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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】接合部品
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/14 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B23K1/14 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021020200
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122752
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】永川 俊
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-138041(JP,A)
【文献】特開2008-302415(JP,A)
【文献】特開2017-136617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、前記第一部材に接合されている第二部材と、を備える接合部品であって、
前記第一部材は、第一中央領域、及び前記第一中央領域を囲んでいる第一外側領域を含む第一領域を有し、
前記第二部材は、第二中央領域、及び前記第二中央領域を囲んでいる第二外側領域を含む第二領域を有し、
前記第一中央領域と前記第二中央領域とは、互いにロウ付けされることなく互いの間に空間を形成しており、
前記第一外側領域と前記第二外側領域とは、互いにロウ付けされており、
前記第一外側領域は、
前記第一外側領域の内縁側から外縁側に向かって放射状に延びている複数の第一溝と、
前記複数の第一溝の各々における前記外縁側の端部同士をつないでいる枠状の第二溝と、
前記第一外側領域の外縁に設けられて前記第二溝を囲んでいる枠状の第三溝と、
前記第二溝と前記第三溝とに連通するように設けられている第四溝と、
前記複数の第一溝の間に設けられている第一内側平面と、
前記第二溝と前記第三溝と前記第四溝との間に設けられている第一外側平面と、を有する、
接合部品。
【請求項2】
前記第一中央領域は、前記第二中央領域に向かって突出する台座部を有し、
前記台座部の端面の位置は、前記第一内側平面よりも高い位置にあり、
前記第二中央領域は、前記台座部に対応する箇所に設けられている孔部又は凹部を有する請求項1に記載の接合部品。
【請求項3】
前記第一部材は、
環状の第一の板部と、
前記第一の板部の周方向に間隔をあけて配置されている柱状の複数の脚部と、を有し、
前記第二部材は、環状の第二の板部を有し、
前記複数の脚部の各々は、
前記第一の板部につながっている側面と、
前記側面の前記第一の板部につながっている側とは反対側の端部につながっている端面と、を有し、
前記端面は、前記第一領域で構成され、
前記第二の板部は、
前記第二の板部の周方向に間隔をあけて設けられている複数の前記第二領域と、
周方向に隣り合う前記第二領域の間のうち、可動部材が配置される第三領域と、
周方向に隣り合う前記第二領域の間のうち、可動部材が配置されない第四領域と、を有し、
前記第四溝は、前記第一外側領域における前記第四領域側又は前記第一の板部の外周側に向かって延びている請求項1又は請求項2に記載の接合部品。
【請求項4】
前記第四溝は、前記複数の第一溝のうち一つの溝と同一直線上に設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合部品。
【請求項5】
前記複数の第一溝の各々における幅は、長手方向に一様である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラネタリキャリアである接合部品を開示している。この接合部品は、第一部材と第二部材とを備える。第一部材は、円環状のプレートで構成されている。第一部材は、第一の接合面を有する。第二部材は、円環状のプレートと柱状の複数のブリッジ部とで構成されている。各ブリッジ部は、円環状のプレートの下面につながっている。各ブリッジ部の端面は、第二の接合面で構成されている。第一の接合面と第二の接合面とは、ロウ付けされている。このロウ付けによって、第一部材と第二部材とが接合されている。
【0003】
第一の接合面は、放射状に延びる誘導溝を有する。第二の接合面は、第二の接合面の周縁に沿って面取りが形成されている。誘導溝の終端部は、面取り部に重なる。誘導溝は、製造過程において、溶融したロウ材が流れる。この誘導溝を流れたロウ材は、第一の接合面と第二の接合面との間に浸透する。面取り部は、誘導溝を流れたロウ材を溜める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/031210号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した誘導溝では、製造過程において、溶融したロウ材を第一の接合面と第二の接合面との間の広範囲に行き渡らせることが難しい。ロウ材を行き渡らせ難いことで、溶融したロウ材が第一の接合面と第二の接合面との間の外に溢れ難い。特に、上述したように、面取りは溶融したロウ材を溜めるため、ロウ材がより一層溢れ難い。よって、ロウ材が溶融したことを把握することが難しい。
【0006】
本開示は、第一部材と第二部材との接合強度に優れる上に、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる接合部品を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の接合部品は、第一部材と、前記第一部材に接合されている第二部材と、を備える接合部品であって、前記第一部材は、第一中央領域、及び前記第一中央領域を囲んでいる第一外側領域を含む第一領域を有し、前記第二部材は、第二中央領域、及び前記第二中央領域を囲んでいる第二外側領域を含む第二領域を有し、前記第一中央領域と前記第二中央領域とは、互いにロウ付けされることなく互いの間に空間を形成しており、前記第一外側領域と前記第二外側領域とは、互いにロウ付けされており、前記第一外側領域は、前記第一外側領域の内縁側から外縁側に向かって放射状に延びている複数の第一溝と、前記複数の第一溝の各々における前記外縁側の端部同士をつないでいる枠状の第二溝と、前記第一外側領域の外縁に設けられて前記第二溝を囲んでいる枠状の第三溝と、前記第二溝と前記第三溝とに連通するように設けられている第四溝と、前記複数の前記第一溝の間に設けられている第一内側平面と、前記第二溝と前記第三溝と前記第四溝との間に設けられている第一外側平面と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の接合部品は、第一部材と第二部材との接合強度に優れる上に、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る接合部品の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る接合部品に備わる第一部材と第二部材とを分解して示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る接合部品に備わる第一部材と第二部材とを分解して示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る接合部品に備わる第一領域を模式的に示す平面図である。
図5図5は、実施形態に係る接合部品に備わる第一領域の溝及び平面のレイアウトを模式的に示す平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面図である。
図7図7は、実施形態に係る接合部品に備わる第一領域と第二領域との間の外に溢れたロウ材を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、変形例に係る接合部品に備わる第一領域の溝及び平面のレイアウトを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る接合部品は、第一部材と、前記第一部材に接合されている第二部材と、を備える接合部品であって、前記第一部材は、第一中央領域、及び前記第一中央領域を囲んでいる第一外側領域を含む第一領域を有し、前記第二部材は、第二中央領域、及び前記第二中央領域を囲んでいる第二外側領域を含む第二領域を有し、前記第一中央領域と前記第二中央領域とは、互いにロウ付けされることなく互いの間に空間を形成しており、前記第一外側領域と前記第二外側領域とは、互いにロウ付けされており、前記第一外側領域は、前記第一外側領域の内縁側から外縁側に向かって放射状に延びている複数の第一溝と、前記複数の第一溝の各々における前記外縁側の端部同士をつないでいる枠状の第二溝と、前記第一外側領域の外縁に設けられて前記第二溝を囲んでいる枠状の第三溝と、前記第二溝と前記第三溝とに連通するように設けられている第四溝と、前記複数の第一溝の間に設けられている第一内側平面と、前記第二溝と前記第三溝と前記第四溝との間に設けられている第一外側平面と、を有する。
【0012】
本開示の接合部品は、第一部材と第二部材との接合強度に優れる。接合部品の製造過程では、第一中央領域と第二中央領域との間に配置されたロウ材を溶融させる。第一領域が第一溝から第四溝を有することで、製造過程において、溶融したロウ材が各溝に沿って第一領域の広範囲に広がり易い。そのため、溶融したロウ材が各溝から第一内側平面と第二外側領域との間、及び第一外側平面と第二外側領域との間に行きわたり易い。そのため、溶融したロウ材が第一外側領域と第二外側領域との間の広範囲に行き渡り易い。よって、第一外側領域と第二外側領域とが広範囲にわたってロウ付けされ易い。
【0013】
本開示の接合部品は、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。製造過程において、溶融したロウ材は、第三溝の外側に溢れ易い。溢れたロウ材は、固化することで溢れた箇所に残る。よって、溢れて固化したロウ材を目視できる。
【0014】
(2)上記接合部品の一形態として、前記第一中央領域は、前記第二中央領域に向かって突出する台座部を有し、前記台座部の端面の位置は、前記第一内側平面よりも高い位置にあり、前記第二中央領域は、前記台座部に対応する箇所に設けられている孔部又は凹部を有することが挙げられる。
【0015】
上記接合部品は、第一部材と第二部材との接合強度により一層優れる。台座部を有することで、製造過程において、溶融したロウ材が重力によって第一外側領域と第二外側領域との間の広範囲に行きわたり易いからである。
【0016】
(3)上記接合部品の一形態として、前記第一部材は、環状の第一の板部と、前記第一の板部の周方向に間隔をあけて配置されている柱状の複数の脚部と、を有し、前記第二部材は、環状の第二の板部を有し、前記複数の脚部の各々は、前記第一の板部につながっている側面と、前記側面の前記第一の板部につながる側とは反対側の端部につながる端面と、を有し、前記端面は、前記第一領域で構成され、前記第二の板部は、前記第二の板部の周方向に間隔をあけて設けられている複数の前記第二領域と、周方向に隣り合う前記第二領域の間のうち、可動部材が配置される第三領域と、周方向に隣り合う前記第二領域の間のうち、可動部材が配置されない第四領域と、を有し、前記第四溝は、前記第一外側領域における前記第四領域側又は前記第一の板部の外周側に向かって延びていることが挙げられる。
【0017】
上記接合部品は、ロウ材が可動部材の動作を妨げることなく、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。製造過程において、溶融したロウ材は、可動部材が配置される第三領域に溢れ難く、可動部材が配置されない第四領域と第一の板部の外周側とに溢れ易いからである。可動部材は、接合部材に対して動く部材である。可動部材の一例としては、回転部材が挙げられる。
【0018】
(4)上記接合部品の一形態として、前記第四溝は、前記複数の第一溝のうち一つの溝と同一直線上に設けられていることが挙げられる。
【0019】
上記接合部品は、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。第一溝と第四溝とが同一直線上に設けられていることで、製造過程において、溶融したロウ材が第三溝のうち第四溝がつながる箇所を起点として、第三溝のうち主として第四溝と交差する辺から第一外側領域と第二外側領域との間の外に溢れ易いからである。
【0020】
(5)上記接合部品の一形態として、前記複数の第一溝の各々における幅は、長手方向に一様であることが挙げられる。
【0021】
上記接合部品は、第一部材と第二部材との接合強度により一層優れる。各第一溝の幅が長手方向に一様であることで、製造過程において、溶融したロウ材が第一溝の長手方向に均等に流れるため、第一溝を流れるロウ材が第一内側平面と第二外側領域との間に流れ易いからである。
【0022】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法関係等を表すものではない。
【0023】
《実施形態》
〔接合部品〕
図1から図7を参照して、実施形態に係る接合部品1を説明する。本形態の接合部品1は、図1に示すように、第一部材10と第二部材20とを備える。第一部材10と第二部材20とは接合されている。第一部材10は、図2図4に示すように、第一領域15を有する。第一領域15は、図4に示すように、第一中央領域16と第一外側領域17とを含む。第二部材20は、図3に示すように、第二領域25を有する。第二領域25は、第二中央領域26と第二外側領域27とを含む。第一中央領域16と第二中央領域26とは互いにロウ付けされることなく互いの間に空間を形成している。第一外側領域17と第二外側領域27とは互いにロウ付けされている。本形態の接合部品1の特徴の一つは、図5に示すように、第一外側領域17が特定の第一溝171、第二溝172、第三溝173、第四溝174、第一内側平面175、及び第一外側平面176を有している点にある。
【0024】
以下、各構成を詳細に説明する。以下の実施形態では、接合部品1がプラネタリキャリアである場合を例に説明する。プラネタリキャリアである接合部品1は、本形態では、図1に示すように、第一部材10が環状の第一の板部11と柱状の複数の脚部12とを有し、第二部材20が環状の第二の板部21を有する。
【0025】
[第一部材]
第一部材10は、図1に示すように、第二部材20と接合されている。第一部材10は、図1から図3に示すように、第一の板部11と複数の脚部12とを有する。第一の板部11と複数の脚部12とは、一体成形されている。一体成形されたとは、ねじなどを用いた機械的な接続や、ロウ材などによる接合がされることなく、第一の板部11と複数の脚部12とが一連に形成されていることをいう。第一部材10の材質、及び種類は、特に限定されず、適宜選択できる。第一部材10の材質は、例えば、純鉄、鉄合金、又は非鉄金属が挙げられる。第一部材10の種類は、例えば、焼結体が挙げられる。焼結体は、圧粉成形体を焼結したものである。圧粉成形体は、原料粉末を加圧成形したものである。原料粉末には、上記材質の粉末が利用できる。第一部材10は、本形態では、鉄合金からなる焼結体で構成されている。
【0026】
(第一の板部)
第一の板部11の外形は、扁平な環状であれば特に限定されず、適宜選択できる。第一の板部11の外形は、本形態では円環状である。本形態とは異なり、第一の板部11の外形は、三角環状であってもよい。第一の板部11は、第一表面111と第一裏面112とを有する。第一表面111は、第一裏面112とは反対側に位置する。第一裏面112は、後述する第二の板部21の第二裏面212に向かい合っている。本形態では、第一表面111と第一裏面112とは、平面状である。第一表面111と第一裏面112とは、平面に限定されるわけではない。本形態とは異なり、第一表面111と第一裏面112とには、凹凸が設けられていてもよい。第一の板部11は、第一孔部113を有する。
【0027】
〈第一孔部〉
第一孔部113は、第一の板部11の厚み方向に貫通する貫通孔である。厚みとは、第一表面111と第一裏面112との間の長さである。即ち、第一の板部11の厚み方向とは、第一表面111と第一裏面112とが向かい合う方向に沿った方向である。第一孔部113の内周形状は、本形態では、円筒状である。本形態のように接合部品1がプラネタリキャリアを構築する場合、第一孔部113の数はピニオンギヤの数と同数であることが挙げられる。この場合、第一孔部113には、ピニオンギヤのシャフトが挿通される。このピニオンギヤが可動部材の一例である。第一孔部113の数は、本形態では3つである。3つの第一孔部113は、第一の板部11の中心を中心とする円周上に並列されている。第一の板部11の中心は、第一の板部11の外接円の中心をいう。3つの第一孔部113は、本形態では、上記円周上に実質的に等間隔に設けられている。
【0028】
(脚部)
脚部12は、第一の板部11の第一裏面112と後述する第二の板部21の第二裏面212との間に所定の間隔を設ける。脚部12の側面121は、第一の板部11の第一裏面112につながっている。図2に示す脚部12の端面122は、図1に示すように、第二の板部21の第二裏面212にロウ付けされている。脚部12の数は、特に限定されず、適宜選択できる。脚部12の数は、複数が挙げられる。脚部12の数は、本形態では6本である。6本の脚部12は、第一の板部11の中心を中心とする円周上に並列されている。本形態では、6本の脚部12は、図1図2に示すように、周方向に隣り合う脚部12の間の間隔が広い箇所と上記間隔が狭い箇所とが交互に並ぶように、上記円周上に設けられている。周方向に隣り合う脚部12のうち、第一孔部113を周方向に挟む脚部12同士の間隔が広くなるように、脚部12が設けられている。
【0029】
各脚部12の形状は、特に限定されず、適宜選択できる。各脚部12の形状は、例えば、三角柱状や四角柱状などが挙げられる。即ち、脚部12の端面122の平面形状は、三角形状や四角形状などが挙げられる。「角柱状」や「角形状」には、角部に丸みを有する形状が含まれる。三角形としては、正三角形又は二等辺三角形などが挙げられる。四角形としては、台形、正方形、又は長方形などが挙げられる。
【0030】
本形態では、各脚部12の形状は、図2に示すように、台形柱状である。即ち、各脚部12の端面122の平面形状は、台形状である。各脚部12の幅は、第一の板部11の径方向の外周側から内周側に向かって狭くなっている。
【0031】
(第一領域)
第一領域15は、本形態では、図2に示すように、各脚部12の端面122に構成されている。図2は、第一領域15を簡略化して示している。第一領域15の平面形状は、脚部12の端面122の形状に対応した形状が挙げられる。本形態では、第一領域15の平面形状は、台形状である。第一領域15は、図4に示すように、第一中央領域16、及び第一外側領域17を含む。
【0032】
〈第一中央領域〉
第一中央領域16は、図3を参照して後述する第二領域25の第二中央領域26にロウ付けされることなく第二中央領域26との間に空間を形成している。即ち、第一中央領域16は、非接合領域である。この空間は、製造過程において、第一のロウ材91を収容する空間として利用される。第一中央領域16は、製造過程を経て第一部材10と第二部材20とが接合されると、後述する孔部261の内周面で囲まれる領域である。第一中央領域16は、第一領域15の中央に設けられている。第一中央領域16の輪郭形状は、第二中央領域26の輪郭形状に対応した形状である。本形態の第一中央領域16の輪郭形状は、円形状である。ここでいう「円形状」には、真円又は楕円などが含まれる。第一中央領域16は、図5を参照して後述する第一内側平面175の一部及び後述する第一溝171の一部を有する。第一中央領域16は、更に、図5図6に示すように、台座部161を有することが好ましい。図6は、図5のVI-VI断面図であるが、説明の便宜上、第二の板部21を示している。
【0033】
・台座部
台座部161は、接合部品1の製造過程において、第一のロウ材91が配置される。第一のロウ材91は、溶融前のロウ材である。第一のロウ材91は、図6では二点鎖線で示している。台座部161は、図6に示すように、第二中央領域26に向かって突出している。この台座部161は、製造過程において、溶融したロウ材を重力によって流れ易くする。そのため、溶融したロウ材は、第一外側領域17と第二外側領域27との間に流れ易い。
【0034】
台座部161の形状は、円柱状、円錐台状、角柱状、角錐台などが挙げられる。ここでいう「円」又は「角」は、台座部161の輪郭形状が上述した「円形状」又は後述する「角形状」であることが挙げられる。本形態では、台座部161の形状は、円柱状である。
【0035】
台座部161の側面162は、第一内側平面175及び第一溝171の底につながっている。台座部161の端面163は、側面162の第一内側平面175につながっている側とは反対側の端部につながっている。端面163の位置は、第一内側平面175の位置よりも高い位置にある。高い位置にあるとは、第二中央領域26側にあることをいう。
【0036】
台座部161の高さは、例えば、0.01mm以上0.50mm以下が挙げられる。台座部161の高さとは、第一内側平面175と端面163との間の長さを言う。台座部161の高さが0.01mm以上であれば、製造過程において、溶融したロウ材が重力によって流れ易い。台座部161の高さが0.50mm以下であれば、製造過程において、少ない量のロウ材で溶融したロウ材が素早くかつ第一外側領域17と第二外側領域27との間の広範囲に行きわたり易い。台座部161の高さは、更に0.05mm以上0.30mm以下が挙げられ、特に0.05mm以上0.15mm以下が挙げられる。
【0037】
〈第一外側領域〉
図4に示す第一外側領域17は、図3に示す第二領域25の第二外側領域27にロウ付けされている。即ち、第一外側領域17は、接合領域である。第一外側領域17は、第一中央領域16を囲んでいる。第一外側領域17は、第一中央領域16につらなっている。第一外側領域17の内縁は、第一中央領域16との境界である。第一外側領域17の外縁は、第一領域15の外縁である。第一外側領域17は、図5に示すように、第一溝171、第二溝172、第三溝173、第四溝174、第一内側平面175、及び第一外側平面176を有する。
【0038】
・第一溝
第一溝171は、製造過程において、溶融したロウ材が流れ込むと共に、流れ込んだロウ材を第一内側平面175に拡散させる。また、第一溝171は、流れ込んだロウ材を第二溝172に流通させる。この第一溝171には、図6に示すように、第二のロウ材92が残っている。第二のロウ材92は、溶融後に流れ込んで固化したロウ材である。
【0039】
第一溝171は、第一外側領域17の内縁側から外縁側に向かって放射状に延びている。本形態では、各第一溝171は、第一中央領域16内から第一外側領域17の外縁側にわたって設けられている。本形態では、各第一溝171の第一端部は、図6に示すように、第一中央領域16の台座部161の側面162につながっている。即ち、各第一溝171の第一端部は、台座部161の側面162によって閉塞されている。各第一溝171の第二端部は、図5に示すように、第二溝172に連通している。即ち、各第一溝171の第二端部は、開放されている。第一溝171の第一端部とは、第一外側領域17の内縁側の端部である。第一溝171の第二端部とは、第一外側領域17の外縁側の端部である。各第一溝171は、底面と両側壁面と第一端壁面とを有する。第一端壁面が、台座部161の側面162で構成されている。
【0040】
第一溝171の数は、複数であれば特に限定されず、適宜選択できる。第一溝171の数は、例えば、3本、4本、6本、又は8本などが挙げられる。周方向に隣り合う第一溝171同士のなす角は、均等であってもよい。周方向に隣り合う第一溝171同士のなす角のうち、少なくとも1つのなす角が他のなす角と異なっていてもよい。
【0041】
本形態では、第一溝171の数は、4本である。4本の第一溝171は、クロス状に設けられている。本形態では、1本目及び2本目の第一溝171は、第一の板部11の径方向に沿っている。即ち、1本目及び2本目の第一溝171は、直線状の溝である。図5の紙面上下方向が、第一の板部11の径方向である。図5の紙面上方向が第一の板部11の内周側である。図5の紙面下方向が第一の板部11の外周側である。3本目及び4本目の第一溝171は、第一の板部11の周方向に沿っている。即ち、3本目及び4本目の第一溝171は、円弧状の溝である。本形態とは異なり、3本目及び4本目の第一溝171は1本目及び2本目の第一溝171に直交する方向に沿っていてもよい。1本目の第一溝171は、第一の板部11の径方向に沿って、台座部161から第一の板部11の内周側に向かって延びている。2本目の第一溝171は、第一の板部11の径方向に沿って、台座部161から第一の板部11の外周側に向かって延びている。3本目の第一溝171は、第一の板部11の周方向に沿って、台座部161から後述する第三領域30に向かって延びている。図5の紙面左側が第三領域30である。4本目の第一溝171は、第一の板部11の周方向に沿って、台座部161から後述する第四領域40に向かって延びている。図5の紙面右側が第四領域40である。4本の第一溝171の各々の第二端部は、後述する台形枠状の第二溝172の各辺の中間につながっている。
【0042】
本形態では、第一溝171の横断面形状は、幅が開口部から底部に向かって一様な四角形状である。本形態とは異なり、第一溝171の横断面形状は、開口部から底部に向かって徐々に狭まる台形状又は三角形状であってもよい。第一溝171の横断面形状とは、第一溝171の長手方向に直交する断面で第一溝171を切断した断面形状をいう。
【0043】
本形態では、第一溝171の深さは、長手方向に一様である。本形態とは異なり、第一溝171の深さは、長手方向に一様でなくてもよい。例えば、第一溝171の深さは、第一溝171の第一端部から第二端部に向かって徐々に深くなっていてもよい。第一溝171の深さとは、第一溝171の横断面において、第一溝171の底から開口部までの長さである。
【0044】
第一溝171の深さは、例えば、0.01mm以上0.50mm以下が挙げられる。深さが0.01mm以上である第一溝171には、製造過程において、溶融したロウ材が流れ易い。第一溝171の深さが0.50mm以下であれば、製造過程において、溶湯したロウ材が第一内側平面175に拡散し易い。その上、深さが0.50mm以下の第一溝171は、過大に深くないことで、第一のロウ材91を節約できる。第一溝171の深さは、更に0.05mm以上0.30mm以下が挙げられ、特に0.05mm以上0.15mm以下が挙げられる。
【0045】
本形態では、各第一溝171の開口幅は、長手方向に一様である。各第一溝171の幅が長手方向に一様であることで、製造過程において、溶融したロウ材が第一溝171の長手方向に均等に流れるため、第一溝171を流れるロウ材が第一内側平面175と第二外側領域27との間に流れ易い。本形態とは異なり、少なくとも1つの第一溝171の開口幅は、長手方向に一様でなくてもよい。例えば、第一溝171の開口幅は、第一端部から第二端部に向かって徐々に大きくなってもよい。第一溝171の開口幅とは、第一溝171の横断面における開口部の間の長さである。
【0046】
第一溝171の開口幅は、例えば、0.01mm以上0.50mm以下が挙げられる。開口幅が0.01mm以上である第一溝171には、製造過程において、溶融したロウ材が流れ易い。第一溝171の開口幅が0.50mm以下であれば、製造過程において、溶湯したロウ材が第一内側平面175に拡散し易い。その上、開口幅が0.50mm以下の第一溝171は、過大に幅広くないことで、第一のロウ材91を節約できる。第一溝171の開口幅は、更に0.05mm以上0.30mm以下が挙げられ、特に0.05mm以上0.15mm以下が挙げられる。
【0047】
・第二溝
第二溝172は、第一溝171と同様、製造過程において、溶融しているロウ材が流れ込むと共に、流れ込んだロウ材を第一内側平面175に拡散させる。また、第二溝172は、流れ込んだロウ材を第一外側平面176にも拡散させる。更に、第二溝172は、流れ込んだロウ材を第四溝174に流通させる。この第二溝172には、第一溝171と同様、第二のロウ材が残っている。第二溝172は、複数の第一溝171の各々における第二端部同士をつないでいる。第二溝172の配置箇所は、第一中央領域16の外縁と第一外側領域17の外縁との間である。第二溝172の配置箇所は、第一中央領域16の外縁と第一外側領域17の外縁との間の中間、又は中間よりも第一外側領域17の外縁側であることが好ましい。第二溝172の平面形状は、第一領域15の平面形状に対応した枠形状が挙げられる。本形態では、第二溝172の平面形状は、台形枠状である。第二溝172の横断面形状、深さ、及び幅は、第一溝171の横断面形状、深さ、及び幅と同じであってもよいし異なっていても良い。
【0048】
・第三溝
第三溝173は、第二溝172と同様、製造過程において、溶融しているロウ材が流れ込むと共に、流れ込んだロウ材を第一外側平面176に拡散させる溝である。この第三溝173には、第一溝171と同様、第二のロウ材が残っている。第三溝173は、第一外側領域17の外縁に設けられて第二溝172を囲んでいる。第三溝173の平面形状は、第一領域15の外縁の輪郭形状、即ち第一外側領域17の輪郭形状に対応した形状が挙げられる。本形態では、第三溝173の平面形状は、台形枠状である。第三溝173の横断面形状、深さ、及び幅は、第一溝171の横断面形状、深さ、及び幅と同じであってもよいし異なっていても良い。本形態では、第三溝173は、第一溝171とは異なり、底面と第一側壁とで構成されている。即ち、第三溝173は、面取りのようなものである。
【0049】
・第四溝
第四溝174は、第二溝172と第三溝173とをつないでいる溝である。第四溝174は、第一溝171と同様、製造過程において、溶融しているロウ材が流れ込むと共に、流れ込んだロウ材を第三溝173に流通させる。製造過程において、溶融しているロウ材は、第三溝173のうち第四溝174がつながる箇所を起点として、第三溝173のうち主として第四溝174と交差する辺から第一外側領域17と第二外側領域27との間の外に溢れ易い。そのため、本形態のように接合部品1がプラネタリキャリアを構築する場合、図示を省略するサンギヤが配置されない側又はピニオンギヤが配置されない側に第四溝174が延びるように第四溝174を設けることが好ましい。サンギヤは、第一の板部11の内周側に設けられる。このサンギヤが可動部材の一例である。ピニオンギヤは、周方向に隣り合う脚部12の間の間隔が広い箇所に設けられる。即ち、第四溝174は、第一の板部11の外周側、又は周方向に隣り合う脚部12の間の間隔が狭い箇所に向かって延びていることが好ましい。この第四溝174には、第一溝171と同様、第二のロウ材が残っている。
【0050】
第四溝174の数は、単数でもよいし、複数でもよい。本形態では、第四溝174の数は2本である。1本目の第四溝174は、第一の板部11の外周側に向かって延びている。この1本目の第四溝174は、上述した2本目の第一溝171と同一直線上に設けられている。即ち、1本目の第四溝174は、直線状の溝である。1本目の第四溝174の第一端部は、台形枠状の第二溝172の長い下辺の中間につながっている。1本目の第四溝174の第二端部は、台形枠状の第三溝173の長い下辺の中間につながっている。2本目の第四溝174は、後述する第四領域40側に向かって延びている。この2本目の第四溝174は、上述した4本目の第一溝171と同一直線上に設けられている。即ち、2本目の第四溝174は、円弧状の溝である。2本目の第四溝174の第一端部は、台形枠状の第二溝172の斜辺の中間につながっている。2本目の第四溝174の第二端部は、台形枠状の第三溝173の斜辺の中間につながっている。
【0051】
本形態では、上述したように、第四溝174は、第一溝171のうち一つの溝と同一直線上に設けられている。本形態とは異なり、第四溝174は、第一溝171のいずれの溝とも同一直線上にならないように設けられていてもよい。第一溝171と第四溝174とが同一直線上に設けられている方が、製造過程において、溶融したロウ材を第三溝173のうち第四溝174がつながる箇所を起点として第一外側領域17と第二外側領域27との間の外に溢れさせ易い。
【0052】
第四溝174の横断面形状、深さ、及び幅は、第一溝171の横断面形状、深さ、及び幅と同じであってもよいし異なっていても良い。
【0053】
・第一内側平面
第一内側平面175は、第一溝171と第二溝172とで囲まれる箇所に設けられている。第一内側平面175の数は、第一溝171の数に対応している。即ち、本形態の第一内側平面175の数は、4つである。各第一内側平面175の形状は、概略四角形状である。第一内側平面175の上には、図6に示すように、第二のロウ材92が残っている。
【0054】
・第一外側平面
第一外側平面176は、第二溝172と第三溝173と第四溝174とで囲まれる箇所に設けられている。第一外側平面176の数は、第四溝174の数に対応している。即ち、本形態の第一外側平面176の数は、2つである。第一外側平面176は、第一内側平面175と面一である。1つ目の第一外側平面176の形状は、C字状である。2つ面の第一外側平面176の形状は、L字状である。第一外側平面176の上には、第一内側平面175と同様、第二のロウ材が残っている。
【0055】
[第二部材]
第二部材20は、図1に示すように、第一部材10と接合されている。第二部材20の材質、及び種類は、上述の第一部材10の材質、及び種類と同様の材質、及び種類が挙げられる。第二部材20の材質、及び種類は、第一部材10の材質、及び種類と同じ材質、及び種類が好ましい。第二部材20は、本形態では、第一部材10と同じ鉄合金からなる焼結体で構成されている。第二部材20は、図1から図3に示すように、第二の板部21を有する。
【0056】
(第二の板部)
第二の板部21の外形は、第一の板部11と同様、扁平な環状であれば特に限定されず、適宜選択できる。本形態の第二の板部21の外形は、円環状である。本形態とは異なり、第二の板部21の外形は、三角環状であってもよい。第二の板部21は、第二表面211と第二裏面212とを有する。第二表面211は、第二裏面212側とは反対側に位置する。第二裏面212は、第一裏面112に向かい合っている。第二の板部21は、第二孔部213を有する。
【0057】
〈第二孔部〉
第二孔部213の軸は、図1に示すように、第一孔部113の軸と同軸である。即ち、第二孔部213の形成箇所は、第二の板部21における第一孔部113に臨む位置である。第二孔部213の数は、第一孔部113の数と同一であり、本形態では3つである。3つの第二孔部213は、本形態では、第二の板部21の中心を中心とする円周上に実質的に等間隔に設けられている。第二孔部213の種類は、貫通孔、又は止まり穴が挙げられる。貫通孔は、第二の板部21の厚み方向に貫通する。厚みとは、第二表面211と第二裏面212との間の長さである。即ち、第二の板部21の厚み方向とは、第二表面211と第二裏面212とが向かい合う方向に沿った方向である。一方、止まり穴は、底を有する穴である。止まり穴の開口部は、第二裏面212に設けられている。本形態の第二孔部213の種類は、貫通孔である。第二孔部213の内周形状は、本形態では、第一孔部113の内周形状と同じ円筒状である。第二孔部213の内径は、第一孔部113の内径と同一径である。
【0058】
(第二領域)
第二領域25は、図3に示すように、第二裏面212に設けられている。第二領域25の大きさは、第一領域15の大きさと同じ大きさである。第二領域25の平面形状は、第一領域15の平面形状に対応した形状である。本形態では、第二領域25の平面形状は、台形状である。第二領域25は、第二中央領域26、及び第二外側領域27を含む。
【0059】
〈第二中央領域〉
第二中央領域26は、第一中央領域16にロウ付けされることなく第一中央領域16との間に空間を形成している。即ち、第二中央領域26は、非接合領域である。第二中央領域26は、第二領域25の中央に設けられている。第二中央領域26の輪郭形状は、円形状又は角形状である。本形態の第二中央領域26の輪郭形状は、円形状である。
【0060】
本形態では、第二中央領域26は、孔部261を有する。本形態とは異なり、第二中央領域26は、凹部を有していてもよい。孔部261又は凹部は、台座部161に対応する箇所に設けられている。孔部261は、貫通孔である。凹部は、台座部161との間に間隔をあけて台座部161に向かい合う底面を有する。孔部261及び凹部は、図6に示すように、製造過程において、第一のロウ材91を収容する空間を形成する。孔部261は、製造過程において、第一のロウ材91を挿通させるために利用することもできる。孔部261又は凹部の開口部の内寸は、台座部161の外寸よりも大きい。孔部261又は凹部の開口部の輪郭形状は、円形状又は角形状が挙げられる。孔部261又は凹部の開口部の輪郭形状が第二中央領域26の輪郭形状を構成する。本形態では、孔部261の開口部の輪郭形状は、円形状である。凹部の深さは、台座部161の高さと第一のロウ材91の高さの合計高さを考慮して、適宜選択すればよい。
【0061】
〈第二外側領域〉
図3に示す第二外側領域27は、第一外側領域17にロウ付けされている。即ち、第二外側領域27は、接合領域である。第二外側領域27は、第二中央領域26を囲んでいる。第二外側領域27は、第二中央領域26につらなっている。第二外側領域27の内縁は、第二中央領域26との境界である。本形態では、第二外側領域27の内縁は、孔部261の開口部の輪郭である。第一外側領域17の外縁は、第二領域25の外縁である。本形態では、第二外側領域27は、平面で構成されている。本形態では、第二外側領域27には溝が設けられていない。
【0062】
(第三領域)
接合部品1は、図1から図3に示すように、第三領域30を有する。第三領域30は、図2に示すように第一の板部11の第一裏面112と、図3に示すように第二の板部21の第二裏面212とに設けられている。第三領域30は、図2に示す第一裏面112及び図3に示す第二裏面212の各々において、周方向に隣り合う脚部12同士の間のうち脚部12の間の間隔が広い箇所に設けられている。即ち、第三領域30は、ピニオンギヤが配置される領域である。
【0063】
(第四領域)
接合部品1は、図1から図3に示すように、第四領域40を有していてもよい。第四領域40は、図2に示すように第一の板部11の第一裏面112と、図3に示すように第二の板部21の第二裏面212とに設けられている。第四領域40は、第一裏面112及び第二裏面212の各々において、周方向に隣り合う脚部12同士の間のうち脚部12の間の間隔が狭い箇所に設けられている。即ち、第四領域40は、ピニオンギヤが配置されない領域である。
【0064】
[第二のロウ材]
上述したように、第一溝171、第二溝172、第三溝173、及び第四溝174の各溝の内部と、第一内側平面175、及び第一外側平面176の各平面の上とには、第二のロウ材92が残っている。第二のロウ材92は、第一外側領域17と第二外側領域27とを接合する。第二のロウ材92の量が多いほど、第一外側領域17と第二外側領域27との接合強度を高め易く、延いては第一部材10と第二部材20との接合強度を高め易い。第二のロウ材92は、各溝において、各溝の全長の80%以上の長さにわたって残っていることが好ましい。第二のロウ材92は、各溝において、各溝の全長の85%以上、更に各溝の全長の90%以上、特に各溝の全長の95%以上の長さにわたって残っている。第二のロウ材92は、各溝において、各溝の全長の100%、即ち各溝の全長にわたって残っていることが好ましい。第二のロウ材92は、各平面の上において、各平面の面積の80%以上の領域にわたって残っていることが好ましい。第二のロウ材92は、各平面の上において、各平面の面積の85%以上、更に各平面の面積の90%以上、特に各平面の面積の95%以上の領域にわたって残っていることが好ましい。第二のロウ材92は、各平面の上において、各平面の面積の100%、即ち各平面の全領域にわたって残っていることが好ましい。
【0065】
第二のロウ材92は、図7に示すように、第一領域15と第二領域25との間から溢れているはみ出し部921を有する。はみ出し部921を有することで、第一のロウ材91が溶融して第一外側領域17と第二外側領域27との間に流れたことを目視により把握することができる。そのため、第一のロウ材91が溶融したかを容易に確認できる。特に、第三溝173のうち第四溝174がつながる辺の広範囲からロウ材が溢れていることを目視できると、第一外側領域17と第二外側領域27との間の広範囲に行き渡っていることを確認できる。はみ出し部921は、本形態のように接合部品1がプラネタリキャリアを構築する場合、図示を省略するサンギヤが配置されない側又はピニオンギヤが配置されない側に設けられている。本形態では、はみ出し部921は、第二の板部21の第二裏面212における第四領域40、及び第二裏面212における第二領域25よりも第二の板部21の外周側に設けられている。はみ出し部921は、第二の板部21の第二裏面212における第三領域30、及び第二裏面212における第二領域25よりも第二の板部21の内周側には設けられていない。
【0066】
[製造方法]
本形態の接合部品1は、次のようにして製造できる。第一部材10の脚部12の端面122が上を向くように第一部材10を配置する。脚部12の端面122の上に第二の板部21を配置する。第二の板部21の配置は、端面122の第一領域15における台座部161が、第二裏面212の第二領域25における孔部261の内部に嵌まるように行う。そして、第一領域15における第一外側領域17と第二領域25における第二外側領域27とを接触させる。第一のロウ材91を台座部161の端面163の上に配置する。第一のロウ材91の配置は、第一のロウ材91を第二の板部21の第二表面211側から第二中央領域26の孔部261内に挿通させることで行える。本形態とは異なり、第二中央領域26が孔部261ではなく凹部を有する場合、第一のロウ材91を台座部161の端313面の上に配置した後、第二の板部21を脚部12の端面122の上に配置する。第一のロウ材91を溶融させる。第一のロウ材91の溶融には、加熱炉が利用できる。
【0067】
溶融したロウ材は、重力によって台座部161から第二中央領域26に望む第一内側平面175と第一溝171に流れる。第二中央領域26に望む第一内側平面175に流れたロウ材は、第一外側領域17の第一内側平面175と第二外側領域27との間に流れる。第一溝171に流れたロウ材は、第二溝172、第四溝174、第三溝173の順に流れる。第一溝171と第二溝172に流れたロウ材は、第一外側領域17の第一内側平面175と第二外側領域27との間に流れる。第二溝172、第四溝174、及び第三溝173に流れたロウ材は、第一外側平面176と第二外側領域27との間にも流れる。第三溝173のうち第四溝174につながる箇所を起点として、4辺からなる枠状の第三溝173のうち主として第四溝174と交差する辺に沿ってロウ材の一部が溢れ出る。その状態で、ロウ材が固化する。第一溝171、第二溝172、第三溝173、及び第四溝174には、固化したロウ材が残る。第一内側平面175と第二外側領域27との間、及び第一外側平面176と第二外側領域27との間には、固化したロウ材が残る。これらの残ったロウ材が上述の第二のロウ材92を構成する。この第二のロウ材92によって、第一外側領域17と第二外側領域27とが接合される。溢れ出て固化したロウ材が、上述のはみ出し部921を構成する。
【0068】
〔作用効果〕
本形態の接合部品1は、第一領域15の第一中央領域16が台座部161を有することで、製造過程において、溶融したロウ材が重力によって第一外側領域17と第二外側領域27との間の広範囲に行きわたり易い。その上、接合部品1は、第一領域15の第一外側領域17が第一溝171から第四溝174を有することで、製造過程において、溶融したロウ材が第一内側平面175と第二外側領域27との間、及び第一外側平面176と第二外側領域27との間の広範囲に行きわたり易い。そのため、本形態の接合部品1は、第一外側領域17と第二外側領域27とが広範囲にわたってロウ付けされ易い。よって、接合部品1は、第一部材10と第二部材20との接合強度に優れる。
【0069】
本形態の接合部品1は、第一領域15の第一外側領域17が第四溝174を有することで、製造過程において、溶融したロウ材が第三溝173のうち第四溝174がつながる箇所を起点として第一外側領域17と第二外側領域27との間の外に溢れ易い。溢れたロウ材は、固化することで溢れた箇所にはみ出し部921として残る。そのため、接合部品1は、溢れて固化したロウ材を目視できる。よって、接合部品1は、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。
【0070】
本形態の接合部品1は、第一領域15の第一外側領域17が第一の板部11の内周側に向かって延びている第四溝と第三領域30に向かって延びている第四溝とを有していない。そして、本形態の接合部品1は、第一外側領域17が第一の板部11の外周側に延びている第四溝174と第四領域40に延びている第四溝174とを有する。そのため、製造過程において、サンギヤが配置される第一の板部11の内周側とピニオンギヤが配置される第三領域30とに溶融したロウ材が溢れ難く、ギヤが配置されない第一の板部11の外周側及び第四領域40とに溶融したロウ材が溢れ易い。よって、接合部品1は、ロウ材が溶融したことを容易に把握しつつ、ロウ材がピニオンギヤ及びサンギヤの回転を妨げることを抑制できる。
【0071】
〔変形例1〕
変形例の接合部品は、図8に示すように、第一溝171の数及び第一内側平面175の数が、上述した実施形態の接合部品1と相違する。その他の構成は、実施形態の接合部品1と同様である。以下の説明は相違点を中心に行う。同様の構成に説明は省略する。
【0072】
・第一溝
本例の第一溝171の数は、8本である。1本目から4本目までの第一溝171は、実施形態のおける1本目から4本目までの第一溝171と同じである。5本目の第一溝171は、1本目の第一溝171と4本目の第一溝171との間に設けられている。6本目の第一溝171は、1本目の第一溝171と3本目の第一溝171との間に設けられている。7本目の第一溝171は、2本目の第一溝171と3本目の第一溝171との間に設けられている。8本目の第一溝171は、2本目の第一溝171と4本目の第一溝171との間に設けられている。5本目から8本目の第一溝171の各々は、台座部161から台形枠状の第二溝172の各角部に向かって延びている。
【0073】
・第一内側平面
第一内側平面175の数は8つである。各第一内側平面175の形状は、概略三角形状である。
【0074】
〔作用効果〕
変形例の接合部品は、実施形態の接合部品1と同様、第一部材と第二部材との接合強度に優れる上に、ロウ材が溶融したことを容易に把握できる。
【0075】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0076】
例えば、第一部材が環状の第一の板部を有し、第二部材が環状の第二の板部と柱状の複数の脚部とを有していてもよい。この場合、脚部の端面が上述した第二領域で構成され、第一の板部において、脚部の端面に向かい合う領域が上述した第一領域で構成されていればよい。この第一領域の第三溝は、上述した第一溝と同様、底面と第一側壁と第二側壁とで構成されることが挙げられる。
【0077】
また、上述したように、第一の板部及び第二の板部には第四領域が設けられていなくてもよい。上述した実施形態のように接合部品がプラネタリキャリアを構築する場合、脚部の数は3本とすることが挙げられる。周方向に隣り合う脚部の間には、上述した第四領域は設けられず、上述した第三領域が設けられる。この場合、第四溝は、第一の板部の外周側に向かって伸びていればよい。
【0078】
《付記》
本開示は、上述の実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する。
【0079】
[付記1]
相手部材とロウ付けされる第一部材であって、
第一中央領域、及び前記第一中央領域を囲んでいる第一外側領域を含む第一領域を有し、
前記第一中央領域は、前記相手部材にロウ付けされることなく前記相手部材との間に空間を形成する領域であり、
前記第一外側領域は、前記相手部材にロウ付けされる領域であり、
前記第一外側領域は、
前記第一外側領域の内縁側から外縁側に向かって放射状に延びている複数の第一溝と、
前記複数の第一溝の各々における前記外縁側の端部同士をつないでいる枠状の第二溝と、
前記第一外側領域の外縁に設けられて前記第二溝を囲んでいる枠状の第三溝と、
前記第二溝と前記第三溝とに連通するように設けられている第四溝と、
前記複数の前記第一溝の間に設けられている第一内側平面と、
前記第二溝と前記第三溝と前記第四溝との間に設けられている第一外側平面と、を有する、
第一部材。
【0080】
上記付記1は、上述した本開示の一態様に係る接合部品を構築できる。
【符号の説明】
【0081】
1 接合部品
10 第一部材
11 第一の板部、111 第一表面、112 第一裏面、113 第一孔部
12 脚部、121 側面、122 端面
15 第一領域
16 第一中央領域、161 台座部、162 側面、163 端面
17 第一外側領域
171 第一溝、172 第二溝、173 第三溝、174 第四溝
175 第一内側平面、176 第一外側平面
20 第二部材
21 第二の板部、211 第二表面、212 第二裏面、213 第二孔部
25 第二領域、26 第二中央領域、261 孔部、27 第二外側領域
30 第三領域、40 第四領域
91 第一のロウ材、92 第二のロウ材、921 はみ出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8