好ましくは水に溶けやすく、また人体に対し悪影響の少ないものを用いるのが好ましい。このような接着剤としては、例えば、デンプンのりやポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)をベースとする糊などが挙げられる。ただし、花弁模造体13の円滑な抜き取りを実現するためには、造花石鹸Aの一部または全部において接着を行わないのも一案である。
【0095】
このようにして形成した半製品体11dは、次に図7に示すように、最外から二段内方に配される第3花弁結合体10cの中央部(各花びらの基部の集合部分)に配置し、接着剤にて固定する。
【0096】
そして、第3花弁結合体10cの各花びらを半製品体11dへ近づけるように重畳させ、必要に応じて花びらを接着剤にて固定しつつ、図8に示すように第3花弁結合体10cを最外層とする半製品体11cを形成する。なお、花びらの接着は、使用者が花びらを容易にちぎり取れる程度、例えば点で接着する程度にとどめておくのが好適である。
【0097】
次に、半製品体11cは、図9に示すように第2花弁結合体10bの略中央部に配して接着剤にて固定し、第2花弁結合体10bの各花びらを半製品体11cへ近づけるように重畳させつつ接着剤で固定し、第2花弁結合体10bを最外層とする半製品体11bを形成する(図2参照)。
【0098】
同様に、この半製品体11bは、第1花弁結合体10aの中央に配して固定し、第1花弁結合体10aの各花びらを半製品体11bへ近づけるように重畳させつつ接着剤で固定することで、図1に示すように花部である造花石鹸Aを構築することができる。
【0099】
そして、このようにして製造した造花石鹸Aによれば、少なくとも大小2種以上の大きさの異なる花びら形状を備えているため、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることができる。
【0100】
花弁模造体13の先端の外縁近傍領域15aに含水遅延部16を設けていることから、濡れた指先などで花弁模造体13を摘まんだ場合でも、外縁近傍領域15aが水気によって早々に脆弱化してしまうことを防止でき、洗面中や入浴中においても堅実に花弁模造体13をちぎることが可能となる。
【0101】
また、花弁模造体13は、内方領域15bを含水遅延部16としたり、基部領域17を非遅延部18としている。これにより、非遅延部18である基部領域17は、含水遅延部16である外縁近傍領域15aや内方領域15bに比して、乾燥状態においてもPVAのコーティング層を備えない分だけちぎり動作に対する強度的に弱く、また、濡れた手で花弁模造体13をちぎるなど水気にさらされた場合は、指先のしずくが花弁模造体13の表面に沿って流れれば、基部領域17に優先的に浸み込んで速やかに脆化し、花弁模造体13の基部からのちぎれを助長することができる。
【0102】
また、造花石鹸を構成する複数の花弁模造体の少なくとも一部は、基部を互いに連結してなる放射状の花弁結合体を構成している。これにより、複数の花弁模造体を花弁結合体として一体的に取り外すことができ、洗浄に使用する際も、複数の花弁模造体が互いに重畳結着してダマのようになり、崩壊が妨げられて泡立ちが悪くなることを防止できる。
【0103】
また、本実施形態に係る造花石鹸の製造方法によれば、使用量を適宜調整しながら洗浄等に用いることができ、しかも、花弁模造体が柔軟性に富み、更には指の腹で摩擦した際に花びら独特の感触を再現することができる。
【0104】
特に、造花石鹸Aは、使用時に花びらをちぎる必要があるため、花弁の隙間深くに指を挿入し、根本近傍からちぎり取る動作を行うのであるが、このとき、指の腹で花びらの表面を摩擦することとなり、しっとりしながらもサラっとした生花の花びら独特の感触が再現されることとなる。
【0105】
また、先の〔3.花弁模造体切抜工程〕で説明したように、花弁模造体切抜領域内に凸条を圧接し花脈状の凹溝を形成している。これにより、図10(a)に示すように押し付けた部分の厚みがやや薄くなるとともに、凸条の押付跡部分に混練物内に含まれるグリセリンにより、図10(b)に示すように逆光にかざすと半透明状の透け感が生起され、美しい花脈状の凹溝を備える再現性に優れた造花石鹸Aを製造することができる。
【0106】
上述してきたように、本実施形態に係る造花石鹸の製造方法によれば、水、デンプン及びポリビニルアルコールを含む生地材料と、界面活性剤と、グリセリンとを混練する原料混合工程と、混練物を圧延してシート状とするシート形成工程と、シート状の混練物から複数の花弁模造体を切り抜く花弁模造体切抜工程と、複数の花弁模造体を組み合わせて花部を形成する花部組立工程と、を有することとしたため、柔軟性に富み、指の腹で摩擦した際にバラの花びらのしっとりしながらもサラっとした、ビロードの手触りの如き感触が再現された花弁模造体を備える造花石けんの製造方法を提供することができる。
【0107】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0108】
例えば、前述の〔3.花弁模造体切抜工程〕では、花脈状の凹溝の形成を行う凸条は凸型表面に形成されていたが、凹型表面に花脈状の凸条を形成し、花弁結合体10の凹型対向面に花脈状の凹溝を形成するよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0109】
10 花弁模造体
11 半製品体
12 心材
13 花弁模造体
15a 外縁近傍領域
15b 内方領域
16 含水遅延部
17 基部領域
18 非遅延部
A 造花石鹸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10