(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】粘着シートおよびその利用
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240806BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20240806BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
C09J 133/04 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/02
C09J11/06
B32B27/00 M
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2019143393
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】浅井 量子
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚史
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0321991(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00942054(EP,A1)
【文献】特開2013-040256(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151194(WO,A1)
【文献】特開平07-173445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、該粘着剤層に接合した基材とを有する基材付き粘着シートであって、
前記粘着剤層は、該粘着剤層の一方の表面を構成するA層と、前記A層の背面側に配置されたB層と、を含む多層構造であり、
前記B層は光架橋性ポリマーを含む光架橋性粘着剤層であり、
前記B層は、前記光架橋性ポリマーとして、ベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマー(PB)を含むか、あるいは、前記B層は、前記光架橋性ポリマーとして、炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)を含
み、
前記粘着シートは、
(1)前記B層は、エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能性モノマーの含有量が40μmol/g以下である、および、
(2)前記A層は水親和剤を含む、
の少なくとも一方を満足する、粘着シート。
【請求項2】
前記B層は、前記ベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマー(PB)を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記B層は、前記炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
下記手順により測定される剥離強度N0および剥離強度N2から次式:
水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100;
により算出される水剥離力低下率が40%以上であり、
前記A層は水親和剤を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の粘着シート。
[剥離強度N0の測定手順]
粘着シートのA層側を、コロナ処理された偏光板に、2kgのゴムローラーを一往復させて圧着し、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、その後、25℃の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で前記粘着シートを前記偏光板から引き剥がし、このときの剥離強度を剥離強度N0とする。
[剥離強度N2の測定手順]
前記剥離強度N0の測定において、前記粘着シートを前記偏光板から引き剥がす途中で、前記粘着シートが前記偏光板から離れ始める箇所に20μLの蒸留水を供給し、前記蒸留水供給後の剥離強度を剥離強度N2とする。
【請求項5】
下記手順により測定される剥離強度N0が1.5N/10mm以上である、請求項
4に記載の粘着シート。
[剥離強度N0の測定手順]
粘着シートのA層側を、コロナ処理された偏光板に、2kgのゴムローラーを一往復させて圧着し、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、その後、25℃の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で前記粘着シートを前記偏光板から引き剥がす際の剥離強度を測定し、これを剥離強度N0とする。
【請求項6】
前記粘着剤層の厚さは10μm以上500μm以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記A層の厚さは2μm以上10μm未満である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の粘着シートの前記A層側を部材に積層することと、
前記B層を光架橋させることと、
をこの順序で含む、積層体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよび該粘着シートを用いる積層体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、様々な分野において広く利用されている。粘着剤に関する技術文献として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤には用途に応じて様々な特性が求められる。それらの特性のなかには、一方の特性を改善しようとすると他方の特性が低下する傾向にある等、高レベルで両立させることが困難なものがある。このように両立が難しい関係にある特性の一例として、被着体の表面形状に追従して変形する性質(以下、「表面形状追従性」ともいう。)と、応力に対して変形しにくい性質(以下、「耐変形性」ともいう。)と、が挙げられる。
【0005】
そこで本発明は、被着体に対する表面形状追従性がよく、かつ耐変形性の高い接合を形成可能な粘着剤および該粘着剤を用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書によると、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、該粘着剤層の一方の表面を構成するA層と、上記A層の背面側に配置されたB層と、を含む多層構造である。上記B層は、光架橋性ポリマーを含む光架橋性粘着剤層である。上記粘着シートは、上記B層を光架橋させることにより耐変形性を高めることができる。このことによって、被着体への貼付け時には粘着剤層の表面形状追従性がよく、かつ貼付け後に上記B層を光架橋させることで耐変形性の高い接合を形成することができる。表面形状追従性のよい粘着剤層は、被着体の表面に存在し得る段差に沿って変形する(段差を吸収する)ことにより、該被着体の表面に好適に密着させることができる。また、上記粘着剤層は多層構造体であってその一方の表面はA層により構成されているので、該A層により上記一方の表面に所望の機能を付与することができる。
【0007】
上記光架橋性ポリマーの一好適例として、ベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマー(PB)が挙げられる。ポリマー(PB)を含むB層は、上記ベンゾフェノン構造を利用して光架橋させることができる。
上記光架橋性ポリマーの他の一好適例として、炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)が挙げられる。ポリマー(PD)を含むB層は、上記炭素-炭素二重結合を反応させることで光架橋させることができる。
【0008】
ここに開示される技術(粘着剤層を有する粘着シート、該粘着剤層、該粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物、上記粘着シートを用いた積層体製造方法等を包含する。以下同じ。)のいくつかの態様において、上記B層は、エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能性モノマー(以下、単に「多官能性モノマー」ともいう。)の含有量が40μmol/g以下であることが好ましい。このようにB層の多官能性モノマー含有量を制限することにより、粘着シートの保存に対する性能安定性を高めることができる。
【0009】
いくつかの態様において、上記A層には水親和剤を含有させることができる。これにより、粘着剤層のA層側の粘着面の水剥離性を高めることができる。水剥離性の高い粘着面を備えた粘着シートは、上記B層を光架橋させた後においても、水等の水性液体を用いることで容易に剥離することができる。このことは粘着シートのリワーク等の観点から好ましい。
【0010】
いくつかの好ましい態様に係る粘着シートは、下記手順により測定される剥離強度N0および剥離強度N2から次式:
水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100;
により算出される水剥離力低下率が40%以上である。このように水剥離力低下率の高い粘着面を備えた粘着シートは、上記B層を光架橋させた後においても、水等の水性液体を用いることで容易に剥離することができるので好ましい。
[剥離強度N0の測定手順]
粘着シートのA層側を、コロナ処理された偏光板に、2kgのゴムローラーを一往復させて圧着し、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、その後、25℃の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で上記粘着シートを上記偏光板から引き剥がし、このときの剥離強度を剥離強度N0とする。
[剥離強度N2の測定手順]
上記剥離強度N0の測定において、上記粘着シートを上記偏光板から引き剥がす途中で、上記粘着シートが上記偏光板から離れ始める箇所に20μLの蒸留水を供給し、上記蒸留水供給後の剥離強度を剥離強度N2とする。
【0011】
いくつかの好ましい態様に係る粘着シートは、上記手順により測定される剥離強度N0が1.5N/10mm以上である。このような粘着シートによると、光架橋後の粘着剤層によって信頼性の高い接合を形成することができる。
【0012】
いくつかの態様において、上記粘着剤層の厚さは10μm以上500μm以下であり得る。上記厚さの粘着剤層を備える粘着シートは、表面形状追従性や取扱い性(例えば、粘着シートの打ち抜き加工等の加工性)の観点から好ましい。
【0013】
いくつかの態様において、上記A層の厚さは2μm以上10μm未満であり得る。このような厚さのA層を備えた粘着シートによると、上記A層により提供される効果(例えば、水剥離性の向上)と、上記B層を光架橋させることによる耐変形性向上効果とを好適に両立させることができる。
【0014】
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートの上記A層側を部材に積層することと、該粘着シートの上記B層を光架橋させることと、をこの順序で含む積層体製造方法が提供される。かかる方法によると、上記粘着シートを上記部材に積層する際には粘着剤層を上記部材の表面形状によく追従させ、かつ積層後に上記B層を光架橋させて耐変形性を向上させることができるので、光架橋後の粘着剤層と上記部材とが信頼性よく接合した積層体を得ることができる。
【0015】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る粘着シートが光学部材に貼り付けられた粘着シート付き光学部材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く(好ましくは70重量%より多く、例えば90重量%より多く)含むモノマー成分に由来する重合物をいう。上記アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマーのことをいう。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0019】
この明細書において「エチレン性不飽和化合物」とは、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物をいう。エチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。以下、エチレン性不飽和基を1つ有する化合物を「単官能性モノマー」ということがあり、エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を「多官能性モノマー」ということがある。また、多官能モノマーのうちエチレン性不飽和基をX個有する化合物を「X官能性モノマー」のように表記することがある。
【0020】
この明細書において、多層構造の粘着剤層とは、組成の異なる2以上のサブ粘着剤層が積層した構成の粘着剤層をいう。上記多層構造を構成するサブ粘着剤層の数は、例えば10以下であり、粘着剤層の透明性の観点から5以下であることが好ましく、4以下でもよく、3以下でもよい。A層とB層とからなる二層構造の粘着剤層は、ここでいう多層構造の粘着剤層の一好適例である。多層構造の粘着剤層を構成するサブ粘着剤層は、少なくともその一部が直接接して積層している。上記多層構造の粘着剤層は、典型的には、該粘着剤層の一方の表面と他方の表面との間に、隣り合うサブ粘着剤層を完全に隔てるセパレータ層(例えば、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム)を有しない。
【0021】
この明細書において、粘着剤組成物がエチレン性不飽和化合物を含むとは、特記しない場合、上記エチレン性不飽和化合物を部分重合物の形態で含むことを包含する意味である。このような部分重合物は、通常、エチレン性不飽和基が未反応である上記エチレン性不飽和化合物(未反応モノマー)と、エチレン性不飽和基が重合された上記エチレン性不飽和化合物とを含む混合物である。
【0022】
この明細書において、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体とは、該粘着剤組成物に含まれる重合物を構成するモノマー成分と、該粘着剤組成物に未反応モノマーの形態で含まれるモノマー成分との合計量をいう。粘着剤組成物を構成するモノマー成分の組成は、通常、該粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤のモノマー成分の組成およびその光架橋物を構成するモノマー成分の組成と概ね一致する。
【0023】
この明細書において「活性エネルギー線」とは、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等を含む概念である。
【0024】
<粘着シートの構成例>
ここに開示される粘着シートの一構成例を
図1に示す。この粘着シート1は、一方の表面110Aが被着体に貼り付けられる粘着面となっている粘着剤層110と、粘着剤層110の他方の表面に積層された基材20と、を含む片面接着性の粘着シートとして構成されている。粘着剤層110は基材20の一方の表面20Aに固定的に接合している。基材20としては、例えばポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられ得る。粘着剤層110は、一方の表面(粘着面)110Aを構成するA層112と、A層112の背面側に積層配置されたB層114と、からなる二層構造を有する。B層114は、光架橋性ポリマーを含む光架橋性粘着剤層である。
【0025】
使用前(被着体への貼付け前)の粘着シート1は、例えば
図1に示すように、粘着面110Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー30で保護された、剥離ライナー付き粘着シートの形態で、保存や流通等が行われ得る。あるいは、基材20の第二面20B(第一面20Aとは反対側の表面であり、背面ともいう。)が剥離面となっており、この第二面20Bに粘着面110Aが当接するように巻回または積層されることで粘着面110Aが保護された形態であってもよい。
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面が剥離処理された剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理には、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤が用いられ得る。いくつかの態様において、剥離処理された樹脂フィルムを剥離ライナーとして好ましく採用し得る。
【0026】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートの態様であってもよい。上記基材レス両面粘着シートは、例えば
図2に示すように、
図1に示す粘着シート1の粘着剤層110(すなわち、A層112とその背面側に直接接して積層配置されたB層114とからなる二層構造の粘着剤層110)からなる粘着シート2であり得る。基材レス両面粘着シート2は、使用前においては、A層側の表面である粘着面110Aと、B層側の表面である粘着面110Bとが、それぞれ剥離ライナー30、31の剥離面を当節させることで保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー30の背面(粘着剤側とは反対側の表面)が剥離面となっており、剥離ライナー30の背面に粘着面110Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面110A,110Bが保護された形態であってもよい。このような基材レス両面粘着シートは、例えば、粘着剤層のいずれか一方の表面に基材を接合して使用され得る。
【0027】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の一方の表面に光学部材が接合された粘着シート付き光学部材の構成要素であり得る。例えば、
図1に示す粘着シート1は、
図3に示すように、粘着剤層110の一方の表面110Aに光学部材70が接合された粘着シート付き光学部材200の構成要素であり得る。上記光学部材は、例えば、ガラス板、樹脂フィルム、金属板等であり得る。
【0028】
<B層>
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層のB層に含まれる光架橋性ポリマーは、紫外線等の光により架橋構造を形成することのできる構造部分(以下、「光架橋性部位」ともいう。)を有するポリマーであればよく、特に限定されない。上記B層は、例えば、光架橋性ポリマーとしてベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマー(PB)を含有する光架橋性粘着剤からなるB層(以下、「B型B層」ともいう。)や、光架橋性ポリマーとして炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)を含有する光架橋性粘着剤からなるB層(以下、「D型B層」ともいう。)等であり得る。以下の説明において、単に「B層」という場合は、B型B層、D型B層およびその他のB層を包含する意味である。
【0029】
(1)ポリマー(PB)を含むB層
光架橋性ポリマーを含むB層の一好適例として、該光架橋性ポリマーとしてベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマー(PB)を含有する光架橋性粘着剤からなるB層(B型B層)が挙げられる。ポリマー(PB)は、エチレン性不飽和基を実質的に含有しないポリマーであることが好ましい。ポリマー(PB)は、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すゴム状ポリマーであることが好ましい。いくつかの態様において、B型B層は、ポリマー(PB)をベースポリマーとして含む光架橋性のサブ粘着剤層であり得る。
なお、粘着剤層の「ベースポリマー」とは、該粘着剤層に含まれるポリマーの主成分をいう。同様に、A層およびB層の「ベースポリマー」とは、それぞれ、A層およびB層に含まれるポリマーの主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0030】
本明細書において「ベンゾフェノン構造」とは、一般式:Ar1-(C=O)-Ar2-;または、-Ar3-(C=O)-Ar2-;で表されるジアリルケトン構造をいう。ここで、上記一般式中のAr1は、置換基を有していてもよいフェニル基から選択される。上記一般式中の、Ar2,Ar3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基から選択される。Ar2とAr3とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記ベンゾフェノン構造含有成分とは、このようなベンゾフェノン構造を分子内に少なくとも1つ有する化合物をいう。ベンゾフェノン構造は、紫外線の照射により励起することが可能であり、その励起状態において他の分子または当該分子の他の部分から水素ラジカルを引き抜くことができる。
【0031】
B型B層は、該ポリマー(PB)の有するベンゾフェノン構造を励起することで、上記水素ラジカルの引き抜き反応を利用して架橋構造を形成することができる。ポリマー(PB)としては、上記一般式:Ar1-(C=O)-Ar2-;におけるAr1が置換基を有していてもよいフェニル基であり、Ar2置換基を有していてもよいフェニレン基であるベンゾフェノン構造を側鎖に有するポリマーが好ましい。上記Ar1およびAr2の少なくとも一方が1つ以上の置換基を有する場合、該置換基は、それぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、炭素原子数1~3のアルコキシ基。好ましくはメトキシ基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br等。好ましくはClまたはBr)、水酸基、アミノ基およびカルボキシル基からなる群から選択され得る。
【0032】
ここに開示される技術におけるポリマー(PB)は、上述のようなベンゾフェノン構造が、直接主鎖に結合した側鎖を有するものであってもよく、例えばエステル結合、オキシアルキレン構造等の一種または二種以上を介して主鎖に結合した側鎖を有するものであってもよい。ポリマー(PB)の好適例として、分子中にエチレン性不飽和基とベンゾフェノン構造とを有する化合物(以下「エチレン性不飽和BP」ともいう。)に由来する繰返し単位を含むポリマーが挙げられる。上記繰返し単位は、対応するエチレン性不飽和BPのエチレン性不飽和基を反応させた重合残基であり得る。
【0033】
エチレン性不飽和BPとしては、例えば4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン等の、置換基を有していてもよいアクリロイルオキシベンゾフェノン;4-[(2-アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-[(2-アクリロイルオキシ)エトキシ]-4’-ブロモベンゾフェノン等の、置換基を有していてもよいアクリロイルオキシアルコキシベンゾフェノン;4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン等の、置換基を有していてもよいメタクリロイルオキシベンゾフェノン;4-[(2-メタクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-[(2-メタクリロイルオキシ)エトキシ]-4’-メトキシベンゾフェノン等の、置換基を有していてもよいメタクリロイルオキシアルコキシベンゾフェノン;4-ビニルベンゾフェノン、4’-ブロモ-3-ビニルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ4-メトキシ-4’-ビニルベンゾフェノン等の、置換基を有していてもよいビニルベンゾフェノン;等が挙げられるが、これらに限定されない。エチレン性不飽和BPは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて、ポリマー(PB)の調製に用いることができる。エチレン性不飽和BPは、市販されているものを用いることができ、また公知の方法により合成することができる。反応性等の観点から、(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和BP、すなわちアクリル系モノマーであるエチレン性不飽和BPを好ましく採用し得る。
【0034】
ポリマー(PB)は、エチレン性不飽和BPに由来する繰返し単位と、エチレン性不飽和BPに該当しないエチレン性不飽和化合物(以下、「他のモノマー」ともいう。)に由来する繰返し単位と、を有する共重合体であってもよい。このようなポリマー(PB)は、上記エチレン性不飽和BPと上記他のモノマーとを含むモノマー成分の共重合体であり得る。いくつかの態様において、上記他のモノマーとして一種または二種以上のアクリル系モノマーを好ましく採用し得る。ポリマー(PB)の好適例として、該ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の50重量%超(好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)がアクリル系モノマーであるアクリル系ポリマー(PB)が挙げられる。
【0035】
いくつかの態様において、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分は、上記他のモノマーとして、エステル末端にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される一種または二種以上を含み得る。以下、炭素原子数がX以上Y以下の直鎖または分岐鎖状のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを「(メタ)アクリル酸CX-Yアルキルエステル」と表記することがある。ポリマー(PB)を構成するモノマー成分は、上記他のモノマーとして、少なくとも(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルを含むことがより好ましく、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステル(例えば、アクリル酸C4-9アルキルエステル)を含むことがさらに好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸イソノニル等が挙げられる。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他の具体例としては、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリマー(PB)を構成するモノマー成分は、上記他のモノマーとして、後述する共重合性モノマーから選択される一種または二種以上を含んでいてもよい。
【0037】
ポリマー(PB)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば0.5×104~500×104程度であり得る。光架橋性粘着剤の凝集性や、該光架橋性粘着剤を有する粘着シートの取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、ポリマー(PB)のMwは、通常、1×104以上であることが適当であり、5×104以上であることが好ましく、10×104以上でもよく、15×104以上でもよく、20×104以上でもよい。また、被着体(例えば、光学部材)に対する光架橋性粘着剤の表面形状追従性の観点から、該光架橋性粘着剤に含まれるポリマー(PB)のMwは、通常、200×104以下であることが適当であり、150×104以下であることが好ましく、100×104以下でもよく、70×104以下でもよく、50×104以下でもよい。
なお、この明細書においてポリマーの重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用することができる。
【0038】
ここに開示される技術において、ポリマー(PB)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。ポリマー(PB)のTgは、例えば-80℃以上150℃以下であってよく、-80℃以上50℃以下でもよく、-80℃以上10℃以下でもよい。粘着剤層の表面形状追従性の観点から、いくつかの態様において、ポリマー(PB)のTgは、0℃未満であることが適当であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下でもよく、-30℃以下でもよく、-40℃以下でもよく、-50℃以下でもよい。また光架橋性粘着剤の凝集性や、光架橋後における耐変形性(例えば、被着体への密着耐久性)の観点から、ポリマー(PB)のTgは、通常、-75℃以上であることが有利であり、-70℃以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー(PB)のTgは、-55℃以上でもよく、-45℃以上でもよい。ポリマー(PB)のTgは、該ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の種類および量により調節することができる。
【0039】
ここで、本明細書においてポリマーのガラス転移温度(Tg)とは、該ポリマーを構成するモノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度をいう。上記Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0040】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
イソステアリルアクリレート -18℃
メチルメタクリレート 105℃
メチルアクリレート 8℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
N-ビニル-2-ピロリドン 54℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
イソボルニルアクリレート 94℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0041】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、特開2007-51271号公報に記載された測定方法により得られる値を用いるものとする。なお、メーカー等によりガラス転移温度の公称値が提供されているポリマーについては、その公称値を採用してもよい。
【0042】
ここに開示される技術におけるポリマー(PB)は、該ポリマー1g当たり、ベンゾフェノン構造を、アクリル酸4-ベンゾイルフェニル換算で、例えば凡そ0.5mg以上含むことが好ましい。以下、ポリマー(PB)1g当たりに含まれるベンゾフェノン構造の数をアクリル酸4-ベンゾイルフェニル換算の量に換算した値を、ポリマー(PB)のBP当量(単位:mg/g)ということがある。例えば、1g当たり40μmolのベンゾフェノン構造を含む場合、該ポリマーのBP当量は10mg/gと計算される。
より高い光架橋効果(例えば、光架橋により耐変形性を高める効果)を得る観点から、いくつかの態様において、ポリマー(PB)のBP当量は、通常、1mg/g以上であることが適当であり、5mg/g以上でもよく、8mg/g以上でもよく、10mg/g以上でもよく、15mg/g以上でもよく、20mg/g以上でもよい。また、いくつかの態様において、光架橋物による接合部の耐衝撃性や剥離強度を高める観点から、ポリマー(PB)のBP当量は、通常、100mg/g以下であることが適当であり、80mg/g以下でもよく、60mg/g以下でもよく、40mg/g以下でもよく、25mg/g以下でもよく、15mg/g以下でもよい。ポリマー(PB)のBP当量は、該ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の組成により調節することができる。
【0043】
ポリマー(PB)がB型B層に占める重量割合、すなわちB型B層を構成する光架橋性粘着剤におけるポリマー(PB)の重量分率は、特に限定されず、光架橋性粘着剤の表面形状追従性と、その光架橋物の耐変形性とが好適にバランスするように設定することができる。いくつかの態様において、上記ポリマー(PB)の重量分率は、例えば1重量%以上であってよく、通常は5重量%以上であることが適当であり、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、45重量%以上でもよく、55重量%以上でもよい。ポリマー(PB)の重量分率が大きくなると、後述するΔG’は大きくなる傾向にある。ここに開示される技術は、光架橋性粘着剤におけるポリマー(PB)の重量分率が実質的に100重量%(例えば、99.5重量%以上)である態様でも実施され得る。また、粘着性能の調節性やVOC低減の容易性の観点から、いくつかの態様において、光架橋性粘着剤におけるポリマー(PB)の重量分率は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、85重量%未満でもよく、70重量%未満でもよく、50重量%未満でもよく、40重量%未満でもよい。
【0044】
B型B層を構成する光架橋性粘着剤は、該光架橋性粘着剤1g当たり、ベンゾフェノン構造を、アクリル酸4-ベンゾイルフェニル換算で、例えば凡そ0.1mg以上含むことが好ましい。以下、光架橋性粘着剤1g当たりに含まれるベンゾフェノン構造のアクリル酸4-ベンゾイルフェニル換算の重量を、光架橋性粘着剤のBP当量(単位:mg/g)ということがある。より高い光架橋効果(例えば、光架橋により耐変形性を高める効果)を得る観点から、いくつかの態様において、光架橋性粘着剤のBP当量は、通常、0.3mg/g以上であることが適当であり、0.5mg/g以上でもよく、1mg/g以上でもよく、5mg/g以上でもよく、8mg/g以上でもよく、10mg/g以上でもよく、20mg/g以上でもよい。また、いくつかの態様において、光架橋物による接合部の耐衝撃性や光架橋物内の歪み抑制の観点から、光架橋性粘着剤のBP当量は、通常、100mg/g以下であることが適当であり、80mg/g以下でもよく60mg/g以下でもよく、40mg/g以下でもよく、25mg/g以下でもよく、15mg/g以下でもよい。
【0045】
B型B層を構成する光架橋性粘着剤は、ベンゾフェノン構造含有成分を含む粘着剤組成物の硬化物であり得る。上記光架橋性粘着剤は、ベンゾフェノン構造含有成分を含み、ベンゾフェノン構造を有しないエチレン性不飽和化合物をさらに含む粘着剤組成物の硬化物であってもよい。
【0046】
上記粘着剤組成物は、上記ベンゾフェノン構造含有成分として、上述のようなエチレン性不飽和BPから選択される一種または二種以上のモノマーを含んでいてもよく、あらかじめ合成されたポリマー(PB)を含んでいてもよく、これらの両方を含んでいてもよい。B型B層を構成する光架橋性粘着剤に含まれるポリマー(PB)は、例えば、上記粘着剤組成物に含まれているポリマー(PB)またはその変性物であってもよく、上記粘着剤組成物に含まれているエチレン性不飽和BPと他のモノマーとが共重合して形成されたものであってもよい。
【0047】
ここに開示される光架橋性粘着剤は、モノマー組成の異なる2種以上のポリマーを含み、上記2種以上のポリマーのうち少なくとも1種が上記ポリマー(PB)である光架橋性粘着剤であり得る。上記光架橋性粘着剤は、上記2種以上のポリマーとして、2種以上のポリマー(PB)のみを含んでいてもよく、ベンゾフェノン構造を有しないポリマー(以下「ポリマー(PNB)」ともいう。)とポリマー(PB)とを組み合わせて含んでいてもよい。ポリマー(PNB)は、ベンゾフェノン構造を有しないエチレン性不飽和化合物を含む粘着剤組成物を用い、該エチレン性不飽和化合物を重合させることにより形成され得る。ポリマー(PB)およびポリマー(PNB)は、相溶性等の観点から、いずれもアクリル系ポリマーであることが好ましい。
上記ポリマー(PNB)は、後述するアクリル系オリゴマーであってもよい。アクリル系オリゴマーを含む光架橋性粘着剤は、例えば、該アクリル系オリゴマーを含む粘着剤組成物の硬化物であり得る。
【0048】
上記2種以上のポリマーは、化学的に結合していてもよく、結合していなくてもよい。いくつかの態様に係る光架橋性粘着剤は、少なくとも1種のポリマー(PB)を、該ポリマー(PB)以外のポリマーと化学的に結合していない形態で含み得る。かかる光架橋性粘着剤は、上記ポリマー(PB)の有するベンゾフェノン構造を光架橋させることにより、上記ポリマー(PB)と該ポリマー(PB)以外のポリマーとが化学的に結合した光架橋物を形成し得る。
【0049】
ここに開示される光架橋性粘着剤には、必要に応じて、粘着剤に用いられ得る他の成分を含有させることができる。このような任意成分を含む光架橋性粘着剤は、対応する組成の粘着剤組成物を用いて形成され得る。
【0050】
(VOC放散量)
B型B層を構成する光架橋性粘着剤のVOC放散量は、特に限定されない。上記VOC放散量は、例えば5000μg/g以下であってよく、3000μg/g以下でもよく、1000μg/g以下でもよい。いくつかの態様において、光架橋性粘着剤のVOC放散量は、500μg/g以下であることが好ましく、300μg/g以下であることがより好ましく、100μg/g以下であることがさらに好ましい。VOC放散量が少ない光架橋性粘着剤は、低臭気であり、環境衛生の観点から好ましい。光架橋性粘着剤のVOC放散量が少ないことは、該光架橋性粘着剤中の揮発性有機物(VOC)に起因する発泡抑制や、低汚染性の観点からも好ましい。光架橋性粘着剤のVOC放散量は、該光架橋性粘着剤の適当量(例えば、凡そ1mg~2mg程度)を測定試料として、以下の方法で測定される。なお、測定試料の厚さは1mm以下であることが好ましい。
【0051】
[VOC測定試験]
測定試料を20mLのバイアル瓶に入れて密栓する。次いで、上記バイアル瓶を80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mL(サンプルガス)をヘッドスペースオートサンプラー(HSS)を用いてガスクロマトグラフ(GC)測定装置に注入する。得られたガスクロマトグラムに基づいて、上記測定試料から発生したガス量をn-デカン換算量として求める。得られた値から、測定試料1g当たりのVOC放散量(μg/g)を求める。なお、このn-デカン換算量は、GC Massにより得られる発生ガスの検出強度をn-デカンの検出強度とみなして、あらかじめ作成したn-デカンの検量線を適用することにより求める。HSSおよびGCの設定は以下のとおりである。
HSS:Agilent Technologies社製 型式「7694」
加熱時間:30分間
加圧時間:0.12分
ループ充填時間:0.12分
ループ平衡時間:0.05分
注入時間:3分
サンプルループ温度:160℃
トランスファーライン温度:200℃
GC装置:Agilent Technologies社製 型式「6890」
カラム:ジーエルサイエンス社製 J&W キャピラリーカラム 商品名「DB-ffAP」(内径0.533mm×長さ30m、膜厚1.0μm)
カラム温度:250℃(40℃から90℃まで10℃/分で昇温し、引き続き250℃まで20℃/分で昇温して5分保持)
カラム圧力:24.3kPa(定流モード)
キャリアーガス:ヘリウム(5.0mL/分)
注入口:スプリット(スプリット比 12:1)
注入口温度:250℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
【0052】
粘着剤中に存在し得るエチレン性不飽和化合物の未反応物(例えば、未重合のアクリル系モノマー。以下、「残存モノマー」ともいう。)は、該粘着剤のVOCを上昇させる要因となり得る。ここに開示される光架橋性粘着剤は、残存モノマーの含有量が、上述したいずれかのVOC放散量を満たす程度に抑制されたものとなり得る。ここに開示される光架橋性粘着剤は、このように残存モノマー量が制限された構成でありながら、ポリマー(BP)の有するベンゾフェノン構造を利用して系内に新たな架橋を形成することができ、これにより粘着剤層の耐変形性を高めることができる。
なお、ここに開示される光架橋性粘着剤のVOC放散量は、原則としては低いほど好ましいが、生産性やコスト等の実用上の観点から、いくつかの態様において、上記VOC放散量は、例えば10μg/g以上であってよく、30μg/g以上でもよく、80μg/g以上でもよく、150μg/g以上でもよく、200μg/g以上でもよい。
【0053】
(ゲル分率)
B型B層を構成する光架橋性粘着剤のゲル分率は、特に限定されないが、該光架橋性粘着剤の凝集性や粘着シートの取扱い性等の観点から、通常は5%以上であることが適当であり、15%以上であることが好ましく、25%以上でもよく、35%以上でもよい。光架橋性粘着剤のゲル分率は、原理上、100%以下である。また、被着体の表面形状に対する追従性の観点から、光架橋性粘着剤のゲル分率は、85%未満であることが好ましく、70%未満でもよく、55%未満でもよく、40%未満でもよい。
【0054】
ゲル分率は、以下の方法で測定される。すなわち、約0.5gの測定サンプルを精秤し、その重さをW1とする。この測定サンプルを多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートに包んで室温で1週間酢酸エチルに浸漬した後、乾燥させて酢酸エチル不溶解分の重さW2を計測し、W1およびW2を以下の式:
ゲル分率(%)=W2/W1×100;
に代入してゲル分率を算出する。多孔質PTFEシートとしては、日東電工社製の商品名「ニトフロンNTF1122」またはその相当品を使用することができる。
【0055】
いくつかの態様において、B型B層を構成する光架橋性粘着剤に高圧水銀ランプを用いて紫外線(例えば、照度300mW/cm2、積算光量10000mJ/cm2の紫外線)を照射して得られた光架橋物のゲル分率は、例えば70%以上であってよく、90%以上であることが好ましく、95%以上でもよく、98%以上でもよい。光架橋物のゲル分率は、原理上、100%以下である。ゲル分率は、上記の方法で測定される。
【0056】
ポリマー(PB)を含む光架橋性粘着剤は、例えば、ベンゾフェノン構造を励起可能な波長成分を含む紫外線を照射する処理を行うことにより光架橋させることができる。波長300nm未満の成分を含む紫外線を照射可能な光源を用いることが好ましい。かかる光源の例としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、スーパーUVランプ等が挙げられるが、これらに限定されない。上記光源により照射される光は、波長300nm以上の成分を含んでいてもよい。
【0057】
なお、ベンゾフェノン構造を励起可能な波長成分(例えば、波長300nm未満の成分)を含まないか該波長成分が少ない紫外線を照射可能な光源としては、ブラックライト、UV-LEDランプ等が挙げられる。これらの光源は、ベンゾフェノン構造の存在下で行われる光照射によりエチレン性不飽和基の反応(重合反応または硬化反応)を進行させるための光源として好ましく採用され得る。エチレン性不飽和基を反応させるための紫外線照射においては、該反応を促進するために、後述する光開始剤を利用し得る。
【0058】
B型B層を構成する光架橋性粘着剤は、波長300nm以上の光を吸収してラジカルを発生する光開始剤を実質的に含まない組成であってよく、例えば380nm以上(特に400nm以上)の可視光を吸収してラジカルを発生する光開始剤を実質的に含まない組成であり得る。このことは光架橋性粘着剤の光学特性の観点から有利となり得る。なお、波長300nm以上の光を吸収してラジカルを発生する光開始剤を含まないとは、上記ラジカルを発生可能な形態(上記光により開裂する部位を有する形態)の上記光開始剤を含まないことをいい、上記光開始剤の開裂残渣を含有することは許容され得る。好ましい一態様に係る光架橋性粘着剤は、分子内にリン元素を含む光開始剤を実質的に含有しない。ここに開示される光架橋性粘着剤は、分子内にリン元素を含む光開始剤および該光開始剤の開裂残渣のいずれをも実質的に含有しないものであり得る。
【0059】
(B型B層形成用の粘着剤組成物)
この明細書によると、ベンゾフェノン構造含有成分を含む粘着剤組成物が提供される。かかる粘着剤組成物は、B型B層の形成に好ましく用いられ得る。上記粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、水系粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等の、種々の態様の粘着剤組成物であり得る。いくつかの態様において、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を好ましく採用し得る。
なお、本明細書において、水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここでいう水系粘着剤組成物の概念には、水分散型の粘着剤組成物(粘着剤が水に分散した形態の組成物)と、水溶性の粘着剤組成物(粘着剤が水に溶解した形態の組成物)とが含まれ得る。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤(粘弾性体)を形成するように調製された粘着剤組成物をいう。ホットメルト型粘着剤組成物とは、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するように調整された粘着剤組成物をいう。
【0060】
B型B層形成用の粘着剤組成物は、上記ベンゾフェノン構造含有成分として、ポリマー(PB)を含んでいてでもよく、エチレン性不飽和BPを含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。粘着剤組成物の構成成分としてポリマー(PB)が用いられる場合、該ポリマー(PB)としては、B層を構成する光架橋性粘着剤に含まれるポリマー(PB)と同様のものを使用し得るため、重複する説明は省略する。
【0061】
いくつかの態様において、上記粘着剤組成物は、該粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体の50重量%超(好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)がアクリル系モノマーであるアクリル系粘着剤組成物であり得る。上記アクリル系粘着剤組成物は、例えば:ポリマー(PB)とエチレン性不飽和化合物(B)とを含む粘着剤組成物(好ましくは、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物);有機溶媒中にポリマー(PB)(好ましくはアクリル系ポリマー)を含み、さらにエチレン性不飽和化合物(B)を含んでいてもよい溶剤型粘着剤組成物;アクリル系ポリマーであるポリマー(PB)を主成分として含むホットメルト型粘着剤組成物;等であり得る。
【0062】
〔エチレン性不飽和化合物(B)〕
エチレン性不飽和化合物(B)として使用し得る化合物の例示には、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、上述したエチレン性不飽和BPとが含まれる。これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル、より好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステル、さらに好ましくはアクリル酸C4-9アルキルエステル)を用いることが好ましい。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)が挙げられる。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他の具体例としては、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、エチレン性不飽和化合物(B)は、アクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)のうちいずれか一方をまたは両方を含むことが好ましく、少なくとも2EHAを含むことがより好ましい。
【0063】
いくつかの態様において、エチレン性不飽和化合物(B)は、アクリル酸C4-9アルキルエステルを40重量%以上の割合で含み得る。モノマー成分に占めるアクリル酸C4-9アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。また、光架橋性粘着剤の凝集性を高める観点から、エチレン性不飽和化合物(B)に占めるアクリル酸C4-9アルキルエステルの割合は、通常、99.5重量%以下とすることが適当であり、95重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
【0064】
エチレン性不飽和化合物(B)として使用し得る化合物の他の例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和化合物(共重合性モノマー)が挙げられる。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、例えば、該モノマーに由来する繰返し単位を含む重合物に架橋点を導入したり、光架橋性粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール(例えばアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)類。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物等。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
【0066】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量(すなわち、上記モノマー成分全体における共重合性モノマーの重量分率)は、モノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
【0067】
いくつかの態様において、上記共重合性モノマーは、窒素原子を有するモノマーを含み得る。窒素原子を有するモノマーの使用により、光架橋性粘着剤の凝集力を高め、光架橋後の剥離強度を好ましく向上させ得る。窒素原子を有するモノマーの一好適例として、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、一般式(1):
【化1】
で表わされるN-ビニル環状アミドを用いることができる。ここで、一般式(1)中、R
1は2価の有機基であり、具体的には-(CH
2)
n-である。nは2~7(好ましくは2,3または4)の整数である。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンを好ましく採用し得る。窒素原子を有するモノマーの他の好適例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0068】
窒素原子を有するモノマー(好ましくは、N-ビニル環状アミド等の、窒素原子含有環を有するモノマー)を使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、2重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上であってもよい。一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他の一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
【0069】
いくつかの態様において、上記共重合性モノマーは、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、光架橋性粘着剤の凝集力や架橋(例えば、イソシアネート架橋剤による架橋)の程度を好適に調節し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、光架橋性粘着剤またはその光架橋物の吸水を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。他の一態様では、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば15重量%以下としてもよく、10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。あるいは、上記共重合性モノマーとして、水酸基含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0070】
いくつかの態様において、モノマー成分全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2重量%以下であってよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下(例えば0.1重量%未満)でもよい。粘着剤組成物は、その構成モノマー成分として、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーが用いられていないことをいう。このことは、粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤およびその光架橋物の金属腐食防止性等の観点から有利となり得る。
【0071】
いくつかの態様において、上記共重合性モノマーは、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、光架橋後の剥離強度を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。一態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
【0072】
いくつかの態様において、上記共重合性モノマーは、アルコキシシリル基含有モノマーを含み得る。アルコキシシリル基含有モノマーは、典型的には、一分子内に少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、例えば2つまたは3つ)のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和化合物であり、その具体例は上述のとおりである。上記アルコキシシリル基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルコキシシリル基含有モノマーの使用により、光架橋性粘着剤にシラノール基の縮合反応(シラノール縮合)による架橋構造を導入することができる。
【0073】
アルコキシシリル基含有モノマーを使用する場合における使用量は、特に限定されない。いくつかの態様において、アルコキシシリル基含有モノマーの使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体の例えば0.005重量%以上とすることができ、通常は0.01重量%以上とすることが適当であり、0.03重量%以上としてもよく、0.05重量%以上としてもよい。また、光架橋性粘着剤の表面形状追従性の観点から、アルコキシシリル基含有モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の1.0重量%以下とすることが適当であり、0.5重量%以下であってよく、0.1重量%以下であってもよい。
【0074】
エチレン性不飽和化合物(B)として使用し得る化合物のさらに他の例として、多官能性モノマーが挙げられる。多官能性モノマーを含む粘着剤組成物によると、該組成物を硬化させて光架橋性粘着剤を製造する際に上記多官能性モノマーを反応させることにより、該多官能性モノマーにより架橋された光架橋性粘着剤を得ることができる。
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の、2官能性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、3官能性以上の多官能性モノマー;その他、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等;が挙げられる。なかでも好ましい例として、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
多官能性モノマーを使用する場合における使用量は、特に限定されず、光架橋性粘着剤において好適な特性を発揮する光架橋性粘着剤が形成されるように設定することができる。いくつかの態様において、多官能性モノマーの使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体の5.0重量%未満とすることができる。これにより、光架橋性粘着剤の形成時に(すなわち、光架橋前の段階で)過度の架橋構造が形成されることを回避し、該光架橋性粘着剤の表面形状追従性を高めることができる。上記多官能性モノマーの使用量は、例えば、モノマー成分全体の4.0重量%以下であってよく、3.0重量%以下でもよく、2.0重量%以下でもよく、1.0重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよく、0.3重量%以下でもよい。多官能性モノマーを使用しなくてもよい。また、いくつかの態様において、光架橋性粘着剤に適度な凝集性を付与する観点から、モノマー成分全体に対する多官能モノマーの使用量は、例えば0.001重量%以上であってよく、0.005重量%以上でもよく、0.01重量%以上でもよく、0.03重量%以上でもよい。
【0076】
光架橋性粘着剤の表面形状追従性等の観点から、いくつかの態様において、多官能モノマーとしては2官能性モノマーを好ましく採用し得る。使用する多官能モノマー全体のうち2官能性モノマーの占める割合は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、100重量%でもよい。
【0077】
粘着剤組成物に含まれるポリマー(PB)とエチレン性不飽和化合物(B)との合計量に占めるポリマー(PB)の重量割合は、特に限定されず、該粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤の表面形状追従性と、その光架橋物の耐変形性とが好適にバランスするように設定することができる。いくつかの態様において、上記ポリマー(PB)の重量分率は、例えば1重量%以上であってよく、通常は5重量%以上であることが適当であり、光架橋の効果を高める観点から10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、45重量%以上でもよく、55重量%以上でもよい。また、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性などの観点から、いくつかの態様において、上記合計量に占めるポリマー(PB)の重量割合は、例えば99重量%未満であってよく、95重量%未満でもよく、85重量%未満でもよく、70重量%未満でもよく、50重量%未満でもよく、40重量%未満でもよい。
【0078】
ここに開示される粘着剤組成物において、該粘着剤組成物全体の重量に占める有機溶剤の重量の割合は、例えば30重量%以下であってよく、20重量%以下であることが有利であり、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。いくつかの態様において、上記有機溶剤の重量割合は、3重量%以下でもよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよく、0.1重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよく、実質的に有機溶媒を含有しなくてもよい。粘着剤組成物における有機溶剤の重量割合を抑制することは、該粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤のVOC低減の観点から好ましい。ここに開示される粘着剤組成物は、ポリマー(PB)(A)に加えてエチレン性不飽和化合物(B)を含むので、該エチレン性不飽和化合物(B)をポリマー(PB)(A)の希釈剤として利用し得る。これにより、ある程度以上のMwを有するポリマー(PB)(A)をある程度以上の使用量で含む態様の粘着剤組成物においても、該粘着剤組成物を常温域(例えば20℃~40℃)における塗工性を高めるための有機溶剤を必要としないか、あるいは該有機溶媒の使用量を低減することができる。
【0079】
ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの態様において、該粘着剤組成物は、上記常温域での塗工性等の観点から、粘度(BH型粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃の条件で測定される。以下同じ。)が1000Pa・s以下であることが適当であり、100Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下であることがより好ましい。上記粘着剤組成物の粘度は、例えば30Pa・s以下であってよく、20Pa・s以下でもよく、10Pa・s以下でもよく、5Pa・s以下でもよい。粘着剤組成物の粘度の下限は特に限定されないが、塗工範囲内における粘着剤組成物のハジキや塗工範囲の外縁における粘着剤組成物のはみ出しを抑制する観点から、通常は0.1Pa・s以上であることが適当であり、0.5Pa・s以上でもよく、1Pa・s以上でもよい。
【0080】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、上記エチレン性不飽和化合物(B)として、エチレン性不飽和基を1つ有する化合物(すなわち、単官能性モノマー)(B1)を少なくとも含む。単官能性モノマー(B1)は、上述したエチレン性不飽和化合物(B)の例示のなかから該当する化合物を選択して用いることができる。単官能性モノマー(B1)は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
ポリマー(PB)とエチレン性不飽和化合物(B)との合計量のうち、単官能性モノマー(B1)の重量割合は、例えば1重量%以上であってよく、5重量%以上でもよく、15重量%以上でもよい。いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性などの観点から、上記単官能性モノマー(B1)の重量割合は、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、45重量%以上でもよい。また、上記合計量のうち単官能性モノマー(B1)の重量割合は、例えば99重量%以下であってよく、通常は95重量%以下であることが適当であり、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、55重量%以下でもよく、45重量%以下でもよい。
【0082】
粘着剤組成物が単官能性モノマー(B1)を含む態様において、該単官能性モノマー(B1)の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、例えば-80℃以上250℃以下であり得る。単官能性モノマー(B1)の組成に基づくTgは、該単官能性モノマー(B1)に由来するポリマーと他の成分との相溶性等の観点から、通常、150℃以下であることが好ましく、100℃以下でもよく、70℃以下でもよく、50℃以下でもよく、30℃以下でもよい。いくつかの態様において、
光架橋性粘着剤の表面形状追従性などの観点から、単官能性モノマー(B1)の組成に基づくTgは、0℃未満であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下でもよく、-30℃以下でもよく、-40℃以下でもよい。また光架橋性粘着剤の凝集性や、光架橋後における耐変形性(例えば、被着体への密着耐久性)の観点から、単官能性モノマー(B1)の組成に基づくTgは、通常、-60℃以上であることが有利であり、-54℃以上でもよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上でもよく、-35℃以上でもよく、-25℃以上でもよい。上記Tgは、単官能性モノマー(B1)として使用する化合物およびそれらの使用量比により調節することができる。
【0083】
ポリマー(PB)および単官能性モノマー(B1)を含む粘着剤組成物、該粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤およびその光架橋物において、ポリマー(PB)(A)のTg(以下、「TgA」という。)と単官能性モノマー(B1)のモノマー組成に基づくTg(以下、TgB1」ともいう。)は、TgB1[℃]-TgA[℃]により算出されるTg差[℃](以下、ΔTgともいう。)が、例えば-50℃以上70℃以下の範囲となるように設定され得る。上記Tg差の絶対値が大きすぎないことは、光架橋性粘着剤およびその光架橋物における相溶性の観点から有利となり得る。いくつかの態様において、ΔTgは、例えば-10℃以上であってよく、0℃以上であることが好ましく、7℃以上でもよく、10℃以上でもよく、20℃以上でもよく、30℃以上でもよい。
【0084】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、上記エチレン性不飽和化合物(B)として、エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物(すなわち、多官能性モノマー)(B2)を少なくとも含む。多官能性モノマー(B2)は、上述した多官能性モノマーの例示のなかから、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。多官能性モノマー(B2)の使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体に占める多官能性モノマーの割合と同様に設定することができる。
【0085】
エチレン性不飽和化合物(B)として単官能性モノマー(B1)と多官能性モノマー(B2)とを併用する態様において、エチレン性不飽和化合物(B)に占める単官能性モノマー(B1)の重量割合は、例えば1重量%以上であってよく、通常は25重量%以上であることが適当であり、50重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、99重量%以上でもよい。また、エチレン性不飽和化合物(B)にに占める単官能性モノマー(B1)の重量割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、99.8重量%以下でもよい。
【0086】
ここに開示される粘着剤組成物において、エチレン性不飽和化合物(B)は、部分重合物の形態で含まれていてもよく、その全量が未反応モノマーの形態で含まれていてもよい。好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、エチレン性不飽和化合物(B)を部分重合物の形態で含む。エチレン性不飽和化合物(B)を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、例えば:紫外線等の光を照射して行う光重合;β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;:溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合;等の、従来公知の各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
【0087】
上記部分重合物におけるエチレン性不飽和化合物(B)の重合転化率は、特に限定されない。粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、上記重合転化率は、通常、凡そ50重量%以下であることが適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)であることが好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、通常は凡そ5重量%以上とすることが適当である。
【0088】
エチレン性不飽和化合物(B)の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるエチレン性不飽和化合物(B)の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、エチレン性不飽和化合物(B)の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるエチレン性不飽和化合物(B)のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物と、残りのエチレン性不飽和化合物(B)またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
【0089】
上記部分重合物は、例えば、エチレン性不飽和モノマーに紫外線を照射することにより調製することができる。上記部分重合物の調製をポリマー(PB)の存在下で行う場合、エチレン性不飽和基を反応させ、かつベンゾフェノン構造が光励起されないように紫外線の照射条件を設定することにより、エチレン性不飽和モノマーの部分重合物とポリマー(PB)とを含む粘着剤組成物を得ることができる。光源としては、上述したブラックライトやUV-LEDランプ等の、波長300nm未満の成分を含まないか該波長成分が少ない紫外線を照射可能な光源を好ましく採用し得る。
【0090】
また、あらかじめエチレン性不飽和化合物(B)の部分重合物を調製した後に、該部分重合物とポリマー(PB)とを混合して粘着剤組成物を調製してもよい。ベンゾフェノン構造含有成分の不存在下でエチレン性不飽和モノマーに紫外線を照射することによりその部分重合物を調製する場合、該紫外線源としては、ベンゾフェノン構造を励起しない光源および励起する光源のいずれも使用可能である。
【0091】
エチレン性不飽和化合物(B)の部分重合物の調製にあたっては、光開始剤を用いることによりエチレン性不飽和基の反応を促進し得る。光開始剤としては、ケタール系光開始剤、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾインエーテル系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤、α-ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤等を用いることができる。波長300nm以上の光(例えば波長300nm以上500nm以下の光)を吸収してラジカルを発生する光開始剤を好ましく採用し得る。光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0092】
〔光開始剤(C)〕
B型B層の形成に用いられる粘着剤組成物には、光硬化性の向上または付与等を目的として、必要に応じて光開始剤(C)を含有させることができる。光開始剤としては、ケタール系光開始剤、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾインエーテル系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤、α-ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤等を用いることができる。光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0093】
ケタール系光開始剤の具体例には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が含まれる。
アセトフェノン系光開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン等が含まれる。
ベンゾインエーテル系光開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキサイド系光開始剤の具体例には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。
α-ケトール系光開始剤の具体例には、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光開始剤の具体例には、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光開始剤の具体例には、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。
ベンゾフェノン系光開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
チオキサントン系光開始剤の具体例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0094】
粘着剤組成物に含有させる光開始剤(C)としては、波長300nm以上の光(例えば波長300nm以上500nm以下の光)を吸収してラジカルを発生する光開始剤を好ましく採用し得る。光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、分子内にリン元素を含まない光開始剤を好ましく採用し得る。ここに開示される粘着剤組成物は、分子内にリン元素を含む光開始剤を実質的に含有しないものであり得る。
【0095】
粘着剤組成物における光開始剤の含有量は、特に限定されず、所望の効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、光開始剤の含有量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.005重量部以上とすることができ、通常は0.01重量部以上とすることが適当であり、0.05重量部以上とすることが好ましく、0.10重量部以上としてもよく、0.15重量部以上としてもよく、0.20重量部以上としてもよい。光開始剤の含有量の増大により、粘着剤組成物の光硬化性が向上する。また、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対する光開始剤の含有量は、通常、5重量部以下とすることが適当であり、2重量部以下とすることが好ましく、1重量部以下としてもよく、0.7重量部以下としてもよく、0.5重量部以下としてもよい。光開始剤の含有量が多すぎないことは、粘着剤組成物のゲル化抑制等の観点から有利となり得る。
【0096】
〔架橋剤〕
粘着剤組成物には、必要に応じて、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等の、公知の架橋剤を配合し得る。架橋剤として過酸化物を用いてもよい。これらの架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤を含む粘着剤組成物から形成された光架橋性粘着剤は、該架橋剤を主に架橋反応後の形態で含むことが好ましい。架橋剤の使用により、光架橋性粘着剤の凝集力等を適切に調節することができる。
B型B層を形成するための粘着剤組成物に用いられ得る架橋剤の具体例は、後述するD型B層を形成するための粘着剤組成物に用いられ得る架橋剤の具体例と概ね同様であるので、重複する説明は省略する。
【0097】
架橋剤を使用する場合における使用量(2種以上の架橋剤を使用する場合にはそれらの合計量)は、特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下であることが適当であり、3重量部以下であってもよく、1重量部以下でもよく、0.50重量部以下でもよく、0.30重量部以下でもよく、0.20重量部以下でもよい。架橋剤の使用量の下限は特に限定されず、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して0重量部より多い量であればよい。いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば0.001重量部以上であってよく、0.01重量部以上でもよく、0.05重量部以上でもよく、0.10重量部以上でもよい。
【0098】
〔連鎖移動剤〕
粘着剤組成物は、従来公知の各種の連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、α-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることができる。ここに開示される技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0099】
(アクリル系オリゴマー)
B層を構成する光架橋性粘着剤には、凝集力の向上や、隣接する面(隣接するサブ粘着剤層(例えばA層)、基材付き粘着シートにおける基材表面、等であり得る。)との接着性向上等の観点から、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。アクリル系オリゴマーを含むB層は、該アクリル系オリゴマーを含む粘着剤組成物を用いて好ましく形成することができる。B型B層に用いられるアクリル系オリゴマーとしては、上述したポリマー(PB)のTgに対して、より高いTgを有するものを好ましく採用し得る。
【0100】
上記アクリル系オリゴマーのTgは特に限定されず、例えば約20℃以上300℃以下であり得る。上記Tgは、例えば約30℃以上であってよく、約40℃以上でもよく、約60℃以上でもよく、約80℃以上または約100℃以上でもよい。アクリル系オリゴマーのTgが高くなると、凝集力を向上させる効果は概して高くなる傾向にある。また、相溶性等の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約250℃以下であってよく、約200℃以下でもよく、約180℃以下または約150℃以下でもよい。なお、アクリル系オリゴマーのTgは、上述したポリマー(PB)のガラス転移温度と同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
【0101】
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されず、例えば凡そ1000以上であってよく、通常は凡そ1500以上であることが適当であり、凡そ2000以上でもよく、凡そ3000以上でもよい。また、アクリル系オリゴマーのMwは、例えば凡そ30000未満であってよく、通常は凡そ10000未満であることが適当であり、凡そ7000未満でもよく、凡そ5000未満でもよい。Mwが上記範囲内にあると、B層の凝集性や隣接する面との接着性を向上させる効果が好適に発揮されやすい。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、例えば、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定することができる。
【0102】
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上述した各種の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0104】
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的に1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。モノマー成分が脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルとを含む場合、それらの重量比は特に限定されない。いくつかの態様において、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの重量比は、例えば10/90以上、20/80以上または30/70以上とすることができ、また、90/10以下、80/20以下または70/30以下とすることができる。
【0105】
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上とすることができ、また、例えば15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下とすることができる。アクリル系オリゴマーは、官能基含有モノマーが用いられていないものであってもよい。
【0106】
好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、DCPMAとMMAの共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体等を挙げることができる。
【0107】
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、後述するポリマー(PD)の説明において、アクリル系一次ポリマーを得るための重合に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
【0108】
B層にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、特に限定されず、所望の効果が得られるように設定することができる。いくつかの態様において、アクリル系オリゴマーの使用量は、B層を構成するモノマー成分全体の例えば0.01重量%以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量%以上としてもよく、0.1重量%以上としてもよく、0.2重量%以上としてもよい。また、粘着剤層の透明性等の観点から、アクリル系オリゴマーの使用量は、通常、B層を構成するモノマー成分全体の50重量%未満とすることが適当であり、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%以下であり、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく1重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよい。アクリル系オリゴマーを使用しなくてもよい。
【0109】
B層を形成するための粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系、石油系、テルペン系、フェノール系、ケトン系等の粘着付与樹脂)、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、老化防止剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を、その他の任意成分として含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。
粘着剤層の透明性の観点から、B層または該B層の形成に用いられる粘着剤組成物における上記粘着付与樹脂の含有量は、該B層を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば10重量部未満、さらには5重量部未満とすることができる。上記粘着付与樹脂の含有量は、1重量部未満(例えば0.5重量部未満)であってもよく、0.1重量部未満(0重量部以上0.1重量部未満)であってもよい。B層または該B層を形成するための粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含まないものであり得る。
【0110】
上記粘着剤組成物は、該粘着剤組成物を硬化させることにより、ポリマー(PB)を含有する光架橋性粘着剤を形成し得るように構成されている。例えば、上記粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、活性エネルギー線の照射、乾燥(例えば加熱乾燥)、架橋(例えば、上述した架橋剤の反応による架橋)、冷却(例えば、ホットメルト塗工した粘着剤組成物の冷却)等の硬化処理を適宜施すことにより、上記粘着剤組成物の硬化層としての粘着剤層を形成することができる。2種以上の硬化処理を行う場合、これらは、同時に、または段階的に行うことができる。
ポリマー(PB)とエチレン性不飽和化合物(B)とを含む粘着剤組成物では、上記硬化は、該粘着剤組成物に含まれるエチレン性不飽和基を反応させ、かつ該粘着剤組成物に含まれるベンゾフェノン構造を残存させるように行われることが好ましい。上記硬化は、活性エネルギー線の照射により好ましく行われ得る。粘着剤組成物を硬化させて光架橋性粘着剤を形成するための光源としては、上述したブラックライト、UV-LEDランプ等の、波長300nm未満の成分を含まないか該波長成分が少ない紫外線を照射可能な光源を好ましく採用し得る。
いくつかの態様において、粘着剤組成物は、上記エチレン性不飽和化合物(B)がエチレン性不飽和BPを含まない組成であり得る。このような組成の粘着剤組成物によると、ポリマー(PB)と、エチレン性不飽和化合物(B)に由来するポリマー(E)と、を含み、上記ポリマー(E)がポリマー(PNB)である光架橋性粘着剤が製造され得る。
【0111】
この明細書によると、ベンゾフェノン構造により光架橋可能な光架橋性粘着剤を製造する方法が提供される。その製造方法は、エチレン性不飽和基とベンゾフェノン構造とを含む粘着剤組成物を用意することと、上記粘着剤組成物に活性エネルギー線(好ましくは紫外線)を照射することと、を包含する。上記粘着剤組成物は、光開始剤を含んでいてもよい。粘着剤組成物を硬化させるための活性エネルギー線の照射は、エチレン性不飽和基を反応させ、かつベンゾフェノン構造を残存させるように行われることが好ましい。上記粘着剤組成物としては、ポリマー(PB)とエチレン性不飽和化合物(B)とを含む粘着剤組成物が好ましく用いられ得る。上記光架橋性粘着剤製造方法は、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて好ましく実施することができる。粘着剤組成物を硬化させて光架橋性粘着剤を形成するための光源としては、上述したブラックライト、UV-LEDランプ等の、波長300nm未満の成分を含まないか該波長成分が少ない紫外線を照射可能な光源を好ましく採用し得る。
【0112】
(2)ポリマー(PD)を含むB層
光架橋性ポリマーを含むB層の他の一好適例として、該光架橋性ポリマーとして炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)を含有する光架橋性粘着剤からなるB層(D型B層)が挙げられる。ポリマー(PD)は、エチレン性不飽和基を実質的に含有しないポリマーであることが好ましい。ポリマー(PD)は、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すゴム状ポリマーであることが好ましい。いくつかの態様において、D型B層は、ポリマー(PD)をベースポリマーとして含む光架橋性のサブ粘着剤層であり得る。
【0113】
炭素-炭素二重結合は、工業的に適用され得る通常の保管環境では空気中の湿気や酸度等と反応せず化学的に安定である。その一方で、例えばD型B層に活性エネルギー線を照射することにより、ポリマー(PD)の有する炭素-炭素二重結合を反応させて架橋構造を形成することができる。活性エネルギー線として紫外線を利用する場合、D型B層には、後述する光開始剤を含有させることが好ましい。
【0114】
ポリマー(PD)の有する炭素-炭素二重結合の形態は特に限定されない。いくつかの好ましい態様において、ポリマー(PD)は、炭素-炭素二重結合をエチレン性不飽和基の形態で有する。ポリマー(PD)は、炭素-炭素二重結合を側鎖に有するポリマーであってもよく、主鎖に有するポリマーであってもよい。ここで、炭素-炭素二重結合を主鎖に有するとは、ポリマー(PD)の主鎖骨格中に炭素-炭素二重結合が存在すること、主鎖末端に炭素-炭素二重結合が存在することを包含する。ポリマー(PD)に炭素-炭素二重結合を含ませる方法は特に限定されず、当業者に公知の方法のなかから適切な方法が選択され得る。炭素-炭素二重結合の反応性の観点から、炭素-炭素二重結合を側鎖に有するポリマー(PD)を好ましく採用し得る。
なお、この明細書においてポリマーの主鎖とは、当該ポリマーの骨格をなす鎖状構造のことを指すものとする。また、ポリマーの側鎖とは、上記主鎖と結合する基(ペンダント、側基)や、ペンダントとみなされ得る分子鎖を指すものとする。
【0115】
ポリマー(PD)としては、特に限定されず、粘着剤層の特性等を考慮して適当なポリマーを選択して用いることができる。ポリマー(PD)としては、炭素-炭素二重結合を含まないか炭素-炭素二重結合の含有量が目的物に比べて少ないポリマー(一次ポリマー)に対して、炭素-炭素二重結合を化学修飾等の方法によって導入したもの(二次ポリマー)が好ましく用いられ得る。
【0116】
上記炭素-炭素二重結合の一次ポリマーへの導入方法の具体例としては、官能基(以下「官能基A」ともいう。)を有するモノマーが共重合された一次ポリマーを用意し、該一次ポリマーに、上記官能基Aと反応し得る官能基(以下「官能基B」ともいう。)と炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合が消失しないように反応させる方法が挙げられる。官能基Aと官能基Bとの反応は、縮合反応、付加反応等の、ラジカル発生を伴わない反応であることが好ましい。
官能基Aと官能基Bとの組合せの例としては、カルボキシ基とエポキシ基との組合せ、カルボキシ基とアジリジル基との組合せ、水酸基とイソシアネート基との組合せ等が挙げられる。なかでも、反応追跡性の観点から、水酸基とイソシアネート基との組合せが好ましい。また、上記官能基A,Bの組合せは、炭素-炭素二重結合を有するポリマーが得られる組合せであれば、上記組合せ中における一方の官能基を官能基Aとし、他方を官能基Bとしてもよく、あるいは上記一方の官能基を官能基Bとし、上記他方を官能基Aとしてもよい。例えば、水酸基とイソシアネート基との組合せで説明すると、官能基Aは水酸基であってもよく(その場合、官能基Bがイソシアネート基となる。)、イソシアネート基であってもよい(その場合、官能基Bが水酸基となる。)。なかでも、一次ポリマーが水酸基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する組合せが好ましい。この組合せは、一次ポリマーがアクリル系ポリマーである場合に特に好ましい。
【0117】
また、上記一次ポリマーがビニルアルコール系ポリマー(典型的にはポリビニルアルコール)の場合には、該ビニルアルコール系ポリマー(典型的には、炭素-炭素二重結合非含有のビニルアルコール系ポリマー)に、ビニルブロミド等のハロゲン化ビニルやアリルブロミド等のハロゲン化アリルを反応させる方法も好適例として挙げられる。この方法では、上記反応は適当な塩基性条件で行われ、該反応により、側鎖にビニル基を含有するビニルアルコール系ポリマーが得られる。また例えば、特許第4502363号公報に開示されるような重合体を産生する微生物を利用して、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを調製する方法を採用してもよい。この方法における微生物種、微生物培養条件等の諸条件は上記特許公報に記載の条件を採用するか、当業者の技術常識の範囲内で適宜改変するなどして設定すればよい。
【0118】
上記官能基Aのモル(MA)と官能基Bのモル(MB)とのモル比(MA/MB)は、例えば0.2以上とすることができ、0.5以上でもよく、0.7以上でもよく、1.0以上でもよい。官能基Bの官能基Aとの接触機会を増やして反応性を高める観点から、通常は、モル比(MA/MB)を1超とすることが好ましい。いくつかの態様において、モル比(MA/MB)は、例えば5超であってよく、10超でもよく、15超でもよく、20超でもよい。モル比(MA/MB)の上限は、特に制限されないが、例えば100以下であってよく、50以下であってもよい。
【0119】
官能基Bと炭素-炭素二重結合とを有する化合物(以下、「官能基B含有不飽和化合物」ともいう。)の使用量は、上述のモル比(MA/MB)を満たす範囲で、官能基Aを有する一次ポリマー100重量部に対して、例えば0.01重量部以上であってよく、0.05重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよく、0.2重量部以上でもよく、0.3重量部以上でもよい。官能基B含有不飽和化合物の使用量の増大により、D型B層を光架橋させることによる耐変形性向上効果は大きくなる傾向にある。また、光架橋後のB層の光学特性(透明性の向上、光学歪の抑制等)の観点から、官能基Aを有する一次ポリマー100重量部に対する官能基B含有不飽和化合物の使用量は、通常、20重量部未満とすることが適当であり、15重量部未満とすることが有利であり、10重量部未満とすることが好ましく、7重量部未満とすることがより好ましい。いくつかの好ましい態様において、官能基B含有不飽和化合物の使用量は、例えば5重量部未満であってよく、3重量部未満でもよく、2重量部未満でもよく、1重量部未満でもよい。例えば、一次ポリマーとして後述のアクリル系ポリマーを用いる構成に対して、上述のモル比(MA/MB)や、官能基B含有不飽和化合物の使用量を好ましく適用することができる。
【0120】
また、炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、例えばジエン系ポリマー(典型的には共役ジエン系ポリマー)であってもよい。ジエン系ポリマー(典型的には共役ジエン系ポリマー)は、典型的にはジエン(典型的には共役ジエン)を重合または共重合して得られる重合体である。ジエン系ポリマー(典型的には共役ジエン系ポリマー)としては、ポリブタジエン、スチレンブタジエン共重合体等のブタジエン系ポリマー;ポリイソプレン、スチレンイソプレン共重合体等のイソプレン系ポリマー;ポリクロロプレン等のクロロプレン系ポリマー;等が挙げられる。
【0121】
ポリマー(PD)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。光架橋性粘着剤の凝集性や、該光架橋性粘着剤を有する粘着シートの取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、ポリマー(PB)のMwは、凡そ10×104以上であることが適当であり、好ましくは凡そ20×104以上、より好ましくは凡そ30×104以上である。一方、粘着シートを構成する粘着剤層(すなわち、光架橋前のB層を含む多層構造の粘着剤層)の表面形状追従性の観点から、上記Mwを凡そ500×104以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ100×104以下、より好ましくは凡そ70×104以下である。
【0122】
ここに開示される技術において、ポリマー(PD)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。粘着剤層の表面形状追従性の観点から、ポリマー(PD)のTgは、通常、0℃未満であることが適当であり、-10℃未満であることが好ましく、-20℃未満であることが好ましい。いくつかの態様において、ポリマー(PD)のTgは、-25℃未満でもよく、-30℃未満でもよい。また、ポリマー(PD)のTgは、典型的には-80℃以上であり、例えば-70℃以上であってよく、-60℃以上でもよく、-55℃以上でもよい。また光架橋性粘着剤の凝集性や、光架橋後における耐変形性(例えば、被着体への密着耐久性)の観点から、いくつかの態様において、ポリマー(PD)のTgは、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-45℃以上であり、-40℃以上でもよく、-38℃以上でもよく、-35℃以上でもよい。
なお、一次ポリマーに炭素-炭素結合を導入して得られたポリマー(PD)では、該一次ポリマーが上述のTgを有することが好ましい。
【0123】
D型B層におけるポリマー(PD)の含有量は、光架橋前および光架橋後において所望の性能が発揮されるように設定すればよく、特定の範囲に限定されない。いくつかの態様において、ポリマー(PD)の含有量は、D型B層中、例えば凡そ10重量%以上であってよく、通常は凡そ50重量%以上であることが適当であり、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上でもよく、好ましくは凡そ95重量%以上でもよく、凡そ97重量%以上でもよく、凡そ99重量%以上(例えば99~100重量%)でもよい。
【0124】
(ポリマー(PD)としてのアクリル系ポリマー)
いくつかの態様において、ポリマー(PD)は、光架橋によるB層の弾性率上昇性や光学特性の観点から、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーであることが好ましい。ポリマー(PD)の好適例として、該ポリマー(PD)を構成するモノマー成分の50重量%超(好ましくは65重量%超、例えば75重量%超)がアクリル系モノマーであるアクリル系ポリマーが挙げられる。上記アクリル系ポリマーの好適例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性を有する他のモノマー(共重合性モノマー)をさらに含み得るモノマー原料の重合物およびその変性物(例えば、一次ポリマーとしての上記重合体に、炭素-炭素二重結合を化学修飾等の方法によって導入した二次ポリマー)が挙げられる。
【0125】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分として用いられ得るものとして例示した(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択し得る。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸イソノニル等が挙げられる。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他の具体例としては、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
ポリマー(PD)を構成するモノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、凡そ40重量%以上であることが好ましい。いくつかの態様において、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以上であってよく、55重量%以上でもよく、60重量%以上でもよい。また、B層の凝集性を高める観点から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、通常、99.5重量%以下とすることが適当であり、95重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下でもよい。
【0127】
ポリマー(PD)を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合性を有する他のモノマー(共重合性モノマー)をさらに含み得る。共重合性モノマーとしては、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分として用いられ得るものとして例示したものから選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0128】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量(すなわち、上記モノマー成分全体における共重合性モノマーの重量分率)は、モノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。いくつかの態様において、共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、30重量%以上でもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の60重量%以下とすることが適当であり、50重量%以下とすることが好ましく、45重量%以下としてもよい。
【0129】
いくつかの態様において、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして窒素原子を有するモノマーを含み得る。窒素原子を有するモノマーの一好適例として、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、ポリマー(PB)の調製に用いられ得る材料として上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、上記一般式(1)で表わされるN-ビニル環状アミドを用いることができる。なかでもN-ビニル-2-ピロリドンが好ましい。
【0130】
窒素原子を有するモノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えば、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、2重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上であってもよい。一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他の一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
【0131】
いくつかの態様において、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、B層を構成する光架橋性粘着剤の凝集力や架橋(例えば、イソシアネート架橋剤による架橋)の程度を好適に調節し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えば、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、光架橋性粘着剤またはその光架橋物の吸水を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。他の一態様では、水酸基含有モノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば15重量%以下としてもよく、10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。あるいは、上記共重合性モノマーとして、水酸基含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0132】
いくつかの態様において、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2重量%以下であってよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下(例えば0.1重量%未満)でもよい。上記モノマー成は、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーが用いられていないことをいう。このことは、粘着剤組成物から形成される光架橋性粘着剤およびその光架橋物の金属腐食防止性等の観点から有利となり得る。
【0133】
いくつかの態様において、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、光架橋後の剥離強度を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、ポリマー(PB)の調製に用いられ得る材料として上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。一態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、上記モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
【0134】
いくつかの態様において、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分は、上記共重合性モノマーとして、アルコキシシリル基含有モノマーを含み得る。アルコキシシリル基含有モノマーは、典型的には、一分子内に少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、例えば2つまたは3つ)のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和化合物であり、その具体例は上述のとおりである。上記アルコキシシリル基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルコキシシリル基含有モノマーの使用により、光架橋性粘着剤にシラノール基の縮合反応(シラノール縮合)による架橋構造を導入することができる。
【0135】
アルコキシシリル基含有モノマーを使用する場合における使用量は、特に限定されない。いくつかの態様において、アルコキシシリル基含有モノマーの使用量は、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の例えば0.005重量%以上とすることができ、通常は0.01重量%以上とすることが適当であり、0.03重量%以上としてもよく、0.05重量%以上としてもよい。また、ここに開示される粘着シートの表面形状追従性の観点から、アルコキシシリル基含有モノマーの使用量は、通常、上記モノマー成分全体の1.0重量%以下とすることが適当であり、0.5重量%以下であってよく、0.1重量%以下であってもよい。
【0136】
ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分は、多官能性モノマーを含んでいてもよい。多官能性モノマーとしては、ポリマー(PB)の調製に用いられ得る材料として上記で例示したもの等を用いることができる。粘着シートを構成する粘着剤層の表面形状追従性等の観点から、いくつかの態様において、多官能モノマーとしては2官能性モノマーを好ましく採用し得る。使用する多官能モノマー全体のうち2官能性モノマーの占める割合は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、100重量%でもよい。
多官能性モノマーを使用する場合における使用量は、特に限定されず、例えばポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の0.001重量%以上とすることができる。D型B層を形成するための粘着剤組成物の製造容易性等の観点から、上記多官能性モノマーの使用量は、通常、ポリマー(PD)の調製に用いられるモノマー成分全体の1重量%未満とすることが適当であり、0.5重量%未満とすることが好ましい。多官能性モノマーを使用しなくてもよい。
【0137】
(アクリル系一次ポリマー)
炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーは、上述のような組成のモノマー成分を重合して得られたアクリル系一次ポリマーに炭素-炭素二重結合を導入して得られた二次ポリマーであり得る。
上記モノマー組成を有するアクリル系一次ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用することができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。溶液重合に用いる溶媒としては、トルエンや酢酸エチルなど公知または慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~120℃(典型的には40℃~80℃)程度とすることができる。
【0138】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。重合開始剤の一好適例としてアゾ系重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005~1重量部(典型的には0.01~1重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0139】
重合にあたっては、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、B型B層を得るための粘着剤組成物の任意成分として例示した各種の連鎖移動剤から選択される一種または二種以上を用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、所望のMwを有する結果物が得られるように設定することができ、特に限定されないが、通常、重合に供されるモノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることが適当であり、凡そ0.01~0.2重量部とすることが好ましい。連鎖移動剤を使用しなくてもよい。
【0140】
アクリル系一次ポリマーのガラス転移温度(Tg)は特に限定されない。粘着剤層の表面形状追従性の観点から、アクリル系一次ポリマーのTgは、通常、30℃未満であることが適当であり、20℃未満であることが好ましく、10℃未満でもよく、5℃未満でもよい。いくつかの態様において、アクリル系一次ポリマーのTgは、0℃未満でもよく、-10℃未満でもよく、-20℃未満でもよく、-25℃未満でもよく、-30℃未満でもよい。また、アクリル系一次ポリマーのTgは、典型的には-80℃以上であり、例えば-70℃以上であってよく、-60℃以上でもよく、-55℃以上でもよい。また光架橋性粘着剤の凝集性や、光架橋後における耐変形性(例えば、被着体への密着耐久性)の観点から、いくつかの態様において、アクリル系一次ポリマーのTgは、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-45℃以上であり、-40℃以上でもよく、-38℃以上でもよく、-35℃以上でもよい。
【0141】
アクリル系一次ポリマーに炭素-炭素二重結合を導入する方法は特に限定されない。例えば、共重合により官能基Aが導入されたアクリル系一次ポリマーと、該官能基Aと反応し得る官能基(官能基B)と炭素-炭素二重結合とを有する化合物(官能基B含有不飽和化合物)とを、炭素-炭素二重結合が消失しないように反応させる方法を好ましく採用することができる。官能基Aと官能基Bとの組合せの例としては、カルボキシ基とエポキシ基との組合せ、カルボキシ基とアジリジル基との組合せ、水酸基とイソシアネート基との組合せ等が挙げられる。なかでも、反応追跡性の観点から、水酸基とイソシアネート基との組合せが好ましい。ポリマー設計等の観点から、アクリル系一次ポリマーが水酸基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する組合せが特に好ましい。
【0142】
上記炭素-炭素二重結合を有する化合物は、上述のように、官能基Aと反応し得る官能基Bを有し得る。そのような化合物の好適例として、例えば、アクリル系ポリマーの重合に用いられ得る共重合性モノマーとして例示したイソシアネート基含有モノマー(イソシアネート基含有化合物)が挙げられる。なかでも、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基とアクリル系一次ポリマーの水酸基とが反応して結合(典型的にはウレタン結合)することにより、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーが好適に実現される。
【0143】
イソシアネート基含有モノマーの使用量は、上記官能基Aとしての水酸基との反応性の観点から、上述のモル比(MA/MB)を満たす範囲で適切に設定され得る。例えば、アクリル系一次ポリマー100重量部に対するイソシアネート基含有モノマーの使用量は、例えば0.01重量部以上であってよく、0.05重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよく、0.2重量部以上でもよく、0.3重量部以上でもよい。イソシアネート基含有モノマーの使用量の使用量の増大により、D型B層を光架橋させることによる耐変形性向上効果は大きくなる傾向にある。また、光架橋後のB層の光学特性(透明性の向上、光学歪の抑制等)の観点から、アクリル系一次ポリマー100重量部に対するイソシアネート基含有モノマーの使用量は、通常、20重量部未満とすることが適当であり、15重量部未満とすることが有利であり、10重量部未満とすることが好ましく、7重量部未満とすることがより好ましい。いくつかの好ましい態様において、イソシアネート基含有モノマーの使用量は、例えば5重量部未満であってよく、3重量部未満でもよく、2重量部未満でもよく、1重量部未満でもよい。
【0144】
また、イソシアネート基含有モノマーの使用量は、D型B層を構成する全モノマー成分中、凡そ0.01重量%以上であってよく、0.05重量%以上でもよく、0.1重量%以上でもよく、0.2重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよい。イソシアネート基含有モノマーの使用量は、D型B層を構成する全モノマー成分中、20重量%未満とすることが適当であり、15重量%未満とすることが有利であり、10重量%未満とすることが好ましく、7重量%未満とすることがより好ましい。いくつかの好ましい態様において、イソシアネート基含有モノマーの使用量は、例えば5重量%未満であってよく、3重量%未満でもよく、2重量%未満でもよく、1重量%未満でもよい。
【0145】
(架橋剤)
粘着剤組成物には、必要に応じて、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等の、公知の架橋剤を配合し得る。架橋剤として過酸化物を用いてもよい。これらの架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤を含む粘着剤組成物から形成された光架橋性粘着剤は、該架橋剤を主に架橋反応後の形態で含むことが好ましい。架橋剤の使用により、光架橋性粘着剤の凝集力等を適切に調節することができる。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能な架橋剤の使用が好ましい。
【0146】
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。市販品としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名「タケネートD-110N」)等のイソシアネート付加物等を例示することができる。水分散型の粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なイソシアネート系架橋剤の使用が好ましい。例えば、水溶性、水分散性または自己乳化型のイソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート基がブロックされた、いわゆるブロックドイソシアネート型のイソシアネート系架橋剤を好ましく使用し得る。
【0147】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-X」、「TETRAD-C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
【0148】
オキサゾリン系架橋剤としては、1分子内に1個以上のオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用することができる。
アジリジン系架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオネート)]等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。
【0149】
いくつかの態様において、架橋剤として過酸化物を用いてもよい。過酸化物としては、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる過酸化物として、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。なお、上記重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能である。その場合は過酸化物の残存量を定量して、過酸化物の割合が所定量に満たない場合には、必要に応じて、所定量になるように過酸化物を添加するとよい。過酸化物の定量は、特許4971517号公報に記載の方法により行うことができる。
【0150】
架橋剤を使用する場合における使用量(2種以上の架橋剤を使用する場合にはそれらの合計量)は、特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下であることが適当であり、3重量部以下であってもよく、1重量部以下でもよく、0.50重量部以下でもよく、0.30重量部以下でもよく、0.20重量部以下でもよい。架橋剤の使用量の下限は特に限定されず、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して0重量部より多い量であればよい。いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば0.001重量部以上であってよく、0.01重量部以上でもよく、0.05重量部以上でもよく、0.10重量部以上でもよい。
【0151】
(光開始剤)
D型B層には、炭素-炭素二重結合による架橋構造を紫外線照射によって効率よく形成させること等を目的として、光開始剤を含有させることができる。光開始剤としては、上述のようなケタール系光開始剤、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾインエーテル系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤、α-ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤等を用いることができる。光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0152】
いくつかの態様において、D型B層に含有させる光開始剤としては、分子中に水酸基を有するものを好ましく採用し得る。そのような水酸基含有光開始剤としては、上記光開始剤のなかから水酸基を有するものを好ましく用いることができる。例えば、ベンゾフェノン誘導体やアルキルフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体が好適例として挙げられる。
ベンゾフェノン誘導体としては、例えば、o-アクリルオキシベンゾフェノン、p-アクリルオキシベンゾフェノン、o-メタクリルオキシベンゾフェノン、p-メタクリルオキシベンゾフェノン、p-(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノンが挙げられる。また、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,2-エタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,8-オクタンジオールモノ(メタ)アクリラート等のアクリラートのベンゾフェノン-4-カルボン酸エステル等も用いることが可能である。アルキルフェノン誘導体としては、例えば、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン誘導体としては、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン等が挙げられる。上記光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、硬化速度や厚膜硬化性に優れるという理由から、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル〕フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが好ましい。
【0153】
好適例として挙げられるアルキルフェノン系光開始剤としては、ベンジルケタール系光開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤(典型的にはα-ヒドロキシアルキルフェノン)、ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤(典型的にはα-ヒドロキシアセトフェノン)、アミノアルキルフェノン系光開始剤(典型的にはα-アミノアルキルフェノン)が例示される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤、アミノアルキルフェノン系光開始剤が好ましい。ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤の具体例としては、上述の2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンが挙げられ、アミノアルキルフェノン系光開始剤の具体例としては、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4‐モルホリノフェニル)-1-ブタノンが挙げられる。
他の好ましい例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が挙げられる。
また、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光開始剤も好ましく用いられ得る。
【0154】
D型B層が光開始剤を含む場合、該D型B層における光開始剤の含有量は、特に限定されず、所望の効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、光開始剤の含有量は、D型B層を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.005重量部以上とすることができ、通常は0.01重量部以上とすることが適当であり、0.05重量部以上とすることが好ましく、0.10重量部以上としてもよく、0.15重量部以上としてもよく、0.20重量部以上としてもよい。光開始剤の含有量の増大により、D型B層の光硬化性が向上する。また、D型B層を構成するモノマー成分100重量部に対する光開始剤の含有量は、通常、5重量部以下とすることが適当であり、2重量部以下とすることが好ましく、1重量部以下としてもよく、0.7重量部以下としてもよく、0.5重量部以下としてもよい。光開始剤の含有量が多すぎないことは、D型B層を有する粘着シートの保存安定性(例えば、使用前の粘着シートを保存することによる性能変化を抑制する性能)の観点から好ましい。
【0155】
(ラジカル捕捉剤)
D型B層には、保存安定性の観点から、酸化防止剤等のラジカル捕捉剤を含ませ得る。ラジカル捕捉剤は、文字どおり粘着剤層中のラジカルを捕捉する機能を発揮する剤であるため、紫外線照射処理前の状態において、D型B層中に存在する炭素-炭素二重結合にラジカルが付加することを阻害し得る。ここに開示されるラジカル捕捉剤の概念には、老化防止剤や光安定剤が含まれ得るが、その典型例は酸化防止剤である。上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系(フォスファイト系)酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等の、従来公知の各種酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0156】
ここに開示される技術は、D型B層が炭素-炭素二重結合を有するポリマー(PD)および光開始剤を含む態様で実施され得る。この態様では、光架橋による耐変形性の向上を円滑に実現する観点から、D型B層中のラジカル捕捉剤の含有量を制限することが好ましい。D型B層中におけるラジカル捕捉剤(典型的には酸化防止剤)の含有量は、凡そ3重量%以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以下、より好ましくは凡そ0.5重量%以下、さらに好ましくは凡そ0.3重量%以下(典型的には0.1重量%以下)である。D型B層はラジカル捕捉剤(典型的には酸化防止剤)を含まなくてもよい。
【0157】
(その他の任意成分)
D型B層を形成するための粘着剤組成物には、必要に応じて、上述したアクリル系オリゴマーを含ませることができる。
また、D型B層を形成するための粘着剤組成物は、粘着付与樹脂、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を、その他の任意成分として含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。
【0158】
(3)せん断貯蔵弾性率
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層のB層を構成する光架橋性粘着剤は、30℃におけるせん断貯蔵弾性率Ga’[kPa]が1kPa超であることが好ましい。以下、上記せん断貯蔵弾性率Ga’を「光架橋前室温弾性率Ga’」または単に「室温弾性率Ga’」ということがある。光架橋性粘着剤の凝集性や該光架橋性粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートの取扱い性(例えば加工性)等の観点から、室温弾性率Ga’は、5kPa超であることが好ましく、10kPa超であることがより好ましく、15kPa超でもよい。また、被着体の表面形状に対する追従性の観点から、室温弾性率Ga’は、通常、500kPa以下であることが適当であり、200kPa以下であることが好ましく、100kPa以下でもよい。いくつかの態様において、室温弾性率Ga’は、50kPa未満でもよく、30kPa未満でもよい。
B層を構成する光架橋性粘着剤の室温弾性率Ga’は、後述の実施例に記載の光架橋前弾性率Gb’と同様の条件で動的粘弾性測定を行うことにより求めることができる。室温弾性率Gb’は、光架橋性粘着剤の組成(例えば、B型B層の場合、ポリマー(PB)のBP当量、Mw、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の組成、ポリマー(PB)の重量分率)等により調節することができる。
【0159】
粘着剤層のB層を構成する光架橋性粘着剤の80℃におけるせん断貯蔵弾性率(すなわち、光架橋前弾性率Gb’)は、特に限定されない。光架橋性粘着剤の凝集性や、該光架橋性粘着剤を有する粘着シートの取扱い性(例えば、粘着シートの保存性)等の観点から、弾性率Gb’は、通常、3kPa超であることが適当であり、5kPa超であることが好ましく、10kPa超であることがより好ましく、15kPa超でもよい。いくつかの態様において、光架橋性粘着剤を有する粘着シートの加工性等の観点から、弾性率Gb’は、30kPa超でもよく、40kPa超でもよく、50kPa超でもよく、52kPa超でもよい。かかる弾性率Gb’を有する光架橋性粘着剤は、例えば、該光架橋性粘着剤からなる厚さ50μm超、70μm超または90μm超の粘着剤層または該粘着剤層を有する粘着シートの構成要素として好ましく用いられ得る。
弾性率Gb’は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。弾性率Gb’は、光架橋性粘着剤の組成(例えば、B型B層の場合、ポリマー(PB)のBP当量、Mw、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の組成、ポリマー(PB)の重量分率)等により調節することができる。
【0160】
光架橋性粘着剤に高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して得られた光架橋物の80℃におけるせん断貯蔵弾性率Gc’[kPa](すなわち、光架橋後弾性率Gc’)は、特に限定されない。光架橋物による接合部の凝集破壊を抑制する観点から、弾性率Gc’は、通常、15kPa以上であることが有利であり、25kPa以上であることが好ましい。被着体(特に、例えば偏光板等のように、アウトガスを発生しやすい被着体)に対する密着耐久性向上の観点から、弾性率Gc’は、30kPa以上であることが有利であり、35kPa以上であることが好ましく、40kPa以上であることがより好ましい。いくつかの態様において、弾性率Gc’は、45kPa以上でもよく、50kPa以上でもよく、55kPa以上でもよく、60kPa以上でもよい。また、弾性率Gc’は、例えば200kPa以下であってよく、150kPa以下でもよく、120kPa以下でもよい。被着体への密着耐久性と他の特性(例えば剥離強度)とをバランスよく両立しやすくする観点から、弾性率Gc’は、100kPa以下であることが有利であり、80kPa以下であることが好ましく、70kPa以下でもよく、65kPa以下でもよい。弾性率Gc’が低くなると、光架橋性粘着剤を被着体に積層した後に光架橋させて形成された光架橋物の上記被着体からの剥離強度は概して向上する傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、弾性率Gc’は、60kPa未満でもよく、55kPa未満でもよく、50kPa未満でもよく、45kPa未満でもよい。
弾性率Gc’は、より具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。弾性率Gc’は、光架橋性粘着剤の組成(例えば、B型B層の場合、ポリマー(PB)のBP当量、Mw、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分の組成、ポリマー(PB)の重量分率)等により調節することができる。
【0161】
B層を構成する光架橋性粘着剤の弾性率Gb’とその光架橋物の弾性率Gc’との関係は、特に限定されないが、典型的にはGc’[kPa]-Gb’[kPa]>0[kPa]を満たす。ΔG’は、例えば3kPa以上であってよく、5kPa以上であることが好ましく、8kPa以上であることがより好ましい。ΔG’が8kPa以上である光架橋性粘着剤によると、光架橋による耐変形性向上効果が好適に発揮されやすい。より高い光架橋効果を得る観点から、いくつかの態様において、ΔG’は、10kPa以上であってもよく、15kPa以上であってもよく、20kPa以上でもよく、25kPa以上でもよく、30kPa以上でもよい。ΔG’の上限は特に制限されないが、被着体への貼付け時の表面形状追従性と光架橋後の耐変形性とをバランスよく両立させる観点から、通常、150kPa以下であることが適当であり、100kPa以下であることが好ましく、80kPa以下でもよく、65kPa以下でもよく、50kPa以下でもよく、40kPa以下でもよい。
【0162】
(4)多官能性モノマー含有量
ここに開示される技術のいくつかの態様において、上記B層は、エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能性モノマー(例えば、化学式に基づく分子量(式量)が150~1000、好ましくは200~700の範囲にある多官能性モノマー)の含有量が、該B層1g当たり凡そ40μmol以下であることが好ましい。すなわち、B層の多官能性モノマー含有量が40μmol/g以下であることが好ましい。
多官能性モノマーは、概して光架橋性ポリマーに比べて移動性が高い。このため、A層とB層とを含む多層構造の粘着剤層において、上記B層に多官能性モノマーが含まれていると、かかる多層構造の粘着剤層を形成してから上記B層を光架橋させるまでの間に、上記多官能性モノマーの一部が上記B層から外部(例えばA層の内部、またはさらにA層を透過して該A層の表面)に移動し得る。このことは粘着シートの保存安定性を低下させる要因となり得る。
ここに開示される技術では、B層が光架橋性ポリマーを含むので、該B層における多官能性モノマーの含有量を制限しても、上記B層を光架橋させることによる効果(例えば、耐変形性を向上させる効果)を適切に発揮し得る。B層の多官能性モノマー含有量が制限されていることは、該B層を含む粘着剤層(ひいては、該粘着剤層を含む粘着シート)の臭気低減の観点からも好ましい。
なお、B層の多官能性モノマー含有量とは、エチレン性不飽和基が未反応の形態(典型的には、他のB層構成成分と化学的に結合していない形態)で該B層に含まれている多官能性モノマーの量をいう。したがって、エチレン性不飽和基が反応した後の多官能性モノマー(既に架橋構造を形成している多官能性モノマー残基)は、ここでいうB層の多官能性モノマー含有量からは除かれる。
【0163】
いくつかの態様において、B層の多官能性モノマー含有量は、30μmol/g以下であることが好ましく、20μmol/g以下であることがより好ましく、10μmol/g以下であることがさらに好ましく、5μmol/g以下でもよい。好ましい一態様に係るB層は、多官能性モノマーを含有しない。上記多官能性モノマーを含有しないB層は、エチレン性不飽和基が未反応の多官能性モノマーを含まない層であればよく、該B層が既に架橋構造を形成している多官能性モノマー残基を含むことは妨げられない。
【0164】
(5)親水性モノマーの割合
いくつかの態様において、B層を構成するモノマー成分は、親水性モノマーの割合が適切な範囲に設定されていることが好ましい。ここで、本明細書における「親水性モノマー」は、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマー(典型的には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー)およびアルコキシ基含有モノマー(典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)をいうものとする。
B層を構成するモノマー成分全体に占める上記親水性モノマーの割合は、例えば45重量%以下であってよく、通常は40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であってもよい。B層における親水性モノマーの使用量が多すぎないことは、粘着剤層の吸水性低減や耐水性向上の観点から好ましい。
一方、B層がある程度の親水性モノマーを含有することは、B層に隣接する層(例えばA層)との接着性の観点から有利となり得る。また、B層を構成するモノマー成分全体に占める上記親水性モノマーの割合は、例えば1重量%以下であり得る。いくつかの態様において、上記親水性モノマーの割合は、2重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよい。水性粘着剤組成物(例えば、水分散型粘着剤組成物)から形成されたA層と上記B層とが直接接して配置される構成において、B層がある程度の親水性モノマーを含有することは、該B層の表面にA層形成用の水性粘着剤組成物を直接塗工する場合の塗工性向上(例えば、上記水性粘着剤組成物のハジキやハゲ等の塗工ムラの抑制)の観点から好ましい。特に、A層の厚さが比較的小さい態様(例えば、A層の厚さが10μm未満である態様)では、B層がある程度(例えば、2重量%以上)の親水性モノマーを含有することが好ましい。
【0165】
<A層>
ここに開示される技術において、粘着剤層の一方の表面を構成するA層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系重合物を主成分とする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。
【0166】
(アクリル系粘着剤)
透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、A層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。
【0167】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル)を50重量%より多く含むモノマー成分から構成されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むものが好ましい。特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば55重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、99.5重量%以下でもよく、99重量%以下でもよい。
【0168】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ポリマー(PB)を構成するモノマー成分として用いられ得るものとして例示した(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択し得る。特に好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸イソノニル等が挙げられる。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他の具体例としては、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0169】
いくつかの態様において、A層を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを40重量%以上の割合で含み得る。このようにエステル末端に炭素原子数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを比較的多く含むモノマー成分によると、親油性の高いアクリル系ポリマーが形成される傾向にある。親油性の高いアクリル系ポリマーによると、A層の吸水を抑制しやすい。上記モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、例えば60重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上でもよい。上述したいずれかの下限値以上の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
また、A層の凝集性を高めて凝集破壊を防止する観点から、上記モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、99.5重量%以下とすることが適当であり、99重量%以下でもよく、98重量%以下でもよく、97重量%以下でもよい。A層の凝集性向上の観点から、いくつかの態様では、上記モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は95重量%以下であり、例えば90重量%以下が適当である。他のいくつかの態様では、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。上述したいずれかの上限値以下の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
【0170】
A層を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。ポリマー(PB)を構成するモノマー成分として用いられ得るものとして例示したものから選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0171】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、A層を構成するモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量を上記モノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
【0172】
いくつかの態様において、A層を構成するモノマー成分は、窒素原子を有するモノマーを含み得る。窒素原子を有するモノマーの使用により、粘着剤の凝集力を高め、光架橋後の剥離強度を好ましく向上させ得る。窒素原子を有するモノマーの一好適例として、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、ポリマー(PB)の調製に用いられ得る材料として上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、上記一般式(1)で表わされるN-ビニル環状アミドを用いることができる。なかでもN-ビニル-2-ピロリドンが好ましい。
【0173】
窒素原子を有するモノマー(好ましくは窒素原子含有環を有するモノマー)の使用量は特に制限されず、例えば、A層を構成するモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上とすることができる。いくつかの態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、接着力向上の観点から、上記モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他のいくつかの態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
【0174】
いくつかの態様において、モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例として、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MAA)が挙げられる。AAとMAAとを併用してもよい。AAとMAAとを併用する場合、それらの重量比(AA/MAA)は特に限定されず、例えば凡そ0.1~10の範囲とすることができる。いくつかの態様において、上記重量比(AA/MAA)は、例えば凡そ0.3以上であってよく、凡そ0.5以上でもよい。また、上記重量比(AA/MAA)は、例えば凡そ4以下であってよく、凡そ3以下でもよい。
【0175】
カルボキシ基含有モノマーの使用により、A層の表面に水等の水性液体を素早く馴染ませることができる。このことは剥離強度N2の低下に役立ち得る。カルボキシ基含有モノマーの使用量は、例えば、モノマー成分全体の0.05重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、0.8重量%以上でもよい。また、上記カルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば15重量%以下であってよく、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、4.5重量%以下でもよく、3.5重量%以下でもよく、3.0重量%以下でもよく、2.5重量%以下でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量が多過ぎないことは、剥離強度N2の測定に使用する水がA層に吸収されて剥離途中で水が不足する事象を防止する観点から好ましい。
【0176】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、A層の凝集力や架橋密度を調整し、剥離強度N0を向上させ得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えば上記モノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、A層のバルクへの過度の水拡散を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、上記モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよく、10重量%以下、5重量%以下または3重量%以下としてもよい。ここに開示される技術は、A層のモノマー成分として水酸基含有モノマーを実質的に使用しない態様でも好適に実施され得る。
【0177】
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、アルコキシシリル基含有モノマーを含み得る。アルコキシシリル基含有モノマーは、典型的には、一分子内に少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、例えば2つまたは3つ)のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和化合物であり、その具体例は上述のとおりである。上記アルコキシシリル基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルコキシシリル基含有モノマーの使用により、粘着剤層(A層)にシラノール基の縮合反応(シラノール縮合)による架橋構造を導入することができる。なお、アルコキシシリル基含有モノマーは、後述するシランカップリング剤としても把握され得る。
【0178】
A層を構成するモノマー成分がアルコキシシリル基含有モノマーを含む態様において、該モノマー成分全体に占めるアルコキシシリル基含有モノマーの割合は、例えば0.005重量%以上とすることができ、0.01重量%以上とすることが適当である。また、上記アルコキシシリル基含有モノマーの割合は、被着体に対する密着性向上の観点から、例えば0.5重量%以下であってよく、0.1重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよい。
【0179】
いくつかの好ましい態様において、A層を構成するモノマー成分は、ゲル化抑制の観点から、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合が20重量%未満に制限されている。上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合は、より好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満であり、いくつかの態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
同様に、A層に含まれるアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、アルコキシ基含有モノマーを20重量%未満の割合で含むか、含まないものであり得る。上記モノマー成分に占めるアルコキシ基含有モノマーの量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい態様では、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はアルコキシ基含有モノマーを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
【0180】
また、いくつかの好ましい態様において、A層を構成するモノマー成分は、親水性モノマー(すなわち、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマーおよびアルコキシ基含有モノマー)の割合が適切な範囲に設定されている。これにより、水剥離性が好ましく発揮される。この態様において、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は40重量%以下(例えば35重量%以下)が適当であり、32重量%以下であることが好ましく、例えば30重量%以下であってもよく、28重量%以下であってもよい。特に限定されるものではないが、A層を構成するモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は1重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。
【0181】
いくつかの態様において、A層を構成するモノマー成分は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、光硬化後の剥離強度を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えば上記モノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。いくつかの態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、上記モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
【0182】
A層を構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいて上述したFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg)、すなわち該モノマー成分に対応する重合物のTgが、凡そ-75℃以上-10℃以下となるように設定され得る。いくつかの態様において、上記重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)のTgは、-20℃以下であることが適当であり、-30℃以下であることが好ましく、-40℃以下であることがより好ましく、-50℃以下であることがさらに好ましく、例えば-55℃以下であってもよい。上記重合物のTgが低くなると、A層の基材層に対する密着性や被着体に対する接着性は概して向上する傾向にある。基材層への密着性の高いA層によると、粘着剤層の剥離を意図しない局面において基材層とA層との界面への水浸入を抑制しやすい。このことは、粘着シートの耐水性向上の観点から有利となり得る。また、重合物のTgは、剥離強度N0を高めやすくする観点から、例えば-70℃以上であってよく、-65℃以上でもよい。他のいくつかの態様では、上記Tgは、例えば-60℃以上であってよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上または-40℃以上でもよい。
【0183】
ここに開示される粘着シートのA層に含まれる重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)は、特に限定されるものではないが、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下であることが好ましい。そのようなSP値を有する重合物を含む粘着剤は、例えば後述の水親和剤を含ませることによって、十分な接着強度を有しつつ、優れた水剥離性を有する粘着剤を好ましく実現するものとなり得る。上記SP値は、より好ましくは21.0(MJ/m3)1/2以下(例えば20.0(MJ/m3)1/2以下)である。上記SP値の下限は特に限定されず、例えば凡そ10.0(MJ/m3)1/2以上であり、また凡そ15.0(MJ/m3)1/2以上であることが適当であり、好ましくは18.0(MJ/m3)1/2以上である。
【0184】
なお、上記重合物のSP値は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(POLYMER ENG. & SCI.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]すなわち、式:
SP値δ=(Σ△e/Σ△v)1/2
(上式中、Δeは、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギー△eであり、Δvは、同温度における各原子または原子団のモル容積である。);
に従って計算することができる。上記SP値を有する重合物は、当業者の技術常識に基づき、適切にモノマー組成を決定することにより得ることができる。
【0185】
ここに開示される粘着シートのA層は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含む粘着剤組成物(以下「粘着剤組成物A」ともいう。)を用いて形成され得る。上記粘着剤組成物Aは、水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、等の種々の形態であり得る。
【0186】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の熱重合開始剤や光重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0187】
熱重合開始剤としては、ポリマー(PD)に関して、アクリル系一次ポリマーの重合に用いられ得る重合開始剤として例示したアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。なかでもアゾ系重合開始剤が好ましい。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0188】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、D型B層に含有させ得る光開始剤として例示したケタール系光開始剤、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾインエーテル系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤、α-ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤等を用いることができる。
【0189】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
【0190】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。例えば、B型B層の形成に用いられ得る粘着剤組成物の任意成分として例示した各種の連鎖移動剤から選択される一種または二種以上を用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、所望のMwを有する結果物が得られるように設定することができ、特に限定されないが、通常、重合に供されるモノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることが適当であり、凡そ0.01~0.2重量部とすることが好ましい。連鎖移動剤を使用しなくてもよい。
【0191】
上記の各種重合法を適宜採用して得られる重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)の分子量は特に制限されず、要求性能等に合わせて適当な範囲に設定し得る。上記重合物の重量平均分子量(Mw)は、凡そ10×104以上であることが適当であり、例えば凡そ15×104以上であってよく、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、30×104超であることが好ましい。いくつかの態様に係る上記重合物は、高温環境下においても良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは40×104以上(典型的には凡そ50×104以上、例えば凡そ55×104以上)のMwを有する。上記重合物のMwの上限は、凡そ500×104以下(例えば凡そ150×104以下)であり得る。上記Mwは凡そ75×104以下であってもよい。
【0192】
いくつかの態様に係る粘着シートは、水分散型粘着剤組成物から形成されたA層を有する。水分散型粘着剤組成物の代表例として、エマルション型粘着剤組成物が挙げられる。エマルション型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の重合物と、必要に応じて用いられる添加剤とを含有する。
【0193】
モノマー成分のエマルション重合は、通常、乳化剤の存在下で行われる。エマルション重合用の乳化剤としては、特に制限されず、公知のアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等を用いることができる。乳化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0194】
アニオン性乳化剤の非限定的な例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性乳化剤の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。反応性官能基を有する乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。反応性乳化剤の例としては、上述したアニオン性乳化剤またはノニオン性乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された構造のラジカル重合性乳化剤が挙げられる。
【0195】
エマルション重合における乳化剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.2重量部以上であってよく、0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。また、耐水性の向上、あるいは粘着剤層(A層)の透明性向上の観点から、いくつかの態様において、乳化剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下としてもよい。なお、ここでエマルション重合に使用する乳化剤は、A層の水親和剤としても機能し得る。
【0196】
エマルション重合によると、モノマー成分の重合物が水に分散したエマルション形態の重合反応液が得られる。A層の形成に用いる水分散型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
【0197】
いくつかの好ましい態様において、A層は、溶剤型粘着剤組成物から形成された層であり得る。このことは、粘着剤層の耐水性や光学特性の観点から有利となり得る。溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の溶液重合物と、必要に応じて用いられる添加剤とを含有する。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。溶液重合によると、モノマー成分の重合物が重合溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。A層の形成に用いる溶剤型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
【0198】
いくつかの好ましい態様において、A層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された層であり得る。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の一好適例として、光硬化型粘着剤組成物が挙げられる。光硬化型の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。なかでも紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましい。光硬化型粘着剤の使用は光学特性の点でも有利である。
【0199】
光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
【0200】
いくつかの好ましい態様に係る光硬化型粘着剤組成物は、モノマー成分の部分重合物を含む。このような部分重合物は、典型的にはモノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、好ましくはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマー成分を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、モノマー成分の重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
【0201】
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、凡そ5重量%以上とすることが適当である。
【0202】
モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物と、残りのモノマー成分またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
【0203】
上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光開始剤、多官能性モノマー、架橋剤、水親和剤等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
【0204】
(架橋剤)
A層には、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。換言すれば、A層を形成するための粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含有し得る。架橋剤は、典型的には架橋反応後の形態でA層に含まれている。架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されたA層は、典型的には、架橋剤によって架橋された重合物(例えばアクリル系重合物)を含む。例えば、A層は、架橋剤によって架橋されたアクリル系ポリマーを含む粘着剤層であり得る。架橋剤の使用により、A層の凝集力を適切に調節することができる。
【0205】
架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤のなかから、例えば粘着剤組成物の組成に応じて、該架橋剤が粘着剤層内で適切な架橋機能を発揮するように選択することができる。用いられ得る架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等を例示することができる。架橋剤として過酸化物を用いてもよい。これらの架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
A層を形成するための粘着剤組成物に用いられ得る架橋剤の具体例は、上述したD型B層を形成するための粘着剤組成物に用いられ得る架橋剤の具体例と概ね同様であるので、重複する説明は省略する。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能な架橋剤の使用が好ましい。
【0206】
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が例示される。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。架橋触媒の使用量は、粘着剤組成物Aに含まれるモノマー成分(例えばアクリル系重合物のモノマー成分)100重量部に対して、例えば凡そ0.0001重量部以上、凡そ0.001重量部以上、凡そ0.005重量以上等とすることができ、また、凡そ1重量部以下、凡そ0.1重量部以下、凡そ0.05重量部以下等とすることができる。
【0207】
A層の形成に用いられる粘着剤組成物には、所望により、架橋遅延剤として、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、イソシアネート系架橋剤を含む粘着剤組成物またはイソシアネート系架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物において、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を好ましく使用し得る。これにより、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が発揮され得る。
ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。ケト-エノール互変異性を生じる化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ケト-エノール互変異性を生じる化合物の使用量は、粘着剤組成物に含まれるモノマー成分(例えばアクリル系重合物のモノマー成分)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上20重量部以下であってよく、0.5重量部以上15重量部以下とすることが適当であり、例えば1重量部以上10重量部以下とすることができ、1重量部以上5重量部以下としてもよい。
【0208】
(水親和剤)
ここに開示される技術におけるA層には、所望により、水親和剤を含有させることができる。A層に水親和剤を含有させることにより、水等の水性液体を利用して剥離力を効果的に低下させることができる。その理由は、特に限定解釈されるものではないが、一般に水親和剤は親水性領域を有することによりA層の表面に偏在しやすく、それによって該A層表面の水親和性を効率よく高める作用が発揮され、該A層が水と接触したときに剥離力を効果的に低下させるものと考えられる。
【0209】
水親和剤としては、粘着剤組成物の調製容易性等の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられ得る。水親和剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0210】
いくつかの態様において、水親和剤としては、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを用いることができる。界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、公知の界面活性剤、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物の1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。なお、上記界面活性剤のなかには、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物が存在し、逆もまた然りであることは言うまでもない。
【0211】
化合物Aとして用いられ得る界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0212】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル;ポリオキシエレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0213】
アニオン性界面活性剤の例としては、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)等の、アルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム)、オクタデシル硫酸塩等のアルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩等の、ポリエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等の、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル;上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム)等の、スルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;等が挙げられる。アニオン性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩(好ましくは一価金属の塩)、アンモニウム塩、アミン塩等であり得る。アニオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0214】
いくつかの態様において、例えば、-POH基、-COH基および-SOH基の少なくとも一つを有するアニオン性界面活性剤を好ましく使用し得る。なかでも-POH基を有する界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、典型的にはリン酸エステル構造を含んでおり、例えばリン酸のモノエステル(ROP(=O)(OH)2;ここでRは1価の有機基)、ジエステル((RO)2P(=O)OH;ここでRは、同一のまたは異なる1価の有機基)、モノエステルおよびジエステルの両方を含む混合物等であり得る。-POH基を有する界面活性剤の好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、例えば6~20であってよく、8~20でもよく、10~20でもよく、12~20でもよく、14~20でもよい。
【0215】
カチオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリエーテルアミンが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0216】
化合物Aとして用いられ得るポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等のポリアルキレングリコール;ポリオキシエチレン単位を含むポリエーテル、ポリオキシプロピレン単位を含むポリエーテル、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを含む化合物(これら単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロック状であってもよい。);これらの誘導体;等を用いることができる。また、上述の界面活性剤のうちポリオキシアルキレン骨格を有する化合物を用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリオキシエチレン骨格(ポリオキシエチレンセグメントともいう。)を含む化合物を用いることが好ましく、PEGがより好ましい。
【0217】
ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量(化学式量)は特に限定されず、例えば1000未満であることが適当であり、粘着剤組成物調製性の点から、凡そ600以下(例えば500以下)であることが好ましい。ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量の下限は特に限定されず、分子量が凡そ100以上(例えば凡そ200以上、さらには凡そ300以上)のものが好ましく用いられる。
【0218】
水親和剤の他の例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術において、水親和剤としては、化合物Aの1種または2種以上を用いてもよく、水溶性ポリマーの1種または2種以上を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0219】
水親和剤のHLBは特に限定されず、例えば3以上であり、凡そ6以上が適当であり、8以上(例えば9以上)であり得る。いくつかの好ましい態様では、水親和剤のHLBは10以上である。これによって、水剥離性が好ましく発現する傾向がある。上記HLBは、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは13以上(例えば14以上)である。上記範囲のHLBを有する水親和剤(典型的には界面活性剤)をA層に含ませることで、水剥離性をより効果的に発現させ得る。上記HLBの上限は20以下であり、例えば18以下であってもよく、16以下でもよく、15以下でもよい。
【0220】
なお、本明細書におけるHLBは、GriffinによるHydrophile-Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値であり、親水性と親油性の比を0~20の間の数値で表したものである。HLBの定義は、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書社出版、昭和47年11月25日、p179~182等に記載されるとおりである。上記HLBを有する水親和剤は、上記参考文献を必要に応じて参酌するなどして、当業者の技術常識に基づき、選定することができる。
【0221】
このような水親和剤は、遊離の形態でA層に含まれていることが好ましい。水親和剤としては、粘着剤組成物調製性の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられる。
【0222】
水親和剤を含むA層は、典型的には、水親和剤を含む粘着剤組成物Aから形成される。上記粘着剤組成物Aは、上述した水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等のいずれでもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤を含むA層は、光硬化型または溶剤型の粘着剤組成物Aから形成された粘着剤層であり得る。このようなA層において、水親和剤の添加効果が好ましく発揮され得る。A層は、光硬化性を有していてもよい。
【0223】
A層における水親和剤の含有量は、特に限定されず、該水親和剤の使用効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、水親和剤の含有量は、A層に含まれる重合物(例えば、アクリル系重合物)を構成するモノマー成分100重量部あたり、例えば0.001重量部以上とすることができ、0.01重量部以上とすることが適当であり、0.03重量部以上でもよく、0.07重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤の含有量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.2重量部以上であってよく、より高い効果を得る観点から0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。また、A層のバルクへの過度の水拡散を抑制する観点から、いくつかの態様において、水親和剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば20重量部以下であってよく、10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下としてもよい。水親和剤の含有量が多過ぎないことは、A層の透明性向上の観点からも好ましい。例えば、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する水親和剤の含有量は、2重量部未満でもよく、1重量部未満でもよく、0.7重量部未満でもよく、0.3重量部未満でもよく、0.2重量部未満でもよい。HLBが10以上である水親和剤は、少量の使用によっても良好な水剥離性を発揮する傾向がある。
【0224】
(粘着付与樹脂)
A層には粘着付与樹脂を含有させてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、ロジン誘導体粘着付与樹脂を包含する、石油系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0225】
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジンの他、安定化ロジン(例えば、上記ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジン)、重合ロジン(例えば、上記ロジンの多量体、典型的には二量体)、変性ロジン(例えば、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸により変性された不飽和酸変性ロジン等)等が挙げられる。
上記ロジン誘導体粘着付与樹脂としては、例えば、上記ロジン系粘着付与樹脂のエステル化物(例えば、安定化ロジンエステルや重合ロジンエステル等のロジンエステル類)、上記ロジン系樹脂のフェノール変性物(フェノール変性ロジン)およびそのエステル化物(フェノール変性ロジンエステル)等が挙げられる。
上記石油系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、これらの水素化物等が挙げられる。
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。
上記ケトン系粘着付与樹脂としては、例えば、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の脂肪族ケトン;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の脂環式ケトン等)とホルムアルデヒドとの縮合によるケトン系樹脂;等が挙げられる。
【0226】
いくつかの態様において、粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、ロジン誘導体粘着付与樹脂およびテルペンフェノール樹脂から選択される1種または2種以上を好ましく使用し得る。なかでもロジン誘導体粘着付与樹脂が好ましく、好適例として安定化ロジンエステルおよび重合ロジンエステル等のロジンエステル類が挙げられる。
【0227】
水分散型の粘着剤組成物においては、上述のような粘着付与樹脂が水性溶媒に分散した形態の水分散型粘着付与樹脂の使用が好ましい。例えば、アクリル系ポリマーの水分散液と水分散型粘着付与樹脂とを混合することにより、これらの成分を所望の割合で含有する粘着剤組成物を容易に調製することができる。いくつかの態様において、水分散型粘着付与樹脂としては、環境衛生への配慮等の観点から、少なくとも芳香族炭化水素系溶剤を実質的に含有しないものを好ましく用いることができる。芳香族炭化水素系溶剤その他の有機溶剤を実質的に含有しない水分散型粘着付与樹脂の使用がより好ましい。
【0228】
ロジンエステル類を含む水分散型粘着付与樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業社製の商品名「スーパーエステルE-720」、「スーパーエステルE-730-55」、「スーパーエステルE-865NT」等や、ハリマ化成社製の商品名「ハリエスターSK-90D」、「ハリエスターSK-70D」、「ハリエスターSK-70E」、「ネオトール115E」等が挙げられる。また、テルペンフェノール樹脂(水分散型テルペンフェノール樹脂の形態であり得る。)の市販品としては、荒川化学工業社製の商品名「タマノルE-100」、「タマノルE-200」、「タマノルE-200NT」等が挙げられる。
【0229】
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。粘着剤層(A層)の凝集力の低下を抑制する観点から、軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。粘着付与樹脂の軟化点は、90℃以上でもよく、100℃以上でもよく、110℃以上でもよく、120℃以上でもよい。軟化点130℃以上または140℃以上の粘着付与樹脂を使用してもよい。また、透明性や基材層に対する密着性、被着体に対する接着性等の観点から、軟化点が200℃以下または180℃以下の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点としては、文献やカタログ等に記載された公称値を採用することができる。公称値がない場合には、JIS K5902またはJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて粘着付与樹脂の軟化点を測定することができる。
【0230】
粘着付与樹脂の使用量は、その使用効果を好適に発揮させる観点から、A層を構成するモノマー成分100重量部に対して1重量部以上とすることが適当であり、5重量部以上でもよく、10重量部以上でもよく、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよく、25重量部以上でもよい。また、被着体に対する密着性と凝集性とをバランスよく両立する観点から、モノマー成分100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、例えば70重量部以下であってよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよい。あるいは、粘着付与樹脂を実質的に含有しないA層であってもよい。
【0231】
(シランカップリング剤)
いくつかの態様において、A層にシランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤の使用により、粘着シートの被着体(例えば、ガラス板)からの剥離強度を向上させ得る。シランカップリング剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤を含むA層は、シランカップリング剤を含む粘着剤組成物を用いて好適に形成することができる。かかる粘着剤組成物において、シランカップリング剤は、ゲル化抑制等の観点から、遊離の形態で上記粘着剤組成物に含まれていることが好ましい。また、いくつかの態様において、シランカップリング剤は、A層中に遊離の形態で含まれ得る。このような形態でA層に含まれているシランカップリング剤は、剥離力の向上に効果的に寄与することができる。なお、ここで「遊離の形態」とは、シランカップリング剤が、A層または該A層の形成に用いられる粘着剤組成物に含まれる他の成分と化学結合していないことをいう。
【0232】
シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;アセトアセチル基含有トリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも好ましい例として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびアセトアセチル基含有トリメトキシシランが挙げられる。
【0233】
シランカップリング剤の使用量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。いくつかの態様において、シランカップリング剤の使用量は、A層に含まれる重合物を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば0.001重量部以上であってよく、より高い効果を得る観点から0.005重量部以上でもよく、0.01重量部以上でもよく、0.015重量部以上でもよい。また、基材層への密着性向上の観点から、いくつかの態様において、シランカップリング剤の使用量は、A層を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば3重量部以下であってよく、1重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよい。
【0234】
なお、モノマー成分がアルコキシシリル基含有モノマーを含む態様では、A層に含まれるシランカップリング剤の一部または全部として上記アルコキシシリル基含有モノマーを利用してもよい。
【0235】
また、いくつかの態様において、上述のようなシランカップリング剤以外の化合物であって、アルコキシシリル基と疎水部とを分子内に有する化合物Tを、A層に含有させてもよい。ここで、上記アルコキシシリル基は、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジエトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選択される。アルコキシシリル基は、加水分解することによって、被着体表面の水酸基と反応するシラノール基を生成する。したがって、上記アルコキシシリル基は、上記水酸基と反応する基の前駆体である。A層に化合物Tを含有させることにより、被着体上の水酸基と上記シラノール基との反応または相互作用によって粘着シートの被着体からの剥離力を上昇させることができる。また、化合物Tの有する疎水部は、アルコキシシリル基に比べて、概してA層のベースポリマー(例えばアクリル系重合物)との親和性が高い。この疎水部の選択により、化合物TのA層内における分布や移動性を調整し、水剥離力の上昇性をコントロールすることができる。したがって、上記化合物Tは、A層と被着体との接着性や水剥離性に影響する剥離調整剤として役立ち得る。
【0236】
上記疎水部は、例えば、炭化水素基、鎖状エーテル結合を有する炭化水素基、カルボニル基を有する炭化水素基、エステル結合を有する炭化水素基や、これらの基のフッ素化物等のであり得る。これらの例示における炭化水素基は、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシクロアルキル基、アラルキル基等であり得る。上記炭化水素基がアルキル基である場合、該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上である。上記アルキル基の炭素原子数は、例えば32以下であってよく、28以下でもよく、24以下でもよく、20以下でもよい。例えば、C8-18アルキルトリアルコキシシランを化合物Tとして用いることができる。C8-18アルキルトリアルコキシシランの非限定的な具体例としては、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシランおよびヘキサデシルトリエトキシシランが挙げられる。また、上記シクロアルキル基、アリール基、アルキルシクロアルキル基およびアラルキル基の炭素原子数は、例えば6~20程度であり得る。
化合物Tは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤と化合物Tとを併用してもよい。
【0237】
(アクリル系オリゴマー)
A層は、アクリル系オリゴマーを含んでいてもよい。A層に含有させるアクリル系オリゴマーとしては、B層に含有させ得る成分として上記で例示したものと同様のものから、適宜選択して用いることができる。
【0238】
A層にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、特に限定されず、所望の効果が得られるように設定することができる。いくつかの態様において、アクリル系オリゴマーの使用量は、A層を構成するモノマー成分全体の例えば0.01重量%以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量%以上としてもよく、0.1重量%以上としてもよく、0.2重量%以上としてもよい。また、粘着剤層の透明性等の観点から、アクリル系オリゴマーの使用量は、通常、A層を構成するモノマー成分全体の50重量%未満とすることが適当であり、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%以下であり、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく1重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよい。アクリル系オリゴマーを使用しなくてもよい。
【0239】
A層の形成に用いられる粘着剤組成物Aは、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0240】
<粘着シート>
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層は、A層およびB層を含む多層構造を有する。かかる多層構造の粘着剤層は、あらかじめ形成した各サブ粘着剤層を貼り合わせることによって作製することができる。あるいは、あらかじめ形成した第一のサブ粘着剤層(例えばB層)の上に、第二のサブ粘着剤層(例えばA層)を形成するための粘着剤組成物を塗布し、該粘着剤組成物を硬化させて第二の粘着剤層を形成してもよい。
【0241】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。基材を有する形態の粘着シートでは、基材上に粘着剤層を設ける方法として、該基材に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成する直接法を用いてもよく、剥離面上に形成した粘着剤層を基材に転写する転写法を用いてもよい。
【0242】
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm~2000μm程度であり得る。表面形状追従性(例えば、段差追従性)など被着体との密着性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上であることが適当であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。粘着剤層の厚さは、50μm以上でもよく、50μm超でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよく、120μm以上でもよい。また、粘着剤層の凝集破壊による糊残りの発生を防止する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、700μm以下でもよく、500μm以下でもよく、300μm以下でもよく、さらには200μm以下または170μm以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層の厚さが130μm以下、90μm以下、60μm以下または40μm以下である粘着シートの形態でも好適に実施することができる。好ましい一態様において、上記粘着剤層の厚さは、例えば10μm以上500μm以下であり得る。
なお、上記粘着剤層の厚さとは、該粘着剤層の一方の表面(すなわち、A層側の表面)から、該粘着剤層の反対側の表面までの厚さをいう。ここに開示される粘着剤層は、表面追従性の観点から、粘着剤層以外の層(例えば樹脂フィルム)を含まない多層構造体であることが好ましい。
【0243】
粘着剤層を構成するA層の厚さは、例えば50μm以下であってよく、45μm以下でもよく、35μm以下でもよく、25μm以下でもよく、20μm以下でもよい。A層の背面側に形成されたB層が光架橋性を有することによる効果(例えば、光架橋前の表面形状追従性と光架橋後の接合信頼性との両立)を好適に発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、A層の厚さは、15μm以下であることが有利であり、10μm以下であることが好ましく、10μm未満であることがより好ましく、例えば7μm以下であってもよい。特に、水分散型粘着剤組成部から形成されたA層を備える態様や、A層が水親和剤を含む態様では、A層の厚さが大きすぎないことは、粘着剤層の耐水信頼性の向上、粘着剤層の透明性の向上等の観点からも好ましい。また、A層の形成容易性やA層により得られる効果(例えば、水剥離性の付与またはその向上)を好適に発揮しやすくする観点から、A層の厚さは、通常、0.5μm以上であることが適当であり、1μm以上でもよく、2μm以上でもよく、3μm以上でもよい。
【0244】
粘着剤層を構成するB層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよい。B層の光架橋前における粘着剤層の表面形状追従性(例えば、段差追従性)等の観点から、いくつかの態様において、B層の厚さは、30μm以上であることが有利であり、50μm以上であることが好ましく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよい。また、B層の形成容易性や凝集性や光架橋性の観点から、B層の厚さは、例えば700μm以下であってよく、500μm以下でもよく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよく、170μm以下でもよい。
【0245】
いくつかの態様において、粘着剤層全体の厚さに占めるA層の厚さは、該A層により得られる効果を好適に発揮しやすくする観点から、例えば0.1%以上であってよく、0.5%以上でもよく、1%以上でもよく、2%以上でもよい。また、B層の光架橋前における粘着剤層の表面形状追従性等の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層全体の厚さに占めるA層の厚さは、90%以下であることが適当であり、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、25%以下でもよく、10%以下でもよく、5%以下でもよい。
【0246】
(光架橋処理)
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層を構成するB層に含まれる光架橋性ポリマーを架橋させることによって耐変形性を高め得るように構成されている。B層の光架橋は、活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。活性エネルギー線の照射条件は、B層の光架橋を適切に進行させ得るように設定することができる。B型B層を含む粘着剤層を有する粘着シートでは、ベンゾフェノン構造を励起可能な波長成分を含む紫外線(例えば、波長300nm未満の成分を含む紫外線)を照射することが好ましい。
【0247】
ここに開示される技術において、剥離強度N0,N2、せん断貯蔵弾性率、ゲル分率、耐久性評価等の特性評価または性能評価に際して行われる紫外線照射処理(光架橋処理)に用いる光源として、高圧水銀ランプ(例えば、照度300mW/cm2程度の高圧水銀ランプ)を用いることができる。紫外線照射時間は、光架橋反応が十分進行するように設定される。例えば、積算光量が凡そ1000mJ/cm2~20000mJ/cm2程度となるように紫外線照射処理を行うとよい。
【0248】
B型B層を有する粘着シートの特性評価または性能評価に際して行われる紫外線照射処理は、照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T25による測定値)の高圧水銀ランプを用いて、積算光量が10000mJ/cm2となるように行うことができる。
また、D型B層を有する粘着シートの特性評価または性能評価に際して行われる紫外線照射処理は、照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T36による測定値)の高圧水銀ランプを用いて、積算光量が3000mJ/cm2となるように行うことができる。
【0249】
(剥離強度N0)
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、上述した測定手順により測定される剥離強度N0、より具体的には後述する実施例に記載の方法で測定される剥離強度N0は、例えば凡そ1.5N/10mm以上であってよく、凡そ2.0N/10mm以上であることが好ましい。接合信頼性向上の観点から、上記剥離強度は、例えば凡そ2.2N/10mm以上であることが好ましく、凡そ2.5N/10mm以上であることがより好ましい。一態様に係る粘着シートにおいて、上記剥離強度は、凡そ3.0N/10mm以上であってもよく、凡そ4.0N/10mm以上でもよく、凡そ5.0N/10mm以上でもよく、凡そ6.0N/10mm以上でもよい。剥離強度の上限は特に制限されず、例えば25N/10mm以下であってよく、20N/10mm以下でもよく、15N/10mm以下または10N/10mm以下でもよい。
【0250】
(剥離強度N2)
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、上述した測定手順により測定される剥離強度N2、より具体的には後述する実施例に記載の方法で測定される剥離強度N2は、例えば凡そ1.5N/10mm未満であり得る。水剥離を利用したリワーク性の観点から、上記剥離強度N2は、例えば凡そ1.2N/10mm以下であってよく、1.0N/10mm未満でもよく、0.8N/10mm未満でもよく、0.5N/10mm未満でもよい。
【0251】
(水剥離力低下率)
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートは、上記剥離強度N0および上記剥離強度N2に基づいて、以下の式:
水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100;
により算出される水剥離力低下率が、例えば凡そ40%以上であり得る。
【0252】
水剥離力低下率が高い粘着シートは、水等の水性液体を用いて剥離することで、剥離時に被着体に加わる負荷を顕著に軽減することができる。例えば、粘着シートと被着体との界面に少量の水性液体を導入することにより、上記粘着シートの上記被着体からの剥離強度を大幅に低下させることができる。この性質を利用して、被着体に貼り付けられた粘着シートの位置ズレや浮きを抑制する性能と、良好なリワーク性とを両立することができる。いくつかの態様において、水剥離力低下率は、50%以上であることが適当であり、好ましくは60%以上であり、例えば70%以上であってよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、85%以上でもよく、90%以上でもよい。水剥離力低下率は、原理上100%以下であり、典型的には100%未満である。
【0253】
(ヘイズ値)
ここに開示される技術において、粘着シート(粘着剤層からなる粘着シートであり得る。)のヘイズ値は、凡そ10%以下であることが適当であり、凡そ5%以下(例えば凡そ3%以下)であり得る。いくつかの態様において、粘着シートのヘイズ値は1.0%以下であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる光学用途に好適である。粘着シートのヘイズ値は、1.0%未満であってよく、0.7%未満であってもよく、0.5%以下(例えば0~0.5%)であってもよい。
【0254】
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表わすことができる。
Th[%]=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値[%]であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(たとえば、村上色彩技術研究所製の「MR-100」)を用いて測定することができる。ヘイズ値は、例えば、粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0255】
<基材>
いくつかの態様に係る粘着シートは、粘着剤層に接合した基材を含む基材付き粘着シートの形態であり得る。基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合構造の基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチックシート等が挙げられる。
【0256】
ここに開示される粘着シートの基材としては、各種のフィルム(以下、支持フィルムともいう。)を好ましく用いることができる。上記支持フィルムは、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質のフィルムであってもよく、非多孔質のフィルムであってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造のフィルムであってもよい。いくつかの態様において、上記支持フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。
【0257】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA)、透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等の樹脂を用いることができる。上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
【0258】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリイミド樹脂とはポリイミドを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
【0259】
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0260】
ポリオレフィン樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
【0261】
基材として好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルム、CPPフィルムおよびOPPフィルムが挙げられる。強度の点から好ましい例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルムが挙げられる。入手容易性、寸法安定性、光学特性等の観点から好ましい例としてPETフィルム、CPIフィルム、TACフィルムが挙げられる。
【0262】
樹脂フィルムには、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0263】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0264】
上記基材は、このような樹脂フィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記樹脂フィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材または粘着シートに所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。また、上記基材は、後述する光学部材(例えば、光学フィルム)であってもよい。
【0265】
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、500μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、粘着シートの柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、5μm超または10μm超でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば20μm以上であってよく、35μm以上でもよく、55μm以上でもよい。
【0266】
基材のうち粘着剤層に接合される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。
【0267】
基材のうち粘着剤層に接合される側とは反対側の面(以下、背面ともいう。)には、必要に応じて、剥離処理、接着性または粘着性向上処理、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、基材の背面を剥離処理剤で表面処理することにより、ロール状に巻回された形態の粘着シートの巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。
【0268】
<積層体製造方法>
ここに開示される粘着シートは、その粘着剤層(典型的には、該粘着剤層のA層側)を被着体としての部材に積層した後に、該粘着剤層のB層を光架橋させる態様で好ましく用いられ得る。これにより、上記粘着剤層が上記被着体に信頼性よく接合した積層体を製造することができる。したがって、この明細書により、ここに開示されるいずれかの粘着シートを被着体に貼り合わせることと、上記粘着シートに活性エネルギー線を照射して上記粘着剤層のB層を光架橋させることと、をこの順序で含む積層体製造方法が提供される。
B層の光架橋は、活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。活性エネルギー線の照射条件は、B層の光架橋を適切に進行させ得るように設定することができる。B型B層を含む粘着剤層を有する粘着シートでは、ベンゾフェノン構造を励起可能な波長成分を含む紫外線(例えば、波長300nm未満の成分を含む紫外線)を照射することが好ましい。
【0269】
ここに開示される粘着シートは、その粘着剤層(典型的には、該粘着剤層のA層側)が段差を有する表面に積層される態様で用いられ得る。上記粘着シートの有する粘着剤層は、B層を光架橋させる前において、かかる段差を有する被着体の表面に対して良好な表面形状追従性(段差追従性)を発揮し得る。粘着剤層を積層した後に、該粘着剤層のB層を光架橋させることにより、信頼性の高い接合を形成することができる。上記段差は、例えば、上記被着体に表面に設けられた印刷層であり得る。上記段差の高さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよい。上記段差の高さは、例えば100μm以下であってよく、70μm以下であることが好ましい。
【0270】
<水接触角>
ここに開示される粘着シートは、蒸留水に対する接触角が、例えば60度以下、好ましくは50度以下となる程度の親水性を示す表面に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。いくつかの態様において、上記接合面の接触角は、例えば45度以下であってよく、40度以下でもよく、35度以下でもよく、30度以下でもよい。上記接合面の接触角が小さくなると、該接合面に沿って水が濡れ広がりやすくなり、粘着シートの水剥離性が向上する傾向にある。このことは、上記接合面に上記粘着シートを貼り合わせて粘着シート付き部材を作製する際のリワーク性向上の観点から好ましい。また、このように親水性の高い表面では、例えば剥離力向上剤として化合物Sを用いる態様において、該化合物Sによる接合信頼性(例えば、耐水信頼性)の向上効果が好ましく発揮され得る。
なお、上記接合面の接触角は、少なくとも粘着シートを貼り合わせる時期(例えば、貼り合わせの30分前)に上述したいずれかの角度以下であれば、該接触角が所定以下であることによるリワーク性向上効果が発揮され得る。接触角の下限は、原理上0度である。いくつかの態様において、上記接合面の接触角は、0度超でもよく、1度以上でもよく、3度以上でもよく、5度以上でもよい。
【0271】
部材の接合面の蒸留水に対する接触角は、次のとおり測定する。すなわち、測定雰囲気23℃、50%RHの環境下において、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名「DMo-501型」、コントロールボックス「DMC-2」、制御・解析ソフト「FAMAS(バージョン5.0.30)」)を用いて液滴法により測定を行う。蒸留水の滴下量は2μLとし、滴下5秒後の画像からΘ/2法により接触角を算出する(N5で実施)。
【0272】
部材の接合面は、蒸留水に対する接触角を低下させるために、親水化処理されていてもよい。親水化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理や、親水層を形成する処理等の、親水性の向上に寄与する処理が挙げられる。コロナ処理やプラズマ処理に使用する装置や処理条件は、従来公知の技術に基づいて、所望の接触角を示す接合面が得られるように設定することができる。
【0273】
上記親水層形成処理は、親水コーティング層を形成する処理であり得る。親水コーティング層の形成は、公知のコーティング剤から所望の接触角を示す接合面が得られるものを適宜選択し、常法により使用して行うことができる。親水コーティング層の厚さは、例えば0.01μm以上であってよく、0.05μm以上でもよく、0.1μm以上でもよく、また、例えば10μm以下であってよく、5μm以下でもよく、2μm以下でもよい。
【0274】
上記親水層形成処理は、無機材料を含む親水層を形成する処理であり得る。親水層が無機材料を含むことで、良好な水剥離性が得られやすい。無機材料としては、遷移金属元素や半金属元素の単体、合金を含む各種の金属材料や、無機酸化物等の無機化合物のなかから親水性表面を形成し得る材料が用いられる。上記無機材料は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。無機材料の好適例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化ニオブ等の酸化物(無機酸化物、典型的には金属酸化物)が挙げられる。なかでも、好ましい無機材料として酸化ケイ素等の無機酸化物が用いられる。親水層は、無機材料に加えて、コーティング剤やバインダとして利用され得る有機高分子化合物を含む各種有機材料を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0275】
親水層中の無機材料(例えば酸化ケイ素等の無機酸化物)の量は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されない。例えば、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
【0276】
いくつかの好ましい態様において、上記無機材料として、酸化ケイ素(典型的にはSiOXで表わされる酸化ケイ素や、SiO2で表わされる二酸化ケイ素)等の無機酸化物が用いられる。上記無機材料に占める無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されず、例えば、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、上記無機材料中の無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
【0277】
上記親水層の形成方法は特に限定されず、目的とする厚さ等に応じて適当な方法で形成され得る。例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、あるいは、めっき法等の公知の成膜方法を利用して層状に形成した無機材料を親水層として利用することができる。無機材料として、無機化合物を用いる場合には、各種の蒸着法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)や、原子層堆積層等の化学蒸着法(CVD)等を採用することができる。ポリシロキサン等の無機ポリマーを含むコーティング層の形成は、公知のコーティング剤から所望の水接触角を示す表面が得られるものを適宜選択し、常法により使用して行うことができる。
【0278】
<剥離方法>
この明細書によると、被着体に貼り付けられた粘着シートの剥離方法が提供される。この剥離方法は、ここに開示されるいずれかの粘着シートの剥離方法として好適である。
上記剥離方法は、上記被着体からの上記粘着シートの剥離前線において上記被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、上記剥離前線の移動に追随して上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離する水剥離工程を含む。ここで剥離前線とは、被着体からの粘着シートの剥離を進行させる際に、上記被着体から上記粘着シートが離れ始める箇所を指す。上記水剥離工程によると、上記水性液体を有効に利用して被着体から粘着シートを剥離することができる。水性液体としては、水または水を主成分とする混合溶媒に、必要に応じて少量の添加剤を含有させたものを用いることができる。上記混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る低級アルコール(例えばエチルアルコール)や低級ケトン(例えばアセトン)等を使用し得る。上記添加剤としては、公知の界面活性剤等を用いることができる。被着体の汚染を避ける観点から、いくつかの態様において、添加剤を実質的に含有しない水性液体を好ましく使用し得る。環境衛生の観点から、水性液体として水を用いることが特に好ましい。水としては、特に制限されず、用途に応じて求められる純度や入手容易性等を考慮して、例えば蒸留水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
【0279】
いくつかの態様において、上記剥離方法は、被着体に貼り付けられた粘着シートの外縁付近の被着体上に水性液体を供給し、その水性液体を上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく(すなわち、剥離開始前に被着体上に供給した水性液体のみを利用して)粘着シートの剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。他のいくつかの態様において、上記剥離方法は、被着体に貼り付けられた粘着シートの一部(典型的には、該粘着シートの外縁に連なる一部)が上記被着体から浮いた状態で、残りの粘着シートが被着体から離れ始める箇所に水性液体を供給し、新たな水の供給を行うことなく粘着シートの剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。なお、水剥離工程の途中で、剥離前線の移動に追随して粘着シートと被着体との界面に進入させる水が途中で枯渇するようであれば、該水剥離工程の開始後に断続的または連続的に水を追加供給してもよい。例えば、被着体が吸水性を有する場合や、剥離後の被着体表面または粘着面に水性液体が残留しやすい場合等において、水剥離工程の開始後に水を追加供給する態様を好ましく採用し得る。
【0280】
剥離開始前に供給する水性液体の量は、粘着シートと被着体との界面に上記水性液体を導入し得る量であればよく、特に限定されない。上記水性液体の量は、例えば5μL以上であってよく、通常は10μL以上が適当であり、20μL以上でもよい。また、上記水性液体の量の上限について特に制限はない。いくつかの態様において、作業性向上等の観点から、上記水性液体の量は、例えば10mL以下であってよく、5mL以下でもよく、1mL以下でもよく、0.5mL以下でもよく、0.1mL以下でもよく、0.05mL以下でもよい。上記水性液体の量を少なくすることにより、粘着シートの剥離後に上記水性液体を乾燥や拭き取り等により除去する操作を省略または簡略化し得る。
【0281】
剥離開始時に上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面に水性液体を進入させる操作は、例えば、粘着シートの外縁において上記界面にカッターナイフや針等の治具の先端を差し込む、粘着シートの外縁を鉤や爪等で引掻いて持ち上げる、強粘着性の粘着テープや吸盤等を粘着シートの外縁付近の背面に付着させて該粘着シートの端を持ち上げる、等の態様で行うことができる。このように粘着シートの外縁から上記界面に水性液体を強制的に進入させることにより、被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態を効率よく形成することができる。また、水性液体を界面に強制的に進入させる操作を行って剥離のきっかけをつくった後における良好な水剥離性と、かかる操作を行わない場合における高い耐水信頼性とを、好適に両立することができる。なお、上記剥離のきっかけをつくる操作は、水性液体を供給する前に、被着体に貼り付けられた粘着シートの一部(典型的には、該粘着シートの外縁に連なる一部)を意図的に被着体から浮かせた状態とする操作としても採用し得る。
【0282】
いくつかの態様に係る水剥離工程は、上記剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させる態様で好ましく実施され得る。剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させることは、例えば剥離角度180度の条件においては、粘着シートを20mm/分以上の引張速度で剥離することに相当する。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば50mm/分以上でもよく、150mm/分以上でもよく、300mm/分以上でもよく、500mm/分以上でもよい。ここに開示される剥離方法によると、上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離することにより、このように比較的早い剥離速度であっても良好な水剥離性を発揮することができる。剥離前線を移動させる速度の上限は特に制限されない。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば1000mm/分以下であり得る。
【0283】
ここに開示される剥離方法は、例えば、該方法に使用する水性液体(例えば水)の体積10μL当たりの粘着シートの剥離面積が、例えば50cm2以上、好ましくは100cm2以上となる態様で実施することができる。
【0284】
ここに開示される剥離方法は、例えば、ガラス板、金属板、樹脂板等のような非吸水性の平滑面に貼り付けられた粘着シートの剥離に好ましく適用され得る。また、ここに開示される剥離方法は、上述したいずれかの光学部材から粘着シートを剥離する方法として好ましく利用され得る。なかでも、偏光板(粘着シートが貼り付けられる面に親水化処理が施された偏光板であり得る。)や、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス板に貼り付けられた粘着シートを剥離する方法として好適である。
【0285】
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、各種の用途に用いることができる。例えば、ここに開示される粘着シートは、各種製品を構成する部材の固定、接合、成形、装飾、保護、支持等の用途に用いられ得る。上記部材の少なくとも表面を構成する材質は、例えば、アルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス;樹脂フィルム、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;アルミナ、シリカ等のセラミック材料;アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。上記部材は、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)、自動車、家電製品等を構成する部材であり得る。また、上記部材は、該粘着シートが貼り付けられる面が、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面や、亜鉛メッキ鋼板等のメッキ面であってもよい。また、上記部材は、基材に用いられ得る材料として例示したいずれかの支持フィルム(例えば、樹脂フィルム)であってもよい。ここに開示される粘着シートは、例えば、このような部材が粘着剤層の少なくとも一方の表面に接合された粘着シート付き部材の構成要素であり得る。
【0286】
好ましい用途の一例として、光学用途が挙げられる。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等に用いられる光学用粘着シートとして、ここに開示される粘着シートを好ましく用いることができる。
【0287】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」等を含むものとする。
【0288】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられ、特に、フォルダブル表示装置や車載用の表示装置のように、高価な部材を含む場合に好ましく適用できる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0289】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜等からなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0290】
ここに開示される粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)ここに開示される粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、基材が光学部材(例えば、光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように基材として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば、粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される粘着シートが基材を有するタイプの粘着シートであって、上記基材として上記機能性フィルムを用いた場合には、ここに開示される粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
【0291】
ここに開示される粘着シートは、例えば、ガラス板、金属板、樹脂板等のような非吸水性の平滑面に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。なかでも、偏光板や、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス板に貼り付けて用いられる粘着シートとして好適である。上記偏光板は、粘着シートが貼り付けられる面に親水化処理(コロナ処理、プラズマ処理、親水層の形成等)が施された偏光板であり得る。
【0292】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0293】
<粘着剤組成物の調製>
(粘着剤組成物A-1)
2EHA85部、アクリル酸メチル(MA)13部、AA1.2部、MAA0.8部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)0.02部、連鎖移動剤(t-ドデシルメルカプタン)0.048部および乳化剤(花王社製、ラテムルE-118B)2.0部を、イオン交換水100部中で混合して乳化することにより、モノマー混合物の水性エマルション(モノマーエマルション)を調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に上記モノマーエマルションを入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、系を60℃に昇温し、重合開始剤として2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業社製、VA-057)0.1部を投入し、60℃で6時間反応させて、アクリル系ポリマーの水分散液を得た。この水分散液に、該分散液中のアクリル系ポリマーの100部あたり、粘着付与樹脂エマルション(荒川化学製、スーパーエステルE-865NT、軟化点160℃の重合ロジンエステルの水分散液)を固形分基準で10部加え、さらに剥離調整剤としてのn-デシルトリメトキシシランを0.1部添加し、10%アンモニア水を使用してpHを約7.5に調整することにより、エマルション型粘着剤組成物A-1を調製した。
【0294】
(粘着剤組成物B-1)
側鎖にベンゾフェノン構造を有するアクリル系共重合体(BASF社製、商品名:acResin UV3532、Tg:-60℃、Mw:25×104、BP当量:10mg/g)60部と、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)30部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)10部と、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.2部と、波長300nm~500nmの範囲に吸収ピークを有する光開始剤p1(IGM Regins社製、商品名:オムニラッド651)0.15部とを混合して、光架橋性粘着剤作製用の紫外線硬化型粘着剤組成物B-1を調製した。この粘着剤組成物B-1の粘度(BH型粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)は2.4Pa・sであり、有機溶媒含有量は1重量%未満であった。
【0295】
(粘着剤組成物B-2)
側鎖にベンゾフェノン構造を有するアクリル系共重合体(BASF社製、商品名:acResin UV3532)30部と、2EHA38部と、NVP4部と、イソボルニルアクリレート(IBXA)28部と、HDDA0.04部と、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM-5103)0.08部と、波長300nm~500nmの範囲に吸収ピークを有する光開始剤p2(IGM Regins社製、商品名:オムニラッド184)0.2部とを混合して、光架橋性粘着剤作製用の紫外線硬化型粘着剤組成物B-2を調製した。この粘着剤組成物B-2の粘度(BH型粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)は0.4Pa・sであり、有機溶媒含有量は1重量%未満であった。
【0296】
(粘着剤組成物B-3)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)60部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)6部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18部、イソステアリルアクリレート(iSTA)1部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)15部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.085部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、ポリマーP1の溶液を得た。ポリマーP1の重量平均分子量(Mw)は30万であった。上記モノマー成分の組成から算出されるポリマーP1のTgは-33℃である。
【0297】
上記ポリマーP1の溶液に、該溶液中のポリマーP1の100部あたり、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)0.5部およびジブチルスズジラウレート0.0025部を加え、空気雰囲気下、50℃で7時間攪拌することにより上記ポリマーP1にMOIを付加反応させて、炭素-炭素二重結合を有するポリマーP2の溶液を得た。
上記ポリマーP2の溶液に、該溶液中のポリマーP2の100部あたり、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学株式会社製、タケネートD-110N、固形分濃度75質量%))を固形分基準で0.2部、ジオクチルスズジラウレート0.01部、アセチルアセトン3部、光開始剤p2(オムニラッド184)0.2部を加え、均一に混合して、溶剤型粘着剤組成物B-3を調製した。
【0298】
(粘着剤組成物B-4)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてBA64.5部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)6部、NVP9.6部、イソステアリルアクリレート(ISTA)5部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)14.9部と、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.07部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが60万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。
上記で得られたアクリル系ポリマー溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学株式会社製、タケネートD-110N、固形分濃度75質量%)を固形分基準で0.09部、アクリル系オリゴマー0.4部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.02部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3部、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)2.7部、光開始剤p2(オムニラッド184)0.22部を加え、均一に混合して、溶剤型粘着剤組成物B-3を調製した。
上記アクリル系オリゴマーとしては、以下の方法で合成したものを使用した。
[アクリル系オリゴマーの合成]
トルエン100部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)(商品名:FA-513M、日立化成工業株式会社製)60部、メチルメタクリレート(MMA)40部、および連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5部を4つ口フラスコに投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間攪拌した後、熱重合開始剤として(AIBN)0.2部を投入し、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去することにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。このアクリル系オリゴマーのTgは144℃であり、Mwは4300であった。
【0299】
<粘着シートの作製>
(例1)
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR1(三菱樹脂社製、MRF#38)の剥離面に粘着剤組成物B-1を塗布し、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている剥離フィルムR2(三菱樹脂社製、MRE#38)を被せて空気を遮断した。この積層体の片側から、ブラックライト(東芝社製、商品名FL15BL)を用いて照度5mW/cm2、積算光量800mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、上記粘着剤組成物B-1の硬化物である光架橋性粘着剤b-1を、上記剥離フィルムR1,R2に挟まれた厚さ150μmの粘着剤層(B層)の形態で得た。
なお、上記ブラックライトの照度の値は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T36)による測定値である。
次いで、上記粘着剤層から剥離フィルムR2を除去し、露出した粘着剤層(B層)の上に粘着剤組成物A-1を直接塗布し、120℃で3分間乾燥させて厚さ5μmの粘着剤層(A層)を形成し、このA層の表面に剥離フィルムR2の剥離面を貼り付けた。このようにして、A層とB層とが直接接して積層した二層構造の粘着剤層(基材レス粘着シート)を作製した。この基材レス粘着シートのA層側およびB層側の表面は、剥離フィルムR2、R1によりそれぞれ保護されている。
【0300】
(例2)
粘着剤組成物B-1に代えて粘着剤組成物B-2を用いた他は例1と同様にして、粘着剤組成物B-2の硬化物である光架橋性粘着剤b-2を、剥離フィルムR1,R2に挟まれた厚さ150μmの粘着剤層(B層)の形態で得た。この粘着剤層(B層)の上に粘着剤組成物A-1を直接塗布し、120℃で3分間乾燥させて厚さ5μmの粘着剤層(A層)を形成し、このA層に剥離フィルムR2の剥離面を貼り付けた。このようにして、A層とB層とが直接接して積層した二層構造の粘着剤層(基材レス粘着シート)を作製した。 なお、例1、2において作製したB層のVOC放散量を上述の方法により測定したところ、いずれも500μg/g以下であった。
【0301】
(例3)
剥離フィルムR1(三菱樹脂社製、MRF#38)の剥離面に粘着剤組成物B-3を塗布し、130℃で2分間乾燥させて、厚さ150μmの粘着剤層を作製した。この粘着剤層(B層)の上に粘着剤組成物A-1を直接塗布し、120℃で3分間乾燥させて、厚さ5μmの粘着剤層(A層)を形成し、このA層に剥離フィルムR2の剥離面を貼り付けた。このようにして、A層とB層とが直接接して積層した二層構造の粘着剤層(基材レス粘着シート)を作製した。
【0302】
(例4)
粘着剤組成物B-3に代えて粘着剤組成物B-4を用いた他は例3と同様にして、厚さ150μmの粘着剤層を作製した。この粘着剤層(B層)の上に粘着剤組成物A-1を直接塗布し、120℃で3分間乾燥させて、厚さ5μmの粘着剤層(A層)を形成し、このA層に剥離フィルムR2の剥離面を貼り付けた。このようにして、A層とB層とが直接接して積層した二層構造の粘着剤層(基材レス粘着シート)を作製した。
【0303】
<積層体の作製>
各例に係る基材レス粘着シートのA層側を、コロナ処理された偏光板に、2kgのゴムローラーを一往復させて圧着した。次いで、上記粘着シートのB層側に、コロナ処理された厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた。これにオートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、高圧水銀ランプ(東芝社製、商品名H3000L/22N)を用いて上記PETフィルム側から紫外線を照射することにより、上記粘着剤層のB層を光架橋させた。このようにして、PETフィルム/粘着剤層(B層/A層)/偏光板の構成を有する積層体を作製した。
なお、上記紫外線の照射条件は、例1、2では照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T25による測定値)、積算光量10000mJ/cm2とし、例3、4では照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T36による測定値)、積算光量3000mJ/cm2とした。
【0304】
<測定および評価>
以下において、紫外線の照射は、いずれも高圧水銀ランプ(東芝社製、商品名H3000L/22N)を用いて行った。照射条件は、例1、2では照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T25による測定値)、積算光量10000mJ/cm2とし、例3、4では照度300mW/cm2(トプコン社製の工業用UVチェッカー、商品名:UVR-T1、受光部型式UD-T36による測定値)、積算光量3000mJ/cm2とした。
また、以下において、コロナ処理された偏光板(コロナ処理偏光板)としては、日東電工社製の偏光板(商品名「REGQ-HC3」、厚さ92μm)の一方の面にコロナ処理を施したものを使用した。具体的には、コロナ処理は、上記偏光板をテーブル式表面コロナ処理装置(KASUGA社製、装置名「AGF-012」)に、出力設定3(表示0.17kW)、テーブルスピード目盛り20(速度3m/min相当)の条件で1回通すことにより行った。このコロナ処理偏光板の表面の水接触角は6度であった。
【0305】
(1)剥離強度N0の測定
(保存前)
各例に係る基材レス粘着シートを、幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。23℃、50%RHの環境下において、上記試験片の粘着面(粘着剤層のA層側)を上記コロナ処理偏光板に、2kgのゴムローラーを一往復させて圧着した。次いで、上記試験片のB層側を、コロナ処理された厚さ25μmのPETフィルムに貼り合わせた。これにオートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、上記PETフィルム側から上記条件で紫外線を照射した。
その後、23℃、50%RHの環境下において、引張試験機(ミネベア社製、万能引張圧縮試験機、装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」)を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で上記試験片を上記偏光板から引き剥がし、このときの剥離強度を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を表1に示した。
(保存後)
各例に係る基材レス粘着シートを、A層側およびB層側の表面が剥離フィルムR2、R1によりそれぞれ保護された形態で、40℃の環境下で5日間保存した。保存後の基材レス粘着シートを用いて、保存前の基材レス粘着シートと同様にして剥離強度N0を測定した。結果を表1に示した。
【0306】
(2)剥離強度N2の測定
(保存前)
上記剥離強度N0の測定において、上記粘着シートを上記偏光板から引き剥がす途中で、上記偏光板から上記試験片が離れ始める箇所(剥離界面)に20μLの蒸留水を供給し、該蒸留水供給後の剥離強度を測定した。測定は、各剥離強度N0の測定毎に(すなわち3回)行い、それらの平均値を表1に示した。
なお、ここでは1枚の試験片毎に剥離強度N0の測定と剥離強度N2の測定とを連続して行ったが、剥離強度N0の測定と剥離強度N2の測定とを異なる試験片により行ってもよい。例えば、連続測定を実施するために十分な長さの試験片を用意することが難しい場合等において、異なる試験片を用いて測定を行う態様を採用することができる。
(保存後)
各例に係る基材レス粘着シートを、A層側およびB層側の表面が剥離フィルムR2、R1によりそれぞれ保護された形態で、40℃の環境下で5日間保存した。保存後の基材レス粘着シートを用いて、保存前の基材レス粘着シートと同様にして剥離強度N2を測定した。結果を表1に示した。
【0307】
(3)光架橋前弾性率Gb’の測定
各例において作製したB層を、厚さが約1.5mmになるように重ね合わせ、直径7.9mmの円盤状に打ち抜いて測定試料を作製した。この測定試料をパラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより動的粘弾性測定を行い、80℃におけるせん断貯蔵弾性率Gb’を求めた。結果を表1に示した。
【0308】
(4)光架橋後弾性率Gc’の測定
各例において作製したB層を、剥離フィルムR1,R2に挟んだまま、上記条件で片面側から紫外線を照射して光架橋させた後、剥離フィルムR1,R2を除いて約1.5mmになるように重ね合わせ、直径7.9mmの円盤状に打ち抜いて測定試料を作製した。この測定試料について、上記光架橋前弾性率Gb’の測定と同様にして動的粘弾性測定を行い、80℃におけるせん断貯蔵弾性率Gc’を求めた。結果を表1に示した。
【0309】
(5)耐久性評価
偏光板(日東電工製、商品名「REGQ-HC3」、厚さ92mm)の一方の表面に厚さ15μmの粘着剤を用いてアルミホイル(三菱アルミホイル製、商品名「ニッパクホイル」、厚さ12μm)を貼り合わせたものを、基材レス粘着シートの一方の表面に接合させる被着体として使用した。
各例に係る基材レス粘着シートを、剥離フィルムR1,R2ごと60mm×120mmのサイズにカットした後、剥離フィルムR2を剥がし、露出した粘着面(粘着剤層のA層側)を上記被着体の偏光板側の表面にハンドローラーで貼り合わせた。次いで、上記粘着剤から剥離ライナーR1を剥がし、露出した粘着面(粘着剤層のB層側)をガラス板(松浪硝子工業社製、商品名「MICRO SLIDE GLASS」、品番「S」、厚さ1.3mm、ヘイズ0.1%、水縁磨)に貼り合わせた。このようにして、ガラス板/粘着剤層(B層/A層)/偏光板/アルミホイルの構成を有する積層体を得た。
この積層体に、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行った後、上記条件で上記ガラス板側から紫外線を照射したものを、耐久性評価用サンプルとした。
この評価用サンプルを85℃の環境下に24時間保存した後、23℃、50%RHの環境下において、A層と偏光板との界面における気泡の発生有無を目視観察し、以下の2段階で耐久性を評価した。結果を表1の「密着耐久性」の欄に示した。なお、いずれの例に係る粘着シートを用いた場合も、上記耐久性評価用サンプルの作製直後には気泡は全く認められなかった。
E:気泡の発生は認められなかった(密着耐久性に優れる)。
P:気泡の発生が明らかに認められた(密着耐久性に乏しい)。
【表1】
【0310】
表1に示されるように、例1~3の粘着シートは、光架橋によりB層のせん断貯蔵弾性率Gb’を高めることができ、良好な密着耐久性を示した。また、例1~3の粘着シートは、粘着シートの保存安定性が良好であり、これにより保存前および保存後のいずれにおいても優れた水剥離性を示した。
【0311】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0312】
1,2 粘着シート
20 基材
20A 第一面
20B 第二面(背面)
30,31 剥離ライナー
70 光学部材
110 粘着剤層
110A 一方の表面(粘着面)
112 A層
114 B層
200 粘着シート付き部材