(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】装身具とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20240806BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20240806BHJP
【FI】
A44C25/00 B
A44B99/00 611N
A44B99/00 611P
A44B99/00 611E
(21)【出願番号】P 2022085868
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】多田 啓介
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-000216(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0126113(KR,A)
【文献】特開2007-082603(JP,A)
【文献】実開平3-48508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 25/00
A44B 99/00
A44C 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型部材(3)と、この雌型部材(3)と接合可能な雄型部材(4)と、これら雌雄部材(3,4)の間を連結するストラップ(2)からなる装身具(1)であって、
前記雌型部材(3)は、先端側に雌側係合部(31)が形成され、後端側にストラップ末端(21)との接合用空間が設けられており、
前記ストラップ接合用空間は、前記ストラップ末端(21)が挿入される第1空間(32)と、この第1空間(32)と直交する第2空間(33)からなり、
前記ストラップ末端(21)には金属リング(22)が取り付けられており、
前記第2空間(33)において、前記ストラップ末端(21)の前記金属リング(22)が
、下側(51)が欠けて開放された、爪(52)付きの板状固定片であるワッシャー(5)により位置固定されている、
ことを特徴とする装身具。
【請求項2】
前記第2空間(33)が前記雌型部材(3)の外部表面に露出する開口(34)を有する請求項1記載の装身具。
【請求項3】
雌型部材(3)と、この雌型部材(3)と接合可能な雄型部材(4)と、これら雌雄部材(3,4)の間を連結するストラップ(2)からなる装身具(1)であって、
前記雄型部材(4)は、先端側に雄側係合部(41)が形成され、後端側にストラップ末端(21)との接合用空間が設けられており、
前記ストラップ接合用空間は、前記ストラップ末端(21)が挿入される第3空間(44)と、この第3空間(44)と直交する第4空間(45)からなり、
前記ストラップ末端(21)には金属リング(22)が取り付けられており、
前記第4空間(45)において、前記ストラップ末端(21)の前記金属リング(22)が
、下側(51)が欠けて開放された、爪(52)付きの板状固定片であるワッシャー(5)により位置固定されている、
ことを特徴とする装身具。
【請求項4】
前記第4空間(45)が前記雄型部材(4)の外部表面に露出する開口(46)を有する請求項3記載の装身具。
【請求項5】
雌型部材(3)と、この雌型部材(3)と接合する雄型部材(4)と、これら雌雄部材(3,4)の間を連結するストラップ(2)からなる装身具において、前記ストラップ(2)のストラップ末端(21)を前記雌型部材(3)に固定する製造方法であって、
前記ストラップ末端(21)に金属リング(22)を取り付ける工程と、
前記雌型部材の第1空間(32)に前記ストラップ末端(21)を挿入する工程と、
前記第1空間(32)と直交する第2空間(33)に
、下側(51)が欠けて開放された、爪(52)付きの板状固定片であるワッシャー(5)を差し込む工程
を有し、
以て、前記ストラップ末端(21)の前記金属リング(22)を前記ワッシャー(5)によって位置固定する
ことを特徴とする装身具の製造方法。
【請求項6】
前記第2空間(33)は前記雌型部材(3)の外部表面に露出する開口(34)を有し、前記ワッシャー(5)はこの開口(34)を通して差し込まれるものである請求項5記載の方法。
【請求項7】
雌型部材(3)と、この雌型部材(3)と接合する雄型部材(4)と、これら雌雄部材(3,4)の間を連結するストラップ(2)からなる装身具において、前記ストラップ(2)の末端(21)を前記雄型部材(4)に固定する方法であって、
前記ストラップ末端(21)に金属リング(22)を取り付ける工程と、
前記雄型部材の第3空間(44)に前記ストラップ末端(21)を挿入する工程と、
前記第3空間(44)と直交する第4空間(45)に
、下側(51)が欠けて開放された、爪(52)付きの板状固定片であるワッシャー(5)を差し込む工程
を有し、
以て、前記ストラップ末端(21)の前記金属リング(22)を前記ワッシャー(5)によって位置固定する
ことを特徴とする装身具の製造方法。
【請求項8】
前記第4空間(45)は前記雄型部材(4)の外部表面に露出する開口(46)を有し、前記ワッシャー(5)はこの開口(46)を通して差し込まれるものである請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ネックレス、ブレスレット、ペンダントその他の装身具と、その装身具のストラップ両端を開閉(着脱)するのに用いる留め具に特徴を有する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装身具のストラップ両端部を開閉する留め具として多数のものが知られている。
【0003】
例えば、特開2007―82603は本出願人が出願したものである。この留め具は、先端に膨出部を有する雄部材と、嵌合部を有する弾性体からなる雌部材をストラップの両端に有する。連結するときは、雌雄部材を左右それぞれの手に持ち、真正面から突き合わせるようにして行い、分離するときは、その逆に引き裂くようにして行う。
【0004】
上記特開2007―82603では、留め具の雌雄部材は外部に露出する金属製であり、金属アレルギーのある人には不向きである。その点に関して、雄部材の膨出突起を除いて全体をシリコーン樹脂製とした留め具の発明も知られている(特開2001-275725)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007―82603公報
【文献】特開2001-275725公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2001-275725では製法は明記されていないが、図面を見る限り、留め具の固定はインサート成形によるようである。すなわち、金型内へインサート品である雌雄部材をセットし、その周囲へ樹脂の充填を行っているようである。
【0007】
このインサート成形は、ストラップの長さがあらかじめ決まっている場合には便利であるが、決まっていない場合には不便である。換言すれば、メーカーが特定の長さのストラップを大量に生産する場合は好都合であるが、それ以外の場合融通が利かないことが多い。インサート成形では、例えば客の注文に応じて販売店でストラップを少し長くする、又は、短くするというようなことができない。
【0008】
本発明では、ストラップの長さが調節可能な装身具とその装身具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1の観点では、雌型部材3と、この雌型部材3と接合可能な雄型部材4と、これら雌雄部材3,4の間を連結するストラップ2からなる装身具1であって、前記雌型部材3は、先端側に雌側係合部31が形成され、後端側にストラップ末端21との接合用空間が設けられており、前記ストラップ接合用空間は、前記ストラップ末端21が挿入される第1空間32と、この第1空間32と直交する第2空間33からなり、前記ストラップ末端21には金属リング22が取り付けられており、前記第2空間33において、前記ストラップ末端21の前記金属リング22が、下側51が欠けて開放された、爪52付きの板状固定片であるワッシャー5により位置固定されている、ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記第2空間33が前記雌型部材3の外部表面に露出する開口34を有する。
【0011】
本発明は第2の観点では、雌型部材3と、この雌型部材3と接合可能な雄型部材4と、これら雌雄部材3,4の間を連結するストラップ2からなる装身具1であって、前記雄型部材4は、先端側に雄側係合部41が形成され、後端側にストラップ末端21との接合用空間が設けられており、前記ストラップ接合用空間は、前記ストラップ末端21が挿入される第3空間44と、この第3空間44と直交する第4空間45からなり、前記ストラップ末端21には金属リング22が取り付けられており、前記第4空間45において、前記ストラップ末端21の前記金属リング22が、下側51が欠けて開放された、爪52付きの板状固定片であるワッシャー5により位置固定されている、ことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記第4空間45が前記雄型部材4の外部表面に露出する開口46を有する。
【0013】
本発明は第3の観点では、雌型部材3と、この雌型部材3と接合する雄型部材4と、これら雌雄部材3,4の間を連結するストラップ2からなる装身具において、前記ストラップ2の末端21を前記雌型部材3に固定する製造方法であって、前記ストラップ末端21に金属リング22を取り付ける工程と、前記雌型部材の第1空間32に前記ストラップ末端21を挿入する工程と、前記第1空間32と直交する第2空間33に、下側51が欠けて開放された、爪52付きの板状固定片であるワッシャー5を差し込む工程により前記ストラップ末端21の前記金属リング22を前記ワッシャー5によって固定することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記第2空間33は前記雌型部材3の外部表面に露出する開口34を有し、前記ワッシャー5はこの開口34を通して差し込まれるものである。
【0015】
本発明は第4の観点では、雌型部材3と、この雌型部材3と接合する雄型部材4と、これら雌雄部材3,4の間を連結するストラップ2からなる装身具において、前記ストラップ2の末端21を前記雄型部材4に固定する方法であって、前記ストラップ末端21に金属リング22を取り付ける工程と、前記雄型部材の第3空間44に前記ストラップ末端21を挿入する工程と、前記第3空間44と直交する第4空間45に、下側51が欠けて開放された、爪52付きの板状固定片であるワッシャー5を差し込む工程により前記ストラップ末端21の前記金属リング22を前記ワッシャー5によって固定することを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記第4空間45は前記雄型部材4の外部表面に露出する開口46を有し、前記ワッシャー5はこの開口46を通して差し込まれるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ストラップ末端と雌側部材又は雄側部材とを固定するのに際して、雌側部材3の第2空間32の中、又は、雄側部材4の第3空間44の中にワッシャー5を差し込むだけでよい。したがって、販売店などで適当な長さのストラップを選択し、それを雌雄部材に固定することにより、自由にストラップの長さ調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1の留め具を有するネックレスの全体斜視図である。
【
図2】実施例1の留め具の雌側部材の、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は底面図、(e)は背面図、(f)は右側面図、(g)は(a)の矢視断面図である。
【
図3】実施例1の留め具の雄側部材の、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は底面図、(e)は背面図、(f)は右側面図、(g)は(a)の矢視断面図である。
【
図4】実施例1の留め具の雌側部材とストラップ末端を結合させる状態を断面図で示した工程図である。
【
図5】実施例1の留め具の雄側部材とストラップ末端を結合させる状態を断面図で示した工程図である。
【
図6】実施例1の留め具で使用するワッシャーの、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(c)の矢視断面図、(f)は底面面図である。
【
図7】実施例1の留め具で使用する金属製リングの、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(c)の矢視断面図、(f)は底面面図である。
【
図8】実施例1の留め具の雌雄部材を連結される状態を断面図で示した工程図である。(a)は連結前、(b)は連結後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1の装身具(本例は磁気ネックレスである)1の全体斜視図である。ストラップ2の両端に連結用の雌側部材3又は雄側部材4が取り付けられている。この例ではストラップ2は直径約3~4mmのやや太い組紐であり、エラストマーの中芯を有するポリエステルからなる。着用者の血行を促進する目的で磁石(図示せず)を内蔵させている。そのほかどのような素材や形状でもよいが、金属アレルギーを避けるため、金属はなるべく使用しない方がよい。
【0021】
図2は留め具の雌側部材3を示している。全体がシリコーン樹脂(ショア硬度50~60)からなり、その外観はほぼ円柱である。シリコーン樹脂以外の素材や円柱以外の形状でもよい。金属アレルギーを避けるため、金属はなるべく使用しない方がよく、適度な硬度があれば種々の合成樹脂が使用可能である。
【0022】
雌側部材3は、先端側に雌側係合部31が形成され、後端側にストラップ末端21との接合用空間32,33が設けられている。
【0023】
ストラップ接合用空間は、ストラップ直径にほぼ等しい円柱状の第1空間32と、この第1空間32と直交する幅の狭い第2空間33からなる。第2空間33の一端は表面に露出して開口34となっている。
【0024】
図3は留め具の雄側部材4を示している。全体がシリコーン樹脂(ショア硬度50~60)からなり、その外観はほぼ円柱である。シリコーン樹脂以外の素材や円柱以外の形状でもよい。金属アレルギーを避けるため、金属はなるべく使用しない方がよく、適度な硬度があれば種々の合成樹脂が使用可能である。
【0025】
雄側部材4は、先端側に雄側係合部41が形成され、後端側にストラップ末端との接合用空間44,45が設けられている。
【0026】
雄側係合部41は金属からなり、膨出突起42とその基礎部43を有する。雄側係合部41はシリコーン樹脂の中にインサート成形されている。
【0027】
ストラップ接合用空間は、ストラップ直径にほぼ等しい円柱状の第3空間44と、この第3空間44と直交する幅の狭い第4空間45からなる。第4空間45の一端は表面に露出して開口46となっている。
【0028】
図4は、留め具の雌側部材3とストラップ末端21を結合させる状態を断面図で示した工程図である。矢印の流れに沿って説明する。
【0029】
まず、ストラップの最末端から数mm開けて薄い金属板をストラップ末端21に巻き付けて金属リング22(
図7参照)とする。その状態でストラップ末端21を雌部材の第1空間32に挿入する。次いで開口34を通してワッシャー5(
図4参照)を第2空間33の中に押し込む。
【0030】
ワッシャー5は、
図6に示すように、下側51が欠けて開放された、爪52付きの板状金属リング53である。このワッシャー5の開放側を下向きに挿入するので、ストラップ末端21はワッシャー5の爪52にしっかりと包囲される。
【0031】
このときに注意しなければならないのは、取り付けられるワッシャー5が金属リング22に接する形でその下側に位置するようにすることである。このようにすることにより、ワッシャー5が抜け止めとなって、金属リング22付きのストラップ末端21は位置固定される。ワッシャーは小さなものであるから、いったん第2空間33の中に入ってしまえば、特別な器具がなければ取り出せないので、ストラップ末端21が不用意に外れるようなことはない。
【0032】
図5は、留め具の雄側部材4とストラップ他端側の末端21を結合させる状態を断面図で示した工程図である。雌側部材3とストラップ末端21を結合させる方法と全く同じであるので、説明を省略する。図示及び説明の便宜上、雄側部材4のストラップ末端21、金属リング22、ワッシャー5については、雌側部材3の対応部材と同じ符号を用いている。
【0033】
このようにしてストラップ各末端21と接合された雌側部材3と雄側部材4は、
図8に示すように、雌雄係合部31,41を接合させることにより連結させたり、分離させたりすることができる。
【0034】
上記実施例では、雌側部材3とストラップ末端21を結合させる方法と、雄側部材4とストラップ他端側の末端21を結合させる方法、の両方を実施して1つの装身具を完成させているが、両方の方法を実施することは必須ではなく、どちらか片方だけを実施することもできる。すなわち、雌側部材又は雄側部材のどちららか一方に本発明の方法を実施し、実施していない他方は従来の方法(例えば、冒頭記載のインサート成形法)により結合させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 装身具(磁気ネックレス)
2 ストラップ
21 ストラップ末端
22 金属リング
3 雌側部材
31 雌側係合部
32 第1空間
33 第2空間
34 開口
4 雄側部材
41 雌側係合部
42 膨出突起
43 基礎部
44 第3空間
45 第4空間
46 開口
5 ワッシャー
51 下側
52 爪
53 金属リング