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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】化粧用品容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A45D40/00 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020024962
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021129627
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】名越 雅彦
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-145309(JP,U)
【文献】実開平03-034415(JP,U)
【文献】特開2017-087684(JP,A)
【文献】実開昭60-098436(JP,U)
【文献】特開2002-355119(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19856491(DE,A1)
【文献】米国特許第04367965(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00-40/30
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲して延びる弧状天板を有し、前記弧状天板の弧の他端側に開口が設けられたケースと、
前記ケース内において棒状の化粧用品の一端部を固定する中皿と、
前記中皿を、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退する方向に移動自在に案内保持する中皿案内部と、
前記ケースに組付けられ、前記弧状天板に沿って延びる弧状部を有し、前記弧状部が外部から操作力を受けることにより、前記弧状部を移動させて前記弧状部の一端側を前記弧状天板の下側に入り込ませることで、前記開口を開閉するスライド蓋と、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだ後の前記スライド蓋の動きを前記中皿に伝えて、前記中皿を移動させる連動機構と、を備え、
前記連動機構が、前記スライド蓋が前記開口を開閉する方向に移動する際に、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退するように、該スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ前記中皿を移動させる歯車機構から構成されており、
前記歯車機構が、
ピッチ円が前記弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにして前記スライド蓋の一端側の下側に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラック、
歯の部分を上向きにして前記中皿に連結されたラックであって、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に前記移動をさせる第2のラック、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだときに、前記第1のラックに噛合する小径平歯車、および
前記小径平歯車と同軸に固定されて、前記第2のラックに常に噛合する大径平歯車から構成されている、
化粧用品容器。
【請求項2】
湾曲して延びる弧状天板を有し、前記弧状天板の弧の他端側に開口が設けられたケースと、
前記ケース内において棒状の化粧用品の一端部を固定する中皿と、
前記中皿を、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退する方向に移動自在に案内保持する中皿案内部と、
前記ケースに組付けられ、前記弧状天板に沿って延びる弧状部を有し、前記弧状部が外部から操作力を受けることにより、前記弧状部を移動させて前記弧状部の一端側を前記弧状天板の下側に入り込ませることで、前記開口を開閉するスライド蓋と、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだ後の前記スライド蓋の動きを前記中皿に伝えて、前記中皿を移動させる連動機構と、を備え、
前記連動機構が、前記スライド蓋が前記開口を開閉する方向に移動する際に、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退するように、該スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ前記中皿を移動させる歯車機構から構成されており、
前記歯車機構が、
ピッチ円が前記弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにして前記スライド蓋の一端側の下側に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラック、
歯の部分を上向きにして前記中皿に連結されたラックであって、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に前記移動をさせる第2のラック、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだときに、前記第1のラックに噛合する小径平歯車、
前記第2のラックに常に噛合する大径平歯車、および
前記小径平歯車と前記大径平歯車との間に介設された中間平歯車から構成されている、
化粧用品容器。
【請求項3】
前記ケースは、同心円の間の部分を一部抽出した形状で向かいあう2つの側板と、前記2つの側板の外側の弧に沿って延びる湾曲した前記弧状天板と、前記2つの側板の内側の弧の沿って延びる湾曲した底板と、前記2つの側板の弧の両端部を相互間で連結する直線状の2つの底板と、によって内部空間が形成されている、
請求項1又は2に記載の化粧用品容器。
【請求項4】
前記ケースの前記2つの側板の向かいあう内側面の、前記弧状天板の下方には、内方に所定の高さ突出した弧状ガイドがそれぞれ設けられていることで、前記弧に沿った方向と直交する幅方向の左右の側端部において、前記弧状ガイドと前記弧状天板の下側の面との間に、弧状の間隙が形成されており、
前記スライド蓋の前記弧状部の前記一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだ際、前記弧状部の、前記幅方向の左右の側端部が、前記弧状の間隙に収まる、
請求項に記載の化粧用品容器。
【請求項5】
前記化粧用品が化粧料である、
請求項1からのいずれか1項記載の化粧用品容器。
【請求項6】
前記化粧用品が化粧用具である、
請求項1からのいずれか1項記載の化粧用品容器。
【請求項7】
前記化粧用具が、化粧料を塗布するための用具であり、
前記スライド蓋の前記弧状部の内面側に、化粧料を保持し、該スライド蓋が前記開口を開く方向に移動する際に前記化粧用具に接触して該化粧用具に化粧料を付着させる化粧料保持部が取り付けられている、
請求項記載の化粧用品容器。
【請求項8】
前記中皿案内部が、前記中皿と一体化された、あるいは該中皿に連結した係合片と、前記ケースに設けられた溝部であって前記係合片を内部に摺動自在に収める係合溝部とから構成されている、
請求項1からのいずれか1項記載の化粧用品容器。
【請求項9】
前記中皿案内部が、前記中皿を直線状の経路に沿って案内保持するものである、
請求項1からのいずれか1項記載の化粧用品容器。
【請求項10】
互いに磁力で吸着する2つ部材の一方、他方がそれぞれ前記ケースとスライド蓋に固定され、それらの部材が吸着することによって前記スライド蓋がケースの開口を閉じる状態が維持される、
請求項1からのいずれか1項記載の化粧用品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用品容器、より詳しくは、開口を有するケース内に棒状の化粧用品を収容し、化粧用品を開口からケース外に突出させて使用できるようにした化粧用品容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や2に示されているように、口紅等の棒状の化粧料を収容するケースを備えてなる化粧料容器において、ケースの一部に設けた開口から化粧料(化粧品組成物)を突出させて使用可能にしたものが知られている。
【0003】
この種の従来の化粧料容器に関しては、上記特許文献1や2にも示されているように、開口を閉じる蓋と、化粧料を固定した部分とを連動可能にしておき、1つの操作部の操作によって蓋を開くと共に、化粧料を開口からケース外に突出させる提案もなされている。そのように構成された化粧料容器は、蓋の開閉と化粧料の出し入れとを一連の操作で行うことができるので、使い勝手が良いものとなっている。このような構造を有する化粧料容器は、化粧料を固定しておく代わりに、化粧用ブラシ等の化粧用具を固定しておいて、化粧用具容器として構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-34415号公報
【文献】特許第2880951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蓋の開閉と棒状の化粧料の出し入れとを一連の操作で行えるようにした従来の化粧料容器においては、開口を閉じる蓋と操作部とを、可撓性のエンドレスベルトあるいはそれに近いベルトで連結して連動させるようにしているので、構造が複雑になる、またそのために故障も起きやすい、といった問題が認められている。この問題は、上述した化粧用具容器においても同様に発生し得ることは自明である。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、蓋の開閉と棒状の化粧料あるいは化粧用具の出し入れとを一連の操作で行うことができる、構造が簡単な化粧用品容器を提供することを目的とする。なお本明細書では、化粧料(化粧品組成物)および化粧用具をまとめて「化粧用品」と称することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による化粧用品容器は、
湾曲して延びる弧状天板を有し、前記弧状天板の弧の他端側に開口が設けられたケースと、
前記ケース内において棒状の化粧用品の一端部を固定する中皿と、
前記中皿を、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退する方向に移動自在に案内保持する中皿案内部と、
前記ケースに組付けられ、前記弧状天板に沿って延びる弧状部を有し、前記弧状部が外部から操作力を受けることにより、前記弧状部を移動させて前記弧状部の一端側を前記弧状天板の下側に入り込ませることで、前記開口を開閉するスライド蓋と、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだ後の前記スライド蓋の動きを前記中皿に伝えて、前記中皿を移動させる連動機構と、を備え、
前記連動機構が、前記スライド蓋が前記開口を開閉する方向に移動する際に、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退するように、該スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ前記中皿を移動させる歯車機構から構成され、
前記歯車機構が、
ピッチ円が前記弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにして前記スライド蓋の一端側の下側に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラック、
歯の部分を上向きにして前記中皿に連結されたラックであって、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に前記移動をさせる第2のラック、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだときに、前記第1のラックに噛合する小径平歯車、および
前記小径平歯車と同軸に固定されて、前記第2のラックに常に噛合する大径平歯車から構成されていることを特徴とするものである。
本発明の他の態様による化粧用品容器は、
湾曲して延びる弧状天板を有し、前記弧状天板の弧の他端側に開口が設けられたケースと、
前記ケース内において棒状の化粧用品の一端部を固定する中皿と、
前記中皿を、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退する方向に移動自在に案内保持する中皿案内部と、
前記ケースに組付けられ、前記弧状天板に沿って延びる弧状部を有し、前記弧状部が外部から操作力を受けることにより、前記弧状部を移動させて前記弧状部の一端側を前記弧状天板の下側に入り込ませることで、前記開口を開閉するスライド蓋と、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだ後の前記スライド蓋の動きを前記中皿に伝えて、前記中皿を移動させる連動機構と、を備え、
前記連動機構が、前記スライド蓋が前記開口を開閉する方向に移動する際に、前記化粧用品の他端部が前記ケースの開口を出退するように、該スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ前記中皿を移動させる歯車機構から構成されており、
前記歯車機構が、
ピッチ円が前記弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにして前記スライド蓋の一端側の下側に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラック、
歯の部分を上向きにして前記中皿に連結されたラックであって、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に前記移動をさせる第2のラック、
前記弧状部の一端側が前記弧状天板の下側に入り込んだときに、前記第1のラックに噛合する小径平歯車、
前記第2のラックに常に噛合する大径平歯車、および
前記小径平歯車と前記大径平歯車との間に介設された中間平歯車から構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
詳しくは、ケースは、同心円の間の部分を一部抽出した形状で向かいあう2つの側板と、2つの側板の外側の弧に沿って延びる湾曲した弧状天板と、2つの側板の内側の弧の沿って延びる湾曲した底板と、2つの側板の弧の両端部を相互間で連結する直線状の2つの底板と、によって内部空間が形成されている。
そして、ケースの2つの側板の向かいあう内側面の、弧状天板の下方には、内方に所定の高さ突出した弧状ガイドがそれぞれ設けられていることで、弧に沿った方向と直交する幅方向の左右の側端部において、弧状ガイドと弧状天板の下側の面との間に、弧状の間隙が形成されており、スライド蓋の弧状部の一端側が弧状天板の下側に入り込む際、弧状部の、幅方向の左右の側端部が、弧状の間隙に収まる。
【0009】
なお、上記化粧用品は、前述したように化粧料であってもよいし、あるいは化粧用具であってもよい。
化粧用品が化粧用具であって、しかもその化粧用具が特に、化粧料を塗布するための用具である場合、本発明の化粧用品容器においては、スライド蓋の弧状部の内面側に、化粧料を保持し、該スライド蓋が上記開口を開く方向に移動する際に化粧用具に接触して該化粧用具に化粧料を付着させる化粧料保持部が取り付けられていることが望ましい。
【0010】
他方、上記の連動機構は、スライド蓋が上記開口を開閉する方向に移動する際に、化粧用品の他端部がケースの開口を出退するように、該スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ中皿を移動させる歯車機構から構成されるのが望ましい。
【0011】
ここで、上記の「開閉」と「出退」はこの順に相対応することを意味する。つまりスライド蓋が開口を開く方向に移動する際には、化粧用品の他端部が開口を出る一方、スライド蓋が開口を閉じる方向に移動する際には、化粧用品の他端部が開口から退くことを示している。
【0012】
また、より具体的に上記歯車機構は、
ピッチ円が弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにしてスライド蓋に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラックと、
歯の部分を上向きにして中皿に連結されて、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に上記の移動をさせる第2のラックと、
弧状部の一端側が弧状天板の下側に入り込んだときに、第1のラックに噛合する小径平歯車と、
上記小径平歯車と同軸に固定されて第2のラックに常に噛合する大径平歯車と、
から構成されるのが望ましい。
【0013】
なお上記の大径平歯車とは、上記小径平歯車と比べて相対的にピッチ円が大径である歯車を意味するものである。その場合、両歯車のモジュールが共通であれば、スライド蓋が外部から受けた操作力は、第1のラック、小径平歯車、大径平歯車、第2のラック、中皿の伝達経路で中皿に伝えられて、上述のように「スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ中皿を移動させる」ことが実現されることが容易に理解できる。しかしここで、互いに同軸に固定される小径平歯車と大径平歯車のモジュールが共通であることは必ずしも必要ではない。すなわち、スライド蓋が外部から受けた操作力が上述の経路で中皿に伝達された場合に「スライド蓋の移動の距離よりも長い距離だけ中皿を移動させる」ことが実現される限りにおいて、小径平歯車と大径平歯車のモジュールは互いに相違していても構わない。
【0014】
あるいは、上記歯車機構は、
ピッチ円が弧状部と同心状となるように歯の部分を下向きにしてスライド蓋に連結されて、該スライド蓋が移動する力を歯並び方向に受ける第1のラックと、
歯の部分を上向きにして中皿に連結されたラックであって、歯並び方向に動く力を該中皿に伝えてこの中皿に上記の移動をさせる第2のラックと、
弧状部の一端側が弧状天板の下側に入り込んだときに、第1のラックに噛合する小径平歯車と、
第2のラックに常に噛合する大径平歯車と、
小径平歯車と大径平歯車との間に介設されて互いに噛合した中間平歯車と、
から構成されてもよい。
【0015】
なお、上記の中間平歯車を設けた歯車機構においては、先に述べたように小径平歯車と大径平歯車とが互いに同軸に固定された歯車機構とは異なって、小径平歯車および大径平歯車は互いに、そして中間平歯車ともモジュールが同じものが適用される。
【0016】
一方、中皿案内部は、中皿と一体化された、あるいは該中皿に連結した係合片と、この係合片を内部に摺動自在に収めるようにしてケースに設けられた係合溝部とから構成されるのが望ましい。またこの中皿案内部は、中皿を直線状の経路に沿って案内保持するものであることが望ましい。
【0017】
また本発明の化粧用品容器においては、
互いに磁力で吸着する2つ部材の一方、他方がそれぞれケースとスライド蓋に固定されて、
それらの部材が吸着することによってスライド蓋がケースの開口を閉じる状態が維持されることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化粧用品容器は、ケースの開口を開閉する蓋として、弧状をなす部分を少なくとも蓋内面に有して、弧状をなす部分をその弧に沿った方向に移動させて開口を開閉するスライド蓋を適用したので、このスライド蓋自身を操作部として用いることができる。つまり、このスライド蓋の他に操作部を別途設けて、両者をエンドレスベルト等で連結するようなことは不要となっている。この点から本発明の化粧用品容器は、構造が簡単で故障も起き難いものとなる。また、上述のエンドレスベルト等はエラストマー等の軟質材を使用して形成する必要があるが、エンドレスベルト等が不要であれば、特に軟質材を使用する必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態による化粧用品容器の外観を示す斜視図
図2図1の化粧用品容器の内部を示す一部破断斜視図
図3図1とは異なる状態にある上記化粧用品容器の内部を示す一部破断斜視図
図4】本発明の第2実施形態による化粧用品容器を一部破断してその内部を示す斜視図
図5図4の化粧用品容器の内部を示す側面図
図6図5の一部を拡大して示す側面図
図7】本発明の第3実施形態による化粧用品容器の内部を示す側面図
図8図7の一部を拡大して示す側面図
図9】本発明の第4実施形態による化粧用品容器の内部を示す一部破断斜視図
図10図9とは異なる状態にある第4実施形態の化粧用品容器を示す一部破断斜視図
図11】本発明の第5実施形態による化粧用品容器の内部を示す一部破断斜視図
図12図11とは異なる状態にある第5実施形態の化粧用品容器を示す一部破断斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による化粧用品容器1の外観を示す斜視図であり、図2および図3はこの化粧用品容器1の内部を示す一部破断斜視図である。なお図2および図3はそれぞれ、この化粧用品容器1において、後述するスライド蓋20が閉蓋状態、開蓋状態にあるところを示している。
【0021】
図1に示されるようにこの化粧用品容器1は、ケース10の内部に後述する棒状の化粧料を収容するものである。ケース10は2枚の側板9を有し、該側板9等によって化粧用品収容用の内部空間を画成する。ケース10は、概略ドーナツの一部を切り取ったような形状で、化粧用品容器を構成するケースとしては極めて特殊な形状とされている。すなわち、各側板9は、2つの同心円の間の部分を一部抽出した形状とされている。そして、そのような形状の側板9が2枚、互いに間隔を置いた状態に配置され、それらの周囲部分が一部を除き閉じられて上記内部空間が画成されている。ケース10には、その内部空間を開閉するスライド蓋20が組み付けられている。このスライド蓋20は、側板9の外側の弧に沿って延びる弧状部21を有している。
【0022】
図2および図3に示されるように両側板9の外側の弧の部分は、一部は相互間で連結しないで、両者の間に開口11が残されている。上記弧の残余の部分は、弧に沿って延びた弧状天板12によって連結されている。弧状天板12の図中下方には、側板9の内方に(つまり別の側板9側に)少しの高さ突出した弧状ガイド13が形成され、この弧状ガイド13と弧状天板12との間に、弧状の間隙14が形成されている。さらに弧状ガイド13の図中下方には、側板9の内方に少しの高さ突出した直線状の中皿案内部15が形成されている。この中皿案内部15および上記弧状ガイド13はそれぞれ、2枚の側板9のいずれにも設けられている。2枚の側板9間の部分は側板端部において、それぞれ直線状に延びる第1底板16によって閉じられている。それらの第1底板16の間において2枚の側板9同士は、湾曲した第2底板17によって閉じられている。
【0023】
図2では、2枚の側板9の一方のみを示しているが、他方の側板9も同様(ただし、基本的に一方の側板9と向かい合う鏡像の形)に形成されている。以上の通りケース10は、2枚の側板9と、それらの周囲の一部を囲む複数の板、つまり弧状天板12、2枚の第1底板16および第2底板17とによって、内部空間を有する形に構成されている。なお2枚の側板9は、連結部18によっても連結、固定されている。
【0024】
ケース10には、開口11を開閉可能なスライド蓋20が組み合わされている。このスライド蓋20は、上記弧状天板12に沿って延びる弧状部21と、この弧状部21から弧の内方側に延びた連絡部22とを有する。弧状部21は、左右の側端部が上記弧状の間隙14に収まる形状とされている。それによりスライド蓋20はケース10に対して、弧状部21の弧に沿った方向に移動可能とされ、図中で最も左方に移動されると開口11を閉じる閉蓋状態となり、最も右方に移動されると開口11を開く開蓋状態となる。なおケース10には第1の磁石80が固定され、一方スライド蓋20には第1の磁石80に吸着する第2の磁石81が固定されており、上記の閉蓋状態はこれらの磁石80、81が互いに吸着することによって維持される。
【0025】
ケース10の内部には、中皿30が配置されている。中皿30は、一例として図中左端が開口とされ、図中右端部が閉じた概略角筒状のもので、その図中下部には互いに間隔を置いて2つの係合部31が設けられている。中皿30は、前述した直線状の中皿案内部15に沿って直線方向に往復移動可能とされている。なお、中皿30をそのように移動可能とした構成については、後に詳述する。
【0026】
上記スライド蓋20の連絡部22には、歯の部分を図中下向きにして第1のラック40が固定されている。この第1のラック40の複数並んだ歯は、そのピッチ円がスライド蓋20の弧状部21と同心状となるように配設されている。第1のラック40および連絡部22は、2枚の側板9の各内側に位置するようにして1対設けられ、各連絡部22がスライド蓋20に固定されている。またケース10の内部空間において、2枚の側板9の間には、互いに同軸に固定された小径平歯車41および大径平歯車42が配されている。これらの歯車41および42は、2枚の側板9の間に差し渡された図示外の軸の周りを回転可能とされている。小径平歯車41は、1つの大径平歯車42から左右側方に突出した形にして2つ設けられている。それらの小径平歯車41は、各々上記第1のラック4に噛合しており、第1のラック40が自身の長手方向に移動すると、それに伴って回転する。
【0027】
ここで、上記の「小径平歯車」、「大径平歯車」とは、それら2つの歯車間の相対的な径について規定しているものである。なお、第1のラック40および連絡部22は上述のように1対設ける他に、一方の側板9の側にだけ設けてもよい。その場合は、それに応じて小径平歯車41も1つだけ設けて、1つの第1のラック40に噛合させればよい。
【0028】
図中右側の第1底板16および第2底板17の図中上方で、かつ中皿案内部15の図中下方に当たる位置において、ケース10内には、歯の部分を図中上向きにして第2のラック43が配設されている。この第2のラック43は、一例として弾性変形し得る合成樹脂から形成されており、図中右側の第1底板16および第2底板17の図中上方のケース内空間19において、適宜屈曲しながら移動可能となっている。第2のラック43の図中左端近傍において、その1つの歯は前記2つの係合部31に挟持して固定されている。
【0029】
第2のラック43が図中最も左方に移動した場合でも、その右端近傍部分は大径平歯車42に噛合している。つまりこの第2のラック43は大径平歯車42によって、それよりも上方に抜け出ることがないように常に位置規定されている。また第2のラック43の左端近傍部分つまり上記2つの係合部31に近い部分において第2のラック43には、図3に示されている中皿案内部15の下方でケース側板9側に突出した係合片(図示せず)が設けられている。
【0030】
この係合片は、第2のラック43が弾性を有することから、中皿案内部15の下面15aに弾力的に当接して、この下面15aに沿って摺動可能となっている。つまり上記のケース内空間19は、上記係合片を摺動自在に収める係合溝部を構成している。この係合片は第2のラック43を介して中皿30に連結しているので、該係合片が中皿案内部15に沿って摺動するように第2のラック43が図中で左右方向に移動すれば、中皿30が同じ方向に移動する。
【0031】
なお、以上述べた構成に代えて、中皿案内部15に図中左右方向に直線状に延びる係合溝部を刻設しておき、その係合溝部内に、中皿30に直接連結するかあるいは第2のラック43を介して間接的に連結する係合片を摺動自在に収めた構成を適用することも可能である。その場合は、第2のラック43を特に弾性変形可能な材料から形成する必要はなく、少なくとも可撓性を有する材料から形成すればよい。さらには、第2のラック43と大径平歯車42との配置関係次第では、変形することのない第2のラック43を適用することもできる。
【0032】
上記中皿30には、棒状の化粧料50が固定されている。この化粧料50は、一例として口紅である。より詳しくは、中皿30の図中左端の開口に化粧料50の一端部51を収容して、該化粧料50が中皿30の長手方向と同方向に延びる状態に固定されている。棒状の化粧料50の他端部52は、例えば使用前の新品状態では斜めにカットした形状とされている。それにより化粧料50は、図2に示すスライド蓋20の閉蓋状態下では、スライド蓋20と干渉しない範囲で最大限長く確保されている。
【0033】
以下、上記構成を有する本実施形態の化粧用品容器1の作用について説明する。例えば口紅である化粧料50が使用されないとき、化粧用品容器1は図2に示す状態とされる。つまりこのときは、化粧料50がケース10内に収容され、スライド蓋20は閉蓋状態すなわちケース10の開口11を閉じた状態とされる。この閉蓋状態は、前述した通り2つの磁石80、81が互いに吸着することによって維持される。
【0034】
化粧料50を使用する際に化粧料使用者は、ケース10の弧状天板12の辺りを例えば片手で握って、その手の親指で、あるいは別の手の指で、スライド蓋20の弧状部21を開口11から弧状天板12の方に向けて動かすように操作する。このときの操作力は、弧状部21に沿った弧状の方向に、あるいは弧状部21の一部の接線方向に加えられる。またこの操作力は、上記磁石80、81の吸着を解除できる大きさとされる。それによりスライド蓋20は図2中で概略右方に移動して、弧状天板12と弧状ガイド13との間の間隙14に弧状部21が入り込んだ状態、つまり図3表示の状態となる。この図3に示す状態は、スライド蓋20がケース10の開口11を開いた開蓋状態である。
【0035】
以上のようにスライド蓋20が閉蓋状態から開蓋状態に向けて移動すると、このスライド蓋20の連絡部22に固定されている第1のラック40は、自身の歯並び方向に、つまり図3中で概略右方に移動する。このように移動する第1のラック40は、スライド蓋20の開蓋動作の途中で小径平歯車41に噛合する。そこで小径平歯車41は、第1のラック40が移動するのにつれて、図3中で時計回り方向に回転する。
【0036】
こうして小径平歯車41が回転すると、それに同軸固定されている大径平歯車42も同方向に回転する。すると大径平歯車42に噛合している第2のラック43は自身の歯並び方向に、つまり図3中で概略左方に移動し、該第2のラック43に係合している中皿30が、中皿案内部15に沿って図3中で左方に直線的に移動する。以上の説明から明らかなように本実施形態では、第1のラック40、小径平歯車41、大径平歯車42および第2のラック43により、スライド蓋20の動きを中皿30に伝える連動機構が構成されている。
【0037】
ここで、同軸固定されている小径平歯車41および大径平歯車42が回転する場合、それぞれの外周に沿った歯の移動距離は、前者よりも後者の方が大となる。したがって、第1のラック40の移動に連動して第2のラック43が移動する際、第2のラック43の移動距離は第1のラック40のそれよりも大となる。そこで中皿30は、つまり化粧料50は、スライド蓋20の操作長よりも長い距離移動し、化粧料50は開口11を通過してケース10の外に突出する。使用者は、こうして突出した化粧料50を使用して化粧をすることができる。
【0038】
化粧料50をケース10の中に収納する際には、図3に示す開蓋状態にあるスライド蓋20が図2に示す閉蓋状態となるよう、図3中の概略左方に移動される。それにより、第1のラック40、小径平歯車41、大径平歯車42および第2のラック43が全て上述の場合と逆方向に動作するので、中皿30に固定されている化粧料50がケース10内に収納され、そして開口11がスライド蓋20によって閉じられる。このスライド蓋20の閉蓋状態は、先に述べた通り磁石80、81が互いに吸着することによって維持される。またこの場合も中皿30は、つまり化粧料50は、スライド蓋20の操作長よりも長い距離移動し、化粧料50は開口11を通過して、ケース10の中に収納される。
【0039】
以上の通り本実施形態の化粧用品容器1は、弧状天板12をその弧に沿った方向に移動させてケース10の開口11を開閉するスライド蓋20を適用しているので、このスライド蓋20自身を操作部として用いることが可能となっている。つまり、このスライド蓋20の他に操作部を別途設けて、両者をエンドレスベルト等で連結するようなことは不要となっている。この点から本実施形態の化粧用品容器1は、構造が簡単で故障も起き難いものとなっている。また、上述のエンドレスベルト等が不要であるから、そのためにエラストマー等の軟質材が必要とされることもない。
【0040】
なお本実施形態の化粧用品容器1における弧状天板12は、その内面も外面も弧状をなす形状とされているが、外面にはスライド蓋20を操作するための指掛け用突起等が適宜設けられてもよい。つまりスライド蓋20は、弧状をなす部分を少なくとも内面に有して、該内面の弧に沿った方向に移動するように構成すればよい。ただし、開口を開閉する蓋が外から見て弧状になっていて、その弧に沿って動いて開閉動作するような容器は、化粧用品容器としては珍しい外観を呈するものであって、商品価値を高める効果も奏するものであるから、スライド蓋20は外面全体、あるいは外面の大部分が弧状に形成されていることが望ましい。
【0041】
本発明による化粧用品容器においては、全体の側面形状がほぼ「C」字状あるいは弓状とされたケース10(図2および図3参照)を互い違いに2つ組み合わせて、全体の側面形状がほぼ「S」字状となるようにケースを構成してもよい。そのような構成の化粧用品容器は、外観に加えてさらに機能も考慮して、一方のケースの開口を通って棒状の化粧料が出退し、他方のケースの開口を通って棒状の化粧用具が出退するように構成してもよい。そうする場合、化粧用具としては例えばチークブラシ等が挙げられるが、特に、一方のケースの開口を通って出退する化粧料と共に使用される化粧用具であることが望ましい。その望ましい一例として、棒状の化粧料が口紅である場合に、化粧用具として、口紅塗布のキワ部分を仕上げる化粧筆を適用することが挙げられる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態による化粧用品容器2について、図4図6を参照して説明する。なおこれらの図において、先に説明した図1図3中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。図4および図5は共に、本実施形態の化粧用品容器2が閉蓋状態にあるところを示し、図6はその状態における化粧用品容器2の内部を拡大して示している。
【0043】
本実施形態の化粧用品容器2は、上述した第1実施形態の化粧用品容器1と対比すると、スライド蓋20の動きを中皿30に伝える連動機構が異なる点で基本的に相違している。すなわちこの化粧用品容器2においては、第1のラック40に噛合する小径平歯車61、この小径平歯車61に噛合する中間平歯車62、およびこの中間平歯車62に噛合すると共に第2のラック43に噛合する大径平歯車63が配設されている。小径平歯車61、中間平歯車62および大径平歯車63は、互いに噛合させるため、モジュールが共通のものとされている。
【0044】
なお本実施形態では図4に明示される通り、小径平歯車61は中間平歯車62よりも全長が短く形成されて、中間平歯車62の一端部近傍部分に噛合するように配置されている。そして第1のラック40も、この小径平歯車61に噛合する位置に配されて、移動する際に大径平歯車63と干渉することが回避されている。
【0045】
上記の構成において、スライド蓋20が図5に示す閉蓋位置から開蓋位置に向けて図中右方に移動すると、第1のラック40が小径平歯車61に噛合して、該小径平歯車61を回転させる。このときの小径平歯車61、中間平歯車62および大径平歯車63の回転方向を、図6においてそれぞれ矢印を付して示す。こうして大径平歯車63が回転することにより、第1実施形態におけるのと同様にして、化粧料50は開口11(図3参照)を通過してケース10の外に突出する。
【0046】
本実施形態においても小径平歯車61および大径平歯車63による作用で、化粧料50をケース10の外に突出させる際にも、またケース10内に収納する際にも中皿30は、つまり化粧料50は、スライド蓋20の操作長よりも長い距離移動して、化粧料50は上記開口11を通過する。なお、1つの中間平歯車62に代えて、小径平歯車61と大径平歯車63との間で互いに噛合する複数(通常は奇数)の中間平歯車が用いられてもよい。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態による化粧用品容器3について、図7および図8を参照して説明する。この化粧用品容器3において、スライド蓋20の動きを中皿30に伝える連動機構は、第1の実施形態の化粧用品容器1における連動機構と基本的に同様のものであって、第1のラック40、小径平歯車41、大径平歯車42および第2のラック43から構成されている。このような連動機構が適用されている場合、連動機構の動作をより円滑にするために、例えば小径平歯車41および大径平歯車42の回転や、第1のラック40および第2のラック43の移動に対する摩擦抵抗が低減されていると、スライド蓋20が操作されていないのにも拘わらず、中皿30が化粧料50ごと不用意に動いてしまうことがある。こうして中皿30が特に前方(図7中で左方)に動くと、化粧料50がスライド蓋20の内面に当接して、この内面を汚したり、スライド蓋20の開蓋動作を妨げたりする不具合が生じ得る。
【0048】
本実施形態の化粧用品容器3は、そのような中皿30の不用意な動きを防止するための構成を備えたものである。以下、その構成について詳しく説明する。中皿30には、その後端近傍から大径平歯車42側に延出した、概略平板状の係止部材32が取り付けられている。この係止部材32は例えば弾性を有する合成樹脂等から形成されており、先端には、弧状天板12の方に向かって突出した係止突起32aが設けられている。一方、弧状天板12の内面には、内方に向かって突出した突部12aが形成されている。
【0049】
上記構成の化粧用品容器3において、化粧料50がケース10の中の所定位置に収納されている場合、自身の弾性により上方に付勢している係止部材32は、図8に明示されているように、その係止突起32aが弧状天板12の突部12aに係止した状態となる。この状態になると、係止部材32に連結している中皿30は(つまりそこに保持されている化粧料50は)前方に移動できないので、上述した不具合の発生が防止される。
【0050】
この状態から、次に化粧料50をケース10の外に突出させて使用する場合は、前述したようにスライド蓋20が、閉蓋状態(図7に示す状態)から開蓋状態となるように、図7および図8中で右方に移動される。こうしてスライド蓋20が移動して行くと、スライド蓋20の連絡部22に固定されている第1のラック40が小径平歯車41に噛合する。後は第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にして、スライド蓋20の動きが大径平歯車42を介して第2のラック43に伝わり、第2のラック43が図7および図8中で左方に移動する。
【0051】
この第2のラック43の移動が開始する少し前、つまり第1のラック40が小径平歯車41に噛合する少し前に、スライド蓋20の弧状の内面が係止部材32に上方から接し、該係止部材32を下方に押圧する。それにより係止部材32は、下方に撓むように弾性変形し、その先端の係止突起32aが弧状天板12の突部12aから外れる。こうして中皿30は、係止部材32と共に自由に動き得る状態となるので、第2のラック43が図7および図8中で左方に移動すると、それに伴って移動して、化粧料50を開口11(図3参照)を通過してケース10の外に突出させる。使用者は、こうして突出した化粧料50を使用して化粧をすることができる。
【0052】
化粧の後、化粧料50をケース10の中に収納する際にも、第1の実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様の操作がなされる。つまりその際には、開口11を開いた状態になっているスライド蓋20が、閉蓋状態となるように、図7および図8中の概略左方に移動される。それにより、第1のラック40、小径平歯車41、大径平歯車42および第2のラック43が全て開口11を開く場合と逆方向に動作し、中皿30に固定されている化粧料50がケース10内に収納され、そして開口11がスライド蓋20によって閉じられる。
【0053】
こうしてスライド蓋20が閉蓋状態に戻る過程で、中皿30は図7および図8中で概略右方に移動する。そのとき、この中皿30に固定されている係止部材32も同様に移動するので、該係止部材32の先端の係止突起32aは弧状天板12の内面を滑りながら移動し、突部12aを乗り越えて、最終的に突部12aに係止した図8の状態に戻る。なお、係止突起32aが弧状天板12の突部12aを乗り越える際、係止部材32は弾性変形してこの乗り越えを可能にする。以上の通りにして、化粧料50がケース10の中に収納された状態では、中皿30が前述のように不用意に動いてしまうことが防止される。
【0054】
以上説明した第1~第3の実施形態の化粧用品容器は、いずれも中皿30に化粧用品としての化粧料50を固定したものであるが、本発明の化粧用品容器は、中皿に化粧用品としての化粧用具を固定して構成することも可能である。以下、そのように構成された化粧用品容器の実施形態について説明する。
【0055】
まず、本発明の第4の実施形態による化粧用品容器4について、図9および図10を参照して説明する。この化粧用品容器4において中皿30には、化粧用具70が固定されている。この化粧用具70は、一端部71を有する棒状の塗布部固定材72と、この塗布部固定材72の他端部上面に固定された塗布部73とから構成されている。化粧用具70は、上記一端部71を中皿30内に保持させることによって、中皿30に固定されている。塗布部固定材72は、例えば合成樹脂から形成されている。また塗布部73は、例えば硬質のスポンジ等を用いて直方体状に形成されている。
【0056】
一方、スライド蓋20の内面には、該スライド蓋20の長手方向に沿って延びる、薄くて細長い化粧料保持部74が固定されている。この化粧料保持部74はスライド蓋20において、スライド蓋20が閉蓋状態にある場合は、上記塗布部73から前方(塗布部固定材72が開口11から出て行く方向)側に外れる位置に固定されている。化粧料保持部74は、例えば硬質のスポンジ等を用いて形成されており、該化粧料保持部74には、例えば液体口紅やリップグロス等の液状化粧料が含浸保持されている。
【0057】
上記構成の化粧用品容器4において、図9に示す閉蓋状態にあるスライド蓋20を開蓋状態にする操作は、第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にしてなされる。この操作を行うと、これも第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にして、中皿30が図中左方に移動して、化粧用具70の塗布部73を、開口11を通してケース10の外に突出させる(図10の状態)。その過程で、ケース10の外に向かって移動する化粧用具70の塗布部73が、反対方向に移動するスライド蓋20に固定された化粧料保持部74に、擦れ合うように接触する。
【0058】
このように塗布部73が化粧料保持部74に接触すると、化粧料保持部74に含浸保持されている液状化粧料が、塗布部73に付着する。そこで使用者は、ケース10の外に突出した塗布部73を用いて化粧をすることができる。より具体的には、塗布部73に付着している液状化粧料を唇等に塗布することができる。化粧用具70をケース10の中に収納する操作は、第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にしてなされ得る。
【0059】
なお、化粧料保持部74に含浸等の形で保持させておく化粧料(化粧品組成物)としては、上に例示した液体口紅やリップグロスの他に、アイブロー、アイライナー、チーク等が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の第5の実施形態による化粧用品容器5について、図11および図12を参照して説明する。この化粧用品容器5において中皿30には、化粧用具90が固定されている。この化粧用具90は、一端部71を有する棒状の塗布部固定材72と、この塗布部固定材72の他端面に固定された塗布部91とから構成されている。上記塗布部91は、一例として化粧用ブラシである。
【0061】
上記構成の化粧用品容器5において、図11に示す閉蓋状態にあるスライド蓋20を開蓋状態にする操作は、第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にしてなされる。そしてこの操作を行うと、これも第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にして、中皿30が図中左方に移動して、化粧用具90の塗布部91を、開口11を通してケース10の外に突出させる(図12の状態)。そこで使用者は、ケース10の外に突出した化粧用具90の塗布部91と、別に用意した化粧料とを用いて化粧をすることができる。より具体的には、別に用意した例えば液体口紅を用いて、いわゆる「キワ部分」への口紅塗布が可能である。化粧用具90をケース10の中に収納する操作は、第1実施形態の化粧用品容器1におけるのと同様にしてなされ得る。
【0062】
なお、上記塗布部91や、第4実施形態の化粧用品容器4における塗布部73として適用される化粧用具としては、上に例示した化粧用ブラシの他に、筆、コーム、スポンジ、スパチュラ、アイペンシル等が挙げられる。さらにこの化粧用具としては、化粧料を皮膚等から落とすための用具、例えばヘラや、消しゴム状のゴム製棒状部材等も適用可能である。
【0063】
以上述べたように、ケース10内に収容した用具を、スライド蓋20の開蓋動作に連動させてケース10の外に突出させる構成は、化粧用品容器だけではなく、その他例えば文房具容器等に適用することもできる。その一例として、棒状の消しゴムをケースの中に収容し、消しゴム使用時にはケースの外に突出させるようにした消しゴム容器に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、2、3、4、5 化粧用品容器
10 ケース
9 ケースの側板
11 ケースの開口
12 弧状天板
12a 弧状天板の突部
13 弧状ガイド
14 弧状の間隙
15 中皿案内部
16 第1底板
17 第2底板
20 スライド蓋
21 スライド蓋の弧状部
30 中皿
31 中皿の係合部
32 係止部材
32a 係止突起
40 第1のラック
41、61 小径平歯車
42、63 大径平歯車
43 第2のラック
50 化粧料
51 化粧料の一端部
52 化粧料の他端部
62 中間平歯車
70、90 化粧用具
71 塗布部固定材の一端部
72 塗布部固定材
73、91 塗布部
74 化粧料保持部
80 第1の磁石
81 第2の磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12