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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/16 20060101AFI20240806BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F04D25/16
F24F9/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021031269
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131977
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】516163578
【氏名又は名称】畠山 昭弘
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(72)【発明者】
【氏名】畠山 昭弘
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-075208(JP,A)
【文献】特開2017-040419(JP,A)
【文献】特開2018-048598(JP,A)
【文献】特開2017-207049(JP,A)
【文献】特開昭62-261842(JP,A)
【文献】特開2007-261719(JP,A)
【文献】特開平09-042734(JP,A)
【文献】特開平05-060088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/16
F24F 7/00
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 9/00
F24F 13/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部排気を行うための吸引装置であって、
一端部に略円形の吸引口を有し、吸引流を流す吸引流通路と、
前記吸引流通路の他端部側に接続され、第1の遠心ファンを有し、当該第1の遠心ファンの回転により前記吸引流を発生させるとともに、側面に設けた排気管から排気する吸引流発生室と、
前記吸引流発生室の前記吸引流通路とは反対側に配置され、空気導入口及び第2の遠心ファンを有し、当該第2の遠心ファンの回転により前記空気導入口から空気を導入して、吹出流を発生させる吹出流発生室と、
前記吸引口を包囲する略円環状領域に設けられた吹出口を一端部に有するとともに前記吸引流発生室及び前記吸引流通路を包囲する円筒状空間に設けられ、他端部が前記吹出流発生室に接続されて、前記吹出流を流す吹出流通路とを有し、
前記吹出流通路は、少なくとも前記吸引流発生室を包囲する部分では、前記排気管と干渉せずに互いに平行して螺旋状に旋回する複数の螺旋状通路に分流されており、
前記第2の遠心ファンの回転軸は、前記吸引流通路と同軸であり、当該第2の遠心ファンの回転方向は、前記螺旋状通路の螺旋形状が前記他端部から前記一端部へ向かって回転する方向と同じである、吸引装置。
【請求項2】
前記吹出流通路の一部は、前記吸引流通路を包囲する円筒状通路で構成されている、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記第1の遠心ファンと第2の遠心ファンは、回転軸が同軸であり、1つの動力源で回転される、請求項1又は2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記吹出流発生室は、前記第2の遠心ファンからの吹出流を当該第2の遠心ファンの回転方向と同方向に回転させるために螺旋状に固定して配置された複数の仕切板、を含む、請求項1~3のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項5】
前記略円環状領域の内周に連続して配置され、前記吹出流を拡げる略回転対称形の中間ガイドと、
前記略円環状領域の外周に連続して配置され、前記中間ガイドとの間に前記吹出流の吹出径拡大通路を形成する略回転対称形の外側ガイドと、
前記吸引口の外周に連続して設けられ、内側に前記吸引流の上流側通路を形成する、筒状又は前記中間ガイドより広がりの小さい略回転対象形の内側ガイドと、
をさらに有する、請求項1~4のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項6】
前記略円環状領域の内周から下側に延設された内側筒状部分と、
前記内側筒状部分の外周に内周が嵌合されて水平に設けられた下側環状円板と、
前記略円環状領域の外周から外側に延出するように、前記下側環状円板と平行に設けられ、前記下側環状円板より大径の上側環状円板と、
前記上側環状円板の外周から下側に延設され、内周側が前記下側環状円板の外周との間に円環状の隙間を形成するように設けられた外側筒状部分と、
前記下側環状円板と前記上側環状円板との間の円板状の空間に、螺旋状に配置された複数の第2の仕切板と、を含み、
前記吹出流を、前記略円環状領域から導入し、前記円板状の空間の前記複数の第2の仕切板の間を通過させて旋回し、前記円環状の隙間から吹き出すように構成された吹出流旋回円板通路をさらに有する、請求項1~4のいずれかに記載の吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、局所排気のための吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、局部排気のための吸引装置が種々提案されている。
例えば、特許文献1の装置では、外側部分で吹き出し流を発生させ内側部分で吸引流を発生させるように羽が配置された同軸二重構造のプロペラファンを用い、外側部分で吹出流を発生させてエアカーテンを形成する一方、内側部分でその内側の空気を吸引している。プロペラファンの回転により、吹出流と吸引流を同方向に回転させ、竜巻流を発生させて、効果的な吸引を行っている。
特許文献2の装置では、2台のシロッコファンを用い、一方のファンで周辺部から吹出流を発生させてエアカーテンを形成するとともに、他方のファンで中心部からの吸引を行っている。このとき、吹出流の通路の途中に傾斜羽根を設けて吹出流を旋回させ、それにより、安定的にエアカーテンを形成するとともに竜巻流を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-60088号公報
【文献】特開平8-75208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吸引装置では、吹出流の旋回を吹出流を発生させるプロペラファンの回転だけで生じさせているため、吹き出し流の旋回が必ずしも十分でない場合がある。特に、広範囲を囲い込むエアカーテンを形成するために、吹き出し流をガイドによりスカート状に拡げると、旋回が弱まり、その結果、エアカーテンが反転して形成される吸引流の竜巻流も弱くなる懸念がある。
【0005】
特許文献2に記載の吸引装置では、シロッコファンにより発生させた吹出流は、本来そのシロッコファンの回転方向に旋回しているが、円筒ボックス内の排出管部が障害物となって減衰されるため、空気流案内羽根によって吹出流を再度旋回させることが必要で、吹出流の形成効率が十分とは言えない。また、排出管部の大きさによっては、その風下の部分で吹出流が弱まり、円周方向の風量分布が不均一になって、特許文献1と同様にエアカーテンや竜巻流を安定的に形成できない懸念がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、広範囲を囲い込むエアカーテンを効率的かつ安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を強い竜巻流で効率的に吸引することができる吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸引装置は、局部排気を行うための吸引装置であって、
一端部に略円形の吸引口を有し、吸引流を流す吸引流通路と、
前記吸引流通路の他端部側に接続され、第1の遠心ファンを有し、当該第1の遠心ファンの回転により前記吸引流を発生させるとともに、側面に設けた排気管から排気する吸引流発生室と、
前記吸引流発生室の前記吸引流通路とは反対側に配置され、空気導入口及び第2の遠心ファンを有し、当該第2の遠心ファンの回転により前記空気導入口から空気を導入して、吹出流を発生させる吹出流発生室と、
前記吸引口を包囲する略円環状領域に設けられた吹出口を一端部に有するとともに前記吸引流発生室及び前記吸引流通路を包囲する円筒状空間に設けられ、他端部が前記吹出流発生室に接続されて、前記吹出流を流す吹出流通路とを有し、
前記吹出流通路は、少なくとも前記吸引流発生室を包囲する部分では、前記排気管と干渉せずに互いに平行して螺旋状に旋回する複数の螺旋状通路に分流されており、
前記第2の遠心ファンの回転軸は、前記吸引流通路と同軸であり、当該第2の遠心ファンの回転方向は、前記螺旋状通路の螺旋形状が前記他端部から前記一端部へ向かって回転する方向と同じである、ことを特徴とする。
この構成により、第2の遠心ファンの回転により発生して当該遠心ファンと同方向に回転する吹出流は、排気管と干渉することなく、同じ方向に回転する複数の螺旋状通路を通って、略円環状領域に設けられた吹出口から吹き出され、旋回する吹出流となる。これにより、遠心ファンの回転により発生する吹出流の回転エネルギーをそのまま利用して広範囲を囲い込むエアカーテンを安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を強い竜巻流で効率的に吸引することができる吸引装置を実現できる。
【0008】
前記吹出流通路の一部は、前記吸引流通路を包囲する円筒状通路で構成されている、ようにしてもよい。
この構成により、螺旋状通路の長さを短くして製造コストを抑えつつ、吹出流を、排気管と干渉することなく、旋回しながら吹出口から吹き出すことができる。
【0009】
前記第1の遠心ファンと第2の遠心ファンは、回転軸が同軸であり、1つの動力源で回転される、ようにしてもよい。
この構成により、装置のコンパクト化や構造の簡略化が可能になる。なお、2つの遠心ファンが発生させる風量等に差を設ける場合は、2つの遠心ファンの直径や形状を異なるものにすればよい。
【0010】
前記吹出流発生室は、前記第2の遠心ファンからの吹出流を当該第2の遠心ファンの回転方向と同方向に回転させるために螺旋状に固定して配置された複数の仕切板、を含んでもよい。
この構成により、吹出流発生室における吹出流の旋回を安定化でき、螺旋状吸引流通路への導入がスムーズになり、旋回する吹出流の生成効率を高めることができる。
【0011】
前記略円環状領域の内周に連続して配置され、前記吹出流を拡げる略回転対称形の中間ガイドと、
前記略円環状領域の外周に連続して配置され、前記中間ガイドとの間に前記吹出流の吹出径拡大通路を形成する略回転対称形の外側ガイドと、
前記吸引口の外周に連続して設けられ、内側に前記吸引流の上流側通路を形成する、筒状又は前記中間ガイドより広がりの小さい略回転対象形の内側ガイドと、
をさらに有する、構成を好ましく採用できる。
この構成により、吹出流で形成されるエアカーテンをさらに拡げて広い範囲を囲むとともに、吹出口と吸引口を空間的に離れるので、吹出流がすぐに折り返して吸引されてしまうことを防ぐことができる。
【0012】
代替的には、前記略円環状領域の内周から下側に延設された内側筒状部分と、
前記内側筒状部分の外周に内周が嵌合されて水平に設けられた下側環状円板と、
前記略円環状領域の外周から外側に延出するように、前記下側環状円板と平行に設けられ、前記下側環状円板より大径の上側環状円板と、
前記上側環状円板の外周から下側に延設され、内周側が前記下側環状円板の外周との間に円環状の隙間を形成するように設けられた外側筒状部分と、
前記下側環状円板と前記上側環状円板との間の円板状の空間に、螺旋状に配置された複数の第2の仕切板と、を含み、
前記吹出流を、前記略円環状領域から導入し、前記円板状の空間の前記複数の第2の仕切板の間を通過させて旋回し、前記円環状の隙間から吹き出すように構成された吹出流旋回円板通路をさらに有する、構成を好ましく採用できる。
この構成により、製造しやすい構成で、円筒状吹出流通路で形成された吹出流の旋回を安定的に維持しつつ、エアカーテンの径を拡大することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吸引装置によれば、遠心ファンの回転により発生させた吹出流を、遠心ファンの回転方向と同方向に回転しながら吸引流発生室及び吸引流通路を螺旋状に包囲するように形成された複数の螺旋状通路に流す構成とした。
この構成により、第2の遠心ファンの回転により発生して当該遠心ファンと同方向に回転する吹出流は、排気管と干渉することなく、同じ方向に回転する複数の螺旋状通路を通って、略円環状領域に設けられた吹出口から吹き出され、旋回する吹出流となる。これにより、遠心ファンの回転により発生する吹出流の回転エネルギーをそのまま利用して広範囲を囲い込むエアカーテンを安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を強い竜巻流で効率的に吸引することができる吸引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る第1の実施形態の吸引装置を概念的に示す縦断面図である。
図2図1の吸引装置のA-A断面図である。
図3図1の吸引装置のB-B断面図である。
図4図1の吸引装置の外管の前面部分を省略した内部を示す側面図である。
図5図1の吸引装置のC-C断面図である。
図6】本発明に係る第2の実施形態の吸引装置の外管の前面部分を省略した内部を示す側面図である。
図7】本発明に係る第3の実施形態の吸引装置を概念的に示す縦断面図である。
図8】第4の実施形態の吸引装置301の吹出流発生室30の横断面図である
図9】本発明に係る第5の実施形態の吸引装置を概念的に示す縦断面図である。
図10図9の吸引装置のD-D断面図の一例である。
図11図9の吸引装置のD-D断面図の他の一例である。
図12】本発明の第1の実施形態の吸引装置1の適用例を概念的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る第1の実施形態の吸引装置を示す断面図である。
この吸引装置1は、いわゆる局部排気を行う吸引装置であり、吸引流通路10と、吸引流発生室20と、吹出流発生室30と、吹出流通路40と、さらに、これらの通路に連続して吸引対象側に設けられた、中間ガイド50と、外側ガイド60と、内側ガイド70と、を含む。
【0016】
吸引流通路10は、略円形の吸引口10aを一端部に有し、吸引流を流す通路である。本実施形態では、吸引流通路10は、ダクト(内管10bともいう)により形成されている。
【0017】
吸引流発生室20は、前記吸引流通路10の他端部側に接続され、第1の遠心ファン20aを有し、当該第1の遠心ファン20aの回転により前記吸引流を発生させるとともに、側面に設けた排気管21から排気するものである。
この「遠心ファン」とは、遠心力によって送風させるファンの総称で、シロッコファンも含む。
本実施形態では、第1の遠心ファン20aは、回転軸が吸引流通路10の軸10cと同軸になるように配置され、モータ20bにより回転駆動される。また、図2のA-A断面図に示すように、吸引流発生室20の外周部は、前記内管10bの一部により略円筒状に形成され、その外側の側面に排気管21が接続されている。また、図1に示すように、吸引流発生室20の下端部及び上端部は、略円板状の下端板20c及び上端板20dで封止され、下端板20cには吸気口20eが設けられている。なお、モータ20bは、上端板20dの上側に形成されるモータ室25に配置されている。
但しこの構成に限られず、例えば、吸引流発生室20として、ケーシング付きの市販のシロッコファン装置等の遠心ファン装置を用い、内管10bの内側に配置して、排気管21だけ内管10bから突設させても良い。
【0018】
吹出流発生室30は、吸引流発生室20の吸引流通路10とは反対側に配置され、空気導入口30e及び第2の遠心ファン30aを有し、この第2の遠心ファン30aの回転により空気導入口30eから空気を導入して、吹出流を発生させるものである。
この「遠心ファン」とは、遠心力によって送風させるファンの総称で、シロッコファンも含む。
本実施形態では、第2の遠心ファン30aは、回転軸が吸引流通路10の軸10cと同軸になるように配置され、モータ30bにより回転駆動される。また、図3のB-B断面図に示すように、吹出流発生室30の外周部は、後述する吹出流通路40の外管40bにより略円筒状に形成されている。また、図1に示すように、吹出流発生室30の下端部及び上端部は、略円板状の下端板30c及び上端板30dで封止され、上端板30dには空気導入口30eが設けられている。
下端板30cの外周と外管40bの内周との間には、円環状の隙間があり、この隙間を通して吹出流発生室30から吹出流通路40に吹出流を送風するようになっている。
尚、図3において、40Ab,40Bb,40Cbは、後述する螺旋状通路40A,40B,40Cの導入口で、43は、これらの通路官を区画する螺旋状凸条である。
但し、吹出流発生室30の構成は、これに限られず、例えば、ケーシング付きの市販のシロッコファン装置等の遠心ファン装置を用い、内管10bと外管40bの端部に接続しても良い。
【0019】
吹出流通路40は、前記吸引口10aを包囲する略円環状領域41に設けられた吹出口40aを一端部に有するとともに吸引流発生室20及び吸引流通路10を包囲する円筒状空間42に設けられ、他端部が吹出流発生室30に接続されて、吹出流を流す通路である。
図4は、吸引装置1の外管40bの前面部分を省略した内部を示す側面図(排気管21の方向から見た図)である。この吹出流通路40は、本実施形態では、外管40bと内管10bとの間に形成される円筒状空間42内に、その全長に渡って、螺旋状凸条43で区画され、互いに平行して螺旋状に旋回する3本の螺旋状通路40A~40Cで構成されている。排気管21は、螺旋状凸条43を貫いて設けられているので、これらの螺旋状通路40A~40Cは、排気管21と干渉しないように配置されている。吹出口40aは、C-C断面図である図5に示すように、それぞれの螺旋状通路40A~40Cの円弧状の吹出口40Aa~40Caで構成されている。
ここで、前記第2の遠心ファン30aの回転方向は、図4に示すように、螺旋状通路40A~40Cの螺旋形状が前記他端部から前記一端部へ向かって回転する方向と同じである。この構成では、第2の遠心ファン30aの回転により発生して当該第2の遠心ファン30aと同方向に回転する吹出流は、同じ方向に回転する複数の螺旋状通路40A~40Cを通ることにより、吹出流の当初の回転エネルギーを有効に利用して、旋回する吹出流を形成することができる。
【0020】
なお、本発明では上記構成に限られず、吹出流通路40は、少なくとも吸引流発生室20を包囲する部分で、排気管21と干渉しないように複数の螺旋状通路40A~40Cに分流されていればよく、その下流で合流しても良い。また、螺旋状通路40A~40Cの本数は、3本に限られず、複数本であればいずれでもよい。
【0021】
中間ガイド50は、図1に示すように、前記略円環状領域41の内周に連続して配置され、前記吹出流を拡げる略回転対象形のガイドである。この中間ガイド50は、本実施形態では、略スカート状に形成されている。
【0022】
外側ガイド60は、前記略円環状領域41の外周に連続して配置された略回転対象形のガイドであり、前記中間ガイド50との間に前記吹出流の吹出径拡大通路55を形成している。この外側ガイド60も、本実施形態では、略スカート状に形成されている。
【0023】
また、内側ガイド70は、前記吸引口10aの外周に連続して設けられ、筒状又は前記中間ガイドより広がりの小さい略回転対称形を有し、内側に前記吸引流の上流側通路を形成する。この内側ガイド70は、本実施形態では略筒状に形成されている。
【0024】
なお、中間ガイド50と、外側ガイド60と、内側ガイド70は、本発明の吸引装置に必須の要素ではなく、用途によっては、これらを設けなくてもよい。また、用途によっては、逆に吹出流や吸引流の流路径を縮小するガイド等、様々なガイドを設けてもよい。しかし中間ガイド50と、外側ガイド60と、内側ガイド70を設けることにより、吹出流で形成されるエアカーテンACを拡げてさらに広い範囲を囲むとともに、吹出口55aと吸引口70aが空間的に離れるので、吹出流がすぐに折り返して吸引されてしまうことを防ぐことができるので、好ましい。
また、中間ガイド50、内側ガイド70は、必ずしも独立した部材でなくてもよく、内管10bと一体的に形成されていてもよい。また、外側ガイド60も、必ずしも独立した部材でなくてもよく、外管40bと一体的に形成されていてもよい。
また、前記のように、中間ガイド50、内側ガイド70及び外側ガイド60は、略スカート状や筒状に限られず、略回転対称形であればよく、例えば、筒状部分と円板状部分からなる形状、半球面状、あるいはこれらを組み合わせた形状でもよい。
【0025】
次に、前記のように構成された本実施形態の吸引装置1の動作について、図1を参照して説明する。
第1の遠心ファン20a及び第2の遠心ファン30aが回転駆動されると、第2の遠心ファン30aの回転により、空気が空気導入口30eから吹出流発生室30に導入されて、第2の遠心ファン30aと同じ回転方向に回転しながら、当該第2の遠心ファンの30aの周囲に吹き出される。これにより発生した吹出流は、吹出流発生室30内を旋回し、導入口40Ab~40Cb(図3参照)から3本の螺旋状通路40A~40C(図4参照)へ導入される。吹出流は、3本の螺旋状通路40A~40Cを通過して旋回しながら、それぞれの吹出口40Aa~40Ca(図5参照)から、中間ガイド50と外側ガイド60との間の吹出径拡大通路55に流入し、その吹出口55aからスカート状に吹き出され、旋回するエアカーテンACを形成する。
【0026】
なお、本実施形態では、内側ガイド70と中間ガイド50によって吹出流と吸引流との間に空間的なギャップGを設けており、このギャップGにより、吹出径拡大通路55の吹出口55aを出た吹出流の一部がすぐに反転して内側ガイド70の吸引口70aに吸引されることが防止される。このため、広範囲を囲むエアカーテンACが形成される。
【0027】
一方、第1の遠心ファン20aの回転により吸引流が発生し、エアカーテンACの内側の空気は、内側ガイド70と内管10bを通って吸引される。このため、エアカーテンACを形成した吹出流は、その風速で決まる到達点まで行ったところで折り返し、内側ガイド70の吸引口70a側に向きを変えて、そのまま旋回しながら内側ガイド70の吸引口70aに向かって上昇する。このとき、吹出流は、折り返されることによって、回転運動エネルギーが維持されたまま旋回半径が小さくなるので、旋回が高速になり、吸引対象80まで達する竜巻状の渦が形成される。この竜巻状の渦により、吸引対象80(例えば、調理用レンジ台から発生する湯気や煙等)を効率的に吸引することができる。
【0028】
吸引されたガス等の吸引対象80は、図1に示すように、吸引流として、内側ガイド70の内側及び吸引流通路10を成す内管10bの内側を通って、吸気口20eから吸引流発生室20に導入され、第1の遠心ファン20aの回転により吸引流発生室20の内壁(内管10bの一部)に吹き出され、側面に設けた排気管21から排気される。
【0029】
本実施形態の吸引装置1によれば、第2の遠心ファン30aの回転により発生させた吹出流を、第2の遠心ファン30aの回転方向に回転しながら吸引流発生室20及び吸引流通路10を螺旋状に包囲するように形成された複数の螺旋状通路40A~40Cに流す構成とした。この構成により、第2の遠心ファン30aと同方向に回転する吹出流は、排気管21と干渉することなく、同じ方向に回転する複数の螺旋状通路を通って、略円環状領域に設けられた吹出口から吹き出され、旋回する吹出流となる。これにより、遠心ファンの回転により発生する吹出流の回転エネルギーをそのまま利用して広範囲を囲い込むエアカーテンを安定的に形成でき、囲い込んだ範囲を強い竜巻流で効率的に吸引することができる吸引装置を実現できる。
【0030】
また、本実施形態では、吸引流を発生させる第1の遠心ファン20aと、吹出流を発生させる第2の遠心ファン30aを別々に制御する構成としているので、2つのファンの出力バランスを調整することにより、吸引流と吹出流の流量を最適に設定することが可能となり、これにより、使用環境に合わせた最適な吸引を可能とすることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図6は、本発明に係る第2の実施形態の吸引装置101の外管の前面部分を省略した内部を示す側面図(排気管21の方向から見た図)である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、吹出流通路40は、吸引流発生室20を包囲する部分のみ3本の螺旋状通路40A~40Cに分流させ、その下流で合流させて、吸引流通路10を包囲する円筒状通路40Dで構成した形態である。この構成では、吹出口40aは、略円環状領域41のほぼ全域を占める略円環状の吹出口40aとなる。
それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0032】
本実施形態の吸引装置101の動作は、第1の実施形態と同様である。但し、螺旋状通路40A~40Cを通過した吹出流は、旋回を維持したまま、円筒状通路40D内を通過し、略円環状の吹出口40aから吹出径拡大通路55に流入し、その吹出口55aから吹き出される。
このように構成することにより、螺旋状通路40A~40Cの長さを短くして製造コストを抑えつつ、吹出流を、排気管21と干渉することなく、旋回しながら吹出口から吹き出すことができる。
【0033】
(第3の実施形態)
図7は、本発明に係る第3の実施形態の吸引装置201を概念的に示す縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、第1の遠心ファン20aと第2の遠心ファン30aは、回転軸が同軸(共に吸引流通路10の軸10cと同軸)であり、1つのモータ20bで駆動される形態である。
図7に示すように、モータ室25に配置されたモータ20bの軸が両側に伸びて、軸の一端部側で第1の遠心ファン20aを駆動し、他端部側で吹出流発生室30に配置された第2の遠心ファン30aを駆動するようになっている。
それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0034】
モータ20bを回転することにより、第1の遠心ファン20aと第2の遠心ファン30aは、同一方向に同一速度で回転し、吸引流と吹出流を発生させる。なお、2つの遠心ファンが発生させる風量等に差を設ける場合は、2つの遠心ファンの直径や形状を異なるものにすればよい。
この構成により、第2の遠心ファン30a駆動用のモータ30bが不要になるので、装置のコンパクト化や構造の簡略化が可能になる。
【0035】
なお、本実施形態では、第1の遠心ファン20a駆動用のモータ20bで2つのファンを駆動する構成としたが、第2の遠心ファン30a駆動用のモータ30bで2つのファンを駆動する構成としてもよい。具体的には、図1においてモータ30bのモータ軸を第2の遠心ファン30aから、さらに吸引流発生室20内まで延長して、第1の遠心ファン20aも駆動する。その場合、モータ20b及びモータ室25が不要になるので、一層の装置のコンパクト化や構造の簡略化が可能になる。
【0036】
(第4の実施形態)
図8は、本発明に係る第4の実施形態の吸引装置301の吹出流発生室30の横断面図であり、第1の実施形態の図3に相当する図である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、吹出流発生室30に、第2の遠心ファン30aからの吹出流をこの第2の遠心ファン30aの回転方向と同方向に回転させるために複数の仕切板30fを螺旋状に固定して配置した形態である。
それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
この構成により、吹出流発生室30における吹出流の旋回を安定化でき、吹出流の導入口40Ab,40Bb,40Cbへの導入がスムーズになり、旋回する吹出流の生成効率を高めることができる。
【0037】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態の吸引装置401を概念的に示す縦断面図であり、図10及び図11は、図9の吸引装置401のD-D断面図の例である。本実施形態は、第1の実施形態の吸引装置1において、吹出流通路40の吹出口40aが設けられた略円環状領域41に、中間ガイド50と外側ガイド60と内側ガイド70を設ける代わりに、吹出流をさらに旋回させる吹出流旋回円板通路410を設けた形態である。それ以外の構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0038】
この吹出流旋回円板通路410は、内側筒状部分411と、下側環状円板412と、上側環状円板413と、外側筒状部分414と、複数の第2の仕切板417と、を結合することにより、形成されている。
内側筒状部分411は、略円環状領域41の内周から下側に延設された部材である。この内側筒状部分411の外周に、下側環状円板412の内周が嵌合され、それにより、下側環状円板412が水平に設けられている。一方、略円環状領域41の外周から外側に延出するように、下側環状円板412より大径の上側環状円板413が、下側環状円板412に平行に設けられている。この上側環状円板413の外周には、外側筒状部分414が下側に延設されて、その内周側と下側環状円板412の外周との間には円環状の隙間415が形成されている。
さらに、下側環状円板412と上側環状円板413との間に形成された円板状の空間416には、複数の第2の仕切板417が、螺旋状に配置されている。これらの部材は、互いに溶接、ねじ止め等により、結合されていてもよく、一体的に形成されていてもよい。
【0039】
このような吹出流旋回円板通路410を有する本実施形態の吸引装置201では、吹出流通路40で形成された旋回する吹出流は、吹出流通路40の吹出口40aから、吹出流旋回円板通路410に導入され、円板状の空間416を周辺方向に向かって広がる。この際、吹出流は、前記複数の第2の仕切板417の間を通過する際にさらに旋回されるので、広がっても旋回速度があまり低下せず、円環状の隙間415から吹き出すように構成されている。それ以外の動作は、第1の実施形態の吸引装置1と同様である。
この構成により、製造しやすい構成で、吹出流通路40で形成された吹出流の旋回を安定的に維持しつつ、エアカーテンACの径を拡大することができる。
なお、第2の仕切板417は、吹出流を旋回できるものであればよく、例えば、断面視で図10に示す一定幅の板状のものや、図11に示す三角形のものでもよい。図11の断面視で三角形の第2の仕切板417は、吹出流が円板状の空間416の周辺部へ広がっても流路断面積の増加を抑制するので、吹出速度の低下を抑制する効果があると考えられる。
【0040】
(適用例)
図12は、本発明の第1の実施形態の吸引装置1の適用例を概念的に示す図である。本例では、屋内に設置した調理用レンジ台81から発生する湯気や煙を吸引対象80とし、吸引装置1によって吸引した後、吸引装置1の本体から離れた地点、例えば屋外へ排気管21に接続された排気用ダクト22を介して排気する。一方、吹出流は屋内から取り入れている。図1において、82は調理用レンジ台81の載置台、83は建物の外壁をそれぞれ示す。
【0041】
この吸引装置1の動作は、前記したとおりである。すなわち、第1の遠心ファン20a及び第2の遠心ファン30aが回転駆動されると、屋内の空気が空気導入口30eを通って導入され、第2の遠心ファン30aの回転方向に旋回しながら、吹出流通路40の螺旋状通路40A~40Cを通過し、中間ガイド50と外側ガイド60との間の吹出径拡大通路55を通り、その吹出口55aからスカート状に吹き出され、旋回するエアカーテンACを形成する。
【0042】
エアカーテンACを形成した吹出流は、吸引対象80(調理用レンジ台81から発生する湯気や煙等)を囲い込んで竜巻流を形成するので、この吸引対象80を、効率的に吸引することができる。
【0043】
吸引されたガス等の吸引対象80は、図12に示すように、吸引流として内側ガイド70の内側及び吸引流通路10を成す内管10bの内側を通って、吸気口20eから吸引流発生室20に導入され、第1の遠心ファン20aの回転により、側面に設けた排気管21およびこれに接続された排気用ダクト22を通って外部に排気される。
【0044】
第2~第5の実施形態の吸引装置101,201,301,401も、本例の用途に同様に適用することが可能である。
尚、吸引装置1,101,201,401は、吸引流を発生させる第1の遠心ファン20aと、吹出流を発生させる第2の遠心ファン30aを別個に設けているので、吸引流と吹出流の流量を最適に設定することが可能で、これにより、使用環境に合わせた最適な吸引を行うことができる。
【0045】
第1~第5の実施形態の吸引装置1,101,201,301,401は、調理用レンジ台以外にも、焼き肉用テーブルコンロ等から発生する煙の排気や、局所的に発生する悪臭や粉塵などを吸引して外部へ排出する用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:吸引装置
10:吸引流通路
10a:吸引口
10b:内管
10c:(吸引流通路の)軸
20:吸引流発生室
20a:第1の遠心ファン
20b:モータ
20c:下端板
20d:上端板
20e:吸気口
21:排気管
22:排気用ダクト
25:モータ室
30:吹出流発生室
30a:第2の遠心ファン
30b:モータ
30c:下端板
30d:上端板
30e:空気導入口
30f:仕切板
40:吹出流通路
40a:吹出口
40A~40C:螺旋状通路
40Aa~40Ca:吹出口
40Ab~40Cb:導入口
40b:外管
40D:円筒状通路
41:略円環状領域
42:円筒状空間
43:螺旋状凸条
50:中間ガイド
55:吹出径拡大通路
55a:(吹出径拡大通路の)吹出口
60:外側ガイド
70:内側ガイド
70a:(内側ガイドの)吸引口
80:吸引対象
81:調理用レンジ台
82:載置台
83:建物の外壁
101:(第2の実施形態の)吸引装置
201:(第3の実施形態の)吸引装置
301:(第4の実施形態の)吸引装置
401:(第5の実施形態の)吸引装置
410:吹出流旋回円板通路
411:内側筒状部分
412:下側環状円板
413:上側環状円板
414:外側筒状部分
415:円環状の隙間
416:円板状の空間
417:第2の仕切板
AC:エアカーテン
G:ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12