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  • 特許-トラクターへの連結構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】トラクターへの連結構造
(51)【国際特許分類】
   A01B 59/042 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A01B59/042 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211638
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098224
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年6月21日に杉原敦、東大輔が株式会社ひがし北海道TMRセンターで行った性能試験
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 大輔
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 泰博
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-000013(JP,A)
【文献】特開2019-122291(JP,A)
【文献】特開2009-183310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0151892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 59/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターの後部左右のロアリンクの間で被牽引装置を連結させるトラクターへの連結構造において、
前記左右のロアリンクの間に設けられ、当該ロアリンクの後端部よりも前方側に後端部が位置する連結部と、
当該連結部に回動可能に取り付けられ、前記ロアリンクの後端部よりも前方側の位置において、当該連結部から前記ロアリンクよりも上方に上端部を位置させた縦アームと、
当該縦アームから後方に向けて設けられたメインアームと、を備え、
当該メインアームを用いて被牽引装置を連結させるようにしたことを特徴とするトラクターへの連結構造。
【請求項2】
前記被牽引装置が、独自にタイヤを有し、トラクターの駆動によって旋回可能に走行するものである請求項1に記載のトラクターへの連結構造。
【請求項3】
前記縦アームが、前記連結部に設けられたピンに対して軸受部材を介して、前記連結部に回動可能に連結されるものである請求項1に記載のトラクターへの連結構造。
【請求項4】
前記縦アームが、前記連結部に設けられたピンに対して軸受部材を介して、前記連結部に回動可能に連結されるものであり、
当該軸受部材が、前記縦アームに対して高さ位置を調整して取り付けられる調整部を介して取り付けられるものである請求項1に記載のトラクターへの連結構造。
【請求項5】
前記縦アームに、トラクターからの油圧ホースを通す開口部を設けた請求項1に記載のトラクターへの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターに農作業装置などの被牽引装置(以下、「被牽引装置」と称する)を連結させる構造に関するものであり、より詳しくは、トラクターのロアリンクへの干渉を防止できるようにしたトラクターへの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクターには、粗飼料を収容する運搬装置などの被牽引装置が連結され、その被牽引装置を用いて農作業が行われるようになっている(特許文献1など)。
【0003】
ところで、このようなトラクターに、粗飼料を収容する運搬装置などのような比較的大きな被牽引装置を連結させる場合、トラクターの後部中央に設けられた連結部に被牽引装置を連結させ、その被牽引装置に設けられたタイヤによってトラクターに追従させながら作業を行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-111036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように被牽引装置を連結させて作業を行う場合、次のような問題を生ずる。
【0006】
具体的には、トラクターの後部には、図5に示すように、中央下部に設けられた連結部51と、その連結部51の左右両側のほぼ同じ高さ位置に設けられたロアリンク54を有するようになっており、大きい運搬装置1aなどを連結させてトラクターに追従させる場合は、連結部51に運搬装置1aを連結し、また、小型の肥料散布機(図示せず)などを連結させて筋状に肥料を散布する場合は、ロアリンク54に連結させて肥料散布機を持ち上げた状態で作業させるようにしている。しかるに、これらの連結部51やロアリンク54は、ほぼ同じ高さ位置に設けられているため(図6の状態)、中央の連結部51に運搬装置1aを連結させて旋回する際、図7に示すように、運搬装置1aのメインアーム2aがロアリンク54に干渉してしまう。そのため、従来では、連結部51に運搬装置1aを連結させる際には、事前に、ロアリンク54を持ち上げてメインアーム2aと干渉させないようにしているが、このようにすると、ロアリンク54を下降させておく作業が面倒になるという問題があるばかりでなく、急勾配の斜面から平地にトラクターが移動する場合、下降させたロアリンク54が地面に接触してしまうという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、トラクターの後部中央に設けられた連結部に被牽引装置を連結する際に、左右に設けられたロアリンクと干渉させないようにしたトラクターへの連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、トラクターの後部左右のロアリンクの間で被牽引装置を連結させるトラクターへの連結構造において、前記左右のロアリンクの間に設けられ、当該ロアリンクの後端部よりも前方側に後端部が位置する連結部と、当該連結部に回動可能に取り付けられ、前記ロアリンクの後端部よりも前方側の位置で、当該連結部から前記ロアリンクよりも上方に上端部を位置させた縦アームと、当該縦アームから後方に向けて設けられたメインアームと、を備え、当該メインアームを用いて被牽引装置を連結させるように構成したものである。
【0009】
また、このような発明において、前記被牽引装置として、独自にタイヤを有し、トラクターの駆動によって旋回可能に走行するものを用いる。
【0010】
さらに、前記縦アームを、前記連結部に設けられたピンに対して軸受部材を介して、前記連結部に回動可能に連結させるようにする。
【0011】
また、前記縦アームを、前記連結部に設けられたピンに対して軸受部材を介して、前記連結部に回動可能に連結させるとともに、当該軸受部材を、前記縦アームに対して高さ位置を調整して取り付けられる調整部を介して取り付けられるようにする。
【0012】
また、前記縦アームに、トラクターからの油圧ホースを通す開口部を設けるようにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被牽引装置が旋回するような場合であっても、被牽引装置のメインアームがロアリンクに干渉してしまうようなことがなくなる。また、ロアリンクを常に下げておく必要がないため、急勾配の斜面から平地にトラクターが移動するような場合であっても、ロアリンクが地面に接触するようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態を示すトラクターと運搬装置(被牽引装置)を連結させた状態を示す図
図2】同形態におけるトラクターの連結部分近傍を示す図
図3】同形態における軸受部材と縦アームとメインアームを示す正面図
図4】同形態における旋回時におけるロアリンクとメインアームの関係を示す図
図5】同形態におけるトラクターの後部を示す図
図6】従来例におけるトラクターと運搬装置を連結させた状態図
図7】従来例における旋回時におけるロアリンクとの干渉状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態におけるトラクター5への連結構造について図面を参照しながら説明する。
【0016】
この実施の形態におけるトラクター5への連結構造は、図5に示すように、後部に連結部51を有するトラクター5に、縦長状の被牽引装置1を連結させて、その被牽引装置1のタイヤによって追従できるようにしたものであって、図1から図3に示すように、トラクター5の後部に設けられた連結部51に旋回可能に取り付けられる軸受部材4と、この軸受部材4から鉛直方向に沿って設けられる縦アーム3と、この縦アーム3から略水平方向に設けられたメインアーム2とを備え、このメインアーム2を用いて被牽引装置1を牽引できるようにしたものである。そして、このように構成することによって、小さく旋回する場合であっても、図4に示すように、連結部51の左右に設けられたロアリンク54をメインアーム2の下方をくぐらせて、メインアーム2をロアリンク54に干渉させないようにしたものである。以下、本実施の形態における連結構造について詳細に説明する。
【0017】
まず、この被牽引装置1は、図1に示すように、独自のタイヤを有する縦長状に構成されるものであって、トラクター5の連結部51(図5参照)を中心に旋回可能に連結されるものが用いられる。このような被牽引装置1としては、例えば、荷箱を有する運搬装置や、堆肥散布機、ロールベーラー、ロールベールのラッピング装置などが一例として挙げられるが、ここでは、荷箱を有する運搬装置を例に挙げて説明する。
【0018】
この被牽引装置1の前方には、トラクター5側に向けて延出させた中空状のメインアーム2が設けられる。このメインアーム2は、この実施の形態においては、略水平方向に設けられるものを用いるが、若干傾斜したアームを有するものなど、種々の形状をしたものを用いることができる。そして、このメインアーム2を用いて、被牽引装置1のベースフレームを牽引できるようにしている。なお、ここでメインアーム2を水平方向に設けた場合、後述する縦アーム3の上部にメインアーム2を取り付けるようにしているため、ベースフレームの位置が地面に対して高くなってしまい、不安定になる可能性がある。そのため、被牽引装置1のベースフレームを下方に位置させるようにメインアーム2をベースフレームに接続するか、あるいは、ベースフレームを高い位置に設けておき、被牽引装置1の荷箱などの重量物の重心を下げるように取り付けるようにするとよい。
【0019】
このメインアーム2の先端には、下方に向けて屈曲する縦アーム3が設けられる。この縦アーム3は、前後方向の幅がロアリンク54の長さよりも短くなるように(好ましくは、ロアリンク54の長さの30%から70%の範囲内に)設けられており、その上側部分をメインアーム2に溶接で取り付けるようにしている。そして、このようにすることによって、重い被牽引装置1を牽引する際に、縦アーム3とメインアーム2との屈曲部分に掛かる大きなモーメントに耐えられるようにしている。なお、ここでは、縦アーム3とメインアーム2とを溶着させようにしているが、図示しないボルトとナットなどを用いて強固に取り付けるようにしてもよい。この場合、牽引時に掛かるモーメントに耐えられるようにするために、縦アーム3とメインアーム2とを、少なくとも前後および上下2箇所以上固定するようにするとよい。
【0020】
また、この縦アーム3の前面(トラクター5側の面)の上方には、図3に示すように、メインアーム2の中空部と連通する開口部32が設けられる。この開口部32は、トラクター5の油圧ホースなどを通すことができるようにしたもので、これによって、旋回時に油圧ホースなどを連結部分に挟み込ませないようにしている。
【0021】
一方、この縦アーム3の下方部分には、トラクター5の連結部51に連結される軸受部材4を取り付ける軸受部材取付部33が設けられる。この軸受部材取付部33は、軸受部材4の側壁に設けられた穴と縦アーム3の側壁31に設けられた穴にボルトやナットを通して取り付けられるもので、ここでは、調整部34を用いて、軸受部材4の高さを調整して取り付けられるようにしている。この調整部34は、左右の側壁31に上下方向に沿った間欠的な穴41を設けておき、左右の側壁31の間に軸受部材4を取り付けて、ボルトやナットで固定できるようにしている。そして、このように高さ位置を調整して取り付けることで、被牽引装置1を略水平な状態にできるようにしている。このように被牽引装置1を略水平な状態にすることができれば、旋回時に、被牽引装置1を水平面内で旋回させることができ、連結部51に取り付けられたピン53に過度な負担を掛けることがなくなる。
【0022】
この軸受部材4は、トラクター5の後部に設けられた連結部51に連結されるものであって、その連結部51に設けられた穴52との間にピン53を装着し、そのピン53を中心に旋回できるように構成される。なお、この軸受部材4で被牽引装置1を旋回させる場合、被牽引装置1が上下方向に揺れながら旋回する場合もあるため、軸受部材4の穴41はピン53に対して若干大きくなるようにしておく。
【0023】
次に、このように構成された被牽引装置1をトラクター5の連結部51に連結させる際の工程および、連結させて牽引する際の作用について説明する。
【0024】
まず、被牽引装置1をトラクター5に連結させる場合、被牽引装置1とトラクター5とを接近させ、被牽引装置1のメインアーム2を持ち上げる。
【0025】
そして、被牽引装置1が略水平となる状態の位置に、軸受部材4の高さ位置を設定して軸受部材4を縦アーム3に取り付ける。
【0026】
そして、そのように軸受部材4を取り付けた状態で、さらに被牽引装置1とトラクター5とを接近させ、軸受部材4の穴41と、トラクター5の連結部51の穴52にピン53を差し込んで抜けないように固定する。
【0027】
このように被牽引装置1をピン53で連結させた状態においては、図1に示すように、トラクター5のロアリンク54がメインアーム2の下側に位置することになり、また、左右のロアリンク54の基端部側にのみ軸受部材4や縦アーム3が存在することになる。
【0028】
このような状況のもと、被牽引装置1を牽引させて作業を行う場合、旋回時には、図4に示すように、メインアーム2が旋回方向に回動することになるが、このとき、ロアリンク54がその下方を潜るように設けられているため(図4の破線部分)、ロアリンク54とメインターム2が干渉することがなくなる。
【0029】
一方、連結部51の近傍には、軸受部材4や縦アーム3が設けられているが、縦アーム3は、左右のロアリンク54よりも短くなるように設けられているため、極端に大きな角度に旋回する場合を除いて、ロアリンク54に干渉することがなくなる。
【0030】
このように上記実施の形態によれば、トラクター5の後部左右のロアリンク54の間で被牽引装置1を連結させるトラクター5への連結構造において、前記左右のロアリンク54の間に設けられ、当該ロアリンク54の後端部よりも前方側に後端部が位置する連結部51と、当該連結部51に回動可能に取り付けられ、前記ロアリンク54の後端部よりも前方側の位置で、当該連結部51から前記ロアリンク54よりも上方に上端部を位置させた縦アーム3と、当該縦アーム3から後方に向けて設けられたメインアーム2と、を備え、当該メインアーム2を用いて被牽引装置1を連結させるようにしたので、被牽引装置1が旋回するような場合であっても、被牽引装置1のメインアーム2がロアリンク54に干渉してしまうようなことがなくなる。また、ロアリンクを常に下げておく必要がないため、急勾配の斜面から平地にトラクターが移動するような場合であっても、ロアリンク54が地面に接触するようなことがなくなる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、縦アーム3と軸受部材4とを分けた部材として説明したが、これらを一体化した部材として用いるようにしてもよい。また、同様に、縦アーム3とメインアーム2とを分けて説明したが、これらを一体化してもよい。この場合において、本発明との関係において、縦アーム3およびメインアーム2という用語は、アームの一部分の名称として理解される。
【0033】
また、上記実施の形態では、縦アーム3を鉛直方向に向かうように設けるようにしたが、ロアリンク54に干渉しない範囲内で、上方に傾斜あるいは湾曲して設けるようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態では、メインアーム2を略水平に設けるようにしたが、被牽引装置1の重心が高くなる場合は、縦アーム3から下方に向かうように傾斜させ、ロアリンク54に干渉しないような位置で被牽引装置1を牽引させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・・被牽引装置
2・・・メインアーム
3・・・縦アーム
31・・・側壁
32・・・開口部
33・・・軸受部材取付部
34・・・調整部
4・・・軸受部材
41・・・穴
5・・・トラクター
51・・・連結部
52・・・穴
53・・・ピン
54・・・ロアリンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7