(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20240806BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20240806BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C1/08
B05C13/02
(21)【出願番号】P 2022097373
(22)【出願日】2022-06-16
(62)【分割の表示】P 2020070900の分割
【原出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391052622
【氏名又は名称】株式会社都ローラー工業
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】町田 成司
(72)【発明者】
【氏名】町田 成康
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-123624(JP,A)
【文献】特開平10-328596(JP,A)
【文献】特開2018-026295(JP,A)
【文献】特開2015-047562(JP,A)
【文献】特開2014-046220(JP,A)
【文献】特開2013-146659(JP,A)
【文献】実開昭56-094333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/02
B05C 1/08
B05C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方又は下方に縦向きに移動する基材に塗料を塗布する塗布装置において、
塗布ロールとドクターロールと受け部材を備え、
前記塗布ロールとドクターロールに塗料が付着するように、前記受け部材、塗布ロール及びドクターロールによって液だまり部が形成され、
前記塗布ロールと前記ドクターロールは接触しており、
前記塗布ロールは、外周面にセルのないベタロールであり、
前記ドクターロールは、外周面にセルを有する彫刻ロールであ
り、
前記塗布ロール、前記ドクターロール及び前記受け部材が前記基材を挟んだ両側に設けられた、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗布装置において、
塗布ロールが、金属ロール、ゴムロール又はメッキロールである、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塗布装置において、
ドクターロールが、金属ロール、ゴムロール又はメッキロールである、
ことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材への塗料の塗布に用いる塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板やフィルム、シート、板、パネル等(以下、これらをまとめて「基材」という)の表面に、レジスト塗料や導電塗料、絶縁塗料、保護塗料、強化塗料、UV光遮光塗料、帯電防止塗料、着色塗料、機能性コーティング剤等(以下、これらをまとめて「塗料」という)が塗布されることがある。一例としては、プリント配線基板にレジストを塗布する場合や銅箔に接着剤を塗布する場合などがあげられる。
【0003】
従来、基材に塗料を塗布する装置として、基材に塗料を塗布する塗布ロールと、当該塗布ロールに塗料を供給するドクターロールと、塗料を溜めておく塗料容器を備えたものが知られている(特許文献1)。この装置では、塗料容器内の塗料がドクターロールでピックアップされ、その塗料がドクターロールから塗布ロールに移行し、塗布ロールから基材に転写されることによって、基材に塗料が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記塗布装置では、塗料と直接接しているのがドクターロールだけであるため、基材に塗布される塗料の膜厚の均一性は、ドクターロールに付着する塗料の量やドクターロール表面の塗料の平滑度、ドクターロールから塗布ロールに移行する塗料の量、移行した塗料の平滑度に依存することになる。
【0006】
このため、例えば、ドクターロール表面の塗料が平滑性に欠ける場合、塗布ロール表面に移行する塗料が不均一になり、結果的に基材に転写される塗料の膜厚が不均一になる。
【0007】
基材に塗布される塗膜の平滑度は電子部品の実装密度に影響を及ぼすことから、塗膜は可能な限り平滑であることが望ましいと言われている。5G時代を迎え、基板の高密度化が進んだ昨今では、この要望がこれまで以上に高まっている。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、従来の塗布装置に比べて、平滑性に優れた塗膜を形成することのできる塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗布装置は、上方又は下方に縦向きに移動する基材に塗料を塗布する塗布装置であって、塗布ロールとドクターロールと受け部材を備えている。本発明の塗布装置では、塗布ロールとドクターロールに塗料が付着するように、受け部材、塗布ロール及びドクターロールによって液だまり部が形成されている。塗布ロールには外周面にセルのないベタロールを、ドクターロールには外周面にセルを有する彫刻ロールを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布装置は、塗布ロールとドクターロールに塗料が付着するように液だまり部が形成されているため、塗布ロールに付着する塗料の量が安定し、基材に平滑な塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の塗布装置の塗布ロール、ドクターロール及び受け部材の説明図。
【
図3】(a)は保持具の一例を示す説明図、(b)は保持具の他例を示す説明図。
【
図4】基材をロールツーロールで移動させる場合の一例を示す説明図。
【
図5】ドクターロールを塗布ロールよりも低い位置に設ける場合の一例を示す説明図。
【
図6】塗布ロール、ドクターロール及び受け部材を異なる高さに設ける場合の一例を示す説明図。
【
図7】(a)~(d)は
図1に示す塗布装置の動作の一例を説明する正面図。
【
図8】(a)~(d)は
図1に示す塗布装置の動作の一例を説明する側面図。
【
図9】(a)(b)は
図4に示す塗布装置の動作の一例を説明する正面図。
【
図10】(a)(b)は
図4に示す塗布装置の動作の一例を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の塗布装置の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として
図1に示す塗布装置は、基材Pに塗料を塗布する装置であって、塗布ロール1とドクターロール2と受け部材3を備えている。この実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2に塗料が付着するように、受け部材3、塗布ロール1及びドクターロール2によって液だまり部4が形成されている。塗布ロール1及びドクターロール2の長手方向両外側には、液だまり部4に溜められた塗料がこぼれるのを防止するこぼれ止め5が設けられている。
図2に示すように、塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3は、基材Pを挟んだ両側に同じ高さで設けられている。
【0013】
前記塗布ロール1は、基材Pに塗料を転写して塗膜を形成するための部材である。塗布ロール1には、ゴムロールや金属ロールのほか、これらの外周にDLC膜を備えたロールを用いることができる。ゴムロールには天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。金属ロールには炭素鋼にメッキがされたものなどが含まれる。
【0014】
この実施形態では、塗布ロール1として外周面に凹凸(セル)のないベタロールを用いているが、塗布ロール1には、ベタロールのほか、外周面に螺旋溝や単溝、ドットといった各種形状のセルが設けられた彫刻ロールを用いることもできる。セルの形状は一例でありこれ以外であってもよい。
【0015】
この実施形態の塗布ロール1は、基材Pに接触しているか否かにかかわらず常時回転するように構成されている。塗布ロール1は基材Pの移動方向に対して逆方向、具体的には、
図2のように、一方(同図左側)の塗布ロール1が時計回りに、他方(同図右側)の塗布ロール1が反時計回りに回転するようにしてある。塗布ロール1は反対方向(基材Pの移動方向に対して正方向)に回転するようにしてもよい。いずれの場合も、接触するドクターロール2の回転方向と反対方向に回転するように構成する。
【0016】
前記ドクターロール2は、塗布ロール1に塗料を供給するとともに、塗布ロール1の表面の塗料を平滑にする(均す)ための部材である。ドクターロール2には、金属ロールやゴムロールのほか、これらの外周にDLC膜を備えたロールを用いることができる。ゴムロールには天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。金属ロールには炭素鋼にメッキがされたものなどが含まれる。
【0017】
この実施形態では、ドクターロール2として炭素鋼の外周にDLC膜を備えた金属ロールを用いている。図示は省略しているが、ドクターロール2の外周面には螺旋溝や単溝、ドットといった各種形状の凹凸(セル)が設けられている。セルの形状は一例でありこれ以外であってもよい。ドクターロール2にはセルのないベタロールを用いることもできる。
【0018】
この実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2として、直径及び長さが同じものを用いている。塗布ロール1とドクターロール2は、直径や長さの異なるものを用いることもできる。ただし、ドクターロール2には、塗布ロール1よりも直径の大きなものを用いるのが好ましい。塗布ロール1よりも直径の大きなドクターロール2を用いることで、塗布ロール1が一周する間、ドクターロール2の塗料の付着した部分が常に塗布ロール1に接触しているため、塗布ロール1の外周面の塗料が均一化されやすくなる。
【0019】
前記受け部材3は、塗布ロール1とドクターロール2の間に液だまり部4を形成する部材である。この実施形態の受け部材3は、塗布ロール1及びドクターロール2よりも長さのある平板部材である。受け部材3は金属のほか、樹脂やゴムなどで形成することができる。
【0020】
図2に示すように、この実施形態の受け部材3は塗布ロール1とドクターロール2の双方に跨る大きさとしてある。受け部材3は、垂直に移動する基材Pの移動方向の直線と平行な仮想軸線(
図2に二点鎖線で表示)に対して、当該仮想軸線と受け部材3の下端側とのなす角αが40度程度となるように斜めに設けられている。この角度は適宜調節することができる。
【0021】
この実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2が接触し、塗布ロール1と受け部材3が接触するようにしてあり、これらによって塗料が溜まる液だまり部4が形成されている。具体的には、受け部材3と塗布ロール1及びドクターロール2との間に液だまり部4が形成され、当該液だまり部4に溜められた塗料が塗布ロール1とドクターロール2の双方に付着するようにしてある。
【0022】
この実施形態のように、液だまり部4に溜められた塗料が塗布ロール1に直接付着するようにした場合、塗布ロール1自身で塗料をピックアップできるため、ドクターロール2から移行される塗料の量が少なくても、基材Pへの塗料の塗りむらが生じにくく、基材Pの表面に平滑な塗膜を形成することができる。
【0023】
この実施形態では、ドクターロール2が塗布ロール1よりも外側且つ高所に配置してある。このような位置関係とした場合、塗布ロール1に付着した塗料が重力によって落ちることがなく、塗料を基材Pに確実に転写できるというメリットがある。また、ドクターロール2との接触点から基材Pまでの距離が短くなるため、揮発しやすい塗料を塗布するような場合であっても、揮発する前に基材Pに転写できるというメリットがある。
【0024】
この実施形態の塗布装置は、塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3のほか、保持具6、下受け具7、押さえピン8及び姿勢保持具9を備えている。なお、保持具6、下受け具7、押さえピン8及び姿勢保持具9は必要に応じて設ければよく、いずれも省略したり、他の手段で代替したりすることができる。
【0025】
前記保持具6は、基材Pを保持して上下方向に移動させる部材である。この実施形態の保持具6は、基材Pの上部を挟持するクリップ状の部材である。保持具6は、図示しない昇降装置によって昇降するように構成されている。
図1及び
図3(a)に示すように、この実施形態では、保持具6が三つの場合を一例としているが、保持具6は三つより多くても少なくてもよい。
【0026】
フレキシブル基板のような軟質な基材を保持する場合、基材Pのふらつきを抑えるため、
図3(b)に示すような基材Pの幅方向の両端側を挟持する保持具6を用いることもできる。この保持具6は、基材Pの長さ方向の全長又は略全長を挟持できる長さを備えている。保持具6には、これら以外のものを用いることもできる。
【0027】
前記下受け具7は、所定位置まで降下した基材Pを下側から支持する部材である。この実施形態では、下受け具7として基材Pの幅方向よりも長い上向きコ字状の樋状部材を用いている。下受け具7は塗布ロール1や姿勢保持具9、押さえピン8よりも低い位置に配置されている。下受け具7は、当該下受け具7に基材Pが到達したときに、当該基材Pの上端付近が塗布ロール1と同程度の高さになるような位置に設けてある。
【0028】
前記押さえピン8は、所定位置まで降下した基材Pの両面を一時的に押さえるピン状の部材である。この実施形態の押さえピン8は、図示しない駆動手段によって基材Pに接近する方向と基材Pから離れる方向に移動するように構成されている。この実施形態では、基材Pのそれぞれの面の外側に二本ずつ(合計四本)設けられた場合を一例としているが、押さえピン8は四本より多くても少なくてもよい。
【0029】
前記姿勢保持具9は、基材Pの両面に接触又は近接して当該基材Pの起立姿勢を保持するための部材である。この実施形態の姿勢保持具9はゴム製の直方体状ブロックである。この実施形態では、姿勢保持具9を基材Pの一方の面の外側に二つ、他方の面の外側に二つ(合計四つ)設けられている。
図3(a)(b)に示すように、各面の外側の姿勢保持具9は、基材Pの幅方向に間隔をあけて設けられている。姿勢保持具9の数は四つより多くすることも少なくすることもできる。
【0030】
この実施形態の各姿勢保持具9は、図示しない駆動手段によって基材Pに接近する方向と基材Pから離れる方向に移動するように構成されている。各姿勢保持具9は個別に移動するように構成することもできるが、この実施形態では、基材Pの同一面を押さえる二つの姿勢保持具9が同期して移動するようにしてある。
【0031】
この実施形態では、姿勢保持具9を塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3と別々に移動するようにしてあるが、姿勢保持具9は塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3と同期して移動するようにしてもよい。各姿勢保持具9は移動せずに一定位置に固定しておくこともできる。
【0032】
各姿勢保持具9は、塗布ロール1の下側に設けられている。姿勢保持具9は、塗布ロール1に接触するように設けることも、離して設けることもできる。塗布ロール1に接触するように設ける場合、姿勢保持具9の上面を塗布ロール1の外周に沿うように円弧状に窪ませておくこともできる。
【0033】
この実施形態では姿勢保持具9をゴム製としているが、姿勢保持具9はゴム製以外であってもよい。いずれの場合も、塗布ロール1での塗料の塗布に際して、基材Pのスムーズな移動(昇降)を阻害しない程度の摩擦抵抗の低い材質性とするのが好ましい。姿勢保持具9は、基材Pのスムーズな上昇を阻害しないように接触面積の小さな形状とすることもできる。また、姿勢保持具9の少なくとも当接面にフッ素樹脂加工を施して摩擦抵抗を小さくしてもよい。
【0034】
なお、この実施形態では、基材Pを上昇させながら塗料を塗布する場合を一例としているが、
図2に一点鎖線で示すように、基材Pを降下させながら塗料を塗布するような構成とすることもできる。この場合も、塗布ロール1は基材Pの移動方向に対して逆方向に回転するようにしても、基材Pの移動方向に対して正方向に回転するようにしてもよい。
【0035】
(実施形態2)
本発明の塗布装置の実施形態の他例を、図面を参照して説明する。この実施形態の塗布装置の基本的な構成は実施形態1と同様である。異なるのは基材Pの移動方式である。前記実施形態では、基材Pを保持具6で保持して上下方向に移動させる場合(基材Pが枚葉の場合)を一例としているが、本発明の塗布装置は、
図4に示すようにロールツーロールで移動する基材Pに対して塗料を塗布するものとすることもできる。
【0036】
具体的には、
図4に示すように、繰出しロール10と巻取りロール11を上下方向に間隔をあけて配置し、基材Pが繰出しロール10から繰り出され、巻取りロール11によって巻き取られるようにすることができる。
【0037】
図4に示す例では、下側に繰出しロール10が、上側に巻取りロール11が設けられた場合を一例として示しているが、繰出しロール10と巻取りロール11は上下を逆にして、基材Pを
図4に一点鎖線で示すように下向きに移動させながら塗料を塗布する構成とすることもできる。
【0038】
図4のような構成とする場合も、塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3には実施形態1と同様のものを用いることができる。なお、基材Pの移動をロールツーロール方式で行う場合、保持具6、下受け具7、押さえピン8及び姿勢保持具9は省略することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
前記両実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2の直径が同じ場合を一例としているが、塗布ロール1とドクターロール2は直径の異なるものを用いることができる。また、前記実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2の長さが同じ場合を一例としているが、塗布ロール1とドクターロール2は長さの異なるものを用いることもできる。
【0040】
前記両実施形態では、塗布ロール1としてベタロールを、ドクターロール2として彫刻ロールを用いる場合を一例としているが、塗布ロール1として彫刻ロールを、ドクターロール2としてベタロールを用いることもできる。また、可能であれば、塗布ロール1とドクターロール2の双方をベタロールあるいは彫刻ロールとしてもよい。
【0041】
前記両実施形態では、塗布ロール1としてゴムロールを、ドクターロール2として金属ロール(炭素鋼にDLC膜を形成したもの)を用いる場合を一例としているが、塗布ロール1として前記金属ロールを、ドクターロール2としてゴムロールを用いることもできる。また、可能であれば、塗布ロール1とドクターロール2の双方を金属ロールあるいはゴムロールとしてもよい。
【0042】
金属ロールには、たとえば、SUS304やSUS440C等のオーステナイト系やマルテンサイト系に代表されるステンレス鋼全般、STKM13AやS25C等の炭素鋼表面にHCめっきやNiめっき、ステンレスや炭素鋼又はHCrめっき表面にDLC膜が施工されているもの等を用いることができる。
【0043】
前記両実施形態では、ドクターロール2が塗布ロール1よりも高い位置に配置された場合を一例としているが、ドクターロール2は、
図5に示すように、塗布ロール1よりも低い位置(低所)に配置することもできる。この場合、同図中、基材Pの左側に位置するドクターロール2は時計回りに、同塗布ロール1は反時計回りに回転する。一方、同図中、基材Pの右側に位置するドクターロール2は反時計回りに、同塗布ロール1は時計回りに回転する。この構成は、塗料の粘性が重力によって落ちない程度に高い場合に採用しやすい構成である。
【0044】
前記両実施形態では説明を省略しているが、ドクターロール2は塗布ロール1を押し込む方向とその方向と反対方向(押し込みを解除する方向)に移動できるようにすることもできる。同様に、塗布ロール1は基材Pを押し込む方向とその方向と反対方向(押し込みを解除する方向)に移動できるようにすることができる。
【0045】
前記両実施形態では、塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3は、基材Pを挟んだ両側に同じ高さで設けられた場合を一例としているが、塗布ロール1、ドクターロール2及び受け部材3は、
図6に示すように、基材Pを挟んだ両側に異なる高さで設けることもできる。この構成は、基材Pがフィルムや銅箔のような軟質なものである場合に採用しやすい構成である。
【0046】
前記両実施形態では、塗布ロール1とドクターロール2の長手方向両外側にこぼれ止め5が設けられた場合を一例としているが、受け部材3にこぼれ止め5に相当する構成を付加することによって、こぼれ止め5を省略することもできる。
【0047】
本発明は、前記各実施形態の構造や形状に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形や変更が可能である。
【0048】
次に、本発明の塗布装置の動作について図面を参照して説明する。ここでは、本発明の塗布装置の動作の一例として、前記実施形態1の塗布装置の動作と、前記実施形態2の塗布装置の動作について説明する。
【0049】
前記実施形態1の塗布装置は、次のように動作する。なお、
図7(a)~(d)及び
図8(a)~(d)では、保持具6、押さえピン8及び姿勢保持具9について、基材Pに接触又は近接した状態を実線で、基材Pに接触していない又は近接していない状態を二点鎖線で示す。
(1)保持具6によって保持された基材Pが所定位置にセットされる(
図7(a)、
図8(a))。
(2)保持具6で保持された基材Pが所定位置まで降下して、下受け具7で支持される(
図7(b)、
図8(b))。
(3)基材Pの両面に押さえピン8が当接し、基材Pが保持される(
図7(c)、
図8(c))。このとき、基材Pが押さえピン8で保持される直前に保持具6による基材Pの挟持が解除される。また、姿勢保持具9が基材Pの両面に接近又は接触し、基材Pの起立姿勢が保持される。
(4)基材Pの両面の塗布ロール1が基材Pに当接し、塗布ロール1の表面に保持された塗料が基材Pに転写される(
図7(d)、
図8(d))。このとき、保持具6によって再び基材Pの上端部が挟持されて基材Pが引き上げられ、この引き上げられる基材Pに塗布ロール1の表面の塗料が転写される。なお、基材Pに塗布ロール1が接触する直前に押さえピン8による基材Pの保持が解除される。
【0050】
前記実施形態2の塗布装置は、次のように動作する。
(1)繰出しロール10と巻取りロール11に保持された基材Pが所定位置にセットされる(
図9(a)、
図10(a))。
(2)繰出しロール10と巻取りロール11の動作によって繰出しロール10側から巻取りロール11側に移動する基材Pの両面に塗布ロール1が当接し、塗布ロール1の表面に保持された塗料が基材Pに転写される(
図9(b)、
図10(b))。
【0051】
前記両動作において、塗布ロール1から基材Pに塗布される塗料は、ドクターロール2から供給された塗料と塗布ロール1が自らピックアップした塗料であり、両ロールを通過する際に所定の厚さに均されたものである。
【0052】
以上のとおり、前記各実施形態の塗布装置では、塗料がドクターロール2から塗布ロール1に供給されるのみならず、塗布ロール1が自ら塗料をピックアップできるように構成されているため、塗布ロール1に付着する塗料の量が安定しやすく、基材Pに平滑な塗膜を形成することができる。
【0053】
本発明の塗布装置は各種基材Pへの塗料の塗布に用いることができ、特に、リジッド基板やフレキシブル基板等のプリント配線基板にレジストを塗布する場合や、銅箔に接着剤を塗布する場合等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 塗布ロール
2 ドクターロール
3 受け部材
4 液だまり部
5 こぼれ止め
6 保持具
7 下受け具
8 押さえピン
9 姿勢保持具
10 繰出しロール
11 巻取りロール
P 基材