(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20240806BHJP
【FI】
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2022523544
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2022070799
(87)【国際公開番号】W WO2022199217
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】202110302182.8
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲ジー▼ 非凡
(72)【発明者】
【氏名】李 静
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 雨薇
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035220(JP,A)
【文献】特開2017-154563(JP,A)
【文献】特開2001-286110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法であって、電流閉ループ調整モジュールと、変調比偏差算出モジュールと、電流指令角度補償モジュールと、電流角度事前設定モジュールと、電流指令角度制限比較器と、電流所定振幅補償モジュールと、電流所定ベクトル補正モジュールとの処理を備え、
前記電流閉ループ調整モジュールは、前記電流所定ベクトル補正モジュールから出力されたdq電流指令i
dref、i
qrefを受け取り、出力された
前記dq電流指令i
dref、i
qrefとid、iqのフィードバック量との差が
前記電流閉ループ調整モジュールに含まれる比例積分コントローラを経った後、dq電圧指令として前記電流閉ループ調整モジュールから出力され、
前記変調比偏差算出モジュールは、前記電流閉ループ調整モジュールから出力されたdq電圧指令を受け取り、出力されたdq電圧指令が二乗和を根にしてバス電圧で除算して所望の変調比MI
refを得た後、この変調比MI
refと所望の制御システム最大変調比MI
maxとの差をとり、さらにこの差が
前記変調比偏差算出モジュールに含まれるローパスフィルタを経った後、変調比偏差ΔMIとして前記変調比偏差算出モジュールから出力され
、
前記電流指令角度補償モジュールは、前記変調比偏差算出モジュールから出力された前記変調比偏差ΔMIを受け取り、前記変調比偏差ΔMIが
前記電流指令角度補償モジュールに含まれる比例積分補償器を経った後、補正角度Δθとして前記電流指令角度補償モジュールから出力され、
前記電流角度事前設定モジュールは、電流角度θ
preを予め設定することに用いられ、
前記電流指令角度制限比較器は、前記電流指令角度補償モジュールから出力された
前記補正角度
Δθの補償後の
補正後電流角度を、前記電流角度事前設定モジュールで予め設定された
前記電流角度
θ
pre
以上に制限することに用いられ、即ち、θ+Δθ≧θ
preとなり、θは前記電流所定ベクトル補正モジュールによる弱め界磁制御の前の
補正前電流角度であり、
前記補正角度Δθは以下の通りであり、
【数7】
ここで、k
p、k
iはそれぞれ前記比例積分補償器の比例係数、積分係数であり、ΔMIは変調比偏差であり、
前記電流所定振幅補償モジュールは、有効電力とリアルタイム電力との差ΔPを受け取り、この差ΔPが比例積分調整を経て、電流所定振幅調整量Δiとして前記電流所定振幅補償モジュールから出力され、ここで、リアルタイム電力P
calcuは以下の通りであり、
【数8】
ここで、U
busは
前記バス電圧に対するサンプリング値であり、I
busはバス電流I
dcに対するサンプリング値であり、電流所定振幅調整量Δiは以下の通りであり、
【数10】
【数9】
ここで、P
tabは有効電力であり、k
pP、k
iPはそれぞれ電流所定振幅補償モジュールにおける比例積分の比例係数、積分係数であり、
前記電流所定ベクトル補正モジュールは、前記電流所定振幅補償モジュールから出力された前記電流所定振幅調整量Δiで補償された電流の大きさ|i|を受け取り、前記電流角度事前設定モジュールで予め設定された
前記電流角度
θ
pre
、前記電流指令角度補償モジュールから出力された前記補正角度Δθ及び前記電流所定ベクトル補正モジュールによる弱め界磁制御の前の補正前電流角度θに基づいて、前記dq電流指令i
dref、i
qrefを算出し、
前記dq電流指令i
dref
、i
qref
を算出することは以下の通りであり、
【数11】
ここで、|i|
originは前記電流所定ベクトル補正モジュールによる弱め界磁制御の前の実際な電流の大きさであり、
前記電流指令角度制限比較器と前記電流所定ベクトル補正モジュールにより、dq電流運転曲線は対応する角度が変化し、
前記補正前電流角度
θが弱め界磁領域で自動的に補正される
ことを特徴とする直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法。
【請求項2】
前記変調比偏差算出モジュールでは、MI
maxとMI
refとの差ΔMI
0は以下の通りであり、
【数6】
【数5】
ここで、v
d_ref、v
q_refは
前記dq電圧指令であり、V
dcは
前記バス電圧である
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法。
【請求項3】
前記電流角度事前設定モジュールは、標準モータの電流角度に対して最大トルク電流比MTPA電流角度曲線描写制限を行い、電流角度をθ
preとして予め設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石同期モータ制御分野に属し、特に直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内蔵式永久磁石同期モータ(IPMSM)制御システムでは、実際の適用シナリオにおいて制御対象-IPMSMが不可避的に変化することにより制御プログラムにおいて予め設定された制御パラメータが失効し、モータが高速に運転し、弱め界磁が不足して電圧飽和を引き起こし、モータ駆動システムの安定性を危うくする。
【0003】
内臓式永久磁石同期モータは、電力密度が大きく、運転範囲が広く、効率が高いという特徴を有するため、電気自動車の駆動モータに広く使用されており、そのトルク方程式は以下の通りであり、
【数1】
(1)
ここで、T
eはモータの電磁トルクであり、P
nはモータ磁極対数であり、
は回転子永久磁石体磁束であり、i
qはq軸電流であり、i
dはd軸電流であり、L
dはd軸インダクタンスであり、L
qはq軸インダクタンスであり、IPMSM正常駆動過程において、T
e>0,i
q>0,i
d<0,L
d<L
qとなる。
【0004】
上式から分かるように、トルクは電流と正の相関があるが、異なるdq軸電流組み合わせは異なるトルクに対応し、それぞれの固定された電流振幅において、1セットの特定のdq電流の組み合わせが存在し、これによりモータが当該電流下で最大のトルクを出力することができる。磁場が飽和するため、電流がある範囲より大きいと、dq軸インダクタンスLd、Lqが電流の変化に伴って変化し、変化範囲は最大200%に達することができる。これらのパラメータの変化は、各電流における最適なdq電流組み合わせをオンラインで解くことが困難になり、さらには不可能である。したがって、車両用モータ制御において、一般的に実験の方法で標定をテストして各トルクに対応する最適な電流組合せを取得する。全トルク範囲内の全てのこのような電流組み合わせを結んだ線をIPMSMの最大トルク電流比(MTPA)曲線と呼ぶ。
【0005】
また、車両用IPMSMの運転は、インバータによって動力電池のバスを三相交流電に変換することに依存し、これは、モータ端の電圧が直流バスによって制限されることを意味し、IPMSMの電圧方程式は以下の通りであり、
【数2】
ここで、V
dはモータのd軸電圧であり、V
qはモータのq軸電圧であり、R
sは固定子の抵抗であり、
はモータの電気角速度である。
【0006】
高速定常状態において、モータ端電圧V
Sの振幅は、近似的に以下のようになり、
【数3】
(3)
モータの回転速度が上昇すると、モータ端電圧が上昇し、それがバス電圧で提供可能な交流電圧振幅を超えると、弱め界磁制御を行う必要があり、現在のバスで提供可能な最大交流電圧は電圧制限
であり、式は一般的に以下の通りであり、
【数4】
ここで、V
dcはバス電圧であり、MI
maxはモータ制御システム最大変調比(maximum modulation index)であり、その値は一般的に1近傍であり、最大で1.1027である。
【0007】
トルク方程式と電圧制限の両方を満足する電流組み合わせを取得するために、異なるバスと回転速度における各トルクに対応するdq電流組合せを依然として実験の方法で標定することによって得る。そして、これらのデータをテーブル化してデジタル制御チップに記憶し、モータのリアルタイム運転時に、テーブルをルークアップすることにより、異なる回転速度及びバス電圧におけるトルク指令を対応するdq電流指令に変換する。
【0008】
上記過程が正常に動作できる前提としては、プロトタイプの実験標定によって得られた電流組み合わせが各モータの同一のタイプに適用可能である。実際の適用では、以下のいくつかの態様はこのような仮定が成立しないことを引き起こす。
1.モータは量産する時にプロセス、材料が不可避的にモータの不一致性を引き起こす。
2.モータの回転オフセット量に偏差が生じると、電流調整器が正常に動作する場合であっても、制御上磁場配向偏差を引き起こし、さらにモータにおける実際のdq電流が所望の電流指令と一致しないことを引き起こす。
3.環境温度の変化は永久磁石体磁気鎖に影響を与え、温度が低下すると、
が上昇し、標定して得られたdq電流指令が電圧制限を満たさなくなる。
【0009】
したがって、電気駆動制御システムの高速運転領域のロバスト性を向上するために、一般的には弱め界磁制御リンクを追加する。
【0010】
モータ制御弱め界磁問題に対して、特許文献CN101855825Bは、代表的な解決手段を提案し、
図1に示すように、電流調整器から出力された電圧と電圧制限との差に基づいて電圧偏差を得て、当該偏差を比例積分リンク(PI)を経て電流補正量
ΔI
d
を得てd軸電流の所定値に重畳し、当該補正量に対して上限が0である振幅制限を行うことで、弱め界磁を深くして、弱め界磁制御の目的を達成する。式(3)によれば、
>0の時、負方向のi
dを大きくし、出力電圧を低下させることができ、すなわち、このような解決手段は効果的である。しかし、
<0のとき、負方向のi
dを増加させ続けると、V
qが逆方向に増大して出力電圧がさらに上昇し、逆に電圧飽和現象がより深刻である。したがって、当該方法を使用する時に
>0を確保しなければならない。しかし、車両用モータ制御では、この制限を加えると、モータの高速領域でのリラクタンストルクが十分に利用されず、モータの性能を犠牲にする。上記解決手段において電圧飽和時にi
dを低下させる方法を採用して、弱め界磁場を深くしてモータを電圧飽和状態から退出させることができるが、当該方法は出力トルクのへの影響が大きく、i
dを補正するだけで、大きなi
d補正量を必要とし、dq電流の組み合わせが大きく変化して出力トルクに大きな影響を与えることになる。非特許文献(T.M. Jahns, “Flux Weakening Regime Operation of an Interior Permanent-Magnet Synchronous Motor Drive”, IEEE Trans. on Ind. Appl., vol. IA-23, no. 4, pp. 55-63, 1987)は、弱め界磁領域でi
qを低減する方法が提案されているが、単一の電流を調整するだけでは、同様に出力トルクに大きな影響を与えるという問題もある。電圧飽和の問題に有効に対処でき、しかもできるだけ出力トルクに影響を小さく与える良好な従来技術は、まだ一時的に発見されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は従来の技術の不足に対して、直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下の解決手段によって実現され、直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法において、電流閉ループ調整モジュールと、変調比偏差算出モジュールと、電流指令角度補償モジュールと、電流角度事前設定モジュールと、電流指令角度制限比較器と、電流所定振幅補償モジュールと、電流所定ベクトル補正モジュールとを備え、
電流閉ループ調整モジュールの入力が、電流所定ベクトル補正モジュールから出力されたdq電流指令であり、比例積分コントローラを経った後、dq電圧指令を出力し、
変調比偏差算出モジュールの入力が、電流閉ループ調整モジュールから出力されたdq電圧指令であり、二乗和を根にして所望の変調比MIrefを得た後、所望の制御システム最大変調比MImaxとの差をとり、さらにローパスフィルタを経った後、変調比偏差ΔMIを出力し、
電流指令角度補償モジュールの入力が、変調比偏差算出モジュールから出力された変調比偏差であり、比例積分補償器を経った後、補正角度を出力し、
電流角度事前設定モジュールは、電流角度を予め設定することに用いられ、
電流指令角度制限比較器は、電流指令角度補償モジュールから出力された補正角度の補償後の電流角度を、電流角度事前設定モジュールで予め設定された電流角度以上に制限することに用いられ、
電流所定振幅補償モジュールの入力が、有効電力とリアルタイム電力との差ΔPであり、比例積分調整を経て、電流所定振幅調整量を出力し、
電流所定ベクトル補正モジュールの入力が、電流所定振幅補償モジュールから出力された電流所定振幅調整量で補償された電流の大きさ|i|であり、電流角度事前設定モジュールで予め設定された電流角度に基づいて、弱め界磁制御の後のdq電流指令を算出する。
【0013】
さらに、前記電流閉ループ調整モジュールでは、dq電流指令i
dref、i
qrefとdq電流フィードバックの偏差をそれぞれ比例積分PIコントローラに入力して処理させて、dq電圧指令を取得する。
さらに、前記変調比偏差算出モジュールでは、MI
maxとMI
refとの差
ΔMI
0
は以下の通りであり、
【数6】
【数5】
ここで、v
d_ref、v
q_refはdq電圧指令であり、V
dcはバス電圧である。
【0014】
さらに、前記電流指令角度補償モジュールでは、補正角度
Δθは以下の通りであり、
【数7】
ここで、k
p、k
iはそれぞれ比例積分補償器の比例係数、積分係数であり、
ΔMIは変調比偏差である。
【0015】
さらに、前記電流角度事前設定モジュールは、モータの配向に対して最大トルク電流比MTPA電流角度曲線描写制限を行い、電流角度をθpreとして予め設定する。
さらに、前記電流指令角度制限比較器は、電流角度を以下のように制限することに用いられ、即ち、θ+Δθ≧θ
pre
となり、ここで、θは弱め界磁制御の前の電流角度である。
【0016】
さらに、前記電流所定振幅補償モジュールでは、電流所定振幅調整量
Δiは以下の通りであり、
【数10】
【数9】
【数8】
ここで、P
tabは有効電力であり、P
calcuはリアルタイム電力であり、U
busはバス電圧に対するサンプリング値であり、I
busはバス電流に対するサンプリング値であり、k
pP、k
iPはそれぞれ電流所定振幅補償モジュールにおける比例積分の比例係数、積分係数である。
【0017】
さらに、前記電流所定ベクトル補正モジュールでは、dq電流指令i
dref、i
qrefを算出し、
【数11】
ここで、|i|
originは弱め界磁制御の前の電流の大きさである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果は、以下の通りである。
(1)本発明の調整方向は、永久的に弱い磁気方向であり、繰り返し調整による不安定がない。
(2)本発明は、dq電流を導入して同時に補正することにより、電圧飽和に抵抗する圧力をdq電流に分散させることができ、単軸電流調整の過剰による出力トルクの偏差の過大を回避する。
(3)本発明は、システム制御が不安定することない従来の弱め界磁目標を確保するとともに、トルクの精度を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】弱め界磁制御の従来技術のトポロジー構造ブロック図である。
【
図2】本発明の全体トポロジー構造ブロック図である。
【
図5】電流角度事前設定モジュールが事前設定角度を設定する概略図であり、ここで、電流の単位は全てAである。
【
図7】弱め界磁区電流角度補正概略図であり、ここで、電流の単位は全てAである。
【
図8】補正前後の電流角度変化傾向概略図であり、ここで、電流の単位は全てAであり、1は補正前であり、2は補正後である。
【
図10】電気駆動システムM1及びM2の実測した電流-トルク曲線の対比図であり、ここで、トルクの単位はNm、電流の単位がAである。
【
図11】電気駆動システムM1及びM3の実測した電流-トルク曲線の対比図であり、ここで、トルクの単位はNm、電流の単位はAである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、駆動システムの安全を確保するとともに、弱め界磁制御リンクの駆動システム出力トルクへの影響をできるだけ低減する。上記目的を達成するために、
図2に示すように、本発明による直流電力に基づく車両用永久磁石同期モータのベクトル制御方法は、以下のことを含み、
1、電流閉ループ調整モジュールについては、当該部分が本発明の依存モジュールであり、その作用は、dq電流指令i
dref、i
qrefとdq電流フィードバックの偏差をそれぞれ比例積分PIコントローラに入力して処理させて、dq電圧指令vdqrefを取得することにある。
2、変調比偏差算出モジュールについては、
図3に示すように、MI
refは、電流閉ループ調整モジュールから出力されたdq電圧指令の二乗和を根にして得られるものであり、
【数5】
ここで、v
d_ref、v
q_refはv
dqrefのdq成分であり、V
dcはバス電圧であり、そして、所望の制御システム最大変調比MI
maxと所望の変調比MI
refとの差をとって
ΔMI
0
を取得し、
【数6】
さらにローパスフィルタ(LPF)により変調比偏差
ΔMIを取得し、ここで、ローパスフィルタの作用は、dq電流閉ループ調整モジュールにおける高周波ノイズを除去し、出力弱め界磁制御装置が電流補正量を平滑に出力し、モータトルクが大きく変動することを防止することにある。
3、電流指令角度補償モジュールについては、
図4に示すように、変調比偏差算出モジュールの出力
ΔMIを入力とし、比例積分PI補償器を経った後、出力量が補正角度
Δθであり、
【数7】
ここで、k
p、k
iはそれぞれ比例積分補償器の比例係数、積分係数である。
4、電流角度事前設定モジュールについては、
図5に示すように、標準モータの配向に対して最大トルク電流比MTPA電流角度曲線描写制限を行い、dq電流曲線に基づいて、MTPA(1000rpm)に値付けて、電流角度がθ
preとして予め設定される。
5、電流指令角度制限比較器については、電流指令角度補償モジュールで補償された角度を電流角度事前設定モジュールの事前設定角度θ
pre以上に限定し、
θ+Δθ≧θ
pre
となり、ここで、θは弱め界磁の前の電流ベクトルの角度である。
6、電流所定振幅補償モジュールについては、電流指令角度補償モジュールが角度補償を完了した後、システムが弱い磁気の安定性要件を満たしたと判断し、その出力を補正する。
電力P
calcuをリアルタイムで算出し、
【数8】
ここで、U
busはバス電圧V
dcに対するサンプリング値であり、I
busはバス電流I
dcに対するサンプリング値である。
このとき運転すべき直流電力P
tabとリアルタイムで算出された電力P
calcuとの差をとり、
【数9】
ここで、直流電力P
tabは、テーブルルックアップにより得られる。
ΔPを電流所定振幅補償モジュールの入力とし、
図6に示すように、比例積分PIにより電流所定振幅調整量
Δiが調整されて得られ、
【数10】
ここで、k
pP、k
iPはそれぞれ電流所定振幅補償モジュールにおける比例積分の比例係数、積分係数である。
7、電流所定ベクトル補正モジュール(sin/cos)については、モジュール電流角度事前設定モジュールと電流所定振幅補償モジュールとを統合して、dq軸弱め界磁後の電流i
dref、i
qrefを以下のように算出し、
【数11】
ここで、|i|
originは弱め界磁の前の電流ベクトルの大きさであり、|i|は
Δi補償後の電流ベクトル振幅の大きさである。
【0021】
本実施例は、上記全てのモジュールに基づいて電気駆動システムM1を構築し、同一電気駆動システムM1におけるテストデータを取得して、
図7~9のように、電流角度事前設定モジュールと、電流指令角度制限比較器と、電流所定ベクトル補正モジュールの有効性を証明する。
図7に示すように、矢印で示す弱め界磁変曲点から開始し、電流指令角度制限比較器及び電流所定ベクトル補正モジュールが働き始め、dq電流運転曲線は対応する角度が変化する。
図8に示すように、電流角度は弱め界磁領域で自動的に補正される。
図9に示すように、図中、曲線斜率が1ではない時、実際の角度が事前設定角度θ
preよりも大きいことを示し、120°の後に電流所定ベクトル補正モジュールが角度を補正し、円内が補正効果である。
【0022】
電気駆動システムM1における電流所定振幅補償モジュールを除去して別の電気駆動システムM2を取得し、M2の電流サンプリングゲインをM1より高く設定し、浮上割合を3%とする。
図10に示すように、電気駆動システムM2の電流サンプリングゲインがM1より大きく、M2の実際のトルクがM1よりも小さいことを引き起こす。電気駆動システムM2に電流所定振幅補償モジュールを追加して電気駆動システムM3を得て、M2及びM3の電流サンプリングゲインが同じである。
図11に示すように、電流所定振幅補償モジュールを用いた電気駆動システムM3のトルクは、M1と基本的に一致する。以上をまとめると、
図10~11は、電流所定振幅補償モジュールの有効性を証明する。