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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】レーザマイクロフォン及び端末
(51)【国際特許分類】
   H04R 23/00 20060101AFI20240806BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H04R23/00 320
H04R3/00 320
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023514944
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2021116172
(87)【国際公開番号】W WO2022048588
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202010924113.6
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,シヤオコーァ
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,シーシオーン
(72)【発明者】
【氏名】ゥルワン,シュヨンジエ
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102427573(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110186548(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110602617(CN,A)
【文献】特開2004-361378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 23/00
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラム、レーザデバイス、制御回路、自己混合信号取得装置、及び信号処理回路を有するレーザマイクロフォンであって、
前記レーザデバイスは、前記ダイアフラムに光を放射し、前記ダイアフラムからのフィードバック光信号を受信するように構成され、前記フィードバック光信号が前記レーザデバイスの共振キャビティ内でレーザと干渉して自己混合光信号が得られ、前記レーザデバイスと前記ダイアフラムとの間の距離はLであり、Lの範囲は30μm≦L≦300μmであり、
前記制御回路は、前記レーザデバイスに接続され、光を放射するように前記レーザデバイスを駆動及び制御するように構成され、
前記自己混合信号取得装置は、前記レーザデバイスに接続され、前記自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を取得及び出力するように構成され、
前記信号処理回路は、前記自己混合信号取得装置に接続され、前記自己混合信号取得装置によって出力された前記ターゲット電圧信号を受信し、前記ターゲット電圧信号をオーディオ電圧信号へと処理するように構成される、
レーザマイクロフォン。
【請求項2】
前記自己混合信号取得装置の出力端が前記制御回路の入力端に接続され、前記自己混合信号取得装置によって出力された前記ターゲット電圧信号に基づいて前記制御回路が前記レーザデバイスの駆動電流Aを決定する、請求項1に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項3】
前記レーザデバイスのj回目の駆動電流変調が行われるとき、前記自己混合信号取得装置によって出力された前記ターゲット電圧信号に基づいて前記制御回路が前記レーザデバイスの駆動電流Aを決定することは、
S11: 前記制御回路により、前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流Aj-1に基づいて、現在の駆動電流変調の走査電流範囲[Imin,Imax]を決定し、Imin=Aj-1-I、Imax=Aj-1+I0’、0.1mA≦I≦0.5mA、且つ0.1mA≦I0’≦0.5mAであり、jは、駆動電流変調の回数を表し、2以上の整数であり、
S12: 前記制御回路により、初期値としてImin、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImaxを用いて、前記レーザデバイスに走査電流Iを印加し、各走査において前記走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを取得し、ΔIは予め定められた電流であり、前記交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVは前記交流電流Iの前記周波数に関係し、tは電流走査の回数を表し、
S13: S12を行う過程で得られた複数のΔVのうちの最大値のΔVに対応する走査電流Iを、前記現在の駆動電流変調を通じて得られた、前記レーザデバイスの前記駆動電流Aとして決定する、
ことを有する、請求項2に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項4】
前記レーザデバイスが動作モードを開始するとき、前記自己混合信号取得装置によって出力された前記ターゲット電圧信号に基づいて前記制御回路が前記レーザデバイスの駆動電流Aを決定することは、
S21: 前記制御回路により、初期値としてImin’、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImax’を用いて、前記レーザデバイスに走査電流It’を印加し、各走査において前記走査電流It’に交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を取得し、Imin’は予め定められた最小駆動電流であり、Imax’は予め定められた最大駆動電流であり、ΔIは予め定められた電流であり、前記交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVt’は前記交流電流Iの前記周波数に関係し、t’は電流走査の回数を表し、
S22: S21を行う過程で得られた複数のΔVt’のうちの最大値のΔVt’に対応する走査電流It’を、前記レーザデバイスの前記駆動電流Aとして決定する、
ことを有する、請求項2又は3に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項5】
ΔIの範囲は10μA≦ΔI≦50μAである、請求項3又は4に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項6】
前記交流電流Iの周波数範囲は20kHz<I≦50kHzである、請求項3又は4に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項7】
前記自己混合信号取得装置は、前記レーザデバイスの前記共振キャビティ内の前記自己混合光信号を検出し、前記自己混合光信号に関係した前記ターゲット電圧信号を出力するように構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項8】
前記自己混合信号取得装置は、光検出器及びトランスインピーダンス増幅器回路を有し、前記光検出器は、前記レーザデバイスに接続され、前記レーザデバイスの共振キャビティ内の前記自己混合光信号を検出し、前記自己混合光信号を電流信号に変換するように構成され、前記トランスインピーダンス増幅器回路は、前記光検出器に接続され、前記電流信号を前記ターゲット電圧信号に変換するように構成される、請求項7に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項9】
前記光検出器及び前記レーザデバイスは、1つのチップ上にモノリシックに集積されており、前記光検出器は、前記ダイアフラムに面しない側の前記レーザデバイスの面上に配置されている、請求項8に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項10】
前記自己混合信号取得装置は、前記レーザデバイスに接続されたスナバ回路を有し、該スナバ回路は前記レーザデバイスの端子電圧を取得するように構成され、前記レーザデバイスの前記端子電圧は前記自己混合光信号に関係する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項11】
前記信号処理回路は、ハイパスフィルタ回路及び電圧増幅ローパスフィルタ回路を有し、前記ハイパスフィルタ回路は前記自己混合信号取得装置に接続され、前記電圧増幅ローパスフィルタ回路は前記ハイパスフィルタ回路に接続されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項12】
前記信号処理回路は更に、前記電圧増幅ローパスフィルタ回路に接続された利得制御回路を有し、該利得制御回路は、前記電圧増幅ローパスフィルタ回路の出力信号に基づいて前記電圧増幅ローパスフィルタ回路の利得を調節するように構成される、請求項11に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項13】
前記ダイアフラムに面する前記レーザデバイスの光放射面上に光ビーム結合装置が配置され、該光ビーム結合装置は1つ以上のレンズを有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項14】
各レンズの横方向の寸法が20μmから200μmの範囲であり、各レンズの軸方向の寸法が20μmから200μmの範囲である、請求項13に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項15】
前記ダイアフラムは、MEMSダイアフラム、金属ガラスダイアフラム、グラフェンダイアフラム、ポリマーフィルム、又は金属フィルムを有する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項16】
前記レーザデバイスに面した前記ダイアフラムの面上に反射層が配置されている、請求項15に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項17】
前記レーザデバイスは垂直共振器型面発光レーザ又は端面発光型レーザである、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項18】
当該レーザマイクロフォンは更にハウジングを有し、前記ダイアフラム、前記レーザデバイス、前記制御回路、前記自己混合信号取得装置、及び前記信号処理回路が全て前記ハウジング内に配置され、前記ハウジング上の、前記ダイアフラムに対応する位置に、収音孔が配設されている、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォン。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載のレーザマイクロフォンを有する端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2020年9月4日に中国国家知識産権局に出願された、“レーザマイクロフォン及び端末”と題された中国特許出願第202010924113.6号に対する優先権を主張するものであり、その出願をその全体にてここに援用する。
【0002】
この出願は、マイクロフォン技術の分野に関し、特に、レーザマイクロフォン及び端末に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば音声制御及び音声インタラクションなどのシナリオに自動音声認識システムがますます適用されるようになっている。一方で、より多くの人々がモバイルインターネットを通じてビデオコンテンツを記録及び共有している。音を拾うために使用されるマイクロフォンは、優れたユーザ体験を確保するために優れた性能を持つ必要がある。マイクロフォンの信号対雑音比(SNR)は、拾う音の品質に影響を与える重要なパラメータである。高いSNRは、マイクロフォンが、遠距離にある弱いターゲットソースを拾うときに信号を増幅しながら低いバックグラウンドノイズを維持する助けとなり、それによって遠距離での収音(sound pickup)品質を向上させる。
【0004】
現在、例えばモバイル通信端末及びスマートホームなどの装置では、音声信号をキャプチャするためにMEMS(Microelectromechanical Systems、微小電気機械システム)マイクロフォンが主に使用されている。このマイクロフォンは、MEMS容量センサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)変換回路、及びサウンドキャビティなどで構成される。MEMSキャパシタは、音を受けるためのシリコンダイアフラムとシリコンバック電極とを含み、シリコンダイアフラムは、音波によって生成される空気振動を感知し、それに従って振動することができ、シリコンバック電極とともに可変キャパシタを形成する。外部バイアスの下での可変キャパシタの変化が回路を通して検出され、電気信号出力へと処理され変換される。ダイアフラムとシリコンバック電極との間の距離が小さいため、高いスクイーズ膜減衰が導入されて高い機械的ノイズが導入され、それがSNRの改善を制限する。また、シリコンバック電極とシリコンダイアフラムとの間での引き込み効果に起因して、それらの間に特定の距離を保つ必要があり、それ故に、感度及び音響過負荷点の改善が制限される。従来のMEMSマイクロフォンでは、SNRを更に改善することのボトルネックに直面する。従って、より高いSNRを有するマイクロフォンを得るためには、及び音声認識率及び目覚め率を高めて遠距離での収音効果を向上させるためには、新たな技術的な道筋を模索する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
この出願の実施形態は、高い信号対雑音比を持つレーザマイクロフォンを提供し、その結果、その音声認識率及び目覚め率を高めることができ、遠距離での収音効果が向上するようにする。
【0006】
具体的には、この出願の実施形態の第1態様は、ダイアフラム、レーザデバイス、制御回路、自己混合信号取得装置、及び信号処理回路を含んだレーザマイクロフォンを提供する。
【0007】
レーザデバイスは、ダイアフラムに光を放射し、ダイアフラムからのフィードバック光信号を受信するように構成され、フィードバック光信号がレーザデバイスの共振キャビティ内でレーザと干渉して自己混合光信号が得られる。レーザデバイスとダイアフラムとの間の距離はLであり、Lの範囲は30μm≦L≦300μmである。
【0008】
制御回路は、レーザデバイスに接続され、光を放射するようにレーザデバイスを駆動及び制御するように構成される。
【0009】
自己混合信号取得装置は、レーザデバイスに接続され、自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を取得するように構成される。
【0010】
信号処理回路は、自己混合信号取得装置に接続され、自己混合信号取得装置によって出力されたターゲット電圧信号を受信し、ターゲット電圧信号をオーディオ電圧信号へと処理するように構成される。
【0011】
この出願の実施形態で提供されるレーザマイクロフォンによれば、音声信号によって生じるダイアフラムの振動をレーザ自己混合デバイスが検出するように構成される。レーザ自己混合デバイスは、弱い振動信号を検出する強い能力を持つ。従って、マイクロフォンの音声認識感度を向上させることができる。さらに、レーザデバイスとダイアフラムとの間に適切な距離が設定され、それ故に、レーザデバイスの出力光ビームがダイアフラムで反射された後にレーザデバイスの共振キャビティに再び入ることのカップリング効率を向上させることができ、レーザマイクロフォンの信号対雑音比を効果的に向上させ、音声認識感度を向上させる。
【0012】
例えば周囲温度の変動及びレーザデバイスの経年劣化などの理由により、レーザデバイスの電流の変動が引き起こされる。結果として、レーザデバイスの発光周波数がドリフトし、位相ノイズが導入される。位相ノイズを抑制又は除去し、レーザマイクロフォンの信号対雑音比を改善するために、この出願の実施形態では、ループを構成することによってレーザデバイスの更に駆動電流を変調し、最も高い感度を持つ電流動作点でレーザデバイスを安定させる。具体的には、この出願の一実装において、自己混合信号取得装置の出力端が制御回路の入力端に接続され、自己混合信号取得装置によって出力されたターゲット電圧信号に基づいて制御回路がレーザデバイスの駆動電流Aを決定する。
【0013】
レーザデバイスの電流変動及びダイアフラムの振動は、レーザデバイスの共振キャビティにおける位相変動、すなわち、自己混合光信号の変動を引き起こす。この出願の実施形態では、レーザデバイスに小さい電流乱れを印加し、該電流乱れによって生じた、自己混合信号取得装置が出力する電圧信号の変化の度合い、すなわち、該電流乱れによって生じた自己混合光信号の変化の度合いに従って、最も高い感度を持つレーザデバイスの動作点が決定される。従って、ダイアフラムの振動に対して最も高い感度を持つ動作点にレーザデバイスを保つことができ、マイクロフォンの信号対雑音比を向上させることができる。
【0014】
この出願の一実装において、レーザデバイスのj回目の駆動電流変調が行われるとき、自己混合信号取得装置によって出力されたターゲット電圧信号に基づいて制御回路がレーザデバイスの駆動電流Aを決定することは、
S11: 制御回路により、前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流Aj-1に基づいて、現在の駆動電流変調の走査電流範囲[Imin,Imax]を決定し、Imin=Aj-1-I、Imax=Aj-1+I0’、0.1mA≦I≦0.5mA、且つ0.1mA≦I0’≦0.5mAであり、jは、駆動電流変調の回数を表し、2以上の整数であり、
S12: 制御回路により、初期値としてImin、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImaxを用いて、レーザデバイスに走査電流Iを印加し、各走査において走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを取得し、ΔIは予め定められた電流であり、交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVは交流電流Iの周波数に関係し、tは電流走査の回数を表し、
S13: S12を行う過程で得られた複数のΔVのうちの最大値のΔVに対応する走査電流Iを、現在の駆動電流変調を通じて得られた、レーザデバイスの駆動電流Aとして決定する、
ことを含む。
【0015】
上述の駆動電流変調がレーザデバイスの動作モードで行われることで、レーザデバイスは、動作プロセス全体で、最も高い感度を持つ電流動作点で常に安定することができ、それにより、レーザマイクロフォンの収音品質及び遠距離での収音効果が向上されるとともに、レーザマイクロフォンの収音安定性が向上される。
【0016】
この出願の一実装において、レーザデバイスが動作モードを開始するとき、自己混合信号取得装置によって出力されたターゲット電圧信号に基づいて制御回路がレーザデバイスの駆動電流Aを決定することは、
S21: 制御回路により、初期値としてImin’、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImax’を用いて、レーザデバイスに走査電流It’を印加し、各走査において走査電流It’に交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を取得し、Imin’は予め定められた最小駆動電流であり、Imax’は予め定められた最大駆動電流であり、ΔIは予め定められた電流であり、交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVt’は交流電流Iの周波数に関係し、t’は電流走査の回数を表し、
S22: S21を行う過程で得られた複数のΔVt’のうちの最大値のΔVt’に対応する走査電流It’を、レーザデバイスの駆動電流Aとして決定する、
ことを含む。
【0017】
レーザデバイスが動作モードを開始するとき、予め定められた最小駆動電流(一般的にレーザデバイス閾値)から予め定められた最大駆動電流まで走査することによって、最も高い感度を持つレーザデバイスの電流動作点が探索され、その結果、レーザマイクロフォンの収音品質及び遠距離での収音効果を向上させることができる。
【0018】
この出願の一実装において、ΔIの範囲は10μA≦ΔI≦50μAである。適切なステップサイズを設定することは、高い感度を持つ駆動電流点の値を正確に発見する助けとなる。
【0019】
この出願の一実装において、交流電流Iの周波数、すなわち、印加される電流乱れの周波数は、人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高い。従って、電流乱れはレーザデバイスの安定動作に大きくは影響しない。この出願の一部の実装において、交流電流Iの周波数範囲は20kHz<I≦50kHzである。交流電流Iのピークツーピーク値は10μAと50μAとの間で制御され得る。同様に、小さい電流値の交流電流Iを印加することにより、レーザデバイスの安定動作に対する影響を抑制することができる。
【0020】
この出願の一実装において、自己混合信号取得装置は、レーザデバイスの共振キャビティ内の自己混合光信号を検出し、自己混合光信号に関係したターゲット電圧信号を出力するように構成される。
【0021】
この出願の特定の一実装において、自己混合信号取得装置は、光検出器及びトランスインピーダンス増幅器回路を含み、光検出器は、レーザデバイスに接続され、レーザデバイスの共振キャビティ内の自己混合光信号を検出し、自己混合光信号を電流信号に変換するように構成され、トランスインピーダンス増幅器回路は、光検出器に接続され、電流信号をターゲット電圧信号に変換するように構成される。光検出器とトランスインピーダンス増幅器回路を用いて自己混合信号を得ることにより、レーザデバイスの駆動電流を増加させて、より高い信号対雑音比を得ることができる。
【0022】
この出願の一実装において、光検出器及びレーザデバイスは、1つのチップ上にモノリシックに集積されており、光検出器は、ダイアフラムに面しない側のレーザデバイスの面、すなわち、レーザデバイスの光放射面の裏側に配置される。レーザデバイスと光検出器が同一チップ上に集積されることで、レーザデバイスの裏から伝えられる光を光検出器にカップリングする効率を向上させることができ、それにより、信号対雑音比が向上されるのと同時に、振動や落下などの場合にディスクリート構成によって生じる光路ずれを避けることができる。これにより、マイクロフォンのライフサイクルを通して信号の一貫性が保たれる。
【0023】
この出願の他の一実装において、自己混合信号取得装置は、レーザデバイスに接続されたスナバ回路を含み、スナバ回路はレーザデバイスの端子電圧を取得するように構成され、レーザデバイスの端子電圧は自己混合光信号に関係する。自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号が、レーザデバイスの端子電圧を取得することによって得られ、それ故に、レーザデバイスの小さな駆動電流(すなわち、小さい電力消費)の下で適度な信号対雑音比を得ることができる。
【0024】
この出願の一実装において、信号処理回路は、ハイパスフィルタ回路及び電圧増幅ローパスフィルタ回路を含み、ハイパスフィルタ回路は自己混合信号取得装置に接続され、電圧増幅ローパスフィルタ回路はハイパスフィルタ回路に接続される。ハイパスフィルタ回路と電圧増幅ローパスフィルタ回路とで、低周波の背景音と高周波の信号とをフィルタリングすることができる。
【0025】
この出願の一部の実装において、信号処理回路は更に、電圧増幅ローパスフィルタ回路に接続された利得制御回路を含み、該利得制御回路は、電圧増幅ローパスフィルタ回路の出力信号に基づいて電圧増幅ローパスフィルタ回路の利得を調節するように構成される。利得制御回路を配設することで、電圧増幅ローパスフィルタ回路の調節可能な利得を実現することができる。
【0026】
この出願の一実装において、ダイアフラムに面するレーザデバイスの光放射面上に光ビーム結合装置が配置され、該光ビーム結合装置は1つ以上のレンズを含む。レンズを配設することで、レーザデバイスの出力光ビームがダイアフラムで反射された後にレーザデバイスの共振キャビティに再び入ることのカップリング効率を向上させることができ、より高いフィードバック光強度、すなわち、より強い信号を有し、マイクロフォンの信号対雑音比が更に効果的に向上される。
【0027】
この出願の一実装において、各レンズの横方向の寸法(すなわち、長さ寸法及び幅寸法)が20μmから200μmの範囲であり、各レンズの軸方向の寸法(すなわち、高さ寸法)が20μmから200μmの範囲である。上述の寸法のレンズは、レーザ直接書き込み又はマイクロナノプリンティングによって加工されることができ、また、上述の寸法のレンズは、レーザデバイス上に集積されて、より小型のアセンブリを実現することができ、ウエハ(wafer)上での直接生産の大量生産ソリューションが実現され得る。
【0028】
この出願の実装において、ダイアフラムの具体的なタイプは限定されず、導電性に関する特別な要件は存在しない。オーディオが必要とする振動特性のみを考慮すればよい。ダイアフラムは、既存のマイクロフォンに使用可能な様々なダイアフラムとし得る。具体的には、MEMSダイアフラム、金属ガラスダイアフラム、グラフェンダイアフラム、ポリマーフィルム、金属フィルム、又はこれらに類するものが含まれ得る。
【0029】
この出願の一実装において、レーザデバイスに面したダイアフラムの面上に反射層が配置される。該反射層の反射率は70%よりも高い。具体的には、該反射層は、金、アルミニウム、又はこれらに類するもので作製され得る。反射層を配置することで、ダイアフラムに放射されたときの、レーザデバイスの出力光ビームの、レーザデバイスの共振キャビティ内へと反射され返す反射率を向上させることができる。また、ダイアフラムの全体的な応力を小さい範囲内に制御し、音圧変位感度を向上させるために、ダイアフラムは一般に複数の異なる応力膜レイヤを含む複合膜構造である。斯くして、金属反射層の配置によって反射率を高めることに加えて、ダイアフラムの負の応力を補償してダイアフラムの安定性を向上させることもできる。
【0030】
この出願の一実装において、レーザデバイスは自己混合レーザデバイスであり、その具体的なタイプは限定されない。レーザデバイスは垂直共振器型面発光レーザであってもよいし、端面発光型レーザであってもよい。レーザデバイスの出力波長は750nmから1600nmの範囲とし得る。
【0031】
この出願の一実装において、当該レーザマイクロフォンは更にハウジングを含み、ダイアフラム、レーザデバイス、制御回路、自己混合信号取得装置、及び信号処理回路が全てハウジング内に配置され、ハウジング上の、ダイアフラムに対応する位置に、が配設される。この収音孔を通して外部の音情報が拾われる。
【0032】
この出願の一実施形態は更に端末を提供する。当該端末は、この出願の実施形態の第1態様に従ったレーザマイクロフォンを含む。当該端末は、外部ハウジングと該外部ハウジング内に配置された回路基板とを含み、該回路基板上にレーザマイクロフォンが配置される。端末の外部ハウジングに、レーザマイクロフォンの位置に対応する受音孔が配設され、外部ハウジングの受音孔を通して外部の音がレーザマイクロフォンに伝えられる。レーザマイクロフォンは、当該端末の前面に対応して配置されてもよいし、当該端末の背面に対応して配置されてもよいし、当該端末のサイドミドルフレームに対応して配置されてもよい。当該端末は、例えば、携帯電話(mobile phone)、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートTV、スマートスピーカ、ヘッドセット、ビデオカメラ、ネットワークカメラ、ウェアラブル装置、ゲーム装置、車載オーディオシステム若しくはマイクロフォン、音声ナビゲーション装置、口述音声認識装置、音声・ツー・テキスト変換器、又はこれらに類するものなどの、音声コマンド制御が必要とされるシナリオ又は音声をキャプチャ、記録、処理、若しくは分析する必要があるシナリオにおける端末製品とし得る。
【0033】
この出願の実施形態で提供されるレーザマイクロフォンは、レーザ自己混合デバイスに基づいて、音声信号によって生じるダイアフラムの振動を検出し、弱い振動信号を検出する強い能力を持つ。従来のMEMSマイクロフォンと比較して、当該レーザマイクロフォンはいっそう高い信号対雑音比を持つ。この出願の実施形態におけるレーザマイクロフォンによれば、レーザデバイスとダイアフラムとの間に適切な距離が設定され、それ故に、レーザデバイスの出力光ビームがダイアフラムで反射された後にレーザデバイスの共振キャビティに再び入ることのカップリング効率が向上され、それにより信号対雑音比を効果的に向上させ、音声認識感度を向上させる。さらに、この出願の実施形態におけるレーザマイクロフォンによれば、ループを構成することによってレーザデバイスの駆動電流が変調されて、最も高い感度を持つ電流動作点でレーザデバイスを安定させ、これは、電流変動によって生じる位相ノイズを抑制又は除去することができ、その結果、当該レーザマイクロフォンはライフサイクル全体において動作中に高い信号対雑音比を維持することができる。この出願の実施形態によれば、当該レーザマイクロフォンは、静かな状況におけるソフトスポークンモードでの収音、遠距離での弱い音声信号の検出、及び遠距離ビデオ記録中の収音品質を有意に向上させることができ、それによりユーザ体験を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この出願の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図2】この出願の他の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図3】この出願の一実施形態に従った信号処理回路50の概略構成図である。
図4A図4A図4Cは、この出願の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図4B図4A図4Cは、この出願の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図4C図4A図4Cは、この出願の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図5A図5A図5Cは、この出願の他の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図5B図5A図5Cは、この出願の他の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図5C図5A図5Cは、この出願の他の一実施形態に従ったレーザマイクロフォンの回路構成の概略図である。
図6】この出願の一実施形態に従った頂部受音構造を持つレーザマイクロフォンの概略構造図である。
図7】この出願の一実施形態に従った底部受音構造を持つレーザマイクロフォンの概略構造図である。
図8】この出願の一実施形態に従ったレンズの概略配置図である。
図9】この出願の一実施形態に従った端末におけるレーザマイクロフォンの配置位置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この出願の実施形態内の添付図面を参照して、この出願の実施形態を説明する。
【0036】
図1及び図2を参照するに、この出願の一実施形態は、ダイアフラム10、レーザデバイス20、制御回路30、自己混合信号取得装置40、及び信号処理回路50を含んだレーザマイクロフォン100を提供する。ダイアフラム10は、外部の音によって発生される音波を受けて振動を生成するように構成され、光放射面が位置するレーザデバイス20の面がダイアフラム10に対向し、レーザデバイス20は、ダイアフラム10に光を放射し、ダイアフラム10からのフィードバック光信号を受信するように構成される。レーザ自己混合干渉効果に基づいて、フィードバック光信号がレーザデバイス20の共振キャビティ内でレーザと干渉して自己混合光信号が得られる。制御回路30の出力端30bがレーザデバイス20に接続され、制御回路30は、光を放射するようにレーザデバイス20を駆動及び制御するように構成される。自己混合信号取得装置40はレーザデバイス20に接続され、自己混合信号取得装置40は、自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を取得するように構成される。信号処理回路50の入力端50aが自己混合信号取得装置40の第1出力ポート40bに接続され、自己混合信号取得装置40によって出力されたターゲット電圧信号を受信し、該ターゲット電圧信号をオーディオ電圧信号へと処理するように構成される。
【0037】
この出願の実施形態におけるレーザマイクロフォン100の動作機構は、次のとおりである:外部の音によって発生された音波がダイアフラム10に作用し、音波の音圧が変化するときにダイアフラム10が振動変位を生成する。制御回路30がレーザデバイス20に駆動電流を供給して、光を放射するようにレーザデバイス20を駆動し、レーザビームがダイアフラム10に放射され、そしてダイアフラム10で反射されて、フィードバック光信号が得られ、該フィードバック光信号は、ダイアフラム10の振動情報を搬送しており、放射光に対して位相を変化させている。該フィードバック光信号がレーザデバイス20の共振キャビティに反射され返し、キャビティ内でレーザとの自己混合干渉が起こって自己混合光信号が得られる。自己混合信号取得装置40が、レーザデバイス20の自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を取得し、信号処理回路50が、自己混合信号取得装置40によって出力されたターゲット電圧信号を受信し、ターゲット電圧信号に対して例えば増幅及びフィルタリングなどの処理を行って、最終的に出力オーディオ電圧信号を取得する。
【0038】
この出願の一実装において、レーザデバイス20とダイアフラム10との間の距離はLであり、Lの範囲は30μm≦L≦300μmである。すなわち、レーザデバイス20のダイアフラム10に近い側の光放射面とダイアフラム10の反射面との間の距離は30μmから300μmである。レーザデバイス20の光放射面とダイアフラム10の反射面との間の距離を等価外部キャビティと考え得る。レーザビームの方向におけるダイアフラム10の表面の振動変位が、ダイアフラムの反射面とレーザデバイスの光放射面とで形成される外部反射キャビティの長さを変化させ、更にフィードバック光の位相を変化させる。この出願の実施形態では、レーザデバイスとダイアフラムとの間に適切な距離が設定され、すなわち、外部キャビティの適切な長さが維持され、それ故に、レーザデバイスの出力光ビームがダイアフラムで反射された後にレーザデバイスの共振キャビティに再び入ることのカップリング効率が向上され、それにより信号対雑音比を効果的に向上させ、音声認識感度を向上させる。
【0039】
この出願の一部の実装において、自己混合信号取得装置40は、レーザデバイス20の共振キャビティ内の自己混合光信号を取得し、自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を出力するように構成される。具体的には、図1に示すように、自己混合信号取得装置40は、光検出器41及びトランスインピーダンス増幅器回路42を含み、光検出器41がレーザデバイス20に接続され、トランスインピーダンス増幅器回路42の入力端が光検出器41に電気的に接続される。光検出器41は、レーザデバイスの共振キャビティ内の自己混合光信号を検出し、自己混合光信号を電流信号に変換するように構成され、トランスインピーダンス増幅器回路42は、光検出器41によって出力された電流信号を電圧信号に変換するように構成される。この実装では、ダイアフラムによる反射を通してて得られたフィードバック光信号がレーザデバイス20の共振キャビティに反射され返し、キャビティ内の光場との自己混合干渉が起こって、それがレーザデバイスの光強度の変化を引き起こす。自己混合によって生じた光強度の変化が光検出器41により検出され、光検出器41が光信号を光電流信号に変換する。トランスインピーダンス増幅器回路42が光電流信号を増幅されたターゲット電圧信号に変換する。そして、信号処理回路50が例えば信号増幅及びフィルタリングなどの処理を行い、最終的にその信号をオーディオ電圧信号として出力する。
【0040】
この出願の一部の他の実装において、自己混合信号取得装置40は、レーザデバイス20から自己混合光信号に関係するターゲット電圧信号を直接取得するように構成される。具体的には、図2に示すように、自己混合信号取得装置40は、レーザデバイス20の出力端に接続されたスナバ回路43を含む。スナバ回路43はレーザデバイス20の端子電圧を取得し得る。この出願において、レーザデバイス20の端子電圧は、レーザデバイスの両端間の電圧差、又はグランドに対するレーザデバイスの一端の電圧を指す。スナバ回路43は、電流上昇を抑圧することができる保護回路である。
【0041】
図3を参照するに、この出願の一部の実装において、信号処理回路50は、ハイパスフィルタ回路51及び電圧増幅ローパスフィルタ回路52を含む。ハイパスフィルタ回路51の入力端子51aが、自己混合信号取得装置40の第1出力ポート40bに接続される。電圧増幅ローパスフィルタ回路52の入力端子52aが、ハイパスフィルタ回路51の出力端子51bに接続される。ハイパスフィルタ回路51は、自己混合信号取得装置40の出力信号をDC遮断するとともに低周波ノイズをフィルタリング除去し得る。電圧増幅ローパスフィルタ回路52は、ハイパスフィルタ回路51によって出力されるDC遮断された高周波交流信号に対して増幅及びローパスフィルタリング処理を行い得る。この出願の一部の実装において、信号処理回路50は更に利得制御回路53を含み得る。利得制御回路53の入力端子53aが、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の出力端子52bに接続される。利得制御回路53の出力端子53bが、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の入力端子52cに接続される。利得制御回路53は、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の出力信号に基づいて電圧増幅ローパスフィルタ回路52の利得を調節する。電圧増幅ローパスフィルタ回路52の出力端子52bは、信号処理回路50の出力端として機能して信号を出力する。
【0042】
例えば周囲温度の変動及びレーザデバイスの経年劣化などの理由により、レーザデバイスの電流の変動が引き起こされる。結果として、レーザデバイスの発光周波数がドリフトし、位相ノイズが導入される。位相ノイズを抑制又は除去し、マイクロフォンの信号対雑音比を改善するために、この出願の実施形態では、ループを構成することによってレーザデバイスの駆動電流を変調し、ダイアフラムの振動に対して最も高い感度を持つ駆動電流の動作点でレーザデバイスを安定させる。レーザデバイスの電流変動及びダイアフラムの振動は、レーザデバイスの共振キャビティにおける位相変動、すなわち、自己混合光信号の変動を引き起こす。この出願の実施形態では、レーザデバイスに小さい電流乱れを印加し、該電流乱れによって生じた自己混合信号取得装置の出力信号の変化の度合い、すなわち、該電流乱れによって生じた自己混合光信号の変化の度合いに従って、最も高い感度を持つレーザデバイスの駆動電流の動作点が決定される。従って、レーザデバイスはまた、ダイアフラムの振動に対して最も高い感度を持つ駆動電流の動作点に保たれることができ、マイクロフォンの信号対雑音比を向上させることができる。この出願において、レーザデバイスの駆動電流は直流である。
【0043】
以下、この出願の実施形態に従った、ループを構築することによってレーザデバイスの駆動電流が変調される具体的なソリューションを説明する。
【0044】
図1及び図2を参照するに、この出願の一実装において、自己混合信号取得装置40の第2出力ポート40cが制御回路30の入力端子30aに接続される。制御回路30は、自己混合信号取得装置40の第2出力ポート40cからの出力信号に従ってレーザデバイス20の駆動電流Aを決定する。すなわち、自己混合信号取得装置40から2つの信号が出力され、一方の信号は信号処理回路50に出力され、他方の信号は制御回路30に出力され、これら2つの信号は同じ電圧信号である。
【0045】
この出願の一実装において、レーザデバイスが動作モードを開始するとき、自己混合信号取得装置40によって出力されたターゲット電圧信号に基づいて制御回路30がレーザデバイス20の駆動電流Aを決定することは、以下のステップを含む。
【0046】
S21: 制御回路が、初期値としてImin’、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImax’を用いて、レーザデバイスに走査電流It’を印加し、各走査において走査電流It’に交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を取得し、
ここで、Imin’は予め定められた最小駆動電流であり、Imax’は予め定められた最大駆動電流であり、ΔIは予め定められた電流であり、交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVt’は交流電流Iの周波数に関係し、t’は電流走査の回数を表す。
【0047】
この実施形態のステップS21にて、制御回路30は、各走査において走査電流It’に交流電流Iを重ね合わせ、重ね合わせ後に得られた電流をレーザデバイス20に出力し、自己混合信号取得装置40は、It’及びIに基づいてターゲット電圧信号Vを出力する。ターゲット電圧信号Vを取得した後、制御回路30は、ターゲット電圧信号Vに対してFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)を実行し、交流電流Iの周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を特定する。ΔVt’が交流電流Iの周波数に関係するということが意味するのは、重ね合わされる交流電流Iの周波数に従って、その周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’が、FFTが実行される電圧信号において特定されるということである。例えば、重ね合わされる交流電流Iの周波数が25kHzである場合、25kHzの周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を特定する必要がある。
【0048】
この出願の一実装において、レーザデバイスの予め定められた最小駆動電流Imin’及び予め定められた最大駆動電流Imax’は、レーザデバイスの具体的な要求に基づいて適切に設定され得る。例えば、この出願の一部の実装において、予め定められた最小駆動電流Imin’は0.5mAとすることができ、予め定められた最大駆動電流Imax’は3mAとすることができる。
【0049】
一回の走査は、制御回路が、ある特定の点の値の走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、得られた電流をレーザデバイスに印加し、走査電流Iの作用下で交流電流Iが重ね合わされたときのレーザデバイスの出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を得るプロセスを指す。ピークツーピーク(peak-to-peak、pk-pk)ΔVt’は、波形図における最大の正の電圧値と最大の負の電圧値との間の差を指す。
【0050】
S22: S21を行う過程で得られた複数のΔVt’のうちの最大値のΔVt’に対応する走査電流It’を、レーザデバイスの駆動電流Aとして決定する。制御回路は、S22で決定した駆動電流Aに従って、レーザデバイスに駆動電流Aを安定的に印加する。
【0051】
レーザデバイスが動作モードを開始するというのは、レーザデバイスが収音を無効にするモードから収音モードを開始するその都度のプロセスを指す。レーザデバイスの電源オンから電源オフまでの期間が1周期として定義される。各電源オン後に収音モードを開始することが、常に、動作モードを開始することである。1周期内で、スタンバイモードから収音モードに切り換わるプロセスも、動作モードを開始することとみなされる。レーザデバイスの動作モードは、レーザデバイスの収音モード、すなわち、レーザデバイスが動作モードを開始した後の収音モード状態を指す。
【0052】
この出願の一実装において、レーザデバイスのj回目の駆動電流変調が行われるとき、自己混合信号取得装置40によって出力されたターゲット電圧信号に基づいて制御回路30がレーザデバイスの駆動電流Aを決定することは、以下のステップを含む。
【0053】
S11: 制御回路が、前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流Aj-1に基づいて、現在の駆動電流変調の走査電流範囲[Imin,Imax]を決定し、Imin=Aj-1-I、Imax=Aj-1+I0’、0.1mA≦I≦0.5mA、且つ0.1mA≦I0’≦0.5mAであり、jは、駆動電流変調の回数を表し、2以上の整数である。
【0054】
ステップS11において、jが2に等しいとき、すなわち、レーザデバイスが動作モードを開始した後の最初の駆動電流変調において、前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流Aj-1は、動作モードが開始されたときにS21及びS22が行われた後に決定された駆動電流である。jが2より大きいとき、前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流Aj-1は、レーザデバイスの動作モードにおいて前回S11-S13を行われた後に決定された駆動電流とし得る。次回の駆動電流変調が行われる前、制御回路は、前回の駆動電流変調が行われた後に得られた駆動電流をレーザデバイスに続けて印加する。従って、通常、レーザデバイスの前回の駆動電流変調後に得られた駆動電流が現在のレーザデバイスの動作駆動電流である。
【0055】
この出願の一実装において、IとI0’は同じ値を持ってもよいし、異なる値を持ってもよい。この出願の一部の実装において、走査電流範囲[Imin,Imax]は、現在の動作電流のプラス又はマイナス0.3mAの範囲内であるように決定され、すなわち、Imin=Aj-1-0.3mA、及びImax=Aj-1+0.3mAである。他の一部の実装において、走査電流範囲[Imin,Imax]は、代わりに、現在の動作電流のプラス又はマイナス0.4mAの範囲内、あるいはプラス又はマイナス0.5mAの範囲内に決定されてもよい。具体的には、この範囲はレーザデバイスの電流変動状況に応じて設定され得る。
【0056】
この出願の一実装において、Imaxの値はImax’以下とされ、Iminの値はImin’以上である。
【0057】
従って、走査電流範囲[Imin,Imax]が現在の動作電流のプラス又はマイナス0.3mAの範囲内、すなわち、Imin=Aj-1-0.3mA、及びImax=Aj-1+0.3mAであるように予め決定される場合、Aj-1+0.3mAが予め定められた最大駆動電流Imax’以下であるときには、Imax=Aj-1+0.3mAと決定され、Aj-1+0.3mAが予め定められた最大駆動電流Imax’より大きいときには、Imax=Imax’と決定される。同様に、Aj-1-0.3mAが予め定められた最小駆動電流Imin’以上であるときには、Imin=Aj-1-0.3mAと決定され、Aj-1-0.3mAが予め定められた最小駆動電流Imin’より小さいときには、Imin=Imin’と決定される。
【0058】
S12: 制御回路が、初期値としてImin、ステップサイズとしてΔI、終了値としてImaxを用いて、レーザデバイスに走査電流Iを印加し、各走査において走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、各走査中の出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを取得し、
ここで、ΔIは予め定められた電流であり、交流電流Iは予め定められた電流であり、交流電流Iの周波数は人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高く、ΔVは交流電流Iの周波数に関係し、tは電流走査の回数を表す。
【0059】
この実施形態のステップS12にて、制御回路30は、各走査において走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、重ね合わせ後に得られた電流をレーザデバイス20に出力し、自己混合信号取得装置40は、IとIとに基づいてターゲット電圧信号Vを出力する。ターゲット電圧信号Vを取得した後、制御回路30はターゲット電圧信号Vに対してFFTを実行し、交流電流Iの周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを特定する。ΔVが交流電流Iの周波数に関係するということが意味するのは、重ね合わされる交流電流Iの周波数に従って、その周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVが、FFTが実行される電圧信号において特定されるということである。例えば、重ね合わされる交流電流Iの周波数が25kHzである場合、25kHzの周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを特定する必要がある。
【0060】
一回の走査は、制御回路が、ある特定の点の値の走査電流Iに交流電流Iを重ね合わせ、得られた電流をレーザデバイスに印加し、走査電流Iの作用下で交流電流Iが重ね合わされたときのレーザデバイスの出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを得るプロセスを指す。
【0061】
S13: S12を行う過程で得られた複数のΔVのうちの最大値のΔVに対応する走査電流Iを、現在の駆動電流変調を通じて得られた、レーザデバイスの駆動電流Aとして決定する。より大きいΔVは、レーザデバイスの交流乱れによって生じる自己混合光信号の変化の度合いがより大きいこと、すなわち、レーザデバイスの電流乱れに対する自己混合光信号の感度がより高いことを示す。レーザデバイスの電流乱れ及びダイアフラムの振動は、レーザデバイスのキャビティ内の位相変動、すなわち、自己混合光信号の変動を引き起こす。従って、より大きいΔVは、ダイアフラムの振動に対する自己混合光信号の感度がより高いことを示す。
【0062】
この出願の一実装において、1回の駆動電流変調は、制御回路がIminからImaxまでのレーザデバイスの駆動電流の走査を完了し、同時に各走査電流点Iに交流電流Iを重ね合わせ、各走査で得られた出力電圧変動のピークツーピーク値に従って、電流変調において決定されたレーザデバイスの駆動電流を得るプロセス、すなわち、S11-S13を1回完了するプロセスを指す。同様に、S21-S22を1回完了するプロセスは1回の駆動電流変調とみなされる。
【0063】
この出願の一実装において、レーザデバイスの動作モードにおいて、S11-S13の駆動電流変調プロセスは、例えば5秒毎に1回又は10秒毎に1回など、2秒から20秒の間隔で実行され得る。これは具体的に、レーザデバイスの実際の動作状態に基づいて決定され得る。これはこの出願において限定されることではない。レーザデバイスの電流が安定している場合、2つの電流変調間の間隔を長くすることができ、レーザデバイスの電流が不安定である場合には、2つの電流変調間の間隔を短くすることができる。
【0064】
理解され得ることには、S21-S22の駆動電流変調プロセスも、レーザデバイスの動作モードでの駆動電流変調に使用され得る。しかしながら、S11-S13の駆動電流変調プロセスと比較して走査電流範囲が大きく、動作モードにおいて最も高い感度を持つ動作電流点を素早く見つけることには資さない。
【0065】
この出願の一実装において、予め定められた電流の範囲ΔIは10μA≦ΔI≦50μAとし得る。具体的には、ΔIの値は、以下に限定されないが、10μA、20μA、25μA、30μA、40μA、又は50μAとし得る。電流走査プロセスにおいて適切なステップサイズΔIを設定することは、高い感度を持つ駆動電流点の値を正確に発見する助けとなる。
【0066】
この出願の一実装において、交流電流Iの周波数は、人間の耳で聞こえる音の最大周波数より高い。人間の耳で聞こえる音の周波数は一般に20Hzから20kHzの範囲であるため、交流電流Iの周波数は20kHzより高く、具体的には20kHz<I≦50kHzとし得る。この出願の一部の実装において、交流電流Iの周波数は、25kHz、30kHz、40kHz、又は50kHzである。この出願の一実装において、交流電流Iのピークツーピーク値は、10μAと50μAとの間で制御されることができ、具体的には、以下に限られないが、10μA、20μA、30μA、40μA、又は50μAとし得る。交流電流Iの高い周波数及び小さいピークツーピーク値はレーザデバイスの安定した動作に有益である。
【0067】
この出願の一実装において、自己混合信号取得装置40の出力端からの出力信号を制御回路30がキャプチャするサンプリング周波数は、例えば100kHz、200kHz、300kHz、又は500kHzなど、100kHzと500kHzとの間とし得る。
【0068】
この出願の具体的な一実施形態において、レーザマイクロフォンが動作モードを開始するとき、制御回路が電流変調を通じてレーザデバイスの駆動電流を決定するプロセスは、次のとおりである。
【0069】
S101: レーザデバイスの駆動電流変調を起動し、交流電流Iのピークツーピーク値を17μAに設定し、変調周波数を25kHzに設定し、レーザデバイスの最初の走査電流値、すなわち、予め定められた最小駆動電流Imin’を0.5mAに設定し、レーザデバイスの走査電流終了値、すなわち、予め定められた最大駆動電流Imax’を3mAに設定し、そして、レーザデバイスの駆動電流の走査ステップサイズΔIを25μAに設定する。
【0070】
S102: レーザデバイスの駆動電流を0.5mAから3mAまで増加させ、各走査において走査電流に17μAの交流を重ね合わせ、同時に、制御回路により、自己混合信号取得装置の出力端から各走査で出力されるターゲット電圧信号を200kHzのサンプリング周波数で取得し、取得したターゲット電圧信号に対してFFTを実行し、そして、25kHzの変調周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVt’を特定する。
【0071】
1回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、0.5mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。2回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、0.5mA+ΔI=0.525mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。3回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、0.525mA+ΔI=0.55mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。走査電流が3mAに達するまで、残りは類推される。
【0072】
S103: 走査電流を0.5mAから3mAまで増加させる過程において25kHzの変調周波数でΔVt’が最大値を持つときのレーザデバイスの電流の値を探索し、ΔVt’が最大値を持つときの走査電流の値にレーザデバイスの駆動電流を設定し、そして、変調を停止させる。
【0073】
S101-S103の変調プロセスの後に、レーザデバイスは、最も高い感度を持つ駆動電流の最適動作点を発見し、次の駆動電流変調の前、レーザデバイスの駆動電流をその最適動作点で安定させる。この出願の一実装において、上述の変調プロセスは制御回路30によって制御及び実行される。変調が停止されると、制御回路30は自己混合信号取得装置40からのターゲット電圧信号をキャプチャするのを停止する。
【0074】
この出願では、レーザマイクロフォンの動作モードにおいて、j回目の駆動電流変調が行われるとき、予め定められた最小駆動電流から予め定められた最大駆動電流まで走査を行わなくてもよく、現在の動作電流に基づいて適切な走査範囲を決定しさえすればよい。これは駆動電流変調プロセスを単純にすることができる。
【0075】
この出願の具体的な一実施形態では、レーザマイクロフォンの動作モードにおいて、j回目の駆動電流変調を行うプロセスは次のとおりである。
【0076】
S201: レーザデバイスの駆動電流変調を起動し、交流電流Iのピークツーピーク値を17μAに設定し、変調周波数を25kHzに設定し、レーザデバイスの現在の動作電流I=2.3mAに従って最初の走査電流値をImin=2.3mA-0.3mA=2.0mAに決定するとともに、走査電流終了値をImax=2.3mA+0.3mA=2.6mAに決定し、そして、レーザデバイスの駆動電流の走査ステップサイズΔIを25μAに設定し、
ここで、レーザデバイスの現在の動作電流Iは、実際には、この前に決定された、すなわち、(j-1)回目の変調で決定された駆動電流Ij-1ある。
【0077】
なお、レーザデバイスの現在の動作電流Iが2.75mAに等しい場合、I+0.3mA>3mAである。この場合、走査電流終了値Imaxは3mAであるように決定される。
【0078】
S202: レーザデバイスの駆動電流を2.0mAから2.6mAまで増加させ、各走査において走査電流に17μAの交流を重ね合わせ、同時に、制御回路により、自己混合信号取得装置の出力端から各走査で出力されるターゲット電圧信号を200kHzのサンプリング周波数で取得し、取得したターゲット電圧信号に対してFFTを実行し、そして、25kHzの変調周波数での出力電圧変動のピークツーピーク値ΔVを特定する。
【0079】
1回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、2.0mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。2回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、2.0mA+ΔI=2.025mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。3回目の走査時、制御回路からレーザデバイスに出力される電流は、2.025mA+ΔI=2.05mAの走査電流と17μAの交流電流とを含む。走査電流が2.6mAに達するまで、残りは類推される。
【0080】
S203: 走査電流を2.0mAから2.6mAまで増加させる過程において25kHzの変調周波数でΔVが最大値を持つときのレーザデバイスの電流の値を探索し、ΔVが最大値を持つときの走査電流の値にレーザデバイスの駆動電流を設定し、そして、変調を停止させる。
【0081】
この出願の実施形態では、ループを構築してレーザデバイスの駆動電流を変調することで、レーザデバイスの動作状態をリアルタイムに調節することができ、高い感度を持つ動作点でレーザデバイスを安定化させることができ、環境に関係する低周波位相ジッタを抑制又は除去することができ、それにより、自己混合レーザデバイスのフィードバック干渉機構をいっそう安定にすることができる。これは、レーザマイクロフォンが動作中に(すなわち、動作モードにおいて)及びそのライフサイクルを通して高い信号対雑音比を維持することを可能にする。
【0082】
図4A及び図5Aを参照するに、この出願の一実装において、制御回路30は、第1コントローラ31と、第1コントローラ31に接続された駆動回路32とを含む。駆動回路32は、デジタルポテンショメータ321、抵抗R7、抵抗R8、キャパシタC4、演算増幅器OP3、トランジスタQ1、及び抵抗R10を含む。デジタルポテンショメータ321は可変抵抗R6を含み、第1コントローラ31の出力ポート31aがデジタルポテンショメータ321に接続され、第1コントローラ31の入力端31bの入力信号は自己混合信号取得装置40の出力信号である。デジタルポテンショメータ321の第1の端部が演算増幅器OP3の非反転入力端に接続され、デジタルポテンショメータ321の第2の端部が抵抗R10の第1の端部に接続される。デジタルポテンショメータ321の第2の端部と抵抗R10の第1の端部とが共に正電源に接続される。抵抗R7の第1の端部とキャパシタC4の第1の端部とが、デジタルポテンショメータ321の第1の端部と演算増幅器OP3の非反転入力端との間に接続され、抵抗R7の第2の端部とキャパシタC4の第2の端部とが共に接地される。抵抗R10の第2の端部がトランジスタQ1のエミッタに接続され、演算増幅器OP3の反転入力端が抵抗R10の第2の端部とトランジスタQ1のエミッタとの間に接続され、演算増幅器OP3の出力端がトランジスタQ1のベースに接続される。抵抗R8の第1の端部がトランジスタQ1のコレクタに接続され、抵抗R8の第2の端部が制御回路30の出力端子として機能し、レーザデバイス20のアノードに接続される。図1及び図2を参照するに、第1コントローラ31の入力ポート31bが制御回路30の入力端子30bとして機能し、自己混合信号取得装置40の出力ポート40cに接続される。制御回路30において、可変抵抗R6及び抵抗R7は分圧器抵抗であり、分圧器機能を実行し得る。抵抗R8及び抵抗R10は電流制限機能を実行することができ、トランジスタQ1を通る抜ける電流をR10が制御することで、トランジスタQ1の過大な電流によって生じる過大な電力消費を避けることができる。キャパシタC4は、駆動回路32のソフトスタートを実現し得る。この出願の一実装において、第1コントローラ31は、可変抵抗R6の有効抵抗値を制御すべく、取得した自己混合信号取得装置40の出力信号に基づいて制御信号を出力する。可変抵抗R6の有効抵抗値を変化させることにより、駆動回路32がレーザデバイス20に出力する駆動電流を制御・調節することで、レーザデバイス20の駆動電流を調節することができる。駆動回路32は定電流源回路であり、動作点を安定させるように、温度とともに殆ど変化しない定直流バイアス電流をレーザデバイス20に対して供給し得る。
【0083】
図4A図4Cを参照するに、この出願の一部の実装において、自己混合信号取得装置40は、光検出器41とトランスインピーダンス増幅器回路42とを含む。光検出器41はレーザデバイス20に接続され、トランスインピーダンス増幅器回路42の入力端が光検出器41に接続される。制御回路30の出力端、すなわち、抵抗R8の第2の端部がレーザデバイス20のアノードに接続され、光検出器41のアノードがレーザデバイス20のカソードに電気的に接続され、そして、光検出器41及びレーザデバイス20が同一の電極を介して接地される。光検出器41のカソードがトランスインピーダンス増幅器回路42の入力端に接続され、トランスインピーダンス増幅器回路42の出力端が自己混合信号取得装置40の出力ポート40b(図1参照)として機能し、ハイパスフィルタ回路51の入力端に接続される。
【0084】
この出願の一実装において、トランスインピーダンス増幅器回路42は、演算増幅器OP1、抵抗R1、及びキャパシタC1を含む。光検出器41の出力端が演算増幅器OP1の反転入力端に接続される。抵抗R1の第1の端部とキャパシタC1の第1の端部とが共に、光検出器41の出力端と演算増幅器OP1の反転入力端との間に接続され、抵抗R1の第2の端部とキャパシタC1の第2の端部とが共に演算増幅器OP1の出力端に接続される。光検出器の電流バイアスが演算増幅器OP1の非反転入力端に入力され、演算増幅器OP1の出力端が、自己混合信号取得装置40の出力端として機能し、ハイパスフィルタ回路51の入力端に接続される。キャパシタC1は、光検出器のノードキャパシタンス及び演算増幅器の入力キャパシタンスを補償して回路を安定に保つフィードバック補償キャパシタである。抵抗R1はフィードバック抵抗であり、電流信号を電圧信号に変換するように構成される。
【0085】
図5A図5Cを参照するに、この出願の一部の他の実装において、自己混合信号取得装置40は、レーザデバイス20に接続されたスナバ回路43を含む。スナバ回路43は演算増幅器OP4を含む。演算増幅器OP4の非反転入力端がレーザデバイス20のアノードに接続され、レーザデバイス20のカソードがグランドに接続される。演算増幅器OP4の出力端が、自己混合信号取得装置40の出力ポート40b(図1参照)として機能し、ハイパスフィルタ回路51の入力端に接続される。演算増幅器OP4の反転入力端が、演算増幅器OP4の出力端とハイパスフィルタ回路51の入力端との間に接続される。
【0086】
図4C及び図5Cを参照するに、この出願の一実装において、信号処理回路50は、ハイパスフィルタ回路51、電圧増幅ローパスフィルタ回路52、及び利得制御回路53を含む。
【0087】
ハイパスフィルタ回路51は、キャパシタC2と抵抗R2とを含む。キャパシタC2の第1の端部がハイパスフィルタ回路51の入力端として機能し、自己混合信号取得装置40の出力ポート40bに接続され、キャパシタC2の第2の端部が、ハイパスフィルタ回路51の出力端として機能し、電圧増幅ローパスフィルタ回路52に接続される。抵抗R2の第1の端部がキャパシタC2の第2の端部に接続され、抵抗R2の第2の端部がグランドに接続される。キャパシタC2と抵抗R2とで形成されるハイパスフィルタ回路51は、DC電流及び低周波信号をフィルタリング除去することができる。電圧増幅ローパスフィルタ回路52は、演算増幅器OP2、キャパシタC3、デジタルポテンショメータ521、抵抗R3、及び抵抗R5を含む。演算増幅器OP2の非反転入力端が、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の入力端として機能し、ハイパスフィルタ回路51の出力端に接続され、演算増幅器OP2の出力端が抵抗R5の第1の端部に接続される。抵抗R5の第2の端部が、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の出力端、すなわち、信号処理回路50の出力端として機能し、オーディオ電圧信号を外部に出力する。抵抗R3の第1の端部、デジタルポテンショメータ521の第1の端部、及びキャパシタC3の第1の端部が全て、演算増幅器OP2の反転入力端に接続される。デジタルポテンショメータ521の第2の端部とキャパシタC3の第2の端部とが共に、演算増幅器OP2の出力端と抵抗R5の第1の端部との間に接続され、抵抗R3の第2の端部がグランドに接続される。デジタルポテンショメータ521は利得制御回路53に接続される。デジタルポテンショメータ521は1つの可変抵抗R4を含む。ローパスフィルタ回路は高周波信号をフィルタリング除去することができる。
【0088】
ハイパスフィルタ回路51と電圧増幅ローパスフィルタ回路52とでバンドパスフィルタ回路を形成することができ、バンドパスの下側の遮断周波数はR2とC2とで決定され、上側の遮断周波数はR4とC3とで決定される。バンドパスの範囲は20Hzから20kHzとすることができ、低周波の背景音及び高周波信号をフィルタリング除去し得る。2レベル増幅器回路システムOP1及びOP2は相異なる直流動作点にある。
【0089】
利得制御回路53は第2コントローラ531を含み、第2コントローラ531の入力端が信号処理回路50の出力端に接続され、信号処理回路50が出力する電圧信号をキャプチャするように構成され、第2コントローラ531の出力端がデジタルポテンショメータ521に接続される。第2コントローラ531は、デジタルポテンショメータ521の可変抵抗R4の有効抵抗値を制御するための制御信号を出力し、R4の有効抵抗値を変化させることによって、電圧増幅ローパスフィルタ回路52の利得の調節を実現することができ、出力信号に従って回路の動作状態をリアルタイムに最適化することができる。増幅器回路の利得はA=1+R4/R3である。
【0090】
この出願の一実装において、演算増幅器OP1、演算増幅器OP2、演算増幅器OP3、及び演算増幅器OP4は低雑音演算増幅器であり、高いPSRR(Power Supply Rejection Ratio、電源遮断率)を持つ電源回路(例えばLDOなど)を用いて電力を供給することができ、低雑音演算増幅器の使用は信号対雑音比を改善する助けとなる。上記の各抵抗の抵抗値は、抵抗によって発生される熱雑音を低減させるために、機能が満たされる条件の下で可能な限り小さくされる。この出願の一実装において、第1コントローラ31及び第2コントローラ531は別々に配置されてもよいし、同一のコントローラであってもよい。
【0091】
図6を参照するに、この出願の一実装において、レーザマイクロフォン100はハウジング1を含む。ハウジング1は、互いに対向して配置された基板11、蓋12、及びミドルフレーム13を含む。基板11、蓋12、及びミドルフレーム13が取り囲んで収容キャビティを形成する。ダイアフラム10、レーザデバイス20、光検出器41、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)チップ2が全て収容キャビティ内に配置される。ダイアフラム10は蓋12に固定され、レーザデバイス20は基板11上に配置され、光検出器41は、ダイアフラム10に面しないレーザデバイス20の側に位置して基板11上に配置される。蓋12に収音孔121が配設され、ダイアフラム10と収音孔121とが対応して配置される。この実施形態のレーザマイクロフォン100は、同じ経路で光ビームを送信及びフィードバックし、干渉アームを参照する必要がなく、より少ないコンポーネントを有し、セルフアラインされた光路を持ち、より小さいサイズでパッケージングされることができる。
【0092】
この出願の一実装において、ダイアフラム10とレーザデバイス20の光放射面(すなわち、ダイアフラム10に面する面)との間の距離は、30μmから300μmの範囲内に設定される。適切な距離は、ダイアフラム10を介してレーザデバイスに反射され返す光とレーザデバイスのキャビティ内の光との間のカップリング効率を向上させることができる。具体的には、一部の実装において、ダイアフラム10とレーザデバイス20との間の距離は50μmから100μmの範囲内に設定され得る。一部の他の実装において、ダイアフラム10とレーザデバイス20との間の距離は100μmから200μmの範囲内に設定され得る。
【0093】
この出願の一実装において、ダイアフラム10は、外部の音波によって発生された空気振動を感知し、振動を生成し、レーザデバイスによって放射された光をレーザデバイスの共振キャビティに反射し返すことができる。外部の音波は、収音孔121を通ってダイアフラム10に伝えられることができる。この出願の実施形態において、レーザマイクロフォンは、キャパシタンス検出機構を持つ従来のMEMSマイクロフォンとは異なり、背面電極板と共に配置される必要がない。従って、ダイアフラムの導電特性に対する特別な要求はない。ダイアフラム10は、MEMS(Micro-electro-mechanical System、微小電気機械システム)ダイアフラム、金属ガラスダイアフラム、グラフェンダイアフラム、ポリマーフィルム、又は金属フィルムとし得る。反射率を高めるために、レーザデバイス20に面するダイアフラム10の面に反射層を配設してもよい。該反射層の材料は、例えばアルミニウム又は金などの高反射率の金属とし得る。該反射層がめっきされたダイアフラム10の面が、レーザデバイス20の光放射面に面するとともに、中心を揃えられる。この出願の実施形態では、負の応力を持つSOI(Silicon-On-Insulator、シリコン・オン・インシュレータ)膜レイヤが、正の応力を持つ金属反射層と組み合わされ、それによりダイアフラム上の応力を低減させ、ダイアフラムの音圧変位感度を更に向上させる。この出願の実施形態では、背面電極のないダイアフラムを用いることで、スクイーズ膜減衰が低減され、音圧変位感度が向上され、ノイズが低減させる。この出願の実施形態におけるダイアフラムの設計は、より弱い音及びより強い音の信号応答振幅の検出を可能にし、それが高い信号対雑音比の実現を容易にする。
【0094】
この出願の一実装において、1つ以上のバランス孔がダイアフラム10に配設され、ダイアフラムの内側及び外側の大気圧をバランスさせるように構成される。バランス孔の直径は1μmから5μmの範囲(両端の値1μm及び5μmを含む)とし得る。この出願の一部の実装において、ダイアフラム10はMEMSシリコンダイアフラムであり、300nmから800nmの厚さと、600μmから1200μmの直径とを持つ。MEMSシリコンダイアフラムの中心領域の表面が、例えばアルミニウム層又は金層といった高反射金属層でめっきされる。該金属層の厚さは30nmから100nm(両端の値30nm及び100nmを含む)とすることができ、該金属層の半径は20μmから50μmである。MEMSシリコンダイアフラムの音圧変位感度は0.05μm/Paから0.5μm/Paの範囲である。例えば、この出願の具体的な一実施形態において、MEMSシリコンダイアフラムは、400nmの厚さと900μmの直径とを持つ。ダイアフラムの中心領域がアルミニウムでめっきされ、該アルミニウム層は90nmの厚さと30μmの半径とを持つ。ダイアフラムに2つのバランス孔が配設され、各バランス孔の直径は2μmである。MEMSダイアフラムの音圧変位感度は0.1μm/Paである。この出願の実施形態において、ダイアフラムは、SOI又はポリシリコンをベースとするシリコン基板を使用して製造され、これは、応力を低減させるとともに音圧変位感度を向上させる助けとなる。金属反射層を配置することは、膜レイヤの応力をバランスさせるとともにダイアフラムの光反射率を高めることができる。応力制御を通じて、音圧の変化に伴うダイアフラムの振動振幅の線形性が更に向上される。
【0095】
この出願の一実装において、レーザマイクロフォン100は頂部受音構造のものとし得る。図6に示すように、蓋12上にダイアフラム10が位置し、収音孔121が蓋12に配設される。ダイアフラム10と蓋12との間に前面チャンバ3が形成され、ダイアフラム10とハウジングとの間に背面チャンバ4が形成される。ダイアフラム10が蓋12上に配置されて、より大きい背面チャンバ4を形成する。頂部受音構造では、ダイアフラム10、レーザデバイス20、及び収音孔121が対応し合って配置され、特に同軸に配置され得る。一般に、頂部受音構造のレーザマイクロフォンは、基板11を用いて端子内のPCB基板上に固定される。光検出器41は、金属ライン5を用いてチップ2に電気接続され、チップ2は基板11のビアを通じて外部の金属電極6と直接的に電気接続される。
【0096】
この出願の一実装において、レーザマイクロフォン100は代わりに底部受音構造であってもよい。図7に示すように、基板11上にダイアフラム10が位置し、収音孔121が基板11に配設され、ダイアフラム10に対応して配置される。レーザデバイス20及び光検出器41は蓋12上に位置し、ダイアフラム10と基板11との間に前面チャンバ3が形成され、ダイアフラム10とハウジングとの間に背面チャンバ4が形成される。ダイアフラム10が基板11上に配置されて、より大きい背面チャンバ4を形成する。底部受音構造では、ダイアフラム10、レーザデバイス20、及び収音孔121が対応し合って配置され、特に同軸に配置され得る。1つ以上の収音孔121が存在し得る。一般に、底部受音構造のレーザマイクロフォンは、基板11を用いて端子内のPCB基板上に固定される。光検出器41は、金属ライン5を用いてチップ2に電気接続され、チップ2は金属ライン5及び基板11のビアを通じて外部の金属電極6と直接的に電気接続される。
【0097】
上の2つの構造のレーザマイクロフォンは、より大きい空気量の背面チャンバを得ることで、音波が容易にダイアフラムを押し動かすことができ、それによりマイクロフォンの感度及び信号対雑音比を向上させる。
【0098】
この出願の一実装において、ダイアフラム10、レーザデバイス20、光検出器41、及びASICチップ2を信頼性高くパッケージングするために、基板11、蓋12、及びミドルフレーム13が全てPCB材料を使用し、あるいは、基板11がPCB材料又はセラミック材料を使用する。蓋12及びミドルフレーム13は一体化された構造のものであり、金属又はそれに類するもので作製される。
【0099】
図6及び図7を参照するに、この出願の一実装において、自己混合光信号取得装置40が光検出器41とトランスインピーダンス増幅器回路42とを含む場合、光検出器41及びレーザデバイス20は1つの光学チップ上に集積されることができ、光検出器41は、ダイアフラム10に面しない側のレーザデバイス20の面上に位置する。トランスインピーダンス増幅器回路42は、1つのASICチップ2上で制御回路30及び信号処理回路50と集積され得る。光検出器41及びレーザデバイス20が1つの光学チップ上に集積されることで、レーザデバイスの裏から伝えられる光を光検出器にカップリングする効率を向上させることができ、それにより、信号対雑音比が向上されるのと同時に、振動や落下などの場合にディスクリート構成によって生じる光路ずれを避けることができる。これにより、モジュールのライフサイクルを通して信号の一貫性が保たれる。確かなことには、この出願の一部の他の実装において、光検出器41及びレーザデバイス20は代わりに別々に配設されてもよい。レーザデバイス20を光検出器41に直接取り付けてもよく、レーザデバイス20の背面、すなわち、光を放射するダイアフラム10側ではない表面が代わりに光検出器41に直接結合され得る。この出願の一実装において、光検出器41の動作波長は360nmから1600nmの範囲(両端の値360nm及び1600nmを含む)とし得る。
【0100】
この出願の一部の他の実装において、自己混合信号取得装置40がスナバ回路を含む場合、スナバ回路、制御回路30、及び信号処理回路50は1つのASICチップ2上に集積され得る。
【0101】
この出願の一実装において、レーザデバイス20は自己混合レーザデバイスであり、その具体的なタイプは限定されない。レーザデバイスは垂直共振器型面発光レーザであってもよいし、端面発光型レーザであってもよい。レーザデバイスの発光波長は750nmから1600nmの範囲とし得る。この出願の一部の実装において、レーザデバイス20は単一モード垂直共振器型面発光レーザ(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser、VCSEL)であり、その発光波長は850nmである。VCSELの典型的な閾値電流は0.7mAであり、典型的な動作電流は約2.5mAであり、典型的な出力パワーは約0.5mWである、対応する光検出器の典型的な出力光電流は0.5mAである。VCSELの典型的な寸法は、長さが120μmから200μm、幅が120μmから200μm、厚さが100μmから150μmの範囲とし得る。
【0102】
図8を参照するに、この出願の一部の実施形態において、レーザマイクロフォンは更に、レーザデバイス20とダイアフラム10との間に置かれた光ビーム結合装置を含む。光ビーム結合装置は1つ以上のレンズ70を含むことができ、レンズ70はレーザ20の光放射面上に作製される。この出願の一実装において、レンズ70はコリメーティングレンズであってもよいし、収束レンズであってもよい。出力光及び反射光をカップリングするためにレンズを用いることで、フィードバックカップリング効率を高めることはでき、ダイアフラムの振動を搬送する信号のフィードバック光強度を増加させることができ、それによりレーザマイクロフォンの信号対雑音比が向上される。図8に示すように、この出願の一部の実装において、レンズ70は、レンズシリンダーと曲面のレンズ表面とを含むコリメーティングレンズである。レンズシリンダーはフォトリソグラフィ又はレーザ直接書き込みなどの手法で製造されることができ、曲面のレンズ表面はエンボス加工又はインクジェットプリンティングなどの手法で製造されることができる。コリメーティングレンズは、レーザデバイスの出力光をダイアフラムの反射面へとコリメートするとともに、反射光をレーザデバイスの光放射孔にカップリングすることができる。コリメーティングレンズを配置することにより、レーザデバイスに反射され返す光を大幅に増加させることができ、それによりフィードバック信号の光強度が増加され、マイクロフォンの信号対雑音比が更に向上される。レンズの材料は、レーザデバイスの動作波長域内で90%より高い透過率を持つ材料である。この出願の一実装において、各レンズの横方向の寸法(すなわち、長さ寸法及び幅寸法)は20μmから200μmの範囲(両端の値20μm及び200μmを含む)であり、各レンズの軸方向の寸法(すなわち、高さ寸法)は20μmから200μmの範囲(両端の値20μm及び200μmを含む)である。
【0103】
この出願の一実装において、数値範囲を持つ全てのパラメータ値は両端の値を含む。
【0104】
この出願の実施形態におけるレーザマイクロフォンによれば、ダイアフラムの音圧変位感度が、背面電極を持たないダイアフラム設計に基づいて改善され、弱い振動信号の検出能力がレーザ自己混合干渉効果を通じて改善され、それにより振動応答感度及びダイナミックレンジが向上され、その結果、僅かな音声信号を拾うことができる。この実施形態において、ダイアフラムの振動は、高い検出感度を持つものであるレーザ自己混合コヒーレントの方式で検出される。この出願の実施形態によれば、レーザマイクロフォンは、静かな状況におけるソフトスポークンモードでの収音、遠距離での弱い音声信号の検出、及び遠距離ビデオ記録中の収音品質を有意に向上させることができる。この出願の実施形態におけるレーザマイクロフォンの信号対雑音比は75dBより高く、例えば80dBである。従来のMEMSマイクロフォン(65dBの信号対雑音比を持つ)と比較して、信号対雑音比が大幅に向上される。
【0105】
図9を参照するに、この出願の一実施形態は更に、この出願の実施形態に従ったレーザマイクロフォン100を含む端末200を提供する。端末200は、外部ハウジングと該外部ハウジング内に配置された回路基板とを含み、該回路基板上にレーザマイクロフォンが配置される。端末の外部ハウジングに、レーザマイクロフォンの位置に対応する受音孔101が配設され、外部ハウジングの受音孔101を通して外部の音がレーザマイクロフォンに伝えられる。レーザマイクロフォン100は、当該端末の前面に対応して配置されることができ、それに対応して、受音孔101は端末の前面蓋201に配置される(図9のフロントビューを参照)。あるいは、レーザマイクロフォン100は、当該端末の背面に対応して配置されてもよく、それに対応して、受音孔101は端末の背面蓋202に配置される(図9のリアビューを参照)。レーザマイクロフォン100は、当該端末のサイドミドルフレーム203に対応して配置されてもよく、それに対応して、受音孔101は端末のサイドミドルフレーム203に配置される。具体的には、図9のボトムビューに示すように、受音孔101は端末の下側のサイドミドルフレームに配置され、あるいは、上側の、左側の、又は右側のサイドミドルフレームに配置され得る。レーザマイクロフォン100の収音孔は、端末の外部ハウジングの受音孔101に対応して配置され、具体的には同軸配置され得る。ミドルフレーム203と背面蓋202は一体に形成された構造であってもよいし、分離構造であってもよい。端末200は、例えば、携帯電話、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートTV、スマートスピーカ、ヘッドセット、ビデオカメラ、ネットワークカメラ、ウェアラブル装置、ゲーム装置、車載オーディオシステム若しくはマイクロフォン、音声ナビゲーション装置、口述音声認識装置、音声・ツー・テキスト変換器、又はこれらに類するものなどの、音声コマンド制御が必要とされるシナリオ又は音声をキャプチャ、記録、処理、若しくは分析する必要があるシナリオにおける端末製品とし得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9