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特許7533993樹脂延伸ゴム及び調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】樹脂延伸ゴム及び調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/21 20060101AFI20240806BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20240806BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20240806BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240806BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08J3/21 CEQ
C08L93/04
C08L57/00
C08L15/00
C08C19/25
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023062405
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2021077736の分割
【原出願日】2017-03-22
(65)【公開番号】P2023086772
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】62/312,090
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・シー・ガリツィオ
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176022(JP,A)
【文献】特開2013-231177(JP,A)
【文献】特開2017-210524(JP,A)
【文献】特開2006-36929(JP,A)
【文献】特表2014-518912(JP,A)
【文献】国際公開第02/066554(WO,A1)
【文献】特開2020-12096(JP,A)
【文献】特表2017-531705(JP,A)
【文献】特開2005-179668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0168338(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2224148(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00
301/00
C08J3/00-3/28
99/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマーを少なくとも1つの無極性溶媒中で重合して、重合した前記少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び前記少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを生成すること、ここで、前記共役ジエンモノマー含有ゴムはケイ素含有官能基を有する、
(b)前記ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成すること、及び
(c)前記少なくとも1つの無極性溶媒を前記樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成すること、
を含み、
(b)の前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、最大100phrの量で利用される、前記プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、ロジン樹脂又はポリテルペン樹脂である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(a)100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、ここで、前記共役ジエンモノマー含有ゴムは更にケイ素含有官能基を有する、
(b)少なくとも1つの無極性溶媒、及び
(c)5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂、
を含み、
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、ロジン樹脂、ポリテルペン樹脂、又はその両方である、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント。
【請求項4】
(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含むn部のゴム、及び、最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む樹脂延伸ゴムであって、nが10~100の整数である、樹脂延伸ゴムと、ここで、前記共役ジエンモノマー含有ゴムは更にケイ素含有官能基を有する、
(b)任意選択的に、100-n部の量の少なくとも1つの追加のゴムと、
(c)10~200phrの総量の少なくとも1つの補強充填剤と、
(d)硬化パッケージと、
を含む、ゴム組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、400~5000モル/グラムのMnを有する、又は、
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂がロジン樹脂、ポリテルペン樹脂、又はその両方である、請求項4に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、樹脂延伸ゴム、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセス、及び樹脂延伸ゴムを含むゴム組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤの構成要素のためにゴム組成物で利用されるゴムは、スチレン-ブタジエンコポリマー、高シスポリブタジエン、及びポリイソプレンなどの合成ゴム、又はパラゴムノキ属の天然ゴム及びパラゴムノキ属以外の天然ゴム(例えば、グアユールゴム)などの非合成ゴムのいずれかである。特に、合成ゴムは、他の成分と配合される前に加工油で予混合又は延伸してゴム組成物を形成することができる。伸展油として使用される油は、概して、芳香族油、ナフテン系油、TRAE油、TDAE油、及びMES油などの加工又は精製された石油系油によって提供される自由流動液体である。
【発明の概要】
【0003】
樹脂延伸ゴム、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセス、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント、及び樹脂延伸ゴムを含むゴム組成物を本明細書において開示する。
【0004】
第1の実施形態において、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを開示する。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含み、
(b)の少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、最大100phrの量で利用される。
【0005】
第2の実施形態において、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを提供する。本プロセスは、(a)(i)スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、並びに(ii)4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを、C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含む。
【0006】
第3の実施形態において、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントを開示する。樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、少なくとも1つの無極性溶媒、及び5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。
【0007】
第4の実施形態において、ゴム組成物を開示する。ゴム組成物は、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含むn部のゴム、及び最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む樹脂延伸ゴムであって、nが10~100の整数である、樹脂延伸ゴムと、(b)任意選択的に、100~n部の量の少なくとも1つの追加のゴムと、(c)10~200phrの総量の少なくとも1つの補強充填剤と、(d)硬化パッケージとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
樹脂延伸ゴム、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセス、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント、及び樹脂延伸ゴムを含むゴム組成物を本明細書において開示する。
【0009】
第1の実施形態では、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを開示する。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含み、
(b)の少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、最大100phrの量で利用される。
【0010】
第2の実施形態では、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを提供する。本プロセスは、(a)(i)スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、並びに(ii)4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを、C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含む。
【0011】
第3の実施形態では、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントを開示する。樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、少なくとも1つの無極性溶媒、及び5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。
【0012】
第4の実施形態では、ゴム組成物を開示する。ゴム組成物は、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含むn部のゴム、及び最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む樹脂延伸ゴムであって、nが10~100の整数である、樹脂延伸ゴムと、(b)任意選択的に、100-n部の量の少なくとも1つの追加のゴムと、(c)10~200phrの総量の少なくとも1つの補強充填剤と、(d)硬化パッケージとを含む。
【0013】
定義
本明細書に記載する用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキ属のゴムの木及びパラゴムノキ属以外の原料(例えば、グアユールの低木及びタンポポ(例えば、TKS)など)の原料から採取することができるものなど、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0015】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部当たりの部を意味する。100部のゴムは、100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
【0017】
本明細書で使用するとき、語句「熱可塑性樹脂」における用語「熱可塑性」は、加熱時に軟化し、軟化した状態で概して成形され得る樹脂を示すのに使用される。
【0018】
樹脂延伸ゴム
樹脂延伸ゴムを本明細書において開示する。樹脂延伸ゴムは、本明細書に開示される第1の実施形態によるプロセス、本明細書に開示される第2の実施形態によるプロセスによって作製され得るか、又は第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントから少なくとも1つの無極性溶媒を除去することで得られ得る。樹脂延伸ゴムは、(以下でより詳細に論じられる)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、及び(同様に以下でより詳細に論じられる)最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、樹脂延伸ゴムは、5~100phr(例えば、5、10、15、20、25、30、35、37.5、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100phr)、10~80phr、並びに20~50phrの熱可塑性樹脂を含む少なくとも5phr、少なくとも10phr、少なくとも15phr、少なくとも20phr、少なくとも25phr、少なくとも30phr以上の熱可塑性樹脂を含む。2つ以上の熱可塑性樹脂を利用して樹脂延伸ゴムを調製する場合、上述の量は、樹脂延伸ゴム中の全熱可塑性樹脂の総量を指すと理解することができる。第1~第4の実施形態のうちのこれらの実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、比較的高い量(例えば、上記で論じられるように40phr以上)で少なくとも1つの熱可塑性樹脂を使用する及び/又は非補強熱可塑性樹脂を使用することが有利であり得る、比較的高いMw(以下でより詳細に論じられるように、例えば、500,000グラム/モル以上)を有する。第1~第4の実施形態のうちのこれらの実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、比較的低い量(例えば、上記で論じられるように40phr未満)で少なくとも1つの熱可塑性樹脂を使用することが有利であり得る、比較的低いMw(以下でより詳細に論じられるように、例えば、500,000グラム/モル未満又は400,000グラム/モル未満)を有する。
【0019】
少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、任意選択的に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの組み合わせで(それによって、コポリマーを得る)少なくとも1つの共役ジエンモノマーを含むポリマーとして理解されるべきである。少なくとも1つの共役ジエンモノマーは様々であり得、例示的なかかるモノマーが以下で論じられる。同様に、存在する場合、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーは様々であり得、例示的なかかるモノマーが以下で論じられる。概して、本明細書で使用するとき、ポリマーという用語は、ホモポリマー並びにコポリマーを含むことが理解されるべきである。
【0020】
樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセス
上記で論じられるように、本明細書に開示される第1及び第2の実施形態は、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを対象とする。第1の実施形態に従って、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを開示する。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含み、
(b)の少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、最大100phrの量で利用される。第2の実施形態に従って、樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスを提供する。本プロセスは、(a)(i)スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、並びに(ii)4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、(b)ゴム-溶媒-セメントを、C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、(c)少なくとも1つの無極性溶媒を樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去することによって、樹脂延伸ゴムを生成することとを含む。第1及び第2の実施形態のうちの特定の実施形態では、熱可塑性樹脂は、ゴム-溶媒-セメントを樹脂と混合する前に、無極性溶媒(複数可)の一部分と予混合される。かかる実施形態では、熱可塑性樹脂の総量は、本明細書で論じられるようなものである(例えば、最大100phr)。第1及び第2の実施形態のうちの特定の実施形態では、熱可塑性樹脂との予混合で使用される無極性溶媒(複数可)は、ゴム-溶媒-セメント中に存在する無極性溶媒(複数可)と同じであってもよい。第1及び第2の実施形態のうちの他の実施形態では、熱可塑性樹脂との予混合で使用される無極性溶媒(複数可)は、ゴム-溶媒-セメント中に存在する無極性溶媒(複数可)とは異なる。
【0021】
ゴム-溶媒-セメント
上記で論じられるように、第1の実施形態及び第2の実施形態の両方のプロセスは、ゴム-溶媒-セメントを提供することを含む。第1の実施形態のプロセスによれば、ゴム-溶媒-セメントは、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒を含む。第2の実施形態のプロセスによれば、ゴム-溶媒-セメントは、(i)スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、並びに(ii)4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの無極性溶媒を含む。第1及び第2の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメントは、完全に、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒からなる(即ち、ゴム-溶媒-セメントの重量の100%は、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒からなる)。第1及び第2の実施形態のうちの他の実施形態では、ゴム-溶媒-セメントは、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒の重量の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を含む。特定のかかる実施形態では、酸化防止剤などの成分が残部を構成し得る。第1及び第2の実施形態によれば、ゴム-溶媒-セメントは、(スチレン-ブタジエン、ポリブタジエン、及びポリイソプレンなどの合成ゴムのための)少なくとも1つの共役ジエンモノマーの溶液重合より得られるものとして、並びに天然ゴムの溶媒可溶化形態として理解され得る。当業者が理解するであろうように、合成ゴムの溶液重合は、概して、他の成分(例えば、モノマー(複数可)及び触媒、並びに任意選択的にビニル結合含量の修飾因子などの修飾因子)を溶媒及び重合中に溶解してポリマー又はコポリマーを生成するプロセスの中で溶媒(例えば、少なくとも1つの無極性溶媒)を使用することが溶媒中で行われることを含む。溶媒中のポリマー又はコポリマーの溶液は、概してセメントと称され、ゴム及び溶媒を含有するため、本明細書では「ゴム-溶媒-セメント」と称する。ゴム-溶媒-セメントを生成するための例示的な重合方法としては、(例えば、ネオジム、ニッケル触媒、又はチタン系触媒などのランタノイドを含む遷移金属に基づく)チーグラー・ナッタ触媒系を用いる方法、並びに有機金属触媒(例えば、ヒドロカルビルリチウム、ヒドロカルビルナトリウム、ヒドロカルビルカリウム、又はヒドロカルビルマグネシウム)とのアニオン性重合を用いる方法が挙げられるが、これらに限定されない。概して、ゴム-溶媒-セメントは、ゴムが充填剤(複数可)、加工助剤、及び硬化パッケージなどの他の成分と共にゴム組成物中に組み込まれる(配合される)前に、ゴム含有固体共役ジエンモノマーを生成するように加工されるであろう。換言すれば、少なくとも1つの無極性溶媒がゴム-溶媒-セメントから除去される。重合プロセスが十分に進行したか又は(終端剤若しくはカップリング剤の使用などによって)停止すると、従来の脱溶媒及び乾燥の手順を利用することによって、得られるポリマー又はコポリマーをセメントから回収することができる。例えば、ポリマー又はコポリマーは、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、t-ブチルアルコールなどのC1~C4アルコール)との凝固(若しくは沈殿)、その後の単離によって;溶媒と未反応モノマーとの水蒸気蒸留、その後の単離によって;凝固ポリマーの濾過によって;又は凝固ポリマーの遠心分離によって、溶液から単離されてもよい。好ましくは、次いで、単離したポリマーを乾燥させて溶媒及び水の残留量を除去する。代替的に、セメントを直接ドラム乾燥するなど、溶媒を蒸発させることにより、ポリマーを重合混合物から単離することができる。第1の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの無極性溶媒をゴム-溶媒-セメントから除去することは、水蒸気蒸留、濾過、遠心分離、又はドラム乾燥のうちの少なくとも1つを含む。本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のプロセスによれば、溶媒を除去する前に、少なくとも1つの熱可塑性樹脂がゴム-溶媒-セメントに添加され、それによって少なくとも1つの無極性溶媒を除去するように、その後に(上記のように)加工され得る樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成する。
少なくとも1つの無極性溶媒が樹脂-ゴム-溶媒-セメントからいったん除去されると、生成される樹脂延伸ゴムを固体ゴムとして説明することができる。
【0022】
共役ジエンモノマー含有ゴム
上記で論じられるように、本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のプロセス並びに第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント及び第4の実施形態のゴム組成物は、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含む。第1~第4の実施形態によれば、1つ又は2つ以上の共役ジエンモノマー含有ゴムを利用することができる。少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、任意選択的に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの組み合わせで(それによって、コポリマーを得る)少なくとも1つの共役ジエンモノマーを含むポリマーとして理解されるべきである。
【0023】
当業者が理解するであろうように、共役ジエンモノマーは、単一結合(即ち、-C-C-)によって分離している2つの二重炭素-炭素結合(即ち、2つの-C=C-結合)を有する化合物であり、共役ジエンは、少なくとも1つの-C=C-C=C-部分を含有することになる。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを調製するために使用される共役ジエンモノマーの特定の構造は様々であり得る。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうち特定の実施形態による、好適な共役ジエンモノマーの非限定例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、及び1,3-シクロオクタジエン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、2つ以上の共役ジエンの混合物を利用することができることを理解されたい。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、又はこれらの組み合わせを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンを含む。
【0024】
上記のように、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの組み合わせで少なくとも1つの共役ジエンモノマーを含むコポリマーであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、p-tertブチルスチレン、4-ビニルビフェニル、4-ビニルベンゾシクロブテン、2-ビニルナフタレン、9-ビニルアントラセン、4-ビニルアニソール、又はビニルカテコールのうちの少なくとも1つを含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーはスチレンを含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマーは1,3-ブタジエンを含み、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーはスチレンを含む。
【0025】
第1~第4の実施形態のゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ポリマーゴムは、当業者に周知であるような、バッチ式、半連続式、又は連続式操作などの様々な好適な方法に従って調製(重合)され、かつ回収され得る。重合は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、及び配位重合が挙げられるが、これらに限定されない、いくつかの異なる重合反応装置系においても実施することができる。重合は、フリーラジカル機構、アニオン性機構、カチオン性機構、又は配位機構を用いて実施できる。上記重合法の全ては、当業者には周知である。しかしながら、例示目的で、アニオン性
機構による重合について簡単に説明する。
【0026】
共役ジエンモノマー含有ポリマー又はコポリマーゴムなどのゴムが、アニオン性重合によって生成されるとき、有機アルカリ金属化合物、好ましくはリチウム含有化合物が、典型的に重合反応開始剤として使用される。重合反応開始剤として使用されるリチウム含有化合物の例として、ヒドロカルビルリチウム化合物、リチウムアミド化合物、及び類似のリチウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。重合反応開始剤として使用されるリチウム化合物の量は、好ましくは、モノマー100g当たり0.2~20ミリモルの範囲内である。
【0027】
ヒドロカルビルリチウム化合物の非限定例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロぺニルベンゼン及びブチルリチウムの反応生成物、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アルキルリチウム化合物、例えばエチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウムなどが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
【0028】
有機アルカリ金属化合物を重合反応開始剤として使用する、アニオン性重合により共役ジエン含有ポリマー又はコポリマーゴムなどのゴムを生成する方法は、特に限定されない。例えば、共役ジエンモノマー含有ポリマー又はコポリマーゴムは、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマーのみ、又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニル化合物との混合物を重合することによって生成され得る。重合反応に不活性な炭化水素溶媒の非限定例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン(例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン)、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、ランダマイザーを利用するアニオン性重合プロセスによって生成されていてもよい。ランダマイザーは、共役ジエン化合物の微細構造を制御することができ、例えば、ブタジエンをモノマーとして使用するポリマーのブタジエン単位中の1,2-結合含量を制御し、ブタジエン及びスチレンをモノマーとして使用するコポリマー中のブタジエン単位及びスチレン単位をランダム化させるなどの作用を有する。好適なランダマイザーの非限定例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレートなどが挙げられる。使用されるランダマイザーの量は、好ましくは、重合反応開始剤としての有機アルカリ金属化合物1モル当たり、0.01~100モル当量の範囲内である。
【0030】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうち特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムが結合されている。上記のように、所望の変換(例えば、化合体(mer)の数、Mw、又はMn)がいったん達成されると、重合反応を終端させる方法としてカップリングを用いることができる。代替的に、第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態によれば、終端させることによって重合反応を停止することができ
る。重合を終端させる1つの様式は、リビング末端にプロトンを供与し得る化合物を添加することによってリビングポリマーをプロトン化することによるものである。非限定例としては、水、イソプロピルアルコール、及びメチルアルコール、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、共役ジエンモノマー含有ゴムの官能化され結合された形態を利用することができ、かかる効果は、いくつかの鎖を結合し、他の鎖を官能化させるのに役立つカップリング剤及び官能化剤の両方でリビングポリマーを処理することによって達成することができる。カップリング剤と官能化剤の組み合わせを様々なモル比で使用することができる。カップリング剤及び官能化剤という用語を本明細書において用いてきたが、特定の化合物は両方の機能に役立つことを当業者は理解するであろう。つまり、特定の化合物は、ポリマー鎖を結合すること、及び官能基と共にポリマー鎖を提供することの両方ができる。当業者はまた、ポリマー鎖を結合する能力はポリマー鎖と反応したカップリング剤の量に依存し得ることを理解する。例えば、反応開始剤のリチウムの当量とカップリング剤の脱離基(例えば、ハロゲン原子)の当量との1対1の比でカップリング剤を添加する場合、有利なカップリングを達成することができる。カップリング剤の非限定例としては、金属ハライド、半金属ハライド、アルコキシシラン、及びアルコキシスタンナンが挙げられる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、金属ハライド又は半金属ハライドは、式(1)R (4-n)、式(2)M、及び式(3)Mで表される化合物を含む群から選択されてもよく、式中、各Rは独立して、1~20個の炭素原子を有する1価の有機基であり、Mはスズ原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子であり、Mはリン原子であり、Yはハロゲン原子であり、nは0~3の整数である。
【0033】
式(1)で表される代表的な化合物としては、ハロゲン化有機金属化合物が挙げられ、式(2)及び(3)で表される化合物としては、ハロゲン化金属化合物が挙げられる。
【0034】
がスズ原子を表す場合、式(1)で表される化合物は、例えば、トリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリドなどであり得る。更に、式(2)で表される化合物としては、スズテトラクロリド、スズテトラブロミドなどが挙げられ得る。
【0035】
がケイ素原子を表す場合、式(1)で表される化合物は、例えば、トリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシランなどであり得る。更に、式(2)で表される化合物としては、ケイ素テトラクロリド(silicon tetrachloride)、ケイ素テトラブロミド(silicon tetrabromide)などが挙げられ得る。Mがゲルマニウム原子を表す場合、式(1)で表される化合物は、例えば、トリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリドなどであり得る。更に、式(2)で表される化合物としては、ゲルマニウムテトラクロリド、ゲルマニウムテトラブロミドなどが挙げられ得る。式(3)で表される化合物としては、リンテトラクロリド(Phosphorous trichloride)、リンテトラブ
ロミド(phosphorous tribromide)などが挙げられ得る。1つ以上の実施形態では、金属ハライド及び/又は半金属ハライドの混合物を使用することができる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、アルコキシシラン又はアルコキシスタンナンは、式(4)R (OR^)4-nで表される化合物を含む群から選択されてもよく、式中、各Rは独立して1~20個の炭素原子を有する1価の有機基であり、Mはスズ原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子であり、OR^はアルコキシ基であり、R^は1価の有機基であり、nは0~3の整数である。
【0037】
式(4)で表される例示的な化合物としては、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトラエトキシスズ、テトラメトキシスズ、及びテトラプロポキシスズが挙げられる。
【0038】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態うちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、共役ジエンモノマー含有ゴムの頭部、共役ジエンモノマー含有ゴムの尾部、又は共役ジエンモノマー含有ゴムの骨格に沿って、のうちの少なくとも1つで官能化される官能化ポリマー(又はコポリマー)を含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、官能化ポリマー(又はコポリマー)は、シリカ反応性官能基、窒素含有官能基、酸素含有官能基、硫黄含有官能基、又はこれらの組み合わせを有するポリマー(又はコポリマー)を含む。共役ジエンポリマー及びコポリマーの官能化に利用されるのが既知であり、本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態のゴム組成物中での使用に好適な、シリカ反応性官能基の非限定例としては、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、酸素又は硫黄含有官能基、及び金属含有官能基が挙げられる。本明細書で使用するとき、官能化ポリマーという用語は、一方又は両方の末端部における官能基(例えば、官能化反応開始剤、官能化反応停止剤、又は両方の使用により)、ポリマーの主鎖中(例えば、骨格に沿って)の官能基、及びこれらの組み合わせを有するポリマー(共役ジエンモノマー含有ポリマー又はコポリマーゴムを含む)を含むと理解されたい。例えば、シリカ反応性官能化ポリマーは、一方又は両方の末端部に、その主鎖中に、又は主鎖中及び一方又は両方の末端部の両方に官能基を有してよい。
【0039】
ゴムの官能化に利用されることが周知である窒素含有官能基の非限定例としては、置換又は非置換アミノ基、アミド残基、イソシアネート基、イミダゾリル基、インドリル基、ニトリル基、ピリジル基、及びケチミン基のうち任意のものが挙げられるが、これらに限定されない。上記置換又は非置換アミノ基は、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、又は環状アミン、及び、置換又は非置換イミン由来のアミノ基を含むと理解されたい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、上記から選択される少なくとも1つの窒素含有官能基を有する官能化共役ジエンモノマー含有ポリマー又はコポリマーゴムを含む。
【0040】
ゴムの官能化に利用されることが周知であるケイ素含有官能基の非限定例としては、有機シリル又はシロキシ基が挙げられるが、これらに限定されず、より正確には、官能基は、アルコキシシリル基、アルキルハロシリル基、シロキシ基、アルキルアミノシリル基、及びアルコキシハロシリル基から選択されてよい。ゴムの官能化での使用に好適なケイ素含有官能基としては、米国特許第6,369,167号(その開示全部が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるようなものが挙げられる。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、上記から選択される少なくとも1つのケイ素含有官能基を有する官能化ゴムを含む。
【0041】
ゴムの官能化に利用されることが周知である酸素又は硫黄含有官能基の非限定例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシドキシ基、ジグリシジルアミノ基、環状ジチアン由来官能基、エステル基、アルデヒド基、アルコキシ基、ケトン基、チオカルボキシル基、チオエポキシ基、チオグリシドキシ基、チオジグリシジルアミノ基、チオエステル基、チオアルデヒド基、チオアルコキシ基及びチオケトン基が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、上記アルコキシ基は、ベンゾフェノン由来のアルコール由来アルコキシ基であってよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態による特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、上記から選択される少なくとも1つの酸素及び/又は硫黄含有官能基を有する官能化共役ジエンモノマー含有ポリマー又はコポリマーゴムを含む。
【0042】
第1~第4の実施形態で利用される少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムの分子量は様々であってもよい。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、500,000~2,000,000グラム/モル(例えば、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1.1百万、1.2百万、1.3百万、1.4百万、1.5百万、1.6百万、1.7百万、1.8百万、1.9百万、2百万グラム/モル)の(ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、「GPC」によって決定される)Mwを有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、500,000~1,500,000グラム/モル(例えば、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1.1百万、1.2百万、1.3百万、1.4百万、1.5百万グラム/モル)、500,000~1,250,000グラム/モル、又は500,000~1,250,000グラム/モルのMwを有する合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、又はポリイソプレン)を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、200,000~1,000,000グラム/モル(例えば、200,000、250,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1百万グラム/モル)の(ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、「GPC」によって決定される)Mwを有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、200,000~750,000グラム/モル(例えば、200,000、250,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、750,000グラム/モル)、200,000~600,000グラム/モル、又は200,000~500,000グラム/モルのMwを有する合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、又はポリイソプレン)を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン)からなり、任意選択的に、上述の範囲のうちの1つの範囲内のMwを有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、1,000,000~2,000,000グラム/モル(例えば、1百万、1.1百万、1.2百万、1.3百万、1.4百万、1.5百万、1.6百万、1.7百万、1.8百万、1.9百万、2百万グラム/モル)、1,250,000~2,000,000グラム/モル、又は1,500,000~2,000,000グラム/モルのMwを有する非合成ゴム(例えば、パラゴムノキ属の天然ゴム又はグアユール天然ゴムなどのパラゴムノキ属以外の天然ゴム)を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、非合成ゴム(例えば、パラゴムノキ属の天然ゴム又はグアユール天然ゴムなどのパラゴムノキ属以外の天然ゴム)からなり、任意選択的に、上述の範囲のうちの1つの範囲内のMwを有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、(ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、「GPC」によって決定される)80,000~1,000,000、好ましくは100,000~500,000グラム/モルの数平均分子量(Mn)を有する。本明細書で参照されるGPC測定値は、ポリスチレン標準及び関連のMark-Houwink定数による較正を利用して決定され得る。
【0043】
より高いMwを有する共役ジエンモノマー含有ゴムは概してより高いムーニー粘度を有するであろうことを当業者は理解するであろう。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴムの樹脂延伸形態は、同じゴムの非樹脂延伸バージョンよりも低いムーニー粘度を有するであろう。所与のゴムの非樹脂延伸バージョンのムーニー粘度の決定は、少なくとも1つの熱可塑性樹脂の添加前に、ゴム-溶媒-セメントの試料を取り、その試料から少なくとも1つの無極性溶媒を除去して、ムーニー粘度を測定することができる固体ゴムを生成することによってなされ得る。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、100~200(例えば、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200)、100~190、100~180、100~170、100~160、100~150、110~200、110~190、110~180、110~170、110~160、110~150、120~200、120~190、120~180、120~170、120~160、及び120~150を含む100以上の非樹脂延伸ムーニー粘度を有し、特定のかかる実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、同じポリマーの非樹脂延伸形態のムーニー粘度よりも低い。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、約50~100未満、50~100未満(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99)を含む100未満の非樹脂延伸ムーニー粘度を有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、共役ジエンモノマー含有ゴムの樹脂延伸形態(即ち、樹脂延伸ゴム)の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、20~最大100未満(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99)、30~最大100、30~最大95、30~最大90、30~最大85、30~最大80、35~最大100、35~最大95、35~最大90、35~最大85、35~最大80、40~最大100、40~最大95、40~最大90、40~最大85、40~最大80、45~最大100、45~最大95、45~最大90、45~最大85、45~最大80、50~最大95、50~最大90、50~最大85、50~最大80、55~最大100未満、55~最大95、55~最大90、55~最大85、55~最大80、60~最大100未満、60~最大95、60~最大90、60~最大85、及び60~最大80を含む、100未満のムーニー粘度を有する。本明細書で参照されるムーニー粘度を、大型ローター、1分間の熱入れ時間、及び4分間の稼働時間を伴うAlpha Technologies製ムーニー粘度計を使用して130℃にて決定することができ、ムーニー1+4又はML1+4と称することができる。
【0044】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレン-ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム(ハロゲン化及び非ハロゲン化の両方)、ネオプレン(ポリクロロプレン)、エチレン-プロピレンゴム、及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム(ethylene-propylene-diene rubber、EPDM)のうちの少なくとも1つのゴムを含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの共役ジエンゴムは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、利用される任意のポリブタジエンは、好ましくは、シス1,4-結合含量を少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%ですら、又は少なくとも95%若しくは少なくとも98%ですら有する高シスポリブタジエンである。
【0045】
無極性溶媒
上記で論じられるように、本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のプロセス並びに第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、少なくとも1つの無極性溶媒を含む。第1~第4の実施形態によれば、1つ又は2つ以上の無極性溶媒を利用することができる。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメントは、セメントによるゴムの早期凝固を回避するように、無極性溶媒に限定される溶媒を含む(即ち、無極性溶媒はゴム-溶媒-セメント内に含有されている)。上記で論じられるように、いったん樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントが生成されると、(アルコールなどの)極性溶媒を添加して、セメントによる樹脂延伸ゴムの凝固を促進することができる。
【0046】
ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は様々であり得る。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つから選択される。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、4~9個の炭素原子を有し、ペンタン、ヘキサン、ヘプタ、又はノナンのうちの少なくとも1つから選択されるアルカンを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、5~10個の炭素原子を有し、シクロヘキサン又はシクロペンタンのうちの少なくとも1つから選択されるシクロアルカンを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、6~12個の炭素原子を有し、ベンゼン、トルエン、又はキシレンのうちの少なくとも1つから選択される芳香族又はアルキル置換芳香族を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、イソ-ヘキサン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンのうちの少なくとも1つを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、ヘキサンを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、イソ-ヘキサンを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメント内に含有される少なくとも1つの無極性溶媒は、シクロヘキサンを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメントは、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は0重量%の水を含有する。
【0047】
熱可塑性樹脂
上記で論じられるように、本明細書に開示される第1及び第2の実施形態のプロセス並びに第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント及び第4の実施形態のゴム組成物は、少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。上記のように、熱可塑性樹脂として樹脂を説明することによって、樹脂が(例えば、室温以上)に加熱される際に軟化し、軟化した状態で概して成形され得ることを示すことが意図されている。非限定例として、硬化して非軟化性化合物を形成するエポキシ及びポリウレタンなどの樹脂は、熱可塑性樹脂であるとは考慮されないであろう。第1~第4の実施形態によれば、1つ又は2つ以上の熱可塑性樹脂を利用することができる。以下でより詳細に論じられるように、石油由来の熱可塑性樹脂、植物由来の熱可塑性樹脂、及び合成熱可塑性樹脂を含む様々なタイプの熱可塑性樹脂が、本明細書に開示される第1~第4の実施形態で使用するのに好適であると考慮され得る。
【0048】
上記で論じられるように、第1及び第2の実施形態のプロセス並びに第3及び第4の実施形態で使用される熱可塑性樹脂の量は、概して、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム100部(又は100phr)当たりの部に関して測定され得る。第1~第4の実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、最大100phr(即ち、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム100部(合計)当たり最大100部の熱可塑性樹脂)の量で存在する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、樹脂延伸ゴムは、5~100phr(例えば、5、10、15、20、25、30、35、37.5、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100phr)、10~80phr、並びに20~50phrの熱可塑性樹脂を含む少なくとも5phr、少なくとも10phr、少なくとも15phr、少なくとも20phr、少なくとも25phr、少なくとも30phr以上の熱可塑性樹脂を含む。2つ以上の熱可塑性樹脂を利用して樹脂延伸ゴムを調製する場合、上述の量は、全熱可塑性樹脂の総量を指すと理解することができる。
【0049】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、室温(25℃)以上、0℃以上、10℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上のTg(ガラス転移温度)を有し、特定のかかる実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂のTgは、上記の温度のうちの1つ以上であるが、150℃以下又は100℃以下である。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、500~5000モル/グラム、400~4500モル/グラム、500~4500モル/グラム、400~4000モル/グラム、500~4000モル/グラム、400~3500モル/グラム、500~3500モル/グラム、400~3000モル/グラム、500~3000モル/グラム、400~2500モル/グラム、500~2500モル/グラム、400~2000モル/グラム、500~2000モル/グラム、400~1500モル/グラム、500~1500モル/グラム、400~1200モル/グラム、及び500~1200モル/グラムを含む、400~5000モル/グラム(例えば、400、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4750、又は5000モル/グラム)のMn(数平均分子量)を有し、上述のMn値は、ポリスチレン標準に基づいており、次の条件、溶出溶媒:テトラヒドロフラン;温度:35℃;濃度:1グラム/リットル;流量:1ミリリットル/分;注入量:100マイクロリットル;ポリスチレン標準によるムーア較正;直列の3つのカラム(Styragel HR4E、Stryragel HR1、及びStyragel HR 0.5);検出法:Waters 2410などの示差屈折率検出器、のもとでWaters Alliance製の装置を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、「GPC」)又はサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、「SEC」)などの別のクロマトグラフ法によって決定され得る。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃以上の(ISO標準4625に従って環球法によって測定される)軟化点を有する。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、室温(25℃)で固体である。本明細書で使用するとき、個体という用語は、流れ出ない物質を指す。緩徐に流れ得る(しかし、流れ出ない)流れ出ない物質は、それでも固体として考慮されるべきである。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、上述のTgの数若しくは範囲、上述のMnの数若しくは範囲、又は上述の室温で固体の要件のうちの少なくとも1つを満たす。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、400~2000モル/グラムのMnを有する、25℃で固体である、又は少なくとも25℃のTgを有する、のうちの少なくとも1つを満たす。
【0050】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、補強熱可塑性樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、1つ以上の補強熱可塑性樹脂に限定される。即ち、非補強熱可塑性樹脂は利用されない。第1~第4の実施形態のうちの他の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、非補強熱可塑性樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、1つ以上の非補強熱可塑性樹脂に限定される。換言すれば、補強熱可塑性樹脂は使用されない。更に他の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、少なくとも1つの補強熱可塑性樹脂と少なくとも1つの非補強熱可塑性樹脂との混合物を含む。本明細書で使用するとき、「補強熱可塑性樹脂」という語句は、ゴム組成物の架橋に関与し得、それに伴って、ゴム組成物を補強するように作用する熱可塑性樹脂を指す。非補強熱可塑性物質はまた、ゴム組成物の架橋に関与しない非反応性熱可塑性樹脂として説明することができる。
【0051】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適な補強熱可塑性樹脂の非限定例としては、フェノールノボラック樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、(架橋に寄与するエラストマー又はゴム中の不飽和と反応し得る)反応性レゾール樹脂、及び(メチレンドナーと架橋し得る)反応性ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂などのフェノール性樹脂が挙げられる。本明細書で使用するとき、フェノール又はフェノール性という用語は、フェノール、アルキル化フェノール、カシューナット油などの天然源からのフェノール、及びレゾルシノールを含むように理解されるべきである。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂が補強熱可塑性樹脂を含む場合、メチレンドナー化合物も使用される。第1~第4の実施形態のうちのこれらの実施形態では、メチレンドナー化合物が使用され、メチレンドナー化合物は、様々な段階において、(例えば、別個の蒸気ではないが同じ段階において、予混合単一ストリーム内で、補強熱可塑性樹脂の後であるが溶媒の除去によるポリマーの単離前に)、又は溶媒の除去によるポリマーの単離後(例えば、充填剤などの他の成分を任意選択的に配合中)に、ゴム-溶媒-セメント中に混合することによって補強熱可塑性樹脂などと共に添加され得る。「メチレン受容体」という用語は、当業者には既知であり、反応物(複数可)、又は化合物(複数可)であって、その化合物とメチレンドナーが反応して、中間メチロールモノマーであると考えられるものを形成する、化合物(複数可)を説明するために使用されている。メチレン架橋の形成による中間メチロールモノマーの縮合が樹脂材料を生成することが想定されている。想定される初期反応物は、後でメチレン架橋を形成する部分に寄与し、最終的に樹脂はメチレンドナーと称され、他の反応物はメチレン受容体と称される。フェノールは、メチレン受容体として作用し得る。メチレンドナー化合物の例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチレンテトラミン、メトキシメチルメラミン、N,N’N”-トリメチルN,N’N”-トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、N,N’N”-ジメチロールメラミン、N-メチロールメラミン、N,N’-ジメチロールメラミン、N,N’N”-トリス(メトキシメチル)メラミン、N,N’N”-トリブチル-N,N’N”-トリメチロイ(trimethyloi)-メラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、脂肪族樹脂、環式脂肪族樹脂、芳香族樹脂、水素化芳香族樹脂、テルペン樹脂、又は脂肪族/フェノール性樹脂のうちの少なくとも1つを含む。上述の樹脂は、非補強熱可塑性樹脂として理解され得る。第1~第4の実施形態によれば、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、上述のタイプの樹脂(例えば、脂肪族化合物及び芳香族化合物の両方を含有する脂肪族-芳香族樹脂)の組み合わせであり得、それに伴って、特定の樹脂は、2つ以上のカテゴリー内に分類されると考慮することができる。
【0053】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、任意選択的に上述の樹脂(例えば、環式脂肪族、芳香族、水素化芳香族、テルペン)のうちの1つ以上との組み合わせで、及び/又は任意選択的に部分的に若しくは完全に水素化された、脂肪族樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において少なくとも1つの熱可塑性樹脂として使用するのに好適な脂肪族樹脂の非限定例としては、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。脂肪族コポリマー樹脂の非限定例としては、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂がC5留分樹脂を含む場合、当該樹脂は部分的に又は完全に水素化される。
【0054】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、任意選択的に上述の樹脂(例えば、脂肪族、芳香族、水素化芳香族、テルペン)のうちの1つ以上との組み合わせで、及び/又は任意選択的に部分的に若しくは完全に水素化された、環式脂肪族樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において少なくとも1つの熱可塑性樹脂として使用するのに好適な環式脂肪族樹脂の非限定例としては、シクロペンタジエン(cyclopentadiene、「CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene、「DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。環式脂肪族コポリマー樹脂の非限定例としては、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、CPD/テルペンコポリマー樹脂、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、CPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5留分コポリマー樹脂)、DCPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C9留分コポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂)、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/スチレンコポリマー樹脂)、CPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/CPDコポリマー樹脂)、及びDCPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/DCPDコポリマー樹脂)が挙げられる。
【0055】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、任意選択的に上述の樹脂(例えば、脂肪族、環式脂肪族、水素化芳香族、テルペン)のうちの1つ以上との組み合わせで、及び/又は任意選択的に部分的に若しくは完全に水素化された、芳香族樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において少なくとも1つの熱可塑性樹脂として使用するのに好適な芳香族樹脂の非限定例としては、クマロン-インデン樹脂及びアルキル-フェノール樹脂、並びにビニル芳香族ホモポリマー又はコポリマー樹脂を含み、例えば、これらの樹脂は、以下のモノマー、アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分若しくはC8~C10留分から得られるビニル芳香族モノマーのうちの1つ以上を含む。ビニル芳香族コポリマー樹脂の非限定例としては、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、及びDCPD/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。アルキル-フェノール樹脂の非限定例としては、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、低重合度を有する樹脂)などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂が挙げられる。
【0056】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、任意選択的に上述の樹脂(例えば、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、水素化芳香族)のうちの1つ以上との組み合わせで、及び/又は任意選択的に部分的に若しくは完全に水素化された、テルペン樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において少なくとも1つの熱可塑性樹脂として使用するのに好適なテルペン樹脂の非限定例としては、アルファ-ピネン樹脂、ベータ-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、L-異性体とD-異性体とのラセミ混合物であるジペンテン)、ベータ-フェランドレン、デルタ-3-カレン、及びデルタ-2-カレンが挙げられ、第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、テルペン樹脂は、上述の樹脂(例えば、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、炭化水素)のうちの1つ以上との組み合わせで、上述のテルペンのうちの少なくとも1つを含むテルペンコポリマー樹脂である。例示的なホモポリマーテルペン樹脂は、ポリリモネンである。テルペンコポリマー樹脂の非限定例としては、脂肪族/テルペン樹脂(例えば、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、及びCPD/テルペンコポリマー樹脂)、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。
【0057】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、任意選択的に上述の樹脂(例えば、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、水素化芳香族、テルペン)のうちの1つ以上との組み合わせで、及び/又は任意選択的に部分的に若しくは完全に水素化された、ロジン樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において少なくとも1つの熱可塑性樹脂として使用するのに好適なロジン樹脂の非限定例としては、ガムロジン、ウッドロジン、及びトール油ロジンが挙げられる。変性ロジン樹脂の非限定例としては、ロジン酸グリセリンエステル及び(任意選択的に部分的に水素化及び/又は重合された)ロジン酸ペンタエリスリトールエステルが挙げられる。
【0058】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、グアユール樹脂を含む。グアユール樹脂は、グアユール植物(パルセニウムアルゲンタタム(Parthenium argentatum))から得られる可塑性樹脂である。グアユール樹脂は、グアユール植物からのパラゴムノキ属以外のゴムと共に副産物として生成され得る。グアユール樹脂は、テルペン、アルゲンタチン、グアユリン、脂肪酸、アルデヒド、及びアルコールを含む成分の混合物を含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、グアユール樹脂は、少なくとも1つのテルペン、少なくとも1つのアルゲンタチン、少なくとも1つのグアユリン、又はこれらの組み合わせを含む(含有する)。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、グアユール樹脂は、以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つを含む。(1)d-リモネン、リモネン、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、d-ベベンノン、カンフェン、アルファ-ツゲン(alpha-thugene)、ベータ-ミルセン、デルタ-3-カレン、テルピノレン、ベータ-オシメン、又はサントリナトリエンから選択される少なくとも1つのテルペン。(2)ケイ皮酸、アルファ-リノレン酸、ベータ-リノレン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、又はオレイン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸。(3)アルゲンタチンA、アルゲンタチンB、又はアルゲンタリンC(Argentarin C)から選択される少なくとも1つのアルゲンタチン。(4)グアユリンA又はグアユリンBから選択される少なくとも1つのグアユリン。(5)リノレン酸、ケイ皮酸、リノレン酸、パルミチン酸、オレイン酸、p-アニス酸、又はステアリン酸から選択される、(遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、又はそれらの組み合わせとしての)少なくとも1つの脂肪酸。又は(6)400未満の重合度を有する低分子量ポリイソプレンゴム。グアユール樹脂は1つ以上のテルペンを含むため、本開示の目的のためにテルペン樹脂であると考慮され得る。
【0059】
第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、グアユール樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、又はこれらの組み合わせなどの植物由来の樹脂を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、植物由来の樹脂を含み、石油由来の樹脂の(熱可塑性樹脂(複数可)の総重量に基づいて)10重量%以下、5重量%以下、又は0重量%を含む。
【0060】
少なくとも1つの熱可塑性樹脂の混合
上記で論じられるように、第1及び第2の実施形態のプロセスは、ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することを含む。ゴム-溶媒-セメントは、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを重合することによって生成されたポリマーと、重合が行われた少なくとも1つの無極性溶媒とを混合することを含むものとして理解され得る。第1及び第2の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム-溶媒-セメントはまた、「無溶媒」ではなく、溶液形態(例えば、ヘキサン中の1,3-ブタジエン)中に添加された任意のモノマーからの残留溶媒、残留ランダマイザー、又は残留反応停止剤のうちの少なくとも1つを含み得る。第1及び第2の実施形態のうちの特定の実施形態、特に、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムがグアユール天然ゴムを含むこれらの実施形態では、ゴム-溶媒-セメントは、様々な量(例えば、セメント中のゴムの重量に基づいて1~5重量%)で、グアユール植物からの残留熱可塑性樹脂を含有し得る。非限定例として、ゴム-溶媒-セメントが100部のグアユール天然ゴムに含まれる場合、ゴム-溶媒-セメントは1~5部のグアユール樹脂を含み得る。概して、ゴム-溶媒-セメントがいくつかの量の残留熱可塑性樹脂(即ち、グアユール樹脂)を含有するこれらの実施形態であっても、追加の量の少なくとも1つの熱可塑性樹脂を第1~第4の実施形態に従って添加して、樹脂延伸ゴムを生成する必要が依然としてあるであろう。
【0061】
少なくとも1つの熱可塑性樹脂とゴム-溶媒-セメントとの混合は、様々な方法に従って遂行され得る。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、ゴム-溶媒-セメントに直接添加され、特定のかかる実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、「無触媒」、つまり、いずれの溶媒(複数可)とも混合されることなく添加される。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、ゴム-溶媒-セメントへの添加前に溶媒中に溶解され、特定のかかる実施形態では、溶媒は、無極性溶媒(例えば、ヘキサン又は本明細書で論じられる他の無極性溶媒のうちの1つ)を含み、他の実施形態では、溶媒は、極性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)を含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂がゴム-溶媒-セメントへの添加前に溶媒中に溶解されると、利用された溶媒(複数可)は、ポリマー(例えば、イソプロパノールなどのC1-C4アルコール)の凝固を引き起こすであろういずれの溶媒も排除し、特定のかかる実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、ゴム-溶媒-セメントへの添加前に極性溶媒中に溶解され、極性溶媒は、いずれのアルコール(例えば、イソプロパノールなどのC1-C4アルコール)又はポリマーを凝固させる他の溶媒も含まない。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、凝固剤(例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール)と共にゴム-溶媒-セメントに添加される
【0062】
樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント
上記で論じられるように、本明細書に開示される第3の実施形態は、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントを対象とする。第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムと、少なくとも1つの無極性溶媒と、5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂とを含む。樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、ゴムと、樹脂と、重合溶液として役立つ少なくとも1つの無極性溶媒とを含有するものとして理解され得る。換言すれば、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムは、重合されており、少なくとも1つの熱可塑性樹脂が添加されているが、少なくとも1つの無極性溶媒が(まだ)除去されていないため、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントから少なくとも1つの極性溶媒を除去することによって生成された樹脂延伸ゴムではなく、セメントである。開示される第1及び第2の実施形態のプロセスは、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントを含むステップを有するものとして理解され得、これらのプロセスの文脈において、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントはまた、樹脂-ゴム-溶媒-セメントと称され得る。第3の実施形態は、5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含むが、熱可塑性樹脂の特定のタイプ(複数可)並びに総量は、本明細書に完全に記載されているかのように、「熱可塑性樹脂」と題した節において上記で論じられるこれらの選択肢を完全に含むものとして理解されるべきである。
【0063】

第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの油を少なくとも1つの熱可塑性樹脂と共に使用してゴムを延伸させる。1つ又は2つ以上の油を使用することができる。第1~第4の実施形態のうちの他の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂と共に油を全く使用せずに(即ち、0phr)、ゴムを延伸させる。第1及び第2の実施形態のプロセスのうちの特定の実施形態並びに第3及び第4の実施形態のうちの特定の実施形態によれば、少なくとも1つの油が利用される場合、その油はゴム-溶媒-セメントに添加されるであろう。かかる実施形態では、少なくとも1つの油を、少なくとも1つの熱可塑性樹脂の添加前又は少なくとも1つの熱可塑性樹脂の添加後に、少なくとも1つの熱可塑性樹脂と共にゴム-溶媒-セメントに(例えば、予混合中に又は別個のストリーム中に同時に)添加することができる。同様に、第3の実施形態のうちの特定の実施形態によれば、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントは、少なくとも1つの油を含む(更に含む)。概して、少なくとも1つの油が、樹脂延伸ゴムを生成するように、セメントからの少なくとも1つの極性溶媒の除去前に、可溶化されたゴムを含有するセメントに添加されるであろう。
【0064】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、少なくとも1つの油が利用される場合、使用される特定のタイプの油は様々であり得る。概して、利用されるいずれの油も、ゴムがスチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、及びこれらの組み合わせ(並びに/又は上記で論じられる他のゴムのうちの1つ)などの少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムである、ゴムと適合性があるであろう。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、油は、植物油、石油系油、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。したがって、1つ若しくは2つ以上の植物油を利用することができるか、1つ若しくは2つ以上の石油系油を利用することができるか、1つの植物油及び2つ以上の石油系油を利用することができるか、又は1つの石油系油及び2つ以上の植物油を利用することができる。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において使用するのに好適であり得る石油系油の様々なタイプは、芳香族油、ナフテン系油、パラフィン系油、又は低PCA石油系油を含む。「低PCA」という語句は、IP346法によって決定したとき3重量パーセント未満の多環式芳香族含量を有するこれらの油を指す。IP346法の手順は、Instituteof Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,62nd editionに見出しうる。好適な低PCA油として、軽度溶出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。好適なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBLE製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTALFINAELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。好適なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。好適な重ナフテン系油は、SHELLFELX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。以下に論じられるように、植物油は、概して、低PCAとして見なされるであろう。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において使用するための好適な植物油は、野菜、ナッツ、及び種子から採取され得るものを含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態において使用するのに好適な植物油の非限定例としては、大豆又は大豆種子油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油、ピーナツ油、オリーブ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、コメ油、サフラワー油、ゴマ油、カラシ油、フラックス油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、パーム核油、パーム油が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、油は25℃で液体である。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、油は、上述の植物油のうちの2つ以上などの植物油の組み合わせを含み、かかる植物油の組み合わせは、野菜油と称される場合がある。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、油は大豆を含む(含有する)。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、油はヒマワリ油を含み(含有し)、特定のかかる実施形態では、ヒマワリ油は、(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%のオレイン酸のオレイン酸含量を有する)高オレインヒマワリ油を含む。
【0065】
少なくとも1つの熱可塑性樹脂に加えて、少なくとも1つの油が利用される第1~第4の実施形態のうちのこれらの実施形態では、使用される油の量は様々であってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂に加えて、少なくとも1つの油が利用される場合、使用される油の量は、1~50phr(例えば、1phr、5phr、10phr、15phr、20phr、25phr、30phr、35phr、40phr、45phr、50phr)、約5~約40phr、5~40phr、約10~約40phr、10~40phr、約15~約40phr、15~40phr、約20~約40phr、及び約20~40phrを含む、約1~約50phrである。2つ以上の油が利用される第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、上述の範囲は、少なくとも1つの熱可塑性樹脂に加えて、利用される油の総量に適用されると理解されるべきである。
【0066】
ゴム組成物
また、第1の実施形態のプロセスに従って生成される樹脂延伸ゴム、第2の実施形態のプロセスに従って生成される樹脂延伸ゴム、又は第3の実施形態の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメントから溶媒を除去することによって生成され得る樹脂延伸ゴムを含む、ゴム組成物
を本明細書に開示する。上述のゴム組成物は、本明細書に開示される第4の実施形態であると考慮され得る。理論によって拘束されることなく、セメント段階でのゴムへの樹脂の添加(それによって、本明細書に開示される樹脂延伸ゴムを産出する)は、樹脂延伸ゴムが他の成分と共にゴム組成物に形成されるときに特定の改善された特性をもたらし得、改善された特性は、樹脂がゴムの配合中にセメントにではなく他の成分と共に添加されることを除き、同じ成分を有するゴム組成物と比較したときのものであると考えられる。この第4の実施形態によれば、ゴム組成物は、樹脂延伸ゴムと、少なくとも1つの補強充填剤と、硬化パッケージとを含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、10~100部の樹脂延伸ゴムと、任意選択的に少なくとも1つの追加のゴムと、5~200部の少なくとも1つの補強充填剤と、硬化パッケーとを含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、樹脂延伸ゴムの量は、10~90部(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90部)、10~80部、10~70部、10~60部、10~50部、10~40部、10~30部、20~90部、20~80部、20~70部、20~60部、20~50部、20~40部、20~30部、30~90部、30~80部、30~70部、30~60部、30~50部、30~40部、40~90部、40~80部、40~70部、40~60部、又は40~50部であり、100部のゴムを構成するのに必要な残りの量は、少なくとも1つの追加のゴムからなる。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含むn部のゴム、及び最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む樹脂延伸ゴムであって、nが10~100の整数である、樹脂延伸ゴムと、(b)任意選択的に、100-n部の量の少なくとも1つの追加のゴムと、(c)10~200phrの総量の少なくとも1つの補強充填剤と、(d)硬化パッケージとを含む。構成要素(a)のn部のゴムは、構成要素(a)及び構成要素(b)の全てのゴムの総量が100部であるという理解のもとで、10~100部(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100部)で変化し得る。非限定例として、第4の実施形態による例示的なゴム組成物では、(a)及び(b)の全てのゴムの総量が100部であるために、構成要素(a)は90部のSBRと22.75部の樹脂とを含み得、構成要素(b)は10部の天然ゴムを含み得る。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物の全ての樹脂は、樹脂延伸ゴムの形態で添加される。第4の実施形態のうちの他の実施形態では、ゴム組成物の一部の樹脂のみが樹脂延伸ゴムの形態で添加され、残部は遊離樹脂として添加される。特定のかかる実施形態では、ゴム組成物の大部分の樹脂は、樹脂延伸ゴムの形態で添加される。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、構成要素(a)は、n部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、及び最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂のみからなる。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、構成要素(b)は、追加のゴムとして以下に論じられるゴムのみからなる。また、第4の実施形態に従ってゴム組成物を調製するためのプロセスを本明細書に開示し、(例えば、第1及び第2の実施形態のプロセスに従って生成されるか又はそこからもたらされる)上記に記載される樹脂延伸ゴムが構成要素(b)、(c)、及び(d)と混合される。
【0067】
追加のゴム
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態のゴム組成物中の少なくとも1つの追加のゴムとして使用するのに好適なゴムは、当業者に周知であり、合成ポリイソプレンゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber、SBR)、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレン-ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム(ハロゲン化及び非ハロゲン化の両方)、ネオプレン(ポリクロロプレン)、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(ethylene-propylene-diene rubber、EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(acrylonitrile-butadiene rubber、NBR)、シリコーンゴム、フッ素化ゴム、ポリアクリレートゴム(アクリレートモノマーとビニルエーテルとのコポリマー)、エチレンアクリル酸ゴム、エチレンビニルアセテートコポリマー(ethylene vinyl acetate copolymer、EVA)、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ニトリルゴム、ハロゲン化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。フッ素ゴムの例としては、パーフルオロエラストマ-ゴム、フルオロエラストマ-ゴム、フルオロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムは、少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含み、特定のかかる実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムは、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン(好ましくは高シス)、天然ゴム、ポリイソプレン、ブチルゴム、ネオプレン、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、又はEPDMゴムのうちの少なくとも1つを含む。第1~第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムは、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン(好ましくは高シス)、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムは、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン(好ましくは高シス)、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つからなる。上記で説明されるように、第4の実施形態のゴム組成物中の追加のゴム(複数可)の総量は、樹脂延伸ゴム及び追加のゴム(複数可)のゴムの総量が100部を構成するように、100-nの量である。nが10~100の整数であることを考慮すると、追加のゴム(複数可)の総量は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、又は5部などの変化する量から成り得る。
【0068】
補強充填剤
用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(NSA)が、約20m/g以上(20m/g以上を含む)、約50m/g超(50m/g超を含む)、約100m/g超(100m/g超を含む)、及び約125m/g超(125m/g超を含む)である、粒子材料を指すために本明細書で使用される。特定の実施形態では、用語「補強充填剤」は、代替的又は追加的に、約10nm~約1000nm以下(10nm~1000nm以下を含む)、約10nm~約50nm以下(10nm~50nm以下を含む)の粒径を有する、粒子材料を指すために使用される。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填剤は、少なくとも1つのカーボンブラック、少なくとも1つのシリカ、又はこれらの組み合わせを含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの充填剤の総量は、約10~約200phr、10~200phr、約10~約175phr、10~175phr、約25~約150phr、25~150phr、約35~約150phr、35~150phr、約25~約125phr、25~125phr、約25~約100phr、25~100phr、約25~約80phr、25~80phr、約35~約125phr、35~125phr、約35~約100phr、35~100phr、約35~約80phr、又は35~80phrを含む。
【0069】
シリカ充填剤
本明細書に開示される第4の実施形態のゴム組成物中での使用に好適なシリカ充填剤は、周知である。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なシリカ充填剤の非限定例としては、沈殿アモルファスシリカ、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態のゴム組成物中での使用に好適なその他のシリカ充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiOなど)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、ケイ酸カルシウム(CaSiOなど)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al.3SiO.5HOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al.CaOSiO、など)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらのシリカ充填材のうち、沈殿アモルファス湿式プロセス、含水シリカ充填材が好ましい。このようなシリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから一次凝集体へと強力に結合し、順次、二次凝集体へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。BET法で測定されるとき、表面積は、様々なシリカ充填剤の補強特性を決定するために好ましい値である。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、約32m/g~約400m/g(32m/g~400m/gを含む)の表面積(BET法で測定)を有するシリカ充填剤を含み、約100m/g~約300m/g(100m/g~300m/gを含む)の範囲が好ましく、約150m/g~約220m/g(150m/g~220m/gを含む)の範囲が含まれる。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5.5~約7又は7を少し超える、好ましくは約5.5~約6.8のpHを有するシリカ充填剤を含む。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態のゴム組成物中で使用され得るいくつかの市販のシリカ充填剤として、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)製のHi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)215、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243などが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、多くの有用な商用グレードの異なるシリカ充填材は、Degussa Corporation(例えば、VN2、VN3)、Rhone Poulenc(例えば、Zeosil(商標)1165MP)、及びJ.M.Huber Corporationからも入手できる。
【0070】
本明細書に開示される第4の実施形態うちの特定の実施形態では、シリカ充填剤は、シリカカップリング剤で予反応させたシリカを含み、好ましくは、前処理されたシリカは、シラン含有シリカカップリング剤で前処理されたシリカを含む。
【0071】
シリカカップリング剤
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、1つ以上のシリカカップリング剤がゴム組成物中に利用される。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填剤の凝集を防止する又は減少させるのに有用である。シリカ充填剤粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、このため、当該凝集を防止することにより、粘度が抑えられ、ゴム組成物を加工及び混合しやすくなる。
【0072】
概して、任意の従来のシリカカップリング剤の種類、例えば、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどが、使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーの間の架橋として作用する。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化系アルコキシ含有、二硫化系アルコキシ含有、四硫化系アルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加されてもよく、当該前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分に2つの成分(すなわち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、これによって概してゴムの配合が容易になる傾向がある。
【0073】
アルキルアルコキシシランは、一般式R Si(OR4-pで表され、ここで各Rは独立して一価の有機基であり、pは1~3の整数であり、少なくとも1つのRはアルキル基である。好ましくは、pは1である。通常、各Rは、独立して、C~C20脂肪族、C~C20環式脂肪族、又はC~C20芳香族を含み、各Rは、独立して、C~C脂肪族を含む。特定の例示的実施形態では、各Rは独立してC~C15脂肪族を含み、追加の実施形態では、各Rは独立してC~C14脂肪族を含む。メルカプトシランは、一般式HS-RーSi(R)(Rで表され、ここでRは二価の有機基であり、Rはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、各Rは独立してハロゲン、アルコキシ基、又は一価の有機基である。上記ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、又は要素である。上記アルコキシ基は、好ましくは1~3の炭素原子を有する。ブロックされたメルカプトシランは、一般式B-S-R-Si-Xで表され、シリル基がシリカ・シラン反応におけるシリカとの反応に利用可能であり、ブロッキング基Bがメルカプト水素原子を置換して硫黄原子とポリマーとの反応をブロックする。上述の一般式において、Bは、不飽和ヘテロ原子の形態であり得る、又は単結合を介して硫黄に直接結合される炭素であり得るブロック基である。RはC~C直鎖又は分岐アルキリデンであり、各Xは独立してC~Cアルキル又はC~Cアルコキシからなる群から選択される。
【0074】
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なアルキルアルコキシシランの非限定例としては、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシ-シラン、エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシル-トリブトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルオクチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシル-トリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの非限定例としては、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドが挙げられる。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の例示的実施形態での使用に好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィドの、特定の非限定例としては、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドシリカカップリング剤の非限定例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドは、Evonik Degussa Corporation製のSi69(登録商標)として市販されている。
【0076】
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なメルカプトシランの非限定例としては、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、18-メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシラン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なブロックされたメルカプトシランの非限定例としては、米国特許第6,127,468号、同第6,204,339号、同第6,528,673号、同第6,635,700号、同第6,649,684号、及び同第6,683,135号(これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示される特定の例示的実施形態に本明細書で使用されるブロックされたメルカプトシランの代表例として、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、トリエトキシシリルメチル-チオアセテート、トリメトキシシリルメチルチオアセテート、トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン、2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン、2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシ-シリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン、1-(1-オキソ-2-チア-5-トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート、8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート、8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート、1-トリエト
キシシリル-9-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-1-プロピルチオパルミテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-トリアセトキシシリル-1-エチル-チオアセテート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルジチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)テトラチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルトリチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルトリチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルジチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルジチオホスフィネート、トリス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-メチルジチオホスホネート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-エチルジチオホスホネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメチルチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルエタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルベンゼンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルトルエンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルナフタレンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルキシレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルメチルチオサルフェート、トリエトキシシリルメチルメタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルエタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルベンゼンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルトルエンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルナフタレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルキシレンチオスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。様々なブロックされたメルカプトシランの混合物が使用され得る。特定の例示的実施形態での使用に好適なブロックされたメルカプトシランの更に別の例は、Momentive Performance Materials Inc.(ニューヨーク州Albany)から入手可能なNXT(商標)シラン(3-オクタノイルチオー1-プロピルトリエトキシシラン)がある。
【0078】
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適な前処理されたシリカ(即ち、シランで前表面処理されたシリカ)の非限定例としては、メルカプトシランで前処理されたCiptane(登録商標)255 LD及びCiptane(登録商標)LP(PPG Industries製)シリカ、オルガノシランのビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(Si69)とUltrasil(登録商標)VN3シリカとの間の反応の生成物であるCoupsil(登録商標)8113(Degussa製)が挙げられるが、これらに限定されない。Coupsil 6508、Agilon 400(商標)シリカ(PPG Industries製)、Agilon 454(登録商標)シリカ(PPG Industries製)、及び458(登録商標)シリカ(PPG Industries製)も挙げられる。シリカが前処理されたシリカを含む実施形態では、前処理されたシリカは、シリカ充填剤について上記に開示されたような量で使用される(即ち、約5~約200phr(5~200phrを含む)、約10~約200phr(10~200phrを含む)、約10~約175phr(10~175phrを含む)、約25~約150phr(25~150phrを含む)、約35~約150phr(35~150phrを含む)、約25~約125phr(25~125phrを含む)、約25~約100phr(25~100phrを含む)、約25~約80phr(25~80phrを含む)、約35~約125phr(35~125phrを含む)、約35~約100phr(35~100phrを含む)、約35~約80phr(35~80phrを含む)、約5~約200phr(約25~約150phr、約35~約150phr、約25~約125phr、約25~約100phr、約25~約80phr、約35~約125phr、約35~約100phr、及び約35~約80phrを含む)。
【0079】
本明細書に開示される第4に従ってゴム組成物中においてシリカカップリング剤を利用する場合、使用される量は様々であってもよい。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、いずれのシリカカップリング剤も含まない。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの他の実施形態では、シリカカップリング剤は、シリカ充填剤に対するシリカカップリング剤の総量の比が約1:100~約1:5(即ち、シリカ100部に対して約0.01~約20重量部)(1:100~1:5を含む)、約1:100~約1:10(1:100~1:10を含む)、約1:100~約1:20(1:100~1:20を含む)、約1:100~約1:25(1:100~1:25を含む)、並びに約1:100~約0:100(1:100~0:100を含む)となるように、十分な量で存在している。本明細書に開示される第4の実施形態による特定の実施形態では、ゴム組成物は、約0.01~約10phr(0.01~10phrを含む)、約0.01~約5phr(0.01~5phrを含む)、約0.01~約3phr(0.01~3phrを含む)のシリカカップリング剤を含む。
【0080】
カーボンブラック
本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、カーボンブラック充填剤がゴム組成物中に利用される。大多数(ただし、全てではない)のカーボンブラックは、補強充填剤である。1つ以上のカーボンブラックを含む第4の実施形態のうちのこれら実施形態では、カーボンブラックの総量及び任意のその他の補強充填剤(例えば、シリカ充填剤)は、約10~約200phr(10~200phrを含む)である。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、総補強充填剤のゼロ~約50重量%(ゼロ~50重量%を含む)、約5重量%~約30重量%(5~30重量%を含む)、約5重量%~約20重量%(5~20重量%を含む)、約10重量%~約30重量%(10~30重量%を含む)、及び約10重量%~約20重量%(10~20重量%を含む)の量でカーボンブラックを含む。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、カーボンブラックは、ゴム組成物中の総補強充填剤の約30重量%以下(30重量%以下を含む)で含まれる。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5~約100phr(5~100phrを含む)の1つ以上のカーボンブラックを含む。概して、本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なカーボンブラックとしては、通常入手可能な商用製造された任意のカーボンブラック、例えば、表面積が、少なくとも約20m/g(少なくとも20m/gを含む)、より好ましくは少なくとも約35m/g、最大約200m/g以上(35m/g、最大200m/gを含む)のものが挙げられる。本明細書で使用される表面積値は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)技法を使用して、ASTM D-1765によって決定される。中でも有用なカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックである。より具体的には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックのうちの2つ以上の混合物を含む。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に典型的に好適なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aに指定される、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550、及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊であり得る。好ましくは、より均一な混合のため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
【0081】
その他の充填材
第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填剤は、カーボンブラック及び/又はシリカ以外の少なくとも1つの充填剤を含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填剤は、カーボンブラック及び/又はシリカに加えて、少なくとも1つの充填剤を含む。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適な追加の補強充填剤の非限定例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、粘土、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、シリカ充填剤及び任意選択のカーボンブラックに加えて、少なくとも1つの無機充填剤が利用される。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適な無機充填剤は特に限定されず、また非限定例としては、水酸化アルミニウム、タルク、粘土、アルミナ(Al)、酸化アルミニウム三水和物(AlO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸アルミニウム(Al(CO)、硝酸アルミニウム、酸化マグネシウムアルミニウム(MgOAl)、パイロフィライト(Al4SiOO)、ベントナイト(Al4SiO2HO)、窒化ホウ素、雲母、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(MH(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、酸化チタン、二酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[Zr(OH)2nO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、結晶性アルミノケイ酸塩、補強等級の酸化亜鉛(即ち、補強酸化亜鉛)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
硬化パッケージ
上記で論じられるように、第4の実施形態によれば、硬化パッケージがゴム組成物中に利用される。一般的に、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、スコーチ防止剤の内の少なくとも1つを含む。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1つの加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤と、少なくとも1つの加硫活性化剤と、任意選択的に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤とを含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤の触媒として作用する。加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当該技術分野において周知であり、所望の加硫特性に基づいて当業者が選択することができる。
【0083】
第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適なタイプの加硫剤の例としては、硫黄又は過酸化物系硬化成分が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、特定のこのような実施形態では、硬化成分は、硫黄系硬化剤又は過酸化物系硬化剤を含む。
特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性及び不溶性の高分子量硫黄の混合物である。硬化に用いられる好適な加硫剤及びその他の組成物(例えば、加硫阻害剤、スコーチ防止剤)の一般的な開示として、Kirk-Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、Wiley Interscience、N.Y.、1982年、Vol.20、pp.365~468、特に「Vulcanization Agents and Auxiliary Materials」、pp.390~402、又はA.Y.Coran、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」第2版(1989年、John Wiley & Sons,Inc.)を参照可能であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。一般的に、加硫剤は、1~7.5phr、1~5phr、及び好ましくは1~3.5phrを含む0.1~10phrの範囲の分量で使用される。
【0084】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を向上させるために使用される。本明細書に開示される第4の実施形態のうちの特定の実施形態での使用に好適な加硫促進剤の実施例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバメート加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、使用される加硫促進剤の分量は、0.1~10phr、好ましくは0.5~5phrの範囲である。
【0085】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機成分及び有機成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般的に、使用される加硫活性化剤の分量は、0.1~6phr、好ましくは0.5~4phrの範囲である。
【0086】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、そして一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、加硫阻害剤の分量は、0.1~3phr、好ましくは0.5~2phrである。
【0087】
他の成分
本明細書に開示される第4の実施形態のゴム組成物に任意選択的に添加され得る様々な他の成分は、当業者に周知であり、加工用、ワックス、加工助剤、粘着付与樹脂、補強樹脂、しゃく解剤を含む。
【0088】
上記で論じられるように、芳香族、ナフテン系、及び低PCA油が挙げられるがこれらに限定されない、様々なタイプの加工油及び伸展油を利用してもよい。概して、多くの用途について、本明細書に開示されるゴム組成物及び方法において使用される油(加工油及び任意の伸展油)の総量は、約1~約70phr(1~70phrを含む)、約2~約60phr(2~60phrを含む)、約3~約50phr(3~50phrを含む)の範囲である。しかしながら、特定の用途では、本明細書に開示されるゴム組成物及び方法において使用される油(加工油及び任意の伸展油)の総量は、更に多く約175phrまでの範囲に及び、これには175phrまで、約150phrまで、150phrまで、約100phrまで、及び100phrまでを含める。
【0089】
ゴム組成物の調製方法
本明細書に開示される第4の実施形態によるゴム組成物は、概して、(上記で開示した)ゴム組成物の成分を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの成分をバンバリーミキサー又はロール機で混練するなど、共に混合することによって形成することができる。これらの方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。語句、非生産用マスターバッチ段階は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階であると理解されている。用語、最終生産用混合段階も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、2つ以上の非生産用マスターバッチ混合段階をゴム組成物の調製時に使用することができる。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、2つ以上の非生産用マスターバッチ混合段階が使用される。第4の実施形態のゴム組成物がカーボンブラック以外の(又はカーボンブラックに加えて)充填剤を含む場合、他の充填剤の一部又は全ての別個の添加に対して、別個の再粉砕段階(複数可)を使用することができる。かかる段階(複数可)は、マスターバッチ段階で採用される温度と同様であるが、多くの場合わずかに低い温度で遂行され得、即ち、約90℃から約150℃の落下温度まで上昇する。
【0090】
第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、約130℃~約200℃の温度で行われる非生産用マスターバッチ混合段階(複数可)を伴うプロセスによって調製される。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の望ましくない事前硬化を回避するために加硫温度を下回る温度で行われる最終生産用混合段階を伴うプロセスによって調製される。したがって、生産用混合段階の温度は、約120℃を超えてはならず、典型的には約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、特に、約75℃~約100℃である。
【0091】
第1及び第2の実施形態に対して上記されるように、特定の実施形態では、熱可塑性樹脂は、樹脂とのゴム-溶媒-セメントの混合前に、無極性溶媒(複数可)の一部と予混合され、かかる実施形態では、熱可塑性樹脂の総量は、本明細書で論じられるようなもの(例えば、最大100phr)である。熱可塑性樹脂と少なくとも1つの無極性溶媒とのかかる予混合は、第4の実施形態に従って、任意選択的に、ゴム組成物の調製時に利用されてもよい。
【0092】
粘度の増加
第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、樹脂延伸ゴムの使用により粘度の増加を示す。本明細書に記載される第4の実施形態に従ってゴム組成物を調製するために樹脂延伸ゴムを利用することによってゴム組成物の粘度を増加させるための方法は、本明細書において完全に開示されると考慮されるべきである。粘度の増加とは、樹脂延伸ゴムを同等量の遊離樹脂及びゴムと置換する以外、同一成分を含有する比較ゴム組成物と比較したものである。樹脂延伸ゴムを利用することによる粘度増加の大きさは様々であり得る。第4の実施形態のうちの特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも5%(例えば5%、10%、15%、20%、25%以上)、少なくとも10%(例えば、10%、15%、20%、25%以上)、約15%、5~25%、約5~約25%、5~20%、又は約5~約20%の粘度の増加を示す。粘度の増加を、例えば、実施例において以下に記載されるRPA手順を使用して、ゴム組成物と比較ゴム組成物との実際の動的粘度を比較することによって測定することができる。樹脂延伸ゴムを使用することによって達成され得る粘度の増加は、より高い量の樹脂を含有するゴム組成物の配合にとって有益であり得る。
【実施例
【0093】
以下の実施例は、本開示の特定の及び代表的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に説明の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。具体的には、ゴム-溶媒-セメント中に使用される特定の共役ジエンモノマー含有ゴム、以下の実施例で使用される特定の熱可塑性樹脂、及びこれらのそれぞれの量は、発明を実施するための形態における開示と一致する他のかかる成分及び量が置換中に利用され得るので、限定として解釈されるべきではない。換言すれば、ゴム-溶媒-セメント中に使用される特定の共役ジエンモノマー含有ゴム、特定の熱可塑性樹脂、及びこれらの以下の実施例で使用される相対量は、発明を実施するための形態のより概略的な内容が適用されると理解されるべきである。同様に、特定の共役ジエンモノマー含有ゴム、当該共役ジエンモノマー含有ゴム中に使用される特定の熱可塑性樹脂、並びにゴム組成物中に使用される当該共役ジエンモノマー含有ゴム中に使用される他の成分(例えば、充填剤、硬化パッケージなど)、及びこれらのそれぞれの量は、発明を実施するための形態における開示と一致する他のかかる成分及び量が置換中に利用され得るので、限定として解釈されるべきではない。換言すれば、ゴム組成物中に使用される特定の共役ジエンモノマー含有ゴム、特定の熱可塑性樹脂、及びこれらの相対量は、発明を実施するための形態のより概略的な内容が適用されると理解されるべきである。
【0094】
セメントを含有する2つのスチレン-ブタジエンコポリマー(ゴム)を以下の手順に従って試料1及び試料2として調製する。
【0095】
試料1:乾燥させて窒素でパージした5リットルの反応装置を、乾燥脱気されたシクロヘキサン及びn-ブチルリチウム溶液で洗浄する。次いで、ヘキサン中、15.5%溶液の1,3-ブタジエンの2910グラムを窒素圧によって反応装置に注ぐ。攪拌しながら、反応装置内の温度を50℃に調整し、次いで0.96ミリリットルの1.6N n-ブチルリチウム溶液を添加する。重合終了後、ゴム-溶媒-セメントが生成される。重合を完全に終端させるように、1重量部の2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールを含有するイソプロピルアルコールが酸化防止剤として添加される、セメントの試料を採取する。ポリマーのセメントからの単離(及び乾燥)時に、ポリマーは、850,000グラム/モルの重量平均分子量を有すると見出される。
【0096】
試料2:使用されるn-ブチルリチウム溶液の量を25ミリリットルまで増加させること以外、試料1を調製するために使用した手順を追従する。再度、セメントの試料を採取する。ポリマーのセメントからの単離(及び乾燥)時に、ポリマーは、200,000グラム/モルの重量平均分子量を有すると見出される。
【0097】
表1A及び表1Bに提示される配合に従って、試料1の手順又は試料2の手順から得られるセメントの試料を少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合する。重合終了後、並びに反応停止剤及び酸化防止剤の添加後に、ただし、ポリマーの単離及び乾燥前に、混合を行う。添加される樹脂の量を、(セメントの所与の試料内に含有されるゴムの量を測定し、熱可塑性樹脂との混合に使用される試料中のゴムの量を決定するように推定することによって決定することができる)ゴム100部当たりの部で提示する。セメント1を使用して試料1から採取されるセメントの試料を指す。セメント2を使用して試料2から採取されるセメントの試料を指す。樹脂1は、グアユール樹脂である。樹脂2は、Neville Chemical Company(Pittsburgh、PA)より入手可能な熱可塑性樹脂であり、石油由来のC5供給原料の触媒重合から生成され、1800のMn及び4600のMw(ASTM D5296による)、115℃のR&B軟化点(ASTM D28による)を有する、脂肪族低分子量熱可塑性炭化水素樹脂として同製造業者によって説明されるNevtac(登録商標)115である。樹脂3は、Sovereign Chemical Company(Akron、OH)より入手可能な熱可塑性ノボラック樹脂(より具体的には、変性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)であり、90~100℃のR&B軟化点(試験法T06M02.01)を有するものとして同製造業者によって説明されるSP-6700樹脂である。
【0098】
【表1A】
【0099】
【表1B】
【0100】
ゴム組成物A~C:成分の量をphrで列挙している表2に提供される成分を使用してゴム組成物A、B、及びCを配合した。組成物を調製するための混合手順を表3において以下に示す。組成物A及び組成物Bは、組成物C中に使用される樹脂延伸ゴムではなく、遊離油及び遊離樹脂をそれぞれ利用するため、対照である。組成物C中に利用された樹脂延伸SBRを、組成物A及び組成物B中に使用された溶液SBRの固体バージョンに溶媒を添加することによって作り出して、最初にゴム-溶媒-セメントを作り出し、次いでゴム-溶媒-セメント中に炭化水素樹脂を混合して樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成した。より具体的には、溶媒としての7500グラムのn-ヘキサンと1100グラムの固体SBRとを混合した。組成物A中に使用されたのと同じ炭化水素樹脂を組成物B及び組成物C中に使用した。組成物Cを作り出す際、樹脂とゴム-溶媒-セメントとの混合前に、溶媒として、278グラムの炭化水素樹脂を325グラムのn-ヘキサンと予混合した。
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
170℃で15分間硬化後、ゴム組成物のそれぞれに関して、引張特性について試験を行った。表2の配合の試験結果を、以下の表4に示す。略語Ebは破断点伸びについて、Tbは破断点応力について使用され、これらの測定値は、タイヤトレッドに組み込まれた
ときに特に問題とされる、ゴム組成物の引き裂き耐性を判定する目安となる。略語M300は、300%伸びでの引張応力を示す。動的貯蔵弾性率のために、ゴム組成物の硬度の測定を提供する略語E’を使用し、乾燥した路面での操縦安定性(乾燥性能)は、概して、E’による影響を受け、より高い値が好ましい。表4に列挙した指標値は、対照としてゴム組成物Aを使用して、本開示による配合に関する値を、対照に関するそれぞれの値と比較する(即ち、試験値を対照値で除する)ことによって決定した。
【0104】
動的貯蔵弾性率(E’)及びtanδ値を、動的機械的熱分光計(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH(Ahiden,Germany)のEplexor(登録商標)500N)を、以下の条件で、測定モード:引張試験モード、測定周波数:52Hz、50~-5℃で0.2%ひずみ、-5~65℃で1%ひずみを適用、測定温度(以下の表4で述べる)、試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mmで用いて、測定した。タイヤトレッド内に組み込まれるとき、0℃におけるゴム組成物のtanδは、その湿式牽引力を示し、タイヤトレッド内に組み込まれるとき、30℃におけるtanδは、その乾燥牽引力を示し、タイヤトレッド内に組み込まれるとき、60℃におけるtanδは、その転がり抵抗を示す。
【0105】
本明細書に開示される粘度は、ローターを持たないAlpha Technologies RPA(ゴム加工分析器)機器を用いて決定される実際の動的粘度である。測定を、厳密にではないが、ASTM D 6204に従って実施した。ASTM D 6204に従って、3点周波数掃引を実施した。ゴム組成物を、130℃で1分間、予熱した。ASTM手順に準拠して、130℃で歪み掃引を行い、歪み100パーセント及び1Hzで行った。報告された粘度データは、266°F、0.2分のG’で稼働させて得たものである。
【0106】
【表4】
【0107】
表4のデータから見出すことができるように、22.75phrの加工油を樹脂(即ち、組成物B及び組成物C)と置換した組成物は、粘度の増加を示した。しかしながら、樹脂延伸ゴム(即ち、組成物C)を使用した組成物の粘度の増加は、遊離樹脂(即ち、組成物B)を使用した組成物よりも顕著であった。組成物Bと比較したとき、組成物Cが示した粘度の増加(15%以上)は予期せぬものであった。組成物B及び組成物Cについての表4に列挙された他の特性の値(例えば、Tb及びEb)は、組成物Aについてのそれぞれの値より10%超変化したが、互いに対しては5%以下で変化した。
【0108】
本出願は、本明細書に開示される組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
【0109】
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「2つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、かかる語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ又は2つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、かかる記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「2つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、かかる記載が、少なくとも記載される番号を意味するものと解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を使用する場合、一般に、かかる構成は、当業者がその慣例を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるだろう。
【0110】
特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
組成物及び方法の様々な態様及び実施形態が本明細書に開示されているが、別の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲に示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。
【0112】
<付記>
<項1>
樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a.(i)スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム、並びに(ii)4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、
b.前記ゴム-溶媒-セメントを、C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、
c.前記少なくとも1つの無極性溶媒を前記樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去する
ことによって、樹脂延伸ゴムを生成することと、を含む、プロセス。
<項2>
樹脂延伸ゴムを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a.少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴム及び少なくとも1つの無極性溶媒を含む、ゴム-溶媒-セメントを提供することと、
b.前記ゴム-溶媒-セメントを少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合して、樹脂-ゴム-溶媒-セメントを生成することと、
c.前記少なくとも1つの無極性溶媒を前記樹脂-ゴム-溶媒-セメントから除去する
ことによって、樹脂延伸ゴムを生成することと、を含み、
(b)の前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、最大100phrの量で利用される、プロセス。
<項3>
前記少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムが、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、又はポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、<項2>に記載のプロセス。
<項4>
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、脂肪族樹脂、環式脂肪族樹脂、芳香族樹脂、水素化芳香族樹脂、テルペン樹脂、脂肪族-芳香族樹脂、又はフェノール性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、<項2>又は<項3>に記載のプロセス。
<項5>
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応性レゾール樹脂、反応性ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、<項2>~<項4>のいずれか一項に記載のプロセス。
<項6>
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、
a.400~5000モル/グラムのMnを有する、
b.25℃で固体である、又は
c.少なくとも25℃のTgを有する、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項1>~<項5>のいずれか一項に記載のプロセス。
<項7>
前記少なくとも1つの無極性溶媒が、4~9個の炭素原子を有するアルカン、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカン及びアルキルシクロアルカン、又は6~12個の炭素原子を有する芳香族及びアルキル置換芳香族のうちの少なくとも1つから選択される、
<項1>~<項6>のいずれか一項に記載のプロセス。
<項8>
(b)が、石油系油、植物油、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを、前記ゴム-溶媒-セメント及び前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂と混合することを更に含む、<項1>~<項7>のいずれか一項に記載のプロセス。
<項9>
前記少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムが、
a.500,000~2,000,000のMnを有する、
b.結合している、又は
c.頭部において、尾部において、若しくは前記共役ジエンモノマー含有ゴムの骨格に沿って、のうちの少なくとも1つで官能化される、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項1>~<項8>のいずれか一項に記載のプロセス。
<項10>
<項1>~<項9>のいずれか一項に記載のプロセスから得られる樹脂延伸ゴム。
<項11>
a.100部の少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムと、
b.少なくとも1つの無極性溶媒と、
c.5~100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂と、
を含む、樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント。
<項12>
a.前記少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムが、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、若しくはポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、又はb.前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、脂肪族樹脂、環式脂肪族樹脂、芳香族樹脂、水素化芳香族樹脂、テルペン樹脂、脂肪族-芳香族樹脂、若しくはフェノール性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項11>に記載の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント。
<項13>
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、
a.400~5000モル/グラムのMnを有する、
b.25℃で固体である、
c.少なくとも25℃のTgを有する、
d.C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応性レゾール樹脂、反応性ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項11>又は<項12>に記載の樹脂延伸ゴム-溶媒-セメント。
<項14>
少なくとも1つの石油系油又は植物油を更に含む、<項11>~<項13>のいずれか一項に記載の樹脂-延伸ゴム-溶媒-セメント。
<項15>
ゴム組成物であって、
a.少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムを含むn部のゴム、及び最大100phrの少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む樹脂延伸ゴムであって、nが10~100の整数である、樹脂延伸ゴムと、
b.任意選択的に、100-n部の量の少なくとも1つの追加のゴムと、
c.10~200phrの総量の少なくとも1つの補強充填剤と、
d.硬化パッケージと、
を含む、ゴム組成物。
<項16>
a.前記少なくとも1つの共役ジエンモノマー含有ゴムが、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、天然ゴム、若しくはポリイソプレンのうちの少なくとも1つを含む、又は b.前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、脂肪族樹脂、環式脂肪族樹脂、芳香族樹脂、水素化芳香族樹脂、テルペン樹脂、脂肪族-芳香族樹脂、若しくはフェノール性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項15>に記載のゴム組成物。
<項17>
前記少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、
a.400~5000モル/グラムのMnを有する、
b.25℃で固体である、
c.少なくとも25℃のTgを有する、
d.C5樹脂、C9樹脂、テルペン樹脂、ビニル芳香族樹脂、テルペン-フェノール性樹脂、ロジン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、グアユール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応性レゾール樹脂、反応性ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、
のうちの少なくとも1つを満たす、<項15>又は<項16>に記載のゴム組成物。