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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ドリップアシスト
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/02 20060101AFI20240806BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A47J31/02
A47J31/06 120
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023530307
(86)(22)【出願日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2023014399
(87)【国際公開番号】W WO2023223707
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022081829
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】廣 水樹
(72)【発明者】
【氏名】平佐多 政夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 健次
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3200071(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0251874(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/02
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリッパー上に載置され前記ドリッパーに湯を注ぐためのドリップアシストであって、
前記湯を収容可能な筒状の収容部と、
前記収容部の底部の中央側に形成された複数の注出口と、
を備え、
前記収容部は、平らに折り畳み可能になっている、
ドリップアシスト。
【請求項2】
前記収容部は、三角筒状に形成されている、
請求項1に記載のドリップアシスト。
【請求項3】
前記収容部の上端部を囲むように形成され、前記ドリッパーに係合可能な鍔部を更に備え、
前記収容部は、前記底部が前記鍔部と同一面になるように折り畳み可能になっている、
請求項1に記載のドリップアシスト。
【請求項4】
前記収容部及び前記鍔部は、弾性を有するゴム製である、
請求項3に記載のドリップアシスト。
【請求項5】
前記鍔部の縁に設けられ、前記ドリッパーの上端と係合可能な係合部を更に備え、
前記係合部は、前記縁から下方に延出するように形成された延出壁である、
請求項3に記載のドリップアシスト。
【請求項6】
前記複数の注出口は、
前記収容部の底部の中央に形成された第1注出口と、
前記第1注出口の周囲に形成され、直径が前記第1注出口の直径よりも小さい複数の第2注出口と、を含む、
請求項1に記載のドリップアシスト。
【請求項7】
前記第1注出口は、前記収容部の底部の中央側に位置し他の部分よりも厚さが大きい肉厚部の中央に形成されており、
前記第2注出口は、前記肉厚部において前記第1注出口の周囲に形成されている、
請求項6に記載のドリップアシスト。
【請求項8】
前記複数の注出口が形成され、平面視形状が三角形状である注出部を更に備え、
前記複数の注出口は、
中央に形成された第1注出口と、
3つの角部の各々に形成された第2注出口と、を含む、
請求項2に記載のドリップアシスト。
【請求項9】
前記注出部は、前記収容部の底部から突出するように設けられ、
前記注出部の肉厚は、前記底部の他の部分の肉厚よりも大きい、
請求項8に記載のドリップアシスト。
【請求項10】
前記収容部は、
筒状に形成された壁部と、
前記壁部の軸方向において所定間隔だけ離れた位置に環状に形成され、厚さが前記壁部の他の部分よりも小さい複数の折れ部と、を有し、
前記壁部を各折れ部で折り曲げて重なるように畳むことで、前記収容部が平らに折り畳まれる、
請求項1に記載のドリップアシスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリッパー上に載置されドリッパーに湯を注ぐためのドリップアシストに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ハンドドリップでコーヒーを淹れるためのハンドドリップ用注出器が開示されている。このハンドドリップ用注出器は、注液吐出口部、注液拡散部、濾過部、微粉沈殿部を積層した構造となっている。注液拡散部には、注液吐出口部に注がれた湯を濾過部のコーヒー粉に滴下させるための複数の吐出口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-296598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のハンドドリップ用注出器では、複数のパーツを積層する構造であるため、嵩張ってしまう。このため、例えば屋外で利用する際には、保管スペースを確保する必要がある。また、嵩張っているため、持ち運び難い。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、湯を安定して注げると共に省スペース性及び携帯性に優れたドリップアシストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、ドリッパー上に載置され前記ドリッパーに湯を注ぐためのドリップアシストであって、前記湯を収容可能な筒状の収容部と、前記収容部の底部の中央側に形成された複数の注出口と、を備え、前記収容部は、平らに折り畳み可能になっている、ドリップアシストを提供する。
【0007】
また、前記収容部は、三角筒状に形成されていることとしてもよい。
また、前記収容部の上端部を囲むように形成され、前記ドリッパーに係合可能な鍔部を更に備え、前記収容部は、前記底部が前記鍔部と同一面になるように折り畳み可能になっていることとしてもよい。
【0008】
また、前記収容部及び前記鍔部は、弾性を有するゴム製であることとしてもよい。
また、前記鍔部の縁に設けられ、前記ドリッパーの上端と係合可能な係合部を更に備え、前記係合部は、前記縁から下方に延出するように形成された延出壁であることとしてもよい。
また、前記複数の注出口は、前記収容部の底部の中央に形成された第1注出口と、前記第1注出口の周囲に形成され、直径が前記第1注出口の直径よりも小さい複数の第2注出口と、を含むこととしてもよい。
【0009】
また、前記第1注出口は、前記収容部の底部の中央側に位置し他の部分よりも厚さが大きい肉厚部の中央に形成されており、前記第2注出口は、前記肉厚部において前記第1注出口の周囲に形成されていることとしてもよい。
【0010】
また、前記複数の注出口が形成され、平面視形状が三角形状である注出部を更に備え、前記複数の注出口は、中央に形成された第1注出口と、3つの角部の各々に形成された第2注出口と、を含むこととしてもよい。
また、前記注出部は、前記収容部の底部から突出するように設けられ、前記注出部の肉厚は、前記底部の他の部分の肉厚よりも大きいこととしてもよい。
また、前記収容部は、筒状に形成された壁部と、前記壁部の軸方向において所定間隔だけ離れた位置に環状に形成され、厚さが前記壁部の他の部分よりも小さい複数の折れ部と、を有し、前記壁部を各折れ部で折り曲げて重なるように畳むことで、前記収容部が平らに折り畳まれることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、湯を安定して注げると共に省スペース性及び携帯性に優れたドリップアシストを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一の実施形態に係るドリッパーセット1の構成を説明するための図である。
図2】ドリッパー10の斜視図である。
図3】ドリッパー10の底面図である。
図4】ドリッパー10を折り畳んだ状態を説明するための図である。
図5】ドリップアシスト20の斜視図である。
図6】ドリップアシスト20の斜視図である。
図7】ドリップアシスト20の平面図である。
図8図7のA-A断面図である。
図9】ドリップアシスト20を折り畳んだ状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ドリッパーセットの構成>
一の実施形態に係るドリッパーセットの構成について、図1を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一の実施形態に係るドリッパーセット1の構成を説明するための図である。なお、図1では、説明の便宜上、ドリッパー10にセットされるフィルター(具体的には、コーヒー粉を載せるためのフィルター)が省略されている。
【0015】
ドリッパーセット1は、例えば、抽出したコーヒーが滴下するカップ上にセットされて使用される。ドリッパーセット1は、図1に示すように、ドリッパー10と、ドリップアシスト20を含む。
【0016】
ドリッパー10は、筒状に形成されている。ここでは、ドリッパー10は、逆三角錐筒状に形成されている。ただし、これに限定されず、ドリッパー10の円筒状に形成されていてもよい。ドリッパー10は、金属製である。
【0017】
図2は、ドリッパー10の斜視図である。図3は、ドリッパー10の底面図である。
ドリッパー10は、上方開口11aと下方開口11bを有する。上方開口11aは、フィルターをセットするための開口である。下方開口11bは、抽出したコーヒーを滴下させるための開口であり、下方開口11b側がカップに載置される。
【0018】
ドリッパー10は、図3に示すように、3つの壁部12、13、14がヒンジ15aを介して連結されている。具体的には、壁部12、13、14の端部同士が、ヒンジ15aを介して連結されている。また、壁部12は、2分割されており、第1部分12aと第2部分12bが、ヒンジ15bによって連結されている。壁部12、13、14は、ここでは所定厚さの金属板から成る。
【0019】
ドリッパー10は、図3に示すように、3つの脚部16を有する。3つの脚部16は、それぞれ壁部12、13、14から延出するように形成されている。3つの脚部16には、カップ等にセットするための凹部16aが形成されている。凹部16aは、様々な大きさのカップに位置決めできるように波状に形成されている。脚部16は、ドリッパー10を傾斜がある場所に置いた際の滑り止めの機能や、風にあおられる際のストッパーの機能を有する。
【0020】
図4は、ドリッパー10を折り畳んだ状態を説明するための図である。ドリッパー10は、折り畳み可能になっている。ここでは、壁部12、13、14をヒンジ15a、15bを中心に回転させて折り畳むことが可能となっている。具体的には、壁部13、14が、ヒンジ15bを中心に折り畳まれた壁部12(重なった状態の第1部分12aと第2部分12b)を挟むように、ドリッパー10が折り畳まれる。これにより、逆三角錐筒状であったドリッパー10が平らな状態となる。
【0021】
ドリップアシスト20は、図1に示すように、ドリッパー10の上方開口11a側にセット可能である。ドリップアシスト20は、ドリッパー10の上方開口11aを覆うように載置されドリッパー10に湯を注ぐためのパーツである。例えば、使用者が、ドリップアシスト20の収容部30に湯を注ぐと、ドリップアシスト20の底部に設けられた注出部50からドリッパー10へ向かって湯が滴下する。
【0022】
ドリップアシスト20が無い場合には、使用者は、ドリッパー10にセットされたフィルターに投入されたコーヒー粉に直に湯を注ぐことになるが、熟練していない場合には、湯の注ぎ方が適切でない(具体的には、湯を一定にゆっくり注げない)ため、抽出されたコーヒーの味が損なわれやすい。例えば、ドリップコーヒーに慣れていない使用者の場合には、一度に多くの量の湯を注いでしまう。
【0023】
これに対して、本実施形態においては、ドリップアシスト20を用いることによって、使用者がドリップに不慣れであっても、フィルターに投入されたコーヒー粉に湯を少量ずつ一定に注ぐことができるので、抽出されるコーヒーの味が損なわれることを抑制できる。また、ドリップアシスト20がドリッパー10の上方開口11aを覆うように設置されるため、コーヒーの抽出中にドリップアシスト20が上蓋の機能を有することになり、抽出中の湯温の低下を抑制でき、湯温を所望の温度(適温)に管理しやすくなる。特に、外気温の影響を受けやすい屋外でコーヒーを抽出する場合には、より有効である。
【0024】
<ドリップアシストの詳細構成>
ドリップアシスト20の詳細構成について、図5図8を参照しながら説明する。
図5及び図6は、ドリップアシスト20の斜視図である。図7は、ドリップアシスト20の平面図である。図8は、図7のA-A断面図である。
【0025】
ドリップアシスト20は、一例としてゴム製であり、具体的にはシリコーンゴム製である。このため、ドリップアシスト20は、柔軟性を有し、弾性変形可能である。ドリップアシスト20は、図5に示すように、収容部30と、鍔部40と、注出部50を有する。
【0026】
収容部30は、筒状に形成されており、使用者が注いた湯を収容可能である。収容部30は、ドリッパー10の上方開口11aの形状に合わせた形状となっており、ここでは図6に示すように三角筒状に形成されている。ただし、これに限定されず、例えば収容部30は円筒状に形成されていてもよい。
【0027】
収容部30は、図5に示すように、壁部32と、底部34と、折れ部36a、36b、36cを有する。
壁部32は、筒状に形成されている。壁部32は、図8に示すように、底部34に向かって幅が小さくなるように傾斜している。壁部32の内周面には、図5に示すように、収容された湯の量を示す目印部33a、33bが設けられている。目印部33a、33bは、壁部32の内周面が突出するように形成されている。使用者は、収容部30に注がれた湯が目印部33a、33bに達すると、所望の量が注がれたと判断できる。
【0028】
底部34は、壁部32の下部と繋がっており、収容部30の底面を成している部分である。底部34を平面視した際の形状は、図7に示すように略三角形状である。底部34の中央側には、注出部50が設けられている。
【0029】
折れ部36a、36b、36cは、壁部32において折り曲げられる部分である。折れ部36a、36b、36cは、図7に示すように、壁部32の軸方向において所定間隔だけ離れた位置に(一例として等間隔で)環状に形成されている。折れ部36a、36b、36cの厚さは、折り曲げやすくするために、壁部32の他の部分よりも小さくなっている。ここでは、3か所の折れ部36a、36b、36cが壁部32に形成されているが、これに限定されず、2か所又は4か所以上の折れ部が壁部32に形成されていてもよい。なお、収容部30が三角筒状に形成されていることで、折れ部36a、36b、36cで折り曲げやすくなる。
【0030】
図9は、ドリップアシスト20を折り畳んだ状態を説明するための図である。図9には、ドリップアシスト20を上方から撮影した際の折り畳み状態が示されている。収容部30は、図9に示すように、平らに折り畳み可能になっている。別言すれば、収容部30は、底部34が鍔部40と同一面になるように折り畳み可能になっている。具体的には、収容部30の壁部32を折れ部36a、36b、36cで折り曲げて重なるように畳むことで、底部34と鍔部40が隣接する状態となる。折り畳まれた状態のドリップアシスト20の厚さは、畳まれる前の状態の1/3~1/4程度になる。このようにドリップアシスト20全体が平らな状態となることで、ドリップアシスト20の携帯性が高まる。特に、前述したようにドリッパー10も平らに畳まれるため、ドリッパーセット1を例えばアウトドアで利用する際に携帯しやすくなる。
【0031】
鍔部40は、図5に示すように、収容部30の上端部を囲むように環状に形成された部分である。鍔部40の縁は、図1に示すように、ドリッパー10の壁部12、13、14よりも外側に位置している。このため、ドリップアシスト20がドリッパー10に載置された際には、鍔部40の下面がドリッパー10の壁部12、13、14の上端に接する。
【0032】
鍔部40は、ドリッパー10に係合可能である。具体的には、鍔部40の縁には、図6に示すように、ドリッパー10の上端と係合する係合部42が複数設けられている。複数の係合部42の各々は、ここでは鍔部40の縁から下側に延出するように形成された延出壁である。複数の係合部42は、延出壁の内周面42aがドリッパー10の壁部12、13、14の外側面に対向する状態(図1参照)で、ドリッパー10の上端と係合される。
【0033】
注出部50は、収容部30内の湯をドリッパー10に滴下させるための部分である。注出部50は、図6に示すように、収容部30の底部34の中央側に位置している。注出部50には、複数の注出口が形成されている。収容部30に注がれた湯は、複数の注出口を介してドリッパー10に滴下する。
【0034】
注出部50は、複数の注出口として、図7に示すように、第1注出口52と第2注出口54を有する。第1注出口52は、注出部50の中央に形成され、第2注出口54は、第1注出口52の周囲に複数形成されている。注出部50では、図8に示すように、中央側が凹むように湾曲している。これにより、湯が少なくなった際に、湯が直径の大きい第1注出口52へ流れやすくなり、注出部50での湯残りが発生し難くなる。
【0035】
複数の第2注出口54の各々は、第1注出口52から同じ距離だけ離れている。これにより、収容部30内の湯が、ドリッパー10へ均等に滴下しやすくなる。また、複数の第2注出口54の直径は、それぞれ同じ大きさであり、第1注出口52の直径よりも小さい。この場合には、収容部30の湯の水圧が低くなった際には、湯が第1注出口52から滴下され、湯残りの発生を抑制できる。なお、第2注出口54の直径を第1注出口52の直径と同じ大きさにすると、湯をゆっくり滴下させ難い。上記では、3つの第2注出口54が形成されているが、これに限定されず、第2注出口54は4つ以上であってもよい。また、上記では第1注出口52が一つであることとしたが、これに限定されず、第1注出口52が複数あってもよい。
【0036】
注出部50は、図8に示すように、底部34から突出するように形成されている。また、注出部50は、図8に示すように、収容部30の他の部分よりも厚さが大きい肉厚部となっている。このため、第1注出口52及び第2注出口54は、収容部30の底部34の肉厚部に形成されていることになる。これにより、貫通孔である第1注出口52及び第2注出口54の長さを、大きくできる。第1注出口52及び第2注出口54の長さが大きくなることで、収容部30内の湯の水位が下がっても水圧を確保しやすくなるので、収容部30内の湯残りを抑制できる。なお、第1注出口52及び第2注出口54は、注出口50の一部を円筒状に突出させた部分に形成してもよい。この場合でも、第1注出口52及び第2注出口の長さを大きくできる。
【0037】
図6に示すように、注出部50の平面視形状は、三角形状である。第1注出口52は、三角形状の注出部50の中央に形成され、第2注出口54は、三角形状の注出部50の3つの角部の各々に形成されている。上記のように、第1注出口52及び第2注出口54が位置することで、逆三角錐筒状のドリッパー10のフィルターに投入されたコーヒー粉に対して均等に湯を注ぐことができる。また、湯がコーヒー粉から外れてフィルターに当たることを防止できる。
【0038】
本実施形態のドリップアシスト20を用いることによって、以下に説明するように、熱湯を収容部30に注いでも適温のコーヒーを抽出することができる。
ドリップアシストを介さずにドリッパー上のコーヒー粉に直に湯を注ぐ場合には、一般的には90℃前後(具体的には、87℃~93℃)の湯を注ぐのが望ましいとされている。これに対して、本実施形態のドリップアシスト20を用いる場合には、ドリップアシスト20を介してコーヒー粉に滴下するまでに湯の温度が低下する。湯の温度が低下する理由は、収容部30に収容された湯の上面からの放熱や、湯が第1注出口52及び第2注出口54から細くゆっくりと滴下する際の放熱(湯が太く速く滴下するよりも、湯が外気に触れる割合や時間が長くなるので放熱量が多い)に起因する。熱湯をドリップアシスト20に注いでコーヒー粉に滴下させると、90℃前後の湯をコーヒー粉に直に注ぐ場合と同様な温度のコーヒーが抽出される。このため、ドリップアシスト20を用いる場合には、沸騰した湯を用いて、直ぐにコーヒーを抽出することができる。また、屋外で使用する場合には、温度計が無いケースがほとんどであり、湯温の管理が困難であるため、90℃前後の湯を注ぎ難い。これに対して、本実施形態の場合には、ドリップアシスト20に沸騰した湯を注ぐだけで、屋外においても適温の湯でドリップした場合と同じようにコーヒーを抽出できる。
【0039】
また、本実施形態において、ドリップアシスト20は、ドリッパー10の上方開口11aを覆っているため、コーヒーを抽出中の上蓋の効果を有し、抽出中の湯温の温度低下を抑制できる。
【0040】
ドリップアシスト20の注出部50は、図1に示すように、ドリッパー10の上端よりも下方に位置している。この場合には、注出部50を含む底部34が、ドリッパー10の上方開口11aよりも下側で、コーヒーの抽出中に蓋をすることになる。また、コーヒーの抽出中に、収容部30の湯が減っていくが、収容部30に残っている湯によって保温効果を高めることができる。
【0041】
収容部30の上下方向での中心位置は、ドリッパー10の上端よりも下方に位置していてもよい(図1参照)。かかる場合には、底部34がドリッパー10のフィルターのコーヒー粉の近くに位置し、湯がコーヒー粉までに滴下するまでの距離が短くなるので、湯がコーヒー粉にやさしく滴下することになる。
【0042】
収容部30の底部34の厚さは、ドリッパー10の壁部12、13、14の厚さよりも大きい(図1参照)。この場合には、上蓋としての収容部30の底部34による遮熱効果が高まり、コーヒーの抽出中の保温効果を高めやすい。
【0043】
実験結果によれば、ドリップアシスト20を使用した場合には、ドリップアシスト20を使用しない場合に比べて、抽出されるコーヒーの温度が1℃~4℃高い。なお、温度の幅があるのは、一要因として外気の温度の影響を受けるためである。
【0044】
<ドリッパーセットの使用例>
以下では、上述した構成のドリッパーセット1の使用例について説明する。
【0045】
まず、使用者は、フィルターがセットされたドリッパー10をカップ上に載置する。この際、フィルターの上端は、ドリッパー10の上端からはみ出ている。この状態で、使用者は、コーヒー粉を、フィルターに投入する。
【0046】
次に、使用者は、ドリップアシスト20をドリッパー10上に載置させる。具体的には、使用者は、ドリップアシスト20の係合部42がドリッパー10の壁部12、13、14の上端と係合するように、ドリップアシスト20をセットする。この際、ドリップアシスト20は、ドリッパー10からはみ出たフィルターの部分を挟むように、ドリッパー10にセットされる。
【0047】
次に、使用者は、熱湯をドリップアシスト20の収容部30に第1所定量だけ注ぐ。この第1所定量は、フィルターのコーヒー粉を蒸らすための量に相当する。収容部30の注がれた湯は、ドリップアシスト20の第1注出口52及び第2注出口54を介してコーヒー粉に滴下する。滴下した湯によって、コーヒー粉が蒸らされる。
【0048】
次に、使用者は、コーヒーを抽出するために、熱湯を収容部30に第2所定量だけ注ぐ。第2所定量は、第1所定量よりも多い量である。収容部30に注がれた湯は、ドリップアシスト20の第1注出口52及び第2注出口54を介してコーヒー粉にゆっくりと滴下する。収容部30の第1注出口52及び第2注出口54が、底部34の中央側に位置しているので、湯は、コーヒー粉に滴下し、フィルターには滴下しない。これにより、湯が壁部12、13、14に沿って流れることに起因してコーヒーの味が低下することを防止できる。
【0049】
収容部30の湯は、第1注出口52及び第2注出口54を介して、細く優しくコーヒー粉にゆっくりと滴下する。これにより、フィルター上のコーヒー粉が荒れず、コーヒー粉のえぐみが生じ難くなるので、コーヒー粉本来のうまみが抽出される。抽出されたコーヒーは、ドリッパー10の下側のカップに滴下する。収容部30に注がれた熱湯は、第1注出口52及び第2注出口54を介してコーヒー粉に滴下するまでに温度が少し低下するので、コーヒー粉のえぐみが出にくく、うまみが抽出される適正な湯温になる。また、収容部30がコーヒー粉の近くに位置し上蓋として機能するため、抽出中の温度の低下を抑制し、湯温を適温に管理できる。
【0050】
その後、使用者は、再度、収容部30に第2所定量を注ぎ、コーヒーを抽出させる。使用者は、収容部30に湯を第2所定量だけ注ぐ行為を複数回行うことで、所望量のコーヒーを抽出できる。複数回行うことで、収容部30に湯が収容される時間も長くなり、ドリップアシスト20による保温効果も長く持続する。
【0051】
<本実施形態における効果>
上述した本実施形態に係るドリップアシスト20は、湯を収容可能な筒状の収容部30と、収容部30の底部34の中央側に形成された第1注出口52及び第2注出口54を有する。そして、収容部30は、平らに折り畳み可能になっている。具体的には、収容部30の底部34が鍔部40と同一面になるように、壁部32が折り畳まれる。
これにより、収容部30に湯を注がない場合には、収容部30を平らに折り畳むことができるので、嵩張ることがなく、省スペース性に優れている。また、屋外でコーヒーを抽出するためにドリップアシスト20を持ち運ぶ際に携帯しやすい。一方で、コーヒーを抽出する際には、収容部30の底部34に中央側に形成された第1注出口52及び第2注出口54によって、湯をドリッパー10に安定して注ぐことができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0053】
1 ドリッパーセット
10 ドリッパー
11a 上方開口
20 ドリップアシスト
30 収容部
32 壁部
34 底部
40 鍔部
42 係合部
50 注出部
52 第1注出口
54 第2注出口
図1
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図9