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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電気集塵装置及び空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/16 20060101AFI20240806BHJP
   B03C 3/36 20060101ALI20240806BHJP
   B03C 3/41 20060101ALI20240806BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20240806BHJP
   B01D 47/00 20060101ALI20240806BHJP
   B01D 50/00 20220101ALI20240806BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240806BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20240806BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B03C3/16 Z
B03C3/36 A
B03C3/41 A
B01D47/06 Z
B01D47/00 Z
B01D50/00 501Z
A61L9/00 Z
F24F7/00 Z
A61L9/16 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019206647
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021079311
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
(72)【発明者】
【氏名】木佐貫 善行
(72)【発明者】
【氏名】北林 功一
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-090262(JP,A)
【文献】実開昭51-016276(JP,U)
【文献】特開2019-150808(JP,A)
【文献】特開2004-358364(JP,A)
【文献】特開2019-162596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
B01D 47/06
B01D 47/00
B01D 50/00
A61L 9/00- 9/22
F24F 7/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中のダストを帯電させて捕集する電気集塵装置であって、
導電性の液体を貯留する液槽と、
該液槽の液面から一定の間隔を介して配置される放電用電極と、
前記液槽の液面の上方の該液面に対向する位置に設けられる吸込口と、
該吸込口に向けて前記液槽内の液体を上方に霧状化させる霧化生成部と、
を備え、
前記吸込口から流入した空気は、前記液槽の液面に向けて流入し、
前記霧化生成部は超音波振動子を備え、前記液槽の底面には、前記吸込口に対応する位置に孔部が形成され、前記超音波振動子は、該孔部に対応する位置に設けられ、前記液槽の底部から上向きに高周波を放射することで液体を超音波振動させて液柱を発生させ、
前記放電用電極は、空気の流通方向における前記吸込口の下流側の周囲に複数配置され
前記吸込口は、前記放電用電極から離間すると共に上部から下方内側に傾斜する傾斜部を備え、前記吸込口の下端部は前記放電用電極の下端部よりも前記液槽の液面側に延出していることを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記霧化生成部はヒータを備え、該ヒータは前記液槽の液面側に向いた姿勢で該液槽内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記液槽内には、導電性の液体を吸収して保持する多孔質体製の吸液部材が設けられ、該吸液部材は、該吸液部材の上方に液膜が形成されるように前記液槽内に配置され、前記霧化生成部に対応する領域に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記吸液部材の前記開口部は、前記吸込口に対向する領域内に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記吸込口には多数の孔部が形成された整流板が設けられ、該整流板と前記液槽の液面との間には前記吸液部材の前記開口部の上方にルーフが設けられ、該ルーフは前記吸込口の中心部に対応する位置から前記液槽側に向かって下傾する傘状に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記放電用電極は、導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有し、該放電用電極の先端部は前記液槽の液面の方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記放電用電極の前記束状部は、直径5~25μmの線電極を10~200本束ねて構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
内部に空間を有する筐体を備え、前記液槽は該筐体内に配置され、該筐体には、前記液槽の上方の液面に対向する位置に吸込口が設けられ、空気の流通方向における該吸込口の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が該液槽の液面に沿って該液槽の周囲に拡散するように空気の流通路が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの請求項に記載の電気集塵装置を備えた空気清浄装置であって、
ケースの内部に前記電気集塵装置と吸引ファンが収納され、該ケースの上部に天板の吸込口が開口され、該ケースの下部に排気口が開口されていることを特徴とする空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により、空気中の塵埃や煙や油煙中の汚染粒子(ダスト)を帯電させて捕集する電気集塵装置及び該電気集塵装置を備えた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塵埃を吸引して空気を浄化する装置が広く利用されている。例えば、特許文献1には、集塵筒に放電電極と液槽を設け、放電電極と液槽内に貯留されている水との間に高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させると共に、液槽内の水を攪拌手段により霧化させて、空気中の塵、埃等の汚染粒子を液槽内の水へ取り込む空気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-102651号公報(特に、実施の形態3及び図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気浄化装置では、集塵筒の吸込口から排気口に至る空気の流通路が、液槽の水面に沿って水平方向に直線的に形成されているのに対して、液槽から霧状化した液体粒子(以下「ミスト」と称す)は下側から上側に向かって飛散する。そのため、汚染粒子(以下「ダスト」と称す)が通過する空気の流通路(特に、流通路の上方部分)では、霧状化したミストと接触する度合いが悪く、混合し難い領域が生じる可能性がある。また、特許文献1に記載の空気浄化装置を例えば分煙機に用いた場合には、吸込口から火の粉等の粒子が流入すると、そのまま排気口から火の粉等の粒子が流出してしまう恐れがあり、火災の危険性がある。
【0005】
さらに、撹拌手段は、空気の流通方向における放電用電極の下流側に配置されており、ダストは帯電されるがミストは帯電されないため、帯電されたダストと帯電されていないミストとが混合された状態となる。したがって、ミストの周辺が帯電エリアとならずに、ダストがミストに引き寄せられないため、荷電(帯電)性能を向上させることができない。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、空気の流通路を通過するダストとミストとの接触の度合いを向上させ、両者を十分に混合させて帯電させることにより荷電(帯電)性能を向上させると共に、火災の危険性のない安全性に優れた電気集塵装置および空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の電気集塵装置は、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により空気中のダストを帯電させて捕集する電気集塵装置であって、導電性の液体を貯留する液槽と、該液槽の液面から一定の間隔を介して配置される放電用電極と、前記液槽の液面に対向する位置に設けられる吸込口と、該吸込口に向けて前記液槽内の液体を霧状化させる霧化生成部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の電気集塵装置によれば、霧化生成部によって生成されたミストは、気流が通過する吸込口に向かって飛散し、吸込口の内部全体をミストの粒子で満たすことができる。また、気流に対向するようにミストが飛散するので、吸込口から流入する空気中のダストとの混合の度合い(比率)を高めることができる。さらに、ミストは、帯電されることで電荷を保ち、ミストの周辺が帯電エリアになることでダストが引き寄せられる。したがって、荷電(帯電)性能を向上させることができる。また、ミストは、吸込口の内部全体に飛散するので、例え吸込口から火の粉等の粒子が流入したとしても火災の危険性がなく、安全性を高めることができる。
【0009】
本発明の第2の電気集塵装置は、上記した第1の電気集塵装置において、前記霧化生成部は超音波振動子を備え、該超音波振動子は前記液槽の液面側に向いた姿勢で該液槽内の液体に接触していることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の電気集塵装置によれば、安価に液体を霧状化させることのできる超音波振動子を使用しているため、経済性を向上させることができる。また、超音波振動子は、液体を霧状化させる時間が早く、電源を入れた瞬間からミストを発生することができる。さらに、超音波振動子は、電気消費量が少ないため、ランニングコストを削減することができる。
【0011】
本発明の第3の電気集塵装置は、上記した第2の電気集塵装置において、前記液槽の底部には、前記吸込口の中心部に対応する位置に孔部が形成され、前記超音波振動子は該孔部に対応する位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の電気集塵装置によれば、吸込口(気流)の中心部に対応する液面からミストが生成されるので、吸込口の内部全体に均一にミストを飛散させることができる。
【0013】
本発明の第4の電気集塵装置は、上記した第1の電気集塵装置において、前記霧化生成部はヒータを備え、該ヒータは前記液槽の液面側に向いた姿勢で該液槽内に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の電気集塵装置によれば、ヒータにより液層内の液体を加熱することで液体内の菌やウイルスを破壊(殺菌)することができるため、 生成されるミストを清浄化させることができる。
【0015】
本発明の第5の電気集塵装置は、上記した第1~第4のいずれかの電気集塵装置において、前記液槽内には、導電性の液体を吸収して保持する多孔質体製の吸液部材が設けられ、該吸液部材は、該吸液部材の上方に液膜が形成されるように前記液槽内に配置され、前記霧化生成部に対応する領域に開口部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の電気集塵装置によれば、吸液部材により液槽内の液面の波の発生を抑制することができ、液膜の形成により安定した放電を行うことができる。また、開口部内に液槽の液体が貯留されるため、霧化生成部により安定したミストを生成することができる。
【0017】
本発明の第6の電気集塵装置は、上記した第5の電気集塵装置において、前記吸液部材の前記開口部は、前記吸込口に対向する領域内に形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の電気集塵装置によれば、吸液部材が液面の波の発生の抑制に悪影響を及ぼすことがない。
【0019】
本発明の第7の電気集塵装置は、上記した第6の電気集塵装置において、前記吸込口には多数の孔部が形成された整流板が設けられ、該整流板と前記液槽の液面と間には前記吸液部材の前記開口部の上方にルーフが設けられ、該ルーフは前記吸込口の中心部に対応する位置から前記液槽側に向かって下傾する傘状に形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第7の電気集塵装置によれば、ルーフにより液槽内の液体を汚れ難くすることができると共に、ルーフの上面にダストが堆積するのを抑制することができる。
【0021】
本発明の第8の電気集塵装置は、上記した第1~第7のいずれかの電気集塵装置において、前記放電用電極は、空気の流通方向における前記吸込口の下流側端部の周囲に複数配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第8の電気集塵装置によれば、霧化生成部と距離の近い吸込口の下流側に放電用電極を配置することで、ダストとミストが混合された状態を維持している時に荷電(帯電)することができるので、荷電(帯電)性能を向上させることができる。
【0023】
本発明の第9の電気集塵装置は、上記した第1~第8のいずれかの電気集塵装置において、前記放電用電極は、導電性繊維の線電極を束ねた束状部を有し、該放電用電極の先端部は前記液槽の液面の方向に向けて配置されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第9の電気集塵装置によれば、放電用電極を束状部とすることで、汚れに強くなり、耐久性を向上させることができる。また、低電圧でコロナ放電を発生させることができるので、液面の波の発生を抑制し、安定した放電を行うことができる。 さらに、放電用電極の先端部を液面の方向に向けて配置することで、放電用電極と液面との間で安定した放電を行うことができる。
【0025】
本発明の第10の電気集塵装置は、上記した第9の電気集塵装置において、前記放電用電極の前記束状部は、直径5~25μmの線電極を10~200本束ねて構成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第10の電気集塵装置によれば、流通性と経済性を高めることができると共に、耐久性(錆び難い)と放電(荷電)性能の向上を図ることができる。
【0027】
本発明の第11の電気集塵装置は、上記した第1~第10のいずれかの電気集塵装置において、内部に空間を有する筐体を備え、前記液槽は該筐体内に配置され、該筐体には、前記液槽の上方の液面に対向する位置に吸込口が設けられ、空気の流通方向における該吸込口の下流側には、該吸込口から該筐体内に流入した空気が該液槽の液面に沿って該液槽の周囲に拡散するように空気の流通路が形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第11の電気集塵装置によれば、下降方向から横方向に気流の向きを変化させることで、空気中に含まれる大きな粒子は、気流から離脱して液槽内に捕集されるため、放電用電極や反発部の汚れを軽減することができ、耐久性を向上させることができる。 また、吸込口から流入した空気は、吸込口から周囲の液面に拡散するように流通するので、液槽の液面全体を有効に活用することができる。さらに、筐体と液槽との間を流通路とすることで、筐体の内部空間を有効に活用することができる。
【0029】
本発明の空気清浄装置は、上記した第1~第11のいずれかの電気集塵装置を備えた空気清浄装置であって、ケースの内部に前記電気集塵装置と吸引ファンが収納され、該ケースの上部に吸込口が開口され、該ケースの下部に排気口が開口されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の空気清浄装置によれば、集塵(捕集)性能の向上を図ることができる。 特に、火の粉等による火災防止に効果があるため、分煙機に好適に使用可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、空気の流通路を通過するダストとミストとの接触の度合いを向上させ、両者を十分に混合させて帯電させることにより荷電(帯電)性能を向上させることができると共に、火災の危険性のない安全性に優れた電気集塵装置および空気清浄装置を提供することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の内部を斜め上方から示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の側方部分を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の上部を斜め下方から示す分解斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を斜め下方から示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態の電気集塵装置の霧化装置を斜め上方から示す斜視図である。
図8図7のX-X断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下において説明する各実施の形態は本発明の好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
[第1の実施の形態に係る電気集塵装置]
【0034】
まず、図1図8を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電気集塵装置について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を斜め上方から示す斜視図、図2は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の内部を斜め上方から示す斜視図、図3は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図、図4は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の側方部分を前後方向の中心位置から左右方向に切断して示す側面断面図、図5は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置の上部を斜め下方から示す分解斜視図、図6は本発明の実施の形態に係る電気集塵装置を斜め下方から示す斜視図、図7は本発明の実施の形態の電気集塵装置の霧化装置を斜め上方から示す斜視図、図8図7のX-X断面図である。
【0035】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1において矢印で示した前後、左右及び上下の向きを基準として、各図における向きを設定する。また、「流通方向」とは、空気が流れる方向を指し、「上流」及び「下流」並びにこれらに類する用語は、空気の流通方向における「上流」及び「下流」並びにこれらに類する概念を指すこととする。
【0036】
本発明の実施の形態に係る電気集塵装置1は、コロナ放電によって空気中の粒子を帯電させて捕集する装置であり、筐体2と、液槽3と、霧化装置60と、放電部4と、給電用碍子5及び支持用碍子6と、高電圧電源部7と、を備えて構成されている。筐体2は、基準電位点(例えば、大地等)に接続された接地電極となっている。液槽3は、筐体2の内部に設けられ、給電用碍子5及び支持用碍子6を介して筐体2に支持されている。放電部4は、液槽3の液面との間でコロナ放電を発生させる放電用電極30を備えている。
<筐体>
【0037】
筐体2は、内部に空間を有する扁平な直方体形状に形成されている。筐体2の上面には、矩形状の天板11が固定されている。天板11は、筐体2の各側面2a,2b,2c,2dの上縁部に形成された折り曲げ部8を介して、合計8個のネジ12で筐体2に着脱可能に設けられている。天板11の中央部には、平面視で矩形状の立ち上がり部13が形成されている、立ち上り部13の内部には、吸込口15が固定されていると共に、矩形状の開口部14が形成されている。
【0038】
吸込口15は、立ち上がり部13の内面に沿って矩形筒状に形成される上部16と、上部16から下方内側に傾斜する傾斜部17を介して矩形筒状に形成される下部18と、を備えており、下部18は上部16より小径に形成されている。吸込口15の上部16には、吸込口用ダクト51が接続されている。
【0039】
吸込口15の上部16の内部には、空気の流通を遮る方向に整流板9が水平姿勢で設けられている。整流板9には、多数の孔部19が形成されており、孔部19の開口面積は中央部から外周部に進むに従って次第に大きくなるように設定されている。これにより、吸込口15の内部空間を有効に活用することができると共に、吸込口15の中央部の空気の流通量を減少させ、吸込口15の外周部の空気の流通量を増加させることで、荷電効率を高めることができる。
【0040】
天板11の下方には、合計4本のスペーサ20を介して、天板11より小さい矩形状のベース板21が固定されている。ベース板21の中央部には、天板11の立ち上がり部13に対応した位置に立ち上がり部22が形成されている。立ち上がり部22の上端は天板11の下面に接触し、立ち上がり部22の内側には、開口部14に対応した位置に前記開口部14と同一形状の開口部23が形成されている。
【0041】
ベース板21の下面には、開口部23を臨む位置に矩形環状の支持体固定部材24が形成されていると共に、支持体固定部材24の径方向外側において支持体固定部材24を取り囲むように矩形環状の反発部25が形成されている。支持体固定部材24は、上面が開放されたコの字状断面を有しており、支持体固定部材24の内側の面24aは立ち上がり部13及び22の各内側の面と同一面を形成している。
【0042】
反発部25は、上面が開放されたコの字状断面を有しており、支持体固定部材24の外側に所定距離X(図4参照)離間して配置されている。反発部25は、径方向及び上下方向の長さがいずれも支持体固定部材24より大きく、反発部25の下面には導電性の平面部26が形成されている。
【0043】
筐体2の下面には、矩形状の排気口50が形成されている。空気の流通路27における圧損低下を防止するため、排気口50の開口面積は、吸込口15の開口面積よりも大きく設定されている。排気口50には、排気用ダクト52が接続され、排気用ダクト52に吸引ファン55が設けられている。吸引ファン55は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70の指令に基づき、制御される。なお、本実施の形態では、吸込口15及び排気口50にそれぞれ吸込口用ダクト51、排気用ダクト52が接続されているが、ダクト51,52を使用せずに、排気口50の周囲から吸引して排気口50の周囲に排気しても良い。
<液槽>
【0044】
液槽3は、給電用碍子5及び支持用碍子6を介して筐体2に支持されている。液槽3は、筐体2の内部に収納され、液槽3の周囲には、空気の流通路27が形成されている。液槽3は、上面が開放された扁平な直方体形状に形成され、液槽3の底部には、吸込口15の中心部に対応する位置に円形の孔部54が形成されている。
【0045】
液槽3には、導電性を有する液体28(例えば、水)が貯留されている。液槽3に貯留される液体は、ウイルス等を殺菌する殺菌成分や消臭成分を備えた液体でも良い。液槽3内には、液槽3内の水位を監視する水位センサ(図示省略)が設けられており、液槽3内の水位が低くなると、貯水部(図示省略)からポンプ(図示省略)等により液体が液槽3内に供給されるようになっている。これにより、液槽3内の液体の水位は常に適正な水位に維持されている。
【0046】
液槽3内には、導電性の液体を吸収して保持する吸収性(吸水性)を有する多孔質体製の吸液部材29が設けられている。ここで、多孔質体とは、素材中に空間(繊維と繊維の隙間、発泡など)が形成されて、液体が浸透するようなものを示し、具体的には、発泡材やスポンジ、ジェル状や金属製であっても構わない。
【0047】
吸液部材29の中央部には、円柱形状の開口部53が形成されている。開口部53は、吸込口15に対向する領域内に形成されており、開口部53の開口面積は、吸込口15の開口面積よりも小さく設定されている。なお、本実施の形態において、開口部53は平面視で円形を成しているが、四角状や楕円形状であっても良い。
【0048】
開口部53の周囲の吸液部材29の厚さは、液槽3の上部から液槽3の底部までの厚さにほぼ等しくなるように設定されており、液槽3内に収容された状態で吸液部材29の上面には例えば0.5mm以下の液膜が形成されるようになっている。なお、開口部53の周囲の吸液部材29は、薄板状に形成されて液槽3の上部のみに配置されていても良い。その場合、吸液部材29の下側には、吸液部材29を支持するためにメッシュ状の支持体(図示省略)が液槽3内に取り付けられ、該支持体の下方には液体(例えば水)が貯留される。
【0049】
吸液部材29は、稼動時間の経過と共に汚れを吸着するため、次第に汚れてくるが、その際には、汚れた吸液部材81を液槽3内から取り出して洗浄したり或いは交換したりすれば良い。したがって、液槽3内の汚水を排水するための設備が不要となるので、経済性に優れている。
【0050】
また、図3において二点鎖線で示すように、吸込口15の内部空間の整流板9と液槽3間に、ルーフ57を設けても良い。ルーフ57は、周囲に流路が形成されるように整流板9と対向して配置され、平面視で吸液部材29の開口部53と同一の大きさ及び形状に設定されている。ルーフ57を設けることにより、吸込口15から流入した空気中のダストは開口部53の液体内ではなく、吸液部材29に捕集されるため、液槽3内の液体が汚れるのを抑制することができる。
【0051】
また、ルーフ57は、図3に示すように、吸込口15の中心部に対応する位置から液槽3側に向けて下傾する傘状に形成させることにより、ルーフ57の上面にダストが堆積し難くすることもできる。さらに、吸込口15の外周方向に吸込口15から流入した空気を誘導することができるため、荷電効率(帯電効率)を高めることができる。なお、ルーフ57の形状は、傘状に限らず、平板状であってもよく、或いは、ルーフ57の代わりに、整流板9において、吸液部材29の開口部53に対向する部分の孔部19を閉鎖しても良い。
<霧化装置>
【0052】
図3に示すように、霧化装置60は、孔部54に対応する位置に設けられる霧化生成部61と、発振回路(発信基板)を有する発振部62と、で構成され、霧化生成部61と発振部62はケーブル63で制御部70に接続されている。なお、本実施の形態では、霧化生成部61と発振部62は分離されているが、一体化されていても良い。
【0053】
図7及び図8に良く示されているように、霧化生成部61は、振動子ケース64と、振動子ケース64に支持される超音波振動子65と、を備えている。振動子ケース64は、板状の本体部66と、本体部66の上面中央部に突設された円板状の台座部67と、により構成されている。超音波振動子65は、円形状の薄い板材により形成され、例えばステンレス(SUS316)製で、台座部67の上面に上向きで固定される。なお、超音波振動子65として、圧電セラミックプレートの両面に金属電極をめっきで形成した圧電振動子を使用しても良い。
【0054】
超音波振動子65の周囲にはパッキン68が設けられており、パッキン68は、台座部67の上面において孔部54の周囲の底部に当接可能なように円筒状に形成されている。霧化生成部61は、本体部66の前後端部にそれぞれ螺挿された固定用ネジ69によって液槽3の底部に固定されており、超音波振動子65は液槽3の液面側に向いた姿勢で液槽3内の液体に接触するように設けられている。また、霧化生成部61は、パッキン68によって液槽3の底部に密着するため、液槽3内の液体が外部に漏れる虞はない。
【0055】
なお、本実施の形態では、振動子ケース64を液槽3の底部に固定しているが、振動子ケース64にフロート(浮き輪)(図示省略)を取付けて、液槽3の液体内に浸漬させても良い。フロートは、液面の上下に追従するので、ミストの発生に支障を及ぼすことはない。
【0056】
発振部62は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70の指令に基づき、制御される。そして、超音波振動子65は、発振部62から出力された数MHz(例えば2.4MHz)の周波数により振動するようになっている。
【0057】
なお、霧化装置60の別の実施の形態として、加熱式(蒸気式)の装置を用いてミストを供給しても良い。例えば、図3において液槽3内に二点鎖線で示すように、ヒータ56を液面から数mm程度下方の液槽3内に液面側に向けた姿勢で配置しても良い。ヒータ56により液体を加熱することで、液体内の菌やウイルスを破壊(殺菌)することができ、生成されるミストも清浄化されるため、空気清浄装置には好適である。また、この場合、ヒータ56がミストを生成するために必要な液体を、定量的に供給する液体供給手段(図示省略)を設けても良い。
<放電部>
【0058】
図4に良く示されているように、放電部4は、複数の放電用電極30と、各放電用電極30を支持する支持体31と、を備えている。各放電用電極30は、繊維状の線電極32を束ねてブラシ状に形成された束状部33を備えている。線電極32は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されている。このため、線電極32が束状部33から離間しやすく、放電性能を高めるこができる。例えば、磁性を備えたフェライト系では、線電極32が束状部33より離間し難いため、束状部との電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。1つの放電用電極30は、例えば、約100本の線電極32が束ねられることで形成されている。なお、放電用電極30は、直径5~25μmの線電極32を10~200本束ねて形成されていても良い。
【0059】
放電用電極30に印加される電圧は、4~6kVの範囲であり、放電用電極30の長さは、3~7mmの範囲である。このため、比較的低電圧でも、安定して放電することができる。また、放電用電極30には、直流でマイナスの高電圧が印加される。このように直流方式を採用することで、他の方式(交流、パルス)に比べて、比較的簡単な構成とすることができる。また、マイナス荷電方式を採用することで、プラス荷電方式に比べて、同じ空間(隙間)でも放電用電極30に放電電流を多く流すことができる。さらに、プラス荷電方式に比べて、放電安定性(異常放電しにくい特性)を向上させることができる。
【0060】
支持体31は、ステンレス(SUS304)で形成されており、線電極32と同じ材質を使用している。支持体31に固定されている線電極32と支持体31は、同じ材質(ステンレス)を使用していることで、異種金属の接触による電解腐食(電食)を防止している。
【0061】
支持体31は、支持体固定部材24の内側の面24aと外側の面24bとの両側に2列で周方向に固定されている。これにより、複数の放電用電極30は、吸込口15の周囲に配置され、支持体31を2列に配列することで荷電効率を高めることができる。
【0062】
複数の放電用電極30は、支持体31から液槽3の液面に向かって下方に延びた状態で設けられている。複数の放電用電極30は全て略同じ全長に形成され、複数の放電用電極30の先端は略揃えられている。複数の放電用電極30は、支持体31の周方向に沿って所定のピッチで間欠的に設けられている。
【0063】
放電用電極30の先端部(下端部)と液槽3の液面との距離Yは、反発部25の平面部26と液槽3の液面との距離と同じ距離に設定されており、例えば、いずれも、印加電圧が数KVで10数mmに設定されている。なお、捕集性能(捕集効率)向上のため、反発部25と液槽3の液面との距離は、放電用電極30の先端部と液槽3の液面との距離Yよりも近付けて設定されても良い。
【0064】
反発部25の内側の面25aと外側の放電用電極30との距離Xは、放電用電極30の先端部(下端部)と液槽3の液面との距離Y(放電距離)よりも大きく設定されている。これにより、電界干渉の防止を図ることができる。
【0065】
また、吸込口15の下端部は、放電用電極30の先端部(下端部)よりも液面側に延出している。これにより、吸込口15から流入した空気は、吸込口15から流出すると液槽3の液面に沿って流通するように誘導されるため、放電用電極30の根元部(上部)に流通しない構造となり、確実に帯電エリアEAを通過するため、荷電性能(帯電性能)を向上させることができる。さらに、上記したように、吸込口15の傾斜部17により吸込口15が放電用電極30から離間するように形成されているため、電界干渉の防止を図ることができる。なお吸込口15の下部18と内側の放電用電極30との距離は、反発部25の内側の面25aと外側の放電用電極30との距離Xと同等に設定されている。これにより、電界干渉の防止を図ることができる。
<給電用碍子及び支持用碍子>
【0066】
筐体2の側面と液槽3の側面との間には、1個の給電用碍子5及び3個の支持用碍子6が設けられている。給電用碍子5及び支持用碍子6は、例えば、磁器又は陶器もしくは電気絶縁性に優れる樹脂で形成されている。
【0067】
給電用碍子5は、筐体2の一側面2aと液槽3の一側面3aとの間に介装される碍子本体34と、筐体2の一側面2aの外側に設けられる給電接続部35と、を備えている。碍子本体34は、略円筒状に形成され、碍子本体34の軸心には、貫通穴38aが形成されている。
【0068】
給電接続部35は、円板形状の鍔部37と、鍔部37と同心で鍔部37より小径に形成される円筒状の凹部36と、により構成されている。鍔部37の軸心には、碍子本体34の貫通穴38aと連通するように貫通穴38bが形成されている。鍔部37の貫通穴38b及び碍子本体34の貫通穴38aに挿通された給電用ネジ39にナット40を締結することにより、碍子本体34が筐体2の一側面2aと液槽3の一側面3aとの間に固定されるようになっている。
【0069】
鍔部37の外周部には、複数(図示では4個)の固定穴が周方向に均等間隔で形成されており、これらの固定穴に挿通された固定用ネジ41にナット42を締結することにより、給電接続部35が筐体2の一側面2aに固定されるようになっている。給電接続部35の凹部36には、給電用バネ43が給電用ネジ39に電気的に接触するように設けられ、給電用バネ43は高電圧電源部7と電気的に接触している。
【0070】
支持用碍子6は、筐体2の一側面2a以外の他の3つの側面2b,2c,2dと液槽3の一側面3a以外の他の3つの側面3b,3c,3dとの間にそれぞれ介装されている。支持用碍子6の軸心には、内側及び外側からそれぞれ貫通溝44a,44bが形成されている。支持用碍子6の内側及び外側から各貫通溝44a,44bにそれぞれ固定ネジ45を締結することにより、支持用碍子6が筐体2の3つの側面2b,2c,2dと液槽3の3つの側面3b,3c,3dとの間にそれぞれ固定されるようになっている。
<高電圧電源部>
【0071】
図3に示すように、高電圧電源部7は、高圧トランス46と、倍圧部47と、リミットスイッチ48と、を備えている。高電圧電源部7は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70の指令に基づき、給電用碍子5を介して液槽3側に高電圧を印加する。高圧トランス46は、元電源P(交流100V)の交流電圧を昇圧する。倍圧部47は、高圧トランス46で昇圧した交流電圧を直流電圧に変換し、且つさらに昇圧することでマイナス約5kVの高電圧を生成する。また、倍圧部47は、放電用電極30に対する高電圧の印加を制御する出力制御部としても機能する。リミットスイッチ48は、電気集塵装置1を後述する空気清浄装置100に装着した時に投入状態(ON状態)となり、電気集塵装置1を空気清浄装置100から離脱した時に開放状態(OFF状態)となる。
【0072】
仮に、集塵方式をプラス荷電方式とすると、荷電に必要な放電電流を確保するために放電距離を近づけなくてはならず異常放電し易くなる。したがって、上記した本実施の形態では、同じ空間の間隔(隙間)でも放電電流が多いことと、放電安定性(異常放電しにくい傾向)を考慮してマイナス荷電方式を採用している。なお、直流の元電源(例えば24V)を使用しても良い。
<空気の流通路>
【0073】
図3及び図4において矢印で示すように、電気集塵装置1の内部には、中央の吸込口15から流入して下降した空気が液槽3の液面に沿って外側に拡散した後、筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a、3b、3c、3dとの間、及び筐体2の下面と液槽3の下面の間を通って、排気口50から外部に排出するように空気の流通路27が形成されている。なお、本実施の形態では、電気集塵装置1の上部から内部に空気を吸引し、下部から排気するように空気の流通路27が形成されているが、空気の流れを逆にしても良い。その場合、放電用電極30と反発部25の配置も逆になる。
[電気集塵装置の作用]
【0074】
次に、主に図3及び図4を参照しつつ、電気集塵装置1の作用について説明する。
予め液槽3内の水位が適正水位であることを水位センサにより確認した上で、電気集塵装置1を動作開始させると、霧化装置60が稼働し、放電用電極30に高電圧が印加されると共に、吸引ファン55が回転する。これにより、電気集塵装置1の外部で発生したダストを含む含塵空気は、吸引ファン55による吸引力によって吸込口15の内部に吸い込まれて下降気流(ダウンフロー)となり、吸込口15の下部18から筐体2内に流入する。
【0075】
この時、吸込口15内の整流板9の孔部19の開口面積は中央部から外周部に進むに従って次第に大きくなるように設定されているため、吸込口15の内部空間を有効に活用することができると共に、吸込口15の中央部の空気の流通量を減少させ、吸込口15の外周部の空気の流通量を増加させることができる。これにより、吸込口15から筐体2内に流入した空気が、液槽3の液面にダイレクトに衝突したり、液面を波立たせたりすることがなく、放電用電極30が配置されている吸込口15の外周方向に空気を誘導することができるため、荷電効率を高めることができる。
【0076】
このように吸込口15から筐体2内に流入した含塵空気は、吸込口15の内径より液槽3の内径の方が大きいため、液槽3の液面に沿って吸込口15の周囲に拡散し、放電用電極30と液槽3の液面との間を通過する。含塵空気の気流の向きを下降方向から横方向に変化させることで、含塵空気中に含まれる粒子径が大きいダストは、気流から離脱して液槽3内の吸液部材29に捕集される。
【0077】
この間、図4に良く示されているように、超音波振動子65は、液槽3の底部から液体に向かって上向き(垂直方向)に数MHzの高周波を放射することで、液体を超音波振動させて、液柱71を発生させる。液柱71の表面では、液体が微粒化して数μm(例えば3μm程度)の霧状のミストが生成され、液柱71の周辺に飛散する。この時に生成されるミストは、粒子径が非常に細かく、また、気流の流通方向(下向き)と逆向き(上向き)に飛散されるため、吸込口15内において含塵空気中に含まれる粒子径が小さいダストと良く混合する。
【0078】
また、放電部4では、高電圧電源部7から給電用碍子5を介して液槽3側に高電圧が印加されることで、束状部33から離間した線電極32は強電界となり、線電極32の先端部と液槽3との間で、コロナ放電が発生する。コロナ放電は、各放電用電極30の先端部と液槽3の液面との間に略円錐状の帯電エリアEAを形成し、帯電エリアEAを流れる空気中の粒子径が小さいダストとミストを帯電させる。ミストは、帯電されることで電荷を保ち、ミストの周辺が帯電エリアになることで、ダストが引き寄せられ、荷電性能(帯電性能)を向上させることができる。
【0079】
この場合、帯電されたミスト同士は、同極性(本実施の形態例では、マイナス)に帯電されているので、互いに反発し合ってミスト同士が融合して大粒化することがない。そのため、飛散しやすく、含塵空気中のダストと良く混合することができる。また、ミストとダストが混合される吸込口15のすぐ下流側の吸込口15の周囲に放電部4を配置しているため、粒子径が非常に細かいミストであっても、短時間で蒸発することがなく、確実に帯電させることができる。このようにして帯電されたダストとミストは、液槽3の液面に引き寄せられて吸液部材29に捕集される。
【0080】
放電用電極30と液槽3の液面との間を通過した含塵空気は、反発部25の平面部26と液槽3の液面との間を通過する。この間、含塵空気中の帯電されたダストとミストは反発部25の平面部26から反発し、液槽3の液面側に寄せられて吸液部材29に捕集される。
【0081】
反発部25と液槽3の液面との間を通過してダストが除去された清浄空気は、液槽3の外周部から一旦上昇した後に下降し、筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a、3b、3c、3dとの間、及び筐体2の下面と液槽3の下面の間を通り、排気口50から外部に排出される。
【0082】
この時、給電用碍子5及び支持用碍子6は、空気の流通方向において反発部25の下流側の清浄空気が流通する領域(筐体2の側面2a,2b,2c,2dと液槽3の側面3a,3b,3c,3dとの間)にそれぞれ設けられているため、碍子表面に粒子による汚れが付着することで絶縁性が低下して沿面放電や高圧電流を短絡させたりするといった不具合を防止することができる。
【0083】
上記したように本発明の実施の形態に係る電気集塵装置1では、動作後直ちに液体をミスト状にすることができる超音波振動子65を使用することで、霧化装置60の動作と放電部4への高電圧の印加と吸引ファン55の運転とを同時に開始することができる。そのため、電気集塵装置1の運転を即座に開始することができ、運転時間までの待機時間を設定する必要がない。したがって、電気集塵装置1の運転効率を向上させることができる。また、ミストを発生させる手段として、超音波振動子65を用いることで、電気消費量を抑制することができ、経済性を高めることができる。
【0084】
なお、空気の吸引量やダストが多い場合には、超音波振動子65の動作を開始してから所定時間(例えば数秒から数十秒程度)経過した後に、放電部4への高電圧の印加及び吸引ファン55の運転を開始しても良い。この場合、放電部4への高電圧の印加及び吸引ファン55の運転開始前に吸込口15の内部がミストで充満されるので、ダストとミストの混合の度合いを高め、荷電効率(帯電効率)をより高めることができる。また、吸込口15に対向する領域からミストが生成されるため、吸込口15の内部をミストで充満させる効率を高めることができる。
【0085】
なお、上記した実施の形態に係る電気集塵装置1は、扁平な直方体形状に形成されているが、円形状や多角形状等、他の形状であっても良い。
【0086】
また、吸込口15や排気口50の設置位置や、空気の流通路27のルートは、必ずしも上記した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、吸込口15を天板11の一方側に寄せた位置に設けると共に排気口50を筐体2の他方側の側面に設けて、空気が一方向に流通するように空気の流通路を形成することも可能である。その場合、反発部25は、放電用電極30の周囲を取り囲むように設けられることなく、放電用電極30の下流側に配置される。
[空気清浄装置]
【0087】
次に、図9を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る空気清浄装置について説明する。ここで、図9は本発明の実施の形態に係る空気清浄装置の手前側のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【0088】
空気清浄装置100は、水平な矩形状のテーブル101と、テーブル101の下方に設けられる直方体形状のケース102と、ケース102の下面の四隅に設けられるキャスター103と、操作部(図示省略)と、を備えている。テーブル101の中央部には、矩形状の天板104が着脱可能に設けられ、天板104には吸込口105が形成されている。
【0089】
ケース102の上部には、電気集塵装置1の収納スペースが設けられ、該収納スペースに電気集塵装置1が収納されると、電気集塵装置1の給電用バネ43(図3等参照)が空気清浄装置100の給電部(図示省略)と電気的に接触するようになっている。また、ケース102の上部には、前記収納スペースの側方に高電圧電源部や制御部等の収納スペース106が設けられている。
【0090】
ケース102には、電気集塵装置1の収納スペース下方に吸引ファン(図示省略)を収納する吸引ファン部107が設けられ、該吸引ファンの下流側には活性炭が収納された脱臭部(図示省略)が設けられている。また、ケース102の下部には、排気口108が形成されている。
【0091】
このように電気集塵装置1が収納された空気清浄装置100において、前記操作部の運転スイッチが押されると、前記給電部を介して、電気集塵装置1の高電圧が印加され、前記吸引ファンが駆動する。これにより、室内の汚れた煙草の煙等の粒子を含む含塵空気は、吸込口105から空気清浄装置100内に流入し、電気集塵装置1により含塵空気中の粒子が捕集された後、清浄な空気となって排気口108から室内に戻される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の技術は、室内において空気中の汚れた粒子(煙草の煙、花粉等の粒子、調理時の油煙中のミストなど)を集塵する電気集塵装置や空気清浄装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 電気集塵装置
2 筐体
3 液槽
9 整流板
15 吸込口
19 孔部
27 空気の流通路
28 液体
29 吸液部材
30 放電用電極
32 線電極
33 束状部
54 孔部
61 霧化生成部
65 超音波振動子
100 空気清浄装置
102 ケース
105 吸込口
108 排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9