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特許7533980アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20240806BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/04992
H01M8/04537
H01M8/0432
H01M8/0444
H01M4/86 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022180074
(22)【出願日】2022-11-10
(65)【公開番号】P2023166958
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】202210500031.8
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522440061
【氏名又は名称】中汽研新能源汽車検査中心(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 子栄
(72)【発明者】
【氏名】ハオ ドン
(72)【発明者】
【氏名】張 妍懿
(72)【発明者】
【氏名】王 暁兵
(72)【発明者】
【氏名】陳 光
(72)【発明者】
【氏名】焦 道寛
(72)【発明者】
【氏名】李 岩
(72)【発明者】
【氏名】王 睿迪
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106058284(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0316927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0219401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/04992
H01M 8/04537
H01M 8/0432
H01M 8/0444
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素をアノード出口から燃料電池スタックのアノード入口まで循環し輸送するアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法であって、
燃料電池は、窒素透過方向に、カソード電極板、カソード流路、カソードガス拡散層、カソード微孔層、カソード触媒層、プロトン交換膜、アノード触媒層、アノード微孔層、アノードガス拡散層、アノード流路およびアノード電極板を順次含み、
前記アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法は、
燃料電池内部における膜内水輸送方程式、液状水輸送方程式、温度輸送方程式に基づいて、膜内水輸送方程式の出力結果、液状水輸送方程式の出力結果、温度輸送方程式の出力結果を算出することと、
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、前記膜内水輸送方程式の出力結果と前記温度輸送方程式の出力結果に従って、カソードからアノードまで膜透過する窒素量を計算し、ガス輸送方程式、前記カソードからアノードまで膜透過する窒素量、前記液状水輸送方程式の出力結果と前記温度輸送方程式の出力結果に基づいて、窒素濃度集合、水蒸気濃度集合、水素濃度集合及び、酸素濃度集合を含む前記ガス輸送方程式の出力結果を計算することと、
前記窒素濃度集合はアノード流路の窒素濃度、アノード拡散層の窒素濃度、アノード微孔層の窒素濃度、アノード触媒層の窒素濃度、カソード触媒層の窒素濃度、カソード微孔層の窒素濃度、カソード拡散層の窒素濃度及び、カソード流路の窒素濃度を含み、
前記水蒸気濃度集合はアノード流路の水蒸気濃度、アノード拡散層の水蒸気濃度、アノード微孔層の水蒸気濃度、アノード触媒層の水蒸気濃度、カソード触媒層の水蒸気濃度、カソード微孔層の水蒸気濃度、カソード拡散層の水蒸気濃度及び、カソード流路の水蒸気濃度を含み、
前記水素濃度集合はアノード流路の水素濃度、アノード拡散層の水素濃度、アノード微孔層の水素濃度及びアノード触媒層の水素濃度を含み、
前記酸素濃度集合はカソード触媒層の酸素濃度、カソード微孔層の酸素濃度、カソード拡散層の酸素濃度及びカソード流路の酸素濃度を含み、
前記温度輸送方程式の出力結果と前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターを求めることと、
アノードサイクルモードでの前記ガス状態パラメーターと前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、燃料電池の出力電圧性能を予測することとを含み、
前記膜内水輸送方程式は
【数7】
であり、
式中、ρ MEM はプロトン交換膜密度、EWはプロトン交換膜の当量質量、ωはポリマーの体積分数、λは膜内水の含有量、tは時間、D mw
は膜内水の拡散係数、S mw は膜内水のソースアイテム、∇・(ω 1.5 mw ∇λ)は(ω 1.5 mw ∇λ)の発散、∇λは膜内水の勾配を表し、
前記膜内水輸送方程式の出力結果は、アノード触媒層の膜内水含有率、プロトン交換膜の膜内水含有率、カソード触媒層の膜内水含有率を含み、
前記膜内水輸送方程式の出力結果はアノード触媒層中の膜内水含有量、プロトン交換膜の膜内水含有量及び、カソード触媒層の膜内水含有量を含み、
前記液状水輸送方程式は
【数8】
であり、
式中、εは空隙率、ρ lq は液状水の密度、S lq は液状水の体積分率、K lq は液状水の透過率、μ lq 液状水の動粘性係数、p は水圧、S lq は液状水のソースアイテムを表し、
前記液状水輸送方程式出力結果はアノードガス拡散層の液状水体積分率、アノード微孔層の液状水体積分率、アノード触媒層の液状水体積分率、カソードガス拡散層の液状水体積分率、カソード微孔層の液状水体積分率及びカソード触媒層の液状水体積分率を含み、
前記温度輸送方程式は
【数9】
前記温度輸送方程式の出力結果はアノード電極板中の温度、アノード流路中の温度、アノード拡散層中の温度、アノード微孔層中の温度、アノード触媒層中の温度、プロトン交換膜中の温度、カソード触媒層中の温度、カソード微孔層中の温度、カソード拡散層中の温度、カソード流路中の温度及び、カソード電極板中の温度を含み、
前記カソードガス拡散層、前記カソード微孔層、前記カソード触媒層、前記アノード触媒層、前記アノード微孔層及び前記アノードガス拡散層のガス輸送方程式はいずれも
【数10】
であり、
前記カソード流路と前記アノード流路のガス輸送方程式はいずれも
【数11】
であり
ここで、iは水素、酸素、窒素又は水蒸気、εは孔隙率、S lq は現時点の液状水体積分率、ρ は気体の密度、Y は気体の質量分率、
【数12】
は現時点の気体の有効拡散係数、tは時間、u 気体流速、S は気体ソースアイテム、∇・は発散、∇は勾配を表し、
現時点の前記気体の有効拡散係数のパラメータ値は現時点の前記液状水輸送方程式の出力結果と現時点の前記温度輸送方程式の出力結果に基づいて確定されたものであり、
アノードサイクルモードでのガス状態パラメータは燃料電池入口におけるアノード水素流量、高圧水素タンクから供給される水素流量とアノード入口における気体の温度を含み、
前記ガス状態パラメータの確定式は
【数13】
であり、
ここで、
【数14】
は燃料電池入口におけるアノード水素流量、Iは電流密度、A cell は燃料電池の有効反応面積、ST はアノードのストイキ比、Fはファラデー定数を表し、
【数15】
は高圧水素タンクから供給される水素流量、
【数16】
はそれぞれアノードサイクルモードでの回収・再利用の水素流量、水蒸気流量、窒素流量を表し、
an_inlet はアノード入口における気体の温度、
【数17】
はそれぞれ水素、水蒸気、窒素の比熱、
【数18】
はそれぞれ水素、水蒸気、窒素のモル質量、
【数19】
は水素タンクの排出口における水素の温度、T CHa はアノード流路排出口における温度を表し、
アノードサイクルモードでの回収・再利用の水素流量、水蒸気流量及び窒素流量は前記温度輸送方程式の出力結果と前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、確定されたものであること、を特徴とするアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法。
【請求項2】
燃料電池の構造設計パラメータと運転状況パラメータを求める、ことを特徴とする請求項1に記載のアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法。
【請求項3】
前記カソードからアノードまで膜透過する窒素量の計算式は
【数20】
であり、
式中、
【数21】
は現時点のカソードからアノードまで膜透過する窒素量、
【数22】
は現時点の窒素の膜透過係数、
【数23】
はそれぞれ先ほどのカソード触媒層の窒素濃度、先ほどのアノード触媒層の窒素濃度、Rは理想気体定数、TCLc、TCLaはそれぞれ現時点のカソード触媒層の温度、現時点のアノード触媒層の温度、δMEMはプロトン交換膜厚さを表し、
現時点の窒素膜透過係数の計算式は
【数24】
であり、
式中、
【数25】
は定数、Ψはプロトン交換膜の膜内水の占める体積分率を表し、
【数26】
であり、TMEMは現時点のプロトン交換膜の温度、λMEMは現時点のプロトン交換膜の膜内水の含有量、VMEMはプロトン交換膜の当量体積、
【数27】
は水のモル体積を表すこと、を特徴とする請求項に記載のアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法。
【請求項4】
前記燃料電池出力電圧性能を求める式は
【数28】
であり、
式中、Voutは出力電圧、VNernstはネルンスト電圧、Vactは活性化による電圧損失、Vohmicは抵抗による電圧損失、Vconcは濃度差による電圧損失を表し、
Rは理想気体定数、Fはファラデー定数、Tは温度、
【数29】
はそれぞれ対照の水素の濃度、対照の酸素の濃度、α、αはそれぞれアノード電荷移動係数、カソード電荷移動係数、n、nはそれぞれアノードから移動の電荷の数、カソードkら移動の電荷の数、j、jはそれぞれアノード反応率、カソード反応率、p、pはそれぞれアノードのガスの圧力、カソードのガスの圧力、ST、STはそれぞれアノードストイキ比、カソードストイキ比、δCLa、δCLcはそれぞれアノード触媒層の厚さ、カソード触媒層の厚さ、Iは電流密度、ASRは単位面積あたりの抵抗、Ilim,a、Ilim,cはそれぞれアノードのリミティング電流密度、カソードのリミティング電流密度を表し、
前記アノード反応率と前記カソード反応率は前記液状水輸送方程式の出力結果と前記温度輸送方程式の出力結果に基づくものであり、
前記アノードリミティング電流密度と前記カソードリミティング電流密度は前記ガス輸送方程結果に従って確定されたものであること、を特徴とする請求項1に記載のアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン交換膜燃料電池の技術分野に関し、特に、アノードサイクルモードでの燃料電池の性能を予測する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素エネルギーは、応用の可能性が広く、戦略的意義さえも持つクリーンな二次エネルギーとみなされ、世界各国から高く重視されている。プロトン交換膜燃料電池(Proton exchange membrane fuel cell、PEMFC)は、水素エネルギー産業の発展のためのコア技術の1つであり、高い出力密度、高いエネルギー変換効率、およびゼロエミッションという利点がある。
【0003】
燃料電池のアノード反応ガスとする水素は、流量が出力電力とエネルギー利用率に直接影響する。水素の供給が不十分になると、燃料電池内のガス欠乏が発生し、燃料電池の出力性能や耐久性が低下する。しかし、過剰な水素供給は燃料の浪費を招き、エネルギー効率の低下につながる。燃料電池自動車において、車両全体の水素の利用効率及び車両の航続距離を向上させるように、水素供給システムには、燃料電池スタックのアノード出口から燃料電池スタックのアノード入口まで水素を循環させる水素循環ループが設けられる。燃料電池スタックのアノード排出ガスには、未消費の水素と電気化学反応によって生成された水蒸気が含まれているため、水素サイクルにより、燃料電池スタックのアノード入口ガスをある程度加湿し、燃料電池スタックの水管理状態を改善できる。プロトン交換膜のガスに対する透過性は非常に低いことに関わらず、カソードとアノードのガス圧力勾配による駆動で、窒素はカソードからアノードに透過し続け、経時的に蓄積し、アノード触媒層の有効活性点に水素を輸送することが困難になり、電気化学反応が起こらなくなり、出力性能が低下になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃料電池の出力性能の予測精度を向上させるために、アノードサイクルモードでの燃料電池の性能を予測する方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を実現するために、本発明は以下のような技術案を提供する。
第一の局面では、本発明はアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法を提供し、燃料電池は、窒素透過方向に、カソード電極板、カソード流路、カソードガス拡散層、カソード微孔層、カソード触媒層、プロトン交換膜、アノード触媒層、アノード微孔層、アノードガス拡散層、アノード流路およびアノード電極板を順次含む。
前記アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法は、
燃料電池内部における膜内水分輸送方程式、液状水輸送方程式、温度輸送方程式に基づいて、膜内水分輸送方程式の出力結果、液状水輸送方程式の出力結果、温度輸送方程式の出力結果を算出することと、
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果および膜水輸送方程式の出力結果を含む第1マーカー方程式の出力結果に従って、ガス輸送方程式の出力結果を計算することと、
前記温度輸送方程式の出力結果と前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターを求めることと、
アノードサイクルモードでの前記ガス状態パラメーターと前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果を含む第2マーカー方程式の出力結果に基づいて、燃料電池の出力電圧性能を予測することとを含む。
【0006】
第二の局面では、本発明はアノードサイクルモードでの燃料電池性能予測システムを提供し、燃料電池は、窒素透過方向に、カソード電極板、カソード流路、カソードガス拡散層、カソード微孔層、カソード触媒層、プロトン交換膜、アノード触媒層、アノード微孔層、アノードガス拡散層、アノード流路およびアノード電極板を順次含む。
前記アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測システムは、
燃料電池内部における膜内水分輸送方程式、液状水輸送方程式、温度輸送方程式に基づいて、膜内水分輸送方程式の出力結果、液状水輸送方程式の出力結果、温度輸送方程式の出力結果を算出するために使用される、第1方程式の出力結果の確定モジュールと、
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式および膜水輸送方程式の出力結果を含む第1マーカー方程式の出力結果に従って、ガス輸送方程式の出力結果を計算するために使用される、第2方程式の出力結果の確定モジュールと、
前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターを求めるために使用される、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターの確定モジュールと、
アノードサイクルモードでの前記ガス状態パラメーターと前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果を含む第2マーカー方程式の出力結果に基づいて、燃料電池の出力電圧性能を予測するために使用される、燃料電池の出力電圧性能予測モジュールとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明により提供される具体的な実施例によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する。
(1)本発明はアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法及びシステムを提供し、燃料電池内部窒素の膜透過現象について計算を行い、燃料電池アノードの窒素の分布及び燃料電池内部における「水―気―熱―電」のパラメータの分布を特徴づけ、かつアノードサイクルモードでの燃料電池の出力性能を予測した。
【0008】
(2)本発明により提供されるアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法及びシステムは、窒素の膜透過メカニズムを欠くことでモデル予測精度が低くなるという既存のモデルの欠点を補い、アノード排気の策略の開発のためにデータサポートを提供し、実験コストと開発サイクルの大幅な削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、実施例で使用される添付の図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例にすぎず、当業者にとって、創造的な努力なしにこれらの図面から他の図面を取得することもできる。
【0010】
図1図1は本発明の前記のアノードサイクルモードでの燃料電池のモデルの模式図であり、
図2図2は本発明の前記のアノードサイクルモードでの燃料電池の性能の予測方法のローチャートであり、
図3図3は本発明を適用した場合に計算されたアノード窒素ガスのモル分率の曲線図であり、
図4図4は本発明を適用した場合に予測された燃料電池の出力性能の模式図であり、
図5図5は本発明を適用した場合に燃料電池の出力性能の経時変化を示すグラフであり、
図6図6は本発明を適用した場合にアノード流路の窒素濃度の経時変化を示すグラフであり、
図7図7は本発明を適用した場合にアノード流路の水素濃度の経時変化を示すグラフであり、
図8図8は本発明の前記アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測システムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例における技術的解決手段は、本発明の実施例における添付の図面を参照して、以下で明確かつ完全に説明され、明らかに、説明された実施例は、本発明の実施例のすべてではなく一部に過ぎない。本発明の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に入るべきである。
【0012】
現在、アノード内のガス流方向に沿って膜を透過する窒素の分布とその影響規律は国内外で明らかにされておらず、この現象はアノード排気策略(開放持続時間、開口間隔時間、開口振幅など)の開発に重要である。したがって、燃料電池のアノード排気策略の技術開発ニーズを満たすために、アノードサイクルモードでの燃料電池の性能予測技術を提案する必要がある。これを考慮して、本発明は、燃料電池内部窒素の膜透過現象について計算を行い、燃料電池アノードの窒素の分布及び燃料電池内部における「水―気―熱―電」のパラメータの分布を特徴づけ、かつアノードサイクルモードでの燃料電池の出力性能を予測できるアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法及びシステムを提供し、窒素の膜透過メカニズムを欠くことでモデル予測精度が低いという既存のモデルの欠点を補い、アノード排気策略の開発にシミュレーションデータのサポートを提供でき、実験コストと開発サイクルが大幅に削減されることができる。
【0013】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより顕著で分かりやすくするために、以下に図面及び発明を実施するための形態を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
実施例一
図1に示すように、燃料電池は、窒素透過方向に、カソード電極板、カソード流路、カソードガス拡散層、カソード微孔層、カソード触媒層、プロトン交換膜、アノード触媒層、アノード微孔層、アノードガス拡散層、アノード流路およびアノード電極板を順次含む。
【0015】
図2に示すように、本発明の実施例により提供されるアノードサイクルモードでの下燃料電池性能予測方法は以下のようなステップ201~204を含む。
燃料電池内部における膜内水分輸送方程式、液状水輸送方程式、温度輸送方程式に基づいて、膜内水分輸送方程式の出力結果、液状水輸送方程式の出力結果、温度輸送方程式の出力結果を算出するステップ201である。
【0016】
前記膜内水分輸送方程式の出力結果はアノード触媒層の膜内水分含有量、プロトン交換膜の膜内水分含有量及び、カソード触媒層の膜内水分含有量を含む。
【0017】
前記液状水輸送方程式の出力結果はアノードガス拡散層の液状水体積分率、アノード微孔層の液状水体積分率、アノード触媒層の液状水体積分率、カソードガス拡散層の液状水体積分率、カソード微孔層の液状水体積分率及び、カソード触媒層の液状水体積分率を含む。
【0018】
前記温度輸送方程式の出力結果はアノード電極板中の温度、アノード流路中の温度、アノード拡散層中の温度、アノード微孔層中の温度、アノード触媒層中の温度、プロトン交換膜中の温度、カソード触媒層中の温度、カソード微孔層中の温度、カソード拡散層中の温度、カソード流路中の温度及び、カソード電極板中の温度を含む。
【0019】
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、第1マーカー方程式の出力結果に従って、気体輸送方程式の出力結果を計算するステップ202である。前記第1マーカー方程式の出力結果は前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果及び、膜内水分輸送方程式の出力結果を含む。
【0020】
前記気体輸送方程式の出力結果は窒素濃度集合、水蒸気濃度集合、水素濃度集合及び、酸素濃度集合を含む。
【0021】
前記窒素濃度集合はアノード流路の窒素濃度、アノード拡散層の窒素濃度、アノード微孔層の窒素濃度、アノード触媒層の窒素濃度、カソード触媒層の窒素濃度、カソード微孔層の窒素濃度、カソード拡散層の窒素濃度及び、カソード流路の窒素濃度を含む。
【0022】
前記水蒸気濃度集合はアノード流路の水蒸気濃度、アノード拡散層の水蒸気濃度、アノード微孔層の水蒸気濃度、アノード触媒層の水蒸気濃度、カソード触媒層の水蒸気濃度、カソード微孔層の水蒸気濃度、カソード拡散層の水蒸気濃度及びカソード流路の水蒸気濃度を含む。
【0023】
前記水素濃度集合はアノード流路の水素濃度、アノード拡散層の水素濃度、アノード微孔層の水素濃度及びアノード触媒層の水素濃度を含む。
【0024】
前記酸素濃度集合はカソード触媒層の酸素濃度、カソード微孔層の酸素濃度、カソード拡散層の酸素濃度及びカソード流路の酸素濃度を含む。
【0025】
前記温度輸送方程式の出力結果と前記気体輸送方程式の出力結果に基づいて、アノードサイクルモードでの気体状態パラメータを求めるステップ203である。
【0026】
アノードサイクルモードでの前記気体状態パラメータと前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果と前記気体輸送方程式の出力結果を含む第2マーカー方程式の出力結果に基づいて、燃料電池出力電圧性能を予測するステップ204である。
【0027】
好ましい形態として、本発明実施例により提供される燃料電池性能予測方法は、ステップ201を実行する前に、燃料電池の構造設計パラメータと運転状況パラメータを求めることをさらに含む。
【0028】
一つの例としては、燃料電池の構造設計パラメータは、次のとおりである。
有効反応面積:25 cm2、電極板厚さ:2 mm、流路厚さ:1 mm、ガス拡散層厚さ:0.2 mm、微多孔層厚さ:0.02 mm、触媒層厚さ:0.01 mm、プロトン交換膜厚さ:0.025 mm、流路長さ:0.10 m、流路対リブ幅比:1。
【0029】
電極板密度:1000 kg m-3、ガス拡散層密度:1000 kg m-3、微孔層密度:1000 kg m-3、触媒層密度:1000 kg m-3、プロトン交換膜密度:1980 kg m-3
【0030】
電極板比熱:1580 J kg-1 K-1、ガス拡散層比熱:2000 J kg-1 K-1、微孔層比熱:568 J kg-1 K-1、触媒層比熱:3300 J kg-1 K-1、プロトン交換膜比熱、833 J kg-1 K-1
【0031】
電極板熱伝導率:20 W m-1 K-1、ガス拡散層熱伝導率:1.0 W m-1 K-1、微孔層熱伝導率:1.0 W m-1 K-1、触媒層熱伝導率:1.0 W m-1 K-1、プロトン交換膜熱伝導率:0.95 W m-1 K-1
【0032】
電極板導電率:20000 S m-1、ガス拡散層導電率:300 S m-1、微孔層導電率:300 S m-1、触媒層導電率:300 S m-1、プロトン交換膜導電率:300 S m-1
【0033】
触媒層孔隙率:0.3、微孔層孔隙率:0.4、ガス拡散層孔隙率:0.6。
【0034】
触媒層接触角:100°、微孔層接触角:100°、ガス拡散層接触角:120°。
【0035】
触媒層中のポリマーの体積分率:0.4、プロトン交換膜中のポリマーの体積分率:1、プロトン交換膜当量質量:1.1 kg mol-1、プロトン交換膜当量体積18×10-6 m3 mol-1
【0036】
膜内水と水蒸気との間の相転移速率、膜内水と液状水との間の相転移速率、液状水と水蒸気との間の相転移速率:1.0 s-1、1.0 s-1、1000.0 s-1
【0037】
アノード、カソードの各自の参照の反応率:108 A m-3、100 A m-3
【0038】
対照水素、対照酸素の各自濃度:20 mol m-3、10 mol m-3
【0039】
蒸発潜熱係数:2.308×106 J kg-1
【0040】
上記の電極板はアノード電極板とカソード電極板を、流路はアノード流路とカソード流路を、微孔層はアノード微孔層とカソード微孔層を、触媒層はアノード触媒層とカソード触媒層を含む。
【0041】
燃料電池の運転状態パラメータは具体的に以下の通りである。
電流密度:1.0Acm-2
カソード、アノードの入口におけるガスの各自の圧力:1.2 atm、1.2 atm。
カソード、アノードの入口における各自の相対湿度:1、0。
カソード、アノードの各自のストイキ比:1.5、1.2。
カソード、アノードの入口における各自の気体温度:60 ℃、60 ℃。
環境温度:25 ℃。
水素タンクの出口における水素の温度:25 ℃。
最初の膜内水分の含有量:6.0。
最初の液状水の体積分率:0。
時間ステップ:0.1s。
【0042】
好ましい形態として、ステップ201は具体的に以下を含む。
(1)現時点の膜内水分輸送方程式の出力結果の計算。
【0043】
【0044】
式(1)において、ρMEMはプロトン交換膜密度、EWはプロトン交換膜の当量質量、ωはポリマーの体積分数、ここで、λは膜内水の含有量、tは時間、Dmw
は膜内水の拡散係数、Smwは膜内水のソースアイテム、∇・(ω 1.5 mw ∇λ)(ω 1.5 mw ∇λ)の発散、∇λ膜内水の勾配を表す。ここで、ポリマーの体積分率はアノード触媒層、プロトン交換膜とカソード触媒層のポリマーの体積分率を含む。
【0045】
先ほどのアノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層の膜内水分含有量はそれぞれ3.895、7.153、15.203であり、温度はそれぞれ329.259K、329.312K、329.356Kである。
【0046】
現時点で、膜内水分の拡散係数は先ほどの温度と先ほどの膜内水分含有量に基づいて、確定されるものであり、明らかに、下式に従って、現時点のアノード触媒層、プロトン交換膜とカソード触媒層の膜内水分拡散係数はそれぞれ3.761×10-8 m2 s-1、2.763×10-8 m2 s-1、5.140×10-8 m2 s-1と計算できる。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
(3)において、Smwは現時点の膜内水源のパラメータ値、Sreactは現時点の電化学反応産物の水のソースアイテムのパラメータ値、Sm-vは現時点の膜内水と水蒸気との間の相転移源のパラメータ値、Sm-1は現時点の膜内水と液状水との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値、SEODは現時点のエレクトリックドラグ効果のソースアイテムのパラメータ値、Sperは現時点の水力浸透効果のソースアイテムのパラメータ値を表す。
【0051】
【0052】
【0053】
現時点の膜内水と水蒸気との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの膜内水含有量、現時点の平衡膜内水含有量及び先ほどの温度に基づいて確定されるものであり、その計算の方程式は以下の通りである。
【数1】
【0054】
式(5)において、
【数2】
は膜内水と水蒸気との間の相転移速率、λは先ほどの膜内水含有量を表す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
現時点の膜内水と液状水の相転移のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの膜内水含有量と先ほどの温度に基づいて、確定されるものであり、その計算式は以下の通りである。
【数3】
【0060】
式(8)において、
【数4】
は膜内水と液状水との間の相転移速率、λは先ほどの膜内水含有量を表す。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
現時点の水力浸透効果のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの水圧、先ほどの膜内水含有量及び先ほどの温度に基づいて、求めるものであり、その計算式は以下の通りである。
【数5】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
上記計算により、現時点で、電化学反応産物の水のソースアイテムのパラメータ値は5.052 kmol m-3 s-1であり、アノード触媒層、カソード触媒層における膜内水分と水蒸気との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は-0.170 kmol m-3 s-1、2.144 kmol m-3 s-1であり、アノード触媒層、カソード触媒層における膜内水分と液状水との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は0、2.144 kmol m-3 s-1であり、アノード触媒層、プロトン交換膜とカソード触媒層におけるエレクトリックドラグ効果のソースアイテムのパラメータ値は-6.642 kmol m-3 s-1、-3.747 kmol m-3 s-1、16.009 kmol m-3 s-1であり、水力浸透効果のソースアイテムのパラメータ値は0.056 kmol m-3 s-1である。
【0070】
以上に基づいて、現時点で、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層中膜内水分のソースアイテムのパラメータ値はそれぞれ-6.109 kmol m-3 s-1、-3.622 kmol m-3 s-1、16.441 kmol m-3 s-1である。
【0071】
現時点の膜内水分拡散係数、現時点の膜内水分のソースアイテムの計算結果を膜内水分輸送方程式に代入して、現時点でのアノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層の膜内水分含有量はそれぞれ3.899、7.160、15.200と得られた。
【0072】
【0073】
【0074】
先ほどのアノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の液状水体積分率はそれぞれ1.075×10-3、3.796×10-2、1.511×10-1であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の液状水体積分率はそれぞれ1.050×10-1、2.108×10-2、2.352×10-2、アノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の温度はそれぞれ328.459 K、329.190 K、329.259 Kであり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の温度はそれぞれ329.356 K、329.294 K、328.515 Kである。
【0075】
【0076】
【0077】
現時点の膜内水分と液状水との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの膜内水分含有量と先ほどの温度に基づいて、確定されたものであり、その計算式は式(8)と同じである。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
上記の計算により、現時点でのアノード触媒層、カソード触媒層における膜内水分と液状水との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は0、2.144 kmol m-3 s-1であり、アノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層における液状水と水蒸気との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は-0.006 kg m-3 s-1、-0.127 kg m-3 s-1、-0.513 kg m-3 s-1であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層における液状水と水蒸気との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は3.011 kg m-3 s-1、2.816 kg m-3 s-1、2.495 kg m-3 s-1である。
【0085】
上記計算により、現時点で、アノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の液状水のソースアイテムのパラメータ値はそれぞれ-0.006 kg m-3 s-1、-0.127 kg m-3 s-1、-0.513 kg m-3 s-1であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の液状水のソースアイテムのパラメータ値は40.552 kg m-3 s-1、2.816 kg m-3 s-1、2.495 kg m-3 s-1である。
【0086】
上記液状水動粘性係数、液状水のソースアイテム及び、燃料電池構造パラメータを液状水輸送方程式に代入して、現時点のアノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の水圧がそれぞれ121607.3 Pa、121954.8 Pa、122962.7 Paで、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の水圧がそれぞれ122607.5 Pa、122363.8 Pa、121949.6 Paであることは得られる。
【0087】
水圧を求めた後、現時点での液状水の体積分率が毛管圧力の数値によって計算され、その計算式は以下の通りである。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
上記水圧数値を代入して、現時点で、アノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の毛細管圧がそれぞれ-17.3 Pa、-1364.8 Pa、-1372.7 Paであり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の毛細管圧がそれぞれ-1017.5 Pa、-773.8 Pa、-359.6 Paであり、アノードガス拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の液状水体積分率がそれぞれ1.082×10-3、3.804×10-2、1.515×10-1であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソードガス拡散層の液状水の体積分率がそれぞれ1.049×10-1、2.108×10-2、2.349×10-2であることは得られた。
【0092】
【0093】
【0094】
先ほどのアノード電極板、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路、カソード電極板の温度はそれぞれ327.419 K、327.631 K、328.459 K、329.190 K、329.259 K、329.312 K、329.356 K、329.294 K、328.515 K、327.680 K、327.517 Kである。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
上記の計算により、現時点のアノード電極板、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路、カソード電極板の有効熱伝導率はそれぞれ20.0 W m-1 K-1、10.125 W m-1 K-1、0.417 W m-1 K-1、0.674 W m-1 K-1、0.673 W m-1 K-1、0.950 W m-1 K-1、0.613 W m-1 K-1、0.614 W m-1 K-1、0.325 W m-1 K-1、10.017 W m-1 K-1、20.0 W m-1 K-1であり、現時点のアノード電極板、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路、カソード電極板の有効密度比熱はそれぞれ1.580×106 J m-3 K-1、1.291×106 J m-3 K-1、0.172×106 J m-3 K-1、1.219×106 J m-3 K-1、1.392×106 J m-3 K-1、1.649×106 J m-3 K-1、1.505×106 J m-3 K-1、1.238×106 J m-3 K-1、0.260×106 J m-3 K-1、1.300×106 J m-3 K-1、1.580×106 J m-3 K-1
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
現時点の液状水と水蒸気の相転移のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの水蒸気濃度、先ほどの液状水体積分率及び先ほどの温度に基づいて、求めるものであり、その計算式は式(15)と同じである。
【0104】
現時点の膜内水分と水蒸気との間の相転移のソースアイテムのパラメータ値は先ほどの膜内水分含有量、現時点の平衡膜内水分含有量及び先ほどの温度に基づいて、求めるものであり、その計算式は式(5)と同じである。
【0105】
上記の計算により、現時点のアノード電極板、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路、カソード電極板の熱のソースアイテムのパラメータ値がそれぞれ4.715×103 W m-3、9.503×103 W m-3、1.023×105 W m-3、-2.519×105 W m-3、9.761×107 W m-3、1.811×107 W m-3、4.481×108 W m-3、6.540×106 W m-3、5.875×106 W m-3、5.856×106 W m-3、4.715×103 W m-3であることは得られた。
【0106】
上記の有効密度比熱、有効熱伝導率、熱のソースアイテムの計算結果を温度輸送方程式に代入して、現時点のアノード電極板、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路、カソード電極板の温度がそれぞれ327.485 K、327.691 K、328.520 K、329.247 K、329.316 K、329.369 K、329.413 K、329.351 K、328.568 K、327.731 K、327.567 Kであることは得られる。
【0107】
好ましい形態として、ステップ202は具体的に、
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、膜内水分輸送方程式の出力結果と温度輸送方程式の出力結果に基づいて、カソードからアノードまで膜透過する窒素量を計算するステップA1と、
【0108】
気体輸送方程式と前記カソードからアノードまで膜透過する窒素量に基づいて、気体輸送方程式の出力結果を計算するステップA2とを含む。
【0109】
気体輸送方程式はアノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路で、解かれる。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
先ほどのアノード触媒層、カソード触媒層中の窒素濃度はそれぞれ7.224×10-2 mol m-3、31.969 mol m-3であり、現時点のアノード触媒層、プロトン交換膜、カソード触媒層中の温度はそれぞれ329.259 K、329.312 K、329.356 Kであり、プロトン交換膜の膜内水分の含有量は7.153である。
【0115】
図3に示すように、実験における窒素の膜透過係数の定数は1×10-15 mol m-1 s-1 Pa-1であり、計算した窒素の膜透過係数は1.771×10-15 m2 s-1であり、経過と実験データの比較により、両者の差は大きくないため、計算した窒素の膜透過係数により現時点のカソードからアノードまで膜透過する窒素量は6.602×10-6 mol m-2 s-1と計算できる。
【0116】
【0117】
【0118】
現時点の気体有効拡散係数のパラメータ値は現時点の液状水輸送方程式の出力結果と現時点の温度輸送方程式の出力結果に基づいて、求めたものである。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
先ほどのアノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路中の窒素濃度はそれぞれ7.213×10-2 mol m-3、7.215×10-2 mol m-3、7.221×10-2 mol m-3、7.224×10-2 mol m-3、31.969 mol m-3、31.969 mol m-3、31.969 mol m-3、31.969 mol m-3であり、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路の水蒸気濃度はそれぞれ1.072 mol m-3、1.082 mol m-3、1.105 mol m-3、1.120 mol m-3、5.381 mol m-3、5.323 mol m-3、5.178 mol m-3、5.110 mol m-3であり、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の水素濃度はそれぞれ43.503 mol m-3、43.436 mol m-3、43.312 mol m-3、43.212 mol m-3であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路の酸素濃度はそれぞれ7.055 mol m-3、7.159 mol m-3、7.410 mol m-3、7.546 mol m-3である。
【0125】
上記有効ガス拡散係数、気体のソースアイテムを気体輸送方程式に代入して、計算により得られた現時点のアノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路の窒素濃度はそれぞれ7.267×10-2 mol m-3、7.270×10-2 mol m-3、7.276×10-2 mol m-3、7.279×10-2 mol m-3、31.965 mol m-3、31.965 mol m-3、31.965 mol m-3、31.965 mol m-3であり、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路の水蒸気濃度はそれぞれ1.076 mol m-3、1.085 mol m-3、1.108 mol m-3、1.123 mol m-3、5.378 mol m-3、5.320 mol m-3、5.175 mol m-3、5.107 mol m-3であり、アノード流路、アノード拡散層、アノード微孔層、アノード触媒層の水素濃度はそれぞれ43.490 mol m-3、43.423 mol m-3、43.300 mol m-3、43.200 mol m-3であり、カソード触媒層、カソード微孔層、カソード拡散層、カソード流路中酸素濃度はそれぞれ7.055 mol m-3、7.159 mol m-3、7.411 mol m-3、7.546 mol m-3である。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
式(34)~式(36)において、uは気体流速、
【数6】
は現時点の水素、窒素、水蒸気の濃度(現時点のガス輸送方程式の出力結果により求める)、ACH_outは流路出口の面積大きさを表す。
【0130】
現時点のアノードサイクルモードでの回収・再利用の水素、水蒸気、窒素流量はそれぞれ1.052×10-4 mol s-1、8.805×10-6 mol s-1、8.640×10-7 mol s-1であり、アノード流路出口における温度は327.631 Kである。
【0131】
上記計算式に基づいて、計算により得られた現時点の燃料電池に必要とするアノード入口の水素流量は6.219×10-4 mol s-1であり、高圧水素タンクから提供される水素流量は5.167×10-4 mol s-1、アノード入口の気体の温度は323.345Kである。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
上記の計算式に基づいて、計算により得られた現時点の活性化による電圧損失は0.312 V、抵抗による電圧損失は0.167 V、濃度差による電圧損失は3.021×10-4 Vであり、さらに計算により燃料電池の出力電圧は0.695 Vである。
【0137】
図3は本発明実施例による前記のアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法における窒素の膜透過現象と実験データの検証図であり、シミュレーション結果は実験データとよく一致し、取った窒素浸透係数の値の有効性は検証された。
【0138】
図4は、本発明の実施形態によるアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法のモデルシミュレーション結果および実験データの検証図であり、シミュレーション結果は実験データとよく一致し、モデルの有効性は検証された。
【0139】
図5図7はいずれも本発明の実施例によるアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測方法の実施効果であり、図5はアノードサイクルモードでの出力性能の経時変化図で、図6はアノードサイクルモード下アノード流路の窒素濃度の経時変化図で、図7はアノードサイクルモード下アノード流路の水素濃度の経時変化図である。
【0140】
実施例二
本発明実施例に提供されるアノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測システムでは、燃料電池は、窒素透過方向に、カソード電極板、カソード流路、カソードガス拡散層、カソード微孔層、カソード触媒層、プロトン交換膜、アノード触媒層、アノード微孔層、アノードガス拡散層、アノード流路およびアノード電極板を順次含み、図8に示すように、前記アノードサイクルモードでの燃料電池性能の予測システムは、
燃料電池内部における膜内水分輸送方程式、液状水輸送方程式、温度輸送方程式に基づいて、膜内水分輸送方程式の出力結果、液状水輸送方程式の出力結果、温度輸送方程式の出力結果を算出するために使用される、第1方程式の出力結果の確定モジュール801と、
【0141】
燃料電池内部における窒素の膜透過現象に基づいて、液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式および膜水輸送方程式の出力結果を含む第1マーカー方程式の出力結果に従って、ガス輸送方程式の出力結果を計算するために使用される、第2方程式の出力結果の確定モジュール802と、
【0142】
前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果に基づいて、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターを求めるために使用される、アノードサイクルモードでのガス状態パラメーターの確定モジュール803と、
【0143】
アノードサイクルモードでの前記ガス状態パラメーターと前記液状水輸送方程式の出力結果、前記温度輸送方程式の出力結果及び前記ガス輸送方程式の出力結果を含む第2マーカー方程式の出力結果に基づいて、燃料電池の出力電圧性能を予測するために使用される、燃料電池の出力電圧性能予測モジュール804とを含む。
【0144】
本システムはさらに、燃料電池の構造設計パラメータと運転状況パラメータを求めるために使用される、パラメータ確定モジュールを含む。
【0145】
本明細書における各実施例は漸増的に説明されており、各実施例は、他の実施例との相違点に焦点を当てており、各実施例の間の同一および類似の部分は互いに参照することができる。実施例で開示されたシステムについては、実施例で開示された方法に対応しているので、説明は比較的簡単であり、関連する部分は方法の説明を参照することができる。
【0146】
本発明の原理および実施形態は、特定の例を使用して本明細書に記載されており、上記の実施例の説明は、本発明の方法および核である思想を理解するのを助けるためにのみ使用されている。同時に、当業者にとって、本発明の思想に従って、特定の実施形態および適用範囲に変更が生じる。結論として、本明細書の内容は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8