(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バックアップ電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240806BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J7/02 J
(21)【出願番号】P 2020091527
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉木 克彦
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010250(JP,A)
【文献】特開2012-135179(JP,A)
【文献】特開2013-126331(JP,A)
【文献】特開2012-130158(JP,A)
【文献】国際公開第02/009255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源から負荷装置への電力供給がなくなったときに前記負荷装置に電力を供給するバックアップ電源装置であって、
各々が二次電池セルを含むと共に互いに並列接続された第1及び第2電池パックと、
前記主電源からの電力を用いて前記第1及び第2電池パックを充電する充電回路と、
前記第1電池パックを前記負荷装置に接続して放電させる第1放電スイッチと、
前記第2電池パックを前記負荷装置に接続して放電させる第2放電スイッチと、
前記充電回路と、前記第1及び第2放電スイッチとを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1電池パックの第1電池電圧、第2電池パックの第2電池電圧、及び前記主電源からの出力電圧を比較する比較手段を有し、
前記第1電池電圧と前記第2電池電圧とが前記出力電圧より低いときは、前記第1放電スイッチ及び前記第2放電スイッチをオン状態にし、
前記第1電池電圧
及び前記第2電池電圧が充電により前記主電源の出力電圧を超えたとき、前記第1放電スイッチと前記第2放電スイッチとをオフ状態にして、前記第1電池パック
及び前記第2電池パックの充電を継続し、
前記第1電池電圧が充電により
前記第2電池電圧より先に前記出力電圧より高い放電可能上限電圧を超えたときは、前記第2電池パックの充電を
停止して前記第1電池パックの充電を継続し、
前記第1電池電圧が前記上限電圧よりも高い満充電電圧に達したときに前記第1電池パックの充電を停止し、
その後、前記第1電池電圧が前記上限電圧を下回った後で前記第2電池パックの充電を開始し、前記第2電池電圧が前記満充電電圧に達したときに前記第2電池パックの充電を停止し、
前記第1電池電圧及び前記第2電池電圧が前記出力電圧を下回った後で、前記第1及び第2放電スイッチを共にオンに切替える、ことを特徴とするバックアップ電源装置。
【請求項2】
満充電後の第1電池パック又は第2電池パックの電池電圧を前記満充電電圧から前記上限電圧にまで強制的に下げるための放電抵抗をさらに有する、請求項1記載のバックアップ電源装置。
【請求項3】
前記二次電池セルは、ニッケル水素電池である、請求項1記載のバックアップ電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源から給電される負荷装置に対し、停電時に商業電源に代えて負荷装置へ電力を供給するためのバックアップ電源が存在する。バックアップ電源において、停電を検出してから負荷装置への出力スイッチをオンにする場合、負荷装置への電力供給が途切れる瞬間が存在する。
【0003】
これに対し、バックアップ電源内の電池ユニットの充電中や電池ユニットの満充電後の待機時に、負荷装置への出力スイッチをオンに維持することによって、停電が発生しても負荷装置への電力供給が一瞬も途切れることがないようにしている装置も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、バックアップ電源内の電池ユニットに対して、外部からの入力電圧が、電池ユニットを満充電にする満充電電圧には不足する場合がある。そこで、バックアップ電源内に昇圧DC/DCコンバータを設け、入力電圧を昇圧して電池ユニットに印加する場合がある。この場合、負荷装置への出力スイッチを常時オンにしていると、電池ユニットの電池電圧が、負荷装置への入力ラインの電圧よりも高くなり、電池ユニットの電池電圧が直接負荷装置に印加されることがある。
【0005】
そこで、バックアップ電源が複数の電池ユニットを備えている場合、電池ユニットを2つのグループに分け、一方のグループを充電している間、他方のグループを充電せずに負荷装置に向けて出力可能な電圧に維持して出力スイッチをオンにする方法が採られている。この方法により、停電に対して負荷装置への電力供給が一瞬も途切れることがないようにできる。
【0006】
しかし、上記方法では、装置全体としての充電時間が長くなる傾向がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、充電時間が短縮されたバックアップ電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様のバックアップ電源装置は、主電源から負荷装置への電力供給がなくなったときに前記負荷装置に電力を供給するバックアップ電源装置であって、各々が二次電池セルを含むと共に互いに並列接続された第1及び第2電池パックと、前記主電源からの電力を用いて前記第1及び第2電池パックを充電する充電回路と、前記第1電池パックを前記負荷装置に接続して放電させる第1放電スイッチと、前記第2電池パックを前記負荷装置に接続して放電させる第2放電スイッチと、前記充電回路と、前記第1及び第2放電スイッチとを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1電池パックの第1電池電圧、第2電池パックの第2電池電圧、及び前記主電源からの出力電圧を比較する比較手段を有し、前記第1電池電圧と前記第2電池電圧とが前記出力電圧より低いときは、前記第1放電スイッチ及び前記第2放電スイッチをオン状態にし、前記第1電池電圧が充電により前記主電源の出力電圧を超えたとき、前記第1放電スイッチと前記第2放電スイッチとをオフ状態にして、前記第1電池パックの充電を継続し、前記第1電池電圧が充電により前記出力電圧より高い放電可能上限電圧を超えたときは、前記第2電池パックの充電を行わずに前記第1電池パックの充電を継続し、前記第1電池電圧が前記上限電圧よりも高い満充電電圧に達したときに前記第1電池パックの充電を停止し、その後、前記第1電池電圧が前記上限電圧を下回った後で前記第2電池パックの充電を開始し、前記第2電池電圧が前記満充電電圧に達したときに前記第2電池パックの充電を停止し、前記第2電池電圧が前記出力電圧を下回った後で、前記第1及び第2放電スイッチを共にオンに切替える、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、第1電池パックの第1電池電圧と第2電池パックの第2電池電圧とが、共に主電源の出力電圧より低いときは、第1及び第2放電スイッチが共にオンになっているので、主電源からの給電が停止した場合は、途切れることなく負荷装置に対して給電することができる。
【0010】
また、充電中の第1電池パックの第1電池電圧が出力電圧を超えたときに、両放電スイッチがオフにされる。特に、第1電池パックの電池電圧が放電可能上限電圧を上回るときは、第1電池パックの充電は継続するが、第2充電パックの充電は行わずに電池電圧を上限電圧以下に維持して主電源の停電に備える。第1及び第2電池パックのいずれも満充電を経て主電源の電圧を下回るとき、第1及び第2放電スイッチのどちらもオン状態に切り替えられる。このように、電池パックの電池電圧が主電源の出力電圧より高い間は、放電スイッチがオフに維持されるので、主電源からの給電遮断が生じなければ電池パックから負荷装置へは放電しないので、バックアップ電源装置全体の充電時間が短縮される。
【0011】
なお、本発明において、「充電時間」とは、バックアップ電源装置を主電源に接続して電池ユニットの充電を開始してから、電池ユニットを構成する各電池パックが満充電されてすべての電池パックから負荷装置に対して放電可能な待機状態にするまでの時間である。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、満充電後の第1電池パック又は第2電池パックの電池電圧を前記満充電電圧から前記上限電圧にまで強制的に下げるための放電抵抗をさらに有することを特徴とする。当該構成により、放電可能上限電圧よりも高い満充電電圧にまで充電された電池パックを、放電抵抗を用いて強制放電させることにより、その電池電圧を自己放電に比べて短時間で主電源の電圧以下に降下させられる。従って、バックアップ電源装置全体の充電時間が短縮される。
【0013】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記二次電池セルは、ニッケル水素電池であることを特徴とする。二次電池セルがニッケル水素電池である場合、二次電池セルを満充電するためには、当該二次電池セルの定格電圧よりも高い電圧で満充電にする必要がある。従って、電池電圧が主電源の出力電圧を超えてから電池パックの満充電を経て再び出力電圧以下になるまで第1及び第2放電スイッチをオフにすることは、バックアップ電源装置全体の充電時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバックアップ電源装置によれば、バックアップ電源装置の完全充電に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るバックアップ電源装置の回路図である。
【
図2】
図1に示すバックアップ電源装置の各スイッチの動作と、電池電圧と、充電電流とのタイムチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0017】
<バックアップ電源装置の構成>
一実施形態に係るバックアップ電源装置1を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、バックアップ電源装置1は、主電源としての電源2と並列に接続され、停電等によって電源2から負荷装置3への給電が遮断されたときに、負荷装置3の動作を継続するために負荷装置3へ電力を供給する装置である。電源2は、例えば商用電源からの給電により出力電圧V0の直流電力を出力する電源装置である。負荷装置3は、電圧V0の直流電力で動作する電気機器である。本実施形態において、電圧V0は、例えば26.2~28.8Vである。
【0018】
バックアップ電源装置1は、入出力端子10と、電池ユニット20と、充電回路30と、放電回路40と、制御装置50とを備える。
【0019】
入出力端子10は、電源2から負荷装置3へ電力を供給する電源ラインLに接続される。入出力端子10には、電圧V0の直流電力が入力される。本実施形態において、バックアップ電源装置1の入出力端子10での入力電圧V0は、電源2の出力電圧V0と同じである。
【0020】
電池ユニット20は、第1電池パック21と第2電池パック22を含む。第1及び第2電池パック21、22は、互いに並列に接続されている。各電池パック21、22は、ニッケル水素二次電池等のアルカリ二次電池セルの複数個を直列や並列に接続することによって構成される。各電池パック21、22の定格電圧は、いずれも電源の電圧V0と同じである。また、各電池パック21、22は、定格電圧よりも高い満充電電圧を有する。電池ユニット20は、第1電池パック21の第1電池電圧を検出する第1電圧検出部23と、第2電池パック22の第2電池電圧を検出する第2電圧検出部24と、各電池パック21、22の充電電流を検出する電流計(不図示)と、電池ユニット20の温度を検出する温度計(不図示)とを含む。
【0021】
充電回路30は、第1及び第2電池パック21、22を充電する回路であり、DC/DCコンバータ31と、切替スイッチS0と、第1及び第2定電流制御回路32、33と、第1及び第2充電スイッチS1,S2とを含む。DC/DCコンバータ31は、電源2からの出力電圧V0を電池パック21、22の満充電電圧まで昇圧する電圧変換器であり、入力側が入出力端子10に接続され、出力側が切替スイッチS0を介して電池ユニット20に接続されている。DC/DCコンバータ31は、切替スイッチS0の切替えにより、選択的に電池ユニット20に電気的に接続される。
【0022】
本実施形態では、DC/DCコンバータ31は、入出力絶縁型のDC/DCコンバータである。切替スイッチS0がa接点にあると、DC/DCコンバータ31は、電池ユニット20に接続されず、入出力端子10が直接電池ユニット20に接続される。一方、切替スイッチS0がb接点にあると、DC/DCコンバータ31が電池ユニット20に接続され、電池ユニット20には満充電に適した電圧が印加される。
【0023】
第1充電スイッチS1は、第1電池パック21の充電をオン・オフするスイッチである。第1充電スイッチS1は、一端側が第1定電流制御回路32を介して切替スイッチS0に接続され、他端側が第1電池パック21に接続される。第1充電スイッチS1がオンになると、第1電池パック21は、第1定電流制御回路32からの定電流により充電される。
【0024】
第2充電スイッチS2は、第2電池パック22の充電をオン・オフするスイッチである。第2充電スイッチS2は、一端側が第2定電流制御回路33を介して切替スイッチS0に接続され、他端側が第2電池パック22に接続される。第2充電スイッチS2がオンになると、第2電池パック22は、第2定電流制御回路33からの定電流により充電される。
【0025】
第1及び第2定電流制御回路32、33は、各々が接続されている電池パック21、22に対し定電流を供給する制御回路である。第1及び第2充電スイッチS1,S2は、後述する制御装置50からの制御信号によりオン・オフが切替えられる。
【0026】
放電回路40は、第1放電スイッチS3と、第2放電スイッチS4と、放電抵抗Rとを含む。第1放電スイッチS3は、第1電池パック21から負荷装置3への放電をオン・オフするスイッチである。第1放電スイッチS3は、一端が第1電池パック21に接続され、他端が入出力端子10に接続される。第1放電スイッチS3がオンになると、第1電池パック21は、負荷装置3へ放電可能な状態になる。
【0027】
第2放電スイッチS4は、第2電池パック22の放電をオン・オフするスイッチである。第2放電スイッチS4は、一端が第2電池パック22に接続され、他端が入出力端子10に接続される。第2放電スイッチS4がオンになると、第2電池パック22は、負荷装置3へ放電可能な状態になる。
【0028】
放電抵抗Rは、一端が第1補助スイッチS5を介して第1電池パック21に接続されると共に、第2補助スイッチS6を介して第2電池パック22に接続される。放電抵抗Rの他端は、基準電位に接続される。従って、第1補助スイッチS5がオンになると、第1電池パック21は放電抵抗器Rに向けて放電する。一方、第2補助スイッチS6がオンになると、第2電池パック22が放電抵抗Rに向けて放電する。また、第1補助スイッチS5と第1電池パック21との間には、ダイオードD1が挿入される。ダイオードD1は、アノードが第1電池パック21に接続され、カソードが第1補助スイッチS5に接続されている。さらに、第2補助スイッチS6と第2電池パック22との間には、ダイオードD2が挿入される。ダイオードD2は、アノードが第2電池パック22に接続され、カソードが第2補助スイッチS6に接続されている。
【0029】
制御装置50は、制御部として、マイコンからなり、入出力端子10における入力電圧V0、第1電池パック21の第1電池電圧V1、第2電池パック22の第2電池電圧V2に基づき、充電回路30及び放電回路40を制御する。具体的には、制御装置50は、入力電圧V0を検出する電圧検出部51を有し、比較手段として、入力電圧V0、第1電池パック21の第1電池電圧V1と、第2電池パック22の第2電池電圧V2とを比較する。この比較結果に基づいて、制御装置50は、切替スイッチS0、第1充電スイッチS1、第2充電スイッチS2、第1放電スイッチS3、第2放電スイッチS4、第1補助スイッチS5、第2補助スイッチS6のオン・オフを制御する制御信号を出力する。
【0030】
<バックアップ電源装置の充放電制御>
制御装置50が実行する電池ユニット20の充放電制御について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、バックアップ電源装置1の充放電制御を示すタイムチャートである。
【0031】
時刻t1において、第1及び第2電池パック21、22の充電を開始する。このとき、第1電池パック21の第1電池電圧V1及び第2電池パック22の第2電池電圧V2のいずれもが、電源2の出力電圧V0よりも低い場合、制御装置50は、切替スイッチS0を接点aに切替えると共に、第1及び第2充電スイッチS1,S2をオンにして、電源2からの出力電圧V0に基づいた定電流制御により第1電池パック21及び第2電池パック22を充電する。また、第1及び第2放電スイッチS3,S4をオンにして、停電時に備え、第1電池パック21及び第2電池パック22から負荷装置3への放電を可能な状態にする。第1及び第2補助スイッチS5,S6は、いずれもオフ状態にする。従って、電源2からの給電が停止したときは、瞬停が生じることなくバックアップ電源装置1から負荷装置3への給電が開始され、負荷装置3への給電が継続される。
【0032】
充電に伴い各電池パック21、22の電池電圧V1,V2が上昇して電源2の出力電圧V0に近付いてくると充電電流が徐々に低下する。制御装置50は、充電電流の低下を検出すると、時刻t2で、切替スイッチS0を接点bに切替え、電源2からの電力をDC/DCコンバータ31に入力して電圧を昇圧させ、電圧V0よりも高い満充電電圧に基づく定電流制御で第1及び第2電池パック21、22を充電する。このとき、第1及び第2放電スイッチS3,S4はいずれもオン状態にあるので、電源2からの給電が停止したときは、瞬停が生じることなくバックアップ電源装置1から負荷装置3への給電が開始され、負荷装置3への給電が継続される。
【0033】
次に時刻t3にて、電池パック21、22の電源電圧V1,V2が、出力電圧V0を上回るとき、第1及び第2放電スイッチS3,S4の両方をオフに切替える。従って、電池ユニット20から負荷装置3への放電が停止されるので、電池パック21、22に充電された電荷が負荷装置3へ流れ込むことはない。一方、第1及び第2電池パック21、22への充電は継続される。従って、時刻t3以降、電源2からの給電が停止した場合、制御装置50がこの停電を検出して、第1及び第2放電スイッチS3,S4をオンに切替えて電池パック21、22から負荷装置3に向けて放電させる。従って、若干の瞬停が発生する。
【0034】
時刻t4にて、第1及び第2電池パック21、22の第1及び第2電池電圧V1,V2のいずれか一方が、負荷装置3へ放電可能な放電可能上限電圧を上回るときに、例えば第1電池パック21の第1電池電圧V1が先に上限電圧を上回るときに、第2充電スイッチS2のみをオフにして第2電池パック22の充電を停止し、第1電池パック21の充電を継続する。第2充電スイッチS2のオフにより、第2電池パック22の電池電圧V2は、上限電圧以下に維持される。従って、電源2からの給電が停止した場合、制御装置50が、第2放電スイッチS4をオンに切替えることによって、第2電池パック22から負荷装置3へ給電することができる。なお、放電可能上限電圧は、負荷装置3へ入力可能な電圧であり、負荷装置3への仕様によって設定される。
【0035】
時刻t5にて、第1電池パック21が満充電されると、第1電池パック21の第1電池電圧V1は、放電可能上限電圧よりも高い満充電電圧に達するので、第1充電スイッチS1をオフに切替えて第1電池パック21の充電を停止する。そして、第1補助スイッチS5をオンにして、第1電池パック21から放電抵抗Rに向けて強制放電させて、第1電池電圧V1を上限電圧に向けて降下させる。このとき、電源2から負荷装置3への給電が停止した場合、第2電池パック22の電池電圧V2は上限電圧以下なので、第2放電スイッチS4をオンに切替えることによって、第2電池パック22から負荷装置3へ給電することができる。
【0036】
時刻t6にて、第1電池パック21の第1電池電圧V1が上限電圧を下回ると、第1補助スイッチS5をオフにして強制放電を停止する。そして、第2充電スイッチS2をオンにして第2電池パック22の充電を開始する。このとき、電源2からの給電が停止した場合、電源2の停電を検知した制御装置50が、第1放電スイッチS3のみをオンに切替えることによって、電池電圧が上限電圧以下の第1電池パック21から負荷装置3へ給電することができる。
【0037】
時刻t7にて、第2電池パック22が満充電されると、すなわち、第2電池パック22の第2電池電圧V2が満充電電圧に達したとき、第2電池パック22の充電を停止する。次に、第2補助スイッチS6をオンにして、第2電池パック22から放電抵抗Rに向けて強制放電させる。このとき、電源2からの給電が停止した場合、電源2からの給電停止を検知した制御装置50が、第1放電スイッチS3のみをオンに切替えることによって、電池電圧が上限電圧以下の第1電池パック21から負荷装置3へ給電することができる。
【0038】
時刻t8にて、第2電池パック22の第2電池電圧V2が、強制放電により上限電圧にまで降下すると、第2補助スイッチS6をオフにして強制放電を停止する。このとき、第1及び第2電池パック21、22と共に満充電されて、電源2からの給電停止に備えた待機状態になる。なお、電池電圧V1,V2がいずれも電源2の出力電圧V0より高いので、第1及び第2放電スイッチS3,S4共にオフ状態に維持される。しかしながら、電源2からの給電が停止した場合、電源2からの給電停止を検知した制御装置50が、第1放電スイッチS3及び第2放電スイッチS4のうちのいずれか一方、又は両方をオンに切替えることによって、電池ユニット20から負荷装置3へ給電することができる。
【0039】
さらに、時刻t9にて、第1及び第2電池パック21、22の第1及び第2電池電圧V1,V2が電源2の出力電圧V0を下回ると、第1及び第2放電スイッチS3,S4をオン状態に切り替えて、バックアップ電源装置1から負荷装置3に向けて放電可能な状態にする。この場合、瞬停が発生することなくバックアップ電源装置1から負荷装置3へ給電することができる。
【0040】
なお、時刻t7以降、電池ユニット20に対して充電は行わない。本実施形態では、時刻t8にて、切替スイッチを接点bから接点aに切替えて、DC/DCコンバータ31を充電回路30から外しているが、この切替のタイミングは、時刻t7以降であれば、時刻t8に限らず適宜のタイミングで行うことができる。
【0041】
上記のように、電池パック21、22の電池電圧V1,V2が、電源2の出力電圧V0よりも高くなる時刻t3から時刻t9の期間、第1及び第2放電スイッチS3,S4のいずれもオフにして、電池ユニット20から負荷装置3への放電を停止しているので、電源2の停電が生じなければ、電池ユニット20を構成する各電池パック21、22の満充電を短時間のうちに行うことができる。従って、時刻t3から時刻t9までの放電スイッチオフ期間を短縮することができる。
【0042】
また、時刻t3から時刻t9までの期間において、時刻t3から時刻t4までの期間と、時刻t8から時刻t9までの期間とは、第1及び第2電池パック21、22の電池電圧V1,V2は、いずれも上限電圧以下である。従って、例えば停電により電源2からの給電が停止した場合、第1及び第2放電スイッチS3,S4の両方を制御装置50からの制御信号によりオンに切替えることによって、第1及び第2電池パック21、22のいずれからも負荷装置3への放電を可能とするので、負荷装置3へ供給できる電力量を多く確保することができる。
【0043】
さらに、時刻t4から時刻t8までの期間は、電池パック21、22を交互に充電しており、いずれか一方の電池パックの電池電圧が充電により上限電圧を上回っているので負荷装置3に向けて放電させることはできないが、他方の電池パックに対しては充電を行わずに当該電池パックの電池電圧を上限電圧以下に維持している。従って、停電により電源2からの給電が停止した場合、制御装置50が、電池電圧が上限電圧以下である電池パックに対応する放電スイッチを制御信号によりオンに切替えることによって、当該電池パックから負荷装置3への放電が可能になる。このように、時刻t4から時刻t8までの期間は、放電可能な電池パックを確保することによって停電に対して備えている。
【0044】
なお、互いに並列接続される電池パックの個数は2個に限定されず、適宜の複数個とすることができる。この場合、複数個の電池パックを少なくとも2つのグループに分け、一方のグループの電池パックをその電池電圧が上限電圧を超えて充電している間は、他方のグループの電池パックの電池電圧を上限電圧以下に維持する。これによって、仮に電源2からの給電が遮断されたときに、負荷装置3に対してバックアップ電源装置1から負荷装置3に向けて放電させることができる。
【0045】
上記のように、電池パックの電池電圧が、電源の出力電圧V0を上回っているとき、第1及び第2放電スイッチのいずれもオフにして電池ユニットから負荷装置に向けての放電を止めているので、電池パック21、22の充電中に電源2の停電が生じなければ、第1及び第2放電スイッチS3,S4を常時オンにしている場合に比べて、各電池ユニットを満充電させてバックアップ電源装置1を放電待機状態にするまでの充電時間を短縮することができる。
【0046】
また、一の電池パックを上限電圧を超えて満充電電圧に向けて充電させている間、他の電池パックの電池電圧を上限電圧以下に維持して、電源2に停電が生じた場合は、負荷装置3に対して給電できるようにしているので、瞬停が生じる時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0047】
1 バックアップ電源装置
2 主電源
3 負荷装置
21、22 電池パック
30 充電回路
50 制御装置
S3 第1放電スイッチ
S4 第2放電スイッチ